JP2004212722A - 光学部材、その製造に用いられる重合性組成物及び製造方法、並びにそれを用いた光通信システム - Google Patents

光学部材、その製造に用いられる重合性組成物及び製造方法、並びにそれを用いた光通信システム Download PDF

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Masaki Okazaki
正樹 岡崎
Toshiro Hayakawa
利郎 早川
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Abstract

【課題】赤色半導体レーザーを用いての伝送損失が低減された光学部材を良好な生産性で作製可能な重合性組成物および製造方法を提供する。
【解決手段】脂環式炭化水素を有する(メタ)アクリ酸エステルを含有する重合性モノマー、重合開始剤、連鎖移動剤および必要に応じ該単量体とは異なる屈折率を有する化合物の混合物とを含有する光学部材用重合性組成物である。また、前記重合性組成物を、重合させる、好ましくは界面ゲル重合させる工程を含む屈折率分布型光学部材の製造方法である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック光学部材、特に赤色半導体レーザーを光源とする光通信に用いられるプラスチック光学部材、およびその製造に有用な重合性組成物におよび製造方法に関する。また、該光学部材を用いた光通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック光学部材は、同一の構造を有する石英系の光学部材と比較して、製造および加工が容易であること、および低価格であること等の利点があり、近年、光ファイバおよび光レンズ、光導波路など種々の応用が試みられている。特にこれら光学部材の中でも、プラスチック光ファイバ(POFと略記することがある)は、素線が全てプラスチックで構成されているため、伝送損失が石英系と比較してやや大きいという短所を有するものの、良好な可撓性を有し、軽量で、加工性がよく、石英系光ファイバと比較して、口径の大きいファイバとして製造し易く、さらに低コストに製造可能であるという長所を有する。従って、伝送損失の大きさが問題とならいない程度の短距離用の光通信伝送媒体として種々検討されている。
【0003】
プラスチック光ファイバは、一般的には、重合体をマトリックスとする有機化合物からなる芯(本明細書において「コア部」と称する)と、コア部と屈折率が異なる(一般的には低屈折率の)有機化合物からなる外殻(本明細書において「クラッド部」と称する)とから構成される。特に、中心から外側に向かって屈折率の大きさに分布を有するコア部を備えた屈折率分布型プラスチック光ファイバは、伝送する光信号の帯域を大きくすることが可能なため、高い伝送容量を有する光ファイバとして最近注目されている(例えば、特許文献1および2参照)。この様な屈折率分布型光学部材の製法の一つに、界面ゲル重合を利用して、光学部材母材(本明細書において、「プリフォーム」と称する)を作製し、その後、前記プリフォームを延伸する方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開昭61−130904号公報
【特許文献2】
WO93/08488号公報
【特許文献3】
特開平8−220349号公報
【非特許文献1】
H.Kawai et al.,SPIE Vol.896 Replication and Molding of Optical Components,69−78(1988)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、光学部材には、前述した様に、伝送損失が小さいことが要求されるとともに、吸湿性および耐熱性にも優れた材料であることが要求される。例えばメタクリル酸シクロヘキシルとメタクリル酸メチルからなる共重合体などが提案されているが、吸湿性を低減するためには、メタクリル酸シクロヘキシルを比較的多量に使用する必要がある等、使用範囲が制限される。さらに、その結果、メタクリル酸系樹脂の耐熱性が低下することになり、改善を要する点がある。一方、プラスチック構造中の水素をフッ素等のハロゲンや重水素に置換することが提案されている。しかし、フッ素含有モノマーの単独重合体は、材料安定性または密着性などにおいて不都合が生じる場合があり、光学部材に要求される性能の全てを備えた材料ではない。なお、素材の選択によって耐熱性を向上させるものとして、炭素原子を介してアルキル基を導入したモノマーからなる重合体が示されているが(特許文献3参照)、これらのTgはPMMAに比して高くないため(非特許文献1参照)、充分な耐熱性を有しないと推測される。さらに、これらはC−H結合のHをClやBrという大きな原子で置換しており、この様な置換は反応性の低下を招くため好ましくない。
【0006】
また、光源として従来は発光ダイオード(LED)が、特に650nm伝送用に用いられていた。従来用いられている光学部材であるPMMAは650nmに低吸光度(低伝送損失)の谷を有しており、入手容易である650nmのLEDとのマッチングは良好であった。しかし、近年、通信の高速化および高容量化の要求に伴い、赤色半導体レーザー(LD)の使用が求められるようになった。しかし、LDにおいては650nmの発光波長を実現することは必ずしも容易ではなく、例えば記録メディアとしてよく用いられているDVD用のInGaP量子井戸を有するLDにおいても、発光の中心波長は658nmであり、さらに使用時の温度上昇によりさらに長波長化が起こってしまうことが知られている。PMMAでは650nmから長波長側に向けては吸光度が増大し、伝送損失も増大することになり、LDを光源とするには好ましくない材料である。
【0007】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、良好な伝送能を有し、かつ耐湿熱性が改善され、LDの発光波長とのマッチングが優れるなど、種々の特性がバランスよく改良された光学部材を良好な生産性で作製可能な重合性組成物および製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、良好な光伝送能を有し、かつ耐湿熱性が改善され、LDの発光波長とのマッチングが優れるなど、種々の特性がバランスよく改良された光学部材、さらにそれを用いた光通信システムを提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する手段は以下の通りである。
<1> 赤色半導体レーザーを光源とする光通信において用いられる光学部材の形成に用いる、下記一般式(1)で表される化合物を含有する重合性モノマー、および重合開始剤を含む光学部材用重合性組成物。
【0009】
一般式(1)
【化3】
Figure 2004212722
【0010】
式中、Xは水素原子(H)または重水素原子(D)を表し、Xは同一でも異なっていてもよい。YはH、D、CH基、またはCD基を表し、Rは炭素原子数7〜20個の脂環式炭化水素基を表す。
【0011】
<2> 前記赤色半導体レーザーの発光波長が645〜680nmである<1>に記載の光学部材用重合性組成物。
<3> さらに該重合性モノマーとは異なる屈折率を有する化合物を含む<1>または<2>に記載の光学部材用重合性組成物。
<4> 前記重合性モノマーが、さらに、下記一般式(2)で表される化合物を含有する<1>〜<3>のいずれかに記載の重合性組成物。
【0012】
一般式(2)
【化4】
Figure 2004212722
【0013】
式中、XはHまたはDを表し、Xは同一でも異なっていてもよい。YはH、D、CH基、またはCD基を表し、Rは1〜15個のフッ素置換基を有する炭素原子数1〜7個のフッ化アルキル基を表す。
【0014】
<5> <1>〜<4>のいずれかに記載の重合性組成物を重合する工程を含む光学部材の製造方法。
<6> <1>〜<4>に記載の重合性組成物を重合して、屈折率の大きさに分布を有する屈折率分布領域を形成する工程を含む光学部材の製造方法。
<7> 前記重合性組成物を界面ゲル重合法により重合する<5>または<6>に記載の光学部材の製造方法。
<8> <5>〜<7>のいずれかに記載の製造方法によって製造された光学部材。
<9> <8>に記載の光通信用光学部材と、赤色半導体レーザーを光源とする光受信手段とを有する光通信システム。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の重合性組成物について説明する。
本発明の重合性組成物は、下記一般式(1)で表される化合物(以下、「重合性モノマー(1)」という場合がある)を少なくとも含有する重合性モノマーと、重合開始剤と、該重合性モノマーとは異なる屈折率を有する化合物とを含有する。本発明の光学部材用重合性組成物は、LDを光源とする光通信に用いられるプラスチック光学部材、特に、屈折率の大きさに分布を有する屈折率分布型のプラスチック光学部材の製造に用いられる。
【0016】
一般式(1)
【化5】
Figure 2004212722
【0017】
式中、Xは水素原子(H)または重水素原子(D)を表し、Xは同一でも異なっていてもよい。YはH、D、CH基、またはCD基を表し、Rは炭素原子数7〜20個の脂環式炭化水素基を表す。
【0018】
前記重合性モノマー(1)は、Rが炭素原子数7〜20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートである。具体的な例としては、(メタ)アクリル酸(ビシクロ−2,2,1−ヘプチル−2)、(メタ)アクリル酸1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−メチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジメチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸3−メチル−5−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5,8−トリエチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジメチル−8−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−5−イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−1−イルメチル、(メタ)アクリル酸l−メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−2,6,6−トリメチル−ビシクロ〔3,1,1〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸3,7,7−トリメチル−4−ヒドロキシ−ビシクロ〔4,1,0〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フエンチル、(メタ)アクリル酸2,2,5−トリメチルシクロヘキシルなどが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステルの中でも、メタクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フエンチル、メタクリル酸l−メンチルなどが好ましく、メタクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸l−メンチルが特に好ましい。
【0019】
前記重合性モノマー(1)は、(メタ)アクリル酸もしくはその酸塩化物を、ROH(Rは前記一般式(1)中のRと同義である)で表される脂環式炭化水素・モノオールでエステル化すること;(メタ)アクリル酸をカンフェンなどの脂環式炭化水素前駆体とを硫酸、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒でエステル化すること;によって製造することができる。
また、(メタ)アクリル基のC−H(即ち、前記一般式(1)中のXおよびY)は重水素で置換されているほうが好ましく、その置換率は95%以上100%未満であるのが好ましい。さらに(メタ)アクリレート側鎖(前記一般式(1)中のR)のC−Hも重水素に置換されていてもよい。
【0020】
本発明の組成物のより好ましい態様は、光学特性、塑性などの加工時の容易性を鑑みると、上記重合性モノマー(1)と、下記一般式(2)で表される化合物(以下、「重合性モノマー(2)」という場合がある)とを成分とする重合性モノマーを含有する組成物である。
【0021】
一般式(2)
【化6】
Figure 2004212722
【0022】
前記一般式(2)中、XはHまたはDを表し、Xは同一でも異なっていてもよい。YはH、D、CH基またはCD基を表し、Rは1〜15個のフッ素置換基を有する炭素原子数1〜7個のフッ素化アルキル基を表す。
【0023】
前記重合性モノマー(2)は、1〜15個のフッ素置換基を有する炭素原子数1〜7個のフッ化アルキル基Rを有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーである。重合性モノマー(2)の具体例としては、メタクリル酸モノフルオロメチル、メタクリル酸ジフルオロエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸1H、1H−ペンタフルオロプロピル、メタクリル酸1H、1H、3H−テトラフルオロプロピル、メタクリル酸2H−ヘキサフルオロ−2−プロピル、メタクリル酸ヘプタフルオロ−2−プロピル、メタクリル酸パーフルオロヘキシルメチル、メタクリル酸パーフルオロ−t−ブチルなどが挙げられる。中でも、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸2H−ヘキサフルオロ−2−プロピル、メタクリル酸ヘプタフルオロ−2−プロピル、メタクリル酸パーフルオロヘキシルメチル、メタクリル酸パーフルオロ−t−ブチル、メタクリル酸1H、1H、3H−テトラフルオロプロピルが好ましく、さらにメタクリル酸2H−ヘキサフルオロ−2−プロピル、メタクリル酸1H、1H、3H−テトラフルオロプロピル、メタクリル酸パーフルオロ−t−ブチルが特に好ましい。
【0024】
また、(メタ)アクリル基のC−H(前記一般式(2)中、XおよびY)は重水素に置換されているのが好ましく、その置換率は95%以上100%未満である。さらに(メタ)アクリレート側鎖(前記一般式(2)中、R)のC−Hも重水素に置換されていてもよい。
【0025】
本発明の重合性組成物は、前記重合性モノマー(1)を必須成分としていればよく、好ましくは前記重合性モノマー(1)および(2)を重合性モノマーの主成分として含む。前記重合性モノマー(1)は全重合性モノマー中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7.5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上含有する。さらに本明細書において「主成分として含む」とは、その重合体の光学的性能を損なわない限りにおいて、他のモノマーを含んでいてもよいことを意味する。重合性モノマー中、前記重合性モノマー(1)および(2)が占める割合については、用いるモノマーの種類によってその範囲も異なるが、本発明の重合性組成物に含まれる全重合性モノマー中、重合性モノマー(1)および(2)は、10質量%以上含有されるのが好ましく、20質量%以上含有されるのがより好ましく、30質量%以上含有されるのがさらに好ましい。
【0026】
本発明に使用可能な前記重合性モノマー(1)および(2)以外の他の重合性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル系化合物として、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸nーブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル等;スチレン系化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等;ビニルエステル類として、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等;マレイミド類として、N−n−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等;が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この中でもメタクリル酸メチルが好ましい。これらのモノマーも重水素置換されているのが好ましい。
【0027】
重合性モノマー(1)と重合性モノマー(2)とを含む態様では、重合性モノマー(1)と重合性モノマー(2)とのモル比(n/m)は、1/100以上〜100/1未満であり、好ましくは1/50以上〜50/1未満であり、さらに好ましくは1/25以上〜25/1未満である。
【0028】
本発明の重合性組成物は、前記重合性モノマー(1)の重合を開始させる、または、前記重合性モノマー(1)と(2)とを含有する態様では、前記重合性モノマー(1)および(2)の共重合を開始させる重合開始剤を含有する。重合開始剤としては、用いるモノマーや重合方法に応じて適宜選択することができるが、過酸化ベンゾイル(BPO)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−t−ブチルパーオキシド(PBD)、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル4,4,ビス(t−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物、または2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’―アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジーt−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は2種類以上を併用してもよい。
【0029】
本発明の重合性組成物は、前記重合性モノマーの連鎖移動剤を含有するのが好ましい。前記連鎖移動剤は、主に重合体の分子量を調整するために用いられる。重合性組成物が連鎖移動剤を含有していると、重合性モノマーの重合速度および重合度を前記連鎖移動剤によってより制御することができ、重合体の分子量を所望の分子量に調整することができる。例えば、本発明の重合性組成物を重合した後、延伸により線引きして、光学部材の形態にする場合は、分子量を調整することによって延伸時における機械的特性を所望の範囲とすることができ、生産性の向上にも寄与する。前記連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択することができる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
【0030】
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いるのが好ましく、中でも、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、前記連鎖移動剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0031】
本発明の重合性組成物は、屈折率調整成分を含有していてもよい。本発明の重合性組成物に屈折率調整成分を含有させ、重合の際に、重合の進行方向に沿って、屈折率調整成分の濃度に傾斜を持たせることによって、屈折率分布型の光学部材を作製することができる。屈折率調整成分は、併用する前記重合性モノマーの屈折率と異なる成分を意味し、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。その屈折率差は、0.005以上であるのが好ましい。屈折率調整成分は、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して、屈折率が高くなる性質を有するものを用いるのが好ましい。また、屈折率調整成分は重合性化合物であってもよく、重合性化合物が屈折率調整成分の場合は、これを共重合成分として含む共重合体がこれを含まない重合体と比較して、屈折率が上昇する性質を有するものを用いるのが好ましい。上記性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、屈折率調整成分として用いることができる。例えば、コア部形成用重合性組成物に屈折率調整成分を含有させ、コア部を形成する工程において界面ゲル重合法により重合の進行方向を制御し、屈折率調整成分の濃度に傾斜を持たせ、コア部に屈折率調整成分の濃度分布に基づく屈折率分布構造を形成するのが好ましい(以下、屈折率の分布を有するコア部を「屈折率分布型コア部」という場合がある)。屈折率分布型コア部を形成することにより、得られる光学部材は広い伝送帯域を有する屈折率分布型プラスチック光学部材となる。
【0032】
前記屈折率調整成分としては、低分子化合物として、WO93/08488や特開平11−142657号公報に記載されている様な、例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジルn−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ビフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)、硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体などが挙げられる。硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体については、下記に具体的に示す化合物の中から適宜選ばれる。中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOおよび硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体が好ましい。なお、これらの化合物中に存在する水素原子を重水素原子に置換した化合物も広い波長域での透明性を向上させる目的で用いることができる。また、重合性化合物として、例えば、トリブロモフェニルメタクリレート等が挙げられる。屈折率調整成分として重合性化合物を用いる場合は、マトリックスを形成する際に、重合性モノマーと重合性屈折率調整成分とを共重合させるので、種々の特性(特に光学特性)の制御がより困難となるが、耐熱性の面では有利となる可能性がある。
【0033】
【化7】
Figure 2004212722
【0034】
屈折率調整剤の濃度および分布を調整することによって、光学部材の屈折率を所望の値に変化させることができる。その添加量は、用途および組み合わされる部材に応じて適宜選ばれる。屈折率上昇材は、複数種類添加してもよい。
【0035】
本発明の重合性組成物に熱および/または光等が供与されると、例えば、重合開始剤からラジカル等が発生し、前記重合性モノマー(1)の重合が、または前記重合性モノマー(1)および(2)の共重合が開始される。本発明の重合性組成物が屈折率調整成分を含んでいる場合は、例えば、後述の界面ゲル重合法のように、重合の進行方向を制御して、屈折率調整成分の濃度に傾斜を持たせることによって、もしくは屈折率調整成分を含んでいない場合も、前記重合性モノマーの共重合比に傾斜を持たせることによっても、屈折率分布構造を形成することができる。特に、本発明では重合性モノマーとして、上記重合性モノマー(1)、または重合性モノマー(1)および(2)を用いている(好ましくは主成分として用いている)ので、作製される光学部材の光伝送損失を大きく軽減することができる。特に、吸湿による光伝送損失の増大を顕著に軽減することができる。また、重合性モノマーの重合速度および重合度を、重合開始剤および所望により添加される連鎖移動剤によって制御し、重合体の分子量を所望の分子量に調整することができる。例えば、得られた重合体を延伸により線引きして、光ファイバとする場合は、連鎖移動剤によって製造される重合体の分子量(好ましくは1万〜100万、より好ましくは3万〜50万)を調整すれば、延伸時における機械的特性を所望の範囲とすることができ、生産性の向上にも寄与する。
【0036】
本発明の重合性組成物を重合させることによって製造し得る光学部材用樹脂の一態様は、下記一般式(X−1)で表される上記重合性モノマー(1)由来の単位を有する、好ましくは、下記一般式(X−1)で表される上記重合性モノマー(1)由来の単位と下記一般式(X−2)で表される上記重合性モノマー(2)由来の単位とを主成分とし、且つ重量平均分子量が1万〜100万である光学部材用樹脂である。分子量が前記範囲より小さいと機械的強度などが低下し、一方、分子量が前記範囲より大きいと加工性が悪くなる。この適正な分子量範囲を選択することで、製品の熱的物性(Tg)と、加熱延伸時の加工性や、機械的強度のそれぞれを満たすことができる。
【0037】
【化8】
Figure 2004212722
【0038】
式中、X、X、Y、Y、RおよびRについては、前記一般式(1)および(2)中の各々と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0039】
本発明の重合性組成物を用いて製造された光学部材は、赤色半導体レーザー(LD)を光源とする光通信に用いるのに適する。本発明では、赤色半導体レーザー(LD)として、活性層が圧縮歪みのInGaP量子井戸からなるDVD用の素子構造を用いることができる。InGaP量子井戸の価電子帯は量子井戸に加わる歪み、即ちInとGaの組成比、によってそのエネルギーや有効質量が変わるため、LDの特性は歪みに大きく依存する。一方、発振波長はIn組成が大きくなるほど短波長化するため、実際に入手が容易なLDの波長は次に記す最適な歪みに対応することが、“Semiconductor Lasers II”Eli Kapon編、p.25−33(1999)Academic Press に記載されている。前記文献に記載されているように、InGaP量子井戸レーザでは、0.5%程度の圧縮歪みあるいは0.5%以上の引っ張り歪みで低閾値電流となる。圧縮歪みでは660−680nm、引っ張り歪みでは635nm程度の波長で高効率となる。PMMAの最小損失に適した、640−650nmのLDに対応するInGaP量子井戸は歪みが無いかやや引っ張り歪みとなり、後者では軽い正孔(LH)と重い正孔(HH)のバンドが重なるため更に閾値が上昇して、特性劣化をきたし、この波長域では良好なLDが作製できない。素子の信頼性は化学結合が切れやすい引っ張り歪みより圧縮歪みで良好なため、最も性能の良いLDは適度な圧縮歪みである0.5%程度、波長では660−680nmで得られる。DVD用途では、短波長ほど光学的な焦点深度を大きくできるので有利であるが、市販品のDVD用ではLDの特性を考慮して658nmが中心波長となっている。本発明では、このような特性の良好なDVD用LDを用いて、低損失の光伝送を実現することに特徴がある。
【0040】
以下に、本発明の製造方法を、コア部とクラッド部とを有する屈折率分布型プラスチック光学部材の製造方法に適用した実施の形態について説明する。本実施形態は、主として2種類あるが、以下の実施形態に限定されるわけではない。
まず、第一の実施形態は、クラッド部用重合性組成物を重合してクラッド部となる円筒管を作製する第1の工程と、前記円筒管の中空部でコア部形成用重合性組成物を界面ゲル重合させることによりコア部となる領域を形成し、コア部およびクラッド部に各々対応する領域からなるプリフォームを作製する第2の工程と、得られたプリフォームを所望の形態に加工する第3の工程とを含むプラスチック光学部材の製造方法である。
次に、第二の実施形態は、クラッド部に相当する、例えばポリフッ化ビニリデン樹脂のような含フッ素樹脂からなる円筒管の中空部で、アウターコア用重合性組成物を回転重合法により重合して、該円筒管の内壁面にアウターコア層を形成し、2層からなる円筒管を作製する第1の工程と、前記円筒管のさらに中空部でインナーコア部形成用重合性組成物を界面ゲル重合させて、インナーコア部となる領域を形成し、クラッド部、アウターコア部およびインナーコア部に各々対応する領域からなるプリフォームを作製する第2の工程と、および得られたプリフォームを所望の形態に加工する第3の工程とを含むプラスチック光学部材の製造方法である。
後者の実施形態においては、2層からなる同心円筒状パイプを作製する際、上記のように段階的ではなく、フッ素樹脂とアウターコア用重合組成物の重合体を溶融共押し出しの方法の一段階で作製する方法もある。
【0041】
前記クラッド部あるいはアウターコア部形成用重合性組成物は、重合性モノマー(1)または重合性モノマー(1)と(2)、該重合性モノマーの重合を開始させる重合開始剤、および連鎖移動剤を含有する。次に、前記コア部あるいはインナーコア部形成用重合性組成物は、重合性モノマー(1)、または重合性モノマー(1)と(2)、該重合性モノマーの重合を開始させる重合開始剤、連鎖移動剤、および所望により前記モノマーの屈折率と異なる屈折率を有する化合物(屈折率調整成分)を含有する。前記第一の実施の形態ではクラッド部/コア部形成用、第二の実施の形態ではアウターコア部/インナーコア部形成用の各々の重合性組成物に用いられる重合性モノマー(1)、または重合性モノマー(1)および(2)は、互いに等しいのが好ましい(但し、その組成比については同一でなくてもよく、また副成分については等しくなくてもよい)。等しい種類の重合性モノマーを用いることによって、クラッド部/コア部またはアウターコア部/インナーコア部界面における光透過性および接着性を向上させることができる。また、クラッド部あるいはアウターコア部形成用の重合性モノマーとして、重合性モノマー(2)の比率をより多くするとコア部との屈折率差を大きく持たせやすく、その結果、屈折率分布構造を形成し易いので好ましい。
【0042】
第二の実施形態では、クラッド部とコア部との間にアウターコア部を形成することによって、クラッド部とコア部との材質の違いによる接着性の低下および生産性の低下などを軽減させている。その結果、クラッド部およびコア部に用いる材料の選択の幅を広げることができる。本実施形態では、クラッド部は疎水性が高く、且つコア部との屈折率差を大きくすることができる含フッ素樹脂を用いるのが好ましく、具体的には、ポリフッ化ビニリデン樹脂等が好ましい。クラッド部に相当する円筒形状の管は、例えば、市販されているフッ素樹脂を溶融押出しにより、所望の径と厚みのパイプに成形することで作製することができる。さらに、得られたパイプの中空部で上記重合性組成物を回転重合させ、その内壁にアウターコア層を形成することができる。また、その他、前記フッ素樹脂と前記重合性組成物からなる重合体を共押し出しすることによっても同様の構造体を作製することもできる。
【0043】
本発明の重合性組成物を用いて光学部材を作製する際に、屈折率調整成分を用い、その濃度に傾斜を持たせることによっても、屈折率分布型の光学部材を作製することができる。屈折率調整成分の濃度に傾斜を持たせる方法としては、後述する界面ゲル重合を利用する方法等がある。
【0044】
前記クラッド部、アウターコア部およびコア部形成用重合性組成物において、各成分の含有割合の好ましい範囲は、その種類に応じて異なり一概に定めることはできないが、一般的には、重合開始剤は、重合性モノマーに対して0.005〜0.5質量%であるのが好ましく、0.01〜0.5質量%であるのがより好ましい。前記連鎖移動剤は、重合性モノマーに対して0.10〜0.40質量%であるのが好ましく、0.15〜0.30質量%であるのがより好ましい。また、前記コア部形成用重合性組成物において、前記屈折率調整成分は、重合性モノマーに対して1〜30質量%であるのが好ましく、1〜25質量%であるのがより好ましい。
【0045】
前記クラッド部、アウターコア部およびコア部形成用重合性組成物を重合することによって得られるポリマー成分の分子量は、プリフォームを延伸する関係から、重量平均分子量で1万〜100万の範囲であることが好ましく、3万〜50万であることがさらに好ましい。さらに延伸性の観点で分子量分布(MWD:重量平均分子量/数平均分子量)も影響する。MWDが大きくなると、極端に分子量の高い成分がわずかでもあると延伸性が悪くなり、場合によっては延伸できなくなることもある。したがって、好ましい範囲としては、MWDが4以下が好ましく、さらには3以下が好ましい。
【0046】
前記クラッド部およびコア部形成用重合性組成物にはそれぞれ、重合時の反応性や光伝送性能を低下させない範囲で、その他の屈折率調整成分を添加することができる。例えば、耐候性や耐久性等を向上させる目的で、耐酸化剤や耐光剤等の安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することが可能となり、伝送距離が向上するので、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として使用することができる。
【0047】
次に、前記第一および第二の形態(特に前記第一の実施形態)の各工程について詳細に説明する。
前記第1の工程では、クラッド部に相当する1層の、またはクラッド部およびアウターコア部に相当する2層の中空状(例えば円筒形状)の管を作製する。中空の円筒管の作製方法としては、例えば国際公開WO93/08488号公報に記載されている様な製造方法が挙げられる。具体的には、前記クラッド部形成用重合組成物を円筒形状の重合容器に、またはアウターコア部形成用重合性組成物をフッ素樹脂よりなるパイプ(さらに外側に円筒形状の容器に入れられたもの)に注入し、該重合容器を回転(好ましくは、円筒の軸を水平に維持した状態で回転)させつつ、前記重合性モノマーを重合させることにより、1層(一重)または2層(二重)円筒形状の重合体からなる構造体を作製することができる。重合容器に注入する前にフィルターにより濾過して、組成物中に含まれる塵埃を除去するのが好ましい。また、性能劣化や前工程、後工程の煩雑化などを起こさない限りにおいて、特開平10−293215号公報に記載された原料の粘度調整のように取り扱いやすい様に粘度などの調整やプレ重合を行うことによる重合時間の短縮なども行うことができる。重合温度および重合時間は、用いるモノマーや重合開始剤によって異なるが、一般的には、重合温度は60〜150℃であるのが好ましく、重合時間は5〜24時間であるのが好ましい。この時に、特開平8−110419号公報に記載されている様に、原料をプレ重合して原料粘度を上昇させてから行ってもよい。また、重合に使用する容器が回転によって変形してしまうと、得られる円筒管に歪みを生じさせることから、充分な剛性を持つ金属管・ガラス管を用いることが望ましい。
【0048】
前記一重または二重円筒形状の重合体からなる構造体は、コア部(前記第二の実施の形態においてはインナーコア部であり、以下、「コア部」という場合は「インナーコア部」の意味でもある)の原料となる重合性組成物を注入できるように、底部を有しているのが好ましい。底部は前記円筒管を構成している重合体と密着性および接着性に富む材質であるのが好ましい。また、底部を前記円筒管と同一の重合体で構成することもできる。重合体からなる底部は、例えば、重合容器を回転させて重合する(以下、「回転重合」という場合がある)前もしくは後に、重合容器を垂直に静置した状態で、重合容器内に少量の重合性モノマーを注入し、重合することによって形成することができる。
【0049】
前記回転重合後に、残存するモノマーや重合開始剤を完全に反応させることを目的として、該回転重合の重合温度より高い温度で得られた構造体に加熱処理を施してもよく、所望の中空管が得られた後、未重合の組成物を取り除いてもよい。
【0050】
また、前記第1の工程では、一旦、前記重合性組成物を重合させて重合体を作製した後、押し出し成形等の成形技術を利用して、所望の形状(本実施の形態では一重円筒形状あるいはフッ素樹脂と前記重合性組成物重合体からなる二重(同心)円筒状)の構造体を得ることもできる。
【0051】
前記第2の工程では、前記第1の工程で作製した一重または二重円筒形状の構造体の中空部に、前記コア部形成用重合性組成物を注入し、組成物中の重合性モノマーを重合する。フィルターにより濾過して、組成物に含まれる塵埃を除去するのが好ましい。重合法は重合後の残留物の観点から溶媒等を用いない界面ゲル重合法が特に好ましい。この界面ゲル重合法を用いることで、重合性モノマーの重合は、前記円筒管のゲル効果によって、粘度の高くなった内壁表面から断面の半径方向、中心に向かって進行する。重合性モノマーに前記屈折率調整成分を添加して重合すると、前記円筒管を構成している重合体に対して親和性の高いモノマーが前記円筒管の内壁面に偏在して重合し、外側には屈折率調整成分濃度が低い重合体が形成される。中心に向かうに従って、形成された重合体中の該屈折率調整成分の比率が増加する。このようにして、コア部となる領域内に屈折率調整成分の濃度分布が生じ、この濃度分布に基づいて、連続した屈折率の分布が導入される。
【0052】
上記説明したように、第2の工程において、形成されるコア部となる領域に屈折率の分布が導入されるが、屈折率が互いに異なる部分間は熱挙動も互いに異なるので、重合を一定温度で行うと、その熱挙動の違いからコア部となる領域は、重合反応に対して発生する体積収縮の応答性が変化し、プリフォーム内部に気泡が混入する、もしくはミクロな空隙が発生し、得られたプリフォームを加熱延伸した際に多数の気泡が発生する可能性がある。重合温度が低すぎると、重合効率が低下し、反応終了までに時間がかかってしまい、生産性を著しく損なう。また、重合が不完全となって光透過性が低下し、作製される光ファイバの光伝送能を損なう。一方、初期の重合温度が高すぎると、コア部となる領域の収縮に対して応答緩和できず、気泡発生の傾向が著しい。そのため、モノマーの沸点や生成するポリマーのガラス転移温度(Tg)を勘案しながら、重合温度と後処理温度を調整して行う。但し、後処理温度はポリマーのガラス転移温度以上となるように選択する。例えば、典型的なメタクリレート系のモノマーを使用した場合には、重合温度は好ましくは、60℃〜160℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。また、重合収縮に対する応答性を高めるために加圧した不活性ガス中で重合させることも好ましい。さらに、重合前のモノマーを減圧雰囲気で脱水・脱気する事でさらに気泡の発生を低減させることができる。
【0053】
重合温度および重合時間は、用いるモノマーによって異なるが、一般的には、重合温度は60〜150℃であるのが好ましく、重合時間は5〜72時間であるのが好ましい。また、PCT/JP02/08800号公報に記載されている様に重合温度を2段階以上に制御してもよい。具体的には、重合性モノマーとしてイソボルニルメタクリレートを用い、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)を用いた場合は、初期重合温度を100〜110℃に48〜72時間維持し、その後、120〜160℃まで昇温して24〜48時間重合するのが好ましく、重合開始剤としてジt−ブチルパーオキシドを用いた場合は、初期重合温度を90〜110℃に4〜48時間維持し、120〜160℃まで昇温して24〜48時間重合するのが好ましい。なお、昇温は段階的に行っても、連続的に行ってもよいが、昇温にかける時間は短いほうがよい。
【0054】
重合は、加圧状態で行うのが好ましい(以下、加圧状態で行う重合を「加圧重合」という)。加圧重合を行う場合は、前記重合性組成物を注入した一重または二重円筒形状の構造体を、治具の中空部に挿入して、治具に支持された状態で重合を行うのが好ましい。前記治具は、前記構造体を挿入可能な中空を有する形状であり、該中空部は前記構造体と類似の形状を有しているのが好ましい。本実施の形態では、クラッド部となる構造体が円筒管であるので、前記治具も円筒形状であるのが好ましい。治具は、加圧重合中に前記円筒管が変形するのを抑制するとともに、加圧重合が進むに従ってコア部となる領域が収縮するのを緩和可能に支持する。従って、治具の中空部は、前記一重または二重円筒形状の構造体の外径より大きい径を有し、前記クラッド部となる円筒管を非密着状態で支持するのが好ましい。前記治具の中空部は、前記一重または二重円筒形状の構造体の外径に対して0.1%〜40%だけ大きい径を有しているのが好ましく、10〜20%だけ大きい径を有しているのがより好ましい。
【0055】
前記一重または二重円筒形状の構造体を治具の中空部に挿入した状態で、重合容器内に配置することができる。重合容器内において、前記一重または二重円筒形状の構造体は、円筒の高さ方向を垂直にして配置されるのが好ましい。前記治具に支持された状態で前記円筒管を、重合容器内に配置した後、前記重合容器内を加圧することができる。窒素等の不活性ガスで重合容器内を加圧し、不活性ガス雰囲気下で加圧重合を進行させるのが好ましい。重合時の加圧の好ましい範囲については、用いるモノマーによって異なるが、重合時の圧は、一般的には0.05〜1.0MPa程度が好ましい。
【0056】
以上の工程を経て、光学部材のプリフォームを得ることができる。なお、上記実施の形態では、1層のアウターコア部を有する円筒形状のプリフォームの作製方法を示したが、アウターコア部は2層以上であってもよい。また、アウターコア部は、延伸等によって光ファイバの形態となった後は、インナーコア部と一体になり、双方が識別できなくなっていてもよい。
【0057】
第3の工程では、作製されたプリフォームを加工して所望の形態の光学部材を得る。例えば、プリフォームを軸方向に垂直にスライスすれば断面が凹凸を有しない円盤状もしくは円柱状のレンズを得ることができる。また、延伸してプラスチック光ファイバを得る。
【0058】
光ファイバは、第3の工程でプリフォームを加熱延伸して作製することができるが、その加熱温度はプリフォームの材質等に応じて、適宜決定することができる。一般的には、180〜250℃中の雰囲気で行われることが好ましい。延伸条件(延伸温度等)は、得られたプリフォームの径、所望のプラスチック光ファイバの径および用いた材料等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、線引張力については、特開平7−234322号公報に記載されている様に、溶融したプラスチックを配向させるために10g以上としたり、特開平7−234324号公報に記載されている様に溶融延伸後に歪みを残さないようにするために100g以下とすることが好ましい。また、特開平8−106015号公報に記載されている様に、延伸の際に予備加熱を設ける方法等をとることもできる。以上の方法によって得られるファイバについては、得られる素線の破断伸びや硬度について特開平7−244220号公報に記載の様に規定することでファイバの曲げや側圧特性を改善することができる。また、特開平8−54521号公報に記載されているように、低屈折率の層を外周に設けて反射層として機能させてさらに伝送性能を向上させることもできる。
【0059】
第3の工程を経て製造されたプラスチック光ファイバは、そのままの形態で種々の用途に供することができる。また、保護や補強を目的として、その外側に被覆層を有する形態、繊維層を有する形態、および/または複数のファイバを束ねた形態で、種々の用途に供することができる。被覆工程は、例えばファイバ素線に被覆を設ける場合では、ファイバ素線の通る穴を有する対向したダイスにファイバ素線を通し、対向したダイス間に溶融した被覆用の樹脂を満たし、ファイバ素線をダイス間を移動させることで被覆されたファイバを得ることができる。被覆層は可撓時に内部のファイバへの応力から保護するため、ファイバ素線と融着していないことが望ましい。さらにこの時、溶融した樹脂と接することでファイバ素線に熱的ダメージを加わるので、極力ダメージを押さえるような移動速度や低温で延伸できる樹脂を選ぶことも望ましい。この時、被覆層の厚みは被覆材の物性値や素線の引き抜き速度、被覆層の冷却温度による。その他にも、光学部材に塗布したモノマーを重合させる方法やシートを巻き付ける方法、押し出し成形した中空管に光学部材を通す方法等が知られている。
【0060】
得られたファイバは、被覆した後に、プラスチック光ファイバケーブルとするのが好ましい。被覆の形態として、被覆材とプラスチック光ファイバ素線の界面が全周にわたって接して被覆されている密着型の被覆の形態、被覆材とプラスチック光ファイバ素線の界面に空隙を有するルース型被覆の形態がある。ルース型被覆では、例えば、コネクターとの接続部などにおいて被覆層を剥離した場合、その端面の空隙から水分が浸入して長手方向に拡散されるおそれがあるため、通常は密着型が好ましい。
しかし、ルース型の被覆は、被覆と素線が密着していないので、ケーブルにかかる応力や熱をはじめとするダメージの多くを被覆材層で緩和させることができる。素線にかかるダメージを軽減させることができるので、使用目的によっては好ましく用いることができる。水分の伝播については、空隙部に流動性を有するゲル状の半固体や粉粒体を充填すると、端面からの水分伝播を防止できる。さらに、これらの半固体や粉粒体が、耐熱や機械的機能の向上などの水分伝播防止と異なる機能を併せ持つようにすると、高い性能の被覆を形成できる。
ルース型の被覆を行うには、クロスヘッドダイの押出し口ニップルの位置を調整し、減圧装置を加減することで空隙層を作製することができる。空隙層の厚みは前述のニップル厚みと空隙層を加圧/減圧することで調整可能である。
また、本発明によって得られる光ファイバを用いたケーブルは、軸ずれに対して従来の光ファイバに比べて許容度が高いため突き合せによる接合でも用いることができるが、端部に接続用光コネクタを用いて接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタとしては一般に知られている、PN型、SMA型、SMI型などの市販の各種コネクタを利用することも可能である。
【0061】
本発明の光学部材としての光ファイバ、および光ファイバケーブルを用いて光信号を伝送するシステムには、前述の発光素子の他、種々の受光素子、光スイッチ、光アイソレータ、光集積回路、光送受信モジュールなどの光部品を含む光信号処理装置等で構成される。また、必要に応じて他の光ファイバなどと組合わせてもよい。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」,などを参考にすることができる。前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線、車両や船舶などの内部配線、光端末とデジタル機器、デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LAN等をはじめとする、高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。
【0062】
さらに、特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号等の各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号等の各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号等の公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号等の各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号等に記載の光信号処理装置;特開2001−86537号等に記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号等に記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号等の各公報に記載のマルチファンクションシステム;やIEICE TRANS. ELECTRON., VOL. E84−C, No.3, MARCH 2001, p.339−344「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3, No.6, 2000 476頁〜480ページ「光シートバス技術によるインタコネクション」に記載されたシステムなどを参考に、各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを使用した、より高度な光伝送システムを構築することができる。
以上の光伝送用途以外にも照明、エネルギー伝送、イルミネーション、各種センサなどの分野にも用いることができる。
【0063】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0064】
[実施例1]
予定するプリフォームの外径に対応する内径を有する充分な剛性を持った内径22mmおよび長さ600mmの円筒状の重合容器に、2種類のモノマー(イソボルニルメタクリレート(IBXMA)およびメタクリル酸2H−ヘキサフルオロ−2−プロピル(6FM)(両者とも水分を1000ppm以下に除去したもの))の混合溶液(質量比:IBXMA/6FM=1/1)を所定量注入した。重合開始剤としてジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)をモノマー混合溶液に対して0.5質量%、連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタンをモノマー混合溶液に対して0.62質量%配合した。上記モノマー混合溶液の注入された重合容器を60℃湯浴中に入れ、震盪を加えながら2時間予備重合を行った。その後、該重合容器を65℃下にて水平状態(円筒の高さ方向が水平となる状態)に保持し、3000rpmにて回転させながら3時間加熱重合した。その後、90℃で24時間の熱処理し、上記共重合体からなる円筒管を得た。
【0065】
次に、該円筒管の中空部に、コア部の原料である2種類のモノマー(イソボルニルメタクリレート(IBXMA)およびメタクリル酸2H−ヘキサフルオロ−2−プロピル(6FM)(両者とも水分を1000ppm以下に除去したもの))の混合溶液(質量比:IBXMA/6FM=1/1)と、屈折率調整成分としてジブチルフタレートをモノマー混合溶液に対して10質量%混合した溶液とを、精度0.2μmの四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過しつつ、濾液を直接注入した。重合開始剤としてジ−t−ブチルパーオキシドをモノマー混合溶液に対し0.016質量%、連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタンをモノマー混合溶液に対し0.27質量%配合した。この混合溶液等を注入した該円筒管を、該円筒管外径に対し9%だけ広い内径を持つガラス管内に挿入した状態で、加圧重合容器に垂直に静置した。その後、加圧重合容器内を窒素雰囲気に置換した後、0.1Mpaまで加圧し、90℃で、48時間加熱重合した。その後、0.4Mpaまで加圧し、120℃で、24時間加熱重合および熱処理を行い、プリフォームを得た。該プリフォームの重量平均分子量は10万6000であり、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、2.1であった。
【0066】
得られたプリフォームには、重合完了時に体積収縮による気泡の混入はなかった。このプリフォームを230℃の熱延伸により線引きを行い、直径約700〜800μmのプラスチック光ファイバを製造した。延伸工程において、プリフォームには気泡の発生は観察されず、安定して300mのファイバを得ることができた。得られたファイバの伝送損失値をInGaP量子井戸を有するDVD用LD(発振波長658nm)を光源として測定したところ、波長658nmで160dB/km、波長850nmで1250dB/kmであった。このファイバを75℃、90%の条件で一昼夜放置してから取り出し、光伝送特性を測定した。吸湿に基づく損失増は850nmで50dB/km以下であった。次に該ファイバの外側をポリエチレンで厚み0.35mmの一次被覆を行い、さらにカーボンを3%含有したポリエチレンで厚み0.45mmの2次被覆を行い被覆ファイバを得た。それらについての曲げ損失試験を行った。特開平7−244220号公報に記載の実験方法によって曲げ試験を実施した。実験条件は、マンドレルの直径60mmで、該ファイバを該マンドレルに90度に1回の曲げを与えロス分を測定した。該ロスの増大の最大値を表1に併せて記載した。
【0067】
[実施例2〜8および比較例1〜3]
クラッド、コアの重合組成物中のモノマーおよび屈折率調整成分の種類、量(比)を表1のように変更し、それ以外は実施例1と同様な操作を行い、ファイバを得、実施例1と同様な評価を行った。その結果を表1に合わせて示す。なお、重合開始剤および連鎖移動剤の種類は変更せず、量だけを、併用するモノマーの種類および組成に応じて適宜変更し、各々生成するポリマーの重量平均分子量が10万前後になるようにした。
【0068】
【表1】
Figure 2004212722
【0069】
【化9】
Figure 2004212722
【0070】
[実施例9]
(PVDFパイプ作製)
変性ポリフッ化ビニリデン(変性PVDF)(呉羽化学製KF−#850;融点178℃)を、120℃で中空円筒形状(外径19mm、内径18mm(厚み0.5mm))に溶融押出ししたPVDFパイプ(長さ600mm)を作製した。
【0071】
(回転重合による、アウターコア作製)
つぎに、このパイプの片端を同じPVDFで底付けし、内径21mmの円筒状試験管に挿入し、該PVDFパイプ中に、重合性組成物(2種類のモノマー(イソボルニルメタクリレート(IBXMA)およびメタクリル酸メチル(両者とも禁止剤、水分を1000ppm以下に除去したもの))の溶液(質量比:IBXMA/MMA=2/8)と、重合開始剤としてジメチル2,2−アゾビスイソブチレートをモノマー混合溶液に対し0.5質量%、連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタンをモノマー混合溶液に対し0.6質量%配合した混合溶液を精度0.2μmの四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過した溶液)に添加した。該容器を減圧下において5分間超音波脱気した後、シリコン栓で密封し、60℃の湯浴中で振とうしながら約2時間予備重合反応させた。次いで、60℃の熱風高温槽内で円筒状試験管を水平状態に保持しつつ、長手方向を中心軸に3000rpmで回転させ、反応液を遠心力で試験管内壁に保持した状態で1時間反応せしめ、次いで70℃に昇温し、さらに4時間反応させた。さらに槽内温度を90℃に上げ、24時間静置して、クラッド(変性PVDF)付Poly(IBXMA−co−MMA)アウターコアを得た。
【0072】
(界面ゲル重合によるインナーコア作製)
次に、試験管から上記円筒状の中空管を取り出し、90℃の恒温槽にて予熱せしめた。一方、先ほどと同様な方法で精製した2種類のモノマー(イソボルニルメタクリレート(IBXMA)およびメタクリル酸メチル、重合開始剤としてジt−ブチルパーオキシドをモノマー混合溶液に対し0.016質量%、連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタンをモノマー混合溶液に対し0.27質量%、さらに屈折率調整剤として硫化ジフェニルを混合モノマーに対して、10質量%計量して混合後、精度0.2μmの四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過しながら、予め90℃に予熱しておいたクラッド付アウターコア内に注入した。該容器を減圧下において5分間超音波脱気した後、このクラッド付アウターコアを内径24mmのガラス管に挿入し、加圧重合容器に垂直に静置させ密閉した。加圧重合容器内の空気を窒素で充分置換して窒素雰囲気とした後、0.1MPaまで窒素で加圧した。この加圧重合容器を100℃に昇温し、この状態のまま48時間反応せしめ、次いで加圧量を0.8Mpaに増加させ、120℃に昇温して24時間加熱重合および熱処理を行った。重合完了後、加圧量を0.1Mpaに保持したまま0.01℃/minの冷却速度にてプリフォームのコア部Tg以下となる80℃まで降温した後にプリフォームを得た。
得られたプリフォームには、重合完了時に体積収縮による気泡の混入はなかった。また、得られたファイバのガラス転移温度はコア中心部で90℃、ファイバ外周部で115℃であった。
【0073】
(延伸)
このプリフォームを230℃の熱延伸により線引きを行い、中心直径500μmのプラスチック光ファイバを製造した。延伸工程において、プリフォームには気泡の発生は観察されず、安定して300mのファイバを得ることができた。
【0074】
(一次被覆)
該ファイバ素線を、低密度ポリエチレン(LDPE)(日本ポリオレフィン社製J−REX07A;流動開始温度106℃)を用い、クロスヘッドダイを備えた被覆装置にて120℃で被覆して、被覆層が芯線に密着した中心外径1.2mm(被覆厚み0.35mm)のファイバを得た。
【0075】
(二次被覆)
《難燃性被覆用組成物の調整》
スクリューパターンを、長さ1Dの逆送りニーディングディスク(RD)、ニュートラルニーディングディスク(ND)、正送りニーディングディスク(FD)の3種が押出し方向にFD/FD/ND/ND/RDとなるように5個組合せたセットをスクリューユニット間に4セット配置した、ベルストルフ社製2軸押出機(スクリュー径40mm、スクリューL/D=40)に、流動開始温度が103℃、メルトフローレート(JIS K 6922−2)が80g/10min、密度が0.916g/cmのPEと、平均粒径2μm、99%粒径5μmの水酸化マグネシウムが組成異物中の含有量が50質量%となるようにし、別々の定量フィーダにて押出機へ8kg/hrの量を供給した。スクリュー回転数100rpm、ベント圧力0.85気圧、押出機出口温度70℃でφ5mm×10穴のノズルから押出した樹脂ストランドを冷却切断して、径が2mm、長さが2〜3mmの樹脂ペレットを得た。
【0076】
《難燃性樹脂組成物の被覆》
この樹脂組成物を、被覆ラインのクロスダイヘッドを変えた被覆押し出し機(ダイス直径6.7mm、ニップル直径4.5mm)を用いた被覆ラインにより、1次被覆ケーブルの搬送速度を20m/minとして被覆を行い、中心外径2mm、厚みが0.4mmの難燃性の2次被覆層を有する被覆ケーブルを得た。こうして得られた光ファイバケーブルの断面形状を図1に示す。
得られた光ファイバケーブル10は、中心から、インナーコア部12、アウターコア部14、クラッド部16、一次被覆層18および二次被覆層20からなり、各々の厚みは0.3mm、0.085mm、0.015mm、0.35mmおよび0.4mmであった。
【0077】
得られたファイバの伝送損失値をLDを光源として測定したところ、波長658nmにて170dB/km、850nmにて2700dB/kmであった。また、得られたファイバ100mの伝送帯域を測定したところ、1GHzであった。そして、得られたファイバを13mの長さに切り取り、10mのファイバ部位を製小型環境試験機SH−240(タバイエスペック(株)社製)に静置し、環境試験機外部には両端から2mおよび1mの長さのファイバをそれぞれメレスグリオ(株)製650nmバンドパスフィルタを挿入された安藤電気(株)製白色光源(AQ4303B)とアンリツ(株)光パワーメータ(ML910B)にアンリツ製FCコネクタ(MA9013A)にて接合した。その後、恒温恒湿槽の温度を70℃−95%相対湿度に設定し、500時間後の光強度の減衰量を測定した所、1dBであった。次に該被覆ファイバについての曲げ損失試験を行った。特開平7−244220号公報に記載の実験方法によって曲げ試験を実施した。実験条件は、マンドレルの直径60mmで、該ファイバを該マンドレルに90度に1回巻きつけてロス分を測定した。該ロスの増大の最大値は0.07dBであった。
【0078】
[実施例10]
アウターコア作製時の厚みを2mmにした以外は、実施例9と同じ材料、方法にて、下記の断面形状を有する光ファイバケーブル(アウターコア部の厚みがないもの)を得た。得られた光ファイバケーブルの断面形状を図2に示す。
得られた光ファイバケーブル10’は、中心から、インナーコア部12’、クラッド部16’、一次被覆層18’および二次被覆層20’からなり、各々の厚みは0.47mm、0.015mm、0.35mmおよび0.4mmであった。得られた被覆つきファイバについて、実施例9と同様の評価を行い、その結果を表2に示す。
【0079】
[実施例11]
二次被覆層を形成せず、各部および層の厚みを変えた以外は、実施例9と同じ材料および方法にて、下記の断面形状を有する光ファイバケーブル(一次被覆品)を得た。
得られた光ファイバケーブル10’’は、中心から、インナーコア部12’’、アウターコア部14’’、クラッド部16’’および一次被覆層18’’からなり、各々の厚みは0.50mm、0.085mm、0.015mmおよび0.725mmであった。
得られた被覆つきファイバについて、実施例9と同様の評価を行い、その結果を表2に示す。
【0080】
[実施例12,13]
実施例9および10において、重合性モノマーのMMAを全重水素化MMA(MMA−d8)に、屈折率調整剤のジフェニルスルフィドを重水素化ブロモベンゼン(BB−d5)に代えた以外は、同じ材料、方法にて同様の層構成(厚み)を有する光ファイバケーブルを得た。得られた被覆つきファイバについて、実施例9と同様の評価を行い、その結果を表2に示す。
【0081】
[実施例14,15]
実施例9および10において、重合性モノマーのMMAを全重水素化MMA(MMA−d8)に、屈折率調整剤のジフェニルスルフィドをDPS誘導体(D3)に代えた以外は、同じ材料、方法にて同様の層構成(厚み)を有する光ファイバケーブルを得た。得られた被覆つきファイバについて、実施例9と同様の評価を行い、その結果を表2に示す。
【0082】
[実施例16,17]
実施例9および10において、MMAを全重水素化MMA(MMA−d8)、IBXMAをIBXMA(D)に置換されたもの)に、および屈折率調整剤のジフェニルスルフィドをDPS誘導体(D3)に代えた以外は、同じ材料、方法にて同様の層構成(厚み)を有する光ファイバケーブルを得た。得られた被覆つきファイバについて、実施例9と同様の評価を行い、その結果を表2に示す。
【0083】
[比較例4]
実施例9において、重合性モノマーをMMAのみとする以外は、同じ方法にて同様の層構成(厚み)を有する光ファイバケーブルを得た。得られた被覆つきファイバについて、実施例9と同様の評価を行い、その結果を表2に示す。なお、光強度の減衰量を測定する条件は、恒温恒湿槽の温度を70℃−95%相対湿度に設定し、100時間後に測定した。
【0084】
【表2】
Figure 2004212722
【0085】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば、LDを光源とした場合に特に良好な光伝送能を有する、伝送損失および湿熱による伝送損失の悪化が軽減された、さらに機械特性も改良されバランスのとれた光学部材、および該光学部材を良好な生産性で製造可能な重合性組成物および製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で作製した光ファイバケーブルの断面形状の概略図である。
【図2】実施例で作製した光ファイバケーブルの断面形状の概略図である。
【図3】実施例で作製した光ファイバケーブルの断面形状の概略図である。
【符号の説明】
10、10’、10’’ 光ファイバケーブル
12、12’、12’’ (インナー)コア部
14、14’’ アウターコア部
16、16’、16’’ クラッド部
18、18’、18’’ 一次被覆層
20、20’ 二次被覆層

Claims (9)

  1. 赤色半導体レーザーを光源とする光通信用の光学部材の製造に用いる重合性組成物であって、下記一般式(1)で表される化合物を含有する重合性モノマーおよび重合開始剤を含む光学部材用重合性組成物。
    一般式(1)
    Figure 2004212722
    (式中、Xは水素原子(H)または重水素原子(D)を表し、Xは同一でも異なっていてもよい。YはH、D、CH基またはCD基を表し、Rは炭素原子数7〜20個の脂環式炭化水素基を表す。)
  2. 前記重合性モノマーが、さらに下記一般式(2)で表される化合物を含有する請求項1に記載の光学部材用重合性組成物。
    一般式(2)
    Figure 2004212722
    (式中、XはHまたはDを表し、Xは同一でも異なっていてもよい。YはH、D、CH基またはCD基を表し、Rは1〜15個のフッ素置換基を有する炭素原子数1〜7個のフッ化アルキル基を表す。)
  3. 前記赤色半導体レーザーの光波長が645〜680nmである請求項1または2に記載の光学部材用重合性組成物。
  4. さらに前記重合性モノマーとは異なる屈折率を有する化合物を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学部材用重合性組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合性組成物を重合する工程を含む、赤色半導体レーザーを光源とする光通信用の光学部材の製造方法。
  6. 請求項4に記載の重合性組成物を重合して、屈折率の大きさに分布を有する屈折率分布領域を形成する工程を含む、赤色半導体レーザーを光源とする光通信用の光学部材の製造方法。
  7. 前記重合性組成物を界面ゲル重合法により重合する請求項5または6に記載の製造方法。
  8. 請求項5〜7のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された、赤色半導体レーザーを光源とする光通信用光学部材。
  9. 請求項8に記載の光通信用光学部材と、赤色半導体レーザーを光源とする光受信手段とを有する光通信システム。
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