JP2009268374A - リゾホスファチジルエタノールアミンの製造法 - Google Patents

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淳良 仁科
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昭博 関口
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Abstract

【課題】ホスファチジルエタノールアミンを含有するリン脂質混合物からリゾホスファチジルエタノールアミンを高濃度で含有する反応物を提供する。
【解決手段】ホスファチジルエタノールアミンを10〜99重量%の量で含有するリン脂質混合物をナス由来ホスホリパーゼで加水分解した後、生成されたリゾリン脂質をリゾホスファチジルエタノールアミン以外の不純物を除去するために、乾燥後にアセトンで処理し、リゾホスファチジルエタノールアミン以外の不純物を除去することで、高純度のリゾホスファチジルエタノールアミンを製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルエタノールアミンを含むリン脂質混合物を有機溶媒のない反応系で加水分解してリゾホスファチジルエタノールアミンを製造する方法に関する。より詳しくは、リン脂質混合物を酵素処理した後、溶媒分画することにより、カラム精製法を用いることなく、高純度のリゾホスファチジルエタノールアミンを精製する方法に関する。
リゾホスファチジルエタノールアミンは、動植物の細胞や卵黄や脳細胞に多く含有されている。リゾホスファチジルエタノールアミンは、細胞膜に存在するリン脂質の一種であるホスファチジルエタノールアミンの類縁体である。上述のホスファチジルエタノールアミンは、2つの脂肪酸を分子内に含有している。生体内では、ホスファチジルエタノールアミンがリン脂質加水分解酵素であるホスホリパーゼ(Phospholipase)A2作用を受けて、sn−2位置にある1つの脂肪酸が除去されることによって、リゾホスファチジルエタノールアミンに変換される。
これまで生体に対するリゾホスファチジルエタノールアミンの機能は、よくわかっていなかったが、近年になってリゾホスファチジルエタノールアミンが細胞表面のGタンパク質を介して、細胞内のカルシウム濃度やガン細胞の遊走性に関与したり(非特許文献1)、神経細胞のMAPキナーゼを活性化することにより、神経栄養作用をしめす(非特許文献2)ことがわかっている。また、酵母がリゾホスファチジルエタノールアミンを選択的に取り込んでホスファチジルエタノールアミンやホスファチジルコリンの生合成に利用しているという報告や(非特許文献3)、イエバエがリゾホスファチジルエタノールアミンを抗菌物質として利用しているという報告(非特許文献4)。さらにリゾホスファチジルエタノールアミンの処理は、ジャガイモの葉のエチレンによる老化を抑制すると知られている(非特許文献5)。収穫されたトマトをリゾホスファチジルエタノールアミンで処理する場合、果実の貯蔵期間を延長させる役割をもすると知られている(USP5,110,341、USP 5,126,155)。また、りんごをリゾホスファチジルエタノールアミンで処理すると、皮にアントシアニン形成を促進し、収穫されたりんごの貯蔵中には、軟化抑制作用をすると知られている。こういう作用は、りんご、クランベリー(cranberry)、トマト等のような果実の呼吸速度(respiration rate)を低くする役目、及びエチレンガス形成を促進したり抑制する機能と関連があると知られている(Farag, K. M. and J.P. Palta, "Stimulation of Ethylene Production by Erea, Thidiazoron, and Lysophosphatidylethanolamineand Possible sites of this stimulation" Annual meeting of the American Society of Plant Physiologists, April 1989)。また、リゾホスファチジルエタノールアミンを皮膚美白用組成物として利用する技術が知られている(特許文献1)。
今まで工業的に高純度のリゾホスファチジルエタノールアミンを生産できる方法は開発されていない。シリカゲルカラムクロマトグラフィー法を用いた少量規模の分離精製により製造されたリゾホスファチジルエタノールアミンがAvantiPolar Lipids、IncやSigma社により試薬用として販売されているが非常に高価であり、工業用には利用することができなかった。さらに、カラムクロマトグラフィーを用いたリゾホスファチジルエタノールアミンの生産は、リゾホスファチジルコリンとリゾホスファチジルエタノールアミンの分離が非常に難しいという問題点があった。また、リゾホスファチジルエタノールアミンはクロロホルム、ベンゼン、メタノールのように非常に毒性が高い溶媒には容易に溶解するが、ヘキサンやエタノールに溶解性が悪いため、ヘキサン、エタノール、水といった食品製造に使用できる溶媒をもちいたクロマト精製は困難であった。最近になってカラム精製法を経ることなく、リゾホスファチジルエタノールアミンを精製する方法が公開されたが(特許文献2)、問題を解決するには至っていない。
FEBS Lett. Vol.581 No.23 Page.4411-4416 (2007) 群馬県立産業技術センター研究報告 Vol.2006 Page.29-34 J. Biol. Chem. Vol.281 No.48 Page.36588-36596 (2006) Insect Biochem. Mol. Biol. Vol.34 No.1 Page.43-49 (2004) HortScience Vol.40 No.5 Page.1166-1167 (2005) 特表2005−523266 特表2003−515346
本発明は、かかる事情を背景にして鋭意研究の結果、為されたものであって、その解決課題とするところは、ナスに含まれるホスホリパーゼを用いて、有機溶媒のない反応系で植物リン脂質中のホスファチジルエタノールアミンから、リゾホスファチジルエタノールアミン生成させ、アセトンを用いた分画を行うことにより、最終的に、リゾホスファチジルエタノールアミンを高純度、高収率で得る方法を提供することにある。
本発明者らは、大根、キャベツ、ナス、キュウリ等の野菜が含有するホスホフォリパーゼの作用を鋭意研究した結果、ナスのホスホリパーゼを有機溶媒のない反応系でホスファチジルエタノールアミンまたは、ホスファチジルエタノールアミンを含む植物リン脂質に作用させるとき、その中のホスファチジルエタノールアミンは加水分解を受けて、C1位またはC2のアシル基が離脱を起こすことを確認した。すなわち、リゾホスファチジルエタノールアミンは当該ホスホリパーゼの触媒毒にならないことを確認した。
そして、ホスファチジルエタノールアミンを含む植物リン脂質に、ナスのホスホリパーゼを有機溶媒のない反応系であらかじめ作用させて、ホスファチジルエタノールアミンからリゾホスファチジルエタノールアミンを生成せしめた後、反応物をアセトンに溶解しリゾホスファチジルエタノールアミンを含むフラクションを回収することにより、リゾホスファチジルエタノールアミンを高純度、高収率で得ることができることを見いだした。
即ち、本発明は、次の[1]〜[5]である。
[1](1)ホスファチジルエタノールアミンを含有するリン脂質混合物をナスのホスホリパーゼで処理して、混合物中のホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンに転換させることで、リゾリン脂質(lysophospholipid)混合物を得る段階と、 (2)前記段階(1)で得られたリゾリン脂質混合物を、アセトンで抽出する溶媒分画段階と、(2)で生成された沈殿を回収する段階と、(4)アセトンを真空乾燥により取り除く段階を含むことを特徴とする高純度のリゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
[2] 前記段階(1)のリン脂質混合物は、ホスファチジルエタノールアミンを10〜99重量%の量で含有することを特徴とする[1]に記載の製造方法。
[3] 前記段階(1)のリン脂質混合物は、大豆リン脂質又は卵黄リン脂質であることを特徴とする[1]に記載の製造方法。
[4] 前記段階(1)のホスホリパーゼは、ホスホリパーゼA2であることを特徴とする[1]に記載の製造方法。
[5] 前記段階(2)のアセトンの純度が90容量%以上であることを特徴とする [1]に記載の製造方法。
[6]前記段階(1)のリン脂質加水分解反応を、有機溶媒を使用せずに、リン脂質混合物を乳化した状態で行うことを特徴とする[1]に記載の製造方法。
本発明は、高純度リゾホスファチジルエタノールアミンの製造法に関するものであり、更に詳しくは、ナスに含まれるホスホリパーゼを用いて、有機溶媒のない反応系で植物リン脂質中のホスファチジルエタノールアミンから、リゾホスファチジルエタノールアミン生成させ、アセトンを用いた分画を行うことにより、最終的に、リゾホスファチジルエタノールアミンを高純度、高収率で得る製造法に関するものである。
本発明は、粗原料に含まれるホスファチジルエタノールアミンを、有機溶媒のない反応系で、ナスに含まれるホスホリパーゼを用いてリゾホスファチジルエタノールアミン変換した後、アセトンを用いて高濃度化する方法であり、実用上十分安価なコストで製造できるリゾホスファチジルエタノールアミンの製造法を提供するものである。
以下、本発明をより具体的に説明する。
本発明の方法に使われる出発物質であるリン脂質混合物は、ホスファチジルエタノールアミンを10〜99重量%、好ましくは15〜70重量%の量で含有するもので、例えば、大豆レシチン、粗大豆レシチン、卵黄レシチンなどを挙げることができる。たとえば、SLP―ホワイト(ホスファチジルエタノールアミン23%含有)、SLP-PIパウダー(ホスファチジルエタノールアミン32%含有)(いずれも辻製油株式会社製)等を利用することができる。また、油糧植物以外の植物、たとえばマイタケ等の植物中に微量に存在するリン脂質を抽出して濃度を高めリゾホスファチジルエタノールアミンの原料とすることができる。
本発明でホスホリパーゼとして丸なす、小なす、水なす、長卵なす、長なす、大長なす、米なす等の食用のナスの抽出物を使用する。ナスからのホスホリパーゼの抽出方法として、たとえば、ナスに加水、粉砕後、2倍量のアセトンを加えて静置した際の沈殿物の乾燥品(ナスアセトンパウダー)を得る方法がコスト的に優れている。アセトンパウダーを溶剤分別、クロマトグラフィー等で精製し、高純度のホスホリパーゼとして利用することも可能である。
本発明では、有機溶媒のない反応系で、上述のホスファチジルエタノールアミンを高濃度に含有するリン脂質混合物にナスを起源とするホスホリパーゼを作用させて、リゾホスファチジルエタノールアミンを生産する。一般に、リン脂質の酵素的加水分解反応は、リン脂質又はリン脂質混合物を2〜100倍のカルシウムイオンを含む水又は有機溶媒に溶かし、酵素を添加した後、一定温度で激しく攪拌することによって行われる。酵素反応温度は、好ましくは30〜70℃、より好ましくは45〜55℃の温度範囲であることが好ましい。反応温度が30℃よりも低い場合は、反応速度が著しく遅くなる。また、反応温度が70℃よりも高くなると、酵素活性が阻害される。
本発明では、有機溶媒を使用せずに反応を促進する目的で、基質となるリン脂質混合物をあらかじめ水に乳化する。乳化を容易にするために、グリセリン脂肪酸エステル等の食品用乳化剤を併用することができる。乳化と加水分解反応を促進するために、カルシウムイオンを添加する。具体的には、5mM以上の塩化カルシウム、水酸化カルシウム等の塩を、あらかじめ水に溶解し、次いで基質となるリン脂質混合物とカルシウムを添加した水を混合、乳化する。乳化は、プロペラ攪拌機、ホモジナイザー等を用いることにより、効率的に行うことができる。カルシウムイオンの濃度は、好ましくは1〜100mM、より好ましくは4から20mMとする。カルシウムイオンの濃度が1mM未満では十分な効果が得られず、100mMより濃度を高めても効果は頭打ちとなる。カルシウムイオンを添加した水の量は、リン脂質混合物1重量部に対して2〜100重量部とする。水の量が2重量部未満では、乳化が不完全となり、100重量部以上では酵素の必要量が多くなり、コスト的な問題が生じる。
本発明では、添加する酵素の量は、種類、純度、原料状態、価格及び基質内リン脂質の含量などを考慮して決定される。一般的な酵素投与量は、リン脂質kg当り10,000〜1、000、000ユニットの酵素を使用する。加水分解の反応時間は、添加された酵素の量、反応温度、リン脂質の含量及び攪拌速度等により決定される。具体的には、反応系内のホスファチジルエタノールアミンとリゾホスファチジルエタノールアミンの量を薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーで経時的にモニターし、両者の比が最大となった時点で反応を終了する方法が好ましい。一般的に反応に必要な時間は1時間から40時間である。
本発明では、リン脂質の加水分解反応の際のpHを7.5〜10、好ましくは8.5〜9とする。pHが7.5未満であったり、10より高い場合には、反応速度が遅くなるため好ましくない。
一方、上記のように酵素的リン脂質転換反応を実施しても、100%の転換率を期待し難くて、副産物としてホスファチジン酸(PA)、リゾホスファチジン酸(Lysophosphatidic acid)等が生成されることを避けられない。そして、酵素反応により生成されたリゾリン脂質が界面で強い親水性傾向を持つため、リゾリン脂質の回収が容易でなく、収率が低下する。溶媒抽出によりリゾリン脂質を回収する場合、多くの水を含有するから、濃縮時、気泡を発生させるため、濃縮工程が難しい。こうしてリゾリン脂質を生産しても、リゾリン脂質からリゾホスファチジルエタノールアミンだけを選択的に分離することは、容易でない。リゾリン脂質の主要構成成分であるリゾホスファチジルエタノールアミンとリゾホスファチジルコリンが水と有機溶媒に対する溶解性向が類似しているため、分離が難しい。
本発明では、このような問題点を解決し、高純度のリゾホスファチジルエタノールアミンを得るために、反応物を乾燥後に、高純度のアセトンを用いて、リン脂質混合物の反応物を分散し、沈殿物を回収することで、リゾホスファチジルエタノールアミン以外の不純物(すなわち、反応後に生成されるリゾホスファチジルエタノールアミン以外のリン脂質(例えば、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸等)や中性脂質、脂肪酸、コレステロール等を除去して、高純度のリゾホスファチジルエタノールアミンを製造することができる。アセトンを用いて、上述のリン脂質混合物の加水分解物から高純度のリゾホスファチジルエタノールアミンを得る際に、系内に水分が残っていると、リゾホスファチジルエタノールアミンの上清に対する溶解度が上がり、回収した沈殿中のリゾホスファチジルエタノールアミンの量が減ってしまう。よって、アセトンで処理するリン脂質混合物中の水分を極力減らす必要がある。本発明では、反応後真空乾燥によって、反応物を乾燥した後に、高純度のアセトンを加える。本発明で用いるアセトンの純度は、90容量%以上とする。90%容量未満のアセトンにはリゾホスファチジルエタノールアミンがとけ込むため、収率が低下する。本発明で使用するアセトンの量は、反応後のリン脂質混合物1重量部に対し2〜10重量部である。アセトンの量が2重量部未満では不純物の除去が不十分となり、10重量部より量を大きくしても沈殿物中のリゾホスファチジルエタノールアミンの含有量が高くならない。
本発明において、リン脂質を溶媒分画する反応系の温度は、非常に重要な因子中の一つである。有機溶媒でのリゾホスファチジルエタノールアミンとリゾホスファチジルコリンは、溶解度が温度に非常に依存的である。したがって、選択的なリゾリン脂質の分画のための温度は、10℃乃至60℃程度の穏やかな条件に設定されるが、15℃乃至40℃の温度範囲であることが好ましく、より好ましくは25℃乃至30℃である。
有機溶媒分画段階で形成されたリゾホスファチジルエタノールアミンを含むリン脂質混合物は沈殿物として、通常の方法、例えばろ過、遠心分離、又は上澄み液の除去などの方法で回収することができる。
上記で説明した有機溶媒分画/沈殿物回収の段階は、1回実施してもよいが、リゾホスファチジルエタノールアミンの純度を高めるために、2回以上繰り返して実施することができる。この場合、各段階に使われる有機溶媒の種類又は混合比率は、互いに同じであるか、異なることができる。
本発明によるリゾホスファチジルエタノールアミン生産工程は、研究室、又は産業的規模で高純度のリゾホスファチジルエタノールアミンの生産に效率的に適用することができ、何らの付加的な困難無しに高純度のリゾホスファチジルエタノールアミンを得ることができる。このように得られた安価の高純度リゾホスファチジルエタノールアミンは、製薬や農業分野において汎用的に使うことができる。
以下、試験例、実施例そして比較例に基づいて本発明をより詳しく説明する。しかし、これらの実施例に本発明の範囲が限定されるものではない。
(試験例1)ホスホリパーゼの力価測定
(装置及び備品)
pHスタット装置一式、ホモジナイザー一式、平底試験管(2.5cmφ*12cm)必要本数、攪拌子 必要本数、容量可変ピペット (50μL、100μLが計れるもの)、メスフラスコ 必要本数、メスピペット 必要本数、電子天秤
(試薬・試液)
精製大豆レシチン(ツルーレシチン社製、SLP―PIパウダー)、塩化カルシウム水溶液(試薬特級 無水0.18g/5mL)、デオキシコール酸ナトリウム(生化学用試薬0.34g/50mL)、精製水、0.02N水酸化カリウム水溶液
(基質溶液の調製)
精製大豆レシチン3gに精製水200mLを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液に別途調製した塩化カルシウム水溶膀(試薬特級 無水0,18g/5mL)とデオキシコール酸ナトリウム(生化学用試薬0.34g/50mL)を加え、室温で30分後攪拌した。その後、水冷下で15分間、8000rpmでホモジナイズした。
(標準溶液の調製)
力価1万単位/mLの標準液1mLに精製水9mLを加えて溶かし、標準溶液とした。
(試料溶液の調製)
被験サンプルの予想力価に合わせて、10単位/mLになるように、標準溶液を精製氷で希釈した。このときの希釈倍率をaとした。
(定量法)
基質溶液20mLを攪拌子とともに平底試験管(2.5cmφ*12cm)に入れ、事前に10分間以上40°Cの恒温槽に浸けた。攪拌子をまわしながらpHスタットをスタートし、最初のプレ滴定モードが終了後、速やかに試料溶液50μL(力価の小さい場合は100μL)を加えた。
滴定液は0.02N水酸化カリウム水溶液とした。レコーダーにモニターした滴定液の消費量を平均して一分間当たりの消費量(bmL)として求めた。
一分間に消費されたKOHのμモル数を読み取り力価とした。標準溶液の消費量も測定し、下式で標準溶液に対する相対力価を算出した。
読み取り力価=0.02*b*a*1,000,000/注入量(μL)
力価=(試料溶液の読みとり力価/標準溶液の読みとり力価)×標準品の表示力価
試験例2 ナスホスホリパーゼの調製
DavidsonとLong(1958)の方法に従い行なった{Davidson, F.M., & Long, C. (1958). The structure of naturally occurring phosphoglycerides. 4. Action of cabbage-leaf phospholipaseD on ovolecithin and related substances. Biochem. J., 69, 458-466.}。すなわち、試料のナス400gに純水600mlを加え、氷冷下にてワーリングブレンダー(ハイパワーホモジナイザー,広沢鉄工所社製)でホモジナイズ(10,000rpm,1min,5回)した。これをガーゼろ過し、ろ液を遠心分離機(CX-250,Tomy社製)で遠心分離(10,000rpm,4℃,30min)した。得られた上澄液(水抽出画分)を加温(55℃,5min)した後、遠心分離(10,000rpm,4℃,30min)した。得られた上澄液(熱処理画分)に2倍量の冷アセトンを撹拌しながら加え、氷冷下で1時間静置した後、生じた沈殿を遠心分離(10,000rpm,4℃,30min)して回収し、真空凍結乾燥機(VD-800F,Taitec社製)で凍結乾燥した。凍結乾燥物を氷冷させた乳鉢で微粉末にし、得られたパウダーをナスホスホリパーゼとし、-20℃で保存した。
試験例3 薄層クロマトグラフィーによるリン脂質の定性分析
加水分解反応の反応液0.5mlに0.5mlのメタノールを加えて激しく攪拌した後、クロロホルム0.5mlを添加して激しく攪拌し、8000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離後の下層2μlをTLCプレート(シリカゲルF254メルク社製)にスポットし、展開液(クロロホルム:メタノール:水=61:35:4)で展開し、風乾後、ニンヒドリン試薬(アミノ基検出用)で検出した。比較のためリゾホスファチジルエタノールアミンの標品をスポットし、Retention factor value (Rf値) を比較した。
試験例4 高速液体クロマトグラフィーによるリン脂質の定量
高速液体クロマトグラフは日本分光社製800シリーズを用い、カラムはDevelosil 60-5(野村化学) 、カラム温度40℃、移動相はクロロホルム/95%メタノール=85/15とし、流速は1.0ml/minで分離した。検出器は蒸発光散乱検出器(SEDERE製 SEDEX75 70℃)を使用した。市販のリゾホスファチジルエタノールアミン(DOOSAN Serdary Research Laboratories社製)を標準品として検量線を作成した。
精製大豆レシチン(ツルーレシチン社製、SLP―PIパウダー;ホスファチジルエタノールアミン31.9重量%、リゾホスファチジルエタノールアミン0重量%)3gに精製水200mLを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液に別途調製した塩化カルシウム水溶膀(試薬特級 無水0,18g/5mL)とデオキシコール酸ナトリウム(生化学用試薬0.34g/50mL)を加え、室温で30分後攪拌した。その後、水冷下で15分間、8000rpmでホモジナイズし基質溶液とした。基質溶液20mlに試験例2で調製したナスホスホリパーゼを10単位を添加して60℃で加水分解反応を行った。1時間ごとにサンプリングを行い、試験例3の方法で定性分析を行った結果、ホスファチジルエタノールアミンが減少してリゾホスファチジルエタノールアミンが増加し、加水分解反応が進行することがわかった。6時間後に反応を止め、真空凍結乾燥により水分を蒸発せしめて反応物乾燥品0.3gを得た。反応物乾燥品に1.5gのアセトンを添加して分散後、遠心分離(8000rpm:20分)を行った。遠心分離後に上清を除去し、下層に残ったアセトンを真空乾燥により除去し、反応物を得た。試験例4の方法で定量した結果、反応物中のホスファチジルエタノールアミンの含有量は3.5重量%リゾホスファチジルエタノールアミンの含有量は23.0重量%であった。上清中にはリゾホスファチジルエタノールアミンは認められなかった。
精製大豆レシチン(ツルーレシチン社製、SLP−PIホワイト;ホスファチジルエタノールアミン22.8重量%、リゾホスファチジルエタノールアミン0重量%)10kg図2に方法で処理して6.8kgの反応物を得た。試験例4の方法で定量した結果、反応物中のホスファチジルエタノールアミンの含有量は5.0重量%リゾホスファチジルエタノールアミンの含有量は17.6重量%であった。上清中にはリゾホスファチジルエタノールアミンは認められなかった。
(比較例1)
実施例1で、ナスホスホリパーゼの代わりに試験例2と同じ方法で得たキャベツ酵素を用いて反応を行った。試験例3の方法で定性分析を行った結果、ホスファチジルエタノールアミンが減少するものの、リゾホスファチジルエタノールアミンが増加は認められなかった(図3)。
(比較例2)
実施例2の方法で反応を行い、アセトンの代わりにエタノールで溶媒分画を行った(図4)。上清と沈殿物の両方から真空乾燥によりエタノールと除去して得られた上清乾燥物と沈殿乾燥物の収量は、それぞれ4.5kgと4.7kgであった。また、試験例4の方法で測定した上清乾燥物と沈殿乾燥物中のリゾホスファチジルエタノールアミン含有量はそれぞれ、13.1重量%、12.9重量%であった。
(比較例3)
実施例1で、ナスホスホリパーゼの代わりに市販の豚膵臓由来のホスホリパーゼ(リポモッド699L、ジェネンコア共和)を用いて反応を行った。反応物を試験例4の方法で定量した結果、反応物中のホスファチジルエタノールアミンの含有量は15.5重量%リゾホスファチジルエタノールアミンの含有量は11重量%であった。
実施例1と比較例1、2の結果から、ナスホスホリパーゼが特異的にリゾホスファチジルエタノールアミンの製造に適していることがわかる。また、実施例2と比較例2の結果から、アセトンを用いた溶剤分別により、反応物中のリゾホスファチジルエタノールアミンを高まることがわかる。
本発明の方法により製造された高純度のリゾホスファチジルエタノールアミンは、安価であり、且つ食品、医薬品、化粧品及び農業用途に用いられることができる。
混合リン脂質をナス加水分解酵素で処理したときのホスファチジルエタノールアミンとリゾホスファチジルエタノールアミンの定性分析結果である。 実施例2の工程図である。 混合リン脂質をキャベツ酵素で処理したときの定性分析結果である。 比較例2の工程図である。

Claims (6)

  1. (1)ホスファチジルエタノールアミンを含有するリン脂質混合物をナスのホスホリパーゼで処理して、混合物中のホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンに転換させることで、リゾリン脂質(lysophospholipid)混合物を得る段階と、(2)前記段階(1)で得られたリゾリン脂質混合物を乾燥後に、アセトンで抽出する溶媒分画段階と、(3)前記段階(2)で生成された沈殿を回収する段階と、(4)アセトンを真空乾燥により取り除く段階を含むことを特徴とする高純度のリゾホスファチジルエタノールアミンの製造方法。
  2. 前記段階(1)のリン脂質混合物は、ホスファチジルエタノールアミンを10〜99重量%の量で含有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記段階(1)のリン脂質混合物は、大豆リン脂質又は卵黄リン脂質であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  4. 前記段階(1)のリン脂質加水分解酵素は、ホスホリパーゼAであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  5. 前記段階(2)のアセトンの純度が90容量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  6. 前記段階(1)のリン脂質加水分解反応を、有機溶媒を使用せずに、リン脂質混合物を乳化した状態で行うことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN114324621A (zh) * 2020-10-11 2022-04-12 北京泰德制药股份有限公司 一种改进的药物制剂中溶血磷脂酰乙醇胺的检测方法

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