JP2007018912A - 加熱体および加熱装置 - Google Patents

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聡 西田
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祐輔 中園
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将史 小俣
Eiji Uekawa
英治 植川
Kan Takeda
敢 竹田
Noriyuki Ito
紀之 伊藤
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Abstract

【課題】導体層の抵抗を小さくしつつ、発熱領域を広く採れる加熱体の提供。
【解決手段】細長い基板15Aの基板面上に短手方向に離間させて長手方向に沿って形成した2本の導体層15Cを有する。さらに、前記2本の導体層上および前記導体層間に形成した絶縁層15Eと、前記絶縁層上に形成した発熱体層15Bと、前記発熱体層と前記2本の導体層とを前記基板の短手方向における一端側と他端側で前記基板の厚み方向に導通させる導通経路Cと、を有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、被加熱材を加熱する加熱装置に用いられる加熱体、及び該加熱体を具備する加熱装置に関すものであり、特に、複写機、レーザービームプリンタ等の画像形成装置に用いて好適なものである。
例えば、電子写真複写機・プリンタ等の画像形成装置において、シート状の記録媒体に形成担時させた未定着トナー画像を永久固着画像として加熱定着させる画像加熱定着装置の1つとしてフィルム加熱方式の装置が知られている(特許文献1〜4)。
このフィルム加熱方式の画像加熱定着装置は、可撓性の定着フィルム(以下、フィルムと略記する)と、フィルムを加熱する加熱体と、フィルムを挟んで加熱体と定着ニップ部(以下、ニップ部と略記する)を形成する加圧ローラと、を有している。そして未定着トナー画像を形成担持した記録媒体をニップ部で挟持搬送し、その搬送過程で未定着トナー画像にフィルムを介した加熱体から熱を与えることにより未定着トナー画像を記録媒体に熱定着させるものである。
このフィルム加熱方式の画像加熱定着装置によれば、加熱体としてセラミックヒータ(以下、ヒータと略記する)を、フィルムとして低熱容量の耐熱樹脂製フィルムや金属製フィルムなどを用いてオンデマンドタイプの装置を構成することが出来る。すなわち、画像形成装置の画像形成実行時のみ熱源としてのヒータに通電してフィルムを所定の定着温度(目標温度)に加熱させた状態にすればよい。したがって、画像形成装置の電源オンから画像形成実行可能状態までの待ち時間が短く(クイックスタート性)、スタンバイ時の消費電力も大幅に小さくできる(省電力)などの利点がある。
ヒータの一例を図23に示す。ヒータ15は、細長いヒータ基板(以下、基板と略記する)15Aの長手方向両側端部にヒータ給電用の電極部23を有している。そしてこれらの電極部23を基板15Aの長手方向に沿って接続するように基板上に抵抗発熱体(以下、発熱体と略記する)15Bが形成されている。
ヒータの他の例を図24に示す。図23のヒータと同じ機能を有する部材・部分には同一符号を付す。
ヒータ15は、細長い基板15Aの長手方向において一方の端部側に2つのヒータ給電用の電極部23を、他方の端部側に共通電極部23aをそれぞれ有している。発熱体15Bは同等の抵抗値で電極部23と共通電極部23aの間に往復して配置されている。
上記ヒータを具備するフィルム加熱方式の画像加熱定着装置においては、比較的小さなサイズの記録媒体(小サイズ紙)を用いて未定着トナー画像の加熱定着動作を行った場合に、フィルムの放熱量に差が生じる。つまり、フィルムに記録媒体が接触する部分では記録媒体に熱を奪われるが、記録媒体が接触しない部分では記録媒体に熱を奪われることはない。このためニップ部において、記録媒体が通過する領域(以下、通紙部と記す)の温度よりも、記録媒体が通過しない領域(以下、非通紙部と記す)の温度が高くなる、所謂、非通紙部昇温と呼ばれている現象が起こる。
非通紙部昇温が生じると、ヒータ長手方向に沿うニップ内で温度ムラが生じたり、非通紙部において加圧ローラの熱膨張が高くなったりする。すると、ニップ内での温度ムラによる画像不良や、非通紙部における加圧ローラの熱膨張などによる紙しわ、搬送不良などを引き起こす。さらには非通紙部に対応するフィルム、加圧ローラ部分が熱劣化し、ひどくなると破壊に至る場合がある。
この問題を解決するために、特許文献5には図25に示すようなヒータ15が提案されている。
ヒータ15は、発熱体15BにPTC特性の材料を用い、小サイズ通紙により非通紙部領域の温度が上がった場合、発熱体の非通紙部の抵抗値が部分的に上昇する事により、非通紙部昇温を軽減するものである。
ヒータ15は、基板15A上に該基板の長手方向に沿って導体層である2本の導体パターン24を有し、この2本の導体パターンの間に発熱体15Bを形成して2本の導体パターンと導通をとっている。つまり2本の導体パターン24は発熱体15Bを介して接続されている。2本の導体パターン24のそれぞれに設けられた電極部23には商用電源31からトライアック32を介して給電される。これにより2本の導体パターン24は発熱体15Bを介して基板長手方向と直交する基板幅方向へ通電する。ここで、基板幅方向は記録媒体の搬送方向と平行である。以後、このような通電形態を搬送方向通電パターンと称する。
この搬送方向通電パターン方式のヒータ15によれば、発熱体15BにPTC特性を持たせる事で、発熱体において非通紙部と対応する発熱部分の温度が上昇し、その部分の抵抗値が部分的に上昇すると、抵抗が高い部分での電流量は減少する。よって非通紙部での発熱体15Bの発熱量を抑える事ができる。
特許文献6には図26に示すようなヒータ15が提案されている。このヒータ15の発熱体15Bも搬送方向通電パターンの一形態である(以後、分割方式と称する)。
ヒータ15は、基板15A上に該基板の長手方向に沿って2本の導体パターン24を有し、この2本の導体パターンの間に該導体に沿って発熱体15Bを設けている。そして2本の導体パターン24と発熱体15Bとを複数本の電極27で接続している。発熱体15Bは、導体パターン24と発熱体15Bを接続する電極27によって各発熱セグメントに分割される。商用電源31からトライアック32を介して2本の導体パターン24のそれぞれに導通されている電極部23に給電すると、導体パターンと発熱体15Bには矢示のように電流が流れる。このとき発熱体15Bに流れる電流の方向は基板長手方向である。
しかし、上記ヒータ15は、図25に示される搬送方向通電パターンと同様に、基板長手方向に延びる2本の導体パターン24間に発熱体15Bを設けた構成である。このため発熱体15BにPTC特性を持たせる事で、同様の非通紙部昇温抑制効果が得られる。すなわち、発熱体15Bにおいて非通紙部と対応する発熱部分の発熱セグメントでは、抵抗値が上昇し、電流量が減少して、非通紙部での発熱セグメントの発熱量を抑える事ができる。
図25および図26に示される搬送方向通電パターン方式のヒータ15において、図25の搬送方向通電パターンは、基板長手方向に延びる2本の導体パターン24の間に無限数の並列回路を成す構成である。これに対して、図26の分割方式の搬送方向通電パターンは、基板長手方向に延びる2本の導体パターン24の間に有限数の並列回路を成す構成である。分割方式の搬送方向通電パターンにおいては、発熱量の増減は各発熱セグメント単位で起こる為、発熱体15Bの分割が細かく、各発熱セグメントが細かいほど、多様な紙サイズに対応する事ができる。
特開昭63−313182号公報 特開平2−157878号公報 特開平4−44075号公報 特開平4−204980号公報 特開平5−19652号公報 特開平7−160131号公報
従来は、当時として望まれる発熱の均一性、定着性能および非通紙部昇温抑制効果を十分に満たすものであった。しかし、近年求められるようになった発熱の均一性、定着性能および非通紙部昇温抑制効果を満たすには、ヒータ15の総抵抗を抑えつつ、導体パターン24の抵抗を小さくすることが求められるようになった。
上記従来のヒータにおける搬送方向通電パターンを構成する基本的構造は、基板長手方向において発熱体15Bと導体パターン24を同一平面上に並べて形成する並列パターン構造である。そこで、総抵抗を抑えつつ、導体パターン24の抵抗を下げようとして、基板幅方向において導体の面積や太さを変更すると、発熱体15Bの幅が狭くなったり、ヒータ表面に凹凸が生じたりし、定着性能に支障を来たす場合がある。また、導体パターン24と発熱体15Bを共に広く確保しようとすると、基板15Aを拡大する必要があり、ヒータの大型化を招く。
本発明の目的は、導体層の抵抗を小さくしつつ、発熱領域を広く採れる加熱体を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記ヒータを具備する加熱装置を提供することにある。
本発明に係る加熱体の代表的な構成は、細長い基板と、前記基板の基板面上に前記基板の短手方向に離間させて前記基板の長手方向に沿って形成した2本の導体層と、を有し、被加熱材を加熱する加熱装置に用いられる加熱体において、前記2本の導体層上および前記導体層間に形成した絶縁層と、前記絶縁層上に形成した発熱体層と、前記発熱体層と前記2本の導体層とを前記基板の短手方向における一端側と他端側で前記基板の厚み方向に導通させる導通経路と、を有することを特徴とする加熱体、である。
本発明によれば、発熱体層と2本の導体層とを基板の短手方向における一端側と他端側で導通経路を介して基板の厚み方向に導通できる。これにより基板の短手方向において導体層や発熱体層に関し、幅や断面積を設計する自由度を向上させることができる。よって、導体層の抵抗を小さくしつつ、発熱体層の発熱領域を広く採ることが可能となる。
以下、本発明を図面に基づいて詳しく説明する。
(1)画像形成装置例
図1は、本発明に係る加熱体を具備させた加熱装置を画像加熱定着装置として搭載できる画像形成装置の一例の全体構成図である。この画像形成装置は、電子写真プロセス利用のレーザビームプリンタ(以下、プリンタと略称する)である。
プリンタ1において、プリンタ本体1Aに設けられたスタートボタン(図示せず)が押されることで像担持体(潜像担持体)としてのドラム状の電子写真感光体(以下、感光体と略記する)2が矢印K1方向に規定周速度にて回転駆動される。
帯電手段としての一次帯電機構8は、不図示のバイアス電源から帯電バイアスが印加されることにより回転中の感光体2の外周面を所定の極性・電位に一様に帯電する。
レーザスキャナユニット(以下、スキャナと略記する)5は、プリンタ本体1Aの外部に設けられたホストコンピュータ等の画像情報提供装置(図示せず)から提供された画像情報に応じた静電潜像を回転感光体2の帯電面に形成する。すなわち、画像情報の時系列的電気デジタル画素信号に応じたレーザLaにより感光体2の帯電面を走査し露光することによって画像情報に応じた静電潜像が形成される。
その静電潜像が現像手段としての現像装置3によりトナー像として反転現像される。現像装置3は、現像剤としてのトナーと、現像スリーブなどを有し、不図示のバイアス電源から現像バイアスが印加され、静電潜像の反転現像を行う。
一方、所定のタイミングにて駆動された給送ローラ12により給送カセット11から被加熱材としての記録媒体Pが一枚分離給送される。給送カセット11には複数枚の記録媒体Pが積載収容してある。給送カセット11はプリンタ本体1Aにて取り外し自在に支持されている。
給送カセット11から給送された記録媒体Pは、レジストローラ対12aにより所定の制御タイミングにて感光体2とローラ状の回転自在な転写体6との間に形成された転写ニップ部へと給送され、転写ニップ部を挟持搬送されていく。この挟持搬送過程において感光体2側のトナー画像が転写体6により記録媒体P側に順次に転写される。転写体6は不図示のバイアス電源から転写バイアスが印加されることによりトナー像を記録媒体P上へ静電転写する。
記録媒体分離後の感光体2の外周面はクリーニング手段としてのクリーニングブレード(図示せず)によりクリーニングされて転写残トナーや紙粉等の残留汚染物の除去を受けて清掃される。清掃後の感光体2の外周面は繰り返して画像形成に供される。
転写ニップ部を通過した記録媒体Pは、画像加熱定着装置(以下、定着装置と略記する)7により未定着トナー画像の定着処理が施された後に、定着排出部10を経由してプリンタ排出部13によりプリンタ本体1Aの上面に設けられた排出トレイ14上に排出される。
4はプロセスカートリッジ(以下、カートリッジと略記する)である。カートリッジ4は、感光体2と、感光体に作用するプロセス手段としての現像装置3と、一次帯電機構8と、クリーニングブレードとを一体的にカートリッジ化している。そしてカートリッジ4はプリンタ本体1Aに取り外し可能に装着されている。本実施例では、プリンタ本体1Aに開閉可能に設けた開閉カバー9を開いてカートリッジ4の取り外し及び取り付け操作を行う。このカートリッジ方式によれば、装置のメンテナンスをサービスマンによらずユーザー自身で行うことができ、格段に操作性を向上させることができる。
(2)定着装置7
図2は定着装置7の要部の横断側面構成模型図である。この定着装置7は、フィルム加熱方式、加圧ローラ駆動方式の装置である。なお、従来のヒータと機能的に共通する部材・部分には同一符号を付している。
15は加熱体(加熱源)たるセラミックヒータ(以下、ヒータと略記する)である。このヒータ15は、記録媒体Pの搬送路面において記録媒体搬送方向FPに交差する方向を長手とする横長・薄肉で、全体に低熱容量のものである。
19は耐熱性・断熱性のヒータホルダ(以下、ホルダと略記する)である。このホルダ19は横断面略半円弧状樋型で、記録媒体搬送方向FPに交差する方向を長手とする横長の剛性部材である。ホルダ19の材質は例えばフェノール系の熱硬化性樹脂製である。このホルダ19の下面の略中央部の位置に長手に沿って形成させたヒータ嵌め込み溝部19a内に上記のヒータ15を嵌め込んで固定支持させている。
16は可撓性部材としての円筒状またはエンドレスベルト状の定着フィルム(以下、フィルムと略記する)である。このフィルム16は、低熱容量化を図ることにより後述の定着ニップ部N等の昇温率を向上するために、次のような層構成とされている。すなわち、ポリイミドを主成分とする無端帯状体の外周面にPTFEを主成分とする無端帯状体を被覆するという二層構造が採用されている。そしてフィルム16の全層厚は100μm以下である。
フィルム16は、上記の二層構造に限られるものではなく、低熱容量化を図る他の有効な構造として、例えば、耐熱素材たるPTFE、PFA又はFEP等を主成分とする無端帯状体からなる単層構造でもよい。或いは、ポリアミドイミド、PEEK、PES又はPPS等を主成分とする無端帯状体の外周面にPFA又はFEP等を主成分とする無端帯状体を被覆するという二層構造でもよい。また金属層をベースとする単層構造、或いは、複合層構造のものにすることもできる。又、フィルム16の全層厚は低熱容量化を効率良く図るために、20μm以上50μm以下が好ましい。
上記のフィルム16は、ヒータ15を取り付けたホルダ19に対してルーズに外嵌させてある。すなわち、フィルム16は、その内周長がホルダ19の外周長より所定長、例えば3mm程度長く採られ、以てホルダに無張力にて外嵌されている。
17は加圧部材としての加圧ローラである。この加圧ローラ17は、アルミニウム等の金属製の円柱状若しくは略円柱状の芯金17Aと、その外周面に被覆した離型性の良いシリコーンゴム等を主成分とする弾性層17Bとから成る弾性ローラである。
この加圧ローラ17は芯金17Aの両端部を不図示の装置側板間に回転自由に軸受支持させてある。この加圧ローラ17の上側にフィルム16をヒータ15側を下向にして並行に配列し、ホルダ19の両端部側を付勢ばね(図示せず)により加圧ローラの弾性層17Bの弾性に抗して所定の押圧力で押圧状態にする。こうしてヒータ15と加圧ローラ17とをフィルム16を挟んで圧接させ、加圧ローラの弾性層17Bを弾性変形させることで加圧ローラとフィルムとの間に所定幅の定着ニップ部(以下、ニップ部と略記する)Nを形成させている。
加圧ローラ17の芯金17Aの一端部に設けられたドライブギア(図示せず)に回転駆動系Mの回転駆動力が伝達されることで加圧ローラは矢示の反時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ17の回転駆動により、ニップ部Nにおいて加圧ローラとフィルム16の外面との摩擦力でフィルムに回転力が作用し、フィルムはその内面がニップ部においてヒータ15の下面に密着して摺動しながら矢示の時計方向に従動回転する。すなわちフィルム16は加圧ローラ17の周速度にほぼ対応した周速度をもってホルダ19の外回りを従動回転する。ホルダ19は従動回転するフィルム16のガイド部材の役目もしている。
フィルム16の回転駆動がなされ、かつヒータ15が通電により所定の定着温度(目標温度)に昇温している状態において、未定着トナー画像Tを形成担持させた記録媒体Pがニップ部Nのフィルム16と加圧ローラ17との間に導入される。その記録媒体Pはニップ部Nにおいてフィルム16と加圧ローラ17とにより挟持搬送される。その搬送過程でヒータ15の熱エネルギーがフィルム16を介して記録媒体Pに付与されて未定着トナー画像Tが記録媒体面に加熱溶融定着される。記録媒体Pはニップ部Nを通過してフィルム16の面から分離されて排出されていく。
フィルム16はヒータ15と密着摺動するため、摩耗を防いだり摺動抵抗を低減するためにフィルム内面にはグリス等の潤滑剤が塗布してある。
(3)セラミックヒータ15
図3に、本実施例に係るヒータ15の一例の構成模型図、断面図、および通電制御回路の一例のブロック図を示す。図4にヒータ15の構成の一例を層別に図示する。
このヒータ15は、大きく分けて、次の1)〜5)から構成される。
1)セラミック基板15A
記録媒体Pの搬送路面において記録媒体搬送方向FPと直交する方向を長手とする横長のアルミナ・窒化アルミニウム・炭化ケイ素等の高絶縁性のセラミックスでできたセラミック基板(絶縁基板)(以下、基板と略記する)15Aである(図4の(1)参照)。
2)導体層15C
上記基板15Aの表面側(ヒータ表面側)に基板長手方向に沿ってスクリーン印刷等により、例えば厚さ数十μmで形成した帯状の導体パターンである(図4の(2)参照)。導体層としての導体パターン15Cは、記録媒体搬送方向FPと平行な基板幅方向(基板短手方向)に離間させて2本設けてある。すなわち導体パターン15Cは、基板幅方向において記録媒体導入側の一端部と、記録媒体排出側の他端部にそれぞれ設けられている(図5参照)。2本の導体パターン15Cは、それぞれ、基板長手方向に延びる長手導体24と、この長手導体と導通させて基板長手方向の片側端部に設けられたヒータ給電用の電極部23と、を有している。それぞれの長手導体24と導通する電極部23は基板長手方向の一端部と他端部にそれぞれ配置してある。それぞれの長手導体24は基板幅方向において幅広に形成してあり、該長手導体の断面積が大きくなっている。このように2本の長手導体24の間隔は絶縁が確保できる範囲で狭くし、それぞれの長手導体を幅広に形成するのが望ましい。長手導体24の材料には、抵抗が低く、PTC特性が低いものが望ましい。加熱定着時にはヒータ15が達する定着温度(目標温度)下での抵抗を極力低くするのが望ましいため、例えば、抵抗の低いAgのPTC特性を比較的抑えたAg/Pt、Ag/Pd等からなる導電材料を用いる。
3)絶縁層15E
導体パターン15Cと後述の発熱体層15Bとの間に、電気的に絶縁することのできるガラスコートや樹脂コート等の絶縁層15Eを、スクリーン印刷等により、例えば厚さ数十μmの厚さで形成したものである(図4の(3)参照)。絶縁層15Eは、基板幅方向において上記2本の長手導体24がそれぞれ後述の発熱体層15Bと導通する領域Cを残してそれぞれの長手導体上と、それぞれの長手導体間とに設けられている。したがって絶縁層15Eは、それぞれの長手導体24と発熱体層15Bとを領域C以外の領域で絶縁し、かつそれぞれの長手導体24間も絶縁する。
4)発熱体層15B
絶縁層15Eの上に、例えばAg/Pdからなる、RuO、TaN、チタン酸バリウム等のPTC温度抵抗特性を持つ電気抵抗材料からなる発熱抵抗体を、スクリーン印刷等により、例えば厚さ数十μmの厚さで形成する(図4の(4)参照)。発熱体層15Bは、導体パターン15Cのそれぞれの長手導体24において絶縁層15Eがない領域Cで長手導体と導通させるように形成してある。すなわち発熱体層15Bは、基板幅方向において領域Cと対応する部分に記録媒体搬送方向と垂直な基板厚み方向でそれぞれの長手導体24と導通する導通経路を有している。基板幅方向において領域Cの幅は、それぞれの長手導体24と発熱体層15Bとの導通が確保できる範囲で狭くするのが望ましい。
5)絶縁保護層15D
発熱体層15Bの表面に、電気的に絶縁し、フィルム16との摺擦に耐えることが可能な薄層のガラスコートやフッ素樹脂コート等の絶縁保護層15Dを、例えば厚さ数十μmで形成する(図4の(5)参照)。
次に、ヒータ15の通電制御方法について説明する(図2、図3、図5参照)。図5は本実施例のヒータ15を定着装置7に適用したニップ部N付近の横断側面拡大図である。
ヒータ15は絶縁保護層15Dを設けた側が表面側であり、この絶縁保護層の面にフィルム16が摺動する。このヒータ15をホルダ19のヒータ嵌め込み溝部19a内にヒータ表面側を外側にして嵌め込んで耐熱性接着剤で接着して保持させてある。
基板15Aの裏面側には、温度検知体としてのサーミスタ18が当接させてある。
20は給電用コネクタ(以下、コネクタと略記する)である。コネクタ20は、ホルダ19に固定支持させたヒータ15のそれぞれの導体パターン15Cの電極部23に嵌着される。これにより電極部23にそれぞれ給電用コネクタ側の電気接点(図示せず)が接触状態になる。31は商用電源(AC)、32はトライアック、33は電力(通電)制御手段(CPU)である。ヒータ15は、商用電源31からトライアック32を介してそれぞれの導体パターン15Cの電極部23間に給電される。そして電極部23を介して長手導体24、および通電経路Cを通じて発熱体層15Bに通電し、発熱体層15Bの発熱で迅速急峻に昇温する。その昇温した発熱体層15Bにより基板15Aが加熱される。
基板15Aの温度はサーミスタ18により検知され、その検知温度の電気的アナログ情報がアナログデジタル変換回路(A/D変換回路)34に入力し、デジタル化されて電力制御手段33に入力する。
サーミスタ18の検知温度に応じたデジタル情報が入力される電力制御手段33は、サーミスタ18の検知温度が定着温度から所定範囲内の値になるように商用電源31からヒータ15への通電を制御するようになっている。
上記の電力制御手段33による商用電源31からヒータ15への通電制御として、商用電源から出力される交流電源の半波周期毎に商用電源からヒータ15への通電に供される位相範囲をサーミスタ18の検知温度に応じて変更する位相制御が採用されている。或いは、前記半波周期毎にサーミスタ18の検知温度に応じて商用電源31からヒータ発熱抵抗体15Bへの通電を導通又は遮断のいずれか一方に切り換えるという波数制御を採用してもよい。
本実施例のヒータ15は、細長い基板15Aの基板面上に、基板幅方向に離間させて基板長手方向に沿って形成した2本の導体パターン15Cを有している。そして2本の導体パターン15C上および導体パターン間に形成した絶縁層15Eと、この絶縁層15E上に形成した発熱体層15Bと、を有している。そして発熱体層15Bと2本導体パターン15Cとを基板幅方向における一端側と他端側で導基板厚み方向に導通させる導通経路Cを有している。すなわち、2本の導体パターン15Cと、絶縁層15Eと、発熱体層15Bの3層の積層体において、該導体パターンの長手導体24と発熱体層とを基板厚み方向で立体的に導通させて、搬送方向通電パターンを立体的に形成したことを特徴としている。
以下、本実施例におけるヒータ15と、従来の長手方向に通電するヒータに対する比較検討結果について説明する。
(非通紙部昇温に対する効果)
本実施例におけるヒータ15では、上記のようにそれぞれの長手導体24と発熱体層15Bは基板厚み方向に導通が取られているため、発熱体層には図6の矢印に示すように、基板厚み方向、および基板幅方向に電流が流れる。したがって本実施例におけるヒータ15も搬送方向通電パターンの一形態である。
背景技術で説明したように、定着装置7の長手方向(ヒータ15の基板長手方向)に対し、比較的小さなサイズの記録媒体(小サイズ紙)を用いて加熱定着動作を行った場合、非通紙部昇温と呼ばれている現象が起こる。すなわち、ニップ部Nにおいて記録媒体が通過する領域(通紙部)の温度よりも、記録媒体が通過しない領域(非通紙部)の温度が高くなる現象が起こる。
本実施例におけるヒータ15では、小サイズ紙が通紙され、非通紙部の温度が上昇した場合、発熱体層15BがPTC特性を持つ抵抗発熱体であるため、非通紙部では抵抗が上昇する。ところが、それぞれの長手導体24から基板幅方向に電流が流れる為、非通紙部などの温度が上昇する領域の発熱体層15Bへの電流が流れにくくなり、電流は該長手導体を経由し温度が比較的に低くなる通紙部の発熱体層へ流れる。その為、非通紙部では温度が上昇しづらくなり、通紙部では逆に温度が上昇しやすくなるという特性が発生する。
(実験1)
本実施例の効果を確認する為に、本実施例における搬送方向通電ヒータと、従来の長手方向通電ヒータとの比較試験を行った。
実験に使用した本実施例におけるヒータは、図3と同様な構成である。幅7.0mm、長さ250mm、厚さ1.0mmの基板15A上に、基板長手方向に沿って延びる、厚さ10μm、幅2.5mm、長さ220mmの長手導体24を0.6mmの間隔をあけて、2本設けた。そしてそれぞれの長手導体24を電極部23と導通させた。長手導体24と電極部23からなる導体パターン15Cは、基板15A上にAg/Ptペーストをスクリーン印刷によって印刷し、乾燥、焼成して形成した。2本の長手導体24上および長手導体間には、幅4.8mm、長さ220mm、厚さ20μmの絶縁層15Eを設けた。基板幅方向において長手導体24の外側0.4mmずつを露出させ、この露出部分を発熱体層15Bとの導通を可能する導通経路Cの形成領域とした。
絶縁層15Eは、絶縁ガラスペーストをスクリーン印刷し、乾燥、焼成させて形成した。
2本の長手導体24と絶縁層15Eの上に、発熱体ペーストを印刷、乾燥、焼成させて、幅5.6mm、厚さ10μmの発熱体層15Bを形成した。発熱体ペーストには、RuOなどから成る1000ppm以上の正の抵抗温度特性を持つもので、ヒータ15の総抵抗が10Ωとなるように配合調整されたものを使用した。基板幅方向において両側の幅0.4mmずつを長手導体24と導通させる導通経路Cとしているので、実効的な発熱幅は4.8mmである。
その上に、さらに摺動保護用のガラス層15Dを、厚さ50μmで設けて、セラミックヒータとした。
従来の長手方向に通電する発熱体パターンを形成したヒータとしては、図23に示すヒータ15と同様の構成である。幅7.0mm、長さ250mm、厚さ1.0mmの基板15A上に、幅4.8mm、厚さ10μmの帯状の発熱体15Bを形成した。発熱体15Bは基板長手方向の両側で電極部23と導通させている。発熱体ペーストには、Ag/Pdなどから成る1000ppm以上の正の抵抗温度特性を持つもので、ヒータ15の総抵抗が10Ωとなるように配合調節されたものを使用した。その上に、さらに摺動保護用のガラス層15Dを、厚さ50μmで設けて、セラミックヒータとした。
これらのヒータを比較として、定着器(定着装置)に組み込み、ニップ部に記録紙を通紙させた時の、ヒータの長手方向に対する非通紙部と通紙部との加圧ローラの表面温度を比較した。
条件としては、室温23度、湿度50%の環境下において、ヒータを、基板裏側に当接させたサーミスタにて170℃に温度維持するよう通電制御した定着器に、坪量80g/mのA5サイズ紙を連続10枚通紙した。そしてこの際の加圧ローラ温度の通紙部と非通紙部の温度差を測定した。加圧ローラの表面温度は、加圧ローラに耐熱性の繊維で形成されたフェルトを当接し、フェルトとローラの間に熱電対を配して測定した。定着装置の紙搬送速度は60mm/secで、記録紙の通紙間隔を190mmにし、9枚/分で通紙した場合と、通紙間隔を90mmにし、12枚/分で通紙した場合で実験した。
以下の表1に結果を示す。
従来例の構成では、9枚/分で通紙した場合の非通紙部の加圧ローラ表面温度は240℃にまで達した。加圧ローラ表面温度が240℃を超えた状態が続くと、加圧ローラ表層の離型性が低下したり、ローラゴム層が劣化する事がある。本実験における従来例のヒータを使用した画像形成装置は、本実験で使用したA5サイズ紙を9枚/分、10枚以上連続で定着処理を行う事が難しい事がわかる。一方、本実施例のヒータでは、9枚/分、10枚通紙した時点で、非通紙部の加圧ローラ表面の温度は190℃であった。従来例のヒータに対して50℃のマージンアップが図られている。
本実施例の構成では、12枚/分で、10枚連続通紙しても、加圧ローラ表面の温度は230℃であり、加圧ローラの限界温度以内であった。従来の構成に比べて、より速く、より連続して、小サイズ紙の定着処理が可能である事がわかる。
以上説明したように、本実施例におけるヒータ15では、小サイズ紙などを定着器に通紙した際の、定着器の長手方向(ヒータ長手方向)における通紙部と非通紙部の温度差を減少させる事ができる。したがって本実施例のヒータ15を使用することにより、定着装置の安全性をアップし、小サイズ紙を連続定着処理するスピードをアップする事が可能である。
(搬送方向通電の問題点)
以上述べたように、本実施例におけるヒータ15では、従来の搬送方向通電パターン方式のヒータと同様に、非通紙部昇温を緩和する事ができる。
しかし、従来の搬送方向通電パターンの発熱体15Bには、ヒータ長手方向で発熱ムラを起こしてしまうことがあった。
搬送方向通電パターンにおいて、導体の抵抗が、発熱体の抵抗にくらべて十分小さくないと、ヒータ長手方向で導体内にも電位差が生じる。その結果、給電部付近の発熱体に流れる電流量が、給電部から遠い部分の発熱体に流れる電流量よりも大きくなり、ヒータ長手方向で発熱ムラを起こしてしまう。
従来の搬送方向通電パターンでは、発熱体と導体を同一平面上に形成しており、通常、発熱体は幅広く、導体は幅狭く形成される。
導体の材料には、通常、銀などの十分抵抗の低い材料を用いられており、材料を変更して、これ以上抵抗を小さくすることも困難である。一般的に100V〜240Vである商用電源を電力源として、加熱定着に必要な電力を得る為には、ヒータの総抵抗を100Ω以下とする事が望ましく、発熱体の抵抗をあまり高くする事もできない。
その結果、従来の搬送方向通電パターンでは、導体の抵抗が、発熱体の抵抗にくらべて無視できない大きさとなり、発熱ムラが発生してしまうのである。
本実施例におけるヒータ15では、その問題も改善される。本実施例におけるヒータ15では、基板幅方向において2本の長手導体24を幅広く形成しており、該長手導体24の抵抗を小さくできる。ヒータ長手方向で長手導体内に生じる電位差は十分小さくなり、ヒータ長手方向での発熱ムラを十分小さくする事ができる。
(実験2)
本実施例におけるヒータ15の発熱分布の均一性を確認する為に、本実施例のヒータの通電試験を行った。また同時に、比較例として、平面的に搬送方向通電パターンを形成した従来のヒータの通電試験も行った。
本実施例におけるヒータ15は、実験1と同様の構成である。
また、比較例として、従来のヒータ15を図7に示す。図7は平面的に構成された搬送方向通電パターンを有するヒータ15であり、本実施例におけるヒータと同様に、基板の幅は7.0mmとし、本実施例と同じ4.8mm幅の発熱体層15Bを設けた。
基板幅方向において基板15Aの一端側と他端側には、厚さ10μm、長さ220mm、幅0.4mmの長手導体24を2本設け、それらの長手導体を電極部23と導通させた。発熱体層15Bは2本の長手導体24上および該長手導体間に厚さ10μmで形成した。発熱体ペーストには、RuOなどから成る1000ppm以上の正の抵抗温度特性を持つもので、ヒータの総抵抗が10Ωとなるよう配合調整されたものを使用した。その上に、さらに摺動保護用のガラス層15Dを、厚さ50μmで設けて、従来のセラミックヒータとした。
これらのヒータを定着装置に組み込み、実験2と同様に、ヒータ長手方向でのニップ内温度の温度差を比較した。
以下の表2にその結果を示す。
従来例におけるヒータでは、端部の温度が、中央部の温度よりも20℃も高くなった。長手導体幅を広げている本実施例におけるヒータでは、温度ムラは2℃以内と、ほぼ均一といえる状態になった。
ヒータの発熱温度ムラが大きいと、例えばトナーなどによる未定着トナー画像を担持した記録材に加熱定着する際に、画像の光沢ムラや、ホットオフセットなどの画像不良を発生させる恐れがある。
トナー像を加熱定着させる温度にムラがあると、記録材上のトナー粒子が溶融して潰れる度合いも変わり、光沢ムラとなって現れる。ホットオフセットとは、記録材上のトナーが溶融しすぎ、溶けたトナーが記録材上からフィルム上へ転移し、フィルム1周後に再び記録材に移って記録材上を汚すものである。
実際にこれらのヒータを用いた定着器に、トナー画像を担持させた記録材を通紙して、画像不良が発生するかどうか確認した。実験には、本実施例における構成のヒータを使用した。
条件としては、室温23度、湿度50%の環境下において、ヒータを、基板裏側に当接させたサーミスタにて170℃に温度維持するよう通電制御した定着装置に、次のような記録材を通紙した。すなわち、坪量64g、LTRサイズの記録材上に、全面に黒画像を形成したものと、記録材の先端より100mmにハーフトーン画像を形成したものを通紙した。そして定着された記録材上の画像を評価した。
以下の表3にその結果を示す。
従来の搬送方向通電ヒータでは、記録材端部で画像不良が発生した。本実施例におけるヒータでは、温度ムラによる画像不良は発生しなかった。
(本実施例における立体的に構成された搬送方向通電パターンの利点)
以上説明したように、本実施例におけるヒータ15を用いれば、温度ムラの少ない、画像不良のない定着装置を提供する事ができる。
従来の搬送方向通電パターンのヒータ15にあっては、本実施例のヒータ15と同じ基板幅、発熱体幅で、同じように幅広い導体24を設ける事は困難である。
従来のヒータのように平面的に構成しながら、幅広い導体24を設けた場合は、発熱体15Bの面積を小さくするか、基板15Aを大きくしなければならなくなる。また、導体24を厚くして導体の抵抗を下げようとした場合、導体だけを厚くするとヒータ表面に凸凹が生じ、記録材と発熱部の密着性が悪くなって加熱定着性能が低下する。また、導体24、発熱体15Bの厚みを上げる場合、例えばスクリーン印刷では一度に塗れる厚みが限られる為、塗工回数を増やさなければならない。
本実施例のヒータ15のように搬送方向通電パターンを立体的に構成した場合と、従来のヒータ15のように平面的に構成した場合で、実際にセラミックヒータを形成した場合、基板の幅、導体幅、発熱幅に生じる違いについて、以下、具体例をあげて比較する。
本実施例、従来例のヒータに共通する製造上の制約としては、基板側面より内側に0.7mmずつは、工程上、導体、発熱体ペーストを塗工できない余白とし、スクリーン印刷で1度に塗れる最大厚みは10μmとした。
本実施例におけるヒータ15は、幅7.0mmの基板15A上に、幅2.0mm、厚み10μmの2本の長手導体24を形成して、それらの長手導体上および該長手導体間に絶縁ガラスを2回塗工して厚さ20μmの絶縁層15Eを設けた。そして絶縁層15Eの上には発熱体層15Bを厚さ10μmで形成した。長手導体24と発熱体層15Bは幅0.4mmの領域で導通させ、長手導体の抵抗を十分に低くしながら、発熱体層の発熱幅を4.8mmとる事ができる(図8、実施例参照)。絶縁保護層たる表層ガラス15Dの形成を除くプリント工程は、導体1回、絶縁層2回、発熱体層1回の4回となる。
従来どおりの平面的な構成の搬送方向通電ヒータにおいて、導体24の幅を2.0mmとし、基板15Aの幅を本実施例と同様に7.0mmとしたヒータ15を従来例(1)とする(図8、従来例(1)参照)。
逆に、基板幅15Aを大きくし、発熱幅を実施例と同様に4.8mmとなるよう調整したヒータ15を従来例(2)とする(図8、従来例(2)参照)。
導体24の幅を小さくし、基板15Aの幅と発熱幅を実施例と同様となるよう調整したヒータ15を従来例(3)とする(図8、従来例(3)参照)。これらの従来例(1)から(3)のヒータ15において表層ガラス形成を除くプリント工程は、導体1回、発熱体1回の2回となる。
従来どおりの平面的な構成で、基板15Aの幅と発熱幅を実施例と同様にし、導体24を厚くしたヒータ(図示せず)を従来例(4)とする。
導体24と発熱体15Bの両方を厚くしたヒータ(図示せず)を従来例(5)とする。
以下の表4に以上の比較を示す。
従来例(1)では、導体パターンが形成可能な面積のうち、発熱体以外の部分が占める面積が大きくなり、発熱幅が実施例に比べて3.2mmも小さい、1.6mmしか形成できなくなる。実施例に比べて、定着性能が大幅に低くなる問題が生じる。
従来例(2)では、実施例と同様の性能が得られるが、形成しなければならない導体パターンが多く、実施例に比べて3.2mmも大きい、10.2mmの基盤幅が必要となる。ヒータが大型化し、また、ホルダ、フィルムなど周辺の部品も大型化し、定着装置全体として、大型化、コストアップする問題が生じる。
従来例(3)では、導体パターンが形成可能な面積のうち、導体パターン以外の部分が占める面積が大きくなり、導体パターンの幅を狭くしなければならない。この為、抵抗が十分低くないため、今まで説明してきたように、発熱ムラが生じる。
従来例(4)では、ヒータ表面にも40μm程度の凸凹が生じ、発熱部分と記録材が密着しなくなる為、定着性能が低下する
従来例(5)では、実施例と同等の基板幅で、同等の性能が得ることができるが、塗工回数が大幅に増加し、製造タクト、製造コストが増大する。また、狭い領域に、厚く、多数回、ペーストを塗工しようとすると、ペーストのダレなどにより、形状の精度を出すのが難しくなり、抵抗ムラなどを発生しやすくなる。
本実施例におけるヒータ15では、導体パターン15Cの幅と、発熱体層15Bの発熱幅とを両立させ、小型で、発熱ムラがなく、定着性能の高いヒータとする事ができている。
以上説明したように、本実施例におけるヒータ15は、基板長手方向に延びる2本の導体パターン15C上に絶縁層15Eを介して発熱体層15Bを設けている。そして基板幅方向における一端側と他端側に基板厚み方向で2本の導体パターン15Cと発熱体層15Bとを導通する導通経路Cを有している。このような構成とすることにより、基板幅方向において導体パターンや発熱抵抗体パターンに関し、幅や断面積を設計する自由度を向上させることができる。これにより、発熱体層15Bの面積を広くとりつつ、2本の導体パターン15Cの幅すなわち長手導体24の幅を広く取ることができる。よって、基板長手方向において発熱ムラが少なく、定着性能の高い、搬送方向通電パターンを実現する事ができ、また小サイズ通紙時における非通紙部昇温を軽減できる、セラミックヒータを実現する事ができる。
ヒータ15の他の実施例を説明する。本実施例のヒータ15を具備させる定着装置の概略構成などは実施例1と同様である。
本実施例のヒータ15は、2本の導体パターン15Cのうちの何れかの導体パターン15Cに折り返しパターンを設けることを特徴としている。
(折り返しパターンを設けることの利点)
図9に、本実施例に係るヒータ15の一例の構成模型図、断面図、および通電制御回路の一例のブロック図を示す。
このヒータ15は、大きく分けて、次の1)〜5)から構成される。図10にヒータ15の構成の一例を層別に図示する。
1)セラミック基板15A(図10の(1)参照)。
実施例1と同様である。
2)導体パターン15C
導体パターン15Cは、基板幅方向に離間させて2本設けてある。2本の導体パターン15Cのうち、基板幅方向における一端側(記録媒体導入側)の導体パターン15Cが折り返しパターンとしての折り返し導体21を有している(図10の(2)参照)。すなわちこの導体パターン15Cは、基板長手方向に延びる長手導体24と、長手導体24の一端から基板長手方向に折り返した折り返し導体21と、この折り返し導体に導通させた電極部23と、を有している。基板幅方向における他端側(記録媒体排出側)の導体パターン15Cは実施例1と同様である。それぞれの導体パターン15Cにおいて電極部23は基板長手方向の片側端部にまとめて配置されている。上記他端側の導体パターン15Cの電極部23は直接、長手導体24に導通されている。
3)絶縁層15E(図10の(3)参照)
実施例1と同様である。
4)発熱体層15B(図10の(4)参照)
実施例1と同様である。
5)絶縁保護層15D(図10の(5)参照)
実施例1と同様である。
従来の長手方向通電ヒータ15では、図23、図24のように、ヒータに流れる全ての電流は、ヒータ長手に沿って形成された発熱体15Bに沿って基板長手方向に流れている。この為、ヒータ長手方向のいずれかで、ヒータが破断した場合には、通電が遮断されていた。
また、従来の搬送方向通電ヒータでは、図25、図26のように、記録媒体材搬送方向、つまり基板幅方向にも発熱体15Bを介して電流が流れる。この為、図11のように、基板長手方向の片側端部に電極部23を設け、基板長手方向の片側からヒータに給電している場合、ヒータ15が破断した場合にも、通電が遮断されない問題があった。特に、温度検知素子18、安全素子22が当接していない部分よりも電極部23側で破断(例えば破線にて示すA部分)した場合、ヒータに通電する電力が制御不能になる。このため通電可能な領域Bに異常な電流が流れて、ヒータおよび周辺部品が異常高温にさらされる可能性がある。
本実施例におけるヒータ15では、不慮の故障、破損により、ヒータが破断した場合には、折り返しパターン21も破断して長手導体24への通電が遮断され、ヒータが異常高温となるのを防ぐ事ができる。
従来の搬送方向通電ヒータのように平面的に構成しながら、基板表面に折り返し導体を設けた場合でも、異常高温を防ぐことができるが、折り返し導体が占める面積分、基板を大きくするか、発熱体面積を小さくしなければならない。
本実施例におけるヒータ15のように搬送方向通電パターンを立体的に構成した場合と、従来例のように平面的に構成した場合で、実際にヒータを形成した場合、基板の幅、導体幅、発熱幅に生じる違いを以下、具体例をあげて比較する。
実施例、従来例に共通する製造上の制約として、基板側面より内側に0.7mmずつは、工程上、導体、発熱体ペーストを塗工できない余白とした。また、折り返し導体21の最小幅は0.4mmとした。そして折り返し導体21と長手導体24との間は0.4mm以上間隔を空けることとした。
本実施例におけるヒータ15は、幅7.0mmの基板上15Aに、幅2.0mm、厚み10μmの2本の長手導体24を形成し、これら2本の長手導体のうち基板幅方向の一端側の長手導体に幅0.4mmの折り返し導体21を形成した。そして2本の長手導体24および折り返し導体21の上と、折り返し導体と長手導体との間に絶縁ガラスを2回塗工して厚さ20μmの絶縁層15Eを設けた。そして絶縁層15Eの上には発熱層15Bを厚さ10μmで形成した。それぞれの長手導体24と発熱体15Bは幅0.4mmの領域で導通させ、長手導体の抵抗を十分に低くしながら、発熱幅15Bを4.8mmとる事ができる(図12、実施例参照)。
また、本実施例と同様の幅の基板15Aを使用し、長手導体24も本実施例と同様の幅で形成し、更に折り返し導体21も形成したものを従来例(1)とする(図12、従来例(1)参照)。
本実施例と同様の幅の発熱幅、長手導体24を形成し、折り返し導体21を設けられるよう基板幅が大きくものを使用したものを従来例(2)する(図12、従来例(2)照)。
本実施例と同様の基板幅に、本実施例と同様の発熱幅で発熱層15Bを形成し、折り返し導体21も設けたものを従来例(3)する(図12、従来例(3)参照)。
図7のように、折り返しパターンを設けずに、基板長手方向の両側端部に電極部23を設けたものを従来例(4)とする。
図13のように、基板15Aに貫通穴15A1を空けて、基板の裏面に折り返しパターン21を設けたものを従来例(5)とする
比較結果を表5に示す。
従来例(1)では、導体パターンが形成可能な面積のうち、発熱体以外の部分が占める面積が大きくなり、発熱幅が、実施例に比べて4.0mmも狭い、0.8mm幅でしか形成できなくなる。定着性能は大幅に低下する問題が生じる。
従来例(2)では、形成しなければならない導体パターンが多く、実施例に比べて4.0mmも大きい、幅11.0mmにもなる基板が必要となり、装置の大型化が問題となる。
従来例(3)では、導体パターンが形成可能な面積のうち、長手方向導体以外の部分が占める面積が大きくなり、長手方向導体幅を狭くしなければならない為、実施例1で説明したように、発熱ムラが発生する。
従来例(4)では、実施例同様の効果を得る事ができるが、電極、コネクタ、配線が基板長手方向の両側に必要になり、定着装置の複雑化、大型化に繋がる。
従来例(5)では、実施例同様の効果を得られるが、貫通穴をあけることによるセラミック基板強度の低下などが問題となる。破断時の安全性は確保できるが、ヒータの破断現象そのものが発生しやすくなる危険性がある。
本実施例におけるヒータ15は、2本の導体パターン15Cのうちの何れかに折り返し導体21を設けつつも、2本の導体パターンの導体幅と発熱体層15Bの発熱幅とを両立させ、小型で、発熱ムラがなく、定着性能の高いヒータとする事ができる。本実施例では、折り返し導体21を基板幅方向の一端側の長手導体24に設けたが、一端側の長手導体24に設けてもよい。
以上説明したように、本実施例におけるヒータ15は、基板長手方向に延びる2本の導体パターン15Cのうちの何れかの導体パターンが折り返し導体21を有するヒータ構成としても、実施例1のヒータ15と同様な作用、効果を得ることができる。
ヒータ15の他の実施例を説明する。本実施例のヒータ15を具備させる定着装置の概略構成などは実施例1と同様である。
本実施例のヒータ15は、2本の導電パターン15C、および絶縁層15E上に形成する発熱体層15Bを、背景技術でも説明した搬送方向通電パターンの一形態である分割方式とする事を特徴とする。
通常の搬送方向通電パターンでは記録媒体搬送方向に電流を流す為、シート抵抗の高い抵抗発熱体を使用する必要がある。分割方式ではヒータ長手方向に沿っても電流を流す為、シート抵抗が比較的低い抵抗発熱体ペーストを用いることができる。
説明を簡単にする為に、電極部23を基板長手方向の両側端部に設けたヒータで説明する。
本実施例におけるヒータの一例の構成模型図および断面図を図14に示す。このヒータ15は、大きく分けて、次の1)〜5)から構成される。図15にヒータ15の構成の一例を層別に図示する。
1)セラミック基板15A(図15の(1)参照)
実施例1と同様である。
2)導体層15C(図15の(2)参照)
実施例1と同様である。
3)絶縁層15E(図15の(3)参照)
2本の導体パターン15Cのそれぞれの長手導体24上に発熱体層15Bとの通電接点が、基板幅方向において一端側と他端側に交互に基板長手方向に沿って等間隔に形成されるように複数の導通穴Dを有する。
4)分割導体27(図15の(4)参照)
絶縁層15Eの上には、該絶縁層の導通穴Dから基板幅方向に沿って複数の導体パターンを形成する。すなわち、基板幅方向において絶縁層15Eの一端側の導通穴Dからは絶縁層の他端側に向かって、絶縁層の他端側の導通穴Dからは絶縁層の一端側に向かって導体パターンをそれぞれ形成する。
5)発熱体層15B(図15の(5)参照)
発熱体層15Bを基板幅方向で複数の分割導体27により分割することによって、各分割導体の間に抵抗発熱体を形成する。以下、分割導体27によって区切られた抵抗発熱体と対応する発熱領域を発熱セグメントと称する。
6)絶縁保護層15D(図15の(6)参照)
実施例1と同様である。
次に、各層における電流経路を説明する。図16に本実施例のヒータ15の電流経路を層別に図示する。
1)2本の導体パターン15Cでは、実施例1と同様に、電極部23から長手導体24に導通する(図16の(1)参照)。
2)絶縁層15Eでは、導通穴Dに分割導体27が入り込んで長手導体24と上層の発熱体層15Bとを導通させる導通経路としての通電接点が形成される(図16の(2)参照)。
3)分割導体27は、絶縁層15Eの導通穴によって形成された通電接点Dを通ってそれぞれの長手導体24と導通する(図16の(3)参照)。
4)すなわち、商用電源31からトライアック32を介して電極部23に供給された電流は、最下層に設けられた導体パターン15Cの長手導体24から、分割導体27により絶縁層15Eの導通穴によって形成された導通経路Dに流れる。そしてその導通経路Dと対応する絶縁層の上層にある複数の分割導体27に流れる。そしてこれらの分割導体27を介して発熱体層15Bに矢印のように電流が流れる(図16の(4)参照)。
経路は複雑だが、2本の長手導体24の間で、基板幅方向に通電するものである。
電流の流れる方向とその効果について、図17に示すモデル回路を用いて説明する。
実施例1、2における搬送方向通電ヒータは、無限に分割された並列回路と見なす事ができる。横向きに図示された長手導体24を表す導線と導線の間で、縦方向に図示された抵抗発熱体15Bを表す抵抗に通電される。
これに対して、本実施例における並列通電方式は、有限数に分割された並列回路と見なす事ができる。横向きに図示された長手導体24を表す導線から、縦方向に図示された分割導体27を介して、横方向に図示された発熱体層15Bを表す抵抗に通電される。発熱体層15Bに流れる電流の方向は、基板長手方向であるが、発熱体層にPTC特性を持たせる事で、実施例1、2の基板幅方向通電とほぼ同様の非通紙部昇温抑制効果が得られる。
すなわち、非通紙部に位置する発熱セグメントでは、抵抗値が上昇し、電流量が減少して、非通紙部での発熱セグメントの発熱量を抑える事ができる。発熱量の増減は各発熱セグメント単位で起こる為、発熱体層15Bの分割が細かく、各発熱セグメントが細かいほど、多様な紙サイズに対応する事ができる。
また、図18のように、分割導体27を斜めに形成すると、この分割導体による定着ムラを軽減する事ができる。完全に基板幅方向に沿って分割導体27を設けると、分割導体では発熱しない為に、ヒータ長手方向で全く発熱しない場所ができてしまい、ヒータ長手方向において、定着ムラが発生するためである。
(実験4)
本実施例の効果を確認する為に、本実施例における分割方式の搬送方向通電ヒータと、従来の長手方向通電ヒータの比較試験を行った。
実験に使用した本実施例におけるヒータ15は、図18と同様の構成で、幅7.0mm、長さ250mm、厚さ1.0mmの基板15A上に、厚さ10μm、幅2.0mm、長さ220mmの長手導体24を2本設けた。そしてそれぞれの長手導体24を電極部23と導通させた。長手導体24と、電極部23から成る導体パターン15Cは、基板上にAg/Ptペーストをスクリーン印刷によって印刷し、乾燥、焼成して形成した。それぞれの長手導体24上および該長手導体間には、幅5.6mm、長さ220mm、厚さ20μmの絶縁層15Eを設けた。絶縁層15Eには、0.4mm×0.4mmの導通穴Dを計12箇所設け、発熱体層15Bとの導通を可能した。絶縁層15Eは、絶縁ガラスペーストをスクリーン印刷し、乾燥、焼成させて形成した。
導体パターン15Cと絶縁層15Eの上に12本の分割導体27を形成した。分割導体27は導通穴Dを通って、最下層の導体パターン15Cと導通する。分割導体27は、基板幅方向に対して斜め15°の角度を持って形成される幅0.4mm、高さ5.6mmの平行四辺形である。基板長手方向の両端の電極部23だけは、上辺0.4mm、底辺1.9mm、高さ5.6mmの台形とする。各分割導体27の間には、幅19.36mm、高さ5.6mmの平行四辺形の発熱体層15Bを厚さ10μmで設け、11ヶ所に分割された発熱セグメントを形成した。発熱体ペーストには、RuOなどから成る1000ppm以上の正の抵抗温度特性を持つもので、ヒータの総抵抗が10Ωとなるように配合調整されたものを使用した。
従来の基板長手方向に通電する発熱体パターンを形成したヒータとしては、幅7.0mm、長さ250mm、厚さ1.0mmの基板上に、図23のように、幅5.6mm、厚さ10μmの帯状の発熱体を形成した。発熱体は両端部で電力供給用の電極23と導通させている。発熱体ペーストには、Ag/Pdなどから成る1000ppm以上の正の抵抗温度特性を持つもので、ヒータの総抵抗が10Ωとなるように配合調節されたものを使用した。
これらのヒータを比較として、定着器に組み込んだ際にニップ部Nに紙を通紙させた時の、ヒータの長手に対する非通紙部と通紙部との加圧ローラの表面温度を比較した。
条件としては、室温23度、湿度50%の環境下において、ヒータを、基板裏側に当接させたサーミスタにて170℃に温度維持するよう通電制御した定着器に、坪量80g/mのA5サイズ紙を連続10枚通紙した。そしてその際の加圧ローラ温度の通紙部と非通紙部の温度差を測定した。加圧ローラの表面温度は、加圧ローラに耐熱性の繊維で形成されたフェルトを当接し、フェルトとローラの間に熱電対を配して測定した。定着装置の紙搬送速度は60mm/secで、記録紙の通紙間隔を190mmにし、9枚/分で通紙した場合で実験した。
以下の表6に結果を示す。
従来例の構成では、9枚/分で通紙した場合の非通紙部の加圧ローラ表面温度は240℃にまで達していた。一方、本実施例のヒータでは、9枚/分、10枚通紙した時点で、非通紙部の加圧ローラ表面の温度は200℃であった。従来例のヒータに対して40℃のマージンアップが図られている。
図19に本実施例の発熱体分割パターンと、小サイズ紙の紙幅の関係を示す。
A5サイズ紙が中央基準で通紙された場合、11分割された発熱セグメントの内、中央部の7セグメントは通紙部となり、両端部2セグメントずつは、ほぼ非通紙部となる。両端部2セグメントの抵抗が、非通紙部昇温による温度上昇で上昇し、電流を流れにくくして、非通紙部昇温を軽減させていることが分かる。
以上説明したように、本実施例における分割方式の搬送方向通電パターンのヒータ15は、実施例1、2におけるヒータと同様に、小サイズ通紙における非通紙部昇温を軽減させる事ができる。
本実施例における分割方式のヒータ15は、図20に一例を示すように、実施例2と同様に、1本の導体パターン15Cに折り返し導体21を設け、電極部23を基板長手方向の片側端部だけに設けることもできる。
図26に示される分割方式のヒータにおいても、実施例1、2のヒータ15と同様に、基板長手方向に沿って形成される長手導体24の抵抗が、発熱体層15Bの抵抗に比べて十分小さくないと、発熱ムラが発生する。また、折り返し導体21を設けずに基板長手方向の片側だけから給電すると、ヒータ破断時に電力制御不能になり、異常高温となる危険がある。
しかしながら、本実施例におけるヒータ15は、実施例2と同様に、折り返し導体21を設けつつも、導体幅と発熱幅を両立させ、小型で、発熱ムラがなく、定着性能の高いヒータとする事ができる。
したがって本実施例のような分割方式の搬送方向通電ヒータ15においても、実施例1のヒータ15と同様な作用、効果を得ることができる。
ヒータ15の他の実施例を説明する。本実施例のヒータ15を具備させる定着装置の概略構成などは実施例1と同様である。
本実施例のヒータ15は、裏面発熱方式とする事を特徴とする。図21に本実施例のヒータ15を定着装置に適用したニップ部付近の横断側面拡大図を示す。
本実施例におけるヒータ15は、基板15Aに、例えば窒化アルミニウムなどの良熱伝導のセラミック基板を用いている。そしてヒータ15の、フィルム16を介して記録媒体(図示せず)を加熱定着する面を表面とした場合、ヒータ裏面に発熱体層15Bを設け、基板15Aを介して熱を伝える裏面発熱構成である。
ヒータ表層の保護層15Fを形成する材料としては、保護、絶縁性、表面性などから、絶縁ガラスなどが用いられるが、一般的に、熱伝導性には優れない。その為、基板15Aに熱伝導性の良い部材を用いた場合、ガラスを介して熱を伝えるよりも、基板を介して熱を伝える裏面発熱方式とした方が効率的になる。
図22に、本実施例におけるヒータの一例の構成模型図、断面図、および通電制御回路の一例のブロック図を示す。
例えば、幅7.0mm、長さ250mm、厚さ1.0mmの基板15A上に、幅5.6mm、厚さ10μmの発熱抵抗体をスクリーン印刷などによって印刷し、乾燥、焼成して、発熱体層15Bを形成する。発熱体ペーストには、RuOなどから成る1000ppm以上の正の抵抗温度特性を持つもので、ヒータ15の総抵抗が10Ωとなるように配合調整されたものを使用する。
発熱体層15Bの上には、幅5.6mm、長さ220mm、厚さ20μmの絶縁層15Eを設けた。基板幅方向における一端側と他端側において発熱体層15Bの外側0.4mmずつを露出させ、上層の2本の導体パターン15Cのそれぞれの長手導体24との導通を可能した。絶縁層15Eは、絶縁ガラスペーストをスクリーン印刷し、乾燥、焼成させて形成した。
発熱体層15Bと絶縁層15Eの上には、Ag/Ptペーストをスクリーン印刷によって印刷し、乾燥、焼成して、基板幅方向に2本の導体パターン15Cを形成した。導体パターン15Cは、それぞれ、厚さ10μm、幅2.5mm、長さ220mmの長手導体24を有している。そして基板幅方向における一端側(記録媒体導入側)の導体パターン15Cは長手導体24の一端から基板長手方向に幅0.4mmの折り返し導体21を有している。そしてそれぞれの長手導体24を基板長手方向の片側端部にまとめた電極部23と導通させた。
2本の導体パターン15Cのそれぞれの長手導体24上および折り返し導体21上には、絶縁ガラスからなる厚さ20μm、幅6.4mmの保護層15Dを設けた。
また、基板15Aの発熱体層15Bのない面(表面)には、フィルム16との摺動性を良くする為、厚さ3μmのポリイミド樹脂からなる摺動保護層15Fを設けている。
実施例1、2、3で説明した表面発熱方式のヒータ15では、基板15Aの上に、導体パターン15Cを設け、その上に絶縁層15E、さらにその上に発熱体層15Bを設けて、最後に保護層15Eを設けた。
本実施例における裏面発熱形式のヒータ15では、基板15Aの上に、まず発熱体層15Bを設け、その上に絶縁層15E、さらにその上に導体パターン15Cを設けて、最後に保護層15Eを設ける。
裏面発熱方式では、表面発熱方式とは熱を伝える方向が逆な為、発熱体層15Bと導体パターン15Cの位置を逆にした方が効率的である。
本実施例の裏面発熱方式のヒータ15においても、実施例1、2と同様な作用、効果を得ることができる。また発熱体層15Bを、実施例3のような搬送方向通電パターンの一形態である分割方式とした場合の効果も、実施例3と同様である。
〔その他〕
1)実施例の定着装置は加圧ローラ駆動方式の装置であるが、定着装置はこれに限られるものではない。例えば駆動ローラとテンションローラに張架させたエンドレス状のフィルムを駆動ローラにより回転駆動させて加圧ローラを従動回転させる、所謂定着フィルム駆動方式の装置でもよい。
2)本発明の加熱装置は、未定着画像を被加熱材に仮定着する仮定着装置や、定着画像を担持した被加熱材を再加熱してつや等の画像表面性を改質する表面改質装置としても有効である。またその他、例えばシート状被加熱材のしわ除去用の熱プレス装置や、熱ラミネート装置、紙等の被加熱材の含水分を蒸発させる加熱乾燥装置など、シート状被加熱材を加熱処理する加熱装置として用いても有効である。
画像形成装置の一例の全体構成図である。 実施例1に係る定着装置の要部の横断側面構成模型図である。 実施例1に係るヒータの一例の構成模型図と断面図である。 実施例1に係るヒータを層別に示した構成模型図である。 実施例1に係るヒータを適用した定着装置のニップ部付近の横断側面拡大図である。 実施例1に係るヒータの通電経路の説明図である。 実施例1に係るヒータの比較例である従来の搬送方向通電パターンタイプのヒータの構成模型図である。 実施例1の係るヒータと従来のヒータの構成上の違いを比較する構成模型図である。 実施例2に係るヒータの一例の構成模型図と断面図である。 実施例2に係るヒータを層別に示した構成模型図である。 片側に電極部を備えた従来の搬送方向通電パターンタイプのヒータの構成模型図である。 実施例2の係るヒータと従来のヒータの構成上の違いを比較する構成模型図である。 実施例2に係るヒータの比較例である従来の搬送方向通電パターンタイプのヒータの構成模型図である。 実施例3に係るヒータの一例の構成模型図と断面図である。 実施例3に係るヒータを層別に示した構成模型図である。 実施例3に係るヒータの電流経路を層別に示した説明図である。 実施例1、2および3のヒータのモデル回路図である 定着ムラを改善した実施例3に係るヒータの構成模型図と断面図である。 実施例3に係るヒータと、実験に使用した記録材の非通紙部との関係の説明図である。 実施例3に係るヒータの他の例の構成模型図と断面図である。 実施例4に係るヒータを適用した定着装置のニップ部付近の横断側面拡大図である。 実施例4に係るヒータの構成模型図と断面図である。 従来の長手方向通電パターンタイプのヒータの一例の構成模型図である。 従来の長手方向通電パターンタイプのヒータの他の例の構成模型図である。 従来の搬送方向通電パターンタイプのヒータの一例の構成模型図である。 従来の搬送方向通電パターンタイプのヒータの他の例の構成模型図である。
符号の説明
15‥‥セラミックヒータ、15A‥‥セラミック基板、15B‥‥発熱体層・発熱抵抗体、15C‥‥導体層・導体パターン、15D‥‥セラミックヒータ保護層、15E‥‥絶縁層・絶縁体、15F‥‥摺動保護層、16‥‥定着フィルム、17‥‥加圧ローラ、18‥‥温度検知体・サーミスタ、19‥‥ヒータホルダ、20‥‥給電用コネクタ、21‥‥折り返し導体、22‥‥安全素子、23‥‥電力供給用電極部、24‥‥長手導体、27‥‥電力供給用電極部、31‥‥商用電源、32‥‥トライアック、33‥‥電力(通電)制御手段(CPU)、34‥‥A/D変換回路、T‥‥トナー、P‥‥記録媒体

Claims (8)

  1. 細長い基板と、前記基板の基板面上に前記基板の短手方向に離間させて前記基板の長手方向に沿って形成した2本の導体層と、を有し、被加熱材を加熱する加熱装置に用いられる加熱体において、
    前記2本の導体層上および前記導体層間に形成した絶縁層と、
    前記絶縁層上に形成した発熱体層と、
    前記発熱体層と前記2本の導体層とを前記基板の短手方向における一端側と他端側で前記基板の厚み方向に導通させる導通経路と、
    を有することを特徴とする加熱体。
  2. 前記導通経路が前記発熱体層によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱体。
  3. 更に、前記絶縁層上に前記発熱体層を前記基板の短手方向に沿って分割する複数の分割導体を有し、前記導通経路が前記分割導体によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱体。
  4. 前記分割導体は、前記基板の短手方向に対して所定角度傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の加熱体。
  5. 前記2本の導体層は、それぞれ、前記基板の長手方向に延びる長手導体と、前記長手導体と導通する電極部と、を有することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の加熱体。
  6. 前記2本の導体層のうち何れかの導体層は、前記長手導体の一端から前記基板の長手方向に折り返して前記電極部と導通する折り返し導体を有することを特徴とする請求項5に記載の加熱体。
  7. 前記発熱体層は、1000ppm以上の正の抵抗温度特性を持つことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の加熱体。
  8. 細長い基板と前記基板の基板面上に前記基板の短手方向に離間させて前記基板の長手方向に沿って形成した2本の導体層とを有する加熱体と、前記加熱体に接触しつつ移動する可撓性部材と、前記可撓性部材を挟んで前記加熱体とニップ部を形成する加圧部材と、を有し、前記ニップ部で被加熱材を挟持搬送しつつ加熱する加熱装置において、
    前記加熱体は、
    前記2本の導体層上および前記導体層間に形成した絶縁層と、
    前記絶縁層上に形成した発熱体層と、
    前記発熱体層と前記2本の導体層とを前記基板の短手方向における一端側と他端側で前記基板の厚み方向に導通させる導通経路と、
    を有することを特徴とする加熱装置。
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