JP2007239466A - エンジンの燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エンジントルクに及ぼす燃料供給量の影響が吸入空気量の影響と比較して相対的に大きくなるエンジンの運転領域に関し、シリンダの壁面に付着した燃料の燃焼に寄与する度合いを、エンジントルクとの関係のもとで壁面付着燃料の燃焼寄与率として予め記憶する。実際の運転に際し、エンジントルクに基づいて燃焼寄与率を算出し(S208)、これを燃料噴射量の算出に反映させる(S210)。
【選択図】 図3
Description
図1は、本発明の一実施形態に係るエンジン1の構成を示している。本実施形態では、エンジン1として直噴型のディーゼルエンジンを採用しており、エンジン1に対し、燃料タンクからコモンレール22を介して燃料が供給される。
吸気通路11の導入部には、図示しないエアクリーナが取り付けられており、このエアクリーナにより吸入空気中の粉塵が除去される。吸気通路11には、ターボチャージャ12のコンプレッサ12aが設置されており、コンプレッサ12aにより吸入空気が圧縮されて送り出される。圧縮された吸入空気は、サージタンク13に流入し、マニホールド部で各気筒に分配される。
ECU41には、クランク角センサ51が発生させる単位クランク角又は基準クランク角毎の信号(ECU41は、これに基づいてエンジン回転数NEを算出する。)、エンジン1に対する要求負荷の指標としてアクセルペダル(図示せず。)の踏込量を検出するアクセルセンサ52からの信号、サージタンク13内における吸入空気の温度を検出する吸気温度センサ53からの信号、エンジン冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ54からの信号、及び吸入空気の流量を検出するエアフローメータ55からの信号等が入力される。また、ECU41には、これらの信号に併せ、イグニッションキー(図示せず。)の位置を示す信号が入力される。ECU41は、入力した各種の信号に基づいて燃料噴射制御に関する所定の演算を実行して、燃料噴射量を算出するとともに、この燃料噴射量に応じた駆動信号を燃料噴射弁21に出力する。
図2〜4は、燃料噴射制御ルーチンのフローチャートであり、イグニッションキーの操作等による電源の投入後、ECU41により所定の時間毎に繰り返し実行される。
図2に示すフローチャートにおいて、S101では、イグニッションキーの位置等に基づいてエンジン1の電源がオンされたか否かを判定する。オンされたときは、S102へ進み、オンされていないときは、このルーチンを終了する。なお、電源がオンされていないエンジン1の停止状態下では、ECU41は、最小限の電力のみが供給された待機状態にある。
S103では、エンジン冷却水の温度TWを読み込む。
S104では、読み込んだTWが所定の値TW1#以下であるか否かを判定する。TW1#以下であるときは、S105へ進み、それ以外のときは、S107へ進む。TW1#は、エンジン1の暖機完了を判断し得る値に設定する。
S106では、図3に示すフローチャートに従い、始動制御により燃料噴射制御を実施する。
図3に示すフローチャートにおいて、S201では、積算噴射量CUMQFを算出する。積算噴射量CUMQFは、クランキングが開始されてからのサイクル毎の燃料噴射量QFの積算値であり、次式(1)により算出する。
CUMQFn=QFn+CUMQFn−1 ・・・(1)
S202では、エンジン1の温度(以下「機関温度」という。)TMPEを算出する。機関温度TMPEの算出は、S103で読み込んだクランキングの開始前における冷却水温度TWと、積算噴射量CUMQFとにより図5に示す傾向を持たせたマップデータを検索することにより行う。図5のマップデータにおいて、機関温度TMPEは、冷却水温度TWが高く、かつ積算噴射量CUMQFが多いときのものほど、大きな値に設定する。
S204では、機関温度変化率DTEを算出する。機関温度変化率DTEは、機関温度TMPEの、このルーチンの演算周期毎の変化率であり、次式(2)により算出する。
S205では、算出したDTEが所定の値DTE1#以上であるか否かを判定する。DTE1#以上であるときは、S206へ進み、それ以外のときは、S211へ進む。DTE1#は、エンジン1が低温状態にあることを判断し得る値に設定する。機関温度変化率DTEが小さいときは、エンジン1が暖機後の温度状態に向けて安定しつつあると判断するのである。
DNE=NEn−NEn−1 ・・・(3)
S207では、エンジントルクTIENGを算出する。エンジントルクTIENGの算出は、エンジン回転数NEと、先のS206で算出したDNEとにより図6に示す傾向を持たせたマップデータを検索することにより行う。図6のマップデータにおいて、エンジントルクTIENGは、エンジン回転数NEが高く、かつ回転速度変化率DNEが大きいときのものほど、大きな値に設定する。
S209では、燃料の壁面付着率RQFWLを算出する。壁面付着率RQFWLは、噴射された燃料のうち、燃焼に寄与せずにシリンダの壁面に付着する燃料の割合を示すものであり、その算出は、機関温度TMPEと、燃料噴射量QFとにより図8に示す傾向を持たせたマップデータを検索することにより行う。図8のマップデータにおいて、壁面付着率RQFWLは、機関温度TMPEが低く、かつ燃料噴射量QFが多いときのものほど、大きな値に設定する。
S211では、暖機後の通常制御に移行する。
図4に示すフローチャートにおいて、S301では、冷却水温度TW、吸気温度TA、アクセル開度(アクセルセンサ52により検出される。)APO、及びエンジン回転数NEを読み込む。
S304では、吸気温度補正量HQFTAを算出する。吸気温度補正量HQFTAは、吸気温度TAによる図11に示すテーブルデータの検索により、TAが低いときほど、大きな値として算出される。
QFn=QFBASEn×HQFTW×HQFTA×(1/(1−RQFWL))
−QFn−1×INFQF ・・・(5)
ECU41は、算出したQF(=QFn)に応じた駆動信号を出力し、燃料噴射弁21を作動させる。
本実施形態では、ディーゼルエンジン1の低温始動時において、エンジントルクとの関係のもとに予め記憶された壁面付着燃料の燃焼寄与率INFQFを、実際のエンジントルクTIENGにより読み出し(図3のS208)、これを燃料噴射量QFの算出に反映させて、シリンダの壁面から蒸発する量に相当する分の燃料を減算したものとして、最終設定値としての燃料噴射量QFを算出することとした(図4のS305)。このため、燃料の壁面付着に拘わらず、エンジン1の運転条件に応じた必要量の燃料を燃焼させて、要求負荷(ここでは、アクセル開度APO)に応じたエンジントルクを過不足なく発生させることが可能となるので、エンジン1の制御安定性を向上させ、エミッションの増大を防止することができる。本実施形態では、基本噴射量QFBASEの算出に際してエンジン1に対する要求負荷を考慮することとしており(同S301)、有負荷運転時における燃料噴射量QFの設定に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、これに限らず、アイドル時における回転数制御に適用することもできる。この場合は、実際のエンジン回転数NEの目標値に対する偏差を減少させるための燃料噴射量QFの算出に燃焼寄与率INFQFを反映させ、前記偏差に応じた基本噴射量QFBASEから、壁面からの蒸発燃料量を減算すればよい。なお、ディーゼルエンジン1は、運転領域全般に亘り空気が過剰な状態で運転させるものであるので、ディーゼルエンジン1の運転領域は、その全般に亘り「エンジントルクに及ぼす燃料供給量の影響が相対的に大きくなる運転領域」に相当する。
なお、以上では、軽油を燃料とするディーゼルエンジンに本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、これに限らず、ガソリンエンジン、及び各種の燃料を採用した予混合圧縮着火型のエンジンに適用することができる。ガソリンエンジンでは、理論値よりも燃料が希薄な状態で運転させる希薄燃焼域(均質又は成層の燃焼形態の別を問わない。)に本発明を適用することが可能であり、たとえば、直噴型のガソリンエンジンにおいて、いわゆるスプレーガイド燃焼の形態によりエンジンを始動させる場合での適用が考えられる。スプレーガイド燃焼による始動では、成層燃焼時における通常の噴射時期よりも遅角させて燃料を噴射するとともに、ピストンの冠面に対する衝突前の噴霧に対して点火を行うことで、着火性を確保しつつ、燃料の後燃えにより排気温度を上昇させ、暖機を促進させることができる。
Claims (9)
- エンジンにおける燃料噴射量を制御する装置であって、
エンジンの運転条件に応じた前記燃料噴射量の基本値を算出する基本噴射量算出手段と、
エンジンが実際に発生させているエンジントルクを検出するエンジントルク検出手段と、
エンジントルクに及ぼす燃料供給量の影響が吸入空気量の影響と比較して相対的に大きくなるエンジンの運転領域に関し、噴射された燃料のうちシリンダの壁面に付着した燃料の燃焼に寄与する度合いが、エンジントルクとの関係のもとで壁面付着燃料の燃焼寄与率として予め記憶され、前記領域における実際の運転に際し、前記エンジントルク検出手段により検出されたエンジントルクに基づいて前記燃焼寄与率を算出する燃焼寄与率算出手段と、
前記基本噴射量算出手段により算出された基本噴射量、及び前記燃焼寄与率算出手段により算出された燃焼寄与率に基づいて、前記燃料噴射量の最終設定値を算出する燃料噴射量算出手段と、
を含んで構成されるエンジンの燃料噴射制御装置。 - 前記燃焼寄与率算出手段は、燃料噴射量に対応させて各エンジントルク下での燃焼寄与率が記憶され、燃料噴射量、及び前記検出されたエンジントルクに基づいて前記燃焼寄与率を算出する請求項1に記載のエンジンの燃料噴射制御装置。
- エンジンの温度を検出する温度検出手段を更に含んで構成され、
前記燃料噴射量算出手段は、前記温度検出手段により所定の温度よりも低いエンジンの温度が検出されたことに対応して、前記算出された燃焼寄与率に基づいて前記燃料噴射量の最終設定値を算出する請求項1又は2に記載のエンジンの燃料噴射制御装置。 - 前記燃料噴射量算出手段は、エンジンの始動時におけるクランキングの開始から所定の時間が経過するまでの間、前記算出された燃焼寄与率に基づいて前記燃料噴射量の最終設定値を算出する請求項1〜3のいずれかに記載のエンジンの燃料噴射制御装置。
- エンジンの温度を検出する温度検出手段を含んで構成されるものにおいて、
前記所定の時間が、クランキングの開始後、完爆を経て、エンジンの単位時間当たりの温度上昇率が増加から転じて所定の値に減少するまでの時間として定められる請求項4に記載のエンジンの燃料噴射制御装置。 - エンジンの温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段により検出されたエンジンの温度に基づいて、燃料の壁面付着に対する、エンジンの温度に応じた燃料噴射量の補正量を算出する補正量算出手段と、を更に含んで構成され、
前記燃料噴射量算出手段は、前記算出された基本噴射量、前記算出された燃焼寄与率、及び前記補正量算出手段により算出された補正量に基づいて、前記最終設定値としての燃料噴射量を算出する請求項1〜5のいずれかに記載のエンジンの燃料噴射制御装置。 - エンジンの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記回転速度検出手段により検出された回転速度の単位時間当たりの変化率を算出する回転速度変化率算出手段と、を更に含んで構成され、
前記エンジントルク検出手段は、前記検出された回転速度、及び前記回転速度変化率算出手段により算出された回転速度の変化率に基づいて、前記エンジントルクを算出する請求項1〜6のいずれかに記載のエンジンの燃料噴射制御装置。 - エンジンの温度を検出する温度検出手段を含んで構成されるものにおいて、
前記温度検出手段は、エンジン冷却水の温度を検出する手段を含んで構成され、この手段により検出されたクランキングの開始前におけるエンジン冷却水の温度、及び燃料の噴射が開始されてからの燃料噴射量の積算値に基づいて、エンジンの温度を推定演算する請求項1〜7のいずれかに記載のエンジンの燃料噴射制御装置。 - ディーゼルエンジンにおける燃料噴射量を制御する請求項1〜8のいずれかに記載のエンジンの燃料噴射制御装置。
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