JP2006323013A - トナー分離装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 少なくとも、良好に帯電したトナーを得ることができるトナー分離装置を提供する。
【解決手段】 互いに平行に配置した4本の棒状電極2A,2B,12A,12Bからなる四重極2,12を収容したチャンバ3を有し、このチャンバ3には、帯電したトナー粒子をチャンバ3内に導入し、四重電極2,12の一端に供給するトナー導入口5と、四重電極2,12間を通過して他端に到達したトナー粒子を、所定に放出するトナー放出口6と、四重電極2,12間から排除された除外トナー粒子を排出する除外トナー排出口7とを設けた。
【選択図】 図2
【解決手段】 互いに平行に配置した4本の棒状電極2A,2B,12A,12Bからなる四重極2,12を収容したチャンバ3を有し、このチャンバ3には、帯電したトナー粒子をチャンバ3内に導入し、四重電極2,12の一端に供給するトナー導入口5と、四重電極2,12間を通過して他端に到達したトナー粒子を、所定に放出するトナー放出口6と、四重電極2,12間から排除された除外トナー粒子を排出する除外トナー排出口7とを設けた。
【選択図】 図2
Description
この発明は、複写機やプリンタなどの電子写真方式の画像形成装置に関わり、より詳しくは、帯電トナー粒子から、所望の帯電量対質量比を持ったものだけを分離して、静電潜像画像を可視化する現像工程に、帯電状態のそろったトナー粒子を供給するようにしたトナー分離装置に関する。
一般に、電子写真方式で高品質な画像を得る上で、トナーに一定の帯電特性を常に持たせることが、極めて重要である。しかし、トナーに一定の帯電特性を常に持たせることは、大変に難しい。すなわち、現在、トナーは、「二成分トナー」と「一成分トナー」の二種類に大別され、これらの各成分トナーでは、それぞれ個別の理由から帯電特性上の問題が生じている。
前者の「二成分トナー」は、熱可塑性樹脂に着色剤を混合分散して微粉化したものなどでできたトナーと、微粉末状のガラスビーズや鉄粉などでできたキャリアとからなる、混合物である。そして、この混合粉体を、攪拌してトナーとキャリアとの相互を摩擦することにより、トナー粒子が、静電像電荷と逆極性の電荷を受け取るようにしている。
このため、前者では、トナーとキャリアと間の相互摩擦が長期に渡ると、キャリア表面がトナーの組成物により汚染され、充分な電荷を獲得できなくなる、あるいは、長期間の使用中に、トナーとキャリアの混合比が変動し、トナーの帯電特性も変化する、という問題が生じていた。
このため、前者では、トナーとキャリアと間の相互摩擦が長期に渡ると、キャリア表面がトナーの組成物により汚染され、充分な電荷を獲得できなくなる、あるいは、長期間の使用中に、トナーとキャリアの混合比が変動し、トナーの帯電特性も変化する、という問題が生じていた。
また、後者の「一成分トナー」は、前者のようにキャリアを含まず、トナーのみからなる粉体である。そして、たとえばこの「一成分トナー」は、摩擦帯電されて、静電潜像に付着されている。すなわち、たとえば図14に示すように、静電潜像保持体200の外表面に、所定の間隙距離を確保して、回転体として所定に回転駆動されるトナー担体91を配置し、このトナー担体91の外周表面に、「一成分トナー」であるトナーTを均一に薄く塗布し、固定設置された弾性ブレード92でトナー担体91表面を摩擦することにより、トナー粒子Tが、静電像電荷と逆極性の電荷を受け取るようにしている。したがって、このようにして摩擦帯電されたトナー粒子Tは、静電気的な作用によって、静電潜像保持体200上の静電潜像に付着する。
このため、後者では、空気湿度に依存して、トナー粒子の帯電量が変動するという、前者とは別の課題が生じていた。すなわち、空気が乾燥していると帯電量が過剰に、また、逆に湿っていると帯電量が不充分となっていた。
このため、後者では、空気湿度に依存して、トナー粒子の帯電量が変動するという、前者とは別の課題が生じていた。すなわち、空気が乾燥していると帯電量が過剰に、また、逆に湿っていると帯電量が不充分となっていた。
上記したように、トナー自身の帯電特性が劣化する、あるいは、帯電作用が湿度の変動による影響を受けるので、静電潜像の現像用として、適切に帯電したトナーを、常に安定して得ることは、難しかった。このため、最終的に画像形成装置から出力される画像の画質が低下したり、少なくとも、画質の向上が困難であるという問題があった。
そこでこの発明は、前記のような従来のものが有する問題点を解決し、少なくとも、良好に帯電したトナーを得ることができるトナー分離装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、互いに平行に配置した4本の棒状電極からなる四重極を収容したチャンバを有し、このチャンバには、帯電したトナー粒子をチャンバ内に導入し、前記四重電極の一端に供給するトナー導入口と、前記四重電極間を通過して他端に到達したトナー粒子を、所定に放出するトナー放出口と、前記四重電極間から排除された除外トナー粒子を排出する除外トナー排出口とが設けられている。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記チャンバには、大気圧空気を導くための空気導入口が、設けられている。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記除外トナー排出口は、四重極の他端よりも下流側に配置されている。
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記四重極間のトナー粒子を、該四重極間を通過する方向に移動させるための、並進電極が設けられている。
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記四重極は、電極を所定に設けた2枚の絶縁基板を、スペーサを介して、互いに平行に配置して構成されている。
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記四重極は、4本以上の電極から構成され、2つ以上の分離空間を形成した。
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかにおいて、互いに独立した、複数の四重極が設けられている。
請求項8に記載の発明は、請求項5ないし7のいずれかにおいて、前記絶縁基板上に設けた電極は、シリコンである。
請求項9に記載の発明は、請求項5ないし8のいずれかにおいて、前記並進電極は、あらかじめ絶縁基板上に形成され、絶縁膜で被われている。
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかにおいて、前記除外トナー排出口から排出されたトナー粒子は、回収されて除電した後、再利用される。
請求項11に記載の発明は、請求項1ないし10のいずれかにおいて、前記並進電極のない四重極の軸方向は、水平方向から鉛直方向までの間に固定されている。
請求項12に記載の発明は、請求項1ないし11のいずれかにおいて、装置本体内部の表面は、前記電極部分を除いて、エレクトレットで覆われている。
請求項13に記載の発明は、請求項1ないし12のいずれかにおいて、請求項1記載の構成を1つの基本単位とし、複数の基本単位を設けた構成とされている。
この発明は、前記のような構成であるから、少なくとも、良好に帯電したトナーを得ることができ、しかも現像装置に内蔵できる、小型のトナー分離装置を提供することが可能となる。
まず、この発明構成が解決する課題は、上述したとおりであるが、さらに補足すると以下のとおりである。
上述したように、「二成分トナー」と「一成分トナー」とにおいて、それぞれの個別的な理由から、画像形成用に、常に安定して最適に帯電したトナーを得られないという課題に加えて、添加剤に起因した不具合も生じていた。すなわち、一成分および二成分、両種のトナーには、いくつかの種類の添加剤が、トナー粒子表面に付着させられている。この添加剤としては、帯電極性や帯電量を決める電荷制御剤や、トナー同士が固着し凝集するのを防ぐ流動性付与剤などがある。これらのうち、トナー粒子に未付着な添加剤が凝固して、トナー粒子の帯電を不安定化させる不具合が生じていた。
これらに対処して、トナー粒子の帯電量を安定化させるために、トナー粒子や添加剤の改良が続けられている。また、静電潜像を現像後、画像濃度をセンサで確認し、トナーの帯電条件を制御して、トナーの帯電量を一定にする方法も提案されている。
他方、トナーの帯電条件を適正に制御するには、帯電トナー粒子の帯電量対質量比に応じて、個々の粒子を、正確に分別する必要がある。すなわち、ある一定の範囲内の帯電量対質量比を有した帯電トナー粒子と、この範囲外の帯電量対質量比を有した帯電トナー粒子と、を分離して、この一定の範囲内の帯電量対質量比を有した帯電トナー粒子だけを、画像形成用に安定して供給できれば、画像品質の向上が図れることになる。
従来、このような微粒子を分離するための、一般的な分級装置としては、「微分型静電分級器」(Differential Mobility Analyzer:以降、DMAと称する)が知られている。すなわち、DMAは、1ミクロンから10ナノメータの大きの微粒子を、静電気力によってふるい分けるフィルタである。具体的な微分型静電分級器としては、理化学研究所から、既に3つの提案が行われていた(例えば、特開平10−288600号、特開平11−264790号、特開2000−46720号)。
Electronic Journal 別冊「2002 マイクロマシン/MEMS技術大全」(株)電子ジャーナルなどを参照すると、DMAのフィルタ部は、一般的に図15に示すように、ステンレス製の二重円筒電極で構成されている。そして、各円筒電極に直流の高電界を印加し、これらの円筒電極同士の隙間に、外筒に設けたスリットから、シースガスと共に帯電した微粒子を流す。すると、帯電粒子とシースガスとの間の相互作用の違い、つまり粒子の持つ電気移動度の違いによって、粒子が外筒電極表面に到達するまでの距離に差が現れる。したがって、所定に帯電した微粒子だけが、電極表面に接することなく、内外の円筒間に形成された隙間を通過できることになる。ここで移動度とは、帯電量対質量を反映した物理量のことである。上記が、微分型静電分級器の原理である。
他方、特定の分子イオンを分離するフィルタとして、「四重極型質量分析計」(quadrupole mass spectrometer)が知られている。この発明の前提となるので、以下、「四重極型質量分析計」の原理について、簡単に説明する。この質量分析は、試料をイオン化し、質量数/電荷(m/z)比によって、分離・検出する手法とされ、質量分析計としては、試料を所定方法でイオン化するイオン源と、質量分離部と、検出部とを有し、少なくとも、質量分離部と検出部とが真空中に設置されて、イオン化された試料が、検出器まで安定的に到達するようにしている。
四重極型質量分析計の構成を示した概略図を、図16および図17に示す。四重極質量分析計301は、イオン源302と、質量分離部である四重極フィルタ303と、検出部304とからなり、この順序でこれらを、概略同一直線上に揃えて配置した構成が一般的とされている。
すなわち、四重極の一端にイオン源302を置き、他端にイオンを検出する検出部としての電子倍増管304を置いている。換言すれば、四重極303の長手方向における両端のうち、一端にイオン源302が配置され、他端に電子倍増管304が配置されている。
この質量分析用の四重極フィルタ303は、1本の軸を中心にして互いに等しい距離離れかつ互いに等しい角度で配置された4本の円柱状電極303A,303Bを主体に構成され、軸中心に対称的に配置され相対した1対の電極303A,303Bを、電源305に電気的に連結し、それぞれの各ペアに所定の直流と高周波交流とを重ね合わせたU±Vcos(ωt)となる電圧を印加した構成とされ、四重極内部に所定に変動する電場を形成している。すなわち、図17中の左右1対の電極303A,303Aには、−(U+Vcosωt)となる重畳電圧が印加され、同図17中の上下1対の電極303B,303Bには、+(U+Vcosωt)となる重畳電圧が印加されている。ここで、Uは、直流電圧成分の大きさ、Vは、交流電圧成分の最大値であり、交流電圧値としては、その交流周波数に応じて(Vcosωt)となる。
すなわち、四重極の一端にイオン源302を置き、他端にイオンを検出する検出部としての電子倍増管304を置いている。換言すれば、四重極303の長手方向における両端のうち、一端にイオン源302が配置され、他端に電子倍増管304が配置されている。
この質量分析用の四重極フィルタ303は、1本の軸を中心にして互いに等しい距離離れかつ互いに等しい角度で配置された4本の円柱状電極303A,303Bを主体に構成され、軸中心に対称的に配置され相対した1対の電極303A,303Bを、電源305に電気的に連結し、それぞれの各ペアに所定の直流と高周波交流とを重ね合わせたU±Vcos(ωt)となる電圧を印加した構成とされ、四重極内部に所定に変動する電場を形成している。すなわち、図17中の左右1対の電極303A,303Aには、−(U+Vcosωt)となる重畳電圧が印加され、同図17中の上下1対の電極303B,303Bには、+(U+Vcosωt)となる重畳電圧が印加されている。ここで、Uは、直流電圧成分の大きさ、Vは、交流電圧成分の最大値であり、交流電圧値としては、その交流周波数に応じて(Vcosωt)となる。
イオン源302は、中性分子を所定にイオン化して、所定方向に射出できるように構成されている。すなわち、イオン源302を通過した中性分子は、分子イオンとなり、イオンレンズ301aで弱く加速されて、四重極部303の一端側に投入される。他端側に配置された電子倍増管(Electron Multiplier)304は、該電子倍増管304に到達した分子イオンを捉え、分子イオンの個数に応じた電気的なパルス信号に変換して出力するように構成され、分子イオンの個数をカウントして計測する。なお、少なくとも、フィルタ303、および検出部304は、図示しないチャンバなどの金属性の真空容器内に収容されて、略真空雰囲気中に設置されている。
したがって、このように構成された四重極質量分析計301では、その設定されたU+Vに応じて、ある特定のm/z(質量対電荷比)を持った分子イオンのみ振幅が大きくならず、四重極303の径方向に対して安定な振動をして、四重極303の軸方向を進み続け、つまりイオン検出器304に到達する。これに対して、この帯電状態以外の他の分子イオンは、四重極軸方向に直角な面内での振幅が大きくなり、その結果、四重極303の電極表面に衝突するか電極303A,303Bの隙間から四重極303の外に除外されてしまうので、検出器304には到達しない。換言すれば、m/zとして規定された特定の帯電状態の分子イオンだけが、イオン・フィルタとしての四重極に捕捉されることなく、フィルタ303を通り抜け、検出器304に到達する。
4本の円柱状電極303A,303Bによって囲まれた軸方向に伸びる分離空間Aの中に導かれた分子イオンは、U、V、cosωtを固定し、直流電圧と高周波電圧振幅の電圧比U/Vを一定にし、高周波電圧の振幅Vを変化させることにより、質量スキャンが行われる。すなわち、直流電圧Uをゼロにすると、充分に低い交流電圧となるので、すべての分子イオンが安定した振動を示す。したがって、Vが、検出できる分子イオンを規定した質量のカットオフ値を決定することになる。
このように、四重極303の径方向の電界が、分子イオンに振動を起こさせ、特定の質量対電荷比を持った荷電粒子のみが、四つの円柱状電極303A,303Bによって囲まれた分離空間A内で安定な振動をする。そして、不安定な振動をするイオン種は、四重極の外に飛び出すか、電極に衝突してしまう。
なお、軸方向の電界は、径方向の電界とは完全に独立しており、その電場としての値はゼロとなる。したがって、分離空間A内に投入されるイオン種の速さは揃っていなくても、よいことになる。他方、このため、四重極軸長手方向に沿って進むイオン種は、不安定なの運動で進むことになる。
そこで、このように軸方向に向うイオン種の運動が不安定となる課題を解決する方法として、四重極を構成する円柱状電極表面に、らせん状の抵抗皮膜を形成し、その軸方向における両端に電位勾配を生成することにより、軸方向のイオンの動きを制御するようにした構成が知られている(たとえば、特開2001−283769号)。
そこで、このように軸方向に向うイオン種の運動が不安定となる課題を解決する方法として、四重極を構成する円柱状電極表面に、らせん状の抵抗皮膜を形成し、その軸方向における両端に電位勾配を生成することにより、軸方向のイオンの動きを制御するようにした構成が知られている(たとえば、特開2001−283769号)。
また、減圧雰囲気(10〜30Torr)で四重極を、質量分析計に応用した例として、核融合用D−Tペレットインジェクターという構成例が知られている(たとえば、特公昭61−006357号)。このD−Tペレットインジェクターは、二重水素および三重水素の混合液体を振動させて一定粒径の液滴を流出させる振動ノズルと、この液滴に一定の電荷を与えるボクサーチャージャーと、この一定電荷が付与された液滴を非接触で導きながら氷結固化して、粒径および電荷が一定の二重水素および三重水素が混合したペレットを形成するための四重極レールと、このペレットを高真空炉へ導くための差動排気部とで構成され、さらに少なくとも、その四重極レールは、10〜30Torrの低圧でしかも二重水素と三重水素との三重点よりも僅かに低い極低温の条件下に設置され、ペレットを形成する固化部と、このペレットのうち、所定の比電荷を有するペレットのみを選別する選別部と、この選別されたペレットを貯蔵しうる貯蔵部とで構成されている。
さらに、大気圧下で四重極電界を形成し、帯電粒子を分級する「電界マトリクス」という方法も知られている(たとえば、特公平7−22719号)。すなわち、図18に示すように、この電界マトリクスを生成する構成401は、四角形状の枠体402を用いて、2本の電線403A,403Bを、マトリクス状となるように、かつ両電線403A,403Bが交差した箇所では互いに絶縁して配線した構成とされ、この構成401においては、互いに絶縁された金属網(電線403A,403B)に交互に交流電界を印加すると、個々の網目(メッシュ)に四重極電界が形成され、特定の電荷量対質量比を持った粒子だけが、メッシュの空間に閉じ込められたり、あるいは、メッシュに沿って搬送される。したがって、この特定以外の他の粒子は、網目から落下する。こうして、特定粒子が選別され、分級が行われる。
また、荷電粒子の帯電量分布・粒度測定装置において、レーザービーム発生装置と、このレーザービーム発生装置から発生したレーザービームに一定の周波数偏寄を与える音響変調器と、これと接続しレーザービームを2つに分割するビームスプリット機構と、このビームスプリット機構により分割されたレーザービームを被測定粒子導入口から流入させる被測定粒子に照射すると共に粒子に振動を付与する音波振動発生機構と電場を発生させる電極とを備えたチャンバと、粒子により散乱されたレーザービームを検知する検知装置と、この検知装置から帯電量と粒度を算出する演算装置とからなる帯電量分布・粒度測定装置が知られている(たとえば、特許第2686358号)。したがって、この装置によれば、印加電圧を0にした場合でも、その分布はいずれかの極性側に偏寄することなく、常に高い精度で荷電粒子の帯電量分布を測定でき、しかも特別に高価な装置を必要としないので、安価で精度のよい荷電粒子の帯電量分布・粒度測定装置を提供でき、このため複写機のトナーの品質管理、品質改良に適用できるとされている。
また、潜像担持体からクリーニング手段で除去されたトナーを搬送する第1の搬送手段と、第1の搬送手段により搬送されたトナーを分級する分級手段と、分級手段により分離されたトナーを現像手段側に搬送する第2の搬送手段とを有したトナーリサイクル装置において、分級手段として、電源によりトナーの帯電極性と逆の極性電圧を印加される導電性のフィルタを設け、このフィルタによって、質量に比して適当な帯電量を有する回収トナーは通過させ、質量に比して帯電量の小さないわゆる対電荷質量比の低い不要物は、フィルタを通過することができずに、フィルタ上に浮遊させた構成が知られている(たとえば、特開平11−327393号)。したがって、この装置によれば、適切粒径より小さな粒径のトナー、異物等の不要物を確実に除去し、現像装置内における目詰まり、現像剤流動性の低下、画像不良を防止できるとされている。
また、減圧された雰囲気ガス中に設置されたQポール型質量分析計において、イオン源側からコレクタ側に向けて前進する計測すべきイオンの軸方向の動きをQポール領域内において制御しつつ、径方向の四重極高周波電界によるクーロン力によって前記計測すべきイオンを質量分別するQポール型質量分析計が知られている(たとえば、特開2001−283769号)。したがって、この装置によれば、0.1Pa以上の高圧条件下における質量分析を可能にすることができ、しかも連続的にガス分子の質量分析を行うことが可能であるとされている。
また、平行に設けられた複数の線状電極から成る電極群の、少なくとも二組を重合させ、各組の線状電極を互いに絶縁して交叉させ、該電極群間に交流電圧を印加して電界マトリクスを形成し、該電界マトリクスに被分級粒子を供給し、供給される被分級粒子は荷電されたり、交流電圧は周波数および印加電圧の一方または双方を可変できる単相交流電圧としたり、電界マトリクスは大気よりも高い気圧の気体中に設けたりした粒子分級装置が知られている(たとえば、特公平7−22719号)。したがって、この装置によれば、従来のような粒子分級装置よりも一層高精度な粒子の分級が可能になるとされている。
さらに、四重極電極に高周波電圧と直流電圧の重畳電圧を印加し、イオン源からのイオン電流を該四重極電極を通して検出器で検出する四重極質量分析計において、検出器は、複数の微小チャンネルを二次元的に配置し四重極の中心軸が通過する位置に開口部を有して形成されるプレートを備え、前記開口部を四重極の中心軸上に配置した四重極質量分析計が知られている(たとえば、特開平10−144254号)。したがって、この四重極質量分析計によれば、イオン電流は微小チャンネルで検出され、イオン電流以外の無電荷のものは開口部を通過して微小チャンネルで検出されないため、ノイズ電流の発生を防止できるとともに、検出器が備える開口部を中心軸上に配置することによって、検出器を四重極電極の中心軸上に配置し、中心軸の半径方向の大きさを小さくして小型で微小電流の検出を可能にできるとされている。
また、棒状の四重極電極群と、導電性ベースと、この導電性ベースに立設され、電極群の中心に四重極電場が形成されるように上記四重極電極群を半分ずつ支持する導電性第1ポストおよび導電性第2ポストとからなる電極アセンブリを備えると共に、この電極アセンブリを真空チャンバ内に収納してなる高周波四重極装置において、上記四重極電極群は少なくとも6本以上の偶数本の電極からなり、その内の隣接する4本の電極の組み合わせによって少なくとも2箇所以上で四重極電場が形成されるように、上記第1ポストおよび第2ポストは、それぞれ、隣接する4本の電極の組み合わせ全てにおいて対角線上に位置する異なる電極群を支持した構成の高周波四重極装置が知られている(たとえば、特開平7−73999号)。したがって、この装置によれば、イオン注入や表面改質を行う装置に適用される高周波四重極型加速器や、イオン分析に利用されるRFQ型質量分析器等に適用する場合に、同一真空チャンバ内に、複数の高周波四重極型の構造を、長さ方向と直交する方向に重ねて設けることができ、複数箇所に四重極電場を形成できるので、複数の高周波四重極型構造においてそのビーム出射部と入射部とを、偏向角180°の電磁石等のビーム輸送手段を用いて接続することによって、従来と同じ能力(例えば、加速能力)を有しても、全体の長さを従来よりも大幅に短縮できるとされている。
さらに、それぞれが逆極性に帯電する二色のトナーを用いて画像形成を行った後に回収した混合トナーを分離するトナー分離装置において、絶縁基板上に並行に配列した複数本の電極と、複数本の電極を、その配列順で対応する電極ごとに電気的に接続して複数の電極群を構成してなり、複数の電極群に対して、それぞれトナー搬送電圧を印加するための電圧印加手段を有し、トナー搬送電圧は、互いに逆の極性に帯電した二色のトナーのそれぞれを電極の組を構成する電極の配列方向で隣り合う一側および他側の電極に移動させる電界を形成するごとく所定のパターンで繰り返す二値電圧とした構成の二色トナー分離装置が知られている(たとえば、特開平8−240961号)。したがって、この装置によれば、それぞれ逆の極性を有する二色のトナーを、それぞれ逆方向に確実に搬送して分離できるとされている。
また、電子写真複写機やレーザープリンタ等の画像形成装置の現像装置内の現像剤を分離する現像剤分離装置において、周期的な電界分布(同一形状の電界が繰り返し並んで配置された状態で形成される電界分布)を有する電界カーテンを発生させ、マイナストナーとキャリアとをほぼ逆方向に搬送するトナー分離装置が知られている(たとえば、特開2003−84570号)。したがって、このトナー分離装置によれば、クリーナで回収された各色のトナーを電界カーテンによって分離し、各色用の現像器で再利用可能であり、またトナーを再利用することによって、トナーの排出量を低減させることができ、トナー回収容器及び画像形成装置本体を小型化でき、さらに従来と異なり、電界カーテンによって、正(+)に帯電したトナーと負(−)に帯電したトナーを逆方向に搬送するので、カラー画像形成時にも、各色トナー用のすべてのクリーナでトナーを再利用でき、大幅にランニングコストを低減できるとされている。
さらに、弱帯電トナー分離手段と、弱帯電トナー分離手段に当接し現像剤循環部に向かって湾曲した面を有する一対の電極とを備え、弱帯電トナー分離手段との当接部における電極間距離をd1、上記弱帯電トナー分離手段の長手方向と直交する上記電極の短手方向で現像剤循環の上流側に位置する電極間距離をd2、上記電極の短手方向で現像剤循環の下流側に位置する電極間距離をd3、現像剤循環の上流側に位置する電極の短手方向の有効長をL1、現像剤循環の下流側に位置する電極の短手方向の有効長をL2とするとき、d1<d2<d3、且つ、L1<L2となるように構成して、該電極間に振動電界を形成した画像形成装置が知られている(たとえば、特開2000−162871号)。したがって、この装置によれば、弱帯電トナー分離手段に対向して一対の電極を設け、その電極間の距離および有効長さが規定されることにより、現像スリーブ上の弱帯電トナーを現像スリーブによる画像形成領域から分離して画像形成領域外で、特に、トナーの循環系路において現像スリーブによる現像領域に対して最も遠い位置に搬送でき、しかも、搬送されるトナーが上記最も遠い位置に移動する過程において重力と電極の振動による帯電作用を施されるので、単に弱帯電トナーを感光体の地肌部に付着させないようにするだけでなく、弱帯電トナーを正規の帯電量に復帰させた上で再度感光体に対して供給させることが可能となるとされている。
また、絶縁支持体に並行に配置された線状電極群と、この線状電極群を覆うように設けられるフィルムからなり、前記線状電極群に多相交流電圧源が接続される電気パネルを用いた静電力による粉体の分別方法において、前記電気パネルを傾斜させるとともに、湾曲させてその電気パネル上に供給される粉体に重力による外力を作用させ、その外力を静電力とともに分別要素にしたり、また絶縁性からなる薄いチューブの外周面に巻回され並行に配置される線状電極群を有し、該線状電極群には多相交流電圧源が接続されるチューブ形状電気装置を用いた静電力による粉体の分別方法において、前記チューブ形状電気装置を傾斜させるとともに、湾曲させてチューブ形状電気装置の内面上に供給される粉体に外力を作用させ、該外力を静電力とともに分別要素にしたりする粉体の分別方法が知られている(たとえば、特許第3569553号)。したがって、この方法によれば、粉体の分別は、静電力と組み合わせて、粉体に外力、つまり、重力、遠心力等を作用させるようにしたので、コンパクトであり、粉体の分別をきめ細かに行うとともに、分別領域の拡大を図ることができ、また粉体の帯電の差異、帯電対質量比、サイズ、サイズ分配、形状及び吸湿度によってグループに分別され得るとされている。
しかしながら、上記のDMA、四重極分析計、電界マトリクスの構成を、電子写真方式で画像を形成する画像形成装置に、適用することは非常に困難であり、実質的に不可能であった。すなわち、この電子写真方式の画像形成装置において、その画像形成用の帯電トナー粒子を所定に選別するために、上記の各構成を転用することは、困難であった。
すなわち、DMAは、剛性を要する機構部分が多く、画像形成装置に小型化して組み込むことは、困難であった。
また、四重極分析計は、小型化や軽量化は可能ではあるが、電極自身を真空中に置く必要があり、金属性の真空容器が不可欠である。一般的な質量分析においては、分子イオンだけを安定的に振動させるため、四重極は真空中に置かれている。すなわち、減圧雰囲気でガスの平均自由行程を大きくすることによって、振動する分子イオンが他のイオン種や中性種と衝突しないようにするためである。このため、画像形成装置のように、大気圧下で扱われる帯電トナー粒子のフィルタとして、そのままの構成で用いることは、困難であった。
さらに、電界マトリクスにおいては、個々のメッシュに形成される電界は、四重極ポールを用いたときのそれとは違い、対称的な電気力線は描かず、歪んだ電気力線の電界となっている。そして、金属網の交差する部分では、放電が生じることもある。このため、分級を精度良く、そして安定して行うことは難しかった。
また、その他の構成においても、大気圧以外の環境下での動作を前提としていたり、現像用に帯電されたトナー粒子以外のものを分離対象または選別対象としていたり、回収トナーを選別していたりして、必ずしも、所定の分離条件を設定して現像用に最適な帯電トナー粒子を選別した構成であるとは、明確に規定されていない。
また、四重極分析計は、小型化や軽量化は可能ではあるが、電極自身を真空中に置く必要があり、金属性の真空容器が不可欠である。一般的な質量分析においては、分子イオンだけを安定的に振動させるため、四重極は真空中に置かれている。すなわち、減圧雰囲気でガスの平均自由行程を大きくすることによって、振動する分子イオンが他のイオン種や中性種と衝突しないようにするためである。このため、画像形成装置のように、大気圧下で扱われる帯電トナー粒子のフィルタとして、そのままの構成で用いることは、困難であった。
さらに、電界マトリクスにおいては、個々のメッシュに形成される電界は、四重極ポールを用いたときのそれとは違い、対称的な電気力線は描かず、歪んだ電気力線の電界となっている。そして、金属網の交差する部分では、放電が生じることもある。このため、分級を精度良く、そして安定して行うことは難しかった。
また、その他の構成においても、大気圧以外の環境下での動作を前提としていたり、現像用に帯電されたトナー粒子以外のものを分離対象または選別対象としていたり、回収トナーを選別していたりして、必ずしも、所定の分離条件を設定して現像用に最適な帯電トナー粒子を選別した構成であるとは、明確に規定されていない。
そこでこの発明は、現像工程に適用可能で該現像による画質向上が図れる構成として、現像装置に内蔵できる小型の、帯電トナー粒子の帯電量質量比フィルタを提供することを目的にしている。
すなわち、各帯電トナー粒子が有した帯電量質量比に基づき、ある帯電量質量比の帯電トナー粒子を、他の帯電量質量比のトナー粒子から分離するフィルタを用いたトナー分離装置によって、静電潜像の可視像化に最適な帯電状態のトナー粒子を選別して、該静電潜像を保持した静電潜像保持体つまり所定の現像位置に供給し、少なくとも、画質の向上が図ることを目的にしている。
上記目的を達成するために、この発明においては、トナー分離装置が、四重極質量分析法に基づいた、大気圧で動作する、荷電粒子分別用のフィルタ構成とされ、このトナー分離装置が、複写機やプリンタなどの画像形成装置の現像装置に、内蔵されている。
この発明おける分離フィルタとしての四重極は、真空を必要としない。これは、その分離対象でするイオンが、トナーという巨大荷電粒子であるため、空気分子との衝突は、事実上、無視することができるからである。すなわち、空気分子の大きさに比べて、トナー粒子の大きさは、はるかに大きいので、トナー粒子の挙動は、空気分子に影響されずに済む。このため、空気分子を排除した真空条件を必要とせずに済み、四重極は、大気圧下で動作させることができる。
次に、この発明の第1の実施形態を説明する。図1は、現像装置に組み込まれた、トナー分離装置の一例を示した概略図であり、図2は、トナー分離装置の構造の一例を示し、その概略全体構成を示す縦断面図であり、図3は、同トナー分離装置の横断面図である。
この第1の実施形態において、図1に示すように、現像装置100は、所定に回転駆動される静電潜像保持体200の近傍に配置され、この静電潜像保持体200の表面上に所定に生成され該保持体の回転に伴い現像装置100の近傍位置に移動してくる不可視の静電潜像を、トナー粒子で可視像化して現像するようにしている。なお、図1において、図14に示した構成と同一の部分には同一の符号を附して、その説明を簡略化する。
すなわち、静電潜像保持体200は、画像形成装置の画像形成に用いられる像担持体として、たとえば有機光導電層を有する感光体(OPC:organic photo conductor;有機光導電体)に代表されるように、その表面に、静電潜像を形成して保持可能に構成され、この静電潜像に、現像装置100が、微粉末状のインクとしてのトナーを静電作用によって付着させて、可視像化するようにしている。すなわち、たとえば感光体は、所定径の円筒状に形成された感光体ドラムとされ、少なくとも、該ドラム表面に有機光導電層が形成されて所定に回転駆動されるとともに、この回転方向における現像装置100からのトナーによって可視像化が実行される現像位置よりも上流側の所定位置で、該ドラム表面が、図示しない露光装置からのレーザ光によって所定に走査されて、形成する画像に対応した静電潜像を生成するように構成されている。
現像装置100は、静電潜像保持体200の近傍に所定に配置され所定に回転駆動されるトナー担体91と、このトナー担体91に一成分トナーを供給する図示しないトナー供給経路を有したトナー供給装置と、トナー担体91の回転に伴い移動してくる一成分トナーを摩擦帯電させる弾性ブレード92と、摩擦帯電されて移動してくる一成分トナーのうち、所定帯電状態のトナーを選別して、静電潜像保持体200に向けて放出するように構成されたトナー分離装置1とを、主体に構成されている。
トナー担体91は、所定径の円筒形状に形成され、静電潜像保持体200の回転軸と平行な図示しない軸に軸支されて、静電潜像保持体200の回転周面と所定の間隙距離を確保して、配置されている。そして、このトナー担体91は、その軸に図示しない駆動源から回転力が伝達されて、静電潜像保持体200とは逆回転方向に、所定速度で回転駆動されている。
トナー供給装置は、図示しない配管などによって、図示しないトナーボトルなどのトナーが充填されたトナー容器からなるトナー供給源に至る供給経路が形成され、この供給経路を介してトナー供給を可能に構成されている。したがって、トナー供給装置は、トナー供給源にトナーがある限り、少なくとも、静電潜像の現像で消費された分のトナーを補充するように、トナー担体91の上部にトナーを供給している。
弾性ブレード92は、金属材料を用いて、上側に凹状となるように所定に湾曲した薄板形状に形成されて、弾性変形可能な構成とされ、その先端側の下面が、トナー担体91の上部に接するように図示しない押圧部材によって固定保持されている。したがって、弾性ブレード92がトナー担体91に接する部位付近が、摩擦帯電部Fcとなる。
なお、同図中の101aは、トナー担体91の外周表面における摩擦帯電部Fcの上流側かつトナー担体91の上部である所定位置に接するように、図示しない固定部材によって保持された規制部材であり、この規制部材101aと弾性ブレード92とによって、両者間のトナー担体91の上部に、補充されたトナーを所定量、滞留させるようにしている。また、101bは、現像位置を通過してトナー担体91表面上に付着し続けたトナーを検知するトナーセンサである。
したがって、このように構成された現像装置100では、一成分トナーが、トナー担体91と金属製の弾性ブレード92間の摩擦により帯電される。摩擦帯電部Fcで電荷を与えられたトナー粒子は、トナー担体91表面近傍に配置されたトナー分離装置1のトナー導入口5から、トナー分離装置1に内蔵した分離機能を担う同図中には図示されない四重極へと導かれる。そして、この四重極の分離機能によって、静電潜像を高画質で可視化するのに最適な帯電量を持ったトナー粒子が選別され、静電潜像保持体200に向けて、トナー放出口6から放出される。すなわち、トナー担体91および弾性ブレード92からなるトナー帯電装置で帯電されたトナー粒子は、トナー分離装置1を通過して静電潜像保持体200の現像位置に供給され、この通過する過程で所定に分離され選別される。
トナー分離装置1は、図2および図3に示すように、その四重極2が、互いに平行に配置された4本の棒状の金属電極2A,2Bで構成され、これらの電極2A,2Bは、その全体を包み込むような円筒状のチャンバ3に収められている。そして、これらの4本の電極2A,2Bを所定の対にして、それぞれの対に、直流と高周波の交流とを重畳させた所定電圧を印加させるための電源4が、設けられている。
すなわち、トナー分離装置1は、互いに平行な姿勢で所定位置に配置した4本の棒状電極2A,2Bからなる四重極2と、この四重極2を収容した密閉状のチャンバ3と、一方の対である電極2A,2Aおよび他方の対である電極2B,2Bに、それぞれ所定に配線接続されて直流と交流とを重畳した所定電圧を印加し該四重電極2間に分離空間Aとしての電界を形成する電源4とを有し、このチャンバ3には、トナー担体91の表面に対向されたトナー導入口5と、静電潜像保持体200の表面における前記現像位置の近接させて、かつ表面に対向して配置されたトナー放出口6とが形成され、さらにこの四重電極2の周囲に該四重電極2が生成した電界の作用によって該電界に相当する分離空間Aから外に排除され除外されたトナー粒子を、排出するための除外トナー排出口7が形成されている。
これらの棒状電極2A,2Bは、導電性材料を用いて、同一径で同一長さの長棒状に形成され、トナー導入口5およびトナー放出口6のそれぞれの開口中心を結んだ線を共通の中心軸線にして、軸対称に、かつ互いに平行な姿勢で配置されている。すなわち、図2に示すように、その縦断面方向において、これらの棒状電極2A,2Bのすべてが、その長手方向を中心軸線方向と並行となるように配置され、かつ、図3に示すように、その横断面において、同棒状電極2A,2Bのすべてが、同中心軸線から同じ距離、離れるとともに、該中心軸線と隣接した棒状電極2A,2Bを結んだ角度が、同じ角度となるように配置されている。換言すれば、同一軸から等距離、離れた1対の棒状電極を、該軸を中心にした直交線上に位置させて2対設け、かつ、これらの棒状電極を、前記軸方向に互いに平行に配置している。謂わば、4本の棒状電極2A,2Bは、直交線の交点から等距離、離れて、該直交線上に位置し、かつ、その長手方向が互いに平行となるように配置されている。
なお、これらの棒状電極2A,2Bは、絶縁材料で形成された図示しない電極ホルダーによってチャンバ3内に固定保持され、この電極ホルダーは、少なくとも、その基端がチャンバ3内壁に固定され、かつチャンバ3内の帯電トナー粒子の移動や空気流の流動を妨げない構成とされている。
そして、同図3中に示すように、その左右の対である電極2A,2Aは、電源4の一方の出力端子に配線接続され、直流および高周波交流が重畳された−(U+Vcosωt)の電圧が印加されると同時に、その上下の対である電極2B,2Bは、電源4の他方の出力端子に配線接続され、直流および高周波交流が重畳された+(U+Vcosωt)の電圧が印加される。したがって、四重極間には、その長手方向の全域に渡って、帯電トナー粒子をその帯電状態に応じて、ある帯電状態のトナー粒子と他の帯電状態のトナー粒子とに選択的に分離して選別可能な分離空間Aとしての電界が形成される。
トナー放出口6は、少なくとも、該トナー放出口6の開口付近に至るまでの周辺形状が、その縦断面形状において、先端側に進むに伴って断面が連続的に減少する先細りのノズル形状に形成され、該ノズル先端は、静電潜像保持体200の表面に近接しかつ正対している。すなわち、該ノズル先端から放出されたトナーが静電潜像保持体200の表面に接する位置として、静電潜像保持体200の表面における現像位置が所定に設定されている。
チャンバ3には、トナー放出口6の近傍かつ、前記の中心軸線を中心にして、少なくとも、1対の除外トナー排出口7が軸対称的な位置に開口されて設けられ、これらの除外トナー排出口7は、同一の開口断面積が設定されている。この除外トナー排出口7には、配管などを介して、図示しないエアポンプなどの排気用のエア発生源が接続され、このエア発生源によって、チャンバ3内の空気を排出するようにしている。なお、エア発生源は、トナー分離装置1自体に付属されているか、現像装置100に設けられているか、または現像装置100の近傍に設けられている。
したがって、このように構成されたトナー分離装置1によれば、トナー担体91から受領した帯電トナーのうち、現像用に好ましい帯電状態のトナー粒子を分離して選別し、この選別した帯電トナー粒子だけを静電潜像保持体200上の現像位置に供給することができる。
すなわち、図2の左端として示される四重極軸上でその一端から同図2の右側に向かって、トナー分離装置2つまりチャンバ3内に導入された帯電トナー粒子は、四重極2の作り出す径方向の電場によって、つまり四重極2が生成した分離空間A内で、その四重極軸方向に垂直な方向に対して振動を始める。そして、電荷量対質量比が特定の値である帯電トナー粒子だけが、この分離空間A内に振動を抑えられ、四重極軸上の他端に到達し、この他端に設けられたトナー放出口6から静電潜像保持体200に向かって放出される。
他方、この条件から外れた帯電トナー粒子は、電場によって誘起された振動の振幅が次第に大きくなり、やがて分離空間Aから飛び出してしまう。すなわち、電荷量対質量比が特定の値ではない帯電トナー粒子は、上記の他端に向いながら、その振動の振幅方向として、四重極軸方向に交差した概略径方向に往復移動し、やがて振幅の拡大に伴い、該他端に到達する前に、いずれか一方の概略径方向に進み続けるように、分離空間Aから離れることになる。このため、四重極2の外に漏れ出した帯電トナー粒子は、除外トナー排出口7から空気と共に排出される。すなわち、この漏れ出した帯電トナー粒子は、四重極2の外周に形成された除外トナー排出口7に至る空気流に捕捉され、この空気流に載って運び去られる。
したがって、静電潜像を高画質で可視化するのに最適な帯電量を持ったトナー粒子が、静電潜像保持体200に向けて、トナー放出口6から放出される。すなわち、トナー帯電装置から帯電されて供給されたトナーのうちから、最適な帯電量を有したトナー粒子が、選別されて、この選別したトナー粒子が、静電潜像保持体200の表面に正対するように射出される。このため、静電潜像保持体200の回転に伴い、移動してくる該表面上の静電潜像に、異種電荷同士間に働く静電気的な吸引作用によって、トナー粒子が正確かつ確実に適切な状態で付着して、該静電潜像は、高品位な画質で可視像化される。
他方、このようにして静電潜像保持体200に向かう経路から除外され排出された帯電トナー粒子は、現像に使われなかった帯電トナー粒子とともに、除電後、再利用される。すなわち、分離装置によって除外された帯電トナーと、図示しないクリーニング装置によって現像後の静電潜像保持体200表面から回収された残留トナーとは、図示しない除電装置を経由して、上記の帯電装置にトナーを供給する供給装置か、少なくとも、担体91上のトナー供給位置に戻され、この除電装置は、両トナーの帯電状態を解除するように構成されている。なお、除電装置の構成は、該除電装置内を通過するトナー粒子の近傍に、弱X線照射して非接触に除電する構成を含めた適宜の構成を用いてよい。
また、上述した四重極型質量分析計の原理のところで説明したように、四重極軸方向には電場が働かないので、帯電粒子の軸方向の速度は不安定である。このため、該粒子の軸方向に移動する速度が遅くなり、四重極2の他端である終端に到達しない、あるいは到着するまでに時間を要する場合が、しばしば生ずる。すなわち、静電潜像保持体200上の現像位置にその現像に必要な帯電トナー供給量が確保できないおそれがある。
そこで、この第1の実施形態では、チャンバ3に、トナー導入口5とトナー放出口6との間に、大気圧空気を導入するための空気導入口8が、四重極2の上流側に設けられ、分離空間内の帯電トナー粒子を電極軸方向に向わせる空気の流れを、より安定的かつ確実に、チャンバ3内に形成するようにしている。すなわち、チャンバ3内に形成される空気の流れは、より正確には、チャンバ3内に入る空気と、チャンバ3内から出る空気との相対的な流量関係で規定される。そこで、トナー分離装置1内に導入した帯電トナー粒子を、速やかにかつ確実に安定して四重極軸方向の下流側へ運ぶため、その上流側に空気導入口8を設け、この空気導入口8から、大気圧空気を所定に導入している。換言すれば、単位時間あたりの前記入る空気と出る空気との両方の流量を、適切に制御して、チャンバ3内の空気の流れを、除外トナーを排出するためだけではなく、分離空間内の帯電トナー粒子の速やかな移動に適する流れとして、能動的に維持するようにしている。この大気圧空気は、エア発生源から供給されている。すなわち、図示しないエアポンプなどの給気用のエア発生源が、トナー分離装置1自体にか、現像装置100自体にか、または現像装置100の近傍にか、設けられ、その空気送出口は、配管などを介して空気導入口8に接続されている。そして、このエア発生源から所定流量の空気が、空気導入口8に送給され、前記の流れを形成するための大気圧空気として導入するようにしている。なお、当然、異物を含まない清浄な空気を送給するために、エアフィルタなどの適宜の構成が、該送給用のエア発生源に付随して設けらている。
したがって、四重極の一端よりも上流側から開始されて四重極間を通過する帯電トナー粒子の進行方向と同じ方向に進む空気流を生成できるので、この空気流によって、四重極間の帯電トナー粒子を、その下流側のトナー放出口6に向けて、遅滞させることなく、運ばせることができる。
以上のように、この第1の実施形態のトナー分離装置によれば、高画質なトナー可視像が得られ、画像品質の向上を図ることができる。すなわち、現像装置において、該現像装置の末端、つまり現像装置が有したトナー帯電装置と静電潜像保持体との間に設けたトナー分離装置によって、画質を低下させる不適切な帯電量つまり不適切な帯電状態のトナー粒子を、適切な帯電量つまり適切な帯電状態のトナー粒子から分離して、静電潜像をトナーで可視像化する現像工程から除外できるので、適切な帯電量のトナー粒子だけを現像工程に用いることができ、少なくとも、このように選別したトナー粒子によって可視像化される静電潜像の画像品質を向上できる。つまり、高対称性の四重極電界で、前記の分離をおこなっているので、その分解能を高めることができ、より現像用に適切な帯電状態のトナー粒子を選別できる。この結果、最終的に出力される画像の品質向上が図れる。
また、このトナー分離装置は、四重極が生成した電界の電気的な作用によって、所定の帯電状態のトナーを選別し、しかも装置外部のエア発生源によって、その内部に所定の空気流を形成して、選別した不要なトナーを排出するようにしているので、機械的に駆動される可動部材を不要にできる。したがって、これによっても、小型化を充分に追求できることになる。他方、トナー分離装置は、少なくとも、機械的な可動部材に起因した振動発生源を、内蔵していないことになる。このため、トナー放出口自体を振動させずに済み、当然、分離装置側つまり現像装置側の要因で静電潜像保持体を新たに振動させずに済むことになる。この結果、これによっても、静電潜像を可視像化した高い品質の画像が得られることになる。
次に、この発明の第2の実施形態を説明する。この第2の実施形態では、半導体製造技術を用いてシリコン電極を作製し、このシリコン電極を絶縁基板上に設置し、このシリコン電極が設置された絶縁基板を所定に組立てて、その四重極が構成されている。なお、上記の第1実施形態と同一の構成部材には、同一の符号を付して、説明を省略または簡略化することにする。すなわち、特に記載しないが、この第2の実施形態で説明しない構成、つまり現像装置の全体構成、静電潜像保持体の構成やその作用などは、上記の第1実施形態と同一とされている。
この第2の実施形態のトナー分離装置11は、図4に示すように、その四重極12が、絶縁基板上に作製された棒状シリコン電極12A,12Bで構成されている。
この第2の実施形態の四重極12は、所定寸法の長板形状に形成され所定の間隙距離を確保して互いに平行に配設された1対の絶縁基板であるガラス基板13と、互いに相対したこれらのガラス基板13表面上にその長手方向に沿って所定の間隙距離で互いに平行に設置された1対の棒状シリコン電極12A,12Bと、各ガラス基板の長辺となる側縁に接続され両ガラス基板13を互いに平行に保持するとともに略直方体形状の装置内空間を形成するスペーサ14とを主体に構成されている。すなわち、各ガラス基板13にそれぞれ1対ずつ設置された棒状シリコン電極12A,12Bは、直交線上に位置し、かつ、スペーサ14で規定された所定の間隙距離を確保して、直交線の交点から等距離、離れて、互いに平行な位置関係で配置されている。
そして、上記の第1の実施形態と同様に、対角線上の位置を占めた1対の棒状シリコン電極12A,12A、および棒状シリコン電極12B,12B単位で、電源4の各出力端子に配線接続され、電源4の各出力端子から、所定に選別用電場を生成するための重畳電圧が、それぞれに印加されている。したがって、イオンとしての所定の帯電トナー粒子を弁別するための分離空間Aが、ガラス基板上の4本の棒状シリコン電極12A,12Bで囲まれた領域に形成される。すなわち、重畳電圧の印加に伴い、これらの4本の棒状シリコン電極12A,12B間における長手方向の全域に渡って、電場が生成され、分離空間Aが形成される。
次に、このような四重極12の作製方法の一例を説明する。すなわち、この棒状シリコン電極は、図5(a)〜(d)に示すように、半導体製造プロセスの手法を用いて作製され、絶縁基板に設置されている。
まず、図5(a)に示すように、シリコン単結晶のウエハWを用意し、このウエハWの両面に、熱酸化膜を形成する。すなわち、その上面が(100)面となるように、シリコン単結晶体からスライスされ、所定に表面処理された薄板円盤形状のウエハWを用意し、このウエハWの上下両面の円盤面に、それぞれ熱酸化膜を形成する。そして、これらの両面にレジストで電極パターンPを作成した後、酸化膜をフッ酸溶液でエッチングする。すなわち、フッ酸溶液で、電極パターンP以外の酸化膜を除去し、酸化膜の電極パターンPを残留させる。
そして、図5(b)に示すように、こうしてできた酸化膜パターンPを侵食防止用のマスクにして、単結晶シリコン・ウエハWをTMAHエッチャントでエッチングする。すなわち、結晶面異方性を示すウエット・エッチングのうちの、ある種のアルカリ系エッチャントTMAH(tetramethylammonium hydroxide:水酸化テトラメチル・アンモニウム)では、強い結晶面異方性を持つことが知られており、(110),(100),(111)の順にエッチング速度が遅くなる。
このようにシリコンの結晶面によってエッチング速度が異なるため、ウエハW上面が(100)面の場合には、(c)に示したようなテーパー形状を持った棒状シリコン12´が、形成される。すなわち、エッチングによって、酸化膜パターンPでマスクされたウエハWの部位以外が侵食されるが、その厚さおよび幅方向に侵食される速度は、上記のように互いに異なるので、その横断面において、斜め方向に侵食され、しかも同時に上下の両面から侵食されるので、略6角形状の断面形状となるとともに、その縦断面方向において、同様な略6角形状が連続して形成されることになる。したがって、このエッチングの結果、略棒状のシリコン電極12´が形成される。
そして、残留したマスクである酸化膜を除去処理して、棒状シリコン電極12A(12B)にした後、この棒状シリコン電極12A(12B)とガラス基板13としてのパイレックス(登録商標)ガラスとを、陽極接合法によって貼り合わせる。最後に、シリコンの棒状電極が貼付けられた2枚のガラス基板13を互いに向かい合わせ、スペーサ14を介してセルとして組み立て、各電極12A(12B)の対を所定に電源4に配線接続すれば、四重極12が完成する。すなわち、上記した位置関係となるように、棒状シリコン電極12A,12Bを所定間隔で互いに平行にガラス基板13に貼着して設置し、これらの棒状シリコン電極12A,12Bを設置した2枚のガラス基板13を、その設置した面を互いに向き合わせて、スペーサ14を接合して固定保持する。
なお、ガラス基板13は、半導体製造プロセスで加工処理用に加熱される温度に対しても充分に耐久可能な硼珪酸ガラスなどの耐熱性ガラスとされ、少なくとも、その棒状シリコン電極12A,12Bを設置する表面には、充分な平坦度つまり高い平面度が確保されている。また、「陽極接合法」とは、接合対象の2つの部材に対して、高温環境下で高電圧を印加し、これらの2つの部材間に静電引力を発生させ、両部材間の界面で化学結合させる接合技術であり、塗布剤を用いずに接合でき、また大気中でも接合できるとされている。さらに、棒状シリコン電極12A,12Bを設置しないガラス基板13の適宜箇所、およびスペーサ14の適宜箇所には、電界つまり分離空間Aにより排除される除外トナーを、四重極間から外部に通過させるための図示しない貫通孔が形成されている。
このように構成された四重極12においては、該四重極12が形成した電場によって揺さぶられた荷電粒子のうち、四重極12の径方向の振幅が小さく抑えられた粒子は、分離空間Aから外へ飛び出すことなく、四重極12の末端に達する。すなわち、四重極12の一端つまり分離空間Aの開始端から投入された帯電トナー粒子のうち、静電潜像を現像するために最適な帯電状態以外のトナー粒子は、分離空間Aの終端に到達させることなく、空間外に排除して除外トナーとできる。このため、末端に到達可能な振幅が小さい粒子、つまり現像用に最適な帯電状態のトナー粒子を、選別して、現像位置に供給できる。
したがって、四重極12が形成する電界の特性、つまり分離空間に設定される分離特性を、所定特性に高精度に確保でき、トナー分離装置11の分離性能つまりトナー選別性能を向上できる。すなわち、半導体製造の手法を用いて半導体材料から棒状シリコン電極12´を形成したので、その形状精度を高精度化できる。また、この棒状シリコン電極12´を、高い平面度が確保されたガラス基板13の表面に、陽極接合法を用いて、棒状シリコン電極12A,12Bとして、所定に設置したので、電極取付け用の固定具を不要にしながら、確実かつ安定的に接合できる。さらに、これらの電極12A,12Bが設置された両ガラス基板13の表面を、スペーサ14を介して、所定に平行かつ直上直下に対面させた位置関係で固定配置しているので、構造として簡素になる。これらの結果、これらの棒状シリコン電極12A,12Bは、高い平行度および間隙距離が確保されて、四重極12として、正確な位置を占め、かつ適正な姿勢となる。このため、四重極12が形成する電界の電気的な特性は、その設計意図通りの特性となる。他方、部品点数が削減され、かつ構造が簡素化されるので、小型化や低コスト化できるとともに、高信頼化が図れる。
以上のように、この第2の実施形態のトナー分離装置によれば、上記した第1の実施形態の効果と同様な効果が得られるのに加えて、平坦な絶縁基板としてのガラス基板上に作製された棒状電極で四重極を構成していることから、棒状電極を組み合わせて構成した四重極と較べて、大幅な小型化が可能となる。また、2枚のガラス基板を、スペーサを所定に介して組み立てるだけで、棒状シリコン電極同士の位置決め精度や平行度を充分に確保できるので、組立て作業が簡単になり、組立てコストを削減できるとともに、製造品質の向上が図れ、設計とおりの性能を充分に発揮させることが可能となる。
また、第2の実施形態では、その四重極を、シリコンウエハと絶縁基板としてガラス基板とを用いて、半導体プロセスの製造手法で製作しているので、棒状電極を所定に配置した構成の四重極と較べて、同様に大幅に小型化することが可能となる。
さらに、シリコン電極の加工精度つまり形状精度も非常に高くなるので、棒状電極の構成と同等、もしくはそれ以上の性能を確保した四重極の構成とできる。すなわち、形状精度の向上に伴い、シリコン電極同士間の距離精度や平行度の向上が図れる。このため、シリコン電極で構成された四重極が生成した電界の特性も、設計とおりに発揮させることができる。この結果、帯電状態に応じて帯電トナー粒子を分離して選別する精度の向上が図れ、トナー分離装置としての分離能力を高性能化できる。
次に、この発明の第3の実施形態を説明する。すなわち、この第3の実施形態では、選別用の四重極と、この四重極内側に位置した所定に選別された帯電トナーの移動を促進させる並進電極と、を並置した構成としている。なお、上記の第1実施形態と同一の構成部材には、同一の符号を付して、説明を省略または簡略化することにする。すなわち、特に記載しないが、この第3の実施形態で説明しない構成、つまり現像装置の全体構成、静電潜像保持体の構成やその作用などは、上記の第1実施形態と同一とされている。
この第3の実施形態のトナー分離装置21は、図6および図7に示すように、上記の第1実施形態の構成に加えて、並進電極22を設けている。すなわち、上記のように構成された四重極2の分離空間Aには、径方向の電場だけが発生し、軸方向の電場はゼロである。すなわち、この分離空間A中に位置した帯電トナー粒子は、四重極2が生成した電場から、その径方向の電磁的な作用力を受けるだけで、その軸方向には電磁的な作用力を受けないことになる。このため、適切に分離できた荷電粒子つまり帯電トナー粒子が、なかなか現像位置にたどり着くことができない場合がある。このような点を考慮して、少なくとも、確実に到着させるために、四重極2に加えて、並進電極22を設けた。このため、このトナー分離装置21では、空気導入口を省略している。
トナー分離装置21は、基本的に上記の図2および図3に示した第1実施形態の構成、つまり棒状電極で構成された四重極2と同じ構造を持つが、これとの相違点は、帯電トナー粒子を、選別用とは異なる電界を生成することによって、四重極軸方向に強制的に送り出すための並進電極22を、新たに追加して設けたことである。この並進電極22は、特許第3569553号等のように、粉体の静電搬送法と同じ原理を用いて、帯電トナー粒子を軸方向に移動させるようにしている。したがって、四重極2に並進電極22を設けることにより、帯電トナー粒子に対して四重極軸方向に影響を与える電界をゼロから有限値にできる。この結果、トナーは、四重極軸方向にも減速することなく、四重極下流端に向けて進むことになる。
より詳細には、再び図6および図7に示すように、チェンバ3の内側で四重極2の外側には、これらに非接触に、同一径のリング状に形成された並進電極22が、軸を中心にして同心状に配置され、かつ四重極2の一端から他端に渡る範囲で、該四重極2の軸長手方向に互いに等しい所定間隔をおいて、複数、設けられている。これらの並進電極22は、並進用電源23に配線を介して電気的に接続され、各並進電極22には、複相の交流電圧あるいはパルス電圧が印加されている。たとえば、複相の交流電圧電源を用いた構成では、その軸方向に順次、交流電圧電源の第1相交流電圧端子に接続された並進電極22と、同並進用電源23の第2相交流電圧端子に接続された並進電極22と、同並進用電源23の第3相交流電圧端子に接続された並進電極22とが配置されてこれらを一組にした並進電極22の組み合わせを、図示の3組などのように所定組数、配置した構成とされている。
したがって、このように構成された並進電極22によれば、複相の交流電圧あるいはパルス電圧が印加された各並進電極22から生成される電界は、帯電トナー粒子に対して、該帯電トナー粒子をその軸方向に前進させる推進力として作用させることができる。すなわち、静電的な引力と反発力とにより、トナー導入口5から入った帯電トナー粒子は、その軸方向の上流側から下流側に向けて移動させられる。換言すれば、トナー導入口5を最上流側とし、トナー放出口6を最下流側とし、これらの間で、四重極2の径中心付近に留まった帯電トナー粒子は、並進電極22から軸方向に向う静電的な引力と反発力とからなる力を受けて、その軸方向に向う移動が促進され、該移動方向への運動が安定化される。
なお、この帯電トナー粒子の移動速度は、並進電極22に印加する複相電圧の周期を変えることにより、最適な値に維持される。
したがって、このように構成されたトナー分離装置21では、帯電されて導入されたトナー粒子のうち、所定の帯電状態以外のトナー粒子は、四重極2が所定に生成した選別用の電界の作用によって、上記と同様にして所定に分離され現像位置への供給経路から除外される一方、選別された所定の帯電状態のトナー粒子は、並進電極22が所定に生成した並進用の電界の作用によって、供給経路上を安定して移動し続け、確実かつすみやかに現像位置に到着させることができる。
以上のように、この第3の実施形態のトナー分離装置によれば、上記した第1の実施形態の効果と同様な効果が得られるのに加えて、四重極の構成に、並進電極の構成を併設したので、該並進電極が生成した電場によって、四重極軸方向に移動する帯電トナー粒子の運動を、制御することができる。このため、特定の電荷量対質量比を有した荷電粒子として分離した現像用に最適な帯電トナー粒子を、一定の流量を確保しながら速やかに、トナー放出口から感光体などの像担持体に向けて放出できる。この結果、単位時間当たりのトナー分離装置として、選別処理容量を高めることが可能となる。このため、トナー分離装置を用いた現像装置の現像処理能力を増強でき、現像性能の高性能化が図れる。
なお、この第3の実施形態では、空気導入口を省略したが、四重極が生成した電界の作用によって分離空間から除外された帯電トナー粒子を、確実に排出するためだけの目的で、設けてもよい。
次に、この発明の第4の実施形態を説明する。すなわち、上記の第3の実施形態では、並進用の電界を形成するために、四重極の外側、かつ四重極の軸長手方向に所定の等間隔で複数のリング状並進電極を設けた構成としたが、この第4の実施形態では、上記の第2の実施形態に並進電極を追加した構成、つまり絶縁基板上の棒状電極で四重極が構成されたトナー分離装置において、あらかじめ絶縁基板に並進電極を一体的に設け、この並進電極を設けた絶縁基板に棒状電極を設置した構成としている。なお、上記の第2実施形態と同一の構成部材には、同一の符号を付して、説明を省略または簡略化することにする。すなわち、特に記載しないが、この第4の実施形態で説明しない構成、つまり現像装置の全体構成、静電潜像保持体の構成やその作用などは、上記の第2実施形態と同一とされている。
この第4の実施形態のトナー分離装置31では、図8および図9に示すように、その並進電極32は、絶縁基板としてのパイレックス(登録商標)ガラス基板13上に、所定にパターニングして形成した金属薄膜により構成されている。これらの並進電極32と、四重極としての各棒状シリコン電極12A,12Bとの絶縁は、金属薄膜の並進電極32の上に成膜した絶縁膜33により保つようにしている。すなわち、基板上に、所定パターン状に金属薄膜を形成して並進電極32を設け、次に、少なくとも、これらの並進電極32を被覆して外部に露出させないように絶縁膜33を形成し、そして、棒状シリコン電極12A,12Bを所定に貼着している。謂わば、ガラス基板13において、その表面上に設けた棒状シリコン電極12A,12Bよりも下層に、並進電極32を埋設して設けた構成としている。
すなわち、並進電極32は、絶縁基板としてのガラス基板13上に、四重極軸方向に直交した方向に所定幅のベルト状に形成した金属薄膜を、該軸方向に等間隔をおいて、複数、設けており、これらのベルト状金属薄膜が並進電極32とされ、上下に対向した1対の並進電極32が、それぞれ並進用電源34に配線を介して電気的に接続され、各対の並進電極32には、複相の交流電圧あるいはパルス電圧が印加されている。たとえば、複相の交流電圧電源を用いた構成では、その軸方向に順次、交流電圧電源の第1相交流電圧端子に接続された上下1対の金属薄膜からなる並進電極32と、同電源の第2相交流電圧端子に接続された上下1対の金属薄膜からなる並進電極32と、同電源の第3相交流電圧端子に接続された上下1対の金属薄膜からなる並進電極32とが配置されてこれらを一組にした並進電極32の組み合わせを、さらに図示の軸方向に3組などのように所定組数、配置した構成とされている。
以上のように、この第4の実施形態のトナー分離装置によれば、上記した第2の実施形態の効果と同様な効果が得られるのに加えて、上記の第3の実施形態のように、四重極の周囲に別体のリング状並進電極を設けた構成に比べて、電極をその表面に設置した絶縁基板に一体に並進電極を設けたので、更なる小型化を図ることが可能となる。他方、並進電極を外部に露出させずに済むので、該並進電極がトナーで汚れることを防止でき、該並進電極による作用効果をメンテナンス・フリーで維持できる。
次に、この発明の第5の実施形態を説明する。すなわち、この第5の実施形態では、棒状電極をより多数設け、これらの棒状電極で生成させた複数個の分離空間Aを設けた構成としている。なお、上記の第2実施形態と同一の構成部材には、同一の符号を付して、説明を省略または簡略化することにする。すなわち、特に記載しないが、この第3の実施形態で説明しない構成、つまり現像装置の全体構成、静電潜像保持体の構成やその作用などは、上記の第2実施形態と同一とされている。
この第5の実施形態のトナー分離装置41は、図10に示すように、その四重極12が、絶縁基板としてのガラス基板13上に、4本より多く作製された棒状シリコン電極12A,12Bで構成され、複数個の分離空間A,Aを生成している。
第5の実施形態の電極構成が、図4に示した第2実施形態の電極構成12と異なるのは、棒状電極の数が4本より多いことである。電極の本数は、2(n+1)本、n=1,2,3,…、とされている。すなわち、4本よりも多い偶数個の電極12A,12Bで四重極12,12を構成している。
但し、互いに対角線上に位置する電極が対を成す点は、第2実施形態の構成と同じである。すなわち、対角線上に位置した各対の電極12A,12Bには、それぞれ所定の直流と高周波の交流とを重畳させた電圧が印加される。より詳細には、これらの電極12A,12Bは、対角線上に位置した対として2つのグループに区分され、一方のグループに属した各電極12A,12Aは、電源の一方の出力端子に配線を介して並列接続され、他方のグループに属した各電極12B,12Bは、電源4の他方の出力端子に配線を介して並列接続されている。したがって、電源4は、それぞれの出力端子から所定電圧を出力して、各電極2Aおよび各電極2Bに所定電圧が同時的に印加され、これらの電極12B,12Bうち、それぞれ所定の4本の電極12A,12Bで所定に複数の電界が生成されて、複数個の分離空間A,Aが生成される。
このようにして、トナー分離装置41では、帯電トナー粒子の弁別機能は同じでありながら、荷電粒子としての帯電トナー粒子を所定に分離して選別するフィルタとなる分離空間Aをn倍の個数に増加して、これらの分離空間A,Aからなる合計横断面積を増大し、分離空間Aとして拡張することができる。
なお、電源4の電圧供給能力、つまりその出力端子から出力可能な電力は、増加した電極数つまり四重極の個数に応じて、増強されている。
以上のように、この第5の実施形態のトナー分離装置によれば、上記した第2の実施形態の効果と同様な効果が得られるのに加えて、四重極を構成する4本の電極に囲まれた分離空間Aを、並列に拡張できるので、分離装置の単位時間あたりの処理能力を高めることができる。すなわち、4本以上の偶数個の電極で四重極を構成し、これらの四重極からなる分離領域断面積を拡大できるので、この拡大された断面を通過する各帯電トナー粒子の移動速度が同程度であっても、当然、該帯電トナー粒子の個数を倍加できる。このため、分離領域としての分離空間Aによる単位時間あたりのトナーの分離量を増やすことができる。この結果、トナー分離装置として、その単位時間あたりの分離処理能力を増強でき、高性能化が図れる。
次に、この発明の第6の実施形態を説明する。すなわち、この第6の実施形態では、複数の四重極を並列的に設け、それぞれ独立して個別に印加条件の設定が可能な構成としている。なお、上記の第5実施形態と同一の構成部材には、同一の符号を付して、説明を省略または簡略化することにする。すなわち、特に記載しないが、この第6の実施形態で説明しない構成、つまり現像装置の全体構成、静電潜像保持体の構成やその作用などは、上記の第5実施形態と同一とされている。
この第6の実施形態のトナー分離装置51は、図11に示すように、各自に個別的な印加条件の設定が可能な複数の四重極12で構成されている。
このトナー分離装置51は、その概略構成として、謂わば図4で示した第2実施形態のトナー分離装置11を、複数個、並べた構造としている。すなわち、絶縁板としてのガラス基板13上に多数、形成した棒状シリコン電極12A,12Bによって複数の四重極52A,52B,52Cを構成し、各四重極52A,52B,52Cには、それぞれの四重極単位で、独立した電源53A,53B,53Cが設けられている。
このトナー分離装置51は、その概略構成として、謂わば図4で示した第2実施形態のトナー分離装置11を、複数個、並べた構造としている。すなわち、絶縁板としてのガラス基板13上に多数、形成した棒状シリコン電極12A,12Bによって複数の四重極52A,52B,52Cを構成し、各四重極52A,52B,52Cには、それぞれの四重極単位で、独立した電源53A,53B,53Cが設けられている。
より詳細には、上下方向に対向したガラス基板13表面には、それぞれ同図中の左右となる幅方向に所定間隔を確保して互いに平行に6本の棒状シリコン電極12A,12Bが設置され、これらのうちの、直上および直下に位置した4本の棒状シリコン電極12A,12Bを一組にして、3組の四重極52A,52B,52Cが形成されている。そして、各組のうち、対角線上に位置する電極12A,12A(12B,12B)を対にして、各対の電極12A,12A(12B,12B)が、これらの各組ごとに、それぞれに電界生成用の電流・電圧を供給する電源53A,53B,53Cが、設置されている。すなわち、ある組の四重極における各電極12A,12Aは、該四重極用に設けられた電源53A(53B,53C)の一方の出力端子に配線を介して並列接続され、各電極12B,12Bは、同電源53A(53B,53C)の他方の出力端子に配線を介して並列接続されている。
したがって、各四重極用の電源53A〜53Cは、それぞれの出力端子から所定電圧を出力して、各四重極52A,52B,52Cを構成した電極12Aおよび電極12Bに所定電圧を同時的に印加し、分離空間A,B,Cを生成する。このため、各電源53A〜53C単位で、他の電源に影響を与えることなく、それぞれが出力する電圧条件を個別的に設定できる。すなわち、各電源53A〜53Cからの出力として、直流と高周波交流とを重ね合わせた重畳電圧を、自在に設定できるので、該重畳電圧を電極12A,12Bに印加して生成する分離空間A,B,Cの帯電トナー粒子に対する分離特性を自由に調整できる。つまり、各電源53A〜53Cは、それぞれが四重極52A,52B,52Cに供給する帯電トナー粒子の電荷量/質量比に応じた分離の基準となる直流と高周波交流の各種電圧設定値を、任意に設定することができる。
このように構成されたトナー分離装置51によれば、この共通のトナー導入口5から導入された帯電トナー粒子は、各四重極単位で分別され、それぞれのトナー放出口6から出射される。そして、たとえば、各四重極ごとにそれぞれ異なる所定の電圧印加条件が設定された場合には、各四重極単位で互いに分離特性が異なる分離空間A,B,Cを生成できる。このため、互いに異なる電荷量/質量比に対応した分離特性が設定された分離空間A,B,Cによって、トナー分離装置に導入された帯電トナー粒子のうちから、電荷量/質量比が異なる帯電トナー粒子を、同時的に分別できることになる。
以上のように、この第6の実施形態のトナー分離装置によれば、上記した第2の実施形態の効果と同様な効果が得られるのに加えて、複数の四重極をアレイ状に並べることにより、複数種類の電荷量対質量比を持ったトナー粒子を、同時に弁別することができる。すなわち、互いに独立してそれぞれ個別に印加する電圧条件が設定可能な複数の四重極を設けたので、各四重極が生成する各電界の特性、つまり複数の分離空間においてそれぞれの分離特性をそれぞれ個別に設定できる。このため、トナー分離装置を通過する帯電トナー粒子のうちから、複数の電荷量/質量比に対応した帯電トナー粒子を、同時的に分別できる。
他方、画像形成装置が用いる像担持体としての静電潜像保持体の幅に合わせて、トナー分離装置のサイズを自由に変更できる。すなわち、像担持体の幅に応じたトナー分離装置の横幅サイズを確保するように、各四重極単位で増設したり、削減した構成とできる。他方、故障したモジュールとしての四重極だけを交換できるように、構成することができる。
次に、この発明の第7の実施形態を説明する。すなわち、この第7の実施形態では、並進電極を設けていない四重極を組み込んだトナー分離装置を、安定的に分離動作させるための設置方法を採用した構成としている。なお、上記の第1実施形態と同一の構成部材には、同一の符号を付して、説明を省略または簡略化することにする。すなわち、特に記載しないが、この第7の実施形態で説明しない構成、つまり現像装置の全体構成、静電潜像保持体の構成やその作用などは、上記の第1実施形態と同一とされている。
この第7の実施形態のトナー分離装置61は、図12に示すように、その四重極2の姿勢を所定に設定して設置し、該四重極間を通過する帯電トナー粒子がスムーズに移動できるようにしている。すなわち、四重極2が生成した分離空間Aによって分離され選別されて現像用に確保された帯電トナー粒子を、同図12中には図示されないトナー放出口に向けて、その移動をスムーズできるようにしている。
並進電極を併設しない四重極2の構成において、四重極間に導入された帯電トナー粒子のその四重極軸方向の動きは、不安定である。そこで、空気の定常流を四重極2内に保持できれば、該四重極2内に位置した帯電トナー粒子を上流(図中の左側)から下流(図中の右側)へと、比較的安定に移動させることができる。しかし、何らかの理由により定常流の確保が難しいときは、四重極2自身を傾けて設置することにより、帯電トナー粒子の分別、つまり帯電トナー粒子を安定に移動させることができる。
すなわち、並進電極を併設せず、また、四重極間にその下流側に向う空気の定常流を充分に確保できないトナー分離装置において、四重極2を、所定に下向きに傾けた姿勢で配置した構成とされている。
より詳細には、帯電状態に基づき帯電トナー粒子の分別を行う同図中には図示されない四重極間に形成される分離空間Aにおいて、その帯電トナー粒子が導入される上流側から帯電トナー粒子が放出される下流側までの直線状経路を維持したまま、その上流側が上方位置を、その下流側が下方位置を占めるように、分離空間Aを下向きに傾けて配置するようにした。すなわち、同図中の水平中心線に対して所定角度θを確保した下向き傾斜線を設定し、この傾斜線を中心軸にした姿勢で、分離空間Aを形成する四重極2を配置した。
したがって、この構成によれば、四重極間を通過する帯電トナー粒子は、該トナー粒子自身の自重によって、つまり重力の作用によって、その通過方向への移動を促進され、スムーズな移動が可能になる。
なお、四重極2は、垂直方向に立ててもよい。すなわち、四重極2を直立させた姿勢で配置し、立設させてもよい。およびこの四重極2の傾斜角度の大きさ程度によっては、該四重極2を収容する同図には図示されないチャンバ自体を、同様に傾けて、または直立させて配置することになる。
以上のように、この第7の実施形態のトナー分離装置によれば、上記した第2の実施形態の効果と同様な効果が得られるのに加えて、分離装置の構成要素を増加させることなく、その性能は、ほぼ維持できるので、該分離装置の製造に費やすコストや、運用コストを下げることができる。すなわち、四重極で選別され該四重極間をその下流側に向う帯電トナー粒子を、安定的に移動させるための構成として、少なくとも、並進電極の構成を不要にでき、また四重極間でその下流側に向う空気の定常流が弱くても、よいことになる。このため、並進電極の製作コストが削減され、分離装置の動作に必要な電力から該並進電極が消費する電力を削減できる。他方、四重極間にその下流側に向う定常的な空気流を確保する構成においても、ある程度、弱勢力の空気流でよいことになるので、その構造の簡素化や低コスト化が図れる。
次に、この発明の第8の実施形態を説明する。すなわち、この第8の実施形態では、トナー分離装置内を通過するトナーに対面する各電極の表面以外の、該装置内の表面を、トナー粒子と反対極性の電荷を有したエレクトレットで、被覆した構成としている。なお、上記の第1実施形態と同一の構成部材には、同一の符号を付して、説明を省略または簡略化することにする。すなわち、特に記載しないが、この第8の実施形態で説明しない構成、つまり現像装置の全体構成、静電潜像保持体の構成やその作用などは、上記の第1実施形態と同一とされている。
この第8の実施形態のトナー分離装置71は、図13に示すように、トナー分離装置71内部の表面を、電極部分を除いて、エレクトレット72で覆っている。すなわち、このトナー分離装置71の装置本体は、少なくとも、装置本体の電極部分以外に該装置内を通過するトナーに接する可能性が高い構成部材の表面、つまり電極表面以外のチャンバ3の内部における表面を、トナー粒子と反対極性の電荷を有したエレクトレット72で被覆している。
なお、エレクトレット72とは、半永久的な帯電状態にある誘電体材料を意味しており、ふつうの絶縁体は、帯電体が近くにあるときだけ誘電分極を生起し、帯電体が遠ざかるとこの分極が解消してしまうのに対して、このエレクトレット72は、帯電体の有無に拘わりなく、永久的な分極を保持し続ける絶縁体とされている。このエレクトレット72として、適宜のエレクトレット材料を用いてよく、たとえば所定の高分子材料に、電界を印加することによって得られるエレクトレット材料を用いてもよい。
したがって、このトナー分離装置71内に、不要にトナー粒子が滞留することを、防止することができる。すなわち、分離前のトナー粒子、電極間に印加された電界で除外されたトナー粒子、分離装置を通過し最終的に選択されたトナー粒子、これらの帯電粒子が、トナー分離装置内部に静電気力によって付着すると、トナー導入口5やトナー放出口6の目詰まり、あるいは、除外された粒子の管壁への付着による分離機能の低下、等、様々な問題が生じる。この例で示したように、分離装置内部表面を、トナー粒子と反対極性の電荷を持ったエレクトレット72で被覆することにより、こうした問題を大幅に低減させることができる。すなわち、これらの表面を被覆したエレクトレット72と、トナー粒子との間に静電気的な反発力を生じさせて、エレクトレット72つまり内部表面にトナー粒子が付着することを解消できる。
以上のように、この第8の実施形態のトナー分離装置によれば、少なくとも、トナー分離装置の電極部分以外に該装置内を通過するトナーに接する可能性が高い表面、つまり電極表面以外のトナー分離装置の内部における表面を、トナー粒子と反対極性の電荷を有したエレクトレットで被覆したので、これらの表面にトナー粒子が付着することを防止できる。このため、トナー分離装置において、分離前後のトナー粒子によるトナー導入口やトナー放出口の目詰まり、あるいは、チャンバの内壁に除外された粒子が付着したことによる分離機能の低下、等の問題を未然に防止することができる。
なお、上述した各実施形態においても、当然、その内部表面の適宜箇所を、エレクトレットで被覆した構成としてよい。
また、この第8の実施形態では、所定の表面を別部材のエレクトレットで被覆した構成としたが、これに限られることなく、上記の表面を形成した部材に、イオン分極や電子分極を固定化したエレクトレット材料を均一に分散して埋設したり、エレクトレット材料を局部的に埋設したりして、少なくとも、該部材の表面に上記の反発力を電気的に生じさせることができれば、該部材に一体的に構成したり、該部材の局所的に設けた構成としてよく、被覆した構成として、これらの構成を含むものとする。
また、この第8の実施形態では、所定の表面を別部材のエレクトレットで被覆した構成としたが、これに限られることなく、上記の表面を形成した部材に、イオン分極や電子分極を固定化したエレクトレット材料を均一に分散して埋設したり、エレクトレット材料を局部的に埋設したりして、少なくとも、該部材の表面に上記の反発力を電気的に生じさせることができれば、該部材に一体的に構成したり、該部材の局所的に設けた構成としてよく、被覆した構成として、これらの構成を含むものとする。
請求項1によるトナー分離装置は、電子写真方式の画像形成装置の現像装置に組み込むことができるので、画像形成装置が用いている作像プロセス中におけるトナーの帯電状態を、リアルタイムで制御することができる。また、トナー分離装置の構成要素で一番重要な要素である四重極は、構造が単純でかつ堅牢であるうえ、小型化も容易である。これは、「微分型静電分級器」では、できないことである。また、四重極電界の対称性が高いので、「電界マトリクス」よりも高精度に分級が可能である。
請求項2の装置によれば、請求項1において、四重極の構成をトナー分離装置に適用して用いる場合に、四重極の不充分な点であった四重極軸方向の荷電粒子の不安定な動きで生じる問題を、該四重極付近に安定な空気の流れを作ることにより、解決することができる。すなわち、荷電粒子としての帯電トナー粒子の四重極軸方向への不安定な動きを、この四重極近傍に該四重極軸方向に向うように形成した空気流によって、安定化を図ることができる。このため、特定の電荷量対質量比を持つ帯電トナー粒子を、一定の空気流量で安定して速やかに、この流れの進行方向の終端に位置した四重極軸の軸端に到達させることができ、トナー放出口から感光体などの像担持体に向けて放出することができる。この結果、トナー分離装置の分離性能を向上でき、その選別能力を安定して発揮させることができる。
請求項3の装置によれば、請求項1または2において、除外トナー排出用の排出口を設けているので、四重極で該四重極内側から排除され除外された帯電トナー粒子は、トナー分離装置内部、つまりチャンバ内に滞留されずに、装置外に排出できる。このため、四重極の電極表面に不要なトナー粒子が付着することがなく、電極表面は常に清浄かつ正常に保つことができる。この結果、分離装置の分離性能を、最大限に発揮させることが可能になる。他方、分離装置の性能が、時間とともに低下するのを抑える効果も得られる。
同時に、トナー導入口や空気導入口からチャンバ内に入った空気が円滑に排気されるので、四重極内部およびチャンバ内の空気の流れの状態を、一定の状態に保つことができる。
同時に、トナー導入口や空気導入口からチャンバ内に入った空気が円滑に排気されるので、四重極内部およびチャンバ内の空気の流れの状態を、一定の状態に保つことができる。
請求項4の装置によれば、請求項1ないし3のいずれかにおいて、四重極の構成に、並進電極の付加的な構成を併設することにより、四重極軸方向の荷電粒子の運動を、制御することができる。このため、特定の電荷量対質量比を持つ荷電粒子である現像用に最適な帯電トナー粒子を、一定の流量を確保しながら速やかに、トナー放出口から感光体などの像担持体に向けて出射できる。
請求項5の装置によれば、請求項1ないし4のいずれかにおいて、平坦な絶縁基板上に作製された棒状電極で四重極を構成しているので、棒状電極を組み合わせて作った四重極と較べて、大幅な小型化が可能となる。
請求項6の装置によれば、請求項1ないし5のいずれかにおいて、四重極の4本の電極に囲まれた分離空間を、並列に拡張できるので、分離装置の単位時間あたりの処理能力を向上させることができる。
請求項7の装置によれば、請求項1ないし6のいずれかにおいて、複数の四重極をアレイ状に並べることにより、複数種類の電荷量対質量比を持ったトナー粒子を、同時に弁別することができる。すなわち、各四重極単位で、互いに異なる帯電状態のトナー粒子を分離するように、それぞれの印加電圧を設定することができる。
請求項8の装置によれば、請求項5ないし7のいずれかにおいて、四重極を、半導体プロセスに従ってシリコンウエハとガラス基板を用いて作製するので、棒状電極だけで構成されていた四重極と較べて、大幅に小型化することが可能となる。また、電極の加工精度も非常高くなるので、同等、もしくはそれ以上の性能を持った四重極を実現することができる。
請求項9の装置によれば、請求項5ないし8のいずれかにおいて、並進電極を絶縁基板に埋め込むことにより、更なる小型化が可能となる。
請求項10の装置によれば、請求項1ないし9のいずれかにおいて、分離装置に導入された帯電トナー粒子のうち、除外されたトナーを回収し、この回収したトナーを除電した後、現像用のトナー粒子として再利用するので、除外トナーを破棄せずに済む。このため、トナーの全量を、最後まで使い切ることが可能となる。この結果、経済性を向上できる。
請求項11の装置によれば、請求項1ないし10のいずれかにおいて、分離装置の構成要素を減らしながらも性能は維持できるので、製造に費やすコストを下げることができる。
請求項12の装置によれば、請求項1ないし11のいずれかにおいて、チャンバ内壁を、トナー粒子とは逆の電荷を持ったエレクトレット材料で被うことにより、除外されたトナー粒子を、速やかにトナー排出口からチャンバ外に出すことができる。その結果、チャンバ内でのトナーの舞い上がりや、四重極表面へのトナー付着を抑えることができる。
請求項13の装置によれば、請求項1ないし12のいずれかにおいて、画像形成装置が用いる像担持体の幅に合わせて、トナー分離装置のサイズを自由に変更できる。
他方、故障したモジュールだけを交換することができる。
他方、故障したモジュールだけを交換することができる。
なお、上記の各実施形態は、第1の実施形態で説明した静電潜像保持体や現像装置を用いた例を説明したが、これに限られることなく、適宜の構成を用いてよい。すなわち、円筒状回転体の感光体ドラムを、静電潜像保持体として例示したが、ベルト状体などの現像位置に対して所定に走行移動されて該現像位置に到達する前に静電潜像が形成される静電潜像保持面を有した保持体つまり像担持体であれば、適宜の構成でよい。また、回転駆動される担体上のトナーを、該担体に弾性的に接した弾性ブレードを用いて摩擦帯電させる構成を例示したが、少なくとも、トナーを所定に帯電させて、該トナーの供給量を減少させずに、途切れることなくトナー分離装置内に導入できる構成であれば、適宜の構成を採用してよい。
1,11,21,31,41,51,61,71 トナー分離装置
2,12,52A,52B,52C 四重極 2A,2B 電極
12A,12B 棒状シリコン電極 3 チャンバ
4,53A,53B,53C 電源 5 トナー導入口
6 トナー放出口 7 除外トナー排出口
8 空気導入口
13 ガラス基板(絶縁基板) 14 スペーサ
22,33 並進電極 23,34 並進用電源
33 絶縁膜 72 エレクトレット
91 トナー担体 92 弾性ブレード
100 現像装置 200 静電潜像保持体
A,B,C 分離空間 Fc 摩擦帯電部
T 帯電トナー粒子
2,12,52A,52B,52C 四重極 2A,2B 電極
12A,12B 棒状シリコン電極 3 チャンバ
4,53A,53B,53C 電源 5 トナー導入口
6 トナー放出口 7 除外トナー排出口
8 空気導入口
13 ガラス基板(絶縁基板) 14 スペーサ
22,33 並進電極 23,34 並進用電源
33 絶縁膜 72 エレクトレット
91 トナー担体 92 弾性ブレード
100 現像装置 200 静電潜像保持体
A,B,C 分離空間 Fc 摩擦帯電部
T 帯電トナー粒子
Claims (13)
- 互いに平行に配置した4本の棒状電極からなる四重極を収容したチャンバを有し、
このチャンバには、帯電したトナー粒子をチャンバ内に導入し、前記四重電極の一端に供給するトナー導入口と、前記四重電極間を通過して他端に到達したトナー粒子を、所定に放出するトナー放出口と、前記四重電極間から排除された除外トナー粒子を排出する除外トナー排出口とが設けられていることを特徴とするトナー分離装置。 - 前記チャンバには、大気圧空気を導くための空気導入口が、設けられていることを特徴とする請求項1記載のトナー分離装置。
- 前記除外トナー排出口は、四重極の他端よりも下流側に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー分離装置。
- 前記四重極間のトナー粒子を、該四重極間を通過する方向に移動させるための、並進電極が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のトナー分離装置。
- 前記四重極は、電極を所定に設けた2枚の絶縁基板を、スペーサを介して、互いに平行に配置して構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかにトナー分離装置。
- 前記四重極は、4本以上の電極から構成され、2つ以上の分離空間を形成したことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のトナー分離装置。
- 互いに独立した、複数の四重極が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のトナー分離装置。
- 前記絶縁基板上に設けた電極は、シリコンであることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載のトナー分離装置。
- 前記並進電極は、あらかじめ絶縁基板上に形成され、絶縁膜で被われていることを特徴とする請求項5ないし8のいずれかに記載のトナー分離装置。
- 前記除外トナー排出口から排出されたトナー粒子は、回収されて除電した後、再利用されることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のトナー分離装置。
- 前記並進電極のない四重極の軸方向は、水平方向から鉛直方向までの間に固定されていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のトナー分離装置。
- 装置本体内部の表面は、前記電極部分を除いて、エレクトレットで覆われていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のトナー分離装置。
- 請求項1記載の構成を1つの基本単位とし、複数の基本単位を設けた構成とされていることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載のトナー分離装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005144421A JP2006323013A (ja) | 2005-05-17 | 2005-05-17 | トナー分離装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2006323013A true JP2006323013A (ja) | 2006-11-30 |
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ID=37542766
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JP2005144421A Withdrawn JP2006323013A (ja) | 2005-05-17 | 2005-05-17 | トナー分離装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010008442A (ja) * | 2008-06-24 | 2010-01-14 | Fuji Xerox Co Ltd | 粉体容器、現像装置および画像形成装置 |
JP2015515016A (ja) * | 2012-02-20 | 2015-05-21 | ディージー プレス ホールディング ベスローテン フェンノートシャップ | 粉末パージ装置及びその方法 |
CN112577562A (zh) * | 2020-12-08 | 2021-03-30 | 中国石油大学(华东) | 一种刮板式气液两相流比例取样器 |
-
2005
- 2005-05-17 JP JP2005144421A patent/JP2006323013A/ja not_active Withdrawn
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US9539583B2 (en) | 2012-02-20 | 2017-01-10 | Dg Press Holding B.V. | Powder purging apparatus and method |
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