JP2007029903A - 砒素吸着剤の製造方法及び砒素吸着剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】大きな砒素吸着能を有し、安定した処理が行えると共に長期運転が可能な砒素吸着剤の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の砒素吸着剤の製造方法は、活性炭に鉄化合物溶液及びアルミニウム化合物溶液を混合し所定時間攪拌する工程と、過剰の溶液を除去する工程と、アルカリ溶液を添加する工程とを有することを特徴とし、好ましい態様としてはアルカリ溶液を添加する工程が、前記活性炭を水没する工程と、アルカリ溶液を添加して鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物を生成する工程、水中に鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物を含むスラリーからなる上層と活性炭に鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物が吸着してなる下層を形成する工程と、上層のスラリーを除去する工程を含むことであり、他の好ましい態様としては上層のスラリーを除去する工程後に、下層の活性炭を水で洗浄し過剰の鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物を除去する工程を含むことである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、砒素吸着剤の製造方法及び砒素吸着剤に関し、詳しくは大きな砒素吸着能を有し、安定した処理が行えると共に長期運転が可能な砒素吸着剤の製造方法及び砒素吸着剤に関する。
砒素含有水中の無機系砒素イオンは、V価とIII価の砒素イオンとして存在するが、砒素毒性が問題になるのはIII価の砒素イオンである。
従来、砒素イオンの除去手段には、凝集処理や吸着剤処理法が知られている。例えば、特許文献1には、活性アルミナ、二酸化マンガン又は活性炭からなる粗除去用吸着剤とセリウム系吸着剤又はジルコニウム系吸着剤を用いる方法が開示されている。この方法は2段階処理で、前段の粗除去用吸着剤である活性アルミナや二酸化マンガンは、III価の砒素イオンよりV価の砒素イオンの方が高い吸着性を有するため、III価の砒素イオンが処理水中に流出する問題がある。活性炭では、砒素吸着能が低く、安定した処理を継続的に行うことはできない問題がある。
特開平10−165948号公報
そこで、本発明は、大きな砒素吸着能を有し、安定した処理が行えると共に長期運転が可能な砒素吸着剤の製造方法及び砒素吸着剤を提供することを課題とする。
本発明の他の課題は以下の記載によって明らかとなる。
本発明の上記課題は、以下の各発明によって解決される。
(請求項1)
活性炭に鉄化合物溶液及びアルミニウム化合物溶液を混合し所定時間攪拌する工程と、
過剰の溶液を除去する工程と、
アルカリ溶液を添加する工程とを有することを特徴とする砒素吸着剤の製造方法。
(請求項2)
アルカリ溶液を添加する工程が、前記活性炭を水没する工程と、アルカリ溶液を添加して鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物を生成する工程と、水中に鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物を含むスラリーからなる上層と活性炭に鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物が吸着してなる下層を形成する工程と、上層のスラリーを除去する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の砒素吸着剤の製造方法。
(請求項3)
上層のスラリーを除去する工程後に、下層の活性炭を水で洗浄し過剰の鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物を除去する工程を含むことを特徴とする請求項2記載の砒素吸着剤の製造方法。
(請求項4)
下層の活性炭を水で洗浄する際に、洗浄水のpH、Fe濃度及びAl濃度が水道水基準値以下になるまで洗浄することを特徴とする請求項3記載の砒素吸着剤の製造方法。
(請求項5)
活性炭に鉄水酸化物及びアルミニウム水酸化物を担持させてなることを特徴とする砒素吸着剤。
本発明によれば、大きな砒素吸着能を有し、安定した処理が行えると共に長期運転が可能になり、また砒素処理適正pHの範囲が広いためpH調整がほとんど不要で、使用薬剤量を大幅に減少でき、さらに砒素以外の共存物質の影響を受けず、飲料水基準値以下の処理が可能であるため、飲料水への利用が期待できる効果がある。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る砒素吸着剤の製造方法は、活性炭に鉄化合物溶液及びアルミニウム化合物溶液を混合し、所定時間攪拌する工程(第1の工程)と、過剰の溶液を除去する工程(第2の工程)と、アルカリ溶液を添加する工程(第3の工程)を有する。
(第1の工程)
活性炭は、ヤシ殻、木材、木炭、石炭などを原料とし、例えば焼成後、賦活(例えば薬品賦活、水蒸気賦活等)することにより得られる。一般に、活性炭の賦活により、活性炭に細孔を設け、比表面積を大きくし、活性炭の吸着性能を上昇させることができる。
本発明において、活性炭の原料は鉄水酸化物やアルミニウム水酸化物を担持させる上で、木炭、石炭などの石炭系のものが好ましい。
活性炭は、粒状物や破砕物のいずれでも好ましく用いることができ、5〜50メッシュ程度の粒度のものを用いることが好ましい。
鉄化合物としては、Fe(II)イオンやFe(III)イオンとなりえる化合物であればいずれでもよいが、Fe(II)イオンの場合には酸化剤や空気酸化などによって酸化し、Fe(III)イオンに酸化する必要がある。
Fe(II)イオンやFe(III)イオンとなりえる化合物は、鉄の酸化物(単純な酸化物以外に複合酸化物でもよい)、塩化物、硫化物、フッ化物、硫酸塩や硝酸塩などの各種塩などを用いることができる。代表的には、Fe、FeCl、Fe(SO)が挙げられる。中でもFeClが好ましい。
アルミニウム化合物としては、Al(III)イオンとなりえる化合物であればいずれでもよい。
Al(III)イオンとなりえる化合物は、Alの酸化物、塩化物、硫化物、フッ化物、硫酸塩や硝酸塩などの各種塩などを用いることができる。代表的には、Al、AlCl、Al(SO)が挙げられる。中でもAlClが好ましい。
活性炭に鉄化合物溶液及びアルミニウム化合物溶液を混合する手段は格別限定されないが、混合槽に活性炭と鉄化合物溶液及びアルミニウム化合物溶液を導入して混合する。導入に際して、活性炭と鉄化合物溶液及びアルミニウム化合物溶液を同時に導入してもよいが、活性炭を先に入れておいてその後鉄化合物溶液及びアルミニウム化合物溶液を添加する手法が好ましい。
上記混合物を所定時間攪拌する。攪拌手段としては、振とう機による攪拌、ミキサーによる攪拌、空気攪拌などいずれでもよい。攪拌時間は16〜24時間の範囲が好ましい。16時間未満では攪拌が不十分であり、24時間を越えても攪拌効果の向上が得られない。
(第2の工程)
混合槽から過剰の溶液を除去するには、まず攪拌を止めて固液分離する。活性炭の層の上部の溶液を、例えばポンプあるいはサイホンなどによって取り除く。この除去した溶液は再度使用するために保存する。この状態で、残った活性炭の細孔や表面には鉄化合物及びアルミニウム化合物が付着又は吸着している。
(第3の工程)
アルカリ溶液を添加する工程は、前記活性炭を水没する工程と、アルカリ溶液を添加して鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物を生成する工程と、水中に鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物を含むスラリーからなる上層と活性炭に鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物が吸着してなる下層を形成する工程と、上層のスラリーを除去する工程を含むことが好ましい。
活性炭を水没する工程では、活性炭の層の上部の溶液が除去された状態で、水(例えば水道水)を活性炭が十分浸る程度に供給する。水を供給後しばらく放置すると活性炭は水没する。
アルカリ溶液を添加して鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物を生成する工程では、例えば苛性ソーダなどのアルカリを添加して以下の反応を起こさせて鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物を生成する。
Fe3+ + 3OH = Fe(OH) ↓ (1)
Al3+ + 3OH = Al(OH) ↓ (2)
Fe(II)イオンを用いた場合には、アルカリ溶液を添加する前に、あるいは添加と同時に例えば空気酸化などを行えば上記の反応(1)を起こさせることができる。
上記の反応が起こると、上記の水酸化物は活性炭層と上層のいずれにも存在しており、活性炭層の活性炭の細孔や表面には鉄水酸化物及びアルミニウム水酸化物が付着又は吸着している。上層は鉄水酸化物及びアルミニウム水酸化物のスラリーが形成されている。
この工程で苛性ソーダなどのアルカリを添加してpHを上げていく場合に、アルカリをゆっくり添加して目標pHになるまでゆっくり上昇させることが好ましい。その理由は、活性炭細孔内の鉄化合物及びアルミニウム化合物を完全に鉄水酸化物及びアルミニウム水酸化物に転化させるためである。
添加速度は10〜30分の範囲が好ましく、より好ましくは15〜25分の範囲である。
目標pHは9.5〜10.5の範囲であり、FeClとAlClを用いた場合には約10である。
次いで、上層のスラリー層を除去して活性炭層を残す。スラリー層を除去する手段は格別限定されない。
次いで、上層のスラリーを除去する工程後に、下層の活性炭を水で洗浄し過剰の鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物を除去する。
下層の活性炭を水で洗浄する際に、洗浄水のpH、Fe濃度及びAl濃度が水道水基準値以下になるまで洗浄することが好ましい。
洗浄後安定化させるためにしばらく放置する。かかる安定化によって、活性炭と鉄及びアルミニウム水酸化物の吸着が確実強固になる。
本発明の製法によって得られた砒素吸着剤は、活性炭に鉄水酸化物及びアルミニウム水酸化物を担持させてなるものであり、一部が酸化されて鉄酸化物やアルミ酸化物になっている場合も本発明の範囲に含む。
以下、実施例により本発明の効果を例証する。
実施例1
(砒素吸着剤の製造)
活性炭として市販品(キャタラー社製「DSW−3 8−32」を使用し、活性炭1g当り、2mLの1M FeCl・6HO及び2mLの1M AlCl・6HO溶液を混合した。
次いで、この混合物を振とう機で24時間攪拌した。
その後、過剰の溶液を活性炭から流出した。
次に、活性炭を水道水で水没させ、10NのNaOHをゆっくりと添加し、スラリーのpHを10程度にする。
最後に、活性炭を水道水で洗浄し、過剰の水酸化物を除去した。
洗浄水のpH、Fe濃度、Al濃度が水道法基準値以下になるまで洗浄した。
以上のようにして砒素吸着剤を得た。
実施例2
(砒素除去の適正pH)
模擬水(As(III)、As(V)それぞれ20mg−As/L)を硫酸および水酸化ナトリウムを用いて、pH2〜12に調整し、回分式吸着試験を行った。
結果を図1に示す。
図1よりpH4〜8の範囲ではAs(III)、As(V)ともに砒素吸着能が認められるが、強アルカリ性になると、砒素吸着能が低下する。また強酸性になると、FeおよびAlの溶出が起こる。したがって、砒素除去の適正なpHは中性付近であることがわかる。
実施例3
(平衡吸着試験)
模擬水(As(III)、As(V)それぞれ20mg−As/L)をpH7に調整し、吸着剤の量を変化し、回分式吸着試験を行った。
結果を図2示す。
また実測値がFreundlichの吸着等温線に従うと仮定した場合の近似式を併記した。
As(III) q=1.588×c0.439
As(V) q=1.34×c0.510
q:平衡吸着量(mg/g)
c:平衡濃度(mg/L)
上式より、As(III)、As(V)の除去に対しての差はほとんどなく、広い濃度範囲で高い吸着能が期待できる。
実施例4
(共存陰イオンの影響)
As(V)20mg−As/L溶液に、他の共存イオン(PO 3−、F、B(OH) 、SO 2−、Cl、HCO 、NO )1種を100mg/Lとなるように添加し、回分式吸着試験を行った。
結果を図3示す。
図3より、PO 3−が原水中に含まれていると、吸着能力が落ちる可能性がある。このためリン酸イオン除去手段を併用することが好ましい。
実施例5
(連続通水試験)
カラムに実施例1で製造された砒素吸着剤を充填し、マイクロチューブポンプを用いて、As(V)5mg−As/L及び0.5mg−As/Lに調製した原水をカラムに下向流方式で連続通水した。
カラム出口で砒素濃度の経時変化を測定し、砒素吸着能力の確認を行った。
結果を図4及び図5に示す。
高濃度汚染水の場合は、図4より水道法基準を破過点とすると、破過するまでの砒素理論吸着量は5.13mg/gである。
また低濃度汚染水の場合は、図5より水道法基準を破過点とすると、破過するまでの砒素理論吸着量は2.22mg/gである。
砒素除去の適正pH範囲を示すグラフ 平衡吸着等温線を示すグラフ 共存物質の影響を示すグラフ 高濃度連続通水実験結果を示すグラフ 低濃度連続通水実験結果を示すグラフ

Claims (5)

  1. 活性炭に鉄化合物溶液及びアルミニウム化合物溶液を混合し所定時間攪拌する工程と、
    過剰の溶液を除去する工程と、
    アルカリ溶液を添加する工程とを有することを特徴とする砒素吸着剤の製造方法。
  2. アルカリ溶液を添加する工程が、前記活性炭を水没する工程と、アルカリ溶液を添加して鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物を生成する工程と、水中に鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物を含むスラリーからなる上層と活性炭に鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物が吸着してなる下層を形成する工程と、上層のスラリーを除去する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の砒素吸着剤の製造方法。
  3. 上層のスラリーを除去する工程後に、下層の活性炭を水で洗浄し過剰の鉄水酸化物とアルミニウム水酸化物を除去する工程を含むことを特徴とする請求項2記載の砒素吸着剤の製造方法。
  4. 下層の活性炭を水で洗浄する際に、洗浄水のpH、Fe濃度及びAl濃度が水道水基準値以下になるまで洗浄することを特徴とする請求項3記載の砒素吸着剤の製造方法。
  5. 活性炭に鉄水酸化物及びアルミニウム水酸化物を担持させてなることを特徴とする砒素吸着剤。

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