JP2006349111A - 一方向クラッチおよびこの一方向クラッチを用いたクラッチ内蔵プーリ - Google Patents

一方向クラッチおよびこの一方向クラッチを用いたクラッチ内蔵プーリ Download PDF

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誠 安井
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Abstract

【課題】係合子にローラを用いた一方向クラッチの耐久性を向上させる。
【解決手段】内輪1と外輪2の間にローラ3を噛み込ませて一方の回転方向のトルクのみを内輪1と外輪2の間で伝達する一方向クラッチにおいて、ローラ3を、外径が一定のストレート部3aと、ストレート部3aから連なってローラ端3cに向かって外径が次第に小さくなる縮径部3bとで構成する。
【選択図】図1

Description

この発明は、係合子にローラを用いた一方向クラッチおよびこのクラッチを用いたクラッチ内蔵プーリに関する。
自動車の補機、たとえばカーエアコンやオルタネータなどは、回転軸がエンジンのクランクシャフトにベルトで連結されており、そのベルトを介してエンジンで駆動される。このようにエンジンで駆動される補機の回転軸は、エンジンが減速したときでも慣性により同じ速度で回転を続けようとする。そのため、エンジンが急激に減速すると、補機の回転軸に取り付けられたプーリとベルトの間にスリップが生じ、ベルトが摩耗する。
このベルトの摩耗を防止するために、一方向クラッチを内蔵したプーリが補機の回転軸のプーリとして用いられる。このクラッチ内蔵プーリは、エンジンが補機を駆動する方向のトルクのみをベルトから回転軸に伝達し、反対方向のトルクの伝達を遮断する。そのため、エンジンを減速させたときに補機の慣性力がベルトに伝わらず、プーリとベルトの間にスリップが生じにくい。
このプーリに内蔵される一方向クラッチとして、内輪のカム面と外輪の円筒面の間に形成されるくさび空間にローラを設け、このローラを周方向に付勢するばねを保持器に取り付けたものが知られている(特許文献1)。この一方向クラッチは、内輪と外輪を一方の回転方向に相対回転させようとすると、内輪と外輪の間にローラが噛み込んでトルクを伝達する。また、内輪と外輪を他方の回転方向に相対回転させようとすると、ローラの噛み込みが解除されてトルクの伝達が遮断される。
この一方向クラッチには、近年、高い耐久性が求められるようになってきている。すなわち、自動車の補機、特にオルタネータが自動車の電機部品の増加に伴って大型化するとともに、自動車の低燃費化に伴ってエンジンの回転変動が大きくなっているので、上記の一方向クラッチの受ける負荷が大きくなってきている。
そこで、従来の一方向クラッチは、内輪と外輪の間に噛み込ませるローラとして外径が一定のローラを用い、ローラ全長がカム面に接触するようにしている。ローラ全長をカム面に接触させると、ローラとカム面の接触面積が大きくなるので、ローラが受ける面圧を小さくすることができる。
しかし、この従来の一方向クラッチのローラは、ローラ端までローラ径が一定なので、内輪と外輪の間にローラが噛み込んだときに、図6に示すようにローラ20の端部に応力集中が生じる。特にローラが内輪21と外輪22の間に噛み込む際、ローラ20は瞬間的に大きな負荷を受けるので、大きい応力がローラ20の端部に生じる。そのため、この一方向クラッチはローラ20の端部に剥離や摩耗を生じやすく、耐久性に問題があった。
特開平11−270596号公報
この発明は、係合子にローラを用いた一方向クラッチの耐久性を向上させることを目的とする。
この課題を解決するために、一方向クラッチのローラを、外径が一定のストレート部と、そのストレート部から連なってローラ端に向かって外径が次第に小さくなる縮径部とで構成した。
また、この発明では、上述した一方向クラッチの外輪の外周に円筒状のプーリを固定し、そのプーリを前記内輪の外周に設けた転がり軸受で回転可能に支持したクラッチ内蔵プーリも併せて提供する。
この発明の一方向クラッチは、そのローラに、外径が一定のストレート部から連なってローラ端に向かって外径が次第に小さくなる縮径部を設けたので、応力集中がローラに生じにくく、耐久性に優れる。
図1に、この発明の実施形態を示す。このクラッチ内蔵プーリは、内輪1と、外輪2と、内輪1と外輪2の間に組み込まれた複数のローラ3と、内輪1の外周に固定された保持器4と、外輪2の外周に固定された円筒状のプーリ5とを有する。
外輪2は、プーリ5内に圧入されており、プーリ5が回転すると、そのプーリ5と一体に回転するようになっている。プーリ5の外周には周方向に連続する突条6が形成されており、この突条6が、プーリ5の外周にかけたベルト(図示せず)を案内する。外輪2の内周には円周面2aが形成されている。
内輪1は、図2に示すように内周がねじ7を形成しており、このねじ7に、自動車の補機(たとえばカーエアコンやオルタネータ、ウォータポンプなど)の回転軸(図示せず)をねじ込むことにより固定可能となっている。また、内輪1の外周にはカム面1aが形成されている。ローラ3は、カム面1aと円周面2aの間に形成されるくさび空間に配置されており、保持器4に取り付けられたばね8で周方向に付勢されている。
ローラ3は、図3に示すように、外径が一定のストレート部3aと、このストレート部3aから連なる縮径部3bとからなる。縮径部3bは、ストレート部3aからローラ端3cに向かって外径が次第に小さくなるように形成されている。
内輪1の外周には、図1に示すように、カム面1aをはさんで両側に円筒面1b、1cが形成されており、この円筒面1b、1cにそれぞれ転がり軸受9、10が圧入されている。この転がり軸受9、10は、プーリ5を回転可能に支持しており、プーリ5と内輪1を同心に保持している。また、軸受9、10の、カム面1aから遠い側の開口には、それぞれシール部材9a、10aが組み込まれている。シール部材9a、10aの間の空間には、転動体9b、10bおよびローラ3を潤滑するグリースが封入されている。
このクラッチ内蔵プーリは、ばね8がローラ3を付勢する方向にプーリ5を回転させると、ローラ3が内輪1と外輪2の間に噛み込む。噛み込んだローラ3は、外輪2から内輪1にトルクを伝達し、プーリ5と内輪1とを一体に回転させる。このとき、内輪1と外輪2がローラ3を締め付けるが、ローラ3は、ストレート部3aから連なる縮径部3bを有するので応力集中を生じにくい。そのため、このクラッチ内蔵プーリは、ローラ3に剥離や摩耗を生じにくく、耐久性に優れる。一方、ばね8がローラ3を付勢する方向に対して反対方向にプーリ5を回転させると、ローラ3の噛み込みが解除されてトルクの伝達が遮断される。
また、このクラッチ内蔵プーリは、エンジンのクランクシャフトにベルトで連結される補機の回転軸のプーリとして用いると、補機の容量が大きい場合やエンジンの回転変動が大きい場合でも、ベルトとプーリの間のスリップを長期にわたって確実に防止することができる。
ストラト角(図4に示すカム面1aとローラ3の接線Lと、円周面2aとローラ3の接線Lとがなす角(くさび角)ωの半分)は、2°〜5°とすると好ましい。ストラト角を5°以下とすると、内輪1と外輪2の間へのローラ3の噛み込みが円滑となり、ストラト角を2°以上とすると、ローラ3の噛み込みの解除が円滑となる。
内輪1のカム面1aは、図に示すように平面で構成すると加工が容易であるが、凹面で構成してもよい。凹面にするとローラ3とカム面1aの接触面積が大きくなるので、ローラ3の受ける面圧を小さくすることができる。また、凹面の形状を変えてストラト角を任意に設定することができるので、カム面1aを平面にした場合よりもローラ3の数を増やして、ローラ1つあたりの負荷を小さくすることができる。カム面1aを平面で構成する場合、内輪1の断面形状は、一般的に6〜24角形状とすることができる。
内輪1のカム面1aの表面粗さは、研削せずに6.3Ra以下としてもよいが、研削して1.0Ra以下に仕上げてもよい。内輪1の材料としては、たとえば軸受鋼、浸炭鋼、高炭素鋼などの鋼材を用いることができ、さらにこれらの鋼材に、ずぶ焼入れ、浸炭焼入れ、高周波焼入れなどの熱処理を施すと好ましい。カム面1aの表面硬さは、58〜64HRCが好適である。硬化層深さは、浸炭焼入れの場合は、0.3〜1.5mmが好ましく、高周波焼入れの場合は、0.8〜3.0mmが好ましい。焼入れは、少なくともカム面1aに施せばよいが、全体に施してもよい。
外輪2の内周の円周面2aの表面粗さは、研削せずに3.2Ra以下としてもよいが、研削して0.8Ra以下に仕上げてもよい。外輪2の材料も、内輪1と同様の鋼材を用いることができ、さらに熱処理を施すと好ましい。表面硬さも、内輪と同様、58〜64HRCが好適である。硬化層深さは、浸炭焼入れの場合は、0.3〜1.5mmが好ましく、高周波焼入れの場合は、0.8〜3.0mmが好ましい。焼入れは、少なくとも円周面2aに施せばよいが、全体に施してもよい。
ローラ3は、ストレート部3aと縮径部3bが滑らかに接続するように形成すると、応力集中がより生じにくくなって好ましい。ストレート部3aの直径は、2〜6mmが好ましく、ストレート部3aの軸方向長さは、ストレート部3aの直径に対して1〜3倍が好ましい。縮径部3bの軸方向長さは、ストレート部3aの直径に対して0.5倍以上とするとより好ましい。また、ストレート部3aと、縮径部3bの端部3cの直径差は、ストレート部3aの直径に対して1/1000〜5/1000倍となるようにすると好ましい。
ばね8は、あらかじめテンパー処理を施しておくと好ましい。テンパー処理を施すと、ばね8にへたりが生じにくくなり、ローラ3の噛み込み動作の信頼性を高めることができる。ばね8として、板ばねとコイルばねのいずれを用いてもよいが、コイルばねを用いる場合、図5に示すように1対のコイルばねを一体に形成したものを用い、1つのローラ3を軸方向に離れた位置から同時に付勢するようにするとより好ましい。このようにすると、ローラ3の姿勢が傾きにくくなるので、ローラ3の噛み込みおよびその解除がより円滑となる。ばね8の材料は、コイルばねの場合、ピアノ線やステンレス鋼線などを用いることができ、板ばねの場合、ステンレス鋼などを用いることができる。
保持器4は、樹脂材料で形成すると製造コストが低いので好ましいが、金属材料で形成すると高温環境でも使用することができる。
シール部材9a、10aの間に封入するグリースは、エーテル油やエステル油などの合成油を基油としたものを用いることができる。この合成油は、40℃における粘度が10〜120mm/sのものを用いると好ましい。グリースの増ちょう剤としては、ウレア系化合物を用いることができ、混和ちょう度が265〜295となるようにすると好ましい。
転がり軸受9、10としては、玉軸受を用いるとラジアル荷重だけでなくアキシアル荷重も受けることができるので好ましいが、ころ軸受を用いてもよく、たとえば一方の軸受9に円筒ころ軸受を用い、他方の軸受10に深溝玉軸受を用いてもよい。軸受9、10は、ラジアル内部すきまが0.030mm以下のものを用いると、内輪1が外輪2に対してより偏心しにくくなって、伝達トルクが各ローラ3に等しく分散するので、特定のローラ3に負荷が集中せず、クラッチの耐久性がより向上する。
上記実施形態では、内輪1のカム面1aと外輪2の円周面2aの間にローラ3を噛み込ませているが、内輪1の外周に円周面を形成するとともに外輪2の内周にカム面を形成し、内輪1の円周面と外輪2のカム面の間にローラ3を噛み込ませるようにしてもよい。この場合、保持器4は外輪2に固定し、その保持器4にばね8を取り付けるとよい。要は、内輪1と外輪2の間にローラ3を噛み込ませて一方の回転方向のトルクのみを内輪1と外輪2の間で伝達するようにすればよい。
この発明のクラッチ内蔵プーリの実施形態を示す断面図 図1のA−A線に沿った断面図 図1のクラッチ内蔵プーリのローラの拡大図 図2のクラッチ内蔵プーリのくさび角を説明する図 図1のクラッチ内蔵プーリのばねとローラを周方向外側から見た図 従来の一方向クラッチのローラに作用する面圧を説明する図
符号の説明
1 内輪
2 外輪
3 ローラ
3a ストレート部
3b 縮径部
3c ローラ端
5 プーリ
9、10 転がり軸受

Claims (2)

  1. 内輪と外輪の間にローラを噛み込ませて一方の回転方向のトルクのみを内外輪間で伝達する一方向クラッチにおいて、前記ローラを、外径が一定のストレート部と、そのストレート部から連なってローラ端に向かって外径が次第に小さくなる縮径部とで構成したことを特徴とする一方向クラッチ。
  2. 請求項1に記載の一方向クラッチの外輪の外周に円筒状のプーリを固定し、そのプーリを前記内輪の外周に設けた転がり軸受で回転可能に支持したクラッチ内蔵プーリ。
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JP2015190573A (ja) * 2014-03-28 2015-11-02 Ntn株式会社 クラッチユニット

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