JP2006318757A - 固体高分子形燃料電池用触媒層およびそれを備えた固体高分子形燃料電池。 - Google Patents

固体高分子形燃料電池用触媒層およびそれを備えた固体高分子形燃料電池。 Download PDF

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Abstract

【課題】陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路とカーボンの表面との接面に触媒金属を主に担持している混合物を含む触媒層を用いた固体高分子形燃料電池(PEFC)において、耐久性能が著しく改善された固体高分子形燃料電池(PEFC)を提供する。
【解決手段】炭素材料と陽イオン交換樹脂と触媒金属と撥水性樹脂とを含む固体高分子形燃料電池用触媒層において、前記撥水性樹脂は少なくとも前記陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路に備えられ、前記陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路と前記炭素材料の表面との接面に前記触媒金属が主に担持され、前記炭素材料と前記撥水性樹脂の合計質量に対する前記撥水性樹脂の比率が10質量%以上、60質量%以下で、前記撥水性樹脂の融点が前記陽イオン交換樹脂の分解温度よりも低いことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体高分子形燃料電池用触媒層およびその触媒層を備える固体高分子形燃料電池に関するものである。
固体高分子形燃料電池(PEFC)は、固体高分子電解質膜の一方の面にアノ−ドを他の面にカソ−ドを接合して構成され、例えば、アノ−ドに燃料として水素、カソ−ドに酸化剤として酸素をそれぞれ供給すると、つぎの電気化学反応によって発電する装置である。
アノ−ド:2H→4H+4e
カソ−ド:O+4H+4e→2H
アノ−ドおよびカソ−ドは、いずれもガス拡散層と触媒層とからなり、触媒層が固体高分子電解質膜に接合された構造である。触媒層には白金族金属触媒が含まれ、上記電気化学反応はこの触媒層で進行する。触媒層と接したガス拡散層は、触媒層への反応ガスの供給と集電との機能をもつ。さらに、カソード側での反応によって生成する水は、ガス拡散層を介して排出される。したがって、ガス拡散層は、ガス透過性、導電性および撥水性が要求される。
また、触媒層にも反応生成物である水が滞留しないように、撥水性が要求される。特許文献1および特許文献2には、触媒金属の微粒子を担持した導電材により構成される触媒層を有し、この触媒層にはプロトン伝導材、撥水剤、結着剤が含まれ、結着剤としては撥水性を有するフッ素樹脂が好ましく、その例としてポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などが記載されている。
特許文献3には、触媒、電子伝導体、イオン伝導体からなる電極触媒層に、結着性を高めるために、イオン伝導体(プロトン交換樹脂)以外のポリマーを含む技術が開示されている。そして、このようなポリマーとしては、フッ素原子を含むポリマーが挙げられ、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)など、あるいはこれらの共重合体、これらのポリマーを構成するモノマ単位とエチレンやスチレンなどの他のモノマとの共重合体、さらには、ブレンドなども用いることができること、中でも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体が特に好ましいポリマーであることが記載されている。
さらに、特許文献3には、これらポリマーの電極触媒層中の含有量としては、重量比で5〜40%の範囲が好ましいこと、電極触媒層の三次元網目構造の空隙率は10〜95%の範囲であることが好ましいことが記載されている。
一方、固体高分子形燃料電池の電極の触媒金属として、カソードには白金を用いることが知られている。この金属を超少量担持する白金担持カーボンの製作方法が特許文献4や特許文献5で開示されている。その具体的な製造方法はつぎのとおりである。まず、陽イオン交換樹脂溶液とカーボンとを混合したのちに吸引濾過し、つづいて乾燥することによって陽イオン交換樹脂で被覆したカーボンを製作する。つぎに、そのカーボンを白金錯体陽イオンを含む水溶液中に浸漬したのちに、その陽イオンをイオン交換反応によってその樹脂のプロトン伝導経路に選択的に吸着する。さらに、その経路に吸着した陽イオンを180℃の水素雰囲気中で還元する。この方法により製作した触媒粉末は、触媒金属が陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路とカーボンの表面との接面に主に担持しているので、この粉末を備えるPEFCは、超少量の触媒金属担持量で優れた分極特性を示す。
特開平07−050170号公報 特開平06−236762号公報 特開2004−273285号公報 特開2000−173626号公報 特開2003−257439号公報
特許文献1や特許文献2に記載されているように、従来の白金担持カーボンを用いた触媒層を備えたPEFCの場合、触媒層内部での水の滞留を抑制するため、触媒層に撥水材料を加えることが知られている。そこで、本発明者が触媒層中の撥水材料の最適な添加量を調査した結果、触媒層中のカーボンの質量に対して10質量%〜25質量%であることが明らかになった。
しかしながら、特許文献4や特許文献5に記載された、陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路とカーボンの表面との接面に触媒金属を主に担持している混合物(超少量触媒金属担持触媒)を用い、この混合物に25質量%の撥水材料を加えて製作した触媒層を備えたPEFCの耐久性能は、ほとんど向上しなかった。
その原因を解明するために、本発明者は、鋭意実験を重ねた結果、超少量触媒金属担持触媒を用いた触媒層を備えたPEFCは、従来の白金担持カーボンを用いたものと比較して、著しく水の滞留の影響を受けることがわかった。
すなわち、特許文献4や特許文献5で開示された方法により製作した超少量触媒金属担持触媒粉末を備える固体高分子形燃料電池(PEFC)は、連続運転試験中に出力が低下するという問題があった。この出力低下の原因は、PEFCの連続運転試験中に生成する水が触媒層内部に滞留すること、すなわち「フラッディング現象」によるものと考えられる。
なお、特許文献3には、従来の白金担持カーボンを用いた、触媒、電子伝導体、イオン伝導体からなる電極触媒層に、結着性を高めるために、イオン伝導体(プロトン交換樹脂)以外のポリマーを含む技術が開示され、ポリマーとしてはポリフッ化ビニリデン(PVDF)が特に好ましいことが記載されているが、電極触媒層中における電子伝導体とイオン伝導体以外のポリマーとの最適な混合比率については、何ら記載されていない。
そこで、本発明の目的は、陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路とカーボンの表面との接面に触媒金属を主に担持している混合物を含む触媒層を用いた固体高分子形燃料電池(PEFC)において、水の排出性の要因となる触媒層中の撥水性樹脂と炭素材料との最適混合範囲を決定し、触媒層前駆体の乾燥温度と撥水性樹脂の融点および陽イオン交換樹脂の分解温度との関係を求め、さらに、触媒層の空孔率の最適範囲を決定することにより、耐久性能が著しく改善された固体高分子形燃料電池(PEFC)を提供することにある。
請求項1の発明は、固体高分子形燃料電池用触媒層に関するもので、炭素材料と陽イオン交換樹脂と触媒金属と撥水性樹脂とを含み、前記撥水性樹脂は少なくとも前記陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路に備えられ、前記前記陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路と前記炭素材料の表面との接面に前記触媒金属が主に担持され、前記炭素材料と前記撥水性樹脂の合計質量に対する前記撥水性樹脂の比率が10質量%以上、60質量%以下で、前記撥水性樹脂の融点が前記陽イオン交換樹脂の分解温度よりも低いことを特徴とするものである。
請求項2の発明は、上記固体高分子形燃料電池用触媒層の製造方法に関するもので、陽イオン交換樹脂溶液に炭素材料を分散して分散物を得る第1の工程と、前記分散物から溶媒を除去して前記陽イオン交換樹脂で被覆された前記炭素材料を得る第2の工程と、前記陽イオン交換樹脂の固定イオンに触媒金属の陽イオンを吸着させる第3の工程と、前記触媒金属の陽イオンを化学的に還元して触媒金属を含む粉末を得る第4の工程と、前記触媒金属を含む粉末と造粒剤と撥水性樹脂溶液との混合溶液を得る第5の工程と、前記混合溶液をシート状にして、前記撥水性樹脂の融点よりも高く、前記陽イオン交換樹脂の分解温度よりも低い温度で乾燥して触媒層前駆体を得る第6の工程と、前記触媒層前駆体から造粒剤を除去する第7の工程を経ることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、上記固体高分子形燃料電池用触媒層の製造方法に関するもので、撥水性樹脂溶液と炭素材料とを混合し、乾燥して、表面に撥水性樹脂を備えた前記炭素材料を得る第1の工程と、陽イオン交換樹脂溶液に前記表面に撥水性樹脂を備えた炭素材料を分散して分散物を得る第2の工程と、前記分散物から溶媒を除去して前記陽イオン交換樹脂で被覆された前記表面に撥水性樹脂を備えた炭素材料を得る第3の工程と、前記陽イオン交換樹脂の固定イオンに触媒金属の陽イオンを吸着させる第4の工程と、前記触媒金属の陽イオンを化学的に還元して触媒金属を含む粉末を得る第5の工程と、前記触媒金属を含む粉末と造孔剤との混合溶液を得る第6の工程と、前記混合溶液をシート状にして、前記撥水性樹脂の融点よりも高く、前記陽イオン交換樹脂の分解温度よりも低い温度で乾燥して触媒層前駆体を得る第7の工程と、前記触媒層前駆体から造孔剤を除去する第8の工程を経ることを特徴とするものである。
請求項4の発明は、固体高分子形燃料電池に関するもので、請求項1記載の固体高分子形燃料電池用触媒層を備えることを特徴とするものである。
本発明の固体高分子形燃料電池用触媒層は、撥水性樹脂を用いることにより、また、撥水性樹脂の融点が陽イオン交換樹脂の分解温度よりも低いものを用いることにより、撥水性樹脂の融点よりも高く、陽イオン交換樹脂の分解温度よりも低い温度で乾燥して触媒層前駆体を作製することができるため、陽イオン交換樹脂を分解することなく、撥水性樹脂を炭素材料の表面に平均的に存在させることができる。
そのため、撥水性樹脂は陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路に備えられることになり、触媒金属は陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路とカーボンの表面との接面に主に担持されているため、触媒金属と撥水性樹脂との距離はかなり短いか、あるいは接触していることになる。したがって、燃料電池の反応によって触媒金属上で生成した水は、撥水性樹脂によって触媒金属から除去される。すなわち、触媒層の撥水性が向上し、触媒層内部の水の滞留が抑制されるため、触媒層内部でのフラッディングが著しく抑制される。
さらに、本発明の触媒層では、炭素材料と撥水性樹脂の合計質量に対する撥水性樹脂の比率が10質量%以上、60質量%以下の範囲であるため、触媒層のプロトン伝導性や電子電導性が適度な値に保たれる。
なお、本発明の触媒層の空孔率は特に限定されないが、反応ガスの出入りや水の排出が円滑に行われるためには、60%以上、85%以下であることが好ましい。
その結果、本発明の触媒層を備えた固体高分子形燃料電池は、高い出力および優れた耐久性能を示すものである。
本発明による、炭素材料と陽イオン交換樹脂と触媒金属と撥水性樹脂とを含む固体高分子形燃料電池用触媒層は、撥水性樹脂は少なくとも陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路に備えられ、陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路と炭素材料の表面との接面に触媒金属が主に担持され、炭素材料と撥水性樹脂の合計質量に対する撥水性樹脂の比率が10質量%以上、60質量%以下で、撥水性樹脂の融点が陽イオン交換樹脂の分解温度よりも低いことを特徴とするものである。
本発明の固体高分子形燃料電池用触媒層を備える固体高分子形燃料電池の模式図を図1に示す。図1において、11は本発明の固体高分子形燃料電池用触媒層、12は固体高分子電解質膜、13は撥水性を付与した導電性多孔質体、14はガス供給路、15はセパレータ、16はガスケットやOリングなどのシール材、17は固体高分子形燃料電池である。
この固体高分子形燃料電池用触媒層11の一方の面が、固体高分子電解質膜12のそれぞれの面に接触するように配置される。これらの固体高分子形燃料電池用触媒層11の他の面には、撥水性を付与した導電性多孔質体13の一方の面が接触するように配置される。さらに、これらの導電性多孔質体13の他の面にはガス供給路14を備えるセパレータ15が接触するように配置される。
図1に示すように、固体高分子形燃料電池17は、一対の触媒層11、一対の導電性多孔質体13および一対のセパレータ15で固体高分子電解質膜12を挟持することによって構成される。これらのセパレータの間に、ガスケットやOリングなどのシール材16を配置することによって、反応ガスの気密が保たれる。
本発明の固体高分子形燃料電池用触媒層11の模式図を図2に示す。図2において、記号11と12は図1と同じものを示し、21は炭素材料、22は陽イオン交換樹脂、23は撥水性樹脂、24は細孔である。
固体高分子形燃料電池用触媒層11は、炭素材料21と陽イオン交換樹脂22と撥水性樹脂23とを含有する。図2に示すように、炭素材料21と陽イオン交換樹脂22と撥水性樹脂23とが混ざり合うことによって、それらが三次元的に分布する。炭素材料21の表面には、図示していないが、触媒金属の微細粒子が担持されている。
これらの混合物には、複数の細孔24が形成される。この細孔によって、カソードの酸素還元反応によって生成する水を排出することができる。固体高分子形燃料電池用触媒層11の空孔率が60%以上の場合に、その生成水を円滑に排出することができるので、水の排出の効果が著しく現われる。さらに、空孔率が85%より高くなると、触媒層のプロトン伝導性および電子伝導性が低下する。したがって、固体高分子形燃料電池用触媒層11の空孔率は、60%以上、85%以下であることが好ましい。
炭素材料は特に限定されるものではないが、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラックを用いることができる。炭素材料には、触媒金属の陽イオンを含む化合物の還元に対して高い活性を示すものが好ましく、例えば、デンカブラック、バルカンXC−72、ケッチェンブラックEC、ブラックパール2000等のカーボンブラックが好ましい。
陽イオン交換樹脂には、プロトン伝導性を示せばどのようなものでも良いが、化学的に安定で耐試薬特性に優れたパーフルオロカーボンスルフォン酸系のものが好ましい。
撥水性樹脂を均一に触媒層に含有させ、撥水性樹脂を陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路に存在させるためには、溶媒に可溶性の撥水性樹脂を用いることが好ましく、撥水性樹脂の溶液を塗布した後、撥水性樹脂の融点よりも高く、陽イオン交換樹脂の分解温度よりも低くい温度で乾燥する必要がある。そのため、撥水性樹脂の融点は、陽イオン交換樹脂の分解温度よりも低くなければならない。その結果、陽イオン交換樹脂を分解することなく、撥水性樹脂を炭素材料の表面に平均的に存在させることができる。
本発明に用いる撥水性樹脂としては、水に対する接触角が90°以上のものが、触媒層内部のフラッディングが著しく抑制されるので好ましく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)[融点174℃]、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(P(VdF−HFP))[融点146〜155℃]等がある。
例えば、陽イオン交換樹脂としてNafionを用いた触媒層を乾燥する場合には、Nafionの分解温度が約200℃であるので、200℃よりも低い条件でおこなわなければならない。
本発明の固体高分子形燃料電池用触媒層において、炭素材料と撥水性樹脂の合計質量に対する撥水性樹脂の比率は、10質量%以上の場合にフラッディングの抑制効果は現われるが、60質量%より高くなると、撥水性樹脂にはプロトンおよび電子伝導性がないので、触媒層の電流集中によりセルの出力が低下する。したがって、触媒層における炭素材料と撥水性樹脂の合計質量に対する撥水性樹脂の比率は、10質量%以上、60質量%以下とする必要がある。
本発明の固体高分子形燃料電池用触媒層11のカーボンの表面近傍の模式図を図3に示す。図3において、21は炭素材料、25は陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路に存在する撥水性樹脂、26は陽イオン交換樹脂の疎水性領域に存在する撥水性樹脂、31は陽イオン交換樹脂の親水性領域(プロトン伝導経路)、32は陽イオン交換樹脂の疎水性領域、33は触媒金属である。
炭素材料21の表面は、親水性領域であるプロトン伝導経路31と疎水性領域32とからなる陽イオン交換樹脂よって被覆されている。このプロトン伝導経路31とカーボン21の表面との接面に触媒金属33が選択的に担持されている。
そして、撥水性樹脂は、親水性領域であるプロトン伝導経路31に存在するもの(25)と、陽イオン交換樹脂の疎水性領域に存在するもの(26)の2種類がある。触媒金属33の近傍に撥水性樹脂を備えることが、カソードの酸素還元反応により生成する水による触媒の不活性化を抑制するので好ましい。したがって、親水性領域であるプロトン伝導経路31に存在する撥水性樹脂25が多い場合に、触媒上で生成する水を排出し、触媒の不活性化を抑制する効果が大きくなる。なお、陽イオン交換樹脂の疎水性領域に存在する撥水性樹脂26は、水の排出とは無関係である。
本発明の固体高分子形燃料電池用触媒担持粉末を用いた固体高分子形燃料電池用電極では、触媒金属は、反応に関与するプロトン、水、水素および酸素が主に移動できるプロトン伝導経路経路と炭素材料の表面との接面に主として担持されている。この場所は、電子とプロトンとの授受を同時におこなうことのできる場所であるので、この接面に担持された触媒金属は電極反応に効率的に関与する。したがって、プロトン伝導経路経路と炭素材料の表面との接面に担持された触媒金属の割合を高めることによって、触媒金属の利用率は著しく高くなり、触媒金属の使用量を低減することができる。
本発明の固体高分子形燃料電池用電極の触媒層において、「触媒金属が陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路と炭素材料との接面に主として備えられている」とは、陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路に接するカーボン粒子表面に担持された触媒金属量が全触媒金属担持量の50質量%以上であることを意味する。すなわち、全触媒金属担持量の50質量%以上が、電極反応に対して活性な触媒金属であるため、触媒金属の利用率が著しく高くなる。
なお、本発明においては、陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路に接するカーボン粒子表面に担持された触媒金属量の全触媒金属担持量に対する割合は高いほど好ましく、特に80質量%を超えていることが好ましい。このようにして、プロトン伝導経路とカーボン粒子との接触面に触媒金属を高率で担持させることによって、電極の高活性化がはかられる。
本発明の触媒担持粉末では、触媒金属が陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路と炭素材料との接面に主として備えられているが、このことは、文献(M.Kohmoto et.al.,GS Yuasa Technical Report,1,48(2004))に記載のように、固体高分子形燃料電池用電極における、触媒である白金の電気化学的活性表面積の経時変化や質量活性の比較から明らかになる。
白金の電気化学的活性表面積の経時変化については、従来の電極では、白金の溶解・析出反応による凝集によって、白金の電気化学的活性表面積は減少するが、本発明の触媒担持粉末を用いた電極では凝集がほとんど起こらない。
固体高分子形燃料電池を低電流密度で運転させる場合には、全ての白金が電気化学反応に使われるが、高電流密度で運転させる場合には、陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路に存在する白金のみが電気化学反応に使われ、疎水性骨格部分に存在する白金は電気化学反応には関与しなくなる。
また、本発明の触媒担持粉末を用いた電極の従来の電極に対する質量活性比は、燃料電池の運転時においては、0.70Vよりも高電圧領域ではほぼ1であり、0.60Vでは2.7となる。一方、陽イオン交換樹脂においては、ポリマー部分に占めるプロトン伝導経路の体積比は約2.5である。このことから、従来の電極では、0.70Vよりも高電圧領域では、陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路の白金も疎水性骨格部分の白金も活性であるが、0.60Vでは陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路の白金のみが活性であることが明らかになる。
なお、質量活性とは、ある電圧における電流密度を、単位面積あたりの触媒金属担持量で除したものである。
本発明に用いる触媒金属には、酸素の還元反応に対して高い活性を示す金属を含むことが好ましく、その金属としては、白金、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウムなどの白金族金属がある。
本発明の燃料電池用触媒層の第1の製造方法は、つぎの工程を経ることを特徴とする。まず、第1の工程では、陽イオン交換樹脂溶液に炭素材料を分散して分散物を得る。つぎに、第2の工程では、第1の工程で得られた分散物から溶媒を除去して、陽イオン交換樹脂で被覆された炭素材料を得る。この工程では、分散物を噴霧乾燥機で造粒する方法が用いられる。
さらに、第3の工程では、第2の工程で得られた陽イオン交換樹脂で被覆された炭素材料の陽イオン交換樹脂の固定イオンに触媒金属の陽イオンを吸着させる。この工程では、陽イオン交換樹脂で被覆された炭素材料を、触媒金属の陽イオンを含む水溶液中に浸漬することにより、触媒金属の陽イオンをイオン交換反応によって陽イオン交換樹脂の固定イオンに吸着させる。この時、陽イオン交換樹脂の固定イオンは、陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路にのみ存在しているため、触媒金属の陽イオンは陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路に選択的に吸着させる。
そして、第4の工程では、触媒金属の陽イオンを化学的に還元して、触媒金属を含む粉末を得る。この工程では、炭素材料の触媒作用によって、触媒金属の陽イオンが還元されるため、第4の工程で得られた粉末においては、触媒金属は、陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路と炭素材料の表面との接面に主に担持される。
つぎに、第5の工程では、第4の工程で得られた触媒金属を含む粉末と、造孔剤と、撥水性樹脂を溶媒に溶解した撥水性樹脂溶液との混合溶液を作製する。さらに、第6の工程では、第5の工程で得られた混合溶液をシート状にして、撥水性樹脂の融点よりも高く、陽イオン交換樹脂の分解温度よりも低い温度で乾燥して、触媒層前駆体を作製する。最後に、触媒層前駆体から造孔剤を除去する第7の工程を経て、本発明の請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用触媒層を得ることができる。
第4の工程において、触媒金属の陽イオンを化学的に還元する場合の還元方法としては、水素ガス、水素を含むガスまたはヒドラジンを含む不活性ガスによって気相還元する方法がある。ここで、水素を含むガスには、水素ガスと窒素、ヘリウムまたはアルゴンなどの不活性ガスとの混合ガスがある。
第5の工程で、触媒金属を含む粉末と造孔剤と撥水性樹脂とを分散させるための溶媒には、水、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、オクタン、ベンゼン、ジクロロメタン、1、1、2−トリクロロ−1、2、2−トリフルオロエタン、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン、アニソール、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ピリジン、ジメチルスルホキシドなどを使用することができる。これらの中でも、NMPは、触媒金属を含む粉末や造孔剤の分散性および撥水性樹脂の溶解性が著しく高くなるので好ましい。
本発明においては、触媒層に細孔を形成することによって、カソードの酸素還元反応によって生成する水を排出することができる。細孔の形成は、例えば、第5の工程のように、触媒金属を含む粉末と撥水性樹脂とを溶媒に分散させた後、その分散液に造孔剤を加える方法によっておこなわれる。本発明に用いる造孔剤は限定されるものではなく、炭酸カルシウム、ニッケル粉末および塩化ナトリウムなどがある。
さらに、第6の工程で、触媒金属を含む粉末と造孔剤と撥水性樹脂と溶媒との混合物をシート状にして塗布する基材には、耐熱性のものが好ましく、たとえば、FEPフィルムまたはチタンシートがある。この基材を撥水性樹脂の融点よりも高い温度で乾燥させることによって、その撥水性樹脂は融解するので、撥水性樹脂を触媒層に均一に分布させることができる。この融解により触媒層の撥水性は均一になるので、触媒層内部のフラッディングを著しく抑制することができる。したがって、本発明の触媒層を用いたPEFCの耐久性能は高くなる。
最後に、触媒層前駆体から造孔剤を除去する第7の工程を経て、本発明の請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用触媒層を得ることができる。
本発明の燃料電池用触媒層の第2の製造方法は、つぎの工程を経ることを特徴とする。まず、第1の工程では、撥水性樹脂を溶媒に溶解した撥水性樹脂溶液と、炭素材料とを混合し、乾燥して、表面に撥水性樹脂を備えた前記炭素材料を得る。つぎに、第2の工程では、第1の工程で得られた前記表面に撥水性樹脂を備えた炭素材料を、陽イオン交換樹脂溶液に分散して、分散物を得る。第3の工程では、第2の工程で得られた分散物から溶媒を除去して、表面に撥水性樹脂を備えた炭素材料の表面を陽イオン交換樹脂で被覆した混合物を得る。
第4の工程では、第3の工程で得られた混合物を、触媒金属の陽イオンを含む水溶液中に浸漬することにより、触媒金属の陽イオンをイオン交換反応によって、混合物中の陽イオン交換樹脂の固定イオンに吸着させる。そして、第5の工程では、触媒金属の陽イオンを化学的に還元して、触媒金属を含む粉末を得る。
つぎに、第6の工程では、第4の工程で得られた触媒金属を含む粉末と、造孔剤と、撥水性樹脂を溶媒に溶解した撥水性樹脂溶液との混合溶液を作製する。さらに、第7の工程では、第6の工程で得られた混合溶液をシート状にして、撥水性樹脂の融点よりも高く、陽イオン交換樹脂の分解温度よりも低くい温度で乾燥して、触媒層前駆体を作製する。最後に、触媒層前駆体から造孔剤を除去する第8の工程を経て、本発明の請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用触媒層を得ることができる。
なお、本発明の燃料電池用触媒層の第2の製造方法において、触媒金属の陽イオンを化学的に還元する場合の還元方法、触媒金属を含む粉末と造孔剤と撥水性樹脂とを分散させるための溶媒、造孔剤の種類、触媒金属を含む粉末と造孔剤と撥水性樹脂と溶媒との混合物をシート状にして塗布する基材は、第1の製造方法と同じものを用いることができる。
以下、本発明を好適な実施例を用いて説明する。
[実施例1〜4および比較例1、2]
[実施例1]
まず第1工程では、陽イオン交換樹脂溶液(Nafion5質量%溶液、Aldrich Chemical、Nafion分解温度200℃)108gと、カーボン(Vulcan XC−72、Cabot製)10gとを混合して、混合物を作製した。
第2工程では、この混合物を噴霧乾燥機で造粒することによって、平均粒度23μmの陽イオン交換樹脂被覆カーボンを作製した。その造粒条件は、乾燥温度150℃および供給速度6g/min.とした。
つづいて、第3工程では、陽イオン交換樹脂被覆カーボン12gを、0.05mol/lの濃度の[Pt(NH]Cl水溶液230mlに24時間浸漬し、陽イオン交換樹脂の固定イオン(Nafionの場合は−SO )に[Pt(NH2+イオンを吸着させた。
その後、第4工程では、[Pt(NH2+イオンを吸着させた陽イオン交換樹脂被覆カーボンを、精製水で充分洗浄・乾燥後、水素雰囲気中で6時間還元することによって、陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路と炭素材料の表面との接面に主に触媒金属が担持された粉末を製作した。
つぎに、第5の工程では、粉末3gと、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学)27gに融点が174℃であるPVdF(平均分子量約200,000、呉羽化学製)0.594gを溶解させたPVdF−NMP溶液と、造孔剤としての炭酸カルシウム(CaCO、NS#200、日東粉化工業製)2.37gとを混合し、ペーストとした。PVdF−NMP溶液は、100mlのポリプロピレン製の容器にNMPおよびPVdFを入れたのちに、その容器をロータリーシェイカーを用いて4時間振とうすることによって製作した。PVdFの添加量は、触媒粉末中のカーボンとPVdFとの合計質量に対して30質量%にした。
さらに、第6の工程では、このペーストを金属シート上に塗布したのちに、180℃で2時間真空乾燥することによって、シート状のカソード触媒層前駆体を成形した。このカソード触媒層前駆体と、0.6mg/cmの触媒担持量の白金−ルテニウム担持カーボン(Pt:19.6質量%、Ru:15.2質量%、TEC61V33、田中貴金属工業)を備えるアノード触媒層とを、固体高分子膜(Nafion115、DuPont製)の両側に10MPa、130℃の条件で接合することによって、膜/電極接合体(MEA)を製作した。
さらに、第7の工程では、このMEAを80℃、0.5mol/lの硝酸水溶液に浸漬することによって、カソード触媒層に含まれる炭酸カルシウムを溶出させたのちに、カーボンペーパーを両方の触媒層の外側に接合した。またさらに、このMEAの電極部分の外側にガス流路の確保のためにガスフロープレートを配置したのちに、これらをステンレス製のエンドプレートにより12.7MPaの圧力で圧迫し本発明による単セルAを製作した。このカソード触媒層の空孔率は70%であった。
[実施例2]
PVdFの添加量が、触媒粉末中のカーボンとPVdFとの合計質量に対して10質量%にしたことを除いては、実施例1の場合と同様の方法によって、本発明による単セルBを製作した。
[実施例3]
PVdFの添加量が、触媒粉末中のカーボンとPVdFとの合計質量に対して40質量%にしたことを除いては、実施例1の場合と同様の方法によって、本発明による単セルCを製作した。
[実施例4]
PVdFの添加量が、触媒粉末中のカーボンとPVdFとの合計質量に対して60質量%にしたことを除いては、実施例1の場合と同様の方法によって、本発明による単セルDを製作した。
[比較例1]
PVdFの添加をおこなわなかった(0質量%)ことを除いては、実施例1の場合と同様の方法によって、単セルEを製作した。
[比較例2]
PVdFの添加量が、触媒粉末中のカーボンとPVdFとの合計質量に対して80質量%にしたことを除いては、実施例1の場合と同様の方法によって、単セルFを製作した。
触媒層へのPVdFの添加が単セルの分極特性におよぼす影響を調査するために、単セルA〜Fの0.7Vにおける電流密度の値を測定した。測定条件は、燃料および酸化剤に水素(ガス利用率80%)および空気(ガス利用率40%)を用いて、セル温度70℃の条件でおこなった。
この測定から得た単セルの電流密度の値とカソード触媒層中のPVdFの割合との関係を図4に示す。図4から、単セルの電流密度の値は、PVdFの添加割合が60質量%以下で一定であること、およびその割合を超える添加量では著しく減少することがわかる。
つぎに、PVdFの添加による単セルの分極の増大が見られなかった単セルA〜Eの連続運転試験での1時間当たりのセル電圧の低下の割合(劣化率)とカソード触媒層中のPVdFの割合との関係を図5に示す。試験条件は、燃料および酸化剤に水素(ガス利用率80%)および空気(ガス利用率40%)を用いて、セル温度70℃、作動電流密度300mA/cmの条件でおこなった。
図5から、10質量%以上のPVdFを添加することによって、その劣化率は、著しく減少することがわかる。この劣化率の減少は、PVdFを添加することによって、カソード触媒層の撥水性が向上するので、酸素還元反応の生成水の滞留に起因するその層のガス拡透過性能の低下が抑制されたことによるものと推察される。これらの結果から、PVdFを10質量%以上、60質量%以下触媒層に備えるPEFCの出力および耐久性能は高いことがわかった。
[実施例5、6および比較例3〜5]
[実施例5]
CaCOの添加量を1.42gとすることによって、カソード触媒層の空孔率を60%にしたことを除いては、実施例1の場合と同様の方法によって、本発明による単セルGを製作した。
[実施例6]
CaCOの添加量を3.78gとすることによって、カソード触媒層の空孔率を85%にしたことを除いては、実施例1の場合と同様の方法によって、本発明による単セルHを製作した。
[比較例3]
CaCOを添加しないことによって、カソード触媒層の空孔率を45%にしたことを除いては、実施例1の場合と同様の方法によって、単セルIを製作した。
[比較例4]
CaCOの添加量を0.48gとすることによって、カソード触媒層の空孔率を50%にしたことを除いては、実施例1の場合と同様の方法によって、単セルJを製作した。
[比較例5]
CaCOの添加量を4.27gとすることによって、カソード触媒層の空孔率を90%にしたことを除いては、実施例1の場合と同様の方法によって、単セルKを製作した。
カソード触媒層の空孔率が単セルの分極特性におよぼす影響を調査するために、単セルAおよびG〜Kの0.7Vにおける電流密度の値を測定した。測定条件は、燃料および酸化剤に水素(ガス利用率80%)および空気(ガス利用率40%)をそれぞれ用いて、セル温度70℃でおこなった。
この測定から得られた単セルの電流密度の値とカソード触媒層の空孔率との関係を図6に示す。図6から、これらの単セルの0.7Vにおける電流密度の値は、空孔率が45%から60%あたりにかけて急激に増加していることがわかる。この増加は、空孔率の増加に起因するガスの拡散性の向上および水の排出性の向上によるフラッディングの抑制によるものと考えられる。さらに、85%を超える空孔率では、その値は急激に減少することがわかる。この減少は、空孔率の増加に起因する触媒粉末の緻密性の低下によって、触媒層の電子伝導度またはプロトン伝導度の低下によるものと考えられる。これらのことから、単セルの分極は、カソード触媒層の空孔率が60%以上、85%以下の場合に最も小さいことが明らかになった。
[実施例7および8]
[実施例7]
撥水性樹脂として、PVdFの代わりにビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(HFP含有量2〜3質量%、平均分子量約200,000、融点155℃)を用いたことを除いては、実施例1の場合と同様の方法によって、本発明による単セルLを製作した。
[実施例8]
撥水性樹脂として、PVdFの代わりにビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(HFP含有量4〜5質量%、平均分子量約200,000、融点146℃)を用いたことを除いては、実施例1の場合と同様の方法によって、本発明による単セルMを製作した。
実施例7および8の単セルL、Mの0.7Vにおける電流密度の値を、実施例1の単セルAの場合と同様の条件で測定した。その結果を表1に示した。
Figure 2006318757

表1の結果から、撥水性樹脂としてPVdFの代わりにビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を用いた場合にも、同程度の優れた特性が得られることがわかった。
[実施例9]
まず第1工程では、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学)300gに、撥水性樹脂としての融点が174℃であるPVdF(平均分子量約200,000、呉羽化学製)6gを溶解させたPVdF−NMP溶液と、カーボン(Vulcan XC−72、Cabot製)14gとを混合し、この混合物を噴霧乾燥機で造粒することによって、表面にPVdFを備えたカーボンを作製した。造粒条件は、乾燥温度150℃および供給速度6g/min.とした。PVdFの添加量は、カーボンとPVdFとの合計質量に対して30質量%にした。
第2工程では、第1工程で得た表面にPVdFを備えたカーボン10gを、陽イオン交換樹脂溶液(Nafion5質量%溶液、Aldrich Chemical、Nafion分解温度200℃)76gに分散させて分散物を作製した。
第3工程では、この分散物を噴霧乾燥機で造粒し、NMPを除去することによって、平均粒度23μmの陽イオン交換樹脂で被覆され、表面にPVdFを備えたカーボンを作製した。造粒条件は、乾燥温度150℃および供給速度6g/min.とした。
つづいて、第4工程では、陽イオン交換樹脂で被覆され、表面にPVdFを備えたカーボン13.8gを、0.05mol/lの濃度の[Pt(NH]Cl水溶液230mlに24時間浸漬し、陽イオン交換樹脂の固定イオン(Nafionの場合は−SO )に[Pt(NH2+イオンを吸着させた。
その後、第5工程では、[Pt(NH2+イオンを吸着させ、陽イオン交換樹脂で被覆され、表面にPVdFを備えたカーボンを、精製水で充分洗浄・乾燥後、水素雰囲気中で6時間還元することによって、陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路と炭素材料の表面との接面に主に触媒金属が担持された粉末を製作した。
つぎに、第6の工程では、第5工程で得られた粉末3gと、造孔剤としての炭酸カルシウム(NS#200、日東粉化工業製)2.37gと、NMP30gとを混合し、ペーストとした。さらに、第7の工程では、このペーストを金属シート上に塗布したのちに、180℃で2時間真空乾燥することによって、シート状のカソード触媒層前駆体を成形した。このカソード触媒層前駆体と,0.6mg/cmの触媒担持量の白金−ルテニウム担持カーボン(Pt:19.6質量%、Ru:15.2質量%、TEC61V33、田中貴金属工業)を備えるアノード触媒層とを、固体高分子膜(Nafion115、DuPont製)の両側に10MPa、130℃の条件で接合することによって、膜/電極接合体(MEA)を製作した。
さらに、第8の工程では、このMEAを80℃、0.5mol/lの硝酸水溶液に浸漬することによって、カソード触媒層に含まれる炭酸カルシウムを溶出させたのちに、カーボンペーパーを両方の触媒層の外側に接合した。またさらに、このMEAの電極部分の外側にガス流路の確保のためにガスフロープレートを配置したのちに、これらをステンレス製のエンドプレートにより12.7MPaの圧力で圧迫し、実施例9の単セルNを製作した。このカソード触媒層の空孔率は70%であった。
実施例9の単セルNの0.7Vにおける電流密度の値を、実施例1の単セルAの場合と同様の条件で測定した。その結果、151mA/cmが得られ、実施例1の単セルAと同程度の優れた特性が得られた。したがって、実施例1と実施例9の製造方法では、同程度の特性をもつ固体高分子形燃料電池用触媒層が得られることがわかった。
以上のことから、陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路とカーボンの表面との接面に触媒金属を主に担持している触媒粉末およびその樹脂の分解温度よりも融点が低い撥水性樹脂とを含む触媒層を備えるPEFCは、フラッディングが著しく抑制されるので、超少量の触媒担持量で優れた分極特性および耐久性能を示すと考えられる。
本発明の固体高分子形燃料電池用触媒層を備える固体高分子形燃料電池の模式図。 本発明の固体高分子形燃料電池用触媒層の模式図。 本発明の固体高分子形燃料電池用触媒層のカーボンの表面近傍の模式図。 作動電圧0.7Vにおける単セルの電流密度の値とカソード触媒層中のPVdFの割合との関係を示す図。 単セルA〜Eの連続運転試験での、1時間当たりのセル電圧の低下の割合(劣化率)とカソード触媒層中のPVdFの割合との関係を示す図。 作動電圧0.7Vにおける単セルの電流密度の値とカソード触媒層の空孔率との関係を示す図。
符号の説明
11 本発明の固体高分子形燃料電池用触媒層
12 固体高分子電解質膜
13 撥水性を付与した導電性多孔質体
14 ガス供給路
15 セパレータ
16 ガスケットやOリングなどのシール材
17 高分子電解質形燃料電池
21 炭素材料
22 陽イオン交換樹脂
23 撥水性樹脂
24 細孔
25 陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路に存在する撥水性樹脂
26 陽イオン交換樹脂の疎水性領域に存在する撥水性樹脂
31 陽イオン交換樹脂の親水性領域(プロトン伝導経路)
32 陽イオン交換樹脂の疎水性領域
33 触媒金属




























Claims (4)

  1. 炭素材料と陽イオン交換樹脂と触媒金属と撥水性樹脂とを含む固体高分子形燃料電池用触媒層において、前記撥水性樹脂は少なくとも前記陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路に備えられ、前記陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路と前記炭素材料の表面との接面に前記触媒金属が主に担持され、前記炭素材料と前記撥水性樹脂の合計質量に対する前記撥水性樹脂の比率が10質量%以上、60質量%以下で、前記撥水性樹脂の融点が前記陽イオン交換樹脂の分解温度よりも低いことを特徴とする固体高分子形燃料電池用触媒層。
  2. 陽イオン交換樹脂溶液に炭素材料を分散して分散物を得る第1の工程と、前記分散物から溶媒を除去して前記陽イオン交換樹脂で被覆された前記炭素材料を得る第2の工程と、前記陽イオン交換樹脂の固定イオンに触媒金属の陽イオンを吸着させる第3の工程と、前記触媒金属の陽イオンを化学的に還元して触媒金属を含む粉末を得る第4の工程と、前記触媒金属を含む粉末と造孔剤と撥水性樹脂溶液との混合溶液を得る第5の工程と、前記混合溶液をシート状にして、前記撥水性樹脂の融点よりも高く、前記陽イオン交換樹脂の分解温度よりも低い温度で乾燥して触媒層前駆体を得る第6の工程と、前記触媒層前駆体から造孔剤を除去する第7の工程を経ることを特徴とする請求項1記載の固体高分子形燃料電池用触媒層の製造方法。
  3. 撥水性樹脂溶液と炭素材料とを混合し、乾燥して、表面に撥水性樹脂を備えた前記炭素材料を得る第1の工程と、陽イオン交換樹脂溶液に前記表面に撥水性樹脂を備えた炭素材料を分散して分散物を得る第2の工程と、前記分散物から溶媒を除去して前記陽イオン交換樹脂で被覆された前記表面に撥水性樹脂を備えた炭素材料を得る第3の工程と、前記陽イオン交換樹脂の固定イオンに触媒金属の陽イオンを吸着させる第4の工程と、前記触媒金属の陽イオンを化学的に還元して触媒金属を含む粉末を得る第5の工程と、前記触媒金属を含む粉末と造孔剤との混合溶液を得る第6の工程と、前記混合溶液をシート状にして、前記撥水性樹脂の融点よりも高く、前記陽イオン交換樹脂の分解温度よりも低い温度で乾燥して触媒層前駆体を得る第7の工程と、前記触媒層前駆体から造孔剤を除去する第8の工程を経ることを特徴とする請求項1記載の固体高分子形燃料電池用触媒層の製造方法。
  4. 請求項1記載の固体高分子形燃料電池用触媒層を備えることを特徴とする固体高分子形燃料電池。









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