以下、図面を参照し、本発明の実施の形態の音像定位装置について説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における音像定位装置のブロック図を示している。本実施の形態の音像定位装置は、図1に示すように、左前方、右前方および中央前方チャンネル信号L、R、Cと左後方および右後方チャンネル信号Ls、Rsとを含むマルチチャンネル音声信号によって表される音声を受聴者の左前方および右前方に夫々配置された左前方および右前方スピーカと左前方および右前方スピーカの間に配置された中央前方スピーカとから出力するようになっている。
本実施の形態の音像定位装置は、受聴者が1人のモードと受聴者が2人のモードとを選択的に設定するモード設定手段109と、左後方チャンネル信号Lsによって表される音声が左前方、右前方および中央前方スピーカから出力されるよう、モード設定手段109によって設定されたモードに基づいて左後方チャンネル信号Lsから一対の第1および第2左信号を生成する第1音像定位処理手段107と、右後方チャンネル信号Rsによって表される音声が左前方、右前方および中央前方スピーカから出力されるよう、モード設定手段109によって設定されたモードに基づいて右後方チャンネル信号Rsから一対の第1および第2右信号を生成する第2音像定位処理手段108とを備えている。
ここで、第1および第2左信号によって表される音声が、左前方、右前方および中央前方スピーカから出力されたとき、受聴者は、この音声を左後方の仮想スピーカ(仮想音源)からの音声として受聴する。同様にして、第1および第2右信号によって表される音声が、左前方、右前方および中央前方スピーカから出力されたとき、受聴者は、この音声を左後方の仮想スピーカからの音声として受聴する。
音像定位装置は、さらに、左前方チャンネル信号Lの入力端子101と、中央前方チャンネル信号Cの入力端子102と、右前方チャンネル信号Rの入力端子103と、左後方チャンネル信号Lsの入力端子104と、右後方チャンネル信号Rsの入力端子105と、入力端子101乃至103から夫々入力された左前方チャンネル信号L、中央前方チャンネル信号Cおよび右前方チャンネル信号Rの信号レベルを夫々調整するアッテネータ106とを備えている。
第1音像定位処理手段107は、モード設定手段109が設定したモードに基づいて、左後方チャンネル信号Lsに頭部伝達関数に基づくフィルタ係数を畳み込むことによって第1および第2左信号を生成するようになっている。一方、第2音像定位処理手段108は、モード設定手段109が設定したモードに基づいて、右後方チャンネル信号Rsに頭部伝達関数に基づくフィルタ係数を畳み込むことによって第1および第2右信号を生成するようになっている。
音像定位装置は、さらに、アッテネータ106によって信号レベルの調整された左前方チャンネル信号Lsに第1左信号を加算する第1加算器112と、アッテネータ106によって信号レベルの調整された中央前方チャンネル信号Cに第2左信号を加算可能な第2加算器113と、アッテネータ106によって信号レベルの調整された右前方チャンネル信号Rに第2左信号が加算可能な第3加算器114と、第1音像定位処理手段107から出力された第2左信号の出力先をモード設定手段109が設定したモードに基づいて第2加算器113または第3加算器114の何れかに選択的に切り替える第1スイッチ110とを備えている。
音像定位装置は、さらに、第3加算器114から受け取った信号に第1右信号を加算する第4加算器115と、第2加算器113から受け取った信号に第2右信号を加算可能な第5加算器116と、第1加算器112から受け取った信号に第2右信号を加算可能な第6加算器117と、第2音像定位処理手段108から出力された第2右信号の出力先をモード設定手段109が設定したモードに基づいて第5加算器116または第6加算器117の何れかに選択的に切り替える第2スイッチ111と、左前方スピーカへの出力端子118と、中央前方スピーカへの出力端子119と、右前方スピーカへの出力端子120とを備えている。
受聴者が1人のモードがモード設定手段109によって設定された場合、第1スイッチ110は、第3加算器114に第2左信号を出力する状態をとり、第2スイッチ111は、第6加算器117に第2右信号を出力する状態をとるようになっている。
また、第1スイッチ110が第3加算器114に第2左信号を出力する状態をとっているとき、第3加算器114は、右前方チャンネル信号Rに第1スイッチ110から受け取った第2左信号を加算し、第4加算器115に出力するようになっている。一方、第2スイッチ111が第6加算器117に第2右信号を出力する状態をとっているとき、第6加算器117は、第1加算器112から受け取った信号に第2スイッチ111から受け取った第2右信号を加算し、出力端子118から左前方スピーカに出力するようになっている。
なお、第1スイッチ110が第3加算器114に第2左信号を出力する状態をとり、第2スイッチ111が第6加算器117に第2右信号を出力する状態をとっているとき、第2加算器113は、アッテネータ106から受け取った中央前方チャンネル信号Cを第5加算器116に出力し、第5加算器116は、第2加算器113から受け取った信号を出力端子119を介して中央前方スピーカに出力するようになっている。
一方、受聴者が2人のモードがモード設定手段109によって設定された場合、第1スイッチ110は、第2加算器113に第2左信号を出力する状態をとり、第2スイッチ111は、第5加算器116に第2右信号を出力する状態をとるようになっている。
また、第1スイッチ110が第3加算器114に第2左信号を出力する状態をとっているとき、第2加算器113は、中央前方チャンネル信号Cに第1スイッチ110から受け取った第2左信号を加算し、第2左信号を加算した信号を第5加算器に出力するようになっている。一方、第2スイッチ111が第5加算器116に第2右信号を出力する状態をとっているとき、第5加算器116は、第2加算器113から受け取った信号に第2スイッチ111から受け取った第2右信号を加算するようになっている。なお、第3加算器114は、第4加算器115にアッテネータ106から受け取った右前方チャンネル信号Rを出力し、第6加算器117は、右前方スピーカに第1加算器112から受け取った信号を出力端子118を介して出力するようになっている。
モードの選択指示に関しては、リモコンを介して受聴者が任意に行うようにしてもよい。また、カメラ等のセンサーを備え、受聴者の人数を自動的に判定し、この判定に基づいてモード設定手段109がモードを選択的に設定するようにしてもよい。
次に、図1を参照し、本実施の形態に係る音像定位装置の動作について説明する。
DVD等の記憶媒体に記録されている音声データから左前方、右前方および中央前方チャンネル信号L、R、Cと左後方および右後方チャンネル信号Ls、Rsとを含むマルチチャンネル音声信号が生成され、複数の入力端子101乃至105から夫々入力される。
入力端子101乃至105から入力された左前方、右前方および中央前方チャンネル信号L、R、Cと左後方および右後方チャンネル信号Ls、Rsの内、左前方、右前方および中央前方チャンネル信号L、R、Cは、アッテネータ106によって信号レベルが調整される。一方、左後方および右後方チャンネル信号Ls、Rsは、モード設定手段109によって設定されたモードに基づいて第1および第2音像定位処理手段107、108によって夫々音像定位処理され、左後方および右後方チャンネル信号Ls、Rsから第1および第2左信号と第1および第2右信号が生成される。
第1音像定位処理手段107によって生成された第1左信号は、第1加算器112に出力され、第2左信号は、第1スイッチ110に出力される。一方、第2音像定位処理手段108によって生成された第1左信号第1右信号は、第4加算器115に出力され、第2右信号は、第2スイッチ111に出力される。
次に、図1および図2(a)乃至2(c)を参照し、受聴者が2人のモードに設定された場合の音像定位装置の動作について説明する。
第1音像定位処理手段107は、左側の受聴者606の左側に音像を定位するため、左後方チャンネル信号Lsに対して音像定位処理を行い、第1および第2左信号を生成する。第1音像定位処理手段107において左後方チャンネル信号Lsから生成された第1左信号は、図1に示すように、第1加算器112に出力される。第1加算器112によって第1音像定位処理手段107から受け取られた第1左信号は、アッテネータ106によって信号レベルの調整された左前方チャンネル信号Lと加算され、第1左信号が加算された左前方チャンネル信号Lは、出力端子118を介して左前方スピーカ601に出力される。
一方、第1音像定位処理手段107において左後方チャンネル信号Lsから生成された第2左信号は、第1スイッチ110に出力される。モード設定手段109によって受聴者が2人のモードに設定されていると、第1スイッチ110によって第1音像定位処理手段107から受け取られた第2左信号は、第2加算器113に出力される。第2加算器113によって第1スイッチ110から受け取られた第2左信号は、アッテネータ106によって信号レベルの調整された中央前方チャンネル信号Cと加算され、第2左信号が加算された中央前方チャンネル信号Cは、第5加算器116に出力される。
また、第2音像定位処理手段108は、右側の受聴者607の右側に音像を定位するため、右後方チャンネル信号Rsに対して音像定位処理を行い、第1および第2右信号を生成する。第2音像定位処理手段108において右後方チャンネル信号Rsから生成された第1右信号は、図1に示すように、第4加算器115に出力される。第4加算器115によって第2音像定位処理手段108から受け取られた第1右信号は、右前方チャンネル信号Rと加算され、第1右信号が加算された右前方チャンネル信号Rは、出力端子120を介して右前方スピーカ602に出力される。
一方、第2音像定位処理手段108において右後方チャンネル信号Rsから生成された第2右信号は、第2スイッチ111に出力される。モード設定手段109によって受聴者が2人のモードに設定されていると、第2スイッチ111によって第2音像定位処理手段108から受け取られた第2右信号は、第5加算器116に出力される。第5加算器116によって第2スイッチ111から受け取られた第2右信号は、第2加算器113から受け取った信号と加算され、第2左信号および第2右信号が加算された中央前方チャンネル信号Cは、出力端子119から中央前方スピーカ603に出力される。
図2(a)乃至2(c)に示すように、左前方スピーカ601、右前方スピーカ602および中央前方スピーカ603が2人の受聴者606、607の前方に配置されている。すなわち、左側の受聴者606は、左前方スピーカ601と中央前方スピーカ603とが左右対称となる位置で左前方、右前方および中央前方スピーカ601、602、603からの音声を受聴し、右側の受聴者607は、右前方スピーカ602と中央前方スピーカ603が左右対称となる位置で左前方、右前方および中央前方スピーカ601、602、603からの音声を受聴する。
このように配置された空間で、第1および第2左信号によって表される音声が、左前方および中央前方スピーカ601、603から出力されたとき、左側の受聴者606は、この音声を左後方の仮想スピーカ604からの音声として受聴することができ、第1および第2右信号によって表される音声が、右前方および中央前方スピーカ602、603から出力されたとき、右側の受聴者607は、この音声を右後方の仮想スピーカ605からの音声として受聴することができる。
また、左側の受聴者606が、左後方の仮想スピーカ604からの音声として受聴しているとき、左側の受聴者606の左側に音像が定位しているので、左側の受聴者606の右耳から受聴される音声は、左耳から受聴される音声よりも小さい。したがって、第1および第2左信号によって表される音声が右側の受聴者607の左耳から受聴されたとしても、第1および第2右信号によって表される音声を受聴している右側の受聴者607への影響は少ない。
同様にして、右側の受聴者607が、右後方の仮想スピーカ605からの音声として受聴しているとき、右側の受聴者607の右側に音像が定位しているので、右側の受聴者607の左から受聴される音声は、右耳から受聴される音声よりも小さい。したがって、第1および第2右信号によって表される音声が左側の受聴者606の右耳から受聴されたとしても、第1および第2左信号によって表される音声を受聴している左側の受聴者606への影響は少ない。
また、本発明の音像定位装置は、左側の受聴者606の右後方に音像を定位する音像定位処理を行わないようにしている。なぜならば、左側の受聴者606の右後方に音像を定位する音像定位処理を行うと、左側の受聴者606の右耳に入力される音声が大きくなり、本来、右耳に入力されるべき音声が右側の受聴者607の左耳にも入力され、右側の受聴者607の音像に対する影響が大きくなるためである。さらに、本発明の音像定位装置は、右側の受聴者607の左後方に音像を定位する音像定位処理を行わないようにしている。なぜならば、右側の受聴者607の左後方に音像を定位する音像定位処理を行うと、右側の受聴者607の左耳で受聴される音声が大きくなり、左側の受聴者606の音像に対する影響が大きくなるためである。
また、受聴者606の右側には受聴者607が、受聴者607の左側には受聴者606がいるため、受聴者がいない側の音像のみを制御することで音の広がりを得ることができる。
次に、図12を参照し、受聴者が1人のモードに設定された場合の音像定位装置の動作について説明する。
1人の受聴者306が、2人の受聴者307、308が夫々受聴する位置の中間で、受聴者が2人のモードで出力された音声を受聴した場合、図12に示すように、左側の受聴者307の右耳に入力されるべき音声が1人の受聴者306の左耳に入力され、右側の受聴者308の左耳に入力されるべき音声が1人の受聴者306の右耳に入力されることになる。すなわち、1人の受聴者306は、左右が逆転した音声を受聴することになる。このような問題を解決するため、本実施の形態の音像定位装置では、受聴者が1人のモードと受聴者が2人のモードとを選択的に設定するモード設定手段109を備えている。
図3は、受聴者が1人のモードに設定された場合の音像定位装置と受聴者の位置関係を模式的に示した図である。図2及び図12と同じ構成要素については同じ符号を付し、同じ符号を付した構成要素についての説明は省略する。
受聴者が1人のモードであっても2人のモードであっても、第1および第2音像定位処理手段107、108の音像定位処理の内容は同じであり、フィルタ係数を受聴者が2人の場合のフィルタ係数から受聴者が1人の場合のフィルタ係数に切り替えるだけでよい。ただし、左前方スピーカ601と中央前方スピーカ603によって左後方の仮想スピーカ604を生成したのでは、左前方スピーカ601と中央前方スピーカ603が受聴者306に対して左右対称の位置にはないため、音像の制御範囲が狭くなる。
同様にして、右前方スピーカ602と中央前方スピーカ603によって右後方の仮想スピーカ605を生成したのでは、右前方スピーカ602と中央前方スピーカ603が受聴者306に対して左右対称の位置にはないため、音像の制御範囲が狭くなる。したがって、受聴者が1人のモードの場合においても、音の広がりを確保するために、音像定位装置は、以下のように動作する。
第1音像定位処理手段107において左後方チャンネル信号Lsから生成された第1左信号は、第1加算器112に出力される。第1加算器112によって第1音像定位処理手段107から受け取られた第1左信号は、左前方チャンネル信号Lと加算され、第1左信号が加算された左前方チャンネル信号Lは、第6加算器117に出力される。
また、第1音像定位処理手段107において左後方チャンネル信号Lsから生成された第2左信号は、図1に示すように、第1スイッチ110に出力される。モード設定手段109によって受聴者が1人のモードに設定されていると、第1スイッチ110によって第1音像定位処理手段107から受け取られた第2左信号は、第3加算器114に出力される。第3加算器114によって第1スイッチ110から受け取られた第2左信号は、アッテネータ106によって信号レベルの調整された右前方チャンネル信号Rと加算され、第2左信号が加算された右前方チャンネル信号Rは、第4加算器115に出力される。
一方、第2音像定位処理手段108は、右側の受聴者607の右側に音像を定位するため、右後方チャンネル信号Rsに対して音像定位処理を行い、第1および第2右信号を生成する。第2音像定位処理手段108において右後方チャンネル信号Rsから生成された第1右信号は、図1に示すように、第4加算器115に出力される。第4加算器115によって第2音像定位処理手段108から受け取られた第1右信号は、右前方チャンネル信号Rと加算され、第1右信号が加算された右前方チャンネル信号Rは、出力端子120を介して右前方スピーカ602に出力される。
一方、第2音像定位処理手段108において右後方チャンネル信号Rsから生成された第2右信号は、第2スイッチ111に出力される。モード設定手段109によって受聴者が1人のモードに設定されていると、第2スイッチ111によって第2音像定位処理手段108から受け取られた第2右信号は、第4加算器115に出力される。第4加算器115によって第2スイッチ111から受け取られた第2右信号は、第3加算器114から受け取った信号と加算され、第2左信号および第2右信号が加算された右前方チャンネル信号Rは、出力端子119を介して右前方スピーカ602に出力される。
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態の音像定位装置は、受聴者が1人のモードと受聴者が2人のモードとを選択的に設定するモード設定手段と、前記モード設定手段によって設定されたモードに基づいて左後方チャンネル信号から一対の第1および第2左信号を生成する第1音像定位処理手段と、前記モード設定手段によって設定されたモードに基づいて右後方チャンネル信号から一対の第1および第2右信号を生成する第2音像定位処理手段とを備えているので、第1および第2左信号によって表される音声と第1および第2右信号によって表される音声が左前方、右前方および中央前方スピーカから出力されたとき、設定されたモードに応じて1人または2人の受聴者の左後方および右後方に音像が定位するよう制御することができる。
また、本発明の第1の実施の形態の音像定位装置は、第1音像定位処理手段が、前記モード設定手段が設定したモードに基づいて、左後方チャンネル信号に頭部伝達関数に基づくフィルタ係数を畳み込むことによって第1および第2左信号を生成し、第2音像定位処理手段が、前記モード設定手段が設定したモードに基づいて、右後方チャンネル信号に頭部伝達関数に基づくフィルタ係数を畳み込むことによって第1および第2右信号を生成するようになっているので、左後方および右後方チャンネル信号によって表される音声を左前方、右前方および中央前方スピーカから出力することができる。
また、本発明の第1の実施の形態の音像定位装置は、左前方、右前方および中央前方チャンネル信号と左後方および右後方チャンネル信号とを含むマルチチャンネル音声信号によって表される音声を受聴者の左前方および右前方に夫々配置された左前方および右前方スピーカと左前方および右前方スピーカの間に配置された中央前方スピーカとから出力するようになっているので、受聴者が1人の場合だけでなく2人の場合であっても受聴者にマルチチャンネル音声信号によって表された臨場感のある音声を受聴させることができる。
ここでは、本発明の第1の実施の形態の音像定位装置について説明したが、以下に記述する第2の実施の形態の音像定位装置によって課題を達成してもよい。また、第2の実施の形態の音像定位装置では、左前方スピーカと右前方スピーカとの間隔が十分に取れない場合の問題をも解決するようにしている。
(第2の実施の形態)
次に、図4を参照し、本発明の第2の実施の形態の音像定位装置について説明する。図4に示された第2の実施の形態の音像定位装置の構成要素の内、図1に示された第1の実施の形態の音像定位装置の構成要素と同じものについては同じ参照符号を付し、説明を省略する。
音像定位装置は、図4に示すように、左前方、右前方および中央前方チャンネル信号L、R、Cと左後方および右後方チャンネル信号Ls、Rsとを含むマルチチャンネル音声信号によって表される音声を受聴者の左前方および右前方に夫々配置された左前方および右前方スピーカと左前方および右前方スピーカの間に配置された中央前方スピーカとから出力するようになっている。
音像定位装置は、第1の実施の形態の音像定位装置の構成と同様に、受聴者が1人のモードと受聴者が2人のモードとを選択的に設定するモード設定手段109と、第1音像定位処理手段107と、第2音像定位処理手段108とを備えている。
音像定位装置は、さらに、入力端子101乃至105と、入力端子101乃至103から夫々入力された左前方、右前方および中央前方チャンネル信号L、R、Cの信号レベルを調整するアッテネータ106とを備えている。
音像定位装置は、さらに、アッテネータ106によって信号レベルの調整された左前方チャンネル信号Lsに第1左信号を加算する第1加算器112と、アッテネータ106によって信号レベルの調整された中央前方チャンネル信号Cに第2左信号を加算可能な第2加算器113と、アッテネータ106によって信号レベルの調整された右前方チャンネル信号Rに第2左信号が加算可能な第3加算器114と、第3加算器114から受け取った信号に第1右信号を加算する第4加算器115と、第2加算器113から受け取った信号に第2右信号を加算可能な第5加算器116と、第1加算器112から受け取った信号に第2右信号を加算可能な第6加算器117と、第1音像定位処理手段107から出力された第2左信号の出力先をモード設定手段109が設定したモードに基づいて第2加算器113または第3加算器114の何れかに選択的に切り替える第1スイッチ110と、第2音像定位処理手段108から出力された第2右信号の出力先をモード設定手段109が設定したモードに基づいて第5加算器116または第6加算器117の何れかに選択的に切り替える第2スイッチ111と、左前方スピーカへの出力端子118と、中央前方スピーカへの出力端子119と、右前方スピーカへの出力端子120とを備えている。
音像定位装置は、さらに、左前方チャンネル信号Lの信号レベルを調整する左後方アッテネータ801と、右前方チャンネル信号Rの信号レベルを調整する右後方アッテネータ802と、左後方アッテネータ801によって信号レベルの調整された左前方チャンネル信号Lを入力端子104からの左後方チャンネル信号Lsに加算する左後方加算器803と、右後方アッテネータ802によって信号レベルの調整された右前方チャンネル信号Rを入力端子105からの右後方チャンネル信号Rsに加算する右後方加算器804とを備えている。
第1音像定位処理手段107は、モード設定手段109が設定したモードに基づいて、左後方加算器803から受け取った信号に頭部伝達関数に基づくフィルタ係数を畳み込むことによって第1および第2左信号を生成するようになっている。一方、第2音像定位処理手段108は、モード設定手段109が設定したモードに基づいて、右後方加算器804から受け取った信号に頭部伝達関数に基づくフィルタ係数を畳み込むことによって第1および第2右信号を生成するようになっている。
次に、図4および図5(a)、5(b)を参照し、本実施の形態の音像定位装置の動作について説明する。
図4に示すように、左後方加算器803から受け取った信号が入力端子104からの左後方チャンネル信号Lsに加算され、左後方加算器803から受け取った信号が加算された左後方チャンネル信号Lsは、第1の実施の形態の音像定位装置の構成と同様に、第1音像定位処理手段107によって音像定位処理され、左後方加算器803から受け取った信号から第1および第2左信号が生成される。第1音像定位処理手段107によって生成された第1および第2左信号の流れは、第1の実施の形態の音像定位装置において説明した第1および第2左信号の流れと同じであり、以下での説明は省略する。
一方、右後方加算器804から受け取った信号が右前方チャンネル信号Rが右後方チャンネル信号Rsに加算され、右後方加算器804から受け取った信号が加算された右後方チャンネル信号Rsは、第1の実施の形態の音像定位装置の構成と同様に、第2音像定位処理手段108によって音像定位処理され、右後方加算器804から受け取った信号が加算された右後方チャンネル信号Rsから第1および第2右信号が生成される。第2音像定位処理手段108によって生成された第1および第2右信号の流れは、第1の実施の形態の音像定位装置において説明した第1および第2右信号の流れと同じであり、以下での説明は省略する。
また、第1および第2左信号によって表される音声を左側の受聴者606が受聴したとき、左側の受聴者606の左後方に音像が定位し、左側の受聴者606は、第1および第2左信号によって表される音声を左後方の仮想スピーカ902からの音声として認識する。一方、第1および第2右信号によって表される音声を右側の受聴者607が受聴したとき、右側の受聴者607の右後方に音像が定位し、右側の受聴者607は、第1および第2右信号によって表される音声を右後方の仮想スピーカ906からの音声として認識する。
ここで、本実施例の第1音像定位処理手段107には、左後方チャンネル信号Lsに左後方加算器803から受け取った信号が加算されているため、左後方の仮想スピーカ902からの音声は、左後方チャンネル信号Lsによって表される音声と左前方チャンネル信号Lによって表される音声との合成音として左側の受聴者606に受聴される。
図5(a)に示すように、左前方スピーカ601から出力される左前方チャンネル信号Lの音声と左後方の仮想スピーカ604からの左前方チャンネル信号Lの音声とが合成され、合成された音声は、左前方スピーカ601の左側の合成音像903からの音声として左側の受聴者606に受聴される。したがって、合成音像903は左前方スピーカ601よりもより左側の位置に形成されるので、左前方スピーカ601と右前方スピーカ602との間隔が狭い場合でも、左前方スピーカ601と右前方スピーカ602との間隔をより広く感じることができる。
また、左前方スピーカ601から出力される左前方チャンネル信号Lの音声と左後方の仮想スピーカ902からの左前方チャンネル信号Lの音声の合成比率を調整することによって合成音像の方向を変更することができる。
同様にして、本実施例の第2音像定位処理手段108には、右後方チャンネル信号Rsに右後方加算器804から受け取った信号が加算されているため、右後方の仮想スピーカ906からの音声は、右後方チャンネル信号Rsによって表される音声と右前方チャンネル信号Rによって表される音声との合成音として右側の受聴者607に受聴される。
図5(b)に示すように、右前方スピーカ602から出力される右前方チャンネル信号Rの音声と右後方の仮想スピーカ605からの右前方チャンネル信号Rの音声とが合成され、合成された音声は、右前方スピーカ602の右側の合成音像907からの音声として右側の受聴者607に受聴される。したがって、合成音像907は右前方スピーカ602よりもより右側の位置に生成されので、左前方スピーカ601と右前方スピーカ602との間隔が狭い場合でも、右側の受聴者607は、左前方スピーカ601と右前方スピーカ602との間隔をより広く感じることができる。
また、右前方スピーカ602から出力される右前方チャンネル信号の音声と右後方の仮想スピーカ906からの右前方チャンネル信号の音声の合成比率を調整することによって合成音像の方向を変更することができる。
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態の音像定位装置は、受聴者が1人のモードと受聴者が2人のモードとを選択的に設定するモード設定手段と、前記モード設定手段によって設定されたモードに基づいて左後方チャンネル信号から一対の第1および第2左信号を生成する第1音像定位処理手段と、前記モード設定手段によって設定されたモードに基づいて右後方チャンネル信号から一対の第1および第2右信号を生成する第2音像定位処理手段とを備えているので、第1および第2左信号によって表される音声と第1および第2右信号によって表される音声が左前方、右前方および中央前方スピーカから出力されたとき、設定されたモードに応じて1人または2人の受聴者の左後方および右後方に音像が定位するよう制御することができる。
また、本発明の第2の実施の形態の音像定位装置は、左前方チャンネル信号Lの信号レベルを調整する左後方アッテネータ801と、右前方チャンネル信号Rの信号レベルを調整する右後方アッテネータ802と、左後方アッテネータ801によって信号レベルの調整された左前方チャンネル信号Lを入力端子104からの左後方チャンネル信号Lsに加算する左後方加算器803と、右後方アッテネータ802によって信号レベルの調整された右前方チャンネル信号Rを入力端子105からの右後方チャンネル信号Rsに加算する右後方加算器804とを備えているので、左前方スピーカ601よりも左側および右前方スピーカ602よりも右側に合成音像を定位させることができる。したがって、左前方スピーカ601と右前方スピーカ602との間隔が狭い場合であっても、この合成音像によって1人または2人の受聴者に左前方スピーカ601と右前方スピーカ602との間隔を広く感じ取らせることができる。
さらに、本発明の第2の実施の形態の音像定位装置は、左前方、右前方および中央前方チャンネル信号と左後方および右後方チャンネル信号とを含むマルチチャンネル音声信号によって表される音声を受聴者の左前方および右前方に夫々配置された左前方および右前方スピーカと左前方および右前方スピーカの間に配置された中央前方スピーカとから出力するようになっているので、受聴者が1人の場合だけでなく2人の場合であっても受聴者にマルチチャンネル音声信号によって表された臨場感のある音声を受聴させることができる。
ここでは、本発明の第2の実施の形態の音像定位装置について説明したが、以下に記述する第3の実施の形態の音像定位装置によって課題を達成してもよい。また、第3の実施の形態の音像定位装置では、左前方および右前方の2つのスピーカだけでマルチチャンネル音声を出力し、1人または2人の受聴者に臨場感の高い音声を受聴させるという問題をも解決するようにしている。
(第3の実施の形態)
次に、図6を参照し、本発明の第3の実施の形態の音像定位装置について説明する。図6に示された第3の実施の形態の音像定位装置の構成要素の内、図1に示された第1の実施の形態の音像定位装置の構成要素と同じものについては同じ参照符号を付し、説明を省略する。
音像定位装置は、図6に示すように、左前方、右前方および中央前方チャンネル信号L、R、Cと左後方および右後方チャンネル信号Ls、Rsとを含むマルチチャンネル音声信号によって表される音を受聴者の左前方および右前方に夫々配置された左前方および右前方スピーカから出力するようになっている。
音像定位装置は、受聴者が1人のモードと受聴者が2人のモードとを選択的に設定するモード設定手段109と、モード設定手段109によって設定されたモードに基づいて左後方チャンネル信号Lsから一対の第1および第2左信号を生成する第1音像定位処理手段107と、モード設定手段109によって設定されたモードに基づいて右後方チャンネル信号Rsから一対の第1および第2右信号を生成する第2音像定位処理手段108とを備えている。
音像定位装置は、さらに、左前方チャンネル信号Lの入力端子101と、中央前方チャンネル信号Cの入力端子102と、右前方チャンネル信号Rの入力端子103と、左後方チャンネル信号Lsの入力端子104と、右後方チャンネル信号Rsの入力端子105と、入力端子101、102から夫々入力された左前方および右前方チャンネル信号L、Rの信号レベルを調整する第1アッテネータ1001と、入力端子103から入力された中央前方チャンネル信号Cの信号レベルを調整する第2アッテネータ1002と、第1アッテネータ1001によって信号レベルの調整された左前方チャンネル信号Lに第2アッテネータ1002によって信号レベルの調整された中央前方チャンネル信号Cを加算する左前方加算器1003と、第1アッテネータ1001によって信号レベルの調整された右前方チャンネル信号Rに第2アッテネータ1002によって信号レベルの調整された中央前方チャンネル信号Cを加算する右前方加算器1004とを備えている。
第1音像定位処理手段107は、モード設定手段109が設定したモードに基づいて、入力端子104からの左後方チャンネル信号Lsに頭部伝達関数に基づくフィルタ係数を畳み込むことによって第1および第2左信号を生成するようになっている。同様に、第2音像定位処理手段108は、モード設定手段109が設定したモードに基づいて、入力端子105からの右後方チャンネル信号Rsに頭部伝達関数に基づくフィルタ係数を畳み込むことによって第1および第2右信号を生成するようになっている。
音像定位装置は、さらに、第1音像定位処理手段107から出力された第2左信号の信号レベルを調整する第3アッテネータ1009と、第2音像定位処理手段108から出力された第2右信号の信号レベルを調整する第4アッテネータ1010と、左前方加算器1003からの信号に第1左信号を加算する第1加算器112と、第1加算器112からの信号に第3アッテネータ1009によって信号レベルの調整された第2左信号を加算する第2加算器1005と、右前方加算器1004からの信号に第3アッテネータ1009によって信号レベルの調整された第2左信号を加算する第3加算器1006と、第3加算器1006からの信号に第1右信号を加算する第4加算器115と、第2加算器1005からの信号に第4アッテネータ1010によって信号レベルの調整された第2右信号を加算する第5加算器1007と、第4加算器115からの信号に第4アッテネータ1010によって信号レベルの調整された第2右信号を加算する第6加算器1008と、左前方スピーカへの出力端子118と、右前方スピーカへの出力端子120とを備えている。
以上説明したように、音像定位装置は、左前方および右前方加算器1003、1004において左前方および右前方チャンネル信号L、Rの各々に中央前方チャンネル信号Cが加算されるので、左前方および右前方スピーカ601、602の各々から中央前方チャンネル信号Cの音声を出力することができる。したがって、左前方および右前方スピーカ601、602の各々から出力される中央前方チャンネル信号Cの音声を受聴した1人または2人の受聴者は、その合成音像によって中央前方に配置した中央前方スピーカ603(仮想スピーカ)からの音声として認識することができる。
また、第2および第3加算器1005、1006において左前方および右前方チャンネル信号L、Rに第3アッテネータ1009からの第2左信号が加算されるので、左前方および右前方スピーカ601、602の各々から第2左信号の音声を出力することができる。したがって、左前方および右前方スピーカ601、602の各々から出力される第2左信号の音声を受聴した1人または2人の受聴者は、その合成音像によって中央前方に配置した中央前方スピーカ603(仮想スピーカ)からの音声として認識することができる。
同様にして、第5および第6加算器1007、1008において左前方および右前方チャンネル信号L、Rに第4アッテネータ1010からの第2右信号が加算されるので、左前方および右前方スピーカ601、602の各々から第2右信号の音声を出力することができる。したがって、左前方および右前方スピーカ601、602の各々から出力される第2右信号の音声を受聴した1人または2人の受聴者は、その合成音像によって中央前方に配置した中央前方スピーカ603(仮想スピーカ)からの音声として認識することができる。
音像定位装置では、中央前方スピーカ603が受聴者の前方に配置されていないが、第1および第2の実施例のように中央前方スピーカ603が存在するものとして機能することができる。
次に、図6を参照し、本実施の形態における音像定位装置の動作について説明する。
DVD等の記憶媒体に記録されている音声データから左前方、右前方および中央前方チャンネル信号L、R、Cと左後方および右後方チャンネル信号Ls、Rsとを含むマルチチャンネル音声信号が生成され、複数の入力端子101乃至105から夫々入力される。左前方および右前方チャンネル信号L、Rは第1アッテネータ1001によって信号レベルが調整され、中央前方チャンネル信号Cは、第2アッテネータ1002によって信号レベルが調整される。左前方加算器1003では、第1アッテネータ1001によって信号レベルの調整された左前方チャンネル信号Lが第2アッテネータ1002によって信号レベルの調整された中央前方チャンネル信号Cと加算される。一方、右前方加算器1004では、第1アッテネータ1001によって信号レベルの調整された右前方チャンネル信号Rが第2アッテネータ1002によって信号レベルの調整された中央前方チャンネル信号Cと加算される。
また、左後方および右後方チャンネル信号Ls、Rsは、モード設定手段109によって設定されたモードに基づいて第1および第2音像定位処理手段107、108によって夫々音像定位処理され、左後方および右後方チャンネル信号Ls、Rsから第1および第2左信号と第1および第2右信号が生成される。次いで、第1左信号は、第1加算器112に出力され、第2左信号は、第3アッテネータ1009に出力される。一方、第1右信号は、第4加算器115に出力され、第2右信号は、第4アッテネータ1010に出力される。
第1加算器112では、左前方加算器1003からの信号に第1左信号が加算され、第2加算器1005では、第1加算器102からの信号に第3アッテネータ1009によって信号レベルの調整された第2左信号が加算され、第5加算器1007では、第2加算器1005からの信号に第4アッテネータ1010によって信号レベルの調整された第2右信号が加算され、出力端子118から左前方スピーカに出力される。一方、第3加算器1006では、右前方加算器1004からの信号に第1左信号が加算され、第4加算器115では、第3加算器1006からの信号に第4アッテネータ1010によって信号レベルの調整された第2右信号が加算され、第6加算器1008では、第4加算器115からの信号に第4アッテネータ1010によって信号レベルの調整された第2右信号が加算され、出力端子120から右前方スピーカに出力される。
次に、図2(a)乃至2(c)を参照し、受聴者が2人のモードに設定された場合の音像定位装置の動作について説明する。
図2(a)乃至2(c)に示すように、左側の受聴者606は、左前方スピーカ601と中央前方スピーカ603(本実施例では仮想スピーカ)とが左右対称となる位置で左前方スピーカ601および中央前方スピーカ603からの音声を受聴し、右側の受聴者607は、右前方スピーカ602と中央前方スピーカ603とが左右対称となる位置で右前方スピーカ602および中央前方スピーカ603からの音声を受聴する。
左前方および右前方スピーカ601、602から第1および第2左信号によって表される音声が出力されたとき、左側の受聴者606が、第1および第2左信号によって表される音声を左後方の仮想スピーカ604からの音声として受聴するよう、入力端子104からの左後方チャンネル信号Lsが第1音像定位処理手段107によって音像定位処理され、左後方チャンネル信号Lsから第1および第2左信号が生成される。
したがって、第1および第2左信号によって表される音声が、左前方および中央前方スピーカ601、603から出力されたとき、左側の受聴者606は、この音声を左後方の仮想スピーカ604からの音声として受聴することができ、第1および第2右信号によって表される音声が、右前方および中央前方スピーカ602、603から出力されたとき、右側の受聴者607は、この音声を右後方の仮想スピーカ605からの音声として受聴することができる。また、左側の受聴者606が、左後方の仮想スピーカ604からの音声として受聴しているとき、左側の受聴者606の左側に音像が定位しているので、左側の受聴者606の右耳から受聴される音声は、左耳から受聴される音声よりも小さい。したがって、第1および第2左信号によって表される音声が右側の受聴者607の左耳から受聴されたとしても、第1および第2右信号によって表される音声を受聴している右側の受聴者607への影響は少ない。同様にして、右側の受聴者607が、右後方の仮想スピーカ605からの音声として受聴しているとき、右側の受聴者607の右側に音像が定位しているので、右側の受聴者607の左耳から受聴される音声は、右耳から受聴される音声よりも小さい。したがって、第1および第2右信号によって表される音声が左側の受聴者606の右耳から受聴されたとしても、第1および第2左信号によって表される音声を受聴している左側の受聴者606への影響は少ない。
また、音像定位装置は、左側の受聴者606の右後方に音像を定位する音像定位処理を行わないようにしている。なぜならば、左側の受聴者606の右後方に音像を定位する音像定位処理を行うと、左側の受聴者606の右耳に入力される音声が大きくなり、本来、右耳に入力されるべき音声が右側の受聴者607の左耳にも入力され、右側の受聴者607の音像に対する影響が大きくなるためである。さらに、音像定位装置は、右側の受聴者607の左後方に音像を定位する音像定位処理を行わないようにしている。なぜならば、右側の受聴者607の左後方に音像を定位する音像定位処理を行うと、右側の受聴者607の左耳で受聴される音声が大きくなり、左側の受聴者606の音像に対する影響が大きくなるためである。
また、受聴者606の右側には受聴者607が、受聴者607の左側には受聴者606がいるため、受聴者がいない側のみを制御することで音の広がりを得ることができる。
次に、受聴者が1人のモードに設定された場合の音像定位装置の動作について説明する。
モード設定手段109によって受聴者が1人のモードに設定されている場合、第1音像定位処理手段107では、受聴者が1人のモードの場合のフィルタ係数が設定され、受聴者が1人のモードの場合のフィルタ係数に基づいて第1および第2左信号が生成される。第1音像定位処理手段107によって生成された第1左信号は、第1加算器112に出力され、第1音像定位処理手段107によって生成された第2左信号は、第3アッテネータ1009に出力される。同様にして、第2音像定位処理手段108では、受聴者が1人のモードの場合のフィルタ係数が設定され、受聴者が1人のモードの場合のフィルタ係数に基づいて第1および第2右信号が生成される。第2音像定位処理手段108によって生成された第1右信号は、第4加算器115に出力され、第2音像定位処理手段108によって生成された第2右信号は、第4アッテネータ1010に出力される。
図示していないが、第3アッテネータ1009と第2加算器1006との間にはスイッチを設けており、モード設定手段109によって受聴者が1人のモードに設定されている場合には、第2加算器1005に第2左信号を出力しないようにしている。すなわち、第2左信号が左前方チャンネル側には加算されない。
同様にして、第4アッテネータ1010と第6加算器1008との間にはスイッチを設けており、第6加算器1008に第2左信号を出力しないようにしている。すなわち、第2右信号が左前方チャンネル側には加算されない。
本実施例では、第3アッテネータ1009と第3加算器1006との間にスイッチを設けたが、受聴者が1人のモードに設定されているとき、第3加算器1006の出力がゼロになるよう機能するものであればよい。同様にして、第4アッテネータ1010と第6加算器1008との間にスイッチを設けているが、受聴者が1人のモードに設定されているとき、第3加算器1006の出力がゼロになるよう機能するものであれよい。
以上説明したように、本発明の第3の実施の形態の音像定位装置は、受聴者が1人のモードと受聴者が2人のモードとを選択的に設定するモード設定手段と、前記モード設定手段によって設定されたモードに基づいて左後方チャンネル信号から一対の第1および第2左信号を生成する第1音像定位処理手段と、前記モード設定手段によって設定されたモードに基づいて右後方チャンネル信号から一対の第1および第2右信号を生成する第2音像定位処理手段とを備えているので、第1および第2左信号によって表される音声と第1および第2右信号によって表される音声が左前方および右前方スピーカから出力されたとき、設定されたモードに応じて1人または2人の受聴者の左後方および右後方に音像が定位するよう制御することができる。
また、本発明の第3の実施の形態の音像定位装置は、第1音像定位処理手段が、前記モード設定手段が設定したモードに基づいて、左後方チャンネル信号に頭部伝達関数に基づくフィルタ係数を畳み込むことによって第1および第2左信号を生成し、第2音像定位処理手段が、前記モード設定手段が設定したモードに基づいて、右後方チャンネル信号に頭部伝達関数に基づくフィルタ係数を畳み込むことによって第1および第2右信号を生成するようになっているので、臨場感の高い音声を左前方および右前方スピーカから出力することができる。
また、本発明の第3の実施の形態の音像定位装置は、左前方、右前方および中央前方チャンネル信号と左後方および右後方チャンネル信号とを含むマルチチャンネル音声信号によって表される音声を受聴者の左前方および右前方に夫々配置された左前方および右前方スピーカから出力するようになっているので、受聴者が1人の場合だけでなく2人の場合であっても受聴者にマルチチャンネル音声信号によって表された臨場感のある音声を受聴させることができる。
ここでは、本発明の第3の実施の形態の音像定位装置について説明したが、以下に記述する第4の実施の形態の音像定位装置によって課題を達成してもよい。また、第4の実施の形態の音像定位装置では、左前方スピーカと右前方スピーカとの間隔が十分に取れない場合の問題をも解決するようにしている。
(第4の実施の形態)
次に、図7を参照し、本発明の第4の実施の形態の音像定位装置について説明する。図7に示された第4の実施の形態の音像定位装置の構成要素の内、図1に示された第1乃至第3の実施の形態の音像定位装置の構成要素と同じものについては同じ参照符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態の音像定位装置は、図7に示すように、左前方、右前方および中央前方チャンネル信号L、R、Cと左後方および右後方チャンネル信号Ls、Rsとを含むマルチチャンネル音声信号によって表される音を受聴者の左前方および右前方に夫々配置された左前方および右前方スピーカから出力するようになっている。
本実施の形態の音像定位装置は、第1の実施の形態の音像定位装置の構成と同様に、モード設定手段109と、第1音像定位処理手段107と、第2音像定位処理手段108とを備えている。
本実施の形態の音像定位装置は、さらに、入力端子101乃至105と、第1アッテネータ1001と、第2アッテネータ1002と、左前方加算器1003と、右前方加算器1004と、左後方アッテネータ801と、右後方アッテネータ802と、入力端子104からの左後方チャンネル信号Lsに左後方アッテネータ801から受け取った信号を加算する左後方加算器803と、入力端子105からの右後方チャンネル信号Rsに右後方アッテネータ802から受け取った信号を加算する右後方加算器804とを備えている。
第1音像定位処理手段107は、モード設定手段109が設定したモードに基づいて、左後方加算器803から受け取った信号に頭部伝達関数に基づくフィルタ係数を畳み込むことによって第1および第2左信号を生成するようになっている。一方、第2音像定位処理手段108は、モード設定手段109が設定したモードに基づいて、右後方加算器804から受け取った信号に頭部伝達関数に基づくフィルタ係数を畳み込むことによって第1および第2右信号を生成するようになっている。
本実施の形態の音像定位装置は、さらに、第3アッテネータ1009と、第4アッテネータ1010と、第1加算器112と、第2加算器1005と、第3加算器1006と、第4加算器115と、第5加算器1007と、第6加算器1008と、出力端子118、120とを備えている。
次に、図7を参照し、本実施の形態における音像定位装置の動作について説明をする。
DVD等の記憶媒体に記録されている音声データから左前方、右前方および中央前方チャンネル信号L、R、Cと左後方および右後方チャンネル信号Ls、Rsとを含むマルチチャンネル音声信号が生成され、複数の入力端子101乃至105から夫々入力される。左前方および右前方チャンネル信号L、Rは第1アッテネータ1001によって信号レベルが調整され、中央前方チャンネル信号Cは、第2アッテネータ1002によって信号レベルが調整される。左前方加算器1003では、第1アッテネータ1001によって信号レベルの調整された左前方チャンネル信号Lが第2アッテネータによって信号レベルの調整された中央前方チャンネル信号Cと加算される。一方、右前方加算器1004では、第1アッテネータ1001によって信号レベルの調整された右前方チャンネル信号Rが第2アッテネータによって信号レベルの調整された中央前方チャンネル信号Cと加算される。
また、左後方および右後方チャンネル信号Ls、Rsは、モード設定手段109によって設定されたモードに基づいて第1および第2音像定位処理手段107、108によって夫々音像定位処理され、左後方および右後方チャンネル信号Ls、Rsから第1および第2左信号と第1および第2右信号が生成される。次いで、第1左信号は、第1加算器112に出力され、第2左信号は、第3アッテネータ1009に出力される。一方、第1右信号は、第4加算器115に出力され、第2右信号は、第4アッテネータ1010に出力される。
また、左後方加算器803から受け取った信号が入力端子104からの左後方チャンネル信号Lsに加算され、左後方加算器803から受け取った信号が加算された左後方チャンネル信号Lsは、第3の実施の形態の音像定位装置と同様に、第1音像定位処理手段107によって音像定位処理され、左後方加算器803から受け取った信号から第1および第2左信号が生成される。第1音像定位処理手段107によって生成された第1および第2左信号の処理の流れは、第3の実施の形態の音像定位装置において説明した処理の流れと同じであり、以下での説明は省略する。
一方、右後方加算器804から受け取った信号が右前方チャンネル信号Rが右後方チャンネル信号Rsに加算され、右後方加算器804から受け取った信号が加算された右後方チャンネル信号Rsは、第3の実施の形態の音像定位装置と同様に第2音像定位処理手段108によって音像定位処理され、右後方加算器804から受け取った信号が加算された右後方チャンネル信号Rsから第1および第2右信号が生成される。第2音像定位処理手段108によって生成された第1および第2右信号の処理の流れは、第3の実施の形態の音像定位装置において説明した処理の流れと同じであり、以下での説明は省略する。
また、第1および第2左信号によって表される音声は、左側の受聴者の左後方に音像が定位しており、左側の受聴者は、第1および第2左信号によって表される音声を左後方の仮想スピーカ902からの音声として受聴し、第1および第2左信号によって表される音声は、右側の受聴者の右後方に音像が定位しており、右側の受聴者は、第1および第2右信号によって表される音声を右後方の仮想スピーカ906からの音声として受聴する。
ここで、本実施例の第1音像定位処理手段107には、左後方チャンネル信号Lsに左後方加算器803から受け取った信号が加算されているため、左後方の仮想スピーカ902からの音声は、左後方チャンネル信号Lsによって表される音声と左前方チャンネル信号Lによって表される音声との合成音として左側の受聴者に受聴される。また、本実施例の第2音像定位処理手段108には、右後方チャンネル信号Rsに右後方加算器804から受け取った信号が加算されているため、右後方の仮想スピーカ906からの音声は、右後方チャンネル信号Rsによって表される音声と右前方チャンネル信号Rによって表される音声との合成音として左側の受聴者に受聴される。
図5(a)に示すように、左前方スピーカ601から出力される左前方チャンネル信号Lの音声と左後方の仮想スピーカ604からの左前方チャンネル信号Lの音声とが合成され、合成された音声は、左前方スピーカ601の左側の合成音像903からの音声として左側の受聴者606に受聴される。合成音像903は左前方スピーカ601よりもより左側の位置に形成されるので、左前方スピーカ601と右前方スピーカ602との間隔が狭い場合でも、左側の受聴者606は、左前方スピーカ601と右前方スピーカ602との間隔をより広く感じることができる。また、左前方スピーカ601から出力される左前方チャンネル信号の音声と左後方の仮想スピーカ902からの左前方チャンネル信号の音声の合成比率を調整することによって合成音像の方向を変更することができる。
図5(b)に示すように、右前方スピーカ602から出力される右前方チャンネル信号Rの音声と右後方の仮想スピーカ605からの右前方チャンネル信号Rの音声とが合成され、合成された音声は、右前方スピーカ602の右側の合成音像907からの音声として右側の受聴者607に受聴される。合成音像907は右前方スピーカ602よりもより右側の位置に生成されるので、左前方スピーカ601と右前方スピーカ602との間隔が狭い場合でも、左側の受聴者607は、左前方スピーカ601と右前方スピーカ602と間隔をより広く感じることができる。また、右前方スピーカ602から出力される右前方チャンネル信号の音声と右後方の仮想スピーカ906からの右前方チャンネル信号の音声の合成比率を調整することによって合成音像の方向を変更することができる。
次に、受聴者が1人のモードに設定された場合の音像定位装置の動作について説明する。
モード設定手段109によって受聴者が1人のモードに設定されている場合、第1音像定位処理手段107では、受聴者が1人のモードの場合のフィルタ係数が設定され、受聴者が1人のモードの場合のフィルタ係数に基づいて第1および第2左信号が生成される。第1音像定位処理手段107によって生成された第1左信号は、第1加算器112に出力され、第1音像定位処理手段107によって生成された第2左信号は、第3アッテネータ1009に出力される。同様にして、第2音像定位処理手段108では、受聴者が1人のモードの場合のフィルタ係数が設定され、受聴者が1人のモードの場合のフィルタ係数に基づいて第1および第2右信号が生成される。第2音像定位処理手段108によって生成された第1右信号は、第4加算器115に出力され、第2音像定位処理手段108によって生成された第2右信号は、第4アッテネータ1010に出力される。
図示していないが、第3アッテネータ1009と第3加算器1006との間にはスイッチを設けており、モード設定手段109によって受聴者が1人のモードに設定されている場合には、第2加算器1005に第2左信号を出力しないようにしている。すなわち、第2左信号が左前方チャンネル側には加算されない。
同様にして、第4アッテネータ1010と第6加算器1008との間にはスイッチを設けており、第6加算器1008に第2左信号を出力しないようにしている。すなわち、第2右信号が左前方チャンネル側には加算されない。
本実施例では、第3アッテネータ1009と第3加算器1006との間にスイッチを設けたが、受聴者が1人のモードに設定されているとき、第3加算器1006の出力がゼロになるよう機能するものであればよい。同様にして、第4アッテネータ1010と第6加算器1008との間にスイッチを設けているが、受聴者が1人のモードに設定されているとき、第3加算器1006の出力がゼロになるよう機能するものであればよい。
以上説明したように、本発明の第4の実施の形態の音像定位装置は、受聴者が1人のモードと受聴者が2人のモードとを選択的に設定するモード設定手段と、前記モード設定手段によって設定されたモードに基づいて左後方チャンネル信号から一対の第1および第2左信号を生成する第1音像定位処理手段と、前記モード設定手段によって設定されたモードに基づいて右後方チャンネル信号から一対の第1および第2右信号を生成する第2音像定位処理手段とを備えているので、第1および第2左信号によって表される音声と第1および第2右信号によって表される音声が左前方および右前方スピーカから出力されたとき、設定されたモードに応じて1人または2人の受聴者の左後方および右後方に音像が定位するよう制御することができる。
また、本発明の第4の実施の形態の音像定位装置は、第1音像定位処理手段が、前記モード設定手段が設定したモードに基づいて、左後方チャンネル信号に頭部伝達関数に基づくフィルタ係数を畳み込むことによって第1および第2左信号を生成し、第2音像定位処理手段が、前記モード設定手段が設定したモードに基づいて、右後方チャンネル信号に頭部伝達関数に基づくフィルタ係数を畳み込むことによって第1および第2右信号を生成するようになっているので、臨場感の高い音声を左前方および右前方スピーカから出力することができる。
また、本発明の第4の実施の形態の音像定位装置は、左前方、右前方および中央前方チャンネル信号と左後方および右後方チャンネル信号とを含むマルチチャンネル音声信号によって表される音声を受聴者の左前方および右前方に夫々配置された左前方および右前方スピーカから出力するようになっているので、受聴者が1人の場合だけでなく2人の場合であっても受聴者にマルチチャンネル音声信号によって表された臨場感のある音声を受聴させることができる。
ここでは、本発明の第4の実施の形態の音像定位装置について説明したが、以下に記述する第5の実施の形態の音像定位装置によって課題を達成してもよい。また、第5の実施の形態の音像定位装置では、左後方の仮想スピーカからの音声を左側の受聴者に、右後方の仮想スピーカからの音声を右側の受聴者に受聴させるようにし、2人の受聴者夫々与える音像が相互に影響しないようにするという問題をも解決するようにしている。
(第5の実施の形態)
図8は、第1音像定位処理手段107のクロストークキャンセル処理部および第2音像定位処理手段108のクロストークキャンセル処理部の構成を示すブロック図である。また、本実施の形態の音像定位装置の構成は、第1の実施の形態の音像定位装置から第4実施の形態の音像定位装置までの何れの構成であってもよいので、クロストークキャンセル処理部の構成および動作の説明を除き、本実施の形態の音像定位装置の構成および動作の説明を省略する。
第1および第2音像定位処理手段107、108のクロストークキャンセル処理部は、図8示すように、入力端子1201と、遅延回路1202と、アッテネータ1203とを含んでいる。
ATAL−SCHROEDERに代表される従来のクロストークキャンセル処理では、受聴者の耳の位置に対してクロストークキャンセルを行うようにしているので、受聴者の耳の位置が予め設定された位置からズレている場合、クロストークキャンセル処理の効果を期待できない。しかしながら、本実施の形態の音像定位装置のクロストークキャンセル処理部では、複数のスピーカによる指向性を利用しているので、受聴者の耳の位置が予め設定された位置からズレている場合であってもクロストークキャンセル処理の効果を期待できる。
したがって、右側の受聴者に対する第1および第2左信号の音声の影響と左側の受聴者に対する第1および第2右信号の音声の影響とを抑えることができる。
次に、図8を参照し、本実施の形態における音像定位装置のクロストークキャンセル処理部の動作について説明をする。
図8に示すように、入力端子1201から入力された第1左信号は、初めに、遅延回路1202によって遅延される。次いで、遅延された音声信号はアッテネータ1203によって信号レベルが調整される。次いで、信号レベルの調整された音声信号は、反転回路1204によって極性が反転され。
次に、図9(a)、(b)を参照し、クロストークキャンセル処理された信号によって表される音声がスピーカ1205L、1205Rから出力されたときの2人の受聴者に対する効果について説明する。
図9(a)に示すように、左側の受聴者606の左後方に音像を定位させる場合、左前方および中央前方スピーカ601、603の指向特性を、図9(a)に示すように、右側の受聴者607の方向の音声が小さくなるよう遅延回路1202およびアッテネータ1203を予め調整しておくことによって、仮想スピーカ604からの音声として左側の受聴者606に受聴されるべき音声が右側の受聴者607の音像に与える影響をさらに抑えることができる。
図9(b)に示すように、右側の受聴者607の右後方に右前方および中央前方スピーカ602、603からの音声によって音像を定位させる場合、右前方および中央前方スピーカ602、603の指向特性を、図9(b)に示すように、左側の受聴者606の方向の音声が小さくなるよう遅延回路1202およびアッテネータ1203を予め調整しておくことによって、仮想スピーカ605からの音声として右側の受聴者607に受聴されるべき音声が左側の受聴者606の音像に与える影響をさらに抑えることができる。
以上説明したように、本発明の第5の実施の形態の音像定位装置は、第1音像定位処理手段は、第1左信号を遅延する遅延回路と、遅延回路によって遅延された第1左信号の信号レベルを調整するアッテネータと、アッテネータによって信号レベルの調整された第1左信号の極性を反転する反転回路とを含み、第2音像定位処理手段は、第1右信号を遅延する遅延回路と、遅延回路によって遅延された第1右信号の信号レベルを調整するアッテネータと、アッテネータによって信号レベルの調整された第1右信号の極性を反転する反転回路とを含み、モード選択手段が、受聴者が2人のモードを設定したとき、第1音像定位処理手段は、反転回路からの第1左信号を第1加算器に出力し、第2音像定位処理手段は、反転回路からの第1右信号を第4加算器に出力するようにしているので、第1および第2左信号による音声と第1および第2右信号による音声を前方のスピーカから指向性をもって出力し、2人の受聴者に選択的に受聴させることができる。
したがって、上述のようなクロストークキャンセル手法により、2人の受聴者に対して効果的に音像定位効果を与えることができる。