JP2006328715A - 浮き床式制振構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】 上下方向加速度を低減することができる浮き床式制振構造を提供する。
【解決手段】 柱18や梁2等で構成される構造フレーム3に、建物に発生する振動を減衰させる減衰装置4を設け、この減衰装置4の上部に、構造フレーム3から所定高さ離間する浮きスラブ5を形成し、減衰装置4は、上下方向に伸縮可能に構成され、浮きスラブ5を構造フレーム3に対して上下移動可能に固定し、浮きスラブ5は、柱18との間に所定のクリアランスを確保するように形成され、浮きスラブ5と柱18との間に、ゴム等の減衰材19を介設する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、強風や地震によって建物に発生する振動を低減させる制振構造に係り、特に、床スラブを所定高さ浮かせて形成する浮き床式制振構造に関する。
1995年の阪神淡路大震災以降、免震建物の普及が進んでいる。また、超高層建築物の普及により、様々な制振装置を用いた制振建物が建設されている。強風や地震によって建物に発生する揺れを低減させる制振構造としては、例えば図7に示すように、建物51の頂部に、建物51と同じ周期を有する「おもり52、ばね53、減衰装置54」で構成されるマスダンパー(振り子)55を取り付け、マスダンパー55と建物51との共振現象を利用して、建物51の振動エネルギーを前記マスダンパー55で吸収する構成のものが、一般的に知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
特開2004−346562号公報 特開平11−13307号公報
ところで、これまでの免震・制振建物に用いられる免震・制振システムでは、水平方向加速度に対しては免震・制振効果が発揮される。しかしながら、従来の免震・制振システムでは、上下方向加速度については考慮されておらず、上下方向加速度に対しては免震・制震効果が得られなかった。この結果は、2003年の宮城県沖地震で観測された報告からも明らかにされている。また、前記報告内容からは、上下方向加速度が、水平方向加速度を上回っている場合もあり、上下方向加速度に対して有効なシステムを構築することが必要となってきている。
さらに、近年では、建物に要求される性能が多様化してきており、特に、コンピュータ等の精密機械を利用する部屋では、水平方向加速度のみならず上下方向加速度の免震・制振効果を備えた高い免震・制振性能が要求されている。
そこで、本発明は前記問題を解決すべく案出されたものであって、上下方向加速度を低減することができる浮き床式制振構造を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、柱や梁等で構成される構造フレームに、建物に発生する振動を減衰させる減衰装置を設け、この減衰装置の上部に、前記構造フレームから所定高さ離間する浮きスラブを形成したことを特徴とする浮き床式制振構造である。
ここで、構造フレームとは、鉄骨や鉄筋コンクリートによって構成された大梁、小梁や柱等をいう。また、建物に発生する振動とは、水平方向および上下方向の両方を含み、減衰装置は、水平方向および上下方向の振動を減衰できる装置である。
請求項1に係る発明によれば、床スラブを、減衰装置を介して構造フレームから所定高さ離間させた浮きスラブとしているので、浮きスラブが、おもりの役目を果たして上下方向に移動して、減衰装置と組み合わされることで制振効果が得られる。よって、構造フレームに発生した上下方向の振動を減衰させることができ、上下方向加速度を低減することができる。
請求項2に係る発明は、前記減衰装置が、上下方向に伸縮可能に構成され、前記浮きスラブを前記構造フレームに対して上下移動可能に取り付けることを特徴とする請求項1に記載の浮き床式制振構造である。
請求項2に係る発明によれば、浮きスラブが、構造フレームに対して上下移動するため、従来のマスダンパーでは減衰することができなかった上下方向の振動を、集中して減衰させることができ、上下方向加速度に対する高い免震・制振効果を得られる。
請求項3に係る発明は、前記浮きスラブが、柱との間に所定のクリアランスを確保するように形成され、前記浮きスラブと前記柱との間には、ゴム等の減衰材が介設されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浮き床式制振構造である。
請求項3に係る発明によれば、柱周りにおいても、上下方向の揺れを、浮きスラブと柱との間に設けた減衰材で吸収することができる。
本発明によれば、上下方向加速度を低減することができるといった優れた効果を発揮する。
次に、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明に係る浮き床式制振構造を実施するための最良の第一の形態を示した断面図、図2は図1のA部を示した拡大断面図および平面断面図、図3は図1のB部を示した拡大断面図および平面断面図である。
まず、本実施の形態に係る浮き床式制振構造の構成を説明する。なお、本実施の形態では、鉄骨造の建物においてベニヤ板等からなる型枠を利用してコンクリート製の床スラブを構築する場合を例に挙げて説明する。
図1に示すように、かかる浮き床式制振構造1は、強風や地震によって建物に発生する振動を低減させるものであって、建物の構造体として設けられた構造フレーム3の上部(梁(大梁や小梁)2等の水平方向に配置された部材上や、柱18の頂部上など)に、建物に発生する振動を減衰させる減衰装置4を設け、この減衰装置4の上部に、構造フレーム3の上端面から所定高さ離間する(浮かぶ)浮きスラブ5を形成したことを特徴とする。なお、構造フレーム3から側方に片持ち梁(図示せず)を張り出して、その上部に減衰装置4を設ける場合も本発明の実施の範囲に含む。
浮き床式制振構造1に用いられる減衰装置4は、建物の各階に設けられており、各階に浮きスラブ5が形成される。なお、本実施の形態では、減衰装置4は、全ての階に設けられているが、これに限られるものではない。例えば、建物の変形が集中する上層階や中層階のみ、或いはその両方に設けるようにしてもよい。
減衰装置4は、上下方向に伸縮可能に構成されており、浮きスラブ5を構造フレーム3に対して上下移動可能に固定するようになっている。具体的には、図2(a)および(b)に示すように、減衰装置4は、構造フレーム3の上部に立設されるネジスタッド6と、浮きスラブ5の下部に埋設される二重管7とを有している。二重管7はネジスタッド6に固定されている。なお、図2(b)は、図2(a)をC−C線で切った断面図である。
ネジスタッド6は、雄ネジ8が形成された胴部の一端部の外周を構造フレーム3の上端面に全周溶接することで、構造フレーム3に固定されている。
二重管7は、浮きスラブ5の下部に埋設される外管11と、その内部に挿入され雌ネジ15を有する内管12と、外管11と内管12との間に介設される減衰材13とを備えている。外管11と内管12は、ともに有底筒状に形成されており、有底部が上部になるように配置されている。なお、内管12は、底を有さない筒状であってもよい。この場合、後述する支持ブロック14は設けない。内管12は、その外周部と上部とで、外管11の内面との間に所定の隙間を空けるように、外管11の内部に挿入・配置されている。外管11の内周面と内管12の外周面との隙間には、高減衰ゴム等からなる減衰材13が設けられている。減衰材13は、円筒状に形成されて、内管12の外周面と外管11の内周面の両面に接着されている。減衰材13は、せん断変形することで、外管11と内管12をその軸方向(上下方向)に互いに相対移動可能とし、浮きスラブ5の構造フレーム3に対する上下方向の揺れ幅を小さく且つ早く収束させることができる。また、減衰材13は、圧縮変形することで、浮きスラブ5の構造フレーム3に対する水平方向の揺れ幅を小さく且つ早く収束させることもできる。
内管12の上部の外管11の内面頂部との隙間には、円柱状の軟質ゴムあるいはバネ等にて構成された支持ブロック14が設けられている。この支持ブロック14は、浮きスラブ5の荷重や積載荷重等の一部を支持するためのもので、内管12の上面か外管11の内面頂部のいずれか一方、或いは両面に接着されている。なお、この支持ブロック14を省略して、内管12の上部の外管11との隙間を空隙とするようにしてもよい。この場合は、内管12の外周面と外管11の内周面との間に設ける減衰材13を、浮きスラブ5の荷重、積載荷重および地震荷重等に耐え得るように選定して接着することとなる。
外管11の下端部(開口側端部)には、径方向外方に広がる鍔部16が形成されており、この鍔部16の上端面と浮きスラブ5の下端面とが面一となるように、浮きスラブ5が構築されている。なお、浮きスラブ5の下端面は、鍔部16と面一でなくてもよい。また、外管11の上端部にも、径方向外方に広がる鍔部17が形成されており、この鍔部17の周囲に浮きスラブ5のコンクリートを一体的に打設することで、二重管7と浮きスラブ5との接合性を高め、二重管7が浮きスラブ5から抜けるのを防止している。
内管12の内周面には、雌ネジ15が形成されており、ネジスタッド6の雄ネジ8を雌ネジ15に螺合させることで、ネジスタッド6と二重管7とを固定し、外管11と内管12とが相対的に移動することで、浮きスラブ5を構造フレーム3に弾性的に固定するように構成されている。
浮きスラブ5は、例えば厚さ150mmのコンクリートスラブにて構成されており、その内部には鉄筋(図示せず)が適宜配筋されている。浮きスラブ5を構築すると、その重量によって減衰材13がせん断変形を起こして、浮きスラブ5が内管12に対して沈み込む。図示しないが、コンクリートの打設前(取付前)の減衰装置は、浮きスラブの沈み込み高さ分、内管が外管の下端部から突出するように形成されている。そして、減衰装置4は、浮きスラブ5の構築後、減衰材13がせん断変形を起こして、浮きスラブ5が沈み込んだときに、外管11の下端面と内管12の下端面とが略同じ高さとなるように構成されている。
図3(a)および(b)に示すように、浮きスラブ5は、柱18との間に所定のクリアランスを確保するように形成されている。浮きスラブ5と柱18の間のクリアランス部分には、高減衰ゴムや天然ゴム等の減衰材19が介設されている。なお、図3(b)は、図1をD−D線で切った断面図である。
浮きスラブ5の、柱18との交差部分には、柱18が貫通する孔である柱貫通部22が形成されている。柱貫通部22の内周面21は、柱18の外周面と所定のクリアランスを隔てるように形成されている。なお、本実施の形態では、柱18が正方形断面であるので、柱貫通部22は、柱18の断面形状より所定長さ大きい正方形状に形成されている。柱貫通部22の内周面21には、断面L字状のL字プレート23が、内周面21の全高と浮きスラブ5の底面の一部を覆うように設けられている。L字プレート23は、柱18回りで二分割されて、柱18を水平方向両側から囲むように、平面視コ字状に形成されている。L字プレート23は、浮きスラブ5のコンクリート打設の際には、型枠の役目を果たす。
一方、柱18の外周部には、平板状のプレート24が設けられている。このプレート24も、L字プレート23と同様に、柱18回りで二分割されて、柱18を水平方向両側から囲むように、平面視コ字状に形成されている。プレート24は、柱18の外周面に溶接固定されている。
L字プレート23とプレート24との間には、高減衰ゴム等からなる減衰材19が、L字プレート23の表面とプレート24の表面とにそれぞれ接着されて設けられている。減衰材19は、L字プレート23とプレート24との間で平面視コ字状に設けられている。減衰材19は、柱18を水平方向両側から囲むよう設けられる。
なお、L字プレート23、プレート24および減衰材19は、柱18の断面形状に合わせて、平面視の形状が変わる。例えば、柱が円形断面の場合には、L字プレート、プレートおよび減衰材は、それぞれ平面視半円状となる。
L字プレート23の下部には、浮きスラブ5の荷重や積載荷重等の一部を支持するための支持ブロック25が設けられている。支持ブロック25は、軟質ゴムあるいはバネ等からなり、柱18のリブ20または梁2の上面(本実施の形態ではリブ20の上面)とL字プレート23の下端面との間に介設されている。支持ブロック25は、線状のものを柱18の周囲に合わせて折り曲げて設けられている。なお、支持ブロック25の形状はこれに限られるものではなく、直方体状のものを接して並べるか、或いは所定の間隔をあけて配列してもよい。また、柱18周りの減衰材19を、浮きスラブ5の荷重、積載荷重および地震荷重等に耐え得るように選定して接着すれば、支持ブロック25を省略することができる。さらに、減衰材13により、浮きスラブ5の荷重、積載荷重および地震荷重等に耐え得るように、減衰材13を選定して接着すれば、減衰材19およびプレート24も省略でき、柱18周りの拘束を無くすこともできる。
図4は本発明に係る浮き床式制振構造を実施するための第二の最良の形態を示した断面図および斜視図である。なお、図4(a)は、梁2と直交する方向に梁2、減衰装置4および浮きスラブ5等を切断して示した断面図である。本実施の形態では、鉄骨造の建物においてデッキプレートを利用してコンクリート製の床スラブを構築する構成を例に挙げて説明する。
図4に示すように、デッキプレート31を利用する場合は、減衰装置4の鍔部11にデッキプレート31を支持するためのデッキ受スチールプレート32が係止される。デッキ受スチールプレート32は、梁2上に複数配列された減衰装置4を、梁2の幅方向両側から挟み込み、梁2に沿ってデッキプレート31の端部を係止するように構成されている。デッキ受スチールプレート32は、所定長さの長方形状に形成され、一方の長辺部に、減衰装置4を収容する切欠き部33が、所定の間隔を隔てて複数形成されている。切欠き部33は、外管11の外径と同等の半径を有する半円状に形成されている。デッキ受スチールプレート32は、各減衰装置4の外管11の外周部に溶接され固定される。デッキ受スチールプレート32の、切欠き部33とは逆側の長辺部に、デッキプレート31の端部が係止されて所定の間隔で点溶接されることで、デッキプレート31がデッキ受スチールプレート32に固定されている。
次に、ネジスタッド6による浮きスラブ5支持の構造的検討と、減衰材13による浮きスラブ5支持の構造的検討について説明する。
まず、ネジスタッド6による浮きスラブ5の支持の構造的検討について説明する。この検討は、図5に示すように、梁2のスパンが3000mmで、ネジスタッド6が梁2上に300mmピッチで配設され、ベニヤ板による型枠を用いて浮きスラブ5が構築された場合の事務所ビルを想定して行った。
この検討における減衰装置4は、図6に示すように、外径33mmの内管12と、内径37mmの外管11を有している。内管12は80mmの高さとなっている。外管11は100mmの高さとなっており、その上下に形成された鍔部16,17は、60mmの直径となっている。内管12の周囲の減衰材13は、2mmの厚さで、70mmの高さとなっている。内管12の上部には、外管11の内面頂部との間に10mmの隙間が設けられており、この隙間に円柱状の支持ブロック14が設けられている。浮きスラブ5は、厚さ150mmで、底部から110mmの位置で上端筋が配筋されている。なお、下端筋は図示を省略している。
ここで、浮きスラブ(t=150mm)5の荷重:3600(N/m2)、仕上げ荷重:1000(N/m2)、天井・設備の荷重:400(N/m2)、積載荷重(事務所):2900(N/m2)とすると、全体の荷重は7900(N/m2)=7.9(kN/m2)となる。
各梁2にかかる荷重Qは、スパン3.0mの半分ずつが両側からかかるので、Q=7.9×(3.0/2)×2=23.7(kN/m)となる。そして、ネジスタッド6のピッチを300mmとすると、ネジスタッド6の一本当りの負担せん断力QBは、1m当りの荷重が23.7kNであるので、QB=23.7/3本=7.9kNとなる。
一方、パンチングシヤ許容せん断力QPAは、α(許容せん断力を求める係数)×b0(パンチングシヤに対する設計用せん断力算定断面の延べ幅)×j(スラブの応力中心間距離)×fs(コンクリートの許容せん断応力度)で表される。ここで、α=1.5、b0=π×{60+(110/2)×2}=170π、j=7/8×110=96.25、fs=Fc/30=21/30=0.7(N/mm2)(Fc=21として計画)である。よって、QPA=1.5×170π×96.25×0.7×10-3=54.0(kN)となる。
したがって、QB/QPA=0.15となり、1.0よりも小さいので、構造強度上、問題はない。
次に、高減衰ゴムの弾性係数Gを1.2(N/mm2)、厚さtを2.0mmとして、減衰材13による浮きスラブ5支持の構造的検討について説明する。
ここで、図5に示す寸法より、ゴムの内管に接する内接面積Asは、33×π×70=7250mm2となる。ゴムの鉛直方向せん断剛性kは、1.2×7250×10-3/2.0=4.35(kN/mm)となる。よって、ゴムの鉛直せん断変形量δvは、7.9/4.35=1.82mmとなる。よって、ゴム厚さに対するせん断ひずみγは、1.82/2.0=0.91=91%となるので、構造強度上、問題はない。なお、ゴム厚さに対するせん断ひずみγは、地震時には、200%まで、使用可能と考えられている。
以上の検討結果より、本発明に係る浮き床式制振構造は、十分設計可能な範囲になることが判明した。
次に、前記構成による浮き床式制振構造1の構築方法について説明する。
予め、外管11の内部に減衰材13を介して内管12を弾性的に固定して、二重管7を形成しておく。まず、梁2(構造フレーム3)の上面に、ネジスタッド6を所定のピッチ(例えば300mmピッチ)で溶接して立設させる。このときネジスタッド6は二重管7と比較して軽量であるので、溶接作業は容易に行える。そして、予め形成しておいた減衰装置4を、その開口側が下側になるように向けて、ネジスタッド6の上部から被せて、内管12の雌ネジ15にネジスタッド6の雄ネジ8を螺合させ、二重管7をネジスタッド6に固定する。このとき、溶接等の熟練および手間を要する作業は先の工程で既に終了しているので、二重管7の回転数を調整するという簡単な作業だけで、減衰装置4の高さ調整を行うことができる。なお、二重管7は、後の工程で打設するコンクリート重量による浮きスラブ5の沈み込みを考慮して、高さ調整を行っておく。
他方、平面視コ字状に形成されたL字プレート23とプレート24に減衰材19を接着させて、L字プレート23、減衰材19およびプレート24を一体的に形成する。この一体部材を柱18の両側から囲わせて、プレート24を柱18に溶接することで、一体部材を柱18に固定する。なお、L字プレート23は、浮きスラブ5のコンクリート重量による沈み込みを考慮して、取付高さを決定する。
その後、二重管7の下端面と、L字プレート23の下端面に合わせて板材を設置し、二重管7が埋設されるように浮きスラブ5の型枠(図示せず)を一体的に形成する。浮きスラブ5の下面を仕切る型枠は、その上面が外管11の鍔部16の上面と面一になるように形成する。なお、型枠の設置高さは、型枠の端面と、鍔部16の端面あるいは外管11の外周面とが接していれば、鍔部16の上面とは必ずしも面一である必要はない。このとき、柱18回りは、L字プレート23が、浮きスラブ5の上端面まで延出しているので、型枠を省略することができる。そして、適宜配筋を行った後に、浮きスラブ5のコンクリートを打設する。コンクリートの重量によって、減衰材13,19が変形して、浮きスラブ5が下方に沈むが、二重管7およびL字プレート23は、浮きスラブ5のコンクリート重量による沈み込みを考慮して、高さ調整を行っているので、構造フレーム3の上面から所定の高さ(例えば、5ミリメートル)浮かぶようになる。その後、所定時間養生することで浮きスラブ5が完成する。
次に、前記構成による浮き床式制振構造1の作用を説明する。
かかる浮き床式制振構造1によれば、床スラブを、減衰装置4を介して構造フレーム3から所定高さ浮かせた浮きスラブ5で構成しているので、この浮きスラブ5がマスダンパーのおもりの役目を果たし、減衰装置4と組み合わさって建物の振動を減衰させることができ、建物の制振効果を得られる。特に、減衰装置4が、上下方向に伸縮可能に構成されているため、浮きスラブ5が、構造フレーム3に対して上下移動する。よって、減衰装置4は、構造フレーム3に発生した上下方向の振動を減衰させることができ、上下方向加速度を低減することができる。したがって、水平方向加速度のみならず上下方向加速度の免震・制振効果を備えることができ、コンピュータ等の精密機械を利用する部屋で要求される高い免震・制振性能を得ることができる。
なお、前記の第一および第二の実施の形態では、減衰材13の厚さが薄いため、水平方向の振動の減衰効果は、あまり大きくないが、従来から建物の頂部に設けられていた制振装置と組み合わせることによって、水平方向および上下方向の両方の免震・制震効果を備えた建物を構築することが可能となり、多様な建物性能の要求に応えることができる。
また、減衰材13,19を厚く形成すれば、水平方向の免震・制振効果を大きく得ることができる。この場合、浮きスラブ5は、水平方向に作用するマスダンパーのおもりの役目も果たすので、建物の頂部に設けられるおもりの重量を低減させることができ、マスダンパーの小型化あるいは省略が可能となる。これによって、建物の頂部の階高を大幅に縮小できるとともに、建物の頂部のマスダンパーの施工手間と時間を大幅に短縮できる。特に、浮きスラブ5はコンクリートを打設して構築されるので、重量物であるおもりを吊り上げるときのように巨大なクレーンを利用する必要がなく、施工性が大幅に向上する。
構造フレーム3と浮きスラブ5とは、構造的に絶縁されているので、構造フレーム3と浮きスラブ5との上下方向の揺れの伝達が緩和され免震効果を得ることができるとともに、浮きスラブ5の上下揺動時にエネルギーの吸収効果が得られ、構造フレーム3への応力が低減される。
さらに、各階に浮きスラブ5を分散させて構築したことによって、各階での振動制御が可能となり、層間変位を小さく抑えることが容易となる。
ところで、本発明に係る浮き床式制振構造1は、減衰装置4が浮きスラブ5の振動を減衰するので、室内で発生する音の他室への伝達量を低減する役目も果たすことができる。詳しくは、浮きスラブ5上の室内で発生した音は、浮きスラブ5を伝って減衰装置4で減衰されて、構造フレーム3への伝達量を低減できる。よって、構造フレーム3を介して他室に伝達されるのを防止できる。
ここで、従来の浮き床構造としての一例を挙げると、躯体床スラブの上部にグラスウール等を敷き詰めてなる防振材を介して浮き床を形成する二重床構造がある。この二重床構造は、床スラブの上部にさらに浮き床を形成しているため、床全体が非常に厚くなり、重量が増大するとともに、階高も大きくなってしまう問題があった。しかし、本発明に係る浮き床式制振構造1によれば、躯体床スラブを形成することなく、梁2等の構造フレーム3の上に直接浮きスラブ5を形成して一重の床構造となっているので、床全体の厚さを薄くすることができ、階高を大幅に縮小できるとともに、重量の大幅な低減が達成できる。
さらに、浮き床式制振構造1は、建物の各階に浮きスラブを分散して形成することで、各階の浮き床式制振構造1ごとに負担する制振効果を小さくすることができる。したがって、浮きスラブ5が極端に厚くなるのを防止でき、減衰装置にかかる負担が適度に分散されて低減できる。そして、建物の頂部に設けられるおもりの重量を大幅に低減させることもできる。
また、前記構成の減衰装置4が、構造フレーム3の上部に立設されるネジスタッド6と、浮きスラブ5の下部に埋設される二重管7とを有し、ネジスタッド6を二重管7の内管12に螺合させて、浮きスラブ5を構造フレーム3に固定するので、二重管7の回転数を調整するという簡単な作業だけで、減衰装置4の高さ調整を行うことができ、施工性の向上および正確な高さ調整を達成できる。
さらに、浮きスラブ5と柱18との間に、所定のクリアランスを確保して、減衰材19を介設させているので、柱18周りにおいても上下方向の振動を、浮きスラブ5と柱18との間に設けた減衰材19で吸収することができる。
前記構成の減衰装置4によれば、減衰材13を溶融するか或いはネジスタッド6を切断することによって、建物の解体や浮きスラブ5の組替え作業が容易に行えるサステナブルな建築物を提供できる。
なお、前記実施の形態では、減衰材13として高減衰ゴムを用いているが、これに限られるものではない。例えば、天然ゴムを用いても、上下方向および左右方向の揺れを減衰させることは可能である。但し、高い減衰性能が要求される場合には、高減衰ゴムを採用するのが好ましい。また、水平方向の揺れは考慮せずに、上下方向の揺れを減衰させるのであれば、上下方向に伸縮可能に設けられたバネやオイルダンパーを用いてもよい。
前記実施の形態では、鉄骨の梁2からなる構造フレーム3上に、コンクリート製の浮きスラブ5を設けた構成を説明したが、これに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、鉄筋コンクリートにて構築される構造フレーム上に浮きスラブを設ける構成であってもよい。
本発明に係る浮き床式制振構造を実施するための最良の第一の形態を示した断面図である。 (a)は図1のA部を示した拡大断面図、(b)は図2(a)のC−C線断面図である。 (a)は図1のB部を示した拡大断面図、(b)は図1のD−D線断面図である。 本発明に係る浮き床式制振構造を実施するための最良の第二の形態を示した(a)は断面図、(b)は斜視図である。 梁とネジスタッドの配置状態を示した平面図である。 減衰装置と浮きスラブを示した拡大断面図である。 従来の制振構造を示した概略図である。
符号の説明
1 浮き床式制振構造
2 梁
3 構造フレーム
4 減衰装置
5 浮きスラブ
13 減衰材(内管周り)
18 柱
19 減衰材(柱周り)

Claims (3)

  1. 柱や梁等で構成される構造フレームに、建物に発生する振動を減衰させる減衰装置を設け、この減衰装置の上部に、前記構造フレームから所定高さ離間する浮きスラブを形成したことを特徴とする浮き床式制振構造。
  2. 前記減衰装置は、上下方向に伸縮可能に構成され、前記浮きスラブを前記構造フレームに対して上下移動可能に取り付けることを特徴とする請求項1に記載の浮き床式制振構造。
  3. 前記浮きスラブは、柱との間に所定のクリアランスを確保するように形成され、前記浮きスラブと前記柱との間には、ゴム等の減衰材が介設されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浮き床式制振構造。
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