本発明にかかる電磁波解析装置は、アンテナを介して電磁波の送受信を行う電子機器の回路基板から発生する不要輻射ノイズが、前記アンテナを介して送受信される電磁波に及ぼす影響を調べる電磁波解析装置であって、前記アンテナを介して送受信される電磁波の磁界成分または電界成分であるアンテナの電磁界の分布を表すアンテナ電磁界分布データを入力するアンテナ電磁界分布入力部と、前記電子機器が動作することによって前記電子機器の回路基板から放射される不要輻射ノイズによる基板近傍電磁界の電界成分または磁界成分またはその両方の分布を表す基板近傍電磁界分布データを入力する基板近傍電磁界分布入力部と、前記アンテナ電磁界分布データおよび前記基板近傍電磁界分布データに基づいて、前記アンテナの電磁界と前記基板近傍電磁界との相関性を表す相関値の分布を生成する相関値生成部とを備える。
本発明にかかる電磁波解析装置によれば、アンテナ電磁界分布入力部は、電子機器の電磁波送受信時におけるアンテナ電磁界分布データを入力し、基板近傍電磁界分布入力部は、不要輻射ノイズ分布である基板近傍電磁界分布データを入力する。相関値生成部が、これらの2つの分布データに基づいて相関値の分布を生成する。相関値分布は、アンテナ電磁界分布と基板近傍電磁界分布との相関性を表す相関値の分布なので、不要輻射ノイズが、アンテナの電磁界に与える影響、すなわち不要輻射ノイズが電子機器の送受信する電磁波に与える影響を表す値の分布である。したがって、相関値分布より、不要輻射ノイズが電子機器の電磁波送受信機能へ与える影響が得られることになる。
また、相関値分布は、アンテナ電磁界分布入力部、基板近傍電磁界分布入力部および相関値生成部を備える構成という簡単な構成の装置により得られる。そのため、電子機器の不要輻射ノイズが電子機器の送受信機能へ与える影響についての情報が容易に得られることとなる。
本発明にかかる電磁波解析装置は、前記相関値分布内の各々の相関値と、予め決められた閾値とを比較することにより、前記電子機器における電磁波の送受信障害の有無を判断する比較部をさらに備えることが好ましい。
前記比較部が、相関値分布内の各々の相関値と、判定閾値とを比較することで、相関値分布内における各々の位置での不要輻射ノイズによる電磁波送受信障害の発生有無の判断を行うことができる。そのため、相関値分布内での電磁波送受信障害発生箇所が特定される。その結果、電子機器における不要輻射ノイズによる問題の発生の有無および発生箇所についての情報が得られる。
本発明にかかる電磁波解析装置において、前記相関値は、前記アンテナの電磁界の値と前記基板近傍電磁界の値との積を含むことが好ましい。
前記アンテナの電磁界の値と前記基板近傍電磁界の値との積によって相関値を求めることで、簡単な計算処理で、アンテナの電磁界と基板近傍電磁界との相関性を示す相関値を求めることができる。
本発明にかかる電磁波解析装置において、前記相関値生成部は、前記相関値の最大値または最小値またはその両方を評価値としてさらに生成することが好ましい。
前記前記相関値生成部が前記評価値を生成するので、電子機器の回路基板から発生する不要輻射ノイズが、前記アンテナを介して送受信される電磁波に及ぼす影響が定量的に表された値が得られる。
本発明にかかる電磁波解析装置において、前記アンテナ電磁界分布データおよび前記基板近傍電磁界分布データは、各座標におけるベクトルで表されるデータであって、前記相関値生成部は、互いに対応する座標にある前記アンテナ電磁界分布データのベクトルの少なくとも1つの成分と、前記基板近傍電磁界分布データのベクトルの前記成分との積を用いて相関値を算出することによって、前記相関値の分布を生成することが好ましい。
前記相関値生成部は、少なくとも1方向についての相関値を生成することができる。すなわち、アンテナの電磁界の方向性と、基板近傍電磁界との方向性とを考慮した相関値が得られる。
本発明にかかる電磁波解析装置は、前記アンテナを介して送受信される電磁波の磁界成分または電界成分であるアンテナの電磁界であるアンテナ電流または前記電磁波の電界成分であるアンテナ電圧の分布を、前記電子機器周辺の電磁界を測定することにより求め、前記アンテナ電磁界分布入力部へアンテナ電磁界分布データとして渡すアンテナ電磁界分布測定部と、前記電子機器が動作することによって前記電子機器の回路基板から放射される不要輻射ノイズによる基板近傍電磁界の電界成分または磁界成分またはその両方の前記電子機器周辺における分布を、電子機器周辺の電磁界を測定することにより求め、前記基板近傍電磁界分布入力部へ基板近傍電磁界分布データとして渡す基板近傍電磁界分布測定部とをさらに備えることが好ましい。
アンテナ電磁界分布測定部により、アンテナ電磁界分布データが得られるので、前記アンテナ電磁界分布入力部は、入力データを得ることができる。基板近傍電磁界分布測定部により、基板近傍電磁界分布データが得られるので、基板近傍電磁界分布入力部は入力データを得ることができる。
本発明にかかる電磁波解析装置は、前記アンテナを介して送受信される電磁波の磁界成分または電界成分であるアンテナの電磁界の分布を、前記電子機器周辺の電磁界を解析するシミュレーションにより求め、前記アンテナ電磁界分布入力部へアンテナ電磁界分布データとして渡すアンテナ電磁界分布解析部と、前記電子機器が動作することによって前記電子機器の回路基板から放射される不要輻射ノイズによる基板近傍電磁界の電界成分または磁界成分またはその両方の分布を、前記電子機器周辺の電磁界を解析するシミュレーションにより求め、前記基板近傍電磁界分布入力部へ基板近傍電磁界分布データとして渡す基板近傍電磁界分布解析部とをさらに備えることが好ましい。
アンテナ電磁界分布解析部により、アンテナ電磁界分布データが得られるので、前記アンテナ電磁界分布入力部は、入力データを得ることができる。基板近傍電磁界分布解析部により、基板近傍電磁界分布データが得られるので、基板近傍電磁界分布入力部は入力データを得ることができる。
本発明にかかる電磁波解析装置は、前記アンテナ電磁界分布データおよび前記基板近傍電磁界分布データは、少なくとも1つの面における分布を表すデータであって、前記アンテナ電磁界分布データが表す分布の面と前記回路基板との距離が、前記基板近傍電磁界分布データが表す面と前記基板との距離と異なる場合に、前記アンテナ電磁界分布データおよび前記基板近傍電磁界分布データのうち少なくとも1つを変換して、前記アンテナ電磁界分布データが表す分布の面と前記回路基板との距離が、前記基板近傍電磁界分布データが表す分布の面と前記回路基板との距離と略等しくなるようにするデータ修正部をさらに備えることが好ましい。
データ修正部が、前記アンテナ電磁界分布データが表す分布の面と前記回路基板との距離が、前記基板近傍電磁界分布データが表す分布の面と前記回路基板との距離と略等しくなるようにすることにより、前記アンテナ電磁界分布データが表す分布の面と前記回路基板との距離が、前記基板近傍電磁界分布データが表す面と前記回路基板との距離と異なる場合であっても、両者が略同一範囲の分布を表すように修正される。その結果、修正後のデータで相関値が求められるので、信頼性の高い相関値が得られる。
本発明にかかる電磁波解析装置は、前記電子機器の回路基板の構造を表す基板設計データを入力する基板設計データ入力部と、前記比較部による判断結果と、前記基板設計データに基づいて、前記電子機器の設計の指針となる情報を生成する指針情報生成部とをさらに備えることが好ましい。
このように、指針情報生成部が、比較部による判断結果と、基板設計データ入力部によって入力された基板設計データに基づいて、設計変更の指針となる指針情報を生成するので、設計者は、不要輻射ノイズによる電磁波送受信障害を避けるように電子機器の設計を変更するための指針を得ることができる。
本発明にかかる電磁波解析装置は、アンテナを介して電磁波の送受信を行う電子機器の回路基板に設けられた部品または配線が、前記アンテナを介して送受信される電磁波に与える影響を調べる電磁波解析装置であって、前記回路基板に設けられた部品の端子の位置または配線の位置を表す位置データを入力する位置入力部と、前記アンテナを介して送受信される電磁波の磁界成分であるまたは電界成分であるアンテナの電磁界の分布を表すアンテナ電磁界分布データを入力するアンテナ電磁界分布入力部と、前記位置データおよび前記アンテナ電磁界分布データとを比較することによって、前記位置データで表される部品の端子または配線の中から、前記電子機器の送受信機能に影響を与える可能性のある端子または配線を抽出する抽出部とを備える。
前記抽出部は、前記位置データおよび前記アンテナ電磁界分布データとを比較することによって、前記位置データで表される部品の端子または配線の位置と、アンテナの電磁界との相関性を得ることができる。得られた相関性は、部品の端子または配線から発生する不要輻射ノイズがまたは電界成分であるアンテナの電磁界の分布に与える影響の度合いを表している。したがって、抽出部は、得られた相関性に基づいて、前記電子機器の送受信機能に影響を与える可能性のある部品の端子または配線を抽出することができる。その結果、電子機器の回路基板上に設けられる部品または配線の配置が、電子機器のアンテナを介する送受信機能に与える影響についての情報を得ることができる。すなわち、電子機器の部品または配線から放射される不要輻射ノイズが電子機器の送受信機能に与える影響についての情報が得られる。
本発明にかかる電磁波解析装置において、前記抽出部は、前記アンテナ電磁界分布データが表す分布領域のうち、前記アンテナの電磁界が予め決められた閾値を超える部分に対応する位置にある端子または配線を抽出することが好ましい。
前記抽出部は、アンテナの電磁界が予め決められた閾値を超える部分に対応する位置にある部品の端子または配線を抽出することで、アンテナの電磁界に影響を与える可能性のある部品の端子または配線を抽出することができる。
本発明にかかる電磁波解析装置は、前記位置データで表される部品の端子または配線を通じて伝送される信号の周波数を表す動作周波数を入力する周波数入力部と、前記アンテナを介して送受信される電磁波の周波数であって解析対象となる周波数を表す解析周波数データが記憶された周波数記憶部と、前記動作周波数と前記解析周波数データとに基づいて、前記位置データで表される部品の端子または配線が、前記電子機器の送受信機能に影響を与えるか否かの判定を行う判定部をさらに備えることが好ましい。
前記判定部は、前記動作周波数と、前記アンテナを介して送受信される電磁波の周波数とを比較することによって、部品または配線を通じて伝送される信号の周波数と前記アンテナを介して送受信される電磁波の周波数との相関性を得ることができる。得られた相関性は、部品の端子または配線を通じて伝送される信号がアンテナの電磁界の分布に与える影響の度合いを表している。したがって、前記判定部は、相関性に基づいて、前記回路基板に設けられた部品または配線が、前記電子機器において前記アンテナを介して送受信される電磁波に影響を与える可能性があるか否か判定することができる。
本発明にかかる電磁波解析装置において、 前記周波数記憶部は、前記解析周波数データとして、前記アンテナを介して送受信される電磁波の周波数帯域を表すデータを記憶し、前記判定部は、前記動作周波数および該動作周波数の整数倍となる逓倍周波数成分が、前記アンテナを介して送受信される電磁波の周波数帯域に含まれているか否かを判別することにより前記判定を行うことが好ましい。
前記電子機器の前記回路基板に設けられた部品の端子または配線の動作周波数あるいはその整数倍の逓倍周波数成分が、前記電子機器の前記アンテナを介して送受信される電磁波の周波数帯域に含まれている場合、その部品の端子または配線から発生する不要輻射ノイズが、送受信機能に影響を与える可能性が高い。したがって、前記判定部は、部品の端子または配線の動作周波数が電子機器のアンテナを介して送受信される電磁波の周波数帯域に含まれているか否を判別することによって、その端子または配線が前記電子機器の送受信機能に影響を与えるか否かを判定することができる。
本発明にかかる電磁波解析装置は、前記周波数記憶部は、前記解析周波数データとして、前記アンテナを介して送信される電磁波の周波数と、前記アンテナを介して受信される電磁波の周波数とを記憶し、前記判定部は、前記アンテナを介して送信される電磁波の周波数と、前記アンテナを介して受信される電磁波の周波数との差を求め、この差と、前記動作周波数および動作周波数の整数倍となる逓倍周波数成分とを比較することによって、前記判定を行うことが好ましい。
前記電子機器の前記回路基板に設けられた部品の端子または配線の動作周波数あるいはその整数倍の逓倍周波数成分が、前記電子機器の前記アンテナを介して送信される電磁波の周波数と、前記アンテナを介して受信される電磁波の周波数との差に一致または近接する場合、その部品の端子または配線から発生する不要輻射ノイズが、送受信機能に影響を与える可能性が高い。したがって、前記判定部は、送信電磁波の周波数と受信電磁波の周波数との差が、端子または配線おける動作周波数に一致または近接するか否か判別することによって、端子または配線が前記電子機器の送受信機能に影響を与えるか否かを判定することができる。
本発明にかかる電磁波解析装置において、前記抽出部は、前記アンテナ電磁界分布データが表す分布領域のうち、前記アンテナの電磁界が予め決められた閾値を超える部分に対応する位置にある端子または配線を抽出し、前記判定部は、前記抽出部で抽出された端子または配線について、前記判定を行うことが好ましい。
前記アンテナ電磁界分布データが表す分布領域のうち、前記アンテナの電磁界が予め決められた閾値を超える部分に対応する位置にある端子または配線は、前記電子機器の送受信機能に影響を与える可能性を有する。したがって、前記判定部は、前記電子機器の送受信機能に影響を与える可能性のある端子または配線について、さらに判定を行うことになる。その結果、送受信機能に影響を与える可能性のより高い端子または配線を特定することができる。また、送受信機能に影響を与える可能性がほとんどない端子または配線について、判定処理を省略することができる。
本発明にかかる電磁波解析装置は、前記位置データで表される部品の端子または配線から発生するノイズの周波数特性を表すノイズ特性データを入力するノイズ特性入力部と、前記アンテナを介して送受信される電磁波の周波数帯域を記憶する周波数記憶部と、前記ノイズ特性データで表されるノイズの周波数が、前記アンテナを介して送受信される電磁波の周波数帯域に含まれているか否かを判別することによって、前記部品の端子または配線が、前記電子機器の送受信機能に影響を与えるか否かを判定するノイズ判定部をさらに備えることが好ましい。
前記電子機器の前記回路基板に設けられた部品の端子または配線から発生するノイズの周波数が、前記電子機器の前記アンテナを介して送受信される電磁波の周波数帯域に含まれている場合、その部品の端子または配線から発生した不要輻射ノイズが、送受信機能に影響を与える可能性が高い。したがって、前記判定部は、ノイズ特性データで表されるノイズの周波数が、送受信電磁波の周波数帯域に含まれているか否かを判別することによって、そのノイズ特性データにかかる端子または配線が前記電子機器の送受信機能に影響を与えるか否かを判定することができる。
本発明にかかる電磁波解析装置は、前記位置データで表される部品の端子または配線から発生するノイズの周波数特性を表すノイズ特性データを入力するノイズ特性入力部と、前記アンテナを介して送信される電磁波の周波数と、前記アンテナを介して受信される電磁波の周波数とを記憶する周波数記憶部と、前記アンテナを介して送信される電磁波の周波数と、前記アンテナを介して受信される電磁波の周波数との差を求め、この差と、前記ノイズ特性データで表されるノイズの周波数を比較することによって、前記部品の端子または配線が、前記電子機器の送受信機能に影響を与えるか否かを判定するノイズ判定部をさらに備えることが好ましい。
前記電子機器の前記回路基板に設けられた部品の端子または配線から発生するノイズの周波数が、前記アンテナを介して送信される電磁波の周波数と、前記アンテナを介して受信される電磁波の周波数との差に一致または近接する場合、その端子または配線から発生した不要輻射ノイズが、送受信機能に影響を与える可能性が高い。したがって、前記判定部は、ノイズ特性データで表されるノイズの周波数が、送信電磁波の周波数と受信電磁波の周波数との差に、一致または近接するか否かを判別することによって、そのノイズ特性データにかかる端子または配線が前記電子機器の送受信機能に影響を与えるか否かを判定することができる。
本発明にかかる電磁波解析装置において、前記抽出部は、前記アンテナ電磁界分布データが表す分布領域のうち、前記アンテナの電磁界が予め決められた閾値を超える部分に対応する位置にある端子または配線を抽出し、前記ノイズ判定部は、前記抽出部が抽出した端子または配線について前記判定を行うことが好ましい。
前記アンテナ電磁界分布データが表す分布領域のうち、前記アンテナの電磁界が予め決められた閾値を超える部分に対応する位置にある端子または配線は、前記電子機器の送受信機能に影響を与える可能性を有する。したがって、前記ノイズ判定部は、前記電子機器の送受信機能に影響を与える可能性のある端子または配線について、さらに判定を行うことになる。その結果、送受信機能に影響を与える可能性のより高い端子または配線を特定することができる。また、送受信機能に影響を与える可能性がほとんどない端子または配線について、判定処理を省略することができる。
本発明にかかる電磁波解析装置において、前記ノイズ特性データは、前記位置データに基づいて作製された回路基板から発生する不要輻射ノイズを測定することにより得られた実測値である態様とすることができる。
ノイズ特性データに実測値を用いることで、実際に回路基板から発生する不要輻射ノイズに基づいて、前記ノイズ判定部が、回路基板に設けられた部品の端子または配線が、前記電子機器の送受信機能に影響を与えるか否かを判定する。その結果、実際に回路基板に設けられた部品から発生するノイズを反映したノイズ判定結果が得られる。
本発明にかかる電磁波解析装置において、前記アンテナ電磁界分布入力部は、複数の電子機器におけるアンテナ電磁界分布データが格納されたデータベースを参照して、該データベースから解析対象である前記電子機器に最も近い電子機器のアンテナ電磁界分布データを取得する態様とすることができる。
このように、複数の電子機器におけるアンテナ電磁界分布データが格納されたデータベースからアンテナ電磁界分布データを得ることにより、アンテナ電磁界分布データが簡単に得られる。
本発明にかかる電磁波解析装置は、前記抽出部で抽出された端子または配線、もしくは前記判定部で前記電子機器の送受信機能に影響を与えると判定された端子または配線、もしくは前記ノイズ判定部で前記電子機器の送受信機能に影響を与えると判定された端子または配線について、設計変更するための指針となる情報を生成する指針情報生成部をさらに備えることが好ましい。
前記指針情報生成部が、設計変更するための指針となる情報を生成することで、設計者は、電子機器の送受信機能に与えられる影響が抑えられた回路基板の設計データを得ることができる。その結果、設計者は、送受信機能障害を起こさない回路基板の設計を容易に行うことができる。
本発明にかかる電磁波解析装置において、前記電子機器は、携帯電話である態様とすることができる。
本発明にかかる電磁波解析装置において、前記アンテナ電磁界分布データは、前記アンテナを介して送受信される電磁波の磁界成分を電流で表したアンテナ電流または前記電磁波の電界成分を電圧で表したアンテナ電圧の分布を表すデータであってもよい。
本発明にかかる設計支援装置は、本発明にかかる電磁波解析装置を含む態様とすることができる。
本発明にかかる電磁波解析プログラムは、アンテナを介して電磁波の送受信を行う電子機器の回路基板から発生する不要輻射ノイズが、前記アンテナを介して送受信される電磁波に及ぼす影響を調べる処理をコンピュータに実行させる電磁波解析プログラムであって、前記アンテナを介して送受信される電磁波の磁界成分または電界成分であるアンテナの電磁界の分布を表すアンテナ電磁界分布データを入力するアンテナ電磁界分布入力処理と、前記電子機器が動作することによって前記電子機器の回路基板から放射される不要輻射ノイズである基板近傍電磁界の電界成分または磁界成分またはその両方の前記電子機器周辺における分布を表す基板近傍電磁界分布データを入力する基板近傍電磁界分布入力処理と、前記アンテナ電磁界分布データおよび前記基板近傍電磁界分布データに基づいて、前記アンテナの電磁界と前記基板近傍電磁界との相関性を表す相関値の分布を生成する相関値分布生成処理とをコンピュータに実行させる。
本発明にかかる電磁波解析プログラムは、前記相関値分布内の各々の相関値と、予め決められた閾値とを比較することにより、前記電子機器における電磁波の送受信障害の有無を判断する比較処理をさらにコンピュータに実行させることが好ましい。
本発明にかかる電磁波解析プログラムにおいて、前記相関値は、前記アンテナの電磁界の値と前記基板近傍電磁界の値との積を含むことが好ましい。
本発明にかかる電磁波解析プログラムは、前記アンテナを介して送受信される電磁波の磁界成分または電界成分であるアンテナの電磁界の分布を、前記電子機器周辺の電磁界を解析するシミュレーションにより求め、前記アンテナ電磁界分布入力処理におけるアンテナ電磁界分布データとするアンテナ電磁界分布解析処理と、前記電子機器が動作することによって前記電子機器の回路基板から放射される不要輻射ノイズによる基板近傍電磁界の電界成分または磁界成分またはその両方の分布を、前記基板近傍電磁界分布データを前記電子機器周辺の電磁界を解析するシミュレーションにより求め、前記基板近傍電磁界分布入力処理における基板近傍電磁界分布データとする基板近傍電磁界分布解析処理とをさらにコンピュータに実行させることが好ましい。
本発明にかかる電磁波解析プログラムは、前記アンテナ電磁界分布データおよび前記基板近傍電磁界分布データは、少なくとも1つの面における分布を表すデータであって、前記アンテナ電磁界分布データが表す分布の面と前記回路基板との距離が、前記基板近傍電磁界分布データが表す面と前記基板との距離と異なる場合に、前記アンテナ電磁界分布データおよび前記基板近傍電磁界分布データのうち少なくとも1つを変換して、前記アンテナ電磁界分布データが表す分布の面と前記回路基板との距離が、前記基板近傍電磁界分布データが表す分布の面と前記回路基板との距離と略等しくなるようにするデータ修正処理をさらにコンピュータに実行させることが好ましい。
本発明にかかる電磁波解析プログラムは、前記電子機器の回路基板の構造を表す基板設計データを入力する基板設計データ入力処理と、前記比較処理による判断結果と、前記基板設計データに基づいて、前記電子機器の設計の指針となる情報を生成する指針情報生成処理とをさらにコンピュータに実行させることが好ましい。
本発明にかかる電磁波解析プログラムにおいて、前記電子機器は,携帯電話である態様とすることができる。
本発明にかかる電磁波解析プログラムは、アンテナを介して電磁波の送受信を行う電子機器の回路基板に設けられた部品または配線が、前記アンテナを介して送受信される電磁波に与える影響を調べる処理をコンピュータに実行させる電磁波解析プログラムであって、前記回路基板に設けられた部品の端子の位置または配線の位置を表す位置データを入力する位置入力処理と、前記アンテナを介して送受信される電磁波の磁界成分または電界成分であるアンテナの電磁界の分布を表すアンテナ電磁界分布データを入力するアンテナ電磁界分布入力処理と、前記位置データおよび前記アンテナ電磁界分布データとを比較することによって、前記位置データで表される部品の端子または配線の中から、前記電子機器の送受信機能に影響を与える可能性のある端子または配線を抽出する抽出処理とをコンピュータに実行させる。
本発明にかかる電磁波解析プログラムにおいて、前記抽出処理は、前記アンテナ電磁界分布データが表す分布領域のうち、前記アンテナ電磁界が予め決められた閾値を超える部分に対応する位置にある端子または配線を抽出することが好ましい。
本発明にかかる電磁波解析プログラムは、前記位置データで表される部品の端子または配線を通じて伝送される信号の周波数を表す動作周波数を入力する周波数入力処理と、前記アンテナを介して送受信される電磁波の周波数であって解析対象となる周波数を表す解析周波数データが記憶された周波数記憶処理と、前記動作周波数と前記解析周波数データとに基づいて、前記位置データで表される部品の端子または配線が、前記電子機器の送受信機能に影響を与えるか否かの判定を行う判定処理をさらにコンピュータに実行させることが好ましい。
本発明にかかる電磁波解析プログラムにおいて、前記周波数記憶処理は、前記解析周波数データとして、前記アンテナを介して送受信される電磁波の周波数帯域を表すデータを記憶する処理であり、前記判定処理は、前記動作周波数および該動作周波数の整数倍となる逓倍周波数成分が、前記アンテナを介して送受信される電磁波の周波数帯域に含まれているか否かを判別することにより前記判定を行う処理であることが好ましい。
本発明にかかる電磁波解析プログラムにおいて、前記周波数記憶処理は、前記解析周波数データとして、前記アンテナを介して送信される電磁波の周波数と、前記アンテナを介して受信される電磁波の周波数とを記憶する処理であり、前記判定処理は、前記アンテナを介して送信される電磁波の周波数と、前記アンテナを介して受信される電磁波の周波数との差を求め、この差と、前記動作周波数および動作周波数の整数倍となる逓倍周波数成分とを比較することによって、前記判定を行う処理であることが好ましい。
本発明にかかる電磁波解析プログラムにおいて、前記抽出処理は、前記抽出部は、前記アンテナ電磁界分布データが表す分布領域のうち、前記アンテナ電磁界が予め決められた閾値を超える部分に対応する位置にある端子または配線を抽出する処理であり、前記判定処理は、前記抽出部で抽出された端子または配線について、前記判定を行う処理であることが好ましい。
本発明にかかる電磁波解析プログラムにおいて、前記位置データで表される部品の端子または配線から発生するノイズの周波数特性を表すノイズ特性データを入力するノイズ特性入力処理と、前記アンテナを介して送受信される電磁波の周波数帯域を記憶する周波数記憶処理と、前記ノイズ特性データで表されるノイズの周波数が、前記アンテナを介して送受信される電磁波の周波数帯域に含まれているか否かを判別することによって、前記部品の端子または配線が、前記電子機器の送受信機能に影響を与えるか否かを判定するノイズ判定処理とをさらにコンピュータに実行させることが好ましい。
本発明にかかる電磁波解析プログラムにおいて、前記位置データで表される部品の端子または配線から発生するノイズの周波数特性を表すノイズ特性データを入力するノイズ特性入力処理と、前記アンテナを介して送信される電磁波の周波数と、前記アンテナを介して受信される電磁波の周波数とを記憶する周波数記憶処理と、前記アンテナを介して送信される電磁波の周波数と、前記アンテナを介して受信される電磁波の周波数との差を求め、この差と、前記ノイズ特性データで表されるノイズの周波数を比較することによって、前記部品の端子または配線が、前記電子機器の送受信機能に影響を与えるか否かを判定するノイズ判定処理とをさらにコンピュータに実行させることが好ましい。
本発明にかかる電磁波解析プログラムにおいて、前記抽出処理は、前記アンテナ電磁界分布データが表す分布領域のうち、前記アンテナの電磁界が予め決められた閾値を超える部分に対応する位置にある端子または配線を抽出する処理であり、前記ノイズ判定処理は、前記抽出処理で抽出された端子または配線について前記判定を行う処理であることが好ましい。
本発明にかかる設計支援プログラムは、本発明にかかる電磁波解析プログラムを含むことが好ましい。
本発明にかかる電磁波解析方法は、アンテナを介して電磁波の送受信を行う電子機器の回路基板から発生する不要輻射ノイズが、前記アンテナを介して送受信される電磁波に及ぼす影響を、コンピュータを用いて調べる電磁波解析方法であって、前記コンピュータが備えるアンテナ電磁界分布入力部が、前記アンテナを介して送受信される電磁波の磁界成分または電界成分であるアンテナの電磁界の分布を表すアンテナ電磁界分布データを入力する工程と、前記コンピュータが備える基板近傍電磁界分布入力部が、前記電子機器が動作することによって前記電子機器の回路基板から放射される不要輻射ノイズによる基板近傍電磁界の電界成分または磁界成分またはその両方の分布を表す基板近傍電磁界分布データを入力する工程と、前記コンピュータが備える相関値生成部が、前記アンテナ電磁界分布データおよび前記基板近傍電磁界分布データに基づいて、前記アンテナの電磁界と前記基板近傍電磁界との相関性を表す相関値の分布を生成する工程とを含む。
本発明にかかる電磁波解析方法は、アンテナを介して電磁波の送受信を行う電子機器の回路基板に設けられた部品または配線が、前記アンテナを介して送受信される電磁波に与える影響を、コンピュータを用いて調べる電磁波解析方法であって、前記コンピュータが備える位置入力部が、前記回路基板に設けられた部品の端子の位置または配線の位置を表す位置データを入力する工程と、前記コンピュータが備えるアンテナ電磁界分布入力部が、前記アンテナを介して送受信される電磁波の磁界成分または電界成分であるアンテナの電磁界の分布を表すアンテナ電磁界分布データを入力する工程と、前記コンピュータが備える抽出部が、前記位置データおよび前記アンテナ電磁界分布データとを比較することによって、前記位置データで表される部品の端子または配線の中から、前記電子機器の送受信機能に影響を与える可能性のある端子または配線を抽出する工程とを含む。
以上のように、本発明にかかる設計支援装置は、測定またはシミュレーションによって求められた不要輻射ノイズの基板近傍電磁界分布データと、送受信時におけるアンテナ電磁界分布データとの2つの分布データを用いて、これら2つの分布データを計算式に代入して相関値を算出することにより、電子機器の不要輻射ノイズが電子機器の送受信機能与える影響についての情報を得る。また、相関値と、送受信障害が起こらないために必要な判定閾値とを比較することで、問題の発生有無の判定を行う。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態は、携帯電話をはじめとする無線機器等の電子機器のプリント回路基板から放射される不要輻射ノイズの基板近傍電磁界分布と、携帯電話の送受信時おけるアンテナ電磁界分布との2種類の分布データを用いることによって、携帯電話等電子機器の実使用に近い状態での送受信特性を評価する設計支援装置に関するものである。
図1(a)は、本実施の形態にかかる設計支援装置100の構成を表す機能ブロック図である。
図1(a)に示す設計支援装置100は、アンテナ電磁界分布測定部12、基板近傍電磁界分布測定部13、計算機15を備える。アンテナ電磁界分布測定部12は、測定器(アンテナの磁界成分用)12aおよび検出器(アンテナの磁界成分用)12bを備える。基板近傍電磁界分布測定部13は、測定器(基板近傍電磁界用)13aおよび検出器(基板近傍電磁界用)13bを備える。
アンテナ電磁界分布測定部12は、基板14aから放射されるアンテナによる電磁波の磁界成分、すなわち、アンテナの磁界成分の分布を測定する。アンテナの磁界成分については後述する。基板近傍電磁界分布測定部13は、基板14aから放射される不要機15は、アンテナ電磁界分布測定部12および基板近傍電磁界分布測定部13を制御し、これらから出力されるデータを処理する。
本実施の形態において、基板14aは、一例として、携帯電話端末のメイン基板である。基板14aはアンテナ32、RF回路ブロック33、メモリ34、CPU(Central Processing Unit)35、電源36、37および各部品間を接続する配線パターン38から構成されている。
基板14aにおける電磁波の送受信は、アンテナ32を介して行われる。例えば、基板14aを含む携帯電話が、通話やインターネットアクセス等を無線通信によって行う場合、アンテナ32から電磁波が送信され、または、アンテナ32で電磁波が受信される。
アンテナの磁界成分とは、上記のように、例えば、携帯電話等の電子機器が備えるアンテナ32を介して送受信される電磁波の磁界成分である。このアンテナの磁界成分の分布が、アンテナの磁界分布である。また、アンテナの磁界成分を電流で表したものをアンテナ電流と称する。
なお、電子機器におけるアンテナは、部品として実装されたアンテナのみでなく、電子機器において、実質的にアンテナとして機能している部材全てを含むものとする。例えば、図1(b)に示すような携帯電話14のアンテナ32および筐体の一部または全体がアンテナとして機能する場合がある。
検出器(アンテナの磁界成分用)12bは、基板14a周辺のアンテナの磁界成分を検出する。検出器12bは、例えば、検出用アンテナを含む(図示せず)。前記検出用アンテナが基板14aの周辺部に配置されると、アンテナ32と前記検出用アンテナ間における電磁結合により前記検出用アンテナに電流が流れる。この電流を測定器12aが測定することにより、アンテナ32から放射される電磁波の磁界成分が測定される。なお、電磁波の磁界成分と電流はI(電流)=μB(磁束密度)の関係にあるので、いずれか一方の値が得られれば、他方の値も計算により求めることができる。
同様に、電磁波の電界成分と電圧においても、いずれか一方の値が得られれば、他方の値も計算により求めることができる。本実施の形態においては、アンテナから放射される電磁波の磁界成分が測定され、アンテナの磁界成分が求められているが、磁界成分の替わりに電界成分を測定することにより、アンテナの電界成分が求められてもよい。アンテナの電界成分は、アンテナから放射される電磁波の電界成分である。また、アンテナの電界成分の替わりに、アンテナの電界成分を電圧で表したアンテナ電圧が求められてもよい。
また、検出器アンテナ12bが、基板14aの周辺を移動することにより、複数の場所でアンテナの磁界成分が測定される。その結果、基板14aの周辺におけるアンテナの磁界分布が得られる。
測定器12aとして、例えば、スペクトラムアナライザが用いられる。スペクトラムアナライザを用いることで、検出器12bで検出されたアンテナの磁界成分の周波数毎の強度分布すなわちスペクトラムを出力することができる。
基板14aの動作状態においては、メモリ34、CPU35、電源36、37の各機能素子間に引き回された配線パターン38に、クロック周波数やスイッチング速度に起因する逓倍周波数の高周波電流が流れる。その結果、配線パターン38を介して基板の周辺へ電磁波が放射される。このように、基板から放射される電磁波が、不要輻射ノイズとなる。
通常、不要輻射ノイズの強度は、アンテナから放射される電磁波の強度に比べて、非常に小さい。そのため、基板14aから放射される不要輻射ノイズの電界成分および磁界成分を検出する検出器検出器(基板近傍電磁界用)13bの構成は、検出器(アンテナの磁界成分用)12bの構成と比べて、より小さい強度の磁界および電界を測定することに適した構成とすることが好ましい。また、不要輻射ノイズは、強度が小さいため、基板近傍において測定されることが多い。そのため、不要輻射ノイズの分布は、近傍電磁界分布と呼ばれることもある。
検出器13bには、例えば、微小アンテナ(図示せず)が備えられる。前記微小アンテナが基板14aに接近すると、基板14aと前記微小アンテナ間に生じる静電結合による静電結合電流と、基板14aと前記微小アンテナ間に生じる電磁結合による電磁結合電流との合成電流が前記微小アンテナに流れる。この合成電流を、測定器13aが測定することにより、基板から放射された電磁波すなわち不要輻射ノイズの電界成分および磁界成分が検出される。
測定器13aとして、測定器12aと同様に、例えば、スペクトラムアナライザが用いられる。なお、測定器13aは、必ずしも、不要輻射ノイズの電界成分および磁界成分の両方を測定する必要はなく、少なくともいずれか1つを測定するものであってもよい。
なお、検出器12bおよび検出器13bにおいて、前記検出用アンテナおよび前記微小アンテナを除く部分は、外来ノイズからの影響を除去するために、シールドで覆われていることが好ましい。
また、アンテナ電磁界分布測定部12および基板近傍電磁界分布測定部13は、検出器12bおよび検出器13bを基板14aの周辺で移動させる移動装置(図示せず)を備えることが好ましい。検出器12b、13bが基板14aの周辺を移動することにより、基板周辺のアンテナ磁界分布および基板近傍電磁界分布が得られる。
設計支援装置100では、アンテナ電磁界分布測定部12および基板近傍電磁界分布測定部13の2つの測定部を具備することにより、計算機15の制御によって、基板近傍電磁界分布とアンテナの磁界成分の同時測定が可能となる。そのため、設備の共通化と、測定時間の短縮を図ることができる。
また、検出器12b、13bを移動させることにより、アンテナ磁界分布および基板近傍電磁界分布を得るのではなく、検出器12b、13bを複数設けて、それらの検出器を、例えば、マトリックス状に配置することにより、アンテナの磁界分布および基板近傍電磁界分布を得ることもできる。
なお、アンテナ電磁界分布測定部12および基板近傍電磁界分布測定部13については、ここでは一例を示したものであり、アンテナの磁界分布および基板近傍電磁界分布を測定するためには、別の測定系を用いても良い。
図2は、別の測定系の構成例であり、アンテナの磁界分布および基板近傍電磁界分布を測定する測定部の他の構成例を表す機能ブロック図である。図2に示すように、1台の測定器21aと、1台の検出器21bで、アンテナの磁界分布および基板近傍電磁界分布を測定する測定部21を構成することもできる。検出器21bは、例えば、アンテナの磁界成分を検出するための検出用アンテナと、基板近傍電磁界を検出する微小アンテナを備える。測定器21aは、検出器21bで検出されたアンテナの磁界成分および基板近傍電磁界を測定する。測定器21aとして、たとえば、スペクトラムアナライザが用いられる。図2に示す構成によって、設備の共通化を図ることができる。
図3は、設計支援装置100における計算機15の構成を表す機能ブロックである。図3に示すように、計算機15は、インターフェース部16、演算部17、記憶部18および出力部19を備える。
インターフェース部16は、アンテナ電磁界分布入力部51、基板近傍電磁界分布入力部52および制御部59を含む。アンテナ電磁界分布入力部51は、アンテナ電磁界分布測定部12からアンテナ磁界分布データを受け取って記憶部18へ保存する。基板近傍電磁界分布入力部52は、基板近傍電磁界分布測定部13から基板近傍電磁界分布データを受け取って記憶部18へ保存する。制御部59は、アンテナ電磁界分布測定部12、基板近傍電磁界分布測定部13の動作を制御する。このような制御は、例えば、制御用ソフトウェアを計算機15が備えるCPU(後述)が実行することによって行われる。
演算部17は、相関値生成部53、比較部54、基板設計データ入力部55、指針情報生成部56を備える。相関値生成部53は、記憶部18に記憶されたアンテナ磁界分布データおよび基板近傍電磁界分布データに基づいて相関値を生成する。比較部54は、相関値生成部53が生成した相関値と記憶部18に保存された閾値とを比較することにより、携帯電話14の評価を行い、評価の結果を表すデータを記憶部18に保存する。基板設計データ入力部55は、例えば、CADシステム57等から、基板14aの構造を表す基板設計データを入力する。指針情報生成部56は、この基板設計データと、記憶部18に保存された結果データとに基づいて、携帯電話14である電子機器の設計の指針となる設計指針データを生成し、記憶部18に保存する。
出力部19は、記憶部18に保存された結果データや設計指針データを、設計者に分かりやいように、ディスプレイ等(後述)を用いて表示する。
計算機15は、例えば、EWS(Engineering Work Station)またはPC(Personal Computer)等(以下、PC等と言う)を用いて構成することができる。インターフェース部16および演算部17等の機能は、PC等のCPUが設計支援プログラムを実行することで実現できる。また、記憶部18には、PC等に内蔵されているハードディスク、RAM等の記憶媒体の他、フレキシブルディスク、メモリカード等の可搬型記憶媒体や、ネットワーク上にある記憶装置内の記憶媒体等を用いることができる。出力部19としてPC等のディスプレイを含む表示装置やプリンタ等の出力装置を用いることができる。
上記のインターフェース部16および演算部17の機能を実現するための設計支援プログラムを、例えば、CD−ROM等の記憶媒体から、あるいは通信回線を介したダウンロード等により、任意のPC等へインストールすることによって、計算機15を構築することもできる。
なお、本実施の形態にかかる設計支援装置100の構成は、計算機15をPC等のような汎用装置によって構築する場合に限られない。例えば、計算機15を、CPUや記憶媒体を備えた専用制御装置としてもよいし、アンテナ電磁界分布測定部12および基板近傍電磁界分布測定部13と計算機15を一体として、1つの設計支援装置を構成してもよい。
次に、設計支援装置100の動作について、図を用いて説明する。図4は、設計支援装置100における処理の動作を示すフローチャートである。
図4に示すように、設計支援装置100の処理は、測定条件の設定(ステップS11、S12)、アンテナ磁界分布測定(ステップS13)、基板近傍電磁界測定(ステップS14)、相関値測定(ステップS17)、比較(ステップS18)、設計指針データ生成(ステップS20)および表示(ステップS21)のステップを備えている。
まず、計算機15が、アンテナ電磁界分布測定部12および基板近傍電磁界分布測定部13に対する測定条件設定を行う(ステップS11、S12)。計算機15は、例えば、測定を行う周波数、空間ピッチ、測定範囲など測定に必要な初期条件を、測定条件として設定する。
測定器(アンテナの磁界成分用)12aは、制御部59の制御により、ステップS11で設定された設定条件に従って、アンテナの磁界成分の測定を行う(ステップS13)。ここで、図1(a)において、被計測体である基板14aに平行な面をXY平面、基板14aに垂直な方向をZ軸方向とする。例えば、XY平面に平行な面であって、基板14aから一定の距離にある平面上を、検出器13bが移動することによって、基板14aから一定の距離を隔てた平面におけるアンテナの磁界分布が測定される。このような測定をXY平面に平行な複数の面で行うことによって、基板14aの周囲におけるアンテナの磁界分布を示すデータが得られる。なお、測定領域は平面に限られない。例えば、基板14a周辺の球面上あるいは曲面上の分布を測定してもよい。
アンテナの磁界分布の測定は、例えば、携帯電話が実際に送受信を行っている状態か、または簡易な手法として、アンテナ給電点に発振器を取り付け、所定の周波数でアンテナが励振されている状態で測定することができる。
アンテナの磁界分布の測定においては、基板14aが携帯電話のメイン基板である場合は、図1(b)に示すように、筐体も含めた状態で、携帯電話14の周囲全体におけるアンテナの磁界成分を測定することが好ましい。筐体も含めた携帯電話全体がアンテナとして機能する場合があるからである。なお、ここで測定される携帯電話14または基板14aは、設計初期段階の試作品であっても、完成品であってもよい。
測定器(基板近傍電磁界用)13aは、ステップS12で設定された設定条件に従って、基板近傍電磁界すなわち不要輻射ノイズの測定を行う(ステップS14)。例えば、検出器13bが、基板14aの周囲の測定範囲内を3次元方向に移動することによって、複数の場所での基板近傍電磁界が測定され、基板14aの周囲の基板近傍電磁界分布を示すデータが得られる。
基板から放射される電磁波の強度は小さいので、例えば、基板14aが、携帯電話のメイン基板である場合は、筐体を除いた状態の基板14aを被測定物として、検出器13bを接近させて測定することが好ましい。また、携帯電話には、例えば、ディスプレイ、カメラ、SDカード(メモリカード)など様々なアプリケーションが備えられる場合がある。それらのアプリケーションのうちいずれか1つを動作させた状態で、基板近傍電磁界分布を測定することにより、動作させたアプリケーションによる不要輻射ノイズを測定することができる。また、全てのアプリケーションが起動している状態で基板近傍電磁界分布を測定することにより、各アプリケーションからのノイズを含めた不要輻射ノイズを測定することができる。すなわち、実際に使用状態に近い状態での不要輻射ノイズを測定することができる。
アンテナ電磁界分布測定部12で測定されたアンテナ磁界分布は、アンテナ電磁界分布入力部51によって計算機15へ入力されて、記憶部18に保存される(ステップS15)。入力されるアンテナ磁界分布データには、例えば、測定点の座標等の位置を表す情報、アンテナの磁界成分の周波数、強度、位相、方向性を表す情報、測定ばらつきを減らすために複数回測定を行った場合の平均値データ、測定の精度が悪い場合には最大値データ等が含まれる。
基板近傍電磁界分布測定部13で測定された基板近傍電磁界分布は、基板近傍電磁界分布入力部52によって計算機15へ入力されて、記憶部18に保存される(ステップS16)。入力される基板近傍電磁界分布には、例えば、測定点の座標等の位置を示す情報、磁界または電界の周波数、強度、位相、方向性を表す情報、測定ばらつきを減らすために複数回測定を行った場合の平均値データ、測定の精度が悪い場合には最大値データ等が含まれる。
相関値生成部53は、ステップS15およびS16で入力されたアンテナ磁界分布データおよび基板近傍電磁界分布データを基に相関値を生成する(ステップS17)。相関値は、基板近傍電磁界すなわち不要輻射ノイズがアンテナの磁界成分に及ぼす影響の度合いを表す値である。相関値は、アンテナの磁界成分と基板近傍電磁界との相関性を含む計算式により、測定位置ごとに求められる。以下、相関値を求める計算の例を説明する。
(相関値を求める計算の例1)
例えば、座標(x1、y1、z1)の位置における相関値A(x1、y1、z1)は、下記(式1)により求められる。
(式1)
A(x1、y1、z1)=ka2+ma・b+nb2
k、m、nは定数
a:(x1、y1、z1)におけるアンテナの磁界成分の強度
b:(x1、y1、z1)における基板近傍電磁界の強度
また、計算を簡単にして、下記(式2)により相関値Aを求めてもよい。
(式2)
A(x1、y1、z1)=ma・b
mは定数
a:(x1、y1、z1)におけるアンテナの磁界成分の強度
b:(x1、y1、z1)における基板近傍電磁界の強度
k、m、n等の定数は、後述する閾値との関係を考慮して、状況に応じて適切な値を設定することが好ましい。
(相関値を求める計算の例2)
また、上記(式1)および(式2)では、アンテナの磁界成分の強度aおよび基板近傍電磁界の強度bを用いて相関値が求められているが、上記a、bのようなスカラー値ではなく、ベクトル値でアンテナの磁界成分および基板近傍電磁界を表した値を用いて相関値を求めることもできる。相関値生成部53は、例えば、(x1、y1、z1)におけるアンテナの磁界成分ベクトルa=(ax、ay、az)と、(x1、y1、z1)における基板近傍電磁界ベクトルb=(bx、by、bz)とを用いて、下記(式3)により相関値Aを求めることができる。
(式3)
A={(ax・bx)2+(ay・by)2+(az・bz)2}1/2
上記(式3)は、ベクトルaのxyz成分(ax、ay、az)とベクトルbのxyz成分(bx、by、bz)のそれぞれの積で表されるベクトル(ax・bx、ay・by、az・bz)の大きさを相関値Aとしている。また、相関値生成部53は、xyz成分のうち少なくとも1つの成分における積で相関値Aを求めてもよい。例えば、x成分における積ax・bxおよびy成分における積ay・byを用いて、下記(式4)により相関値Aを求めることもできる。
(式4)
A={(ax・bx)2+(ay・by)2}1/2
相関値生成部53は、上記(式4)のようにz成分の積を省略してzy成分についての積を用いて相関値を求めることで、xyz成分の積を用いる場合に比べて計算量を少なくすることができる。
(相関値を求める計算の例3)
上記式1〜4に示す例では、1つの点(x1、y1、z1)におけるアンテナの磁界成分と、その点(x1、y1、z1)における基板近傍電磁界と基づいて相関値を求めているが、例えば、1つの点(x1、y1、z1)におけるアンテナの磁界成分と、その点(x1、y1、z1)およびその点の周辺に位置する複数の点における基板近傍電磁界とに基づいて相関値を求めることもできる。例えば、(x1、y1、z1)の周辺の3点(x2、y2、z2)、(x3、y3、z4)、(x4、y4、z4)における基板近傍電磁界の強度をそれぞれ、c、d、eとすると、例えば、下記(式5)により相関値を求めることができる。下記(式5)において、Mは定数である。
(式5)
A=M(a・b+a・c+a・d+a・e)
相関値生成部53は、上記(式5)のように、複数の点における基板近傍電磁界強度と、1つの点におけるアンテナの磁界成分の強度と用いて相関値Aを求めることにより、複数の点における基板近傍電磁界とアンテナの磁界成分との相互作用を考慮して相関値を求めることができる。また、相関値生成部53は、例えば、複数の点におけるアンテナの磁界成分の強度と、1つの点における基板近傍電磁界の強度とを用いて相関値を求めてもよいし、アンテナの磁界成分および基板近傍電磁界をベクトルで表したデータを用いて相関値を求めてもよい。
以上に示した計算により、相関値生成部53は、アンテナ電磁界分布測定部12および基板近傍電磁界分布測定部13が測定した領域内の全ての測定位置について相関値を求める。その結果、相関値の分布が得られる。例えば、ある平面において測定されたアンテナの磁界分布と、その平面と略同一平面において測定された基板近傍電磁界分布から、その平面における相関値の分布が得られる。すなわち、不要輻射ノイズの基板近傍電磁界分布と、電子機器の送受信時におけるアンテナの磁界分布の2つの分布図を組み合わることにより相関値分布を求めることができる。
なお、相関値を求める計算式は、上記の例に限られない。例えば、計算式は、送受信障害の問題発生有無に基づき、携帯電話システムごとに任意に設定されてもよい。
比較部54は、ステップS17で生成された相関値と、あらかじめ別の方法によって算出され、記憶部18に保存されている判定閾値(X)とを比較する(ステップS18)。比較部54は、例えば、相関値Aが閾値Xより小さい(X>A)場合は、不要輻射ノイズによる電子機器の送受信障害は発生しないと判断し、相関値Aが閾値X以上の場合は、不要輻射ノイズによる電子機器の送受信障害が発生すると判断することができる。この比較は、ステップS17で生成される相関値全てについて行うことが好ましい。ステップS17において、アンテナ電磁界分布測定部12および基板近傍電磁界分布測定部13が測定した領域内の全ての測定位置について相関値が求められるので、それぞれの測定位置における相関値について、上記比較処理を行うことにより、測定位置ごとに送受信障害発生の有無を判断できることになる。送受信障害が有ると判断された測定位置は、送受信障害の発生箇所と認識されてもよい。判断結果は、結果データとして記憶部18に保存される。
ここで、判定閾値(X)の算出方法の例を説明する。例えば、W−CDMA方式を用いた携帯電話は、市場に出荷されるために必要な仕様が3GPP(3rd Generation Partnership Project)において規格化されている。その規格のなかで、送受信障害を起こさないために必要な仕様として受信感度があり、その値は−117dBm/3.84MHzと規定されている。つまり、入力電力が−117dBm/3.84MHzよりも大きい場合には必ず、受信が出来なければならないことを意味している。
携帯電話がこの受信感度を達成するためには、アンテナが受信する不要輻射ノイズ量をある一定の基準値以下まで下げる必要がある。不要輻射ノイズは受信感度特性を劣化させる要因であるからである。
アンテナが受信する不要輻射ノイズは、例えば、図5に示す構成を用いて測定することができる。図5は、携帯電話のアンテナが受信する電波を測定するための構成を示す図である。図5に示すように、携帯電話14のアンテナ32に、RF回路ブロック33と外部端子66との接続を切り替えるスイッチ65を設けて、外部端子66に測定器64を接続し、スイッチ65を外部端子66側へ切り替えることによって、アンテナ32が受信する電磁波を測定することができる。測定器64として、例えば、スペクトラムアナライザ、ベクトルシングルアナライザ等を用いることができる。
まず、携帯電話14において、アンテナの送受信を行わず、例えば、カメラやSDカード(メモリカード)等、送受信機能以外の機能を動作させた状態すなわち不要輻射ノイズのみが放射されている状態で測定を行うことにより、アンテナが受信する不要輻射ノイズを測定することができる。
このようにして測定された不要輻射ノイズ強度が基準値以下を実現した場合、その測定時と同じ条件で、アンテナ送受信機能をさらに動作させてアンテナの磁界分布および基板近傍電磁界分布を測定し(ステップS11〜S16)、相関値分布を算出する(ステップS17)。そこで得られた相関値分布中の最大値を判定閾値とすることができる。
以上のように、アンテナ特性と不要輻射ノイズ量の間の密接な関係を考慮して、送受信障害を起こさないために必要な判定閾値(X)を求めることが好ましい。なお、閾値Xの算出方法は上記例に限られない。例えば、経験則に基づいて適切な値を設定してもよい。
再び、図4を参照して、比較処理(ステップS18)の後、基板設計データ入力部55は、CADシステム57から、基板14aの基板の構造を表す基板設計データを入力する(ステップS19)。基板設計データには、例えば、基板に実装される部品の配置や配線パターン、部品の大きさ、高さ等を表す設計データが含まれる。
指針情報生成部56は、ステップS18の比較処理の結果データと、ステップS19で入力された基板設計データに基づいて、基板14aの設計の指針となる情報を生成する(ステップS20)。例えば、指針情報生成部56は、比較処理(ステップS18)の結果データに含まれる送受信障害発生位置と、基板設計データに含まれる基板上の実装部品の位置とを比較することで、送受信障害の原因となっている実装部品を特定することができる。さらに、指針情報生成部56は、過去の事例データ等から、送受信障害を避けるために部品の最適な実装位置を示す情報を生成してもよい。また、指針情報生成部56は、複数の実装部品が送受信障害の原因となっている場合には、予め複数の部品について決められている優先順位にしたがって、最適な実装位置またはノイズ対策部品の選定を示す情報を生成することができる。指針情報生成部56が生成した情報は、設計指針データとして記憶部18に保存される。
出力部19は、比較処理(ステップS18)の結果データおよび設計指針データ生成処理(ステップS20)で生成された設計指針データをディスプレイ等に表示する(ステップS21)。
図6は、結果データを表示した場合の表示例を示す図である。図6(a)は、相関値生成処理(ステップS17)で生成された相関値のXY平面に平行な面における分布を表示した例を示す図である。図中最も濃く表示された部分61が、比較処理(ステップS18)で、不要輻射ノイズによる送受信障害が有ると判断された箇所である。図6(b)は、相関値生成処理(ステップS17)で生成された相関値の分布を3次元的に表示した例を示す図である。設計者は、設計初期の段階の試作品について測定による結果データを、図6(a)および図6(b)に示すような表示を見ることによって、送受信障害の発生有無および送受信障害の発生箇所を設計初期の段階で把握することができる。
また、出力部19は、基板設計データ入力処理(ステップS19)で入力された基板設計データを用いて、相関値分布と基板の構造を対比できるように重ね合わせて表示することもできる。さらに、出力部19は、設計指針データとして、送受信障害の原因となる基板上の実装部品や、送受信障害を回避するための好ましい設計例を表示してもよい。指針情報生成部56が、例えば上記のように、過去の事例から対策を示す情報を生成し、出力部19がその情報を表示することにより、経験の浅い設計者でも設計できるような情報を得ることができる。このようなアドバイザ機能を装置に付加することにより、汎用的で親切な設計支援装置が提供されることとなる。
設計者は、出力部19で出力された設計指針データに基づいて、CADシステム57を用いて基板設計データを適切な設計に変更することができる。また、CADシステム57が、記憶部18に記憶された設計指針データを自動的に読み込んで、設計指針データに基づいて基板設計データを変更する態様とすることができる。
なお、CADシステム57は、計算機15内に設けられてもよい。その場合、CADシステム57で生成される基板設計データも、記憶部18に記憶される。
出力部19は、上記の情報の他に、例えば、アンテナの磁界分布の測定結果や基板近傍電磁界分布の測定結果等を表示することもできる。また、携帯電話等の電子機器の形状を表す二次元、三次元のグラフィックデータを表示することもできる。
以上、設計支援装置100の動作について説明したが、設計支援装置100の動作の順番は、図4に示すフローチャートの順番に限られない。例えば、ステップS19の基板設計データ入力処理は、ステップS17の前に行ってもよい。
また、基板設計データ入力処理(ステップS19)および設計指針データ生成処理(ステップS20)は、状況に応じて省略することもできる。さらに、比較処理(ステップS18)を省略して、相関値生成処理(ステップS17)で得られた相関値の分布を出力部19で表示するだけでも、設計者は、その表示を見ることによって、不要ノイズがアンテナの磁界成分に及ぼす影響についての情報を得ることができる。例えば、設計者が、ノイズ対策のために携帯電話の設計変更を行い、設計変更後の測定により算出された相関値分布の表示を見ることで、ノイズ対策による効果を携帯電話端末の実使用時を想定しながら定量的に把握することができる。
本発明の実施形態によれば、アンテナの磁界分布と基板近傍電磁界分布の2つのパラメータを任意の計算式に代入して相関値を算出し、この相関値と閾値とを比較することにより、不要輻射ノイズに起因する電子機器の送受信障害との因果関係を判定することができる。すなわち、不要輻射ノイズによる送受信障害発生の有無および発生箇所を特定することができる。その結果、携帯電話をはじめとする無線機器等の電子機器の設計初期段階で問題箇所を事前に把握することができる。
また、計算機15においては、電子機器のプリント回路基板から発生する不要輻射ノイズの基板近傍電磁界分布と、電子機器が送受信する時のアンテナの磁界分布との組み合わせ計算により相関値分布が求められる。この相関値分布により、不要輻射ノイズの影響も加味された電子機器の実使用時に近い状態でのアンテナの磁界分布を得ることができる。実使用時に近い状態でのアンテナの磁界分布に基づいて、例えば、アンテナの指向性、利得および効率等のアンテナの主要特性を計算することもできる。
通常、携帯電話で用いるアンテナの評価方法としては、アンテナのみを動作させた際の評価が行われている。しかし、携帯電話において、ディスプレイやカメラ、SDカード(メモリカード)等が動作する状態では、CPU、電源、メモリなどICが動作し、これらICが不要輻射ノイズの波源となるので、アンテナのみを動作させた場合に比べて、アンテナ特性が大きく変化することが予想される。そこで、上記のように実使用時に近い状態でのアンテナの磁界分布に基づいてアンテナ特性の評価を行うことで、実使用状態に近い状態のアンテナ特性を評価することができる。
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2にかかる設計支援装置における計算機15の構成を表す機能ブロック図である。図7に示す設計支援装置102が、図3に示す設計支援装置100と異なる点は、演算部17がデータ修正部58をさらに備えている点である。図7に示す設計支援装置102において、図3に示す設計支援装置100と同じ部分には同じ番号を付し、その説明は省略する。
図8は、アンテナの磁界分布および基板近傍電磁界分布の測定位置を説明するための図である。図8(a)において、破線で表された平面40aは、基板近傍電磁界分布測定面の一例を示す。すなわち、平面40a上を検出器13bが走査することにより、平面40aにおける基板近傍電磁界分布が測定される。通常の基板近傍電磁界分布測定は基板14aから発生する不要輻射ノイズを評価するため、基板14aの表面から任意の高さにおいて測定することが多い。平面40aは、基板14aの表面からz方向に高さhだけ移動した平面である。
図8(b)において、破線で表された平面40bは、アンテナ磁界分布測定面の一例を示す。アンテナの磁界分布は、基板近傍電磁界分布測定面よりも、基板14aから離れた位置で測定される場合がある。例えば、基板14aが携帯電話の場合は、基板が剥き出しの状態で測定するのではなく、筐体(図示せず)内に基板が実装された状態で測定される場合が多いからである。平面40bは、基板14aの表面からz方向に高さg(g>h)だけ移動した平面である。
図8(a)および(b)に示すように、異なる平面で基板近傍電磁界分布およびアンテナの磁界分布が測定された場合、基板近傍電磁界の測定位置とアンテナの磁界成分の測定位置が常に異なるので、これらの分布データを基に相関値分布を求めることはできない。仮に、相関値を求める上記式(2)A(x1、y1、z1)=ma・bにおいて、aおよびbを以下のように代入して相関値を求めると、aとbは、異なる位置での値なので、計算過程または判定過程で不都合が生じる可能性が考えられる。
a:(x1、y1、z0+g)におけるアンテナの磁界成分の強度
b:(x1、y1、z0+h)における基板近傍電磁界の強度
z0:基板14aの表面のz座標
そこで、データ修正部58は、記憶部18に記憶されたアンテナ磁界分布データおよび基板近傍電磁界分布データの少なくとも1つを変換して、アンテナ磁界分布データと基板近傍電磁界分布データが略同じ範囲の分布を表すようにする。
通常、基板から放射される電磁波の強度は、基板からの距離rによって変化する。すなわち、基板から放射される電磁波の強度は、基板14aからの距離をrとすると、基板に近い所では、1/r3に比例し、ある距離を超えると1/r2、さらにある距離を超えると1/rに比例することが知られている。このような関係を用いて、gとhの距離の差を考慮すると、平面40a上の電磁波の強度は、平面40b上の電磁波の強度に変換することができる。このように、データ修正部58は、任意の平面におけるアンテナの磁界分布および基板近傍電磁界分布を、任意の平面に垂直な方向に移動する機能を備えることができる。
なお、データ修正部58は、平面40aにおける基板近傍電磁界分布を平面40bにおける分布に変換してもよいし、平面40bにおけるアンテナの磁界分布を平面40aにおける分布に変換してもよい。また、平面40aにおける基板近傍電磁界分布および平面40bにおけるアンテナの磁界分布の両方を、例えば、基板14aの表面等、所定の基準面における分布に変換してもよい。また、測定平面が複数存在する場合や、測定面が平面でなく球面である場合にも同様に変換することができる。
(実施の形態3)
図9は、実施の形態3にかかる設計支援装置の構成を表す機能ブロック図である。図9に示す設計支援装置103は、図3に示す設計支援装置100と以下の点を除いて同じであるので、同様の部分には同様の番号を付し、その説明を省略する。
図9に示す設計支援装置103が、図3に示す設計支援装置100と異なる点は、アンテナ電磁界分布測定部12、基板近傍電磁界分布測定部13および制御部59の替わりに、アンテナ磁界分布解析部62および基板近傍電磁界分布解析部63が設けられている点である。すなわち、アンテナ電磁界分布入力部51が入力するアンテナ磁界分布および基板近傍電磁界分布入力部52が入力する基板近傍電磁界分布が、測定結果でなく、シミュレーション結果という点が異なる点である。
アンテナ電磁界分布解析部62および基板近傍電磁界分布解析部63として、例えば、市販の電磁界シミュレータ、EMIシミュレータまたは自作の解析プログラム等を用いることができる。アンテナの磁界分布および基板近傍電磁界分布をシミュレーションによって得ることで、実際に試作品を作って測定する必要がないので、比較的簡単にこれら2つの分布を得ることができる。
なお、図9においては、計算機15内にアンテナ電磁界分布解析部62および基板近傍電磁界分布解析部63が設けられているが、これらが外部のPC等に設けられる構成とすることもできる。
次に、設計支援装置103の動作について、図を用いて説明する。図10は、設計支援装置103における処理の動作を示すフローチャートである。
まず、アンテナ電磁界分布解析部62および基板近傍電磁界分布解析部63は、解析条件を設定する(ステップS31、S32)。設定される解析条件は、例えば、解析対象の電子機器(一例として携帯電話)の構造を表すデータ、電子機器を構成する材料の材料定数(例えば、比誘電率、比透磁率、損失を表す材料定数等)、入出力における励振条件、解析領域(範囲)、解析領域を閉空間にするための境界条件等である。電子機器の構造を表すデータは、例えば、CADシステム57から供給されてもよい。
アンテナ電磁界分布解析部62は、設定された解析条件に基づいて、解析対象となる電子機器周辺のアンテナの磁界分布をシミュレーションによって解析する(ステップS33)。解析結果として、例えば、解析対象である電子機器の近傍平面におけるアンテナ磁界分布を表すデータが得られる。
基板近傍電磁界分布解析部63は、設定された解析条件に基づいて、解析対象となる電子機器周辺の基板近傍電磁界分布をシミュレーションによって解析する(ステップS34)。解析結果として、例えば、解析対象である電子機器の近傍平面における基板近傍電磁界分布を表すデータが得られる。
アンテナ電磁界分布入力部51は、アンテナ磁界分布解析(ステップS33)の解析結果を記憶部18へ保存する(ステップS15)。
基板近傍電磁界分布入力部52は、基板近傍電磁界分布解析(ステップS34)の解析結果を記憶部18へ保存する(ステップS16)。
ステップS15およびステップS16以降の処理は、実施の形態1における設計支援装置100の処理(図4参照)と同様であるので、説明を省略する。
(実施の形態4)
本実施形態は、実施の形態3における設計支援装置103の動作の変形例である。図11は、本実施形態における設計支援装置103の動作を示すフローチャートである。図11に示す処理は、CADシステム57で、異なる形状の筐体を持つ複数の携帯電話の構造を表すデータが作成された場合に、それぞれの携帯電話について解析を行う場合の処理の例である。
まず、アンテナ電磁界分布解析部62および基板近傍電磁界分布解析部63は、1番目の携帯電話の構造を表すデータをCADシステム57から取得して、解析条件として設定する(ステップS31、S32)。その他の解析条件として、実施の形態3と同様に、材料定数、励振条件、解析領域、境界条件等が設定される。
次に、アンテナ電磁界分布解析部62は、設定された解析条件に基づいて、解析対象となる電子機器周辺のアンテナの磁界分布をシミュレーションによって解析する(ステップS33)。解析によって得られるアンテナ磁界分布データは、記憶部18へ保存される(ステップS15)。
基板近傍電磁界分布解析部63は、設定された解析条件に基づいて、解析対象となる電子機器周辺の基板近傍電磁界分布をシミュレーションによって解析する(ステップS34)。解析によって得られる基板近傍電磁界分布は、記憶部18へ保存される(ステップS16)。
相関値生成部53は、記憶部18へ保存されたアンテナ磁界分布データおよび基板近傍電磁界分布データを読み出して、相関値分布データを生成する(ステップS17)。相関値分布データの生成処理は、実施の形態1における相関値生成処理(図3のステップS17)と同様の処理によって行うことができる。
相関値分布データは、例えば、解析領域内の相関値の分布を表すデータである。すなわち、相関値分布データは、一例として、解析領域内の複数の点それぞれにおける相関値の集合で表現される。
相関値生成部53は、相関値分布データを用いて、評価値を算出する(ステップS17a)。相関値生成部53は、例えば、相関値分布データで表される相関値の集合のうち、最大値を評価値として生成する。この場合、評価値は、基板近傍電磁界がアンテナの磁界成分に及ぼす影響の度合いが最も大きい点の相関値を示すことになる。
なお、評価値は、最大値に限られない。例えば、相関値の集合のうちの最小値、相関値の平均値、相関値の和、相関値の積等であってよい。
上記ステップS17aの処理により、1番目の携帯電話の構造を表すデータについて、評価値が生成されると、設計支援装置103は、CADシステム57に解析対象となる携帯電話の構造を表すデータが存在するか否かを判断する(ステップS17b)。解析対象となるデータが存在すると判断されれば、そのデータを解析条件として、アンテナ電磁界分布解析部62および基板近傍電磁界分布解析部63が、解析条件設定(ステップS31、S32)を行う。以降、ステップS33、S15、S34、S16、S17、S17aの処理が設定された解析条件に従って繰り返される。
このようにして、CADシステム57で作成された、異なる形状の筐体を持つ複数の携帯電話の構造を表すデータについて、それぞれ評価値が生成される。出力部19は、それらの評価値を対比可能なようにディスプレイ等に表示する(ステップS21)。設計者は、出力部19による表示を見ることにより、CADシステム57で作成された複数の携帯電話の構造を表すデータの評価値を比較することができる。
以上のように、実施の形態1〜4によれば、アンテナの磁界分布と基板近傍電磁界分布の2つの分布から計算される値と、送受信障害が起こらないために必要な判定閾値と比較することによって、プリント回路基板に実装する半導体ICや各部品間に引き回される配線パターンに流れる高周波電流に起因する不要輻射ノイズによる送受信特性への影響を、簡単な構成で容易に把握することができる。さらに、ノイズ対策による効果を携帯電話端末の実使用時を想定しながら定量的に把握することができる。携帯電話端末の設計過程において、設計支援装置が、図4および図10に示すフローチャートの処理を行うことで開発期間の短縮化ができ、開発投資の低減も行うことができる。
なお、実施の形態1〜4における設計支援装置は、電磁波解析装置として利用することもできる。
(実施の形態5)
本実施形態は、携帯電話をはじめとする電子機器の送受信障害を、電子機器の実使用に近い状態で評価する電磁波解析装置に関するものである。本実施形態において評価の対象となる送受信障害は、主に、電子機器の回路基板から放射された不要輻射ノイズがアンテナを介して無線回路に回り込むことによって起こる送受信障害である。
図12は、本実施形態にかかる電磁波解析装置の構成を表す機能ブロック図である。
図12に示す電磁波解析装置10は、電子機器(例えば、携帯電話等)の回路基板の設計データを解析する。すなわち、電磁波解析装置10は、回路基板における部品配置が、電子機器の送受信機能に与える影響についての情報を得るためのシステムである。
電磁波解析装置10は、アンテナ電磁界分布入力部51、位置入力部47、周波数入力部46、抽出部45、判定部44、指針情報生成部42、出力部19および記憶部18を備える。また、電磁波解析装置10は、アンテナ電磁界分布データベース9およびCADシステム57と接続されている。
アンテナ電磁界分布データベース9には、アンテナ磁界分布データが保存されている。
CADシステム57には、解析対象となる電子機器の設計データが保存されている。CADシステム57に保存されている設計データには、位置データおよび動作周波数データが含まれている。
記憶部18には、周波数帯域データが保存されている。周波数帯域データは、解析対象の電子機器が送受信する電磁波の周波数帯域を表すデータである。
アンテナ電磁界分布入力部51は、アンテナ電磁界分布データベース9に保存されたアンテナ磁界分布データを読み込み、抽出部45がアンテナ磁界分布データを利用できるようにする。また、アンテナ電磁界分布入力部51は、設計者からマウスやキーボードを介して直接データの入力を受け付けてもよい。アンテナ磁界分布データの詳細は後述する。
位置入力部47は、CADシステム57に保存された位置データを読み込み、抽出部45および判定部44が利用できるようにする。位置データの詳細は後述する。
周波数入力部46は、CADシステム57に保存された動作周波数データを読み込み、判定部44が利用できるようにする。動作周波数データの詳細は後述する。
抽出部45は、アンテナ電磁界分布入力部51が読み込んだアンテナ磁界分布データと、位置入力部47が読み込んだ位置データとに基づいて、電子機器の送受信機能に影響を与える可能性のある部品の端子を位置データより抽出する演算を行う。
判定部44は、位置入力部47が読み込んだ位置データと、周波数入力部46が読み込んだ動作周波数データと、記憶部18に記憶された周波数帯域データとに基づいて、位置データによって表される部品の端子が、電子機器の送受信機能に影響を与えるか否かを判定する演算を行う。
指針情報生成部42は、抽出部45と判定部44の演算結果に基づいて、電子機器の設計の指針となる情報を生成する。
出力部19は、抽出部45および判定部44の演算結果並びに指針情報生成部42が生成した情報をCADシステム57に出力する。また、出力部19は、ディスプレイやプリンタ等の出力機器により、設計者が確認できるように上記の情報を出力してもよい。
電磁波解析装置10は、例えば、EWS(Engineering Work Station)やPC(Personal Computer)等の汎用機器(以下、PC等と称す。)を用いて構成することができる。アンテナ電磁界分布入力部51、位置入力部47、周波数入力部46、抽出部45、判定部44および指針情報生成部42の機能は、PC等のCPUが、所定のプログラムを実行することによって実現することができる。記憶部18には、PC等に内蔵されているハードディスク、RAM等の記憶媒体の他、フレキシブルディスク、メモリカード等の可搬型記憶媒体や、ネットワーク上にある記憶装置内の記憶媒体等を用いることができる。出力部19には、PC等のディスプレイを含む表示装置やプリンタ等の出力装置を含めることができる。
また、アンテナ電磁界分布入力部51、位置入力部47、周波数入力部46、抽出部45、判定部44および指針情報生成部42が行う処理をコンピュータに実行させるプログラムを、例えば、CD−ROM等の記憶媒体から、あるいは通信回線を介したダウンロード等により、任意のPC等へインストールすることによって、電磁波解析装置10を構築することができる。
なお、ハードウエア構成は、図12に示す構成に限られない。例えば、インターネットやLAN等により通信可能となるように接続された複数のPC等に、電磁波解析装置10の機能を分散させてもよい。また、1台のPC等にCADシステム57、アンテナ電磁界分布データベース9および電磁波解析装置10を構成することもできる。
次に、電子機器の設計において、電磁波解析装置10が行う電磁波解析処理の動作について説明する。一例として、携帯電話の設計における処理を説明する。
図13は、携帯電話の設計の流れを示すフローチャートである。携帯電話の設計には、仕様設計ステップ(S1)、回路設計ステップ(S2)、レイアウト設計ステップ(S3)、試作・評価ステップ(S6)がある。レイアウト設計ステップ(S3)には、回路基板上にICやチップ素子等のデバイスを配置する部品配置ステップ(S4)およびIC間の配線を行う配線設計ステップ(S5)がある。本実施形態における電磁波解析装置10の処理は、主に、部品配置ステップ(S4)における電磁波解析の処理に関する。
部品配置ステップ(S4)においては、まず、携帯電話の回路基板に設けられるIC等の部品の配置が設計される(S41)。部品配置設計では、CADシステム57において、回路基板上のICの配置を表す位置データが作成され、保存される。位置データには、例えば、ICが備える電源端子、クロック端子、信号端子、グランド端子等の位置を表す情報が含まれる。
また、回路基板上に配置されるICの動作周波数データもCADシステム57において決定され、保存される。ICの動作周波数データには、例えば、ICの電源端子、クロック端子、信号端子、グランド端子等の各端子を通じて伝送される信号の周波数が含まれる。
次に、ステップS41で設計された部品配置が、携帯電話の送受信機能に与える影響を調べるための電磁波解析が、電磁波解析装置10によって行われる(S42)。
電磁波解析(S42)の結果、部品配置の設計変更が必要と判断された場合(ステップ
S43でYESの場合)、再度、部品配置の設計(S41)が行われる。電磁波解析の結果、部品配置の設計変更は不要と判断された場合(ステップS43でNOの場合)、部品配置(S4)は終了し、配線設計(S5)が行われる。
図14は、電磁波解析(S42)の詳細な処理を示すフローチャートである。以下、図12および図14を参照して、電磁波解析(S42)処理について説明する。
まず、位置入力部47が、CADシステム57の設計データに含まれるICの位置データを読み込む(S421)。
図15(a)は、位置データによって表される回路基板上に配置されたICの例を示す図である。図15(a)において、回路基板71に平行な面をXY平面、回路基板71に垂直な方向をZ軸方向とする。図15(a)は、回路基板71をZ軸方向から見た平面図である。
回路基板71には、IC2aおよびIC2bが実装されている。IC2aは、電源端子3、クロック端子4、信号端子5、グランド端子6を備える。
回路基板71は、一例として、携帯電話のメイン基板である。IC2a、2bは、例えば、メモリ、CPU(Central Processing Unit)または電源IC等である。回路基板71はアンテナ(図示せず)を介して電磁波の送受信を行う。例えば、回路基板71を含む携帯電話が、通話やインターネットアクセス等を無線通信によって行う場合、前記アンテナから電磁波が送信され、または、前記アンテナで電磁波が受信される。
図15(a)に示すようなICの位置データが読み込まれると、次に周波数入力部46は、CADシステム57の設計データに含まれるICの動作周波数データを読み込む(図14のS422)。動作周波数データは、例えば、ICのスペック情報として、IC供給メーカーから提供されている情報を用いることができる。
アンテナ電磁界分布入力部51は、アンテナ電磁界分布データベース9からアンテナ磁界分布データを読み込む(S423)。
アンテナの磁界成分とは、例えば、携帯電話等の電子機器が備えるアンテナを介して送受信される電磁波の磁界成分である。アンテナの磁界成分を電流で表したものをアンテナ電流と称する。ここで、電子機器におけるアンテナは、部品として実装されたアンテナのみでなく、電子機器において、実質的にアンテナとして機能している部材全てを含むものとする。例えば、図15(a)に示すような回路基板71もアンテナの一部として動作する。その場合、アンテナ電流が回路基板71を流れる。また、携帯電話においては、部品として実装されたアンテナに加えて、携帯電話の筐体(フレーム)の一部または全体、携帯電話の内部に設けられたコネクタや鉄板がアンテナとして機能する場合がある。したがって、アンテナ電流は、携帯電話の筐体、基板等、携帯電話を構成する全ての有体物に流れる可能性がある。すなわち、アンテナの磁界は、有体物中にも発生する。
アンテナ磁界分布データは、例えば、分布領域内の各位置を示す座標と、各座標におけるアンテナ電流の値とで構成される。
図15(b)は、回路基板71の周辺部におけるアンテナ電流分布7の例である。アンテナ電流分布7は、例えば、回路基板71から一定の距離だけ離れた場所に位置する携帯電話の筐体を流れるアンテナ電流の分布を表す。
図15(b)において、回路基板71に平行な面をXY平面、回路基板71に垂直な方向をZ軸方向とする。アンテナ電流分布7は、アンテナ電流分布入力ステップ(S423)で入
力されたアンテナ磁界分布データによって表される。アンテナ電流分布7は、XY平面に平行な平面であって、回路基板71と一定に距離を有する平面上で、回路基板71とZ軸方向に重なる領域におけるアンテナ電流の分布を表している。アンテナ電流分布7のXY平面における分布領域と、回路基板71のXY平面における領域は同じである。
アンテナ電流分布7は、所定の周波数(例えば、750MHz)におけるアンテナ電流の分布を表している。アンテナ電流の周波数は、回路基板71がアンテナを介して送受信を行う電磁波の周波数帯域(例えば、700MHz〜800MHz)に含まれる周波数である。
アンテナ電流分布7において、斜線でハッチングされた部分8は、アンテナ電流が予め決めておいた閾値を超えている部分を表している。図15(c)は、IC2aとアンテナ電流分布が閾値を超えている部分8とを重ねて表示した図である。
アンテナ電磁界分布データベース9には、複数の電子機器についてのアンテナ磁界分布データが保存されている。保存されているアンテナ磁界分布データは、例えば、複数の携帯電話の回路基板について実際に測定されたデータである。過去に開発した様々な回路基板について測定されたアンテナ電流分布を蓄積してデータベース化することができる。複数のアンテナ磁界分布データを識別するために、アンテナ磁界分布データごとにID(ID=1〜4)が割り当てられている。
図16は、アンテナ電磁界分布データベース9に保存されている携帯電話の回路基板のアンテナ磁界分布データに対応付けられるデータの例である。図16に示す例では、それぞれのアンテナ磁界分布データに、携帯電話の種類、周波数、使用するアンテナが対応付けられて保存されている。このように、アンテナ磁界分布データに関わるデータを対応付けておけば、解析対象の回路基板の設計データに対応したアンテナ磁界分布データをアンテナ電磁界分布データベース9から検索することができる。
図16における携帯電話の種類は、例えば、W−CDMA(Wideband―Code Division Multiple Access)やGSM(Global
System for Mobile Communications)等のシステム種別や、型番名等とすることができる。
なお、アンテナ電磁界分布入力部51の入力処理は、上記のようにアンテナ電磁界分布データベース9に保存されたアンテナ磁界分布データを入力する場合に限られない。例えば、後述するように、測定やシミュレーションによって得られたアンテナ磁界分布データを入力する場合もある。
また、本実施形態では、アンテナを介して送受信される電磁波の分布を表すデータとしてアンテナ磁界分布データを用いているが、アンテナ電流分布の替わりに、アンテナを介して送受信される電磁波の電界成分であるアンテナ電圧の分布を表すアンテナ電圧分布データを用いることもできる。
以上のような、アンテナ磁界分布データ入力処理(S423)が終了すると、抽出部45が、ステップS421で読み込まれたICの位置データおよびステップS423で読み込まれたアンテナ磁界分布データに基づいて、携帯電話の送受信機能に影響を与える可能性のある端子を抽出する(S424)。抽出部45は、ICの端子のうち、電源端子、クロック端子、信号端子のうち少なくとも1つが、アンテナの磁界分布において予め決められた閾値を超える部分に含まれているか否かを判別する。例えば、抽出部45は、アンテナの磁界成分が閾値を超える部分に、電源端子、クロック端子、信号端子が含まれていない場合には、不要輻射ノイズによる電子機器の送受信障害が発生しないと判断する。閾値を超える部分に電源端子、クロック端子、信号端子が含まれている場合には、不要輻射ノイズによる電子機器の送受信障害が発生すると判断する。
図15を参照して、抽出部45が端子を抽出する場合の抽出方法の一例を説明する。抽出部45は、図15(b)に示すアンテナ磁界分布7が表す分布領域のうち、アンテナの磁界成分が閾値を超える部分8に対応する回路基板上の位置にある端子または配線を抽出する。
ある端子が、アンテナの磁界成分が閾値を超える部分8に含まれているか否かは、例えば、回路基板71上の端子のXY座標と同じXY座標の位置におけるアンテナの磁界成分の値が閾値を超えているか否かで判断することができる。回路基板71上の全てのクロック端子4、信号端子5、電源端子3の位置について、アンテナの磁界成分が閾値を超えているか否かを判断することで、回路基板71上で、アンテナの磁界成分が閾値を超える部分8と重なっている端子を抽出することができる。なお、上記のように、端子のXY座標と、対応するXY座標におけるアンテナの磁界成分を比較するには、回路基板71の座標系とアンテナの磁界成分分布7の座標系とが同じである必要がある。また、ある端子が、アンテナの磁界成分が閾値を超える部分8に含まれているか否かの判断方法は上記の例に限られるものではない。
図15(c)において、IC2aのクロック端子4a、4bおよび信号端子5a、5b、5cは、アンテナの磁界成分が閾値を超える部分8と重なっている。IC2aの端子のうち、クロック端子4a、4bおよび信号端子5a、5b、5cは、アンテナの磁界成分が閾値を超える部分8の中に入っている。したがって、抽出部45は、これらのクロック端子4a、4bおよび信号端子5a、5b、5cを抽出する。すなわち、クロック端子4a、4bおよび信号端子5a、5b、5cは、携帯電話における電磁波の送受信障害の原因となる可能性がある端子として抽出される。
なお、図15(c)において、クロック端子4a、4bは、端子の一部が部分8に含まれているおり、全体がそっくりアンテナの磁界成分が閾値を超える部分8に含まれているわけではない。このような場合には、クロック端子4a、4bは、送受信障害の原因となる可能性はないと判断することもできる。クロック端子4a、4bのように端子の一部が部分8と重なっている端子を問題端子として抽出するか否かは、例えば、重なり具合や端子の性質等に応じて決定されてもよい。
ここで、閾値の算出方法の例を説明する。例えば、W−CDMA方式を用いた携帯電話は、市場に出荷されるために必要な仕様が3GPP(3rd Generation Partnership Project)において規格化されている。その規格のなかで、送受信障害を起こさないために必要な仕様として受信感度があり、その値は−117dBm/3.84MHzと規定されている。つまり、入力電力が−117dBm/3.84MHzよりも大きい場合には必ず、受信が出来なければならないことを意味している。携帯電話がこの受信感度を達成するためには、アンテナが受信する不要輻射ノイズ量をある一定の基準値以下まで下げる必要がある。不要輻射ノイズは受信感度特性を劣化させる要因であるからである。このような所望の受信感度を実現できるように、閾値を算出することができる。
再び図14を参照して、判定部44は、抽出部45が抽出した端子について、携帯電話の送受信機能に与える影響の有無を判定処理する(S425)。すなわち、アンテナの磁界成分が閾値を超える部分に対応する位置に配置された端子について判定処理が行われる。判定部44は、回路基板上に配置されたICの端子の動作周波数と、解析対象である携帯電話の周波数とを比較することによって、回路基板上に配置されたICの端子が、携帯電話の送受信機能に影響を与えるか否かを判定する。
判定部44による判断の方法は複数存在する。まず第1の判断方法を以下に説明する。
判定部44は、ステップS424で抽出されたICの端子の動作周波数および動作周波数の整数倍となる逓倍周波数が、解析対象の携帯電話が送受信を行う電磁波の周波数帯域(以下、携帯電話の周波数帯域と称する。)に含まれるか否かを判別する。ICの端子の動作周波数または逓倍周波数が、携帯電話の周波数帯域に含まれる場合、そのICの端子は、携帯電話の送受信機能に影響を与えると判断される。
例えば、図15(c)において、抽出された端子の1つである信号端子5aの動作周波数が375MHzであり、解析対象の携帯電話の周波数帯域が700MHz〜800MHzであるとする。この場合、動作周波数375MHzの2倍は750MHzであり、携帯電話の周波数帯域に含まれる。したがって、信号端子5aは、携帯電話の送受信機能に影響を与える端子であると判断される。
また、判定部44は、携帯電話の周波数帯域に含まれる所定の周波数と動作周波数とが一致するか否かを判断してもよい。例えば、携帯電話の周波数帯域700MHz〜800MHzに含まれる周波数750MHzと端子の動作周波数と比較することができる。端子の動作周波数が750MHzと一致する場合には、その端子は、携帯電話の送受信機能に影響を与える端子であると判断される。
次に、上記判断方法と異なる第2の判断方法について説明する。
判定部44は、回路基板に配置されたICの端子の動作周波数または動作周波数の整数倍となる逓倍周波数が、解析対象の携帯電話で送信される電磁波の周波数(以下、送信周波数と称する。)と、携帯電話で受信される電磁波の周波数(以下、受信周波数と称する)との差に一致または近接するか否かを判別する。ICの動作周波数または逓倍周波数が、送信周波数と受信周波数との差に一致または近接する場合、そのICの端子は、携帯電話の送受信機能に影響を与えると判断される。
例えば、図15(c)において、抽出された端子の1つである信号端子5aの動作周波数が50MHzであり、送信周波数Aが700MHz、受信周波数Bが800MHzであるとする。この場合、動作周波数50MHzの2倍は100MHzであり、携帯電話の送信周波数Aと受信周波数Bの差(|800MHz−700MHz|=100MHz)と一致する。したがって、信号端子5aは、携帯電話の送受信機能に影響を与える端子であると判断される。
ここで、携帯電話の送信周波数Aと受信周波数Bの差(|A−B|)はある程度の幅を持つ値であってもよい。例えば、送信周波数Aの帯域が790MHz〜810MHzであり、受信周波数Bの帯域が890MHz〜910MHzであるとする。この場合、送信周波数Aと受信周波数Bの差(|A−B|)は、80MHz〜120MHzの範囲の値をとり得る。例えば、信号端子5aの動作周波数51MHzであった場合、その2倍(102MHz)が、80MHz〜120MHzに含まれるので、判定部44は、信号端子5aが携帯電話の送受信機能に影響を与える端子であると判断することができる。
なお、判定部44は、送信周波数Aと受信周波数Bとの差(|A−B|)を動作周波数と比較する場合のほかに、例えば、これらの和(|A+B|)や、|A+(B/2)|等の値を動作周波数またはその整数倍と比較してもよい。
再び図14を参照して、以上のように、ステップS424で抽出部45が抽出した端子について、さらに判定部44が、ステップS425において判定を行うことによって、携帯電
話の送受信機能に影響を与える可能性のより高い端子を抽出することができる。
端子抽出ステップ(S424)および判定ステップ(S425)が終了すると、指針情報生成部42が、抽出部45が抽出した端子、または判定部44が携帯電話の送受信機能に影響を与えると判定した端子について、設計変更するための指針となる情報を生成する(S426)。
指針情報生成部42は、例えば、図15(c)において、抽出されたクロック端子4a、4bおよび信号端子5a、5b、5cが、アンテナの磁界成分が閾値を超える部分8に重ならないように、IC2aの位置を移動またはIC2aを回転させるための情報を生成する。すなわち、指針情報生成部42は、IC2aの最適な位置を算出する。また、指針情報生成部42は、IC2aは移動させずに、IC2a内での端子の配置を変更させるための情報を生成することもできる。
また、例えば、信号端子5aの動作周波数が携帯電話の送受信電磁波の周波数帯域に含まれている場合に、信号端子5aの動作周波数を変更するための情報を生成してもよい。
出力部19は、指針情報生成部42が生成した情報をディスプレイ等に表示する(S427)。出力部19は、指針情報生成部42が生成した情報を表示することで、設計者に対して回路基板の設計に関してアドバイスするアドバイザ機能を提供することになる。そのため設計に精通していない者であっても、アドバイザ機能を参考に対策を施せば、特別な知識を必要とせず、容易に対策を行うことができる。
また、出力部19は、指針情報生成部42が生成した情報をCADシステム57へ送信してもよい。CADシステム57は、指針情報生成部42から受け取ったデータに基づいて、CADシステム57で生成された携帯電話の位置データ、動作周波数等の設計データを自動的に変更することができる。
また、出力部19は、指針情報生成部42で生成されたデータだけではなく、抽出部45で抽出された端子や、判定部44で、携帯電話の送受信機能に影響を与えると判定された端子を表すデータをそのまま出力してもよい。
なお、電磁波解析処理の順番は、図14に示すフローチャートの順番に限られるものではない。例えば、IC位置データ入力(S421)、IC動作周波数データ入力(S422)およびアンテナ磁界分布データ入力(S423)における各データの入力処理の順番は任意に決めることができる。また、これらの入力処理は同時に行われてもよい。
また、端子抽出(S424)の処理において、アンテナ磁界分布データが表す分布領域のうち、アンテナの磁界成分が予め決められた閾値を超える部分に対応する位置にある端子を抽出する処理は、1つのアンテナの磁界成分の閾値について1回のみ行う場合に限らず、複数の閾値を設定してそれぞれの閾値で行われてもよい。例えば、ある閾値を超える部分に対応する端子が多数抽出された場合に、さらに高い閾値を設定して、再度、抽出処理を行い、抽出される端子の数を絞り込むことができる。
また、本実施形態においては、端子抽出(S424)の後に判定(S425)が行われているが、判定を省略しても、回路基板上の部品配置が、携帯電話の送受信機能に与える影響についての情報を得ることはできる。
また、本実施形態においては、判定部44は、抽出部45が抽出した端子についてのみ判定処理を行っているが、判定部44は、抽出部45が抽出した端子以外の端子について判定を行ってもよい。
図17は、本実施形態における処理の変形例を示すフローチャートである。出力部19が、端子抽出ステップ(S424)および判定ステップ(S425)の処理結果を出力する場合の処理を示すフローチャートである。図17に示す処理において、図14と同じステップについては、同じステップ番号を付し、その説明を省略する。
図17に示す処理では、抽出部45による端子抽出ステップ(S424)で、端子が抽出された場合(ステップS424aでYESの場合)、指針情報生成部42が、抽出された端子について、設計変更するための指針となる情報を生成する(S426)。出力部19は、抽出された端子を表す情報および指針情報生成部42が生成した情報を出力する(S427)。同時に、設計変更が必要である旨の解析結果が出力されてもよい。この場合、判定処理(S427)は行われないで、電磁波解析処理は終了する。
出力部19は、例えば、抽出された端子だけ色を変えて、CADシステム57の設計データで表される回路基板をディスプレイ上に表示することができる。設計者は、再度、部品配置設計ステップ(図13のS41参照)に戻り、出力部19による表示を見て、ICの配置や、アンテナ特性の設計変更を検討することとなる。部品配置の設計変更がなされると、変更後の設計データについて、再度、図17に示す電磁波解析の処理が開始される。
電磁波解析の端子抽出(S424)において、端子が抽出されなかった場合(ステップS424aでNOの場合)は、判定(S425)処理が行われる。判定部44による判定(S425)で、携帯電話の送受信機能に影響を与えると判断された端子、すなわち問題端子が存在する場合(ステップS425aでYESの場合)、指針情報生成部42が、問題端子について、設計変更するための指針となる情報を生成する(S426)。出力部19が、問題端子を表す情報および指針情報生成部42が生成した情報を出力する(S427)。同時に、設計変更が必要である旨の解析結果が出力されてもよい。電磁波解析処理は終了する。設計変更が必要である旨の解析結果が出力される。
出力部19は、例えば、問題端子だけ色を変えて、CADシステム57の設計データで表される回路基板をディスプレイ上に表示することができる。設計者は、再度、部品配置設計ステップ(図13のS41参照)に戻り、出力部19による表示を見て、ICの配置方法や、アンテナ特性の設計変更を検討することとなる。部品配置の設計変更がなされると、変更後の設計データについて、再度、図17に示す電磁波解析の処理が開始される。
端子抽出(S424)で、端子は抽出されず(ステップS424aでNO)、かつ判定(S425)でも問題端子が存在しなかった場合(ステップS425aでNOの場合)、回路基板に配置されたICの端子による送受信障害は発生しないと判断される。出力部19は、その旨を解析結果として出力する(S427)。すなわち、設計変更は不要である旨の解析結果が出力される。
本実施形態によれば、アンテナの磁界分布において予め決められた閾値を超える部分と、ICの端子位置データや端子での動作周波数データを組み合わせることにより、不要輻射ノイズと電子機器の送受信障害との因果関係を解析することができる。すなわち、不要輻射ノイズによる送受信障害発生の有無および発生箇所を特定することができる。その結果、携帯電話をはじめとする無線機器等の電子機器の設計において、初期段階で問題箇所を検出することができる。
(実施の形態6)
図18は、実施の形態6にかかる電磁波解析装置の構成を表す機能ブロック図である。図18において、図12に示す機能ブロック図と同じ機能ブロックについては、同じ番号を付し、説明を省略する。
図18に示す電磁波解析装置20が図12に示す電磁波解析装置10と異なる点は、ノイズ特性入力部73と、ノイズ判定部74をさらに備える点である。また、電磁波解析装置20は、シミュレータ77とデータ通信可能なように接続されている点でも、電磁波解析装置10と異なる。
CADシステム57に保存されている設計データには、位置データ、動作周波数データに加えて、ノイズ特性データが含まれている。
ノイズ特性入力部73は、CADシステム57に保存されたノイズ特性データを読み込み、ノイズ判定部74が利用できるようにする。ノイズ特性データは、位置データで表される部品の端子または配線から発生するノイズの周波数特性を表すデータである。ノイズ特性データの詳細は後述する。
ノイズ判定部74は、位置入力部47が読み込んだ位置データと、ノイズ特性入力部73が読み込んだノイズ特性データと、記憶部18に記憶された周波数帯域データに基づいて、位置データによって表される配線が、電子機器の送受信機能に影響を与えるか否かを判定する演算を行う。ノイズ判定部74による演算の結果は、指針情報生成部42に送られる。指針情報生成部42は、ノイズ判定部74の演算結果に基づいて指針情報を生成する。
シミュレータ77は、CADシステム57で生成された回路基板の設計データを基に、回路基板の周辺の電磁界分布を計算により求める。すなわち、シミュレータ77において、解析対象である回路基板周辺のアンテナ磁界分布データが生成され、保存される。シミュレータ77には、例えば、市販の電磁界シミュレータ、EMIシミュレータまたは自作の解析プログラムで作成されたシミュレータを用いることができる。
次に、電磁波解析装置20が行う電磁波解析処理の動作について説明する。電磁波解析装置20の処理は、電子機器の設計工程中の配線設計ステップ(図13のS5参照)における電磁波解析の処理に関する。一例として、携帯電話の設計における処理を説明する。
実施の形態5では、回路基板に設けられた部品の端子が携帯電話の送受信機能に与える影響について解析する処理を例示した。これに対して本実施形態では、一例として、回路基板に設けられた配線が携帯電話の送受信機能に与える影響について解析する処理について説明する。
図19(a)は、図13に示す処理における配線設計ステップ(S5)の詳細な処理を示すフローチャートである。
配線設計ステップ(S5)においては、まず、携帯電話の回路基板に設けられるICの端子間を接続する配線の配置が設計される(S51)。CADシステム57において、回路基板に配置される配線の位置を表す位置データが作成され、保存される。位置データには、例えば、配線パターンの形状、配線が接続される端子の位置、配線が何層目にあるかという層の位置を表す情報(回路基板が他層基盤の場合)等を表すデータが含まれる。
また、回路基板に配置される配線の動作周波数もCADシステム57において決定され、保存される。配線の動作周波数とは、配線を通じて伝送される信号の周波数である。
次に、シミュレータ77が、ステップS51で設計された配線配置を有する回路基板のアンテナの磁界分布を計算により求める(S52)。回路基板が送受信を行っている状態でのアンテナの磁界分布が計算される。
次に、ステップS51で設計された配線配置が、携帯電話の送受信機能に与える影響を調べるための電磁波解析が、電磁波解析装置20によって行われる(S53)。電磁波解析には、ステップS52でシミュレータ77により求められたアンテナ磁界分布データが用いられる。
電磁波解析(S53)の結果、配線配置の設計に変更が必要と判断された場合(ステップS54でYESの場合)、再度、配線配置設計(S51)が行われる。電磁波解析の結果、配線配置の設計変更は不要と判断された場合(ステップS54でNOの場合)、配線配置(S5)は終了し、試作・評価(S6)が行われる。
図19(b)は、電磁波解析(S53)の詳細な処理を示すフローチャートである。以下、図18および図19(b)を参照して、電磁波解析(S53)の詳細な処理について説明する。
まず、位置入力部47が、CADシステム57に保存されている配線の位置データを読み込む(S531)。
図20(a)は、位置データによって表される回路基板上のICの端子間を接続する配線の例を示す図である。図20(a)において、回路基板72に平行な面をXY平面、回路基板72に垂直な方向をZ軸方向とする。図20(a)は、回路基板72をZ軸方向から見た平面図である。
回路基板72には、IC22aおよびIC22bが実装されている。IC22aは、電源端子23、クロック端子24、信号端子25a、25b、25c、グランド端子26を備える。IC22bには、信号端子27a、27b、27cが含まれる。端子27aと端子25aの間は、配線28aで接続されている。端子27bと端子25bの間は、配線28bで接続されている。端子27cと端子25cの間は、配線28cで接続されている。
周波数入力部46は、CADシステム57に保存されている配線の動作周波数を読み込む(S532)。動作周波数は、例えば、ICのスペック情報として、IC供給メーカーから提供されているものを用いることができる。
ノイズ特性入力部73は、CADシステム57に保存されている配線のノイズ特性データを読み込む(S533)。ノイズ特性データは、例えば、配線から発生する不要輻射ノイズの周波数スペクトラムで表される。
図21は、配線から発生する不要輻射ノイズの周波数スペクトラムの一例を示す図である。周波数スペクトラム31は、評価用のICおよび配線が実装された回路基板を予め測定することによって得られる。例えば、ICが単独で実装された評価基板において、ICの端子から引き出された配線から発生するノイズを測定することによって周波数スペクトラム31が得られる。ノイズの測定方法として、例えば、磁界プローブ法(MP(Magnetic Probe)法)が用いられる。
ノイズ特性データの具体例として周波数スペクトラムを挙げたが、その他として配線を流れる電流、IC全体から放射する不要輻射ノイズをノイズ特性データとして用いてもよい。これら周波数スペクトラム、電流または不要輻射ノイズを得るためには、IEC(International Electrotechnical Commission)において様々な半導体EMI標準評価手法が規格化されているので、そのうちどの評価手法を用いてもよい。規格化された半導体EMI標準評価手法には、例えば、VDE(Verband der Electrotecnik)法、TEMセル法、WBFC(Workbench Faraday cage)法等が挙げられる。ノイズ特性入力部73は、これらの様々なフォーマットのデータを読み込んで、ノイズ判定部74で利用できるようにするためのインタフェース機能を備えておくことが好ましい。
ノイズ特性データは、例えば、ICのスペック情報として、IC供給メーカーから提供されているものを用いることができる。また、予め、複数の配線パターンについて測定したものをデータベース化して保存されたデータを用いることもできる。
アンテナ電磁界分布入力部51は、シミュレータ77によって生成されたアンテナ磁界分布データを読み込む(S534)。図20(b)は、回路基板72の周辺部におけるアンテナ磁界分布29の例である。図20(b)において、回路基板72に平行な面をXY平面、回路基板72に垂直な方向をZ軸方向とする。アンテナ磁界分布29は、アンテナ磁界分布入力ステップ(S534)で入力されたアンテナ磁界分布データによって表される。アンテナ磁界分布29は、XY平面に平行な平面であって、回路基板72とZ軸方向に一定に距離を有する平面上で、回路基板72とZ軸方向に重なる領域におけるアンテナ磁界の分布を表している。図20(a)に示すアンテナ磁界分布29のXY平面における分布領域と、図20(b)に示す回路基板72のXY平面における領域は、同じXY平面上の領域である。
アンテナ磁界分布29において、斜線でハッチングされた部分30は、アンテナの磁界成分が予め決めておいた閾値を超えている部分を表している。アンテナの磁界成分および閾値については、実施の形態5と同様であるので、その説明を省略する。なお、本実施形態で用いられるアンテナの磁界成分の閾値は、実施の形態5で示される部品配置における電磁波解析に用いられる閾値と同じ値を用いてもよいし、異なる値を用いてもよい。
アンテナの磁界分布をシミュレーションによって得ることによって、実際に試作品を作製して測定する必要がないので、測定によりアンテナの磁界分布を得る場合に比べて簡単にアンテナの磁界成分を得ることができる。なお、本実施形態においても、実施の形態5と同様に、過去の測定により得られたアンテナ磁界分布データが複数保存されたデータベースから、アンテナ電磁界分布入力部51がアンテナ磁界分布データを読み込む態様とすることができる。
再び図19(b)を参照して、抽出部45が、ステップS531で読み込まれた配線の位置データおよびステップS534で読み込まれたアンテナ磁界分布データに基づいて、携帯電話の送受信機能に影響を与える可能性のある配線を抽出する(S535)。抽出部45は、ICに接続された配線のうち、その配線の一部または全体が、アンテナの磁界分布において予め決めておいた閾値を超えている部分に含まれているかどうかを判定する。例えば、抽出部45は、アンテナの磁界成分が閾値を超える部分に、配線が入っていない場合には、不要輻射ノイズによる電子機器の送受信障害が発生しないと判断する。閾値を超える部分に配線が入っている場合には、不要輻射ノイズによる電子機器の送受信障害が発生すると判断する。
図20を参照して、抽出部45が配線を抽出する場合の判定方法の一例を説明する。抽出部45は、図20(b)に示すアンテナ磁界分布29が表す分布領域のうち、アンテナの磁界成分が予め決められた閾値を超える部分30に対応する位置にある配線を抽出する。
図20(c)は、IC22a、22bおよび配線28a、28b、28cの配置とアンテナの磁界分布が閾値を超える部分30とを重ねて表示した図である。図20(c)において、
配線28b、28cは、アンテナの磁界成分が閾値を超える部分30と重なっている。回路基板72上の配線のうち、配線28b、28cは、アンテナの磁界分布が閾値を超える部分30の中に入っている。したがって、抽出部45は、これらの配線28b、28cを抽出する。すなわち、アンテナの磁界成分が閾値を超える部分30にある配線28b、28cは、携帯電話における電磁波の送受信障害の原因となる可能性があると判断することができる。
再び図19(b)を参照して、判定部44が、ステップS532で読み込まれた動作周波数と、解析対象である携帯電話の周波数帯域とを比較することによって、ステップS531で読み込まれた位置データで表される配線が、携帯電話の送受信機能に影響を与えるか否かを判定する(S536)。
判定部44は、抽出部45が抽出した配線についてのみ判定処理を行う。すなわち、アンテナの磁界成分が閾値を超える部分に対応する位置に配置された配線について判定処理が行われる。
判定部44による判断の方法として、実施の形態5における判断方法において、部品の端子の動作周波数を配線の動作周波数に置き換えたものと同じ方法を用いることができる。
ノイズ判定部74は、ステップS533で読み込まれたノイズ特性データと、解析対象である携帯電話の周波数帯域とを比較することによって、ステップS531で読み込まれた位置データで表される配線が、携帯電話の送受信機能に影響を与えるか否かを判定する(S537)。
ノイズ判定部74は、抽出部45が抽出した配線についてのみ判定処理を行う。すなわち、アンテナの磁界成分が閾値を超える部分に対応する位置に配置された配線についてノイズ判定処理が行われる。
ノイズ判定部74は、位置データで表される配線のノイズ特性データで表されるノイズの周波数が、携帯電話の周波数帯域に含まれているか否かを判別する。ノイズ判定部74は、配線のノイズ特性データで表されるノイズの周波数が、携帯電話の周波数帯域に含まれている場合、その配線を、携帯電話の送受信機能に影響を与える配線であると判定する。
ノイズ判定部74による第1の判断の方法として、実施の形態5における判定部44による第1の判断方法において、動作周波数をノイズ特性データが表すノイズの周波数に置き換えたものと同じ方法を用いることができる。
例えば、ノイズ特性データが、図21に示す周波数スペクトラム31である場合の第1の判断方法について説明する。周波数スペクトラム31において、ピークを示す位置の周波数が、携帯電話の送受信周波数帯域に含まれているか否かをノイズ判定部74が判別する。図21に示す周波数スペクトラム31においては、ピーク位置が複数存在するので、複数のピーク位置の周波数ごとに、ピーク位置の周波数と携帯電話の送受信周波数帯域との比較が行われる。複数のピーク位置における周波数のうち少なくとも1つが携帯電話の送受信周波数帯域に含まれている場合には、その周波数スペクトラム31を示す配線は、携帯電話の送受信機能に影響を与える配線であると判定される。
ノイズ判定部74による第2の判断の方法として、実施の形態5における判定部44による第2の判断方法において、動作周波数をノイズ特性データで表されるノイズの周波数特性に置き換えたものと同じ方法を用いることができる。
例えば、ノイズ特性データが、図21に示す周波数スペクトラム31である場合の第2の判断方法について説明する。周波数スペクトラム31において、ピークを示す位置の周波数が、携帯電話の送信周波数Aと受信周波数Bとの差(|A−B|)と一致または近接するか否かをノイズ判定部74が判別する。図21に示す周波数スペクトラム31においては、ピーク位置が複数存在するので、複数のピーク位置の周波数ごとに、ピーク位置の周波数と|A−B|との比較が行われる。複数のピーク位置における周波数のうち少なくとも1つが|A−B|と一致または近接する場合には、その周波数スペクトラム31を示す配線は、携帯電話の送受信機能に影響を与える配線であると判定される。
以上のように、ステップS535で抽出部45が抽出した端子について、さらに判定部44がステップS536で判定を行い、ノイズ判定部74がステップS537でノイズ判定を行うことによって、携帯電話の送受信機能に影響を与える可能性のより高い端子を抽出することができる。
端子抽出ステップ(S535)、判定ステップ(S536)およびノイズ判定ステップ(S537)が終了すると、抽出部45が抽出した配線、判定部44により携帯電話の送受信機能に影響を与えると判定された配線またはノイズ判定部74により携帯電話の送受信機能に影響を与えると判定された配線について、設計変更するための指針となる情報を、指針情報生成部42が生成する(S538)。
指針情報生成部42は、例えば、図20(c)において、抽出された配線28b、28cが、アンテナの磁界成分が閾値を超える部分30に重ならないように、配線28b、28cの配線パターンを変更させるための情報を生成する。
また、例えば、配線28bの動作周波数が携帯電話の送受信電磁波の周波数帯域に含まれている場合に、配線28bの動作周波数を変更するための情報を生成してもよい。配線28bの動作周波数を変更するための方法として、例えば、配線28b上にノイズ対策部品を追加する方法がある。配線28bに直列に抵抗成分となるノイズ対策部品を追加することで、配線の動作周波数を変更することができる。このようなノイズ対策部品として、例えば、インダクタ、フェライトビーズ、抵抗等が挙げられる。
出力部19は、指針情報生成部42が生成した情報をディスプレイ等に表示する(S539)。また、出力部19は、指針情報生成部42が生成した情報をCADシステム57へ送信してもよい。
また、出力部19は、指針情報生成部42で生成されたデータだけではなく、抽出部45で抽出された配線や、判定部44またはノイズ判定部74で、携帯電話の送受信機能に影響を与えると判定された配線を表すデータをそのまま出力してもよい。
なお、本実施形態においては、上述の図19(b)に示す配線についての電磁波解析処理に加えて、実施の形態5における端子についての電磁波解析処理を行ってもよい。すなわち、配線設計(S5)の段階で再度、部品配置(S4)で行った電磁波解析と同様の処理を行うことができる。これは、部品配置(S4)の段階で配置された部品について、配線設計(S5)の段階で、部品の配置箇所が変更された場合に有効である。
また、本実施形態においては、配線抽出(S535)の後に判定(S536)およびノイズ判定(S537)が行われているが、判定およびノイズ判定の少なくとも一方を省略しても、回路基板上の配線が、携帯電話の送受信機能に与える影響についての情報を得ることはできる。
また、本実施形態においては、ノイズ判定部74は、抽出部45が抽出した配線についてノイズ判定処理を行っているが、ノイズ判定部74は、抽出部45が抽出した配線以外の配線について判定を行ってもよい。
本実施形態にかかる電磁波解析装置20を用いることによって、設計者以外の者であっても、あらかじめアンテナの磁界分布の閾値が与えられていれば、容易に設計を行うことができる。
(実施の形態7)
実施の形態6にかかる電磁波解析装置20においては、予め用意されたノイズ特性データをノイズ特性入力部73が読み込む。これに対して、実施の形態7にかかる電磁波解析装置では、実際に試作された回路基板から発生する不要輻射ノイズを測定することによって得られたノイズ特性データを、ノイズ特性入力部73が読み込む。
また、実施の形態6にかかる電磁波解析装置20においては、シミュレーションによって得られたアンテナ磁界分布データまたはデータベースに保存されたアンテナ磁界分布データをアンテナ電磁界分布入力部51が読み込む。これに対して実施の形態7にかかる電磁波解析装置では、実際に試作された回路基板についてのアンテナの磁界分布を測定することによって得られたアンテナ磁界分布データをアンテナ電磁界分布入力部51が読み込む。
図22は、実施の形態7にかかる電磁波解析装置の構成を表す機能ブロック図である。図22において、図18に示す機能ブロック図と同じ機能ブロックについては、同じ番号を付し、説明を省略する。
図22に示す電磁波解析装置30が、図18に示す電磁波解析装置20と異なる点は、電磁波解析装置30が、アンテナ電磁界分布測定部75および不要輻射ノイズ測定部76と接続されている点である。すなわち、電磁波解析装置30において、アンテナ電磁界分布入力部51は、アンテナ電磁界分布測定部75で測定されたアンテナ磁界分布データを読み込み、ノイズ特性入力部73は、不要輻射ノイズ測定部76で測定されたノイズ特性データを読み込む。
アンテナ電磁界分布測定部75は、解析対象である回路基板の試作品に対して、アンテナの磁界分布を測定する。試作品は、例えば、CADシステム57に保存されている設計データに基づいて作製される。アンテナ電磁界分布入力部51は、アンテナ電磁界分布測定部75で測定されたアンテナ磁界分布データを読み込み、抽出部45がアンテナ磁界分布データを利用できる状態にする。
図23は、アンテナの磁界分布を測定するアンテナ電磁界分布測定部75の構成例を表す機能ブロック図である。アンテナ電磁界分布測定部75は、測定器75aおよび検出器75bを備える。アンテナ電磁界分布測定部75は、PC(Personal Computer)55と接続されている。CADシステム57および電磁波解析装置30はPC85上で動作するように構築されている。アンテナ電磁界分布測定部75は、回路基板86のアンテナの磁界分布を測定する。回路基板86は、例えば、アンテナ87、IC88、配線89を有する携帯電話のメイン基板である。
検出器75bは、回路基板86上または回路周辺のアンテナの磁界成分を検出する。検出器75bは、例えば、検出用アンテナを含む(図示せず)。前記検出用アンテナが回路基板86の周辺部に配置されると、アンテナ87を含む回路基板86と前記検出用アンテナ間における電磁結合により前記検出用アンテナに電流が流れる。この電流を測定器75aが測定することにより、アンテナ87を含む回路基板86から放射される電磁波の磁界成分すなわちアンテナの磁界成分が測定される。なお、電磁波の磁界成分と電流はI(電流)=μB(磁束密度)の関係にあるので、アンテナの磁界成分およびアンテナ電流のうちいずれか一方の値が得られれば、他方の値も計算により求めることができる。
同様に、電磁波の電界成分と電圧においても、いずれか一方の値が得られれば、他方の値も計算により求めることができる。本実施形態においては、アンテナから放射される電磁波の磁界成分が測定され、アンテナの磁界成分が求められているが、磁界成分の替わりに電界成分を測定して、アンテナの磁界成分の変わりにアンテナから放射される電磁波の電圧値、すなわちアンテナ電圧を求めることもできる。
また、検出器75bが、回路基板86の周辺を移動することにより、複数の場所でアンテナの磁界成分が測定される。その結果、回路基板86の周辺におけるアンテナの磁界分布が得られる。
なお、例えば、回路基板86が携帯電話の筐体内に実装された状態で、検出器75bを携帯電話の筐体の周辺を移動させることにより、筐体表面を流れるアンテナの磁界成分を測定することもできる。
測定器75aとして、例えば、スペクトラムアナライザが用いられる。スペクトラムアナライザを用いることで、検出器75bで検出されたアンテナの磁界成分の周波数毎の強度分布すなわちスペクトラムを出力することができる。
不要輻射ノイズ測定部76は、解析対象である回路基板の試作品に対して、不要輻射ノイズを測定する。ノイズ特性入力部73は、不要輻射ノイズ測定部76で測定されたノイズ特性データを読み込み、ノイズ判定部74がノイズ特性データを利用できる状態にする。
ノイズ特性データは、実施の形態6と同様に、位置データで表される部品の端子または配線から発生するノイズの周波数特性を表すデータである。ノイズ特性データは、例えば、図21に示すような周波数スペクトラムで表される。なお、ノイズ特性データは、時間波形で表されるデータでもよい。
不要輻射ノイズ測定部76は、図23に示すアンテナ電磁界分布測定部75と同様に構成することができる。通常、不要輻射ノイズの強度は、アンテナから放射される電磁波の強度に比べて、非常に小さい。そのため、回路基板から放射される不要輻射ノイズの磁界成分を検出する検出器の構成は、アンテナの磁界成分測定用の検出器75bと比べて、より小さい強度の磁界を測定することに適した構成とすることが好ましい。
なお、本実施形態において、アンテナ電磁界分布測定部75と不要輻射ノイズ測定部76はそれぞれ独立して設けられているが、1組の測定器および検出器によって、アンテナの磁界成分および不要輻射ノイズの両方を測定する構成とすることもできる。
次に、電子機器の設計において、電磁波解析装置30が行う電磁波解析処理の動作について説明する。本実施形態における電磁波解析装置30の処理は、電子機器の設計において、試作・評価ステップ(図13のS6参照)における電磁波解析に好ましく用いられる。一例として、携帯電話の設計における試作・評価ステップの処理を説明する。
図24は、図13に示す処理における試作・評価ステップ(S6)の詳細な処理を示すフローチャートである。
試作・評価ステップ(S6)においては、まず、CADシステム57で生成された設計データに基づいて、回路基板の試作品が作製される(S61)。
次に、ステップS61で作成された回路基板86のアンテナの磁界分布および不要輻射ノイズを、アンテナ電磁界分布測定部75および不要輻射ノイズ測定部76が測定する(S62)。アンテナの磁界分布および不要輻射ノイズの測定は、例えば、携帯電話が実際に送受信を行っている状態か、または簡易な手法として、アンテナ給電点に発振器を取り付け、所定の周波数でアンテナが励振されている状態で測定することができる。これにより、送受信時におけるアンテナ磁界分布データおよび不要輻射ノイズが得られる。
ステップS61で試作された回路基板86が携帯電話の送受信機能に与える影響を調べるための電磁波解析が、電磁波解析装置30によって行われる(S63)。この電磁波解析は、ステップS62で測定されたアンテナの磁界分布および不要輻射ノイズを用いて行われる。
電磁波解析(S63)の結果、回路基板86の設計変更が必要と判断された場合(ステップS64でYESの場合)、回路基板86の設計データが変更され、再度、回路基板86の試作品が作製される(S61)。電磁波解析の結果、回路基板86の設計変更は不要と判断された場合(ステップS64でNOの場合)、最終評価(S65)が行われる。
電磁波解析(S63)の詳細な処理は、実施の形態6における電磁波解析処理と同様であるので、説明を省略する。
以上のように、実施の形態5、6および7にかかる電磁波解析装置10、20、30は、測定またはシミュレーションによって求められたアンテナ磁界分布データと、ICの端子位置やIC間を接続する配線、動作周波数等の固有情報を用いて、アンテナの磁界成分が予め決められた閾値を超える部分にあるICの端子やIC間を接続する配線パターンを抽出するものである。この抽出処理により、電子機器の不要輻射ノイズが電子機器の送受信機能へ与える影響についての情報が、簡単なシステム構成で容易に得られる。さらに、設計者は、ノイズ対策による効果を携帯電話の実使用時を想定しながら定量的に把握することができる。携帯電話の設計過程において、電磁波解析装置が、図14、図17または図19(b)に示すフローチャートの処理を行うことで、効率のよい携帯電話の設計が可能となる。ひいては、開発期間が短縮化され、開発投資も低減される。