JP2009148244A - リゾホスファチジルエタノールアミンの製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造法に関するものであり、更に詳しくは他のリン脂質と混在している状況の下で、リゾホスファチジルエタノールアミンを高純度で得ることができる酵素反応を利用した当該化合物の製造法に関するものである。
【解決手段】
リゾホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルエタノールアミンの両方を含有する粗原料に、ホスホリパーゼA1 またはA2 からなる加水分解酵素をあらかじめ作用させて、ホスファチジルエタノールアミンからリゾホスファチジルエタノールアミンを生成せしめた後、全リゾホスファチジルエタノールアミンを含むフラクションを回収する。
【選択図】なし

Description

本発明は、高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造法に関するものであり、更に詳しくは他のリン脂質と混在している状況の下で、リゾホスファチジルエタノールアミンを高純度で得ることができる酵素反応を利用した当該化合物の製造法に関するものである。
リン脂質として知られている1,2−ジアシルグリセロリン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸を主とする混合物として、大豆、小麦、大麦、トウモロコシ、ヒマワリ、ナタネ、落花生、綿実、キノコ等の極性脂質画分に存在している。植物リン脂質の成分としては、主にホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンが知られており、機能性食品として利用されている(特許文献1参照)。リン脂質は1,2−ジアシルグリセロリン脂質の状態で利用されるだけではなく、リン脂質をリゾ化したモノアシルグリセロリン脂質、例えば、植物由来のリン脂質である大豆リン脂質をリゾリン脂質に変えて利用される(特許文献2参照)。
即ち、大豆リン脂質に加水分解酵素としてホスホリパーゼA1又はA2を作用させて、リン脂質のアシル基を加水分解し、2−モノアシルグリセロリン脂質、又は1−モノアシルグリセロリン脂質に改質したリゾリン脂質に変える。このような大豆リゾレシチンは、通常の大豆レシチンに比べ、乳化性、タンパク質やデンプンとの結合能、離型作用が優れていることから近年その需要が増している(特許文献3参照)。
ところで、かかる大豆リゾレシチンの製造には、ブタ膵臓由来の酵素剤パンクレアチンや細菌に含まれるホスホリパーゼA2が使用されており(特許文献4参照)、ノボ・ノルディスク社で商品化されたレシターゼ10lが専ら用いられている。この酵素はリン脂質の内、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸を加水分解するが、ホスファチジルイノシトールには作用しない。そのために大豆リン脂質をリゾ化した際に、ホスファチジルイノシトールが加水分解されていないことから、構成リン脂質中のホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンがリゾ化されたリゾリン脂質が主要部を占める大豆リゾリン脂質が提供され、利用されている現状にある。即ち、上記大豆リゾリン脂質の特性はこれら二種の主要リン脂質で特徴づけられ、特にホスファチジルコリンのリゾ体がこの特性発現に大きく関与することから、ホスファチジルコリン含量の高いリゾ型のリン脂質を止むを得ず利用しているのが現状である。
また、近年、担子菌の一種であるマイタケ中のリゾホスファチジルエタノールアミンの生理活性に注目が集まっている(非特許文献1参照)。マイタケの乾燥物には5重量%程度の油脂が含まれており、このなかに0.1%程度のリゾホスファチジルエタノールアミンが含まれていることがわかっている。無処理のマイタケから、リゾホスファチジルエタノールアミンを抽出した場合、たとえば、リゾホスファチジルエタノールアミンを5%含有する抽出物を調製すると、コストが市場価格とかけ離れた金額となるため、新しい製造法の確立が必要となっていた。
公知の技術(特許文献5参照)を用いて植物中のホスファチジルエタノールアミンからリゾホスファチジルエタノールアミンを製造する場合には、一旦ホスファチジルエタノールアミンを含むリン脂質を回収しておき(このとき、植物中にもともと存在するリゾホスファチジルエタノールアミンが不純物として除去される)、次にホスホリパーゼAによりリゾホスファチジルエタノールアミンを生成させる。植物中には、ホスファチジルエタノールアミンとリゾホスファチジルエタノールアミンの両方が含まれるが、植物からホスファチジルエタノールアミンを含むリン脂質を回収する際に、植物中にもともと存在するリゾホスファチジルエタノールアミンが不純物として除去されていたため、コスト的な不利が指摘されていた。
ホスファチジルエタノールアミンやリゾホスファチジルエタノールアミンの生理活性は、これまで明らかでなかった。しかし、近年になって、マイタケ中のリゾホスファチジルエタノールアミンが神経細胞を活性化することがわかり(非特許文献1参照)、リゾホスファチジルエタノールアミンの、ストレス性のうつ、最終的には認知症の予防への効果が期待されている。
リゾホスファチジルエタノールアミンは、工業的に製造する方法が確立していないため、未だ実用的なレベルでの使用に十分な量のリゾホスファチジルエタノールアミンを提供することができず、従って開発が進められていないのが現状である。又植物リン脂質の中にはスフィンゴ糖脂質、ステリルグリコシド、グリセロ糖脂質等生理的に有用で、応用面が期待されている物質が混在して含まれているが、その除去法はクロロホルム、アセトンを用いたシリカゲルカラム分画法(特許文献6参照)であり、工程的に煩雑であり費用面で不利であることから実用的な工業的製造方法としてはもちいられていない。
特開2007−110904 特開2006−174770 特開平9−227895 特開2002−017398 特表2003−515346 特開平2823174 特開平7−31472 特開平5−099913 J Lipid Res. 47(7):1434-43. 2006 H.Pardun, Proceeding of the 2nd International Colloquimon Soya Lecithin, Brighton England, April 3(1982)
本発明は、かかる事情を背景にして鋭意研究の結果、為されたものであって、その解決課題とするところは、粗原料にもともと含まれているリゾホスファチジルエタノールアミンを除去せずに、ホスホリパーゼを用いて、植物リン脂質中のホスファチジルエタノールアミンから、リゾホスファチジルエタノールアミン生成させ、粗原料由来のリゾホスファチジルエタノールアミンと反応により生成したリゾホスファチジルエタノールアミンの両方を回収することにより、最終的に、リゾホスファチジルエタノールアミンを高純度、高収率で得る方法を提供することにある。又、粗原料中に混在して含まれているリン脂質以外のスフィンゴ糖脂質、ステリルグリコシド、グリセロ糖脂質などを効率的に除去する方法を提供することにある。
本発明者らは、アスペルギルス(Aspergillus)属の糸状菌、特にアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)又はアスペルギルス・オリゼ(Aspergillusoryzae)が生産するホスホリパーゼA(長瀬産業株式会社で発売されている)について、その作用を鋭意研究した結果、当該酵素をリゾホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルエタノールアミンを含む植物リン脂質に作用させるとき、その中のホスファチジルエタノールアミンは加水分解を受けて、C1位、C2位共にアシル基の離脱を起こすことを確認した。すなわち、リゾホスファチジルエタノールアミンは当該ホスホリパーゼAの触媒毒にならないことを確認した。
そして、リゾホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルエタノールアミンを含む粗原料に、ホスホリパーゼA1 またはA2 からなる加水分解酵素をあらかじめ作用させて、ホスファチジルエタノールアミンからリゾホスファチジルエタノールアミンを生成せしめた後、全リゾホスファチジルエタノールアミンを含むフラクションを回収することにより、リゾホスファチジルエタノールアミンを高純度、高収率で得ることができることを見いだした。
本発明者らは、粗原料にもともと含まれているリゾホスファチジルエタノールアミンを除去せずに、ホスホリパーゼを用いて、植物リン脂質中のホスファチジルエタノールアミンから、リゾホスファチジルエタノールアミンを生成させ、粗原料由来のリゾホスファチジルエタノールアミンと反応により生成したリゾホスファチジルエタノールアミンの両方を回収することにより、最終的に、リゾホスファチジルエタノールアミンを高純度、高収率で得る方法を提供する方法を見いだした。
即ち、本発明は、次の[1]〜[8]である。
[1]リゾホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルエタノールアミンの両方を含有する粗原料に、ホスホリパーゼA1 またはA2 からなる加水分解酵素をあらかじめ作用させて、ホスファチジルエタノールアミンからリゾホスファチジルエタノールアミンを生成せしめた後、全リゾホスファチジルエタノールアミンを含むフラクションを回収することを特徴とする、高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
[2]リゾホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルエタノールアミンを含有する粗原料が、植物油の脱ガム工程で発生する含水ガム質である[1]記載の高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
[3]リゾホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルエタノールアミンを含有する粗原料が、ペースト状レシチンを加水したものである[1]記載の高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
[4]リゾホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルエタノールアミンを含有する粗原料が、キノコ、キノコの乾燥物、またはキノコの抽出物である[1]記載の高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
[5]ホスホリパーゼA1 またはA2が、細菌または動物の内蔵由来である[1]乃至[4]の何れか一項に記載の高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
[6]リゾホスファチジルエタノールアミンを生成せしめた後、リゾホスファチジルエタノールアミンを含むフラクションを回収するに先立ち、得られたリゾホスファチジルエタノールアミン生成液に対して酵素失活処理を施すことを特徴とする[1]乃至[5]の何れか一項に記載の高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
[7]エタノールを主成分とする有機溶剤を用いてリゾホスファチジルエタノールアミンを含むフラクションを回収することを特徴とする、[1]乃至[6]の何れか一項に記載の高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
[8]アセトンを主成分とする有機溶剤を用いて不要物を除去することを特徴とする、[1]乃至[7]の何れか一項に記載の高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
本発明は、高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造法に関するものであり、更に詳しくは他のリン脂質と混在している状況の下で、リゾホスファチジルエタノールアミンを高純度で得ることができる酵素反応を利用した当該化合物の製造法に関するものである。
本発明は、粗原料に含まれるLPEをロスすることなく酵素反応を用いてリゾホスファチジルエタノールアミンの濃度が高く、実用上十分安価なコストで製造できる抽出物の製造法を提供するものである。
本発明方法で使用される粗原料とは、植物の原体または植物の乾燥物であって、ホスファチジルエタノールアミンとリゾホスファチジルエタノールアミンを含むものならどのようなものでもよいが、粗原料中にリゾホスファチジルエタノールアミンが多く存在する場合に発明の効果が大きくなる。スフィンゴ糖脂質、ステリルグリコシド及びグリセロ糖脂質の1〜3種を含んでいるものでもよい。これらは通常は水を含んでいるが、場合によっては乾燥物でもよく、それらを総称して本発明は粗原料と称する。具体的には例えば、大豆、小麦、大麦、トウモロコシ、ヒマワリ、ナタネ、落花生、綿実、キノコ等の植物又はその乾燥物で上記の化学成分を含むものを使用することができる。最も好ましい原料はペースト状大豆リン脂質または乾燥マイタケであるが、これらは公知方法で容易に製造できる。
本発明で使用されるホスホリパーゼA1および/またはホスホリパーゼA2は公知の酵素であって、例えば特許文献7に記載の方法に従って容易に製造することが出来る。酵素の起源はアスペルギルス(Aspergillus)属の糸状菌、特にアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)又はアスペルギルス・オリゼ(Aspergillusoryzae)または動物の内臓、たとえば豚の膵臓のうちの1種以上であり、これらを単独または組み合わせて使用することができる。これらの酵素の好ましい反応条件はpH4.0〜8.0で温度約40℃乃至70℃程度であるから、反応条件をそのように設定するのが好ましい。pH値の調節には、自体公知の手段に従って、アルカリ水溶液(例えばNaOH水溶液)、酸性水溶液(例えば1N塩酸)を使用してよい。又、反応液からスフィンゴ糖脂質、ステリルグリコシド、グリセロ糖脂質の1種以上を採取する場合は、上記4種のジアシルグリセロリン脂質のいずれもがそれぞれ対応するモノアシルグリセロリン脂質を経由して対応するグリセロホスホリル体にまで加水分解されるまで加水分解反応を継続させるのが好ましい。反応終了後、自体公知の手段に従って、目的物を反応混合物から採取することが出来る。本発明の好ましい実施の態様を以下に説明する。%部は特にことわりのない限り、それぞれ重量%、重量部である。
本発明の粗原料を、適切な組成の含水エタノールで分画すると、ホスファチジルエタノールアミンとリゾホスファチジルエタノールアミンのうち、一方が溶解し、一方を不溶物とすることができる。デカンティングや遠心分離により上清と沈殿を生じせしめた後、上清と沈殿のうち、リゾホスファチジルエタノールアミンを多く含む方を回収することにより、リゾホスファチジルエタノールアミンを高純度化することができる。本発明で用いる含水エタノールの水分は0.5容量%乃至50容量%であり、適切な水分は、粗原料の状態により決定することができる。又、粗原料をヘキサンに溶解し、水性エタノールで分画すると、水性エタノール区分に糖脂質類が残留することから(非特許文献2参照)、この画分を除去してリン脂質の含有量を高めることもできる。いずれにせよ、前処理として、粗原料を適宜分画し、ホスファチジルエタノールアミンとリゾホスファチジルエタノールアミンの両方を含有する分画物を得る操作により、効率的にリゾホスファチジルエタノールアミンの純度を高めることができる。
本発明における酵素反応は、酵素と基質を水または含水エタノール中で接触させることにより行われ、必要に応じて非イオン性有機溶媒(例えばジエチルエーテル、ジオキサンのようなエーテル類、ヘキサン、ベンゼン、トルエンのような炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類等)共存下で行うことも可能である。又、水性又は湿潤体には、必要に応じて、酸、アルカリ又は緩衝液を加えて至適pHに調整することが反応を促進することになる。本酵素の添加量は反応温度、反応時間、反応時のpH、基質の性状や品質、夾雑する物質、要求される効果の程度等により異なるが、好適には1,000ユニット/gの酵素を用いて、基質に対して0.05重量%乃至5重量%である。
本酵素の反応温度は40℃乃至70℃(好適には45℃乃至60℃)であり、反応に要する時間は、反応温度、pH、基質の種類により異なるが、通常1時間乃至6時間である。
本発明において、リゾホスファチジルエタノールアミンを含むフラクションを回収するために用いるエタノールを主成分とする有機溶剤は、エタノールにアセトン、ヘキサンまたは水のうちの1種類または2種以上を一定量添加したものである。このうち、水を添加した含水エタノールが安全性、回収時のコスト等の面で最も適している。エタノールに添加するアセトン、ヘキサンまたは水のうちの1種類または2種以上の量は抽出原料によって異なるが、アセトン、ヘキサンまたは水のうちの1種類または2種以上の量が1容量%未満または50容量%よりも多い場合は、リゾホスファチジルエタノールアミン以外の成分の混入が多くなり、リゾホスファチジルエタノールアミンを高純度に含有する抽出物を得ることができない。
本発明において、リゾホスファチジルエタノールアミンを含むフラクションから不純物を除去するために用いるアセトンを主成分とする有機溶剤は、アセトンにエタノール、ヘキサンまたは水のうちの1種類または2種以上を一定量添加したものである。このうちエタノールにアセトン、ヘキサンまたは水のなかでは、エタノールを添加した含エタノールアセトンまたは、純アセトンが安全性、回収時のコスト等の面で最も適している。アセトンに添加するエタノール、ヘキサンまたは水のうちの1種類または2種以上の量は抽出原料によって異なるが、エタノール、ヘキサンまたは水のうちの1種類または2種以上の量が50容量%よりも多い場合は、回収するリゾホスファチジルエタノールアミンの有機溶媒へ混入が多くなり、結果、リゾホスファチジルエタノールアミンを高純度に含有する抽出物を得ることができない。
次に、本発明を試験例、実施例、比較例にてさらに詳しく説明する。
試験例(反応物の分析)
反応の進行の確認は公知の方法(特許文献8参照)に従った。すなわち、一次展開溶媒としてクロロホルム:メタノール:7モルのアンモニア水(130:70:8)、二次展開溶媒としてクロロホルム:メタノール:酢酸:ギ酸(50:30:4.5:6.5)を用いることにより各リン脂質のリゾ体を分離した。発色剤としてリン酸、硫酸銅、水の混合物を用いた。各リン脂質のリゾ体の標品と比較することにより、各リン脂質を同定し、デンシトメーターを用いて定量(暫定値)を行った。
以下の実施例における百分率は何れも重量基準で示されるものであり、さらにリン脂質及びそのリゾ化物の略号としてPC:ホスファチジルコリン、PE:ホスファチジルエタノールアミン、PI:ホスファチジルエタノールアミン、PA:ホスファチジン酸、LPC:リゾホスファチジルコリン、LPE:リゾホスファチジルエタノールアミン、LPI:リゾホスファチジルエタノールアミン、LPA:リゾホスファチジン酸を使用した。
マイタケ石突100kgを温風乾燥機{サンエー技研(株)製}で乾燥してマイタケ石突乾燥物10kgを得た。マイタケ石突乾燥物10kgには580gの脂質(クロロホルム:メタノール=2:1 v/v 可溶物)が含まれており、脂質中のリン脂質含量は60g、PE含量は38g、LPE含量は20gであった。マイタケ石突乾燥物に50容量%含水エタノール100lを添加し40℃で8時間攪拌してエキス成分の抽出を行った。次にリポモッド699l((長瀬産業(株))100マイクロlと100mM換算のCaClを添加し、40℃で2時間攪拌し、加水分解反応を行った後、濾過により残滓を除去した。濾過する際に、未反応のPEの大部分は沈殿物として除去された。濾液を遠心薄膜濃縮器(大河原製作所)で濃縮後、真空凍結乾燥機で乾燥し、マイタケ抽出物85gが得られた。マイタケ抽出物には39gのLPEが含まれていた(LPE含量は45.9重量%)。
実施例1で得たマイタケ抽出物85gにアセトン435mlを加え、室温で2時間攪拌して、抽出物を溶剤中に完全に分散した。次に遠心分離により固液分離し、沈殿物を回収した。回収した沈殿物を減圧乾燥して非揮発物52gを得た。沈殿物中には38gのLPEが含まれていた(LPE含量は73.1%)。
精製大豆レシチン(ツルーレシチン社製、SLP―PIパウダー;ホスファチジルエタノールアミン31.9重量%、リゾホスファチジルエタノールアミン2重量%)3gに精製水200mLを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液に別途調製した塩化カルシウム水溶液(試薬特級 無水0,18g/5mL)とデオキシコール酸ナトリウム(生化学用試薬0.34g/50mL)を加え、室温で30分間攪拌した。その後、水冷下で15分間、8000rpmでホモジナイズし基質溶液とした。基質溶液20mlにリソナーゼ(サンヨーファイン製)の10単位に相当する量を添加して60℃で加水分解反応を行った。1時間ごとにサンプリングを行い、試験例の方法で分析を行った結果、ホスファチジルエタノールアミンが減少してリゾホスファチジルエタノールアミンが増加し、加水分解反応が進行することがわかった。6時間後に反応を止め、真空凍結乾燥により水分を蒸発せしめて反応物乾燥品0.3gを得た。反応物乾燥品に1.5gのアセトンを添加して分散後、遠心分離(8000rpm:20分)を行った。遠心分離後に上清を除去し、下層に残ったアセトンを真空乾燥により除去し、反応物を得た。試験例の方法で定量した結果、反応物中のホスファチジルエタノールアミンの含有量は3.5重量%リゾホスファチジルエタノールアミンの含有量は25.0重量%であった。上清中にはリゾホスファチジルエタノールアミンは認められなかった。
(比較例1)
実施例1の方法で調製したマイタケ石突乾燥物に50容量%含水エタノール100lを添加し40℃で8時間攪拌してエキス成分の抽出を行った後、濾過により残滓を除去した。濾過する際に、PEの大部分は沈殿物として除去された。濾液を遠心薄膜濃縮器(大河原製作所)で濃縮後、真空凍結乾燥機で乾燥し、マイタケ抽出物70gが得られた。マイタケ抽出物には11gのLPEが含まれていた(LPE含量は15.7%)。
(比較例2)
実施例1で得たマイタケ抽出物85gにエタノール435mlを加え、室温で2時間攪拌して、抽出物を溶剤中に完全に分散した。次に遠心分離により固液分離し、沈殿物を回収した。回収した沈殿物を減圧乾燥して沈殿物60gを得た。沈殿物中には8gのLPEが含まれていた(LPE含量は13.3%)。
(比較例3)
特表2003-515346の実施例1に記載された方法を用いて、本願の実施例1記載のマイタケ石突乾燥物を処理した。まず実施例1に記載した、マイタケ石突乾燥物10kgを溶媒(クロロホルム:メタノール=2:1 v/v)50kgで処理してマイタケ脂質580gを得た。マイタケ脂質にはPEが38g、LPEが20g含まれていた。マイタケ脂質80g(PE5.2g、LPE2.8g含有)を80mlのクロロホルムに溶かした。シリカゲル(Merck、70−230mesh)450gを1,000mlのクロロホルムに加えた後、70mm×700mmのガラスカラムに充填した。このカラムに、上記で溶解したマイタケ脂質溶液を投入した後、クロロホルム500ml、クロロホルム:メタノール混合溶液(≒95:5)1000ml、クロロホルム:メタノール混合溶液(≒90:10)1,500ml、クロロホルム:メタノール混合溶液(≒85:15)2,000mlで溶出しながら、溶出されるリン脂質を薄層クロマトグラフィーで調べた。投入したマイタケ脂質溶液中のLPEは、シリカゲルに吸着されたため、回収できなかった。そこでホスファチジルエタノールアミンが溶出される分画だけを集めて、回転式真空エバポレータ(rotary vacuum evaporator)で50℃で濃縮した。投入したマイタケ脂質溶液中のLPEは、シリカゲルに吸着されたため、回収できなかった。得られたホスファチジルエタノールアミンを本願の試験例に記載の方法で分析した結果、純度76%のホスファチジルエタノールアミン6.5gが得られた(PEの収率96%)。マイタケ石突乾燥物から得た脂質(クロロホルム:メタノール=2:1 v/v 可溶物)6.5gを150mlのジエルエーテルに溶かした後、ここにCaClが100mM含有された酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.6、100mM)20mlを添加した。この溶液に5mlのレシターゼ(10,000IU/ml、Novo Nordisk社)を添加し、30℃で13時間激しく攪拌しながら反応させる。溶液を静置させた後、上澄み液の分離(decantation)を行い、溶媒及び生成された脂肪酸を除去した。沈殿部分を常温で200mlのヘキサン:エタノール:水(≒1:1:0.3)の混合溶液で抽出する。下部の水層を除去し、ここに50mlのエタノールを添加して、常温でろ過する。ろ過物にさらにヘキサン:エタノール(≒1:1)溶液を100ml処理し、ろ過し、乾燥する。得られた乾燥物を本願の試験例に記載の方法で分析した結果、純度98%以上のLPE 3.0gが得られた。マイタケ石突乾燥物10kgから得られた脂質580gのすべてを処理した場合には21.8g(580g/80g×3.0g)のLPEが得られることになる。本願の実施例1で得られたマイタケ石突乾燥物10kgから得られたLPEは39gであり、本願の方法の収率が優れていることがわかる。
(比較例4)
実施例1の基質溶液20mlを真空凍結乾燥して乾燥品0.3gを得た。乾燥品に1.5gのアセトンを添加して分散後、遠心分離(8000rpm:20分)を行った。遠心分離後に上清を除去し、下層に残ったアセトンを真空乾燥により除去し、アセトン不溶物を得た。試験例の方法で定量した結果、アセトン不溶物のホスファチジルエタノールアミンの含有量は30.2重量%リゾホスファチジルエタノールアミンの含有量は2.0重量%であった。
本発明で得られる高純度のリゾホスファチジルエタノールアミンは神経を活性化する作用が期待されている。すなわち、機能性食品や医薬品として、利用される可能性がある。また、動物用の添加物として使用される可能性がある。

Claims (8)

  1. リゾホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルエタノールアミンの両方を含有する粗原料に、ホスホリパーゼA1 またはA2 からなる加水分解酵素をあらかじめ作用させて、ホスファチジルエタノールアミンからリゾホスファチジルエタノールアミンを生成せしめた後、全リゾホスファチジルエタノールアミンを含むフラクションを回収することを特徴とする、高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
  2. リゾホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルエタノールアミンを含有する粗原料が、植物油の脱ガム工程で発生する含水ガム質である請求項1記載の高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
  3. リゾホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルエタノールアミンを含有する粗原料が、ペースト状レシチンを加水したものである請求項1記載の高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
  4. リゾホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルエタノールアミンを含有する粗原料が、キノコまたはキノコの乾燥物である請求項1記載の高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
  5. ホスホリパーゼA1 またはA2が、細菌または動物の内蔵由来である請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
  6. リゾホスファチジルエタノールアミンを生成せしめた後、リゾホスファチジルエタノールアミンを含むフラクションを回収するに先立ち、得られたリゾホスファチジルエタノールアミン生成液に対して酵素失活処理を施すことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
  7. エタノールを主成分とする有機溶剤を用いてリゾホスファチジルエタノールアミンを含むフラクションを回収し、同時にホスファチジルエタノールアミン含む不要物を除去することを特徴とする、請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
  8. アセトンを主成分とする有機溶剤を用いてホスファチジルエタノールアミン含む不要物を除去することを特徴とする、請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
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