JP7305093B1 - アンテナ配置決定システム、アンテナ配置決定方法及びプログラム - Google Patents

アンテナ配置決定システム、アンテナ配置決定方法及びプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】3次元空間でのノイズ分布の解析結果に基づきアンテナの配置を決定することが可能なアンテナ配置決定システム、アンテナ配置決定方法及びプログラムを提供する。【解決手段】移動体のアンテナ配置決定システム1は、デジタル回路の特性に関する回路情報、デジタル回路の構造に関する構造情報、アンテナの特性に関するアンテナ情報、デジタル回路の配置に関する回路モジュール配置情報及びアンテナの配置に関するアンテナ位置情報を設計情報として入力する設計情報入力部101、回路情報、構造情報及び回路モジュール配置情報に基づいてノイズ強度分布を計算するノイズ分布推定部103、アンテナ情報及びアンテナ位置情報に基づいてアンテナ感度分布を計算するアンテナ感度推定部105、ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりを評価し、重なりの評価結果が所定の基準を満たさない場合、設計情報を変更する最適化部107を含む。【選択図】図1

Description

本発明はアンテナ配置決定システム、アンテナ配置決定方法及びプログラムに関し、特に3次元空間でのノイズ分布の解析結果に基づきアンテナの配置を決定する製品設計技術に関する。
通信機能を有する電気製品においては、電磁ノイズが通信モジュールに混入すると通信性能が著しく低下する。それでこのような製品を設計する際には、ノイズを低減するとともにノイズの影響を受けにくい位置にアンテナ等を配置する必要がある。特にドローン、ロボット及び車両等をはじめとする移動体は、軽量化の要請や、機械的及び空力的な制約等があることから、アンテナを配置できる位置が制限されやすい。
電磁ノイズの解析及び可視化に関する従来技術としては、例えば特許文献1及び2がある。特許文献1には、回路基板上又は機器に接続されたケーブル等の伝送路上を伝搬する電磁ノイズを可視化する方法が記載されている。特許文献2には、電気製品の設計段階において、ひな型等価回路を用いてEMC(Electro Magnetic Compatibility:電磁界)解析を行う手法が記載されている。
移動体の設計に関する従来技術としては、例えば特許文献3及び4がある。特許文献3には、ドローン等の無人移動体において、本体と後付けアンテナとの間に遮蔽板を設けることで、本体が発するノイズがアンテナに与える影響を抑制できることが記載されている。特許文献4には、自立走行型電気掃除機において、通信モジュールの配置位置を工夫することで、本体動作時に発生するノイズが通信モジュールに与える影響を抑制できることが記載されている。
特開2014-222215号公報 特開2010-198201号公報 特開2021-061473号公報 特開2019-111161号公報
しかしながら、特許文献1記載の技術は、既存製品に小さな改良を加える際に適用可能な技術であるため、大きな改良を加えたり新規設計を行なったりする際に適用することができない。特許文献2記載の技術は、ノイズを実際に測定するステップが必要であり、コストがかかる。そして特許文献1及び2はいずれも、製品におけるアンテナの適切な配置位置を決定するものではない。
この点、特許文献3及び4は、移動体におけるアンテナの適切な配置位置を提案している。しかしながら、特許文献3及び4はいずれも特定の移動体を対象としたアンテナ配置の最適化結果のひとつを開示したものにすぎない。すなわち、様々な移動体に適用可能な、アンテナ配置の汎用的な最適化手法を開示したものではない。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、3次元空間でのノイズ分布の解析結果に基づきアンテナの配置を決定することが可能なアンテナ配置決定システム、アンテナ配置決定方法及びプログラムを提供することを目的とする。
一実施の形態によれば、移動体におけるアンテナ配置を決定するためのシステムは、デジタル回路の特性に関する回路情報、前記デジタル回路の構造に関する構造情報、アンテナの特性に関するアンテナ情報、前記デジタル回路の配置に関する回路モジュール配置情報、及び前記アンテナの配置に関するアンテナ位置情報を設計情報として入力する設計情報入力部と、前記回路情報、前記構造情報及び前記回路モジュール配置情報に基づいてノイズ強度分布を計算するノイズ分布推定部と、前記アンテナ情報及び前記アンテナ位置情報に基づいてアンテナ感度分布を計算するアンテナ感度推定部と、前記ノイズ強度分布と前記アンテナ感度分布との重なりを評価し、前記重なりの評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記設計情報を変更する最適化部とを含む。
一実施の形態によれば、前記最適化部は、前記重なりの評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記アンテナ位置情報を変更し、前記アンテナ感度推定部に前記アンテナ感度分布を再度計算させ、再度前記重なりの評価を行う。
一実施の形態によれば、前記最適化部は、前記重なりの評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記回路モジュール配置情報を変更し、前記ノイズ分布推定部に前記ノイズ強度分布を再度計算させ、再度前記重なりの評価を行う。
一実施の形態によれば、前記最適化部は、ノイズ印加時のアンテナ出力端におけるノイズチャネルパワーを前記重なりの評価結果とし、通信モジュールが規定する許容ノイズチャネルパワーをノイズ印加時のアンテナ出力端におけるノイズチャネルパワーが下回ることを前記所定の基準とする。
一実施の形態によれば、前記設計情報に基づいて前記移動体に発生する揚力及び抗力を計算する空力特性計算部をさらに有し、前記揚力及び抗力の評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記設計情報を変更する。
一実施の形態によれば、前記設計情報に基づいて前記移動体の重心バランスを計算する重心特性計算部をさらに有し、前記重心バランスの評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記設計情報を変更する。
一実施の形態によれば、前記設計情報に基づいて電波受信感度を計算する受信感度試験部をさらに有し、前記電波受信感度の評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記設計情報を変更する。
一実施の形態によれば、コンピュータが移動体におけるアンテナ配置を決定する方法は、デジタル回路の特性に関する回路情報、前記デジタル回路の構造に関する構造情報、アンテナの特性に関するアンテナ情報、前記デジタル回路の配置に関する回路モジュール配置情報、及び前記アンテナの配置に関するアンテナ位置情報を設計情報として入力する設計情報入力ステップと、前記回路情報、前記構造情報及び前記回路モジュール配置情報に基づいてノイズ強度分布を計算するノイズ分布推定ステップと、前記アンテナ情報及び前記アンテナ位置情報に基づいてアンテナ感度分布を計算するアンテナ感度推定ステップと、前記ノイズ強度分布と前記アンテナ感度分布との重なりを評価し、前記重なりの評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記設計情報を変更する最適化ステップとを含む。
一実施の形態によれば、前記最適化ステップでは、ノイズ印加時のアンテナ出力端におけるノイズチャネルパワーを前記重なりの評価結果とし、通信モジュールが規定する許容ノイズチャネルパワーをノイズ印加時のアンテナ出力端におけるノイズチャネルパワーが下回ることを前記所定の基準とする。
一実施の形態によれば、プログラムは、上記方法をコンピュータに実行させる。
本発明により、3次元空間でのノイズ分布の解析結果に基づきアンテナの配置を決定することが可能なアンテナ配置決定システム、アンテナ配置決定方法及びプログラムを提供することができる。
アンテナ配置決定システム1のハードウェア構成を説明するブロック図である。 移動体2のハードウェア構成の一例を示す図である。 アンテナ配置決定システム1の機能構成を説明するブロック図である。 ノイズ強度分布及びアンテナ感度分布の推定処理の一例を示す図である。 ノイズ強度分布の推定処理の一例を示す図である。 アンテナ感度分布の推定処理の一例を示す図である。 ノイズ強度分布及びアンテナ感度分布の重なりの評価処理の一例を示す図である。 アンテナ配置決定システム1の動作例を示すフローチャートである。 アンテナ配置決定システム1の動作例を示すフローチャートである。 アンテナ配置決定システム1の機能構成を説明するブロック図である。 アンテナ配置決定システム1の動作例を示すフローチャートである。 アンテナ配置決定システム1の機能構成を説明するブロック図である。 アンテナ配置決定システム1の動作例を示すフローチャートである。
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1にかかるアンテナ配置決定システム1のハードウェア構成を説明するブロック図である。
アンテナ配置決定システム1は、移動体の設計を支援するコンピュータシステムであって、典型的にはプロセッサ11、メモリ13、入力部15、出力部17を有する。
プロセッサ11は、メモリ13に格納されたプログラム及びデータを読み出して所定の処理を実行することにより、後述の処理部を論理的に実現する。
入力部15は、処理に必要なデータや指示を入力するための装置であって、典型的にはキーボード等の文字入力装置、マウス等の指示装置、外部記憶装置や通信回線から情報を受信する通信装置等が含まれる。
出力部17は、処理結果や各種通知等を出力するための装置であって、典型的にはディスプレイ等の表示装置、外部記憶装置や通信回線に情報を送信する通信装置等が含まれる。
図2は、アンテナ配置決定システム1による設計対象である移動体2のハードウェア構成の一例を示す図である。この例では、移動体2としてドローンを想定している。移動体2は、通信・センサ部21、制御部23、駆動部25、電源部27を有する。
通信・センサ部21は、典型的には位置センサ211、映像データ伝送通信モジュール213、操作通信モジュール215、6軸センサ217、イメージセンサ219を含む。
位置センサ211は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用して移動体2の位置情報を計算及び出力する。
映像データ伝送通信モジュール213は、イメージセンサ219が取得した画像データを、有線又は無線通信により外部機器に対し伝送する。
操作通信モジュール215は、外部のコントローラ(プロポ)から有線又は無線通信により送信された操作信号を受信し、コントローラ231に通知する。
6軸センサ217は、典型的には6軸方向の加速度の変化を検出し、移動体2の傾きや移動速度を計算及び出力する。
イメージセンサ219は、移動体2外部の画像を撮影及び出力する。
制御部23は、コントローラ231を含む。
コントローラ231は、典型的にはマイクロコンピュータであって、プログラムに従って通信・センサ部21、駆動部25、電源部27を制御する。例えばコントローラ231は、操作通信モジュール215から通知された操作信号に応じて、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号を生成し、ESC251に入力する。
駆動部25は、典型的にはESC(Electric Speed Controller)251、モータ253、プロペラ255を含む。
ESC251は、コントローラ231から入力されたPWM制御信号に応じてモータ253の回転速度を制御する。
モータ253は、ESC251の制御に応じて所定の速度で回転し、プロペラ255を駆動する。
プロペラ255は、モータ253の駆動によって回転し、移動体2を浮上及び移動させる。
電源部27は、典型的にはバッテリ271、DCDCコンバータ273を含む。
バッテリ271は直流電源である。
DCDCコンバータ273は、バッテリ271からの出力を所定の電圧に変換し、通信・センサ部21、制御部23、駆動部25に対し供給する。
EMC(Electromagnetic Compatibility、電磁環境両立性)の観点では、上記構成要素のうちコントローラ231及びDCDCコンバータ273が主要なノイズ発生源となりうる。また、コントローラ231及びDCDCコンバータ273からモータ253への経路はノイズの伝達経路となりうる。このノイズが通信・センサ部21に入ると、その機能に悪影響を及ぼす場合がある。例えば映像データ伝送通信モジュール213及び操作通信モジュール215においては、通信範囲の減少、通信速度(スループット)の低下を引き起こすことがある。また位置センサ211においては、測定精度の低下を招くことがある。そのため、移動体2の設計に際しては、特に通信・センサ部21へのノイズ入力を抑制することが肝要である。
図3は、アンテナ配置決定システム1の機能構成を説明するブロック図である。アンテナ配置決定システム1は、その機能を実現するための論理的な処理部として、設計情報入力部101、ノイズ分布推定部103、アンテナ感度推定部105、最適化部107を有する。
設計情報入力部101は、移動体2の設計情報の入力を受け付ける。設計情報には、典型的には回路情報、構造情報、アンテナ情報、回路モジュール配置情報、アンテナ位置情報が含まれる。これらの設計情報を使用することで、移動体2におけるノイズ分布及びアンテナ感度を推定することが可能となる。
例えば、ノイズ分布の計算では通信帯域でのノイズ電流分布とノイズ電圧分布から計算できる。ここでノイズ電流とは回路と回路間を接続する配線を流れる電流であり、ノイズ電圧とは回路が動作することによる生成される各部の電位(ポテンシャル)差であり、このノイズ電流とノイズ電圧がわかれば、そこを微小区間に区分けすることで各区間が励振源として扱うことで解析空間での電磁ノイズが計算できることになる。ここでノイズ電流は半導体と金属などの導電体を流れ、ノイズ電圧は導電体表面に生成されるので、具体的にはプリント配線基板、配線のみを計算の対象にすればよい。すなわち回路情報とその位置情報である構造情報によりノイズ電流とノイズ電圧が計算できる。ここで構造情報が必要な理由は励振源の位置情報を与えるためである。なお、実際には回路基板と配線の導体間の相互インダクタンスと相互キャパシタンスが寄生成分として回路上に現れるがこれを回路情報に織り込むことでノイズ分布の計算精度を向上することもできるのはいうまでもない。
回路情報は、通信・センサ部21、制御部23、駆動部25、電源部27を構成するデジタル回路に関する基本的な情報を定義したデータである。例えば、デジタル回路のクロック周波数、電流、電圧等の情報が回路情報に含まれる。また回路情報には基板配線の特性インピーダンスや配線ケーブルのインピーダンス、半導体回路の駆動点インピーダンス、入力インピーダンスなど電圧と電流を規定する情報を持っている。通信帯域のノイズはこのクロックの高調波成分であり、クロックがたとえ10MHz程度であってもGHz帯域の通信帯域にノイズとして現れる。更に電源部においては直流電圧変換回路(DCDCコンバータ)が電圧変換効率の観点で多く用いられるが、回路内部では矩形波の交流に一度変換しており、この交流がノイズ源となる。近年のパワーデバイスの進化により切替速度が高速化し、この高調波が容易に通信帯域に影響する。
構造情報は、デジタル回路の構造に関する基本的な情報を定義したデータである。例えば、回路を搭載する回路モジュールのサイズ、搭載位置、搭載の向き、配線ならばその長さや経路(パス)、ケーブルがバラ線か同軸線かの配線形態等の情報が構造情報に含まれる。
アンテナ情報は、通信・センサ部21に含まれるアンテナの特性に関する情報を定義したデータである。例えば、対象無線帯域での入力インピーダンス、アンテナパターン、放射感度等の情報がアンテナ情報に含まれる。
なお通信・センサ部21は、用途の異なる複数のアンテナを含みうる。通常は用途(例えばGNSS、WiFi等)毎に周波数が異なるがこの限りではなく、複数の用途のアンテナが同じ周波数を使用することもある。複数のアンテナが存在する場合、アンテナ情報もアンテナ毎に存在する。
回路モジュール配置情報は、デジタル回路を構成するモジュールを移動体2のどの位置に実装するかを定義したデータである。
アンテナ位置情報は、通信・センサ部21に含まれるアンテナを移動体2のどの位置に実装するかを定義したデータである。例えば、アンテナモジュールの位置、ノイズフィルタの位置等の情報がアンテナ位置情報に含まれる。複数のアンテナが存在する場合、アンテナ位置情報もアンテナ毎に存在する。
ノイズ分布推定部103は、入力された設計情報に基づいて、デジタル回路により発生する所定の周波数におけるノイズ強度分布(電磁界分布)を計算する。ここでの周波数は、後述のアンテナの周波数と同一である。アンテナが複数存在し、それらのアンテナが異なる周波数を使用する場合、ノイズ分布推定部103は複数のアンテナが使用する周波数それぞれについてノイズ強度分布を計算する。回路が動作することで発生するノイズは回路解析で電流と電圧に分けて計算できる。回路解析と構造情報によりノイズ電流とノイズ電圧を微小区間のノイズ励振源として解析空間にどの程度ノイズ強度が分布するのか推定手法としては、例えば有限要素法、境界要素法、FDTD(Finite-difference time-domain)法、モーメント法等がある。これらの推定手法は公知であるため詳細な説明は省略する。
図5Aに、ノイズ強度分布の推定結果の一例を示す。図5Aは、高さZの位置に設定した平面(図4参照)におけるノイズ強度分布の推定結果を示す図である。破線の閉曲線はノイズ強度が等しい地点を結んだものであり、内側から順にノイズ強度がX1(dBm),X2(dBm),X3(dBm)である地点を示している(X1>X2>X3)。
なお、ノイズ分布推定部103は、実際には3次元空間におけるノイズ強度分布を推定する。例えば、図4に示すように、高さZの位置に厚みdの薄板状の空間を設定し、この3次元空間を多数の計算格子(図示しない)に分割し、各計算格子におけるノイズ強度分布をそれぞれ計算する。図5Aは、この薄板状の空間におけるノイズ強度分布を平面に投影したものと理解できる。ノイズ分布推定部103は、高さZ+d,Z+2d,...の位置においても同様に厚みdの薄板状の空間を設定し、ノイズ強度分布を計算する。これを適宜繰り返すことで、移動体2をとりまく空間におけるノイズ強度分布をくまなく調べることができる。
アンテナ感度推定部105は、入力された設計情報に基づいて、アンテナが使用する周波数におけるアンテナ感度分布を計算する。アンテナ感度分布の推定手法は公知であるため詳細な説明は省略する。アンテナが複数存在し、それらのアンテナが異なる周波数を使用する場合、アンテナ感度推定部105は複数のアンテナが使用する周波数それぞれについてアンテナ感度分布を計算する。
図5Bに、アンテナ感度分布の推定結果の一例を示す。図5Bは、高さZの平面(図4参照)におけるアンテナ感度分布の推定結果を示す図である。破線の閉曲線はアンテナ感度が等しい地点を結んだものであり、内側から順にアンテナ感度がY1(dBm),Y2(dBm),Y3(dBm)である地点を示している(Y1>Y2>Y3)。
なお、アンテナ感度推定部105は、実際には3次元空間におけるアンテナ感度分布を推定する。例えば、図4に示すように、高さZの位置に厚みdの薄板状の空間を設定し、この3次元空間を多数の計算格子(図示しない)に分割し、各計算格子におけるアンテナ感度分布をそれぞれ計算する。図5Bは、この薄板状の空間におけるアンテナ感度分布を平面に投影したものと理解できる。アンテナ感度推定部105は、高さZ+d,Z+2d,...の位置においても同様に厚みdの薄板状の空間を設定し、アンテナ感度分布を計算する。これを適宜繰り返すことで、移動体2をとりまく空間におけるアンテナ感度分布をくまなく調べることができる。
最適化部107は、ノイズ分布推定部103が推定したノイズ強度分布と、アンテナ感度推定部105が推定したアンテナ感度分布と、の重なり(スカラー積)を評価指標Dとして評価する。図5Cは、ある空間におけるノイズ強度分布とアンテナ感度分布との推定結果を重畳した様子を示している。ここで、例えばノイズ強度が一定以上(例えばX3以上)である計算格子と、アンテナ感度が一定以上(例えばY3以上)である計算格子と、が重畳している場合、その重畳領域の数を計算し、これを評価指標Dとすることができる。以上は比較的単純な例であるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、重畳が生じた計算格子のノイズ強度及びアンテナ感度の強さが大きいほど、評価指標Dが大きくなるような重み付けがなされても良い。
以上はノイズ分布をスカラーとして扱い、評価指標Dを算出する例である。なお、電磁波の伝搬はエネルギーの流れとして表現できるので、ベクトル量(ポインティングベクトルと称する)を評価指標Dとしても良い。例えばアンテナを励振源とするポインティングベクトルと、移動体2本体を励振源とするポインティングベクトルと、の積を評価指標Dにとっても良い。この場合、図5Cに示すようなスカラー量の重なりだけでなく、方向の重なりも加味することができるので、更に設計の精度を向上させることができる。このため評価指標Dである分布の重なりはスカラー量であっても良いしベクトル量であってもよい。
あるいは、評価指標D及び閾値は次のように設定されても良い。通信モジュール215のアンテナ出力端において推定される、当該アンテナが使用する通信帯域におけるノイズ電力のパワー(以下、出力ノイズチャネルパワーと称する)が大きくなると、通信性能に重大な影響が及ぶ。例えば、無線通信性能の指標であるブロックエラーレート等は、出力ノイズチャネルパワーが所定の量を超えると急激に悪化し、許容できない限度に達する。それで、評価指標Dを出力ノイズチャネルパワー、閾値を上記「所定の量」を下回る任意の値(以下、許容ノイズチャネルパワーと称する)に設定する。すなわち、通信モジュール215固有の許容ノイズチャネルパワーを、ノイズ印可時の出力ノイズチャネルパワーが下回ればよい。これにより、ノイズによる通信性能の低下が許容限度内に収まっているかどうかを検証することができる。
なお、出力ノイズチャネルパワーは、アンテナ入力端において推定される、当該アンテナが使用する通信帯域におけるノイズ電力のパワー(以下、入力ノイズチャネルパワーと称する)に換算することも可能である。アンテナは、それぞれ異なるアンテナファクター(効率)を有しており、入力ノイズチャネルパワーにアンテナファクターを乗じることにより出力ノイズパワーが得られる。すなわち、アンテナ入力端に同じノイズチャネルパワーが入力されても、アンテナファクターに応じて、アンテナから出力されるノイズチャネルパワーは異なるということになる。したがって、アンテナファクターが既知であれば、入力ノイズチャネルパワーを評価指標Dとして採用しても良い。また、入力ノイズチャネルパワーは、アンテナに入力される電磁ノイズ強度(以下、受信ノイズ強度と称する)に換算することも可能である。したがって、受信ノイズ強度を評価指標Dとして採用することもできる。
このため、評価指標Dとしてはノイズとアンテナパターンのスカラー量、ベクトル量の重なり(空間積分)のほか、ノイズ印可時の出力ノイズチャネルパワーを用いてもよい。
評価指標Dが所定の閾値以下である場合、最適化部107は、アンテナに対するノイズの影響は許容値以下であると判断する。この場合、最適化部107は、現在のアンテナ位置情報を最適化処理の結果として出力する。
一方、評価指標Dが所定の閾値を超える場合、最適化部107は、アンテナに対するノイズの影響は許容できないものと判断する。この場合、最適化部107は、アンテナ位置情報(例えばアンテナモジュールの位置、ノイズフィルタの位置の少なくとも一方)を変更することによりアンテナを再配置する。そして再度、ノイズ分布推定部103がノイズ強度分布を推定し、アンテナ感度推定部105がアンテナ感度分布を推定する。その後、最適化部107が再度ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりを評価する。これらの一連の処理は、評価指標Dが所定の閾値以下となるまで繰り返し実行される。
最適化部107は、アンテナの再配置すなわちアンテナ位置情報の変更の際、例えば最急降下法、遺伝的アルゴリズム等の公知の手法を採用することができる。
なお上述の実施の形態において、最適化部107は、評価指標Dが所定の閾値以下となった場合に処理を終了した。しかしながら本発明はこれに限定されるものではなく、例えば最適化部107は、評価指標Dの算出及びアンテナの再配置を所定回数連続して試行し、そのうち評価指標Dが最小となった試行におけるアンテナ位置情報を最適化処理の結果として出力しても良い。
このように、実施の形態1において、最適化部107は、ノイズ強度分布とアンテナ感度分布の重なりを評価し、この評価指標が所定の閾値以下又は最小となるようにアンテナ位置情報のパラメータを調整する。なおアンテナが複数存在し、それらのアンテナが異なる周波数を使用する場合、最適化部107は複数のアンテナが使用する周波数それぞれについて最適化処理を実行する。
図6は、実施の形態1におけるアンテナ配置決定システム1の動作例を示すフローチャートである。なおアンテナが複数存在し、それらのアンテナが異なる周波数を使用する場合、複数のアンテナが使用する周波数それぞれについて以下の一連の処理が実行される。
S101:設計情報の入力
設計情報入力部101は、移動体2の設計情報の入力を受け付ける。
S102:ノイズ強度分布の推定
ノイズ分布推定部103は、S101で入力された設計情報に基づいて、デジタル回路により発生する所定の周波数におけるノイズ強度分布(電磁界分布)を計算する。
S103:アンテナ感度分布の推定
アンテナ感度推定部105は、入力された設計情報に基づいて、アンテナが使用する周波数におけるアンテナ感度分布を計算する。
S104:ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりを評価
最適化部107は、ノイズ分布推定部103が推定したノイズ強度分布と、アンテナ感度推定部105が推定したアンテナ感度分布と、の重なりの評価指標Dを計算する。
S105:評価指標が許容値以下か?
評価指標Dが許容値以下である場合、最適化部107は、現在の設計情報を最適化処理の結果として出力し、処理を終了する。それ以外の場合はS106に遷移する。
S106:アンテナ位置情報の変更
最適化部107は、アンテナ位置情報を変更することによりアンテナを再配置する。S102に遷移する。
実施の形態1によれば、アンテナ配置決定システム1は、所与の設計情報に基づいてノイズ強度分布とアンテナ感度分布の重なりを評価し、この評価指標が所定の基準を満たす又は最小となるようなアンテナ位置を出力する。これにより、移動体2を設計する際に、最適なアンテナ配置を高精度かつ簡便に決定することができる。
<実施の形態2>
実施の形態1では、最適化部107は、評価指標Dが所定の基準を満たす又は最小となるようなアンテナ位置を出力した。すなわち、通信・センサ部21に対するノイズの影響を抑制すべく、アンテナの位置を移動させた。
これに対し実施の形態2では、最適化部107は、回路モジュールの位置を移動させることにより、通信・センサ部21へのノイズの影響を抑制する。なお、本実施の形態における回路モジュール配置情報には、ノイズ源となるモジュール(典型的にはコントローラ231、DCDCコンバータ273、コントローラ231及びDCDCコンバータ273からモータ253への経路等)の位置のほか、ノイズ対策部品等の位置も含んで良い。
実施の形態2におけるアンテナ配置決定システム1のハードウェア構成及び機能構成は実施の形態1と同様である。以下、最適化部107の動作を中心に、実施の形態2特有の処理について説明する。
最適化部107は、ノイズ分布推定部103が推定したノイズ強度分布と、アンテナ感度推定部105が推定したアンテナ感度分布と、の重なりを評価する。例えば、ノイズ強度がX3以上である格子と、アンテナ感度がY3以上である格子と、が重畳している場合、その重畳領域の数を計算し、これを評価指標とする。
評価指標Dが所定の閾値以下である場合、最適化部107は、アンテナに対するノイズの影響は許容値以下であると判断する。この場合、最適化部107は、現在の回路モジュール配置情報を最適化処理の結果として出力する。
一方、評価指標Dが所定の閾値を超える場合、最適化部107は、アンテナに対するノイズの影響は許容できないものと判断する。この場合、最適化部107は、回路モジュール配置情報(例えばノイズ源となるモジュールの位置、ノイズ対策部品の少なくとも一方)を変更することにより回路モジュールを再配置する。そして再度、ノイズ分布推定部103がノイズ強度分布を推定し、アンテナ感度推定部105がアンテナ感度分布を推定する。その後、最適化部107が再度ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりを評価する。これらの一連の処理は、評価指標Dが所定の閾値以下となるまで繰り返し実行される。
最適化部107は、回路モジュールの再配置の際、例えば最急降下法、遺伝的アルゴリズム等の公知の手法を採用することができる。
なお上述の実施の形態において、最適化部107は、評価指標Dが所定の閾値以下となった場合に処理を終了した。しかしながら本発明はこれに限定されるものではなく、例えば最適化部107は、評価指標Dの算出及び回路モジュールの再配置を所定回数連続して試行し、そのうち評価指標Dが最小となった試行における回路モジュール配置情報を最適化処理の結果として出力しても良い。
このように、実施の形態2において、最適化部107は、ノイズ強度分布とアンテナ感度分布の重なりを評価し、この評価指標が所定の閾値以下又は最小となるように回路モジュール配置情報のパラメータを調整する。なおアンテナが複数存在し、それらのアンテナが異なる周波数を使用する場合、最適化部107は複数のアンテナが使用する周波数それぞれについて最適化処理を実行する。
図7は、実施の形態2におけるアンテナ配置決定システム1の動作例を示すフローチャートである。なおアンテナが複数存在し、それらのアンテナが異なる周波数を使用する場合、複数のアンテナが使用する周波数それぞれについて以下の一連の処理が実行される。
S201:設計情報の入力
設計情報入力部101は、移動体2の設計情報の入力を受け付ける。
S202:ノイズ強度分布の推定
ノイズ分布推定部103は、S201で入力された設計情報に基づいて、デジタル回路により発生する所定の周波数におけるノイズ強度分布(電磁界分布)を計算する。
S203:アンテナ感度分布の推定
アンテナ感度推定部105は、入力された設計情報に基づいて、アンテナが使用する周波数におけるアンテナ感度分布を計算する。
S204:ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりを評価
最適化部107は、ノイズ分布推定部103が推定したノイズ強度分布と、アンテナ感度推定部105が推定したアンテナ感度分布と、の重なりの評価指標Dを計算する。
S205:評価指標が許容値以下か?
評価指標Dが許容値以下である場合、最適化部107は、現在の設計情報を最適化処理の結果として出力し、処理を終了する。それ以外の場合はS206に遷移する。
S206:回路モジュール配置情報の変更
最適化部107は、回路モジュール配置情報を変更することにより回路モジュールを再配置する。S202に遷移する。
実施の形態2によれば、アンテナ配置決定システム1は、所与の設計情報に基づいてノイズ強度分布とアンテナ感度分布の重なりを評価し、この評価指標が所定の基準を満たす又は最小となるような回路モジュール配置を出力する。これにより、移動体2を設計する際に、最適な回路モジュール配置を高精度かつ簡便に決定することができる。
<実施の形態3>
実施の形態1又は2では、通信感度特性の観点から、アンテナ又は回路モジュールの配置を最適化した。ところで、特に移動体2がドローン等の飛行体である場合、アンテナ又は回路モジュールの配置を決定するにあたっては、空力特性及び重心特性の観点でも所定の基準を満たすことが望ましい。このため、実施の形態3では、通信感度特性計算に加え、空力特性(揚抗比)計算及び重心計算を実施し、アンテナ又は回路モジュールの配置を決定する。
図8は、実施の形態3にかかるアンテナ配置決定システム1の機能構成を説明するブロック図である。アンテナ配置決定システム1は、設計情報入力部101、ノイズ分布推定部103、アンテナ感度推定部105、最適化部107、空力特性計算部109、重心特性計算部111を有する。
設計情報入力部101、ノイズ分布推定部103、アンテナ感度推定部105の動作については、実施の形態1及び2と同様であるため説明を省略する。
空力特性計算部109は、入力された設計情報に基づいて、移動体2の機体に発生する揚力及び抗力を計算する。揚力及び抗力は、特に機体の進行方向と、アンテナの位置及び向きと、の関係に影響されうる。なお揚力及び抗力の計算手法は公知であるため詳細な説明は省略する。空力特性計算部109は、揚力及び抗力の計算結果として、評価指標Eを出力する。
重心特性計算部111は、入力された設計情報に基づいて、機体の重心バランスを計算する。重心バランスは、特に機体に設置されるアンテナの位置及び向きに影響されうる。なお重心バランスの計算手法は公知であるため(例えば特表2018-507814を参照)詳細な説明は省略する。重心特性計算部111は、重心バランスの計算結果として、評価指標Fを出力する。
最適化部107は、実施の形態1及び2において示した手法により、ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりの評価指標Dを計算する。
また、最適化部107は、揚力及び抗力の評価指標E、重心バランスの評価指標F、ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりの評価指標Dが、それぞれ所定の基準を満足しているか否かを順に判定する。すべての評価指標が基準を満たしている場合、最適化部107は、現在の設計情報を最適化結果として出力する。一方、少なくともいずれかの評価指標が基準を満たしていない場合、最適化部107は、アンテナ配置又は回路モジュール配置を変更し、再度、すべての評価指標の計算を行う。アンテナ配置の変更、及び回路モジュール配置の変更については実施の形態1及び2で述べたため説明を省略する。最適化部107は、すべての評価指標が基準を満たすまで、これらの一連の処理を繰り返し実行する。
なお上述の実施の形態において、最適化部107は、各評価指標が所定の基準を満足しているか否かの判定をシリアルに実行し、すべての評価指標が所定の閾値以下となった場合に処理を終了した。しかしながら本発明はこれに限定されるものではなく、例えば最適化部107は、3つの目的関数すなわち多目的関数の最適化問題としてアンテナ配置又は回路モジュール配置を決定する手法(パレート分析)を用いてもよい。なお多目的関数の最適化問題の解法は公知であるため(例えば小木曽 望、モーフィング翼における最適設計法の活用、日本航空宇宙学会誌 第64巻 第6号 第180-185頁、2016年6月を参照)詳細な説明は省略する。
図9は、実施の形態3におけるアンテナ配置決定システム1の動作例を示すフローチャートである。なおアンテナが複数存在し、それらのアンテナが異なる周波数を使用する場合、複数のアンテナが使用する周波数それぞれについて以下の一連の処理が実行される。
S301:設計情報の入力
設計情報入力部101は、移動体2の設計情報の入力を受け付ける。
S302:ノイズ強度分布の推定
ノイズ分布推定部103は、S301で入力された設計情報に基づいて、デジタル回路により発生する所定の周波数におけるノイズ強度分布(電磁界分布)を計算する。
S303:アンテナ感度分布の推定
アンテナ感度推定部105は、入力された設計情報に基づいて、アンテナが使用する周波数におけるアンテナ感度分布を計算する。
S304:空力特性計算
空力特性計算部109は、入力された設計情報に基づいて、移動体2の機体に発生する揚力及び抗力の評価指標Eを計算する。
S305:評価指標が許容値以下か?
評価指標Eが許容値以下である場合、S306に遷移する。それ以外の場合はS310に遷移する。
S306:重心特性計算
重心特性計算部111は、入力された設計情報に基づいて、機体の重心バランスの評価指標Fを計算する。
S307:評価指標が許容値以下か?
評価指標Fが許容値以下である場合、S308に遷移する。それ以外の場合はS310に遷移する。
S308:ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりを評価
最適化部107は、ノイズ分布推定部103が推定したノイズ強度分布と、アンテナ感度推定部105が推定したアンテナ感度分布と、の重なりの評価指標Dを計算する。
S309:評価指標が許容値以下か?
評価指標Dが許容値以下である場合、最適化部107は、現在の設計情報を最適化処理の結果として出力し、処理を終了する。それ以外の場合はS310に遷移する。
S310:アンテナ位置情報又は回路モジュール配置情報の変更
最適化部107は、アンテナ位置情報又は回路モジュール配置情報を変更することにより、アンテナ又は回路モジュールを再配置する。S302に遷移する。
実施の形態3によれば、アンテナ配置決定システム1は、通信感度特性計算に加え、空力特性(揚抗比)計算及び重心計算を実施し、アンテナ又は回路モジュールの配置を決定する。これにより、移動体2を設計する際に、最適なアンテナ配置又は回路モジュール配置を高精度かつ簡便に決定することができる。
<実施の形態4>
実施の形態4では、実施の形態1乃至3のいずれかの手法によりアンテナ配置及び回路モジュール配置を決定した後、通信局や衛星等からの電波(平面波)を確実に受信できることの確認を実施する。
図10は、実施の形態4にかかるアンテナ配置決定システム1の機能構成を説明するブロック図である。アンテナ配置決定システム1は、設計情報入力部101、ノイズ分布推定部103、アンテナ感度推定部105、最適化部107、受信感度試験部113を有する。空力特性計算部109、重心特性計算部111を有していても良い。
設計情報入力部101、ノイズ分布推定部103、アンテナ感度推定部105、空力特性計算部109、重心特性計算部111の動作については、実施の形態1、2又は3と同様であるため説明を省略する。
受信感度試験部113は、通信局や衛星等からの電波を模した平面波を模擬的に生成し、入力された設計情報に基づいて、電波受信感度を計算する。受信感度の計算方法については公知であるため説明を省略する。受信感度試験部113は、受信感度の計算結果として、評価指標Gを出力する。
また、最適化部107は、(空力特性計算部109が存在するならば)揚力及び抗力の評価指標E、(重心特性計算部111が存在するならば)重心バランスの評価指標F、ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりの評価指標D、受信感度の評価指標Gが、それぞれ所定の基準を満足しているか否かを順に判定する。すべての評価指標が基準を満たしている場合、最適化部107は、現在の設計情報を最適化結果として出力する。一方、少なくともいずれかの評価指標が基準を満たしていない場合、最適化部107は、アンテナ配置又は回路モジュール配置を変更し、再度、すべての評価指標の計算を行う。アンテナ配置の変更、及び回路モジュール配置の変更については実施の形態1及び2で述べたため説明を省略する。最適化部107は、すべての評価指標が基準を満たすまで、これらの一連の処理を繰り返し実行する。
なお上述の実施の形態において、最適化部107は、各評価指標が所定の基準を満足しているか否かの判定をシリアルに実行し、すべての評価指標が所定の閾値以下となった場合に処理を終了した。しかしながら本発明はこれに限定されるものではなく、例えば最適化部107は、2乃至4つの目的関数すなわち多目的関数の最適化問題としてアンテナ配置又は回路モジュール配置を決定する手法(パレート分析)を用いてもよい。
図11は、実施の形態4におけるアンテナ配置決定システム1の動作例を示すフローチャートである。なおアンテナが複数存在し、それらのアンテナが異なる周波数を使用する場合、複数のアンテナが使用する周波数それぞれについて以下の一連の処理が実行される。
S401:設計情報の入力
設計情報入力部101は、移動体2の設計情報の入力を受け付ける。
S402:ノイズ強度分布の推定
ノイズ分布推定部103は、S401で入力された設計情報に基づいて、デジタル回路により発生する所定の周波数におけるノイズ強度分布(電磁界分布)を計算する。
S403:アンテナ感度分布の推定
アンテナ感度推定部105は、入力された設計情報に基づいて、アンテナが使用する周波数におけるアンテナ感度分布を計算する。
S404:空力特性計算
空力特性計算部109は、入力された設計情報に基づいて、移動体2の機体に発生する揚力及び抗力の評価指標Eを計算する。
S405:評価指標が許容値以下か?
評価指標Eが許容値以下である場合、S406に遷移する。それ以外の場合はS41 に遷移する。
S406:重心特性計算
重心特性計算部111は、入力された設計情報に基づいて、機体の重心バランスの評価指標Fを計算する。
S407:評価指標が許容値以下か?
評価指標Fが許容値以下である場合、S408に遷移する。それ以外の場合はS412に遷移する。
S408:ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりを評価
最適化部107は、ノイズ分布推定部103が推定したノイズ強度分布と、アンテナ感度推定部105が推定したアンテナ感度分布と、の重なりの評価指標Dを計算する。
S409:評価指標が許容値以下か?
評価指標Dが許容値以下である場合、S410に遷移する。それ以外の場合はS412に遷移する。
S410:受信感度計算
受信感度試験部113は、通信局や衛星等からの電波を模した平面波を模擬的に生成し、入力された設計情報に基づいて、電波受信感度の評価指標Gを出力する。
S411:評価指標が許容値以下か?
評価指標Gが許容値以下である場合、最適化部107は、現在の設計情報を最適化処理の結果として出力し、処理を終了する。それ以外の場合はS412に遷移する。
S412:アンテナ位置情報又は回路モジュール配置情報の変更
最適化部107は、アンテナ位置情報又は回路モジュール配置情報を変更することにより、アンテナ又は回路モジュールを再配置する。S402に遷移する。
実施の形態4によれば、アンテナ配置決定システム1は、通信感度特性計算に加え、受信感度の試験を実施し、アンテナ又は回路モジュールの配置を決定する。これにより、移動体2を設計する際に、最適なアンテナ配置又は回路モジュール配置を高精度かつ簡便に決定することができる。
<その他の実施の形態>
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の実施の形態では移動体2として主にドローンを想定したが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば車両、船舶、ロボット等の自ら移動することが可能なものは移動体2に含まれる。
また、実施の形態3及び4においては、空力特性、重心特性、ノイズ強度分布とアンテナ感度分布の重なり、受信感度を順に評価したが、この評価順は任意に入れ替えても差し支えない。
また、上述の実施の形態では、本発明を主にハードウェアの構成として説明したが、これに限定されるものではなく、任意の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。この場合、コンピュータプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
1 アンテナ配置決定システム
11 プロセッサ
13 メモリ
15 入力部
17 出力部
101 設計情報入力部
103 ノイズ分布推定部
105 アンテナ感度推定部
107 最適化部
109 空力特性計算部
111 重心特性計算部
113 受信感度試験部
21 通信・センサ部
211 位置センサ
213 映像データ伝送通信モジュール
215 操作通信モジュール
217 6軸センサ
219 イメージセンサ
23 制御部
231 コントローラ
25 駆動部
251 ESC
253 モータ
255 プロペラ
27 電源部

Claims (10)

  1. 移動体におけるアンテナ配置を決定するためのシステムであって、
    デジタル回路の特性に関する回路情報、前記デジタル回路の構造に関する構造情報、アンテナの特性に関するアンテナ情報、前記デジタル回路の配置に関する回路モジュール配置情報、及び前記アンテナの配置に関するアンテナ位置情報を設計情報として入力する設計情報入力部と、
    前記回路情報、前記構造情報及び前記回路モジュール配置情報に基づいてノイズ強度分布を計算するノイズ分布推定部と、
    前記アンテナ情報及び前記アンテナ位置情報に基づいてアンテナ感度分布を計算するアンテナ感度推定部と、
    前記ノイズ強度分布と前記アンテナ感度分布との重なりを評価し、前記重なりの評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記設計情報を変更する最適化部とを含む
    アンテナ配置決定システム。
  2. 前記最適化部は、前記重なりの評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記アンテナ位置情報を変更し、前記アンテナ感度推定部に前記アンテナ感度分布を再度計算させ、再度前記重なりの評価を行う
    請求項1記載のアンテナ配置決定システム。
  3. 前記最適化部は、前記重なりの評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記回路モジュール配置情報を変更し、前記ノイズ分布推定部に前記ノイズ強度分布を再度計算させ、再度前記重なりの評価を行う
    請求項1記載のアンテナ配置決定システム。
  4. 前記最適化部は、ノイズ印加時のアンテナ出力端におけるノイズチャネルパワーを前記重なりの評価結果とし、通信モジュールが規定する許容ノイズチャネルパワーをノイズ印加時のアンテナ出力端におけるノイズチャネルパワーが下回ることを前記所定の基準とする
    請求項1乃至3いずれか1項記載のアンテナ配置決定システム。
  5. 前記設計情報に基づいて前記移動体に発生する揚力及び抗力を計算する空力特性計算部をさらに有し、
    前記揚力及び抗力の評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記設計情報を変更する
    請求項1乃至4いずれか1項記載のアンテナ配置決定システム。
  6. 前記設計情報に基づいて前記移動体の重心バランスを計算する重心特性計算部をさらに有し、
    前記重心バランスの評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記設計情報を変更する
    請求項1乃至3いずれか1項記載のアンテナ配置決定システム。
  7. 前記設計情報に基づいて電波受信感度を計算する受信感度試験部をさらに有し、
    前記電波受信感度の評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記設計情報を変更する
    請求項1乃至6いずれか1項記載のアンテナ配置決定システム。
  8. コンピュータが移動体におけるアンテナ配置を決定する方法であって、
    デジタル回路の特性に関する回路情報、前記デジタル回路の構造に関する構造情報、アンテナの特性に関するアンテナ情報、前記デジタル回路の配置に関する回路モジュール配置情報、及び前記アンテナの配置に関するアンテナ位置情報を設計情報として入力する設計情報入力ステップと、
    前記回路情報、前記構造情報及び前記回路モジュール配置情報に基づいてノイズ強度分布を計算するノイズ分布推定ステップと、
    前記アンテナ情報及び前記アンテナ位置情報に基づいてアンテナ感度分布を計算するアンテナ感度推定ステップと、
    前記ノイズ強度分布と前記アンテナ感度分布との重なりを評価し、前記重なりの評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記設計情報を変更する最適化ステップとを含む
    アンテナ配置決定方法。
  9. 前記最適化ステップでは、ノイズ印加時のアンテナ出力端におけるノイズチャネルパワーを前記重なりの評価結果とし、通信モジュールが規定する許容ノイズチャネルパワーをノイズ印加時のアンテナ出力端におけるノイズチャネルパワーが下回ることを前記所定の基準とする
    請求項8記載のアンテナ配置決定方法。
  10. 請求項8又は9記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
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