JP4351662B2 - ステレオ再生方法及びステレオ再生装置 - Google Patents
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Description
聴取者が中央の位置、すなわち聴取位置21にいる場合、左右のスピーカ101,102から聴取位置までの距離は等しくなる。そのため、音像の位置は異なることなく正しく知覚される。一方、左右どちらかのスピーカに偏った位置、例えば聴取位置22では、そのスピーカ101側の音像位置(この例では音像位置32)は、適正な位置に定位して知覚される。しかし、音像が中央、すなわち音像位置31の場合には、物理的には左右のスピーカ101,102からは同じ音圧レベルの音が同時に放射されている。そのため、聴取位置22では、近い側のスピーカ101から出力された音のほうが、遠い側のスピーカ102から出力された音よりも、早く到達し、かつ大きな音声レベルで観測される。そのため、聴取位置22では音像は異なった位置、すなわち音像位置32として知覚されることとなる。また、逆のスピーカ位置の音像(この例では音像位置33)については、概ね正しい位置に知覚されるが、その音像は曖昧となる傾向にあり、音像位置31から33の間のいずれかの位置に知覚されることとなる。
また、本発明において好ましくは、加算器が、左右のチャンネル信号を加算することにより、和信号を生成して出力し、低域通過フィルタが、加算器から出力された和信号の高域成分を遮断することにより、当該和信号を先行音効果が生じ得る周波数帯域に制限して出力し、センタースピーカが、低域通過フィルタから出力された和信号を出力し、遅延器が、左右のチャンネル信号を、和信号に先行音効果を生じさせる程度に遅延させて出力し、2つのサイドスピーカが、遅延器から出力された左右のチャンネル信号をそれぞれ出力する。
これにより、本発明の構成に必要なセンタースピーカの指向特性を容易に得ることが可能となる。
〔構成・動作〕
図1(a)は、本形態のステレオ再生装置10の構成を例示したブロック図である。
図1(a)に例示するように、本形態のステレオ再生装置10は、ステレオ入力信号の左右のチャネル信号がそれぞれ入力される入力端子11a,11bと、左右のチャンネル信号を加算することにより、和信号を生成する加算器12と、加算器12から出力された和信号の高域成分を遮断することにより、当該和信号を先行音効果が生じ得る周波数帯域に制限する低域通過フィルタ13と、左右のチャンネル信号を、和信号に先行音効果を生じさせる程度に遅延させる遅延器16a,16bと、3つの増幅器14,17a,17bと、2つのサイドスピーカ18a,18bと、1つのセンタースピーカ15とを具備している。なお、センタースピーカ15は、2つのサイドスピーカ18a,18bの間(この例では中央)に配置される。
一方、入力端子11a,11bから入力された左右のチャネル信号はそれぞれ遅延器16a,16bにも入力され、遅延器16a,16bは、これらの遅延信号を出力する。出力された遅延信号は、それぞれ増幅器17a、17bに入力され、増幅器17a、17bは、それらを増幅する。増幅された信号は、それぞれ左右のサイドスピーカ18a、18bに入力され、そこから出力される。
ここで、本形態のセンタースピーカ15の出力特性は、図1(a)のC1,C2に例示すような、正面方向Aにヌルを持ち、左右のサイドスピーカ18a,18bの正面位置B1,B2に高い音圧分布を示す指向特性をもつ。この特性を単一スピーカで実現することは難しいが、以下に述べる方法で類似した指向特性を得ることができる。図1(b)は、この指向特性を得るための手法を例示した図である。
次に、上述のステレオ再生装置10によってステレオ音声を再生した場合の聞こえについて説明する。
図2は、ステレオ再生装置10によってステレオ音声を再生した場合の聞こえを説明するための概念図である。なお、この図は、左右のサイドスピーカ18a,18b及びセンタースピーカ15から出力された音声を、聴取位置21,22,23で聴取者が聴き取る例を示している。また、31、32、33は、それぞれ再生すべき音像の位置を表している。また、この例のセンタースピーカ15は、図1(b)のように構成されているとする。
<低域通過フィルタ13>
図3は、図1(a)の低域通過フィルタ13の周波数特性の一例である。この例では、遮断周波数を600Hzとして設定した。先に述べた先行音効果は、概ね1kHz以下の周波数帯域でより顕著な効果が確認できることが知られている。また、図1(b)におけるセンタースピーカ15は互いに位相関係が逆となるスピーカ15b,15cを隣接して設置することで8の字型の特性を持つ双指向特性を形成しており、スピーカ15b,15cの特性に依存するものの、1kHz以上では効果的な双指向性を形成することが困難である。結局、低域通過フィルタ13の遮断周波数としては、先行音効果を生じさせ、かつ8の字型の双指向特性が実現できる帯域であればよい。すなわち、低域通過フィルタ13は、1kHz程度以上の周波数帯域を遮断するフィルタであることが望ましく、800Hz程度以上の周波数帯域を遮断するフィルタであることがより望ましい。また、100Hzから200Hz程度の低い周波数帯域だけの音は、方向感を生じさせない。よって、低域通過フィルタ13の代わりに、バンドパスフィルタを設置し、高域周波数だけでなく、低域周波数をも遮断する構成としてもよい。このバンドパスフィルタとしては、200Hzから1000Hz程度の周波数帯域の信号のみを通過させるものであることが望ましく、300Hzから800Hz程度の周波数帯域の信号のみを通過させるものであることがより望ましい。また、低域通過フィルタ13やバンドパスフィルタを設けず、加算器12から出力された和信号をそのまま増幅してセンタースピーカ15から出力してもよい。この場合であっても、もともと1kHz以上の信号成分が少ないのであれば、先行音効果を生じさせ、かつ8の字型の双指向特性が実現できる。
センタースピーカ15に接続される増幅器14の設定は、図2における音像位置31の音に対して、聴取位置21ではセンタースピーカ15から出力される音が左右のサイドスピーカ18a,18bからの音より小さく観測され、同時に聴取位置22或いは23ではセンタースピーカ15から出力される音が左右のサイドスピーカ18a,18bからの音より大きく観測されるようにする必要がある。
図1(a)の遅延器16a,16bの遅延量の設定は、センタースピーカ15から出力される信号が、サイドスピーカ18a,18bから出力される信号に対して先行音効果を生じさせることが可能な程度にしておけばよい。具体的には、遅延器16a,16bの遅延量は、例えば、10〜20ms程度が最良である。これは、20ms以上の遅延がある場合には、一つの音源から発せられた音ではなく、音源が二つあるという知覚を生じてしまうため、不具合が生じる。一方、−般に遅延量が少なくなるほど先行音効果が及ぼす影響が小さくなっていくために、おおよそ10ms以下の遅延では、先行音効果を用いた本発明の効果が発揮できなくなるためである。
図4と図5は、従来の方法を用いた場合(図4)と本形態の方法を用いた場合(図5)との主観評価実験結果の−例を示した図である。ここで、各図の(a)は中央位置、すなわち図2における聴取位置21に相当する場所で聴取者が観測した場合の評価実験結果を、−方(b)は側方位置、すなわち図2における聴取位置22に相当する場所で聴取者が観測した場合の評価実験結果を、それぞれ示している。各図の横軸と縦軸はそれぞれ音像を提示した場所と知覚(回答)した場所を示している。なお、横軸も縦軸も、図2における聴取位置23方向を正とし、聴取位置22方向を負としている。また、円の大きさは、頻度を表している。
これに対して図4(b)に特徴的に表れているように、側方向の聴取位置では良好な音像定位ができておらず、音像はほぼ聴取者正面のスピーカに偏って知覚されている。−方、図4(a)に表れているように、本形態の方法を用いた場合には、聴取位置によらずに良好な音像定位がなされている。
以上述べたように、本形態によれば、2チャンネルで伝送されたステレオ音声信号を、広い聴取位置において良好な定位をもって知覚させることが可能となる。この際、左右スピーカの遅延量としてmsオーダーの細かい操作を行っていないために、聴取者の位置の違いによる定位特性ヘの影響は少なくなる。そのため、通信会議の多数の参加者に対して、高い臨場感で音を提示することが可能となる。また、音像位置が適切に空間内において広がりを持って配置されて知覚されることにより、音声の明瞭性を向上させることも可能となる。また、知覚される音像に関わる両耳間の時間差及び強度差は矛盾しておらず、音像がぼやけることもない。さらに、本形態は基本的に3つのスピーカを設置することで実現されるため、スピーカアレーを用いる方法と比較して格段に小規模なシステム構成となり、通信会議装置ヘの応用に適したものである。
また、上述のサイドスピーカ17a,17b及びセンタースピーカ15以外の構成はコンピュータによって実行することができる。この場合、各装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記録媒体に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。
12 加算器
13 低域通過フィルタ
15 センタースピーカ
15b,15c スピーカ
16a,16b 遅延器
18a,18b サイドスピーカ
Claims (10)
- 正面方向の音圧が低く、その両側の音圧が高い指向特性を有するセンタースピーカから、ステレオ入力信号の左右のチャンネル信号を加算した和信号を出力し、
上記左右のチャンネル信号を、上記和信号に先行音効果を生じさせる程度に遅延させて、上記センタースピーカの両側に配置された2つのサイドスピーカからそれぞれ出力する、
ことを特徴とするステレオ再生方法。 - 請求項1に記載のステレオ再生方法であって、
上記センタースピーカが出力する上記和信号は、
先行音効果が生じ得る周波数帯域に制限された信号である、
ことを特徴とするステレオ再生方法。 - 請求項2に記載のステレオ再生方法であって、
加算器が、上記左右のチャンネル信号を加算することにより、上記和信号を生成して出力し、
低域通過フィルタが、上記加算器から出力された上記和信号の高域成分を遮断することにより、当該和信号を先行音効果が生じ得る周波数帯域に制限して出力し、
上記センタースピーカが、上記低域通過フィルタから出力された上記和信号を出力し、
遅延器が、上記左右のチャンネル信号を、上記和信号に先行音効果を生じさせる程度に遅延させて出力し、
上記2つのサイドスピーカが、上記遅延器から出力された左右のチャンネル信号をそれぞれ出力する、
ことを特徴とするステレオ再生方法。 - 請求項1に記載のステレオ再生方法であって、
上記センタースピーカが、上記和信号の周波数帯域に対応した空間サンプリング定理を満たす距離をおいて配置された第1スピーカと第2スピーカとによって構成され、
上記第1スピーカに上記和信号が入力され、上記第2スピーカに当該和信号の極性反転信号が入力されることで、上記センタースピーカの指向特性を双指向性とする、
ことを特徴とするステレオ再生方法。 - 請求項4に記載のステレオ再生方法であって、
上記第1スピーカ及び上記第2スピーカには、双指向特性を実現できる周波数帯域に制限された上記和信号及び上記極性反転信号が、それぞれ入力される。
ことを特徴とするステレオ再生方法。 - ステレオ入力信号の左右のチャンネル信号をそれぞれ出力する2つのサイドスピーカと、
上記2つのサイドスピーカの間に配置され、自らの正面方向の音圧が低く、上記2つのサイドスピーカの正面部分の音圧が高い指向特性を有し、上記左右のチャンネル信号の和信号を出力するセンタースピーカと、
を具備し、
上記2つのサイドスピーカから出力される上記左右のチャンネル信号を、上記センタースピーカから出力される上記和信号よりも遅延させることにより、上記センタースピーカから出力された当該和信号に、上記2つのサイドスピーカからそれぞれ出力された左右のチャンネル信号に対する先行音効果を生じさせる、
ことを特徴とするステレオ再生装置。 - 請求項6に記載のステレオ再生装置であって、
上記センタースピーカが出力する上記和信号は、
先行音効果が生じ得る周波数帯域に制限された信号である、
ことを特徴とするステレオ再生装置。 - 請求項7に記載のステレオ再生装置であって、
上記左右のチャンネル信号を加算することにより、上記和信号を生成する加算器と、
上記加算器から出力された上記和信号の高域成分を遮断することにより、当該和信号を先行音効果が生じ得る周波数帯域に制限する低域通過フィルタと、
上記左右のチャンネル信号を、上記和信号に先行音効果を生じさせる程度に遅延させる遅延器と、
を具備し、
上記センタースピーカが、
上記低域通過フィルタから出力された上記和信号を出力し、
上記2つのサイドスピーカが、
上記遅延器から出力された左右のチャンネル信号をそれぞれ出力する、
ことを特徴とするステレオ再生装置。 - 請求項6に記載のステレオ再生装置であって、
上記センタースピーカが、上記和信号の周波数帯域に対応した空間サンプリング定理を満たす距離をおいて配置された第1スピーカと第2スピーカとによって構成され、
上記第1スピーカに上記和信号が入力され、上記第2スピーカに当該和信号の極性反転信号が入力されることで、上記センタースピーカの指向特性を双指向特性とする、
ことを特徴とするステレオ再生装置。 - 請求項9に記載のステレオ再生装置であって、
上記第1スピーカ及び上記第2スピーカには、双指向特性を実現できる周波数帯域に制限された上記和信号及び上記極性反転信号が、それぞれ入力される。
ことを特徴とするステレオ再生装置。
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