JP2006342155A - バナジウム錯体 - Google Patents

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Abstract

【課題】不斉誘導反応に有用な新規なバナジウム錯体を提供する。
【解決手段】一般式(I)で表される化合物とバナジウム単体またはバナジウム化合物からなる錯体。
Figure 2006342155

(式中、R1およびR2は炭化水素基を表し、R3およびR4は水素原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ホスフィノ基、炭化水素基、炭化水素オキシ基、炭化水素メルカプト基、炭化水素アミノ基、または炭化水素ホスフィノ基を表し、R5およびR6は水素原子または炭化水素基を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は新規なバナジウム錯体に関する。
バナジウム錯体は、酸化反応、還元反応、有機金属反応などの反応試剤または触媒として用いられる(非特許文献1)。不斉炭素原子を有する化合物を配位子とする特定のバナジウム錯体は、酸化カップリング触媒として不斉誘導できることが知られている(非特許文献2)。
Chem. Rev. 97, 2707〜2724頁(1997) Org. Lett. 3, 869〜872頁(2001)
本発明の目的は、不斉誘導反応に有用な新規なバナジウム錯体を提供することにある。
即ち、本発明は、
(1)一般式(I)で表される化合物とバナジウム単体またはバナジウム化合物とからなる錯体
Figure 2006342155
(式中、R1およびR2は置換されてもよい炭化水素基を表し、R1およびR2のいずれか一方は少なくとも1個の不斉炭素原子を有する基であり、R1およびR2は同一でも異なっていてもよい。R3およびR4は水素原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ホスフィノ基、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい炭化水素オキシ基、置換されてもよい炭化水素メルカプト基、置換されてもよい炭化水素アミノ基及び置換されてもよい炭化水素ホスフィノ基から選ばれ、R3およびR4は互いに同一でも異なっていてもよい。R5およびR6は水素原子または置換されてもよい炭化水素基を表し、R5およびR6は互いに同一でも異なっていてもよい。R1とR3、R2とR4、R3とR5、R4とR6及び/又はR5とR6とは一緒になって環を形成してもよい。)、
(2)一般式(I)で表される化合物が一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする(1)の錯体及び、
Figure 2006342155
(式中、R11およびR12は置換されてもよい炭化水素基を表し、R11およびR12は同一でも異なっていてもよい。R13およびR14は水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を表し、R13およびR14は同一でも異なっていてもよい。X1およびX2は酸素原子または硫黄原子であり、X1およびX2は同一でも異なっていてもよい。)
(3)不斉誘導反応用である前記(1)の錯体を提供するものである。
本発明で反応試剤とは、反応基質に対して反応当量的に働く反応原料(反応中間体)をいう。
本発明のバナジウム錯体は、不斉誘導反応の試剤または触媒としての作用を有する。
本発明のバナジウム錯体は、一般式(I)で表される化合物とバナジウム単体またはバナジウム化合物から構成される錯体である。本発明のバナジウム錯体は、前記の一般式(I)で表される化合物がバナジウム単体またはバナジウム化合物のバナジウム原子に配位してなる。
上記一般式(I)において、R1およびR2は置換されてもよい炭化水素基を表し、R1およびR2のいずれか一方は少なくとも1個の不斉炭素原子を有し、R1およびR2は同一でも異なっていてもよい。
上記一般式(I)のR1またはR2における炭化水素基の好ましいものとして、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素数1〜50程度(より好ましくは炭素数1〜30程度、さらに好ましくは炭素数1〜20程度、特に好ましくは炭素数1〜10程度)のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基、アダマンチル基等の炭素数3〜50程度(より好ましくは炭素数3〜30程度、さらに好ましくは炭素数3〜20程度、特に好ましくは炭素数3〜10程度)の環状飽和炭化水素基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の炭素数2〜50程度(より好ましくは炭素数2〜30程度、さらに好ましくは炭素数2〜20程度、特に好ましくは炭素数2〜10程度)のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基等の炭素数6〜50程度のアリール基(より好ましくは炭素数6〜30程度、さらに好ましくは炭素数6〜20程度、特に好ましくは炭素数6〜12程度);フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、1−フェニル−3−プロピル基、1−フェニル−4−ブチル基、1−フェニル−5−ペンチル基、1−フェニル−6−ヘキシル基等の炭素数7〜50程度(より好ましくは炭素数7〜30程度、さらに好ましくは炭素数7〜20程度、特に好ましくは炭素数7〜12程度)のアラルキル基が挙げられる。
上記一般式(I)のR1またはR2が置換された炭化水素基の場合、置換されていてもよい基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ホスフィノ基、置換されてもよい炭化水素オキシ基、置換されてもよい炭化水素メルカプト基、置換されてもよい炭化水素アミノ基、置換されてもよい炭化水素ホスフィノ基が挙げられる。ここで炭化水素基の具体例は上記R1について挙げたものが例示される。
上記のハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子であり、さらに好ましくはフッ素原子である。
上記の炭化水素オキシ基(ヒドロカルビルオキシ基)、炭化水素メルカプト基(ヒドロカルビルメルカプト基)とはそれぞれ、水酸基、メルカプト基に上記の炭化水素基が置換された基である。
上記の炭化水素アミノ基(ヒドロカルビルアミノ基)、炭化水素ホスフィノ基(ヒドロカルビルホスフィノ基)とはそれぞれ、アミノ基、ホスフィノ基に上記の炭化水素基が一つまたは二つ置換された基である。
上記一般式(I)のR1またはR2が置換された炭化水素基の場合、置換されていてもよい基として、好ましいのはハロゲン原子、置換されてもよい炭化水素オキシ基、置換されてもよい炭化水素メルカプト基、置換されてもよい炭化水素アミノ基、置換されてもよい炭化水素ホスフィノ基であり、より好ましくはハロゲン原子、置換されてもよい炭化水素オキシ基、置換されてもよい炭化水素アミノ基であり、さらに好ましくはハロゲン原子、置換されてもよい炭化水素オキシ基である。
上記一般式(I)のR1またはR2における不斉炭素原子をもつ、置換されてもよい炭化水素基として、下記一般式(II)で表される置換されてもよい炭化水素基が挙げられる。
Figure 2006342155
(式中、R7〜R9は水素原子または置換されてもよい炭化水素基を表し、R10は置換されてもよい二価の炭化水素基または直接結合を表し、R7〜R10から選ばれる任意の二つが結合して環を形成してもよいが、その環の数は三つ以下であり、また、一般式(II)の基の結合手に−N=CH2を結合させて得られる化合物は回映対称(化学辞典第1版、(株)東京化学同人、241頁参照)をもたない。)
上記一般式(II)のR7〜R9で表される炭化水素基は前記の一般式(I)のそれと同じであり、置換してもよい基も前記のそれと同じである。
上記一般式(II)のR7〜R9として、好ましくは水素原子、炭素原子数1〜15の炭化水素基から選ばれる互いに異なる基であり、より好ましくは水素原子、炭素原子数1〜12の炭化水素基から選ばれる互いに異なる基であり、さらに好ましくは水素原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基から選ばれる互いに異なる基である。
上記一般式(II)のR10で表される二価の炭化水素基の好ましい具体例として、メチレン基、1,1−エチレン基、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,2−ブチレン基、1,2−ペンチレン基、1,2−へキシレン基、1,2−ノニレン基、1,2−ドデシレン基等の炭素数1〜20のアルキレン基;1,2−シクロプロピレン基、1,2−シクロブチレン基、1,3−シクロブチレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,2−シクロへキシレン基、1,2−シクロノニレン基、1,2−シクロドデシレン等の炭素数3〜20のシクロアルキレン基;1,1−エテニレン基、1,2−エテニレン基、1,2−エテニレンメチレン基、1−メチルー1,2−エテニレン基、1,2−エテニレンー1,1−エチレン基、1,2−エテニレンー1,2−エチレン基、1,2−エテニレンー1,2−プロピレン基、1,2−エテニレンー1,3−プロピレン基、1,2−エテニレンー1,4−ブチレン基、1,2−エテニレンー1,2−ブチレン基、1,2−エテニレンー1,2−ヘプチレン基、1,2−エテニレンー1,2−デシレン基等の炭素数2〜20のアルケニレン基;エチニレン基、エチニレンメチレン基、エチニレンー1,1−エチレン基、エチニレンー1,2−エチレン基、エチニレンー1,2−プロピレン基、エチニレンー1,3−プロピレン基、エチニレンー1,4−ブチレン基、エチニレンー1,2−ブチレン基、エチニレンー1,2−ヘプチレン基、エチニレンー1,2−デシレン基等の炭素数2〜20のアルキニレン基;1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,2−ナフチレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,3−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、3−フェニルー1,2−フェニレン基、2,2’−ジフェニレン基等の炭素数6〜20のアリーレン基;1,2−フェニレンメチレン基、1,3−フェニレンメチレン基、1,4−フェニレンメチレン基、1,2−フェニレンー1,1−エチレン基、1,2−フェニレンー1,2−エチレン基、1,2−フェニレンー1,2−プロピレン基、1,2−フェニレンー1,3−プロピレン基、1,2−フェニレンー1,4−ブチレン基、1,2−フェニレンー1,2−ブチレン基、1,2−フェニレンー1,2−ヘキシレン基、メチレン―1,2−フェニレンメチレン基、メチレン―1,3−フェニレンメチレン基、メチレン―1,4−フェニレンメチレン基等の炭素数7〜20のアリーレン基とアルキレン基からなる二価の炭化水素基があげられる。好ましくは炭素原子数2〜20のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基およびアリーレン基とアリーレンアルキレン基からなる二価の炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数2〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基およびアリーレン基とアルキレン基からなる二価の炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素原子数2〜8のアルキレン基、シクロアルキレン基およびアリーレン基とアルキレン基からなる二価の炭化水素基である。二価の炭化水素基としては、炭素数1〜20の二価の炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜15の二価の炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1〜10の二価の炭化水素基である。
上記一般式(II)のR10で表される二価の炭化水素基における置換してもよい基は、上記一般式(I)のR1の炭化水素基におけるそれと同じである。
上記一般式(II)のR10としては、好ましくは炭素原子数1〜10のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アリーレンアルキレン基および直接結合であり、より好ましくは炭素原子数1〜4のアルキレン基および直接結合であり、さらに好ましくは直接結合である。
上記一般式(I)のRおよびRは、上記一般式(II)で表される置換されてもよい炭化水素基であることが好ましく、この置換されてもよい炭化水素基が光学活性であることがより好ましい。
上記一般式(I)のR3およびR4は、水素原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ホスフィノ基、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい炭化水素オキシ基、置換されてもよい炭化水素メルカプト基、置換されてもよい炭化水素アミノ基、置換されてもよい炭化水素ホスフィノ基であり、R3およびR4は互いに同一でも異なっていてもよい。
上記の炭化水素基、炭化水素オキシ基、炭化水素メルカプト基、炭化水素アミノ基、炭化水素ホスフィノ基前記のR1についてのそれらと同じであり、置換してもよい基は上記一般式(I)のR1の炭化水素基のおけるそれと同じである。
上記一般式(I)のR3およびR4として、好ましくは水素原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい炭化水素オキシ基、置換されてもよい炭化水素メルカプト基、置換されてもよい炭化水素アミノ基であり、より好ましくは水素原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい炭化水素アミノ基でありさらに好ましくは水素原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基である。
上記一般式(I)のR5およびR6は水素原子または置換されてもよい炭化水素基であり、RおよびR6は互いに同一でも異なっていてもよい。
上記一般式(I)のR5およびR6における炭化水素基は前記のR1についてのそれと同じであり、置換してもよい基は上記一般式(I)のR1の炭化水素基のおけるそれと同じである。
上記一般式(I)のR5およびR6は、好ましくは水素原子、炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、より好ましくは水素原子、炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、さらに好ましくは水素原子、メチル基である。
上記一般式(I)において、R1とR3、R2とR4、R3とR5、R4とR6及び/又はR5とR6は一緒に結合して環を形成してもよい。R1とR3、R2とR4及び/又はR5とR6から環を形成することが好ましく、R1とR3及び/又はR2とR4から環を形成することがより好ましく、R1とR3及びR2とR4から環を形成することがさらに好ましい。
本発明に置いて、一般式(I)で表される化合物としては前記一般式(III)で表される化合物が好ましい。
前記一般式(III)のR11およびR12は置換されてもよい炭化水素基であり、R11およびR12は同一でも異なっていてもよい。
前記一般式(III)のR11およびR12における炭化水素基の具体例は前記と同じであり、置換してもよい基は上記一般式(I)のR1の炭化水素基のおけるそれと同じである。
前記一般式(III)のR11およびR12として、好ましくは炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数1〜9の炭化水素基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、フェニル基である。
前記一般式(III)のR13およびR14は前記のR5およびR6と同じであり、具体例、好ましい例も同じである。
前記一般式(I)のX1およびX2は酸素原子または硫黄原子であり、X1およびX2は同一でも異なっていてもよい。
上記一般式(III)のX1およびX2としては、両方がともに酸素原子または硫黄原子であることが好ましく、両方が酸素原子であることがより好ましい。
本発明に置いて、一般式(I)で表される化合物としては一般式(IIIa)および(IIIb)で表される化合物がより好ましい。
Figure 2006342155
一般式(I)で表される化合物の合成法に特に限定はないが、下記式(1)のスキームで示される方法で合成される。好ましくは、下記式(2)のスキームで示される方法で、一般式(III)の化合物におけるX及びXの両方が酸素原子である一般式(III’)の化合物を合成すること、ならびに下記式(3)のスキームで示される方法で、一般式(III)の化合物におけるX及びXの両方が硫黄原子である一般式(III’’)の化合物を合成することが好ましい。
Figure 2006342155
Figure 2006342155
Figure 2006342155
上記式(1)のスキームによる一般式(I)の化合物の合成反応は、一般式(X)の化合物と一般式(XI)の化合物とを実質的にモル比1:2で反応させて行わせることができる。
上記式(2)のスキームによる一般式(III’)の化合物の合成反応は次の通りである(Tetrahed. Asymm. 1998,9,1〜45頁及びAcc. Chem. Res. 1993,26,339〜345頁参照)。まず一般式(XII)の化合物と一般式(XIIIa)及び(XIIIb)の化合物とを、それぞれ実質的にモル比1:1で、トリエチルアミンのような塩基存在下で反応させて(XIV)の化合物を得る。次に(XIV)の化合物を過剰の塩化チオニルのような塩素化剤と反応させて水酸基をクロロ化した後、過剰の水酸化ナトリウムのような塩基と反応させることで(III’)の化合物を合成できる。
上記式(3)のスキームによる一般式(III’’)の化合物の合成反応は次の通りである(Tetrahed. Asymm. 2001,12,2851〜2859頁参照)。まず(XV)の化合物を(XIIIa)の化合物と反応させ、環化により(XVI)の化合物を得る。次に(XVI)の化合物を(XVII)の化合物に変換した後、(XIIIb)の化合物と反応させ、環化により(III’’)の化合物を合成できる。
これらにおいて、一般式(XIIIa)及び(XIIIb)の化合物において所望の光学活性体を選択することにより、光学活性な一般式(IIIa)又は(IIIb)の化合物が得られる。
本発明のバナジウム錯体とは、上記一般式(I)で表される化合物とバナジウム単体またはバナジウム化合物から形成される錯体である。この錯体の構造は、両者の組合せにより異なり、特に限定されないが、次式構造(Ia)を含むと推定される。
Figure 2006342155
一般式(III)(又は(IIIa)もしくは(IIIb))で表される化合物の場合も本発明の錯体は上記式(Ia)の化合物と同様に、その化合物の窒素原子でバナジウム単体またはバナジウム化合物に配位した化合物である。本発明の錯体は、反応に用いる場合、前もって形成しても、反応系中でその場で形成してもよい。
本発明のバナジウム成分としては、バナジウム単体またはバナジウム化合物であるが、バナジウム化合物が好ましい。ここでいうバナジウム化合物とは0〜5価のバナジウムを含む化合物であり、好ましくは3〜5価のバナジウムを含む化合物であり、より好ましくはバナジウム(III)化合物、バナジウム(IV)化合物、オキソバナジウム(IV)化合物、オキソバナジウム(V)化合物であり、さらに好ましくはオキソバナジウム(IV)化合物、オキソバナジウム(V)化合物である。
上記バナジウム化合物は、電気的に中性となるようにカウンターアニオンを有する場合がある。該カウンターアニオンとしては、通常ブレンステッド酸の共役塩基が使用される。例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボーレートイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、水酸化物イオン、酸化物イオン、メトキサイドイオン、エトキサイドイオン等が挙げられる。好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、水酸化物イオンまたはメトキサイドイオンであり、さらに好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオンまたは硝酸イオンである。
上記バナジウム化合物として、バナジウムおよびカウンターアニオン以外にも、上記一般式(I)で表される化合物との錯体形成を阻害しない範囲で、その他の配位子化合物を含んでも良い。該配位子化合物としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、アンモニア、水、硫化水素、炭酸、リン酸、亜リン酸、シアン化水素、シアン酸、チオシアン酸、イソチオシアン酸、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、フェノール、カテコール、メタンチオール、エタンチオール、ベンゼンチオール、1,2-ベンゼンジチオール、1,2-エタンジチオール、2-メルカプトエタノール、エチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ピリジン、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、トリフルオロ酢酸、アセチルアセトン、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン、グリシン、イミノ二酢酸、8-ヒドロキノリン、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどの中性分子、および該中性分子からプロトンを一つまたはそれ以上取り去って得られる陰イオンなどが挙げられる。アンモニア、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ピリジン、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、トリフルオロ酢酸、アセチルアセトン、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどの中性分子、および該中性分子からプロトンを一つまたはそれ以上取り去って得られる陰イオンが好ましい。
本発明のバナジウム錯体を形成させるには、上記一般式(I)で表される化合物と上記のバナジウム単体またはバナジウム化合物を混合させる。この場合上記一般式(I)で表される化合物(モル数)/上記のバナジウム単体またはバナジウム化合物(バナジウム原子としてのモル数)の混合比としては、0.001〜1000が好ましく、0.01〜100がより好ましく、0.1〜10がさらに好ましく、0.5〜2が特に好ましい。
本発明のバナジウム錯体を形成させる際に、溶媒中で混合させることが好ましい。該溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、シクロヘキサン等の鎖状および環状の脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類;水が挙げられ、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素、ニトリル類、アルコール類、エーテル類、ニトロ化合物類または水が好ましい。これらの溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。該溶媒は、上記のバナジウム単体またはバナジウム化合物の濃度が、通常0.0001〜10モル/Lとなるように使用し、好ましくは0.001〜1モル/Lとなるように使用する。
本発明のバナジウム錯体を形成させる際の温度としては通常、−100〜200℃であり、0〜100℃が好ましい。
本発明のバナジウム錯体は、非特許文献1に記載されるような酸化反応、還元反応、有機金属反応や、非特許文献2に記載されるような酸化重合反応などにおいて、不斉誘導可能な反応試剤または触媒として用いることができる。
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
三方コック付き反応管(シュレンクチューブ)中で、下記構造(IV)で表される化合物(Tetrahed. Asymm. 1998,9,1〜45頁及びAcc. Chem. Res. 1993,26,339〜345頁参照)0.125mmolと硫酸オキソバナジウム(IV)水和物0.125mmolを塩化メチレン/メタノール(体積比7/1)3.7mLに溶解させ、酸素雰囲気下で30分攪拌し、バナジウム錯体を形成させた。
Figure 2006342155
これに2,3−ジヒドロキシナフタレン1.25mmolを加えて、酸素雰囲気下、室温で24時間攪拌した。反応終了後、溶媒を留去し窒素雰囲気とした後、塩化メチレン5mL、および過剰の塩化アセチルとピリジンを加え、12時間攪拌した。反応化合物に、大過剰のメタノールを加えて、沈殿を遠心分離・洗浄・乾燥して、重合体を得た。得られた重合体は、ポリ(2,3−ジアセトキシ−1,4−ナフチレン)であった。反応式を以下に示して、結果を後記表1に示した。
Figure 2006342155
実施例2
三方コック付き反応管(シュレンクチューブ)中で、下記構造(V)で表される化合物(Tetrahed. Asymm. 1998,9,1〜45頁及びAcc. Chem. Res. 1993,26,339〜345頁参照)0.125mmolと硫酸オキソバナジウム(IV)水和物0.125mmolを塩化メチレン/メタノール(体積比7/1)3.7mLに溶解させ、酸素雰囲気下で30分攪拌し、バナジウム錯体を形成させた。
Figure 2006342155
反応時間を48時間にした以外は実施例1と同様にして、2,3−ジヒドロキシナフタレンの重合体ポリ(2,3−ジアセトキシ−1,4−ナフチレン)を得た。結果を表1に示す。
比較例1
三方コック付き反応管(シュレンクチューブ)中で、下記構造(VI)で表されるバナジウム錯体(前記非特許文献2に記載の化合物)0.125mmolと2,3−ジヒドロキシナフタレン1.25mmolをテトラヒドロフラン3.7mLに溶解させ、酸素雰囲気下、室温で120時間攪拌した。反応終了後、溶媒を留去し窒素雰囲気とした後、塩化メチレン5mL、および過剰の塩化アセチルとピリジンを加え、12時間攪拌した。さらに、大過剰のメタノールを加えて、沈殿を遠心分離・洗浄・乾燥して、重合体ポリ(2,3−ジアセトキシ−1,4−ナフチレン)を得た。結果を表1に示す。
Figure 2006342155
下記表1に示した実施例1および2と比較例1により得られた重合体の試験結果によれば、本発明のバナジウム錯体は2,3−ジヒドロキシナフタレンの酸化重合において高い不斉選択性を発現することが分かる。すなわち、一つの芳香環に水酸基を2つもち、しかも高い光学活性を有する新規な芳香族重合体を製造することができる。このような重合体は主鎖に水酸基を多くもつため、金属イオンの補捉、生体物質の認識、機能性官能基への変換等が可能で、これらの機能を利用するとともに、さらに高い光学活性により、光学変換や光学スイッチ等に応用できる。
Figure 2006342155
実施例1、2では一般式(I)において、R、Rがメチル基又は水素原子の例を示したが、R、Rがメチル基以外の炭素原子数の大きい炭化水素基も、バナジウム錯体として上記の重合反応において同様の不斉選択性を発現する。その理由は、まだ定かではないが、R、Rはバナジウム配位サイトから十分に離れていることが考えられる。

Claims (6)

  1. 一般式(I)で表される化合物とバナジウム単体またはバナジウム化合物とからなる錯体。
    Figure 2006342155
    (式中、R1およびR2は置換されてもよい炭化水素基を表し、R1およびR2のいずれか一方は少なくとも1個の不斉炭素原子を有する基であり、R1およびR2は同一でも異なっていてもよい。R3およびR4は水素原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ホスフィノ基、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい炭化水素オキシ基、置換されてもよい炭化水素メルカプト基、置換されてもよい炭化水素アミノ基、または置換されてもよい炭化水素ホスフィノ基を表し、R3およびR4は同一でも異なっていてもよい。R5およびR6は水素原子または置換されてもよい炭化水素基を表し、R5およびR6は同一でも異なっていてもよい。R1とR3、R2とR4、R3とR5、R4とR6及び/又はR5とR6は一緒になって環を形成してもよい。)
  2. 一般式(I)で表される化合物が一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする請求項1の錯体。
    Figure 2006342155
    (式中、R11およびR12は置換されてもよい炭化水素基を表し、R11およびR12は同一でも異なっていてもよい。R13およびR14は水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を表し、R13およびR14は同一でも異なっていてもよい。X1およびX2は酸素原子または硫黄原子であり、X1およびX2は同一でも異なっていてもよい。)
  3. 一般式(I)で表される化合物が一般式(IIIa)または(IIIb)で表される化合物であることを特徴とする請求項1の錯体。
    Figure 2006342155
    (式中、R11〜R14、XおよびXは前記と同じ意味を持つ。)
  4. 請求項1〜3のいずれか1項の錯体を含む不斉誘導反応用反応試剤。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項の錯体を含む不斉誘導反応用触媒。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項の錯体の不斉誘導反応用反応試剤または触媒としての使用。
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