JP2006320163A - 転がり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】インバータ制御モータなどの軸の支持に使用される転がり軸受のように、軸電圧が生じるようなモータに使用された場合でも電食が防止できる転がり軸受を提供する。
【解決手段】フッ素油からなる潤滑油または基油がフッ素油であるグリースで潤滑を行う。フッ素油としては、パーフルオロポリェーテル、パーフルオロアルキル、およびこれらの誘導体(パーフルオロポリェーテルまたはパーフルオロアルキルを骨格として、特定の官能基が結合された化合物)からなるものが挙げられる。
【選択図】図2

Description

本発明は転がり軸受に関する。
モータのロータ軸は、転がり軸受により、ハウジングに対して回転自在に支持されている。インバータや高速スイッチング等の高周波電流が発生する装置の近くで使用されるモータには、軸電圧が発生して、ロータ軸とハウジングとの間に電位差が生じる場合がある。これに伴って、ハウジングやロータ軸からの漏れ電流が、転がり軸受の転動体と軌道輪との間に流れ、軌道輪の軌道面および転動体の転動面に電食(電気化学的腐食)が生じる恐れがある(例えば非特許文献1参照)。この電食が生じると、軌道輪の軌道面および転動体の転動面の精度が低下し、振動が上昇して、軸受の寿命が短くなる。
この電食を防止するために、軌道輪の軌道面を合成樹脂組成物からなる絶縁被膜で被覆することが提案されている(例えば特許文献1および2参照)。また、回路設計により電食を防止することも提案されている(例えば非特許文献2参照)。
小笠原悟司、「可変速ACドライブの漏れ電流・サージ電圧・軸電圧とその抑制法」、電学論D、電気学会、1998年、188巻、9号、p.975−980 小笠原等、「電圧形PWMインバータが発生するコモンモード電圧のアクティブキャンセレーション」、電学論D、電気学会、1997年、117巻、5号、p.565−571 特開平7−310748号公報 特開2002−147468号公報
しかしながら、高周波電流による軸電圧は誘導電流であるため、前記従来技術のうち絶縁被膜を設ける方法では効果が期待できない。回路設計により電食を防止する方法では、複雑な回路設計が必要となり、コストも高いため、現実的でない。
本発明は、このような従来技術の未解決な課題を解決するためになされたものであり、軸電圧が生じるようなモータに使用された場合でも電食が防止できる転がり軸受を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、フッ素油からなる潤滑油または基油がフッ素油であるグリースで潤滑されていることを特徴とする転がり軸受を提供する。
フッ素油としては、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキル、およびこれらの誘導体(パーフルオロポリエーテルまたはパーフルオロアルキルを骨格として、特定の官能基が結合された化合物)からなるものが挙げられる。パーフルオロポリエーテルは、「−Cx 2xO−」で表され、xが1〜4の整数であるポリオキシアルキレン単位の一つまたは二種類以上が、繰り返し単位として配列された化合物である。
通常使用されている転がり軸受の潤滑油は、ポリαオレフィン等のように炭化水素を主成分とするものである。そのため、電流が軸受内を通過する際のエネルギーにより、その炭素骨格が分解されて、鉄鋼製の内輪、外輪、転動体の活性化された表面と反応し、その表面に炭化物層が形成されることが分かった。
すなわち、軸受内に電流が流れた状態で使用していた転動体の転動面を深さ方向に元素分析したところ、図1に示すグラフが得られた。このグラフは、オージェ電子強度とスパッタリング時間(表面からの深さに比例)との関係を示す。
分析にはアルバックファイ株式会社製の走査型オージェ電子分光分析機「SAM650」を用い、分析条件は、電子線の加速電圧:5kV、試料電流:30nA、アルゴンイオン:1kV−25mA(作動圧力15mPa)、アルゴンイオン照射角:30度とした。分析機の較正は酸化タンタルを用いて行った。すなわち、酸化タンタルの標準片を深さ25nmまでスパッタリングすることにより、そのスパッタ率を測定した。この測定値(4.00nm/min)を用いてスパッタリング時間から換算した炭化物層の深さは約100nmである。
このような炭化物が不均一に形成されることによって、軌道輪の軌道面および転動体の転動面の精度が低下し、振動が上昇して、軸受の寿命が短くなる。
これに対して、本発明の転がり軸受は、フッ素油からなる潤滑油または基油がフッ素油であるグリースで潤滑されているため、転がり軸受内に電流が流れた場合でも炭化物層が形成され難い。
本発明の転がり軸受は、インバータ制御モータの軸の支持に好適に使用される。
本発明の転がり軸受によれば、軸電圧が生じるようなモータに使用された場合でも電食が防止されて、長期間に渡って良好な性能を保持できる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に相当する転がり軸受を示す断面図である。
この転がり軸受1は、内径8mm、外径22mm、幅7mmの単列深みぞ玉軸受であり、内輪2、外輪3、玉4と、ナイロン製の冠形の保持器5と、芯金入りの非接触ゴムシール6とから構成されている。
内輪2の外周面には軌道溝2aが、外輪の内周面には軌道溝3aがそれぞれ形成されている。これらの軌道溝2a,3aが対向配置され、その間に保持器5を介して玉4が転動自在に配設されている。玉4の直径は3.969mmである。内輪2、外輪3、および玉4としては、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)からなる素材を切削加工により所定形状とした後に、通常の熱処理を行ったものを使用した。
潤滑剤として以下の(1) 〜(7) を用意した。
(1):パーフルオロポリエーテルからなり、40℃での動粘度が32mm2 /sである潤滑油。
(2):パーフルオロポリエーテルからなり、40℃での動粘度が64mm2 /sである潤滑油。
(3):下記の(1)式で表される化合物であって、40℃での動粘度が63mm2 /sである潤滑油。
Figure 2006320163
(4):(1) と同じパーフルオロポリエーテルを基油とし、増ちょう剤としてPTFE粉末(#3000メッシュ)を25質量%含有し、ちょう度が「JIS K2220」のNo. 3であるグリース。
(5):ポリαオレフィンからなり、40℃での動粘度が32mm2 /sである潤滑油。
(6):ポリαオレフィンからなり、40℃での動粘度が64mm2 /sである潤滑油。
(7):(5) と同じポリαオレフィンを基油とし、増ちょう剤としてLiステアレートを18質量%含有し、ちょう度が「JIS K2220」のNo. 3であるグリース。
なお、パーフルオロポリエーテルとしてはクリューバ社製のバリエルタシリーズを、ポリαオレフィンとしてはモービル社製のSHFシリーズを使用した。
潤滑油である(1) 〜(3),(5),(6) では10mgを、グリースである(4) と(7) の場合にはグリース占有容積率が15%となるように、それぞれ潤滑剤を図2の転がり軸受1内に封入し、図3の試験装置を用いて回転試験を行った。この試験装置は、試験軸受70に対して通電しながら回転を行うものであり、モータ71と、絶縁カップリング72と、樹脂製ハウジング73と、給電ねじ74と、ブラシ75とで構成されている。また、回転試験の前後にアンデロメータを用いて音響特性を示す量(アンデロン値)を測定した。
<試験条件>
回転速度:1800min-1(内輪回転)
アキシャル荷重:20N
軸受への付与電流:2mA
雰囲気温度:室温
回転時間:100時間
得られた結果より、各サンプルについて、回転前のアンデロン値(初期音響)に対する、100時間回転後のアンデロン値の上昇値を算出し、この上昇値が1.0以下であるサンプルを合格(通電状態での耐久性が良好)、1.0を超えたサンプルを不合格(通電状態での耐久性が不良)とした。
その結果、本発明の実施例に相当する(1) 〜(4) の潤滑剤を封入した転がり軸受は全て合格であったのに対して、比較例に相当する(5) 〜(7) の潤滑剤を封入した転がり軸受は全て不合格であった。
したがって、本発明の実施例に相当する(1) 〜(4) の潤滑剤を封入した転がり軸受は、比較例に相当する(5) 〜(7) の潤滑剤を封入した転がり軸受と比較して、軸電圧が生じるようなモータに使用された場合でも長寿命となる。
ポリαオレフィンを潤滑油とし、軸受内に電流が流れた状態で使用していた転動体の転動面を深さ方向に元素分析した結果を示すグラフであって、オージェ電子強度とスパッタリング時間(表面からの深さに比例)との関係を示す。 本発明の一実施形態に相当する転がり軸受を示す断面図である。 実施形態で使用した通電回転試験装置を示す図である。
符号の説明
1 転がり軸受
2 内輪
3 外輪
4 玉
5 冠形保持器
6 非接触ゴムシール
70 試験軸受
71 モータ
72 絶縁カップリング
73 樹脂製ハウジング
74 給電ねじ
75 ブラシ

Claims (2)

  1. フッ素油からなる潤滑油または基油がフッ素油であるグリースで潤滑されていることを特徴とする転がり軸受。
  2. インバータ制御モータの軸の支持に使用される請求項1記載の転がり軸受。
JP2005142326A 2005-05-16 2005-05-16 転がり軸受 Pending JP2006320163A (ja)

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