JP2006309198A - プラスチック光学母材の製造方法及びプラスチック光ファイバ - Google Patents

プラスチック光学母材の製造方法及びプラスチック光ファイバ Download PDF

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Abstract

【課題】径変動が抑制されているプラスチック光ファイバを得る。
【解決手段】PVDFからなるクラッドパイプを作製する。クラッドパイプ内に重合性組成物を入れる。重合性組成物の主成分はMMAである。クラッドパイプを重合容器33に入れる。ヒータ35を3区画に分割35a,35b,35cして、それぞれ独立に制御できるようにする。左端部ヒータ35a,中央部ヒータ35b,右端部ヒータ35cの温度を56℃,58℃,60℃に調整する。回転ロール34を500rpm〜3000rpmで18時間重合を行う。膜厚が均一でPMMAを主成分とするインナークラッド層が形成される。その中にコアを作製してプリフォームを得る。プリフォームを延伸して径変動が抑制されたプラスチック光ファイバを得る。
【選択図】図2

Description

本発明は、プラスチック光学母材の製造方法及び前記製造方法により得られるプラスチック光ファイバ母材を加熱溶融延伸して得られるプラスチック光ファイバに関するものである。
プラスチック光学部材は、同一の構造を有する石英系の光学部材と比較して、製造及び加工が容易であること、及び低価格であること等の利点がある。そのため、近年、光ファイバ及び光レンズ、光導波路など種々の応用が試みられている。特にこれらの光学部材の中でも、プラスチック光ファイバは素材が全てプラスチックで構成されているため、伝送損失が石英系と比較してやや大きいという短所を有するものの、良好な可撓性を有し、軽量で加工性が良いという利点がある。また、石英系光ファイバと比較して、口径の大きい光ファイバとして製造し易く、さらに低コストで製造可能であるという長所を有する。従って、伝送損失の大きさが問題とならない程度の短距離用の光通信媒体として種々検討されている(例えば、特許文献1参照)。
プラスチック光ファイバは、一般的には、重合体をマトリックスとする有機化合物からなる芯(以下、コアと称する)とコアと屈折率が異なる(一般的には低屈折率の)有機化合物からなる外殻(以下、クラッドと称する)とから構成されている。特に中心から外側に向かって屈折率の大きさに分布を有するコアを備えた屈折率分布型プラスチック光ファイバは、伝送する光信号の帯域を大きくすることが可能なため、高い伝送容量を有する光ファイバとして最近注目されている。この様な屈折率分布型光学部材の製造方法の1つに、界面ゲル重合法を利用して、光学部材母材(以下、プリフォームと称する)を作製し、その後に前記プリフォームを線引きして、グレーデッドインデックス型プラスチック光ファイバ(GI−POF)を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2ないし特許文献4参照)。プリフォームを線引き(延伸工程)してプラスチック光ファイバは製造されているが、長周期でファイバ径の変動が生じる場合がある。そこで、ファイバ径の変動、振れを抑制するための延伸装置と延伸加熱条件と冷却条件について規定することでファイバ径の変動を抑制することが知られている(例えば、特許文献5参照)。
特開昭61−130904号公報 特許第3332922号公報 特開平10−246821号公報 特開2001−215345号公報 特開平11−337745号公報
上記に挙げた先行技術でプリフォームを線引き(延伸)してプラスチック光ファイバなどの光学部材を製造する方法のうち前記特許文献3及び前記特許文献4で行っている重合容器を回転させながら重合を進める重合反応においては、全ての部分で均一に重合反応が進行することが好ましいが、局所的な熱分布の不均一や細かな振動による重合容器への影響などによって不均一となる場合がある。このとき、重合が進行した部位と重合が進行していない部位とでは、粘度や重合収縮などによって、形成する重合体の層の厚みが異なってしまうことがある。このようにして得られるプリフォームを線引きすると、得られるプラスチック光ファイバのファイバ径が長周期で変動する問題が生じてしまい、プリフォームの線引き条件などの製造条件からの対応だけでは解決されず、生産性の向上及び製品の光学特性が悪化する点からも問題となっている。
本発明は、線引きを行っても径の変動が抑制されているプラスチック光学母材の製造方法及び径の変動が抑制されているプラスチック光ファイバを提供することを目的とする。
本発明者が鋭意検討した結果、以下の問題点を見出し、その問題点を解決することで本発明を完成させた。ファイバ径の長周期変動は、インナークラッド層形成用重合性組成物をクラッドパイプ内に入れて高速で回転させながら熱重合により作製するときに、クラッドパイプの回転に伴う振動により形成されるインナークラッド層の厚みが周期的に変動していることが原因の一つである。また、同様に反応管内にコア形成用重合性組成物を入れて高速で回転させながら界面ゲル重合法を行う際にも、コアの厚みムラが生じることも原因の一つである。なお、回転重合を均一に行うため、回転速度はある程度高速(例えば、1000rpm〜5000rpm)である必要があることも見出した。
本発明者の検討により、クラッドパイプ、反応管の回転に伴う振動によるインナークラッド層、コアの厚みの周期的変動は、粘度の上昇速度の緩やかなレベリング効果の高い重合固化挙動で抑制することが可能であることが分かった。しかしながら、重合性組成物にMMAのような熱反応性が高いモノマーを用いると、瞬間的固化が生じるなど重合固化挙動の制御が難しいためレベリング効果を高めることが困難であった。しかしながら、(メタ)アクリル酸やそのエステル化化合物を重合性組成物として、合成されるアクリル樹脂は光学特性に優れるため、他の素材への変更が困難であることも分かった。そこで、本発明者はさらに検討を進めた結果、クラッドパイプ、反応管を高速で回転させながらクラッドパイプ、反応管にて発熱反応性を有するモノマーなどを重合する際、クラッドパイプ、反応管に温度勾配を付与することにより重合反応速度を変化させることが可能で、レベリング効果の高い重合反応を行えることを見出した。そこで、前記回転重合により、厚みが均一なインナークラッド層及びコアを作製することができることを見出し、本発明を完成させた。
本発明のプラスチック光学母材の製造方法は、パイプ内に重合性組成物を注入し、前記重合性組成物を重合反応させて、前記パイプの内周面に少なくとも1層のポリマー層を形成するプラスチック光学母材の製造方法において、前記パイプの長手方向で前記重合反応の反応時間を変化させる。
前記パイプが、クラッドパイプであることが好ましい。前記ポリマー層が、インナークラッド層であることが好ましい。前記反応時間が、前記重合性組成物が固化するまでの時間であり、その変化が前記パイプの長手方向で1m長さあたり1.2時間以上となるように、前記パイプに連続的な温度勾配を付与することが好ましい。なお、重合反応中の発熱を温度センサなどによりモニタリングし、この発熱が最高温度に達し、さらなる昇温が検出されない状態になったときに前記重合性化合物が固化したと判断する。また、温度勾配とは、重合反応時における前記パイプの加熱温度が前記長手方向に沿って変化していることを指す。
前記パイプの主成分が、フッ素樹脂であることが好ましい。前記ポリマー層の主成分が、(メタ)アクリル樹脂であることが好ましい。前記ポリマー層内にコアが形成されている場合であって、前記コアが界面ゲル重合法で製造され、その中心から外周方向に向けて連続的に屈折率が低下していることが好ましい。
本発明には、前記プラスチック光学母材の製造方法により得られるプラスチック光学母材を加熱延伸して得られるプラスチック光ファイバも含まれる。
本発明のプラスチック光学母材の製造方法によれば、パイプ内に重合性組成物を注入し、前記重合性組成物を重合反応させて、前記パイプの内周面に少なくとも1層のポリマー層を形成するプラスチック光学母材の製造方法において、前記パイプの長手方向で前記重合反応の反応時間を変化させるから、前記ポリマー層の瞬間的な固化を防ぎ、前記ポリマー層をレベリング効果の高い緩やかな固化挙動とすることができ、前記ポリマー層の厚みムラを抑制することができる。この場合において、前記反応時間を、前記重合性化合物が固化するまでの時間とし、その変化が前記パイプの長手方向で1m長さあたり1.2時間以上となるように、前記パイプに連続的な温度勾配を付与することで、レベリング効果がより発現する。
本発明のプラスチック光学母材の製造方法によれば、前記プラスチック光学母材の製造を行う際に、前記ポリマー層内にコアが形成されている場合に、前記コアを界面ゲル重合法で製造することで、その中心から外周方向に向けて連続的に屈折率が低下している屈折率分布型のコアを有するプラスチック光学母材を得ることができ、線引きを行ってもファイバ径の長周期変動が抑制されているプラスチック光ファイバを得ることができる。また、そのプラスチック光ファイバは光学特性に優れている。
本発明のプラスチック光ファイバは、前記プラスチック光学母材の製造方法により得られるプラスチック光学母材を加熱延伸して得られるから、インナークラッド層厚みの周期的な変動が無くなり、前記プラスチック光学母材を加熱延伸する際に周期的な径変動が抑制されている。そのため製造ロスが減少して生産性が向上する。また、長く且つ光学特性及びファイバ径が均一なプラスチック光ファイバである。
以下、本発明について詳細に説明する。実施の形態については、本発明の好適な適用例を記載しているものであり、本発明を何ら制限するものではない。
(コア及びインナークラッド層)
コア及びインナークラッド層の原料の重合性モノマーとしては、塊状重合が容易である原料を選択するのが好ましい。光透過性が高く塊状重合しやすい原料としては例えば、以下のような(メタ)アクリル酸エステル類(フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル(a),含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(b)),スチレン系化合物(c),ビニルエステル類(d)等を例示することができ、コア及びインナークラッド層はこれらのホモポリマー、あるいはこれらモノマーの2種以上からなる共重合体、およびホモポリマー及び/または共重合体の混合物から形成することができる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル類を重合性モノマーとして含む組成を好ましく用いることができる。
以上に挙げた重合性モノマーとして具体的に、(a)フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル(BzMA)、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、トリシクロ[5・2・1・02,6]デカニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート等が挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。また、(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート等が挙げられる。さらに、(c)スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。さらには、(d)ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものではない。モノマーの単独あるいは共重合体からなるコアのポリマーの屈折率は、クラッドのそれに比べて同等かあるいはそれ以上になるように構成モノマーの種類,組成比を選択する。特に好ましいポリマーとしては、透明樹脂であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)が挙げられる。
さらに、作製する光学部材の一種であるプラスチック光ファイバを近赤外線用途に用いる場合は、コアのポリマーを構成するC−H結合に起因した吸収損失が起こるために、特許第3332922号公報などに記載されているような重水素化ポリメチルメタクリレート(PMMA−d8)、ポリトリフルオロエチルメタクリレート(P3FMA)、ポリヘキサフルオロイソプロピル−2−フルオロアクリレート(HFIP 2−FA)などを始めとする、C−H結合の水素原子(H)を重水素原子(D)やフッ素(F)などで置換した重合体を用いる。これにより、この伝送損失を生じる波長域を長波長化することができ、伝送信号光の損失を軽減することができる。なお、原料モノマーは重合後の透明性を損なわないためにも、不純物や散乱源となる異物は重合前に十分に低減することが望ましい。
(クラッド)
クラッドの素材には、コアを伝送する光がそれらの界面で全反射するために、コアの屈折率より低い屈折率を有し、コアとの密着性が良いものを好ましく用いることができる。ただし、素材の選択によってコアとクラッドの界面の不整が起こりやすい、もしくは製造適性上好ましくない場合などにおいては、コアとクラッドの間にさらにインナークラッド層を設けても良い。例えば、コアとの界面(即ち、中空管の内壁面)に、コアのマトリックスと同一組成のポリマーからなるインナークラッド層を形成することにより、コアとクラッドとの界面状態を矯正することができる。勿論、インナークラッド層を形成せずに、クラッドそのものを、コアのマトリックスと同一組成のポリマーから形成することもできる。
クラッドの素材としては、タフネスに優れ、耐湿熱性にも優れているものが好ましく用いられる。例えば、フッ素含有モノマーの単独重合体または共重合体からなるのが好ましい。フッ素含有モノマーとしてはフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましく、フッ化ビニリデンを10質量%以上含有する1種以上の重合性モノマーを重合させて得られるフッ素樹脂が好ましく用いることができる。
また、溶融押出法により重合体を成形し、クラッドを作製する場合は、重合体の溶融粘度が適当であることが必要である。この溶融粘度については、相関する物性として分子量が用いられ特に重量平均分子量との相関がある。本発明においては、重量平均分子量が1万〜100万の範囲であることが適当であり、より好ましくは5万〜50万の範囲である。
さらに、できるだけコアへ水分が浸入することを防ぐことが好ましい。そのためには、吸水率が低いポリマーをクラッドの素材(材料)として用いる。すなわち飽和吸水率(以下、吸水率と称する)が1.8%未満のポリマーを用いてクラッドを作製するのが好ましい。より好ましくは1.5%未満のポリマー、さらに好ましくは1.0%未満のポリマーを用いてクラッドを作製することが好ましい。また、前記インナークラッド層を作製する場合にも同様の吸水率のポリマーを用いることが好ましい。吸水率(%)は、ASTM D 570試験法に従い、23℃の水中に試験片を1週間浸漬し、そのときの吸水率を測定することにより算出することができる。
(重合開始剤)
前記コア,インナークラッド層,クラッドが、重合性モノマーから重合されたポリマーから作製される場合、重合の際に重合開始剤が用いられる。重合開始剤としては、用いるモノマーや重合方法に応じて適宜選択することができ、例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物が挙げられる。また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は勿論これらに限定されるものではなく、更には2種類以上を併用してもよい。
(連鎖移動剤)
コア形成用重合性組成物,インナークラッド層形成用重合性組成物,クラッド形成用重合性組成物は、連鎖移動剤を含有していることが好ましい。前記連鎖移動剤は、主に重合体の分子量を調整するために用いられる。前記クラッド,前記インナークラッド層,前記コア形成用重合性組成物がそれぞれ連鎖移動剤を含有していると、重合性モノマーからポリマーを形成する際に、重合速度および重合度を前記連鎖移動剤によってより制御することができ、重合体の分子量を所望の分子量に調整することができる。例えば、得られたプリフォームを延伸により線引きしてプラスチック光ファイバとする際に、分子量を調整することによって延伸時における機械的特性を所望の範囲とすることができ、生産性の向上にも寄与する。
前記連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択できる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、前記連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンなど)、チオフェノール類(例えば、チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオールなど)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子(D)やフッ素原子(F)で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、連鎖移動剤は勿論これらに限定されるものではなく、これら連鎖移動剤は2種類以上を併用してもよい。
(屈折率調整剤)
前記コア用重合性組成物に屈折率調整剤を含有させるのが好ましい。なお、場合によっては、前記インナークラッド層形成用重合性組成物,前記クラッド重合性組成物に屈折率調整剤を含有させても良い。屈折率調整剤の濃度に分布を持たせることによって、前記濃度の分布に基づいて屈折率分布型のコアを容易に作製することができる。屈折率調整剤を用いなくとも、コアの形成に2種以上の重合性モノマーを用い、コア内に共重合比の分布を持たせることによって、屈折率分布構造を導入することもできるが、共重合の組成比制御などと比較して、製造の簡便さなどを鑑みると屈折率調整剤を用いることが好ましい。
屈折率調整剤はドーパントとも称し、併用する前記重合性モノマーの屈折率と異なる化合物である。その屈折率差は0.005以上であるのが好ましい。ドーパントは、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して、屈折率が高くなる性質を有する。これらは、特許第3332922号公報や特開平5−173026号公報に記載されているような、モノマーの合成によって生成される重合体との比較において溶解性パラメータとの差が7(cal/cm1/2以内であると共に、屈折率の差が0.001以上であり、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して屈折率が変化する性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、いずれも用いることができる。
ドーパントは重合性化合物であってもよく、重合性化合物のドーパントを用いた場合は、これを共重合成分として含む共重合体がこれを含まない重合体と比較して、屈折率が上昇する性質を有するものを用いる。なお、このような共重合体には、MMA−BzMA共重合体などが挙げられる。
前記ドーパントとしては、特許第3332922号や特開平11−142657号公報に記載されている様な、例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、ジフェニルスルフィド(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジル−n−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ジフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)、硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体などが挙げられる。中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOおよび硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体が好ましい。なお、これらの化合物中に存在する水素原子を重水素原子に置換した化合物も広い波長域での透明性を向上させる目的で用いることができる。また、重合性化合物として、例えば、トリブロモフェニルメタクリレート等が挙げられる。屈折率調整成分として重合性化合物を用いる場合は、マトリックスを形成する際に、重合性モノマーと重合性屈折率成分とを共重合させるので、種々の特性(特に光学特性)の制御がより困難となるが、耐熱性の面では有利となる可能性がある。
屈折率調整剤の濃度および分布を調整することによって、光学部材であるプラスチック光ファイバの屈折率を所望の値に変化させることができる。その添加量は、用途および組み合わされる部材に応じて適宜選ばれる。屈折率調整剤は、複数種類添加してもよい。
(その他の添加剤)
その他、コア,インナークラッド層,クラッドもしくはそれらの一部には、光伝送性能を低下させない範囲で、それらを作製する重合性組成物にその他の添加剤を添加することができる。例えば、コアもしくはその一部に耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。前記誘導放出機能化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部に光ファイバ増幅器として使用することができる。これらの添加剤も、前記原料モノマーに添加した後、重合することによって、コア,インナークラッド層,クラッドもしくはそれらの一部に含有させることができる。
[保護層形成用材料]
本発明で製造されるプラスチック光ファイバに保護層を形成して、プラスチック光ファイバコード,プラスチック光ファイバケーブルとすることで機械的強度が上昇してハンドリングが容易となる。用いられる保護層形成用材料には、プラスチック光ファイバに熱的ダメージ(例えば、変形,変性,熱分解など)を与えないものを選択する。そこで、プラスチック光ファイバを形成するポリマーのガラス転移温度Tg(℃)以下で、かつ(Tg−50)℃以上で硬化可能なポリマーを用いることが好ましい。また、生産コストの低減のために、成形時間(材料が硬化する時間)が1秒以上10分以下、好ましくは1秒以上5分以下であるものを用いることがより好ましい。なお、プラスチック光ファイバが複数のポリマーから形成される場合には、それら各ポリマーのガラス転移温度のなかで、最も低い温度のガラス転移温度をTg(℃)とみなす。なお、PVDFなどようにガラス転移温度Tg(℃)が常温以下(例えば、PVDFでは約−40℃)の場合や、ガラス転移温度を有さないポリマーの場合には、他の相転移温度、例えば融点を基準温度とする。
保護層形成用材料としては、ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP)などに代表される一般的なオレフィン系ポリマーや塩化ビニル,ナイロンなどの汎用性の高いポリマーのほかに、具体的に以下の材料を挙げることができる。これらは高い弾性を有しているため、曲げなどの機械的特性付与の観点でも効果がある。まず、ポリマーの一形態であるゴムを挙げることもできる。具体的には、イソプレン系ゴム(例えば、天然ゴム,イソプレンゴムなど),ブタジエン系ゴム(例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム,ブタジエンゴムなど),ジエン系特殊ゴム(例えば、ニトリルゴム,クロロプレンゴムなど),オレフィン系ゴム(例えば、エチレン−プロピレンゴム,アクリルゴム,ブチルゴム,ハロゲン化ブチルゴムなど),エーテル系ゴム,ポリスルフィド系ゴム,ウレタン系ゴムなどが挙げられる。
保護層形成用材料としては、室温で流動性を示して加熱することにより、その流動性が消失して硬化する液状ゴムを用いることができる。具体的には、ポリジエン系(例えば、基本構造がポリイソプレン,ポリブタジエン,ブタジエン−アクリロニトリル共重合体,ポリクロロプレンなど),ポリオレフィン系(例えば、基本構造がポリオレフィン,ポリイソブチレンなど),ポリエーテル系(例えば、基本構造がポリ(オキシプロピレン)など),ポリスルフィド系(例えば、基本構造がポリ(オキシアルキレンジスフィド)など),ポリシロキサン系(例えば、基本構造がポリ(ジメチルシロキサン)など)などを挙げることができる。
保護層形成用材料としては、(マスターバッチのベースレジン含む)エチレン,プロピレンあるいはα−オレフィンの重合体などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの重合体としては、例えばエチレンの単独重合体、エチレン−α−オレフィンの共重合体、エチレン−プロピレン共重合体である。
これらの熱可塑性樹脂に金属水和物あるいはリン,窒素を含有し、着色剤である難燃性物質を配合したマスターバッチ(master batch)が併せて用いられる。マスターバッチとは、機能性添加剤を高濃度として樹脂に混合し混練したものである。添加剤はバルク樹脂と混練させるため、熱に対して安定な無機化合物を選択することが多く、その機能性としては、帯電防止のための導電性物質、難燃性物質、着色用の染料や顔料などが挙げられ、特に添加剤として着色剤を用いる場合に用いられる事が多い。またマスターバッチを作成する際に高濃度で分散させるため、さらに分散剤や滑剤を添加したり、添加剤を改質して製造されることもある。
添加剤としての無機微粒子は粒度の細かなものが好ましい。特にプラスチック光ファイバと接する最内層や最外層は粗い粒子が混入していると、プラスチック光ファイバを傷つけたり、作業性が悪化したりするので好ましくない。
添加剤として具体的には限定されるものではないが、例えば導電性物質としては錫や亜鉛合金粉や銀等の貴金属微粒子、難燃性物質としては水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物などが挙げられ、着色の顔料としては、カーボンブラック,酸化チタン, 酸化ジルコニウムなどが好ましく用いられる。カーボンブラックは、低コストであり、光ファイバ用被覆材として用いる場合に、着色以外に制電性も有しているので静電気を帯びにくくなる、近赤外域に吸収を持つので外乱光の遮閉性に富むうえ、曲げなどで光ファイバの外部へ放出された光が再度戻ってくる事を抑制することを抑制するなど有利な点が多く、特に好ましい。
マスターバッチ中に含まれる添加剤の濃度は30.0重量%以下の範囲内であり、好ましくは5.0重量%以上20.0重量%以下の範囲内であり、更に好ましくは10.0重量%以上、15.0重量%以下の範囲内である。添加剤の濃度が5.0重量%未満であるとマスターバッチとしての効果がなく、30.0重量%を超えて含有しているとマスターバッチが脆くなったり、分散性が低下する。
マスターバッチとバルク樹脂とを混合して得られるポリマー中に含まれる好ましい添加剤の濃度は0.10重量%以上10.0重量%以下であり、より好ましくは0.15重量%以上5.0重量%以下であり、0.20重量%以上、3.0重量%以下であることが更に好ましい。0.10重量%未満であると実質的に添加剤の添加効果が発現しない、10重量を超えると、樹脂の流動性や靭性が損なわれ、被覆中に樹脂切れや外径変動等のトラブルが発生する。
熱可塑性樹脂及びマスターバッチの分子量(例えば、数平均分子量,重量平均分子量など),分子量分布,融点,メルトフローレートなどは特に限定されるものではない。メルトフローレートは、熱可塑性プラスチックの流れ試験方法(JIS K 7210 1916)により得られるメルトフローレート(MFR)が、樹脂の流動性の指標となる。MFRは、値が近い方が押し出しが均一になる。
バルク樹脂とマスターバッチとの樹脂溶融温度が異なると、押出装置内の流動が不均一になる(スクリューで押し出す量が変動する)ため、吐出変動が大きくなり、被覆後の外径も変動してしまう。そのためこれら樹脂の融点、バルク樹脂融点Ta(℃)とマスターバッチ融点Tb(℃)との温度差が小さい方が好ましい。
保護層の材料としてはさらには、熱可塑性エラストマー(TPE)なども用いることもできる。熱可塑性エラストマーは、室温ではゴム弾性を示し、高温で可塑化されて成形が容易である物質群である。具体的には、スチレン系TPE,オレフィン系TPE,塩化ビニル系TPE,ウレタン系TPE,エステル系TPE,アミド系TPEなどが挙げられる。なお、前記列記したポリマーは、POFのポリマー、特にコアのポリマーのガラス転移温度Tg(℃)以下で成形可能なものであれば、特に上記材料に限定されず、各材料間もしくは上記以外の共重合体や混合ポリマーを用いることもできる。
また、ポリマー前駆体と反応剤などとを混合した液を熱硬化させるものを用いることができる。例えば、特開平10−158353号公報に記載のNCOブロックプレポリマーと微粉体コーティングアミンとから製造される1液型熱硬化性ウレタン組成物を挙げることができる。また、WO95/26374号パンフレットに記載のNCO基含有ウレタンプレポリマーと20μm以下の固形アミンとからなる1液型熱硬化性ウレタン組成物なども用いることもできる。その他に、性能を改善する目的で難燃剤,酸化防止剤,ラジカル捕獲剤,滑剤などの添加剤や、無機化合物及び/または有機化合物からなる各種フィラーを加えることができる。
図1に本発明に係るプラスチック光学母材(以下、プリフォームと称する)の製造方法及び前記プリフォームを用いるプラスチック光ファイバの製造工程図を示す。クラッドパイプ作製工程11では押出機にて中空円筒パイプであるクラッドパイプ12を製造する。なお、クラッドパイプ12の成分は前記記載のいずれのものであっても良いがPVDF(ポリフッ化ビニリデン)が好ましい。また、クラッドパイプ12は回転重合法で作製しても良い。
次に、ポリマー層であるインナークラッド層をクラッドパイプ12内面に形成するインナークラッド層形成工程13を行い、反応管14を得る。インナークラッド層の形成は、クラッドパイプ12を回転させながら行う熱重合反応により行う。インナークラッド層の主成分はPMMAであることが好ましい。インナークラッド層形成工程13は後に詳細に説明する。そして、コア重合工程15を行いプリフォーム16を得る。コア重合工程15では、反応管14の中空部に重合性組成物であるMMAとドーパントであるDPS(ジフェニルスルフィド)と所望に応じてその他の添加剤とを入れる。そして、界面ゲル重合法によりコアを形成する。コアの作製に際しては、重合性組成物を入れた反応管14を回転させながら界面ゲル重合を行う方法が好ましい。
プリフォーム16からはプラスチック光ファイバや光レンズなどの光学部材が得られる。
延伸工程17では、プリフォーム16を160℃〜320℃に加熱して溶融する。溶融されたプリフォーム16の一端を線引き(延伸)してプラスチック光ファイバ18を得る。さらに、所望に応じて被覆工程19を行いプラスチック光ファイバ18に被覆を施したプラスチック光ファイバコード20を作製する。なお、被覆工程19で用いられる被覆材は前記保護層形成用材料が用いられ、好ましくはポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリ塩化ビニル(PVC)である。
図2を参照してインナークラッド層形成工程13を説明する。インナークラッド層は回転重合装置30による回転重合反応で形成される。回転重合装置30は、装置本体31と駆動部32とから構成されている。装置本体31内には、重合容器33と回転ロール34とがそれらの長手方向が水平方向となるように備えられている。なお、図2では2本の重合容器33を3本の回転ロール34で挟んでいる。また、その組を2組設置しているものを示しているが、本発明において設置される重合容器33の本数、形態は図2に示されているものに限定されるものではない。
重合容器33はパイプ状であり、SUSなどの剛性を有する素材から形成されている。重合容器33内には重合性組成物が入れられたクラッドパイプ12が挿入されている。なお、重合性組成物は前記インナークラッドの重合性モノマーと重合開始剤、連鎖移動剤、必要に応じて屈折率調整剤及びその他の添加剤とからなるものである。
装置本体31の下部にファン(図示しない)とヒータ35がある。吸気口36a〜36cより吸気した空気を加熱し、装置本体上部背面の排気口37より熱風を排気することで装置本体内及び重合容器は加熱される。ヒータ35a〜35cを制御するための温度センサは排気口37a〜37cに取り付けられており(図示しない)、熱風の循環により装置本体31内及び重合容器33は恒温に保たれる。ヒータ35a〜35cと吸気口36a〜36c及び排気口37a〜37cは、重合容器33の長手方向において温度調整が可能なように複数の区画に分割されており、ヒータの温度設定と各々の開口部の大きさは独立に制御できるものを用いる。図2では、3区画の左側部ヒータ部35a,中央部ヒータ35b,右側部ヒータ35cからなるヒータ35を示している。吸気口36a〜36c及び排気口37a〜37cも同様に3区画である。本発明において、区画数は3区画に限定されるものではなく、2区画以上20区画以下であることが好ましく、3区画以上15区画以下であることがより好ましく、最も好ましくは4区画以上10区画以下である。
重合容器33が、連続的かつ直線的な温度勾配を有していることを確認するための温度センサ38a〜38eが重合容器の上部1cmの位置に取り付けられている。重合反応中における重合容器33の長手方向の温度勾配をモニタリングできるようにしてある。さらに、この温度センサ38a〜38eにより重合反応の発熱による温度上昇をモニタリングすることにより、重合反応が完了して、重合性組成物が固化した時間を知ることができる。重合反応が完了して、重合性組成物が流動性を失い固化すると発熱がなくなり、更なる温度上昇が検出されなくなるからである。図2では、温度センサは38a〜38eの5点であるが、5点に限定されるものではなく、2点以上20点以下であることが好ましく、3点以上15点以下であることがより好ましく、最も好ましくは4点以上10点以下である。
なお、回転重合装置30の加熱機構は熱風循環式に限定されるものではなく、加熱機構を回転ロール34内に設けたものや、回転ロール34内に液流路を形成し、液流路内に伝熱媒体を循環させるものなどが挙げられる。この場合は、回転ロール34を長手方向で複数の区画に分類し温度勾配を制御させることが可能である。また、装置本体31の左右側壁面の断熱効果に差を設け重合容器33に温度勾配を付与する方法なども挙げられる。
回転ロール34の長さも特に限定されるものではない。具体的にはクラッドパイプ12の長さをL(mm)とした場合に、1.05×L(mm)以上2×L(mm)以下が好ましくは、1.10×L(mm)以上1.80×L(mm)以下がより好ましく、最も好ましくは1.20×L(mm)以上1.60×L(mm)以下である。
ヒータ35の設定温度は特に限定されるものではない。回転ロール34の加熱温度は特に限定されるものではない。具体的にはインナークラッド層をPMMAを主成分として形成する場合には、25℃以上140℃以下であることが好ましく、より好ましくは30℃以上120℃以下であり、最も好ましくは35℃以上100℃以下である。温度が25℃より低い場合では反応が進行しにくく、140℃より高い場合では沸騰による泡が発生しやすくなる。
また、それぞれのヒータ部35a,35b,35cの設定温度に差をつけることで重合容器33の長手方向に温度勾配を付与する。ヒータ部35a〜35cの設定温度を同一とした場合では、長手方向においてインナークラッド層は同時に急激な速度で固化するため、回転振動により生じていた液面の周期的な凹凸が残ってしまう。一方、温度勾配を付与し、端から徐々に固化させていくと、液面の周期的な凹凸はレベリングされるため、周期的な厚み変動が抑えられたインナークラッド層を形成することができる。設定温度の差は特に限定されるものではないが、1℃以上30℃以下であることが好ましく、より好ましくは2℃以上20℃以下であり、最も好ましくは3℃以上10℃以下である。設定温度の差が1℃より低い場合は、長手方向の反応速度差を十分につけることができないおそれがある。また、設定温度の差が30℃より高い場合はインナークラッド層を形成するために要する時間が長くなり、生産性が低下するおそれがある。
最も好ましい温度勾配は、クラッドパイプ12の長手方向に対して連続的で直線的であるように温度差を付与することである。これは温度センサ38a〜38eで確認することができる。これによりクラッドパイプ12の長手方向における重合反応時間を調整することができる。クラッドパイプ12の左端と右端との温度差は、クラッドパイプ12の直径と長さ、インナークラッド層形成用重合性組成物の種類、重合処方によって適宜適切な値を選ぶ必要がある。それにより、クラッドパイプ12内面に膜厚が略均一のインナークラッド層を形成することができる。
回転ロール34は、駆動部32の駆動装置(図示しない)により回転する。回転ロール34の回転に伴い、その間に挟まれている重合容器33も回転する。回転速度も特に限定されるものではないが、100rpm以上5000rpm以下であることが好ましく、500rpm以上4000rpm以下であることがより好ましく、最も好ましくは1000rpm以上3000rpm以下である。回転速度が100rpmよりも低い場合は、延伸力の不足により中空層が乱れるおそれがある。また、回転速度が5000rpmよりも高い場合は装置の振動が増加してしまい、重合容器を安定して回転させることが困難となる場合がある。
装置本体31内を所望の温度に保持するために、装置本体31に温調機(図示しない)を取り付けても良い。装置本体31内の温度は特に限定されるものではないが25℃以上140℃以下であることが好ましく、30℃以上120℃以下であることがより好ましく、最も好ましくは35℃以上100℃以下である。温度が25℃よりも低い場合では反応が進行しにくい。また、温度が140℃より高い場合では沸騰による泡が発生しやすくなる。
回転重合装置30を用いるインナークラッド層形成工程13を説明する。直径10mm以上60mm以下であり、長さL(mm)が300mm以上2000mm以下のPVDFを主成分とするクラッドパイプ12を4本用意する。それぞれのクラッドパイプ12のなかにモノメチルメタクリレート(MMA)と重合開始剤と連鎖移動剤とを重合性組成物として入れる。そして、クラッドパイプ12をそれぞれ重合容器33内に挿入する。
重合容器33が100rpm以上5000rpm以下の速度で回転するように回転ロール34を回転させる。また、左端部ヒータ35aの設定温度を25℃以上138℃以下とし、中央部ヒータ35bの設定温度を26℃以上139℃以下とし、右端部ヒータ35cの設定温度を27℃以上140℃以下とし、重合容器33に温度勾配を付与することで、クラッドパイプ12内の重合性組成物の重合速度を制御する。そのときの温度センサ38a〜38eにより測定される重合容器33の長手方向における温度差は特に限定されるものではないが、重合容器33の長さ1mあたり0.5℃以上25℃以下であることが好ましく、より好ましくは1℃以上20℃以下であり、最も好ましくは2℃以上15℃以下である。長手方向における温度差が0.5℃より小さい場合は十分な反応速度差をつけることができないおそれがある。また、温度差が15℃よりも大きい場合はインナークラッド層を形成するために要する時間が長くなり、生産性が低下してしまう。最も好ましい温度勾配は、重合容器33の長手方向に対して連続的で直線的となっていることである。
そして、2時間以上30時間以下の範囲で回転重合させることで、図3に示されているように外径がφ20mmで内径がφ19mmのクラッドパイプ12を用いた場合は、厚みt(mm)が3.8mmのインナークラッド層40を形成できる。なお、インナークラッド層40の厚みt(mm)は前記厚みに限定されるものでなく、クラッドパイプ12の内径をD(mm)とすると0.05×D(mm)以上0.42×D(mm)以下が好ましく、0.07×D(mm)以上0.37×D(mm)以下がより好ましく、最も好ましくは0.1×D(mm)以上0.32×D(mm)以下である。インナークラッド層40の厚みt(mm)が0.05×D(mm)よりも小さい場合は、重合性組成物の液量が少なすぎるため均一なインナークラッド層40を形成することが困難となる場合がある。また、t(mm)が0.42×D(mm)よりも大きい場合は、コアとなる重合性組成物が注入される、インナークラッド層40内側の中空部が部分的に閉塞する危険性がある。
この場合における重合反応時間の差は、クラッドパイプ12の長手方向で1m長さあたり1.2時間以上とすることが好ましく、より好ましくは1.5時間以上であり、最も好ましくは1.7時間以上である。重合反応時間の差の上限は特に限定されるものではないが生産性向上の点から3時間以下であることが好ましい。また、0.5時間未満であると、両端での温度差はあまり大きくないため反応速度差をつけにくく、素材によっては大きな重合熱が発生してしまい、隣接する未反応部位に局所的な粘度上昇を発生させて、うねりなどの内壁面の厚みの不均一が生じるおそれがある。また、予備重合を行って重合反応を進行させた場合には予備重合で進行した反応時間分を勘案して重合速度差をつけて行うことができる。
形成されるインナークラッド層40の厚みt(mm)は3.8mmであり、厚みの変動幅は0.3%以下となる。さらに好ましい実験条件を選択することで厚みの変動幅は0.2%以下となり、最も好ましい実験条件を選択することで厚みの変動幅は0.1%以下となる。そして、インナークラッド層40内にコア41を例えば界面ゲル重合法で形成し、プリフォーム16を得る。
本発明に係るプラスチック光ファイバ18、そのプラスチック光ファイバ18を用いて製造されるプラスチック光ファイバコード20およびプラスチック光ファイバケーブルを用いて光信号を伝送するシステムには、種々の発光素子や受光素子、光スイッチ、光アイソレータ、光集積回路、光送受信モジュールなどの光部品を含む光信号処理装置等で構成される。また、必要に応じて他の光ファイバなどと組合わせてもよい。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)、日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」などを参考にすることができる。前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線、車両や船舶などの内部配線、光端末とデジタル機器、デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LAN等をはじめとする、高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。
さらに、IEICE TRANS. ELECTRON., VOL. E84−C, No.3, MARCH 2001, p.339−344 「High−Uniformity StarCoupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3, No.6, 2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」の記載されているものや、特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号等の各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号等の各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号等の公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号等の各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号等に記載の光信号処理装置;特開2001−86537号等に記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号等に記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号等の各公報に記載のマルチファンクションシステム;や各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを使用した、より高度な光伝送システムを構築することができる。以上の光伝送用途以外にも照明、エネルギー伝送、イルミネーション、センサ分野にも用いることができる。
以下、本発明に係るプラスチック光ファイバの製造方法について、本発明に係る実験1及び実験2並びに比較例である実験3ないし実験5を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、説明は実験1で詳細に行い、その他の実験では実験1と異なる箇所のみを説明する。以下に示す材料の種類、それらの割合、操作などは、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例に限定されるものではない。
[実験1]
φ20mm、厚み0.5mm、長さLが905mmクラッドパイプ12をPVDF(ポリフッ化ビニリデン)から押出成形にて製造した。クラッドパイプ12内に重合開始剤として0.024mol%のジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(V−601)と連鎖移動剤として0.2mol%のn−ラウリルメルカプタンを混合させた約200gのMMA(メチルメタクリレート)を注入した。その後にクラッドパイプ12を重合容器33であるSUSパイプ内に挿入した。
次に、インナークラッド層形成工程13を行った。左端部ヒータ35aの設定温度を56℃とし、中央部ヒータ35bの設定温度を58℃とし、右側部ヒータ35cの設定温度を60℃に設定した。そして、これら3部を独立して温度制御した。これにより、重合反応時におけるクラッドパイプ12の実温度が57℃〜60℃と、クラッドパイプ12の長手方向で連続的かつ略直線的に温度勾配を有するようになった。そして、500rpm〜3000rpmで回転させながら18時間重合を行い厚みt(mm)が3.8mmのインナークラッド層40を作製して、反応管14を得た。
クラッドパイプ12の長手方向における左端と右端の反応が終了するまでの所要時間は、環境温度が57℃である左端は約15.8時間で、環境温度が60℃である右端は約14.1時間であった。その差は約1.7時間であり連続的にクラッドパイプ12の長手方向で反応速度差が生じていることが確認できた。反応速度差は、回転重合装置30に設置した5点の温度センサ38a〜38eにて重合容器33の長手方向20cm間隔で重合反応熱をモニタリングすることで確認した。
反応管14内に0.04mol%のジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(V−601)と0.2mol%のn−ラウリルメルカプタンと7wt%のDPS(ジフェニルスルフィド)とを混合させた約100gのMMAとからなる重合性組成物を注入した。重合容器であるSUSパイプ中に反応管14を挿入した。反応装置内にて500rpm〜2000rpmで回転させながら70℃で5時間、90℃で5時間さらに120℃で24時間重合を行い、コア41を形成してプリフォーム16を製造した。プリフォーム16を220℃の加熱炉内に配置した。その後に延伸速度を15m/minで線引き(延伸工程)を行い、線径が316μmのプラスチック光ファイバ18を得た。このプラスチック光ファイバ18は、屈折率分布型プラスチック光ファイバ(GI−POF)であった。また、周期的な厚み変動幅が10μm未満のインナークラッド層40が形成されていたので、延伸工程17におけるプラスチック光ファイバ18の周期的な線径変動幅は、10μm未満であった。インナークラッド層40の厚み変動は高精度接触式デジタル変位センサー(キーエンス(株)社製 AT−V)を用い測定した。また、プラスチック光ファイバ18の周期的な線径変動は、デジタル寸法測定器(キーエンス(株)社製 LS−7000)を用い測定を行った。
[実験2]
実験2では、インナークラッド層形成工程13で、所要時間短縮のためインナークラッド層作製重合反応速度を約10℃上昇させ反応速度を速めた以外は実験1と同じ条件で実験を行った。重合容器33の長手方向で連続的かつ直線的に温度勾配を有するようにヒータ35の3つを独立に制御した。左側部ヒータ35aの設定温度は64℃とし、中央部ヒータ35bの設定温度は67℃とし、右側部ヒータ35cの設定温度は70℃とした。これにより、重合反応時におけるクラッドパイプ12の実温度が65℃〜70℃と、クラッドパイプ12の長手方向で連続的かつ略直線的に温度勾配を有するようになった。本実験条件でも、周期的な厚み変動幅が10μm未満のインナークラッド層40が形成されていたので、延伸工程17におけるプラスチック光ファイバ18の周期的な線径変動幅は、10μm未満であった。
インナークラッド層形成工程13を行っている際のクラッドパイプ12の長手方向における左端と右端との反応が終了するまでに要する時間は、環境温度が65℃である左端は約7.6時間で、環境温度が約70℃である右端は約6.4時間であった。左端と右端の反応が終了するまでに要する時間差は約1.2時間であり連続的に反応速度差が生じていることが確認できた。反応速度差は、回転重合装置30に設置した5点の温度センサ38a〜38eにて重合容器33の長手方向20cm間隔で重合反応熱をモニタリングすることで確認した。
[実験3]
インナークラッド層形成工程13で3つのヒータ35a,35b,35cの設定温度を全て60℃とし、クラッドパイプの温度を60℃に一定とした以外は実験1と同じ条件で実験を行った。得られた反応管にはおよそ1cm周期で厚みが40μm変動しているインナークラッド層が形成されていた。このときクラッドパイプ長手方向で反応速度差は全くなかった。この反応管からプリフォームを作製し、さらに延伸工程を行いプラスチック光ファイバを得た。延伸工程においてプラスチック光ファイバには周期的に60μmの線径変動が生じた。
[実験4]
インナークラッド層形成工程13で3つのヒータ35a,35b,35cの設定温度を全て70℃とし、クラッドパイプの温度を70℃に一定とした以外は実験2と同じ条件で実験を行った。得られた反応管にはおよそ1cm周期で厚みが50μmと変動しているインナークラッド層が形成されていた。このときクラッドパイプ長手方向で反応速度差は全くなかった。この反応管からプリフォームを作製し、さらに延伸工程を行いプラスチック光ファイバを得た。延伸工程においてプラスチック光ファイバには周期的な75μmの線径変動が生じた。
[実験5]
インナークラッド層作製用重合性組成物を重合反応時の重合開始剤(ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート))の量を0.036mol%に増やし、インナークラッド層作製の重合開始温度を約10℃上昇させ反応速度を速めた以外は実験1と同じ条件で実験を行った。このとき重合容器33の長手方向で連続的かつ直線的に温度勾配を有するようにヒータ35a,35b,35cの3つを独立に制御した。左端部ヒータ35aの設定温度は64℃とし、中央部ヒータ35bの設定温度は67℃とし、右端部ヒータ35cの設定温度は70℃とした。これにより、重合反応時におけるクラッドパイプ12の実温度が65℃〜70℃と、クラッドパイプ12の長手方向で連続的かつ略直線的に温度勾配を有するようになったが、得られた反応管にはおよそ1cm周期で厚みが15μmと僅かに変動したインナークラッド層が形成されていた。このときクラッドパイプ長手方向の左端と右端の反応が終了するまでに要する時間は、環境温度が65℃である左端は約6.0時間で、環境温度が70℃である右端は約5.0時間であった。左端と右端の反応が終了するまでに要する時間差は約1時間であった。この反応管からプリフォームを作製し、さらに延伸工程を行いプラスチック光ファイバを得た。延伸工程においてプラスチック光ファイバには周期的な20μmの線径変動が生じた。
表1に、各実験の実施条件及び結果をまとめる。インナークラッド層厚み及び光ファイバ径の周期的変動については、変動幅が10μm未満であれば○、10μm以上30μm未満であれば△、30μm以上であれば×と評価する。
Figure 2006309198
本発明に係るプラスチック光学母材の製造方法の工程図である。 本発明に係るプラスチック光学母材の製造に用いられる回転重合装置の概略図である。 本発明に係るプラスチック光学母材の製造方法により得られるプラスチック光学母材の断面図である。
符号の説明
16 プリフォーム
18 プラスチック光ファイバ
30 回転重合装置
33 重合容器
35 ヒータ
40 インナークラッド層
41 コア

Claims (8)

  1. パイプ内に重合性組成物を注入し、前記重合性組成物を重合反応させて、
    前記パイプの内周面に少なくとも1層のポリマー層を形成するプラスチック光学母材の製造方法において、
    前記パイプの長手方向で前記重合反応の反応時間を変化させることを特徴とするプラスチック光学母材の製造方法。
  2. 前記パイプが、前記プラスチック光学母材に入射した光を前記ポリマー層との界面で全反射するクラッドパイプであることを特徴とする請求項1記載のプラスチック光学母材の製造方法。
  3. 前記ポリマー層が、前記クラッドパイプより高い屈折率を持つインナークラッド層であり、その内周には、前記プラスチック光学母材に入射された光を伝送するコアが形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のプラスチック光学母材の製造方法。
  4. 前記反応時間が、前記重合性化合物が固化するまでの時間であり、その変化が前記パイプの長手方向で1m長さあたり1.2時間以上となるように、
    前記パイプに連続的な温度勾配を付与することを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載のプラスチック光学母材の製造方法。
  5. 前記パイプの主成分が、フッ素樹脂であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1つ記載のプラスチック光学母材の製造方法。
  6. 前記ポリマー層の主成分が、(メタ)アクリル樹脂であることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1つ記載のプラスチック光学母材の製造方法。
  7. 前記コアが界面ゲル重合法で製造され、
    その中心から外周方向に向けて連続的に屈折率が低下していることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1つ記載のプラスチック光学母材の製造方法。
  8. 請求項1ないし7いずれか1つ記載のプラスチック光学母材の製造方法により得られるプラスチック光学母材を加熱延伸して得られることを特徴とするプラスチック光ファイバ。
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