JP2004061857A - 光伝送体の製造方法及び光伝送体 - Google Patents

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佐々木 広樹
Toru Ogura
小倉 徹
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Abstract

【課題】良好な光学特性を有し、かつ耐湿性が向上した光ファイバを得る。
【解決手段】中心から外側に向かって屈折率の分布を有するコア部とそのコア部を覆っているクラッド部とがポリマーからなる光伝送体母材を延伸した光ファイバを作製する。クラッド部110の外側110aを吸水率が1.8%未満であるMMA−tert−ブチルメタクリレート−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート共重合体(1:1:1の重合比)のポリマーを用いる。内側110bには、コア部と同一の組成のポリマーを用いる。クラッド部を溶融押出し成型した後に、コア部をクラッド110の中に形成して光伝送体母材を得る。それを延伸して得られる光ファイバは、光学特性、耐湿性のいずれも良好なものである。
【選択図】    図14

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光伝送体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光伝送体には、従来、石英が広く用いられていたが、近年、プラスチック材料からなるものが注目されている。プラスチック光伝送体は、同一の構造を有する石英系のものと比較して、製造および加工が容易であること、および低価格であること等の利点があり、近年、光ファイバおよび光レンズなどの種々の応用が試みられている。中でもプラスチック光ファイバは、素線が全てプラスチックで構成されているため、伝送損失が石英系と比較してやや大きいという短所を有するものの、良好な可撓性を有し、軽量で、加工性がよく、石英系光ファイバと比較して口径の大きいファイバとして製造し易く、さらに低コストに製造可能であるという長所を有する。従って、伝送損失の大きさが問題とならない程度の短距離用の光通信伝送媒体として種々検討されている。
【0003】
プラスチック光ファイバは、ポリマーからなる芯(以下、コア部と称する)とコア部より低屈折率のポリマーからなる外殻(以下、クラッド部と称する)とから形成された光ファイバ母材(以下、プリフォームと称する)を引き伸ばすことにより製造が行われている。特に、WO93/08488号公報に記載されているような中心から外側に向かって屈折率の分布を有するコア部を備えた屈折率分布型プラスチック光ファイバ(以下、GI型ファイバと称する)は、伝送する光信号の帯域を大きくすることが可能なため、高い伝送容量を有する光ファイバとして最近注目されている。このようなプラスチック光ファイバの製造方法は、クラッド部を回転重合法により製造し、その中にコア部を形成する方法がある。また、コア部を形成した後に、クラッド部を塗布して形成する方法が知られている。その他GI型ファイバではないが、特開平2−16504号公報には、屈折率分布の異なる2種以上の重合性混合物の積層状物を同心円状に押出して形成する方法が開示されている。このようにして得られたプリフォームを、180℃〜250℃の雰囲気中で熱延伸することにより、マルチステップ型プラスチック光ファイバが得られる。また、特開平9−133818号公報には、クラッド部とコア部とを同時に押し出しによってステップインデックス型プラスチック光ファイバを調製する方法が記載されている。また、特開平8−201637号公報には、1mm/min前後の速度でポリマー中空管を押し出し成形しながら、それにタイミングを合わすように、コア部に重合組成物をモノマー供給管から滴下供給し、さらに重合させつつ、延伸(ファイバ)する方法が記載されているが、重合組成物を連続的にゆっくり滴下することになるのでモノマー供給管で重合組成物が重合してしまう懸念が高い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
後に述べるように、GI型ファイバの場合、コア部にモノマーと屈折率調整剤を添加し、界面ゲル重合法により、簡便に屈折率分布を調製することが可能である。湿熱下、水分がファイバ内に浸入すると散乱に起因する伝送損失の悪化や屈折率分布の変化が起こり性能が悪化する場合がある。そのために、種々の手立てが考えられ、外部からファイバ内への水分の浸入を防ぐこと、あるいは光伝送体母材自身の吸水率を下げることが効果的である。前者の場合、被覆などに種々の工夫をこらすことが知られている。しかし、後者においては、界面ゲル重合によるGI型ファイバの本質上用いることができる材料に限りがあった。例えば回転重合法によるクラッド作製およびコア部の界面ゲル重合による光伝送体母材作製の場合、バルク重合で直接、ポリマー中空管および該母材を作製するため、その後の後続反応(例えば還元反応)ができないため、用いられる材料に限りがあった。またクラッド部を塗布して形成する方法の場合は、樹脂を溶解させるのに使用できる溶剤種に限りがあり、またその溶剤がコア部の最表面部を一部溶解し伝送損失に悪影響がみられていた。
【0005】
本発明は、良好な光学特性を有し、かつ耐湿性が向上する光伝送体の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の光伝送体の製造方法は、中心から外側に向かって屈折率の分布を有するコア部とそのコア部を覆っているクラッド部とがポリマーからなる光伝送体母材を延伸して光伝送体を作製する光伝送体の製造方法において、前記クラッド部を吸水率が1.8%未満のポリマーを用いて溶融押出し成型する工程を含む。また、本発明の光伝送体の製造方法は、中心から外側に向かって屈折率の分布を有するコア部とそのコア部を覆っているクラッド部とがポリマーからなる光伝送体母材を延伸して光伝送体を作製する光伝送体の製造方法において、前記クラッド部は、吸水率が1.8%未満のポリマーからなる層を有するアウタークラッド部とインナークラッド部とから構成される複層であり、少なくとも前記アウタークラッド部を溶融押出しで成型する工程を含む。また、前記溶融押出しで成型する工程が、前記インナークラッド部と前記アウタークラッド部とを共溶融押し出しで成型する工程であることが好ましい。さらに、前記光伝送体母材は、前記クラッド部を成形した後に、界面ゲル重合法により前記コア部を作成することが好ましい。
【0007】
前記コア部を構成するポリマーの溶解度パラメーターと、前記クラッド部を構成するポリマーの溶解度パラメーターとの差が、14000(J/m3 1/2 以下であることが好ましい。また、前記クラッド部が、前記コア部と界面を形成するインナークラッド部と、前記アウタークラッド部との少なくとも2層以上の複層から構成されている場合であって、前記コア部を構成するポリマーの溶解度パラメーターと、前記インナークラッド部を構成するポリマーの溶解度パラメーターとの差が、14000(J/m3 1/2 以下であることが好ましい。さらに、本発明には、前述した光伝送体の製造方法により製造された光伝送体も含まれる。なお、本発明において14000(J/m3 1/2 は、7(cal/cm3 1/2 である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示すが、この実施形態はあくまで本発明を詳細に説明するためのものであり、本発明をなんら制限するものではない。以下、本発明の光伝送体の製造方法を、プラスチック光ファイバの製造方法に適用した例について図面を用いて説明する。
【0009】
(クラッド部)
クラッド部は一般的には透明性を有する熱可塑性樹脂であること、溶融押出しするために溶融粘度が適当であることが必要である。後者の溶融粘度については、相関する物性として分子量が用いられ、重量平均分子量が1万から100万の範囲に入ることが適当であり、より好ましくは、5万から50万の範囲である。また、コア部を伝送する光がそれらの界面で全反射するために、コア部の屈折率より低い屈折率を有し、非晶性であり、コア部との密着性が良く、タフネスに優れ、耐湿熱性にも優れているものが好ましく用いられる。また、クラッド部は複層からなっていても良い。この場合、本発明では最内面のクラッド層をインナークラッド部、インナークラッド部の外層部分をアウタークラッド部と称する。アウタークラッド部は単層でも、さらに機械的強度向上や難燃性などの多種の機能性を付与させるために複層からなっていても良い。
【0010】
さらに上述したように、できるだけコア部へ水分が浸入することを防ぐことが好ましい。そのためには、ポリマーの吸水率が低いポリマーをクラッドの素材(材料)として用いるのが好ましい。すなわち飽和吸水率(以下、吸水率と称する)が1.8%未満のポリマーを用いてクラッドを作製するのが好ましい。より好ましくは1.5%未満のポリマー、さらに好ましくは1.0%未満のポリマーを用いてクラッドを作製するのが好ましい。ここで本発明における吸水率(%)は、ASTMD570試験法に従い、23℃の水中に試験片を1週間浸漬し、そのときの吸水率を測定することにより算出することができる。
【0011】
例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)の吸水率(%)は、2.0%である。したがって本発明に用いられる飽和吸水率が1.8%未満のポリマーは、メチルメタクリレート(MMA)の共重合体が挙げられる。例えば、MMAとトリフルオロエチルメタクリレート(以下、FAMと称する。なお、化学式は後に化1で示す)やヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートなどのフッ化(メタ)アクリレートとの共重合体。また、tert−ブチルメタクリレートなどの分岐を有する(メタ)アクリレート、イソボルニルメタクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレートなどとの共重合体が挙げられる。それらの組成比を制御することにより、容易に1.8%未満の吸水率(%)にすることができる。これらを含めた各種ラジカル、イオン共重合体はバルク重合が可能である。しかし付加縮重合系ポリマーや複数の反応により得られるポリマー(例えば、開環重合(しかも、たいてい溶液重合系)後、還元反応(水添)して得られるアモルファスポリオレフィンなど)は本発明の方法を用いなければ、使用することが事実上困難である。具体的なポリマーの例を挙げれば、ポリカーボネート、ノルボルネン系樹脂(例えば、ZEONEX(登録商標;日本ゼオン社製)など)、ファンクショナルノルボルネン系樹脂(例えば、ARTON(登録商標;JSR製)など)、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)共重合系、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFA)ランダム共重合系、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)共重合系であり、それぞれの吸水率はいずれも0.40%以下である。もちろん、伝送損失の低減化のためにこれらの重水素置換体も用いることができる。
【0012】
吸水率が1. 8%未満のポリマーは前述したものに限定されるものではない。これらの中で、MMAと、フッ化(メタ)アクリレート(例えば、FAMやヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートなど)、分岐を有する(メタ)アクリレート(例えば、tert−ブチルメタクリレートなど)、脂環式(メタ)アクリレート(例えば、イソボルニルメタクリレートなど)との共重合体、ノルボルネン系樹脂、ファンクショナルノルボルネン系樹脂、およびフッ素樹脂が特に好ましい。最も好ましくは、MMAと分岐を有するtert−ブチルメタクリレートとフッ素原子を含んでいるFAMとの共重合体である。
【0013】
上記の素材は単層でコア部の重合性と耐湿性を付与するために好ましい材料である。一方で、クラッド部を複層にすることで、コア部の重合性と耐湿性をそれぞれ別の層で提供することもできる。例えば、コア部と界面を形成するインナークラッド部とそのインナークラッド部を覆うアウタークラッド部の2層からクラッド部を形成する場合(図14参照)、コア部の重合性をインナークラッド部で、耐湿性をアウタークラッド部で提供する。コア部の重合性を提供する際に好ましく用いることができる素材としては、コア部を界面ゲル重合で生成させる際に界面不整が起こらないようなものが好ましい。具体的には、インナークラッド部を構成する素材(ポリマー)の溶解度パラメーターとコア部を構成する素材(ポリマー)の溶解度パラメーターとの差が14000(J/m3 1/2 [=7(cal/cm3 1/2 ]以下、好ましくは10000(J/m3 1/2 [=5 (cal/cm3 1/2 ]以下、より好ましくは6000(J/m3 1/2 [=3 (cal/cm3 1/2 ]以下のものを用いることが好ましい。耐湿性を提供するアウタークラッド部は、コア部の重合性は考えなくても良いので、前述の素材の他に吸水率が1.8%未満であるポリマーを任意に選択することができる。また、複層構成でのインナークラッド部において好ましく用いることができる素材は、少なくとも上記のコア部の重合性を考慮すれば良く、前述の単層構成の場合の素材以外でも、コア部素材との溶解度パラメーターの差が上記範囲のものであれば、好ましく用いることができる。
【0014】
なお、本発明で用いられるクラッド部は、前述した2層(インナークラッド部とアウタークラッド部)の場合に限定されず、アウタークラッド部がさらに複層からなる3層以上の層から形成したものを用いることも可能である。このうち、アウタークラッド部の少なくとも1層が吸水率1.8%未満の耐湿性を有する素材よりなる。また、複層からなるクラッド部の場合もクラッド全体を構成する各層の親和性が高い方が好ましく、クラッドを形成する層で、隣接する層の素材の溶解度パラメーターの差が14000(J/m3 1/2 [=7(cal/cm3 1/2 ]以下、好ましくは10000(J/m3 1/2 [=5 (cal/cm3 1/2 ]以下、より好ましくは6000(J/m3 1/2 [=3 (cal/cm3 1/2 ]以下のものを用いることが好ましい。
【0015】
【化1】
Figure 2004061857
【0016】
(コア部)
コア部は、重合性モノマー、開始剤、連鎖移動剤および屈折率調整剤からなる重合性組成物からなる。その重合体が伝送される光に対して光透過性である限り特に制約はないが、伝送される光信号の伝送損失が少ない材料を用いるのが好ましい。以下、それぞれについて説明する。
【0017】
<モノマー>
原料の重合性モノマーとしては、例えば、以下のような(メタ)アクリル酸エステル類(フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル(a)、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(b))、スチレン系化合物(c)、ビニルエステル類(d)等を例示することができ、これらのホモポリマー、あるいはこれらモノマーの2種以上からなる共重合体、およびホモポリマー及び/または共重合体の混合物が挙げられる。さらに、下記モノマー中の水素原子の一部または全部が重水素原子に置き換わったものでも良い。またさらに、上記モノマーの単独あるいは共重合体からなるポリマーの屈折率がクラッド部のそれに比べて同等かあるいはそれ以上になるように構成モノマーの種類、組成比を組むことが好ましい。
【0018】
例えば、(a)フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、トリシクロ[5・2・1・02,6 ]デカニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等が挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。また、(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1−トリフルオロメチル−2,2,2− トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート等が挙げられる。さらに、(c)スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。さらには、(d)ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものではない。
【0019】
<開始剤>
開始剤としては、用いるモノマーや重合方法に応じて適宜選択することができ、例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物が挙げられる。また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は2種類以上を併用してもよい。勿論、これらに限定されるものではない。
【0020】
<連鎖移動剤>
前記クラッド部およびコア部形成用重合性組成物はそれぞれ、連鎖移動剤を含有していることが好ましい。前記連鎖移動剤は、主に重合体の分子量を調整するために用いられる。前記クラッド部およびコア部形成用重合性組成物がそれぞれ連鎖移動剤を含有していると、重合性モノマーからポリマーを形成する際に、重合速度および重合度を前記連鎖移動剤によってより制御することができ、重合体の分子量を所望の分子量に調整することができる。例えば、得られたプリフォームを延伸により線引きして光ファイバとする際に、分子量を調整することによって延伸時における機械的特性を所望の範囲とすることができ、生産性の向上にも寄与する。
【0021】
前記連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択することができる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
【0022】
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(例えば、チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、前記連鎖移動剤は、2種類以上を併用してもよい。勿論、これらに限定されるものではない。
【0023】
<屈折率調整剤>
本発明では、前記重合性組成物を用いて光学部材を作製する際に、屈折率調整剤を用い、その濃度に傾斜を持たせることによって、さらに好ましい屈折率分布型の光学部材を作製することができる。屈折率調整剤はドーパントとも称し、併用する前記重合性モノマーの屈折率と異なる化合物である。その屈折率差は、0.005以上であるのが好ましい。ドーパントは、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して、屈折率が高くなる性質を有するものを用いることが好ましい。また、ドーパントは重合性化合物であってもよく、重合性化合物のドーパントを用いた場合は、これを共重合成分として含む共重合体がこれを含まない重合体と比較して、屈折率が上昇する性質を有するものを用いることが好ましい。上記性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、ドーパントとして用いることができる。本実施の形態では、コア部形成用重合性組成物にドーパントを含有させ、コア部を形成する工程において界面ゲル重合法により重合の進行方向を制御し、屈折率調整剤の濃度に傾斜を持たせ、コア部に屈折率調整剤の濃度分布に基づく屈折率分布構造を形成するのが好ましい(以下、屈折率の分布を有するコア部を「屈折率分布型コア部」と称する)。屈折率分布型コア部を形成することにより、得られる光学部材は広い伝送帯域を有する屈折率分布型プラスチック光学部材となる。
【0024】
前記ドーパントとしては、例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジル−n−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ビフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)などが挙げられ、中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOが好ましい。また、ドーパントは、例えばトリブロモフェニルメタクリレートのように重合性化合物でもよく、その場合、マトリックスを形成する際に、重合性モノマーと重合性ドーパントとを共重合させるので、種々の特性(特に光学特性)の制御がより困難となるが、耐熱性の面では有利となる可能性がある。勿論、これらに限定されるものではない。
【0025】
(クラッド部の製造方法)
本発明に用いられる溶融押出装置としては、主として2つのタイプがある。インナーサイジングダイ方式(以下、第1タイプとも称する)とアウターダイ減圧吸引方式(以下、第2タイプとも称する)であり、それぞれ順に述べる。
【0026】
図1には、インナーサイジングダイ方式(第1タイプ)に用いられる溶融押出装置10の外観図を示す。装置本体11には、原料供給ホッパ(以下、ホッパと称する)12が取り付けられている。ホッパ12からは、前述した共重合体(原料ポリマー)などが仕込まれており、適宜、装置本体11に供給する。また、装置本体11内には、ベント付き1軸スクリュー押出機(図示しない)が備えられており、その押出機でポリマーを溶融して、ダイ13に押し出しながら送られる。ダイ13は、ダイ本体14を覆うように3基の加熱装置15,16,17と冷却装置18とが設置されている。ダイ13内を原料ポリマーが通ることにより、出口14aからクラッド19が押出される。
【0027】
加熱装置15〜17は、温度が安定して制御出来るものが好ましく、蒸気、熱媒油、電気ヒータなど利用した装置を用いる事が出来る。これら加熱装置の取り付け位置や個数は特に限定されるものではなく、種類が異なる加熱装置を交互に取り付ける事も可能である。ダイ本体14の形態に応じて取り付け方法、順序、個数を調整することが出来る。また、冷却装置18も温度が安定して制御出来るものであればどのような冷却方法の装置を用いても良いが、水、不凍液、オイルなどの液体や、電子冷却などを使用することが出来る。
【0028】
図2には、ダイ本体14の断面図を示す。なお、図では、ダイ本体14に取り付けられている加熱装置15〜17及び冷却装置18は省略して示している。ダイ本体14の内部には、円筒中空管の形状のクラッド19(図1参照)を形成するために、ガイド30が挿入されている。ガイド30は、図3に示すようにクラッドの内壁面を形成するインナーロッド31と、これを支えてポリマーの流れの片寄り、背圧の上昇、ウェルドライン様の流れ模様の抑制などを行うスパイダー32とから構成されている。
【0029】
なお、スパイダーには、図3に示した形状以外にも、図4及び図5にそれぞれ示すスパイダー33,34のような形状もポリマーの特性などを勘案して本発明に用いることができる。例えば、図4に示すスパイダー33のように、その断面が図4(b)に示すような曲線のみから形成されている断面を持つ羽根板35を有しているものを用いることも可能である。また、図6に示したスパイダー36のように多孔板(ブレーカープレート)37を有しているものも本発明に適用することは可能である。なお、本発明に用いることが可能なインナーロッドとスパイダーとからなるガイド30は、機械加工等により一体部品として製作する事も出来るし、または別部品として組み合わせる事も出来る。なお、別部品として組み合わせる場合にはインナーロッドの組み付け機構に調芯機能を持たせる事が好ましい。
【0030】
図2を用いて、原料ポリマー40からクラッド19を作製する方法について詳細に説明する。装置本体11から図示しないベント付き1軸スクリュー押出機により原料ポリマー40がダイ本体14に押出される。この原料ポリマー40は、ダイ本体14とインナーロッド31との間の流路40a,40bを通り、ダイの出口14aから押出されクラッド19が形成される。また、クラッド19の押出速度は、1cm/min〜100cm/minの範囲であることが、形状を均一に保つとともに、生産性の点からも好ましいが、本発明は必ずしもその範囲に限定されるものではない。
【0031】
また、本発明においてインナーロッド31の長さL(mm)はクラッド19の外径D1(mm)の4倍以上あることが好ましく、さらに好ましくは7倍以上であることがクラッド19の寸法精度を確保するために重要である。これは、クラッド19の外径D1に対してインナーロッド31の長さLが長いほど、ダイ本体14内で、原料ポリマー40からクラッド19の形成を充分に行うことができるからである。しかしながら、本発明においてそれらの関係に限定されるものではない。また、クラッド19の肉厚(以下、厚みとも称する)tは、ダイ本体14の内壁面14bの直径D2と、インナーロッド31の側壁面31aの直径D3とを調整することにより、変更することが可能である。
【0032】
また、ダイの出口14aには、温度センサ41が取り付けられている。この温度センサ41によってダイの出口14aでのクラッド19の温度を測定する。この温度がクラッド19の主成分である原料ポリマー40のガラス転移温度以下であることが、クラッド19の形状を均一に保持することが可能となるために好ましい。また、クラッド19の温度が40℃以上であることが、急激な温度変化による形状の変化が抑制することが可能になり好ましい。このクラッド19の温度の制御は、図1に示したような冷却装置18をダイ本体14に取り付けても良いし、ダイ本体14の自然空冷により冷却しても良い。
【0033】
なお、本発明においてガイド30とダイ本体14とを一体部品として作製しても良い。または、図2に示したように別体として作製しても良い。いずれの場合であっても、インナーロッド31はダイ出口14aで、クラッド19の肉厚が均一になるよう精度良くダイ中央に配置されなければならない。クラッド19の外径D1は、15mm〜50mmの範囲が好ましく、クラッドの厚みtは、3mm〜15mmの範囲が好ましいが、いずれの値もそれらの範囲に限定されるものではない。また、図7(図2も参照)に示すようにダイ本体の内壁面14bとインナーロッドの表面(側壁面)31aとの距離の誤差は前述したクラッドの厚みtに対して±200μm以内である事が好ましく、更に±50μm以内である事がより好ましい。なお、これらの測定は、図7に示すように角度90度毎のダイ内壁面14bとインナーロッド表面(側壁面)31aとの距離a、b、c、dを公知の方法により測定することで行われる。
【0034】
次に、アウターダイ減圧吸引方式(第2タイプ)に用いられる溶融押出装置を用いた製造ラインを図8に示して説明する。製造ライン50には、溶融押出装置51と押出ダイス52と成形ダイス53と冷却装置54と引取装置55とが備えられている。
【0035】
溶融押出装置51に取り付けられているペレット投入ホッパ(以下、ホッパと称する)56から、前述した原料ポリマーが適宜投入される。さらに、押出部51a内にはベント付き1軸スクリュー押出機(図示しない)が備えられており、押出部51a内でポリマーは加熱されて溶融して押出ダイス52に押し出される。このときのポリマーの温度は、そのポリマーのガラス転移点(Tg)に対して、Tg+30℃〜Tg+120℃の範囲であることが好ましく、Tg+70℃〜Tg+90℃の範囲であることがより好ましい。なお、溶融時のポリマーの押出ダイス出口(図10参照)52aのみかけ粘度が、500〜10000Pa・sであることが好ましく、1000〜7000Pa・sであることがより好ましく、2000〜5000Pa・sであることが最も好ましい。このようにして、押出ダイス52内を原料ポリマーが通ることにより、出口52aから軟性クラッド(溶融樹脂体)60が押し出される。
【0036】
軟性クラッド60は、次に成形ダイス53に送り込まれる。成形ダイス53の要部を分解した斜視図を図9に、要部断面図を図10に、図10中のXI−XI線の断面図を図11にそれぞれ示す。なお、図示した成形ダイス53は、本発明を説明するための一態様であり、本発明に用いることができる成形ダイスは図示したものに限定されるものではない。成形ダイス53には、成形管70が備えられており、成形管70に軟性クラッド60を通すことにより、軟性クラッド60の形状が調整されクラッド61が得られる。軟性クラッド60の押出速度Sは、0.1≦S(m/min)≦10の範囲が好ましく、より好ましくは0.3≦S(m/min)≦5.0であり、最も好ましくは0.4≦S(m/min)≦1.0である。しかしながら、本発明において押出速度Sは、前述した範囲に限定されるものではない。
【0037】
また、成形管70に多数の吸引孔70aを設け、成形管70の外側に減圧チャンバ71を設けることが好ましい。この減圧チャンバ71を真空ポンプ57(図8参照)により減圧にすることで、クラッド61の外壁面61aが、成形管70の成形面(内壁面)70bに密着するために、クラッド61の肉厚が一定になって成形される。なお、減圧チャンバ71内の圧力は、20kPa〜50kPaの範囲とすることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
【0038】
成形ダイス53の入口53aに、クラッド61の外径を規定するためにスロート(外径規定部材)58を取り付けることが好ましく、この場合には、その肉厚をより均一にすることが可能となる。なお、このスロート58が軟性クラッド60と接する面58aとクラッドの押出方向に直交する面61b(なお、図10は断面図であるので、いずれの面58a,61bも線として記されている)との面角度θが、30≦θ(°)≦80であると、軟性クラッド60の形状を乱す圧力の発生が抑制される。なお、本発明において、面角度θは、前述した範囲に限定されるものではない。また、スロート58は、図10に示したように成形ダイス53に別体として取り付けても良いし、一体として成形ダイスを作製しても良い。
【0039】
また、押出ダイス52の出口52aと成形ダイス53の入口との距離L1が、0<L1(mm)<20の範囲であると、軟性クラッド60の形状を乱す圧力の発生が抑制され、また重力による、「だれ」を起こすことなく成形ダイス53に押し出すことが可能となる。なお、本発明において成形ダイス53の入口とは、図10に示したようにスロート58が成形ダイス53に取付けられているときには、スロート58の取付反対面58bを成形ダイス53の入口と定義する。また、スロートが成形ダイスに取り付けられていないときには、成形ダイス53の入口53aが成形ダイスの入口となる。
【0040】
成形ダイス53のクラッド押出方向の長さL2が、クラッド61の外径D1に対して、4倍以上のものを用いると、クラッド61の肉厚(クラッドの厚み)tを均一にする効果が十分に働くために好ましい。より好ましくは、5倍以上であり、最も好ましくは8倍以上であるが、本発明は、それらの関係に限定されるものではない。また、得られたクラッド61の外径D1は、D1≦(mm)50の範囲であることが好ましく、より好ましくは10≦D1(mm)≦30であり、最も好ましくは15≦D1(mm)≦25の範囲である。さらに、クラッド61の肉厚tは、2≦t(mm)≦20の範囲であることが好ましく、より好ましくは4≦t(mm)≦15であり、最も好ましくは4≦t(mm)≦10の範囲である。しかしながら、本発明において、それらの範囲は、前述したものに限定されるものではない。
【0041】
図8に示すように、成形ダイス53により形状が調整されたクラッド61は、冷却装置54に送られる。冷却装置54には、多数のノズル80が備えられており、それらのノズル80から冷却水81をクラッド61に向けて放水することで、クラッド61を冷却して、固化させる。冷却水81は、受け器82で回収されて、排出口82aから排出される。この冷却排水は、再生した後に再利用することが環境の面から好ましい。なお、本発明において冷却装置54は図示した形態に限定されるものではない。
【0042】
クラッド61は、冷却装置54から引取装置55により引き出される。引取装置55は、駆動ローラ85と加圧ローラ86とが備えられている。駆動ローラ85には、モータ87が取り付けられており、クラッド61の引取速度の調整が可能になっている。また、クラッド61を挟んで駆動ローラ85と対向して配置されている加圧ローラ86により、クラッド61の微小な位置のずれを修正することが可能となっている。この駆動ローラ85の引取速度と溶融押出装置51の押出速度とを調整したり、加圧ローラ86によるクラッド61の移動位置を微調整したりすることにより、クラッド61の形状、特に肉厚を均一にすることが可能となる。
【0043】
吸引孔の断面も図10に示した形状に限定されるものではない。他の形態について図12に示す。図12(a)に示した成形管90に設けられた吸引孔90aは、その断面がしぼられた形状となっている。また、(b)に示すように成形管91には、その断面が略三角形状の吸引孔91aが設けられている。さらに、(c)に示すように成形管92には、その断面が略半円形状の吸引孔92aが設けられている。さらに、図示しないがその他の矩形状のもの、その他の形状のものを用いることも可能である。
【0044】
第2タイプに用いられる他の実施形態の製造ライン100を図13に示す。製造ライン100は、溶融押出装置51と押出ダイス52と成形機能付き冷却装置(以下、冷却装置と称する)101と引取装置55とが備えられている。
【0045】
製造ライン100では、冷却装置101に直接に成形管102が取り付けられているところに特徴を有している。また、成形管102には多数の吸引孔102aが形成されている。なお、成形管102には、図9ないし図11に示した成形管70や、図12に示した成形管90,91,92などを用いることができるが、前述した説明で図示した形態に限定されるものではない。
【0046】
冷却装置101に備えられている減圧口103から、真空ポンプ(図示しない)により冷却装置101内を減圧に維持している。この冷却装置101内にも多数のノズル104が取り付けられており、冷却水105が供給されている。この冷却水105がクラッド61に放水することで、クラッド61は冷却されて固化する。また、冷却水105は、冷却装置101の下部に設けられている排出口106から排出される。なお、製造ライン100を用いると、冷却装置101全体を減圧にしたり、作業者が、冷却装置101の一部を開いてクラッド61を圧力シール107まで搬送したり、クラッド61が圧力シール107に到達した後に減圧度が一定になるのに時間がかかったりする問題がある。しかしながら、図13に示した製造ライン100は、従来の塩化ビニルパイプの製造ラインなどを容易に転用することが可能である。その場合に、新たに作製する物は、製造予定のクラッド61に対応した成形管102のみで済むため、コストの点で有利であり、また、製造ライン100の設置場所を新たに用意する必要もなくなる。製造ライン100を用いて、クラッド製造の実験条件を探索する予備実験を行う際に、それぞれの条件に対応して成形管のみを作製すれば良いため、予備実験の際のコスト低下に有効である。
【0047】
以上に、本発明に係る光伝送体の製造方法のうち、プラスチック光ファイバのクラッド部に用いられる中空状のプラスチック光学部材について図面を参照しながら説明した。しかしながら、本発明に係る光伝送体の製造方法により得られる光伝送体は、他の用途に用いることも可能である。
【0048】
さらに、溶融押出し成形するクラッドは、二重化するほうが好ましい(図14参照)。その場合上記説明した装置に改良が必要となるが、当該業者にとっては容易に実施することができる。クラッド110の外側(アウタークラッドと以後称する)110aには、吸水率が1.8%未満のポリマーを用い、内側(インナークラッド)110bにはコア部と同一組成のポリマーを用いると、インナークラッド110bとコアとの界面不整の影響がより軽減されるため好ましい。その場合、インナークラッドの厚みt2は非常に薄くて良く、1mm以上であることが好ましく、1mm≦t2≦5mmが好ましい。しかしながら、本発明において、インナークラッドの厚みは、前述した範囲に限定されるものではない。
【0049】
両方式で作製される円筒中空管であるクラッドは、次工程でコアの原料であるモノマーを注入できるように、底部を有していることが好ましい。底部は、前記円筒中空管(クラッド)を構成しているポリマーと密着性および接着性に富む材質を用いることが好ましい。また、底部を、前記円筒管と同一の重合体で構成することもできる。重合体からなる底部は、例えばクラッドパイプの成形後に、パイプの一端を容器に差し込んだ後、少量の重合性モノマーを注入し、重合することによっても形成することができる。
【0050】
(プリフォームの作製方法)
前記クラッド部にコア部を形成したプラスチック光学製品であるプリフォーム(光伝送体母材)の作製方法について説明する。クラッドである円筒管の中空部にコアの原料であるモノマーを注入し、該モノマーを重合する。前記モノマーとともに、重合開始剤、連鎖移動剤および所望により添加される屈折率調整剤(ドーパント)などを注入することができる。その添加量については、用いるモノマーの種類等に応じて好ましい範囲を適宜決定することができるが、重合開始剤は、一般的にはモノマーに対して、0.005〜0.050質量%添加するのが好ましく、0.010〜0.020質量%添加するのがより好ましい。前記連鎖移動剤は、一般的にはモノマーに対して、0.10〜0.40質量%添加するのが好ましく、0.15〜0.30質量%添加するのがより好ましい。なお、本実施の形態では、屈折率調整剤を用いなくても、モノマーを2種以上用いる等により、屈折率の分布をコア部となる領域に導入することもできる。
【0051】
コアは、前記クラッドとなる円筒管(クラッド管)内に充填された重合性モノマーを重合することにより作製する。コアに屈折率分布を導入するためには、高屈折率で分子体積が大きく、重合に関与しない低分子化合物(ドーパント)を添加する必要がある。コア部のモノマーが重合を開始すると、クラッド管の内壁がモノマーにより膨潤し、重合初期段階では膨潤層(ゲル層)を形成する。この部分では、ゲル状態により重合速度が加速(ゲル効果と称する)するため、重合がクラッド管の内壁から開始し、クラッド管の中心部分に向かって進行する。このとき、ゲル層内へは分子体積の小さいモノマーが優先的に入り込むため、重合の進行と共に、分子体積の大きなドーパントが中心部分へ押し出される。この結果、形成されたコア部の中心部分で高屈折率のドーパントの濃度が高くなるため、コア部は、クラッドとの界面からその中心に向かって屈折率が高くなる屈折率分布が形成される。
【0052】
プリフォームの作製は、前記モノマーを注入したクラッドとなる円筒管を、治具の中空部に挿入して、治具に支持された状態で且つ加圧下でコアの重合を行うことが好ましい。前記治具は、前記円筒管を挿入可能な中空部を有する形状であり、該中空部は前記円筒管と類似の形状を有しているのが好ましく、円筒形状であるのが好ましい。治具は、加圧重合中に前記円筒管が変形するのを抑制するとともに、加圧重合が進むに従ってコア部となる領域が収縮するのを緩和可能に支持する。前記円筒管が治具に密着状態で支持されている場合は、前述した様に、コア部となる領域が収縮するのを円筒管によって緩和できず、中央部にボイドが発生し易い。従って、治具は、前記クラッドとなる円筒管の外径より大きい径の中空部を有し、前記クラッドとなる円筒管を非密着状態で支持するのが好ましい。前記治具の中空部は、前記クラッドとなる円筒管の外径に対して0.1%〜40%だけ大きい径を有しているのが好ましく、10〜20%だけ大きい径を有しているのがより好ましい。本実施の形態では、前記治具は円筒形状なので、前記治具の内径が、前記クラッドとなる円筒管の外径に対して0.1%〜40%だけ大きいのが好ましく、10〜20%だけ大きいのがより好ましい。
【0053】
前記クラッドとなる円筒管を治具の中空部に挿入した状態で、重合容器内に配置することができる。重合容器内において、前記クラッドとなる円筒管は、円筒の長さ方向を垂直にして配置されるのが好ましい。前記治具に支持された状態で前記クラッドとなる円筒管を、重合容器内に配置した後、前記重合容器内を加圧する。窒素、アルゴン等の不活性ガスで重合容器内を加圧し、不活性ガス雰囲気下で加圧重合を進行させるのが好ましい。重合時の加圧の好ましい範囲については、用いるモノマーによって異なるが、一般的には0.05MPa〜1.0MPa程度が好ましい。また、重合時間は、一般的には24時間〜96時間であるのが好ましい。重合は加熱下で行ってもよく、一般的には重合温度は60℃〜140℃であるのが好ましい。しかしながら、本発明において、重合時の各条件は前述したものに限定されるものではない。
【0054】
この様にして、コアおよびクラッドがプラスチックからなる円筒形状のプリフォームを作製することができ、得られたプリフォームはそのまま、またはコーティングなどの処理を施された後、延伸工程に供される。
【0055】
(プラスチック光ファイバの製造方法)
前述したプリフォーム(光伝送体母材)を延伸して作製される光伝送体の製造方法について、プラスチック光ファイバの製造方法を例として図15参考に説明する。図15に示すように光ファイバはプリフォームを線引装置120により線引きして作製される。線引装置120には、線引炉121と外径モニタ122と巻取機123とが備えられている。また、線引炉121はカバー125と、そのカバー125の上下にそれぞれ上煙突部126と下煙突部127とが配置されている。また、プリフォーム128が挿入される円管状の炉心管129とその炉心管129の外側にはヒータ130が配置されている。
【0056】
プリフォーム128を延伸する際には、ヒータ130により加熱することが好ましい。加熱温度はプリフォームの材質に応じて適宜決定することが出来るが、一般的には、180〜250℃が好ましい。延伸温度等の延伸条件は得られたプリフォーム径、所望のプラスチック光ファイバの径及び用いた材料等を考慮して、適宜決定する事が出来る。これらの各条件を考慮した上で、外径モニタ122によりその外径を測定して線引条件を補正しながら、プリフォーム128を線引きしてプラスチック光ファイバ(以下、光ファイバと称する)131が得られて、巻取機123に巻き取られる。なお、保護や補強を目的として、プリフォーム128を保護層で被覆した後に、延伸処理を行う事も出来る。なお、プラスチック光ファイバの製造方法は、前述した方法に限定されるものではない。
【0057】
(プラスチック光ファイバケーブルの製造方法)
前述した方法で得られた光ファイバ131から、プラスチック光ファイバケーブル(以下、ケーブルと称する)を製造する方法について図16を用いて説明する。光ファイバを被覆してケーブルを製造する被覆ラインは、従来から知られている電気ケーブルや石英ガラス製光ファイバと同様な被覆ラインを使用することができる。図16にその被覆ライン140の概略図を示す。光ファイバ131は、送出機141より送り出され、冷却装置142により5〜35℃の温度まで冷却することが、被覆する際に光ファイバ131へのダメージを抑制するために好ましいが、この冷却装置142は省略することも可能である。その後に、被覆装置143により光ファイバ131に被覆材を被覆してケーブル144が得られる。ケーブル144は、水槽145で冷水により冷却された後に、水分除去装置146によりその表面の水分が除去される。なお、ケーブル144の冷却は、水槽に限定されず、他の装置を用いてもよい。そして、ローラ147により搬送されて巻取機148に巻き取られる。なお、図16では、光ファイバ131を送出機141から供給する形態を示したが、本発明は図示した形態に限定されるものではない。例えば、図15に示した線引装置120と被覆ライン140とを一体に組み込んだラインを用いることもできる。この場合には、線引装置120から線引きされて連続的に供給される光ファイバ131に被覆材を被覆することが可能となる。
【0058】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等の態様は、本発明を限定するものではない。
【0059】
[実施例1]
(クラッド管の作製:第1タイプ)
実験は、図1に示したようにダイ13の加熱装置15〜17としては電気ヒータを3基取り付け、それぞれ200℃,200℃,170℃に設定した。冷却装置18として温水ジャケットを1基取り付け、30℃の水を供給した。また、図2に示したようにインナーロッド31の長さL(mm)が100mmのものを用い、図5に示したスパイダー34を用いてガイド30を作製した。図2に示すように、ダイ本体14の内壁面14bの直径D2を30mm、インナーロッド側壁面31aの直径D3を18mmのダイ本体14(ダイの寸法上、肉厚t=6mmのクラッドが成形出来る)を、40φ1軸スクリューを持つ装置本体11(図1参照)に取り付けた。原料ポリマーとしてメチルメタクリレート−tert−ブチルメタクリレート−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート共重合体(1:1:1の重量比、重量平均分子量10.5万、溶解度パラメーター18200(J/m3 1/2 )ペレットを用いて、クラッド19を作成した。なお、この際に、溶融押出装置の入口(図示しない)には70℃の加熱空気を供給し、ペレットをドライに保つ加熱ホッパ12を取り付け、予め80℃で5時間乾燥した前記共重合体ペレットを供給し、溶融押出しを行った。そのとき、押出されるクラッド19の押出し速度(S)は20cm/minとした。得られたクラッドは、目視で凹凸は認められたが、このクラッドの切断面の肉厚をノギスで90度毎に測定したところ、厚み偏差は±130μmであった。そして、このクラッド19に前述した方法により底部を作製し、クラッド管とした。なお、前記共重合体ペレットの吸水率を前述したASTMD570試験法により予め求めたところ、0.70%であった。
【0060】
(プリフォームおよびファイバの製造)
次に蒸留精製したメチルメタクリレート70重量部、過酸化ジ−tert−ブチル0.01重量部、ラウリルメルカプタン0.3重量部および硫化ジフェニル7.7重量部をそれぞれ別のガラス容器で計量し、混合して、90℃に保ったクラッド管内に流し込んだ。これを窒素雰囲気中、120℃で50時間、0.25MPaの加圧状態で反応させ、プリフォーム128を得た。プリフォーム128のコア部128aを構成しているPMMAの溶解度パラメーターは、19800(J/m3 1/2 であり、クラッド部のポリマーの溶解度パラメーターとの差は、1600(J/m3 1/2 であり、性質が類似したポリマー同士であるため界面不整が生じることが抑制された。このプリフォーム128を図15に示した線引装置120により220℃にて加熱延伸したところ、気泡の発生もなく、線径750μm±55μmの光ファイバ131を得ることができた。この光ファイバ131の波長650nmにおける伝送損失は175dB/kmであった。また、帯域特性は、最大で1.8Gbit/(sec・100m)であった。つぎにこの光ファイバの水分の影響を調べるため、25℃、90%RH、24時間前後の850nmの伝送損失のアップ(水酸基の倍音が観測される)を測定したところ、100dB/kmであり、良好な光学特性を有すると共に耐湿性に優れた光ファイバを得ることが可能であった。
【0061】
[実施例2]
(クラッド管の作製:第2タイプ)
図8に示した製造ライン50を用いてクラッド管61を作製した。ホッパ56にはメチルメタクリレート−tert−ブチルメタクリレート−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート共重合体(1:1:1の重量比、重量平均分子量10. 5万、溶解度パラメーター18200(J/m3 1/2 )ペレットが適宜投入され、ベント付き1軸スクリュー押出機により加熱して溶融し、押出ダイス52に押し出される。このときの軟性クラッド60の温度は、Tg+70℃〜Tg+120℃の範囲になるように制御した。また、押出ダイス出口5 2a(図10参照)のポリマーのみかけ粘度が、3000〜4000Pa・sの範囲になるように実験をおこなった。軟性クラッド60の押出速度Sを0.5(m/min)として成形ダイス53に送り込んだ。つぎに図10に示した成形ダイス53を用いて、軟性クラッド60から外径D1が20mmであり肉厚(クラッドの厚み)tが5mmのクラッド61を作製した。なおこのとき減圧チャンバ71内を30kPaの減圧に保持した。また、スロート58の面角度θは、45°にした。さらに、押出ダイス52の出口52aとスロート58の取付反対面58bとの距離L1を15mmとした。そして、クラッド61は、15℃の冷却水81が放水されている長さ2.5mの冷却装置54に送られて冷却して(図8参照)固化することにより、メチルメタクリレート−tert−ブチルメタクリレート−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート共重合体(1:1:1の重量比、重量平均分子量10. 5万)からなる円筒中空状のクラッド管(円筒管)が得られた。なお、前記共重合体ペレットの吸水率を前述したASTMD570試験法により予め求めたところ、0.70%であった。
【0062】
(プリフォームおよびファイバの製造)
次に、得られた該円筒管の中空部に、水分を十分に除去したMMAと、屈折率分布形成用の低分子化合物とを混合した溶液を、精度0.2mmの四フッ化エチレン製メンブレンフィルタで、ろ過しつつ、ろ液を直接注入した。前記低分子化合物としては硫化ジフェニルを使用、MMAに対し11質量%添加した。さらに、重合開始剤として、ジ−tert−ブチルパーオキサイドをMMAに対し0.013質量%、連鎖移動剤としてをn−ラウリルメルカプタンをMMAに対し0.27質量%配合した。このMMAなどを注入したPMMAからなる円筒管を、加圧重合容器に垂直に静置する際に、そのPMMA円筒管外径に対し2mmだけ大きい径を持つガラス管内挿入した。なお、コア部のポリマー(PMMA)の溶解度パラメーターは、19800(J/m3 1/2 であり、クラッド部のポリマーの溶解度パラメーターとの差は、1600(J/m3 1/2 であり、界面不整が生じることが抑制された。その後、加圧重合容器内を窒素雰囲気に置換した後、0.2MPaまで加圧し、120℃にて48時間加圧重合しプリフォームを得た。
【0063】
このプリフォームを230℃の熱延伸により線引きを行い、750μm径のプラスチック光ファイバを安定して600mを得た。得られたファイバは、全線における径の変動は−15μm〜+15μmであった。そのファイバの650nmでの伝送損失を測定したところ155dB/kmであった。また、帯域特性は、最大で2.1Gbit/(sec・100m)であった。つぎにこの光ファイバの水分の影響を調べるため、25℃、90%RH、24時間前後での850nmの伝送損失のアップ(水酸基の倍音が観測される)を測定したところ、98dB/kmであり、良好な光学特性を有すると共に耐湿性に優れた光ファイバを得ることが可能であった。
【0064】
[実施例3]
(二重クラッド管の作製:第2タイプ)
第2のタイプに用いられる溶融押出装置(溶融押出成形装置)を改造し、二重中空管(図14参照)を作成できるようにした。該二重中空管の外側(アウタークラッド部)にはゼオノア 1420R(登録商標、日本ゼオン社製)、該内側(インナークラッド部)にはPMMAとし、あとは実施例1と同様に温調を施し、外側:ゼオノア(登録商標、日本ゼオン社製)、内側:PMMAからなる円筒中空状の二重クラッド管(円筒管)が得られた。このPMMAから形成されたインナークラッド部の溶解度パラメーターは、19800(J/m3 1/2 であった。また、ゼオノア 1420R(登録商標、日本ゼオン社製)の吸水率を前述したASTMD570試験法により予め求めたところ、0.07%であった。
【0065】
(プリフォームおよびファイバの製造)
次に、得られた該円筒管の中空部に、水分を十分に除去したMMAと、屈折率分布形成用の低分子化合物とを混合した溶液を、精度0.2mmの四フッ化エチレン製メンブレンフィルタで、ろ過しつつ、ろ液を直接注入した。前記低分子化合物としては硫化ジフェニルを使用、MMAに対し11質量%添加した。さらに、重合開始剤として、ジ−tert−ブチルパーオキサイドをMMAに対し0.013質量%、連鎖移動剤としてをn−ラウリルメルカプタンをMMAに対し0.27質量%配合した。このMMAなどを注入したPMMAからなる円筒管を、加圧重合容器に垂直に静置する際に、そのPMMA円筒管外径に対し2mmだけ大きい径を持つガラス管内挿入した。その後、加圧重合容器内を窒素雰囲気に置換した後、0.2MPaまで加圧し、120℃にて48時間加圧重合しプリフォームを得た。本実施例では、コア部とインナークラッド部の素材は、いずれもPMMAであるため、溶解度パラメーターの差は、0(J/m3 1/2 であり、界面不整の発生がさらに抑制された。
【0066】
このプリフォームを230℃の熱延伸により線引きを行い、800μm径のプラスチック光ファイバを安定して600mを得た。コア径は実施例1と同様500μm径である。得られたファイバは、全線における径の変動は−15μm〜+15μmであった。そのファイバの650nmでの伝送損失を測定したところ150dB/kmであった。また、帯域特性は、最大で2.1Gbit/(sec・100m)であった。つぎにこの光ファイバの水分の影響を調べるため、25℃、90%RH、24時間前後での850nmの伝送損失のアップ(水酸基の倍音が観測される)を測定したところ、88dB/kmであり、良好な光学特性を有すると共に耐湿性に優れた光ファイバを得ることが可能であった。
【0067】
[実施例4及び実施例5]
(二重クラッド管の作製:第2タイプ)
実施例3と同様にして該二重中空管の外側(アウタークラッド部)の原料ポリマーについて、実施例4では、ARTON F(登録商標、JSR製)、実施例5ではKynar 7201(登録商標、ATOFINA CHEMICALS, INC. 製、PVDF樹脂)を用いた。また、該内側(インナークラッド部)には実施例4及び実施例5いずれでもPMMAとし、あとは実施例1と同様に温調を施した。そして、実施例4で得られた円筒中空状の二重クラッド管の外側(アウタークラッド部)をARTON F(登録商標、JSR製)とし、内側をPMMAとした。また、実施例5は、外側は、Kynar 7201(登録商標、PVDF樹脂)とし、内側(インナークラッド部)はPMMAとした。また、ARTON F(登録商標、JSR製)及びKynar 7201(登録商標、PVDF樹脂)の吸水率を前述したASTMD570試験法により予めそれぞれ求めたところ、0.40%(実施例4)及び0.1%以下(実施例5)であった。実施例4及び実施例5でも、コア部とインナークラッド部との素材は、いずれもPMMAを用いたので溶解度パラメーターの差は、0(J/m3 1/2 であり、界面不整の発生がさらに抑制された。
【0068】
(プリフォームおよびファイバの製造)
実施例3と同様にして、プリフォームおよびファイバをそれぞれ得た。そのファイバの650nmでの伝送損失を測定したところ、それぞれ154dB/km(実施例4)、151dB/km(実施例5)であった。また、帯域特性は、それぞれ最大で2.0Gbit/(sec・100m)(実施例4)、2.3、Gbit/(sec・100m)(実施例5)であった。つぎにこの光ファイバの水分の影響を調べるため、25℃、90%RH、24時間前後での850nmの伝送損失のアップ(水酸基の倍音が観測される)を測定したところ、それぞれ88dB/km(実施例4)、85dB/km(実施例5)であり、それぞれの実験から良好な光学特性を有すると共に耐湿性に優れた光ファイバを得ることが可能であった。
【0069】
[比較例1]
(クラッド管の作製:第1タイプ)
図1に示したようにダイ13の加熱装置15〜17としては電気ヒータを3基取り付け、それぞれ190℃,190℃,160℃に設定した。冷却装置18として温水ジャケットを1基取り付け、30℃の水を供給した。また、図2に示したようにインナーロッド31の長さL(mm)が100mmのものを用い、図5に示したスパイダー34を用いてガイド30を作製した。図2に示すように、ダイ本体内壁面14bの直径D2を30mm、インナーロッド側壁面31aの直径D3を18mmのダイ本体14(ダイの寸法上、肉厚(クラッドの厚み)t=6mmのクラッドが成形出来る)を、40φ1軸スクリューを持つ装置本体11(図1参照)に取り付けて、原料ポリマーとしてPMMAペレットを用いて、クラッド19を作成した。なお、この際に、溶融押出装置の入口(図示しない)には70℃の加熱空気を供給し、ペレットをドライに保つ加熱ホッパ12を取り付け、予め80℃で5時間乾燥したPMMAペレットを供給し、溶融押出しを行った。そのとき、押出されるクラッド19の押出し速度(S)は20cm/minとした。得られたクラッドは、目視で凹凸は認められたが、このクラッドの切断面の肉厚をノギスで90度毎に測定したところ、厚み偏差は±130μmであった。そして、このクラッド19に前述した方法により底部を作製し、クラッド管とした。なお、用いたPMMAの吸水率を前述したASTMD570試験法により予め求めたところ、2.0%であった。
【0070】
(プリフォームおよびファイバの製造)
次に蒸留精製したメチルメタクリレート70重量部、過酸化ジ−tert−ブチル0.01重量部、n−ラウリルメルカプタン0.3重量部および硫化ジフェニル7.7重量部をそれぞれ別のガラス容器で計量し、混合して、90℃に保ったクラッド管内に流し込んだ。これを窒素雰囲気中、120℃で50時間、0.25MPaの加圧状態で反応させ、プリフォーム128を得た。このプリフォーム128を図15に示した線引装置120により220℃にて加熱延伸したところ、気泡の発生もなく、線径750μm±55μmの光ファイバ131を得ることができた。この光ファイバ131の波長650nmにおける伝送損失は183dB/kmであった。また、帯域特性は、最大で1.8Gbit/(sec・100m)であった。つぎにこの光ファイバの水分の影響を調べるため、25℃、90%RH、24時間前後での850nmの伝送損失のアップ(水酸基の倍音が観測される)を測定したところ、450dB/kmであり、良好な光学特性を有する光ファイバを得ることができたが、耐湿性に問題があることが分かった。
【0071】
[比較例2]
(クラッド管の作製:第2タイプ)
図8に示した製造ライン50を用いてクラッド管を作製した。ホッパ56にはPMMA(重合度1000、分子量10万、ガラス転移温度Tg108℃)が適宜投入され、ベント付き1軸スクリュー押出機により加熱して溶融し、押出ダイス52に押し出される。このときの軟性クラッド60の温度は、Tg+70℃〜Tg+120℃の範囲になるように制御した。また、押出ダイス出口52a(図10参照)のポリマーのみかけ粘度が、3000〜4000Pa・sの範囲になるように実験をおこなった。軟性クラッド60は、押出速度(S)を0.5(m/min)として成形ダイス53に送り込んだ。つぎに図10に示した成形ダイス53を用いて、軟性クラッド60から外径D1が20mmであり肉厚tが5mmのクラッド61を作製した。なおこのとき減圧チャンバ71内を30kPaの減圧に保持した。また、スロート58の面角度θは、45°にした。さらに、押出ダイス52の出口52aとスロート58の取付反対面58bとの距離L1を15mmとした。そして、クラッド61は、15℃の冷却水81が放水されている長さ2.5mの冷却装置54に送られて冷却(図8参照)して固化することにより、PMMAからなる円筒中空状のクラッド管が得られた。なお、用いたPMMAの吸水率を前述したASTMD570試験法により予め求めたところ、2.0%であった。
【0072】
(プリフォームおよびファイバの製造)
次に、得られたPMMAからなる円筒管の中空部に、水分を十分に除去したMMAと、屈折率分布形成用の低分子化合物とを混合した溶液を、精度0.2mmの四フッ化エチレン製メンブレンフィルタで、ろ過しつつ、ろ液を直接注入した。前記低分子化合物としては硫化ジフェニルを使用、MMAに対し11質量%添加した。さらに、重合開始剤として、ジ−tert−ブチルパーオキサイドをMMAに対し0.013質量%、連鎖移動剤としてをn−ラウリルメルカプタンをMMAに対し0.27質量%配合した。このMMAなどを注入したPMMAからなる円筒管を、加圧重合容器に垂直に静置する際に、そのPMMA円筒管外径に対し2mmだけ大きい径を持つガラス管内挿入した。その後、加圧重合容器内を窒素雰囲気に置換した後、0.2MPaまで加圧し、120℃にて48時間加圧重合しプリフォームを得た。
【0073】
このプリフォームを230℃の熱延伸により線引きを行い、750μm径のプラスチック光ファイバを安定して600mを得た。得られたファイバは、全線における径の変動は−15μm〜+15μmであった。そのファイバの650nmでの伝送損失を測定したところ158dB/kmであった。また、帯域特性は、最大で2.1Gbit/(sec・100m)であった。つぎにこの光ファイバの水分の影響を調べるため、25℃、90%RH、24時間前後での850nmの伝送損失のアップ(水酸基の倍音が観測される)を測定したところ、440dB/kmであり、良好な光学特性を有する光ファイバを得ることができたが、耐湿性に問題があることが分かった。
【0074】
前述のように本発明に係る光伝送体の製造方法の一例として、プラスチック光ファイバの製造方法について説明を行った。しかしながら、本発明の光伝送体の製造方法から得られた光伝送体の径、長さ等についてはプラスチック光ファイバ用に制限されるものではなく、光導波路、レンズなど種々の形態の光伝送体を製造する際に本発明を適用することができる。
【0075】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明の光伝送体の製造方法によれば、中心から外側に向かって屈折率の分布を有するコア部とそのコア部を覆っているクラッド部とがポリマーからなる光伝送体母材を延伸して光伝送体を作製する光伝送体の製造方法において、前記クラッド部を吸水率が1.8%未満のポリマーを用いて溶融押出し成型する工程を含むから、前記クラッド部を完成させた後にコア部を作製することができ、コア部とクラッド部との界面が安定した光伝送体母材を得ることができる。その際に、前記クラッド部は、溶融押出成形により中空状に形成されるため、幅広い吸水性の低いポリマーを用いて作製することができ、しかもその内壁の壁面が平滑になっている。そこで、この光伝送体母材から作製された光伝送体をプラスチック光ファイバとして用いると、前記界面での入射光の散乱などが抑制され、光学特性が優れたものが得られる。さらに、耐湿性の高い光伝送体を製造することができる。
【0076】
本発明の光伝送体の製造方法は、さらに前記コア部を構成するポリマーの溶解度パラメーターと、前記クラッド部を構成するポリマーの溶解度パラメーターとの差を14000(J/m3 1/2 以下とするから、コア部とクラッド部とで形成される界面の界面不整が発生することを抑制でき、光学的特性に優れた光伝送体を得ることが可能となる。
【0077】
また、本発明の光伝送体の製造方法により製造された光伝送体は、光学的特性に優れ、その光伝送体から製造された製品の光学的特性も優れている。特に、本発明に係る光伝送体から製造された光ファイバは、帯域特性に優れ、耐湿性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光伝送体の製造方法に用いられる溶融押出装置の外観概略図である。
【図2】本発明に用いられる溶融押出装置の要部の概略断面図である。
【図3】本発明に用いられるガイドの概略斜視図である。
【図4】本発明に用いられるスパイダーの一実施形態を示した正面図である。
【図5】本発明に用いられるスパイダーの他の実施形態を示した正面図である。
【図6】本発明に用いられるスパイダーの他の実施形態を示した正面図である。
【図7】本発明に用いられるダイ本体の断面図である。
【図8】本発明に係る光伝送体の製造方法に用いられる製造ラインの概略図である。
【図9】図8に示した製造ラインに用いられている成形ダイスの要部分解斜視図である。
【図10】図9に示した成形ダイスの断面図である。
【図11】図10に示した成形ダイスのXI−XI線における断面図である。
【図12】本発明に用いられる成形ダイスの他の実施形態の要部断面図である。
【図13】本発明に係る光伝送体の製造方法に用いられる製造ラインの他の実施形態の概略図である。
【図14】本発明に係る光伝送体の製造方法により得られた光伝送体の断面図である。
【図15】本発明に係る光伝送体の製造方法に用いられる装置の概略断面図である。
【図16】本発明に係る光伝送体の製造方法により得られた光伝送体から光ファイバケーブルを作製する被覆ラインの概略図である。
【符号の説明】
10,51 溶融押出装置
19,61,110 クラッド
40 原料ポリマー
50,100 製造ライン
110a アウタークラッド
110b インナークラッド
t クラッドの厚み
D1 クラッドの外径
t1 アウタークラッドの厚み
t2 インナークラッドの厚み

Claims (5)

  1. 中心から外側に向かって屈折率の分布を有するコア部とそのコア部を覆っているクラッド部とがポリマーからなる光伝送体母材を延伸して光伝送体を作製する光伝送体の製造方法において、
    前記クラッド部を吸水率が1.8%未満のポリマーを用いて溶融押出し成型する工程を含むことを特徴とする光伝送体の製造方法。
  2. 中心から外側に向かって屈折率の分布を有するコア部とそのコア部を覆っているクラッド部とがポリマーからなる光伝送体母材を延伸して光伝送体を作製する光伝送体の製造方法において、
    前記クラッド部は、吸水率が1.8%未満のポリマーからなる層を有するアウタークラッド部とインナークラッド部とから構成される複層であり、
    少なくとも前記アウタークラッド部を溶融押出しで成型する工程を含むことを特徴とする光伝送体の製造方法。
  3. 前記光伝送体母材は、前記クラッド部を成形した後に、界面ゲル重合法により前記コア部を作成することを特徴とする請求項1または2記載の光伝送体の製造方法。
  4. 前記コア部を構成するポリマーの溶解度パラメーターと、前記クラッド部を構成するポリマーの溶解度パラメーターとの差が、14000(J/m3 1/2 以下であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載の光伝送体の製造方法。
  5. 請求項1ないし4いずれか1つ記載の光伝送体の製造方法により製造されたことを特徴とする光伝送体。
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