JP2006505790A - 無電解めっき浴中の還元剤の濃度の計測 - Google Patents

無電解めっき浴中の還元剤の濃度の計測 Download PDF

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Abstract

第一の金属をめっきするための無電解浴中の還元剤の濃度を、第二の金属の電着速度に対する還元剤の影響から測定する。無電解ニッケル及びコバルト浴の場合、無電解めっき浴の試料を酸性銅めっき溶液に添加し、銅電着速度をサイクリックボルタンメトリー溶出(CVS)分析によって計測する。次亜リン酸塩及びジメチルアミンボランの別個の分析は、両方の還元剤を使用する浴中、酸性溶液中のジメチルアミンボランの選択的分解によって達成される。

Description

本発明は、付着性の制御を提供する手段としての、無電解めっき浴中の還元剤の分析に関する。
背景技術
回路基板、半導体チップ及びデバイスパッケージをはじめとする種々の部品に多様な金属(たとえば銅、ニッケル及び金)を付着させるため、めっき浴が電子部品産業によって広く使用されている。電気めっき浴及び無電解めっき浴の両方が使用される。電気めっきの場合、部品及び対電極を、電着性金属のイオンを含有する電気めっき浴と接触させ、対電極に対して負の電位を部品に印加することによって金属を電着させる。無電解めっきの場合、浴はまた、触媒の存在で金属イオンを化学的に還元して金属の析出膜を形成させる還元剤を含有する。付着金属そのものが触媒として働くことができるため、無電解付着は、ひとたび開始すると、外部から電位を印加する必要なく進行する。
電気めっき浴は通常、所望の付着性及び形態を達成するために濃度を低ppm範囲で綿密に制御しなければならない有機添加物を含有する。このような添加物の主要な機能の一つは、基材表面の突出区域の電着速度を抑えることによって及び/又は凹み区域の電着速度を高めることによって、析出膜を平準化することである。付着の加速は、電着過程で急速に消費される抑制添加物種の物質輸送限定的な消耗から生じることもあるし、低い効率で消費される加速種の蓄積から生じることもある。めっき浴中の平準化添加物を検出するのに利用可能なもっとも高感度な方法は、電極面近傍における添加物濃度が十分に明確になる制御された流体力学的条件下での金属電着速度の電気化学的計測を含む。
サイクリックボルタンメトリー溶出(CVS)分析[D. Tench and C. Ogden, J. Electrochem. Soc. 125, 194(1978)]は、もっとも広く使用されている浴添加物制御法であり、めっき浴中で不活性電極(たとえばPt)の電位を固定電位限界の間で周期変動させて、金属が電極面へのめっきと電極面からの溶出とを交互に受けるようにすることを含む。このような電位周期変動は、再現性のある結果が得られるよう、電極面に関して定常状態を確立するように設計されている。電極面への有機膜又は他の汚染物の蓄積は、有機添加物なしのめっき溶液中で電極の電位を定期的に周期変動させ、必要ならば、微細な砥粒を使用して電極を研磨することによって回避することができる。サイクリックステップボルタンメトリー溶出(CSVS)とも呼ばれるサイクリックパルスボルタンメトリー溶出(CPVS)は、計測精度を改善するために、分析中に電位の不連続変化を利用して電極をコンディショニングするCVS法の変形である[D. Tench and J. White, J. Electrochem. Soc. 132, 831(1985)]。通常、CVS及びCPVSのいずれの分析にも、制御された流体力学的条件を提供するため、回転盤電極構造が使用される。
CVS及びCPVS分析の場合、金属付着速度は、金属電着中に通される電流又は電荷から測定することができるが、通常、電極からの金属の陽極溶出に伴う電荷を計測することが有利である。典型的なCVS/CPVS速度パラメータは、所定の電極回転速度の場合の溶出ピーク面積(Ar)である。CVS法は、当初、ピロリン酸銅浴を制御するために適用されていたが(Tench及びOgdenへの米国特許第4,132,605号)、それ以後、電子部品産業によって広く使用されている酸性硫酸銅浴をはじめとする多様な他のめっき系の制御に応用されている[たとえば、R. Haak, C. Ogden and D. Tench, Plating Surf. Fin. 68(4), 52(1981) and Plating Surf. Fin. 69(3), 62(1982)]。
酸性硫酸銅浴は、半導体チップ上で絶縁材料中の微細なトレンチ及びバイアの中に銅を電着するための「ダマシン」法(たとえば、P. C. Andricacos, Electrochem. Soc. Interface, Spring 1999, p. 32、Chowらへの米国特許第4,789,648号、Ahmadらへの米国特許第5,209,817号)で用いられる。超微細ダマシンフィーチャをめっきするために必要な酸性銅浴中の3種の有機添加物を制御するCVS法が、Chalytらへの米国特許出願第09/968,202号(2001年10月1日出願)に記載されている。ダマシン法では、現在実施されているように、バイア及びトレンチがチップの絶縁材料にエッチングされる。通常、絶縁材料は二酸化ケイ素であるが、より低い誘電率の材料が開発中である。絶縁材料へのCuの移動及びデバイス性能の低下を防ぐため、バリヤ層、たとえば窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)又は窒化タングステン(WNx)が、通常は反応性スパッタリングによってトレンチ及びバイアの側壁及び底面に付着される。このバリヤ層の上に、高められた導電性及び良好な付着を提供するため、薄い銅シード層が通常はスパッタリングによって付着される。そして、銅がトレンチ及びバイアの中に電着される。外面、すなわちトレンチ及びバイアの外側に付着した銅は、ケミカルメカニカルポリッシング(CMP)によって除去される。銅の酸化及び移動を抑止するため、露出した銅回路にキャップ層又はクラッド層(たとえばTiN、TaN又はWNx)が被着される。「デュアルダマシン」法は、トレンチ及びバイアにおける両方同時の付着を含む。本明細書では、「ダマシン」は「デュアルダマシン」法をも包含する。
現在、無電解付着されたコバルト及びニッケルに基づくダマシンバリヤ層が研究中である[たとえば、Kohn et al., Mater. Sci. Eng. A302, 18(2001)]。このような金属材料は、金属窒化物バリヤ材料に比べて高い導電率を有し、それが、銅シード層を使用することなく銅を直接バリヤ層に電着させることを可能にする。より高いバリヤ層導電率はまた、所与の断面積の回路トレースの全体的抵抗を減らす。加えて、無電解付着は、超微細なトレンチ及びバイアの中でさえ形状適合性の高いコーティングを提供して、全体的なコーティング厚さを最小限にすることを可能にする。ダマシンバリヤ付着に関して研究されている無電解コバルト及びニッケル浴は通常、コバルト又はニッケルと同時に付着し、効果的なバリヤ性が維持される最大温度を高める耐熱金属(たとえばタングステン、モリブデン又はレニウム)をも含有する。
無電解コバルト及びニッケル浴の場合、通常、リンを析出膜に導入する還元剤として次亜リン酸塩(H2PO2 -)が使用される。同時付着したリンは、(電着物に比較して)析出膜の粒度及び結晶度を下げ、それが析出膜のバリヤ性を改善する傾向を示す。代替の還元剤としては、ボラン類、たとえばジメチルアミンボラン(DMAB)がある。ボラン還元剤の使用はボロンを析出膜に導入する。ダマシンバリヤ層の無電解付着に典型的な浴は、0.1M塩化又は硫酸コバルト、0.2M次亜リン酸ナトリウム、0.03Mタングステン酸ナトリウム、0.5Mクエン酸ナトリウム、0.5Mホウ酸及び少量の界面活性剤を含む。このようなCo(W,P)浴は通常、約9のpH及び85〜95℃の温度で運転し、有機添加物を含有することもできる。
絶縁材料、たとえば二酸化ケイ素又は無電解法の場合に十分な触媒作用のない金属、たとえば銅へのコバルト及びニッケルの無電解付着のためには、一般に触媒金属のシード層が使用される。通常、塩化パラジウム及びフッ化物イオンを含有する酸性活性化溶液に部品を浸漬することにより、触媒パラジウムが付着される。フッ化物イオンは、基材上の表面酸化物の溶解を生じさせて、パラジウムの置換層を形成させる傾向がある。あるいはまた、無電解付着される金属、コバルト又はニッケルのシード層をスパッタリングによって被着してもよい。
最近、2種の還元剤を用いるCo(W,P)浴の場合の、ダマシン銅回路へのCo(W,P)のキャップ層の直接付着が報告された(T. Itabashi, N. Nakano and H. Akahoshi, Proc. IITC 2002, p. 285-287)。この場合、無電解付着は、比較的低い濃度で存在するより活性な還元剤(DMAB)によって開始される。DMAB還元剤が部品表面で欠乏すると、無電解付着は、より良好な付着性を提供する、より活性の低い還元剤(次亜リン酸塩)によって支持される。
許容しうる付着性を提供するためには、無電解めっき浴中の還元剤の濃度の綿密な制御が必要であるが、利用可能な還元剤分析法は煩わしく不適当である。一般的な従来技術の方法では、めっき浴試料中の還元剤を、まず、過剰なヨウ素の添加によって酸性溶液中で完全に酸化させる。この酸化反応には約30分を要し、光の非存在で実施されなければならない。そして、酸性溶液中の過剰なヨウ素を、チオ硫酸イオンを含有する溶液で逆滴定し、通常、溶液の色の消滅を滴定終点とみなす。このような従来技術の方法は、還元剤の綿密な制御に必要な時間枠の中で分析結果を提供せず、自動化オンライン浴制御に順応しにくい。
発明の開示
発明の概要
本発明は、還元剤によって生じる金属電着速度の増大から無電解めっき浴中の還元剤の濃度を測定する方法を提供する。金属電着速度は、電着溶液及び既知の体積分率の無電解めっき浴を含む試験溶液ならびに電着溶液中に既知の濃度の還元剤を含有する少なくとも2種の較正溶液に関して計測される。較正溶液の一つは、還元剤無添加の電着溶液であってもよい。電着溶液から電着される金属は、無電解付着される金属と同じ金属であってもよいし、異なる金属であってもよい。無電解めっき浴中の還元剤濃度は、試験溶液の場合の金属電着速度と、較正溶液に関して計測された金属電着速度とを比較することによって測定される。
好ましい実施態様では、第一の金属の無電解めっきのためのめっき浴中の還元剤の濃度を、還元剤によって生じる電着溶液中の第二の金属の電着速度の増大から測定する。既知の濃度の還元剤を含有する電着溶液中の第二の金属に関する電着速度パラメータを計測することにより、較正曲線を生成する。2種の較正溶液が必要であり、その一方は、還元剤なしの電着溶液であってもよい。還元剤分析のためには、電着溶液に添加された既知の体積分率のめっき浴試料を含有する、はじめは還元剤を含有しないか、比較的低い濃度の還元剤しか含有しないものでもよい試験溶液に関して電着速度パラメータを計測する。好ましくは、較正及び還元剤分析のための速度パラメータを、還元剤をほとんど又は全く含有しない電着溶液に関する電着速度パラメータに対して正規化する。金属電着速度は、好ましくは、不活性金属(たとえば白金)で構成された回転盤電極における第二の金属のボルタンメトリーめっき及び溶出に伴う電流又は電荷から測定する。この場合、電着溶液は、第二の金属の可逆性電着を提供するように選択される。
本発明の方法は、たとえばダマシン銅回路のバリヤ層を付着させるために使用されるタイプの無電解コバルト及びニッケル浴中の還元剤の濃度を計測する場合に特に有用である。好ましい手法では、(好ましくは有機添加物なしの)酸性硫酸銅電着溶液中の銅電着速度の計測が、無電解コバルト又はニッケルめっき浴中の還元剤濃度を測定するために使用される。好ましい電着速度パラメータは、定速回転する白金回転盤電極で計測されるCVSピーク面積(Ar)である。この手法はまた、他の金属(たとえばタングステン、モリブデン又はレニウム)の同時付着を伴うコバルト及びニッケル無電解めっき浴に関して還元剤濃度を計測するために使用することもできる。
本発明の方法はまた、2種以上の還元剤を使用する無電解めっき浴中で個々の還元剤の濃度を計測するために使用することもできる。たとえば、無電解コバルト及びニッケル浴中の次亜リン酸塩及びジメチルアミンボラン(DMAB)還元剤は、酸性溶液中での(次亜リン酸塩に比べて)DMABの不安定さを利用することによって分析することができる。
本発明は、許容しうる金属析出膜を保証するために無電解めっき浴中の還元剤を分析し、制御することを可能にする分析方法を提供する。この方法は、比較的少ない化学試薬しか要さず、従来技術の方法の煩雑な手順を回避させ、速やかに実施することができ、それが綿密な工程制御を可能にする。唯一必要な試料準備は、脱イオン水又は所定の溶液(たとえば酸性溶液)による希釈である。方法は、パッシブ酸化物層を形成する傾向のあるものをも含む多様な金属及び合金の付着のための無電解めっき浴の分析に使用することができる。
以下の詳細な説明を添付図面と併せて読むことにより、本発明のさらなる特徴及び利点が当業者には明白に理解されよう。
発明の詳細な説明
本明細書で使用される専門用語は一般に当業者には知られている。「電極電位」又は単に「電位」とは、1個の電極と電解液との界面で発生する電圧をいう。実際には、電極電位は、通常は一定のままであり、ボルタンメトリー分析結果に影響しない、電解液中の有意な抵抗性電圧降下を含むことが多い。本明細書で使用する「めっき」と「付着」とは等価であり、「電気めっき」と「電着」も同じく等価である。記号「M」はモル濃度を意味する。
ボルタンメトリーデータは、電極電位を定速で走査することによって、又は電位をステッピングすることによって、又は電位走査とステッピングとの組み合わせによって生成することができる。「サイクリックボルタモグラム」とは、通常は、作動電極電位を、固定された負限界と正限界との間で時間とともに周期変動させることによって得られる、電流又は電流密度(y軸上)と作動電極電位(x軸上)とのグラフである。「ポテンシオスタット」とは、作動電極と対電極との間に電流を通して作動電極を照合電極に対して所望の電位まで駆動することによって、作動電極の電位を制御するための電子装置である。ポテンシオスタットの使用は、有意な電流が照合電極を通ってその電位を変化させてしまうことを防ぐ。また、3電極モードでの動作が、電解液中の抵抗性電圧降下に伴う電極電位の誤差を減らすことができる。
本明細書では、「標準添加」とは一般に、既知の量の電着溶液への既知の量の無電解めっき浴試料の添加をいう。体積分率とは、無電解浴試料の体積を浴試料添加後の溶液の全体積で割ったものである。「標準添加」はまた、既知の量の電着溶液への既知の重量の固体還元剤の添加を包含する。加えて、較正データは通常、較正曲線又はグラフとして取り扱われるが、そのようなデータを表形態にし、そのままで、特にコンピュータによって使用してもよく、本明細書で使用する「曲線」又は「グラフ」は表形態のデータを含む。
本発明は、還元剤によって生じる金属電着速度の増大から無電解めっき浴中の還元剤の濃度を測定する方法を提供する。方法は、コバルト、ニッケル、銅、金、パラジウム及び白金の付着のために使用されるものならびに他の金属の同時付着、たとえばタングステン、モリブデン又はレニウムとコバルト又はニッケルとの同時付着を伴うものを含む多様な無電解めっき浴に適用することができる。方法は、還元剤の化学的性質に直接依存するのではなく、次亜リン酸塩、ホウ水素化物、シアノホウ水素化物、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、ギ酸塩、グリオキシル酸、塩酸ヒドロキシルアミンならびに種々のボラン類、たとえばジメチルアミンボラン及びトリエチレンボランをはじめとする多様な還元剤の分析に使用することができる。金属電着速度は、好ましくは、サイクリックボルタンメトリー溶出(CVS)又はサイクリックパルスボルタンメトリー溶出(CPVS)によって測定される。後者は、サイクリックステップボルタンメトリー溶出(CSVS)とも呼ばれる。本明細書で使用する「サイクリックボルタンメトリー溶出」又は「CVS」は、CVS法の変形であるCPVS法を暗示的に含む。同様に、「CVS速度パラメータ」は、類似のCPVSボルタンメトリー速度パラメータを含む。
CVS法では、不活性作動電極、通常は白金の電位を、金属電着溶液中で定速で固定電位限界の間で周期変動させて、金属が、電極面への電着と溶液中に戻される陽極溶出とを交互に受けるようにする。好ましくは、分析結果の感度及び再現性を改善するため、回転盤電極構造を作動電極に使用して溶液物質輸送を制御する。金属付着速度は、好ましくは、一定の電極回転速度での金属溶出ピーク面積(Ar)によって計測するが、溶出ピーク高さから測定してもよいし、所定の陰極電位又は電位範囲に関して計測された(電極の回転あり又はなしでの)電極インピーダンス、(平均電流を含む)電流又は積分電流(電荷)から測定してもよい。これらの速度パラメータすべてが、計測条件が同じである場合のみ比較のために容易に使用することができる金属電着速度の相対的な尺度を提供する。
正規化された電着速度パラメータ、たとえば試験又は較正溶液に関する速度パラメータと、還元剤をほとんど又は全く含有しない電着溶液に関する速度パラメータとの比を使用することにより、還元剤分析のための改善された再現性及び精度を提供することができる。試験及び較正溶液に関する電着速度パラメータはまた、他の手法、たとえば、還元剤をほとんど又は全く含有しない電着溶液に関して計測された電着速度パラメータに対する数学的な差によって正規化することもできる。計測された電着速度パラメータの改善された再現性及び精度はまた、還元剤の非存在で電着速度が実質的にゼロになるように計測条件を調節することによって提供することもできる。この場合、好ましくは、CVS分析の場合の負の電位掃引限界又はCPVS分析の場合の金属電着電位を、金属が還元剤の非存在で実質的な速度(実質的なAr値によって示す)で電着される電位のちょうど正の値になるように予め決定しておく。
CVS電着速度計測の場合、通常、複数の電位サイクルを使用して、再現性のある結果が得られるように作動電極表面をコンディショニングする。電極コンディショニングは、所定数のサイクル(たとえば3サイクル)だけ実施してもよいし、連続サイクルで実質的に等しいボルタモグラム又はボルタンメトリー特徴によって定常電極状態が示されるまで実施してもよい。通常、定常状態は、所定の割合(たとえば0.5%)未満しか異ならない連続するAr値によって示される。
CVS計測のための不活性作動電極は、電着溶液中、ボルタンメトリー分析に使用される条件下で安定であるいかなる適当な導電材料で構成されていてもよいが、好ましくは、貴金属、たとえば白金、イリジウム、金、オスミウム、パラジウム、レニウム、ロジウム、ルテニウム及びそれらの合金で構成されている。他の耐酸化性金属及び合金、たとえばステンレス鋼を作動電極材料として使用してもよい。典型的なCVS回転盤電極は、白金金属盤(直径3〜5mm)で構成され、その背面に電気接触ワイヤが絶縁プラスチックシリンダ(直径10〜20mm)の一端と同じ高さに埋め込まれている。回転盤電極は、金属盤をプラスチック中の穴にプレス嵌めすることによって製造することもできるが、好ましくは、溶液の浸入を防ぐシールを金属とプラスチックとの間に形成するホットプレスによって製造される。ホットプレスによって回転盤電極を取り付けるのに適したプラスチックはポリトリフルオロクロロエチレン(Kel-F(登録商標))である。回転盤電極は通常、定速(100〜10,000rpm)で回転させるが、電極の回転を時間的に変調させてもよい。
CVS計測に必要な作動電極電位の正確な制御は通常、電子ポテンシオスタットを対電極及び照合電極、たとえば銀−塩化銀(SSCE)、水銀−硫酸水銀又は飽和カロメル電極(SCE)と併用することによって提供される。二重接合を使用して、めっき浴種の浸入を阻止することによって照合電極の寿命を延ばしてもよい。対電極は通常、作動電極に付着される金属と同じ金属で構成されるが、不活性金属を使用してもよい。減極剤(たとえば硫黄又はリン)を対電極に含めて金属の溶解を促進して、電着溶液の分解を阻止してもよい。金属、合金及び導電性酸化物(たとえば酸化チタン−ルテニウム混合物)をはじめとして、電着溶液中で酸化及び還元を妨げる実質的にいかなる導電体を不活性対電極として使用してもよい。好ましい不活性対電極材料は、耐酸化性が高く、比較的廉価である316ステンレス鋼であるが、他のタイプのステンレス鋼又は他の耐酸化性合金(たとえばInconel)を使用してもよい。他の適当な不活性対電極材料としては、貴金属、たとえば白金、イリジウム、金、オスミウム、パラジウム、レニウム、ロジウム、ルテニウム及びそれらの合金がある。
本発明の金属電着速度はまた、CVS以外の、たとえば陰極のACインピーダンスの計測に基づくものをはじめとする方法によって計測することもできる。このような代替方法にも同じ電極材料及び構造を使用することができる。また、分析の精度及び再現性が低下するかもしれないが、金属電着速度を反映する電流計測を固定電極で及び/又は電位周期変動なしで実施することもできる。固定作動電極を本発明の還元剤分析に使用するのならば、たとえば溶液を攪拌又はポンピングすることにより、電極表面の流体力学的条件を制御することが好ましい。
本発明の還元剤分析の場合、無電解付着される金属と電着される金属が同じ金属であってもよい。この場合、電着溶液及び無電解めっき浴の試料で構成された、脱イオン水又は電解液で希釈されていてもよい試験溶液に関して電着速度パラメータを計測する。この手法には、パッシブ酸化物層を形成する傾向にある金属、たとえばコバルト及びニッケルの電着速度をボルタンメトリー溶出によって容易に測定することはできないという欠点がある。
好ましい実施態様では、第一の金属の付着のための無電解めっき浴中の還元剤の濃度を、還元剤によって生じる、電着溶液中の第二の金属の電着速度の増大から測定する。好ましくは、第二の金属は、第二の金属のイオンが水溶液中でより容易に還元される傾向にあるという意味で第一の金属よりも実質的に貴である。この場合、第一の金属のイオンを還元するために必要な比較的強力な還元剤の所与の濃度が(所与の電位で)第二の金属の電着速度における比較的大きな増大を生じさせる。好ましくは、第二の金属は、電着速度をCVS又はCPVS分析によって容易に計測することができるよう、可逆的に電着される。可逆的電着を受ける傾向にある金属としては、銅、銀、スズ、インジウム、鉛、亜鉛、ビスマス及びカドミウムがある。また、第二の金属が合金であってもよく、合金は、純粋な金属の電着が不可逆性である金属を含むことができる。好ましくは、析出膜を輝化し、平準化するために電気めっき浴で一般的に使用される有機添加物は、一般に金属電着速度に影響し、還元剤分析を妨害する傾向にあるため、電着溶液には添加されない。電着速度に実質的に影響しない界面活性剤及び他の有機添加物は、電着溶液に含めてもよい。
本発明の分析に好ましい電着溶液は、有機添加物なしの酸性硫酸銅である。広い範囲の酸性銅組成物を使用することができる。本発明の分析に適することができる酸性硫酸銅浴に一般的な範囲は、40〜200g/L硫酸銅五水和物、1〜350g/L硫酸及び25〜100mg/L塩化物イオンである。無電解めっき浴の成分、たとえば錯化剤を電着溶液に含めて還元剤分析に対する妨害を最小限にしてもよい。場合によっては、分析される還元剤を低い濃度でベースライン電着溶液に含めて応答範囲を調節し、分析結果の一貫性を改善してもよい。他のアニオンに基づく銅電着溶液を使用してもよい。代替のアニオンとしては、ピロリン酸イオン、スルファミド酸イオン、クエン酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フルオロホウ酸イオン、アルキルスルホン酸イオン及びそれらの混合物がある。
錯化剤としてクエン酸塩を含有する無電解コバルト及びニッケル浴中の還元剤を分析する場合、好ましい酸性銅電着溶液は、70g/L硫酸銅五水和物、175g/L硫酸、50mg/L塩化物イオン及び1g/Lクエン酸ナトリウム二水和物を含有する。電着溶液へのクエン酸塩の介在は、電着溶液への無電解浴試料の標準添加から派生するクエン酸塩の干渉を最小限にする。無電解めっき浴試料は通常、電着溶液への添加の前及び最中に希釈されるため、電着溶液に含まれるクエン酸塩の濃度は付随的に低いはずである。
本発明の分析の改善された結果は、CVS計測パラメータを最適化することによって提供することができる。酸性銅系の場合の主要なCVS計測パラメータ及びそれらの一般的な範囲として、電極回転速度(100〜10,000rpm)、電位走査速度(10〜1000mV/s)、負電位限界(−0.05〜−0.5V対SSCE)及び正電位限界(1.4〜1.8V対SSCE)がある。好ましい実施態様では、CVS分析の場合の負電位掃引限界又はCPVS分析の場合の金属電着電位は、Ar値が実質的に計測可能になる電位のちょうど正の値になるように予め決定される。酸性銅電着溶液の場合、この電位は通常、約0.0V対SSCEである。もう一つの好ましい実施態様では、CVS分析の場合の負電位掃引限界又はCPVS分析の場合の金属電着電位は、容易に計測可能であり、再現性である実質的なAr値を提供するように予め決定される。電極面に吸着された汚染物質がサイクルごとに電気化学的酸化によって除去されるよう、(酸素発生領域中の)比較的高い電圧の正電位限界が一般に使用され、それがより再現性のある結果を提供する。さらなるCPVS計測パラメータとしては、使用されるパルス又はステップのための電位及び保持時間がある。電着速度計測の精度は、比較的一貫して維持することができる(通常は室温よりも3又は4℃高い)わずかに高めた溶液温度を使用することによって改善することができる。
本発明の方法は、他の金属(たとえばタングステン、モリブデン又はレニウム)が同時付着されるものを含む、無電解コバルト及びニッケル浴中の還元剤の濃度を計測する場合に特に有用である。コバルト及びニッケルは、パッシブ表面酸化物層を形成する傾向があり、そのため、電着速度を計測するためにこれらの金属のめっき及び溶出を容易に使用することはできない。好ましい手法では、(有機添加物なしの)酸性硫酸銅電着溶液中の銅電着速度の計測は、無電解コバルト及びニッケルめっき浴中の還元剤の濃度を測定するために使用される。好ましい電着速度パラメータは、定速で回転する白金盤電極で計測されるCVS溶出ピーク面積(Ar)である。Ar値は、酸性銅電着溶液及び既知の体積分率の無電解コバルト又はニッケル浴で構成された試験溶液ならびにAr(0)と呼ぶ単独の銅電着溶液に関して測定される。還元剤濃度は、試験溶液に関するAr又は正規化速度パラメータAr/Ar(0)を、酸性銅電着溶液中の還元剤の濃度の関数としてのAr又はAr/Ar(0)の較正曲線と比較することによって測定される。代替の正規化速度パラメータ、たとえばAr−Ar(0)を使用してもよい。
普通、少量の還元剤が金属電着速度に対して強い影響を及ぼすため、通常、無電解めっき浴試料を、電着溶液への添加の前に希釈する。浴試料は、脱イオン水又は溶液、たとえば、電着溶液又はめっき浴もしくは電着溶液の1種以上の成分を含有する溶液で希釈することができる。酸性溶液(たとえば硫酸)での希釈を使用して、(たとえば酸性硫酸銅浴の場合)マトリックス効果を最小限にしたり、(たとえば他の還元剤の場合)分析を妨害する種を分解したりすることもできる。このような希釈は、還元剤濃度に対する最適な感度を提供し、溶液の取り扱いに伴う誤差を最小限にする。無電解コバルト又はニッケル浴の分析の場合、通常、浴試料を1:100の比に希釈したのち電着溶液に加える。希釈された浴試料を電着溶液に標準添加する結果、還元剤のさらなる希釈が起こる。
電着溶液に加えられる無電解めっき浴試料の体積分率が一般に小さいため、通常、還元剤分析に対する無電解浴の他の成分の影響は有意ではない。通常、無電解浴中のさほど貴ではない金属(コバルト、ニッケル、タングステン、モリブデン及びレニウム)のイオンは、そのような金属が、特に輝化又は平準化有機添加物なしの溶液から、比較的貴な金属(たとえば銅)と容易に同時付着しないため、還元剤分析を妨害しない。低い濃度でさえ金属電着速度に影響を及ぼすことができる無電解めっき浴の成分(たとえば錯化剤)の影響は、そのような成分を電着溶液に含めることによって最小限にすることができる。
本発明の方法はまた、2種以上の還元剤を用いる無電解めっき浴中の個々の還元剤の濃度を計測するために使用することができる。たとえば、無電解コバルト及びニッケル浴中の次亜リン酸塩及びジメチルアミンボラン(DMAB)還元剤は、(次亜リン酸塩に比べて)酸性溶液中のDMABの不安定さを利用することによって分析することができる。この場合、水素ガスの発生を伴う以下の反応
(CH32NHBH3+3H2O+H+→(CH32NH2+H3BO3+3H2
を介してDMAB還元剤を分解する酸性溶液(たとえば硫酸)の添加によって無電解めっき浴試料を希釈する。水素気泡発生の停止によって示されるDMAB還元剤の実質的に完全な分解に十分な時間を考慮する。そして、金属電着溶液、好ましくは酸性硫酸銅溶液への(希釈された浴試料を含有する)酸性溶液の標準添加によって生じる金属電着速度の変化から、酸性溶液中で安定である次亜リン酸塩の濃度を測定する。
次亜リン酸塩還元剤をも含有する無電解コバルト又はニッケル浴中のDMBA還元剤濃度は、従来の滴定法によって測定することもできる。この場合、まず、無電解めっき浴試料中のDMBAを、酸性溶液中、過剰なヨウ素の添加によって完全に酸化させ、次に、それを、還元剤としてチオ硫酸イオンを含有する溶液で逆滴定する。終点は、電位差測定又は比色(溶液中のヨウ素の褐色の消失)によって決定することができる。次亜リン酸塩はヨウ素によって酸化されず、したがって、DMAB分析を妨害しない。
あるいはまた、次亜リン酸塩還元剤をも含有する無電解コバルト又はニッケル浴中のDMBA還元剤濃度は、本発明の方法によって測定することもできる。好ましい手法は、(通常は脱イオン水で希釈した)無電解めっき浴試料の標準添加の前及び直後ならびにDMBA還元剤の実質的に完全な分解を許すのに十分な時間遅延ののち、(硫酸を含有する)酸性銅電着溶液中の銅電着速度を計測する手法である。時間遅延後の電着速度が無電解めっき浴中の次亜リン酸塩濃度の測度を提供する。次亜リン酸塩によって生じた電着速度の増大を差し引いたのち、標準添加の直後の電着速度が無電解めっき浴中のDMAB濃度の測度を提供する。直接的な電着速度計測の前のDMABの分解に伴うDMAB分析の誤差は、比較的低い硫酸濃度の酸性銅電着溶液を使用することによって最小限にすることができる。あるいはまた、ほぼ中性の電着溶液(たとえばpH8のピロリン酸銅)又は比較的低い酸性度の電着溶液(たとえばpH3のスルファミド酸銅)を使用して、DMAB分析に使用される電着速度計測の前のDMABの分解を最小限にしてもよい。この場合、無電解めっき浴試料は、次亜リン酸塩分析の場合には(DMABを分解するため)酸性溶液で希釈され、DMAB分析の場合には脱イオン水で希釈されることになる。
実際には、較正曲線は通常、はじめに、また還元剤の各標準添加ののちに、所定の電着溶液中で所定の金属電着速度パラメータを計測することによって生成される。還元剤分析の場合、普通、無電解めっき浴の試料を脱イオン水又は所定の溶液で希釈し、希釈されためっき浴試料の標準添加の前後で電着溶液中で電着速度パラメータを計測する。無電解めっき浴試料中の還元剤濃度は、計測された電着速度パラメータから、較正曲線に対する補間によって測定される。無電解めっき浴が、酸性溶液中で安定である第一の還元剤及び酸性溶液中で不安定である第二の溶液を含有するならば、還元剤ごとに別個の較正曲線を(標準添加によって)生成する。第一の還元剤の分析に使用される浴試料を酸性溶液で希釈し、電着溶液への標準添加の前に第二の還元剤が分解するための時間を許す。
本発明の範囲内で、分析手順及びデータ処理の変形が当業者には明白である。たとえば、還元剤濃度は、線形近似解析によって測定してもよい。この場合、無電解めっき浴の既知の体積分率の添加の前後で、電着溶液に関する金属電着速度パラメータ(たとえばAr)を計測する。そして、還元剤の1回以上の標準添加ののち、この混合溶液中で電着速度パラメータ計測を繰り返す。電着速度パラメータが還元剤濃度とともに線形に変化すると仮定して(これは、同じ量の還元剤の標準添加によって生じる速度パラメータの変化が等しいならば立証される)無電解めっき浴試料中の還元剤の濃度を計算する。この場合、試験溶液への還元剤の標準添加が較正溶液を産み出し、そのため、別個の較正曲線は不要である。還元剤濃度による電着速度パラメータの変化が非線形であり、それにもかかわらず数学的に予測可能である場合、同様な手法を使用してもよい。
発明を実施する最良の形態
本発明の好ましい実施態様では、無電解コバルト及びニッケルめっき浴中の次亜リン酸塩及びジメチルアミンボラン(DMAB)還元剤の濃度を、酸性硫酸銅電着溶液中のPt回転盤電極で計測されるCVS溶出ピーク面積(Ar)に対する無電解めっき浴及び還元剤の標準添加の影響から測定する。Ar計測の場合、電極電位は、固定正限界と固定負限界との間で定速で周期変動されるか、固定負電位で偏倚されたのち正方向に定速で走査されるかして、固定負電位で所定期間中に付着した銅を溶出させる。負の電圧限界又は固定負電位は、好ましくは、電着溶液への還元剤の添加なしで銅が実質的な速度で電着される電位のちょうど正の値になるように予め決定される。あるいはまた、負の電圧限界又は固定負電位は、容易に計測可能で再現性のある実質的なAr値を提供するように予め決定される。他のCVS計測パラメータに典型的な範囲は、電極回転速度100〜10,000rpm、電極走査速度50〜500mV/s及び正電位限界1.4〜1.8V対SSCEである。回転盤電極の電位は、好ましくは、ポテンシオスタット及び対電極を介して照合電極に対して制御される。
還元剤分析の前に、(還元剤を含まない又は低濃度でしか含まない)電着溶液中で作動電極の電位を、(分析に使用される電位範囲で)周期変動させて電極面をコンディショニングすることが好ましい。電極コンディショニング及び還元剤分析のためには、作動電極の電位を所定回数のサイクル、通常は3サイクル、周期変動することが好ましい。あるいはまた、作動電極の電位を、連続するAr値が所定の割合(通常は0.5%)未満しか異ならなくなるまで周期変動させる。
還元剤分析の場合、無電解めっき浴中の他の成分の濃度は通常、浴供給者によって推奨される範囲内に維持されるが、それが必須ではない。各標準添加ののち、回転盤電極(又は他の手段)によって攪拌して均質溶液を提供するのに十分な時間を考慮すべきである。計測中、溶液温度を室温の前後の一定値(±0.5℃の範囲)に維持すべきである。
本発明の有効性を、70g/L硫酸銅五水和物、175g/L硫酸、1g/Lクエン酸ナトリウム二水和物及び50mg/L塩化物イオン(塩酸として添加)を含有する酸性硫酸銅電着溶液(25℃)中、2500rpmで回転する白金盤電極(直径4mm)におけるArのCVS計測によって実証した。脱イオン水を使用して電解液を調製した。Qualilab QL-10めっき浴分析装置(ECI Technology, Inc.)を使用するポテンシオスタット制御の下、CVS計測を実施した。対電極はステンレス鋼ロッドであり、照合電極は、標準SSCE電極中の溶液を、0.1M KCl及び10容量%硫酸をも含有する飽和AgCl溶液で交換した変形銀−塩化銀電極(SSCE−M)であった。作動電極電位を、+1.575Vの正限界と0.000V対SSCE−Mの負限界との間で300mV/sで走査した。Ar及びAr(0)計測の場合、陽極電流をゼロ電流電位(陰極陽極クロスオーバで)から0.30V対SSCE−Mまで積分した。2回の電位サイクルで電極をコンディショニングし、3回目のサイクルでAr及びAr(0)を記録した。CVS計測中、溶液温度を25℃±0.5℃で制御した。
図1は、酸性銅電着溶液のAr/Ar(0)を、添加した次亜リン酸ナトリウムの濃度の関数として示す較正グラフを示す。次亜リン塩濃度に対する良好な感度が顕著である。この較正グラフは、次亜リン酸塩還元剤のみを用いるふさわしいコバルト−タングステン(クエン酸塩)無電解めっき浴ならびに次亜リン酸塩及びDMAB還元剤を両方用いるめっき浴の分析に有効であることが示された。次亜リン酸塩還元剤のみを用いる浴中の次亜リン酸塩の分析の場合、浴試料を脱イオン水で1:100に希釈し、希釈した浴試料2〜10mL/Lを電着溶液に加えた。次亜リン酸塩及びDMAB還元剤を両方用いる浴中の次亜リン酸塩の分析の場合、浴試料を10容量%硫酸溶液で1:100に希釈し、実質的に完全なDMAB分解のために2分間を考慮したのち、希釈した浴試料2〜10mL/Lを電着溶液に加えた。
表1は、種々の濃度の次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)及びそれらの濃度の倍のDMABを添加した有標コバルト−タングステン(クエン酸塩)無電解めっき浴の試料の分析結果をまとめたものである。分析結果は3回の実施の平均である。次亜リン酸塩分析の良好な精度が顕著である。
Figure 2006505790
図2は、酸性銅電着溶液のAr/Ar(0)をDMBA濃度の関数として示す較正グラフを示す。DMBA濃度に対する良好な感度が顕著である。本発明の較正及び計測は、約20分以内で実施することができる。分析そのものには約5分しか要しない。
本発明の好ましい実施態様を上記で例示し、説明した。しかし、変形及びさらなる実施態様が当業者には自明であることは疑う余地がない。さらには、本明細書で例示し、説明した要素に代えて等価の要素を用いてもよく、部品又は接続を逆にする、又は他の方法で交換してもよく、本発明の特定の特徴を他の特徴から独立して使用してもよい。したがって、典型的な実施態様は、包括的ではなく例示的であるとみなされるべきであり、請求項が本発明の完全な範囲をより明確に示す。
産業上の応用性
本発明は、許容しうる金属析出膜を保証するために無電解めっき浴中の還元剤を分析し、制御することを可能にする分析方法を提供する。この方法は、比較的少ない化学試薬しか要さず、従来技術の方法の煩雑な手順を回避させ、速やかに実施することができ、それが綿密な工程制御を可能にする。唯一必要な試料準備は、脱イオン水又は所定の溶液(たとえば酸性溶液)による希釈である。方法は、パッシブ酸化物層を形成する傾向のあるものを含む多様な金属及び合金の付着のための無電解めっき浴の分析に使用することができる。
CVS正規化銅溶出ピーク面積を酸性銅電着溶液中の次亜リン酸ナトリウム濃度の関数として示す較正グラフである。 CVS正規化銅溶出ピーク面積を図1の酸性銅電着溶液中のDMAB濃度の関数として示す較正グラフである。

Claims (28)

  1. 第一の金属の付着のための無電解めっき浴中の還元剤の濃度を測定する方法であって、
    電着溶液からの第二の金属の電着に関する電着速度パラメータを計測するステップと、
    前記電着溶液及び既知の体積分率の前記無電解めっき浴を含む試験溶液からの前記第二の金属の電着に関する電着速度パラメータを計測するステップと、
    前記電着溶液及び既知の濃度の前記還元剤を含む較正溶液からの前記第二の金属の電着に関する電着速度パラメータを計測するステップと、
    前記電着溶液、前記試験溶液及び前記較正溶液に関する前記電着速度パラメータを比較して前記無電解めっき浴中の前記還元剤の濃度を測定するステップと
    を含む方法。
  2. 前記還元剤が、次亜リン酸塩、ジメチルアミンボラン、トリエチレンボラン、ホウ水素化物、シアノホウ水素化物、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、ギ酸塩、グリオキシル酸及び塩酸ヒドロキシルアミンからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  3. 前記第一の金属が、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、レニウム、銅、金、パラジウム、白金及びそれらの合金からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  4. 前記電着速度パラメータを、CVS及びCPVSからなる群より選択される方法によって計測する、請求項1記載の方法。
  5. 前記電着速度パラメータが、溶出ピーク面積、溶出ピーク高さ、所定の陰極電位における電流、所定の陰極電位範囲での積分電流及び所定の陰極電位範囲での平均電流からなる群より選択される、請求項4記載の方法。
  6. 前記電着速度パラメータを交流(AC)法によって計測する、請求項1記載の方法。
  7. 前記電着速度パラメータが正規化された電着速度パラメータである、請求項1記載の方法。
  8. 前記電着溶液が前記還元剤を所定の濃度で含有する、請求項1記載の方法。
  9. 前記第一の金属と前記第二の金属が同じ金属である、請求項1記載の方法。
  10. 前記第二の金属が、銅、銀、スズ、インジウム、鉛、亜鉛、ビスマス、カドミウム及びそれらの合金からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  11. 前記電着溶液が、硫酸イオン、ピロリン酸イオン、スルファミド酸イオン、クエン酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フルオロホウ酸イオン、アルキルスルホン酸イオン及びそれらの混合物からなる群より選択されるアニオンを含む、請求項1記載の方法。
  12. 前記電着溶液が、前記無電解めっき浴中にも存在する錯化剤を含む、請求項1記載の方法。
  13. 第一の金属の付着のための無電解めっき浴中の還元剤の濃度を測定する方法であって、
    電着溶液からの銅の電着に関する電着速度パラメータを計測するステップと、
    前記電着溶液及び既知の体積分率の前記無電解めっき浴を含む試験溶液からの銅の電着に関する電着速度パラメータを計測するステップと、
    前記電着溶液及び既知の濃度の前記還元剤を含む較正溶液からの銅の電着に関する電着速度パラメータを計測するステップと、
    前記電着溶液、前記試験溶液及び前記較正溶液に関する前記電着速度パラメータを比較して前記無電解めっき浴中の前記還元剤の濃度を測定するステップと
    を含む方法。
  14. 前記還元剤が、次亜リン酸塩、ジメチルアミンボラン、ホウ水素化物及びヒドラジンからなる群より選択される、請求項13記載の方法。
  15. 前記第一の金属が、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、レニウム及びそれらの合金からなる群より選択される、請求項13記載の方法。
  16. 前記電着速度パラメータを、CVS及びCPVSからなる群より選択される方法によって計測する、請求項13記載の方法。
  17. 前記電着速度パラメータが、溶出ピーク面積、溶出ピーク高さ、所定の陰極電位における電流、所定の陰極電位範囲での積分電流及び所定の陰極電位範囲での平均電流からなる群より選択される、請求項16記載の方法。
  18. 前記電着速度パラメータを交流(AC)法によって計測する、請求項13記載の方法。
  19. 前記電着速度パラメータが正規化された電着速度パラメータである、請求項13記載の方法。
  20. 前記電着溶液が前記還元剤を所定の濃度で含有する、請求項13記載の方法。
  21. 前記電着溶液が、硫酸イオン、ピロリン酸イオン、スルファミド酸イオン、クエン酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フルオロホウ酸イオン、アルキルスルホン酸イオン及びそれらの混合物からなる群より選択されるアニオンを含む、請求項13記載の方法。
  22. 前記電着溶液が、前記無電解めっき浴中にも存在する錯化剤を含む、請求項13記載の方法。
  23. 無電解コバルトめっき浴中の還元剤の濃度を測定する方法であって、
    酸性銅電着溶液に関するサイクリックボルタンメトリー溶出Arパラメータを計測するステップと、
    前記酸性銅電着溶液及び既知の体積分率の前記無電解コバルトめっき浴を含む試験溶液に関するArパラメータを計測するステップと、
    前記酸性銅電着溶液及び既知の濃度の前記還元剤を含む較正溶液に関するArパラメータを計測するステップと、
    前記銅電着溶液、前記試験溶液及び前記較正溶液に関する前記Arパラメータを比較して前記無電解コバルトめっき浴中の前記還元剤の濃度を測定するステップと
    を含む方法。
  24. 前記還元剤が、次亜リン酸塩、ジメチルアミンボラン、ホウ水素化物及びヒドラジンからなる群より選択される、請求項23記載の方法。
  25. 前記無電解コバルトめっき浴が、モリブデン、タングステン及びレニウムからなる群より選択される金属のイオンを含む、請求項23記載の方法。
  26. 無電解ニッケルめっき浴中の還元剤の濃度を測定する方法であって、
    酸性銅電着溶液に関するサイクリックボルタンメトリー溶出Arパラメータを計測するステップと、
    前記酸性銅電着溶液及び既知の体積分率の前記無電解ニッケルめっき浴を含む試験溶液に関するArパラメータを計測するステップと、
    前記酸性銅電着溶液及び既知の濃度の前記還元剤を含む較正溶液に関するArパラメータを計測するステップと、
    前記銅電着溶液、前記試験溶液及び前記較正溶液に関する前記Arパラメータを比較して前記無電解ニッケルめっき浴中の前記還元剤の濃度を測定するステップと
    を含む方法。
  27. 前記還元剤が、次亜リン酸塩、ジメチルアミンボラン、ホウ水素化物及びヒドラジンからなる群より選択される、請求項26記載の方法。
  28. 前記無電解ニッケルめっき浴が、モリブデン、タングステン及びレニウムからなる群より選択される金属のイオンを含む、請求項26記載の方法。
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