JP5889029B2 - ハロゲン原子を有する多環式芳香族化合物の製造方法 - Google Patents

ハロゲン原子を有する多環式芳香族化合物の製造方法 Download PDF

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本発明は、ハロゲン原子を有する多環式芳香族化合物の製造方法に関する。
多環式芳香族化合物は、各種産業分野、例えば、非水電解液二次電池材料、有機EL材料、液晶材料、非線形光学材料、写真用添加剤、増感色素、医薬品等に用いられ、さらには、それらの合成中間体としても広く用いられている。
その中でも、ハロゲン原子を有する多環式芳香族化合物は、様々な非水溶媒をゲル化するゲル化剤として(例えば特許文献1及び2参照)、また、リチウムイオン二次電池の電解液材料として(例えば特許文献3参照)、有用である。ハロゲン原子を有する多環式芳香族化合物をゲル化剤として用いる場合、非水溶媒に対して10%以下の少量の添加で、その系のゲル化を可能にする。したがって、用いる非水溶媒が本来有する特性をほとんど低下させることなく、ゲル化による機能を付与することができる。例えば、そのような化合物をリチウムイオン二次電池の電解液材料として用いた場合、高い電池特性と高い安全性とを両立することが可能となる(例えば特許文献3参照)。
多環式芳香族化合物の製造方法として、芳香族ホウ素化合物とアニオン性脱離基を有する芳香族化合物とのカップリング反応(鈴木−宮浦クロスカップリング法)(例えば非特許文献1参照)は、官能基に対するコンパチビリティーが高いため、近年、非常に幅広く利用されている。
例えば、複雑な分子構造を有する天然物の合成から新規な構造と機能とを有する共役オリゴマー及びポリマーの創製といった学術分野の他、医農薬品及びその中間体、並びに、液晶、有機発光ダイオード及び有機導電素材などの電子・光学材料等の工業生産分野などにおいて、その反応の応用例が多数報告されている(例えば非特許文献2参照)。
また、工業生産分野においては、精製及び廃液の除去は重要な課題であり、副生成物と目的物とを容易に分離する手段が必要とされている。芳香族ホウ素化合物とアニオン性脱離基を有する芳香族化合物とのカップリング反応においても、副生成物の塩の除去を容易にするために、非水溶性溶媒を用いた2相系でのクロスカップリング反応が報告されている(例えば特許文献4参照)。
国際公開第2011/099572号 国際公開第2009/078268号 国際公開第2010/095572号 特開2001−89402号公報
Synthetic Communications、第11巻、p513〜519、1981年 鈴木章、TCIメール、No.142、2009年4月
しかしながら、特許文献1及び3では、工業生産に適した方法は示されておらず、特に、ハロゲン原子を有する多環式芳香族化合物の工業的製法は開示されていない。
また、特許文献4に開示されている方法でも、工業生産に適した方法は示されておらず、特に、目的物の分離及び精製が難しいことが課題となる。
そこで、特許文献1〜3に開示されているようなハロゲン原子を有する多環式芳香族化合物の合成の際に、高収率であって、副生成物の除去等の精製が容易である多環芳香族化合物の製造方法を確立することが望まれている。
本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、ハロゲン原子を有する多環式芳香族化合物を、工業生産に適した方法で、高収率で製造し、かつ容易に精製できる、多環式芳香族化合物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、ハロゲン原子を有する多環式芳香族化合物の合成について検討を行い、その中でも特定の構造を有する化合物を選定し、その化合物について、含金属化合物を用いた合成条件を用いることで上記の課題を解決するに至った。
すなわち本発明は以下のとおりである。
[1]下記一般式(1)で表される多環式芳香族化合物の製造方法であって、下記一般式(2)で表される化合物(2)と、下記一般式(3)で表される化合物(3)とを反応させて、下記一般式(4)で表される化合物(4)を製造する第1の工程と、前記化合物(4)を酸化して、下記一般式(5)で表される化合物(5)を製造する第2の工程と、前記化合物(5)と、下記一般式(6)で表される化合物(6)とを反応させる第3の工程と、を含み、前記第3の工程において、前記化合物(5)及び前記化合物(6)のうち、モル基準で少ない方の化合物の量に対して0.0001〜1mol%の含金属化合物の存在下に、前記化合物(5)と前記化合物(6)とを反応させ、前記含金属化合物に含まれる金属が、パラジウムである、製造方法。
Figure 0005889029
(式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)中、R1下記一般式(7)で表される基を示し、R2炭素数1〜20のアルコキシ基を示し、Lはスルホニル基を示し、X1及びX2は、それぞれ臭素原子を示し、Y1は脱離可能な元素又は1価の基を示し、Zは式(6)に示されるベンゼン環に直接結合したホウ素原子を有する1価の基を示す。)
Figure 0005889029
(式(7)中、nは2〜8の整数を示し、mは1〜20の整数を示す。)
[2]1つ以上の前記工程において用いられる溶媒が、水を含む、[1]に記載の多環式芳香族化合物の製造方法。
[3]1つ以上の前記工程において用いられる溶媒が、水溶性有機溶媒を含む、[1]又は[2]に記載の多環式芳香族化合物の製造方法。
[4]前記水溶性有機溶媒の20℃における水への溶解度が20質量%以上である、[3]に記載の多環式芳香族化合物の製造方法。
[5]前記水溶性有機溶媒の20℃における水への溶解度が50質量%以上である、[3]に記載の多環式芳香族化合物の製造方法。
[6]前記水溶性有機溶媒は、20℃において水と任意の比率で混和するものである、[3]に記載の多環式芳香族化合物の製造方法。
[7]前記水溶性有機溶媒が、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒及びニトリル溶媒、ニトロメタン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、酢酸及びピリジンからなる群より選ばれる1種以上の溶媒である、[3]〜[6]のいずれか1つに記載の多環式芳香族化合物の製造方法。
[8]前記水溶性有機溶媒が、メタノール、エタノール、1,2−プロパンジオール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、t−アミルアルコール、ニトロメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトン、酢酸、ピリジン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサンからなる群より選ばれる1種以上の溶媒である、[3]〜[7]のいずれか1つに記載の多環式芳香族化合物の製造方法。
]前記第2の工程において、酸化剤として過酸化水素水及びモノ過硫酸水素カリウムのうちの少なくとも一方を用いる、[1]〜[]のいずれか1つに記載の多環式芳香族化合物の製造方法
本発明によると、ハロゲン原子を有する多環式芳香族化合物を、工業生産に適した方法で、高収率で製造し、かつ容易に精製できる、多環式芳香族化合物の製造方法を提供することが可能となる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
本実施形態の下記一般式(1)で表される多環式芳香族化合物(以下、「化合物(1)」とも表記する。)の製造方法は、下記一般式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」とも表記する。)と、下記一般式(3)で表される化合物(以下、「化合物(3)」とも表記する。)とを反応させて、下記一般式(4)で表される化合物(以下、「化合物(4)」とも表記する。)を製造する第1の工程と、化合物(4)を酸化して、下記一般式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」とも表記する。)を製造する第2の工程と、化合物(5)と、下記一般式(6)で表される化合物(以下、「化合物(6)」とも表記する。)とを反応させる第3の工程とを含み、第3の工程において、化合物(5)及び化合物(6)のうち、モル基準で少ない方の化合物に対して0.0001〜1mol%の含金属化合物の存在下に、化合物(5)と化合物(6)とを反応させ、含金属化合物に含まれる金属が、パラジウム、ニッケル及び鉄からなる群より選ばれる1種以上である製造方法である。
Figure 0005889029
ここで、式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)中、R1は1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示し、R2はアルキル基又はアルコキシ基を示し、Lはスルフィニル基又はスルホニル基を示し、X1及びX2は、それぞれ独立にアニオン性の1価の脱離基を示し、Y1は脱離可能な元素又は1価の基を示し、Zは式(6)に示されるベンゼン環に直接結合したホウ素原子を有する1価の基を示す。
式(1)中、Lはスルフィニル基(−S(=O)−)又はスルホニル基(−SO2−)を示し、多環式芳香族化合物のゲル化剤等としての有用性の観点から、好ましくはスルホニル基である。
式(1)中、R1は、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示すが、それらの基は、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたものである。これらの中では、溶媒への溶解度の観点から、好ましくは、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたアルキル基であり、その基における炭素数は、好ましくは1〜28であり、より好ましくは3〜12であり、更に好ましくは6〜8である。多環式芳香族化合物としての様々な用途での有用性の観点から、好ましくはハロゲン原子がフッ素原子であり、より好ましくはR1がパーフルオロアルキル鎖部位を含む基であり、更に好ましくはR1が下記一般式(7)で表される基であり、特に好ましくは、−L−R1が下記一般式(8)で表される基である。
Figure 0005889029
式(7)及び(8)において、nは0〜8の整数であり、好ましくは2〜4の整数であり、より好ましくは2である。また、mは1〜20の整数であり、好ましくは1〜8の整数であり、より好ましくは1〜6の整数であり、更に好ましくは1、2、4又は6であり、特に好ましくは4又は6である。mが上記範囲にあるパーフルオロ基を採用することにより、原料を安価に入手することができる。
式(1)において、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていることにより、最終生成物である所望の多環式芳香族化合物が析出しやすく、有機相に溶解している含パラジウム化合物、配位子及び原料などとの分離がより容易であり、精製工程を更に簡略化することができる。
式(1)中、R2はアルキル基又はアルコキシ基を示す。アルキル基及びアルコキシ基の炭素数は好ましくは1〜20である。R2は、好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数2〜14のアルコキシ基であり、更に好ましくは炭素数3〜12のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数3〜10のアルコキシ基である。炭素数が当該範囲にあることで、溶媒との親和性が一層良好となり、精製がより容易となり、目的とする多環式芳香族化合物を更に高純度で得やすくなる。
式(1)中、R1、R2及びLの組み合わせは、それぞれについて上記に示された基のいずれの組み合わせであってもよく、−L−R1及びR2は、それぞれベンゼン環のどの部位に結合したものであってもよい。
式(2)中、X1はアニオン性の1価の脱離基(以下、単に「アニオン性脱離基」ともいう。)を示す。ここで、「アニオン性の1価の脱離基」とは、二つ以上の化合物が反応する際に、アニオンとして原料化合物から脱離する1価の化学種(原子及び基)である。本実施形態の製造方法において、X1は、化合物(5)と化合物(6)との反応時に化合物(4)から脱離するアニオン性の1価の化学種を意味する。アニオン性脱離基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子などのハロゲン原子、トリフラート基(CF3SO3−)、パーフルオロアルキルスルホナート基(Cp2p+1SO3−;pは1〜20の整数を示す。)が挙げられる。これらの中で、アニオン性脱離基は、多環式芳香族化合物の合成の容易さの観点から、好ましくはハロゲン原子であり、更に好ましくは臭素原子、ヨウ素原子又は塩素原子であり、特に好ましくは臭素原子である。
式(2)において、芳香環上のX1の位置は、前述のLにおける硫黄原子に対してオルト位、メタ位及びパラ位のいずれでもよいが、多環式芳香族化合物の合成の容易さの観点から、パラ位にあることが好ましい。
式(2)中、Y1は脱離可能な元素又は1価の基を示す。ここで「脱離可能な元素又は1価の基」とは、本実施形態の製造方法において、化合物(2)と化合物(3)との反応時に化合物(2)から脱離する元素又は1価の基を意味する。そのような化学種としては、例えば、水素原子、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子及びテトラエチルアンモニウムが挙げられる。入手性の観点から、好ましくは、水素原子、ナトリウム原子又はカリウム原子であり、より好ましくは水素原子である。
式(2)中、Y1及びX1の組み合わせは、それぞれについて上記に示された基のいずれの組み合わせであってもよく、−S−Y1は、ベンゼン環のどの部位に結合したものであってもよい。
式(3)中、X2はアニオン性脱離基を示す。本実施形態の製造方法において、X2は、化合物(2)と化合物(3)との反応時に化合物(3)から脱離するアニオン性の1価の化学種を意味する。アニオン性脱離基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子などのハロゲン原子、トリフラート基(CF3SO3−)、パーフルオロアルキルスルホナート基(Cp2p+1SO3−;pは1〜20の整数を示す。)が挙げられる。これらの中で、アニオン性脱離基は、多環式芳香族化合物の合成の容易さの観点から、好ましくはハロゲン原子であり、更に好ましくは臭素原子、ヨウ素原子又は塩素原子であり、特に好ましくは臭素原子である。
式(3)中、R1及びX2の組み合わせは、それぞれについて上記に示された基のいずれの組み合わせであってもよい。
式(6)中、Zは、式(6)に示されるベンゼン環に直接結合したホウ素原子を有する1価の基を示す。Zは、好ましくは下記一般式(9)で表される官能基である。
Figure 0005889029
ここで、式(9)中、Q1及びQ2は互いに同じでも異なっていてもよい1価の基である。その1価の基としては、例えば、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、アルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基、アルキル基で置換されていてもよいフェニル基及びハロゲン原子が挙げられる。上記アルキル基及びアルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜10である。1価の基は、好ましくは水酸基及びアルコキシ基であり、より好ましくは水酸基である。また、Q1及びQ2は互いに結合してホウ素原子と共に環を形成してもよい。Q1及びQ2が互いに結合した基としては、例えば、アルキル基で置換されていてもよいアルキレンジオキシ基、及び、アルキル基で置換されていてもよいアルキレン基が好ましい。アルキル基で置換されていてもよいアルキレンジオキシ基(−O−R−O−;Rはアルキレン基)の主鎖の炭素数は好ましくは2〜6であり、より好ましくは2〜3であり、特に好ましくは2である。また、アルキル基で置換されていてもよいアルキレン基の主鎖の炭素数は好ましくは2〜11であり、より好ましくは4〜7である。さらに、置換するアルキル基の炭素数は好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜3であり、特に好ましくは1である。また、主鎖の1つの炭素原子に対して置換したアルキル基の数は単数であっても複数であってもよい。Q1及びQ2が互いに結合した基としては、例えば下記式(10A)、(10B)、(10C)及び(10D)で表される基が挙げられる。
Figure 0005889029
あるいは、上記一般式(9)で表される官能基としては、ボロン酸類縁体由来の1価の基が好ましく、下記一般式(11)で表される1価の基がより好ましい。本明細書において、ボロン酸類縁体とは、ボロン酸、ボロン酸の1つ以上の水素原子が置換した化合物、環を形成していてもよいボロン酸エステル、及び下記一般式(11A)で表されるボロキサン環を含む化合物を包含する。
Figure 0005889029
ここで、式(11)及び(11A)中、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に、1価の有機基を示し、好ましくは、水素原子、水酸基及び−Ph−R2(Phはベンゼン環であり、R2は上記式(6)におけるものと同義である。)で表される基である。式(11)において、R3及びR4の両方が−Ph−R2で表される基であるか、R3及びR4のいずれか一方が−Ph−R2で表される基であり、他方が水酸基であるとより好ましく、R3及びR4の両方が−Ph−R2で表される基であると更に好ましい。R3及びR4の両方が−Ph−R2で表される基である場合、化合物(6)における3つのR2が全て同じ基であると特に好ましい。また、式(11A)において、R3、R4及びR5が、それぞれ独立に、水酸基又は−Ph−R2で表される基であると好ましく、いずれか1つが水酸基であって、他の2つが−Ph−R2で表される基であるか、いずれも−Ph−R2で表される基であるとより好ましく、いずれも−Ph−R2で表される基であると更に好ましい。この場合も、R2が全て同じ基であると特に好ましい。
式(6)において、芳香環上のZの位置は、R2に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれでもよいが、多環式芳香族化合物のゲル化剤等としての有用性の観点から、パラ位にあることが好ましい。
式(6)中、R2及びZの組み合わせは、それぞれについて上記に示された基のいずれの組み合わせであってもよく、R2は、ベンゼン環のどの部位に結合したものであってもよい。
化合物(6)は市販品として入手してもよく、常法により合成されてもよい。本実施形態の製造方法は、化合物(6)の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態の製造方法においては、第1の工程において、化合物(2)と、化合物(3)とを反応させて、化合物(4)を製造する。
第1の工程における化合物(2)と化合物(3)との配合比は、化合物(2)の量を100mol%とした場合に、化合物(3)の量が好ましくは50〜200mol%、より好ましくは80〜120mol%、更に好ましくは90〜110mol%となる配合比である。配合比が当該範囲であることにより、反応終了後の残存原料が少なく、精製が容易になる。
第1の工程において、触媒として塩基を用いることができる。そのような触媒としては、例えば、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、カルボン酸塩及びアルコキシドの他、有機塩基である3級アミン(例えば、トリエチルアミン)が挙げられる。多環式芳香族化合物の合成及び精製を容易にする観点から、塩基は、好ましくはアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩及びカルボン酸塩であり、より好ましくは、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩及びカルボン酸塩であり、更に好ましくは、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩及び炭酸水素塩である。アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩及び炭酸水素塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素セシウムが好ましく、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムが好ましい。
第1の工程において、化合物(2)と化合物(3)とを反応させる際の反応温度は、溶媒の沸点と原料の溶解性との観点から、好ましくは0〜200℃、より好ましくは20〜150℃、更に好ましくは40〜130℃である。反応系周囲の雰囲気は大気雰囲気であってもよいが、副生成物を低減させる観点から、不活性ガスで置換した雰囲気であると好ましい。コストの観点から、反応系周囲の雰囲気は、窒素ガスで置換した雰囲気であるとより好ましい。反応は常圧下で進行させることも可能であり、減圧又は高圧下で進行させることも可能である。
第1の工程での反応の進行は、薄層クロマトグラフィー、NMR、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等の分析により確認できる。
第2の工程では、化合物(4)を酸化して、化合物(5)を製造する。
第2の工程において、化合物(4)を酸化するための酸化剤としては、例えば、過酸化水素水、モノ過硫酸水素カリウム、有機過酸化物、金属化酸化物、次亜塩素酸ナトリウム及び空気を用いることができる。これらの中では、入手の容易さ、精製の容易さの観点から過酸化水素水が好ましく、取扱いの容易さの観点から、モノ過硫酸水素カリウムが好ましい。酸化剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。空気以外の酸化剤と化合物(3)との配合比は、化合物(3)の量を100mol%とした場合に、酸化剤の化合物の量が好ましくは100〜2000mol%、より好ましくは100〜800mol%の配合比である。
第2の工程において、化合物(4)を反応させる際の反応温度は、溶媒の沸点と原料の溶解性との観点から、好ましくは0〜200℃、より好ましくは20〜150℃、更に好ましくは40〜130℃である。反応系周囲の雰囲気は大気雰囲気であってもよいが、不活性ガスで置換した雰囲気で反応を行うことも可能である。コストの観点から、反応系周囲の雰囲気は、窒素ガスで置換した雰囲気で行うのが好ましい。反応は、常圧下で進行することもでき、減圧又は高圧下で進行することもできる。
第2の工程における反応の進行は、薄層クロマトグラフィー、NMR、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等の分析により確認できる。
第3の工程では、化合物(5)と、化合物(6)とを反応させる。
第3の工程における、化合物(5)と化合物(6)との配合比は、化合物(5)の量を100mol%とした場合に、化合物(6)の量が好ましくは50〜200mol%、より好ましくは80〜120mol%、更に好ましくは90〜110mol%となる配合比である。
第3の工程においては、触媒として含金属化合物を用いる。含金属化合物に含まれる金属は、パラジウム、ニッケル及び鉄からなる群より選ばれる1種以上の金属であり、含金属化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。反応の選択性の観点から、好ましい含金属化合物は含パラジウム化合物である。
含パラジウム化合物は、その構造中にパラジウムを有する化合物であれば特に限定されず、例えば、0価又は2価のパラジウム金属、及び錯体を含むパラジウム塩が挙げられる。また、含パラジウム化合物は、活性炭、炭素粒子、酸化アルミニウム、ヒドロキシアパタイト及び多孔質体などの担体に担持されていてもよい。好ましく用いられる含パラジウム化合物としては、例えば、パラジウム(0)/炭素、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、パラジウムケトナート、パラジウムアセチルアセトナート、ニトリルパラジウムハロゲン化物、パラジウムハロゲン化物、アリルパラジウムハロゲン化物及びパラジウムビスカルボキシレートが挙げられる。これらの中では、酢酸パラジウム(II)及び塩化パラジウム(II)がより好ましく、酢酸パラジウム(II)が更に好ましく用いられる。含パラジウム化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
含パラジウム化合物は市販品を入手してもよく、常法により製造してもよい。製造する場合、例えば、パラジウム(II)アセテートは、パラジウム(II)クロライドと酢酸ナトリウムとの反応によって製造できる。
含ニッケル化合物は、その構造中にニッケルを有する化合物であれば特に限定されず、例えば、0価又は2価のニッケル金属、及び錯体を含むニッケル塩が挙げられる。また、含ニッケル化合物は、活性炭、炭素粒子、酸化アルミニウム、ヒドロキシアパタイト及び多孔質体などの担体に担持されていてもよい。ニッケルの塩としては、例えば、ニッケルと無機酸又は有機酸との塩が挙げられる。より具体的には、ニッケルの無機酸塩としては、例えば、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)及びヨウ化ニッケル(II)等のニッケルハロゲン化物、硝酸ニッケル(II)、硫酸ニッケル(II)、硫酸アンモニウムニッケル(II)、並びに次亜リン酸ニッケル(II)が挙げられる。ニッケルの有機酸塩としては、例えば、酢酸ニッケル(II)、ギ酸ニッケル(II)、ステアリン酸ニッケル(II)、シクロヘキサンブチレートニッケル(II)、クエン酸ニッケル(II)、及びナフテン酸ニッケル(II)が挙げられる。2価ニッケルの錯体としては、例えば、塩化ヘキサアンミンニッケル(II)及びヨウ化ヘキサアンミンニッケル(II)等の2価ニッケルのアミン錯体、並びに、2価ニッケルのアセチルアセトン錯体であるニッケルアセチルアセトナートが挙げられる。2価ニッケルのπ錯体としては、例えば、ビス(η3−アリル)ニッケル(II)、ビス(η−シクロペンタジエニル)ニッケル(II)、及び塩化アリルニッケル二量体が挙げられる。0価ニッケル錯体として、0価ニッケル錯体をそのまま用いてもよく、ニッケル塩を還元剤の存在下で反応させ、系内で0価ニッケルを生成させて0価ニッケル錯体を得てもよい。後者の場合、ニッケル塩としては、例えば、塩化ニッケル及び酢酸ニッケルが挙げられ、還元剤としては、例えば、亜鉛、水素化ナトリウム、ヒドラジン及びその誘導体、並びにリチウムアルミニウムハイドライドが挙げられる。さらに必要に応じて添加物として、よう化アンモニウム、よう化リチウム及びよう化カリウム等が用いられてもよい。0価ニッケル錯体としては、例えば、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル及びニッケルカルボニル(0)が挙げられる。含ニッケル化合物はニッケル水酸化物であってもよく、ニッケル水酸化物としては、例えば、水酸化ニッケル(II)が挙げられる。また、含ニッケル化合物として、例えば、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロニッケル(II)、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジクロロニッケル(II)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルも挙げられる。
含鉄化合物は、その構造中に鉄を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、鉄金属、及び錯体を含む鉄塩が挙げられる。また、含鉄化合物は、活性炭、炭素粒子、酸化アルミニウム、ヒドロキシアパタイト及び多孔質体などの担体に担持されていてもよい。用いられる含鉄化合物としては、例えば、塩化鉄などのハロゲン化鉄が挙げられる。
含金属化合物は、化合物(5)及び化合物(6)のうち、モル基準で少ない方の化合物の量(100mol%)に対して、0.0001〜1mol%、好ましくは0.0001〜0.1mol%、より好ましくは0.001〜0.1mol%用いられる。含金属化合物の使用量が当該範囲にあることにより、目的とする多環式芳香族化合物の収率をより高めることが可能になると共に、生成物に含まれる金属量を少なくでき、その後の精製が容易になる。
第3の工程において、塩基を用いることもできる。塩基としては、例えば、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、カルボン酸塩、アルコキシドの他、有機塩基である3級アミン(例えば、トリエチルアミン)を用いることができる。多環式芳香族化合物の合成及び精製を容易にする観点から、塩基は、好ましくはアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩及びカルボン酸塩であり、より好ましくは、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩及びカルボン酸塩であり、更に好ましくは、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩及び炭酸水素塩である。アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩及び炭酸水素塩として、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素セシウムが好ましく、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムがより好ましい。
塩基は、反応系内に独立して添加する化合物であってもよく、原料、触媒及び配位子などに含まれた状態で添加するものであってもよい。塩基は、化合物(5)及び化合物(6)のうち、モル基準で少ない方の化合物の量(100mol%)に対して、好ましくは10〜5000mol%、より好ましくは50〜2000mol%用いられる。また、塩基は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
第3の工程において、反応系内に配位子を添加してもよい。配位子としては、例えば、トリフェニルホスフィン(PPh3)、メチルジフェニルホスフィン(Ph2PCH3)、トリフリルホスフィン(P(2−furyl)3)、トリ(o−トリル)ホスフィン(P(o−tol)3)、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン(PCy3)、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン(PhPCy2)、トリ(t−ブチル)ホスフィン(PtBu3)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、2,2’−ビス[(ジフェニルホスフィノ)ジフェニル]エーテル(DPEphos)(テトラへドロン・レターズ(Tatrahedron Letters)第39巻、第5327頁(1998年)参照)、ジフェニルホスフィノフェロセン(DPPF)、1,1’−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)フェロセン(DtBPF)、N,N−ジメチル−1−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン、1−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルメチルエーテル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−ジメチルアミノ−1,1’−ビフェニル(ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(Journal of the American ChemicalSociety)第120巻、第9722頁(1998年)参照)、スピロ型ホスホニウム塩(アンゲバンテ・ケミー・インターナショナル・エディション(Angewandte Chemie international Edition)第37巻、第481頁(1998年)参照)などのホスフィン系配位子、イミダゾル−2−イリデンカルベン類などのホスフィンミミック配位子(アンゲバンテ・ケミー・インターナショナル・エディション・イン・イングリッシュ(Angewandte Chemie international Edition in English)、第36巻、第2163頁(1997年)参照)が挙げられる。
また、配位子は、含金属化合物に含まれる金属とその配位子上の置換基とで反応して、金属がパラジウムである場合のパラダサイクル(アンゲバンテ・ケミー・インターナショナル・エディション・イン・イングリッシュ(Angewandte Chemie international Edition in English)第34巻、第1844頁(1995年)参照)のような化合物を形成していてもよい。
さらに、配位子として、例えば、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、メチレンビスオキサゾリン及びN,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の含窒素配位子も挙げられる。
化合物(5)が、X1のアニオン性脱離基として塩素原子を有する場合、収率の向上の観点から、配位子として、トリフリルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン(パラダサイクルを形成してもよい。)、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(t−ブチル)ホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、1,1’−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)フェロセン、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−ジメチルアミノ−1,1’−ビフェニル及びイミダゾル−2−イリデンカルベン類などのホスフィンミミック配位子を用いることが好ましい。
反応系内での配位子の量は、化合物(5)及び化合物(6)のうち少ない方の化合物の量(100mol%)に対して、0.0001〜40mol%、好ましくは0.0001〜8mol%、より好ましくは0.0001〜0.4mol%、更に好ましくは0.001〜0.4mol%である。配位子は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
化合物(5)と化合物(6)とを反応させる際の反応温度は、溶媒の沸点と原料の溶解性との観点から、好ましくは0〜200℃、より好ましくは20〜150℃、更に好ましくは40〜130℃である。反応系周囲の雰囲気は大気雰囲気であってもよいが、副生成物を低減させる観点から、好ましくは不活性ガスで置換した雰囲気である。コストの観点から、反応系周囲の雰囲気は、より好ましくは窒素ガスで置換した雰囲気である。反応は常圧下で進行することも可能であり、減圧又は高圧下で進行することも可能である。
第3の工程における反応の進行は、薄層クロマトグラフィー、NMR、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等の分析により確認できる。
本実施形態における、各原料、生成物及び副生成物は、固体、液体のいずれの状態で存在していてもよい。反応系は、一相であってもよく、二相以上に分離しており、例えば、液体と固体とに分離していてもよい。二相以上に分離していて、少なくとも1つの相に液体が含まれ、液体と固体とが分離している場合、固体を溶解させるための溶媒等を用いないことにより、生産性が向上する。また、原料が液体であったり、溶媒等を用いたりして、全ての相が液体である場合、反応進行の制御が容易になる。
本実施形態において、上記第1、第2及び第3の工程で用いられる反応溶媒は、水であってもよく、有機溶媒であってもよく、その両者を併用することもできる。第1、第2及び第3の工程のうち1つ以上の工程において、反応系に含まれる溶媒に水が含まれると好ましい。水を含むことにより、副生する塩等を溶解し、反応目的物との分離・精製が容易となり、反応を促進することができる。水の量は、化合物(1)100質量部に対して1000質量部以下であることが好ましい。
第1、第2及び第3の工程のうち1つ以上の工程において、反応系に含まれる溶媒に有機溶媒が含まれると好ましい。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶媒、クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン及びクロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロオクタン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロヘキサン及びパーフルオロベンゼンなどのパーフルオロ基を有する溶媒等の含フッ素溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル及び酢酸イソプロピルなどの酢酸アルキル等のエステル溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリジノン、ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒、ジエチルエーテル、ジグライム、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエトキシメタン、ジイソプロピルエーテル、アニソール及びメチルt−ブチルエーテル等のエーテル溶媒、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶媒、ヘキサン及びシクロヘキサン等のアルカン溶媒、メタノール、エタノール、1,2−プロパンジオール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、t−アミルアルコール等のアルコール溶媒、アセトニトリル等のニトリル溶媒1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ピリジン、ニトロメタン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、酢酸並びにトリエチルアミンが挙げられる。精製工程の簡素化の観点から、有機溶媒が水溶性有機溶媒を含むと好ましい。水溶性有機溶媒は、上記各工程の反応温度において、又は、精製工程において、水と混和する有機溶媒である。
反応系内に用いられる溶媒として水溶性有機溶媒が含まれる場合、水溶性有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン及びジメチルホルムアミド等のアミド溶媒、ジグライム、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン及びテトラヒドロフラン等のエーテル溶媒、アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン溶媒、メタノール、エタノール、1,2−プロパンジオール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール及びt−アミルアルコール等のアルコール溶媒、アセトニトリル等のニトリル溶媒、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ピリジン、ニトロメタン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、並びに、酢酸が挙げられる。
水溶性有機溶媒は、好ましくは20℃における水への溶解度が20質量%以上である溶媒であり、精製時における溶解性の観点から、より好ましくは20℃における水への溶解度が50質量%以上である溶媒であり、更に好ましくは20℃において水と任意の比率で混和する溶媒である。
水溶性有機溶媒は、好ましくは、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、ニトリル溶媒、ニトロメタン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、酢酸及びピリジンからなる群より選ばれる1種以上の溶媒である。より好ましくは、メタノール、エタノール、1,2−プロパンジオール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、t−アミルアルコール、ニトロメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトン、酢酸、ピリジン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサンからなる群より選ばれる1種以上の溶媒である。
水溶性有機溶媒は水と混和しやすいため、精製工程において、目的物を析出させたり、その析出を促進させたりすることができる。また、水溶性有機溶媒を用いることにより、水の添加により副生する塩を溶解し除去することも可能となる。
反応系に含まれる有機溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
複数の上記工程で有機溶媒を用いる場合、各工程間で互いに異なる有機溶媒を用いてもよく、それぞれ各工程に最適な有機溶媒を選択することができる。上記各工程のうち、連続する2つ以上の工程、すなわち、第1の工程及び第2の工程、第2の工程及び第3の工程、並びに、第1の工程、第2の工程及び第3の工程、において用いられる溶媒が、互いに同一の水溶性有機溶媒を含むことが好ましい。これにより、前の工程での反応物に含まれる水溶性有機溶媒の除去が不要となり、精製が簡易になり、また、水溶性有機溶媒を回収して蒸留等により再利用する場合にも、簡易なプロセスで精製できる。全ての工程、すなわち、第1の工程、第2の工程及び第3の工程において用いられる溶媒が、互いに同一の水溶性有機溶媒を含むと、さらに好ましい。
本実施形態の製造方法において、上記第1、第2及び第3の工程のいずれかを経て得られた生成物を精製してもよい。すなわち、精製は、どの工程の後で行ってもよい。例えば上記各工程が終了するごとに精製を行ってもよく、第2の工程の後及び第3の工程の後の両方で精製を行ってもよく、第3の工程の後のみで精製を行ってもよい。
精製としては、公知の精製法を用いることができる。例えば、蒸留、再結晶、濾過、溶剤洗浄、減圧での溶媒留去及び乾燥からなる公知の精製法のうち、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
精製の操作として、例えば、上記工程における反応の後に、反応混合物中に含まれる塩や水溶性原料を水に溶解させ、塩や水溶性原料を除去することができる。また、水を用いておらず、有機相が液体である場合には、濾過により塩を分離することができる。また、有機相と、目的物が不溶な溶媒とを混合することにより、目的物を析出させ、濾過により目的物を得ることができる。
例えば、次の工程で用いる溶媒が、その前の工程で用いた溶媒を含む場合には、溶媒を留去させてもよく、有機相をそのまま用いる若しくは濃縮若しくは溶媒を追加することにより、次の工程を行ってもよい。
本実施形態によれば、化合物(1)を工業生産に適した方法、より具体的には、例えば、低温などの工業生産上不利な条件を採用する必要がなく、一般的な合成設備、例えば、不活性雰囲気への置換が可能であったり、水蒸気を用いる等した一般的な加熱方法に対応する温度範囲で使用可能であったりする設備で製造できる。例えば、抽出溶媒による製造物の抽出操作等の煩雑な操作を採用する必要がなく、上記のように容易に目的物を分離、精製することができる。すなわち、本実施形態の製造方法により、化合物(1)を高収率で製造し、かつ容易に精製することができる。また、本実施形態の製造方法によると、原料コストをより抑制することも可能となる。
本実施形態の製造方法においては、第1、第2及び第3の工程において、1つ以上の工程において、含金属化合物以外に、反応触媒、助触媒、反応促進剤、乳化剤、消泡剤などの添加剤用いてもよい。
反応触媒は上述の反応を促進する化合物、並びに、副反応や目的外の反応を抑制するため負触媒の効果を有する化合物を含む。
反応触媒としては、例えば、相間移動触媒を挙げることができる。相間移動触媒は、液体−液体、固体−液体など、相互に混ざり合わない基質若しくは試剤間の反応において、反応種を可溶化させる、界面に集めるなどの効果により、反応を有効に行わせるために用いられる触媒である。相間移動触媒としては、例えば、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アミン類、クラウンエーテル、クリプタンド及び鎖状ポリエチレングリコール誘導体が挙げられる。
乳化剤は、相互に混ざり合わない基質若しくは試薬間において、一方の基質若しくは試薬をもう一方の基質若しくは試薬中に分散させることにより、反応を効率的に行う添加剤である。乳化剤としては、例えば、脂肪酸エステル、高級アルコール、スルホニウム塩、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アミン類及びグリコール類が挙げられる。
これらの添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、上記の工程全てにおいて同一の添加剤を用いてもよく、各工程で互いに異なる添加剤を用いてもよい。
本実施形態の製造方法により得られた多環式芳香族化合物(化合物(1))は、非水電解液二次電池材料、有機EL材料、液晶材料、非線形光学材料、写真用添加剤、増感色素及び医薬品等に用いることができ、あるいは、それらの材料の合成中間体として有用になり得るものである。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[製造例1]
(第1の工程)
4−ブロモベンゼンチオール100g(529mmol)、よう化2−(パーフルオロヘキシル)エチル260g(556mmol)、アセトニトリル1L、及び炭酸カリウム110g(794mmol)を反応容器内に投入し、大気圧下、50℃で1時間攪拌した。次に、蒸留水1Lを反応容器内に投入し、50℃で5分間攪拌し、濾過により白色固体を得た。白色固体にアセトニトリル500mLを加え、大気圧下、50℃で5分間攪拌した。再度、蒸留水1Lを反応容器内に投入し、50℃で5分間攪拌し、濾過により白色固体を得た。
(第2の工程)
第1の工程において最終的に得られた白色固体全量に、アセトニトリル2400mL、蒸留水200mL、及びモノ過硫酸水素カリウム(商品名「オキソン」、デュポン株式会社製、以下同様。)813g(1323mmol)を加え、更に大気圧下、70℃で11時間攪拌した。蒸留水1000mLを反応容器内に投入し、70℃で5分間攪拌した。攪拌後、濾過により白色固体を得た。白色固体にアセトニトリル1000mLを加え、70℃で5分間攪拌し、さらに蒸留水1000mLを反応容器内に投入し、70℃で5分間攪拌した。濾過及び溶媒除去により白色固体300g(529mmol)を得た。
(第3の工程)
第2の工程において最終的に得られた白色固体全量を収容した反応容器内に、p−プロポキシフェニルボロン酸100g(555mmol)、酢酸パラジウム11.9mg(0.0529mmol)、トリフェニルホスフィン48.6mg(0.185mmol)、炭酸ナトリウム224g(2116mmol)、アセトニトリル4000mL、及び蒸留水2Lを投入した。反応系周囲の雰囲気を窒素ガスに置換した後、液を大気圧下、90℃で2時間攪拌した。その後、放冷して得られた析出物を2回水洗し、更にヘキサンで2回洗った。さらに、溶媒除去を経て、白色固体の状態で下記構造を有する化合物(a)を得た。その収量は296gであり、収率は90%であった。また、得られた化合物(a)の構造を1H−NMR(CDCl3)により確認した。その結果は以下のとおりであった。
最終生成物のNMR
1H-NMR(CDCl3) 1.07 (3H, m), 1.84 (2H, m), 2.63 (2H, m), 3.34 (2H, m), 3.98 (2H, m), 7.02 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.57 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.77 (2H, d, J=8.0Hz), 7.95 (2H, d, J=8.0 Hz) ppm
Figure 0005889029
[製造例2]
(第1の工程)
炭酸カリウム110g(794mmol)に代えて、炭酸ナトリウム84g(794mmol)を用いた以外は製造例1と同様にして白色固体を得た。
(第2の工程)
アセトニトリル2400mLに代えて、アセトニトリル2200mLを用いた以外は製造例1と同様にして白色固体298g(525mmol)を得た。
(第3の工程)
p−プロポキシフェニルボロン酸100g(555mmol)、酢酸パラジウム11.9mg(0.0529mmol)及びトリフェニルホスフィン48.6mg(0.185mmol)に代えて、p−ブトキシフェニルボロン酸108g(555mmol)、酢酸パラジウム238mg(1.06mmol)及びトリフェニルホスフィン971mg(3.70mmol)を用いた以外は製造例1と同様にして、白色固体の状態で下記構造を有する化合物(b)を得た。その収量は306gであり、収率は91%であった。得られた化合物(b)の構造を1H−NMR(CDCl3)により確認した。その結果は以下のとおりであった。
最終生成物のNMR
1H-NMR(CDCl3) 1.00 (3H, m), 1.52 (2H, m), 1.81 (2H, m), 2.65 (2H, m), 3.36 (2H, m), 4.03 (2H, m), 7.01 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.56 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.77 (2H, d, J=8.0Hz), 7.95 (2H, d, J=8.0 Hz) ppm
Figure 0005889029
[製造例3]
(第1の工程)
炭酸カリウム110g(794mmol)に代えて、炭酸水素ナトリウム67g(794mmol)を用いた以外は製造例1と同様にして白色固体を得た。
(第2の工程)
アセトニトリル2400mL及び蒸留水200mLに代えて、アセトニトリル2300mL及び蒸留水120mLを用いた以外は製造例1と同様にして白色固体300g(529mmol)を得た。
(第3の工程)
p−プロポキシフェニルボロン酸100g(555mmol)に代えて、p−ブトキシフェニルボロン酸108g(555mmol)を用いた以外は製造例1と同様にして、白色固体の状態で上記構造を有する化合物(b)を得た。その収量は310gであり、収率は92%であった。得られた化合物(b)の構造を1H−NMR(CDCl3)により確認した。その結果は以下のとおりであった。
最終生成物のNMR
1H-NMR(CDCl3) 1.00 (3H, m), 1.51 (2H, m), 1.81 (2H, m), 2.64 (2H, m), 3.36 (2H, m), 4.03 (2H, m), 7.01 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.56 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.77 (2H, d, J=8.0Hz), 7.95 (2H, d, J=8.0 Hz) ppm
[製造例4]
(第1の工程)
4−ブロモベンゼンチオール100g(529mmol)、よう化2−(パーフルオロヘキシル)エチル260g(556mmol)、1,2−ジメトキシエタン660mL及び炭酸ナトリウム84g(794mmol)を反応容器内に投入し、大気圧下、50℃で1時間攪拌した。その後、濾過及び溶媒除去を経て白色固体を得た。
(第2の工程)
第1の工程において得られた白色固体に、酢酸1000mL及び35%過酸化水素水溶液250gを加え、更に大気圧下、70℃で3時間攪拌した。その後、濾過を経てヘキサン中で攪拌し洗浄した。次いで、濾過及び溶媒除去を経て白色固体297g(524mmol)を得た。
(第3の工程)
第2の工程において得られた白色固体全量を収容した反応容器内に、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ヘキソキシベンゼン169g(555mmol)、酢酸パラジウム1.19g(5.29mmol)、トリフェニルホスフィン4.86g(18.5mmol)、炭酸カリウム292g(2116mmol)、1,4―ジオキサン4000mL、及び蒸留水2Lを投入した。反応系周囲の雰囲気を窒素ガスに置換した後、液を大気圧下、95℃で1時間攪拌した。その後、放冷して得られた析出物を2回水洗し、更にヘキサンで2回洗った。さらに、溶媒除去を経て、白色固体の状態で下記構造を有する化合物(c)を得た。その収量は334gであり、収率は95%であった。また、得られた化合物(c)の構造を1H−NMR(CDCl3)により確認した。その結果は以下のとおりであった。
最終生成物のNMR
1H-NMR(CDCl3) 0.92 (3H, m), 1.48 (6H, m), 1.81 (2H, m), 2.65 (2H, m), 3.33 (2H, m), 4.02 (2H, m), 7.01 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.56 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.76 (2H, d, J=8.0Hz), 7.95 (2H, d, J=8.0 Hz) ppm
Figure 0005889029
[製造例5]
(第1の工程)
4−ブロモベンゼンチオール100g(529mmol)、よう化2−(パーフルオロヘキシル)エチル260g(556mmol)、ジエチレングリコールジメチルエーテル600mL、及び炭酸カリウム110g(794mmol)を反応容器内に投入し、大気圧下、50℃で2時間攪拌した。その後、濾過及び溶媒除去を経て白色固体を得た。
(第2の工程)
製造例4と同様にして、白色固体296g(522mmol)を得た。
(第3の工程)
第2の工程において得られた白色固体全量を収容した反応容器内に、p−ヘキソキシフェニルボロン酸123g(555mmol)、酢酸パラジウム23.8mg(0.106mmol)、トリフェニルホスフィン97.1mg(0.370mmol)、炭酸ナトリウム224g(2116mmol)、ジエチレングリコールジメチルエーテル4000mL、及び蒸留水2Lを投入した。反応系周囲の雰囲気を窒素ガスに置換した後、液を大気圧下、95℃で3時間攪拌した。その後、放冷して得られた析出物を2回水洗し、更にヘキサンで2回洗った。次いで、溶媒除去を経て、白色固体の状態で上記構造を有する化合物(c)を得た。その収量は316gであり、収率は90%であった。また、得られた化合物(c)の構造を1H−NMR(CDCl3)により確認した。その結果は以下のとおりであった。
最終生成物のNMR
1H-NMR(CDCl3) 0.93 (3H, m), 1.48 (6H, m), 1.80 (2H, m), 2.63 (2H, m), 3.35 (2H, m), 4.02 (2H, m), 7.01 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.56 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.77 (2H, d, J=8.0Hz), 7.95 (2H, d, J=8.0 Hz) ppm
[製造例6]
(第1の工程)
ジエチレングリコールジメチルエーテル600mLに代えて、エタノール1000mLを用い、2時間の攪拌に代えて、4時間攪拌した以外は製造例5と同様にして白色固体を得た。
(第2の工程)
製造例4と同様にして、白色固体297g(524mmol)を得た。
(第3の工程)
4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ヘキソキシベンゼン169g(555mmol)に代えて、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)オクトキシベンゼン179g(555mmol)を用いた以外は製造例4と同様にして、白色固体の状態で下記構造を有する化合物(d)を得た。その収量は333gであり、収率は91%であった。得られた化合物(d)の構造を1H−NMR(CDCl3)により確認した。その結果は以下のとおりであった。
最終生成物のNMR
1H-NMR(CDCl3) 0.88 (3H, m), 1.48 (10H, m), 1.80 (2H, m), 2.65 (2H, m), 3.35 (2H, m), 4.02 (2H, m), 7.01 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.56 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.77 (2H, d, J=8.0Hz), 7.95 (2H, d, J=8.0 Hz) ppm
Figure 0005889029
[製造例7]
(第1の工程)
4−ブロモベンゼンチオール100g(529mmol)、よう化2−(パーフルオロブチル)エチル208g(556mmol)、1,2−ジメトキシエタン660mL、及び炭酸カリウム110g(794mmol)を反応容器内に投入し、大気圧下、50℃で1時間攪拌した。その後、濾過及び溶媒除去を経て白色固体を得た。
(第2の工程)
製造例4と同様にして、白色固体247g(529mmol)を得た。
(第3の工程)
第2の工程において得られた白色固体全量を収容した反応容器内に、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ヘキソキシベンゼン169g(555mmol)、酢酸パラジウム23.8mg(0.106mmol)、トリフェニルホスフィン97.1mg(0.370mmol)、炭酸カリウム292g(2116mmol)、1,4―ジオキサン4000mL、及び蒸留水2Lを投入した。反応系周囲の雰囲気を窒素ガスに置換した後、液を大気圧下、95℃で3時間攪拌した。その後、放冷して得られた析出物を2回水洗し、更にヘキサンで2回洗った。次いで、溶媒除去を経て、白色固体の状態で下記構造を有する化合物(e)を得た。その収量は269gであり、収率は90%であった。また、得られた化合物(e)の構造を1H−NMR(CDCl3)により確認した。その結果は以下のとおりであった。
最終生成物のNMR
1H-NMR(CDCl3) 0.93 (3H, m), 1.48 (6H, m), 1.81 (2H, m), 2.65 (2H, m), 3.35 (2H, m), 4.02 (2H, m), 7.01 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.56 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.76 (2H, d, J=8.0Hz), 7.94 (2H, d, J=8.0 Hz) ppm
Figure 0005889029
[製造例8]
(第1の工程)
炭酸カリウム110g(794mmol)に代えて、炭酸ナトリウム84g(794m
mol)を用いた以外は製造例7と同様にして白色固体を得た。
(第2の工程)
製造例4と同様にして、白色固体246g(527mmol)を得た。
(第3の工程)
4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ヘキソキシベンゼン169g(555mmol)、及び炭酸カリウム292g(2116mmol)に代えて、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)オクトキシベンゼン179g(555mmol)、及び炭酸ナトリウム224g(2116mmol)を用いた以外は製造例7と同様にして、白色固体の状態で下記構造を有する化合物(f)を得た。その収量は282gであり、収率は92%であった。また、得られた化合物(f)の構造を1H−NMR(CDCl3)により確認した。その結果は以下のとおりであった。
最終生成物のNMR
1H-NMR(CDCl3) 0.88 (3H, m), 1.48 (10H, m), 1.80 (2H, m), 2.65 (2H, m), 3.35 (2H, m), 4.01 (2H, m), 7.01 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.56 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.76 (2H, d, J=8.0Hz), 7.94 (2H, d, J=8.0 Hz) ppm
Figure 0005889029
[製造例9]
(第1の工程)
炭酸カリウム110g(794mmol)に代えて、炭酸水素ナトリウム67g(794mmol)を用いた以外は製造例7と同様にして、白色固体を得た。
(第2の工程)
製造例4と同様にして、白色固体247g(529mmol)を得た。
(第3の工程)
4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ヘキソキシベンゼン169g(555mmol)、及び炭酸カリウム292g(2116mmol)に代えて、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)デコキシベンゼン200g(555mmol)、及び炭酸水素ナトリウム178g(2116mmol)を用いた以外は製造例7と同様にして、白色固体の状態で下記構造を有する化合物(g)を得た。その収量は308gであり、収率は94%であった。また、得られた化合物(g)の構造を1H−NMR(CDCl3)により確認した。その結果は以下のとおりであった。
最終生成物のNMR
1H-NMR(CDCl3) 0.88 (3H, m), 1.47 (14H, m), 1.80 (2H, m), 2.64 (2H, m), 3.35 (2H, m), 4.02 (2H, m), 7.01 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.56 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.77 (2H, d, J=8.0Hz), 7.95 (2H, d, J=8.0 Hz) ppm
Figure 0005889029
[比較例1]
(第1の工程)
製造例4と同様にして、白色固体を得た。
(第2の工程)
製造例4と同様にして、白色固体297g(524mmol)を得た。
(第3の工程)
第2の工程において得られた白色固体全量を収容した反応容器内に、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ヘキソキシベンゼン169g(555mmol)、酢酸パラジウム23.8g(106mmol)、トリフェニルホスフィン97.1g(370mmol)、炭酸カリウム292g(2116mmol)、1,4―ジオキサン4000mL、及び蒸留水2Lを投入した。反応系周囲の雰囲気を窒素ガスに置換した後、液を大気圧下、95℃で90分攪拌した。次いで、そこに蒸留水を加え、析出物を濾過した。更に水洗の後、90℃で乾燥した。次に、酢酸エチルを用いて熱時濾過し、得られた析出物をヘキサンで4回洗った。更に酢酸エチル及びヘキサンで交互に洗い、溶媒除去を経て、黄色固体の状態で化合物(c)を得た。その収量は105gであり、収率は30%であった。
[比較例2]
(第1の工程)
製造例7と同様にして、白色固体を得た。
(第2の工程)
製造例7と同様にして、白色固体247g(529mmol)を得た。
(第3の工程)
第2の工程において得られた白色固体全量を収容した反応容器内に、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)オクトキシベンゼン179g(555mmol)、酢酸パラジウム11.9g(53mmol)、トリフェニルホスフィン48.6g(185mmol)、炭酸カリウム292g(2116mmol)、1,4―ジオキサン4000mL、及び蒸留水2Lを投入した。反応系周囲の雰囲気を窒素ガスに置換した後、液を大気圧下、95℃で90分攪拌した。次いで、そこに蒸留水を加え、析出物を濾過した。更に水洗の後、90℃で乾燥した。次に、酢酸エチルを用いて熱時濾過し、得られた析出物をヘキサンで4回洗った。更に酢酸エチル及びヘキサンで交互に洗い、溶媒除去を経て、黄色固体の状態で化合物(f)を得た。その収量は31gであり、収率は10%であった。
[比較例3]
(第1の工程)
製造例7と同様にして、白色固体を得た。
(第2の工程)
製造例7と同様にして、白色固体247g(529mmol)を得た。
(第3の工程)
第2の工程において得られた白色固体全量を収容した反応容器内に、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ヘキソキシベンゼン169g(555mmol)、酢酸パラジウム11.9g(53mmol)、トリフェニルホスフィン48.6g(185mmol)、炭酸カリウム292g(2116mmol)、1,4―ジオキサン4000mL、及び蒸留水2Lを投入した。反応系周囲の雰囲気を窒素ガスに置換した後、液を大気圧下、95℃で90分攪拌した。次いで、そこに蒸留水を加え、析出物を濾過した。更に水洗の後、90℃で乾燥した。次に、酢酸エチルを用いて熱時濾過し、得られた析出物をヘキサンで4回洗った。更に酢酸エチル及びヘキサンで交互に洗い、溶媒除去を経て、黄色固体の状態で化合物(e)を得た。その収量は119gであり、収率は40%であった。
[比較例4]
(第1の工程)
製造例4と同様にして、白色固体を得た。
(第2の工程)
製造例4と同様にして、白色固体297g(524mmol)を得た。
(第3の工程)
第2の工程において得られた白色固体全量を収容した反応容器内に、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ヘキソキシベンゼン169g(555mmol)、炭酸カリウム292g(2116mmol)、1,4―ジオキサン4000mL、及び蒸留水2Lを投入した。反応系周囲の雰囲気を窒素ガスに置換した後、液を大気圧下、95℃で90分攪拌した。サンプリングした溶液から、溶媒を留去し、その1H−NMR(CDCl3)を測定したところ、反応が進行しなかったことが確認された。
本発明は、非水電解液二次電池材料、有機EL材料、液晶材料、非線形光学材料、写真用添加剤、増感色素、医薬品等、又はそれらの合成中間体として有用な多環式芳香族化合物の製造方法としての利用が期待される。

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)で表される多環式芳香族化合物の製造方法であって、
    下記一般式(2)で表される化合物(2)と、下記一般式(3)で表される化合物(3)とを反応させて、下記一般式(4)で表される化合物(4)を製造する第1の工程と、
    前記化合物(4)を酸化して、下記一般式(5)で表される化合物(5)を製造する第2の工程と、
    前記化合物(5)と、下記一般式(6)で表される化合物(6)とを反応させる第3の工程と、を含み、
    前記第3の工程において、前記化合物(5)及び前記化合物(6)のうち、モル基準で少ない方の化合物の量に対して0.0001〜1mol%の含金属化合物の存在下に、前記化合物(5)と前記化合物(6)とを反応させ、前記含金属化合物に含まれる金属が、パラジウムである、製造方法。
    Figure 0005889029
    (式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)中、R1下記一般式(7)で表される基を示し、R2炭素数1〜20のアルコキシ基を示し、Lはスルホニル基を示し、X1及びX2は、それぞれ臭素原子を示し、Y1は脱離可能な元素又は1価の基を示し、Zは式(6)に示されるベンゼン環に直接結合したホウ素原子を有する1価の基を示す。)
    Figure 0005889029
    (式(7)中、nは2〜8の整数を示し、mは1〜20の整数を示す。)
  2. 1つ以上の前記工程において用いられる溶媒が、水を含む、請求項1に記載の多環式芳香族化合物の製造方法。
  3. 1つ以上の前記工程において用いられる溶媒が、水溶性有機溶媒を含む、請求項1又は2に記載の多環式芳香族化合物の製造方法。
  4. 前記水溶性有機溶媒の20℃における水への溶解度が20質量%以上である、請求項3に記載の多環式芳香族化合物の製造方法。
  5. 前記水溶性有機溶媒の20℃における水への溶解度が50質量%以上である、請求項3に記載の多環式芳香族化合物の製造方法。
  6. 前記水溶性有機溶媒は、20℃において水と任意の比率で混和するものである、請求項3に記載の多環式芳香族化合物の製造方法。
  7. 前記水溶性有機溶媒が、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒及びニトリル溶媒、ニトロメタン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、酢酸及びピリジンからなる群より選ばれる1種以上の溶媒である、請求項3〜6のいずれか1項に記載の多環式芳香族化合物の製造方法。
  8. 前記水溶性有機溶媒が、メタノール、エタノール、1,2−プロパンジオール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、t−アミルアルコール、ニトロメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトン、酢酸、ピリジン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサンからなる群より選ばれる1種以上の溶媒である、請求項3〜7のいずれか1項に記載の多環式芳香族化合物の製造方法。
  9. 前記第2の工程において、酸化剤として過酸化水素水及びモノ過硫酸水素カリウムのうちの少なくとも一方を用いる、請求項1〜のいずれか1項に記載の多環式芳香族化合物の製造方法。
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