JP2005257021A - 一方向クラッチおよび一方向クラッチ付きプーリユニット - Google Patents
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Abstract
【課題】 長期間使用した場合でも、同じ性能を維持することができる一方向クラッチおよび一方向クラッチ付きプーリユニットを提供する。
【解決手段】 一方向クラッチ5の軸方向両側に転がり軸受6,7が設けられ、一方向クラッチ5の外輪が両転がり軸受6,7の外輪6a,7aによって挟まれている。一方向クラッチ5のころ13の表面は、算術平均粗さ0.2Ra以下とされており、また、一方向クラッチ5の内輪(非カム面)となっている中空軸3の中間部の外周面も、算術平均粗さ0.2Ra以下とされている。
【選択図】 図1
【解決手段】 一方向クラッチ5の軸方向両側に転がり軸受6,7が設けられ、一方向クラッチ5の外輪が両転がり軸受6,7の外輪6a,7aによって挟まれている。一方向クラッチ5のころ13の表面は、算術平均粗さ0.2Ra以下とされており、また、一方向クラッチ5の内輪(非カム面)となっている中空軸3の中間部の外周面も、算術平均粗さ0.2Ra以下とされている。
【選択図】 図1
Description
この発明は、例えば、内燃機関の始動時および内燃機関による補機駆動時の回転力をベルトによって伝達するベルト伝動システムにおいて、ベルト駆動スタータに使用されるのに好適な一方向クラッチおよび一方向クラッチ付きプーリユニットに関する。
軸とこれの周囲に同心状に配されたプーリとの間に、内輪、外輪、両輪間に配されたころ、ころを噛み込み方向へ付勢する付勢部材およびころを保持する保持器を備えた一方向クラッチは、例えば、特許文献1に記載されているように、従来より知られている。
この種の一方向クラッチでは、一方向クラッチの噛み合い性を高めるため、ころおよび軌道輪の表面粗さが所定値以上に設定されている。
特開2003−156075号公報
上記一方向クラッチによると、ころおよび軌道輪の表面粗さを所定値以上とすることにより、初期の噛み合い性は高められるが、使用するにつれて、ころと軌道面との滑りにより、軌道面等が鏡面となり、摩擦係数が変化(悪化)するという問題があった。
また、上記の一方向クラッチでは、潤滑のためのグリスが封入されており、このグリスの介在により、ころが外輪に凝着し、凝着力が小さい場合には、問題ないが、この凝着力が大きくなって、コイルばねの付勢力以上になると、ころをコイルばねの付勢力によって噛み込み方向に移動させにくくなり、両方向で空転したり噛み合いの応答が遅れたりするという問題が発生する懸念がある。コイルばねの付勢力は、ある程度以上の遠心力が作用した時に、ころが噛み込み解除状態に移動するようにその値が決められることから、凝着力を考慮した大きさとすることは難しいものとなっている。
この発明の目的は、軌道輪の表面粗さに着目し、長期間使用した場合でも、同じ性能を維持することができる一方向クラッチおよび一方向クラッチ付きプーリユニットを提供することにある。
また、この発明の他の目的は、軌道輪の表面粗さに着目し、ころがカム面に凝着する力を低下させ、ころを噛み込み解除状態から噛み込み状態に確実に復帰させることができる一方向クラッチおよび一方向クラッチ付きプーリユニットを提供することにある。
第1の発明による一方向クラッチは、軸とこれの周囲に同心状に配されたプーリとの間に、内輪、外輪、両輪間に配されたころ、ころを噛み込み方向へ付勢する付勢部材およびころを保持する保持器を備えた一方向クラッチにおいて、一方向クラッチのころと一方向クラッチの軌道輪のうちのカム面が設けられていない方の軌道輪とが、表面粗さ0.2Ra以下とされていることを特徴とするものである。
表面粗さ0.2Ra以下は、超仕上げ、バレル研磨などを施すことにより得ることができる。
第1の発明による一方向クラッチにおいて、カム面が設けられている方の軌道輪の表面粗さは、カム面が設けられていない方の軌道輪の表面粗さよりも大きくされていることが好ましい。
このようにすると、グリスの介在によりカム面が設けられている方の軌道輪にころが凝着する力は、この軌道輪の表面粗さが粗いことにより低下させられ、ころを噛み込み解除状態から噛み込み状態に確実に復帰させることができ、両方向で空転したり噛み合いの応答が遅れたりするという問題を防止することができる。
第2の発明による一方向クラッチは、軸とこれの周囲に同心状に配されたプーリとの間に、内輪、外輪、両輪間に配されたころ、ころを噛み込み方向へ付勢する付勢部材およびころを保持する保持器を備えた一方向クラッチにおいて、カム面が設けられている方の軌道輪の表面粗さは、カム面が設けられていない方の軌道輪の表面粗さよりも大きくされていることを特徴とするものである。
上記第1および第2の発明による一方向クラッチは、軸とこれの周囲に同心状に配されたプーリとの間にこの一方向クラッチを配するとともに、その少なくとも一側(好ましくは両側)に転がり軸受を配置した一方向クラッチ付きプーリユニットとして使用するのに好適である。この場合に、一方向クラッチは、プーリとは別部材の外輪および中空軸とは別部材の内輪を有していることがあり、また、プーリの中間部が一方向クラッチの外輪とされているとともに、中空軸の中間部が一方向クラッチの内輪とされていることがある。前者(一方向クラッチの外輪および内輪がプーリまたは中空軸と別部材)の場合、例えば、プーリの内径は、密封シール用の環状溝部分を除いて同じ径とされ、軸受の外輪は、圧入時に一方向クラッチの外輪に当接することによってその軸方向の位置決めが行われる。そして、中空軸の外径は、密封シール用の環状溝部分を除いて同じ径とされ、軸受の内輪は、圧入時に一方向クラッチの内輪に当接することによってその軸方向の位置決めが行われる。後者(プーリが一方向クラッチの外輪を兼ね、中空軸が同内輪を兼ねる)の場合、例えば、プーリの内径は、両端部が中間部よりも大径となる段付き状に形成され、軸受の外輪は、プーリの段差部によって位置決めされ、軸受の内輪の位置決めは、外輪が位置決めされることによって行われる。
第1の発明の一方向クラッチにおいて、一方向クラッチは、外輪カム式または内輪カム式のいずれであってもよく、外輪カム式の場合には、内輪の表面粗さが0.2Ra以下とされ、内輪カム式の場合には、外輪の表面粗さが0.2Ra以下とされる。
第1の発明の一方向クラッチを有する一方向クラッチ付きプーリユニットにおいて、表面粗さが0.2Ra以下とされるのは、プーリの一方向クラッチの外輪を兼ねる部分だけまたは中空軸の同内輪を兼ねる部分だけであってもよいし、プーリの内周または中空軸の外周の全面であってもよい。
第2の発明の一方向クラッチにおいて、一方向クラッチは、外輪カム式または内輪カム式のいずれであってもよく、外輪カム式の場合には、内輪の表面粗さ<外輪の表面粗さとされ、内輪カム式の場合には、外輪の表面粗さ<内輪の表面粗さとされる。なお、カム面が設けられている方の軌道輪の表面粗さについては、部分的に異なる値とされてもよく、この場合には、少なくとも、噛み込み状態のころを保持するころ保持部の表面粗さがカム面が設けられていない方の軌道輪の表面粗さよりも大きくされる。
第1の発明の一方向クラッチによると、ころと軌道輪のうちのカム面が設けられていない方の軌道輪とが、表面粗さ0.2Ra以下とされているので、ころおよび軌道面が両者間のすべりによって摩耗した場合でも、それらの面粗さしたがって摩擦係数が維持され、噛み合い性能の悪化を防止することができる。しかも、表面粗さを小さくすることは、空転時の油潤滑性(油膜成形性)を向上させることから、耐久性も向上し、これにより、同じ性能を長く維持した一方向クラッチを得ることができる。
第2の発明の一方向クラッチによると、カム面側の軌道輪の表面粗さ>非カム面側の軌道輪の表面粗さとされているので、グリスの介在によりカム面にころが凝着する力は、カム面側の軌道輪の表面粗さが粗いことにより低下させられ、ころを噛み込み解除状態から噛み込み状態に確実に復帰させることができ、両方向で空転したり噛み合いの応答が遅れたりするという問題を防止することができる。そして、カム面が設けられていない方の軌道輪の表面粗さは、相対的に小さくされているので、ころおよび軌道面が両者間のすべりによって摩耗した場合でも、それらの面粗さしたがって摩擦係数が小さくなりにくく、噛み合い性能の悪化を防止することができる。
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。以下の説明において、左右は、図1の左右をいうものとする。
図1および図2は、この発明による一方向クラッチおよび一方向クラッチ付きプーリユニットの1実施形態を示している。
一方向クラッチ付きプーリユニット(1)は、エンジンの駆動部とスタータモータの回転軸とを連結する部分に配置されるもので、スタータモータの回転軸(2)に嵌められた中空軸(3)とこれと同心に配置されたプーリ(4)との間に、一方向クラッチ(5)が設けられている。プーリ(4)の外周には、Vリブドベルトが掛け渡されるベルト掛け渡し部が設けられている。一方向クラッチ(5)は、中空軸(3)の軸方向中間部とプーリ(4)の軸方向中間部との間に設けられており、中空軸(3)の左端寄り部分とプーリ(4)の左端寄り部分との間および中空軸(3)の右端寄り部分とプーリ(4)の右端寄り部分との間に、それぞれ転がり軸受(6)(7)が設けられている。プーリ(4)の中間部の内径部分は、一方向クラッチ(5)の外輪を兼ねており、中空軸(3)の中間部の外径部分は、一方向クラッチ(5)の内輪を兼ねている。
プーリ(4)の内径は、左右端部(大径部)(4a)(4b)が中間部(小径部)(4c)よりも大径となる段付き状に形成されており、中空軸(3)の外径は、密封シール(10)用の環状溝部分を除いて同じ径とされている。
一方向クラッチ(5)は、図2に示すように、プーリ(4)の中間部の内周面に設けられたカム面(11)と、カム面(11)と中空軸(3)の中間部の外周面とによって形成された楔状空間(12)内に配置され、中空軸(3)とプーリ(4)とが一の方向(ロック方向)に相対回転することにより中空軸(3)とプーリ(4)との間に噛み込み、他の方向(フリー方向)に相対回転したとき噛み込みを解除する複数の噛み込み部材としてのころ(13)と、ころ(13)を噛み込み方向(楔状空間(12)の狭い側)に付勢する付勢部材としてのコイルばね(14)と、ころ(13)を楔状空間(12)内に位置させる保持器(15)とを備えている。
左右の転がり軸受(6)(7)は、それぞれ、外輪(6a)(7a)、内輪(6b)(7b)、玉(6c)(7c)および保持器(6d)(7d)からなる玉軸受とされている。
左右の転がり軸受(6)(7)の外輪(6a)(7a)は、その外径がプーリ(4)の左右端部(4a)(4b)の内径に等しくされて、同部(4a)(4b)に圧入され、内輪(6b)(7b)は、その内径が中空軸(3)の外径に等しくされて、中空軸(3)の左右端部に圧入されている。
各転がり軸受(6)(7)は、片側シール軸受とされており、左の転がり軸受(6)の左端部および右の転がり軸受(7)の右端部には、芯金(8a)(9a)およびこれに保持された弾性シール(8b)(9b)からなる密封シール(8)(9)がそれぞれ配置されている。密封シール(8)(9)は、外輪(6a)(7a)の軸方向外側の端部の内径に設けられた環状溝に芯金(8a)(9a)の外周縁部が圧入されており、弾性シール(8b)(9b)の内周縁部が内輪(6b)(7b)に摺接させられている。プーリユニットの自由端側(図の左端側)には、プーリユニット内部に泥水等の侵入を防止するために、さらに別の密封シール(10)が中空軸(3)の左端部とプーリ(4)の左端部との間に配置されている。
図2に示すように、一方向クラッチのカム面(11)は、軸心を挟んで対向するカムの各面(11a)が周方向に複数組(この実施形態では4組)設けられることによって構成されている。各面(11a)は、ころ(13)の中心および軸心を通る法線に対して直角ではなく、直角よりも若干小さい鋭角とされている。
カムの各面(11a)の楔状空間(12)の広い側の端部には、横断面が円弧状で遠心力を受けたころ(13)を停止させる保持用凹面部(16)が設けられている。
コイルばね(14)は、横断面内に中心軸を有し、長径の方向が一方向クラッチ(5)の軸方向に一致させられた楕円形のものとされている。そして、その短径の長さしたがってばねのころに当接している部分の径方向寸法は、ころ(13)の直径よりも小さくなされている。
保持器(15)は、合成樹脂製で、カム面(11)にほぼ沿った外周形状と中空軸(3)外周面に沿った内周形状を有しており、カム面(11)内に圧入されている。保持器(15)の内径と中空軸(3)の外径との間には若干の間隙が設けられており、保持器(15)と中空軸(3)とが接触することが防止されている。保持器(15)には、コイルばね(14)を位置決めするばね受け凹所(17)が設けられている。ばね受け凹所(17)には、噛み合い性能(特に低温噛み合い性能)に優れたグリース、例えば、基油がエステル系で基油動粘度90mm2/s−40℃以上でありかつ増ちょう剤がウレア系のグリースが封入されている。
ばね受け凹所(17)は、カム面(11)のころ保持用凹面部(16)に連なってプーリ(4)の内周に設けられたばね位置決め面(18)とによってコイルばね(14)の中心軸方向を一定に保っている。コイルばね(14)の中心軸は、コイルばね(14)に遠心力が作用した際にころ(13)に対する付勢力を減少させる方向に変形させられるように、中空軸(3)の外周面の接線方向に対して傾斜させられている。プーリ(4)のばね位置決め面(18)は、カム面(11)と同様に、一方向クラッチ(5)の軸心を挟んで対向して形成された2面が周方向に複数組設けられることによって構成されている。
ばね受け凹所(17)は、コイルばね(14)がばね軸方向へ移動することを阻止するばね端部位置決め面(17a)と、コイルばね(14)がばね軸に直交する内向きに移動することを阻止するばね内側位置決め面(17b)とを有しており、プーリ(4)のばね位置決め面(18)は、コイルばね(14)がばね軸に直交する外向きに移動することを阻止するばね外側位置決め面となっている。これらのばね位置決め面(17a)(17b)(18)によって、コイルばね(14)の中心軸は、ころ(13)の中心軸と直交するように保たれている。
ばね受け凹所(17)のばね内側位置決め面(17b)に連なって、ころ保持用傾斜面(17c)が設けられている。この傾斜面(17c)の他端は、中空軸(3)の外周面に対してわずかに間隙を有するようになされている。プーリ(4)のころ保持面であるころ保持用凹面部(16)と保持器(15)のころ保持面であるころ保持用傾斜面(17c)とによって、噛み込み解除方向に移動したころ(13)を受け止めて保持する横断面略ハの字状のころ保持部が形成されている。
ころ(13)の表面は、算術平均粗さ0.2Ra以下とされており、また、一方向クラッチ(5)の内輪(非カム面)となっている中空軸(3)の中間部の外周面(3a)も、算術平均粗さ0.2Ra以下とされている。そして、一方向クラッチ(5)の外輪(カム面)となっているプーリ(4)の中間部(4c)の内周面の表面粗さは、一方向クラッチ(5)の内輪(非カム面)の表面粗さよりも大きくされている。
図2に二点鎖線で示されているころ(13)は、遠心力が働いていないときの状態を示しており、この状態で中空軸(3)が反時計方向に回転させられると、ころ(13)が中空軸(3)とプーリ(4)との間に噛み込み、中空軸(3)とプーリ(4)とは、一体となって回転する。コイルばね(14)の中心軸がころ(13)の中心軸と直交するように保たれているこにより、ころ(13)の表面および中空軸(3)の外周面が算術平均粗さ0.2Ra以下であっても、噛み込みは確実に行われる。そして、プーリ(4)が高速回転となり、中空軸(3)の回転が停止させられると、ころ(13)に働く遠心力の方向ところ(13)がカムの各面(11a)と接触している点における法線方向とがずれていることにより、ころ(13)にはカムの各面(11a)に沿った方向の力が掛かり、これにより、ころ(13)は、楔状空間(12)の広い側に移動する。移動時には、ころ(13)は、中空軸(3)の外周面に対して滑ることになり、両者は互いに擦れ合う。しかしながら、ころ(13)および中空軸(3)の外周面(3a)の表面粗さが0.2Ra以下とされていることにより、摩耗によって、両者の表面粗さがさらに小さくなることはなく、噛み込み性能が悪化することはない。
ころ(13)が楔状空間(12)の広い側に移動した状態では、プーリ(4)のころ保持面である凹面部(16)がころ(13)の外周面の半径とほぼ同じ半径の横断面円弧状の凹面とされているので、ころ(13)は、図2に実線で示されているように、その外周部分がこの凹面部(16)にちょうど収まり、また、径方向内側からは、保持器(15)のころ保持面である傾斜面(17c)があてがわれるので、ころ(13)が傾くようなことはなく、中空軸(3)外周ところ(13)との間隙が確保され、中空軸(3)ところ(13)との非接触状態が達成される。
図2に示すように、保持器(15)は、左右対称状に形成されており、その外径がプーリ中間部(4c)に圧入されることにより、径方向への移動が阻止されるとともに、その左端面が左の玉軸受(6)の外輪(6a)の右端面に隙間が実質的にない状態で対向することにより、また、その右端面が右の玉軸受(7)の外輪(7a)の左端面に隙間が実質的にない状態で対向することにより、軸方向への移動が阻止されている。保持器(15)の軸方向の長さは、プーリ中間部(4c)の軸方向の長さと同じとされている。
保持器(15)の左右端部に位置する柱には、左右の転がり軸受(6)(7)の内輪(6b)(7b)の内側端面に接触しないように、径方向内方突出部(15a)(15b)が設けられており、この径方向内方突出部(15a)(15b)は、内輪(6b)(7b)の内側端部との間にラビリンスシールを形成している。径方向内方突出部(15a)(15b)は、その軸方向外側の面が柱の本体部分の外側の面よりも内寄りに位置させられており、ラビリンスシールは、この径方向内方突出部(15a)(15b)が内輪(6b)(7b)の内側端面に臨まされることにより得られている。
このプーリユニット(1)を組み立てる際には、例えば、右の転がり軸受(7)、一方向クラッチ(5)、左の転がり軸受(6)の順に圧入されるが、プーリ(4)の内径が段付き状であるので、各転がり軸受(6)(7)の外輪(6a)(7a)は、プーリ(4)の中間部(4c)の両端にある段差部によって、それ以上の移動が阻止され、これにより、保持器(5)の変形および保持器(5)と転がり軸受(6)(7)との干渉が防止される。
この一方向クラッチ付きプーリユニットは、次のように動作する。
まず、始動時においては、スタータモータの回転軸(2)と一体の中空軸(3)が反時計回りに回転させられる。これにより、一方向クラッチ(5)の中空軸(3)が反時計回りに回転し、一方向クラッチ(5)の楔状空間(12)の狭い側にころ(13)が噛み込まれ、駆動力が伝達されて、一方向クラッチ(5)の中空軸(3)とプーリ(4)とが一体となって回転する。プーリ(4)はベルトを介してクランクシャフトに接続されており、プーリ(4)の回転によってエンジンが始動する。エンジンが始動すると、スタータが停止し、プーリ(4)は反時計方向の回転を続ける。これにより、ころ(13)の噛み込みが解除され、プーリ(4)だけが回転する状態が継続される。特にエンジンの高速回転時、ころ(13)は、ころ(13)とほぼ同じ曲率の凹面部(16)によって位置決めされ、中空軸(3)と非接触状態となる。こうして、始動時においては、ころ(噛み込み部材)(13)およびコイルばね(付勢部材)(14)がプーリ(4)と一体となって回転し、その後、プーリ(4)が所定回転速度以上になると、プーリ(4)だけが回転することになり、エンジンの駆動に寄与しない部分が回転することに伴うエネルギロスを抑えることができる。一旦エンジンが始動すると、プーリ(4)だけが回転する空転時間が数十分から数時間続き、この間、各転がり軸受(6)(7)の外輪(6a)(7a)は、高速回転させられる。エンジンが停止すると、ころ(13)は、元の位置に復帰する必要があるが、一方向クラッチ(5)の外輪(カム面)となっているプーリ(4)の中間部(4c)の内周面の表面粗さは、一方向クラッチ(5)の内輪(非カム面)の表面粗さよりも大きくされているので、グリスの介在によりカム面(11)にころ(13)が凝着する力は、グリスの特性や経時変化にそれほど影響を受けることなく、ある値以下に保たれる。したがって、ころ(13)は、コイルばね(14)の付勢力によって、エンジン停止に対して遅れることなく確実に元の位置に復帰する。そして、ころ(13)および中空軸(3)の外周面(3a)の表面粗さが0.2Ra以下とされているので、空転時の油潤滑性(油膜成形性)が向上して、耐久性にも優れており、一方向クラッチ(5)は、同じ性能を長く維持することができる。
なお、上記実施形態においては、一方向クラッチ(5)の外輪がプーリ(4)と一体とされ、同内輪が中空軸(3)と一体とされているが、一方向クラッチ(5)の外輪をプーリ(4)とは別体の部材としてもよく、同内輪を中空軸(3)とは別体の部材としてもよい。また、ころ(13)を付勢する手段として、コイルばね(14)を示したが、コイルばね(14)に代えて板ばね等を用いることも可能である。また、上記においては、プーリ(4)の内周面にカム面(11)が形成された外輪カム式の一方向クラッチ(5)について説明したが、一方向クラッチのころと一方向クラッチの軌道輪のうちのカム面が設けられていない方の軌道輪とを表面粗さ0.2Ra以下として、同じ性能を長く維持した一方向クラッチ付きプーリユニットを得る技術およびカム面が設けられている方の軌道輪の表面粗さをカム面が設けられていない方の軌道輪の表面粗さよりも大きくしてころを噛み込み解除状態から噛み込み状態に確実に復帰させる技術は、一方向クラッチが内輪カム式のもの、すなわち、内輪の外周面に設けられたカム面と、カム面と外輪の内周面とによって形成された楔状空間内に配置され、内輪と外輪とが一の方向に相対回転することにより内輪と外輪との間に噛み込み、他の方向に相対回転したとき噛み込みを解除する複数の噛み込み部材としてのころと、ころを噛み込み方向(楔状空間の狭い側)に付勢する付勢部材としてのコイルばねとを備えているものに対しても適用できる。
(1) 一方向クラッチ付きプーリユニット
(3) 中空軸
(3a) 中空軸外周面(一方向クラッチ非カム面軌道輪)
(4) プーリ
(5) 一方向クラッチ
(6)(7) 転がり軸受
(13) ころ
(3) 中空軸
(3a) 中空軸外周面(一方向クラッチ非カム面軌道輪)
(4) プーリ
(5) 一方向クラッチ
(6)(7) 転がり軸受
(13) ころ
Claims (4)
- 軸とこれの周囲に同心状に配されたプーリとの間に、内輪、外輪、両輪間に配されたころ、ころを噛み込み方向へ付勢する付勢部材およびころを保持する保持器を備えた一方向クラッチにおいて、
ころとカム面が設けられていない方の軌道輪とが、表面粗さ0.2Ra以下とされていることを特徴とする一方向クラッチ。 - カム面が設けられている方の軌道輪の表面粗さは、カム面が設けられていない方の軌道輪の表面粗さよりも大きくされている請求項1の一方向クラッチ。
- 軸とこれの周囲に同心状に配されたプーリとの間に、内輪、外輪、両輪間に配されたころ、ころを噛み込み方向へ付勢する付勢部材およびころを保持する保持器を備えた一方向クラッチにおいて、
カム面が設けられている方の軌道輪の表面粗さは、カム面が設けられていない方の軌道輪の表面粗さよりも大きくされていることを特徴とする一方向クラッチ。 - 請求項1、2または3の一方向クラッチと、一方向クラッチの軸方向少なくとも一側に設けられた転がり軸受とを備えている一方向クラッチ付きプーリユニット。
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ID=35082936
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2004072108A Withdrawn JP2005257021A (ja) | 2004-03-15 | 2004-03-15 | 一方向クラッチおよび一方向クラッチ付きプーリユニット |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005257021A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007170492A (ja) * | 2005-12-20 | 2007-07-05 | Nsk Ltd | 一方向クラッチ及び一方向クラッチ内蔵型プーリ装置 |
JP2007177919A (ja) * | 2005-12-28 | 2007-07-12 | Ntn Corp | トリポード型等速自在継手及びその製造方法 |
JP2008309222A (ja) * | 2007-06-13 | 2008-12-25 | Ntn Corp | 逆入力防止クラッチ |
-
2004
- 2004-03-15 JP JP2004072108A patent/JP2005257021A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007170492A (ja) * | 2005-12-20 | 2007-07-05 | Nsk Ltd | 一方向クラッチ及び一方向クラッチ内蔵型プーリ装置 |
JP2007177919A (ja) * | 2005-12-28 | 2007-07-12 | Ntn Corp | トリポード型等速自在継手及びその製造方法 |
JP2008309222A (ja) * | 2007-06-13 | 2008-12-25 | Ntn Corp | 逆入力防止クラッチ |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20070605 |