JP2006506943A - 抗原結合速度の大きい抗体変異体 - Google Patents
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Abstract
Description
(発明の分野)
ここに開示する本発明は、抗原会合速度(抗原結合速度)の大きい抗体変異体に関する。本抗体変異体は、その少なくとも1つの高頻度可変領域の内部又は近傍に、一又は複数の変更(変化)を有し、この変更により抗体変異体とそれが結合する抗原の間の電荷相補性が増大する。
抗体はタンパク質であり、特定の抗原に対する結合特異性を持つ。未変性の抗体はふつう約150000ダルトンのヘテロ4量体の糖タンパクであり、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖から構成される。それぞれの軽鎖は1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に結合されるが、ジスルフィド結合の数は異なる免疫グロブリンのアイソタイプの重鎖によって変化する。それぞれの重鎖と軽鎖はまた規則的な間隔を持った鎖内ジスルフィド結合を持つ。それぞれの重鎖は一端に複数の定常ドメインを伴った可変ドメイン(VH)を持つ。それぞれの軽鎖は一端に可変ドメイン(VL)と他端に定常ドメインを持ち、軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1定常ドメインとアラインメントされ、軽鎖可変ドメインは重鎖可変ドメインとアラインメントされる。特定のアミノ酸残基が軽鎖と重鎖の可変ドメインの界面を形成すると考えられている。
定常ドメインは抗原に抗体を結合させるのに直接には関係しないが、様々なエフェクター機能を示す。その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体又は免疫グロブリンは異なったクラスに分けられる。IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMという免疫グロブリンの5つの主要なクラスがあり、これらの幾つかは、例えばIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4;IgA1及びIgA2のようなサブクラス(アイソタイプ)に更に分割できる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常領域はそれぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれている。様々なヒト免疫グロブリンのうち、ヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgMだけが補体を活性化することが知られている。
様々な研究グループが、インビトロで突然変異を抗体遺伝子に導入し、親和性を向上させた突然変異体を単離するためにアフィニティ選択を使用することによって、免疫系の親和性成熟プロセスの模倣を試みている。そのような突然変異抗体は繊維状バクテリオファージの表面にディスプレイすることができ、抗体は抗原に対するそれらの親和性によって、又は抗原からの解離(オフレート)の速度によって選択することができる。Hawkins 等 J. Mol. Biol. 226:889-896(1992)。CDRウォーキング(walking)突然変異誘発が、ヒト免疫不全ウィルスタイプ1(HIV−1)(Barbas III 等, PNAS (USA) 91: 3809-3813(1994); 及びYang 等 J. Mol. Biol. 254:392-403 (1995))のヒト外被糖タンパク質gp120と抗c−erbB−2単鎖FV断片(Schier 等 J. Mol. Biol. 263:551567(1996))に結合するヒト抗体を親和性成熟させるのに用いられている。抗体チェーンシャフリングとCDR突然変異誘発は、HIVの3次高度可変ループに対して産生される高度親和性ヒト抗体(Thompson 等 J. Mol. Biol. 256:77-88(1996))を親和性成熟させるのに使用された。Balint 及びLarrick Gene 137:109-118(1993)は、彼らが「倹約突然変異(parsimonious mutagenesis)」と呼び、コンピュータ支援オリゴデオキシリボヌクレオチドスキャニング突然変異誘発を含む技術を記載しており、それにより可変領域遺伝子の3つ全てのCDRsが改良された変異体について一斉にかつ十分に検索される。Wu等 は、アフィニティは、6つ全てのCDRsの全ての部位が変異され、最も高い親和性を持つ突然変異体を含むコンビナトリアルライブラリの発現とスクリーニングが続く最初の制限突然変異誘発法を使用してαvβ3-特異的ヒト化抗体を親和性成熟させた(Wu 等 PANS (USA) 95 :6037-6-42(1998))。ファージ抗体はChiswell及びMcCafferty TIBTECH 10:80-84(1992))とRader及びBarbas III Current Opinion in Biotech. 8:503 -508(1997)の中で概説されている。
式1
多くのタンパク質−タンパク質相互作用の突然変異体の間に存在する親和性の差異(Voss, E.W. Journal of Molecular Recognition 6(2):51-8 (1993))は、主にそれらの解離速度により規定される。この知見は、突然変異がタンパク質−タンパク質界面(接合点)における直接的に接触に関与する親和性を上昇させ、解離速度定数が好ましい短距離相互作用の中断に依存していることと符合する。対照的に、会合速度定数(k1)は2分子間の衝突の頻度(Z)、及び各衝突が複合体を形成する効率に依存している。さらに、前記効率は、2分子の配向要件を決める立体因子(p)と、十分な熱活性化エネルギーを有する分子の数に依存する(Fersht, A. R. (1985). Enzyme Structure and Mechanism, W. H. Freeman and Company, New York, NY)(式2)。
式2
ここで、Eaは複合体形成のための活性化エネルギーを、Rは普遍気体定数を、Tは温度(絶対温度)をそれぞれ表す。
本発明は、a)親抗体の可変ドメイン内において、1)溶液に露出しており、2)高頻度可変領域の内部又は近傍にあり、且つ3)親抗体が結合したときの抗原の約20Å以内にある標的アミノ酸残基を同定する工程と、b)工程a)の標的残基を、異なる置換アミノ酸残基で置換することにより、抗体と抗原の間の電荷相補性を上昇させる工程を含む、親抗体の抗体変異体の作成方法を提供する。一態様においては、本発明の方法により、抗原との会合速度が親抗体の会合速度よりも大きい抗体変異体が作成される。本発明は、前記方法に従って産生された抗体変異体をさらに提供する。
加えて、本発明はその高頻度可変領域の内部又は近傍に、抗体変異体とそれが結合する抗原の間の電荷相補性を増大させるアミノ酸変更を有する抗体変異体を提供する。
本発明は、更に、抗体変異体をコードしている単離された核酸;場合によってはベクターを用いて形質転換された宿主細胞によって認識される調節配列に作用可能に結合した、核酸を含むベクター;核酸で形質転換された宿主細胞;核酸が発現するように該宿主細胞を培養し、場合によっては宿主細胞培養物から(例えば、宿主細胞培養培地から)抗体変異体を回収することを含んでなる抗体変異体の産生方法を提供する。回収した抗体変異体は、細胞障害剤又は標識などの異種分子と抱合されてもよい。
本発明は、有効量の抗体変異体を哺乳動物に投与することを含んでなる哺乳動物を治療する方法をまた提供する。
(1)溶液中で抗体と抗原を組み合わせた後、
(2)経時的に抗体−抗原複合体の生成を測定すること
を含む。
I.定義
「抗体」という用語は最も広義に使用され、具体的には、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物活性を示す限り抗体断片も含む。
ここで使用される場合の「高頻度可変領域」なる用語は、構造的に明確化されたループを形成する及び/又は配列が高度に可変である抗体可変ドメインの領域を指す。高頻度可変領域は「相補性決定領域」すなわち「CDR」からのアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基24−34(CDR L1)、50−65(CDR L2)及び89−97(CDR L3)、及び重鎖可変ドメインの31−35(CDR H1)、50−56(CDR H2)及び95−102(CDR H3);Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))、及び/又は「高頻度可変ループ」からの残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基26−32(ループL1)、50−52(ループL2)及び91−96(ループL3)、及び重鎖可変ドメインにおいては26−32(ループH1)、53−55(ループH2)及び96−101(ループH3);Chothia及びLesk J. Mol. Biol. 196:901-917(1987))を含んでなる。両方の場合において、可変ドメイン残基は上掲のKabat等によって番号付けされる。「フレームワーク」すなわち「FR」残基は、ここで定義した高頻度可変領域の残基以外の可変ドメイン残基である。
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質上均一な抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち集団を構成する個々の抗体は、少量で存在しうる自然に生じうる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対応する。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対応する異なる抗体を典型的には含む通常の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対応する。「モノクローナル」という形容は、実質上均一な抗体集団から得られているという抗体の性質を示し、抗体を何らかの特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら, Nature 256:495(1975)によって初めて記載されたハイブリドーマ法によって作製することができ、あるいは組換えDNA法(例えば、米国特許第4816567号を参照)によって作製することができる。「モノクローナル抗体」は、Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks等, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載された方法を使用してファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小配列を含むキメラ抗体である。大抵は、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、ドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の性能を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの少なくとも一部をさらに含んでなる。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525(1986); Riechmann等, Nature 332:323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)参照。
「ダイアボディー」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体小断片を指すもので、断片は同じポリペプチド鎖(VH-VL)に、軽鎖可変ドメイン(VL)に結合した重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖において二つのドメイン間の対形成が許されないほど短いリンカーを使用することにより、他の鎖の相補的ドメインとの対形成を強制し、二つの抗原結合部位が形成される。ダイアボディーは、例えば欧州特許第404097号;国際公開第93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)に詳しく記載されている。
本出願を通して使用される「線状抗体」という表現は、Zapata等, Protein Eng. 8(10):1057-1062(1995)に記載されている抗体を指す。簡単に述べると、これらの抗体は、一対の抗原結合領域を形成する一対の直列型Fdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。線状抗体は二重特異性又は単一特異性であり得る。
ここで使用される「抗体変異体」とは親抗体のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を持つ抗体を意味する。好適には、抗体変異体は天然には見出されないアミノ酸配列を持つ重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインを含む。そのような変異体は必ず100%未満の親抗体との配列同一性又は類似性を持つ。好適な実施態様では、抗体変異体は、親抗体の重鎖又は軽鎖可変ドメインの何れかのアミノ酸配列と約75%から100%未満、より好ましくは約80%から100%未満、より好ましくは約85%から100%未満、より好ましくは約90%から100%未満、最も好ましくは95%から100%未満のアミノ酸配列同一性又は類似性であるアミノ酸配列を持つ。この配列に対する同一性又は類似性は、配列を整列させ、必要ならば間隙を導入して、最大のパーセント配列同一性を達成した後の、親抗体残基と同一である(すなわち、同じ残基)候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとしてここで定義される。可変ドメインの外側の抗体配列中へのN末端、C末端又は内部伸長、欠失又は挿入は何れも配列同一性と類似性に影響を与えるものとはみなされない。抗体変異体は一般にその1つ以上の高頻度可変領域の内部又は近傍に1つ以上のアミノ変更を持つものである。
「アミノ酸置換」とは、予め定まったアミノ酸配列中に存在するアミノ酸残基を他の異なったアミノ酸残基で置換することを意味する。
「置換」アミノ酸残基とは、アミノ酸配列中の別のアミノ酸残基を置換又は置き換えるアミノ酸残基を意味する。置換残基は天然に生じるアミノ酸残基又は天然には生じないアミノ酸残基でよい。
アミノ酸挿入はペプチド結合によって結合した2又はそれ以上のアミノ酸残基を含むペプチドが予め定まったアミノ酸配列に導入される「ペプチド挿入」を含んでいてもよい。アミノ酸挿入がペプチド挿入を含む場合、挿入されたペプチドは天然には存在しないアミノ酸配列を持つようにランダム突然変異によって産生され得る。
「天然に生じるアミノ酸残基」は、通常、アラニン(Ala);アルギニン(Arg);アスパラギン(Asn);アスパラギン酸(Asp);システイン(Cys);グルタミン(Gln);グルタミン酸(Glu);グリシン(Gly);ヒスチジン(His);イソロイシン(Ile):ロイシン(Leu);リジン(Lys);メチオニン(Met);フェニルアラニン(Phe);プロリン(Pro);セリン(Ser);トレオニン(Thr);トリプトファン(Trp);チロシン(Tyr);及びバリン(Val)からなる群から選択される、遺伝子暗号にコードされたものである。
「露出した(exposed)」アミノ酸残基は、その表面の少なくとも一部が、溶液中のポリペプチド(例えば抗体又はポリペプチド抗原)中に存在する場合、ある程溶媒に曝されている残基である。好ましくは、露出したアミノ酸残基は、その側鎖表面積の少なくとも約3分の1が溶媒に露出している残基である。残基が露出しているか否かを決定するために様々な方法が利用可能で、ポリペプチドの分子モデル又は構造の解析もその1つである。
「電荷を持つ」アミノ酸残基とは、最終的に全体で正の正味の電荷を有しているか、又は最終的に全体で負の正味の電荷を有しているアミノ酸残基である。正の電荷を有するアミノ酸残基には、アルギニン、リジン及びヒスチジンが含まれる。負の電荷を有するアミノ酸残基には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれる。
ここでの「会合速度」とは、抗体が溶液中で抗原と複合体を形成するときのオンレート定数(k1)を意味する。
ここでの「解離速度」とは、オフレート定数(k−1)、又は抗体と抗原間の短距離相互作用の中断を意味する。
「疾患」とは抗体変異体による治療の恩恵を受けるであろう任意の症状である。これには、哺乳動物が問題とする疾患になる素因になる病理的症状を含む慢性及び急性の疾患又は障害が含まれる。
治療目的で「哺乳動物」と言うときは、ヒト、家庭及び牧場の動物、非ヒト霊長類、及び動物園の動物、運動用の動物、愛玩用動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等々を含む哺乳動物に分類されるあらゆる動物を意味する。
「コントロール配列」という表現は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
ここで使用されるところでは、「細胞」、「株化細胞」及び「細胞培養物」という表現は相互に交換可能な意味で用いられ、その全ての用語は子孫を含む。従って、「形質転換体」及び「形質転換細胞」は、最初の対象細胞及び何度培養が継代されたかに関わらず最初のものから誘導された培養を含む。また、全ての子孫が、意図的な変異あるいは意図しない変異の影響で、正確に同一のDNAを有するわけではないことも理解すべきである。本来の形質転換細胞についてスクリーニングしたものと同じ機能又は生物活性を有する変異体子孫が含まれる。命名を区別することが意図されている場合は、文脈から明らかであろう。
ここで言う発明は、少なくとも部分的に、抗体変異体の作成方法に関する。親抗体又は出発抗体は、かかる抗体を産生するために当該分野で利用可能な技術を使用して調製されうる。抗体産生のための例示的な方法は次のセクションでより詳細に記載する。更に、本出願では、対象とする抗体について入手可能な情報(例えばアミノ酸配列データ)を使用して本発明の抗体変異体を産生させることができるので、実際に親抗体を実際に製造することを必要としない。
親抗体は所望の標的抗原に対するものである。好適には、標的抗原は生物学的に重要なポリペプチドであり、病気や疾患を被っている哺乳動物に抗体を投与することによって該哺乳動物に治療的恩恵をもたらしうる。しかしながら、非ポリペプチド抗原(例えば腫瘍に関連した糖脂質抗原;米国特許第5,091,178号参照)に対する抗体もまた考えられる。
親抗体は標的抗原に対する予め存在する強い結合親和性を持ちうる。例えば、親抗体は約1x10−7M、好ましくは約1x10−8M及び最も好ましくは約1x10−9Mを越えない結合親和性(Kd)値で、対象の抗原に結合しうる。
一実施態様では、変更は1以上の電荷アミノ酸残基の、親抗体の1以上の高頻度可変領域の内部又は近傍への挿入を含む。本実施態様では、抗体−抗原複合体の分析によれば、挿入された残基が通常抗原には通常結合しない。一般には、約1から約20まで、又は約40までの電荷相補性を増大させるアミノ酸残基を挿入することができる。
1) 好ましくは、残基は溶液中に露出しており、例えばその側鎖表面積の少なくとも3分の1が溶媒に露出している。如何なる理論に制約されるものではないが、これは、埋没残基の突然変異により抗体の不安定化の恐れが排除されたためと考えられる。
2) 静電引力は距離の関数として減衰するため、望ましくは残基は結合状態において抗原の少なくとも約20Å以内(好ましくは約16Å以内)にある。
3) 直接接触残基の突然変異は結合複合体を不安定化させる可能性があるため、好ましくは残基は結合状態の抗原と直接接触していない。
4) 高頻度可変領域又は相補性決定領域(CDRs)は患者に免疫原性反応を引き起こしにくい徴候があるため、それら領域内にある残基の方がそうでない残基よりも好ましい。
5) 通常、変更について、抗体と抗原の間の電荷相補性を増大させることができる残基のみを考慮する。
本発明では、本発明の基準に従った1回のアミノ酸置換を考慮しているが、好ましくは2以上の置換、例えば1つの可変領域につき約2から約10又は約20の置換(つまり、両方の可変ドメインについてそれぞれ約20又は約40までのアミノ酸置換)を組み合わせる。ここでの抗体と抗原の間の電荷相補性を増大させる変更は、高頻度可変領域における別のアミノ酸配列変更又は抗体の他の領域におけるアミノ酸配列変更と組み合わせることができる。
抗体変異体の生産に続いて、親抗体に対する該分子の活性が決定されうる。上に記載したように、これは抗体の会合速度、及び/又は結合親和性、及び/又は他の生物活性を決定することを含みうる。本発明の好適な実施態様では、抗体変異体のパネルが調製され、一又は複数のアッセイにおいて会合速度及び/又は抗原への結合親和性及び/又は効能についてスクリーニングされる。最初のスクリーニングから選択された抗体変異体の一又は複数を場合によっては一又は複数の更なる機能アッセイにかけて、抗体変異体が一を越えるアッセイで改善された活性を有することが確認される。
親抗体であり得、よってここに詳細に説明した技術による修飾を必要とする抗体を産生する技術は以下の通りである。
(i) 抗原の調製
場合によっては他の分子に抱合されていてもよい可溶性抗原又はその断片を、抗体を産生するための免疫原として使用することができる。例えばレセプターのような膜貫通型分子では、これらの断片(例えばレセプターの細胞外ドメイン)を免疫原として使用することができる。あるいは、膜貫通型分子を発現する細胞を免疫原として使用することができる。このような細胞は天然源(例えばガン株化細胞)から引き出すことができ、あるいは膜貫通型分子を発現する組換え技術により形質転換した細胞であってもよい。抗体を調製するために有用な他の抗原及びその型は当業者には明らかであろう。
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物に産生される。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターに関連抗原を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、又はRとR1が異なったアルキル基であるR1N=C=NRにより抱合させることが有用である。
モノクローナル抗体は、Kohlerら, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4816567号)によって作製することができる。
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを上記したようにして免疫し、免疫化に用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,59-103(Academic Press, 1986))。
モノクローナル抗体をコードしているDNAは、常法を用いて(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)即座に分離され配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび分離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、そうしないと免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中にトランスフェクトし、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体の組み換え体作成は以下に更に詳しく記載する。
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換され、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
ヒト化抗体には非ヒトである供給源由来の一又は複数のアミノ酸残基がそこに導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、本質的には齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することにより、ウィンターと共同研究者の方法(Jonesほか, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmannほか, Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyenほか, Science, 239:1534-1536(1988))を使用して実施することができる。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の該当する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的にはいくらかのCDR残基及び場合によってはいくらかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、無傷の抗体のタンパク分解性消化を介して誘導された(例えば、Morimotoら, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennanら, Science, 229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体断片は上において検討した抗体ファージライブラリーから分離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合させてF(ab')2断片を形成することができる(Carterら, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')2断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。抗体断片の生産のための他の方法は当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択抗体は単鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第93/16185号を参照のこと。
多重特異性抗体は、少なくとも二つの異なる抗原に対する結合特異性を有する。このような分子は通常は二つの抗原を結合させるのみであるが(すなわち、二重特異性抗体、BsAbs)、三重特異性抗体のような更なる特異性を持つ抗体もここで使用される場合この表現に包含される。BsAbの例には、一方の腕が腫瘍細胞抗原に対し他方の腕が細胞毒性トリガー分子に対するもの、例えば抗FcγRI/抗CD15、抗p185HER2/FcγRIII(CD16)、抗CD3/抗悪性B細胞(1D10)、抗CD3/抗p185HER2、抗CD3/抗p97、抗CD3/抗腎臓細胞癌腫、抗CD3/抗OVCAR-3、抗CD3/L-D1(抗大腸ガン腫)、抗CD3/抗メラニン細胞刺激ホルモン類似体、抗EGFレセプター/抗CD3、抗CD3/抗CAMA1、抗CD3/抗CD19、抗CD3/MoV18、抗神経細胞接着分子(NCAM)/抗CD3、抗葉酸塩結合タンパク質(FBP)/抗CD3、抗全癌腫随伴抗原(AMOC-31)/抗CD3;腫瘍抗原に特異的に結合する一つの腕と毒素に結合する一つの腕を持つBsAb、例えば、抗サポリン/抗Id-1、抗CD22/抗サポリン、抗CD7/抗サポリン、抗CD38/抗サポリン、抗CEA/抗リシンA鎖、抗CEA/抗ビンカアルカロイド;(マイトマイシンホスフェートのマイトマイシンアルコールへの転換を触媒する)抗CD30/抗アルカリホスファターゼのような酵素活性化プロドラッグを転換するためのBsAb;抗フィブリン/抗組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、抗フィブリン/抗ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)のような線維素溶解剤として使用することができるBsAb;抗低密度リポタンパク質(LDL)/抗Fcレセプター(例えばFcγRI、FcγRII又はFcγRIII)のような細胞表面レセプターへ免疫複合体をターゲティングするためのBsAb;抗CD3/抗単純ヘルペスウィルス(HSV)、抗T細胞レセプター:CD3複合体/抗インフルエンザ、抗FcγR/抗HIVのような感染性疾患の治療に使用されるBsAb;抗CEA/抗EOTUBE、抗CEA/抗DPTA、抗p185HER2/抗ハプテンのようなインビトロ又はインビボでの腫瘍検出のためのBsAb;ワクチンアジュバントとしてのBsAb;及び抗ウサギIgG/抗フェリチン、抗セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)/抗ホルモン、抗ソマトスタチン/抗サブスタンスP、抗HRP/抗FITCのような診断ツールとしてのBsAbが含まれる。三重特異性抗体の例には、抗CD3/抗CD4/抗CD37、抗CD3/抗CD5/抗CD37及び抗CD3/抗CD8/抗CD37が含まれる。二重特異性抗体は全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')2二重特異性抗体)として調製することができる。
異なったアプローチ法によると、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原−抗体結合部位)を、免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常部との融合である。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。免疫グロブリン重鎖の融合、そして、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時トランスフェクトする。これにより、作成に使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率を提供する態様において、三つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又は、その比率が特に重要性を持たないときは、2または3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
このアプローチ法の好適な実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方の腕のハイブリッド免疫グロブリン重鎖、及び他方の腕のハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)で構成される。二重特異性分子の半分しか免疫グロブリン軽鎖がないことで容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体を作製する更なる詳細については、例えばSureshら, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J.Immunol. 147:60(1991)。
本発明の範囲において好ましい抗体には、rhuMAb 4D5(HERCEPTIN(登録商標))を含む抗HER2抗体(Carter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285-4289 (1992), 米国特許第5725856号);米国特許第5736137号のキメラ抗CD20「C2B8」等の抗CD20抗体(RITUXAN(登録商標))、米国特許第5721108号に記載の2H7のキメラ変異体又はヒト化変異体又はトシツモマブ(BEXXAR(登録商標);抗IL−8(St John等, Chest, 103:932 (1993)、及び国際公開第95/23865号);ヒト化抗VEGF抗体huA4.6.1アバスチン(登録商標)等のヒト化及び/又は親和成熟抗VEGF抗体を含む抗VEGF抗体(Kim等, Growth Factors, 7:53-64 (1992), 国際公開第96/30046号及び1998年10月15日公開の国際公開第98/45331号);D3H44(WO01/70984)等のヒト化及び/又は親和成熟抗VEGF抗体を含む抗組織因子(TF)抗体(1994年11月9日付与の欧州特許第0420937B1);抗PSCA抗体(WO01/40309);S2C6及びそのヒト化変異体を含む抗CD40抗体(WO00/75348);抗CD11a(米国特許第5622700号、国際公開第98/23761号、Steppe等, Transplant Intl. 4:3-7 (1991), 及びHourmant等, Transplantation 58:377-380 (1994));抗CD18(1997年4月22日発行の米国特許第5622700号、又は1997年7月31日公開の国際公開第97/26912号);抗IgE(1998年2月3日発行の米国特許第5714338号又は1992年2月25日発行の同第5091313号、1993年3月4日公開の国際公開第03/04173号、1998年6月30日出願の国際出願番号PCT/US98/13410、米国特許第5714338、Presta等, J. Immunol. 151:2623-2632 (1993)、及び国際公開第95/19181号);抗Apo−2レセプター抗体(1998年11月19日公開の国際公開第98/51793号);cA2(レミケード(登録商標))、CDP571及びMAK−195を含む抗TNFα抗体(1997年9月30日発行の米国特許第5,672,347号、Lorenz等 J. Immunol. 156(4):1646-1653 (1996)、及びDhainaut等 Crit. Care Med. 23(9):1461-1469 (1995));抗ヒトα4β7インテグリン(1998年2月19日公開の国際公開第98/06248号);抗EGFR(1996年12月19日公開の国際公開第96/40210号に開示のキメラ又はヒト化225抗体);OKT3等の抗CD3抗体(1985年5月7日発行の米国特許第4515893号);CHI−621(シムレクト(登録商標))及び(ゼナパックス(登録商標))等の抗CD25又は抗tac抗体(1997年12月2日発行の米国特許第5693762号参照);cM−7412抗体等の抗CD4抗体(Choy等 Arthritis Rheum 39(1):52-56 (1996);CAMPATH-1H等の抗CD52抗体(Riechmann等 Nature 332:323-337 (1988);Graziano等 J. Immunol. 155(10):4996-5002 (1995)に開示されているFcγRIに対するM22抗体などの抗Fcレセプター抗体;hMN−14等の抗癌胎児性抗原(CEA)抗体(Sharkey等 Cancer Res. 55(23Suppl):5935s-5945s (1995));huBrE−3、hu−Mc3及びCHL6を含む胸部上皮細胞に対する抗体(Ceriani等 Cancer Res. 55(23):5852s-5856s (1995);及びRichman等 Cancer Res. 55 (23 Supp):5916s-5920s (1995));C242のように大腸癌細胞に結合する抗体(Litton等 Eur J. Immunol. 26(1):1-9 (1996);抗CD38抗体、例えばAT13/5(Ellis等 J. Immunol. 155(2):925-937 (1995));Hu M195等の抗CD33抗体(Jurcic等 Cancer Res 55 (23 Suppl):5908s-5910s (1995))及びCMA−676又はCDP771;LL2又はLymphoCideなどの抗CD22抗体(Juweid等 Cancer Res 55 (23 Suppl)5899s-5907s (1995));17−1A等の抗EpCAM抗体(PANOREX(登録商標));アブシキシマブ又はc7E3Fab等の抗GpIIb/IIIa抗体(レオプロ(登録商標));MEDI−493等の抗RSV抗体(シナジス(登録商標));PROTOVIR(登録商標)等の抗CMV抗体;PRO542等の抗HIV抗体;抗Hep B抗体OSTAVIR(登録商標)等の抗肝炎抗体;抗CA125抗体オバレックス;抗イディオタイプGD3エピトープ抗体BEC2;抗αvβ3抗体バイタクシン(登録商標);ch−G250等の抗ヒト腎細胞癌抗体;ING−1;抗ヒト17−1A抗体(3622W94);抗ヒト結腸直腸腫瘍抗体(A33);GD3ガングリオシドに対する抗ヒト黒色腫抗体R24;抗ヒト扁平細胞癌(SF−25);及び、Smart ID10等の抗ヒト白血球抗原(HLA)抗体又は抗HLA DR抗体Oncolym(Lym−1)が含まれる。
また本発明はここで記載され、細胞障害剤、例えば化学療法剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物または動物由来の酵素活性毒又はそれらの断片)、又は放射性アイソトープ(すなわち、放射性コンジュゲート)に抱合した抗体を含有する免疫コンジュゲートに関する。
本発明はまたここに開示した抗体変異体をコードしている単離された核酸、該核酸を含むベクター及び宿主細胞、及び抗体変異体の生産に対する組換え技術を提供する。
抗体変異体の組換え生産のために、それをコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために、複製可能なベクター内に挿入される。抗体変異体をコードするDNAは直ぐに単離され、通常の手法(例えば、抗体変異体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用するもの)を用いて配列決定される。多くのベクターが公的に入手可能である。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、次のものの一又は複数が含まれる:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列である。このようなベクター成分は国際公開第00/29584号に開示されており、ここに出典明示ににより同開示内容を本明細書に包含する。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、抗体をコードするベクターの宿主をクローニング又は発現するのに適している。サッカロミセス・セレヴィシア、又は一般的なパン酵母は下等真核生物宿主微生物のなかで最も一般的に用いられる。しかしながら、多数の他の属、種及び菌株も、一般的に入手可能でここで使用でき、例えば、シゾサッカロマイセスポンベ;クルイベロマイセス宿主、例えばK.ラクティス、K.フラギリス(ATCC12424)、K.ブルガリカス(ATCC16045)、K.ウィッケラミイ(ATCC24178)、K.ワルチイ(ATCC56500)、K.ドロソフィラルム(ATCC36906)、K.サーモトレランス、及びK.マルキシアナス;ヤローウィア(EP402226);ピチアパストリス(EP183070);カンジダ;トリコデルマ・リーシア(EP244234);アカパンカビ;シュワニオマイセス、例えばシュワニオマイセスオクシデンタリス;及び糸状真菌、例えばパンカビ属、アオカビ属、トリポクラジウム、及びコウジカビ属宿主、例えば偽巣性コウジ菌及びクロカビが使用できる。
宿主細胞は、抗体生成のための前記発現又はクローニングベクターで形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適当に修飾された常套的栄養培地で培養する。
細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティクロマトグラフィを用いて精製でき、ここで、アフィニティクロマトグラフィが好ましい精製技術である。アフィニティリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体変異体に存在する免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmark等, J. immunol. Meth. 62: 1-13 (1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Guss等, EMBO J. 5: 15671575 (1986))。アフィニティリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他の材料も使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体変異体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商品名)樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換膜での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラム)上でのヘパリンSEPHAROSE(商品名)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿も、回収される抗体変異体に応じて利用可能である。
抗体変異体の治療用製剤は、所定の純度を持つ抗体変異体と、場合によっては製薬的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤を混合することにより(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. 編, (1980))、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で調製されて保存される。許容される担体、賦形剤又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンズアルコニウムクロリド、ベンズエトニウムクロリド、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール、メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又はTWEEN(商品名)、PLURONICS(商品名)又はポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤を含む。
ここでの製剤は、治療される特定の徴候のために必要ならば1以上の活性化合物も含んでよく、好ましくは互いに悪影響を与えない相補的活性を持つものである。例えば、免疫抑制剤を提供することが望ましい場合がある。そのような分子は、意図する目的のために有効な量で組み合わされて存在する。
また活性成分は、各々例えばコアセルベーション技術又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル、コロイド状ドラッグデリバリー系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルション中に捕捉させてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. 編, (1980)に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好ましい例は、抗体変異体を含む疎水性固体ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリクスは成形物、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号))、L-グルタミン酸及びエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(商品名)(分解性乳酸グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(−)-3-ヒドロキシブチル酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸等のポリマーは、分子を100日以上かけて放出することを可能にするが、ある種のヒドロゲルはタンパク質をより短い時間で放出する。カプセル化された抗体が体内に長時間止まると、37℃の水分に暴露された結果として変性又は凝集し、生物学的活性及び免疫原性における可能な変化を喪失させる。合理的な戦略は、含まれるメカニズムに応じて安定化のために考案できる。例えば、凝集メカニズムがチオ−ジスルフィド交換を通した分子間S-S結合であることが見いだされた場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適当な添加剤の使用、及び特定のポリマーマトリクス組成物の開発によって達成される。
本発明の抗体変異体は、アフィニティ精製剤として使用することができる。このプロセスでは、抗体変異体は、この分野で良く知られた方法を用いてセファデックス樹脂又は濾紙などの固相上に固定化される。固定化された抗体変異体を精製すべき抗原を含有する試料と接触させ、その後支持体を適当な溶媒で洗浄し、その溶媒は、固定化抗体変異体に結合した精製すべき抗原を除く試料中の実質的に全ての物質を除去する。最後に、支持体をグリシンバッファー、pH5.0等の他の適当な溶媒で洗浄して、抗原を抗体変異体から放出させる。
また抗体変異体は、例えば、対象とする抗原の特定細胞、組織、又は血清における発現を検出するための診断アッセイにおいても有用である。
診断的応用においては、抗体変異体は典型的に検出可能な部分で標識される。多数の標識は利用可能であり、それらは一般的に以下の範疇にグループ分けされる:
(a)放射性同位体、例えば、35S、14C、125I、3H及び131I等。抗体変異体は、例えばCurrent Protocols in Immunology, Volumes 1 and 2, Coligen等, 編, Wiley-Interscience, New York, New York, Pubs. (1991)に記載された技術を用いて放射性同位体で標識され、放射活性はシンチレーションカウンティングにより測定できる。
(b)蛍光標識、例えば希土類キレート(ユーロピウムキレート類)又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、リサミン(Lissamine)、フィコエリトリン及びテキサスレッド等が使用できる。蛍光標識は、例えば上掲のCurrent Protocols in Immunologyに開示された技術を用いて抗体変異体に抱合させることができる。蛍光は蛍光計によって定量可能である。
(c)種々の酵素−基質標識が利用でき、米国特許第4275149号は、それらの幾つかの概説を提供している。酵素は一般に、種々の技術を用いて測定可能な色素原基質の化学変換を触媒する。例えば、酵素は基質における色変化を触媒視、それは分光学的に測定可能である。あるいは、酵素は基質の蛍光又は化学発光を変化させることもある。蛍光変化を定量化する技術は上述した。化学発光基質は化学反応によって電子的に励起され、次いで(例えば化学発光計を用いて)測定可能な光を放出する、または蛍光受容体にエネルギーを供与する。酵素標識の例は、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4737456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸塩デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)等のペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リソザイム、糖類オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ)、ヘテロ環オキシダーゼ(ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ等)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼ等を含む。酵素を抗体に抱合させる技術は、O'Sullivan等, Methods for Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay, in Methods in Enzym. (編J. Langone & H. Van Vunakis)Academic press, New York, 73: 147-166 (1981)に記載されている。
(i)基質としての過酸化水素と併用するセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、ここで、過酸化水素が染料前駆物質(例えば、オルトフェニレンジアミン(OPD)又は3,3',5,5'-テトラメチルベンジジンヒドロクロリド(TMB))を酸化する;
(ii)色素原基質としてのパラ-ニトロフェニルホスフェートと併用するアルカリホスファターゼ(AP);
(iii)色素原基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は蛍光原基質4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼと併用するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)。
当業者には、多くの他の酵素−基質の組み合わせが利用可能である。これらの一般的な概説は、米国特許第4275149号及び同第4318980号を参照。
標識は抗体変異体に間接的に抱合されるときもある。当業者であれば、これを達成するための種々の技術が分かるであろう。例えば、抗体変異体にビオチンを抱合し、上記3つの範疇の標識の任意のものにアビジンを抱合する、又はその逆が可能である。ビオチンはアビジンに選択的に結合し、よってこの間接的な方式で抗体変異体に標識を抱合させることができる。あるいは、抗体変異体での標識の間接的抱合を達成するために、抗体変異体に小さなハプテン(例えばジゴキシン)を抱合させ、上記した異なる型の標識を抗ハプテン抗体変異体(例えば抗ジゴキシン抗体)に抱合させる。よって抗体変異体での標識の間接的抱合が達成できる。
本発明の他の実施態様では、抗体変異体を標識する必要はなく、その存在を、抗体変異体に結合する標識抗体を用いて検出することができる。
本発明の抗体変異体は任意の公知のアッセイ方法、例えば競合結合アッセイ、直接及び間接サンドウィッチアッセイ、及び免疫沈降アッセイ等で用いられうる。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp. 147-158 (CRC Press, Inc. 1987)。
サンドイッチアッセイでは、検出するべきタンパク質の異なる免疫原性部分又はエピトープにそれぞれ結合する二つの抗体を用いる。サンドイッチアッセイでは、被試験分析物を固体支持体に固定される第一抗体と結合させ、その後分析物に第二抗体を結合させ、不溶性の三部複合体を形成する。例えば、米国特許第4376110号を参照。第二抗体は、それ自体を検出可能部分で標識する(直接サンドイッチアッセイ)か、検出可能部分で標識される抗イムノグロブリン抗体を使用して測定する(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイの一種はELISAアッセイであり、この場合には検出可能部分は酵素である。
免疫組織化学では、例えば腫瘍標本は生又は冷凍であるか、又はパラフィンに埋め込まれたり、ホルマリンのようなもので固定され得る。
また抗体変異体は、インビボ診断アッセイでも使用できる。一般的に、抗体変異体は放射性核種(111In、99Tc、14C、131I、125I、3H、32P又は35P等)で標識され、抗原又はそれを発現する細胞が免疫シンチオグラフィーによって局在化できる。
便宜上、本発明の抗体変異体はキット、すなわち診断アッセイを実施するための使用説明書と、予め定められた量の試薬を組合せて包装したもので提供されうる。抗体変異体が酵素で標識される場合は、キットは基質と酵素に必要な補因子を含有する(例えば、検出可能な発色団又は蛍光団を提供する基質先駆物質)。加えて、他の添加剤、例えば安定剤、バッファー(例えばブロックバッファー又は溶菌バッファー)等も含まれる。種々の試薬の相対量は広範囲で変えることができ、アッセイの感度を実質的に最適にするような試薬溶液中の濃度が提供される。特に、試薬は、通常は凍結乾燥され、溶解時に適切な濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含む乾燥パウダーとして提供される。
治療への応用としては、本発明の抗体変異体は、哺乳動物、好ましくはヒトに、製薬的に許容できる前記したような投与形態、例えば、ボーラスとして又は所定時間に渡る連続注入によるヒト静脈内投与、筋肉内、腹膜内、脳脊髄内、皮下、関節間、滑膜内、鞘内、経口、局所、又は吸入経路などにより、投与される。抗体はまた、腫瘍内、腫瘍周囲、又は傷内、傷周囲経路などによって、局部並びに全身的治療効果を生じるように、適切に投与される。腹膜内経路は、例えば卵巣腫瘍の治療等に、特に有用であることが期待される。加えて、抗体変異体は特に減少させた抗体変異体用量で、パルス注入によって適切に投与される。好ましくは、投与は注射によって、最も好ましくは、部分的には投与が簡潔か慢性的かに応じて、静脈内又は皮下注射によってなされる。
疾患の予防又は治療のために、抗体変異体の適切な用量は、治療すべき疾患の型、疾患の重篤さ及び経路、抗体変異体投与が予防的か治療目的か、従前の治療、患者の臨床履歴及び抗体変異体に対する反応、及び担当医師の裁量に依存する。抗体変異体は、一時に又は一連の治療を通じて適切に患者に投与される。
処置すべき非新生物の症状は、リウマチ様関節炎、乾癬、アテローム性動脈硬化、未熟網膜症を含む糖尿病やその他の増殖網膜症、水晶体後線維増殖症、血管新生緑内障、老人性黄斑変性、(グレーブス症を含む)甲状腺過形成、角膜やその他の組織の移植、慢性炎症、肺炎、ネフローゼ症候群、子癇前症、腹水症、(心膜症のような)心外膜液、胸水を含む。
加齢性黄斑変性(AMD)は老齢者における深刻な視力喪失の主たる原因である。AMDの滲出形態は脈絡膜新生血管症や網膜色素上皮細胞剥離が特徴的である。脈絡膜新生血管症は前兆において急激な悪化を伴うので、本発明のVEGF抗体はAMDの重症度の軽減に特に有用であることが期待される。
抗体変異体組成物が処方され、用量決定(dose)され、良好な医学的実務に適合する方式で投与される。ここで考慮すべき因子は、治療される特定の疾患、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的状態、疾患の原因、薬剤の輸送部位、投与方法、投与計画、及び医学実務者に知られた他の因子を含む。投与すべき抗体変異体の「治療的有効量」は、それらを考慮して決定され、疾患又は障害を予防、改善、又は治療するのに必要な最小量である。抗体変異体は、問題とする疾患の予防又は治療に現在使用されている一又は複数の他の薬剤とともに製剤する必要はないが、場合によってはそのようにされる。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体変異体の量、疾患又は治療の型、及び上述した他の因子に依存する。これらは、一般的にはこれまでに使用されたのと同じ用量かつ投与経路で、あるいはこれまでに使用された用量の1から99%で用いられる。
本発明の他の実施態様では、前述したような疾患の治療に有用な製品を含む製造品が提供される。製造品は容器とラベルを含む。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ及び試験管が含まれる。容器はガラス又はプラスチックのような様々な材料で形成することができる。容器は病状を治療するのに効果的な組成物を収容し、殺菌されたアクセスポート(例えば、容器は皮下注射針により穿孔可能な栓を持つバイアル又は静脈注射用溶液袋でありうる)を持ちうる。組成物中の活性剤は抗体変異体である。容器のラベル、または容器に伴うラベルには、組成物が選択される症状を処置するのに使用されることが示されている。製造物は、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液のような製薬的に許容される緩衝液を含む第2の容器を更に含みうる。更に商業的に又は利用者の立場から好ましい他の材料(他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、使用説明書が備わったパッケージ挿入物)を含み得る。
本出願は、また、抗体(例えば上述したような抗体変異)の抗原会合速度を測定するのに使用できるアッセイ法も開示する。本方法は、会合速度が遅いため、抗体−抗原複合体の形成を経時的に定量化できる抗体(抗原に対する結合定数が、例えば約105M−1秒−1より遅いか、又は106M−1秒−1より遅い抗体)に特に適している。抗原会合定数の遅い抗体の一例は、VEGFに結合する抗VEGF抗体であり、本明細書に記載の様々な抗VEGF抗体により実証される。
ここでのアッセイ法は、(1)抗体と抗原を溶液中で組み合わせる(混合する)工程と、次いで(2)経時的に抗体−抗原複合体の生成を測定する工程とを含む。つまり、複合体生成の測定は抗体と抗原を組み合わせた後に行う。経時的な複合体の生成は、蛍光度の測定又は複合体の吸収の測定といった様々な方法の使用、あるいはNMRの使用により測定することができる。しかしながら、好ましい実施態様によれば、本方法の第二の工程は、抗体−抗原複合体の蛍光発光強度を経時的に測定することを含む。これは、抗体又は抗原が、抗原−抗体の結合界面にトリプトファン残基を有する場合、トリプトファン残基の蛍光発光強度(トリプトファン残基が結合界面上に埋没している場合に変化する)を測定することができるので、達成可能である。蛍光発光強度は、約280−310nm(例えば295nm)の励起波長を使用し、約330−360nm(例えば約340nm)の波長における発光を検出することにより測定可能である。
以下の実施例は、本発明の実施の単なる例示であり、限定的な意味は有していない。本明細書で引用する全ての特許及び科学文献は、ここに出典明示により本明細書に包含する。
本実施例では、標的部位のリストを実験的に取り扱い可能な数まで減らす一連の基準を用いて潜在的オンレート増幅部位を同定することにより、大がかりな演算を実施することなく、静電ステアリングの原理を適用して、抗体のその抗原に対する結合のオンレートを上昇させることができることを実証する。特定の実施例は、抗VEGF Y0101抗体Fab断片の修飾である(図1A−B)。同定された標的部位に突然変異を生じているFab Y0101は、蛍光に基づくアッセイにより特徴付けられ、マグニチュードのオーダーに近い会合速度の上昇を示した。更に、Fab−VEGF複合体について観察された会合速度は、相互作用のDebye−Huckelエネルギーの計算から予測されたものと何ら相関関係を示さなかった。より速いオンレートを有するFab Y0101の変異体は、その親和性が高いことから、VEGFのより有力なアンタゴニストと予測されるだけでなく、結合の速さによりさらに効力が大きいとも予測される。後者のこのような重要性は、Fab Y0101−VEGF複合体の会合及び解離速度が典型的なタンパク質−タンパク質相互作用と比較してマグニチュードのオーダーの差異を生じるほど遅いため、判らない(Chen等 Journal of Molecular Biology 293(4):865-81 (1999); Gabdoulline等 Journal of Molecular Biology 306(5):1139-55 (2001))。本明細書に記載したON−RAMPSの同定のための基準は、その抗原との会合及び全体的結合親和性を向上させるための抗体断片の再設計を導くのに十分である。
オンレート増幅部位(On−RAMPS)の同定
抗体断片(Fab)には約445の残基が存在するため、リガンドとのその会合速度を向上させる1つの工程は、電荷相補性を上昇させるように変異させたときに2つのタンパク質間の静電的相互作用エネルギーを有意に変更する残基の同定を含む。これらの「オンレート増幅部位」(On−RAMPS)を同定するため、次の基準を適用した:
1)埋没残基の変異はFabを不安定化しうるので、残基の側鎖表面積の少なくとも3分の1が溶媒に露出している。
2)静電引力が距離の関数として減衰するので、残基は結合状態でVEGFの少なくとも16Å以内である。
3)直接接触残基の変異は結合複合体を不安定化しうるので、残基は結合状態でVEGFに直接接触しなかった。
4)患者に免疫原性反応を誘発する可能性が低い徴候があるので、相補性決定領域(CDR)内に存在した残基の方をそうでない残基より優先的に使用した。
5)Fabと抗原との間の電荷相補性を増大させることが可能な残基のみを考慮した。例えば、Y0101のVL−D28を変異させてその電荷を中和する(D28N)か又は逆転(D28K)し、負の電荷を有する抗原の相補性を向上させることができるが、一方、残基VH−K64はその正の電荷が増大するように変異させることはできない。
VEGFの短いアイソフォーム(8−109)を過去に記載されているようにして作成した(Christinger等 Proteins 26(3):353-7 (1996))。Fabの突然変異による変異体を構築及び精製するための方法はこれまでに開示されている(Muller等 Structure 6(9):1153-67 (1998))。簡単に説明すると、Kunkelにより開発された方法を使用してオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発により点突然変異を行わせた(Kunkel, T.A. Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA 82(2):488-92 (1985))。Fabを、非サプレッサー大腸菌細胞系34B8内での誘導により発現させ(Baca等 Journal of Biological Chemistry 272(16):10678-84 (1997))、回収した細胞に浸透圧度ショックをかけた後、タンパク質G樹脂(Amersham)を用いた親和性クロマトグラフィーにより精製した。典型的な収率は、成長1リットルにつきFab2ナノモルであった。
ここに記載した実験では、25mMのTris、pH7.2中に約10nMのFabを含む37℃に保たれた攪拌されたキュベットにVEGFを加えてから、SLM−アミンコ社製の8000シリーズの分光光度計(THERMOSPECTRONIC(登録商標))を使用して(蛍光発光強度(λexcitation=295nm;λemission=340nm、16nmバンドパス)を測定した。
上述したように(Muller等 Structure 6(9):1153-67 (1998))、BIACORE-2000(登録商標)機器(BIAcore, Inc.)を用いて表面プラズモ共鳴により解離速度を測定した。共鳴−応答単位約10におけるB1チップへのアミンカップリングによりVEGFを固定化した。Fab結合を、1μM、500nM、250nM、125nM、62.5nM及び31.3nMにおいて測定した。解離の計算においては1対1の結合モデルを仮定した。全ての実験は、Tween−20を0.05%、NaN3を0.01%含み、流速20μL分−1、pH7.2の、37℃のリン酸緩衝食塩水中において行った。
会合速度アッセイの開発
表面プラズモ共鳴技術は親和性の測定に適していることが実証されているが、特定の結合相互作用を持つ変異体間のわずかな差異は、流動力学の複雑性(Fivash等 Current Opinion in Biotechnology 9(1):97-101 (1998))及び非特異的アミンカップリング(Kortt等 Analytical Biochemistry 253(1):103-11 (1997))から、単純に、適切に畳み込まれた活性のあるタンパク質の濃度を正確に測定することができないことにわたる、複数の原因により、認知されない可能性がある。
ここで行われた研究は抗VEGF Fabの変異体間の会合速度の差異に関しているので、Fab変異体の濃度に関係なく、溶液中での相互作用を表すオンレートの微妙な差異を検出するのに十分な感度を有するアッセイを開発した。
Fab−VEGF複合体の蛍光強度は、成分の個々の蛍光強度の合計よりも大きい(図2)。蛍光強度の上昇率は単一の指数関数曲線に一致し得る(図3)。VEGF濃度の関数として観察された速度をプロットすることにより、擬似一次解析が可能であり、傾斜は反応のk1、y切片はk−1である(図4)(Johnson, K. A. Transient-state kinetic analysis of enzyme reaction pathways. In The Enzymes, Vol. 20:pp.1-61. Academic Press, Inc. (1992))。
上述の基準を適用することにより、突然変異誘発の可能性のある部位の数は445残基から22に減少した(表1)。溶媒への露出という第一の基準により、その数は173に減少した。VEGFが16Å以内にあるという第二の基準により、その数は47に減少した。VEGFに直接接触していないという第三の基準により、その数は31に減少した。残基がCDR内に存在するという第四の基準により、その数は23に減少した。最後に、負の電荷を有するVEGFにより相補性を増大させることはできないので、最後の基準により更に1つの残基(VH−K64)を排除した。これら残基のそれぞれの変異に予測されるオンレートを、Schreiber等 (2000) Nat. Struct. Biol. 7:537-41に従って計算した。
表1 Fab Y0101の潜在的On−RAMPS
VEGF上の正味の形式的電荷は−10である(N末端、リジン、及びアルギニンには+1を割り当て、C末端、アスパラギン酸及びグルタミン酸には−1を割り当てることにより計算)ので、結合界面の周縁においてFab(野生型=+2)の正の正味の電荷を増大させるように突然変異を生じさせた。これら残基の突然変異により、会合速度がY0101の2倍まで増大した(表2)。一方、溶媒に露出しているがVEGFが16Å以内でない残基の突然変異(表2、不適格)は殆ど変化を示さず、よってON−RAMPS基準の有用性が示された。抗VEGF Fabの会合速度の更なる増加が複数残基を変異させることにより達成でき(表3)、最速の結合変異体「34−TKKT」(VH−(T28D、S100aR)+VL−(S26T、Q27K、D28K、S30T))はY0101の6倍高い会合速度を有している。逆に、電荷の反発を増大させる突然変異は会合速度を減少させた(表3:変異体VL−S26E、Q27E、D28E、S30E及び変異体VL−T51E、S52E、S53E、L54E)。
表2:単一突然変異の結合定数
表3:複数突然変異の結合定数
静電的相互作用のDebye−Huckelエネルギーの計算値は、会合速度の強力で正確な予測値であることが示唆されている(Selzer, T.及びSchreiber, G. Journal of Molecular Biology 287(2):409-19 (1999))。Selzer及びSchreiberが使用したプログラムはインターネット上のウェブサイトを通じて公に使用可能である(http://www.weizmann.ac.il/home/bcges/PARE.html)。このプログラムを使用し、そのガイドラインに従って、本研究において作成された様々な変異体の会合速度を計算し、実験的に決定された値と比較した。kcalcに対するkobsはそれほど相関を示さず、R値は0.46であった(図5)。
変異体間の会合速度の差異が結合界面の一般的な構造の再配列よりもFabとVEGFの間の静電的相互作用に起因し得るということを説明するため、塩分濃度を変化させて野生型Fab Y0101と34−TKKTの会合速度を測定した(図7)。NaCl 150mM中における最速結合変異体とY0101の間の会合速度の差異は2倍未満であった。
重要なことは、複合体(Y0101=0.28kcal mol−1、34−TKKT=−1.07kcal mol−1)の構造から計算したFabとVEGF間の相互作用の静電エネルギーが図7の傾きから決定された値を有し、(大きさは異なるが)その符号は正しいということである。(Y0101=0.86kcal mol−1、34−TKKT=−4.0kcal mol−1)。
上述の高速オンレート変異体を他の同定された変異体と組み合わせ、結合親和性を更に増大させることができる。例えば、最速結合変異体である「34−TKKT」をFab−12、VNERK又はY0317等の抗VEGF変異体と組み合わせることができる。それ以外の配列変更を行って、結合親和性、並びに分子のその他物理的又は化学的特性をさらに最適化することができる。図6A及び6Bに3つのそのように「組み合わせた」変異体のアラインメントを示す。図中、「34−TKKT」の置換は、VNERK挿入、又はH97Y置換、又はVNERK挿入とH97Y置換の双方によりなされている。得られた変異体のVEGFに対する結合親和性は増大しており、よってVEGFに対する治療的アンタゴニストとして使用された場合の効果が向上していると思われる。
抗VEGF抗体の観点から上述した、ON−RAMPSを同定しより速いオンレート変異体を生成させる原理は同様に他の抗体変異体にも適用することができ、そのような他の抗体変異体には、限定されないが、抗TF及び抗HER2抗体変異体が含まれる。
第一の工程として、親抗TF抗体D3H44(図8;軽鎖及び重鎖可変ドメインについてそれぞれ配列番号11及び12)及び親抗HER2抗体4D5(図9;軽鎖及び重鎖可変ドメインについてそれぞれ配列番号13及び14)を使用して、実施例1に記載したものと同様の基準及び計算により想定されるON−RAMPSを同定した。表4及び表5に抗TFのD3H44及び抗HER2の4D5それぞれの想定されるON−RAMPSとして残基の第1群、並びにこれら残基の各々の単一突然変異とその野生型に対するオンレート計算値を列挙する。オンレートの計算値は、Schreiber等 (2000) Nat. Struct. Biol. 7:537-41の方法に従って計算した。付加的なON−RAMPSを同様の方法と計算を使用して更にフィルタリングし、突然変異させ、同定した。
Kabatシステムに従って残基に番号を付した(Kabat等 Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Edition., National Institute of Health, Bethesda, MD. (1991))。
表5:4D5の想定されるON−RAMPSと単一突然変異
Kabatシステムに従って残基に番号を付した(Kabat等 Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Edition., National Institute of Health, Bethesda, MD. (1991))。
しかしながら、特に抗TF変異体については、TFと抗TFの会合があまりにも急速に起こることにより攪拌キュベット中での観察が不可能であるので、ストップトフロー分光計(Aviv)を用いて蛍光発光強度(λexcitation=280nm、バンドパス2nm;λemission>320nm)を測定した。pH7.0、25℃のHEPES10mM中の抗TF溶液100nMのうち50μLを0nM、100nM、200nM、300nM、400nM、500nM、600nM、700nM、800nM、又は900nMのTFと素早く混合し、2秒間蛍光度の変化を観察した。蛍光強度の変化速度は単一の指数関数曲線に一致した。観察された速度をTF濃度の関数としてプロットすることにより会合速度を決定した。その傾斜が会合速度(M−1秒−1)である。
Claims (61)
- 抗原に特異的な親抗体の抗体変異体を産生する方法において、
a)親抗体の可変ドメイン内に、1)溶媒に露出しており、2)高頻度可変領域の内部又は近傍にあり、且つ3)親抗体が結合したときに抗原の約20Å以内にある標的アミノ酸残基を同定する工程と、
b)抗体と抗原の間の電荷相補性が増大するように、工程a)の標的残基を異なる置換アミノ酸残基で置き換える工程と
を含んでなる方法。 - 標的残基は、抗原に結合するとき抗原に直接接触しない請求項1に記載の方法。
- 標的残基の側鎖表面積の少なくとも3分の1が溶媒に露出している請求項1に記載の方法。
- 標的残基は、抗原に結合しているとき抗原の少なくとも約16Å以内にある請求項1に記載の方法。
- 親抗体がヒト化抗体、ヒト抗体又はキメラ抗体である請求項1に記載の方法。
- 親抗体が抗体断片である請求項1に記載の方法。
- 抗体断片がFab断片である請求項6に記載の方法。
- 抗体変異体の抗原に対する結合親和性が親抗体の結合親和性よりも大きい請求項1に記載の方法。
- 抗体変異体の結合親和性の大きさが親抗体の結合親和性の少なくとも約2倍である請求項8に記載の方法。
- 抗体変異体の抗原との会合速度が親抗体の会合速度よりも大きい請求項1に記載の方法。
- 抗体変異体の会合速度の大きさが親抗体の会合速度の少なくとも約5倍である請求項10に記載の方法。
- 抗体変異体の会合速度の大きさが親抗体の会合速度の少なくとも約10倍である請求項10に記載の方法。
- 抗体変異体は、親抗体と比較した場合その高頻度可変領域に約1〜約20の置換を有する請求項1に記載の方法。
- 置換の各々が抗体と抗原の間の電荷相補性を増大させる請求項13に記載の方法。
- 抗原が血管内皮成長因子(VEGF)である請求項1に記載の方法。
- 親抗体が、Y0101、Y0317、F(ab)−12、Y0192、Y0238−3、Y0239−19、Y0313−2、及びVNERKからなる群から選択されたヒト化抗VEGF抗体の重鎖及び軽鎖可変ドメインを有する請求項15に記載の方法。
- 置換が、CDR L1、CDR L2、ループH1及びCDR H3からなる群から選択された高頻度可変領域内にある請求項1に記載の方法。
- 置換が、Kabatによる残基番号付けシステムを使用した場合の、親抗体の軽鎖可変ドメインのアミノ酸位26L、27L、28L、30L、31L、32L、50L、52L、53L、54L、56L、93L又は94Lの1つ以上で行われる、請求項16に記載の方法。
- 置換が、Kabatによる残基番号付けシステムを使用した場合の、親抗体の軽鎖可変ドメインのアミノ酸位26L、27L、28L又は30Lの2つ以上で行われる、請求項18に記載の方法。
- 置換が、Kabatによる残基番号付けシステムを使用した場合の、親抗体の軽鎖可変ドメインのアミノ酸位26L、27L、28L又は30Lのうち3又は4箇所で行われる、請求項19に記載の方法。
- 置換が、Kabatによる残基番号付けシステムを使用した場合の、親抗体の重鎖可変ドメインのアミノ酸位25H、28H、30H、54H、56H、61H、62H、99H又は及び100aHの1つ以上で行われる、請求項16に記載の方法。
- 抗原が組織因子(TF)である請求項1に記載の方法。
- 親抗体がヒト化抗TF抗体の重鎖及び軽鎖可変ドメインを有する請求項22に記載の方法。
- ヒト化抗TF抗体がD3H44である請求項23に記載の方法。
- 置換が、Kabatによる残基番号付けシステムを使用した場合の、親抗体の軽鎖可変ドメインのアミノ酸位30L、49L、50L、53Lの1つ以上で行われる、請求項23に記載の方法。
- 親抗体の軽鎖可変ドメインが配列番号11である請求項25に記載の方法。
- 置換が、Kabatによる残基番号付けシステムを使用した場合の、親抗体の重鎖可変ドメインのアミノ酸位30H、54H、56H、62H、64H、又は97Hの少なくとも1つ以上で行われる、請求項23に記載の方法。
- 親抗体の重鎖可変ドメインが配列番号12である請求項27に記載の方法。
- 抗原がHER2である請求項1に記載の方法。
- 親抗体がヒト化HER2抗体の重鎖及び軽鎖可変ドメインを有する請求項29に記載の方法。
- ヒト化抗HER2抗体がrhuMAb 4D5である請求項30に記載の方法。
- 置換が、Kabatによる残基番号付けシステムを使用した場合の、親抗体の軽鎖可変ドメインのアミノ酸位27L、28L、52L又は56Lの少なくとも1つ以上で行われる、請求項30に記載の方法。
- 親抗体の軽鎖可変ドメインが配列番号13である請求項32の方法。
- 置換が、Kabatによる残基番号付けシステムを使用した場合の、親抗体の重鎖可変ドメインの少なくともアミノ酸位98Hで行われる、請求項30に記載の方法。
- 親抗体の重鎖可変ドメインが配列番号14である請求項34に記載の方法。
- 抗体変異体をコードする核酸を有する宿主細胞中で抗体変異体を生成させる工程を含む請求項1に記載の方法。
- 宿主細胞により産生された抗体変異体を非相同分子と抱合させる工程を含む請求項36に記載の方法。
- 請求項36に記載の方法に従って産生された抗体変異体。
- 親抗体の高頻度可変領域の内部又は近傍に、抗体変異体とそれが結合する抗原の間の電荷相補性を増大させるアミノ酸変更を有する、親抗体の抗体変異体。
- 変更が親抗体の高頻度可変領域におけるアミノ酸置換である請求項39に記載の抗体変異体。
- 変更が、親抗体の高頻度可変領域の内部又は近傍におけるアミノ酸挿入であり、挿入されたアミノ酸が抗原に結合しない、請求項39に記載の抗体変異体。
- 抗原が血管内皮成長因子(VEGF)である請求項39に記載の抗体変異体。
- SATKKIKNYLN(配列番号6)又はSATKKITNYLN(配列番号7)から選択されたCDR L1配列を有する軽鎖可変ドメインを持つ、請求項42に記載の抗体変異体。
- 配列番号3又は配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを持つ請求項43に記載の抗体変異体。
- 配列番号5、配列番号8、配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインを持つ請求項42に記載の抗体変異体。
- 抗原が組織因子(TF)である請求項39に記載の抗体変異体。
- 親抗体がD3H44である請求項46に記載の抗体変異体。
- 抗原がHER2である請求項39に記載の抗体変異体。
- 親抗体が4D5である請求項48に記載の抗体変異体。
- 請求項39の抗体変異体と製薬的に許容可能な担体とを含んでなる組成物。
- 請求項39の抗体変異体をコードする単離された核酸。
- 請求項51の核酸を有するベクター。
- 請求項51の核酸で形質転換した宿主細胞。
- 核酸が発現するように請求項53の宿主細胞を培養する工程を含む抗体変異体の産生方法。
- 宿主細胞培養物から抗体変異体を回収する工程をさらに含む請求項54に記載の方法。
- 抗体変異体が宿主細胞の培養培地から回収される請求項55に記載の方法。
- 抗体の抗原会合速度を測定する方法において、
(1)抗体と抗原を溶液中で組み合わせる工程と、
(2)次いで経時的に抗体−抗原複合体の生成を測定する工程
を含んでなる方法。 - 工程(2)が抗体−抗原複合体の蛍光発光強度を測定する工程を含む請求項57に記載の方法。
- 抗体又は抗原が抗体−抗原結合界面にトリプトファン残基を有しており、工程(2)においてトリプトファン残基が埋没している場合に変化するトリプトファン残基の蛍光発光強度を測定する請求項57に記載の方法。
- 抗原が血管内皮成長因子である請求項57に記載の方法。
- 抗体の抗原との会合速度が105M−1秒−1よりも遅い請求項57に記載の方法。
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