本発明の実施の形態について図を引用しながら説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。図1は、POFの製造工程を説明する工程図である。
図1に示すように、本発明のPOFの製造工程は、第1部材14と第2部材18とをそれぞれ作製する工程と、これらの部材を嵌め合わせてプリフォーム21を作製する嵌合工程20と、このプリフォーム21を加熱延伸させて線引きすることでPOF23を得る延伸工程23とからなる。
まず、第1部材14および第2部材18とをそれぞれ作製する。図2に、プリフォーム21を作製する際の嵌合工程図を示す。図2に示すように、第1部材14は、芯材30と、その外周を覆うようにして配される内側パイプ材12とからなる。この芯材30は、コア材31とこのコア材31の外周を覆うようにして配されるインナークラッド材32からなる。また、第2部材18は、第1部材14の外周を覆うようにして配される外側パイプ材17からなる。本発明では、芯材30の外周を覆う部材をパイプ材と称し、この芯材30に接する部材を内側パイプ材12とし、その外周に配される部材を外側パイプ材17と称する。
第1部材14の作製においては、まず、内側パイプ作製工程11において円筒状の内側パイプ材12を作製する。図2に示すように、内側パイプ材12は、プリフォーム21を構成する第1部材14の外殻部分をなすものである。内側パイプ材12を構成する材料や、その形成方法に関しては、後で説明する。
内側パイプ材12を作製した後、芯材作製工程13において、内側パイプ材12の中空部に芯材30を形成させる(図2参照)。まず、インナークラッド材32を生成させるための重合性化合物(以下、インナークラッド材用モノマーと称する)を、内側パイプ材12の中空部に注入し、これを重合させてインナークラッド材32を形成させる。このとき、断面円形の中央が空洞となるようにインナークラッド材用モノマーを重合させてインナークラッド材32を生成させる。なお、重合体へ重合性化合物が接触し、しみ込むなどして重合体が膨張または溶解し、所定の反応が進む塊状重合の一種である界面ゲル重合反応が起こると、この重合反応の進行により、先に形成されていた重合体が溶解する場合がある。この場合には、後述するコア材31の生成反応により、先に形成されたインナークラッド材32がコア材31と一体となって、インナークラッド材32が認められなくなる。
次に、コア材31を生成させるための重合性化合物(以下、コア材用モノマーと称する)を、インナークラッド材32の内側に注入し、これを重合させてコア材31を生成させる。このようにして、内側パイプ材12の内側にコア材31とインナークラッド材32とからなる芯材30を形成させた円柱状であり、かつ多重構造の第1部材14を作製する。続いて、作製した第1部材14を、第1減圧乾燥工程15において減圧しながら乾燥させる。第1減圧乾燥工程15の詳細は、後で説明する。
第2部材18の作製においては、外側パイプ材作製工程16において、円筒状の外側パイプ材17を作製する(図2参照)。外側パイプ材17を構成する材料や、その製造方法に関しては、後で説明する。また、作製した外側パイプ材17を第2減圧乾燥工程19において減圧しながら乾燥させる。第2減圧乾燥工程19においても、後で説明する。
第1部材14と第2部材18とを作製した後に、嵌合工程20において、これらを嵌め合わせてプリフォーム21を作製する(図2参照)。この嵌合工程20では、円筒状の第2部材19の中空部に、第1部材14を挿入する。このようにして作製されたプリフォーム21は、延伸工程22に供され、所定の方法で加熱延伸して線引きすることでPOF23が製造される。
図2に示すように、第1部材14は、内側パイプ材12と芯材30とから構成されており、この芯材30はコア材31とインナークラッド材32からなる。本発明においては、第1部材14は、光ファイバ素線において光を伝送する部材である。第2部材19は、円筒中空状の外側パイプ材18からなる。また、第1部材14および第2部材19ともに、各構成材は、その外径および内径が長手方向にそれぞれ一定で、厚みが均一になっている。したがって、第1部材14においては、内側パイプ材12の内径はインナークラッド材32の外径に等しく、コア材31の外径はインナークラッド材32の内径に等しい。本発明において、内側パイプ材12と外側パイプ材18とをあわせてパイプ材33と称して、以下、説明を行う。
本発明においては、第2部材18の中空部に第1部材14を挿入することでプリフォーム21を作製する(図2参照)。このとき、これらの部材の嵌合面となる第1部材14の外周面と、第2部材19の内周面とが密着性に優れており、できるかぎり不整合の発生を抑制することが好ましい。したがって、第1部材14の外径と第2部材19との内径が、できる限り等しい値であるようにすることが好ましい。
また、本発明においては、第1部材14の外周面および第2部材18の内周面における表面粗さRaが、ともに0.5μm以下であることが好ましく、できる限りこの値を小さくすることがより好ましい。この表面粗さRaは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ1だけ抜き取り、隣り合う局部山頂間に対応する平均長さを求め、この多数の局部山頂間の平均値をマイクロメートル(μm)で表したものである。また、この値は、第1部材14の外周面および第2部材18の内周面において、表面粗さRaとする。表面粗さRaが、0.5μmよりも大きい場合には、プリフォーム21の嵌合面において不整合が生じてしまうために、低伝送損失のPOF23を作製することができない。一方で、上記の範囲を満たすように表面粗さRaを調整した第1部材14と第2部材18とを嵌め合わせてプリフォーム21を作製すると、その嵌合面での密着性を向上させることができるので、白濁の発生を抑制することができる。また、嵌合面において両者が接触することで発生する不整合による伝送損失の悪化も抑制することができる。したがって、このように嵌合面での密着性が高いプリフォーム21を用いると、低伝送損失のPOF23を作製することができる。
第1部材14の外周面および第2部材18の内周面においては、上述のような表面粗さRaを発現するように、適宜表面粗さRaを調整するような研磨処理を行うことが好ましい。例えば、第1部材14の表面粗さRaを上記の範囲内にするためには、芯材30と内側パイプ材12とからなる第1部材14を作製した後に、隣接して配した表面が平滑なパイプで形成される凹みに設置し、このパイプを回転させることで、第1部材14の表面を平滑化させればよい。第2部材18の内周面においては、所望の表面粗さRaとなるように、研磨剤もしくは研磨シートで研磨する方法が挙げられる。この方法は第1部材14にも適用することができる。ただし、本発明では、表面粗さRaを調整する方法に関しては、所望の表面粗さRaを発現させることができる方法であれば特に限定はされない。
第2部材18である外側パイプ材17においては、その厚みが1mm以上500mm以下であることが好ましく、より好ましくは、1mm以上200mm以下であり、特に好ましくは、1mm以上100mm以下である。厚みが、500mm以上の場合には、耐熱性や対候性に優れたPOF23を得ることができるが、保護層となりうる外側パイプ材17の厚みが厚すぎるので、成型加工性が低下してしまう。また、1mm以下の場合には、薄すぎるために、充分な耐熱性や対候性をPOF23に発現させることができない。
図3に示すように、POF23は、芯40とパイプ41より構成される。芯40およびパイプ41は、プリフォーム21を構成する芯材30とパイプ材33が、それぞれ加熱延伸されて線引きされることで形成されたものである。POF23は、芯40と内側パイプ44で構成された部材の最外殻が外側パイプ45で覆われた構造を有する。このとき、外側パイプ45は保護層の役割を果たすので、POF23は、耐熱性や対候性に優れる。なお、図3においては、芯40とパイプ41を構成する各部材間の境界を説明の便宜上示しているが、製造条件などにより境界の明確さは異なり、必ずしも確認できるものでなくてもよい。
POF23は、芯40が径方向で中心に向かうにしたがい、次第に屈折率が高くなる屈折率分布を有しているものとする。このように、屈折率を連続的に変化させると、光を徐々に屈折させて芯40に閉じ込めることができるとともに、媒質中の光の速度が屈折率に反比例することを利用して、光の速度を中心から離れるにつれて速くすることで、斜めに進む光と直進する光とが、光ファイバ素線の一端から他端までに到達する時間を同じにすることができるので、その伝送波形を崩れにくくすることができる。
第1部材14および第2部材18に用いられる材料は、光散乱を生じないように、非晶質のポリマとすることが好ましく、互いに密着性に優れるとともに、耐久性などをはじめとする機械的特性に優れ、かつ耐湿熱性にも優れているポリマであることが好ましい。
芯材30を構成する材料(インナークラッド材用モノマーおよびコア材用モノマー)としては、アクリル系樹脂であることが好ましい。例えば、(メタ)アクリル類エステル類((a)フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル、(b)含フッ素(メタ)アクリル酸エステル)などが挙げられる。また、その他の材料として、(c)スチレン系化合物や(d)ビニルエステル類、ポリカーボネート類の原料であるビスフェノールAなどを重合性化合物として用いてもよい。芯材30は、これらのホモポリマー、あるいはこれらモノマーの2種類以上からなる共重合体、あるいは、ホモポリマーおよび/または共重合体の混合物から形成することができる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル類を重合性モノマーとして含む組成を好ましく用いることができる。
上記の(a)フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、トリシクロ[5・2・1・02,6 ]デカニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボニルメタクリレートなどが挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニルなどが挙げられる。
(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1 −トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
(c)スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられ、(d)ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテートなどが挙げられる。もちろん、これらに限定されるものではなく、重合性化合物の単独あるいは共重合体からなるポリマの屈折率が、光伝送体に成形されたときに所定の屈折率分布を成形体の中で有するように、種類や組成比を決定することが好ましい。
また、第2部材18を構成する材料、すなわち外側パイプ材を構成する材料が、上記のようなアクリル系樹脂やフッ化ビニリデン樹脂、ポリメチルメタクリレート/フッ化ビニリデン樹脂を混合した混合材料のうち、1種類または2種類以上使用することが好ましい。これらの材料としては、上述のもの意外に、例えば、メチルメタクリレート(MMA)とトリフルオロエチルメタクリレート(FMA)やヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートなどのフッ化(メタ)アクリレートとの共重合体がある。また、MMAと,tert−ブチルメタクリレートなどの分岐を有する(メタ)アクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、トリシクロデカニルメタクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレートなどとの共重合体がある。なお、これらのポリマが水素原子(H)を含んでいる場合には、その水素原子が重水素原子(D)に置換されていることが好ましく、これにより伝送損失の低減、特に近赤外領域の波長における伝送損失の低減を図ることができる。また、内側パイプ材を構成する材料においては、上記のいずれの材料も用いることができる。
さらに、POF23を近赤外光用途に用いるためには、ポリマを構成するC−H結合に起因した吸収損失が起こるために、特許3332922号公報や特開2003−192708号公報などに記載されているような、C−H結合の水素原子を重水素原子やフッ素などで置換したポリマを用いることで、この伝送損失を生じる波長域を長波長化することができ、伝送信号光の損失を軽減することができる。このようなポリマとしては、例えば、重水素化ポリメチルメタクリレート(PMMA−d8)、ポリトリフルオロエチルメタクリレート(P3FMA)、ポリヘキサフルオロイソプロピル2−フルオロアクリレート(HFIP 2−FA)などを例示することができる。なお、原料となる化合物は、重合後の透明性を損なわないためにも、不純物や散乱源となる異物は重合前に十分に除去されることが望ましい。
本発明においては、重合性化合物を重合させてポリマとする際において、重合開始剤を使用する。重合開始剤としては、例えば、ラジカルを生成するものが各種ある。例えばラジカルを生成するものとして、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物が挙げられる。また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は、これらに限定されるものではなく、また、2種類以上を併用してもよい。
ポリマとしたときの機械特性や熱物性などの各種物性値を全体にわたって均一に保つために、重合度の調整を行うことが好ましい。重合度の調整のためには、連鎖移動剤を使うことができる。連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択できる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンなど)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオールなど)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、連鎖移動剤は勿論これらに限定されるものではなく、これら連鎖移動剤は2種類以上を併用してもよい。
前述した重合開始剤や連鎖移動剤、屈折率調整剤の各添加量については、用いるコア用ポリマである重合性化合物の種類などに応じて、好ましい範囲を適宜決定することができる。本実施形態においては、重合開始剤は、芯材30の重合性化合物に対して、0.005〜0.050質量%となるように添加しているが、この添加率を0.010〜0.020質量%とすることがより好ましい。また、前記連鎖移動剤は、芯材30の重合性化合物に対して、0.10〜0.40質量%となるように添加しているが、この添加率を0.15〜0.30質量%とすることがより好ましい。
その他、内側パイプ材12、外側パイプ材17、および芯材30、もしくはそれらの一部には、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができる。例えば、芯材30もしくはその一部に耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として用いることができる。これらの添加剤も、前記原料となる各種重合性化合物に添加した後、重合することによって、上記の各部材、もしくはそれらの一部に含有させることができる。
また、インナークラッド42を形成するインナークラッド材31とコア42を形成するコア材31とにおいては、各ポリマのうち少なくともいずれか一方には、屈折率調整剤(以下、ドーパントと称する)を各所定量混合する。このドーパントとしては、非重合性の化合物が好ましい。コア材31のみにドーパントを添加する場合には、この添加率は、コア材31の主成分となるポリマに対して0.01重量%以上25重量%以下とすることが好ましく、1重量%以上20重量%以下とすることがより好ましい。これにより、断面円形の径方向における屈折率分布係数を上記のような好ましい範囲により制御しやすくなる。
本実施形態においては、ドーパントとしては高屈折率で分子体積が大きく、重合に関与せず、溶融状態のポリマ中で所定の拡散速度を有する低分子化合物を用い、これを添加することによりコア42の径方向における屈折率を変化させている。ドーパントは、モノマーに限定されず、オリゴマー(ダイマー、トリマーなどを含む)であってもよい。したがって、モノマーの状態ではコア材用モノマーやコア材31との重合反応性を有していても、これがオリゴマーとなったときにはこれらと重合しないものであればこのようなオリゴマーをドーパントとすることができる。
ドーパントの具体的な例としては、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジル−n−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ジフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)などが挙げられ、中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOが好ましい。なお、芯材30におけるドーパントの濃度および分布を調整することで、POF23の屈折率を所望の値に変化させることができる。
プリフォーム21およびPOF23の製造方法について説明する。ただし、本発明は、ここに示す形態に限定されるものではない。まず、プリフォーム21を構成する第1部材14および第2部材18をそれぞれ作製する。第1部材14を作製する際には、まず内側パイプ材作製工程11において内側パイプ材12を作製する。このとき、外径精度などに優れる真空サイジングダイを用いたアウターダイ減圧吸引方式である真空サイジング法で行うことが好ましい。
図4に、パイプ材製造ライン50を示す。パイプ材製造ライン50は、溶融押出装置51と押出ダイス52と成形ダイス53と冷却装置54と引取装置55と減圧乾燥装置56とを備える。まず、内側パイプ材用モノマーを溶融押出装置51に投入する。投入された前記モノマーは、溶融押出装置51の内部で溶融された後に、押出ダイス52より押出されて成形ダイス53に送り込まれる。この成形ダイス53には、成形管57が備えられており、この成形管57内で前記モノマーが成形されて、円筒中空状の成形体が形成される。成形ダイス53には真空ポンプ58が備えられており、前記モノマーが成形される際には、この真空ポンプ58を用いて真空引きすることが好ましい。このように真空引きをしながら成形すると、厚みが一定の内側パイプ材12を得ることができる。この成形体を冷却装置54に送り込み冷却すると、成形体が冷却固化されて円筒中空状の内側パイプ材12が作製される。
この内側パイプ材12を減圧乾燥装置56により減圧しながら乾燥する。減圧乾燥装置56には、その内部を所定の減圧度になるように減圧を行うことができる真空ポンプ(図示しない)と、その内部温度を所定の温度となるように調整することができる温度調節機(図示しない)とが備えられている。乾燥時には、乾燥効率を低下させないために、その内部減圧度を10kPa以下に保持することが好ましく、被乾燥物の揮発分による蒸気圧が生じる場合は、適宜調整することが好ましい。この乾燥時における温度は、50℃以上100℃以下であることが好ましく、この範囲を満たすように調整すればよいが、より好ましくは、パイプ材に用いるポリマのTg付近の温度とすることである。
さらに、乾燥時間は、10時間以上100時間以下とすることが好ましい。なお、第2部材18である外側パイプ材17の作製方法においては、内側パイプ材12を形成させた方法と同じ方法を用いればよい。第2減圧乾燥工程19においても、第1減圧乾燥工程15と減圧乾燥条件などは同じである。また、本実施形態では、第1減圧乾燥工程15と第2減圧乾燥工程19において、各工程ともパイプ材製造ライン50として連続した形態を示したが、連続させなくてもよい。例えば、引取装置55で引き取ったパイプ材33を一時的に保管した後、減圧乾燥装置56により減圧乾燥させることもできる。ただし、保管時間が長くなった場合には、パイプ材33の水分含有率などが向上してしまうおそれがあるので、保管時間はできる限り短くして、次工程へと進むことが好ましい。
本発明においては、第1部材14および第2部材18を作製し、これらを嵌合させる前に、少なくとも第1部材14および第2部材18の内でいずれか一方を、上記のような所定の乾燥条件で減圧しながら乾燥させるようにする。なお、第1部材14および第2部材18をともに所定の乾燥条件で乾燥すると、それぞれが含有している水分や可塑剤などを除去することができるので好ましい。
次に、芯材作製工程13として、作製した内側パイプ材12の中空部にインナークラッド材用モノマーを注入して、インナークラッド材32を形成させる。インナークラッド材用モノマーは重合性モノマーであるメチルメタクリレート(以下、MMAと称する)を主成分として、所望の添加剤(例えば、重合開始剤、連鎖移動剤、ドーパントなど)を添加して調整する。インナークラッド材32は、内側パイプ材12の内側に、コア材31を形成させることができるように、円筒中空状になるように回転重合法により形成させる。
この回転重合法は、内側パイプ材12の中空部にインナークラッド材用モノマーを注入し、この内側パイプ材を温水中で振動をくわえながら予備重合を行って、インナークラッド材用モノマーの粘性を高めた後に、内側パイプ材12の長手方向がおおむね平行かつ略水平となっているに保持した状態で、加熱しながら回転重合を行う。この際、内側パイプ材12は、その長手方向が水平となるようにした状態で回転させればよいが、例えば、内側パイプ材12の他端を吊るして、均等な回転を加味することができるようにしてもよく、回転方式については特に限定はされず、回転重合方法として公知のいずれの方法も、本発明には適用することができる。
インナークラッド材32の中空部にコア材用モノマーを注入して、コア材31を形成させる。コア材用モノマーに関しては、上述した材料に、重合開始剤、連鎖移動剤、ドーパントなどを適宜添加して調整し、これを用いて、国際後悔第93/08488号パンフレット、特許第3332922号公報に記載されている方法などを適用して、GI型のコア材31を形成させて、(GI型)プリフォーム21を作製する。
本発明において、芯材30の作製方法は、ここで示した形態に限定されるものではない。例えば、コア材形成ロッドを回転させながら界面ゲル重合を行う回転重合方法により形成することもできる。この場合には、コア部形成ロッドの中空部にコア材用モノマーを注入した後に、その一端を密閉し、回転重合装置内で水平状態を保持しながら、回転させて重合を進める。このとき、コア材用モノマーの供給は一括でもよいし、逐次または連続して供給してもよい。このとき、コア材用モノマーの供給量、組成、重合度を調整することで、中心に向けて連続して屈折率が高くなる分布を有するGI型の他に、階段状の屈折率分布を有するマルチステップ型光ファイバ素線などの製造にも適用することができる。
嵌合工程20において、上述のような方法で作製した第1部材14を第2部材18の中空部に挿入することで、両部材を嵌め合わせてプリフォーム21を作製する(図2参照)。このプリフォーム21を延伸工程22で加熱延伸して線引きすることでPOF23を得ることができる。延伸工程22における延伸の方法に関しては、特に限定されるものではなく、いずれの既知の方法を適用することができる。なお、延伸工程22を行う前に、前述のパイプと同様の工程でプリフォーム21を減圧乾燥させると、プリフォーム21中の残留モノマーや水分の低減を図ることが好ましい。これにより、付着・含有している残留モノマーなどの揮発成分や水分を除去することができるので、加熱延伸時において、これらの物質が揮発して発泡するのを抑制することができる。
図5に、POF製造設備60を示す。POF製造設備60は、プリフォーム21を加熱延伸しながら線引きしてPOF23を作製する際に用いられる装置であり、線引炉61と外径モニタ62と巻取リール63からなる。線引炉61は、加熱炉64と、その外側にヒータ65を内部に備える筐体であり、プリフォーム21の搬入出口となる上部開口66と下部開口67とが設けられている。
所定の把持部材で把持されたプリフォーム21は、上部開口66から線引炉61内に送り込まれる。前記把持部材においては、真空度調節装置に接続されているアダプタであることが好ましい。このようなアダプタを用いると、真空度を調節することで、第1部材14と第2部材18との界面を容易に融着させることができる。この際の減圧度は、大気圧に対して、−10kPa以上−0.5kPa以下とすることは好ましい。減圧度が−10kPaを超えると、減圧度が高すぎるために、第1部材14および第2部材19ともに形状が変形してしまうおそれがある。一方で、減圧度が−0.5kPa未満の場合には、真空度が低すぎるので、第1部材14と第2部材19とを互いに融着させる効果が弱くなる。また、延伸時においては、プリフォーム21を回転させながら作業を行うことが好ましい。このように延伸時においてプリフォーム21を回転させると、より半径が均一な円柱状のPOF23を得る作製することができる。この回転方法に関しては、例えば、上述のアダプタに回転装置を連結しておけばよい。
プリフォーム21を加熱炉64に送り込み、加熱しながら延伸させる。加熱炉64には、これを加熱させるためのヒータ65が備えられており、このヒータ65により加熱炉64の内部温度を調整する。加熱温度は、プリフォーム21の材質に応じて適宜決定すればよいが、一般的には、180℃〜250℃の範囲であることが好ましい。また、延伸時における延伸温度や延伸張力などの延伸条件は、プリフォーム21や作製したいPOF23の形状および材質などを考慮して、適宜決定すればよい。これらの条件を考慮して、プリフォーム21を加熱しながら延伸を行うことでPOF23を作製する。POF23は下部開口67より送出された後に、外径モニタ62によりその外径が測定されるが、この測定結果に基づき、逐次線引条件を補正しながら延伸させることで、所望のPOF23を得ることができる。加熱延伸されたPOF23は、巻取リール63で巻き取られる。
線引張力については、特開平7−234322号公報に記載されているように、溶融したポリマを配向させるために、0.1N以上としたり、特開平7−234324号公報に記載されているように、溶融延伸後に歪を残さないようにするために、1N以上とすることが好ましい。また、特開平8−106015号公報に記載されているように、延伸の際に、予備加熱を設ける方法などをとることもできる。以上の方法によって得られるPOF23については、破断伸びや硬度について特開平7−244220号公報に記載のように規定することで、このPOF23を束にするなどして使用される光ファイバケーブルの曲げや側圧特性を改善することができる。
なお、本実施形態においては、第1部材14と第2部材18とを別工程で作製した後に、これらを嵌め合わせてプリフォーム21とし、このプリフォーム21を加熱延伸させて線引きすることで、第1部材14と第2部材18とを融着させながらPOF23を作製したが、本発明はこの形態に限定されるものではなく、第1部材14と第2部材18とを嵌め合わせる際において、接着剤を用いて嵌合面を接着させたものをプリフォーム21とし、これを加熱延伸させて線引きすることでPOF23を作製してもよい。
本発明により得られるPOF23により、プラスチック光ケーブルを作製することができる。このプラスチック光ケーブルには様々な形態があるが、特に限定はされない。例えば、これらを同心円状にまとめた集合型や、一列に並べたテープ型などが挙げられる。また、本発明に係るPOF23や光ファイバケーブルなどを用いた光伝送体は、端部に接続用光コネクタを用いて接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタとしては、一般に知られているPN型、SMA型、SMI型、F05型、MU型、FC型、SC型などの市販の各種コネクタを利用することができる。
本発明のPOF23から得られたプラスチック光ケーブルは、従来に比べて、軸ずれに対する許容度が高いために、突き合せにより接合しても用いることができるが、より好ましくは、その端部に接続用光コネクタを備えて、互いの接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタとしては一般に知られている、PN型、SMA型、SMI型などの市販の各種コネクタを利用することができる。さらには、種々の発光素子や受光素子、光スイッチ、光アイソレータ、光集積回路、光送受信モジュールなどの光部品を含む光信号処理装置などが組み合わされて好適に用いられる。この際には、必要に応じて他の光ファイバ素線などと組み合わせてもよい。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)、日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」などを参考にすることができる。前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線、車両や船舶などの内部配線、光端末とデジタル機器、デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LANなどをはじめとする、高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。
さらに、IEICE TRANS. ELECTRON.,VOL.E84−C,No.3,MARCH 2001,p.339−344 「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3,No.6,2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」の記載されているものや、特開2003−152284号公報に記載の導波路面に対する発光素子の配置;特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号などの各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号などの各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号などの公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号などの各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号などに記載の光信号処理装置;特開2001−86537号などに記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号などに記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号などの各公報に記載のマルチファンクションシステム;や各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを用いた、より高度な光伝送システムを構築することができる。以上の光伝送用途以外にも照明(導光)、エネルギー伝送、イルミネーション、センサ分野にも用いることができる。
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。