JP2009161852A - 冷陰極放電管電極用合金 - Google Patents

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Shinji Yamamoto
晋司 山本
Hideo Murata
英夫 村田
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Abstract

【課題】 従来から使用される電極用純Niと比較して、耐スパッタ性を飛躍的に向上することが可能な電極用合金を提供する。
【解決手段】 Tiを質量%で9.0%以下含有し、残部はNi及び不純物でなる冷陰極放電管電極用合金である。好ましくは、Tiを質量%で0.5〜8.0%含有し、残部はNi及び不純物でなる冷陰極放電管電極用合金である。更に好ましくは、Tiを質量%で5.0〜8.0%含有し、残部はNi及び不純物でなる冷陰極放電管電極用合金である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、例えば液晶表示装置のバックライト用光源として使用される冷陰極放電管の電極用合金に関するものである。
テレビやパソコンに用いられる液晶表示装置(LCD)には、照明用のバックライトが組み込まれており、このバックライトの光源には、冷陰極放電管が使用されている。
冷陰極放電管は、希ガス及び水銀蒸気が充填されたガラス管の内部に、一対の電極が対向して配置され、かつガラス管の内壁に蛍光膜を被覆した構造を有している。一対の電極にはリードの一端が接続され、リードの他端はガラス管の両端から外部に導出される。リードを介して一対の電極間に電圧を印加すると、一方の電極から電子が放出され、ガラス管内の水銀原子に電子が衝突して紫外線を発生する。この紫外線は、ガラス管の内壁に被覆した蛍光膜によって可視光線に変換され、照明としての役割を果たす。
上記の冷陰極放電管の電極(以下、電極と記す。)には、薄板形状の素材を深絞り加工等の冷間での塑性加工によってカップ形状に成形した部品を用いる場合が多いことから、軟らかくて塑性加工性に優れた純Niの薄板が使用されている。
純Niの薄板で構成される電極は、長時間の使用によって、電極がスパッタによって消耗して寿命に到る。この電極の寿命は、電極を構成する材料の耐スパッタ性(スパッタによる消耗のし難さ)に依存することから、電極用合金の耐スパッタ性を改善し、純Ni製の電極の寿命を向上することが可能な電極用合金する提案がなされている。
例えば、本発明者による特開2007−31832号公報(特許文献1)には、質量%でNb:1.0%以上〜6.0%未満、Mo:3.0〜15.0%、残部は実質的にNi及び不可避的不純物からなるNi−Nb−Mo合金を電極として用いる提案を行っている。この提案は、純Niと比較してスパッタによる消耗が起こり難いNb及びMoをNiと合金化させることにより、電極の耐スパッタ性を向上させ、更に放電特性も向上させるることが可能な電極用Ni−Nb−Mo合金である。
特開2007−31832号公報
上記の電極用Ni−Nb−Mo合金の耐スパッタ性は、電極用の純Niと比較して、約20%程度向上させることができるものである。しかしながら、耐スパッタ性の改善が不十分であるため、残念ながら実用化には至っていない。
本発明の目的は、従来から使用される電極用純Niと比較して、耐スパッタ性を飛躍的に向上することが可能な電極用合金を提供することである。
本発明者は、耐スパッタ性を飛躍的に向上させることが可能な元素と、その適正な含有量について鋭意検討した。その結果、適量のTiの添加が有効であることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、質量%でTi:9.0%以下含有し、残部はNi及び不純物でなる冷陰極放電管電極用合金である。
好ましくは、Tiを質量%で0.5〜8.0%含有し、残部はNi及び不純物でなる冷陰極放電管電極用合金である。
更に好ましくは、Tiを質量%で5.0〜8.0%含有し、残部はNi及び不純物でなる冷陰極放電管電極用合金である。
本発明の電極用合金は、耐スパッタ性を大幅に向上させることが可能なため、冷陰極放電管の寿命が向上するという効果を奏するものである。
本発明の重要な特徴は、耐スパッタ性を飛躍的に向上できる合金組成にある。以下に本発明の電極用合金における化学成分の規定理由を述べる。なお、特に記載のない限り質量%として記す。
Ti:9.0%以下
Tiは、Niと合金化することによって耐スパッタ性を向上させる本発明の重要な元素であり、必須で含有する。
本発明において、Tiを9.0%以下としたのは、Tiを9.0%を超えて含有すると、脆性の金属間化合物(TiNi)の生成が著しくなり、合金の硬さがビッカース硬さで300を超え、塑性加工性が劣化するためである。
電極は、薄板形状の素材を深絞り加工等の冷間での塑性加工によってカップ形状に成形するため、脆性の金属間化合物が過度に析出すると、カップ形状への加工が困難となる。そのため、Tiの上限を9.0%とした。
なお、金属間化合物の形成を抑制しつつ、優れた耐スパッタ性を得るための望ましい上限は8.0%である。上限を8.0%とすると、焼鈍によってビッカース硬さを200以下まで確実に低下させることが容易となり、加工性とスパッタ性を両立できる範囲となる。
また、Ti含有量の下限については、特に限定しないが、Ti含有量が少なくなりすぎると、純Niの耐スパッタ性と同等程度になる。Tiを添加したときの耐スパッタ性向上の効果を確実に得るための好ましい下限は0.1%であり、0.5%を下限とすると、純Niのスパッタ性よりも5%程度改善され、より好ましい。更に好ましくは1.0%、また更に好ましくは3.0%であり、4.0%以上であれば耐スパッタ性の向上が顕著となり、5.0%以上となると、本発明者による特許文献1に記載の合金よりも耐スパッタ性を向上させることが容易となり、特に好ましい。
本発明の電極用合金において、Niは電極としての基本的な電気特性を得て、且つ優れた加工性を確保するために必要な必須元素であり、上記のTi以外は実質的にNiである。但し、当然のことながら不純物は含まれる。
なお、残部はできるだけ不純物含有量が少ないことが望まれるが、電極用合金の耐スパッタ性と塑性加工性に悪影響を与えない範囲として、それぞれ、以下に示す範囲であれば含有しても差し支えない。
C≦0.10%、Mn≦0.50%、P≦0.05%、S≦0.05%
本発明の電極用合金では、上記の構成により、耐スパッタ性に優れた従来のNi−Nb−Mo合金より優れた耐スパッタ性を確保することができるので長寿命が得られるという効果に加え、脆性の金属間化合物が析出しない範囲でTiを含有することでカップ形状の電極への塑性加工が容易であるという効果をも有し、冷陰極放電管の電極用合金として好適である。
真空溶解炉により、表1に示す化学成分を有する電極用合金と、電極用純Niを各10kgずつ作製した。
表1のNo.1〜No.6は本発明の電極用合金であり、No.11及びNo.12はTi含有量が本発明の範囲を超えた比較合金である。一方、No.21は比較例の純Niであり、No.22は特許文献1に開示される電極用Ni−Nb−Mo合金に相当する。
Figure 2009161852
表1に示すインゴットを1100℃に加熱して熱間鍛造を行い、厚さ20mmの板材を得た。No.12に関しては、熱間鍛造中に素材に割れが入り加工が困難となったため、これ以上の評価を行わなかった。熱間鍛造が可能であった素材は、厚さ20mmの板材からワイヤーカットにより厚さ1mmの板材を得た。ワイヤーカット中に生じた酸化スケールを#500研磨により除去した。
これらの板材に冷間圧延と800℃での焼鈍を繰り返し、厚さ0.2mmの薄板材を得た。最終工程では圧下率80%の冷間圧延後、800℃に保持した水素雰囲気炉内で30分間の焼鈍を行った後、冷却した。この時の硬さを測定した。結果を表2に示す。
硬さは低い方が冷間加工性に優れ、300HV以下であれば冷陰極管製造時の冷間加工が容易である。
Figure 2009161852
作製した薄板材に対して耐スパッタ性評価を行った。
厚さ0.2mmの薄板材より、耐スパッタ性評価用の試料として縦20mm×横20mm×厚さ0.2mmの耐スパッタ性評価用試験片を作製した。これらの耐スパッタ性評価用試験片をスパッタ装置の真空チャンバー内に設置し、Ar圧力4×10−3Torr、投入電力200Wの条件で8時間、連続スパッタした後、チャンバー内から耐スパッタ性評価用試験片を取り出し、スパッタによる薄板材の消耗量(重量変化)を測定した。
スパッタ率(スパッタ率の値が小さい程、スパッタによる消耗が少なく、耐スパッタ性が優れていることを意味する。)の結果を表3に示す。
Figure 2009161852
従来から使用されている純Ni(No.21)の消耗量を基準(100%)とした時、本発明No.6のスパッタ率は81%であった。これは本発明者が提案したNi−Nb−Mo合金(比較例No.22)の83%と比較しても優れた耐スパッタ性であった。
以上の実施例から、本発明の電極用合金は極めて優れた耐スパッタ性を確保していることが分かり、冷陰極放電管の電極用合金として適していることが示された。
本発明の合金と、従来から使用されている純Ni(No.21)について、電子が電極から放出される際の仕事関数(値が小さい程、電子放出が起こり易いことを意味する。)を、大気中光電子分光法を用いて測定した。仕事関数測定結果を表4に示す。
Figure 2009161852
従来から使用されている純Ni(No.21)の仕事関数より、本発明の合金であるNo.4〜No.6は低い仕事関数であり、電子放出特性に優れていることが確認できた。表3の結果より、電子放出特性の改善にはTiの含有量が多いほど効果があることが分かる。
以上の結果から、本発明の電極用合金で成る電極は、これまで主に使用されてきた純Ni製の電極と比較して、電子放出特性の観点からも実用に供し得ることが確認された。
本発明の電極用合金は、耐スパッタ性に優れているため、数年以上の長期間に渡って使用される冷陰極放電管の電極用合金として適用できる。例えば、液晶表示装置のバックライト用光源として使用される冷陰極放電管の電極用合金に好適である。

Claims (3)

  1. Tiを質量%で9.0%以下含有し、残部はNi及び不純物でなることを特徴とする冷陰極放電管電極用合金。
  2. Tiを質量%で0.5〜8.0%含有し、残部はNi及び不純物でなることを特徴とする請求項1に記載の冷陰極放電管電極用合金。
  3. Tiを質量%で5.0〜8.0%含有し、残部はNi及び不純物でなることを特徴とする請求項1または2に記載の冷陰極放電管電極用合金。
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