JP2007014270A - リン脂質組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンの少なくとも1種を合計で30重量%以上含み、かつホスファチジルイノシトールを10重量%以上含むリン脂質を、有機溶媒及び水からなる二相系中で攪拌した後、ヒドロキシル基含有化合物及びホスホリパーゼDを添加して、ホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンの少なくとも1種の塩基交換反応を行う工程からなる、リン脂質組成物の製造方法。
【選択図】 なし
Description
このように、これらのリン脂質はいずれも健康に重要なため、近年、2種以上のリン脂質を含有する製剤、特にPIとPS等との両方を高濃度で含有する製剤が市場で求められている。
例えば、高濃度のPSを得る方法としては、PCをホスホリパーゼDの存在下でセリンと反応させる方法が知られている(特許文献4参照)。PCの原料として大豆レシチン、卵黄レシチン等の天然材料を用いる場合、これらのレシチンにはPIも10%程度含まれているが、PSの収率を上げるために原料を精製してPCの濃度を上げるので、PIはごく微量となる。また、PIは、この反応ではPCのようにセリンと反応せず、むしろPCとセリンの反応を阻害する要因の一つとなっていることから、原料を精製して反応を行う必要があった。
本発明のリン脂質組成物の製造方法において、原料となるリン脂質としては、ホスファチジルコリン(PC)及びホスファチジルエタノールアミン(PE)の少なくとも1種を合計で30 重量%以上含み、かつホスファチジルイノシトール(PI)を10 重量%以上含むものを用いる。上記原料のリン脂質は、PC又はPEの何れかを30重量%以上含んでいればよいが、PC及びPEの両方を合わせて30重量%以上含んでいてもよい。好ましくは、PC及びPEの少なくとも1種の合計が、30〜60重量%であり、PIが10〜40重量%である。
従来の塩基交換反応では、収率を上げるために、原料となるリン脂質を精製してPC、PEの濃度を上げていたが、本発明の製造方法では、PC、PEの塩基交換反応により得られるホスファチジルセリン(PS)等と共にPIを多く含むリン脂質組成物を得ることを目的とすることから、PIを比較的多く含むリン脂質を原料に用いる。このようなPIを多く含むリン脂質としては、PC、PEを精製した時に発生するバイ・プロダクトも安価で好適である。
上記有機溶媒としては特に限定されず、n−ヘプタン、n−ヘキサン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;四塩化炭素、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。上記有機溶媒としては、極性溶媒及び非極性溶媒を含むものが好ましい。
上記二相系において、水の混合比は、有機溶媒に対して好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは2〜15重量%、更に好ましくは5〜10重量%である。
このような有機溶媒及び水からなる二相系としては、例えば、ヘキサン:アセトン:水、ヘプタン:アセトン:水、ヘキサン:酢酸エチル:水の組み合わせ等が挙げられる。
本発明の方法において、上記リン脂質は、通常、有機溶媒に溶解した状態であり、上記攪拌により、リン脂質と有機溶媒及び水がエマルションを形成していてもよい。
上記ヒドロキシル基含有化合物としては、アルコール類、含窒素アルコール類、糖類、ポリオール類、ヒドロキシ環状化合物等が挙げられる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アスコルビン酸等が挙げられる。
含窒素アルコール類としては、例えば、セリンなどのアミノ酸;1−アミノ−2−プロパノールなどが挙げられる。
糖類としては、例えば、アデノシン、グアノシン、イノシン、キサントシン、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン等のヌクレオシド;グルコース、トレハロース、N−アセチル−D−グルコサミン等が挙げられる。
ポリオール類としては、例えば、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
ヒドロキシ環状化合物としては、例えば、麹酸、アルブチン等が挙げられる。
本反応系中におけるPLDの濃度は、リン脂質1gに対し、好ましくは5〜200U、より好ましくは20〜100Uである。なお、1Uは、95%大豆ホスファチジルコリンを基質とし、基質濃度0.16%の0.2M酢酸緩衝液(pH4.0、10mMのCaCl2、1.3%のTriton X−100を含む)を37℃にて反応させた時、1分間に1μmolのコリンを遊離する酵素量である。
本発明の製造方法により得られるリン脂質組成物の例として、PI及びPSを含むリン脂質組成物以外に、PI及びホスファチジン酸を含むリン脂質組成物、PI及びホスファチジルエタノールを含むリン脂質組成物等が挙げられる。
実施例1
SLP−PIパウダー(辻製油製)を濃度が10%になるようにへプタン:アセトン混合溶媒(85:15)90mlに溶解した後に、6mlの1M酢酸緩衝液(pH4.0)を加え、30℃にて2時間攪拌した(前処理)。
その後、水層にセリンを25%、PLD80U/レシチン(g)になるように添加し、水層量を17mlに調整した。30℃にて一晩攪拌し、反応させた後、2時間静置した。下層の水層を分離してから、上層の溶媒層を減圧濃縮した。濃縮液に対して3倍量のエタノールを加え、沈殿させた。沈殿物を乾燥したあとに、クロロホルム:メタノール(2:1)溶液に溶解し、リン脂質含量を高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)により下記の条件で分析を行った。表1に示すリン脂質組成物が得られた。
HPLC条件
使用カラム:ジーエルサイエンス社製 Unisil Q NH2(4.6mm I.D.×250mm)
移動相:アセトニトリル/メタノール/50mMリン酸二水素アンモニウム=1856/874/270
流速:1.3mL/分
検出:UV 205nm
また、転移率を図1に示す。なお、転移率は、下記式によって求められる値である。
転移率(%)=反応後PSの濃度/反応前(PC+PE)濃度×100
SLP-PIパウダー(辻製油製)を濃度が10%になるようにヘプタン:アセトン混合溶媒(85:15)90mlに溶解した後に、6mlの1M酢酸緩衝液(pH4.0)及びセリンを25%、PLD80U/レシチン(g)になるように添加し、水層容積を17mlに調整した後、30℃にて一晩攪拌し、反応させた。下層の水層を分離してから、上層の溶媒層を減圧濃縮した。濃縮液に対して3倍量のエタノールを加え、沈殿させた。沈殿物を乾燥したあとに、クロロホルム:メタノール(2:1)溶液に溶解し、リン脂質含量をHPLC法により実施例1と同じ条件で分析を行った。結果を表1及び図1に示す。
SLP-WHITE(辻製油製)を濃度が20%になるようにヘプタン:アセトン混合溶媒(75:25)90mlに溶解した後に、6mlの1M酢酸緩衝液(pH4.0)を加え、30℃にて2時間攪拌した(前処理)。
その後、水層にセリンを25%、PLD80U/レシチン(g)になるように添加し、水層量を17mlに調整した。30℃にて一晩攪拌し、反応させた後、2時間静置した。上層の溶液をクロロホルム:メタノール(2:1)で希釈し、HPLC分析により、転移率を求めた。結果は図2に示す。
攪拌(前処理)を行わずに反応を行う以外は、実施例2の同じ条件で反応、分析を行い、転移率を求めた。結果は図2に示す。
Claims (4)
- ホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンの少なくとも1種を合計で30重量%以上含み、かつホスファチジルイノシトールを10重量%以上含むリン脂質を、有機溶媒及び水からなる二相系中で攪拌した後、ヒドロキシル基含有化合物及びホスホリパーゼDを添加して、ホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンの少なくとも1種の塩基交換反応を行う工程からなる、リン脂質組成物の製造方法。
- 前記有機溶媒が、極性溶媒及び非極性溶媒を含むものである請求項1記載の方法。
- 塩基交換反応時のリン脂質の濃度が、全化合物に対して5〜40重量%である請求項1又は2記載の方法。
- ヒドロキシル基含有化合物がセリンである請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
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