JP6487219B2 - カルボン酸塩の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、カルボン酸塩の製造方法に関する。
二酸化炭素は、生命活動や産業活動により発生し、その多くは大気中に放出され、代表的な地球温暖化の原因物質となることが知られている。特に産業活動によって発生する二酸化炭素は、深刻な廃棄物であると同時に、安価なC1原料でもあることから、二酸化炭素の有効活用技術に大きな期待が寄せられている。
昨今の研究者による熱心な研究の甲斐あって、現在では二酸化炭素を活用した多くの化学変換反応が知られるようになってきた。(例えば、非特許文献1参照。)
中でも、非特許文献2、3には、二酸化炭素を原料とするオレフィン類へのヒドロカルボキシル化反応が開示されている
しかしながら、二酸化炭素を有効活用した有用化学品製造を商業的に実施される例は、アンモニアとの反応による尿素製造など、極僅かであった。
一方、近年の研究により、水素と塩基を原料として、二酸化炭素を蟻酸塩へと変換する反応が、極めて効率的に進行することが明らかになった(例えば、非特許文献4)。
T.Sakakuraら、Chem.Rev.、2007年、第107号、第2365頁−第2387頁 J.Takayaら、J.Am.Chem.Soc.、2008年、第130号、第15254頁−第15255頁 C.M.Williamsら、J.Am.Chem.Soc.、2008年、第130号、第14936頁−第14937頁 C.Federselら、Angew.Chem.Int.Ed.、2010年、第49号、第6254頁−第6257頁
上述したとおり二酸化炭素の有効活用が種々検討されているが、二酸化炭素を汎用化学品との反応により有用化学品へと変換することは特に難しく、上述した二酸化炭素を原料とするオレフィン類へのヒドロカルボキシル化反応では、量論量の還元剤として有機金属化合物を共存させることが不可欠であった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、高価な還元剤を使用せず、二酸化炭素を有効活用して、オレフィン類のヒドロカルボキシル化反応を可能にし、カルボン酸塩という有用化学品を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、二酸化炭素活用の中間体として蟻酸塩に着目し、鋭意検討を重ねた結果、オレフィン類のヒドロカルボキシル化反応において、蟻酸塩を原料として用い、触媒を共存させることで、円滑に反応が進行してカルボン酸塩が得られ、上記課題をみごとに解決することができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、下記一般式(1):
Figure 0006487219
(式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜24の有機基を表し、該R〜Rの2以上はそれぞれ連結していても良い。)で表されるオレフィン類と下記一般式(2):
Figure 0006487219
(式中、An+は、n価の陽イオンを表す。nは、1〜4の整数を表す。)で表される蟻酸塩とを触媒の存在下に反応させる工程を含む、下記一般式(3):
Figure 0006487219
(式中、An+は、n価の陽イオンを表す。nは、1〜4の整数を表す。R〜Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜24の有機基を表し、該R〜Rの2以上はそれぞれ連結していても良い。)で表されるカルボン酸塩の製造方法である。
本発明の製造方法は、上述の構成よりなり、水素と塩基を原料として二酸化炭素から容易に合成が可能な蟻酸塩を中間体として使用し、触媒の存在下で反応を進行させることにより、高価な還元剤を使用することなく、オレフィン類のヒドロアルコキシ化を進行させることが可能になる。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載される本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の好ましい形態である。
<本発明の詳細>
本発明は、下記一般式(1):
Figure 0006487219
(式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜24の有機基を表し、該R〜Rの2以上はそれぞれ連結していても良い。)で表されるオレフィン類と下記一般式(2):
Figure 0006487219
(式中、An+は、n価の陽イオンを表す。nは、1〜4の整数を表す。)で表される蟻酸塩とを触媒の存在下に反応させる工程を含む、下記一般式(3):
Figure 0006487219
(式中、An+は、n価の陽イオンを表す。nは、1〜4の整数を表す。R〜Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜24の有機基を表し、該R〜Rの2以上はそれぞれ連結していても良い。)で表される化合物の製造方法である。
上記一般式(1)、(3)中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜24の有機基を表し、得ようとするカルボン酸誘導体の構造に応じて適宜選択することができる。
上記一般式(1)、(3)中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜24の有機基を表し、R〜Rの2以上はそれぞれ連結していても良い。炭素数1〜24の有機基としては、蟻酸誘導体との反応を著しく阻害するものでなければ、特に限定されないが、例えば、炭素数3〜24の芳香族基、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数7〜24のアリールアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数1〜24のアルコキシ基、炭素数1〜24のアリールオキシ基、炭素数1〜24のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜24のアリールオキシカルボニル基、炭素数1〜24のアシル基、炭素数1〜24のアロイル基、炭素数1〜24のアルキルスルホニル基、炭素数6〜24のアリールスルホニル基、炭素数7〜24のアリールアルキルスルホニル基、炭素数3〜24のトリアルキルシリル基、炭素数8〜24のジアルキルアリールシリル基、炭素数13〜24のアルキルジアリールシリル基、炭素数18〜24のトリアリールシリル基、炭素数4〜24のビス(ジアルキルアミノ)ホスフィノイル基、炭素数2〜24のジアルキルホスフィノイル基、炭素数12〜24のジアリールホスフィノイル基、炭素数2〜24のジアルキルホスホニル基、炭素数12〜24のジアリールホスホニル基等が挙げられる。上記一般式(1)記載のオレフィン類の反応性の観点から電子求引性基が好ましい。中でも、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数1〜24のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜24のアリールオキシカルボニル基、炭素数1〜24のアシル基、炭素数1〜24のアロイル基、炭素数1〜24のアルキルスルホニル基、炭素数6〜24のアリールスルホニル基、炭素数7〜24のアリールアルキルスルホニル基、炭素数4〜24のビス(ジアルキルアミノ)ホスフィノイル基、炭素数2〜24のジアルキルホスフィノイル基、炭素数12〜24のジアリールホスフィノイル基、炭素数2〜24のジアルキルホスホニル基、炭素数12〜24のジアリールホスホニル基が好ましい。上記炭素数の上限としては、20が好ましく、16がより好ましく、12がさらに好ましく、8が特に好ましい。
上記炭素数1〜24の有機基の水素原子の1または2以上は置換基で置換されていてもよく、該置換基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アロイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリールアルキルスルホニル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアリールシリル基、ビス(ジアルキルアミノ)ホスフィノイル基、ジアルキルホスフィノイル基、ジアリールホスフィノイル基、ジアルキルホスホニル基、ジアリールホスホニル基、カルボキシル基、スルホニル基、アミノ基、シリル基、クロロ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、4−ピリジル基、3−ピリジル基、2−ピリジル等が挙げられる。置換基の炭素数としては、置換基を有する有機基が全体として上記の炭素数であれば特に制限は無いが、例えば0〜23である。
〜Rの2以上がそれぞれ連結する形態としては、R〜Rから選択される2以上が一体となって、2〜4価の有機基を形成していることが例示されるが、例えば、2価の有機基としては、エチレン基、ブチレン基等の炭素数2〜24のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数3〜24のアリーレン基、該アルキレン基、アリーレン基の炭素原子の1以上が、窒素原子、酸素原子、硫黄原子に置換された基、およびこれらの基の水素原子の1以上が置換基で置換された基、等が例示される。上記置換基としては、上記炭素数1〜24の有機基の置換基と同様の基が例示される。
上記一般式(2)で表される蟻酸塩は、蟻酸イオンとn価の陽イオンとのイオン対でもよく、蟻酸と塩基性化合物との混合物でもよい。
上記n価の陽イオンとしては、4級アンモニウムイオン、3級アンモニウムイオン等の1価のアンモニウムイオン;リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等の1価のアルカリ金属イオン;ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン等の2価のアルカリ土類金属イオン;スカンジウムイオン、イットリウムイオン、ランタンイオン、セリウムイオン等の3価の希土類元素イオン;チタンイオン、ジルコニウムイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン等の2〜4価の遷移金属イオン;アルミニウムイオン、ガリウムイオン等の3価の典型金属イオン等が挙げられる。中でも、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、4級アンモニウムイオンが好ましく、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、4級アンモニウムイオンがより好ましく、4級アンモニウムイオンがさらに好ましい。
上記塩基性化合物としては、3級アミン類、2級アミン類、1級アミン類、アンモニア、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属アルコキシド等が挙げられる。中でも、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピル(エチル)アミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン類、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、が好ましい。
本発明における蟻酸塩を原料とするオレフィン類のヒドロカルボキシル化反応には、触媒を用いることが望ましい。触媒としては、蟻酸塩のC−H結合を活性化することが可能な化合物であれば、特に限定はされないが、遷移金属錯体、FLP等が挙げられる。上記FLP(frustrated Lewis pair)とは、立体障害ゆえに錯形成を行うことができないルイス酸−ルイス塩基のペアのことを表し、酸・塩基双方の性質を有するため、両者の協同的な作用を発揮することができる(例えば、D.W.Stephanら、Chem.Sci.、2014年、第5号、第2625頁−第2641頁参照)。
上記遷移金属錯体としては、活性点となる金属成分、機能を補助する配位子、対陰イオンより構成される錯体が好ましく、錯体の前駆体や原料となる成分を系中で混合して調製してもよい。
上記金属成分としては、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金等の8〜11属の元素を含むものが挙げられる。鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、銅が好ましく、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウムがより好ましく、ロジウム、イリジウム、パラジウムがさらに好ましく、パラジウムが特に好ましい。
上記配位子としては、金属成分の凝集を抑制し、反応性を補助、制御するものであれば、特に制限されないが、ピリジン等の単座窒素配位子;トリフェニルホスフィン等の単座燐配位子;2,2−ビピリジン、N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン等の2座窒素配位子;ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等の2座燐配位子;2,6−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)ピリジン、2,6−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)ベンゼン等のピンサー型3座配位子等が挙げられる。触媒の安定性と反応性の観点から、2座以上の多座配位子が好ましく、ピンサー型3座配位子がより好ましい。
上記対陰イオンとしては、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;テトラフルオロ硼酸イオン、ヘキサフルオロ燐酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロ珪酸イオン等のフッ素化無機酸;塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン;過塩素酸イオン等のオキソ酸イオン等を好適に用いることができる。中でも、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、テトラフルオロ硼酸イオン、ヘキサフルオロ燐酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオンがより好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、テトラフルオロ硼酸イオン、ヘキサフルオロ燐酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオンがさらに好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが特に好ましい。
上記遷移金属錯体のうち、ピンサー型3座配位子を有する錯体は、下記一般式(4):
Figure 0006487219
(式中、Mは、金属原子を表す。Xは、1価の陰イオンを表す。Yは、配位部位として14属〜16属の典型元素を含む、0〜1価の配位団を表す。Zは、配位部位として13属〜15属の典型元素を含む、0〜1価の配位団を表す。Lは、YとZとの間を結ぶ炭素数1〜24の架橋構造を表し、二重結合を有していても良く、単環構造又は縮環構造を有していても良く、置換基を有していても良い。)で表される。
上記一般式(4)で表される金属錯体の存在下で上記一般式(1)で表されるオレフィン類と、上記一般式(2)で表される蟻酸塩とを反応する工程を含むことにより、上記一般式(3)で表されるカルボン酸塩の収率がより良好になる傾向にあるから、より好ましい。詳細に述べれば、上記一般式(4)であらわされる錯体中間体と上記一般式(2)で表される蟻酸塩とが反応することにより、金属ヒドリド種を有する中間体が形成すると考えられる。この時、ピンサー型配位子を有することで、この中間体の安定性を向上させ、かつ、遊離しやすい二酸化炭素を近傍に保持することにより、ヒドロカルボキシル化反応をさらに良好に進行することが可能になるため、上記一般式(3)で表されるカルボン酸塩の収率が向上すると考えられる。
上記金属原子としては、前述の金属成分と同様の元素が好適に用いられ、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、銅が好ましく、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウムがより好ましく、ロジウム、イリジウム、パラジウムがさらに好ましく、パラジウムが特に好ましい。
上記1価の陰イオンとしては、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;テトラフルオロ硼酸イオン、ヘキサフルオロ燐酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロ珪酸イオン等のフッ素化無機酸;塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン;過塩素酸イオン等のオキソ酸イオン等を好適に用いることができる。中でも、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、テトラフルオロ硼酸イオン、ヘキサフルオロ燐酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオンがより好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、テトラフルオロ硼酸イオン、ヘキサフルオロ燐酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオンがさらに好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが特に好ましい。
上記一般式(4)中、Yは、配位部位として14属〜16属の典型元素を含む、0〜1価の配位団を表し、炭素数1〜24の有機基を有していてもよく、環構造を有していてもよい。14属〜16属の典型元素としては、炭素原子、窒素原子、燐原子、砒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子を好適に用いることができる。中でも炭素原子、窒素原子、燐原子、砒素原子がより好ましく、窒素原子、燐原子がさらに好ましく、燐原子が特に好ましい。上記有機基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアリールシリル基、ジアルキルアミノ基等が例示される。置換基の炭素数としては、置換基を有する有機基が全体として上記の炭素数であれば特に制限は無いが、例えば0〜23である。上記環構造としては、フェニル基、ピリジル基、ピロリジル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基等が挙げられる。
上記一般式(4)中、Zは、配位部位として13属〜15属の典型元素を含む、0〜1価の配位団を表し、炭素数1〜24の有機基を有していてもよく、環構造を有していてもよい。周期表13属〜15属の典型元素としては、硼素原子、炭素原子、珪素原子、ゲルマニウム原子、錫原子、窒素原子、燐原子、砒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子を好適に用いることができる。中でも硼素原子、炭素原子、珪素原子、ゲルマニウム原子、錫原子、窒素原子、燐原子、砒素原子がより好ましく、炭素原子、珪素原子、ゲルマニウム原子、錫原子、窒素原子がさらに好ましく、珪素原子、ゲルマニウム原子、錫原子が特に好ましい。上記有機基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアリールシリル基、ジアルキルアミノ基等が例示される。置換基の炭素数としては、置換基を有する有機基が全体として上記の炭素数であれば特に制限は無いが、例えば0〜23である。上記環構造としては、フェニル基、ピリジル基、ピロリジル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基等が挙げられる。
上記一般式(4)中、Lは、YとZとの間を結ぶ炭素数1〜24の架橋構造を表し、二重結合を有していても良く、単環構造又は縮環構造を有していても良く、置換基を有していても良い。Lは、このように様々な構造を導入可能であるが、例えば、YとZとの間に含まれる部分の原子数が1〜5であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、1〜3であることが更に好ましく、1〜2であることが特に好ましい。
上記YとZとの間に含まれる部分の原子は、特に限定されないが、炭素原子、窒素原子、燐原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、炭素原子、窒素原子、酸素原子がより好ましく、炭素原子、酸素原子がさらに好ましく、炭素原子が特に好ましい。
Lは、単環構造を有していてもよい。言い換えれば、Lで表される架橋構造が環構造を含んでいても良い。
Lが単環構造を有する場合、単環構造と一般式(4)におけるY及びZが直接結合するものであってもよく、単環構造と一般式(4)におけるY及び/又はZとの間に2価の置換基が挟まれるものであってもよい。
上記2価の置換基としては、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルケニレン基、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子、又は、これらが直列に結合されたもの等が挙げられる。
Lは、縮環構造を有していてもよい。言い換えれば、Lで表される架橋構造が縮環構造を含んでいても良い。
Lが縮環構造を有する場合、縮環構造と一般式(4)におけるY及びZが直接結合するものであってもよく、縮環構造と一般式(4)におけるY及び/又はZとの間に2価の置換基が挟まれるものであってもよい。
上記2価の置換基としては、単環構造と一般式(4)におけるY及び/又はZとの間に挟まれる2価の置換基として上述したものと同様である。
Lは、置換基を有していても良い。Lが単環構造及び縮環構造のいずれも有さない場合は、該置換基は、一般式(4)におけるL、Y、Z、及び、Mを含んで構成される環構造中のLの部分の置換基である。Lが単環構造又は縮環構造を有する場合は、該置換基は、単環構造又は縮環構造の置換基、又は、その他の、一般式(4)におけるL、Y、Z、及び、Mを含んで構成される環構造中のLの部分の置換基である。
該置換基は、例えば、ヘテロ原子を有するものであってもよく、その他の原子又は原子団であってもよい。該ヘテロ原子を有する置換基としては、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数7〜18のアリールアルコキシ基、炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数2〜18のアシル基、炭素数7〜18のアロイル基、炭素数2〜18のジアルキルアミノ基、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。該その他の原子又は原子団としては、例えば、炭素数3〜18の芳香族基、炭素数1〜18のアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。なお、該芳香族基としては、上述した芳香族構造を含むものが挙げられる。
Lの炭素数は、12以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、8以下であることが更に好ましい。また、Lの炭素数は、2以上であることが好ましい。そして、Lが炭素原子6個からなる構造であることが特に好ましい。
上記遷移金属錯体が、下記一般式(5):
Figure 0006487219
(式中、Eは、珪素、ゲルマニウム、錫を表す。Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、テキシル基、シクロへキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基を表す。)で表される錯体である場合が、本発明の特に好ましい形態のひとつである。
一般式(5)で表される金属錯体の製造方法としては、公知の方法を用いることができる(例えば、M.C.MacInnisら、Organometallics、2007年、第26号、第6522頁−第6525頁、及び、J.Takayaら、J.Am.Chem.Soc.、2008年、第130号、第15254頁−第15255頁参照)。
本発明の反応時間は、適宜設定することができるが、例えば5分以上とすることが好ましく、15分以上とすることがより好ましく、30分以上とすることが更に好ましい。該反応時間は、例えば100時間以下とすることが好ましい。
本発明の反応には溶媒を用いることができる。反応溶媒は、適宜採用することができるが、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等の鎖状エーテル化合物;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;テトラメチル尿素、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。該反応溶媒は、芳香族又は脂肪族炭化水素、環状エーテル化合物、鎖状エーテル化合物、ハロゲン化炭化水素類、スルホキシド類、アミド類、尿素類が好ましく、鎖状エーテル化合物、ハロゲン化炭化水素類、スルホキシド類、アミド類、尿素類がより好ましく、スルホキシド類、アミド類、尿素類がさらに好ましい。該反応溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミドを用いることが特に好ましい。
本発明の反応において、原料として気体状態のオレフィン類を使用する場合は、該反応は、通常はオレフィン類の加圧下で行う。反応速度の観点から、該オレフィン類の圧力は、0.01atm以上とすることが好ましく、0.1atm以上とすることがより好ましく、1atm以上とすることが更に好ましい。また、該圧力は、100atm以下とすることが好ましい。
本発明の反応において反応温度は、40度以上とすることが好ましく、60度以上とすることがより好ましく、80度以上とすることさらに好ましく、100度〜120度の範囲とすることが特に好ましい。
本発明における原料である、前記一般式(1)で表されるオレフィン類と、前記一般式(2)で表される蟻酸塩とのモル比は、1/10〜10/1が好ましく、1/5〜5/1がより好ましく、1/2〜2/1が更に好ましく、1/1.5〜1.5/1が一層好ましく、1/1が特に好ましい。
本発明の製造方法においては、蟻酸塩の原料である二酸化炭素と水素と塩基から反応系中に蟻酸塩を発生させ、反応液中の蟻酸塩を使用してオレフィン類のヒドロカルボキシル化反応を行ってもよい。
本発明の製造方法は、上記一般式(1)で表されるオレフィン類と上記一般式(2)で表される蟻酸塩とを反応させる工程(以下、「反応工程」ともいう)を含んでいればよく、精製工程、抽出工程、乾燥工程等の他の任意な工程を含んでいてもよいが、例えば反応工程で得られるカルボン酸塩を使用して、中和、電気透析等の適切な方法によってカルボン酸を得る工程を含んでいてもよい。
本発明の製造方法で得られたカルボン酸塩やカルボン酸も本発明のひとつである。
本発明の製造方法によれば、上記一般式(3)で表されるカルボン酸塩を含む組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう)を製造することができる。本発明の組成物は、上記一般式(3)で表されるカルボン酸塩のみを含んでいてもよいが、溶剤、原料や触媒の残渣等のその他の成分を含んでいてもよい。
本発明の組成物は、上記一般式(3)で表されるカルボン酸塩を0.5〜100質量%含むことが好ましく、1〜100質量%含むことがより好ましく、2〜100質量%含むことがさらに好ましい。
本発明の組成物は、上記一般式(1)で表されるオレフィン類を0〜99.5質量%含むことが好ましく、0〜99質量%含むことがより好ましく、0〜98質量%含むことがさらに好ましい。
本発明の組成物は、上記一般式(2)で表される蟻酸塩を0〜99.5質量%含むことが好ましく、0〜99質量%含むことがより好ましく、0〜98質量%含むことがさらに好ましい。
本発明の組成物は、溶剤を0〜99.5質量%含むことが好ましく、0〜99質量%含むことがより好ましく、0〜98質量%含むことがさらに好ましい。溶剤としては、上記反応溶媒で例示した化合物が例示される。
本発明の組成物は、触媒を、上記一般式(3)で表されるカルボン酸塩100質量部に対して、0.00001質量部以上、50質量部以下含むことが好ましい。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
各種測定及び評価は以下の方法により行った。
液体NMR(H−NMR、13C−NMR、及び、31P−NMR)測定は、JEOL ECX‐500を用いて行った。
H−NMRは、500MHzで測定した。13C−NMRは、125MHzで測定した。31P−NMRは、202.5MHzで測定した。
<実施例1>
[本発明の触媒の合成例]
Figure 0006487219
窒素雰囲気下、−78度に冷却したo−ジシクロへキシルホスフィノフェニルリチウム(4.73g,14.3mmol)のTHF溶液(20ml)に、トリクロロメチルゲルマン(0.81ml,7.2mmol)を少量ずつ滴下し、−78度で4時間撹拌した後、徐々に室温まで昇温した。溶媒を減圧留去し、トルエンで不溶物を濾別し再度溶媒を減圧留去した。得られた固体をペンタン洗浄した後に減圧下にて脱溶媒を行うと中間体1(2.80g,4.18mmol,58%)が得られた。H−NMR、13C−NMR、及び、31P−NMRを測定し、中間体1の生成を確認した。窒素雰囲気下、中間体1(300mg,0.45mmol)とビス[(π−アリル)パラジウムクロリド](80.5mg,0.22mmol)をTHF(5ml)に溶解し、室温で1時間撹拌した後溶媒を減圧留去し、得られた固体をジエチルエーテルで洗浄した。得られた固体をTHFに溶解し、トリフルオロメタンスルホン酸銀(91mg,0.35mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。沈殿物をろ別した後、溶媒を減圧留去し、THF/ペンタン溶媒中再結晶した後に減圧下にて脱溶媒を行うと錯体2(253mg,0.28mmol,63%)が得られた。H−NMR、13C−NMR、及び、31P−NMRを測定し、錯体2の生成を確認した。
前述の合成例では錯体2として、下記一般式(5):
Figure 0006487219
(式中、Zは、珪素、ゲルマニウム、錫を表す。Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、テキシル基、シクロへキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基を表す。)で表される錯体のうち、Zとしてゲルマニウムを、Rとしてシクロヘキシル基を有する錯体を示したが、その他の錯体についても同様の方法により合成することができる。
<実施例2>
[本発明のヒドロカルボキシル化反応例]
Figure 0006487219
窒素雰囲気下、錯体2(2.2mg,0.0025mmol)、蟻酸セシウム(26.7mg,0.15mmol)、p−ビニル安息香酸メチル(16.2mg,0.1mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(2mL)をガラス製反応容器に加え、100℃にて6時間加熱した。冷却後に塩酸(2N,2ml,2mmol)を添加し、ジエチルエーテル(4ml,38.5mmol)を加えて抽出を行い、減圧下にて脱溶媒を行ったのち、H−NMRを測定し、内部標準物質テトラクロロエタンとの比から、生成物3が収率64モル%で生成していることを確認した。
<実施例3>
Figure 0006487219
上記の反応では、触媒として、次式で表される錯体4を使用した。
Figure 0006487219
窒素雰囲気下、錯体4(1.7mg,0.0025mmol)、蟻酸セシウム(26.7mg,0.15mmol)、メタクリル酸エチル(11.4mg,0.1mmol)N,N−ジメチルホルムアミド(2mL)をガラス製反応容器に加え、100℃にて6時間加熱した。冷却後に塩酸(2N,2ml,2mmol)を添加し、ジエチルエーテル(4ml,38.5mmol)を加えて抽出を行い、減圧下にて脱溶媒を行ったのち、H−NMRを測定し、内部標準物質テトラクロロエタンとの比から、生成物5が収率50モル%で生成していることを確認した。
上記のとおり、本発明の製造方法によれば、高価な還元剤を使用せず、二酸化炭素を有効活用して、カルボン酸(塩)を製造できることが明らかとなった。また、

Claims (2)

  1. 下記一般式(1):
    Figure 0006487219
    (式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜24の有機基を表し、該R〜Rの2以上はそれぞれ連結していても良い。)
    で表されるオレフィン類と下記一般式(2):
    Figure 0006487219
    (式中、An+は、n価の陽イオンを表す。nは、1〜4の整数を表す。)
    で表される蟻酸塩とを下記一般式(4):
    Figure 0006487219
    (式中、Mは、金属原子を表す。Xは、1価の陰イオンを表す。Yは、配位部位として14属〜16属の典型元素を含む、0〜1価の配位団を表す。
    Zは、配位部位として13属〜15属の典型元素を含む、0〜1価の配位団を表す。Lは、YとZとの間を結ぶ炭素数1〜24の架橋構造を表し、
    二重結合を有していても良く、単環構造又は縮環構造を有していても良く、置換基を有していても良い。)で表されるピンサー型配位子を有する遷移金属錯体の存在下で反応させる工程を含み、
    前記金属原子が、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウムのいずれかであることを特徴とする下記一般式(3):
    Figure 0006487219
    (式中、An+は、n価の陽イオンを表す。nは、1〜4の整数を表す。
    〜Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜24の有機基を表し、
    該R〜Rの2以上はそれぞれ連結していても良い。)で表されるカルボン酸塩の製造方法。
  2. 前記ピンサー型配位子を有する遷移金属錯体が下記一般式(5):
    Figure 0006487219
    (式中、Eは、珪素、ゲルマニウム、錫を表す。Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、テキシル基、シクロへキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基を表す。)
    で表されることを特徴とする請求項1に記載のカルボン酸塩の製造方法。
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