JP2006322404A - 内燃機関の燃料噴射量制御装置 - Google Patents

内燃機関の燃料噴射量制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 デュアルインジェクションシステムにおいて、燃料挙動を表すパラメータの値を精度良く推定し、空燃比を狙いとする値に適切に一致させること。
【解決手段】 この燃料噴射量制御装置は、ポート噴射弁と筒内噴射弁とを気筒毎に備えたデュアルインジェクションシステムを備えた内燃機関に適用される。この装置は、吸気通路における燃料挙動を表すパラメータ(Pp,Rp,Pv,Rv)の値を、上記燃料挙動に大きく影響を与える因子であるポート噴射割合Rに基づく補正係数(KPp,KRp,KPv,KRv)を所定の基本テーブルから得られる値に乗じることで精度良く決定する。そして、係るパラメータの値を用いて吸気通路構成部材への燃料付着量を精度良く推定するとともに、同推定された燃料付着量に基づいてポート噴射弁から噴射される燃料の量を決定する。これにより、機関に供給される混合気の空燃比を狙いとする値に適切に一致させることができる。
【選択図】 図5

Description

本発明は、内燃機関の燃料噴射量制御装置に関する。
内燃機関(以下、「機関」と称呼することもある。)の吸気弁よりも上流の吸気通路に備えられた燃料噴射弁(以下、「ポート噴射弁」と称呼する。)から吸気ポートに噴射された燃料は、その一部が吸気系(具体的には、吸気ポートの壁面、吸気弁の傘部等。以下、「吸気通路構成部材」と総称する。)に付着する。
従って、機関に供給される混合気の空燃比を狙いとする空燃比に一致させるためには、係る吸気通路における燃料の付着挙動を推定し、同燃料の付着を考慮しながら吸気ポートに噴射すべき燃料の量(以下、「ポート噴射量」と称呼する。)を決定する必要がある。
このため、例えば、下記特許文献1に記載されている内燃機関の制御装置は、吸気通路構成部材の付着率、及び付着している燃料の残留率等、吸気通路における燃料の挙動を表すパラメータを用いた燃料挙動シミュレーションモデル(燃料挙動モデル)を利用して吸気通路構成部材への燃料付着量を推定し、推定した燃料付着量に応じて上記ポート噴射量を決定するようになっている。
特開平9−303173号公報
ここで、上記燃料の挙動は、機関の運転状態に応じて変動する。従って、一般に、上記燃料の挙動を表すパラメータは、上記燃料の挙動に影響を与える機関の運転速度(エンジン回転速度)、燃焼室に吸入される空気量(筒内吸入空気量)、機関の冷却水の温度(冷却水温)等の因子を引数とするテーブル検索により決定されるようになっている。
ところで、近年、燃焼効率の向上、低燃費化、機関始動時の始動性の確保等のために、上記ポート噴射弁と、燃焼室内(以下、「筒内」と称呼することもある。)に燃料を直接噴射する燃料噴射弁(以下、「筒内噴射弁」と称呼する。)とを共に備えた内燃機関が開発されてきている(例えば、特開2004−60474号等を参照。)。
以下、このように、気筒毎にポート噴射弁と筒内噴射弁の2つの燃料噴射弁を備えたシステムを「デュアルインジェクションシステム」と呼ぶ。また、筒内噴射弁から噴射される燃料の量を「筒内噴射量」と呼ぶことにする。
係るデュアルインジェクションシステムでは、上記ポート噴射弁から吸気ポートに噴射された燃料の一部が吸気通路構成部材に付着するのと同様に、上記筒内噴射弁から筒内に噴射された燃料の一部が燃焼室内の壁面(具体的には、シリンダの壁面、ピストン上面等。以下、「燃焼室構成部材」と総称する。)に付着する。
従って、係るデュアルインジェクションシステムでは、筒内に噴射された燃料についても、上述した燃料挙動モデルと同様のモデル、即ち、上記燃焼室内における燃料の挙動を表すパラメータを用いた燃料挙動モデルを利用して、筒内噴射量を決定する技術が開発されてきている。これにより、デュアルインジェクションシステムでも、内燃機関に供給される混合気の空燃比を、狙いとする空燃比に一致せしめることが期待できる。
ところが、本発明者は、種々の研究、実験を重ねた結果、デュアルインジェクションシステムにおいて、上述した燃料挙動に影響を与える因子以外に、同燃料挙動に大きく影響を与える新たな因子として、ポート噴射量と筒内噴射量の割合である噴射割合が存在することを見出した。
即ち、デュアルインジェクションシステムにおいて、上述した噴射割合が引数として含まれていないテーブル検索により燃料挙動を表すパラメータが決定される燃料挙動モデルを上記ポート噴射弁及び上記筒内噴射弁より噴射される燃料に適用すると、上記噴射割合に依存して同燃料の挙動を表すパラメータの決定において推定誤差が生じ得る。
この結果、上記燃料挙動モデルにより推定される燃料の付着量においても、推定誤差が生じ得る。この結果、内燃機関に供給される混合気の空燃比を狙いとする空燃比に一致させることができず、エミッションの排出量が大きくなる場合があるという問題があった。
本発明の目的は、デュアルインジェクションシステムにおいて、燃料の挙動を表すパラメータを精度良く推定し、内燃機関に供給される混合気の空燃比を狙いとする空燃比に適切に一致させることができる内燃機関の燃料噴射量制御装置を提供することにある。
本発明に係る燃料噴射量制御装置は、上述したデュアルインジェクションシステム、即ち、吸気弁よりも上流の吸気通路に燃料を噴射するポート噴射手段(ポート噴射弁)と、燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射手段(筒内噴射弁)とを備えた内燃機関に適用される。
上記本発明に係る第1の燃料噴射量制御装置は、噴射割合決定手段と、吸気通路側パラメータ決定手段と、吸気通路側実燃料付着量推定手段と、ポート噴射量決定手段と、筒内噴射量決定手段とを備える。以下、各手段の作用について順に説明する。
噴射割合決定手段は、ポート噴射量と筒内噴射量の割合である噴射割合を内燃機関の運転状態に基づいて決定する。ここにいう「運転状態」としては、例えば、機関の運転速度(エンジン回転速度)、燃焼室に吸入される空気量(筒内吸入空気量)、機関の冷却水の温度(冷却水温)等が挙げられる。これにより、噴射割合が時々刻々と変化し得る機関の運転状態に応じた適切な値に決定されていく。
吸気通路側パラメータ決定手段は、少なくとも前記噴射割合決定手段により決定された噴射割合に基づいて、前記吸気通路における燃料の挙動を表すパラメータである吸気通路側パラメータを決定する。
これにより、吸気通路側パラメータは、上述のように、吸気通路における燃料の挙動に大きく影響を与える因子である上記により決定された噴射割合に基づいて精度良く決定され得る。また、上記吸気通路側パラメータは、一般には、上述した機関の運転速度(エンジン回転速度)、燃焼室に吸入される空気量(筒内吸入空気量)、機関の冷却水の温度(冷却水温)等にも基づいて決定される。
吸気通路側実燃料付着量推定手段は、前記ポート噴射手段による噴射により吸気通路構成部材に付着している実際の燃料付着量である吸気通路側実燃料付着量を、上述のように決定された吸気通路側パラメータを使用して推定する。
ポート噴射量決定手段は、前記噴射割合決定手段により決定される噴射割合と、前記吸気通路側実燃料付着量推定手段より推定された吸気通路側実燃料付着量に基づいてポート噴射量を決定する。また、筒内噴射量決定手段は、前記噴射割合決定手段により決定される噴射割合に基づいて筒内噴射量を決定する。
これにより、上記本発明に係る第1の燃料噴射量制御装置によれば、少なくとも、上述のように精度良く決定され得る吸気通路側パラメータを使用して吸気通路側実燃料付着量を精度良く推定し、同吸気通路側実燃料付着量を考慮しながらポート噴射量が決定されていく。この結果、内燃機関に供給される混合気の空燃比を狙いとする空燃比に適切に一致せしめることが可能となる。
ここで、上記ポート噴射量決定手段及び上記筒内噴射量決定手段は、例えば、「ポート噴射量と上記吸気通路側実燃料付着量とから得られる吸気通路から筒内に流入する燃料の量(即ち、実際に筒内で燃焼する燃料の量。)」と、筒内噴射量との和が、機関の運転状態(筒内吸入空気量)と目標空燃比とに基づいて取得され得る「同機関に供給される混合気の空燃比を同目標空燃比に一致させるために噴射すべき燃料の量(基本燃料噴射量)」と一致するように同ポート噴射量と、同筒内噴射量とを決定する。
また、後述するように、筒内における燃料の付着挙動も考案される場合、上記ポート噴射量決定手段及び上記筒内噴射量決定手段は、例えば、上記「吸気通路から筒内に流入する燃料の量」と、後述する「筒内噴射量と筒内側実燃料付着量とから得られる実際に筒内で燃焼する燃料の量」との和が上記基本燃料噴射量と一致するように上記ポート噴射量と、同筒内噴射量とを決定する。
ところで、一般に、吸気通路における燃料挙動を表すパラメータとして、ポート噴射手段から噴射される燃料のうち前記吸気通路構成部材へ付着する燃料の割合を表す吸気通路側付着率と、前記吸気通路構成部材に付着している燃料のうち同吸気通路構成部材に付着したまま残留する燃料の割合を表す吸気通路側残留率とが使用される場合が多い。
この場合において、本発明者は、前記吸気通路側付着率と前記吸気通路側残留率とを前記決定された噴射割合に基づいて決定するに際し、同吸気通路側付着率と同吸気通路側残留率とを、同噴射割合により表される「ポート噴射量と筒内噴射量の和に対する同ポート噴射量の割合(以下、「ポート噴射割合」と称呼する。)」が小さいほどより小さい値に決定することが好適であることを見出した。
これは、上記ポート噴射割合が小さくなるほど、ポート噴射量が一般に小さくなって上記吸気通路側実燃料付着量が小さくなることにより、前記吸気通路構成部材へ付着している燃料の液膜の厚さが小さくなることに起因すると考えられる(詳細は、後述する。)。
以上より、この場合、前記吸気通路側燃料挙動パラメータ決定手段は、前記吸気通路側付着率と前記吸気通路側残留率とを上記ポート噴射割合が小さいほどより小さい値に決定するように構成され、前記吸気通路側実燃料付着量推定手段は、前記吸気通路側燃料挙動パラメータ決定手段により決定された前記吸気通路側付着率と前記吸気通路側残留率とを使用して前記吸気通路側実燃料付着量を推定するように構成されることが好適である。
また、本発明に係る第2の燃料噴射量制御装置は、上記第1の燃料噴射量制御装置と同じ噴射割合決定手段を備えるとともに、筒内側パラメータ決定手段及び筒内側実燃料付着量推定手段を新たに備え、更に、上記第1の燃料噴射量制御装置と異なる筒内噴射量決定手段及びポート噴射量決定手段を備える。以下、上記第1の燃料噴射量制御装置のものと同じ手段を除いた各手段の作用について順に説明する。
筒内側パラメータ決定手段は、少なくとも前記噴射割合決定手段により決定された噴射割合に基づいて、前記燃焼室内における燃料の挙動を表すパラメータである筒内側パラメータを決定する。
これにより、筒内側パラメータは、上述のように、筒内における燃料の挙動に大きく影響を与える因子である上記により決定された噴射割合に基づいて精度良く決定され得る。また、上記筒内側パラメータは、一般には、上述した機関の運転速度(エンジン回転速度)、燃焼室に吸入される空気量(筒内吸入空気量)、機関の冷却水の温度(冷却水温)等にも基づいて決定される。
筒内側実燃料付着量推定手段は、前記筒内噴射手段による噴射により燃焼室構成部材に付着している実際の燃料付着量である筒内側実燃料付着量を、上述のように決定された筒内側パラメータを使用して推定する。
筒内噴射量決定手段は、前記噴射割合決定手段により決定される噴射割合と、前記筒内側実燃料付着量推定手段より推定された筒内側実燃料付着量に基づいて筒内噴射量を決定する。また、ポート噴射量決定手段は、前記噴射割合決定手段により決定される噴射割合に基づいてポート噴射量を決定する。
これにより、上記本発明に係る第2の燃料噴射量制御装置によれば、少なくとも、上述のように精度良く決定され得る筒内側パラメータを使用して筒内側実燃料付着量を精度良く推定し、同筒内側実燃料付着量を考慮しながら筒内噴射量が決定されていく。この結果、内燃機関に供給される混合気の空燃比を狙いとする空燃比に適切に一致せしめることが可能となる。
ところで、筒内の温度(以下、「筒内温度」と称呼する。)は、筒内で燃焼する燃料の量(従って、筒内で発生する燃焼エネルギー)に大きく依存して決定される。加えて、筒内温度は、筒内で燃焼する燃料の量が同じ(従って、上述した基本燃料噴射量が同一)であっても、上記噴射割合に大きく依存する。換言すれば、筒内温度は、上記噴射割合に基づいて推定され得る。
そして、本発明者は、上記筒内側パラメータの値を上記噴射割合に基づいて決定するに際し、同筒内側パラメータの値を、同噴射割合に基づいて取得され得る筒内温度に基づいて決定することが好適であることを見出した。これは、筒内温度そのものが筒内における燃料の付着挙動に直接的に大きな影響を与える因子となることに起因すると考えられる。
即ち、上記本発明に係る第2の燃料噴射量制御装置においては、少なくとも前記決定された噴射割合に基づいて筒内温度を取得する筒内温度取得手段を更に備え、前記筒内燃料挙動パラメータ決定手段は、前記筒内燃料挙動パラメータの値を少なくとも前記取得された筒内温度に基づいて決定するように構成されることが好適である。
以下、より具体的に述べると、燃焼室内における燃料挙動を現すパラメータとして、上述した吸気通路における燃料挙動を表すパラメータの場合と同様、筒内噴射手段から噴射される燃料のうち燃焼室構成部材へ付着する燃料の割合を表す筒内側付着率と、同燃焼室構成部材に付着している燃料のうち同燃焼室構成部材に付着したまま残留する燃料の割合を表す筒内側残留率とを使用する場合を考える。
この場合、本発明者は、上記筒内側付着率と上記筒内側残留率とを上記筒内温度に基づいて決定するに際し、同筒内側付着率と同筒内側残留率とを、同筒内温度が高いほどより小さい値に決定することが好適であることを見出した。これは、筒内温度が高くなるほど、燃焼室構成部材の温度が上昇すること等に起因すると考えられる(詳細は、後述する。)。
以上より、この場合、前記筒内燃料挙動パラメータ決定手段は、前記筒内側付着率と前記筒内側残留率とを前記筒内温度が高いほどより小さい値に決定するように構成され、前記筒内実燃料付着量推定手段は、前記筒内燃料挙動パラメータ決定手段により決定された前記筒内側付着率と前記筒内側残留率とを使用して前記筒内側実燃料付着量を推定するように構成されると好ましい。
また、このように、筒内側燃料挙動パラメータの値が少なくとも筒内温度に基づいて決定される場合であって、且つ、予め設定された複数の燃焼モード(例えば、ストイキ燃焼、均質リーン燃焼、弱成層燃焼、及び成層燃焼等)の中から実際に採用される燃焼モードを内燃機関の運転状態に基づいて選択する燃焼モード選択手段が備えられている場合、前記筒内温度取得手段は、上記噴射割合のみならず、前記選択された燃焼モードにも基づいて前記筒内温度を取得するように構成されることが好適である。
一般に、筒内で燃焼する燃料の量は上記選択された燃焼モードに大きく依存する。従って、上述したように筒内で燃焼する燃料の量に大きく依存する筒内温度は、燃焼モードによっても大きく依存することになる。従って、上記構成によれば、筒内温度がより一層精度良く推定され得る。これにより、上記筒内側パラメータも精度良く決定され得、この結果、機関に供給される混合気の空燃比を狙いとする空燃比により一層精度良く一致させることができる。
また、本発明に係る第3の燃料噴射量制御装置は、上記第1の燃料噴射量制御装置と同じ噴射割合決定手段、吸気通路側パラメータ決定手段、吸気通路側実燃料付着量推定手段及びポート噴射量決定手段を備えるとともに、上記第2の燃料噴射量制御装置と同じ筒内側パラメータ決定手段、筒内側実燃料付着量推定手段及び筒内噴射量決定手段を備える。
これによれば、少なくとも、上述のように精度良く決定され得る吸気通路側パラメータと筒内側パラメータとを使用して吸気通路側実燃料付着量と筒内側実燃料付着量とがそれぞれ精度良く推定され得、同吸気通路側実燃料付着量と同筒内側実燃料付着量とを考慮しながらポート噴射量と筒内噴射量とがそれぞれ決定されていく。この結果、内燃機関に供給される混合気の空燃比を狙いとする空燃比により一層確実に一致せしめることが可能となる。
以下、本発明による内燃機関の燃料噴射量制御装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る燃料噴射量制御装置をデュアルインジェクションシステムを備えた火花点火式多気筒(4気筒)内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。
この内燃機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース、及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20にガソリン混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排気ガスを外部に放出するための排気系統50とを含んでいる。
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23、及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これにより同クランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21とピストン22のヘッドは、シリンダヘッド部30とともに燃焼室25を形成している。
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを含むとともに同インテークカムシャフトの位相角を連続的に変更する可変吸気タイミング装置33、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38、燃料を吸気ポート31内に噴射するポート噴射弁39P、燃料を燃焼室25内に直接噴射する筒内噴射弁39Cを備えている。
吸気系統40は、吸気ポート31に連通し同吸気ポート31とともに吸気通路を形成するインテークマニホールドを含む吸気管41、吸気管41の端部に設けられたエアフィルタ42、吸気管41内にあって吸気通路の開口断面積を可変とするスロットル弁43、及びスロットル弁駆動手段を構成するDCモータからなるスロットル弁アクチュエータ43aを備えている。
排気系統50は、排気ポート34に連通したエキゾーストマニホールド51、エキゾーストマニホールド51(実際には、各排気ポート34に連通したそれぞれのエキゾーストマニホールド51が集合した集合部)に接続されたエキゾーストパイプ(排気管)52、エキゾーストパイプ52に配設(介装)された三元触媒53を備えている。排気ポート34、エキゾーストマニホールド51、及びエキゾーストパイプ52は、排気通路を構成している。
一方、このシステムは、熱線式エアフローメータ61、カムポジションセンサ62、クランクポジションセンサ63、水温センサ64、三元触媒53の上流の排気通路(本例では、上記各々のエキゾーストマニホールド51が集合した集合部)に配設された空燃比センサ65を備えている。
熱線式エアフローメータ61は、吸気管41を流れる吸入空気の単位時間あたりの質量流量に応じた電圧を出力するようになっている。この出力から吸入空気量(流量)Gaが算出される。カムポジションセンサ62は、インテークカムシャフトが90°回転する毎に(即ち、クランク軸24が180°回転する毎に)一つのパルスを有する信号(G2信号)を発生するようになっている。この信号は、吸気弁32の開閉タイミングVTをも表す。
クランクポジションセンサ63は、クランク軸24が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに同クランク軸24が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号は、エンジン回転速度NEを表す。水温センサ64は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。
空燃比センサ65は、排ガスの空燃比に応じた電流を出力し、この電流に応じた電圧を出力するようになっている。この出力から排ガスの空燃比が算出される。以下、空燃比センサ65の出力に基づいて検出される排ガスの空燃比を排気空燃比abyfsと称呼する。
電気制御装置70は、互いにバスで接続されたCPU71、CPU71が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)、及び定数等を予め記憶したROM72、CPU71が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM73、電源が投入された状態でデータを格納するとともに同格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM74、並びにADコンバータを含むインターフェース75等からなるマイクロコンピュータである。
インターフェース75は、前記センサ61〜65に接続され、CPU71にセンサ61〜65からの信号を供給するとともに、同CPU71の指示に応じて可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、イグナイタ38、ポート噴射弁39P、筒内噴射弁39C、及びスロットル弁アクチュエータ43aへ駆動信号を送出するようになっている。なお、イグナイタ38への駆動信号の送出時期(従って、点火プラグ37による点火時期)は、後述するポート噴射割合Rを含む機関の運転状態に応じて変更されるようになっている。
(ポート噴射量、及び筒内噴射量の決定方法の概要)
次に、上記のように構成された燃料噴射量制御装置(以下、「本装置」と云うこともある。)による燃料噴射量、即ち、ポート噴射量fip、及び筒内噴射量ficの決定方法について説明する。
このようなデュアルインジェクションシステムにおいては、ポート噴射弁39Pによるポート噴射量fipと筒内噴射弁39Cによる筒内噴射量ficの噴射割合(以下、この噴射割合として、ポート噴射割合R(= fip/(fip+fic))を使用する。)を、エンジン回転速度NE、冷却水温THW等の機関の運転状態に応じて変更することが好ましい。
また、本装置は、4つの燃焼モード(具体的には、ストイキ燃焼、均質リーン燃焼、弱成層燃焼、及び成層燃焼)の中から機関の運転状態に応じて最適な燃焼モードを選択し、目標空燃比abyfrを同選択された燃焼モードに応じた値に設定するようになっている。
このため、本装置は、後述するように得られる筒内吸入空気量Mcと上記設定された目標空燃比abyfrとから、機関に供給される混合気の空燃比を上記目標空燃比abyfrに一致させるために噴射すべき燃料の量である基本燃料噴射量Fbaseを求める。そして、本装置は、現時点での機関の運転状態に基づいて最適なポート噴射割合Rを求め、上記求めた基本燃料噴射量Fbaseと、ポート噴射割合Rと、後述する吸気通路構成部材及び燃焼室構成部材に付着する燃料についてのそれぞれの燃料挙動モデル(の逆モデル)等に基づいてポート噴射量fip、及び筒内噴射量ficを決定していく。以上が、ポート噴射量fip、及び筒内噴射量ficの決定方法の概要である。
以下、ポート噴射量fip、及び筒内噴射量ficの具体的な決定方法を説明する前に、本装置が同ポート噴射量fip、及び同筒内噴射量ficを決定するために使用する燃料挙動(付着)モデルについて説明する。
(デュアルインジェクションシステムにおける燃料付着の概念)
図2で概念的に示したように、燃料が噴射される気筒のポート噴射弁39Pから噴射された燃料は、その一部が吸気管41の壁面部、及び吸気弁32の傘部からなる吸気通路構成部材に付着する。以下、吸気管41の壁面部に付着している燃料を「ポート側付着燃料」、吸気弁32の傘部に付着している燃料を「バルブ側付着燃料」、ポート側付着燃料の量を「ポート側燃料付着量fwp」、バルブ側付着燃料の量を「バルブ側燃料付着量fwv」と称呼する。一方、燃料が噴射される気筒の筒内噴射弁39Cから噴射された燃料は、その一部がピストン22の上面部、及びシリンダ21の壁面からなる燃焼室構成部材に付着する。以下、これらに付着している燃料を「筒内側付着燃料」と総称し、筒内側付着燃料の量を「筒内側実燃料付着量fwc」と称呼する。尚、「ポート側燃料付着量fwp」及び「バルブ側燃料付着量fwv」は前記吸気通路側実燃料付着量に対応する。
ところで、燃料挙動モデルで使用される燃料の付着率と残留率は、温度によって大きく相違する。ここで、上記吸気通路構成部材は、高温となる燃焼室25より隔離されており上記燃焼室構成部材と比較して温度が低い。加えて、吸気通路構成部材の中でも、吸気弁32の傘部は、燃焼室25に比較的近い位置にあり吸気管41の壁面部と比較して温度が高い。
そこで、本装置は、吸気通路構成部材に付着する燃料についての燃料挙動モデルと、燃焼室構成部材に付着する筒内側付着燃料についての燃料挙動モデルと、を独立して扱い、更に、同吸気通路構成部材に付着する燃料についての燃料挙動モデルは、ポート側付着燃料についてのモデルと、バルブ側付着燃料についてのモデルとに分けて扱う。即ち、本装置は、ポート側燃料付着量fwp、バルブ側燃料付着量fwv、及び筒内側実燃料付着量fwcをそれぞれ分けて求める。
(吸気通路構成部材に付着する燃料についての燃料挙動モデル)
より具体的に述べると、ポート噴射される気筒に着目した図3に示したように、fipをポート噴射弁39Pから今回の吸気行程に対して噴射される燃料の量であるポート噴射量、fwp(fwp(k-1))を前回の吸気行程後であって今回の吸気行程直前において吸気管41の壁面部に既に付着しているポート側燃料付着量、Ppを上記ポート側燃料付着量fwp(k-1)のうち吸気管41の壁面部に付着したまま残留するポート側付着燃料の割合(ポート側残留率)、Rpを上記ポート噴射量fipのうち吸気管41の壁面部へ付着する燃料の割合(ポート側付着率)とすると、上記ポート側燃料付着量fwp(k-1)のうち吸気管41の壁面部に残留する燃料の量はPp・fwp(k-1)となり、ポート噴射量fipの燃料のうち吸気管41の壁面部に新たに付着する燃料の量はRp・fipとなる。従って、今回の吸気行程後であって次回の吸気行程直前において吸気管41の壁面部に付着するポート側燃料付着量fwp(k)について下記(1)式が成立する。漸化式である下記(1)式は、ポート側付着燃料についての燃料挙動モデルを記述したものである。
fwp(k)=Pp・fwp(k-1)+Rp・fip ・・・(1)
同様に、図3に示したように、fwv(fwv(k-1))を前回の吸気行程後であって今回の吸気行程直前において吸気弁32の傘部に既に付着しているバルブ側燃料付着量、Pvを上記バルブ側燃料付着量fwv(k-1)のうち吸気弁32の傘部に付着したまま残留するバルブ側付着燃料の割合(バルブ側残留率)、Rvを上記ポート噴射量fipのうち吸気弁32の傘部へ付着する燃料の割合(バルブ側付着率)とすると、今回の吸気行程後であって次回の吸気行程直前において吸気弁32の傘部に付着するバルブ側燃料付着量fwv(k)について下記(2)式が成立する。漸化式である下記(2)式は、バルブ側付着燃料についての燃料挙動モデルを記述したものである。尚、上記Pp,Rp,Pv、及びRvは、前記吸気通路側パラメータに対応する。
fwv(k)=Pv・fwv(k-1)+Rv・fip ・・・(2)
(燃焼室構成部材に付着する燃料についての燃料挙動モデル)
一方、筒内噴射される気筒に着目した図4に示したように、ficを筒内噴射弁39Cから今回の吸気行程に対して噴射される燃料の量である筒内噴射量、fwc(fwc(k-1))を前回の吸気行程後であって今回の吸気行程直前において燃焼室構成部材に既に付着している筒内側実燃料付着量、Pcを上記筒内側実燃料付着量fwc(k-1)のうち燃焼室構成部材に付着したまま残留する筒内側付着燃料の割合(筒内側残留率)、Rcを上記筒内噴射量ficのうち燃焼室構成部材へ付着する燃料の割合(筒内側付着率)とすると、今回の吸気行程後であって次回の吸気行程直前において燃焼室構成部材に付着する筒内側実燃料付着量fwc(k)について下記(3)式が成立する。漸化式である下記(3)式は、筒内側付着燃料についての燃料挙動モデルを記述したものである。尚、上記Pc、及びRcは、前記筒内側パラメータに対応する。
fwc(k)=Pc・fwc(k-1)+Rc・fic ・・・(3)
(残留率、及び付着率の決定方法)
次に、吸気通路側パラメータである上記Pp,Rp,Pv,Rv、及び筒内側パラメータである上記Pc,Rcの決定方法について説明する。先ず、吸気通路側パラメータである上記Pp,Rp,Pv,Rvの決定方法について説明する。
<吸気通路側パラメータの決定方法>
吸気通路における燃料の挙動(従って、上記Pp,Rp,Pv,Rvの値)は、機関の運転状態、特に、冷却水温THW、エンジン回転速度NE、筒内吸入空気量Mc、及び吸気弁32の開閉タイミングVT(以下、これらの因子を「基本因子」と総称する。)の値に強く影響される。
また、本発明者は、デュアルインジェクションシステムにおいては、吸気通路における燃料の挙動がポート噴射割合Rに大きく影響され、上記基本因子の値が同一であってもポート噴射割合Rが小さいほど上記Pp,Rp,Pv,Rvの値をより小さくすることが吸気通路側実燃料付着量(具体的には、ポート側燃料付着量fwp、及びバルブ側燃料付着量fwv)を精度良く推定する上で好ましいことを見出した。これは、以下の理由に基づくと考えられる。
即ち、上記基本燃料噴射量Fbaseが同一である場合、ポート噴射割合Rが小さくなるほど、ポート噴射量fipが小さくなる。また、上記(1)式、及び上記(2)式から容易に理解できるように、ポート噴射量fipが小さくなるほど上記吸気通路側実燃料付着量がより小さくなり、吸気通路構成部材へ付着している燃料の液膜の厚さが小さくなる。
上記吸気通路構成部材へ付着している燃料の液膜の厚さが小さくなると、同付着している燃料よりも温度が高い吸気通路構成部材から伝達される熱により同付着している燃料の温度が上昇し易くなる。この結果、上記吸気通路側実燃料付着量が小さくなる傾向が強くなる。これが、ポート噴射割合Rが小さいほど上記Pp,Rp,Pv,Rvの値をより小さくする理由である。
以上のことから、吸気通路側パラメータである上記Pp,Rp,Pv,Rvを精度良く決定するため、上記Pp,Rp,Pv,Rvを上記基本因子のみならずポート噴射割合Rをも引数とするテーブルに基づいて決定することが考えられる。しかしながら、これら全ての因子を引数とするテーブルを作製するためには、膨大な数の組み合わせに対応する膨大な数の適合実験を行う必要があり、適合を行う際の労力が多大となる。
そこで、本装置では、上記労力を軽減するためにポート噴射割合Rを「1」に固定して行った適合実験を通して作製された上記基本因子のみを引数とする基本テーブルが使用される。即ち、本装置は、上記基本テーブルを使用して上記Pp,Rp,Pv,Rvの値をそれぞれ取得し、同取得した各値を、ポート噴射割合Rに基づく補正係数(ポート側残留率補正係数KPp、ポート側付着率補正係数KRp、バルブ側残留率補正係数KPv、及びバルブ側付着率補正係数KRv)を使用してそれぞれを補正する(即ち、ポート噴射割合Rに基づいて補正する)ことで上記Pp,Rp,Pv,Rvの値を決定する。
上記補正係数KPp,KRp,KPv,KRvの値は、例えば、図5に示したポート噴射割合Rと補正係数KPp,KRp,KPv,KRvとの関係を規定するテーブルに従って決定される。このように、補正係数KPp,KRp,KPv,KRvは、ポート噴射割合Rが「1」のとき「1」となり、ポート噴射割合の減少に応じて減少するように設定される。これにより、上記基本因子の値が同一であっても、ポート噴射割合Rが小さいほど上記Pp,Rp,Pv,Rvの値をより小さくすることができる。
加えて、上述したように、吸気通路構成部材のうち吸気弁32の傘部は、燃焼室25に近い位置にあるから比較的高温になる。従って、吸気弁32の傘部における燃料の挙動は、ポート噴射割合Rによる影響(即ち、上記液膜の厚さの影響)とは独立して同傘部の温度にも大きく依存し、同傘部の温度が高いほどバルブ側燃料付着量fwvが小さくなる傾向が強くなる。また、吸気弁32の傘部の温度は、燃焼室25内の温度(例えば、燃焼室25内の平均温度。以下、「筒内温度Tc」と称呼する。)に強く依存し、筒内温度Tcが高いほど高くなる。換言すれば、筒内温度Tcが高いほどバルブ側燃料付着量fwvが小さくなる傾向が強くなる。
そこで、本装置は、上記Pp,Rp,Pv,Rvのうち吸気弁32の傘部における燃料の挙動を表すパラメータである上記Pv,Rvについては、更に、筒内温度Tcに基づく補正係数(バルブ側残留率補正係数LPv、及びバルブ側付着率補正係数LRv)を使用してそれぞれ補正することで同Pv,Rvの値を決定する。
上記補正係数LPv,LRvの値は、例えば、図6に示した筒内温度Tcと補正係数LPv,LRvとの関係を規定するテーブルに従って決定される。このように、補正係数LPv,LRvは、筒内温度Tcが高くなるほど小さくなるように設定される。これにより、上記基本因子、及びポート噴射割合Rの値が同一であっても、筒内温度Tcが高いほど上記Pv,Rvの値がより小さくなる。これは、上述した「筒内温度Tcが高いほどバルブ側燃料付着量fwvが小さくなる」傾向に沿うものである。
このように、本装置では、吸気通路側パラメータである上記Pp,Rp,Pv,Rvは、上記基本因子に加えてポート噴射割合Rに基づいて決定され、特に、吸気弁32の傘部における燃料の挙動を表すパラメータである上記Pv,Rvは、更に、筒内温度Tcにも基づいて決定される。以上が、本装置による吸気通路側パラメータである上記Pp,Rp,Pv,Rvの決定方法である。
<筒内側パラメータの決定方法>
次に、筒内側パラメータの決定方法について説明する。筒内における燃料の挙動(従って、上記Pc,Rcの値)も、上記基本因子の値に強く影響される。加えて、上記Pc,Rcの値もポート噴射割合Rに依存し、ポート噴射割合Rが大きいほど(即ち、燃焼室構成部材に付着する燃料の液膜の厚さが小さくなるほど)上記Pc,Rcの値をより小さくすることが筒内側実燃料付着量fwcを精度良く推定する上で好ましいと考えられる。
従って、上記吸気通路側パラメータと同様、ポート噴射割合Rを「0」に固定して行った適合実験を通して作製された上記基本因子のみを引数とする基本テーブルを使用して上記Pc,Rcの値をそれぞれ取得し、同取得した各値を、ポート噴射割合Rに基づく補正係数を使用してそれぞれ補正することで上記Pc,Rcの値を決定する手法が考えられる。
これに対し、本発明者は、上記基本テーブルを使用して取得した上記Pc,Rcの各値を、ポート噴射割合Rに基づく補正係数に代えて筒内温度Tcに基づく補正係数を使用して、筒内温度Tcが高いほど上記Pc,Rcがより小さくなるようにそれぞれ補正する(即ち、筒内温度Tcに基づいて補正する)ことが筒内側実燃料付着量fwcを精度良く推定する上で更に好ましいことを見出した。これは、以下の理由に基づくと考えられる。
即ち、筒内温度Tcは、筒内で燃焼する燃料の量に大きく依存して決定される。加えて、筒内温度Tcは、筒内で燃焼する燃料の量が同じであっても、ポート噴射割合Rが変化すると筒内での燃焼状態が変化することで変化し得る。換言すれば、筒内温度Tcは、ポート噴射割合Rにも依存して決定される値である。
加えて、上述したように、上記燃焼室構成部材は非常に高温になる。従って、筒内における燃料の挙動は、同燃焼室構成部材の温度に直接的に強く影響される。また、燃焼室構成部材の温度は、筒内温度Tcに直接的に強く依存する。換言すれば、筒内における燃料の挙動は、筒内温度Tcそのものに直接的に強く影響され得る。これが、上記基本テーブルを使用して取得された上記Pc,Rcの各値を筒内温度Tcに基づく補正係数を使用して補正する理由である。
また、筒内温度Tcが高いほど燃焼室構成部材の温度も高くなる。筒内側実燃料付着量fwcは、上記燃焼室構成部材の温度が高いほど小さくなる傾向が強くなる。換言すれば、筒内側実燃料付着量fwcは、筒内温度Tcが高いほど小さくなる傾向が強くなる。これが、筒内温度Tcが高いほど上記Pc,Rcの値をより小さくする理由である。
そこで、本装置は、上記基本テーブルを使用して取得された上記Pc,Rcの各値を、筒内温度Tcに基づく補正係数である筒内側残留率補正係数LPc、及び筒内側付着率補正係数LRcを使用してそれぞれ補正することで同Pc,Rcの値を決定する。
上記補正係数LPc,LRcの値は、例えば、図7に示した筒内温度Tcと補正係数LPc,LRcとの関係を規定するテーブルによって決定される。このように、補正係数LPc,LRcは、筒内温度Tcが高くなるほど小さくなるように設定される。これにより、上記基本因子の値が同一であっても、筒内温度Tcが高いほど上記Pc,Rcの値をより小さくすることができる。
なお、図6に示される補正係数LPv,LRvの各値の筒内温度Tcに対する変動は、図7に示される補正係数LPc,LRcの各値の筒内温度Tcに対する変動に比べて小さい。これは、燃焼室構成部材の温度よりも吸気弁32の傘部の温度の方が筒内温度Tcの影響を受ける程度が小さいことに基づくと考えられる。
このように、本装置では、筒内側パラメータである上記Pc,Rcは、上記基本因子に加えて筒内温度Tcに基づいて決定される。以上が、本装置による筒内側パラメータである上記Pc,Rcの決定方法である。
(筒内温度取得方法)
本装置は、下記(4)式に従って筒内温度瞬時値Tc1を求め、同筒内温度瞬時値Tc1に対して所定の1次遅れ処理を施すことで筒内温度Tcを取得する。
Tc1=(R・Tcp+(1-R)・Tcc)・β ・・・(4)
上記(4)式において、Tcpは、ポート噴射割合Rが「1」のときの筒内温度であり、Tccは、ポート噴射割合Rが「0」のときの筒内温度である。上記Tcp、及びTccの詳細については後述する。βは、ポート噴射割合Rに基づいて決定される筒内温度補正係数である。この筒内温度補正係数βは、筒内温度Tcに影響を与える点火時期が上述したようにポート噴射割合Rに応じて変化することに対応してポート噴射割合Rに応じて筒内温度Tcを補正するために使用されている。
以下、上記Tcp、及びTccの取得方法について説明する。上記Tcp,Tccはそれぞれ、下記(5)式、下記(6)式に従って取得される。
Tcp=K1・abyfs+K2・NE+K3・Mc+K4・Ga ・・・(5)
Tcc=K5・abyfs+K6・NE+K7・Mc+K8・Ga ・・・(6)
上記(5)式、(6)式から理解できるように、上記Tcp、及びTccは、筒内温度Tcに大きく影響を与える因子である排気空燃比abyfs、エンジン回転速度NE、筒内吸入空気量Mc、及び吸入空気流量Gaに基づいて取得される。
また、上記(5)式、及び(6)式において、K1〜K8は適合係数である。適合係数K1〜K8として、上述した4つの燃焼モード(ストイキ燃焼、均質リーン燃焼、弱成層燃焼、及び成層燃焼)のそれぞれに対応する値が燃焼モード毎に予めROM72に格納されている。上記(5)式、及び(6)式の計算を行う際には、適合係数K1〜K8として機関の運転状態に応じて選択された現時点での燃焼モードに対応する値が使用されていく。
このように、本装置は、上記(4)式〜(6)式に従って、筒内温度Tcを、同筒内温度Tcに大きく影響を与える因子である排気空燃比abyfs、エンジン回転速度NE、筒内吸入空気量Mc、及び吸入空気流量Gaに加えて、ポート噴射割合R、及び上記選択された燃焼モードにも基づいて取得する。以上が、本装置による上記筒内温度Tcの取得方法である。
(ポート噴射量fip、及び筒内噴射量ficの具体的な決定方法)
次に、ポート噴射量fip、及び筒内噴射量ficの具体的な決定方法について説明する。本装置は、上記最適なポート噴射割合Rと、上記基本燃料噴射量Fbaseとを使用して、吸気行程において吸気通路を経て筒内に流入する燃料の量が下記(7)式にて求められる必要ポート流入燃料量fcpと一致するように、且つ、燃焼室構成部材に付着せず筒内で実際に燃焼する燃料の量が下記(8)式にて求められる必要筒内燃焼燃料量fccと一致するように、後述する上記燃料挙動モデルの逆モデルを使用してポート噴射量fipと筒内噴射量ficとを求める。このように、ポート側燃料付着量fwp、バルブ側燃料付着量fwv、及び筒内側実燃料付着量fwcを考慮することで、筒内にて燃焼する総燃料量が基本燃料噴射量Fbaseと一致し得、この結果、空燃比を燃焼モードに応じた目標空燃比abyfrに一致させることができる。
fcp=Fbase・R ・・・(7)
fcc=Fbase・(1−R) ・・・(8)
以下、燃料挙動モデルの逆モデルについて説明する。この燃料挙動モデルの逆モデルは、ポート噴射された燃料のうち吸気管41の壁面や吸気弁32の傘部に付着することなく筒内に流入する燃料の量、及び吸気管41の壁面や吸気弁32の傘部に付着していた燃料のうち筒内に流入する燃料の量を考慮して、上記(7)式にて算出される必要ポート流入燃料量fcpの燃料を気筒に流入させるために必要とされるポート噴射量fipを算出するとともに、筒内噴射された燃料のうち燃焼室構成部材に付着することなく筒内で実際に燃焼する燃料の量、及び燃焼室構成部材に付着していた燃料のうち筒内で実際に燃焼する燃料の量を考慮して、上記(8)式にて算出される必要筒内燃焼燃料量fccの燃料を筒内で燃焼させるために必要とされる筒内噴射量ficを算出するモデルである。
上記(1)式、上記(2)式及び上記(3)式により既に求められている、燃料噴射気筒の前回の吸気行程後であって今回の吸気行程直前において吸気管41の壁面に付着しているポート側燃料付着量fwp(k-1)、吸気弁32の傘部に付着しているバルブ側燃料付着量fwv(k-1)、及び燃焼室構成部材に付着している筒内側実燃料付着量fwc(k-1)、並びに、上述のように決定される上記Pp,Pv,Pc,Rp,Rv、及びRcを使用すると、今回の吸気行程に対してポート噴射量fipの燃料を噴射したと仮定した場合に筒内に流入する燃料の量である筒内流入燃料量Fcpは、下記(9)式で表され(図3を参照)、また、今回の吸気行程に対して筒内噴射量ficの燃料を噴射したと仮定した場合に筒内で実際に燃焼する燃料の量である筒内燃焼燃料量Fccは、下記(10)式で表される(図4を参照)。
Fcp=(1−Rp−Rv)・fip+(1−Pp)・fwp(k−1)+(1−Pv)・fwv(k−1) ・・・(9)
Fcc=(1−Rc)・fic+(1−Pc)・fwc(k−1) ・・・(10)
従って、今回の吸気行程において上記(7)式にて算出される必要ポート流入燃料量fcpが筒内に流入するために必要なポート噴射量fipは、上記(9)式において上記筒内流入燃料量Fcpを同必要ポート流入燃料量fcpと置き換えた式をポート噴射量fipについて解くことで求めることができる。その計算結果は、下記(11)式の通りとなる。同様に、今回の吸気行程において上記(8)式にて算出される必要筒内燃焼燃料量fccが筒内で実際に燃焼するために必要な筒内噴射量ficは、上記(10)式において上記筒内燃焼燃料量Fccを同必要筒内燃焼燃料量fccと置き換えた式を筒内噴射量ficについて解くことで求めることができる。その計算結果は、下記(12)式の通りとなる。これら下記(11)式、及び下記(12)式が、燃料挙動モデルの逆モデルを数式化したものであって、本装置は、下記(11)式、及び下記(12)式に従ってポート噴射量fip、及び筒内噴射量ficを求める。以上が、ポート噴射量fip、及び筒内噴射量ficを求めるために使用される燃料挙動モデルの逆モデルの概要である。
fip=(fcp−(1−Pp)・fwp(k−1)−(1−Pv)・fwv(k−1))/(1−Rp−Rv) ・・・(11)
fic=(fcc−(1−Pc)・fwc(k−1))/(1−Rc) ・・・(12)
(実際の作動)
次に、電気制御装置70の実際の作動について、図8〜図10に示したフローチャートを参照しながら説明する。
CPU71は、図8、及び図9に一連のフローチャートにより示したポート噴射量fip、筒内噴射量ficの計算、及び燃料噴射の指示を行う一連のルーチンを、各気筒のクランク角が吸気上死点前の所定クランク角度(例えば、BTDC90°CA)となる毎に、気筒毎に、繰り返し実行するようになっている。
従って、任意の気筒のクランク角度が前記所定クランク角度になると、CPU71はステップ800から処理を開始してステップ805に進み、エアフローメータ61が計測している吸入空気流量Gaと、クランクポジションセンサ63の出力に基づいて得られるエンジン回転速度NEと、Ga,NEを引数とするテーブルMapMcとに基づいて吸気行程を迎える気筒の吸入空気量である筒内吸入空気量Mcを求める。
次に、CPU71はステップ810に進み、上記得られたエンジン回転速度NEと、上記求めた筒内吸入空気量Mcと、水温センサ64から得られる冷却水温THWとに基づいて4つの燃焼モード(ストイキ燃焼、均質リーン燃焼、弱成層燃焼、及び成層燃焼)の中から吸気行程を迎える燃焼室25について最適な燃焼モードを1つ選択する。このステップ810が、燃焼モード選択手段に対応する。
続いて、CPU71はステップ815に進み、上記選択された燃焼モードに応じて目標空燃比abyfrを設定し、続くステップ820にて、上記求めた筒内吸入空気流量Mcを現時点での目標空燃比abyfrで除した値に係数αを乗じることで、空燃比を燃焼モードに応じた目標空燃比abyfrとするための基本燃料噴射量Fbaseを求める。係数αは、空燃比センサ65の出力に基づく空燃比フィードバック制御等により適宜変更される係数である。
次いで、CPU71はステップ825に進み、上記得られたエンジン回転速度NEと、上記求めた筒内吸入空気量Mcと、上記得られた冷却水温THWと、NE,Mc,THWを引数とするテーブルMapRとに基づいて最適なポート噴射割合Rを求める。このステップ825が、噴射割合決定手段に対応する。
続いて、CPU71はステップ830に進んで、上記求めた基本燃料噴射量Fbaseと、上記求めたポート噴射割合Rと、上記(7)式とに基づいて必要ポート流入燃料量fcpを求め、続くステップ835にて同基本燃料噴射量Fbaseと、同ポート噴射割合Rと、上記(8)式とに基づいて必要筒内燃焼燃料量fccを求める。
次に、CPU71はステップ840を経由して、図10にフローチャートにより示した筒内温度Tcを計算するためのルーチン処理をステップ1000から開始する。この図10のルーチンの実行により筒内温度取得手段の機能が達成される。
ステップ1000に進んだCPU71は、ステップ1005に進んで上記選択された現時点での燃焼モードに対応する適合係数K1〜K8の値をROM72に格納されているデータの中から決定する。
続いて、CPU71はステップ1010に進んで、上記決定された適合係数K1〜K4と、空燃比センサ65により得られる排気空燃比abyfsと、上記エンジン回転速度NEと、上記筒内吸入空気流量Mcと、上記吸入空気流量Gaと、上記(5)式とに基づいてポート噴射割合Rが「1」の場合の筒内温度Tcpを計算し、同様に上記決定された適合係数K5〜K8と、abyfs,NE,Mc,及びGaと、上記(6)式とに基づいてポート噴射割合Rが「0」の場合の筒内温度Tccを計算する。
次に、CPU71はステップ1015に進んで、上記ポート噴射割合Rと、ポート噴射割合Rを引数とする所定のテーブルMapβとに基づいて、筒内温度補正係数βを決定する。そして、CPU71はステップ1020に進んで、上記ポート噴射割合Rと、上記計算されたTcpと、上記計算されたTccと、上記決定された筒内温度補正係数βと、上記(4)式とに基づいて、筒内温度瞬時値Tc1を取得し、更に、同筒内温度瞬時値Tc1に対してステップ1020内に示した式により値Aを時定数とする1次遅れ処理を施して今回の筒内温度Tc(k)を求める。ここで、Tc(k-1)は、前回の筒内温度であり次のステップ1025で更新されていく値である。
そして、CPU71はステップ1095を経由して図8のステップ845に進んで、上記求めたポート噴射割合Rと、ポート噴射割合Rを引数とする所定のテーブルMapKPp,MapKPv,MapKRp,MapKRv(図5を参照)とに基づいて、ポート側残留率補正係数KPp、バルブ側残留率補正係数KPv、ポート側付着率補正係数KRp、及びバルブ側付着率補正係数KRvをそれぞれ決定する。
続いて、CPU71はステップ850に進んで、上記計算された筒内温度Tc(k)と、筒内温度Tc(k)を引数とする所定のテーブルMapLPv,MapLRv(図6を参照)とに基づいて、バルブ側残留率補正係数LPv、及びバルブ側付着率補正係数LRvをそれぞれ決定する。
次に、CPU71はステップ855に進んで、上記計算された筒内温度Tc(k)と、筒内温度Tc(k)を引数とする所定のテーブルMapLPc,MapLRc(図7を参照)とに基づいて、筒内側残留率補正係数LPc、及び筒内側付着率補正係数LRcをそれぞれ決定する。
そして、CPU71は図9のステップ905に進んで、上記基本因子である上記冷却水温THW、エンジン回転速度NE、上記筒内吸入空気量Mc、及び上記吸気弁32の開閉タイミングVTと、同基本因子を引数とするポート側残留率Ppを求める上記基本テーブルMapPpとから得られる値に上記決定されたポート側残留率補正係数KPpを乗じることでポート側残留率Ppを決定し、同基本因子と、同基本因子を引数とするバルブ側残留率Pvを求める上記基本テーブルMapPvとから得られる値に上記決定されたバルブ側残留率補正係数KPv,LPvをそれぞれ乗じることでバルブ側残留率Pvを決定し、同基本因子と、同基本因子を引数とするポート側付着率Rpを求める上記基本テーブルMapRpとから得られる値に上記決定されたポート側付着率補正係数KRpを乗じることでポート側付着率Rpを決定し、同基本因子と、同基本因子を引数とするバルブ側付着率Rvを求める上記基本テーブルMapRvとから得られる値に上記決定されたバルブ側付着率補正係数KRv,LRvをそれぞれ乗じることでバルブ側付着率Rvを決定する。これらのステップ845,850,905が、吸気通路側パラメータ決定手段に対応する。
続いて、CPU71はステップ910に進んで、上記基本因子と、同基本因子を引数とする筒内側残留率Pcを求める上記基本テーブルMapPcとから得られる値に上記決定された筒内側残留率補正係数LPcを乗じることで筒内側残留率Pcを決定し、同基本因子と、同基本因子を引数とする筒内側付着率Rcを求める上記基本テーブルMapRcとから得られる値に上記決定された筒内側付着率補正係数LRcを乗じることで筒内側付着率Rcを決定する。これらのステップ855,910が、筒内側パラメータ決定手段に対応する。
そして、CPU71はステップ915に進み、上記求めた必要ポート流入燃料量fcpと、上記決定されたPp,Pv,Rp、及びRvと、ポート側燃料付着量fwp(k-1)と、バルブ側燃料付着量fwv(k-1)と、上記(11)式とに基づいてポート噴射量fipを求める。ポート噴射量fipが負の値となる場合、ポート噴射量fipは「0」とされる。ポート側燃料付着量fwp(k-1)、及びバルブ側燃料付着量fwv(k-1)としては、前回の本ルーチン実行時において後述するステップ930にて既に更新されている最新値fwp(k)、及びfwv(k)をそれぞれ使用する。このステップ915が、ポート噴射量決定手段に対応する。
続いて、CPU71はステップ920に進み、上記求めた必要筒内燃焼燃料量fccと、上記求めたPc、及びRcと、筒内側実燃料付着量fwc(k-1)と、上記(12)式とに基づいて筒内噴射量ficを求める。筒内噴射量ficが負の値となる場合、筒内噴射量ficは「0」とされる。筒内側実燃料付着量fwc(k-1)としては、前回の本ルーチン実行時において後述するステップ930にて既に更新されている最新値fwc(k)を使用する。このステップ920が、筒内噴射量決定手段に対応する。
次に、CPU71はステップ925に進んで、上記求めたポート噴射量fipの燃料を所定の時期に噴射するための指示を吸気行程を迎える気筒のポート噴射弁39Pに対して行い、且つ上記求めた筒内噴射量ficの燃料を所定の時期に噴射するための指示を同一の気筒の筒内噴射弁39Cに対して行う。
次に、CPU71は上述したステップ930に進むと、上記決定されたPp、及びRpと、ポート側燃料付着量fwp(k-1)と、上記(1)式とに基づいてポート側燃料付着量fwp(k)を更新し、上記決定されたPv、及びRvと、バルブ側燃料付着量fwv(k-1)と、上記(2)式とに基づいてバルブ側燃料付着量fwv(k)を更新する。これらが、吸気通路側実燃料付着量推定手段に対応する。同様に、CPU71は、上記決定されたPc、及びRcと、筒内側実燃料付着量fwc(k-1)と、上記(3)式とに基づいて筒内側実燃料付着量fwc(k)を更新する。これが、筒内側実燃料付着量推定手段に対応する。
ここで、ポート側燃料付着量fwp(k-1)、バルブ側燃料付着量fwv(k-1)及び筒内側実燃料付着量fwc(k-1)としては、ステップ915及びステップ920と同様、前回の本ルーチン実行時においてステップ930にて既に更新されている最新値fwp(k),fwv(k)、及びfwc(k)をそれぞれ使用する。
そして、CPU71はステップ995に進み、本ルーチンを一旦終了する。以上により、上記ポート噴射量fip、及び筒内噴射量ficは、燃料挙動モデルを用いて筒内にて燃焼する総燃料量が基本燃料噴射量Fbaseと一致するように決定されていく。
以上、説明したように、本発明による内燃機関の燃料噴射量制御装置の実施形態は、ポート噴射弁39Pと筒内噴射弁39Cとを気筒毎に備えたデュアルインジェクションシステムを備えた内燃機関に適用される。上記実施形態によれば、吸気通路構成部材のうち燃焼室25から離れた位置にある吸気管41の壁面部に付着する燃料の量であるポート側燃料付着量fwpは、上記基本因子に加えてポート噴射割合R(=fip/(fip+fic))にも基づいて決定されるポート側残留率Pp、及びポート側付着率Rpを用いることで正確に推定され得る。吸気通路側実燃料付着量のうち燃焼室25に近い位置にある吸気弁32の傘部に付着する燃料の量であるバルブ側燃料付着量fwvは、上記基本因子に加えて上記ポート噴射割合R、及び上記筒内温度Tc(k)とにも基づいて決定されるバルブ側残留率Pv、及びバルブ側付着率Rvを用いることで正確に推定され得る。
一方、燃焼室構成部材に付着する燃料の量である筒内側実燃料付着量fwcは、上記基本因子に加えて同燃焼室構成部材の温度に直接的に影響を与える筒内温度Tcにも基づいて決定される筒内側残留率Pc、及び筒内側付着率Rcを用いることで正確に推定され得る。
上記ポート噴射量fipは、ポート噴射割合Rと、上記正確に推定されたfwp、及びfwvとに基づいて決定され、また、上記筒内噴射量ficは、ポート噴射割合Rと、上記正確に推定された筒内実燃料付着量fwcとに基づいて決定される。これにより、内燃機関に供給される混合気の空燃比を狙いとする空燃比に適切に一致させることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、吸気通路側パラメータ(Pp,Rp,Pv,Rv)の値を、上記基本因子のみを引数とする吸気通路側パラメータの値を求める上記基本テーブルから得られる値にポート噴射割合Rに基づく補正係数を乗じることで決定しているが、上記基本テーブルから得られる値にポート噴射割合R(噴射割合)に基づく補正値を加算、或いは減算することで決定してもよい。また、上記基本テーブルから得られる値を上記ポート噴射割合R(噴射割合)に基づく補正値で除算することで決定してもよい。
更には、上記基本因子のみならずポート噴射割合R(噴射割合)をも引数とする吸気通路側パラメータの値を求めるテーブルを作製し、吸気通路側パラメータの値を、同作製されたテーブルから得られる値に決定するように構成してもよい。
同様に、上記実施形態においては、筒内側パラメータ(Pc,Rc)の値を、上記基本因子のみを引数とする筒内側パラメータの値を求める上記基本テーブルから得られる値に筒内温度Tcに基づく補正係数を乗じることで決定しているが、上記基本テーブルから得られる値に筒内温度Tcに基づく補正値を加算、或いは減算することで決定してもよい。また、上記基本テーブルから得られる値を上記筒内温度Tcに基づく補正値で除算することで決定してもよい。
更には、上記基本因子のみならず筒内温度Tcをも引数とする筒内側パラメータの値を求めるテーブルを作製し、筒内側パラメータの値を、同作製されたテーブルから得られる値に決定するように構成してもよい。
また、上記実施形態においては、筒内側パラメータ(Pc,Rc)の値を、上記基本因子のみを引数をする筒内側パラメータの値を求める上記基本テーブルから得られる値に筒内温度Tcに基づく補正係数を乗じることで決定しているが、筒内側パラメータの値を、同基本テーブルから得られる値をポート噴射割合R(噴射割合)に基づいて補正することで(例えば、同基本テーブルから得られる値にポート噴射割合Rに基づく補正係数を乗じることで)決定するように構成してもよい。
また、上記実施形態においては、筒内温度Tcを上記(4)式等に基づく計算により推定するように構成されているが、筒内温度を検出する筒内温度センサにより筒内温度Tcを物理的に検出するように構成してもよい。
また、上記実施形態においては、筒内温度Tcとして、燃焼室25内の平均温度を採用するように構成されているが、筒内温度Tcとして燃焼室25内の燃焼温度のピーク値(筒内温度ピーク値)を採用するように構成してもよい。この場合、上記(5)式、(6)式における適合係数K1〜K8の値を、上記平均温度を算出するための値から筒内温度ピーク値を算出するための値に変更する必要がある。
加えて、上記実施形態においては、前記噴射割合として、ポート噴射割合R(=fip/(fip+fic))を採用するように構成されているが、筒内噴射割合(fic/(fip+fic))を採用するように構成してもよい。また、前記噴射割合として、値「fip/fic」、或いは、値「fic/fip」を採用するように構成してもよい。
本発明の実施形態に係る燃料噴射量制御装置を火花点火式多気筒内燃機関に適用したシステムの概略構成図である。 ポート噴射弁から噴射された燃料が吸気管の壁面部及び吸気弁の傘部に付着する様子と、筒内噴射弁から噴射された燃料が燃焼室構成部材に付着する様子とを概念的に示した図である。 ポート噴射弁から噴射された燃料量(ポート噴射量)と、吸気管の壁面部への燃料付着量(ポート側付着燃料量)及び吸気弁の傘部への燃料付着量(バルブ側付着燃料量)と、吸気通路を経て筒内に流入する燃料量(筒内流入燃料量)との関係を説明するための図である。 筒内噴射弁から噴射された燃料量(筒内噴射量)と、燃焼室構成部材への燃料付着量(筒内側実付着燃料量)と、筒内で実際に燃焼する燃料量(筒内燃焼燃料量)との関係を説明するための図である。 ポート噴射割合と、補正係数(ポート側残留率補正係数、ポート側付着率補正係数、バルブ側残留率補正係数、及びバルブ側付着率補正係数)との関係を示したグラフである。 筒内温度と、補正係数(バルブ側残留率補正係数、及びバルブ側付着率補正係数)との関係を示したグラフである。 筒内温度と、補正係数(筒内側残留率補正係数、及び筒内側付着率補正係数)との関係を示したグラフである。 図1に示したCPUが実行する、ポート噴射量及び筒内噴射量の決定、並びに、ポート噴射及び筒内噴射の実行のためのプログラムの前半部を示したフローチャートである。 図1に示したCPUが実行する、ポート噴射量及び筒内噴射量の決定、並びに、ポート噴射及び筒内噴射の実行のためのプログラムの後半部を示したフローチャートである。 図1に示したCPUが実行する、筒内温度を計算するためのプログラムを 示したフローチャートである。
符号の説明
10…火花点火式多気筒内燃機関、21…シリンダ、22…ピストン、25…燃焼室、32…吸気弁、39C…筒内噴射弁、39P…ポート噴射弁、41…吸気管、70…電気制御装置、71…CPU

Claims (7)

  1. 内燃機関の吸気弁よりも上流の吸気通路に燃料を噴射するポート噴射手段と、
    燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射手段と、
    を備えた内燃機関に適用される内燃機関の燃料噴射量制御装置であって、
    前記ポート噴射手段から噴射される燃料の量であるポート噴射量と前記筒内噴射手段から噴射される燃料の量である筒内噴射量の割合である噴射割合を前記内燃機関の運転状態に基づいて決定する噴射割合決定手段と、
    前記吸気通路における燃料の挙動を表すパラメータである吸気通路側パラメータの値を少なくとも前記決定された噴射割合に基づいて決定する吸気通路側パラメータ決定手段と、
    前記ポート噴射手段による噴射により前記吸気通路を構成する部材に付着している実際の燃料付着量である吸気通路側実燃料付着量を前記決定された吸気通路側パラメータを使用して推定する吸気通路側実燃料付着量推定手段と、
    前記決定された噴射割合と、前記推定された吸気通路側実燃料付着量とに基づいて前記ポート噴射量を決定するポート噴射量決定手段と、
    前記決定された噴射割合に基づいて前記筒内噴射量を決定する筒内噴射量決定手段と、
    を備えた内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  2. 内燃機関の吸気弁よりも上流の吸気通路に燃料を噴射するポート噴射手段と、
    燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射手段と、
    を備えた内燃機関に適用される内燃機関の燃料噴射量制御装置であって、
    前記ポート噴射手段から噴射される燃料の量であるポート噴射量と前記筒内噴射手段から噴射される燃料の量である筒内噴射量の割合である噴射割合を前記内燃機関の運転状態に基づいて決定する噴射割合決定手段と、
    前記燃焼室内における燃料の挙動を表すパラメータである筒内側パラメータの値を少なくとも前記決定された噴射割合に基づいて決定する筒内側パラメータ決定手段と、
    前記筒内噴射手段による噴射により前記燃焼室を構成する部材に付着している実際の燃料付着量である筒内側実燃料付着量を前記決定された筒内側パラメータを使用して推定する筒内側実燃料付着量推定手段と、
    前記決定された噴射割合に基づいて前記ポート噴射量を決定するポート噴射量決定手段と、
    前記決定された噴射割合と、前記推定された筒内側実燃料付着量とに基づいて前記筒内噴射量を決定する筒内噴射量決定手段と、
    を備えた内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  3. 内燃機関の吸気弁よりも上流の吸気通路に燃料を噴射するポート噴射手段と、
    燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射手段と、
    を備えた内燃機関に適用される内燃機関の燃料噴射量制御装置であって、
    前記ポート噴射手段から噴射される燃料の量であるポート噴射量と前記筒内噴射手段から噴射される燃料の量である筒内噴射量の割合である噴射割合を前記内燃機関の運転状態に基づいて決定する噴射割合決定手段と、
    前記吸気通路における燃料の挙動を表すパラメータである吸気通路側パラメータの値を少なくとも前記決定された噴射割合に基づいて決定する吸気通路側パラメータ決定手段と、
    前記ポート噴射手段による噴射により前記吸気通路を構成する部材に付着している実際の燃料付着量である吸気通路側実燃料付着量を前記決定された吸気通路側パラメータを使用して推定する吸気通路側実燃料付着量推定手段と、
    前記決定された噴射割合と、前記推定された吸気通路側実燃料付着量とに基づいて前記ポート噴射量を決定するポート噴射量決定手段と、
    前記燃焼室内における燃料の挙動を表すパラメータである筒内側パラメータの値を少なくとも前記決定された噴射割合に基づいて決定する筒内側パラメータ決定手段と、
    前記筒内噴射手段による噴射により前記燃焼室を構成する部材に付着している実際の燃料付着量である筒内側実燃料付着量を前記決定された筒内側パラメータを使用して推定する筒内側実燃料付着量推定手段と、
    前記決定された噴射割合と、前記推定された筒内側実燃料付着量とに基づいて前記筒内噴射量を決定する筒内噴射量決定手段と、
    を備えた内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  4. 請求項1又は請求項3に記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置において、
    前記吸気通路側パラメータ決定手段は、前記吸気通路側パラメータとして、
    前記ポート噴射手段から噴射される燃料のうち前記吸気通路構成部材へ付着する燃料の割合を表す吸気通路側付着率と、前記吸気通路構成部材に付着している燃料のうち同吸気通路構成部材に付着したまま残留する燃料の割合を表す吸気通路側残留率とを使用し、前記吸気通路側付着率と前記吸気通路側残留率とを、前記決定された前記噴射割合により表される前記ポート噴射量と前記筒内噴射量の和に対する同ポート噴射量の割合が小さいほどより小さい値に決定するように構成され、
    前記吸気通路側実燃料付着量推定手段は、前記吸気通路側パラメータ決定手段により決定された前記吸気通路側付着率と前記吸気通路側残留率とを使用して前記吸気通路側実燃料付着量を推定するように構成された内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  5. 請求項2又は請求項3に記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置であって、
    少なくとも前記決定された噴射割合に基づいて前記燃焼室内の温度である筒内温度を取得する筒内温度取得手段を更に備え、
    前記筒内側パラメータ決定手段は、前記筒内側パラメータの値を少なくとも前記取得された筒内温度に基づいて決定するように構成された内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  6. 請求項5に記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置において、
    前記筒内側パラメータ決定手段は、前記筒内側パラメータとして、
    前記筒内噴射手段から噴射される燃料のうち前記燃焼室構成部材へ付着する燃料の割合を表す筒内側付着率と、前記燃焼室構成部材に付着している燃料のうち同燃焼室構成部材に付着したまま残留する燃料の割合を表す筒内側残留率とを使用し、前記筒内側付着率と前記筒内側残留率とを前記筒内温度が高いほどより小さい値に決定するように構成され、
    前記筒内側実燃料付着量推定手段は、前記筒内側パラメータ決定手段により決定された前記筒内側付着率と前記筒内側残留率とを使用して前記筒内側実燃料付着量を推定するように構成された内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  7. 請求項5又は請求項6に記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置であって、
    予め設定された複数の燃焼モードの中から実際に採用される燃焼モードを前記内燃機関の運転状態に基づいて選択する燃焼モード選択手段を更に備え、
    前記筒内温度取得手段は、前記選択された燃焼モードにも基づいて前記筒内温度を取得するように構成された内燃機関の燃料噴射量制御装置。

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