JP6386888B2 - 錯体化合物 - Google Patents

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本発明は、錯体化合物に関し、より詳しくは有機合成反応の触媒、特に触媒能と界面活性能の両方の機能を有する界面活性剤型触媒として利用することができる錯体化合物に関する。
クロスカップリング反応は、2種類の有機物を選択的に結合させる反応であり、特に異種芳香族化合物を連結して非対称ビアリール類を合成する反応として重要である。ビアリールやスチリル誘導体などのπ共役系分子は、電子材料などの機能性化学品のみならず医農薬の部分構造にも含まれることから、これらを効率的に合成できるクロスカップリング反応は、産業上、重要な役割を担っている。クロスカップリング反応は、2種類の基質と共に、触媒となる遷移金属、反応を制御する有機配位子、触媒や基質を活性化する塩基や水など、複数の化学種を溶媒中で共存させることにより進行する。従って、反応後には、生成物の他に多くの副生成物が生じ、これらを完全に除去することが困難であるため、生成物に残存した不純物が性能の低下や環境問題を引き起こす場合がある。特に、使用する多量の有機溶媒が、クロスカップリング反応の全廃棄物量のうち80%近くを占めることが指摘されており(非特許文献1参照)、いかにクロスカップリング反応における有機溶媒の使用量を削減するかが大きな課題として挙げられる。
水は地球上に豊富に存在し、人体や環境にも優しく、炭素を含まない溶媒であるため、グリーン・サステイナブルケミストリー(GSC)に資する溶媒である。また、pHの制御が容易であるといった有機溶媒とは異なる性質を示すのみならず、水の作用により遷移金属触媒反応の活性が向上することも期待できる。
近年、気/水界面あるいは、水/有機溶媒界面において、化学反応が著しく促進される現象が見いだされている(非特許文献2参照)。従って、水をクロスカップリング反応の溶媒として用いることで、有機溶媒の使用量を大幅に削減できるのみならず、水界面の特性を利用することにより、既存の有機溶媒中での反応を上回る触媒活性を達成できる可能性がある。しかしながら、水界面における反応の加速効果を界面化学的に理解し、これを触媒設計に反映させた例は知られていない。
含窒素複素環式カルベン(NHC)は、二つの隣接する窒素原子との共役構造と窒素原子の誘起効果により安定化されたカルベンであり、遷移金属や典型金属など様々な金属と安定な錯体を形成する(特許文献1、2参照)。NHCはホスフィンなどの配位子と比べて、熱安定性に優れ、低毒性、酸素や水で失活しないなどの利点を有しており、かつノニオン性界面活性剤を併用することで水中でも使用できることが見いだされている(特許文献3及び非特許文献3参照)。しかし、この場合、反応後に界面活性剤を除去することが容易でなく触媒の回収も効率的に行うことは出来ない。また、触媒反応には関与しない界面活性剤を、反応系中に多量加えることにより廃棄物量が増大してしまうので、さらなる改良の余地が残されていると考えられる。その他の例として、NHCにポリエチレングリコール(PEG)を導入して配位子を水溶性にし、完全水中でクロスカップリング反応を行う方法も報告されている(非特許文献4参照)。
特表2013−542219号公報 特表2010−531216号公報 米国特許出願公開第2011/0130562号明細書
B. H. Lipshutz et al. Angew. Chem. Int. Ed., Vol.52, 10952-10958 (2013) K. B. Sharpless et al. Angew. Chem. Int. Ed., Vol. 44, 3275-3279 (2005) B. H. Lipshutz et al. Org. Lett., Vol. 10, 1333-1336 (2008) C. Liu et al. Green Chem., Vol. 14, 592-597 (2012)
非特許文献4に記載されているようなクロスカップリング反応は、触媒回収が困難であることや不純物の残存等の課題が依然として残っていると言える。
本発明は、例えば有機合成反応の触媒として利用することができる新規な錯体化合物、特に触媒能に加えて界面活性能を発揮する界面活性剤型触媒として利用することができる錯体化合物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有する含窒素複素環式カルベン配位子を含む錯体化合物が、優れた触媒活性を示すことを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びルテニウム(Ru)からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子を中心金属とする錯体化合物であって、
下記式(A)で表される含窒素複素環式カルベン配位子を含むことを特徴とする、錯体化合物。

(式(A)中、Rは窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基を、Rは重合数2〜20のポリオキシアルキレン基及び/又はポリグリセリル基を有する炭素数6〜70の炭化水素基、又はスルホン酸基、カルボキシル基、アンモニウム基、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を有する炭素数2〜20の炭化水素基を、Rは炭素数2〜20の炭化水素基を表す。)
<2> <1>に記載の錯体化合物を含む有機合成反応用の触媒組成物。
<3> クロスカップリング反応用である、<2>に記載の触媒組成物。
<4> 水溶媒中で有機合成反応を行う界面活性剤型触媒である、<2>又は<3>に記載の触媒組成物。
<5> 下記式(A’)又は(A”)で表される含窒素複素環カチオンを含む界面活性剤組成物。

(式(A’)及び(A”)中、Rは窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基を、Rは重合数2〜20のポリオキシアルキレン基及び/又はポリグリセリル基を有する炭素数6〜70の炭化水素基、又はスルホン酸基、カルボキシル基、アンモニウム基、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を有する炭素数2〜20の炭化水素基を、Rは炭素数2〜20の炭化水素基を表す。)<6> クロスカップリング反応を行う反応工程を含む炭素−炭素結合又は炭素−窒素結合の生成方法であって、
前記反応工程が、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びルテニウム(Ru)からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子、並びに下記式(A’)又は(A”)で表される含窒素複素環カチオンの存在下で行われる工程であることを特徴とする、炭素−炭素結合又は炭素−窒素結合の生成方法。

(式(A’)及び(A”)中、Rは窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基を、Rは重合数2〜20のポリオキシアルキレン基及び/又はポリグリセリル基を有する炭素数6〜70の炭化水素基、又はスルホン酸基、カルボキシル基、アンモニウム基、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を有する炭素数2〜20の炭化水素基を、Rは炭素数2〜20の炭化水素基を表す。)<7> 前記クロスカップリング反応が、溝呂木・ヘック反応、鈴木・宮浦カップリング反応、根岸カップリング反応、右田・小杉・スティルカップリング反応、薗頭カップリング反応、熊田・玉尾・コリューカップリング反応、ブッフバルト・ハートウィッグ反応、藤原・守谷反応、又は檜山クロスカップリングである、<6>に記載の炭素−炭素結合又は炭素−窒素結合の生成方法。
<8> 前記反応工程が、水溶媒中でクロスカップリング反応を行う工程である、<6>又は<7>に記載の炭素−炭素結合又は炭素−窒素結合の生成方法。
<9> クロスカップリング反応を行う反応工程を含む不飽和炭化水素化合物の製造方法であって、
前記反応工程が、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びルテニウム(Ru)からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子、並びに下記式(A’)又は(A”)で表される含窒素複素環カチオンの存在下で行われる工程であることを特徴とする、不飽和炭化水素化合物の製造方法。

(式(A’)及び(A”)中、Rは窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基を、Rは重合数2〜20のポリオキシアルキレン基及び/又はポリグリセリル基を有する炭素数6〜70の炭化水素基、又はスルホン酸基、カルボキシル基、アンモニウム基、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を有する炭素数2〜20の炭化水素基を、Rは炭素数2〜20の炭化水素基を表す。)<10> 前記クロスカップリング反応が、溝呂木・ヘック反応、鈴木・宮浦カップリング反応、根岸カップリング反応、右田・小杉・スティルカップリング反応、薗頭カップリング反応、熊田・玉尾・コリューカップリング反応、ブッフバルト・ハートウィッグ反応、藤原・守谷反応、又は檜山クロスカップリングである、<9>に記載の不飽和炭化水素化合物の製造方法。
<11> 前記反応工程が、水溶媒中でクロスカップリング反応を行う工程である、<9>又は<10>に記載の不飽和炭化水素化合物の製造方法。
本発明によれば、有機合成反応の触媒、特に触媒能に加えて界面活性能を発揮する界面活性剤型触媒を提供することができる。
実施例1〜4の含窒素複素環カチオン水溶液の各濃度における表面張力の測定結果である。 実施例6のパラジウム(Pd)錯体化合物水溶液の各濃度における表面張力の測定結果である。 実施例10及び実施例11の反応前の溶液の状態を表した写真である(図面代用写真)。 本発明の錯体化合物の存在下でのクロスカップリング反応の前後を表した写真である(図面代用写真)。 溝呂木・ヘック反応(条件別)の転化率の経時変化を示したグラフである。
本発明を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
<錯体化合物>
本発明の一態様である錯体化合物(以下、「本発明の錯体化合物」と略す場合がある。)は、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びルテニウム(Ru)からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子を中心金属とする錯体化合物であり、下記式(A)で表される含窒素複素環式カルベン配位子(以下、「含窒素複素環式カルベン」と略す場合がある。)を含むことを特徴とする。

(式(A)中、Rは窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基を、Rは重合数2〜20のポリオキシアルキレン基及び/又はポリグリセリル基を有する炭素数6〜70の炭化水素基、又はスルホン酸基、カルボキシル基、アンモニウム基、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を有する炭素数2〜20の炭化水素基を、Rは炭素数2〜20の炭化水素基を表す。)
本発明者らは、有機合成反応の触媒として利用することができる新規な錯体化合物、特に触媒能に加えて界面活性能を発揮する界面活性剤型触媒として利用することができる錯体化合物を求めて検討を重ねた結果、含窒素複素環式カルベン(「N−ヘテロ環状カルベン」、「N−Heterocyclic Carbene」、「NHC」とも呼ばれる。)構造に親水基と親油基の両方を導入した化合物が、非常に有用な配位子として働くことを見出したのである。
含窒素複素環式カルベンは、窒素−炭素−窒素間に共役した電子対を有しており、この電子対が錯体化合物の中心金属に対して強力に結合することによって、錯体化合物がクロスカップリング反応等の有機合成反応において優れた触媒活性を示すのである(錯体化合物における含窒素複素環式カルベン配位子の寄与が大きいため、触媒活性はその他の配位子に影響されにくい。)。
また、本発明の錯体化合物は、親水基と親油基の両方を有するために界面活性能を発揮し、いわゆる界面活性剤型触媒として利用することもできるのである。例えば、含窒素複素環式カルベンの具体例として下記式で表されるものが挙げられるが、この化合物は、イミダゾール構造の2つの窒素原子の一方に親水基として作用するポリオキシエチレン鎖が、もう一方に親油基として作用するアルキル鎖が結合した構造を有している。

即ち、本発明の錯体化合物は、親水性と親油性の双方の化合物を溶媒中に均一に分散させることができるとともに、回収が容易であるため、再度触媒等として利用することができるのである。また、水溶媒中でミセルを形成して、界面等で様々な有機合成反応を行うことができるため、有機溶媒等の廃棄物を大幅に低減できるほか、触媒活性点となる中心金属をミセル界面に集積させて、反応効率を向上させることもできるのである。
含窒素複素環式カルベンは、下記式(A)で表されるものであるが、具体的な構造は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
(式(A)中、Rは窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基を、Rは重合数2〜20のポリオキシアルキレン基及び/又はポリグリセリル基を有する炭素数6〜70の炭化水素基、又はスルホン酸基、カルボキシル基、アンモニウム基、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を有する炭素数2〜20の炭化水素基を、Rは炭素数2〜20の炭化水素基を表す。)
式(A)におけるRは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表しているが、「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」とは、アルコキシ基(−OR)、フルオロ基(−F)等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又はハロゲン原子を含む官能基を含んでいてもよいことを意味するほか、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−C(=O)−)、アミノ基(−NH−)、チオエーテル基(−S−)等の窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を含む連結基を炭素骨格の内部に含んでいてもよいことを意味する。また、「2価の炭化水素基」とは、2つの結合部位を有する炭化水素基であることを意味し、具体的には含窒素複素環式カルベンにおける2つの窒素原子にそれぞれ結合して、環
状構造を形成していることを意味する。なお、炭化水素基は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素−炭素不飽和結合、分岐構造、含窒素複素環式カルベンにおける環状構造とは異なる環状構造のそれぞれを有していてもよいことを意味する。
の炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは10以下である。
としては、下記式(R−1)〜(R−6)で表される構造が挙げられる。
(式(R−1)〜(R−6)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭素数1〜6の炭化水素基を表す。)
なお、波線は、その先が含窒素複素環式カルベンにおける2つの窒素原子にそれぞれ結合していることを意味し、実線と破線の二重線は、単結合又は二重結合であることを意味する。
のより具体的な構造としては、下記式で表される構造が挙げられる。
式(A)におけるRは、重合数2〜20のポリオキシアルキレン基及び/又はポリグリセリル基を有する炭素数6〜70の炭化水素基(以下、「ポリオキシアルキレン基等を有する炭化水素基」と略す場合がある。)、又はスルホン酸基、カルボキシル基、アンモニウム基、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を有する炭素数2〜20の炭化水素基(以下、「イオン性官能基を有する炭化水素基」と略す場合がある。)を表しているが、「ポリオキシアルキレン基及び/又はポリグリセリル基を有する炭素数6〜70の炭化水素基」とは、ポリオキシアルキレン基及びポリグリセリル基の炭素原子を含めて炭素数が6〜70になる炭化水素基を意味し、炭化水素基が含窒素複素環式カルベンにおける窒素原子に結合している構造であることを意味する。なお、炭化水素基は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素−炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよいことを意味する。また、ポリオキシアルキレン基及び/又はポリグリセリル基を有するものであれば、その他の構造は特に限定されず、例えばポリオキシアルキレン基等の末端にアルキル基、オキシエチレン基、グリセリル基等が導入されているものであってもよい。
がポリオキシアルキレン基等を有する炭化水素基である場合のポリオキシアルキレン基及びポリグリセリル基の重合数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは12以下である。
がポリオキシアルキレン基等を有する炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、好ましくは60以下、より好ましくは50以下である。
ポリオキシアルキレン基等を有する炭化水素基としては、下記式(R−1)〜(R−4)で表される構造が挙げられる。

(式(R−1)〜(R−4)中、a、bはそれぞれ独立して2〜20の整数を、Rは水素原子、又は炭素数1〜3の炭化水素基を表す。)
なお、波線は、その先が含窒素複素環式カルベンにおける窒素原子にそれぞれ結合していることを意味する。式(R−1)で表される構造は、重合数がaであるポリオキシエチレン基を有する炭化水素基、式(R−2)で表される構造は、重合数がaであるポリオキシプロピレン基を有する(芳香族)炭化水素基、式(R−3)で表される構造は、重合数がaであるポリグリセリル基を有する炭化水素基、式(R−4)で表される構造は、重合数がaであるポリオキシエチレン基及び重合数がbであるポリグリセリル基を有する炭化水素基である。
また、「スルホン酸基、カルボキシル基、アンモニウム基、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を有する炭素数2〜20の炭化水素基」における「アンモニウム基」とは、第1級アンモニウム基(−NH )、第2級アンモニウム基(−NRH )、第3級アンモニウム基(−NR)、第4級アンモニウム基(−NR )の何れであってもよいことを意味する。そして、「イオン性官能基を有する炭素数2〜20の炭化水素基」とは、カルボキシル基及びアンモニウム基の炭素原子を含めて炭素数が2〜20になる炭化水素基を意味し、炭化水素基が含窒素複素環式カルベンにおける窒素原子に結合している構造であることを意味する。なお、炭化水素基は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素−炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよいことを意味する。また、「これらの塩」とは、スルホン酸塩、カルボン酸塩、及びアンモニウム塩を意味し、対イオンの種類は特に限定されないものとする。
がイオン性官能基を有する炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは10以下である。
がスルホン酸塩又はカルボン酸塩を有する炭化水素基である場合の対イオンとしては、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)等のアルカリ金属イオン、マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)等のアルカリ土類金属イオンが挙げられる。
がアンモニウム塩を有する炭化水素基である場合の対イオンとしては、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)等のハロゲン化物イオンが挙げられる。
イオン性官能基を有する炭化水素基としては、下記式(R−5)〜(R−8)で表される構造が挙げられる。

なお、波線は、その先が含窒素複素環式カルベンにおける窒素原子にそれぞれ結合していることを意味する。
式(A)におけるRは、炭素数2〜20の炭化水素基を表しているが、Rの炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上であり、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。
含窒素複素環式カルベンとしては、下記式(A−1)〜(A−4)で表される構造が挙げられる。

(式(A−1)〜(A−4)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜6の炭化水素基を、Rは水素原子、又は炭素数1〜3の炭化水素基を、aは2〜20の整数を、kは2〜20の整数を表す。)
なお、実線と破線の二重線は、単結合又は二重結合であることを意味する。
含窒素複素環式カルベンのより具体的な構造としては、下記式で表される構造が挙げられる。
含窒素複素環式カルベンは、通常、下記式(A’)又は(A”)で表される含窒素複素環カチオンを含む塩として製造される。

(式(A’)及び(A”)中、Rは窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基を、Rは重合数2〜20のポリオキシアルキレン基及び/又はポリグリセリル基を有する炭素数6〜70の炭化水素基、又はスルホン酸基、カルボキシル基、アンモニウム基、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を有する炭素数2〜20の炭化水素基を、Rは炭素数2〜20の炭化水素基を表す。)
含窒素複素環カチオンを含む塩の製造方法は、特に限定されず、公知の出発原料を用い、公知の合成方法を適宜組み合わせて製造することができる。
出発原料としては、イミダゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体等を利用することができる。なお、下記式で表される化合物は市販されており、これらをそのまま出発原料として利用するほか、保護基を導入したり、目的の構造を導入した上で利用することもでき、式(A’)又は(A”)に属する様々な含窒素複素環カチオンを製造することができる。

式(A’)及び(A”)のR及びRはそれぞれ、下記反応式に示されるように、導入したい構造を有するハロゲン化物を前駆体として用い、窒素原子による求核置換反応を利用して導入することができる。

本発明の錯体化合物は、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びルテニウム(Ru)からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子を中心金属とする錯体化合物であるが、中心金属は1つに限られず、複数の中心金属を有するいわゆる複核錯体であってもよい。
中心金属としてはパラジウム(Pd)、銀(Ag)が好ましく、パラジウム(Pd)が特に好ましい。
本発明の錯体化合物は、式(A)で表される含窒素複素環式カルベン配位子を含むことを特徴とするが、本発明に係る配位子以外の配位子を含んでいてもよく、配位子としては、ベンゼン、ナフタレン等の構造を有する芳香族炭化水素化合物;チオフェン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、フェナントロリン、チアゾール、オキサゾール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール等の構造を有する複素環化合物;アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、イミノ基等の窒素含有官能基を有する炭化水素化合物;アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シリルオキシ基、カルボニル基、エーテル基等の酸素含有官能基を有する炭化水素化
合物;アルキルチオ基、アリールチオ基、チオエーテル基等の硫黄含有官能基を有する炭化水素化合物;及びジアルキルホスフィノ基、ジアリールホスフィノ基、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、ホスフィニン基等のリン含有官能基を有する炭化水素化合物等が挙げられる。
また、配位子又は錯塩の対イオンとなる塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)等のハロゲン化物イオンも挙げられる。
なお、配位子が芳香族炭化水素化合物である場合の炭素数は、通常6以上であり、通常30以下、好ましくは26以下、好ましくは24以下である。配位子がヘテロ環化合物である場合の炭素数は、通常2以上であり、通常30以下、好ましくは16以下、好ましくは8以下である。配位子が窒素含有官能基を有する炭化水素化合物である場合の炭素数は、通常1以上、好ましくは3以上であり、通常30以下、好ましくは16以下である。配位子が酸素含有官能基を有する炭化水素化合物である場合の炭素数は、通常1以上、好ましくは3以上であり、通常30以下、好ましくは16以下である。配位子が硫黄含有官能基を有する炭化水素化合物である場合の炭素数は、通常1以上、好ましくは3以上であり、通常30以下、好ましくは16以下である。配位子がリン含有官能基を有する炭化水素化合物である場合の炭素数は、通常1以上、好ましくは3以上であり、通常30以下、好ましくは16以下である。
より具体的な配位子としては、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、エチレンジアミン、3−クロロピリジン、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)、1,5−シクロオクタジエン、p−シメン等が挙げられる。
本発明の錯体化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
<触媒組成物>
本発明の錯体化合物の用途は、特に限定されないが、含窒素複素環式カルベンが配位した錯体化合物であるため、クロスカップリング反応等の様々な有機合成反応の触媒として利用することができる。なお、本発明の錯体化合物を含む有機合成反応用の触媒組成物(以下、「本発明の触媒組成物」と略す場合がある。)も本発明の一態様である。
具体的な有機合成反応としては、クロスカップリング反応、カルボニル化反応、ダブルカルボニル化反応、触媒的C−H酸化反応、触媒的C−H活性化反応、辻−trost反応、Wacker酸化反応、ヒドロシリル化反応、水素化還元反応、アリル位アルキル化反応、オレフィン重合、オレフィンメタセシス反応、ヒドロホルミル化反応、シクロプロパン化反応等が挙げられる。これらの中でもクロスカップリング反応用の触媒組成物として利用することが好ましい。
また、本発明の錯体化合物は、親水基と親油基の両方を有する含窒素複素環式カルベンを含んでいるため、界面活性能を発揮する。従って、本発明の錯体化合物は、触媒能に加
えて界面活性能を発揮する界面活性剤型触媒として利用することもできる。界面活性剤型触媒は、例えば水溶媒中で有機合成反応を行うことができ、有機溶媒等の廃棄物を低減することができる。
なお、本発明の触媒組成物は、水溶媒中で有機合成反応を行う界面活性剤型触媒であることが好ましい。水溶媒は、水以外の溶媒を含むものであってもよく、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のプロトン性極性溶媒、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒を含むことが挙げられる。
本発明の触媒組成物は、前述の錯体化合物を含むものであれば、その他は特に限定されないが、溶媒を含むことが挙げられる。
溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のプロトン性極性溶媒、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、等の非プロトン性極性溶媒、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。
<界面活性剤組成物>
前述のように、含窒素複素環式カルベンは、親水基と親油基の両方を有しているため、界面活性能を有する。従って、下記式(A’)又は(A”)で表される含窒素複素環カチオンも界面活性剤として利用することができる。従って、式(A’)又は(A”)で表される含窒素複素環カチオンを含む界面活性剤組成物(以下、「本発明の界面活性剤組成物」と略す場合がある。)も本発明の一態様である。なお、式(A’)又は(A”)で表される含窒素複素環カチオンの対イオンは、特に限定されないが、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)等のハロゲン化物イオンが挙げられる。

(式(A’)及び(A”)中、Rは窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基を、Rは重合数2〜20のポリオキシアルキレン基及び/又はポリグリセリル基を有する炭素数6〜70の炭化水素基、又はスルホン酸基、カルボキシル基、アンモニウム基、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を有する炭素数2〜20の炭化水素基を、Rは炭素数2〜20の炭化水素基を表す。)
本発明の界面活性剤組成物は、前述の含窒素複素環カチオンを含むものであれば、その他は特に限定されないが、溶媒を含むことが挙げられる。
溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のプロトン性極性溶媒、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF
)等のエーテル系溶媒、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。
本発明の界面活性剤組成物は、界面活性剤として働く含窒素複素環カチオンを含むものであるが、含窒素複素環カチオンの親水親油バランス(HLB)値は、通常1より大きく、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、通常19以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。
<炭素−炭素結合又は炭素−窒素結合の生成方法>
前述のように、本発明の錯体化合物は、クロスカップリング反応の触媒として利用することができる。従って、クロスカップリング反応を行う反応工程(以下、「反応工程」と略す場合がある。)であって、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びルテニウム(Ru)からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子、並びに下記式(A’)又は(A”)で表される含窒素複素環カチオンの存在下で行われる工程を含む炭素−炭素結合又は炭素−窒素結合の生成方法(以下、「本発明の生成方法」と略す場合がある。)も本発明の一態様である。

(式(A’)及び(A”)中、Rは窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基を、Rは重合数2〜20のポリオキシアルキレン基及び/又はポリグリセリル基を有する炭素数6〜70の炭化水素基、又はスルホン酸基、カルボキシル基、アンモニウム基、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を有する炭素数2〜20の炭化水素基を、Rは炭素数2〜20の炭化水素基を表す。)
なお、「クロスカップリング反応」とは、2種類の有機化合物を結合させる公知の有機合成反応を意味するものとする。
反応工程におけるクロスカップリング反応の種類、カップリングさせる有機物化合物(反応物)、反応条件等は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
クロスカップリング反応としては、溝呂木・ヘック反応、鈴木・宮浦カップリング反応、根岸カップリング反応、右田・小杉・スティルカップリング反応、薗頭カップリング反応、熊田・玉尾・コリューカップリング反応、ブッフバルト・ハートウィッグ反応、藤原・守谷反応、檜山クロスカップリング等が挙げられる。
反応工程は、水溶媒中でクロスカップリング反応を行うことが好ましい。なお、水溶媒は、水以外の溶媒を含むものであってもよく、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のプロトン性極性溶媒、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)等の非プロトン性極性溶媒を含むことが挙げられる。
水溶媒中でクロスカップリング反応を行う場合の溶媒中の錯体化合物の濃度は、通常0.1mmol/L以上、好ましくは0.5mmol/L以上であり、通常10mol/L以下、好ましくは1mol/L以下、より好ましくは0.1mol/L以下である。
なお、カップリングさせる有機物化合物(反応物)、その他の反応条件等は、クロスカップリング反応の種類に応じた公知のものを適宜採用することができる。
<不飽和炭化水素化合物の製造方法>
前述のように、本発明の錯体化合物は、クロスカップリング反応の触媒として利用することができる。従って、クロスカップリング反応を行う反応工程であって、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びルテニウム(Ru)からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子、並びに下記式(A’)又は(A”)で表される含窒素複素環カチオンの存在下で行われる工程を含む不飽和炭化水素化合物の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す場合がある。)も本発明の一態様である。

(式(A’)及び(A”)中、Rは窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基を、Rは重合数2〜20のポリオキシアルキレン基及び/又はポリグリセリル基を有する炭素数6〜70の炭化水素基、又はスルホン酸基、カルボキシル基、アンモニウム基、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を有する炭素数2〜20の炭化水素基を、Rは炭素数2〜20の炭化水素基を表す。)
なお、「不飽和炭化水素化合物」とは、炭素−炭素不飽和結合を有する炭化水素化合物を意味し、炭素−炭素二重結合を有するアルケン類、炭素−炭素三重結合を有するアルキン類のほか、芳香族炭化水素化合物、炭素−炭素不飽和結合を有する複素環化合物も含まれるものとする。
反応工程におけるクロスカップリング反応の種類、カップリングさせる有機物化合物(反応物)、反応条件等は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
クロスカップリング反応としては、溝呂木・ヘック反応、鈴木・宮浦カップリング反応、根岸カップリング反応、右田・小杉・スティルカップリング反応、薗頭カップリング反応、熊田・玉尾・コリューカップリング反応、ブッフバルト・ハートウィッグ反応、藤原・守谷反応、檜山クロスカップリング等が挙げられる。
反応工程は、水溶媒中でクロスカップリング反応を行うことが好ましい。なお、水溶媒は、水以外の溶媒を含むものであってもよく、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のプロトン性極性溶媒、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒を含むことが挙げられる。
水溶媒中でクロスカップリング反応を行う場合の溶媒中の錯体化合物の濃度は、通常0.1mmol/L以上、好ましくは1mmol/L以上、より好ましくは5mmol/L以上であり、通常10mol/L以下、好ましくは1mol/L以下、より好ましくは0.1mol/L以下である。
なお、カップリングさせる有機物化合物(反応物)、その他の反応条件等は、クロスカップリング反応の種類に応じた公知のものを適宜採用することができる。
本発明の製造方法によって製造される不飽和炭化水素化合物としては、下記式(P−1)〜(P−4)で表される化合物が挙げられる。

(式(P−1)〜(P−4)中、R、R、及びRはそれぞれ独立してフッ素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜6の炭化水素基を、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜6の炭化水素基を、m及びnはそれぞれ独立して0〜5の整数を表す。)
なお、炭化水素基は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素−炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよいことを意味する。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<含窒素複素環カチオンを含む塩の合成>
下記反応式で示される手順により、含窒素複素環式カルベン配位子となるイミダゾリウム塩2a〜2dをそれぞれ合成した。以下、詳細を説明する。

(1−ドデシルイミダゾール1の合成)
ナス型フラスコ中でイミダゾール(2.05g,30mmol)をテトラヒドロフラン(15mL)に溶解させ、そこに水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム2.47g,62mmol,水5g)を加えて、室温で1時間攪拌した。ここに1−ブロモドデカン(7.48g,30mmol)を加え、55℃で1日撹拌した。反応溶液は酢酸エチルで洗浄後、塩酸で中和し、その後水で三回洗浄を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾紙を用いた濾過により硫酸マグネシウムを取り除いた後溶媒を留去しSiOカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=9:1,Rf値0.52)により精製した。その後、シリンジフィルターで濾過し、再度溶媒を留去することで目的の1−
ドデシルイミダゾール1を得た(収量:6.10g,25.8mmol,収率86%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.) δ:7.40(s, 1H, imidazol) , 6.95(s, 1H, imidazol) ,
6.82(s, 1H, imidazol) , 3.84(t, J = 8 Hz, 2H, NCH2), 1.69(2H, NCH2CH2) , 1.28-1.10 (m, 18H, CH2), 0.79(t, J = 8 Hz, 3H, CH3).
13C {1H} NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.)δ:136.7(imidazol), 128.4(imidazol), 118.6(imidazol), 46.8(NCH2), 31.7(CH2), 30.8(CH2), 30.6(CH2), 29.4(CH2), 29.3(CH2), 29.2(CH2), 29.1(CH2), 28.8(CH2), 26.3(CH2), 22.4(CH2), 13.9(CH2).
MS (MALDI TOFMS) m/z : 237.2 (M+H)+; calcd for C15H28N2: 237.2 (M +H)+.
(実施例1:イミダゾリウム塩2aの合成)
試験管内で1−ドデシルイミダゾール1(1.18g,4.99mmol)と2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール(0.84g,4.99mmol)で混合し、無溶媒条件下で100℃で5日間撹拌した。その後SiOカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=9:2、Rf値0.16)により精製することで目的のイミダゾリウム塩2aを得た(収量:0.631g,1.56mmol,収率:31%)。

1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.)δ:10.42(s, 1H, imidazol), 7.52(br, 1H, imidazol), 7.16(br, 1H, imidazol), 4.64(t, J = 8 Hz, 2H, NCH2), 3.97(t, J = 4 Hz, 2H, NCH2), 3,60-3.66(4H, CH2), 3.60-3.70(4H, CH2), 1.92(m, 2H, CH2), 1.20-1.27(18H, CH2),
0.88(t, J= 8 Hz, 3H, CH3 ).
(トシル化テトラエチレングリコール(TEG−Ts)の合成)
二口ナスフラスコ中でテトラエチレングリコール(4.9g,25mmol)をアセトニトリル(50mL)に溶解させ、ここにトリエチルアミン(2.5g,25mmol)と塩化パラトルエンスルホニル(4.8g,25mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温で3日間撹拌した。反応溶を濾紙で濾過を行った後、溶媒を留去しSiOカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:アセトン=10:3,Rf値0.67)により精製することで目的のTEG−Tsを得た(収量:6.8g,19.5mmol,収率:80%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.)δ:7.80(d, J = 8 Hz, 2H, PhH), 7.34(d, J = 8 Hz, 2H, PhH ), 4.16(t, J = 4 Hz, 2H, SOCH2 ), 3.70-3.52 (m, 14H, CH2), 3.37(s, 3H, CH3).
(ブロモ化テトラエチレングリコール(TEG−Br)の合成)
ナス型フラスコ中でTEG−Ts(6.75g,19mmol)をアセトン(200mL)で溶解させた後、臭化リチウム(19.9g,23mmol)を加え、75℃で5時間還流した。反応溶液を留去し、クロロホルムを加え、未溶固体を濾過により除去した。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、有機相を無水炭酸ナトリウムで乾燥させることで、目的のTEG−Brを得た(収量:4.16g,16.2mmol,収率:84%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.)δ:3.83(t, J = 4 Hz, 2H, BrCH2), 3.75-3.65 (m, 18H,
CH2), 3.60(t, J = 4 Hz, 2H, CH2) 3.50(t, J = 6 Hz, 2H, CH2), 3.41(s, 3H, CH3).
(実施例2:イミダゾリウム塩2bの合成)
試験管内で1−ドデシルイミダゾール1(1.87g,7.9mmol)とTEG−Br(2.0g,7.9mmol)で混合し、無溶媒条件下70℃で1日間撹拌することで目的のイミダゾリウム塩2bを得た(収量:3.9g,7.9mmol,収率:>99%
)。

1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.)δ:10.65(s, 1H, imidazol), 7.31(br, 1H, imidazol), 7.24(br, 1H, imidazol), 4.31(t, J = 8 Hz, 2H, CH2), 3.92(t, J = 8 Hz, 2H, CH2), 3,81(t, J = 4 Hz, 2H, CH2), 3.63-3.70(m, 12H, CH2), 3.54(m, 2H, CH2), 1.91(m, 2H, NCH2CH2), 1.28-1.40(m, 18H, CH2), 0.90(t, J = 8 Hz, 3H, CH3)
13C {1H} NMR (400 MHz, CDCl3 , r.t.)δ:136.7(imidazol), 123.5(imidazol), 121.7(imidazol), 72.1(OCH2), 70.7(OCH2), 70.2(2OCH2), 70.1(OCH2), 70.0 (OCH2), 69.8(OCH2), 61.0(OCH2), 49.7(NCH2), 36.3(CH2), 31.4(CH2), 30.6(CH2), 30.1(CH2), 29.9(CH2), 28.9(CH2), 28.8(CH2), 28.6(CH2), 25.8(CH2), 22.2(CH2), 13.7(CH3)
(トシル化ヘキサエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG6−Ts)の合成)
二口ナスフラスコでヘキサエチレングリコールモノメチルエーテル(3g,10.1mmol)をジクロロメタン(10mL)で溶解させ、トリエチルアミン(1.84g,18.2mmol)を加え、窒素雰囲気下で氷浴し、0℃で30分撹拌した。その後、塩化パラトルエンスルホニル(2.36g,12.1mmol)を加え、室温で1日撹拌した。反応溶を濾紙で濾過を行った後、溶媒を留去しSiOカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:アセトン=10:3,Rf値0.41)により精製した。その後シリンジフィルターで濾過し、再度溶媒を留去することで目的のMPEG6−Tsを得た(収量:3.15g,7.0mmol,収率:69%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.)δ:7.80(d, J = 8 Hz, 2H, PhH), 7.34(d, J = 8 Hz, 2H, PhH ), 4.16(t, J = 4 Hz, 2H, SOCH2 ), 3.70-3.52 (m, 22H, CH2), 3.37(s, 3H, CH3).
(ブロモ化ヘキサエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG6−Br)の合成)
ナス型フラスコ中でMPEG6−Ts(2.81g,6.21mmol)をアセトン(37mL)で溶解させた後、臭化リチウム(5.40g,60.21mmol)を加え、80℃で5時間還流した。反応溶液をセライトで濾過を行った。その後溶媒を留去させることで目的のMPEG6−Brを得た(収量:1.38g,3.84mmol,収率:62%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.)δ:3.83(t, J = 4 Hz, 2H, BrCH2), 3.75-3.65 (m, 18H,
CH2), 3.60(t, J = 4 Hz, 2H, CH2) 3.50(t, J = 6 Hz, 2H, CH2), 3.41(s, 3H, CH3).
(実施例3:イミダゾリウム塩2cの合成)
試験管内で1−ドデシルイミダゾール1(0.662g,2.80mmol)とMPEG6−Br(1g,2.80mmol)で混合し、無溶媒条件下で100℃2日間撹拌した。その後SiOカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:アセトン:メタノール=3:1:1,Rf値0.47)により精製することで目的のイミダゾリウム塩2cを得た(収量:0.679g,1.14mmol,収率:41%)。

1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.)δ:10.50(s, 1H, imidazol), 7.77(s, 1H, imidazol), 7.20(s, 1H, imidazol), 4.68(t, J = 4 Hz, 2H, CH2), 4.27(t, J = 8 Hz, 2H, CH2), 3,92(t, J = 4 Hz, 2H, CH2), 3.77-3.59 (m, 16H, CH2), 3.54(m, 2H, CH2), 3.37(s, 3H,
CH3), 1.90(t, J = 8 Hz, 2H, CH2), 1.40-1.17 (m, 18H, CH2), 0.90(t, J = 8 Hz, 3H, CH3)
1H NMR (400 MHz, D2O, r.t.)
δ8.66(s, 1H, imidazol), 7.39(s, 1H, imidazol), 7.36(s, 1H, imidazol), 4.24(t, J
= 4 Hz, 2H, CH2), 4.05(t, J = 8 Hz, 2H, CH2), 3.74(t, J = 4 Hz, 2H, CH2), 3.60-3.42 (m, 18H, CH2), 3.21(s, 3H, CH3), 1.71(t, J = 8 Hz, 2H, CH2), 1.20-1.03 (m, 18H, CH2), 0.69(t, J= 8 Hz, 3H, CH3)
13C {1H} NMR (400 MHz, CDCl3 , r.t.)δ:137.18(imidazol), 123.77(imidazol), 121.07(imidazol), 71.73(CH2), 70.35(CH2), 70.26(CH2), 70.22(CH2), 70.17(CH2), 70.11(CH2), 69.10(CH2), 58.93(CH3), 49.96(CH2), 49.56(CH2), 31.81(CH2), 30.21(CH2), 29.51(CH2), 29.42(CH2), 29.32(CH2), 29.24(CH2), 28.94(CH2), 26.24(CH2), 22.59(CH2),
14.04(CH3)
MS (MALDI TOFMS) m/z : 515.4 (M-Br)+; calcd for C28H55N2O6: 515.4 (M-Br)+.
(トシル化オクタエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG8−Ts)の合成)
二口ナスフラスコでオクタエチレングリコールモノメチルエーテルMPEG8−OH(2.5g,6.50mmol)をジクロロメタン(30mL)で溶解させ、トリエチルアミン(1.18g,11.7mmol)を加え、窒素雰囲気下で氷浴し0℃で30分撹拌した。その後、塩化パラトルエンスルホニル(1.49g,7.80mmol)を加え、室温で1日撹拌した。反応溶を濾紙を用いた濾過を行い(洗浄液はクロロホルム)、溶媒を留去しSiOカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン=4:1,Rf値0.32)により精製した。その後、シリンジフィルターで濾過し、もう一度溶媒を留去することで目的のMPEG8−Tsを得た(収量:2.16g,4.0mmol,収率:62%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.)δ:7.80(d, J = 8 Hz,2H, PhH), 7.34(d, J = 8 Hz, 2H,
PhH ), 4.15(t, J = 4 Hz, 2H, SOCH2 ), 3.71-3.60 (m, 30H, CH2), 3.38(s, 3H, CH3)
2.49(s, 3H, PhCH3)
(ブロモ化ヘキサエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG8−Br)の合成)
ナス型フラスコ中でMPEG8−Ts(2g,3.71mmol)をアセトン(30mL)で溶解させた後、臭化リチウム(3.22g,37.13mmol)を加え、80℃で1日還流した。その後、反応溶液はSiOカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン=4:1で流し、不純物のスポットが消えた後はジクロロメタン:メタノール=1:1)により精製した。溶媒を留去させた後、濾紙を用いた熱濾過、シリンジフィルターを用いた濾過を行うことで目的のMPEG8−Brを得た(収量:1.32g,2.95mmol,収率:80%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.)δ:3.85(t, J = 4 Hz, 2H, BrCH2), 3.80-3.67 (m, 26H,
CH2), 3.61(t, J = 4 Hz, 2H, CH2) 3.51(t, J = 6 Hz, 2H, CH2), 3.42(s, 3H, CH3)
(実施例4:イミダゾリウム塩2dの合成)
試験管に1−ドデシルイミダゾール(0.532g,2.25mmol)とMPEG8−Br(1g,2.24mmol)を加え、無溶媒条件下、100℃で2日間撹拌した。その後SiOカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:アセトン:メタノール=3:1:1,Rf値0.49)により精製することで目的のイミダゾリウム塩2dを得た(収量:0.930g,1.36mmol,収率:61%)。

1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.) δ:10.46(s, 1H, imidazol), 7.81(s, 1H, imidazol), 7.21(s, 1H, imidazol), 4.69(t, J = 4 Hz, 2H, CH2), 4.26(t, J = 8 Hz, 2H, CH2), 3,94(t, J = 4 Hz, 2H, CH2), 3.74-3.52 (m, 28H, CH2), 3.39(s, 3H, CH3), 1.90(t, J=
8 Hz, 2H, CH2), 1.44-1.15 (m, 18H, CH2), 0.87(t, J = 8 Hz, 3H, CH3 )
1H NMR (400 MHz, D2O, r.t.) δ:8.83(s, 1H, imidazol), 7.56(s, 1H, imidazol), 7.53(s, 1H, imidazol), 4.40(t, J = 4 Hz, 2H, CH2), 4.22(t, J = 8 Hz, 2H, CH2), 3.91(t, J = 4 Hz, 2H, CH2), 3.75-3.59 (m, 28H, CH2), 3.35(s, 3H, CH3), 1.88(t, J = 8
Hz, 2H, CH2), 1.36-1.20 (m, 18H, CH2), 0.86(t, J= 8 Hz, 3H, CH3)
13C {1H} NMR (100 MHz, CDCl3 , r.t.)δ:137.30(imidazol), 123.85(imidazol), 121.07(imidazol), 71.78(CH2), 70.35(CH3), 70.32 70.28(CH2), 70.15(CH2), 69.12(CH2), 58.97(CH3), 50.04(NCH2), 49.62(NCH2), 31.85(CH2), 30.26(CH2), 29.55(CH2), 29.46(CH2), 29.35(CH2), 29.28(CH2), 28.98(CH2), 26.28(CH2), 22.63(CH2), 14.07(CH3)
MS (MALDI TOFMS) m/z : 603.5 (M-Br)+; calcd for C32H63N2O8: 603.5 (M-Br)+.
<含窒素複素環カチオンを含む塩の界面活性評価>
バイアル瓶中でイミダゾリウム塩2a〜2dをそれぞれ水に溶解させ、種々の濃度に調整した。各濃度に調整した溶液をシャーレに移し、一晩静置した後、ウィルヘルミー法による表面張力測定装置(協和界面科学社製,製品名「DY−500」)を用い、水に対する含窒素複素環カチオンの各濃度の表面張力を測定した。その結果を図1に示す。
含窒素複素環カチオンは、混合溶媒の表面張力を低下させたことから界面活性を示し、図1中の表面張力値が一定となる点から、臨界ミセル濃度(CMC)値を決定した。その結果を表1に示す。結果から、得られた新規含窒素複素環カチオンを含む塩は、いずれも界面活性を示すことが明らかになった。
<錯体化合物の合成>
下記反応式で示される手順により、錯体化合物3b、4bをそれぞれ合成した。以下、詳細を説明する。
(実施例5:銀(Ag)錯体化合物3bの合成)
窒素雰囲気下、25mLシュレンク管内にイミダゾリウム塩2b(199.5mg,0.40mmol)を加えて、塩化メチレン(4mL)に溶解させた。ここに酸化銀(46.8mg,0.20mmol)を加え、遮光下、室温で3日間攪拌した。反応後に析出した未溶固体をセライトによって除去し、溶液を留去することにより、目的とする銀(Ag)錯体化合物3bを得た(199.2mg,0.33mmol,83%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.)δ: 6.96(2H, imidazol), 4.08(t, J = 4 Hz, 2H, NCH2), 4.26(t, J = 8 Hz, 2H, NCH2), 4,08(t, J = 8 Hz, 2H, CH2), 3.82 (br, 2H, OCH2),
3.64-3.70(10H, OCH2), 3.48(t, J = 8 Hz, 2H, OCH2), 1.79(m, 2H, NCH2CH2), 1.20-1.35 (m, 18H, CH2), 0.88(t, J = 8 Hz, 3H, CH3).
(実施例6:パラジウム(Pd)錯体化合物4bの合成)
窒素雰囲気下、25mLシュレンク管内にイミダゾリウム塩2b(198.4mg,0.40mmol)を加えて、塩化メチレン(4mL)に溶解させた。ここに酸化銀(46.8mg,0.20mmol)を加え、遮光下、室温で3日間攪拌した。反応後に析出した未溶固体をセライトによって除去し、溶液を留去することにより、目的とする銀(Ag)錯体化合物3bを得た(207.2mg,0.34mmol)。ここに塩化メチレン(4mL)、Pd(en)(NO(en=ethylenediamine) (49.3mg,0.17mmol)を加え、遮光条件下、室温で4時間攪拌した。反応後に未溶固体をセライトにより除去し、溶媒を留去することにより目的とする界面活性剤型パラジウム(Pd)錯体化合物4bを得た(189.9mg,0.17mmol,85%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.)δ: 6.98(2H, imidazol), 7.21(s, 1H, imidazol), 4.06(t, J = 8 Hz, 4H, CH2), 4.26(t, J = 8 Hz, 4H, CH2), 3,94(t, J = 4 Hz, 4H, CH2), 3.68(m, 28H, CH2), 1.80(br, 4H, NCH2CH2), 1.30(m, 36H, CH2), 0.88(t, J = 8 Hz, 6H, CH3 ).
13C {1H} NMR (100 MHz, CDCl3 , r.t.)δ: 122.0(imidazol), 120.8(imidazol), 72.3(OCH2), 71.1(OCH2), 70.5(2OCH2), 70.4(2OCH2), 70.2(OCH2), 61.6(OCH2), 51.8(NCH2), 38.7(CH2), 31.7(CH2), 31.4(CH2), 30.3 (CH2), 30.2(CH2), 29.3(CH2), 29.1(CH2), 29.0(CH2), 26.3(CH2), 22.5(CH2), 14.0(CH3).
下記反応式で示される手順により、錯体化合物5bを合成した。以下、詳細を説明する。
(実施例7:パラジウム(Pd)錯体化合物5bの合成)
窒素雰囲気下、25mLシュレンク管内にイミダゾリウム塩2b(200.3mg,0.40mmol)を加えて、ジメチルスルホキシド(7mL)に溶解させた。ここに酢酸パラジウム(91.1mg,0.40mmol)と臭化ナトリウム(167mg,1.62mmol)を加え、90℃で14時間攪拌した。反応後の溶液に塩化メチレン(10mL)を加え、飽和塩化ナトリウム水溶液(5mL×3)で洗浄したのち、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、SiOカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:アセトン:メタノール=4:1:1,Rf値0.83)により精製することで目的とするパラジウム(Pd)錯体化合物5bを得た(収量:113mg,0.08mmol,収率:42%)。
1H NMR (400 MHz, D2O, r.t.)δ: 7.32(2H, imidazol), 7.27(2H, imidazol), 4.11 (t, J = 4 Hz, 4H, CH2), 4.03(t, J = 8 Hz, 4H, CH2), 3.52-3.68(28H, CH2), 1.71(m, 4H,
NCH2CH2), 1.12-1.30(36H, CH2), 0.72(t, J = 8 Hz, 6H, CH3).
下記反応式で示される手順により、錯体化合物6dを合成した。以下、詳細を説明する。
(実施例8:パラジウム(Pd)錯体化合物6dの合成)
窒素雰囲気下、25mLシュレンク管内にイミダゾリウム塩2d(20mg,0.03mmol)を加えて、テトラヒドロフラン(1mL)に溶解させた。ここに酢酸パラジウム(3.3mg,0.015mmol)を加え、45℃で24時間攪拌した。反応後に溶液を留去した後、SiOカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:メタノール=9:1,Rf値0.11)により精製することで目的とするパラジウム(Pd)錯体化合物6dを得た(収量:13.5mg,0.009mmol,収率:30%)。
1H NMR (400 MHz, D2O, r.t.)δ: 9.99 (s, 1H, imidazol), 7.78 (s, 1H, imidazole), 7.69 (s, 1H, imidazol), 7.53(s, 1H, imidazol), 7.36(s, 1H, imidazol), 4.83(br, 2H, CH2), 4.41 (t, J = 8 Hz, 2H, CH2), 4.22 (t, J = 8 Hz, 2H, CH2), 4.13 (t, J = 8 Hz, 2H, CH2), 3.61-3.82(52H, CH2), 3.57 (t, J= 8 H, 4H, CH2), 3.39 (s, 6H, CH3), 1.19-1.48(36H, CH2), 0.84-0.94(6H, CH3).
下記反応式で示される手順により、錯体化合物9dを合成した。以下、詳細を説明する。
(実施例9:パラジウム(Pd)錯体化合物9dの合成)
窒素雰囲気下、25mLシュレンク管内にイミダゾリウム塩2d(20mg,0.03mmol)を加えて、塩化メチレン(2mL)に溶解させた。ここに酸化銀(7.0mg,0.30mmol)を加え、遮光下、室温で16時間攪拌した。反応後に析出した未溶固体をセライトによって除去し、溶液を留去することにより、目的とする銀(Ag)錯体化合物7dを定量的に得た。ここに、塩化メチレン(2mL)を加え、PdCl(MeCN)(3.9mg,0.015mmol)を加え、室温で20時間攪拌した。反応後に
溶媒を留去することで8dを得た(17.5mg)。これを塩化メチレン(2mL)に溶解させ、ヨウ化ナトリウム(45mg,0.3mmol)を加え、室温で20時間攪拌した。反応後に溶媒を留去することにより、目的とするパラジウム(Pd)錯体化合物9dを得た(収量:19.8mg,0.012mmol,収率:80%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.)δ: 7.11(2H, imidazol), 7.6.84(2H, imidazol), 4.55(t, J = 8 Hz, 4H, CH2), 4.32(t, J = 8 Hz, 4H, CH2), 4.02(t, J = 4 Hz, 4H, CH2), 3.58-3.72(m, 48H, CH2), 3.54 (br, 4H, CH2), 3.37(s, 6H, CH3), 2.01(br, 4H, NCH2CH2), 1.19-1.47(m, 36H, CH2), 0.87(t, J = 8 Hz, 6H, CH3).
下記反応式で示される手順により、錯体化合物10bを合成した。以下、詳細を説明する。
(実施例10:ルテニウム(Ru)錯体化合物10bの合成)
窒素雰囲気下、25mLシュレンク管内にイミダゾリウム塩2b(104.8mg,0.21mmol)を加えて、塩化メチレン(5mL)に溶解させた。ここに酸化銀(24.6mg,0.11mmol)を加え、遮光下、室温で21時間攪拌した。反応後に析出した未溶固体をセライトによって除去し、溶液を留去した。ここに、ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー([RuCl−η−p−cymene])(140.9mg,0.23mmol)を加え、塩化メチレン(5mL)に溶解させ、室温で4時間反応させた。反応後に析出した未溶固体をセライトによって除去し、溶媒を留去した。未反応のジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマーをジエチルエーテル(30mL)で洗浄することにより除去することで、目的とするルテニウム(Ru)錯体化合物10bを得た(収量:129mg,0.18mmol,収率:85%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.)δ: 7.42(1H, imidazol), 7.01(1H, imidazol), 5.37 (2H, CH of cym), 5.08 (2H, CH of cym), 3.79(br, CH2), 3.51-3.74(14H, CH2), 2.89 (m, 1H, CHMe2), 2.00 (s, 3H, Me), 1.71(m, 2H, NCH2CH2), 0.96-1.48(24H, CH2 and CHMe2), 0.85(t, J = 8 Hz, 3H, CH3).
下記反応式で示される手順により、錯体化合物11bを合成した。以下、詳細を説明する。
(実施例11:ロジウム(Rh)錯体化合物11bの合成)
窒素雰囲気下、25mLシュレンク管内にクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー([Rh(μ−Cl)(cod)])(29.1mg, 0.06mmol)とカリウムtert−ブトキシド(13.2mg,0.12mmol)を加えて、THF(2mL)に溶解させ、室温で10分攪拌した。ここにTHF(3mL)に溶解させたイミダゾリウム塩2b(58.3mg,0.12mmol)を加えて、さらに室温
で24時間反応させた。反応後に析出した未溶固体をセライトによって除去し、溶液を留去することにより、目的とするロジウム(Rh)錯体化合物11bを得た(収量:71mg,0.12mmol,収率:>99%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.)δ: 7.08(br, 1H, imidazol), 6.78(br, 1H, imidazol),
5.00-5.27 (m, 2H, cod CH), 4.43 (br, 2H, cod CH), 3.91, (br, 2H, CH2), 3.51-3.76(14H, CH2of PEG and NCH2), 3.28(br, 2H, CH2), 2.21-2.47 (4H, cod CH2), 1.69-2.08 (6H, cod CH2 and NCH2CH2), 1.13-1.51(18H, CH2), 0.85(br, 3H, CH3).
下記反応式で示される手順により、錯体化合物12bを合成した。以下、詳細を説明する。
(実施例12:イリジウム(Ir)錯体化合物12bの合成)
窒素雰囲気下、25mLシュレンク管内にクロロ(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)ダイマー([Ir(i−Cl)(cod)])(73.9mg,0.11mmol)とカリウムtert−ブトキシド(24.9mg, 0.22mmol)を加えて、THF(2mL)に溶解させ、室温で10分攪拌した。ここにTHF(3mL)に溶解させたイミダゾリウム塩2b(56.6mg,0.11mmol)を加えて、さらに室温で24時間反応させた。反応後に析出した未溶固体をセライトによって除去し、溶液を留去することにより、目的とするイリジウム(Ir)錯体化合物12bを得た(収量:71mg,0.12mmol,収率:>99%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.)δ: 7.10(1H, imidazol), 6.80(1H, imidazol), 4.51-4.77 (2H, cod CH), 4.32 (2H, cod CH), 3.86 (br, CH2), 3.52-3.77(14H, CH2), 2.06-2.27 (4H, cod CH2), 1.45-2.00 (6H, cod CH2 and NCH2CH2), 0.96-1.45(18H, CH2), 0.85(br, 3H, CH3).
<パラジウム(Pd)錯体化合物の界面活性評価>
バイアル瓶中でパラジウム(Pd)錯体化合物4bを水に溶解させ、種々の濃度に調整した。各濃度に調整した溶液をシャーレに移し、一晩静置した後、ウィルヘルミー法による表面張力測定装置(協和界面科学社製,製品名「DY−500」)を用い、水に対するパラジウム(Pd)錯体化合物4bの各濃度の表面張力を測定した。その結果を図2に示す。
パラジウム(Pd)錯体化合物4bは、水の表面張力を低下させたことから界面活性を示し、図2中の表面張力値が一定となる点から、臨界ミセル濃度(CMC)値を1.9mMと決定した。その際の表面張力値であるγCMC値は29.8mN/mとなることが分かった。従って、得られたパラジウム(Pd)錯体化合物4bは界面活性を示すことが明らかになった。
フラスコ中で、イミダゾリウム塩2d(19.7mg,0.06mmol)と酢酸パラジウム(7.3mg,0.03mmol)、臭化ナトリウム(13.4mg,0.13mmol)を水(5mL)に溶解させ、90℃で24時間攪拌することでパラジウム(Pd)錯体化合物を調製した。溶液をシャーレに移し、ウィルヘルミー法による表面張力測定装置(協和界面科学社製,製品名「DY−500」)を用い、溶液の表面張力を測定した。その結果、γCMC値は32.6mN/mとなることが分かった。従って、得られたパラジウム(Pd)錯体化合物は界面活性を示すことが明らかになった。
バイアル瓶中でパラジウム(Pd)錯体化合物9dを2mMになるように水に溶解させた。溶液をシャーレに移し、ウィルヘルミー法による表面張力測定装置(協和界面科学社製,製品名「DY−500」)を用い、溶液の表面張力を測定した。その結果、γCMC値は29.1mN/mとなることが分かった。従って、得られたパラジウム(Pd)錯体化合物9dは界面活性を示すことが明らかになった。
<クロスカップリング反応(溝呂木・ヘック反応)>
溝呂木・ヘック反応について、以下の2種類の条件で行った。
(条件1)
アルゴンガス雰囲気化、ヨウ化アリール(3.6mmol)とオレフィン(5.2mmol)を試験管にはかりとり、ここに界面活性剤(0.06mmol)を溶解させた。この混合物を激しく攪拌させながら、少しずつ水(1mL)を添加することで乳液を調製した。ここに、酢酸パラジウム(2mol%)とトリエチルアミン(4.6mmol)を加え、70℃で24時間反応させることで、クロスカップリング体を得た。粗生成物は、酢酸エチル(2mL×3)で抽出し、溶媒を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。収率は、テトラクロロエタンを内部標準物質として用いて、H NMRの積分比から算出した。
(条件2)
アルゴンガス雰囲気化、ヨウ化アリール(3.6mmol)とオレフィン(5.2mmol)を試験管に量りとり、ここに界面活性剤(0.06mmol)を溶解させた。ここに水(10μL)とエタノール(130μL)を加えることで、均一な透明溶液を調製した。ここに、酢酸パラジウム(2mol%)とトリエチルアミン(4.6mmol)を加え、70℃で24時間反応させることで、クロスカップリング体を得た。粗生成物は、酢酸エチル(2mL×3)で抽出し、溶媒を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。収率は、テトラクロロエタンを内部標準物質として用いて、H NMRの積分比から算出した。
表2に溝呂木・ヘック反応の結果を示す。
イミダゾリウム塩2bを配位子として用いてヨードベンゼンとアクリル酸メチルを反応させた場合、クロスカップリング体が定量的に得られ、イミダゾリウム塩2bによって得られる錯体化合物が、溝呂木・ヘック反応に対して優れた触媒活性を示すことがわかった(実施例13参照)。同様に、ヨードアセトフェノンとスチレンの反応を検討したところ、クロスカップリング体の収率は15%に留まった(実施例14参照)。これはヨードアセトフェノンが固体であり、均一に分散できなかったことが原因であると思われる。ヨードベンゼンとスチレンを基質とする溝呂木・ヘック反応を、条件1で検討したところ、92%の収率でクロスカップリング体を得た(実施例15参照)。さらに同様の反応を、条件2で行うと、溶液は均一なマイクロエマルションを形成し、これにより収率は98%まで向上した(実施例16参照)。実施例15及び実施例16における、反応前の溶液の状態を図3に示す。図3(a)より明らかなように、条件1で調製した溶液は白色の乳液を形成する。光学顕微鏡像からも、数μ程度の粒子径を有する乳液が生成していることが確認された。一方、条件2で調製した溶液は均一な透明溶液を形成することがわかった(図3(b)参照)。これは粒径の非常に小さい乳液(マイクロエマルション)を形成しているためであると考えられる。実際、同様の溶液をイミダゾリウム塩2bを加えずに調製すると、懸濁した溶液が得られたことから、マイクロエマルションがイミダゾリウム塩2bの界面活性によって得られたことがわかった。反応後には、生成物が固体として析出してくるため、これをろ過により容易に単離できる(図4参照)。従って、水層を次の反応に繰り返し利用することもできる。
同様に、ヨードベンゼンとスチレンの溝呂木・ヘック反応をイミダゾリウム塩2c及び2dを用いて行った場合は、クロスカップリング体がそれぞれ90%と83%で得られた(実施例17及び18参照)。溶媒としてDMFを用いた溝呂木・ヘック反応では、クロスカップリング体が同程度の収率(98%)で得られたことから(実施例19参照)、含窒素複素環カチオンを含む塩は、水溶媒中でも、有機溶媒中と同等の高い触媒活性を示すことがわかった。比較例として、同様の反応を汎用界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)やTriton−X100、或いは界面活性能のない1−ドデシルイミダゾール1で行った場合、スチルベンの収率はそれぞれ42%、17%、38%といずれも低収率となり、含窒素複素環カチオンを含む塩によって得られる錯体化合物が優れた触媒活性を示すことがわかった。
一連の反応においては、有機溶媒を使用せず、配位子に界面活性能を付与することで、E facorを大幅に低減することに成功した。すなわち、一般的なトリフェニルホスフィンを配位子とするDMF中での溝呂木・ヘック反応のE facorは40程度であると試算されている。また、非特許文献1及び3に記載の方法(水中で、市販の界面活性剤とNHCを混合して反応させる系)では、E facorが2.2と試算されている。これに対して、本発明の錯体化合物を用いた溝呂木・ヘック反応では、E facorを1.3まで低減することが出来た。
<クロスカップリング反応(溝呂木・ヘック反応)の経時変化>
前述の条件1及び条件2に従って調製した溶液の経時変化を追跡した。各時間において、反応溶液をサンプリングし、H NMRスペクトル測定を行った。各スペクトルにおける原料のヨードベンゼンと生成物のスチルベンの面積比から、反応の転換率(%)を算出した。図5から明らかなように、条件2により、マイクロエマルションを調整した場合、反応速度が飛躍的に向上することがわかった。これは、微細なマイクロエマルションが形成することにより、界面の表面積が増大し、その界面で反応が効率的に進行したためであると考えられる。水とエタノールを加えずに溝呂木・ヘック反応を行った場合(条件3)、反応が十分進行しなかったことから、本発明の錯体化合物が微細なマイクロエマルシ
ョンを形成することにより、反応速度が向上していることがわかった。
<クロスカップリング反応(鈴木・宮浦カップリング反応)>
アルゴンガス雰囲気下で、2a又は2b(0.06mmol)(実施例20:2a,実施例21:2b)と4−メトキシフェニルボロン酸(0.06mmol)とヨードアセトフェノン(1.00mmol)を水(1mL)中で混合した。この混合物を5分間攪拌し、塩基のトリエチルアミン(0.3mmol)と酢酸パラジウム(10mol%)を添加し、この溶液を24時間、70℃で攪拌した。収率は、テトラクロロエタンを内部標準物質として用いて、H NMRの積分比から算出した。結果を表3に示す。
本発明の錯体化合物は、クロスカップリング反応等の有機合成反応の触媒、特に触媒能に加えて界面活性能を発揮する界面活性剤型触媒として利用することができる。

Claims (11)

  1. パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びルテニウム(Ru)からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子を中心金属とする錯体化合物であって、
    下記式(A)で表される含窒素複素環式カルベン配位子を含むことを特徴とする、錯体化合物。
    (式(A)中、R−CH=CH−であり、Rは重合数2〜20のポリオキシアルキレン基及び/又はポリグリセリル基を有する炭素数6〜70の炭化水素基、又はスルホン酸基、カルボキシル基、アンモニウム基、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を有する炭素数2〜20の炭化水素基を、Rは炭素数18アルキル基を表す。)
  2. 請求項1に記載の錯体化合物を含む有機合成反応用の触媒組成物。
  3. クロスカップリング反応用である、請求項2に記載の触媒組成物。
  4. 水溶媒中で有機合成反応を行う界面活性剤型触媒である、請求項2又は3に記載の触媒組成物。
  5. 下記式(A’)又は(A”)で表される含窒素複素環カチオンを含む界面活性剤組成物。
    (式(A’)及び(A”)中、R−CH=CH−であり、Rは重合数2〜20のポリオキシアルキレン基及び/又はポリグリセリル基を有する炭素数6〜70の炭化水素基、又はスルホン酸基、カルボキシル基、アンモニウム基、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を有する炭素数2〜20の炭化水素基を、Rは炭素数18アルキル基を表す。)
  6. クロスカップリング反応を行う反応工程を含む炭素−炭素結合又は炭素−窒素結合の生成方法であって、
    前記反応工程が、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びルテニウム(Ru)からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子、並びに下記式(A’)又は(A”)で表される含窒素複素環カチオンの存在下で行われる工程であることを特徴とする、炭素−炭素結合又は炭素−窒素結合の生成方法。
    (式(A’)及び(A”)中、R−CH=CH−であり、Rは重合数2〜20のポリオキシアルキレン基及び/又はポリグリセリル基を有する炭素数6〜70の炭化水素基、又はスルホン酸基、カルボキシル基、アンモニウム基、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を有する炭素数2〜20の炭化水素基を、Rは炭素数18アルキル基を表す。)
  7. 前記クロスカップリング反応が、溝呂木・ヘック反応、鈴木・宮浦カップリング反応、根岸カップリング反応、右田・小杉・スティルカップリング反応、薗頭カップリング反応、熊田・玉尾・コリューカップリング反応、ブッフバルト・ハートウィッグ反応、藤原・守谷反応、又は檜山クロスカップリングである、請求項6に記載の炭素−炭素結合又は炭素−窒素結合の生成方法。
  8. 前記反応工程が、水溶媒中でクロスカップリング反応を行う工程である、請求項6又は7に記載の炭素−炭素結合又は炭素−窒素結合の生成方法。
  9. クロスカップリング反応を行う反応工程を含む不飽和炭化水素化合物の製造方法であって、
    前記反応工程が、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びルテニウム(Ru)からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子、並びに下記式(A’)又は(A”)で表される含窒素複素環カチオンの存在下で行われる工程であることを特徴とする、不飽和炭化水素化合物の製造方法。
    (式(A’)及び(A”)中、R−CH=CH−であり、Rは重合数2〜20のポリオキシアルキレン基及び/又はポリグリセリル基を有する炭素数6〜70の炭化水素基、又はスルホン酸基、カルボキシル基、アンモニウム基、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を有する炭素数2〜20の炭化水素基を、Rは炭素数18アルキル基を表す。)
  10. 前記クロスカップリング反応が、溝呂木・ヘック反応、鈴木・宮浦カップリング反応、根岸カップリング反応、右田・小杉・スティルカップリング反応、薗頭カップリング反応、熊田・玉尾・コリューカップリング反応、ブッフバルト・ハートウィッグ反応、藤原・守谷反応、又は檜山クロスカップリングである、請求項9に記載の不飽和炭化水素化合物の製造方法。
  11. 前記反応工程が、水溶媒中でクロスカップリング反応を行う工程である、請求項9又は10に記載の不飽和炭化水素化合物の製造方法。
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