JP2006315113A - ガラスセラミックス表面仕上げ用ビトリファイド砥石 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酸化セリウムを含む軟質砥粒、または酸化セリウム40〜85体積%および硫酸バリウム15〜60体積%を混合した砥粒がビトリファイドボンドで固定されたガラスセラミックス表面仕上げ用砥石とし、ビトリファイドボンドが、気孔を有する結晶性ガラス質ボンドまたは結晶性ガラス質ボンド粉末40〜75体積%および非結晶性ガラス質ボンド粉末25〜60体積%の複合ガラス質ボンドであり、砥粒率35〜45体積%および結合剤率5〜10体積%のガラスセラミックス表面仕上げ用ビトリファイド砥石とする。
【選択図】なし
Description
1)ガラス質ボンドによる影響
被削材ガラスと同質系で、軟質砥粒に比較して硬質が予想されるガラス質ボンドを使用した場合にガラス表面仕上げを可能にするための課題は、次のようである。
ガラス質ボンドの固有強度による仕上げ表面への影響がないように、充分に多孔質化した多孔性砥石を確実に得るための知見はなかった。この場合の多孔質とは、固有気孔または軟質砥粒の1次粒子径と同等以下の小さい気孔材によるものをいい、多孔性とは砥粒子径より大きい気孔材による人工気孔の形成によるものをいう。
結合剤が、直接にガラス研磨仕上げに関与すると、好ましくない結果があるという予測から、少ない結合剤率でもって砥石硬度および砥石の機械的強度が得られるボンドの種類を選択採用しなければならない。
有気孔ビトリファイドボンド砥石と被削材ガラスセラミックス面間に、砥石から脱落遊離した軟質砥粒を介在させることにより、クリーンな砥石作用面の維持と仕上げ効果を改善する必要がある。
砥粒保持力(ボンドグリップ)が適当に弱くて、ボンド帯(ボンドブリッジ)が硬剛性であるためボンドの種類を選択採用する必要がある。
砥石面から脱落遊離したクラスタ状軟質砥粒は、砥石および加工面間で転動することによって、マイクロベアリング効果(固体潤滑剤的作用)によって目づまり・目つぶれを抑えることが好ましい。
2種類の軟質砥粒で、化学反応性に富む軟質砥粒の仕上げ性能を主体とし、他の砥粒の加熱による焼結性、拡散反応性を利用した砥石硬度および強度の獲得により、目づまり要因は軽減され、無欠陥な理想的表面仕上げと可使範囲の広い砥石性能を可能とする。
1)砥石寿命
面性状に対して好ましい特性を有するボンド種類の砥石磨耗に関して、ボンドグリップ(砥粒保持力)をより強化する目的で、他のボンド種類を適量配合し複合ボンドとすることによって、高寿命砥石を実現する。
面性状を満足し高精度、高能率、高経済性を目的とした砥石性能をより確実にするために、砥石硬度、砥石組織および砥石の機械的強度などの諸特性値を限定し、選択的に採用することは容易でない。
通常、ガラスはモース硬度で6(燐灰石5、水晶7の中間)といわれるが、被削材であるガラスと同質系のガラス質ボンドを使用したビトリファイドボンド固定砥石では、当然仕上げ傷との関係が推測される。
気孔率は、RH硬度に対して硬くなると減少し、軟位になると増加する。気孔率の減少は、砥石と加工物が面接触した状態で、研磨粉の排出が容易でなくスクラッチ傷の発生原因となる。
1)ガラスの研磨
この発明に用いる酸化セリウム(CeO2、モース硬度5)は、ガラス研磨に標準的に選択されるものであり、ガラスに対して化学反応性が高いものである。酸化セリウムによる研磨メカニズムは、この化学的(ケミカル)効果と、粒子硬さによる機械力学的(メカニカル)効果の複合あるいは相乗効果によると予想される。
この発明に用いる酸化セリウムは、不純物として多くの希土類金属と混在していて化学的、熱的にも不安定である。酸化セリウムは、加熱によって700〜800℃付近から色相、焼結性、減量などの変化がみられるようになる。従ってビトリファイドボンドによる酸化セリウム砥粒の固定砥石では、砥石焼成温度は700〜900℃とし、より好ましくは750〜850℃である。
硫酸バリウムは、加熱によって600〜700℃以上で焼結性、減量などがみられる。安定した焼結性は700〜900℃であり、750〜850℃がより好ましい。
この発明で使用する硫酸バリウム粒子は、1次粒子径で1.2μm、純度98%、密度4.4g/cm3である。
結晶性ガラス質ボンドは、焼成により軟化流動したガラス中に、結晶が成長し固化したものである。結晶性ガラス質ボンドの組成系は、ZnO・B2O3・SiO2である。
一方、非結晶性ガラス質ボンドは、焼成による軟化流動のみである。非結晶性ガラス質ボンドは、SiO2・B2O3・Al2O3・RO・R2Oからなるホウケイ酸系である。いずれも経済的粒子サイズまで微細化した、粉末ガラスで使用する。
砥粒およびボンドの体積は、それぞれの密度値から換算秤量し、複合系の砥粒およびボンドは、体積比(体積%)で調合し混合する。
ボンド、気孔材および一時的結合剤その他有機質助剤は、単位砥粒量に対する重量比で調合する。これら混合系は、スラリー状態で均一分散系とした後、鋳込み成形により脱水乾燥する。得られた生砥石は、成形後焼成する。砥石焼成温度は、いずれも700〜900℃で焼成し、好ましくは800℃で焼成する。
1)砥石特性値
a)RH硬度
この発明におけるRH硬度は、JISR6240、ロックウェル式試験方法Hスケールに準じ、圧子に3.175mm鋼球を用い、軽試験過重196N、専用ダイヤルの指示数値での測定値を換算によりRH硬度とする。
JISR6240−1972に準じて、水中浸漬法により気孔率%を測定する。また砥石密度(g/cm3)から、砥粒率%を求める。この結果、結合剤率%も決まってくる。
曲げ強度は、JISR1601に準じ、3点曲げ試験により測定する。圧縮強度は、JISR1608に準じ、寸法を一定とした角柱状試料を上下方向に圧縮し、破壊時の荷重を加重方向に垂直な断面積で除した値とする。弾性係数は、JISR1602に準じ、曲げ強度試験での荷重によって生じた変形量の測定により求める。
a)加工条件
加工様式は、砥石円周が加工物の中心に位置する、横軸平面超仕上げによる。前加工は、SD4000メッシュ(砥粒径3.0μm)、RH硬度50、コンセントレーション120、ビトリファイド砥石により、面粗度0.025〜0.030μmRa(中心線平均粗さ)とする。
加工時間は仕上げ面粗さで、定常状態が仮想される5minとする。主な加工条件を、下記の表1に示した。
仕上げ量(μm)および砥石損耗量(μm)は、加工前後における試料の重量減から求める。各測定値は、試料数3個の平均値とする。
(1)結晶性ガラス質ボンド
この発明では、各種ガラスセラミックス部品の研磨仕上げで使用される酸化セリウムなどの軟質砥粒を、焼成時高温での結晶化を積極的に利用し、少ない結合剤量で高硬度、高強度が得られる結晶性ガラス質ボンドで結合した砥粒固定化によるビトリファイド多孔質(多孔性)砥石である。
他方、高温時の結晶化でボンドは高粘性で大きな表面張力となり、砥粒表面への融着力は低下し、砥粒保持力はルーズとなる。この結果、広い可使範囲で適正な砥石硬度あるいは機械的強度の選択によって、砥石目づまり・目つぶれは抑制され、スクラッチ傷の無い数ナノメータ(Ra)以下の仕上げ面が可能となる。
焼成温度でのボンド流動性に優れ、砥粒との結合機能が大きく、冷却過程でガラス化する非結晶性ガラス質ボンドを適量配合した複合ボンドとすることによって、砥石摩耗量は減少改善(約10%)され、スクラッチ傷発生のない長寿命砥石とすることができる。
酸化セリウムに硫酸バリウムを適量混合し複合砥粒とすることによって、結合剤(量)率の増加なしでRH硬度は高められ、仕上げ傷フリーの特徴ある軟質砥粒固定化ビトリファイド砥石が可能となる。
酸化セリウムなどの軟質砥粒を使用した、ホウケイ酸ガラスの横軸平面研磨仕上げでRH硬度、砥石組織および砥石機械的強度などでの特性値を限定選択することによって、面粗度に優れ、スクラッチ傷あるいはピット痕など仕上げ傷の無い、仕上げ性能が大きく可使範囲の広い砥粒固定化ビトリファイドボンド砥石が可能となる。
この発明は電子、光学、光通信あるいは光情報など、各種ガラスセラミックスパーツの酸化セリウム等の軟質遊離砥粒によるラッピング、ポリッシング方式による現状で、有機質合成樹脂ボンドを使用した軟質砥粒固定化砥石の実用例などに対し無機質ビトリファイドボンドによる軟質砥粒固定化砥石の実用化を可能とした画期的な発明である。
1)砥石特性
表2に示した実施例1〜7に対する比較例1〜8を表3に示した。
実施例1〜7および比較例1〜4は、酸化セリウム砥粒を結晶性ガラス質ボンドで結合し固定砥石とした。RH硬度が50未満の軟らかい砥石に対しては、単位砥粒量1.0に対し結合剤量0.1の割合で同率配合とし、気孔材によって硬度を変化調整する。すなわち軟位砥石に対しては、気孔材量を増量した。RH硬度50以上の実施例6、7では、結合剤量0.12および比較例3、4に対しては0.15、0.2のそれぞれ増量割合とした。
実施例1〜7は、RH硬度−60〜60の範囲で仕上げレート(μm/min)1.45以上、仕上げ比2〜3、砥石損耗比0.35〜0.5にあり、スクラッチ傷はなかった。
1)砥石特性
表4に示した実施例8〜10および比較例9は、単位砥粒量1.0に対し、結合剤量0.12の割合で同率配合とした。表4では、体積比で非結晶性ガラス質ボンドの割合を25〜80%の範囲で4種類に変化させた。非結晶性ガラス質ボンドの増加、結晶性ガラス質ボンドの減少に伴って、RH硬度は軟位となり、砥石機械的強度も同様に低下した。
非結晶性ガラス質ボンドの増加と共に、砥石損耗比は大きくなり、従って仕上げ比は減少した。非結晶性ガラス質ボンドが体積比で80%(比較例9)では、砥石損耗比は0.5を越えて大きく、仕上げ比2未満、仕上げレート1.45(μm/min)未満となり、仕上げ面も粗く平坦性も悪い。また非結晶性ガラス質ボンド特有の目づまりもみられ、スクラッチ傷が認められるようになった。
1)砥石特性
表5は、酸化セリウムと硫酸バリウムの複合系砥粒を結晶性ガラス質ボンドで結合した。
実施例および比較例は、いずれも単位砥粒量1.0に対する結合剤量0.1の同率配合である。砥石焼成温度は、他の実施例および比較例と同じく800℃とした。
硫酸バリウムの混合によってRH硬度は上昇するものの、酸化セリウムの減少によって砥石損耗比は大きくなり、仕上げレートは減少した。特に砥粒の混合体積比%で、酸化セリウムが40%未満、すなわち砥石組織での酸化セリウム砥粒率が約15%以下となることによって、仕上げレート(μm/min)は約1.0以下と急減し、同時に面粗度も悪化した。特徴的には、硫酸バリウムの混合によって、RH硬度の上昇、仕上げレート(μm/min)の低下にもかかわらず、スクラッチ傷あるいはピット痕の発生はみられなかった。ただし砥石損耗比の増加によって、平坦性は悪化した。
Claims (7)
- 酸化セリウムを含む軟質砥粒、または酸化セリウムと共に硫酸バリウムを併用して含む軟質砥粒がビトリファイドボンドで固定されたガラスセラミックス表面仕上げ用砥石において、
前記ビトリファイドボンドが、気孔を有する結晶性ガラス質ボンドまたはこの結晶性ガラス質ボンドと共に非結晶性ガラス質ボンドを併用した複合ガラス質ボンドであることを特徴とするガラスセラミックス表面仕上げ用ビトリファイド砥石。 - 砥粒が、酸化セリウム40〜85体積%および硫酸バリウム15〜60体積%を混合した砥粒である請求項1に記載のガラスセラミックス表面仕上げ用ビトリファイド砥石。
- 複合ガラス質ボンドが、結晶性ガラス質ボンド粉末40〜75体積%および非結晶性ガラス質ボンド粉末25〜60体積%の複合ガラス質ボンドである請求項1または2のいずれかに記載のガラスセラミックス表面仕上げ用ビトリファイド砥石。
- ビトリファイド砥石が、気孔率45〜60体積%のビトリファイド砥石である請求項1〜3のいずれかに記載のガラスセラミックス表面仕上げ用ビトリファイド砥石。
- ビトリファイド砥石が、砥粒率35〜45体積%および結合剤率5〜10体積%のビトリファイド砥石である請求項1〜4のいずれかに記載のガラスセラミックス表面仕上げ用ビトリファイド砥石。
- ビトリファイド砥石が、ロックウェル試験法によるRH硬度−60〜60、圧縮強度15〜100MPa、曲げ強度5〜35MPaおよび弾性係数2〜12GPaのビトリファイド砥石である請求項1〜5のいずれかに記載のガラスセラミックス表面仕上げ用ビトリファイド砥石。
- 酸化セリウムを含む軟質砥粒、または酸化セリウムと共に硫酸バリウムを併用して含む軟質砥粒と、結晶性ガラス質ボンドの単独または結晶性ガラス質ボンドと非結晶性ガラス質ボンドを併用した複合ガラス質ボンド砥粒と、気孔材を含む主混合物をスラリー状態で均質分散させ、次いで鋳込み成形し、脱水乾燥した後、生成形し、その後700〜900℃で焼成したことを特徴とするガラスセラミックス表面仕上げ用ビトリファイド砥石の製造方法。
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