JP2006328211A - 熱硬化性樹脂組成物、その成形方法及び成形品 - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物、その成形方法及び成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】 材料の貯蔵安定性が非常に良好であり、かつ、110〜130℃で加熱硬化させる際においても型内流動性が充分に確保でき、さらに、完全硬化に至るまでの時間を大幅に短縮できハイサイクル成形に対応できる熱硬化性樹脂組成物及びそれらを硬化して得られる成形品を提供することを課題とする。
【解決手段】 不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂、ラジカル反応性モノマー、10時間半減期温度が60〜80℃の高温活性パーオキサイド、10時間半減期温度が40〜50℃の低温活性パーオキサイド及び特定割合のハイドロキノンを含有し、ハイドロキノンが、あらかじめラジカル反応性モノマーと低級アルコールとの混合溶液に溶解されている熱硬化性樹脂組成物を用いる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、バルクモールディングコンパウンド(BMC)やシートモールディングコンパウンド(SMC)に用いられる熱硬化性の樹脂組成物及びその成形品に関するものであり、例えば、機械部品や自動車部品等をBMCを用いて成形する場合において、貯蔵安定性が良好であり、100〜130℃の低温で加熱硬化させる場合に、型内流動性を充分に確保でき、さらに、完全硬化するまでの時間を大幅に短縮することができる熱硬化性樹脂組成物及びその成形方法、並びにその成形品に関するものである。
BMCやSMC(以下BMC等とも言う)は、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂に硬化剤、低収縮剤、充填剤、増粘剤、離型剤、重合禁止剤、着色剤等を配合・混合した後に、バルク状又はシート状に形成して得られる成形用材料であり、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等の成形方法により、自動車部品、電気部品等各種成形品に成形される。
BMC等においては、硬化剤としてパーオキサイドが使用され、硬化時間、貯蔵安定性、成形流動性等を考慮して好ましいものが選ばれる。各種パーオキサイドの分解性の目安としては、10時間半減期温度(以下、単に半減期温度ともいう)があり、半減期温度が高いほど貯蔵安定性に優れているが、その反面、活性が低い。
従来、BMC等においては、通常130〜150℃程度で成形・硬化されていたので、このような温度で効率的に分解するパーオキサイド、具体的には、半減期温度が105℃のt−ブチルパーオキシベンゾエート等がそのトータルバランスが良好な点から好ましく用いられている。
一方、近年、製造コストの更なる削減が求められており、従来より低温の110〜130℃程度で成形・硬化することが求められている。成形・硬化温度を下げることは設備コスト及び動力コストを低減することに寄与するためである。
しかしながら、前記110〜130℃において成形する場合においては、従来用いられていた半減期温度が105℃のt−ブチルパーオキシベンゾエート等では分解性が低下し、成形・硬化時間が長くなるため、成形サイクルが長くなり、製造コストを低減させるには不充分であった。
前記問題点を解決するために、半減期温度が60〜80℃程度のパーオキサイドを使用したBMCを用いることによって、110〜130℃の成形・硬化条件でのハイサイクル化の検討が行われていた。しかしながら、110〜130℃でのハイサイクル成形を達成するためには、半減期温度が60〜80℃程度のパーオキサイドでは未だ10時間半減期温度が高く、要求するレベルのハイサイクル成形を達成するには不充分であり、半減期温度が更に低いパーオキサイドを用いる必要があった。
しかしながら、BMC等に半減期温度が更に低いパーオキサイド、具体的には半減期温度が40〜50℃程度のパーオキサイドを用いると、低温ハイサイクルを達成できる反面、材料の貯蔵安定性が著しく低下するという問題を生じる。具体的には、例えば半減期温度が60〜80℃程度のパーオキサイドを用いた場合には、20℃以下で30日間貯蔵保管した場合でも成形に用いることができるのに対して、半減期温度が40〜50℃程度のパーオキサイドを用いた場合には、20℃以下で1週間程度で部分的に硬化が進み成形に用いることができなくなるという問題が生じていた。
前記問題を解決するために、半減期温度が低いパーオキサイドと半減期温度が高いパーオキサイドを併用することにより貯蔵安定性の改善を図る試みがなされている。
具体的には、以下の特許文献1では半減期温度が83〜120℃の高温活性パーオキサイドと半減期温度が40〜83℃の低温活性パーオキサイドの混合物に対して、重合禁止作用を有するフェノール性化合物を0.1ないし5質量%を混合してなるパーオキサイド化合物が開示されている。また、特許文献2では、10時間半減期温度が90から110℃にある高温活性パーオキサイドと10時間半減期温度が60から80℃にある低温活性パーオキサイドとフェノール性化合物を含有してなる不飽和ポリエステル樹脂組成物が提案されている。
しかしながらこれらで開示されているパーオキサイド系では未だ充分な低温速硬化性と貯蔵安定性のバランスに優れた樹脂組成物が得られていなかった。
特開平9−227611号公報 特開平11-106446号公報
本発明は、前記従来技術における課題を解決し、材料の貯蔵安定性が非常に良好であり、かつ、110〜130℃で加熱硬化させる際においても型内流動性が充分に確保でき、さらに、完全硬化に至るまでの時間を大幅に短縮できハイサイクル成形に対応できる熱硬化性樹脂組成物及びそれらを硬化して得られる成形品を提供することを課題とする。
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のパーオキサイドを併用し、また、前記パーオキサイドの組合せにおいて重要である常温から40℃程度の温度範囲での重合禁止作用に優れたハイドロキノンを重合禁止剤として採用し、さらに、ハイドロキノンを樹脂組成物内に均一に分散させることにより前記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂、ラジカル反応性モノマー、10時間半減期温度が60〜80℃の高温活性パーオキサイド、10時間半減期温度が40〜50℃の低温活性パーオキサイド及びハイドロキノンを含有する熱硬化性樹脂組成物において、前記ハイドロキノンが、あらかじめラジカル反応性モノマーと低級アルコールとの混合溶液に溶解されており、前記不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂とラジカル反応性モノマーとの合計量に対して100〜500ppm含有されることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である(請求項1)。
また、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂、ラジカル反応性モノマー、10時間半減期温度が60〜80℃の高温活性パーオキサイド、10時間半減期温度が40〜50℃の低温活性パーオキサイド、無機充填材及びハイドロキノンを含有する熱硬化性樹脂組成物において、前記ハイドロキノンがあらかじめ無機充填材中に混合分散されたものであり、前記不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂とラジカル反応性モノマーとの合計量に対して100〜500ppm含有されることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である(請求項2)。
さらに、前記混合溶液中のラジカル反応性モノマーはスチレンまたはジアリルテレフタレートであることが好ましい(請求項3)。
また、前記低温活性パーオキサイドは20〜25℃で固体であることが好ましい(請求項4)。
さらに、前記熱硬化性樹脂組成物は100〜130℃で加熱硬化させることにより成形されることが好ましい(請求項5)。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂、ラジカル反応性モノマー、10時間半減期温度が60〜80℃の高温活性パーオキサイド、10時間半減期温度が40〜50℃の低温活性パーオキサイド及びハイドロキノンを含有する熱硬化性樹脂組成物において、前記ハイドロキノンが、あらかじめラジカル反応性モノマーと低級アルコールとの混合溶液に溶解されており、前記不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂とラジカル反応性モノマーとの合計量に対して100〜500ppm含有されることを特徴とするものであり、このような熱硬化性樹脂組成物は貯蔵安定性が非常に良好であり、かつ、110〜130℃の低温で加熱硬化させる際においても型内流動性が充分に確保でき、さらに、完全硬化に至るまでの時間を大幅に短縮できハイサイクル成形に対応することができる(請求項1)。
また、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂、ラジカル反応性モノマー、10時間半減期温度が60〜80℃の高温活性パーオキサイド、10時間半減期温度が40〜50℃の低温活性パーオキサイド、無機充填材及びハイドロキノンを含有する熱硬化性樹脂組成物において、前記ハイドロキノンがあらかじめ無機充填材中に混合分散されたものであり、前記不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂とラジカル反応性モノマーとの合計量に対して100〜500ppm含有されることを特徴とするものであり、このような熱硬化性樹脂組成物は貯蔵安定性が非常に良好であり、かつ、110〜130℃の低温で加熱硬化させる際においても型内流動性が充分に確保でき、さらに、完全硬化に至るまでの時間を大幅に短縮できハイサイクル成形に対応することができる(請求項2)。
さらに、前記混合溶液中のラジカル反応性モノマーがスチレンまたはジアリルテレフタレートである場合には低級アルコールとの混合溶液がハイドロキノンを良好に溶解させ、ハイドロキノンを熱硬化性樹脂組成物に均一に分散させることができるために、すぐれた貯蔵安定性を示す熱硬化性樹脂組成物を与える(請求項3)。
また、前記低温活性パーオキサイドが20〜25℃で固体である場合には、25℃以下での貯蔵が可能であり、貯蔵、取り扱いが容易である。これに対して、半減期温度が40〜50℃であり、20〜25℃で液体である低温活性パーオキサイドは、0℃未満での低温貯蔵が必要であり、固体のものと比べて取り扱いが困難である(請求項4)。
さらに、前記熱硬化性樹脂組成物は100〜130℃で加熱硬化させることにより設備コスト及び動力コストを低減しながら、ハイサイクル成形が可能になる(請求項5)。
そして、前記成形法により得られる成形品はハイサイクル成形で得られる成形品である(請求項6)。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂、ラジカル反応性モノマー、10時間半減期温度が60〜80℃の高温活性パーオキサイド、10時間半減期温度が40〜50℃の低温活性パーオキサイド及びハイドロキノンを含有する熱硬化性樹脂組成物において、前記ハイドロキノンが、あらかじめラジカル反応性モノマーと低級アルコールとの混合溶液に溶解されており、前記不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂とラジカル反応性モノマーとの合計量に対して100〜500ppm含有されることを特徴とするものである。
本発明に用いられる不飽和ポリエステル樹脂は、酸成分及びアルコール成分を公知の方法により重縮合させて得られるものであり、熱硬化性樹脂として知られているものであればその種類は特に限定されるものではない。酸成分としては、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和二塩基酸が用いられる。また必要に応じてフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸等の飽和二塩基酸、安息香酸、トリメリット酸等の二塩基酸以外の酸等を用いることができる。アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素添加ビスフェノール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコールが用いられる。必要に応じてグリセリン、ペンタエリスリトール等のグリコール以外のアルコールも用いることができる。
本発明に用いられるビニルエステル樹脂は、不飽和エポキシ樹脂またはエポキシアクリレート樹脂とも言われるもので、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基にアクリル酸やメタアクリル酸等の不飽和一塩基酸 またはマレイン酸やフマル酸等の不飽和二塩基酸のモノエステルを開環付加させた反応生成物(以下エポキシアクリレートともいう)を単量体に溶解させた液状樹脂であり、公知のものがいずれも使用できる。
ここでエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂がいずれも使用できるが、具体的にはビスフェノールA、ビスフェノールFまたはビスフェノールSとエピクロルヒドリンから合成されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂またはビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールとホルムアルデヒドを酸性触媒下で反応させて得られるいわゆるフェノールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンから合成させるフェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールとホルムアルデヒドを酸性触媒存在下で反応させて得られるいわゆるクレゾールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンから合成されるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラックエポキシ樹脂が挙げられる。
本発明に用いられる高温活性パーオキサイドとは10時間半減期温度が60〜80℃のパーオキサイドであり、具体的には、例えば、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(10時間半減期温度74℃、以下同様)、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(70℃)、ラウロイルパーオキサイド(61℃)、Bis−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド(60℃)等が挙げられる。これらは高温硬化性のパーオキサイドであるため、成形工程において熱硬化性樹脂組成物が一定の温度以上に達するまでは活性が緩やかであり、従って成形時の樹脂流動性を確保することができる。
本発明に用いられる低温活性パーオキサイドとは10時間半減期温度が40〜50℃のパーオキサイドであり、具体的には、例えば、Bis(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(44℃)、Di−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(44℃)等が挙げられる。これらは低温硬化性のパーオキサイドであるため、成形工程において110〜130℃の成形温度における速硬化に寄与する。
なお、前記低温活性パーオキサイドの中でも貯蔵方法及び取り扱い性の点から20〜25℃で固体であるBis(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートが好ましい。
高温活性パーオキサイドと低温活性パーオキサイドの配合割合は質量比で50/50〜95/5(高温活性パーオキサイド/低温活性パーオキサイド)、さらには70/30〜80/20であるのが好ましい。パーオキサイド全量中で高温活性パーオキサイドの割合が95質量%を超え、低温活性パーオキサイドの割合が5質量%未満の場合には、速硬化性がわるくなり、高温活性パーオキサイドの割合が50質量%未満で、低温活性パーオキサイドの割合が50質量%を超える場合には、材料の貯蔵安定性や型内流動性がわるくなる傾向がある。
本発明に用いられるラジカル反応性モノマーは、不飽和ポリエステル樹脂あるいはビニルエステル樹脂の架橋反応のために含有される成分であり、具体的には、例えば、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、酢酸ビニル、ジアリルテレフタレート等が挙げられる。これらは単独で用いても、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル反応性モノマーは、通常、希釈剤として前述した不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂あるいは後述する低収縮剤を溶解させてそれらとともに配合させるか、またはそのまま添加される。なお、本発明においては、該ラジカル反応性モノマーの一部は後述するハイドロキノンを溶解させるために用いられる。
ラジカル反応性モノマーの配合割合は特に制限されず、反応性、作業性、その他種々の目的に応じて調整されるが、例えば、熱硬化性樹脂組成物中の全量中に5〜30質量%、さらには8〜15質量%程度含有されることが成形性及び硬化特性が良好である点から好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらに貯蔵安定性を維持する目的で重合禁止剤としてハイドロキノンが含有される。本発明の熱硬化性樹脂組成物においては重合禁止剤としてハイドロキノンを選択することが重要であり、ハイドロキノン以外の重合禁止剤、具体的には、例えばパラベンゾキノン、パラメトキシフェノール、メチルハイドロキノン等のハイドロキノン誘導体は、常温から40℃程度の範囲における重合禁止作用が不充分であるので、良好な貯蔵安定性を得ることができない。
すなわち、常温から40℃程度の範囲における重合禁止作用を発揮することにより、低温活性パーオキサイドの活性を熱硬化性樹脂の貯蔵温度範囲で抑制することができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、ハイドロキノンはラジカル反応性モノマーと低級アルコールとの混合溶液にあらかじめ溶解させた溶液で配合されるか、または、無機充填材中に混合分散させた混合物で配合される。
なお、ハイドロキノンの配合量は、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂とラジカル反応性モノマーとの合計量に対して、100〜500ppm、さらには150〜350ppm程度であるのが好ましい。ハイドロキノンの配合量が500ppmを超える場合には硬化速度が遅くなりすぎ、100ppm未満の場合には良好な貯蔵安定性を得ることができない。
なお、ハイドロキノンを前記ラジカル反応性モノマーと低級アルコールとの混合溶液にあらかじめ溶解させる場合においては、ラジカル反応性モノマーと低級アルコールの混合液中、低級アルコールは10〜40質量%、さらには20〜40質量%含有されることが好ましい。低級アルコールの割合が低すぎる場合にはハイドロキノンが充分に溶解せず均一なハイドロキノンの溶液が得られず、低級アルコールの割合が高すぎる場合には硬化阻害を引き起こすことおそれがある。
前記混合溶液中のラジカル反応性モノマーとしてはスチレンまたはジアリルテレフタレートを、そして、低級アルコールとしてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールを選択した場合には、特にハイドロキノンの溶解性に優れているために好ましい。
ハイドロキノンが充分に溶解していない溶液を配合した場合には、貯蔵安定性がわるくなり、短い時間でゲル化が生じやすくなる傾向がある。従って、前記ハイドロキノン溶液の濃度は1〜10質量%、さらには1〜5質量%程度であることが好ましい。
また、ハイドロキノンを溶液で配合する代わりに、あらかじめハイドロキノンを無機充填材中に混合分散させた混合物を調製し、その混合物を熱硬化性樹脂中に配合してもよい。
なお、ハイドロキノンを上記配合方法によらずに、単純に粉末のまま配合した場合には、ハイドロキノンが充分に均一に熱硬化性樹脂組成物中に分散されないために、ハイドロキノンの重合禁止作用が十分に発揮されず、良好な貯蔵安定性を得ることができない。
本発明の熱硬化性樹脂組成物中には、さらに、必要に応じて、低収縮剤、充填材、離型剤、増粘剤、繊維強化材、顔料等を含有してもよい。
前記低収縮剤としてはポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、飽和ポリエステル、スチレンーブタジエン系 ゴム等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を組合わせて用いてもよく、通常、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂とラジカル反応性モノマーとの合計量100質量部に対して5〜100質量部、好ましくは10〜60質量部の範囲で添加することが好ましい。
前記充填材としては、成形材料に一般的に用いられている充填材が使用できる。例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、硅砂、ケイソウ土が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂とラジカル反応性モノマーとの合計量100質量部に対して0〜120質量部添加することが好ましい。
前記離型剤は、成形材料に一般的に用いられている離型剤を使用することができ、例えばステアリン酸、ミスチリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪族酸金属塩、リン酸エステル等の界面活性剤、カルナバワックス等が用いられる。
前記繊維強化剤としては、ガラス繊維等の無機繊維、炭素繊維や芳香族ポリマー等からなる各種有機繊維等を用いることができ、その繊維長は1.5〜5mm程度のものを用いることが好ましい。繊維長が1.5mmより小さいと充分な補強効果を得ることができず、5mmより大きいと成形性が低下する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物はバルクモールディングコンパウンド(BMC)やシートモールディングコンパウンド(SMC)等のFRP材料として用いられ、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等の成形方法等の各種プレス成形法により成形される。
なお、成形条件としては、金型温度が100〜130℃であることが設備コスト及び動力コストを低減出来るため好ましく、また本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて前記条件で成形する場合にはハイサイクルな成形加工が可能である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を成形して得られる成形品は、自動車部品、電気部品等の各種成形品として好ましく用いられる。
実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されることはない。
以下に本実施例で用いた原材料をまとめて示す。
(樹脂成分)
不飽和ポリエステル樹脂 :ジャパンコンポジット(株)製のポリマール9516
ビニルエステル樹脂 :日本ユピカ(株)製ネオポール8250H
(高温活性パーオキサイド)
TBPO:半減期温度74℃のt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(5
0質量%品)
TAPO:半減期温度70℃のt−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(5
0質量%品)
(低温活性パーオキサイド)
TBCPC:半減期温度44℃のBis(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキ
シジカーボネート(95質量%品)
(超高温パーオキサイド)
TBPB:半減期温度105℃のt−ブチルパーオキシベンゾエート(98質量%品)
(重合禁止剤)
ハイドロキノン
パラベンゾキノン
2,6ジ−t−ブチル4−メチルフェノール
(その他成分)
炭酸カルシウム(無機フィラー)、ポリスチレン(低収縮剤)、ステアリン酸亜鉛(離型剤)、酸化マグネシウム(増粘剤)、ガラス繊維(日本硝子繊維(株)製RESO3BM5)
〈実施例1〉
表1に示す割合で、不飽和ポリエステル樹脂に各成分を添加して、ニーダーで25〜30℃で20〜40分間混合して熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、重合禁止剤であるハイドロキノンはあらかじめラジカル反応性モノマーであるジアリルテレフタレートとメタノールの混合溶液(メタノール30質量%含有)にハイドロキノンの濃度が3質量%になるように調整した溶液で添加した。また、低収縮剤は、ポリスチレンをラジカル反応性モノマーであるスチレンに30質量%の濃度で溶解したものを用いた。
得られた熱硬化性樹脂組成物は以下の方法によりゲルタイム、キュアタイム及び貯蔵安定性が評価された。
(120℃におけるゲルタイム及びキュアタイムの測定)
熱硬化性樹脂組成物の中央部に熱電対型センサーを挟み、金型温度を120℃に設定したプレス金型の中央部に置いた後、ただちに金型を締めて加熱加圧成形を行い、記録計より図1に示すような材料の内部温度−時間曲線を得た。そして温度が上昇し始めてから第1の接線1と第2の接線2の交点であるゲル化終了点3に達するまでの時間をゲルタイムとし、温度が上昇し始めてから温度上昇がほとんど停止する硬化終了点4に達するまでの時間をキュアタイムとした。
(貯蔵安定性の測定)
得られた熱硬化性樹脂組成物を20℃の恒温室に保管して、経時的にこの材料を取り出して、材料をスパチュラで突き刺せなくなるまでの期間を貯蔵可能期間とした。
結果を表1に示す。
〈実施例2〉
重合禁止剤であるハイドロキノンとして3%溶液を用いる代わりに炭酸カルシウムにハイドロキノンがその全量中3%含まれるように調整した混合物を用いた以外は実施例1と同様の方法により熱硬化性樹脂組成物を得、評価した。
なお、ハイドロキノンと炭酸カルシウムとの混合物はハイドロキノンを乳鉢で粉砕後、ミキサーでて均一になるように混合して調整したものである。結果を表1に示す。
〈実施例3〉
高温活性パーオキサイドとしてTAPOの代わりにTBPOを用いた以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得、評価した。結果を表1に示す。
〈実施例4〉
樹脂成分として、不飽和ポリエステルの代わりにビニルエステル樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得、評価した。結果を表1に示す。
〈実施例5〉
重合禁止剤であるハイドロキノンの割合が100ppmになるように配合した以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得、評価した。結果を表1に示す。
〈実施例6〉
重合禁止剤であるハイドロキノンの割合が500ppmになるように配合した以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得、評価した。結果を表1に示す。
〈比較例1〜10〉
表1の組成で配合した以外は実施例1と同様の方法により熱硬化性樹脂組成物を得、評価した。結果を表1に示す。
Figure 2006328211
表1の結果より、本発明の熱硬化性樹脂組成物である実施例1〜6は全てゲルタイム及びキュアタイムが短く、また貯蔵安定性も優れていた。一方、重合禁止剤としてパラベンゾキノンを3%溶液で用いた比較例1、及びハイドロキノンを粉末のまま添加した比較例2では貯蔵安定性が非常にわるかった。
また、パーオキサイドとして半減期温度105℃のTBPBのみを用いた比較例3では貯蔵安定性には優れるものの、ゲルタイム及びキュアタイムが非常に長く、成形のサイクルタイムを下げることができなかった。
さらに、パーオキサイドとして高温活性パーオキサイドである半減期温度70℃のTAPOのみを用いた比較例4では貯蔵安定性には優れるものの、ゲルタイム及びキュアタイムが長く、成形のサイクルタイムを下げることができなかった。
また、ハイドロキノン量が不飽和ポリエステル樹脂とラジカル反応性モノマーとの合計量に対して600ppmである比較例5では貯蔵安定性には優れるものの、ゲルタイム及びキュアタイムが長く、成形のサイクルタイムを下げることはできなかった。
さらに、重合禁止剤としてハイドロキノン溶液の代わりに2,6ジ−t−ブチル4−メチルフェノール溶液を用いた比較例6ではゲルタイム及びキュアタイムが短いものの、貯蔵安定性がわるかった。
また、重合禁止剤としてハイドロキノンの溶媒として、メタノールを用いずにジアリルテレフタレートのみを用いた比較例7では貯蔵安定性が非常に悪かった。
さらに、パーオキサイドとして半減期温度が105℃のTBPBと半減期温度が44℃のTBCPCを用いた比較例8では、貯蔵安定性及びゲルタイムに優れているもののキュアタイムが非常に長く、成形のサイクルタイムを下げることができなかった。
また、パーオキサイドとして半減期温度が105℃のTBPBと半減期温度が70℃のTAPOを用いた比較例9では、ゲルタイムおよびキュアタイムが非常に長く、成形サイクルタイムを下げることができなかった。
さらに、ハイドロキノン量が不飽和ポリエステル樹脂とラジカル反応性モノマーの合計量に対して50ppmである比較例10では、貯蔵安定性が非常に悪かった。
実施例におけるゲルタイム・キュアタイムの評価で得られるグラフの一例を示す。
符号の説明
1 第1の接線
2 第2の接線
3 ゲル化終了点
4 硬化終了点

Claims (6)

  1. 不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂、ラジカル反応性モノマー、10時間半減期温度が60〜80℃の高温活性パーオキサイド、10時間半減期温度が40〜50℃の低温活性パーオキサイド及びハイドロキノンを含有する熱硬化性樹脂組成物において、
    前記ハイドロキノンが、あらかじめラジカル反応性モノマーと低級アルコールとの混合溶液に溶解されており、前記不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂とラジカル反応性モノマーとの合計量に対して100〜500ppm含有されることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
  2. 不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂、ラジカル反応性モノマー、10時間半減期温度が60〜80℃の高温活性パーオキサイド、10時間半減期温度が40〜50℃の低温活性パーオキサイド、無機充填材及びハイドロキノンを含有する熱硬化性樹脂組成物において、
    前記ハイドロキノンがあらかじめ無機充填材中に混合分散されたものであり、前記不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂とラジカル反応性モノマーとの合計量に対して100〜500ppm含有されることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
  3. 前記混合溶液中のラジカル反応性モノマーがスチレンまたはジアリルテレフタレートである請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 前記低温活性パーオキサイドが20〜25℃で固体である請求項1〜3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を100〜130℃で加熱硬化させる成形方法。
  6. 請求項5に記載の成形方法により得られる成形品。
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JP2013072055A (ja) * 2011-09-29 2013-04-22 Mitsubishi Rayon Co Ltd 繊維強化樹脂製構造体の製造方法。
WO2024048156A1 (ja) * 2022-09-02 2024-03-07 ナミックス株式会社 樹脂組成物、樹脂組成物の硬化物、半導体装置及び電子部品

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