JP2004212712A - プラスチック光ファイバケーブル及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐久性に優れたプラスチック光ファイバケーブルを製造する。
【解決手段】脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとMMAとを重合してクラッド部11bを作製する。中心に向かって高屈折率となるコア部11aをクラッド部と同じ重合性モノマーを用いて界面ゲル重合法で作製し、プラスチック光ファイバ11を得る。水酸化マグネシウムを40%を含むポリエチレンで、クラッド部外周面11cに厚さT2が500μm以上の被覆層20を溶融押出し法で形成してプラスチック光ファイバ15を製造する。
【選択図】 図2
【解決手段】脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとMMAとを重合してクラッド部11bを作製する。中心に向かって高屈折率となるコア部11aをクラッド部と同じ重合性モノマーを用いて界面ゲル重合法で作製し、プラスチック光ファイバ11を得る。水酸化マグネシウムを40%を含むポリエチレンで、クラッド部外周面11cに厚さT2が500μm以上の被覆層20を溶融押出し法で形成してプラスチック光ファイバ15を製造する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック光ファイバケーブルおよびその製造方法に関し、さらに詳しくは耐熱性に優れ、被覆工程において、熱の影響を受けにくいアクリル樹脂系のプラスチック光ファイバを有するプラスチック光ファイバケーブルおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック光ファイバ(以下、光ファイバと称する場合もある)は、石英系の光ファイバと比較して、製造および加工が容易であること、および人体への突き刺し災害による危険性の低さなどの観点から、伝送損失の大きさが問題とならない程度の短距離光通信媒体として注目されてきている。特に家庭や車載用途で注目されてきている。
【0003】
プラスチック光ファイバは、一般的には、重合体をマトリックスとする有機化合物からなる芯(本明細書において「コア部」と称する)と、コア部と屈折率が異なる(一般的には低屈折率の)有機化合物からなる外殻(本明細書において「クラッド部」と称する)とから構成される。特に、中心から外側に向かって屈折率の大きさに分布を有するコア部を備えた屈折率分布型プラスチック光ファイバは、伝送する光信号の帯域を大きくすることが可能なため、高い伝送容量を有する光ファイバとして最近注目されている(例えば、特許文献1および2参照。)。この様な屈折率分布型光学部材の製法の一つに、界面ゲル重合を利用して、光学部材母材(本明細書において、「プリフォーム」と称する)を作製し、その後、前記プリフォームを延伸する方法が提案されている。
【0004】
ところで、光ファイバには、前述した様に、高帯域で伝送損失が小さいことが要求されるとともに、耐久性をあげるためには被覆厚を大きくすることおよび耐熱性にも優れた材料であることが要求される。例えばメタクリル酸シクロヘキシルとメタクリル酸メチルからなる共重合体などが提案されているが、吸湿性を低減するためには、メタクリル酸シクロヘキシルを比較的多量に使用する必要がある等、使用範囲が制限される。さらに、その結果、メタクリル酸系樹脂の耐熱性が低下することになり、改善を要する点がある。一方、プラスチック構造中の水素をフッ素等のハロゲンや重水素に置換することが提案されている。しかし、フッ素含有モノマーの単独重合体は、材料安定性または密着性などにおいて不都合が生じる場合があり、光ファイバに要求される性能の全てを備えた材料ではない。なお、素材の選択によって耐熱性を向上させるものとして、炭素原子を介してアルキル基を導入したモノマーからなる重合体が示されているが(例えば、特許文献3参照。)、これらのガラス転移温度(Tg)は、ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと称する)に比して高くないため(例えば、非特許文献1参照。)、十分な耐熱性を有しないと推測される。さらに、これらはC−H結合のHをClやBrという大きな原子で置換しており、この様な置換は反応性の低下を招くため好ましくない。
【0005】
また、プラスチック光ファイバは、コア部とクラッド部とからなる導光路のみで用いられることもある。しかしながら、光ファイバのみで光学部材として用いると、光ファイバに傷が付いて機械的強度の低下を招いたり、吸水して光学特性の劣化を招く場合もある。そこで、通常は光ファイバに被覆層を設けた光学部材(以下、本明細書ではプラスチック光ファイバケーブルと称する)として用いられる。
【0006】
【特許文献1】
特開昭61−130904号公報 (第3−4頁)
【特許文献2】
国際公開第93/08488号パンフレット
【特許文献3】
特開平8−220349号公報 (第3−8頁)
【非特許文献1】
H.Kawai et al., SPIE Vol .896 Replication and Molding of Optical Components, 69−78(1988)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、良好な伝送性能を有し、かつ耐久性、耐熱性が改善されるなど、種々の特性がバランスよく改良されたプラスチック光ファイバケーブル及びそのプラスチック光ファイバケーブルを良好な生産性で作製可能な重合性組成物、被覆処方および製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する手段は以下の通りである。
本発明のプラスチック光ファイバケーブルは、プラスチックからなるコア部とクラッド部とを有するプラスチック光ファイバケーブルにおいて、前記コア部が少なくとも下記一般式(1)で表わされる化合物を含有する重合性モノマーと、光学部材用重合性組成物とから重合され、被覆層の厚さが500μm以上である。
【0009】
【化3】
(式中、X1 は水素原子(H)、または重水素原子(D)を表し、2つのX1 は同一でも異なっていてもよい。Y1 はH,D,CH3 基,CD3 基,ハロゲン原子またはCF3 基を表わす。また、R1 は炭素数7〜20個の脂環式炭化水素基を表す。)
【0010】
プラスチック光ファイバケーブルが、広い伝送帯域を得るために、前記コア部の中心部から外周方向に向けて屈折率が減少するように屈折率分布を有する構造であることが好ましい。このとき屈折率分布は徐々に屈折率が減少するようなものでも、マルチステップインデックスといわれる階段状に屈折率が減少するもののどちらでも用いることができる。ただし、より広い帯域を得るには屈折率分布は徐々に屈折率が減少するものが特に好ましい。なお、コア部に屈折率分布を形成した場合は屈折率調整のための屈折率調整剤の添加や共重合体の共重合比によって、コア部の中心と外周で素材の機械的特性が変化するので、その影響を薄める意味でも本発明は有効である。また、前記被覆層に金属水酸化物を含有する層を少なくとも1層有することが好ましい。
【0011】
本発明のプラスチック光ファイバケーブルの製造方法は、プラスチックからなるクラッド部とコア部とが少なくとも下記一般式(1)で表わされる化合物を含有する重合性モノマーを重合してなる樹脂とからなるプラスチック光ファイバを被覆してなるプラスチック光ファイバケーブルの製造方法において、被覆層の厚さが500μm以上となるように被覆する。また、前記被覆層として金属水酸化物を含有する層を被覆する工程を含む工程を有することが好ましい。
【0012】
【化4】
(式中、X1 は水素原子(H)、または重水素原子(D)を表し、2つのX1 は同一でも異なっていてもよい。Y1 はH,D,CH3 基,CD3 基,ハロゲン原子またはCF3 基を表わす。また、R1 は炭素数7〜20個の脂環式炭化水素基を表す。)
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。まず、本発明の光ファイバ用重合性組成物について説明する。本発明に用いられる光ファイバ用重合性組成物は、下記一般式(1)で表される重合性モノマー(A)が用いられ、場合によっては重合開始剤と、該重合性モノマーとは異なる屈折率を有する化合物とを含有する。本発明の光学部材用重合性組成物は、光学部材、特に、屈折率の大きさに分布を有する屈折率分布型光学部材の製造に用いられる。
【0014】
【化5】
【0015】
前記一般式(1)(化5参照)で表される重合性モノマー(A)は、R1 が炭素数7〜20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートである。(式中、X1 は水素原子(H)、または重水素原子(D)を表し、2つのX1 は同一でも異なっていてもよい。Y1 はH,D,CH3 基,CD3 基,ハロゲン原子またはCF3 基を表わす。また、R1 は炭素数7〜20個の脂環式炭化水素基を表す。)具体的な例としては、(メタ)アクリル酸(ビシクロ〔2.2.1〕ヘプチル−2)、(メタ)アクリル酸1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−メチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジメチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸3−メチル−5−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5,8−トリエチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジメチル−8−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−5−イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−1−イルメチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−2,6,6−トリメチル−ビシクロ〔3.1.1〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸3,7,7−トリメチル−4−ヒドロキシ−ビシクロ〔4.1.0〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、アクリル酸イソボルニ、メタアクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フエンチル、(メタ)アクリル酸2,2,5−トリメチルシクロヘキシルなどが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステルの中でも、メタクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フエンチルなどが好ましく、メタクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニルが特に好ましい。
【0016】
前記重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸、あるいはその酸塩化物を、R1 OHで表される脂環式炭化水素・モノオールでエステル化すること、(メタ)アクリル酸をカンフェンなどの脂環式炭化水素前駆体とを硫酸、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒でエステル化することによって製造することができる(なお、R1 は前記一般式(1)中のR1 と同義である)。また、(メタ)アクリレートのC−Y1 のY1 は、水素原子(H)やメチル基(CH3 )であることが好ましい。
【0017】
光伝送に用いる光源波長によってはC−H結合に起因する吸収が伝送の阻害となるため、この様な場合は、(メタ)アクリル基のC−H(前記一般式(1)中、X1 )の水素原子(H)も重水素原子(D)に置換されているほうが好ましく、その置換率は95%以上100%未満であることがより好ましい。さらに前記一般式(1)中のY1 の水素原子(H)に変えて重水素原子(D)や重水素化メチル基(CD3 )に置換することが好ましい。さらには、側鎖のR1 のC−Hの水素原子(H)を重水素原子(D)に置換してもよい。
【0018】
本発明の光学部材用重合性組成物は、前記重合性モノマー(A)を必須成分として含んでいればよい。前記重合性モノマー(A)は全重合性モノマー中、5質量%以上、好ましくは7.5質量%以上、更に好ましくは10質量%含んでいればよい。さらに本明細書において「主成分として含む」とは、その重合体の光学的性能を損なわない限りにおいて、他のモノマーを含んでいてもよいことを意味する。
【0019】
なお、本発明に用いられる重合性ポリマーについて、更に説明する。PMMAは、光学特性に優れているがポリマー骨格中にエステル結合(−COO−)が含まれており、そのエステル結合は、親水性であるため、飽和吸水率が約2%と大きく光ファイバとして使用中に吸水し、光学特性や機械的強度の劣化が生じてしまう場合がある。そこで、本発明ではエステル結合(−COO−)の酸素原子側に親油性である炭化水素基、特に脂環式炭化水素基を結合させることによりポリマーの吸水率を低下させている。また、脂環式炭化水素基を置換することで、隣接するアクリル酸ポリマーのエステル結合と分子間相互作用が大きくなるため、耐熱性が向上したり、機械的強度が上昇する効果も得られる。
【0020】
本発明に使用可能な前記重合性モノマー(A)以外の重合性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル系化合物として、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸nーブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル等が挙げられる。また、スチレン系化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。さらに、ビニルエステル類として、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等が挙げられる。さらには、マレイミド類として、N−n−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この中でもメタクリル酸メチルが好ましい。これらのモノマー中の水素原子も重水素原子に置換されているのが好ましい。
【0021】
本発明の重合性組成物は、前記重合性モノマー(A)およびそれ以外の重合性モノマーの重合を開始させる。重合開始剤としては、用いるモノマーや重合方法に応じて適宜選択することができる。具体的には、過酸化ベンゾイル(BPO)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−t−ブチルパーオキシド(PBD)、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物等が挙げられる。または、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジーt−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は2種類以上を併用してもよい。
【0022】
本発明の重合性組成物は、前記重合性モノマーの連鎖移動剤を含有するのが好ましい。前記連鎖移動剤は、主に重合体の分子量を調整するために用いられる。重合性組成物がそれぞれ連鎖移動剤を含有していると、重合性モノマーの重合速度および重合度を前記連鎖移動剤によってより制御することができ、重合体の分子量を所望の分子量に調整することができる。例えば、本発明の重合性組成物を重合した後、延伸により線引きして、光伝送体の形態にする場合は、分子量を調整することによって延伸時における機械的特性を所望の範囲とすることができ、生産性の向上にも寄与する。前記連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択することができる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
【0023】
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(例えば、チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いるのが好ましく、中でも、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子(H)が、重水素原子(D)やフッ素原子(F)で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、前記連鎖移動剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
本発明の重合性組成物は、屈折率調整成分を含有していてもよい。本発明の重合性組成物に屈折率調整成分を含有させ、重合の際に、重合の進行方向に沿って、屈折率調整成分の濃度に傾斜を持たせることによって、屈折率分布型の光学部材を作製することができる。屈折率分布型の光学部材は、広い伝送帯域を得ることができる。このような屈折率分布型光学部材は、コア部の中心部から外周方向に向けて徐々に屈折率が減少するものでも、マルチステップインデックスといわれる階段状に屈折率が減少するもののどちらも用いることができる。ただし、より広い伝送帯域を得るためには、屈折率分布が徐々に減少するもの(グレーデッドインデックス型)が特に好ましい。なお、コア部に屈折率分布を形成した場合は、屈折率調整のために屈折率調整剤の添加や、共重合体の共重合比によって、コア部の中心と外周とで素材の機械的特性が変化するので、その影響を薄める意味でも本発明は有効である。
【0025】
屈折率調整成分は、併用する前記重合性モノマーの屈折率と異なる成分を意味し、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。その屈折率差は、0.005以上であるのが好ましい。屈折率調整成分は、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して、屈折率が高くなる性質を有するものを用いるのが好ましい。また、屈折率調整成分は重合性化合物であってもよく、重合性化合物が屈折率調整成分の場合は、これを共重合成分として含む共重合体がこれを含まない重合体と比較して、屈折率が上昇する性質を有するものを用いるのが好ましい。上記性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、屈折率調整成分として用いることができる。例えば、コア部形成用重合性組成物に屈折率調整成分を含有させ、コア部を形成する工程において界面ゲル重合法により重合の進行方向を制御し、屈折率調整成分の濃度に傾斜を持たせ、コア部に屈折率調整成分の濃度分布に基づく屈折率分布構造を形成するのが好ましい(以下、屈折率の分布を有するコア部を「屈折率分布型コア部」という場合がある)。屈折率分布型コア部を形成することにより、得られる光学部材は広い伝送帯域を有する屈折率分布型プラスチック光学部材となる。
【0026】
前記屈折率調整成分としては、低分子化合物として、例えば、ジブチルフタレート、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジルnブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ビフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)、硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体などが挙げられる。硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体については、下記化6中のD1〜D11として具体的に示す化合物の中から適宜選ばれる。中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOおよび硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体が好ましい。なお、これらの化合物中に存在する水素原子を重水素原子に置換した化合物も広い波長域での透明性を向上させる目的で用いることが出来る。また、重合性化合物として、例えば、トリブロモフェニルメタクリレート等が挙げられる。屈折率調整成分として重合性化合物を用いる場合は、マトリックスを形成する際に、重合性モノマーと重合性屈折率調整成分とを共重合させるので、種々の特性(特に光学特性)の制御がより困難となるが、耐熱性の面では有利となる可能性がある。
【0027】
【化6】
【0028】
屈折率調整剤の濃度および分布を調整することによって、光学部材の屈折率を所望の値に変化させることができる。その添加量は、用途および組み合わされる部材に応じて適宜選ばれる。屈折率上昇材(屈折率調整剤)は、複数種類添加してもよい。
【0029】
本発明に用いられる重合性組成物に熱および/または光等が供与されると、例えば、重合開始剤からラジカル等が発生し、前記重合性モノマーの重合が開始される。本発明の重合性組成物が屈折率調整成分を含んでいる場合は、例えば、後述の界面ゲル重合法のように、重合の進行方向を制御して、屈折率調整成分の濃度に傾斜を持たせることによって、もしくは屈折率調整成分を含んでいない場合も、前記重合性モノマーの共重合比に傾斜を持たせることによっても、屈折率分布構造を形成することができる。また、重合性モノマーの重合速度および重合度を、重合開始剤および所望により添加される連鎖移動剤によって制御し、重合体の分子量を所望の分子量に調整することができる。連鎖移動剤によって製造される重合体の分子量(好ましくは1万〜100万、より好ましくは3万〜50万)を調整すれば、延伸時における機械的特性を所望の範囲とすることができ、生産性の向上にも寄与する。
【0030】
プラスチック光ファイバは、重合性組成物の重量平均分子量(Mw)が1万〜100万であることが好ましい。分子量が前記範囲より小さいと機械的強度などが低下し、一方、分子量が前記範囲より大きいと加工性が悪くなる。この適正な分子量範囲を選択することで、製品の熱的物性(Tg)と、加熱延伸時の加工性や、機械的強度のそれぞれを満たすことができる。
【0031】
本発明のプラスチック光ファイバケーブルを形成する被覆層の被覆方法は特に限定されないが、溶融押出し法を用いることが好ましい。被覆層の構成は、1層でも良いし、複数の層からなっていても良い。複数層からなる場合は、各層の素材や添加物を変えて、後述の難燃性付与をはじめ、強度向上、帯電防止などの様々な機能を持たせることも可能である。
【0032】
以下に、本発明の製造方法を、コア部とクラッド部とを有する屈折率分布型プラスチック光ファイバの製造方法の実施形態について説明する。本実施形態は、主として2種類あるが、以下の実施形態に限定されるわけではない。まず、第一の実施形態は、クラッド部用重合性組成物を重合してクラッド部となる円筒管を作製する第1の工程と、前記円筒管の中空部でコア部形成用重合性組成物を界面ゲル重合させることによりコア部となる領域を形成し、コア部およびクラッド部に各々対応する領域からなるプリフォームを作製する第2の工程と、得られたプリフォームを所望の形態に加工する第3の工程とを含むプラスチック光学部材の製造方法である。
【0033】
第二の実施形態は、クラッド部に相当する、例えばポリフッ化ビニリデン樹脂のような含フッ素樹脂からなる円筒状パイプを作製する第1の工程と、前記フッ素樹脂パイプの中空部内壁をアウターコア用重合性組成物を回転重合法で2層からなる同心円筒状パイプを作製する第2の工程と、前記円筒管のさらに中空部をインナーコア部形成用重合性組成物を界面ゲル重合させることによりインナーコア部となる領域を形成し、クラッド部、アウターコア部およびインナーコア部に各々対応する領域からなるプリフォームを作製する第3の工程と、および得られたプリフォームを所望の形態に加工する第4の工程とを含むプラスチック光学部材の製造方法である。後者の実施形態においては、2層からなる同心円筒状パイプを作製する際、上記のように段階的ではなく、フッ素樹脂とアウターコア用重合組成物の重合体を溶融共押し出しの方法の一段階で作製する方法もある。
【0034】
前記クラッド部あるいはアウターコア部形成用重合性組成物は、重合性モノマーと、該重合性モノマーの重合を開始させる重合開始剤、および連鎖移動剤を含有する。次に、前記コア部あるいはインナーコア部形成用重合性組成物は、重合性モノマーと、該重合性モノマーの重合を開始させる重合開始剤、連鎖移動剤、および所望により前記モノマーの屈折率と異なる屈折率を有する化合物(屈折率調整成分)を含有する。前記クラッド部/コア部の組み合わせ、あるいは、アウターコア部/インナーコア部の組み合わせ形成用の重合性組成物に用いられる重合性モノマーは、等しいのが好ましい(但し、その組成比については同一でなくてもよく、また副成分については等しくなくてもよい)。
【0035】
前記クラッド部およびコア部形成用重合性組成物において、各成分の含有割合の好ましい範囲は、その種類に応じて異なり一概に定めることはできないが、一般的には、重合開始剤は、重合性モノマーに対して0.005質量%〜0.5質量%であるのが好ましく、0.01質量%〜0.5質量%であるのがより好ましい。前記連鎖移動剤は、重合性モノマーに対して0.10質量%〜0.40質量%であるのが好ましく、0.15質量%〜0.30質量%であるのがより好ましい。また、前記コア部形成用重合性組成物において、前記屈折率調整成分は、重合性モノマーに対して1質量%〜30質量%であるのが好ましく、1質量%〜25質量%であるのがより好ましい。
【0036】
前記クラッド部およびコア部形成用重合性組成物の重合して生成するポリマー成分の分子量は、プリフォームを延伸する関係から、重量平均分子量(Mw)で1万〜100万の範囲であることが好ましく、3万〜50万であることがさらに好ましい。さらに延伸性の観点で分子量分布(MWD=重量平均分子量/数平均分子量)も影響する。MWDが大きくなると、極端に分子量の高い成分がわずかでもあると延伸性が悪くなり、場合によっては延伸できなくなることもある。したがって、好ましい範囲としては、MWDが4以下が好ましく、さらには3以下が好ましい。
【0037】
前記クラッド部およびコア部形成用重合性組成物にはそれぞれ、重合時の反応性や光伝送性能を低下させない範囲で、その他の屈折率調整成分を添加することができる。例えば、耐候性や耐久性等を向上させる目的で、耐酸化剤や耐光剤等の安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することが可能となり、伝送距離が向上するので、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として使用することができる。
【0038】
次に、本実施の形態、特に前記第一の実施形態の各工程について詳細に説明する。前記第1の工程では、クラッド部となる中空状(例えば円筒形状)の管を作製する。中空の円筒管の製法としては、例えば国際公報WO93/08488号パンフレットに記載されている様な製造方法が挙げられる。具体的には、前記クラッド部形成用重合組成物を、円筒形状の重合容器あるいはフッ素樹脂よりなるパイプ(さらに外側に円筒形状の容器に入れられたもの)に注入し、該重合容器を回転(好ましくは、円筒の軸を水平に維持した状態で回転)させつつ、前記重合性モノマーを重合させることにより、重合体からなる円筒管を作製することができる。なお、前記重合性モノマーを重合容器に注入する前にフィルターにより濾過して、組成物中に含まれる塵埃を除去するのが好ましい。重合温度および重合時間は、用いるモノマーや重合開始剤によって異なるが、一般的には、重合温度は60℃〜150℃であるのが好ましく、重合時間は5時間〜24時間であるのが好ましい。このときに、特開平8−110419号公報に記載されている様に、原料をプレ重合して原料粘度を上昇させてから行ってもよい。また、重合に使用する容器が回転によって変形してしまうと、得られる円筒管に歪みを生じさせることから、十分な剛性を持つ金属管・ガラス管を用いることが望ましい。
【0039】
前記クラッド部となる円筒管は、第2の工程でコア部の原料となる重合性組成物を注入できるように、底部を有しているのが好ましい。底部は前記円筒管を構成している重合体と密着性および接着性に富む材質であるのが好ましい。また、底部を前記円筒管と同一の重合体で構成することもできる。重合体からなる底部は、例えば、重合容器を回転させて重合する(以下、「回転重合」という場合がある)前もしくは後に、重合容器を垂直に静置した状態で、重合容器内に少量の重合性モノマーを注入し、重合することによって形成することができる。
【0040】
前記回転重合後に、残存するモノマーや重合開始剤を完全に反応させることを目的として、該回転重合の重合温度より高い温度で得られた構造体に加熱処理を施してもよく、所望の中空管が得られた後、未重合の組成物を取り除いてもよい。
【0041】
また、前記第1の工程では、一旦、前記重合性組成物を重合させて重合体を作製した後、押し出し成形等の成形技術を利用して、所望の形状(本実施の形態では一重円筒形状あるいはフッ素樹脂と前記重合性組成物重合体からなる二重(同心)円筒状)の構造体を得ることもできる。
【0042】
前記第2の工程では、前記第1の工程で作製したクラッド部あるいはアウターコア部となる円筒管の中空部に、前記コア部あるいはインナーコア部形成用重合性組成物を注入し、組成物中の重合性モノマーを重合する。それら組成物は、フィルターにより濾過して、組成物に含まれる塵埃を除去するのが好ましい。重合法は重合後の残留物の観点から溶媒等を用いない界面ゲル重合法が特に好ましい。この界面ゲル重合法を用いることで、重合性モノマーの重合は、前記円筒管のゲル効果によって、粘度の高くなった内壁表面から断面の半径方向、中心に向かって進行する。重合性モノマーに前記屈折率調整成分を添加して重合すると、前記円筒管を構成している重合体に対して親和性の高いモノマーが前記円筒管の内壁面に偏在して重合し、外側には屈折率調整成分濃度が低い重合体が形成される。中心に向かうに従って、形成された重合体中の該屈折率調整成分の比率が増加する。このようにして、コア部となる領域内に屈折率調整成分の濃度分布が生じ、この濃度分布に基づいて、連続した屈折率の分布が導入される。
【0043】
上記説明したように、第2の工程において、形成されるコア部となる領域に屈折率の分布が導入されるが、屈折率が互いに異なる部分間は熱挙動も互いに異なるので、重合を一定温度で行うと、その熱挙動の違いからコア部となる領域は、重合反応に対して発生する体積収縮の応答性が変化し、プリフォーム内部に気泡が混入する、もしくはミクロな空隙が発生し、得られたプリフォームを加熱延伸した際に多数の気泡が発生する可能性がある。重合温度が低すぎると、重合効率が低下し、反応終了までに時間がかかってしまい、生産性を著しく損なう。また、重合が不完全となって光透過性が低下し、作製される光ファイバの光伝送能を損なう。一方、初期の重合温度が高すぎると、コア部となる領域の収縮に対して応答緩和できず、気泡発生の傾向が著しい。そのため、モノマーの沸点や生成するポリマーのガラス転移温度(Tg)を勘案しながら、重合温度と後処理温度を調整して行う。但し、後処理温度はポリマーのガラス転移温度(Tg)以上となるように選択する。例えば、典型的なメタクリレート系のモノマーを使用した場合には、重合温度は好ましくは、60℃〜160℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。また、重合収縮に対する応答性を高めるために加圧した不活性ガス中で重合させることも好ましい。さらに、重合前のモノマーを減圧雰囲気で脱水・脱気する事でさらに気泡の発生を低減させることができる。
【0044】
重合温度および重合時間は、用いるモノマーによって異なるが、一般的には、重合温度は60℃〜150℃であるのが好ましく、重合時間は5時間〜72時間であるのが好ましい。具体的には、重合性モノマーとしてイソボルニルメタクリレートを用い、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)を用いた場合は、初期重合温度を100℃〜110℃に48時間〜72時間維持し、その後、120℃〜160℃まで昇温して24時間〜48時間重合するのが好ましく、重合開始剤としてジ−t−ブチルパーオキシドを用いた場合は、初期重合温度を90℃〜110℃に4時間〜48時間維持し、120℃〜160℃まで昇温して24時間〜48時間重合するのが好ましい。なお、昇温は段階的に行っても、連続的に行ってもよいが、昇温にかける時間は短いほうがよい。
【0045】
重合は、加圧状態で行うのが好ましい(以下、加圧状態で行う重合を「加圧重合」という)。加圧重合を行う場合は、前記重合性組成物を注入したクラッド部となる円筒管を、治具の中空部に挿入して、治具に支持された状態で重合を行うのが好ましい。前記治具は、前記構造体を挿入可能な中空を有する形状であり、該中空部は前記構造体と類似の形状を有しているのが好ましい。本実施の形態では、クラッド部となる構造体が円筒管であるので、前記治具も円筒形状であるのが好ましい。治具は、加圧重合中に前記円筒管が変形するのを抑制するとともに、加圧重合が進むに従ってコア部となる領域が収縮するのを緩和可能に支持する。従って、治具の中空部は、前記クラッド部となる円筒管の外径より大きい径を有し、前記クラッド部となる円筒管を非密着状態で支持するのが好ましい。前記治具の中空部は、前記クラッド部となる円筒管の外径に対して0.1%〜40%だけ大きい径を有しているのが好ましく、10%〜20%だけ大きい径を有しているのがより好ましい。
【0046】
前記クラッド部となる円筒管を治具の中空部に挿入した状態で、重合容器内に配置することができる。重合容器内において、前記クラッド部となる円筒管は、円筒の高さ方向を垂直にして配置されるのが好ましい。前記治具に支持された状態で前記クラッド部となる円筒管を、重合容器内に配置した後、前記重合容器内を加圧することができる。窒素等の不活性ガスで重合容器内を加圧し、不活性ガス雰囲気下で加圧重合を進行させるのが好ましい。重合時の加圧の好ましい範囲については、用いるモノマーによって異なるが、重合時の圧は、一般的には0.1MPa〜1.0MPa程度が好ましい。以上の工程を経て、光学部材のプリフォームを得ることができる。
【0047】
第3の工程では、作製されたプリフォームを加工して所望の形態の光学部材を得る。例えば、プリフォームを軸方向に垂直にスライスすれば断面が凹凸を有しない円盤状もしくは円柱状のレンズを得ることができる。また、延伸してプラスチック光ファイバを得る。
【0048】
プラスチック光ファイバは、第3の工程でプリフォームを加熱延伸して作製することができるが、その加熱温度はプリフォームの材質等に応じて、適宜決定することができる。一般的には、180℃〜250℃中の雰囲気で行われることが好ましい。延伸条件(延伸温度等)は、得られたプリフォームの径、所望の光ファイバの径および用いた材料等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、線引張力については、特開平7−234322号公報に記載されている様に、溶融したプラスチックを配向させるために10g以上としたり、特開平7−234324号公報に記載されている様に溶融延伸後に歪みを残さないようにするために100g以下とすることが好ましい。また、特開平8−106015号公報に記載されている様に、延伸の際に予備加熱を設ける方法等をとることもできる。以上の方法によって得られる光ファイバについては、得られる光ファイバの破断伸びや硬度について特開平7−244220号公報に記載の様に規定することで光ファイバの曲げや側圧特性を改善することができる。
【0049】
第3の工程を経て製造されたプラスチック光ファイバは、そのままの形態で種々の用途に供することができる。しかしながら、保護や補強を目的として、その外側に被覆層を有する形態、繊維層を有する形態、および/または複数の光ファイバを束ねた形態のプラスチック光ファイバケーブルとして種々の用途に供することがより好ましい。なお、本発明のプラスチック光ファイバケーブルに用いられる光ファイバの製造方法は、前述した界面ゲル重合法が好ましいが、その他の溶融押出法などの製造方法に適用することもできる。
【0050】
本発明に係るプラスチック光ファイバケーブルを製造する被覆工程に用いられる被覆ライン10を図1に示す。前述した光ファイバ11は送出機12より送り出され、冷却機13により5℃〜35℃の温度に冷却することが、被覆する際に光ファイバ11への熱的ダメージを抑制できるために好ましいがこの冷却機13は省略することもできる。その後に被覆機14により光ファイバ11に被覆層20(図2参照)を形成する。被覆機14には、光ファイバの通る孔を有する対向したダイスが備えられており、そこに光ファイバ11を通して対向したダイス間に溶融した被覆層用形成用物質を満たし、光ファイバ11をダイス間を移動させることで被覆層20が形成されたプラスチック光ファイバケーブル(以下、光ファイバケーブルとも称する)15を得ることができる。この光ファイバケーブル15を冷却機16で冷却した後に、ローラ17により搬送して巻取機18に巻き取る。なお、本発明において被覆層20を形成する方法は、前述したものに限定されるものではない。例えば、冷却機16に水槽を設け、冷水で光ファイバケーブル15を冷却した後に、乾燥機(図示しない)で乾燥させても良い。
【0051】
図2に本発明に係るプラスチック光ファイバケーブル15の断面図を示す。光ファイバ11は、コア部11aとクラッド部11bとから構成され、クラッド部11bの外周面11cに被覆層20が形成されている。本発明においてコア部11aの直径DAとクラッド部11bの厚さT1は、特に限定されないが、100≦DA(μm)≦800、5≦T1(μm)≦100の範囲であることが好ましい。また、被覆層20の厚さT2は、500μm以上とすることで、光ファイバケーブル15の耐久性,耐熱性,耐湿性などの特性を極めて向上することができる。より好ましくは700μm以上である。なお、被覆層20の厚さT2の上限値は特に限定されないが、コストの点及び光ファイバケーブル15の可撓性の点から2000μm以下であることが好ましい。また、前述したようにクラッド部11bは、脂環式炭化水素基を含んでいるため、クラッド部11bと被膜層20との界面21の密着力が向上している。以上のように、光ファイバ11のポリマーに脂環式炭化水素基を導入することにより屈曲、耐湿度、引っ張り強度などを高くすることができる。本発明の脂環式炭化水素基を含んだ重合性モノマーを重合性組成物に含有することにより、被覆層を形成する溶融した樹脂と接しても光ファイバ11に熱的ダメージを押さえることができる。
【0052】
なお、本発明のプラスチック光ファイバケーブルの被覆層20の形成物資としては、好ましい溶融流動性がある熱可塑性ポリマーであれば、特に制限されるものではない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニール、エチレン酢酸ビニール共重合体、ポリエステル等があげられる。また、その被覆樹脂に難燃剤を添加することでプラスチック光ファイバケーブル15の耐燃性を向上できる。難燃剤には金属酸化物が好ましく、より好ましくは金属水酸化物である。具体的には水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどがある。なお、通常は、樹脂中に無機化合物を含有させるとその可撓性が弱くなったり、他の樹脂との密着性が減少するおそれがある。しかしながら、本発明では導光路(光ファイバ)11に脂環式炭化水素基を含むポリマーを用いているため、脂環式炭化水素基と被覆層形成用樹脂との分子間相互作用が向上するために、密着性の悪化を抑制できる。そこで、難燃剤に含リン化合物や含ハロゲン化合物を用いる必要が無くなり、光ファイバを廃棄する際に、含リン物質や含ハロゲン物質の処理工程を省略できる。また、被覆層20中のポリマー量も減少するため、塩素などを含む被覆層形成用樹脂の使用量も抑制できる。
【0053】
そして、この被覆層には、難燃剤を用いることにより、プラスチックから製造された光ファイバの燃焼を抑制している。しかしながら、難燃剤は含リン有機化合物や含ハロゲン有機化合物であるため、使用済みのプラスチック光ファイバケーブルを回収して廃棄する際に、リンやハロゲンが環境悪化の原因となるために、その使用量の低減が求められている。また、難燃剤としては、金属酸化物も知られているが、金属酸化物を含む物質を被覆層に用いると光ファイバとの密着し難い問題が生じて、プラスチック光ファイバケーブルの被覆層として用いることが困難な場合がある。
【0054】
本発明の被覆層(1次被覆層)の外周にさらに被覆層(2次被覆層)を設けても良い。本発明の光ファイバケーブルをさらに被覆することにより、より高機能なプラスチック光ファイバケーブル製造が可能となる。その際にその被覆の形態として、被覆材(被覆層形成材料)とプラスチック光ファイバの界面が全周にわたって接して被覆されている密着型の被覆と、被覆材とプラスチック光ファイバの界面に空隙を有するルース型被覆がある。ルース型被覆では、プラスチック光ファイバ1本あたりに必要とされる体積が増えるため嵩張ったり、たとえばコネクターとの接続部などにおいて被覆層を剥離した場合、その端面の空隙から水分が浸入して長手方向に拡散されるおそれがあるため、通常は密着型が好ましい。
【0055】
しかし、ルース型の被覆の場合、被覆と光ファイバとが密着していないので、ケーブルにかかる応力や熱とはじめとするダメージの多くを被覆材層で緩和させることができ、プラスチック光ファイバにかかるダメージを軽減させることができるため、使用目的によっては好ましく用いることができる。水分の伝播については、空隙部に流動性を有するゲル状の半固体や粉粒体を充填することで、端面からの水分伝播を防止でき、かつ、これらの半固体や粉粒体に耐熱や機械的機能の向上などの水分伝播防止と異なる機能をあわせ持つようにすることでより高い性能の被覆を形成できる。ルース型の被覆を製造するには、クロスヘッドダイの押出し口ニップルの位置を調整し減圧装置を加減することで空隙層を作ることができる。空隙層の厚みは前述のニップル厚みと空隙層を加圧/減圧することで調整が可能である。
【0056】
2次被覆層に難燃剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、昇光剤、滑剤などを導入してもよく、耐透湿性能を満足する限りにおいては、1次被覆層にも導入は可能である。なお、難燃剤については臭素を始めとするハロゲン含有の樹脂や添加剤や燐含有のものがあるが、毒性ガス低減などの安全性の観点で難燃剤として金属水酸化物を加える主流となりつつある。金属水酸化物はその内部に結晶水として水分を有しており、またその製法過程での付着水が完全に除去できないため、金属水酸化物による難燃性被覆は本発明の被覆(1次被覆層)の外層被覆(2次被覆層)として設けることが望ましい。
【0057】
また、複数の機能を付与させるために、様々な機能を有する被覆を積層させてもよい。例えば、本発明のような難燃化以外に、プラスチック光ファイバの吸湿を抑制するためのバリア層や水分を除去するための吸湿材料、例えば吸湿テープや吸湿ジェルを被覆層内や被覆層間に有することができ、また可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や発泡層等の緩衝材、剛性を挙げるための強化層など、用途に応じて選択して設けることができる。樹脂以外にも構造材として、高い弾性率を有する繊維(いわゆる抗張力繊維)および/または剛性の高い金属線等の線材を熱可塑性樹脂に含有すると、得られるケーブルの力学的強度を補強することができることから好ましい。
【0058】
抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が挙げられる。また、金属線としてはステンレス線、亜鉛合金線、銅線などが挙げられる。いずれのものも前述したものに限定されるものではない。その他に保護のための金属管の外装、架空用の支持線や、配線時の作業性を向上させるための機構を組み込むことができる。また、ケーブルの形状は使用形態によって、素線を同心円上にまとめた集合ケーブルや、一列に並べたテープ心線といわれる態様、さらにそれらを押え巻やラップシースなどでまとめた集合ケーブルなど用途に応じて選ぶことができる。また、本発明によって得られる光ファイバを用いたケーブルはステップインデックス型の光ファイバより、軸ずれに対する許容度が比較的高いため突き合せによる接合でも用いることができるが、端部に接続用光コネクタを用いて接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタとしては一般に知られている、PN型、SMA型、SMI型などの市販の各種コネクタを利用することも可能である。
【0059】
本発明の光学部材としての光ファイバ、および光ファイバケーブルを用いて光信号を伝送するシステムには、種々の発光素子、受光素子、他の光ファイバ、光バス、光スターカプラ、光信号処理装置、接続用光コネクター等で構成される。それらに関する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行),日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」,IEICE TRANS. ELECTRON., VOL. E84−C, No.3, MARCH 2001, p.339−344「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3, No.6, 2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」等の他、特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号等の各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号等の各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号等の公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号等の各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号等の公報に記載の光信号処理装置;特開2001−86537号等の公報に記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号等の公報に記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号等の各公報に記載のマルチファンクションシステム;等を参考にすることができる。
【0060】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。なお、説明は実施例1で詳細に行い、実施例2ないし実施例4並びに比較例1及び比較例2で実施例1と同じ条件の箇所の記載は省略した。また、各実験における実験結果は後に表1にまとめて示す。
【0061】
[実施例1]
予定するプリフォームの外径に対応する内径を有する十分な剛性を持った内径22mmおよび長さ600mmの円筒状の重合容器に、2種類のモノマー(イソボルニルメタクリレート(IBXMA)およびメタクリル酸−メチル(MMA)(両者とも水分を1000ppm以下に除去したもの))の混合溶液(質量比:IBXMA/MMA=1/4)を所定量注入した。重合開始剤としてジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)をモノマー混合溶液に対して0.5質量%、連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタンをモノマー混合溶液に対して0.62質量%配合した。上記モノマー混合溶液の注入された重合容器を60℃湯浴中に入れ、震盪を加えながら2時間予備重合を行った。その後、該重合容器を65℃下にて水平状態(円筒の高さ方向が水平となる状態)に保持し、3000rpmにて回転させながら3時間加熱重合した。その後、90℃で24時間の熱処理し、上記共重合体からなる円筒管を得た。
【0062】
次に、コア部の原料である2種類のモノマー(イソボルニルメタクリレート(IBXMA)およびメタクリル酸−メチル(両者とも水分を1000ppm以下に除去したもの))の混合溶液(質量比:IBXMA/MMA=1/4)と、屈折率調整成分としてジブチルフタレートをモノマー混合溶液に対して10質量%混合した溶液とを、精度0.2μmの四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過しつつ、該円筒管の中空部に濾液を直接注入した。重合開始剤としてジ−t−ブチルパーオキシドをモノマー混合溶液に対し0.016質量%、連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタンをモノマー混合溶液に対し0.27質量%配合した。この混合溶液等を注入した該円筒管を、該円筒管外径に対し9%だけ広い内径を持つガラス管内に挿入した状態で、加圧重合容器に垂直に静置した。その後、加圧重合容器内を窒素雰囲気に置換した後、0.1Mpaまで加圧し、90℃で、48時間加熱重合した。その後、0.4Mpaまで加圧し、120℃で、24時間加熱重合および熱処理を行い、プリフォームを得た。該プリフォームの重量平均分子量は10万6000であり、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、2.1であった。
【0063】
得られたプリフォームには、重合完了時に体積収縮による気泡の混入はなかった。このプリフォームを230℃の熱延伸により線引きを行い、直径500μmのプラスチック光ファイバを製造した。延伸工程において、プリフォームには気泡の発生は観察されず、安定して300mの光ファイバを得ることができた。得られた光ファイバの伝送損失値を測定したところ、波長650nmで160dB/km、波長850nmで1250dB/kmであった。この光ファイバに水酸化マグネシウム40%を含有したポリエチレンを溶融温度130℃で肉厚(厚さ)T2が550μmの被覆層20を形成し、光ファイバケーブルを得た。被覆層形成直後に、光ファイバケーブルの伝送損失を測定したところ、波長650nmで160dB/km、波長850nmで1250dB/kmであり、被覆層の形成による伝送損失の悪化は生じなかった。
【0064】
この光ファイバの直線引張り強度を測定した。引張り試験機として、(株)オリエンテック社製の「テンシロン万能試験機」を用いた。120mm〜130mmの長さの光ファイバをサンプルとして、試験機のチャックに装着した。試験中にサンプルが試験機把持部で断線しないように、試験機のチャックとして、空気圧で開閉するエアチャックを用いた。引張り長さ(チャック間長さ)を100mm、チャックの引張り速度を10mm/minとして、サンプルが破断するまで伸張させた。そして、サンプルに印加された荷重をロードセルにより測定してその最大荷重から求めたところ、90Nであった。そして、この光ファイバを温度が100℃、湿度が70%下で20時間放置した後に光ファイバの伝送損失を測定したところ、波長650nmで160dB/km、波長850nmで1250dB/kmであり、吸水などによる光学特性の悪化は生じなかった。
【0065】
[実施例2ないし実施例4]
被覆層の厚さを850μmとした以外は実施例1と同様な方法でプラスチック光ファイバケーブルを作り、実施例2とした。また、実施例1の被覆層から難燃剤である水酸化マグネシウムを除いたものを実施例3とした。また実施例1のプリフォーム作製時に添加した屈折率調整剤(ジブチルフタレート)を添加しなかったものを実施例4とした。
【0066】
[比較例1及び比較例2]
さらに実施例1と同様な方法でIBXMAを全量MMAに置き換えただけで、後は実施例1と同じものを比較例1とした。さらに実施例1と同様な方法で被覆層の厚さを450μmとしたものを、比較例2とした。
【0067】
【表1】
【0068】
表1から脂環式炭化水素基を有するIBXMAを導光路の重合性組成物にすることで、伝送損失の増加を抑制できることが分かる。また、被覆層中に金属酸化物(金属水酸化物)であるMg(OH)2 を用いることが好ましい。また、導光路は、コア部の屈折率を中心に向かって高める界面ゲル法を用いて作製しても良いし、コア部の屈折率を同一にしたものであっても良いことが分かる。また、被覆層を450μmの厚さで形成すると、時間経過と共に伝送損失の悪化が生じることも分かる。
【0069】
【発明の効果】
本発明のプラスチック光ファイバケーブルによれば、プラスチックからなるコア部とクラッド部とを有するプラスチック光ファイバケーブルにおいて、前記コア部が少なくとも前記一般式(1)で表わされる化合物を含有する重合性モノマーと、光学部材用重合性組成物と、から重合され、被覆層の厚さが500μm以上として前記プラスチックを被覆する被覆層が形成されているから、脆性の強い脂環式炭化水素基を側鎖に有する(メタ)アクリル酸エステルの樹脂に対して機械的特性が改良されバランスの取れたプラスチック光ファイバケーブルを提供することができる。
【0070】
本発明のプラスチック光ファイバケーブルの製造方法によれば、プラスチックからなるクラッド部とコア部とが少なくとも前記一般式(1)で表わされる化合物を含有する重合性モノマーを重合してなる樹脂とからなるプラスチック光ファイバを被覆してなるプラスチック光ファイバケーブルの製造方法において、被覆層の厚さが500μm以上となるように被覆しても、被覆層を形成する際に伝送損失の悪化がなく、さらに機械特性も改良されバランスのとれたプラスチック光ファイバケーブルを製造することが可能となる。また、前記重合工程に界面ゲル重合法を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプラスチック光ファイバケーブルの製造に用いられる被覆ラインの概略図である。
【図2】本発明のプラスチック光ファイバケーブルの断面図である。
【符号の説明】
11 プラスチック光ファイバ
15 プラスチック光ファイバケーブル
20 被覆層
T2 被覆層の厚さ
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック光ファイバケーブルおよびその製造方法に関し、さらに詳しくは耐熱性に優れ、被覆工程において、熱の影響を受けにくいアクリル樹脂系のプラスチック光ファイバを有するプラスチック光ファイバケーブルおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック光ファイバ(以下、光ファイバと称する場合もある)は、石英系の光ファイバと比較して、製造および加工が容易であること、および人体への突き刺し災害による危険性の低さなどの観点から、伝送損失の大きさが問題とならない程度の短距離光通信媒体として注目されてきている。特に家庭や車載用途で注目されてきている。
【0003】
プラスチック光ファイバは、一般的には、重合体をマトリックスとする有機化合物からなる芯(本明細書において「コア部」と称する)と、コア部と屈折率が異なる(一般的には低屈折率の)有機化合物からなる外殻(本明細書において「クラッド部」と称する)とから構成される。特に、中心から外側に向かって屈折率の大きさに分布を有するコア部を備えた屈折率分布型プラスチック光ファイバは、伝送する光信号の帯域を大きくすることが可能なため、高い伝送容量を有する光ファイバとして最近注目されている(例えば、特許文献1および2参照。)。この様な屈折率分布型光学部材の製法の一つに、界面ゲル重合を利用して、光学部材母材(本明細書において、「プリフォーム」と称する)を作製し、その後、前記プリフォームを延伸する方法が提案されている。
【0004】
ところで、光ファイバには、前述した様に、高帯域で伝送損失が小さいことが要求されるとともに、耐久性をあげるためには被覆厚を大きくすることおよび耐熱性にも優れた材料であることが要求される。例えばメタクリル酸シクロヘキシルとメタクリル酸メチルからなる共重合体などが提案されているが、吸湿性を低減するためには、メタクリル酸シクロヘキシルを比較的多量に使用する必要がある等、使用範囲が制限される。さらに、その結果、メタクリル酸系樹脂の耐熱性が低下することになり、改善を要する点がある。一方、プラスチック構造中の水素をフッ素等のハロゲンや重水素に置換することが提案されている。しかし、フッ素含有モノマーの単独重合体は、材料安定性または密着性などにおいて不都合が生じる場合があり、光ファイバに要求される性能の全てを備えた材料ではない。なお、素材の選択によって耐熱性を向上させるものとして、炭素原子を介してアルキル基を導入したモノマーからなる重合体が示されているが(例えば、特許文献3参照。)、これらのガラス転移温度(Tg)は、ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと称する)に比して高くないため(例えば、非特許文献1参照。)、十分な耐熱性を有しないと推測される。さらに、これらはC−H結合のHをClやBrという大きな原子で置換しており、この様な置換は反応性の低下を招くため好ましくない。
【0005】
また、プラスチック光ファイバは、コア部とクラッド部とからなる導光路のみで用いられることもある。しかしながら、光ファイバのみで光学部材として用いると、光ファイバに傷が付いて機械的強度の低下を招いたり、吸水して光学特性の劣化を招く場合もある。そこで、通常は光ファイバに被覆層を設けた光学部材(以下、本明細書ではプラスチック光ファイバケーブルと称する)として用いられる。
【0006】
【特許文献1】
特開昭61−130904号公報 (第3−4頁)
【特許文献2】
国際公開第93/08488号パンフレット
【特許文献3】
特開平8−220349号公報 (第3−8頁)
【非特許文献1】
H.Kawai et al., SPIE Vol .896 Replication and Molding of Optical Components, 69−78(1988)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、良好な伝送性能を有し、かつ耐久性、耐熱性が改善されるなど、種々の特性がバランスよく改良されたプラスチック光ファイバケーブル及びそのプラスチック光ファイバケーブルを良好な生産性で作製可能な重合性組成物、被覆処方および製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する手段は以下の通りである。
本発明のプラスチック光ファイバケーブルは、プラスチックからなるコア部とクラッド部とを有するプラスチック光ファイバケーブルにおいて、前記コア部が少なくとも下記一般式(1)で表わされる化合物を含有する重合性モノマーと、光学部材用重合性組成物とから重合され、被覆層の厚さが500μm以上である。
【0009】
【化3】
(式中、X1 は水素原子(H)、または重水素原子(D)を表し、2つのX1 は同一でも異なっていてもよい。Y1 はH,D,CH3 基,CD3 基,ハロゲン原子またはCF3 基を表わす。また、R1 は炭素数7〜20個の脂環式炭化水素基を表す。)
【0010】
プラスチック光ファイバケーブルが、広い伝送帯域を得るために、前記コア部の中心部から外周方向に向けて屈折率が減少するように屈折率分布を有する構造であることが好ましい。このとき屈折率分布は徐々に屈折率が減少するようなものでも、マルチステップインデックスといわれる階段状に屈折率が減少するもののどちらでも用いることができる。ただし、より広い帯域を得るには屈折率分布は徐々に屈折率が減少するものが特に好ましい。なお、コア部に屈折率分布を形成した場合は屈折率調整のための屈折率調整剤の添加や共重合体の共重合比によって、コア部の中心と外周で素材の機械的特性が変化するので、その影響を薄める意味でも本発明は有効である。また、前記被覆層に金属水酸化物を含有する層を少なくとも1層有することが好ましい。
【0011】
本発明のプラスチック光ファイバケーブルの製造方法は、プラスチックからなるクラッド部とコア部とが少なくとも下記一般式(1)で表わされる化合物を含有する重合性モノマーを重合してなる樹脂とからなるプラスチック光ファイバを被覆してなるプラスチック光ファイバケーブルの製造方法において、被覆層の厚さが500μm以上となるように被覆する。また、前記被覆層として金属水酸化物を含有する層を被覆する工程を含む工程を有することが好ましい。
【0012】
【化4】
(式中、X1 は水素原子(H)、または重水素原子(D)を表し、2つのX1 は同一でも異なっていてもよい。Y1 はH,D,CH3 基,CD3 基,ハロゲン原子またはCF3 基を表わす。また、R1 は炭素数7〜20個の脂環式炭化水素基を表す。)
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。まず、本発明の光ファイバ用重合性組成物について説明する。本発明に用いられる光ファイバ用重合性組成物は、下記一般式(1)で表される重合性モノマー(A)が用いられ、場合によっては重合開始剤と、該重合性モノマーとは異なる屈折率を有する化合物とを含有する。本発明の光学部材用重合性組成物は、光学部材、特に、屈折率の大きさに分布を有する屈折率分布型光学部材の製造に用いられる。
【0014】
【化5】
【0015】
前記一般式(1)(化5参照)で表される重合性モノマー(A)は、R1 が炭素数7〜20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートである。(式中、X1 は水素原子(H)、または重水素原子(D)を表し、2つのX1 は同一でも異なっていてもよい。Y1 はH,D,CH3 基,CD3 基,ハロゲン原子またはCF3 基を表わす。また、R1 は炭素数7〜20個の脂環式炭化水素基を表す。)具体的な例としては、(メタ)アクリル酸(ビシクロ〔2.2.1〕ヘプチル−2)、(メタ)アクリル酸1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−メチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジメチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸3−メチル−5−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5,8−トリエチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジメチル−8−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−5−イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−1−イルメチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−2,6,6−トリメチル−ビシクロ〔3.1.1〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸3,7,7−トリメチル−4−ヒドロキシ−ビシクロ〔4.1.0〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、アクリル酸イソボルニ、メタアクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フエンチル、(メタ)アクリル酸2,2,5−トリメチルシクロヘキシルなどが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステルの中でも、メタクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フエンチルなどが好ましく、メタクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニルが特に好ましい。
【0016】
前記重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸、あるいはその酸塩化物を、R1 OHで表される脂環式炭化水素・モノオールでエステル化すること、(メタ)アクリル酸をカンフェンなどの脂環式炭化水素前駆体とを硫酸、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒でエステル化することによって製造することができる(なお、R1 は前記一般式(1)中のR1 と同義である)。また、(メタ)アクリレートのC−Y1 のY1 は、水素原子(H)やメチル基(CH3 )であることが好ましい。
【0017】
光伝送に用いる光源波長によってはC−H結合に起因する吸収が伝送の阻害となるため、この様な場合は、(メタ)アクリル基のC−H(前記一般式(1)中、X1 )の水素原子(H)も重水素原子(D)に置換されているほうが好ましく、その置換率は95%以上100%未満であることがより好ましい。さらに前記一般式(1)中のY1 の水素原子(H)に変えて重水素原子(D)や重水素化メチル基(CD3 )に置換することが好ましい。さらには、側鎖のR1 のC−Hの水素原子(H)を重水素原子(D)に置換してもよい。
【0018】
本発明の光学部材用重合性組成物は、前記重合性モノマー(A)を必須成分として含んでいればよい。前記重合性モノマー(A)は全重合性モノマー中、5質量%以上、好ましくは7.5質量%以上、更に好ましくは10質量%含んでいればよい。さらに本明細書において「主成分として含む」とは、その重合体の光学的性能を損なわない限りにおいて、他のモノマーを含んでいてもよいことを意味する。
【0019】
なお、本発明に用いられる重合性ポリマーについて、更に説明する。PMMAは、光学特性に優れているがポリマー骨格中にエステル結合(−COO−)が含まれており、そのエステル結合は、親水性であるため、飽和吸水率が約2%と大きく光ファイバとして使用中に吸水し、光学特性や機械的強度の劣化が生じてしまう場合がある。そこで、本発明ではエステル結合(−COO−)の酸素原子側に親油性である炭化水素基、特に脂環式炭化水素基を結合させることによりポリマーの吸水率を低下させている。また、脂環式炭化水素基を置換することで、隣接するアクリル酸ポリマーのエステル結合と分子間相互作用が大きくなるため、耐熱性が向上したり、機械的強度が上昇する効果も得られる。
【0020】
本発明に使用可能な前記重合性モノマー(A)以外の重合性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル系化合物として、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸nーブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル等が挙げられる。また、スチレン系化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。さらに、ビニルエステル類として、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等が挙げられる。さらには、マレイミド類として、N−n−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この中でもメタクリル酸メチルが好ましい。これらのモノマー中の水素原子も重水素原子に置換されているのが好ましい。
【0021】
本発明の重合性組成物は、前記重合性モノマー(A)およびそれ以外の重合性モノマーの重合を開始させる。重合開始剤としては、用いるモノマーや重合方法に応じて適宜選択することができる。具体的には、過酸化ベンゾイル(BPO)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−t−ブチルパーオキシド(PBD)、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物等が挙げられる。または、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジーt−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は2種類以上を併用してもよい。
【0022】
本発明の重合性組成物は、前記重合性モノマーの連鎖移動剤を含有するのが好ましい。前記連鎖移動剤は、主に重合体の分子量を調整するために用いられる。重合性組成物がそれぞれ連鎖移動剤を含有していると、重合性モノマーの重合速度および重合度を前記連鎖移動剤によってより制御することができ、重合体の分子量を所望の分子量に調整することができる。例えば、本発明の重合性組成物を重合した後、延伸により線引きして、光伝送体の形態にする場合は、分子量を調整することによって延伸時における機械的特性を所望の範囲とすることができ、生産性の向上にも寄与する。前記連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択することができる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
【0023】
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(例えば、チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いるのが好ましく、中でも、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子(H)が、重水素原子(D)やフッ素原子(F)で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、前記連鎖移動剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
本発明の重合性組成物は、屈折率調整成分を含有していてもよい。本発明の重合性組成物に屈折率調整成分を含有させ、重合の際に、重合の進行方向に沿って、屈折率調整成分の濃度に傾斜を持たせることによって、屈折率分布型の光学部材を作製することができる。屈折率分布型の光学部材は、広い伝送帯域を得ることができる。このような屈折率分布型光学部材は、コア部の中心部から外周方向に向けて徐々に屈折率が減少するものでも、マルチステップインデックスといわれる階段状に屈折率が減少するもののどちらも用いることができる。ただし、より広い伝送帯域を得るためには、屈折率分布が徐々に減少するもの(グレーデッドインデックス型)が特に好ましい。なお、コア部に屈折率分布を形成した場合は、屈折率調整のために屈折率調整剤の添加や、共重合体の共重合比によって、コア部の中心と外周とで素材の機械的特性が変化するので、その影響を薄める意味でも本発明は有効である。
【0025】
屈折率調整成分は、併用する前記重合性モノマーの屈折率と異なる成分を意味し、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。その屈折率差は、0.005以上であるのが好ましい。屈折率調整成分は、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して、屈折率が高くなる性質を有するものを用いるのが好ましい。また、屈折率調整成分は重合性化合物であってもよく、重合性化合物が屈折率調整成分の場合は、これを共重合成分として含む共重合体がこれを含まない重合体と比較して、屈折率が上昇する性質を有するものを用いるのが好ましい。上記性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、屈折率調整成分として用いることができる。例えば、コア部形成用重合性組成物に屈折率調整成分を含有させ、コア部を形成する工程において界面ゲル重合法により重合の進行方向を制御し、屈折率調整成分の濃度に傾斜を持たせ、コア部に屈折率調整成分の濃度分布に基づく屈折率分布構造を形成するのが好ましい(以下、屈折率の分布を有するコア部を「屈折率分布型コア部」という場合がある)。屈折率分布型コア部を形成することにより、得られる光学部材は広い伝送帯域を有する屈折率分布型プラスチック光学部材となる。
【0026】
前記屈折率調整成分としては、低分子化合物として、例えば、ジブチルフタレート、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジルnブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ビフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)、硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体などが挙げられる。硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体については、下記化6中のD1〜D11として具体的に示す化合物の中から適宜選ばれる。中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOおよび硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体が好ましい。なお、これらの化合物中に存在する水素原子を重水素原子に置換した化合物も広い波長域での透明性を向上させる目的で用いることが出来る。また、重合性化合物として、例えば、トリブロモフェニルメタクリレート等が挙げられる。屈折率調整成分として重合性化合物を用いる場合は、マトリックスを形成する際に、重合性モノマーと重合性屈折率調整成分とを共重合させるので、種々の特性(特に光学特性)の制御がより困難となるが、耐熱性の面では有利となる可能性がある。
【0027】
【化6】
【0028】
屈折率調整剤の濃度および分布を調整することによって、光学部材の屈折率を所望の値に変化させることができる。その添加量は、用途および組み合わされる部材に応じて適宜選ばれる。屈折率上昇材(屈折率調整剤)は、複数種類添加してもよい。
【0029】
本発明に用いられる重合性組成物に熱および/または光等が供与されると、例えば、重合開始剤からラジカル等が発生し、前記重合性モノマーの重合が開始される。本発明の重合性組成物が屈折率調整成分を含んでいる場合は、例えば、後述の界面ゲル重合法のように、重合の進行方向を制御して、屈折率調整成分の濃度に傾斜を持たせることによって、もしくは屈折率調整成分を含んでいない場合も、前記重合性モノマーの共重合比に傾斜を持たせることによっても、屈折率分布構造を形成することができる。また、重合性モノマーの重合速度および重合度を、重合開始剤および所望により添加される連鎖移動剤によって制御し、重合体の分子量を所望の分子量に調整することができる。連鎖移動剤によって製造される重合体の分子量(好ましくは1万〜100万、より好ましくは3万〜50万)を調整すれば、延伸時における機械的特性を所望の範囲とすることができ、生産性の向上にも寄与する。
【0030】
プラスチック光ファイバは、重合性組成物の重量平均分子量(Mw)が1万〜100万であることが好ましい。分子量が前記範囲より小さいと機械的強度などが低下し、一方、分子量が前記範囲より大きいと加工性が悪くなる。この適正な分子量範囲を選択することで、製品の熱的物性(Tg)と、加熱延伸時の加工性や、機械的強度のそれぞれを満たすことができる。
【0031】
本発明のプラスチック光ファイバケーブルを形成する被覆層の被覆方法は特に限定されないが、溶融押出し法を用いることが好ましい。被覆層の構成は、1層でも良いし、複数の層からなっていても良い。複数層からなる場合は、各層の素材や添加物を変えて、後述の難燃性付与をはじめ、強度向上、帯電防止などの様々な機能を持たせることも可能である。
【0032】
以下に、本発明の製造方法を、コア部とクラッド部とを有する屈折率分布型プラスチック光ファイバの製造方法の実施形態について説明する。本実施形態は、主として2種類あるが、以下の実施形態に限定されるわけではない。まず、第一の実施形態は、クラッド部用重合性組成物を重合してクラッド部となる円筒管を作製する第1の工程と、前記円筒管の中空部でコア部形成用重合性組成物を界面ゲル重合させることによりコア部となる領域を形成し、コア部およびクラッド部に各々対応する領域からなるプリフォームを作製する第2の工程と、得られたプリフォームを所望の形態に加工する第3の工程とを含むプラスチック光学部材の製造方法である。
【0033】
第二の実施形態は、クラッド部に相当する、例えばポリフッ化ビニリデン樹脂のような含フッ素樹脂からなる円筒状パイプを作製する第1の工程と、前記フッ素樹脂パイプの中空部内壁をアウターコア用重合性組成物を回転重合法で2層からなる同心円筒状パイプを作製する第2の工程と、前記円筒管のさらに中空部をインナーコア部形成用重合性組成物を界面ゲル重合させることによりインナーコア部となる領域を形成し、クラッド部、アウターコア部およびインナーコア部に各々対応する領域からなるプリフォームを作製する第3の工程と、および得られたプリフォームを所望の形態に加工する第4の工程とを含むプラスチック光学部材の製造方法である。後者の実施形態においては、2層からなる同心円筒状パイプを作製する際、上記のように段階的ではなく、フッ素樹脂とアウターコア用重合組成物の重合体を溶融共押し出しの方法の一段階で作製する方法もある。
【0034】
前記クラッド部あるいはアウターコア部形成用重合性組成物は、重合性モノマーと、該重合性モノマーの重合を開始させる重合開始剤、および連鎖移動剤を含有する。次に、前記コア部あるいはインナーコア部形成用重合性組成物は、重合性モノマーと、該重合性モノマーの重合を開始させる重合開始剤、連鎖移動剤、および所望により前記モノマーの屈折率と異なる屈折率を有する化合物(屈折率調整成分)を含有する。前記クラッド部/コア部の組み合わせ、あるいは、アウターコア部/インナーコア部の組み合わせ形成用の重合性組成物に用いられる重合性モノマーは、等しいのが好ましい(但し、その組成比については同一でなくてもよく、また副成分については等しくなくてもよい)。
【0035】
前記クラッド部およびコア部形成用重合性組成物において、各成分の含有割合の好ましい範囲は、その種類に応じて異なり一概に定めることはできないが、一般的には、重合開始剤は、重合性モノマーに対して0.005質量%〜0.5質量%であるのが好ましく、0.01質量%〜0.5質量%であるのがより好ましい。前記連鎖移動剤は、重合性モノマーに対して0.10質量%〜0.40質量%であるのが好ましく、0.15質量%〜0.30質量%であるのがより好ましい。また、前記コア部形成用重合性組成物において、前記屈折率調整成分は、重合性モノマーに対して1質量%〜30質量%であるのが好ましく、1質量%〜25質量%であるのがより好ましい。
【0036】
前記クラッド部およびコア部形成用重合性組成物の重合して生成するポリマー成分の分子量は、プリフォームを延伸する関係から、重量平均分子量(Mw)で1万〜100万の範囲であることが好ましく、3万〜50万であることがさらに好ましい。さらに延伸性の観点で分子量分布(MWD=重量平均分子量/数平均分子量)も影響する。MWDが大きくなると、極端に分子量の高い成分がわずかでもあると延伸性が悪くなり、場合によっては延伸できなくなることもある。したがって、好ましい範囲としては、MWDが4以下が好ましく、さらには3以下が好ましい。
【0037】
前記クラッド部およびコア部形成用重合性組成物にはそれぞれ、重合時の反応性や光伝送性能を低下させない範囲で、その他の屈折率調整成分を添加することができる。例えば、耐候性や耐久性等を向上させる目的で、耐酸化剤や耐光剤等の安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することが可能となり、伝送距離が向上するので、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として使用することができる。
【0038】
次に、本実施の形態、特に前記第一の実施形態の各工程について詳細に説明する。前記第1の工程では、クラッド部となる中空状(例えば円筒形状)の管を作製する。中空の円筒管の製法としては、例えば国際公報WO93/08488号パンフレットに記載されている様な製造方法が挙げられる。具体的には、前記クラッド部形成用重合組成物を、円筒形状の重合容器あるいはフッ素樹脂よりなるパイプ(さらに外側に円筒形状の容器に入れられたもの)に注入し、該重合容器を回転(好ましくは、円筒の軸を水平に維持した状態で回転)させつつ、前記重合性モノマーを重合させることにより、重合体からなる円筒管を作製することができる。なお、前記重合性モノマーを重合容器に注入する前にフィルターにより濾過して、組成物中に含まれる塵埃を除去するのが好ましい。重合温度および重合時間は、用いるモノマーや重合開始剤によって異なるが、一般的には、重合温度は60℃〜150℃であるのが好ましく、重合時間は5時間〜24時間であるのが好ましい。このときに、特開平8−110419号公報に記載されている様に、原料をプレ重合して原料粘度を上昇させてから行ってもよい。また、重合に使用する容器が回転によって変形してしまうと、得られる円筒管に歪みを生じさせることから、十分な剛性を持つ金属管・ガラス管を用いることが望ましい。
【0039】
前記クラッド部となる円筒管は、第2の工程でコア部の原料となる重合性組成物を注入できるように、底部を有しているのが好ましい。底部は前記円筒管を構成している重合体と密着性および接着性に富む材質であるのが好ましい。また、底部を前記円筒管と同一の重合体で構成することもできる。重合体からなる底部は、例えば、重合容器を回転させて重合する(以下、「回転重合」という場合がある)前もしくは後に、重合容器を垂直に静置した状態で、重合容器内に少量の重合性モノマーを注入し、重合することによって形成することができる。
【0040】
前記回転重合後に、残存するモノマーや重合開始剤を完全に反応させることを目的として、該回転重合の重合温度より高い温度で得られた構造体に加熱処理を施してもよく、所望の中空管が得られた後、未重合の組成物を取り除いてもよい。
【0041】
また、前記第1の工程では、一旦、前記重合性組成物を重合させて重合体を作製した後、押し出し成形等の成形技術を利用して、所望の形状(本実施の形態では一重円筒形状あるいはフッ素樹脂と前記重合性組成物重合体からなる二重(同心)円筒状)の構造体を得ることもできる。
【0042】
前記第2の工程では、前記第1の工程で作製したクラッド部あるいはアウターコア部となる円筒管の中空部に、前記コア部あるいはインナーコア部形成用重合性組成物を注入し、組成物中の重合性モノマーを重合する。それら組成物は、フィルターにより濾過して、組成物に含まれる塵埃を除去するのが好ましい。重合法は重合後の残留物の観点から溶媒等を用いない界面ゲル重合法が特に好ましい。この界面ゲル重合法を用いることで、重合性モノマーの重合は、前記円筒管のゲル効果によって、粘度の高くなった内壁表面から断面の半径方向、中心に向かって進行する。重合性モノマーに前記屈折率調整成分を添加して重合すると、前記円筒管を構成している重合体に対して親和性の高いモノマーが前記円筒管の内壁面に偏在して重合し、外側には屈折率調整成分濃度が低い重合体が形成される。中心に向かうに従って、形成された重合体中の該屈折率調整成分の比率が増加する。このようにして、コア部となる領域内に屈折率調整成分の濃度分布が生じ、この濃度分布に基づいて、連続した屈折率の分布が導入される。
【0043】
上記説明したように、第2の工程において、形成されるコア部となる領域に屈折率の分布が導入されるが、屈折率が互いに異なる部分間は熱挙動も互いに異なるので、重合を一定温度で行うと、その熱挙動の違いからコア部となる領域は、重合反応に対して発生する体積収縮の応答性が変化し、プリフォーム内部に気泡が混入する、もしくはミクロな空隙が発生し、得られたプリフォームを加熱延伸した際に多数の気泡が発生する可能性がある。重合温度が低すぎると、重合効率が低下し、反応終了までに時間がかかってしまい、生産性を著しく損なう。また、重合が不完全となって光透過性が低下し、作製される光ファイバの光伝送能を損なう。一方、初期の重合温度が高すぎると、コア部となる領域の収縮に対して応答緩和できず、気泡発生の傾向が著しい。そのため、モノマーの沸点や生成するポリマーのガラス転移温度(Tg)を勘案しながら、重合温度と後処理温度を調整して行う。但し、後処理温度はポリマーのガラス転移温度(Tg)以上となるように選択する。例えば、典型的なメタクリレート系のモノマーを使用した場合には、重合温度は好ましくは、60℃〜160℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。また、重合収縮に対する応答性を高めるために加圧した不活性ガス中で重合させることも好ましい。さらに、重合前のモノマーを減圧雰囲気で脱水・脱気する事でさらに気泡の発生を低減させることができる。
【0044】
重合温度および重合時間は、用いるモノマーによって異なるが、一般的には、重合温度は60℃〜150℃であるのが好ましく、重合時間は5時間〜72時間であるのが好ましい。具体的には、重合性モノマーとしてイソボルニルメタクリレートを用い、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)を用いた場合は、初期重合温度を100℃〜110℃に48時間〜72時間維持し、その後、120℃〜160℃まで昇温して24時間〜48時間重合するのが好ましく、重合開始剤としてジ−t−ブチルパーオキシドを用いた場合は、初期重合温度を90℃〜110℃に4時間〜48時間維持し、120℃〜160℃まで昇温して24時間〜48時間重合するのが好ましい。なお、昇温は段階的に行っても、連続的に行ってもよいが、昇温にかける時間は短いほうがよい。
【0045】
重合は、加圧状態で行うのが好ましい(以下、加圧状態で行う重合を「加圧重合」という)。加圧重合を行う場合は、前記重合性組成物を注入したクラッド部となる円筒管を、治具の中空部に挿入して、治具に支持された状態で重合を行うのが好ましい。前記治具は、前記構造体を挿入可能な中空を有する形状であり、該中空部は前記構造体と類似の形状を有しているのが好ましい。本実施の形態では、クラッド部となる構造体が円筒管であるので、前記治具も円筒形状であるのが好ましい。治具は、加圧重合中に前記円筒管が変形するのを抑制するとともに、加圧重合が進むに従ってコア部となる領域が収縮するのを緩和可能に支持する。従って、治具の中空部は、前記クラッド部となる円筒管の外径より大きい径を有し、前記クラッド部となる円筒管を非密着状態で支持するのが好ましい。前記治具の中空部は、前記クラッド部となる円筒管の外径に対して0.1%〜40%だけ大きい径を有しているのが好ましく、10%〜20%だけ大きい径を有しているのがより好ましい。
【0046】
前記クラッド部となる円筒管を治具の中空部に挿入した状態で、重合容器内に配置することができる。重合容器内において、前記クラッド部となる円筒管は、円筒の高さ方向を垂直にして配置されるのが好ましい。前記治具に支持された状態で前記クラッド部となる円筒管を、重合容器内に配置した後、前記重合容器内を加圧することができる。窒素等の不活性ガスで重合容器内を加圧し、不活性ガス雰囲気下で加圧重合を進行させるのが好ましい。重合時の加圧の好ましい範囲については、用いるモノマーによって異なるが、重合時の圧は、一般的には0.1MPa〜1.0MPa程度が好ましい。以上の工程を経て、光学部材のプリフォームを得ることができる。
【0047】
第3の工程では、作製されたプリフォームを加工して所望の形態の光学部材を得る。例えば、プリフォームを軸方向に垂直にスライスすれば断面が凹凸を有しない円盤状もしくは円柱状のレンズを得ることができる。また、延伸してプラスチック光ファイバを得る。
【0048】
プラスチック光ファイバは、第3の工程でプリフォームを加熱延伸して作製することができるが、その加熱温度はプリフォームの材質等に応じて、適宜決定することができる。一般的には、180℃〜250℃中の雰囲気で行われることが好ましい。延伸条件(延伸温度等)は、得られたプリフォームの径、所望の光ファイバの径および用いた材料等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、線引張力については、特開平7−234322号公報に記載されている様に、溶融したプラスチックを配向させるために10g以上としたり、特開平7−234324号公報に記載されている様に溶融延伸後に歪みを残さないようにするために100g以下とすることが好ましい。また、特開平8−106015号公報に記載されている様に、延伸の際に予備加熱を設ける方法等をとることもできる。以上の方法によって得られる光ファイバについては、得られる光ファイバの破断伸びや硬度について特開平7−244220号公報に記載の様に規定することで光ファイバの曲げや側圧特性を改善することができる。
【0049】
第3の工程を経て製造されたプラスチック光ファイバは、そのままの形態で種々の用途に供することができる。しかしながら、保護や補強を目的として、その外側に被覆層を有する形態、繊維層を有する形態、および/または複数の光ファイバを束ねた形態のプラスチック光ファイバケーブルとして種々の用途に供することがより好ましい。なお、本発明のプラスチック光ファイバケーブルに用いられる光ファイバの製造方法は、前述した界面ゲル重合法が好ましいが、その他の溶融押出法などの製造方法に適用することもできる。
【0050】
本発明に係るプラスチック光ファイバケーブルを製造する被覆工程に用いられる被覆ライン10を図1に示す。前述した光ファイバ11は送出機12より送り出され、冷却機13により5℃〜35℃の温度に冷却することが、被覆する際に光ファイバ11への熱的ダメージを抑制できるために好ましいがこの冷却機13は省略することもできる。その後に被覆機14により光ファイバ11に被覆層20(図2参照)を形成する。被覆機14には、光ファイバの通る孔を有する対向したダイスが備えられており、そこに光ファイバ11を通して対向したダイス間に溶融した被覆層用形成用物質を満たし、光ファイバ11をダイス間を移動させることで被覆層20が形成されたプラスチック光ファイバケーブル(以下、光ファイバケーブルとも称する)15を得ることができる。この光ファイバケーブル15を冷却機16で冷却した後に、ローラ17により搬送して巻取機18に巻き取る。なお、本発明において被覆層20を形成する方法は、前述したものに限定されるものではない。例えば、冷却機16に水槽を設け、冷水で光ファイバケーブル15を冷却した後に、乾燥機(図示しない)で乾燥させても良い。
【0051】
図2に本発明に係るプラスチック光ファイバケーブル15の断面図を示す。光ファイバ11は、コア部11aとクラッド部11bとから構成され、クラッド部11bの外周面11cに被覆層20が形成されている。本発明においてコア部11aの直径DAとクラッド部11bの厚さT1は、特に限定されないが、100≦DA(μm)≦800、5≦T1(μm)≦100の範囲であることが好ましい。また、被覆層20の厚さT2は、500μm以上とすることで、光ファイバケーブル15の耐久性,耐熱性,耐湿性などの特性を極めて向上することができる。より好ましくは700μm以上である。なお、被覆層20の厚さT2の上限値は特に限定されないが、コストの点及び光ファイバケーブル15の可撓性の点から2000μm以下であることが好ましい。また、前述したようにクラッド部11bは、脂環式炭化水素基を含んでいるため、クラッド部11bと被膜層20との界面21の密着力が向上している。以上のように、光ファイバ11のポリマーに脂環式炭化水素基を導入することにより屈曲、耐湿度、引っ張り強度などを高くすることができる。本発明の脂環式炭化水素基を含んだ重合性モノマーを重合性組成物に含有することにより、被覆層を形成する溶融した樹脂と接しても光ファイバ11に熱的ダメージを押さえることができる。
【0052】
なお、本発明のプラスチック光ファイバケーブルの被覆層20の形成物資としては、好ましい溶融流動性がある熱可塑性ポリマーであれば、特に制限されるものではない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニール、エチレン酢酸ビニール共重合体、ポリエステル等があげられる。また、その被覆樹脂に難燃剤を添加することでプラスチック光ファイバケーブル15の耐燃性を向上できる。難燃剤には金属酸化物が好ましく、より好ましくは金属水酸化物である。具体的には水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどがある。なお、通常は、樹脂中に無機化合物を含有させるとその可撓性が弱くなったり、他の樹脂との密着性が減少するおそれがある。しかしながら、本発明では導光路(光ファイバ)11に脂環式炭化水素基を含むポリマーを用いているため、脂環式炭化水素基と被覆層形成用樹脂との分子間相互作用が向上するために、密着性の悪化を抑制できる。そこで、難燃剤に含リン化合物や含ハロゲン化合物を用いる必要が無くなり、光ファイバを廃棄する際に、含リン物質や含ハロゲン物質の処理工程を省略できる。また、被覆層20中のポリマー量も減少するため、塩素などを含む被覆層形成用樹脂の使用量も抑制できる。
【0053】
そして、この被覆層には、難燃剤を用いることにより、プラスチックから製造された光ファイバの燃焼を抑制している。しかしながら、難燃剤は含リン有機化合物や含ハロゲン有機化合物であるため、使用済みのプラスチック光ファイバケーブルを回収して廃棄する際に、リンやハロゲンが環境悪化の原因となるために、その使用量の低減が求められている。また、難燃剤としては、金属酸化物も知られているが、金属酸化物を含む物質を被覆層に用いると光ファイバとの密着し難い問題が生じて、プラスチック光ファイバケーブルの被覆層として用いることが困難な場合がある。
【0054】
本発明の被覆層(1次被覆層)の外周にさらに被覆層(2次被覆層)を設けても良い。本発明の光ファイバケーブルをさらに被覆することにより、より高機能なプラスチック光ファイバケーブル製造が可能となる。その際にその被覆の形態として、被覆材(被覆層形成材料)とプラスチック光ファイバの界面が全周にわたって接して被覆されている密着型の被覆と、被覆材とプラスチック光ファイバの界面に空隙を有するルース型被覆がある。ルース型被覆では、プラスチック光ファイバ1本あたりに必要とされる体積が増えるため嵩張ったり、たとえばコネクターとの接続部などにおいて被覆層を剥離した場合、その端面の空隙から水分が浸入して長手方向に拡散されるおそれがあるため、通常は密着型が好ましい。
【0055】
しかし、ルース型の被覆の場合、被覆と光ファイバとが密着していないので、ケーブルにかかる応力や熱とはじめとするダメージの多くを被覆材層で緩和させることができ、プラスチック光ファイバにかかるダメージを軽減させることができるため、使用目的によっては好ましく用いることができる。水分の伝播については、空隙部に流動性を有するゲル状の半固体や粉粒体を充填することで、端面からの水分伝播を防止でき、かつ、これらの半固体や粉粒体に耐熱や機械的機能の向上などの水分伝播防止と異なる機能をあわせ持つようにすることでより高い性能の被覆を形成できる。ルース型の被覆を製造するには、クロスヘッドダイの押出し口ニップルの位置を調整し減圧装置を加減することで空隙層を作ることができる。空隙層の厚みは前述のニップル厚みと空隙層を加圧/減圧することで調整が可能である。
【0056】
2次被覆層に難燃剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、昇光剤、滑剤などを導入してもよく、耐透湿性能を満足する限りにおいては、1次被覆層にも導入は可能である。なお、難燃剤については臭素を始めとするハロゲン含有の樹脂や添加剤や燐含有のものがあるが、毒性ガス低減などの安全性の観点で難燃剤として金属水酸化物を加える主流となりつつある。金属水酸化物はその内部に結晶水として水分を有しており、またその製法過程での付着水が完全に除去できないため、金属水酸化物による難燃性被覆は本発明の被覆(1次被覆層)の外層被覆(2次被覆層)として設けることが望ましい。
【0057】
また、複数の機能を付与させるために、様々な機能を有する被覆を積層させてもよい。例えば、本発明のような難燃化以外に、プラスチック光ファイバの吸湿を抑制するためのバリア層や水分を除去するための吸湿材料、例えば吸湿テープや吸湿ジェルを被覆層内や被覆層間に有することができ、また可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や発泡層等の緩衝材、剛性を挙げるための強化層など、用途に応じて選択して設けることができる。樹脂以外にも構造材として、高い弾性率を有する繊維(いわゆる抗張力繊維)および/または剛性の高い金属線等の線材を熱可塑性樹脂に含有すると、得られるケーブルの力学的強度を補強することができることから好ましい。
【0058】
抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が挙げられる。また、金属線としてはステンレス線、亜鉛合金線、銅線などが挙げられる。いずれのものも前述したものに限定されるものではない。その他に保護のための金属管の外装、架空用の支持線や、配線時の作業性を向上させるための機構を組み込むことができる。また、ケーブルの形状は使用形態によって、素線を同心円上にまとめた集合ケーブルや、一列に並べたテープ心線といわれる態様、さらにそれらを押え巻やラップシースなどでまとめた集合ケーブルなど用途に応じて選ぶことができる。また、本発明によって得られる光ファイバを用いたケーブルはステップインデックス型の光ファイバより、軸ずれに対する許容度が比較的高いため突き合せによる接合でも用いることができるが、端部に接続用光コネクタを用いて接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタとしては一般に知られている、PN型、SMA型、SMI型などの市販の各種コネクタを利用することも可能である。
【0059】
本発明の光学部材としての光ファイバ、および光ファイバケーブルを用いて光信号を伝送するシステムには、種々の発光素子、受光素子、他の光ファイバ、光バス、光スターカプラ、光信号処理装置、接続用光コネクター等で構成される。それらに関する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行),日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」,IEICE TRANS. ELECTRON., VOL. E84−C, No.3, MARCH 2001, p.339−344「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3, No.6, 2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」等の他、特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号等の各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号等の各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号等の公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号等の各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号等の公報に記載の光信号処理装置;特開2001−86537号等の公報に記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号等の公報に記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号等の各公報に記載のマルチファンクションシステム;等を参考にすることができる。
【0060】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。なお、説明は実施例1で詳細に行い、実施例2ないし実施例4並びに比較例1及び比較例2で実施例1と同じ条件の箇所の記載は省略した。また、各実験における実験結果は後に表1にまとめて示す。
【0061】
[実施例1]
予定するプリフォームの外径に対応する内径を有する十分な剛性を持った内径22mmおよび長さ600mmの円筒状の重合容器に、2種類のモノマー(イソボルニルメタクリレート(IBXMA)およびメタクリル酸−メチル(MMA)(両者とも水分を1000ppm以下に除去したもの))の混合溶液(質量比:IBXMA/MMA=1/4)を所定量注入した。重合開始剤としてジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)をモノマー混合溶液に対して0.5質量%、連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタンをモノマー混合溶液に対して0.62質量%配合した。上記モノマー混合溶液の注入された重合容器を60℃湯浴中に入れ、震盪を加えながら2時間予備重合を行った。その後、該重合容器を65℃下にて水平状態(円筒の高さ方向が水平となる状態)に保持し、3000rpmにて回転させながら3時間加熱重合した。その後、90℃で24時間の熱処理し、上記共重合体からなる円筒管を得た。
【0062】
次に、コア部の原料である2種類のモノマー(イソボルニルメタクリレート(IBXMA)およびメタクリル酸−メチル(両者とも水分を1000ppm以下に除去したもの))の混合溶液(質量比:IBXMA/MMA=1/4)と、屈折率調整成分としてジブチルフタレートをモノマー混合溶液に対して10質量%混合した溶液とを、精度0.2μmの四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過しつつ、該円筒管の中空部に濾液を直接注入した。重合開始剤としてジ−t−ブチルパーオキシドをモノマー混合溶液に対し0.016質量%、連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタンをモノマー混合溶液に対し0.27質量%配合した。この混合溶液等を注入した該円筒管を、該円筒管外径に対し9%だけ広い内径を持つガラス管内に挿入した状態で、加圧重合容器に垂直に静置した。その後、加圧重合容器内を窒素雰囲気に置換した後、0.1Mpaまで加圧し、90℃で、48時間加熱重合した。その後、0.4Mpaまで加圧し、120℃で、24時間加熱重合および熱処理を行い、プリフォームを得た。該プリフォームの重量平均分子量は10万6000であり、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、2.1であった。
【0063】
得られたプリフォームには、重合完了時に体積収縮による気泡の混入はなかった。このプリフォームを230℃の熱延伸により線引きを行い、直径500μmのプラスチック光ファイバを製造した。延伸工程において、プリフォームには気泡の発生は観察されず、安定して300mの光ファイバを得ることができた。得られた光ファイバの伝送損失値を測定したところ、波長650nmで160dB/km、波長850nmで1250dB/kmであった。この光ファイバに水酸化マグネシウム40%を含有したポリエチレンを溶融温度130℃で肉厚(厚さ)T2が550μmの被覆層20を形成し、光ファイバケーブルを得た。被覆層形成直後に、光ファイバケーブルの伝送損失を測定したところ、波長650nmで160dB/km、波長850nmで1250dB/kmであり、被覆層の形成による伝送損失の悪化は生じなかった。
【0064】
この光ファイバの直線引張り強度を測定した。引張り試験機として、(株)オリエンテック社製の「テンシロン万能試験機」を用いた。120mm〜130mmの長さの光ファイバをサンプルとして、試験機のチャックに装着した。試験中にサンプルが試験機把持部で断線しないように、試験機のチャックとして、空気圧で開閉するエアチャックを用いた。引張り長さ(チャック間長さ)を100mm、チャックの引張り速度を10mm/minとして、サンプルが破断するまで伸張させた。そして、サンプルに印加された荷重をロードセルにより測定してその最大荷重から求めたところ、90Nであった。そして、この光ファイバを温度が100℃、湿度が70%下で20時間放置した後に光ファイバの伝送損失を測定したところ、波長650nmで160dB/km、波長850nmで1250dB/kmであり、吸水などによる光学特性の悪化は生じなかった。
【0065】
[実施例2ないし実施例4]
被覆層の厚さを850μmとした以外は実施例1と同様な方法でプラスチック光ファイバケーブルを作り、実施例2とした。また、実施例1の被覆層から難燃剤である水酸化マグネシウムを除いたものを実施例3とした。また実施例1のプリフォーム作製時に添加した屈折率調整剤(ジブチルフタレート)を添加しなかったものを実施例4とした。
【0066】
[比較例1及び比較例2]
さらに実施例1と同様な方法でIBXMAを全量MMAに置き換えただけで、後は実施例1と同じものを比較例1とした。さらに実施例1と同様な方法で被覆層の厚さを450μmとしたものを、比較例2とした。
【0067】
【表1】
【0068】
表1から脂環式炭化水素基を有するIBXMAを導光路の重合性組成物にすることで、伝送損失の増加を抑制できることが分かる。また、被覆層中に金属酸化物(金属水酸化物)であるMg(OH)2 を用いることが好ましい。また、導光路は、コア部の屈折率を中心に向かって高める界面ゲル法を用いて作製しても良いし、コア部の屈折率を同一にしたものであっても良いことが分かる。また、被覆層を450μmの厚さで形成すると、時間経過と共に伝送損失の悪化が生じることも分かる。
【0069】
【発明の効果】
本発明のプラスチック光ファイバケーブルによれば、プラスチックからなるコア部とクラッド部とを有するプラスチック光ファイバケーブルにおいて、前記コア部が少なくとも前記一般式(1)で表わされる化合物を含有する重合性モノマーと、光学部材用重合性組成物と、から重合され、被覆層の厚さが500μm以上として前記プラスチックを被覆する被覆層が形成されているから、脆性の強い脂環式炭化水素基を側鎖に有する(メタ)アクリル酸エステルの樹脂に対して機械的特性が改良されバランスの取れたプラスチック光ファイバケーブルを提供することができる。
【0070】
本発明のプラスチック光ファイバケーブルの製造方法によれば、プラスチックからなるクラッド部とコア部とが少なくとも前記一般式(1)で表わされる化合物を含有する重合性モノマーを重合してなる樹脂とからなるプラスチック光ファイバを被覆してなるプラスチック光ファイバケーブルの製造方法において、被覆層の厚さが500μm以上となるように被覆しても、被覆層を形成する際に伝送損失の悪化がなく、さらに機械特性も改良されバランスのとれたプラスチック光ファイバケーブルを製造することが可能となる。また、前記重合工程に界面ゲル重合法を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプラスチック光ファイバケーブルの製造に用いられる被覆ラインの概略図である。
【図2】本発明のプラスチック光ファイバケーブルの断面図である。
【符号の説明】
11 プラスチック光ファイバ
15 プラスチック光ファイバケーブル
20 被覆層
T2 被覆層の厚さ
Claims (5)
- 前記コア部の中心部から外周方向に向けて屈折率が減少するように屈折率分布を有することを特徴とする請求項1に記載のプラスチック光ファイバケーブル。
- 前記被覆層に金属水酸化物を含有する層を少なくとも1層有することを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチック光ファイバケーブル。
- 前記被覆層として金属水酸化物を含有する層を被覆する工程を含む工程を有することを特徴とする請求項4に記載のプラスチック光ファイバケーブルの製造方法。
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US7515809B2 (en) | 2007-02-28 | 2009-04-07 | Hitachi Cable Ltd. | Heat-resisting plastic optical fiber and manufacturing method thereof |
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