JP2007027064A - 固体高分子形燃料電池用触媒層およびそれを備えた固体高分子形燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】触媒層内部のガス拡散機能および水排出機能を長時間一定に保つことができる触媒層と、この触媒層を用いることにより、発電開始初期のセル電圧低下を抑制したPEFCを提供する。
【解決手段】固体高分子形燃料電池用触媒層において、陽イオン交換樹脂と触媒金属担持カーボン粒子とを含み、直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔の体積が0.05cm3/g以上であることとを特徴とする。また、固体高分子形燃料電池において、この触媒層を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】固体高分子形燃料電池用触媒層において、陽イオン交換樹脂と触媒金属担持カーボン粒子とを含み、直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔の体積が0.05cm3/g以上であることとを特徴とする。また、固体高分子形燃料電池において、この触媒層を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は固体高分子形燃料電池に用いる触媒層およびそれを備えた固体高分子形燃料電池に関するものである。
固体高分子形燃料電池(以下、「PEFC」とする)に用いられる触媒層は、陽イオン交換樹脂と触媒金属担持カーボン粒子とを含む混合物のシートである。このシートは、陽イオン交換樹脂、触媒金属担持カーボン粒子および溶媒を含む懸濁液を基材上に塗布・乾燥することによって製作される。
そのため、触媒層には、カーボン粒子の表面の凹凸や内部の空間、粒子同士の隙間または溶媒が乾燥したあとに形成される空間によって構成された多くの空孔が存在する。これらの空孔には直径が数ナノメートルから約10μmの範囲で種々の大きさのものがある。
特許文献1には、触媒担持カーボン粒子とポリマーとを含むPEFC用電極触媒層が三次元方向に網目状の微多孔質構造を有し、微多孔の内径が0.05〜5μmであり、空孔率が10〜95%であることが開示されている。
特許文献2には、白金担持カーボンとNafion溶液とを混合してペーストとし、このペーストをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート上に塗布して形成したPEFC用触媒層の気孔径分布が0.1μm以下の範囲にピークを持つ場合に、特に0.03〜0.05μmの範囲にピークを持つ場合に、触媒層の水を移動させる作用が強くなることが開示されている。
従来の触媒層の空孔に関しては、特定範囲の直径の空孔の体積を大きくすることによって、触媒層中のガス拡散性を向上できることが知られている。ガス拡散性が向上した場合、その触媒層を備えた燃料電池は、濃度過電圧が小さくなるのでセル電圧が高くなる。
特許文献3には、親水処理(電解処理)した白金担持カーボンとイオン交換樹脂溶液とを混合し、これにアルコール溶媒を加えてスラリーを作製し、このスラリーを撥水処理したカーボンペーパーに塗布し、大気中で乾燥して作製したPEFC用触媒層には、500nm(0.5μm)以下の径の気孔が形成されており、当該500nm以下の径の気孔に対応する細孔容積が、触媒層1g当たり0.5cc以上であることが開示されている。
特許文献4には、固体高分子電解質と貴金属触媒を担持した炭素粉末とからなるPEFC用触媒層が、直径0.04〜1.0μmの細孔部を有し、この細孔部の比容積は0.04cm3/g以上であり、この細孔部に固体高分子電解質を分布させた技術が開示されている。そして、触媒層の直径0.04〜1.0μmの空孔は、ガスの供給路として機能するものであって、その体積が0.04cm3/gよりも大きい触媒層は、それ以下のものと比べてガス供給能が高いことが示されている。さらに、その体積が0.06cm3/g以上のものは、水の排出能が高いことが示されていて、その空孔が、水の排出路としても機能することが示唆されている。
特許文献1および特許文献2では、PEFC用電極触媒層における微多孔の最適気孔径分布については記載されているが、特定の範囲の気孔径の空孔の体積については記載されていない。また、特許文献2では、気孔径が0.03μm未満のところにピークがあると、気孔径が小さすぎるためにガス拡散性が低くなる傾向があることが記載されている。
特許文献3には、0.5μm以下の径の気孔に対応する細孔容積が、触媒層1g当たり0.5cc以上であることが記載されているが、0.03μm以下の径の気孔の容積は不明である。
特許文献4の触媒層を備えたPEFCでは、直径0.04〜1.0μmの空孔体積を大きくしてガス拡散性の向上をはかった場合でさえ、発電時間が長くなるにしたがって濃度過電圧が大きくなり、セル電圧が低下するという課題があった。特にこの課題は、発電の初期に顕著にみられるものであった。
例えば、従来の触媒層を備えた燃料電池を一定電流で連続して発電した場合、発電開始から数十時間までの期間に、セル電圧が大きく低下する。ただし、この期間は、運転条件によって異なり、発電開始から数百時間であることもあれば、発電開始から1,000時間であることもある。電圧の低下量も、運転条件によって異なり、数十ミリボルトから約200mVの範囲内である。なお、その期間が経過したあともセル電圧が低下するが、この低下は1時間あたり数マイクロボルト程度と比較的小さいものである。
上記の課題は、触媒層の内部のガス拡散性が、発電時間とともに低下したことによって生じるものである。ガス拡散性が低下すると濃度過電圧が高くなるのでセル電圧が低下する。触媒層内部におけるガス拡散性の低下は、ガスの供給路または/および水の排出路の機能が著しく低下したことを意味するものである。
この機能低下の原因として、直径0.04〜1.0μmの空孔に陽イオン交換樹脂が浸入してガスの供給路または水の排出路の連続性が低下したことが挙げられる。陽イオン交換樹脂の浸入は、たとえば、熱によって樹脂が軟化した場合に生じる。
そこで本発明は、PEFC用触媒層内の直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔に着目することによってなされたもので、その目的は、触媒層内部のガス拡散機能および水排出機能を長時間一定に保つことができる触媒層と、この触媒層を用いることにより、発電開始初期のセル電圧低下を抑制したPEFCを提供することにある。
請求項1の発明は、固体高分子形燃料電池用触媒層において、陽イオン交換樹脂と触媒金属担持カーボン粒子とを含み、直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔の体積が0.05cm3/g以上であることとを特徴とする。
請求項2の発明は、固体高分子形燃料電池において、上記触媒層を備えることを特徴とする。
本発明のPEFC用触媒層は、直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔をもち、その空孔の体積が0.05cm3/g以上であることが特徴である。この空孔は、直径0.04〜1.0μmの空孔と比べて、毛管現象によって水を吸い上げる距離が長いため、この空孔が備えている水の排出路としての機能は、直径0.04〜1.0μmの空孔のものよりも優れている。
さらに、この空孔は、直径0.04〜1.0μmの空孔と比べて小さいので、陽イオン交換樹脂がほとんど浸入しない。そのため、この空孔が備えている水の排出路としての機能は、発電時間が長い場合でも劣化しない。
本発明の触媒層を用いたPEFCにおいては、水の排出路としての機能が優れた、触媒層の直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔の体積が大きくなるにしたがってセル電圧の低下が抑制される傾向があり、特にその空孔の体積が0.05cm3/g以上の場合に、セル電圧の低下の抑制が著しくなる。
本発明の触媒層を用いたPEFCでは、発電時間とともに大きくなるPEFCのセル電圧の低下を抑制することができる。この効果は、本発明の触媒層を備えたPEFCを一定電流で連続して発電した場合、発電開始から数十時間までの期間に、セル電圧が極端に大きく低下するのを抑制するというものである。この効果は、直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔が水の排出路としての機能をもつことと、この機能が発電時間とともに低下しないこととによるものである。
本発明のPEFC用触媒層は、陽イオン交換樹脂を備えた触媒金属担持カーボン粒子を含むことと、直径0.001μm以上0.003μm未満の空孔の体積が0.05cm3/g以上であることとを特徴とするものである。
陽イオン交換樹脂を備えた触媒金属担持カーボン粒子は、陽イオン交換樹脂と触媒金属とがカーボン粒子の表面に付着したものである。このカーボン粒子は、球形に限定されるものでなく、楕円形でもよく、そのような形状の粒子が凝集した状態でもよい。楕円形の粒子は、たとえば繊維状の炭素のように縦横比が極端に大きなものでも本発明の効果は得られる。
本発明では、触媒金属が、カーボン粒子の表面と陽イオン交換樹脂のイオンクラスターとの接面に優先的に担持されることが好ましい。このイオンクラスターは陽イオン交換樹脂の一部であってプロトン伝導性を示す部分である。そのため、このイオンクラスターとカーボン粒子の表面との接面は、電子とプロトンとの授受を同時におこなうことのできる場所であるので、この接面に担持された触媒金属は、PEFCの電極反応に効率的に関与する。したがって、全ての触媒金属のうちその接面に担持されたものの割合を高めることによって触媒金属の利用率が高くなるので、触媒金属の使用量の低減が可能となる。
また、本発明の陽イオン交換樹脂を備えた触媒金属担持カーボン粒子は、触媒金属を担持したカーボン粒子に陽イオン交換樹脂を付着させて製作したものでもよく、陽イオン交換樹脂を備えたカーボン粒子に触媒金属を担持して製作したものでもよい。また、本発明の触媒層は、触媒層の機械的強度を高めるためにPTFE粒子、ポリビニルジフルオライド(PVdF)などの高分子を含んでもよい。これらの高分子は触媒層中でバインダーとして機能する。
本発明の触媒層は、直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔の体積が0.05cm3/g以上である。この体積が0.05cm3/g以上の場合、その触媒層を備えたPEFCは、それ未満の体積の場合と比べて、連続運転したときのセル電圧の低下が大幅に抑制されるという効果が得られる。この効果は、そのサイズの空孔が、毛管現象による水の排出性に優れていることと陽イオン交換樹脂の浸入が起こりにくいこととに基づくものである。
この効果がさらに顕著であることから、直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔の体積は0.15cm3/g以上であることが好ましい。高電流密度での連続運転した場合でもその効果が得られることから、その体積は0.30cm3/g以上であることが好ましい。
また、本発明の触媒層は、直径0.03μm以上0.2m未満の空孔の体積が、0.05cm3/g以上であることが好ましい。このサイズの空孔は、カーボン二次粒子同士の隙間に形成される空間であって、水素ガスまたは酸素ガスが触媒層の細部にまで拡散するための経路である。この空孔の体積が0.05cm3/g以上のとき、水素ガスまたは酸素ガスの拡散性が大幅に向上するので、触媒金属の利用率が向上する。
この空孔の体積は、ガスの移動をよりスムーズにするためには大きい方が好ましく、高い電流密度までガスの移動を維持できることから、0.5cm3/gあることが好ましい。このサイズの空孔体積の調整は、カーボン粒子の種類、陽イオン交換樹脂の配合量、ホットプレスの温度・圧力条件や造孔剤の使用などによって可能である。
さらに、本発明の触媒層は、直径0.2μm以上10μm未満の空孔の体積が、0.1cm3/g以上であることが好ましい。このサイズの空孔は、カーボンの三次粒子同士の隙間に形成される空間または造孔剤によって形成される空間であって、上記の直径0.03μm以上0.2μm未満の空孔にまで、水素ガスまたは酸素ガスを供給する機能をもつ。直径0.2μm以上10μm未満の空孔の体積が0.1cm3/g以上のとき、水素ガスまたは酸素ガスの供給性能が、著しく向上する。
この空孔の体積は、ガスの供給性能を高くするためには大きい方が好ましく、高い電流密度までガスの移動を維持できることから、0.5cm3/g以上であることが好ましい。このサイズの空孔体積の調整は、造孔剤を用いておこなうことができる。
本発明のPEFC用触媒層において、「触媒金属が、カーボン粒子の表面と陽イオン交換樹脂のイオンクラスターとの接面に優先的に担持される」とは、陽イオン交換樹脂のイオンクラスターに接するカーボン粒子表面に担持された触媒金属量が全触媒金属担持量の50質量%以上であることを意味する。すなわち、全触媒金属担持量の50質量%以上が、電極反応に対して活性な触媒金属であるため、触媒金属の利用率が著しく高くなる。
なお、本発明においては、カーボン粒子の表面と陽イオン交換樹脂のイオンクラスターとの接面に担持された触媒金属量の全触媒金属担持量に対する割合は高いほど好ましく、特に80質量%を超えていることが好ましい。このようにして、カーボン粒子の表面と陽イオン交換樹脂のイオンクラスターとの接面に触媒金属を高率で担持させることによって、電極の高活性化をはかることができる。
本発明の触媒層では、触媒金属が、カーボン粒子の表面と陽イオン交換樹脂のイオンクラスターとの接面に優先的に担持されている。このことは、この触媒混合体を備えたPEFCの高電流密度領域における質量活性と、陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路と疎水性骨格との体積比とからわかる(M.Kohmoto et.al.,GS Yuasa Technical Report,1,48(2004))。この質量活性とは、ある電圧における電流密度を、単位面積あたりの触媒金属担持量で除したものである。
また、本発明の触媒層に用いるカーボン粒子としては、電子伝導性の高いものが好ましく、たとえば、アセチレンブラックやファーネスブラックなどのカーボンブラックおよび活性炭などがあり、なかでも、担持された触媒金属が高分散となることから、カーボンブラックが好ましい。
また、本発明の触媒層に用いる陽イオン交換樹脂としては、たとえば、パーフルオロカーボンスルフォン酸形、スチレン−ジビニルベンゼン系のスルフォン酸形陽イオン交換樹脂またはイオン交換基としてカルボキシル基を備えた陽イオン交換樹脂などがある。
また、本発明の触媒層に用いる触媒金属としては、白金、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、オスニウム、マグネシウム、アルミニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、タングステンなどがあり、とくに、電気化学的な酸素の還元反応または水素酸化反応に対して高い触媒活性の触媒金属が得られることから、白金、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、オスニウムを含むものが好ましい。
また、本発明の触媒層に含まれる陽イオン交換樹脂の量は、カーボン粒子の質量に対して20質量%以上150質量%以下であることが好ましい。陽イオン交換樹脂の量がカーボン粒子に対して150質量%よりも多い場合、前述の好ましい範囲の場合と比べて、触媒層の電子伝導性が極端に低くなるので、セル電圧が低い。一方、陽イオン交換樹脂の量が20質量%よりも少ない場合、触媒層のプロトン伝導性が極端に低くなるので、セル電圧が低い。陽イオン交換樹脂の量は、触媒層内の電子伝導性とプロトン伝導性との両方を高いレベルになることから、35質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
本発明の触媒層は、たとえば、陽イオン交換樹脂を備えた触媒金属担持カーボン粒子、直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔をもつ粒子および溶媒を含む懸濁液を基材上に塗布・乾燥する方法によって製作することができる。
この方法では、懸濁液を基材上に塗布・乾燥する工程によって、陽イオン交換樹脂を備えた触媒金属担持カーボン粒子と直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔をもつ粒子とを含むシートが基材上に得られる。このシートは、触媒層であって、単独でまたはカーボンペーパーなどの導電性多孔質体と積層されて、燃料電池用電極として使用することができる。
カーボンペーパーなどの導電性多孔質体は、いわゆるガス拡散層である。この方法で製作した触媒層は、内部に直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔をもつ粒子を備えているので、この粒子を備えない場合と比べて、直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔の体積が大きい。この粒子の配合量を調整することによって、触媒層内の直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔の体積を制御することができる。
この方法で使用する直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔をもつ粒子としては、アルミナやシリカなどの無機物の粒子、アセチレンブラックやファーネスブラックなどのカーボンブラックおよび活性炭の粒子、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などの高分子の粒子などがある。PTFEやFEPなどの高分子の粒子は、撥水性をもつので好ましい。
アセチレンブラックやファーネスブラックなどのカーボンブラックの粒子は、触媒層の電子伝導性を高める効果があるので好ましい。PTFEやFEPなどの高分子の粒子とカーボンブラックの粒子との両方を用いることもできる。
直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔をもつ粒子の形状は、球形に限定されるものでなく、楕円形でもよい。楕円形の粒子は、縦横比が極端に大きなものでも、たとえば、繊維状のもの(アルミナウィスカー、シリカウィスカー、炭素ウィスカーなど)でも、本発明の触媒層を製作することができる。
また、上記の触媒層の製造方法では、懸濁液を製作するために溶媒の配合割合は特に限定されるものではないが、シートへの成形性を良好に保つことができるので、固形分が10質量%以上1500質量%以下となるようにすることが好ましい。
そして、使用できる溶媒の具体例は、水などの無機化合物、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、オクタン、ベンゼンなどの炭化水素系の液体、ジクロロメタン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンなどのハロゲン化合物、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール、アニソールなどのエーテル、アセトンなどのケトン、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機化合物である。これらのなかでも、陽イオン交換樹脂を備えた触媒金属担持カーボン粒子の分散性が著しく良好となるので、N−メチル−2−ピロリドンがとくに好ましい。
また、懸濁液を製作する方法としては、各材料を均一に分散させることができるので、減圧雰囲気下で撹拌する方法、超音波を照射する方法、または粒子を粉砕しながら撹拌する方法を用いることができる。また、懸濁液は、触媒層の機械的強度を高めるためにPTFE粒子、ポリビニルジフルオライド(PVdF)などの高分子を含んでもよい。この高分子は電極中でバインダーとして機能する。
また、その懸濁液は造孔剤を含んでもよい。造孔剤は、直径が0.20μm以上の空孔の体積を増大するのに効果がある。この懸濁液が造孔剤を含む場合は、その懸濁液を塗布してから乾燥する工程をおこなったのちに、その造孔剤を溶出する工程をおこなうことが好ましい。
なお、造孔剤としては、溶出可能なものであることが好ましく、たとえば、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、クロム、コバルト、スズ、鉄、銅、ニッケル、マグネシウムなどの金属の粒子またはこれらの金属元素のうち少なくとも一つを含む合金や化合物の粒子、あるいはポリビニルアルコールなどの水溶性の高分子を用いることができる。さらに、造孔剤は、懸濁液に含まれる溶媒に対して難溶性であるものが好ましい。
造孔剤を溶出する工程は、たとえば、塗布したのちに乾燥した懸濁液を酸性水溶液に接触させることによって実施することができる。たとえば、造孔剤としてニッケル粒子を用いた場合は、懸濁液を塗布したのちに乾燥して製作したシートを希硫酸に接触させることによって、ニッケル粒子を溶出することができる。
また、懸濁液を塗布する基材としては、高分子または金属のフィルム、多孔質のカーボン板または固体高分子膜などが用いられる。基材が高分子フィルムの場合、陽イオン交換樹脂を備えた触媒金属担持カーボン粒子と直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔をもつ粒子との混合物のシートが形成された高分子フィルムが得られる。
このシートを高分子フィルムから固体高分子膜に転写することによって触媒層と固体高分子膜との接合体を製造することができ、つづいて、そのシートの触媒層側に多孔質のカーボン板を配置することによって膜/電極接合体が得られる。
基材が多孔質のカーボン板の場合、本発明のPEFC用触媒層の製造方法によればシートが形成された多孔質カーボン板が得られる。このシートを多孔質カーボン板とともに固体高分子膜に接合することにより、膜/電極接合体を製造することができる。この多孔質のカーボン板はいわゆるガス拡散層として機能する。
基材が固体高分子膜の場合、本発明のPEFC用触媒層の製造方法によれば、シートが形成された固体高分子膜が得られ、そのシートの外側に多孔質のカーボン板を配置することによって膜/電極接合体が得られる。触媒層内部の直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔は、転写や接合のための処理、たとえば、ホットプレスをおこなっても、体積がほとんど変化しない。
また、懸濁液を塗布する方法としては、スプレーを用いて吹きつけることによって塗布する方法、スクリーン印刷法で塗布する方法およびドクターブレードによって塗布する方法などがある。
本発明の好適な実施例を用いて説明する。
[実施例1〜3および比較例1、2]
[実施例1]
カーボン粒子(Vulcan XC−72、Cabot社製)50gと陽イオン交換樹脂溶液(5質量%Nafion溶液、Aldrich社製)670gとの混合物をイソプロパノールで希釈した後、噴霧乾燥機(MDL−50、藤崎電機社製)を用いて噴霧乾燥することによって陽イオン交換樹脂を備えたカーボン粒子を調製し、そのカーボン粒子に白金を触媒金属として担持することによって陽イオン交換樹脂を備えた白金担持カーボン粒子を製作した。
[実施例1]
カーボン粒子(Vulcan XC−72、Cabot社製)50gと陽イオン交換樹脂溶液(5質量%Nafion溶液、Aldrich社製)670gとの混合物をイソプロパノールで希釈した後、噴霧乾燥機(MDL−50、藤崎電機社製)を用いて噴霧乾燥することによって陽イオン交換樹脂を備えたカーボン粒子を調製し、そのカーボン粒子に白金を触媒金属として担持することによって陽イオン交換樹脂を備えた白金担持カーボン粒子を製作した。
白金の担持方法には、そのカーボン粒子をテトラアンミン白金(2価)イオン([Pt(NH3)4]2+)を含む水溶液に浸漬してから乾燥したのちに、180℃、1.5atmの水素雰囲気下で4時間放置する方法を用いた。この方法によれば、白金が、優先的にカーボン粒子の表面と陽イオン交換樹脂のイオンクラスターとの接面に担持される。また、以上の方法で製作した粒子は、白金の含有量がカーボン粒子の質量の3.56質量%(ICP発光分析法での定量による)であった。
つぎに、白金担持カーボン粒子とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)との混合物を製作し、さらに、この混合物に、直径0.001μm以上0.03μmμm未満の空孔をもつ粒子としてアセチレンブラック(Denka black、電気化学工業社製)を添加したのちに混合することによって懸濁液を製作した。Denka blackの添加量は、Vulcan XC−72の55質量%とした。また、NMPの量は、Vulcan XC−72とDenka blackとの合計の質量の1200質量%とした。さらに、この懸濁液に、造孔剤として炭酸カルシウム粒子を添加した。
つづいて、その懸濁液を高分子フィルム(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合フィルム、ダイキン工業社製)上に塗布したのちに100℃で30分間乾燥することによって、陽イオン交換樹脂を備えた白金担持カーボン粒子と直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔をもつ粒子と炭酸カルシウム粒子とで構成されたシートを高分子フィルム上に製作した。シートに含まれる白金の量は、塗布厚さを調整することによって0.2mg/cm2に調製した。
つづいて、このシートを一辺2.2cmの正方形に裁断したものを2枚製作して、これらを固体高分子膜(Nafion115、DuPont社製)の両面に転写することによって、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。転写は、シートを固体高分子膜とを100kg/cm2、130℃の条件でホットプレスしたのちに高分子フィルムを剥がすことによっておこなった。接合のあと、触媒層中の炭酸カルシウム粒子を硝酸水溶液で溶出した。
接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。触媒層の細孔径の体積は、水銀圧入法を用いたポロシメーター(AutoPoreIII 9400、島津製作所製)を用いて測定した。直径が0.05μmよりも小さい範囲の細孔径の体積は、窒素ガス吸着法を用いたポロシメーター(Gemini2375、島津製作所製)を用いて測定した。
PEFCの構成は、カソード用セパレータ/カーボンペーパー/触媒層と固体高分子膜との接合体/カーボンペーパー/アノード用セパレータとした。
[実施例2]
懸濁液に添加するDenka blackの量をVulcan XC−72の30質量%に変更した以外は、実施例1と同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
懸濁液に添加するDenka blackの量をVulcan XC−72の30質量%に変更した以外は、実施例1と同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
[実施例3]
懸濁液に添加するDenka blackの量をVulcan XC−72の12質量%に変更した以外は、実施例1同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
懸濁液に添加するDenka blackの量をVulcan XC−72の12質量%に変更した以外は、実施例1同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
[比較例1]
懸濁液にDenka blackを添加しなかったこと以外は、実施例1同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
懸濁液にDenka blackを添加しなかったこと以外は、実施例1同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
[比較例2]
Vulcan XC−72の代わりにDenka blackを用いて陽イオン交換樹脂を備えた白金担持カーボン粒子を製作したこと、および、Denka blackを懸濁液に添加しなかったこと以外は実施例1と同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
Vulcan XC−72の代わりにDenka blackを用いて陽イオン交換樹脂を備えた白金担持カーボン粒子を製作したこと、および、Denka blackを懸濁液に添加しなかったこと以外は実施例1と同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
実施例1〜3および比較例1、2で作製した触媒層の直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔の体積を表1に示す。表1には、直径0.03μm以上0.2μm未満の空孔と直径0.2μm以上10μm未満の空孔との体積を併記した。
実施例1〜3および比較例1、2で製作したPEFCを、セル温度80℃、燃料ガスが水素、酸化剤ガスが空気、電流密度100mA/cm2で50時間連続運転したときのセル電圧を測定して、運転初期のセル電圧との差を計算した。計算式は、セル電圧の差=運転初期のセル電圧−50時間後のセル電圧、とした。
触媒層の直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔の体積とセル電圧の差との関係を図1に示す。図1から、電流密度が100mA/cm2の場合、初期と50時間後のセル電圧の差は、空孔の体積が増加するにしたがって小さくなる傾向があり、体積が0.05cm3/g以上の範囲ではとくに低いレベルであることがわかる。このことは、本発明の触媒層を備えた燃料電池は、連続運転した場合に見られるセル電圧の低下が大幅に抑制されていることを示すものである。
参考のため、長時間連続で運転した場合の結果と長時間高電流密度で運転した場合の結果を図2に示す。図2において、記号○は長時間連続運転の結果、記号△は長時間高電流密度運転の結果を示す。運転条件は、長時間連続運転の場合は100mA/cm2で500時間とし、長時間高電流密度運転の場合は300mA/cm2で500時間とした。
図2から、電流密度が100mA/cm2の場合、初期と500時間後のセル電圧の差は、触媒層の直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔の体積が0.15cm3/g以上の範囲で、とくに低いレベルであることがわかる。このことは、空孔体積が0.15cm3/g以上の場合、本発明の効果が高いことを示すものである。
図2から、電流密度が300mA/cm2の場合、初期と500時間後のセル電圧の差は、触媒層の直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔の体積が0.30cm3/g以上の範囲で、とくに低いレベルであることがわかる。このことは、空孔体積が0.30cm3/g以上の場合、高電流密度の条件下でも本発明の効果があることを示すものである。
なお、比較例1および比較例2のPEFCは、より低い電流密度20mA/cm2で連続運転した場合でも、初期と50時間後のセル電圧の差はそれぞれ15mV、17mVと、非常に大きな値であった。これは、直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔体積が0.05cm3/g未満の場合、運転条件をどのように設定しても、本発明の効果が得られないことを示唆するものである。
[実施例4〜9]
[実施例4]
市販の白金担持カーボンを用いた場合の実施例をつぎに説明する。白金含有量が67質量%の白金担持カーボン粒子(TEC10E70TPM、田中貴金属社製)4gと陽イオン交換樹脂溶液(10質量%Aciplex溶液、旭化成社製)5.3gとを混合し、さらに、直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔をもつ粒子として、アセチレンブラック(Denka black、電気化学工業社製)とFEP粒子とを添加したのちに混合するとことによって懸濁液を製作した。Denka blackとFEP粒子との添加量は、白金担持カーボン粒子のカーボン粒子のそれぞれ60質量%と20質量%とした。
[実施例4]
市販の白金担持カーボンを用いた場合の実施例をつぎに説明する。白金含有量が67質量%の白金担持カーボン粒子(TEC10E70TPM、田中貴金属社製)4gと陽イオン交換樹脂溶液(10質量%Aciplex溶液、旭化成社製)5.3gとを混合し、さらに、直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔をもつ粒子として、アセチレンブラック(Denka black、電気化学工業社製)とFEP粒子とを添加したのちに混合するとことによって懸濁液を製作した。Denka blackとFEP粒子との添加量は、白金担持カーボン粒子のカーボン粒子のそれぞれ60質量%と20質量%とした。
つぎに、この懸濁液に、造孔剤として炭酸カルシウム粒子を白金担持カーボン粒子のカーボン粒子の110質量%添加した。さらに、懸濁液の流動性を高めるために、イソプロパノールを添加して、固形分を5質量%以上20質量%以下の範囲内になるように調整した。
つづいて、その懸濁液をカーボンペーパー上に塗布したのちに100℃で30分間乾燥することによって、陽イオン交換樹脂を備えた白金担持カーボン粒子と直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔をもつ粒子とで構成されたシートをカーボンペーパー上に製作した。カーボンペーパーはガス拡散層として機能する。シートに含まれる白金の量は、塗布厚さを調整することによって0.7mg/cm2に調製した。
つづいて、このシートを一辺2.2cmの正方形に裁断したものを2枚製作し、これらを固体高分子膜(Nafion115、DuPont社製)の両面に100kg/cm2、160℃の条件でホットプレスすることによって、ガス拡散層を備えた触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。触媒層中の炭酸カルシウム粒子は、接合の前に、硝酸水溶液で溶出した。
接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。PEFCの構成は、カソード用セパレータ/カーボンペーパー/触媒層と固体高分子膜との接合体/カーボンペーパー/アノード用セパレータとした。
[実施例5]
接合体製作時のホットプレスの条件を80kg/cm2、130℃に変更した以外は、実施例4と同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
接合体製作時のホットプレスの条件を80kg/cm2、130℃に変更した以外は、実施例4と同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
[実施例6]
接合体製作時のホットプレスの条件を40kg/cm2、130℃に変更した以外は、実施例4と同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
接合体製作時のホットプレスの条件を40kg/cm2、130℃に変更した以外は、実施例4と同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
[実施例7]
接合体製作時のホットプレスの条件を40kg/cm2、130℃に変更して、懸濁液に添加する炭酸カルシウムとの量を140質量%に変更した以外は、実施例4と同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
接合体製作時のホットプレスの条件を40kg/cm2、130℃に変更して、懸濁液に添加する炭酸カルシウムとの量を140質量%に変更した以外は、実施例4と同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
[実施例8]
接合体製作時のホットプレスの条件を40kg/cm2、130℃に変更して、濁液に添加する炭酸カルシウムとの量を180質量%に変更した以外は、実施例4と同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
接合体製作時のホットプレスの条件を40kg/cm2、130℃に変更して、濁液に添加する炭酸カルシウムとの量を180質量%に変更した以外は、実施例4と同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
[実施例9]
接合体製作時のホットプレスの条件を40kg/cm2、130℃に変更して、濁液に添加する炭酸カルシウムとの量を200質量%に変更した以外は、実施例4と同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
接合体製作時のホットプレスの条件を40kg/cm2、130℃に変更して、濁液に添加する炭酸カルシウムとの量を200質量%に変更した以外は、実施例4と同様の手順で、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。接合体は、2つ製作して、ひとつは、細孔径分布の測定に、もうひとつは、PEFCの製作に用いた。
実施例4〜9で作製した触媒層の直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔の体積を表2に示す。この表には、直径0.003μm以上0.2μm未満の空孔と直径0.2μm以上10μm未満の空孔との体積を併記した。
実施例4〜6で製作したPEFCを、セル温度80℃、燃料ガスが10ppmCOと20%CO2とを含む水素ガス、酸化剤ガスが空気、電流密度300mA/cm2の条件で1000時間連続運転したあとのセル電圧を測定して、運転初期のセル電圧との差を計算した。また、実施例6〜9で製作したPEFCについては、電流密度を500mA/cm2とした以外は同様の測定をして、運転初期のセル電圧との差を計算した。計算式は、先に述べた方法と同様で、セル電圧の差=運転初期のセル電圧−1000時間後のセル電圧、とした。
前者の実験から、直径0.03μm以上0.2μm未満の空孔の体積とセル電圧の差との関係を調べた。その結果を図3に示す。後者の実験から、直径0.2μm以上10μm未満の空孔の体積とセル電圧の差との関係を調べた。その結果を図4に示す。
図3から、セル電圧の差は、直径0.03μm以上0.2μm未満の空孔の体積が増加するにしたがって小さくなる傾向があり、体積が0.05cm3/g以上の範囲ではとくに低いレベルであることがわかる。
このことは、本発明の触媒層は、直径0.03μm以上0.2μm未満の空孔の体積が0.05cm3/g以上のときに、内部のガス拡散性が高いレベルになっていることを意味している。さらに、図3から、この空孔の体積が0.5cm3/g以上のときに、PEFCの寿命特性は、さらに向上することが示唆される。
また、図4から、セル電圧の差は、直径0.2μm以上10μm未満の空孔の体積が増加するにしたがって小さくなる傾向があり、体積が0.5cm3/g以上の範囲でとくに低いレベルになっていることがわかる。このことは、本発明の触媒層は500mA/cm2という高電流密度の場合でも、直径0.2μm以上10μm未満の空孔の体積を0.5cm3/g以上とすることによって、とくに高いガス供給性能になることを示している。
なお、この実験を300mA/cm2の電流密度でおこなった場合、直径0.2μm以上10μm未満の空孔の体積が0.1cm3/g以上の範囲のときに、セル電圧の差がとくに低いレベルになった。
[実施例10]
本発明の触媒層は、つぎのように、カーボン粒子をFEPを用いてあらかじめ凝集する方法でも製造することができる。
本発明の触媒層は、つぎのように、カーボン粒子をFEPを用いてあらかじめ凝集する方法でも製造することができる。
カーボン粒子(Vulcan XC−72、Cabot社製)50gと54質量%のFEPを含む水溶液(120−J、三井デュポンフロロケミカル社製)93gとの混合物を噴霧乾燥機(MDL−50、藤崎電機社製)を用いて噴霧乾燥して、カーボン粒子とFEP粒子との混合物の粒子を製作した。この粒子は、カーボン粒子がFEP粒子を介して凝集したものである。
つぎに、この粒子と陽イオン交換樹脂溶液(5質量%Nafion溶液、Aldrich社製)との混合物をイソプロパノールで希釈したのちに噴霧乾燥することによって陽イオン交換樹脂とFEP粒子とを備えたカーボン粒子を製作して、このカーボン粒子に白金を触媒金属として担持することによって陽イオン交換樹脂とFEP粒子とを備えた白金担持カーボン粒子を製作した。白金の担持方法は、実施例1の場合と同じ方法を用いた。この実施例では、陽イオン交換樹脂とFEP粒子とを備えた白金担持カーボン粒子は、白金の含有量がカーボン粒子の質量の2.87質量%(ICP発光分析法での定量による)であった。
つぎに、この陽イオン交換樹脂とFEP粒子とを備えた白金担持カーボン粒子とNMPとを混合することによって懸濁液を製作して、この懸濁液を高分子フィルム上に塗布したのちに100℃で30分間乾燥することによって、陽イオン交換樹脂とFEP粒子とを備えた白金担持カーボン粒子で構成されたシートを高分子フィルム上に製作した。
つづいて、このシートを一辺2.2cmの正方形に裁断したものを2枚製作し、これらを固体高分子膜の両面に転写することによって、触媒層と固体高分子膜との接合体を製作した。この触媒層の媒層の直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔の体積は、0.20cm3/gであった。
この方法は、カーボン粒子とFEP粒子と凝集させたのちに陽イオン交換樹脂を付着させることが特徴である。カーボン粒子とFEP粒子との凝集体の深部には、陽イオン交換樹脂が浸入しない。そのため、その深部に存在する直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔が、樹脂によって閉塞されない。
このような効果はFEP粒子の代わりにPTFEやカルボキシメチルセルロース(CMC)などのバインダー機能のある部材を用いることによっても得ることができる。さらに、このような効果は、カーボン粒子同士を高温で処理して焼結させることによっても得ることができる。
また、この方法では、直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔は、FEP粒子の含有量、大きさ、凝集速度などを制御することによって0.05cm3/g以上に調整することができる。また、陽イオン交換樹脂とFEP粒子とを備えたカーボン粒子は、カーボン粒子とFEP粒子と陽イオン交換樹脂溶液との混合物を噴霧乾燥することによっても製作できる。
Claims (2)
- 陽イオン交換樹脂と触媒金属担持カーボン粒子とを含み、直径0.001μm以上0.03μm未満の空孔の体積が0.05cm3/g以上であることとを特徴とする固体高分子形燃料電池用触媒層。
- 請求項1記載の触媒層を備えることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
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-
2005
- 2005-07-21 JP JP2005211824A patent/JP2007027064A/ja active Pending
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