JP2004212723A - マルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ - Google Patents
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Abstract
【課題】伝送損失が低く、湿熱による伝送損失の悪化が少なく、しかも機械的特性もよい、諸性能のバランスが良くとれたマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバを提供する。
【解決手段】脂環式炭化水素を有する(メタ)アクリ酸エステルを含有する重合性モノマーの単独重合体または共重合体からなり、互いの屈折率が異なる3以上の層を同心円状に積層してなる光ファイバであって、内側の層から外側の層に向かって屈折率が二次分布的に低下しているマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバである。
【選択図】 なし
【解決手段】脂環式炭化水素を有する(メタ)アクリ酸エステルを含有する重合性モノマーの単独重合体または共重合体からなり、互いの屈折率が異なる3以上の層を同心円状に積層してなる光ファイバであって、内側の層から外側の層に向かって屈折率が二次分布的に低下しているマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック光学部材の技術分野に属し、特に、屈折率分布型プラスチック光ファイバ(GI−POFと略記することがある)に準ずる、広帯域化が可能な多段階屈折率分布を有するマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ(MSI−POFと略記することがある)およびその製造方法の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック光学部材は、同一の構造を有する石英系の光学部材と比較して、製造および加工が容易であること、および低価格であること等の利点があり、近年、光ファイバおよび光レンズ、光導波路など種々の応用が試みられている。特にこれら光学部材の中でも、プラスチック光ファイバ(POFと略記することがある)は、素線が全てプラスチックで構成されているため、伝送損失が石英系と比較してやや大きいという短所を有するものの、良好な可撓性を有し、軽量で、加工性がよく、石英系光ファイバと比較して、口径の大きいファイバとして製造し易く、さらに低コストに製造可能であるという長所を有する。従って、伝送損失の大きさが問題とならいない程度の短距離用の光通信伝送媒体として種々検討されている。
【0003】
プラスチック光ファイバは、一般的には、重合体をマトリックスとする有機化合物からなる芯(本明細書において「コア部」と称する)と、コア部と屈折率が異なる(一般的には低屈折率の)有機化合物からなる外殻(本明細書において「クラッド部」と称する)とから構成される。特に、中心から外側に向かって屈折率の大きさに分布を有するコア部を備えた屈折率分布型プラスチック光ファイバは、伝送する光信号の帯域を大きくすることが可能なため、高い伝送容量を有する光ファイバとして最近注目されている(例えば、特許文献1および2参照)。この様な屈折率分布型光学部材の製法の一つに、界面ゲル重合を利用して、光学部材母材(本明細書において、「プリフォーム」と称する)を作製し、その後、前記プリフォームを延伸する方法が提案されている。
【0004】
ところで、まず、GI−POFの問題点は生産性の低さにある。上記界面ゲル重合を利用したプリフォームロッドは、コア重合工程でのドーパントの分子の拡散状態を利用して屈折率分布を形成するものであるから、該ロッドの太さや長さに限界がある。その観点から、ポリメチルメタクリレート(PMMAと略記することがある)を主体としたMSI−POFの提案がなされている(例えば、特許文献3、4および5参照)。MSI−POFは、GI−POFに比べて伝送容量が低下する傾向にあるが、それが問題にならない短距離用途としては用いることが可能である。一方、光伝送体には、前述した様に、伝送損失が小さいことが要求されるとともに、吸湿性および耐熱性にも優れた材料であることが要求される。PMMAは吸湿性が大きい事が知られている。そのため、例えばメタクリル酸シクロヘキシルとメタクリル酸メチル(MMA)からなる共重合体などが提案されているが、吸湿性を低減するためには、メタクリル酸シクロヘキシルを比較的多量に使用する必要がありなど、耐熱性の観点から、使用範囲が制限される。メタクリル酸ベンジルエステル−MMAの共重合体もメタクリル酸シクロヘキシル−MMA共重合体と同じ物性の素材であり、やはり耐熱性の観点から、使用範囲が制限される。一方、プラスチック構造中の水素をフッ素等のハロゲンや重水素に置換することが提案されている。しかし、フッ素含有モノマーの単独重合体は、材料安定性または密着性などにおいて不都合が生じる場合があり、光伝送体に要求される性能の全てを備えた材料ではない。なお、素材の選択によって耐熱性を向上させるものとして、炭素原子を介してアルキル基を導入したモノマーからなる重合体が示されているが(特許文献6参照)、これらのTgはPMMAに比して高くないため(非特許文献1参照)、充分な耐熱性を有しないと推測される。さらに、これらはC−H結合のHをClやBrという大きな原子で置換しており、この様な置換は反応性の低下を招くため好ましくない。
【0005】
【特許文献1】
特開昭61−130904号公報
【特許文献2】
WO93/08488号公報
【特許文献3】
特開平10−111414号公報
【特許文献4】
特開平10−133036号公報
【特許文献5】
特開平11−52146号公報
【特許文献6】
特開平8−220349号公報
【非特許文献】
H.Kawai et al.,SPIE Vol.896 Replication and Molding of Optical Components,69−78(1988)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、良好な伝送能を有し、かつ耐湿熱性が改善されるなど、種々の特性がバランスよく改良されたマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する手段は以下の通りである。
[1] 下記一般式(1)で表される重合性モノマーの単独重合体または共重合体を含有し、互いの屈折率が異なる3層以上の複数層が同心円状に積層された光ファイバであって、内側の層から外側の層に向かって屈折率が二次分布的に低下しているマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ。
【0008】
一般式(1)
【化3】
【0009】
式中、X1は水素原子(H)または重水素原子(D)を表し、X1は同一でも異なっていてもよい。Y1はH、D、CH3基またはCD3基を表し、R1は炭素原子数7〜20個の脂環式炭化水素基を表す。
【0010】
[2] 上記一般式(1)で表される重合性モノマーと下記一般式(2)で表される重合性モノマーとの共重合体を含有し、互いの屈折率が異なる3層以上の複数層が同心円状に積層された光ファイバであって、内側の層から外側の層に向かって屈折率が二次分布的に低下しているマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ。
【0011】
一般式(2)
【化4】
【0012】
式中、X2はHまたはDを表し、2つのX2は同一でも異なっていてもよい。Y2はH、D、CH3基またはCD3基を表し、R2は1〜15個のフッ素置換基を有する炭素原子数1〜7個のフッ化アルキル基を表す。
【0013】
[3] 前記複数層の最外層のさらに外側に、前記最外層の屈折率より3%以上屈折率の低い透明樹脂層を有する[1]または[2]のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ。
[4] 前記複数層の屈折率差が、前記一般式(1)で表される重合性モノマーと他のモノマーとの共重合比の違いに基づく[2]または[3]に記載のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ。
[5] 前記複数層の屈折率差が、各々の層が含有する前記重合性モノマーと異なる化合物の濃度の違いに基づく[1]または[3]に記載のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ(MSI−POF)は、互いに屈折率の異なる複数層を同心円状に積層した構造を有する。この構造により、ファイバ内に内側の層から外側の層に向かって階段状に屈折率勾配が形成される。屈折率分布の効果は、屈折率の段階的な変化が3段階(好ましくは5段階)以上、即ち、屈折率の異なる層を3層(好ましくは5層)以上積層することにより得られる。形成する層の数が多くなる程、屈折率の勾配は滑らかになり、従来のGI型ファイバに近い効果が得られるが、一方で、積層する層の数を増やすと製造コストが増加し、GI型ファイバと同程度になってしまう。性能とコストの双方をバランスよく備えたMSI−POFとするには、積層は3層以上であればよいが、3〜20層程度が好ましく、3〜10層程度がより好ましい。
【0015】
互いに屈折率の異なる複数層は、下記一般式(1)で表される重合性モノマーの単独重合体または共重合体を含有する。
【0016】
一般式(1)
【化5】
【0017】
式中、X1は水素原子(H)または重水素原子(D)を表し、2つのX1は同一でも異なっていてもよい。Y1はH、D、CH3基またはCD3基を表し、R1は炭素原子数7〜20個の脂環式炭化水素基を表す。
【0018】
前記一般式(1)で表される重合性モノマーは、R1が炭素原子数7〜20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートである。具体的な例としては、(メタ)アクリル酸(ビシクロ−2,2,1−ヘプチル−2)、(メタ)アクリル酸−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5−ジメチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−5−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5,8−トリエチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5−ジメチル−8−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−5−イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−1−イルメチル、(メタ)アクリル酸−1−メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシ−2,6,6−トリメチル−ビシクロ〔3,1,1〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸−3,7,7−トリメチル−4−ヒドロキシ−ビシクロ〔4,1,0〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フエンチル、(メタ)アクリル酸−2,2,5−トリメチルシクロヘキシルなどが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステルの中でも、メタクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フエンチル、メタクリル酸1−メンチルなどが好ましく、メタクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸−1−メンチルが特に好ましい。
【0019】
前記重合性モノマー(1)は、(メタ)アクリル酸あるいはその酸塩化物を、R1OH(R1は前記一般式(1)中のR1と同義である)で表される脂環式炭化水素・モノオールでエステル化すること;(メタ)アクリル酸をカンフェンなどの脂環式炭化水素前駆体とを硫酸、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒でエステル化すること;によって製造することができる。
また、(メタ)アクリル基のC−H(即ち、前記一般式(1)中のX1およびY1)は重水素で置換されているほうが好ましく、その置換率は95%以上100%未満である。さらに(メタ)アクリレート側鎖(前記一般式(1)中のR1)のC−Hも重水素に置換されていてもよい。
【0020】
本発明においては、前記複数層が、光学特性、吸水率、屈折率分布の付与の容易性を鑑みると、上記重合性モノマー(1)と、下記一般式(2)で表される重合性モノマー(以下、「重合性モノマー(2)」という場合がある)とを成分とする共重合体を含有するのが好ましい。
【0021】
一般式(2)
【化6】
【0022】
前記一般式(2)中、X2はHまたはDを表し、2つのX2は同一でも異なっていてもよい。Y2はH、D、CH3基またはCD3基を表し、R2は1〜15個のフッ素置換基を有する炭素原子数1〜7個のフッ素化アルキル基を表す。
【0023】
重合性モノマー(2)は、R2が1〜15個のフッ素置換基を有する炭素原子数1〜7個のフッ化アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーである。重合性モノマー(2)の具体例としては、メタクリル酸モノフルオロメチル、メタクリル酸ジフルオロエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸1H、1H−ペンタフルオロプロピル、メタクリル酸1H、1H、3H−テトラフルオロプロピル、メタクリル酸2H−ヘキサフルオロ−2−プロピル、メタクリル酸ヘプタフルオロ−2−プロピル、メタクリル酸パーフルオロヘキシルメチル、メタクリル酸パーフルオロ−t−ブチルなどが挙げられる。中でも、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸2H−ヘキサフルオロ−2−プロピル、メタクリル酸ヘプタフルオロ−2−プロピル、メタクリル酸パーフルオロヘキシルメチル、メタクリル酸パーフルオロ−t−ブチル、メタクリル酸−1H、1H、3H−テトラフルオロプロピルが好ましく、さらにメタクリル酸−2H−ヘキサフルオロ−2−プロピル、メタクリル酸−1H、1H、3H−テトラフルオロプロピル、メタクリル酸パーフルオロ−t−ブチルが特に好ましい。
【0024】
また、(メタ)アクリル基のC−H(前記一般式(2)中、X2およびY2)は重水素に置換されているほうが好ましく、その置換率は95%以上100%未満である。さらに(メタ)アクリレート側鎖(前記一般式(2)中、R2)のC−Hも重水素に置換されていてもよい。
【0025】
本発明において、前記複数層は、前記重合性モノマー(1)の単独重合体または共重合体からなり、好ましくは、前記重合性モノマー(1)および(2)の共重合体からなる。前記重合性モノマー(1)とともに、または重合性モノマー(1)および(2)とともに、これら以外の重合性モノマーを用いることもできる。他の重合性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル系化合物として、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸トリクロロフェニル、メタクリル酸トリブロモフェニル、メタクリル酸ペンタクロロフェニル、メタクリル酸ペンタブロモフェニル等;スチレン系化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等;ビニルエステル類として、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等;マレイミド類として、N―n−ブチルマレイミド、N―tert−ブチルマレイミド、N―イソプロピルマレイミド、N―シクロヘキシルマレイミド等;が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この中でも(メタ)アクリル酸エステル系化合物が好ましく、特にメタクリル酸メチルが好ましい。これらのモノマーも重水素置換されているのが好ましい。
【0026】
前記重合性モノマー(1)、または前記前記重合性モノマー(1)と(2)との重合は、一般的には、重合開始剤によって進行させる。重合開始剤としては、用いるモノマーや重合方法に応じて適宜選択することができるが、過酸化ベンゾイル(BPO)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−t−ブチルパーオキシド(PBD)、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル4,4,ビス(t−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物、または2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’―アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジーt−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は2種類以上を併用してもよい。
【0027】
前記重合性モノマー(1)、または前記重合性モノマー(1)と(2)とは、連鎖移動剤の存在下で重合させるのが好ましい。前記連鎖移動剤は、主に重合体の分子量を調整するために用いられる。連鎖移動剤の存在下で重合させると、重合性モノマーの重合速度および重合度を前記連鎖移動剤によってより制御することができ、重合体の分子量を所望の分子量に調整することができる。例えば、時前記重合体からなる複数層を同心円状に積層してなる円筒管を作製した後、延伸により線引きして、光伝送体の形態にする場合は、分子量を調整することによって延伸時における機械的特性を所望の範囲とすることができ、生産性の向上にも寄与する。前記連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択することができる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
【0028】
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いるのが好ましく、中でも、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、前記連鎖移動剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
屈折率が互いに異なる重合体からなる複数層を形成する方法には、主に2種ある。まず、第一の方法では、各々の層を、重合性モノマー(1)の重合体と該重合体の屈折率とは異なる化合物とを含有する組成物を用いて形成する。前記化合物の各々の層中の添加量に差を持たせることで、互いに屈折率の異なる複数の層を形成することができる。第二の方法では、各々の層を、屈折率が異なる複数種の重合性モノマーの共重合体から形成する。各々の層を構成している共重合体の組成比に差を持たせることで、互いに屈折率の異なる複数の層を形成することができる。
【0030】
まず、前者の方法について説明する。
前記重合性モノマー(1)の重合体とは異なる屈折率の化合物としては、低分子、オリゴマー、高分子などが挙げられるが、該重合体と相溶する化合物であれば、限定されない。ただし、該重合体との相溶性を鑑みると、低分子化合物が好ましい。その具体的な例を挙げるとすれば、WO93/08488や特開平11−142657号公報に記載されている様な屈折率調整剤などが挙げられる。例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジルnブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ビフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)、硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体などが挙げられる。硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体については、下記に具体的に示す化合物の中から適宜選ばれる。中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOおよび硫化ジフェニル誘導体が好ましい。なお、これらの化合物中に存在する水素原子を重水素原子に置換した化合物も広い波長域での透明性を向上させる目的で用いることができる。
【0031】
【化7】
【0032】
前記屈折率の異なる化合物は、溶融状態にある前記重合体に添加してもよいし、前記重合体の溶液に添加してもよい。また、前記屈折率の異なる化合物の存在下で、前記重合性モノマー(1)を重合させることによって重合体中に混合させてもよい。調製の容易さの点において、前記屈折率の異なる化合物の存在下、前記重合性モノマー(1)を重合して、前記化合物が混合された重合体を得るのが好ましい。
【0033】
次に、後者の方法について説明する。
屈折率の異なる複数種類のモノマーからなる共重合体としては、(a):重合性モノマー(1)と、それと屈折率の異なる重合性モノマーとの共重合系、(b):重合性モノマー(1)と重合性モノマー(2)(あるいは、さらにその他の屈折率の異なるモノマー)との共重合系等が挙げられる。特に、これら共重合系は、耐熱性の観点で前者(ポリマー+(低分子あるいはオリゴマー)添加剤)より好ましい。上記(a)のモノマーの具体的な組み合わせとしては、イソボルニルメタクリレート/メチルメタクリレート/フェニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート/メチルメタクリレート/トリブロモフェニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート/メチルメタクリレート/ペンタブロモフェニルメタクリレートなどが挙げられる。上記(b)のモノマーの具体的な組み合わせとしては、トリフルオロエチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート/メチルメタクリレート/ノルボルニルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート/ノルボルニルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート/メチルメタクリレート/ノルボルニルメタクリレートなどが挙げられる。それぞれの組成比を調整することにより所望の屈折率の異なる複数の樹脂を得ることができる。勿論、本発明の主旨に反さない限り、上記の組み合わせに限定されるわけではない。
【0034】
本発明では、前記複数層の各々を、上記重合性モノマー(1)、または重合性モノマー(1)および(2)を重合性成分とする重合体を用いて形成しているので、作製される光学部材の光伝送損失を大きく軽減することができる。特に、吸湿による光伝送損失の増大を顕著に軽減することができる。また、重合性モノマーの重合速度および重合度を、重合開始剤および所望により添加される連鎖移動剤によって制御し、重合体の分子量を所望の分子量に調整することができる。例えば、得られた重合体を延伸により線引きして、光ファイバとする場合は、連鎖移動剤によって製造される重合体の分子量(好ましくは1万〜100万、より好ましくは3万〜50万)を調整すれば、延伸時における機械的特性を所望の範囲とすることができ、生産性の向上にも寄与する。
【0035】
本発明において、各層の形成に用いられる重合体は、公知の方法で調製できる。溶液重合、懸濁重合、塊状重合のいずれも用いることが可能であるが、伝送損失の観点から、塊状重合系が最も好ましく、異物や酸素の混入による着色を防ぐ為、外部と遮断された系の中で、重合するのが好ましい。
【0036】
つぎに、本発明のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ(MSI−POF)の製造法について説明する。その製造法は、大きく分類すると2つに分かれる。ひとつは、屈折率の異なる重合体からなる層を順次同心円状に積層して作製する方法と、予め製造した屈折率の異なる複数種の重合体もしくは重合体組成物を同時に成形してプリフォームを得、連続して延伸する方法とがある。
【0037】
まず、前者について説明する。
各層を順次作製する方法としては、さらに2通りあり、外側から内側へと順次層を作製する方法とその反対の方法がある。簡便さから前者のほうが好ましい。前者について説明する。屈折率n1の第一の樹脂からなる外枠をまず作製し、その内側にn1より高い屈折率n2の第二の樹脂の溶融物もしくは溶液、または第二の樹脂を形成可能な重合性組成物(低粘性のポリマーゾルでもよい)を供給し、回転しながら加熱し、溶融拡散もしくは脱溶媒、または重合して、第二の層を設ける。この操作を繰り返して作製する方法である。操作には、若干手間がかかるが、GIに近い光学性能が得られる可能性がある。後者は、ディップコート法、CVD法、溶液塗布乾燥法などを利用するものである。
【0038】
次に、後者、即ち、一度にMSI−POFを作製する方法である。
この方法には、主に2種ある。ひとつは、複数の異なる屈折率を有する樹脂の溶融体を、例えば、多層複合紡糸ダイに供給し、溶融押し出し、プリフォームを得、そのまま連続して延伸してファイバを得る方法である。もう一つは、予め複数の異なる屈折率で、所望の屈折率分布になるように設計された樹脂のパイプを重ね合わせ(ただし、中心部は一番屈折率の高いポリマーロッド)、それらの重ね合わせたパイプを加熱溶融して、延伸してファイバを得る方法である。
これらの中で、性能と、経済的な観点からは、連続重合をして、そのまま複数種類の屈折率の異なる樹脂を得、そのまま溶融状態で、例えば多層複合紡糸ダイに供給し、溶融押し出しし、さらに延伸して本発明のMSI−POFを得るのが好ましい。製造には、例えば、特開平10−133036号公報の図3に記載されている多層複合紡糸ダイを用いることができる。
【0039】
本発明では各々の層は、その屈折率がファイバの内側の層から外側の層に向かって屈折率が二次分布的に低下している。本明細書において「二次分布的」とは、厳密な意味での二次分布のみを意味するのではなく、二次分布に近似する種々の分布を含む広い意味で用いるものとし、段階的な変化に基づく分布も勿論含まれる。屈折率の大きさを縦軸とし、断面中心から半径方向の距離を横軸とした場合に、中心から遠ざかるに従って、実質的に左右対称に屈折率が低下している分布は、本明細書において「二次元的分布」に含まれるものとする。なお、本発明では、各層の屈折率が一様である態様(図1(a)、図中、nx−1層およびnx層は、本発明のファイバ中の隣接する層であって、nx−1層がより内側に位置する。図1(b)および(c)においても同様である)に限られず、各層の屈折率の大きさが分布している態様(図1(b)および(c)も含まれる。また、屈折率が一様な層及び屈折率が分布した層の双方を含む態様であってもよい。層内に屈折率分布がある層を含む態様(図1(b)および(c))は、屈折率が一様な層のみが連続している態様(図1(a))と比較して、層数を減らすことができる。各層が屈折率に分布を持つ態様は、例えば、前述の製造方法において屈折率調整剤の濃度が変化するように重合の進行方向を制御して重合を行ったり、もしくはポリマーロッドやプリフォーム形成後に加熱するなどの操作によって屈折率調整剤を拡散させることにより製造することができる。
本発明のプラスチック光ファイバでは、この屈折率の差の目安は、ファイバの中心部と最外層において、ナトリウムD線に対する屈折率ndが温度20℃において0.01以上である。また、隣接する層間の屈折率差については、形成する層の数などに応じて異なるが、5〜10層程度形成する場合は、隣接する層間で屈折率が0.01以上異なっているのが好ましい。
【0040】
さらに本発明においては、前記したMSI−POFの素線の外側に、開口数のアップと素線の機械的強度を向上させることを目的として、最外層のさらに外側に透明樹脂からなるクラッド層を設けるのが好ましい。
本発明においてクラッド層に用いられる透明樹脂としては、屈折率が内側の多層構造における二次分布の屈折率よりも低い屈折率を有するものである。具体的には、コア部の最外層の屈折率より少なくとも3%低いことが好ましい。これにより、開口数アップが図られる。作製方法としては、前記した多層複合紡糸ダイさらに1層を追加して、内側の多層構造と同時に一体的に製造してもよいし、また、内側の多層構造のみを前記の多層複合紡糸ダイにて製造した後、クロスヘッドダイやコーティング法などによりクラッド層樹脂を被覆してもよい。
【0041】
前記透明クラッド層用の樹脂としては、屈折率が1.3〜1.44程度のものが使用できる。コア部の最外層の樹脂の屈折率に注意して選択する。勿論、該樹脂との密着性も選択の重要なポイントである。クラッド層用樹脂としては、例えばフッ化ビニリデンとテトラフロロエチレン共重合体、フッ化ビニリデンとヘキサフロロプロペン共重合体、フルオロアルキルメタクリレート共重合体などが挙げられるがこれに限定されるものではない。前記クラッド用樹脂は、市販されており、ペレット状のものを溶融して用いればよい。また、クラッド層の厚さとしては、5〜50μmであることが好ましい。
【0042】
上記工程を経て製造されたプラスチック光ファイバは、そのままの形態で種々の用途に供することができる。また、保護や補強を目的として、さらに、その外側に被覆層を有する形態、繊維層を有する形態、および/または複数のファイバを束ねた形態で、種々の用途に供することができる。被覆工程は、例えばファイバ素線に被覆を設ける場合では、ファイバ素線の通る穴を有する対向したダイスにファイバ素線を通し、対向したダイス間に溶融した被覆用の樹脂を満たし、ファイバ素線をダイス間を移動させることで被覆されたファイバを得ることができる。被覆層は可撓時に内部のファイバへの応力から保護するため、ファイバ素線と融着していないことが望ましい。さらにこの時、溶融した樹脂と接することでファイバ素線に熱的ダメージを加わるので、極力ダメージを押さえるような移動速度や低温で延伸できる樹脂を選ぶことも望ましい。この時、被覆層の厚みは被覆材の物性値や素線の引き抜き速度、被覆層の冷却温度による。
【0043】
得られたファイバは、被覆した後に、プラスチック光ファイバケーブルとするのが好ましい。被覆の形態として、被覆材とプラスチック光ファイバ素線の界面が全周にわたって接して被覆されている密着型の被覆の形態、被覆材とプラスチック光ファイバ素線の界面に空隙を有するルース型被覆の形態がある。ルース型被覆では、例えば、コネクターとの接続部などにおいて被覆層を剥離した場合、その端面の空隙から水分が浸入して長手方向に拡散されるおそれがあるため、通常は密着型が好ましい。
しかし、ルース型の被覆は、被覆と素線が密着していないので、ケーブルにかかる応力や熱をはじめとするダメージの多くを被覆材層で緩和させることができる。素線にかかるダメージを軽減させることができるので、使用目的によっては好ましく用いることができる。水分の伝播については、空隙部に流動性を有するゲル状の半固体や粉粒体を充填すると、端面からの水分伝播を防止できる。さらに、これらの半固体や粉粒体が、耐熱や機械的機能の向上などの水分伝播防止と異なる機能を併せ持つようにすると、高い性能の被覆を形成できる。
ルース型の被覆を行うには、クロスヘッドダイの押出し口ニップルの位置を調整し、減圧装置を加減することで空隙層を作製することができる。空隙層の厚みは前述のニップル厚みと空隙層を加圧/減圧することで調整可能である。
【0044】
さらに、必要に応じて被覆層(1次被覆層)の外周に、さらに被覆層(2次被覆層)を設けてもよい。2次被覆層に難燃剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、昇光剤、滑剤などを含有させてもよく、耐透湿性能を満足する限りにおいては、1次被覆層に含有させることも可能である。
なお、難燃剤については臭素を始めとするハロゲン含有の樹脂や添加剤や燐含有のものがあるが、毒性ガス低減などの安全性の観点で、難燃剤として金属水酸化物を加えることが主流となりつつある。金属水酸化物はその内部に結晶水として水分を含んでおり、またその製法過程での付着水が完全に除去できないため、金属水酸化物による難燃性被覆は、対透湿性被覆(1次被覆層)の外層被覆(2次被覆層)として設けることが望ましい。
また、複数の機能を付与させるために、様々な機能を有する被覆層を積層してもよい。例えば、難燃化以外に、素線の吸湿を抑制するためのバリア層や水分を除去するための吸湿材料、例えば吸湿テープや吸湿ジェルを被覆層内や被覆層間に有することができ、また可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や発泡層等の緩衝材、剛性を挙げるための強化層など、用途に応じて選択して設けることができる。樹脂以外にも構造材として、高い弾性率を有する繊維(いわゆる抗張力繊維)および/または剛性の高い金属線等の線材を熱可塑性樹脂に含有すると、得られるケーブルの力学的強度を補強することができることから好ましい。
抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が挙げられる。また、金属線としてはステンレス線、亜鉛合金線、銅線などが挙げられる。いずれのものも前述したものに限定されるものではない。その他に保護のための金属管の外装、架空用の支持線や、配線時の作業性を向上させるための機構を組み込むことができる。
【0045】
また、ケーブルの形状は使用形態によって、素線を同心円上にまとめた集合ケーブルや、一列に並べたテープ心線といわれる態様、さらにそれらを押え巻やラップシースなどでまとめた集合ケーブルなど用途に応じて選ぶことができる。また、本発明によって得られるの光ファイバを用いたケーブルはステップインデックス型の光ファイバより、軸ずれに対する許容度が比較的高いため突き合せによる接合でも用いることができるが、端部に接続用光コネクタを用いて接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタとしては一般に知られている、PN型、SMA型、SMI型などの市販の各種コネクタを利用することも可能である。
【0046】
本発明の光学部材としての光ファイバ、および光ファイバケーブルを用いて光信号を伝送するシステムには、種々の発光素子、受光素子、他の光ファイバ、光バス、光スターカプラ、光信号処理装置、接続用光コネクター等で構成される。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」,などを参考にすることができる。前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線、車両や船舶などの内部配線、光端末とデジタル機器、デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LAN等をはじめとする、高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。
【0047】
さらに、特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号等の各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号等の各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号等の公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号等の各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号等に記載の光信号処理装置;特開2001−86537号等に記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号等に記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号等の各公報に記載のマルチファンクションシステム;やIEICE TRANS. ELECTRON., VOL. E84−C, No.3, MARCH 2001, p.339−344「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3, No.6, 2000 476頁〜480ページ「光シートバス技術によるインタコネクション」に記載されたシステムなどを参考に、各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを使用した、より高度な光伝送システムを構築することができる。
以上の光伝送用途以外にも照明、エネルギー伝送、イルミネーション、各種センサなどの分野にも用いることができる。
【0048】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0049】
[実施例1]
図2に示した各層の厚みが等間隔で構成されている多層複合紡糸ダイを用いて7層構造のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバを製造した。図2中、1〜7は樹脂受け入れ口であり、8はガイドパイプである。
精製された原料モノマーとして、メチルメタクリレート(MMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(6FM)を用い、ジt−ブチルパーオキシド(PBD)、n−ラウリルメルカプタン(n−LM)を用いて重合体を得た。重合装置は7系列からなる1段の完全混合重合反応器と引き続き脱揮押出機とギヤポンプからなる。それぞれの重合体供給系列から上記3種のモノマーの共重合比率を調節した重合体を得て、多層複合紡糸ダイの供給口に供給した。各重合体の組成と屈折率は表1に示す通りである。重合体のメルトフローインデックスは230℃で1〜6g/10分の範囲であった。工程中の重合体の温度を200〜220℃に保ち、多層複合紡糸ダイの出口から排出されたストランドを引き伸ばし、延伸処理を行い、直径0.50mmのプラスチック光ファイバのコア部を得た。さらにそのコア部の外側に、クロスヘッドダイを介してクラッド樹脂を被覆した。該クラッド樹脂としては、屈折率が1.36のPVDF樹脂を用いた。
本実施例のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバの屈折率分布を図3に模式的に示す。
【0050】
上記クラッド樹脂の被覆層の厚みは20μmで、最終的な光ファイバの直径は0.54mmであった。この光ファイバに黒色ポリエチレンで被覆(厚み0.8mm)を行い、ケーブルを得、伝送損失を測定したところ、650nmで195dB/km、850nmで2500dB/kmであった。
さらに、得られたファイバを13mの長さに切り取り、10mのファイバをタバイエスペック(株)製小型環境試験機SH−240に静置し、環境試験機外部において、両端から2mおよび1mの長さのファイバをそれぞれ、メレスグリオ(株)製850nmバンドパスフィルタを挿入された安藤電気(株)製白色光源(AQ4303B)と、アンリツ(株)光パワーメータ(ML910B)にアンリツ製FCコネクタ(MA9013A)を用いて接合した。その後、恒温恒湿槽の温度を70℃−95%相対湿度に設定し、50時間後の光強度の減衰量を測定した所、8dBであった。
次に、該被覆ファイバについての曲げ損失試験を行った。特開平7−244220号公報に記載の実験方法によって曲げ試験を実施した。実験条件は、マンドレルの直径60mmで、該ファイバを該マンドレルに90度に1回巻きつけてロス分を測定した。該ロスの増大の最大値は0.1dBであった。また、伝送帯域は1GHz・50m以上が認められた。
【0051】
【表1】
【0052】
[比較例1]
実施例1と同様に多層複合紡糸ダイを用いて7層構造のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバを製造した。
精製された原料モノマーとして、メチルメタクリレート(MMA)、ベンジルメタクリレート(BzMA)を用い、ジt−ブチルパーオキシド(PBD)、n−ラウリルメルカプタン(n−LM)を用いて重合体を得た。重合装置は7系列からなる1段の完全混合重合反応器と引き続き脱揮押出機とギヤポンプからなる。それぞれの重合体供給系列から上記2種のモノマーの共重合比率を調節した重合体を得て、多層複合紡糸ダイの供給口に供給した。各重合体の組成と屈折率は表2に示す通りである。重合体のメルトフローインデックスは230℃で1〜6g/10分の範囲であった。工程中の重合体の温度を200〜220℃に保ち、多層複合紡糸ダイの出口から排出されたストランドを引き伸ばし、延伸処理を行い、直径0.50mmのプラスチック光ファイバのコア部を得た。さらにそのコア部の外側に、クロスヘッドダイを介してクラッド樹脂を被覆した。該クラッド樹脂としては、屈折率が1.403のPVDF樹脂を用いた。本実施例のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバの屈折率分布は、実施例1と同様に図3に示す構造となった。
【0053】
上記クラッド樹脂の被覆層の厚みは20μmで、最終的な光ファイバの直径は0.54mmであった。この光ファイバに黒色ポリエチレンで被覆(厚み0.8mm)を行い、ケーブルを得、伝送損失を測定したところ、650nmで200dB/km、850nmで3200dB/kmであった。
さらに、得られたファイバを13mの長さに切り取り、10mのファイバを実施例1と同一の小型環境試験機SH−240に静置し、環境試験機外部において、両端から2mおよび1mの長さのファイバをそれぞれ、メレスグリオ(株)製850nmバンドパスフィルタを挿入された安藤電気(株)製白色光源(AQ4303B)とアンリツ(株)光パワーメータ(ML910B)にアンリツ製FCコネクタ(MA9013A)にて接合した。その後、恒温恒湿槽の温度を70℃−95%相対湿度に設定し、50時間後の光強度の減衰量を測定した所、91dBであった。
次に、該被覆ファイバについての曲げ損失試験を行った。特開平7−244220号公報に記載の実験方法によって曲げ試験を実施した。実験条件は、マンドレルの直径60mmで、該ファイバを該マンドレルに90度に1回巻きつけてロス分を測定した。該ロスの増大の最大値は0.1dBであった。また、伝送帯域は1GHz・50m以上が認められた。
【0054】
【表2】
【0055】
[実施例2〜4および比較例2]
実施例1と同様に多層複合紡糸ダイを用いて7層構造のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバを製造した。用いたモノマー種を表3のように変更した以外は実施例1と同様な方法で作製した。用いたモノマーの構造式は、下記に示す。作製されたMSI−POFのコア部の最外層と最内層の屈折率および評価結果を実施例1、比較例1と併せて表3に記載した。
【0056】
【表3】
【0057】
【化8】
【0058】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば、良好な光伝送能を有する、特に伝送損失および湿熱による伝送損失の悪化が軽減された、さらに機械特性も改良されバランスのとれたマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ファイバを構成する各層の屈折率の分布例を示す模式図である。
【図2】実施例で用いた多層複合紡糸ダイの縦断面図と横断面図である。
【図3】実施例で作製した光ファイバの屈折率の段階的変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1〜7 樹脂受け入れ口
8 ガイドパイプ
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック光学部材の技術分野に属し、特に、屈折率分布型プラスチック光ファイバ(GI−POFと略記することがある)に準ずる、広帯域化が可能な多段階屈折率分布を有するマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ(MSI−POFと略記することがある)およびその製造方法の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック光学部材は、同一の構造を有する石英系の光学部材と比較して、製造および加工が容易であること、および低価格であること等の利点があり、近年、光ファイバおよび光レンズ、光導波路など種々の応用が試みられている。特にこれら光学部材の中でも、プラスチック光ファイバ(POFと略記することがある)は、素線が全てプラスチックで構成されているため、伝送損失が石英系と比較してやや大きいという短所を有するものの、良好な可撓性を有し、軽量で、加工性がよく、石英系光ファイバと比較して、口径の大きいファイバとして製造し易く、さらに低コストに製造可能であるという長所を有する。従って、伝送損失の大きさが問題とならいない程度の短距離用の光通信伝送媒体として種々検討されている。
【0003】
プラスチック光ファイバは、一般的には、重合体をマトリックスとする有機化合物からなる芯(本明細書において「コア部」と称する)と、コア部と屈折率が異なる(一般的には低屈折率の)有機化合物からなる外殻(本明細書において「クラッド部」と称する)とから構成される。特に、中心から外側に向かって屈折率の大きさに分布を有するコア部を備えた屈折率分布型プラスチック光ファイバは、伝送する光信号の帯域を大きくすることが可能なため、高い伝送容量を有する光ファイバとして最近注目されている(例えば、特許文献1および2参照)。この様な屈折率分布型光学部材の製法の一つに、界面ゲル重合を利用して、光学部材母材(本明細書において、「プリフォーム」と称する)を作製し、その後、前記プリフォームを延伸する方法が提案されている。
【0004】
ところで、まず、GI−POFの問題点は生産性の低さにある。上記界面ゲル重合を利用したプリフォームロッドは、コア重合工程でのドーパントの分子の拡散状態を利用して屈折率分布を形成するものであるから、該ロッドの太さや長さに限界がある。その観点から、ポリメチルメタクリレート(PMMAと略記することがある)を主体としたMSI−POFの提案がなされている(例えば、特許文献3、4および5参照)。MSI−POFは、GI−POFに比べて伝送容量が低下する傾向にあるが、それが問題にならない短距離用途としては用いることが可能である。一方、光伝送体には、前述した様に、伝送損失が小さいことが要求されるとともに、吸湿性および耐熱性にも優れた材料であることが要求される。PMMAは吸湿性が大きい事が知られている。そのため、例えばメタクリル酸シクロヘキシルとメタクリル酸メチル(MMA)からなる共重合体などが提案されているが、吸湿性を低減するためには、メタクリル酸シクロヘキシルを比較的多量に使用する必要がありなど、耐熱性の観点から、使用範囲が制限される。メタクリル酸ベンジルエステル−MMAの共重合体もメタクリル酸シクロヘキシル−MMA共重合体と同じ物性の素材であり、やはり耐熱性の観点から、使用範囲が制限される。一方、プラスチック構造中の水素をフッ素等のハロゲンや重水素に置換することが提案されている。しかし、フッ素含有モノマーの単独重合体は、材料安定性または密着性などにおいて不都合が生じる場合があり、光伝送体に要求される性能の全てを備えた材料ではない。なお、素材の選択によって耐熱性を向上させるものとして、炭素原子を介してアルキル基を導入したモノマーからなる重合体が示されているが(特許文献6参照)、これらのTgはPMMAに比して高くないため(非特許文献1参照)、充分な耐熱性を有しないと推測される。さらに、これらはC−H結合のHをClやBrという大きな原子で置換しており、この様な置換は反応性の低下を招くため好ましくない。
【0005】
【特許文献1】
特開昭61−130904号公報
【特許文献2】
WO93/08488号公報
【特許文献3】
特開平10−111414号公報
【特許文献4】
特開平10−133036号公報
【特許文献5】
特開平11−52146号公報
【特許文献6】
特開平8−220349号公報
【非特許文献】
H.Kawai et al.,SPIE Vol.896 Replication and Molding of Optical Components,69−78(1988)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、良好な伝送能を有し、かつ耐湿熱性が改善されるなど、種々の特性がバランスよく改良されたマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する手段は以下の通りである。
[1] 下記一般式(1)で表される重合性モノマーの単独重合体または共重合体を含有し、互いの屈折率が異なる3層以上の複数層が同心円状に積層された光ファイバであって、内側の層から外側の層に向かって屈折率が二次分布的に低下しているマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ。
【0008】
一般式(1)
【化3】
【0009】
式中、X1は水素原子(H)または重水素原子(D)を表し、X1は同一でも異なっていてもよい。Y1はH、D、CH3基またはCD3基を表し、R1は炭素原子数7〜20個の脂環式炭化水素基を表す。
【0010】
[2] 上記一般式(1)で表される重合性モノマーと下記一般式(2)で表される重合性モノマーとの共重合体を含有し、互いの屈折率が異なる3層以上の複数層が同心円状に積層された光ファイバであって、内側の層から外側の層に向かって屈折率が二次分布的に低下しているマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ。
【0011】
一般式(2)
【化4】
【0012】
式中、X2はHまたはDを表し、2つのX2は同一でも異なっていてもよい。Y2はH、D、CH3基またはCD3基を表し、R2は1〜15個のフッ素置換基を有する炭素原子数1〜7個のフッ化アルキル基を表す。
【0013】
[3] 前記複数層の最外層のさらに外側に、前記最外層の屈折率より3%以上屈折率の低い透明樹脂層を有する[1]または[2]のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ。
[4] 前記複数層の屈折率差が、前記一般式(1)で表される重合性モノマーと他のモノマーとの共重合比の違いに基づく[2]または[3]に記載のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ。
[5] 前記複数層の屈折率差が、各々の層が含有する前記重合性モノマーと異なる化合物の濃度の違いに基づく[1]または[3]に記載のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ(MSI−POF)は、互いに屈折率の異なる複数層を同心円状に積層した構造を有する。この構造により、ファイバ内に内側の層から外側の層に向かって階段状に屈折率勾配が形成される。屈折率分布の効果は、屈折率の段階的な変化が3段階(好ましくは5段階)以上、即ち、屈折率の異なる層を3層(好ましくは5層)以上積層することにより得られる。形成する層の数が多くなる程、屈折率の勾配は滑らかになり、従来のGI型ファイバに近い効果が得られるが、一方で、積層する層の数を増やすと製造コストが増加し、GI型ファイバと同程度になってしまう。性能とコストの双方をバランスよく備えたMSI−POFとするには、積層は3層以上であればよいが、3〜20層程度が好ましく、3〜10層程度がより好ましい。
【0015】
互いに屈折率の異なる複数層は、下記一般式(1)で表される重合性モノマーの単独重合体または共重合体を含有する。
【0016】
一般式(1)
【化5】
【0017】
式中、X1は水素原子(H)または重水素原子(D)を表し、2つのX1は同一でも異なっていてもよい。Y1はH、D、CH3基またはCD3基を表し、R1は炭素原子数7〜20個の脂環式炭化水素基を表す。
【0018】
前記一般式(1)で表される重合性モノマーは、R1が炭素原子数7〜20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートである。具体的な例としては、(メタ)アクリル酸(ビシクロ−2,2,1−ヘプチル−2)、(メタ)アクリル酸−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5−ジメチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−5−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5,8−トリエチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5−ジメチル−8−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−5−イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−1−イルメチル、(メタ)アクリル酸−1−メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシ−2,6,6−トリメチル−ビシクロ〔3,1,1〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸−3,7,7−トリメチル−4−ヒドロキシ−ビシクロ〔4,1,0〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フエンチル、(メタ)アクリル酸−2,2,5−トリメチルシクロヘキシルなどが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステルの中でも、メタクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フエンチル、メタクリル酸1−メンチルなどが好ましく、メタクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸−1−メンチルが特に好ましい。
【0019】
前記重合性モノマー(1)は、(メタ)アクリル酸あるいはその酸塩化物を、R1OH(R1は前記一般式(1)中のR1と同義である)で表される脂環式炭化水素・モノオールでエステル化すること;(メタ)アクリル酸をカンフェンなどの脂環式炭化水素前駆体とを硫酸、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒でエステル化すること;によって製造することができる。
また、(メタ)アクリル基のC−H(即ち、前記一般式(1)中のX1およびY1)は重水素で置換されているほうが好ましく、その置換率は95%以上100%未満である。さらに(メタ)アクリレート側鎖(前記一般式(1)中のR1)のC−Hも重水素に置換されていてもよい。
【0020】
本発明においては、前記複数層が、光学特性、吸水率、屈折率分布の付与の容易性を鑑みると、上記重合性モノマー(1)と、下記一般式(2)で表される重合性モノマー(以下、「重合性モノマー(2)」という場合がある)とを成分とする共重合体を含有するのが好ましい。
【0021】
一般式(2)
【化6】
【0022】
前記一般式(2)中、X2はHまたはDを表し、2つのX2は同一でも異なっていてもよい。Y2はH、D、CH3基またはCD3基を表し、R2は1〜15個のフッ素置換基を有する炭素原子数1〜7個のフッ素化アルキル基を表す。
【0023】
重合性モノマー(2)は、R2が1〜15個のフッ素置換基を有する炭素原子数1〜7個のフッ化アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーである。重合性モノマー(2)の具体例としては、メタクリル酸モノフルオロメチル、メタクリル酸ジフルオロエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸1H、1H−ペンタフルオロプロピル、メタクリル酸1H、1H、3H−テトラフルオロプロピル、メタクリル酸2H−ヘキサフルオロ−2−プロピル、メタクリル酸ヘプタフルオロ−2−プロピル、メタクリル酸パーフルオロヘキシルメチル、メタクリル酸パーフルオロ−t−ブチルなどが挙げられる。中でも、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸2H−ヘキサフルオロ−2−プロピル、メタクリル酸ヘプタフルオロ−2−プロピル、メタクリル酸パーフルオロヘキシルメチル、メタクリル酸パーフルオロ−t−ブチル、メタクリル酸−1H、1H、3H−テトラフルオロプロピルが好ましく、さらにメタクリル酸−2H−ヘキサフルオロ−2−プロピル、メタクリル酸−1H、1H、3H−テトラフルオロプロピル、メタクリル酸パーフルオロ−t−ブチルが特に好ましい。
【0024】
また、(メタ)アクリル基のC−H(前記一般式(2)中、X2およびY2)は重水素に置換されているほうが好ましく、その置換率は95%以上100%未満である。さらに(メタ)アクリレート側鎖(前記一般式(2)中、R2)のC−Hも重水素に置換されていてもよい。
【0025】
本発明において、前記複数層は、前記重合性モノマー(1)の単独重合体または共重合体からなり、好ましくは、前記重合性モノマー(1)および(2)の共重合体からなる。前記重合性モノマー(1)とともに、または重合性モノマー(1)および(2)とともに、これら以外の重合性モノマーを用いることもできる。他の重合性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル系化合物として、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸トリクロロフェニル、メタクリル酸トリブロモフェニル、メタクリル酸ペンタクロロフェニル、メタクリル酸ペンタブロモフェニル等;スチレン系化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等;ビニルエステル類として、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等;マレイミド類として、N―n−ブチルマレイミド、N―tert−ブチルマレイミド、N―イソプロピルマレイミド、N―シクロヘキシルマレイミド等;が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この中でも(メタ)アクリル酸エステル系化合物が好ましく、特にメタクリル酸メチルが好ましい。これらのモノマーも重水素置換されているのが好ましい。
【0026】
前記重合性モノマー(1)、または前記前記重合性モノマー(1)と(2)との重合は、一般的には、重合開始剤によって進行させる。重合開始剤としては、用いるモノマーや重合方法に応じて適宜選択することができるが、過酸化ベンゾイル(BPO)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−t−ブチルパーオキシド(PBD)、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル4,4,ビス(t−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物、または2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’―アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジーt−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は2種類以上を併用してもよい。
【0027】
前記重合性モノマー(1)、または前記重合性モノマー(1)と(2)とは、連鎖移動剤の存在下で重合させるのが好ましい。前記連鎖移動剤は、主に重合体の分子量を調整するために用いられる。連鎖移動剤の存在下で重合させると、重合性モノマーの重合速度および重合度を前記連鎖移動剤によってより制御することができ、重合体の分子量を所望の分子量に調整することができる。例えば、時前記重合体からなる複数層を同心円状に積層してなる円筒管を作製した後、延伸により線引きして、光伝送体の形態にする場合は、分子量を調整することによって延伸時における機械的特性を所望の範囲とすることができ、生産性の向上にも寄与する。前記連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択することができる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
【0028】
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いるのが好ましく、中でも、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、前記連鎖移動剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
屈折率が互いに異なる重合体からなる複数層を形成する方法には、主に2種ある。まず、第一の方法では、各々の層を、重合性モノマー(1)の重合体と該重合体の屈折率とは異なる化合物とを含有する組成物を用いて形成する。前記化合物の各々の層中の添加量に差を持たせることで、互いに屈折率の異なる複数の層を形成することができる。第二の方法では、各々の層を、屈折率が異なる複数種の重合性モノマーの共重合体から形成する。各々の層を構成している共重合体の組成比に差を持たせることで、互いに屈折率の異なる複数の層を形成することができる。
【0030】
まず、前者の方法について説明する。
前記重合性モノマー(1)の重合体とは異なる屈折率の化合物としては、低分子、オリゴマー、高分子などが挙げられるが、該重合体と相溶する化合物であれば、限定されない。ただし、該重合体との相溶性を鑑みると、低分子化合物が好ましい。その具体的な例を挙げるとすれば、WO93/08488や特開平11−142657号公報に記載されている様な屈折率調整剤などが挙げられる。例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジルnブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ビフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)、硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体などが挙げられる。硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体については、下記に具体的に示す化合物の中から適宜選ばれる。中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOおよび硫化ジフェニル誘導体が好ましい。なお、これらの化合物中に存在する水素原子を重水素原子に置換した化合物も広い波長域での透明性を向上させる目的で用いることができる。
【0031】
【化7】
【0032】
前記屈折率の異なる化合物は、溶融状態にある前記重合体に添加してもよいし、前記重合体の溶液に添加してもよい。また、前記屈折率の異なる化合物の存在下で、前記重合性モノマー(1)を重合させることによって重合体中に混合させてもよい。調製の容易さの点において、前記屈折率の異なる化合物の存在下、前記重合性モノマー(1)を重合して、前記化合物が混合された重合体を得るのが好ましい。
【0033】
次に、後者の方法について説明する。
屈折率の異なる複数種類のモノマーからなる共重合体としては、(a):重合性モノマー(1)と、それと屈折率の異なる重合性モノマーとの共重合系、(b):重合性モノマー(1)と重合性モノマー(2)(あるいは、さらにその他の屈折率の異なるモノマー)との共重合系等が挙げられる。特に、これら共重合系は、耐熱性の観点で前者(ポリマー+(低分子あるいはオリゴマー)添加剤)より好ましい。上記(a)のモノマーの具体的な組み合わせとしては、イソボルニルメタクリレート/メチルメタクリレート/フェニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート/メチルメタクリレート/トリブロモフェニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート/メチルメタクリレート/ペンタブロモフェニルメタクリレートなどが挙げられる。上記(b)のモノマーの具体的な組み合わせとしては、トリフルオロエチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート/メチルメタクリレート/ノルボルニルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート/ノルボルニルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート/メチルメタクリレート/ノルボルニルメタクリレートなどが挙げられる。それぞれの組成比を調整することにより所望の屈折率の異なる複数の樹脂を得ることができる。勿論、本発明の主旨に反さない限り、上記の組み合わせに限定されるわけではない。
【0034】
本発明では、前記複数層の各々を、上記重合性モノマー(1)、または重合性モノマー(1)および(2)を重合性成分とする重合体を用いて形成しているので、作製される光学部材の光伝送損失を大きく軽減することができる。特に、吸湿による光伝送損失の増大を顕著に軽減することができる。また、重合性モノマーの重合速度および重合度を、重合開始剤および所望により添加される連鎖移動剤によって制御し、重合体の分子量を所望の分子量に調整することができる。例えば、得られた重合体を延伸により線引きして、光ファイバとする場合は、連鎖移動剤によって製造される重合体の分子量(好ましくは1万〜100万、より好ましくは3万〜50万)を調整すれば、延伸時における機械的特性を所望の範囲とすることができ、生産性の向上にも寄与する。
【0035】
本発明において、各層の形成に用いられる重合体は、公知の方法で調製できる。溶液重合、懸濁重合、塊状重合のいずれも用いることが可能であるが、伝送損失の観点から、塊状重合系が最も好ましく、異物や酸素の混入による着色を防ぐ為、外部と遮断された系の中で、重合するのが好ましい。
【0036】
つぎに、本発明のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ(MSI−POF)の製造法について説明する。その製造法は、大きく分類すると2つに分かれる。ひとつは、屈折率の異なる重合体からなる層を順次同心円状に積層して作製する方法と、予め製造した屈折率の異なる複数種の重合体もしくは重合体組成物を同時に成形してプリフォームを得、連続して延伸する方法とがある。
【0037】
まず、前者について説明する。
各層を順次作製する方法としては、さらに2通りあり、外側から内側へと順次層を作製する方法とその反対の方法がある。簡便さから前者のほうが好ましい。前者について説明する。屈折率n1の第一の樹脂からなる外枠をまず作製し、その内側にn1より高い屈折率n2の第二の樹脂の溶融物もしくは溶液、または第二の樹脂を形成可能な重合性組成物(低粘性のポリマーゾルでもよい)を供給し、回転しながら加熱し、溶融拡散もしくは脱溶媒、または重合して、第二の層を設ける。この操作を繰り返して作製する方法である。操作には、若干手間がかかるが、GIに近い光学性能が得られる可能性がある。後者は、ディップコート法、CVD法、溶液塗布乾燥法などを利用するものである。
【0038】
次に、後者、即ち、一度にMSI−POFを作製する方法である。
この方法には、主に2種ある。ひとつは、複数の異なる屈折率を有する樹脂の溶融体を、例えば、多層複合紡糸ダイに供給し、溶融押し出し、プリフォームを得、そのまま連続して延伸してファイバを得る方法である。もう一つは、予め複数の異なる屈折率で、所望の屈折率分布になるように設計された樹脂のパイプを重ね合わせ(ただし、中心部は一番屈折率の高いポリマーロッド)、それらの重ね合わせたパイプを加熱溶融して、延伸してファイバを得る方法である。
これらの中で、性能と、経済的な観点からは、連続重合をして、そのまま複数種類の屈折率の異なる樹脂を得、そのまま溶融状態で、例えば多層複合紡糸ダイに供給し、溶融押し出しし、さらに延伸して本発明のMSI−POFを得るのが好ましい。製造には、例えば、特開平10−133036号公報の図3に記載されている多層複合紡糸ダイを用いることができる。
【0039】
本発明では各々の層は、その屈折率がファイバの内側の層から外側の層に向かって屈折率が二次分布的に低下している。本明細書において「二次分布的」とは、厳密な意味での二次分布のみを意味するのではなく、二次分布に近似する種々の分布を含む広い意味で用いるものとし、段階的な変化に基づく分布も勿論含まれる。屈折率の大きさを縦軸とし、断面中心から半径方向の距離を横軸とした場合に、中心から遠ざかるに従って、実質的に左右対称に屈折率が低下している分布は、本明細書において「二次元的分布」に含まれるものとする。なお、本発明では、各層の屈折率が一様である態様(図1(a)、図中、nx−1層およびnx層は、本発明のファイバ中の隣接する層であって、nx−1層がより内側に位置する。図1(b)および(c)においても同様である)に限られず、各層の屈折率の大きさが分布している態様(図1(b)および(c)も含まれる。また、屈折率が一様な層及び屈折率が分布した層の双方を含む態様であってもよい。層内に屈折率分布がある層を含む態様(図1(b)および(c))は、屈折率が一様な層のみが連続している態様(図1(a))と比較して、層数を減らすことができる。各層が屈折率に分布を持つ態様は、例えば、前述の製造方法において屈折率調整剤の濃度が変化するように重合の進行方向を制御して重合を行ったり、もしくはポリマーロッドやプリフォーム形成後に加熱するなどの操作によって屈折率調整剤を拡散させることにより製造することができる。
本発明のプラスチック光ファイバでは、この屈折率の差の目安は、ファイバの中心部と最外層において、ナトリウムD線に対する屈折率ndが温度20℃において0.01以上である。また、隣接する層間の屈折率差については、形成する層の数などに応じて異なるが、5〜10層程度形成する場合は、隣接する層間で屈折率が0.01以上異なっているのが好ましい。
【0040】
さらに本発明においては、前記したMSI−POFの素線の外側に、開口数のアップと素線の機械的強度を向上させることを目的として、最外層のさらに外側に透明樹脂からなるクラッド層を設けるのが好ましい。
本発明においてクラッド層に用いられる透明樹脂としては、屈折率が内側の多層構造における二次分布の屈折率よりも低い屈折率を有するものである。具体的には、コア部の最外層の屈折率より少なくとも3%低いことが好ましい。これにより、開口数アップが図られる。作製方法としては、前記した多層複合紡糸ダイさらに1層を追加して、内側の多層構造と同時に一体的に製造してもよいし、また、内側の多層構造のみを前記の多層複合紡糸ダイにて製造した後、クロスヘッドダイやコーティング法などによりクラッド層樹脂を被覆してもよい。
【0041】
前記透明クラッド層用の樹脂としては、屈折率が1.3〜1.44程度のものが使用できる。コア部の最外層の樹脂の屈折率に注意して選択する。勿論、該樹脂との密着性も選択の重要なポイントである。クラッド層用樹脂としては、例えばフッ化ビニリデンとテトラフロロエチレン共重合体、フッ化ビニリデンとヘキサフロロプロペン共重合体、フルオロアルキルメタクリレート共重合体などが挙げられるがこれに限定されるものではない。前記クラッド用樹脂は、市販されており、ペレット状のものを溶融して用いればよい。また、クラッド層の厚さとしては、5〜50μmであることが好ましい。
【0042】
上記工程を経て製造されたプラスチック光ファイバは、そのままの形態で種々の用途に供することができる。また、保護や補強を目的として、さらに、その外側に被覆層を有する形態、繊維層を有する形態、および/または複数のファイバを束ねた形態で、種々の用途に供することができる。被覆工程は、例えばファイバ素線に被覆を設ける場合では、ファイバ素線の通る穴を有する対向したダイスにファイバ素線を通し、対向したダイス間に溶融した被覆用の樹脂を満たし、ファイバ素線をダイス間を移動させることで被覆されたファイバを得ることができる。被覆層は可撓時に内部のファイバへの応力から保護するため、ファイバ素線と融着していないことが望ましい。さらにこの時、溶融した樹脂と接することでファイバ素線に熱的ダメージを加わるので、極力ダメージを押さえるような移動速度や低温で延伸できる樹脂を選ぶことも望ましい。この時、被覆層の厚みは被覆材の物性値や素線の引き抜き速度、被覆層の冷却温度による。
【0043】
得られたファイバは、被覆した後に、プラスチック光ファイバケーブルとするのが好ましい。被覆の形態として、被覆材とプラスチック光ファイバ素線の界面が全周にわたって接して被覆されている密着型の被覆の形態、被覆材とプラスチック光ファイバ素線の界面に空隙を有するルース型被覆の形態がある。ルース型被覆では、例えば、コネクターとの接続部などにおいて被覆層を剥離した場合、その端面の空隙から水分が浸入して長手方向に拡散されるおそれがあるため、通常は密着型が好ましい。
しかし、ルース型の被覆は、被覆と素線が密着していないので、ケーブルにかかる応力や熱をはじめとするダメージの多くを被覆材層で緩和させることができる。素線にかかるダメージを軽減させることができるので、使用目的によっては好ましく用いることができる。水分の伝播については、空隙部に流動性を有するゲル状の半固体や粉粒体を充填すると、端面からの水分伝播を防止できる。さらに、これらの半固体や粉粒体が、耐熱や機械的機能の向上などの水分伝播防止と異なる機能を併せ持つようにすると、高い性能の被覆を形成できる。
ルース型の被覆を行うには、クロスヘッドダイの押出し口ニップルの位置を調整し、減圧装置を加減することで空隙層を作製することができる。空隙層の厚みは前述のニップル厚みと空隙層を加圧/減圧することで調整可能である。
【0044】
さらに、必要に応じて被覆層(1次被覆層)の外周に、さらに被覆層(2次被覆層)を設けてもよい。2次被覆層に難燃剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、昇光剤、滑剤などを含有させてもよく、耐透湿性能を満足する限りにおいては、1次被覆層に含有させることも可能である。
なお、難燃剤については臭素を始めとするハロゲン含有の樹脂や添加剤や燐含有のものがあるが、毒性ガス低減などの安全性の観点で、難燃剤として金属水酸化物を加えることが主流となりつつある。金属水酸化物はその内部に結晶水として水分を含んでおり、またその製法過程での付着水が完全に除去できないため、金属水酸化物による難燃性被覆は、対透湿性被覆(1次被覆層)の外層被覆(2次被覆層)として設けることが望ましい。
また、複数の機能を付与させるために、様々な機能を有する被覆層を積層してもよい。例えば、難燃化以外に、素線の吸湿を抑制するためのバリア層や水分を除去するための吸湿材料、例えば吸湿テープや吸湿ジェルを被覆層内や被覆層間に有することができ、また可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や発泡層等の緩衝材、剛性を挙げるための強化層など、用途に応じて選択して設けることができる。樹脂以外にも構造材として、高い弾性率を有する繊維(いわゆる抗張力繊維)および/または剛性の高い金属線等の線材を熱可塑性樹脂に含有すると、得られるケーブルの力学的強度を補強することができることから好ましい。
抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が挙げられる。また、金属線としてはステンレス線、亜鉛合金線、銅線などが挙げられる。いずれのものも前述したものに限定されるものではない。その他に保護のための金属管の外装、架空用の支持線や、配線時の作業性を向上させるための機構を組み込むことができる。
【0045】
また、ケーブルの形状は使用形態によって、素線を同心円上にまとめた集合ケーブルや、一列に並べたテープ心線といわれる態様、さらにそれらを押え巻やラップシースなどでまとめた集合ケーブルなど用途に応じて選ぶことができる。また、本発明によって得られるの光ファイバを用いたケーブルはステップインデックス型の光ファイバより、軸ずれに対する許容度が比較的高いため突き合せによる接合でも用いることができるが、端部に接続用光コネクタを用いて接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタとしては一般に知られている、PN型、SMA型、SMI型などの市販の各種コネクタを利用することも可能である。
【0046】
本発明の光学部材としての光ファイバ、および光ファイバケーブルを用いて光信号を伝送するシステムには、種々の発光素子、受光素子、他の光ファイバ、光バス、光スターカプラ、光信号処理装置、接続用光コネクター等で構成される。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」,などを参考にすることができる。前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線、車両や船舶などの内部配線、光端末とデジタル機器、デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LAN等をはじめとする、高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。
【0047】
さらに、特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号等の各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号等の各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号等の公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号等の各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号等に記載の光信号処理装置;特開2001−86537号等に記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号等に記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号等の各公報に記載のマルチファンクションシステム;やIEICE TRANS. ELECTRON., VOL. E84−C, No.3, MARCH 2001, p.339−344「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3, No.6, 2000 476頁〜480ページ「光シートバス技術によるインタコネクション」に記載されたシステムなどを参考に、各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを使用した、より高度な光伝送システムを構築することができる。
以上の光伝送用途以外にも照明、エネルギー伝送、イルミネーション、各種センサなどの分野にも用いることができる。
【0048】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0049】
[実施例1]
図2に示した各層の厚みが等間隔で構成されている多層複合紡糸ダイを用いて7層構造のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバを製造した。図2中、1〜7は樹脂受け入れ口であり、8はガイドパイプである。
精製された原料モノマーとして、メチルメタクリレート(MMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(6FM)を用い、ジt−ブチルパーオキシド(PBD)、n−ラウリルメルカプタン(n−LM)を用いて重合体を得た。重合装置は7系列からなる1段の完全混合重合反応器と引き続き脱揮押出機とギヤポンプからなる。それぞれの重合体供給系列から上記3種のモノマーの共重合比率を調節した重合体を得て、多層複合紡糸ダイの供給口に供給した。各重合体の組成と屈折率は表1に示す通りである。重合体のメルトフローインデックスは230℃で1〜6g/10分の範囲であった。工程中の重合体の温度を200〜220℃に保ち、多層複合紡糸ダイの出口から排出されたストランドを引き伸ばし、延伸処理を行い、直径0.50mmのプラスチック光ファイバのコア部を得た。さらにそのコア部の外側に、クロスヘッドダイを介してクラッド樹脂を被覆した。該クラッド樹脂としては、屈折率が1.36のPVDF樹脂を用いた。
本実施例のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバの屈折率分布を図3に模式的に示す。
【0050】
上記クラッド樹脂の被覆層の厚みは20μmで、最終的な光ファイバの直径は0.54mmであった。この光ファイバに黒色ポリエチレンで被覆(厚み0.8mm)を行い、ケーブルを得、伝送損失を測定したところ、650nmで195dB/km、850nmで2500dB/kmであった。
さらに、得られたファイバを13mの長さに切り取り、10mのファイバをタバイエスペック(株)製小型環境試験機SH−240に静置し、環境試験機外部において、両端から2mおよび1mの長さのファイバをそれぞれ、メレスグリオ(株)製850nmバンドパスフィルタを挿入された安藤電気(株)製白色光源(AQ4303B)と、アンリツ(株)光パワーメータ(ML910B)にアンリツ製FCコネクタ(MA9013A)を用いて接合した。その後、恒温恒湿槽の温度を70℃−95%相対湿度に設定し、50時間後の光強度の減衰量を測定した所、8dBであった。
次に、該被覆ファイバについての曲げ損失試験を行った。特開平7−244220号公報に記載の実験方法によって曲げ試験を実施した。実験条件は、マンドレルの直径60mmで、該ファイバを該マンドレルに90度に1回巻きつけてロス分を測定した。該ロスの増大の最大値は0.1dBであった。また、伝送帯域は1GHz・50m以上が認められた。
【0051】
【表1】
【0052】
[比較例1]
実施例1と同様に多層複合紡糸ダイを用いて7層構造のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバを製造した。
精製された原料モノマーとして、メチルメタクリレート(MMA)、ベンジルメタクリレート(BzMA)を用い、ジt−ブチルパーオキシド(PBD)、n−ラウリルメルカプタン(n−LM)を用いて重合体を得た。重合装置は7系列からなる1段の完全混合重合反応器と引き続き脱揮押出機とギヤポンプからなる。それぞれの重合体供給系列から上記2種のモノマーの共重合比率を調節した重合体を得て、多層複合紡糸ダイの供給口に供給した。各重合体の組成と屈折率は表2に示す通りである。重合体のメルトフローインデックスは230℃で1〜6g/10分の範囲であった。工程中の重合体の温度を200〜220℃に保ち、多層複合紡糸ダイの出口から排出されたストランドを引き伸ばし、延伸処理を行い、直径0.50mmのプラスチック光ファイバのコア部を得た。さらにそのコア部の外側に、クロスヘッドダイを介してクラッド樹脂を被覆した。該クラッド樹脂としては、屈折率が1.403のPVDF樹脂を用いた。本実施例のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバの屈折率分布は、実施例1と同様に図3に示す構造となった。
【0053】
上記クラッド樹脂の被覆層の厚みは20μmで、最終的な光ファイバの直径は0.54mmであった。この光ファイバに黒色ポリエチレンで被覆(厚み0.8mm)を行い、ケーブルを得、伝送損失を測定したところ、650nmで200dB/km、850nmで3200dB/kmであった。
さらに、得られたファイバを13mの長さに切り取り、10mのファイバを実施例1と同一の小型環境試験機SH−240に静置し、環境試験機外部において、両端から2mおよび1mの長さのファイバをそれぞれ、メレスグリオ(株)製850nmバンドパスフィルタを挿入された安藤電気(株)製白色光源(AQ4303B)とアンリツ(株)光パワーメータ(ML910B)にアンリツ製FCコネクタ(MA9013A)にて接合した。その後、恒温恒湿槽の温度を70℃−95%相対湿度に設定し、50時間後の光強度の減衰量を測定した所、91dBであった。
次に、該被覆ファイバについての曲げ損失試験を行った。特開平7−244220号公報に記載の実験方法によって曲げ試験を実施した。実験条件は、マンドレルの直径60mmで、該ファイバを該マンドレルに90度に1回巻きつけてロス分を測定した。該ロスの増大の最大値は0.1dBであった。また、伝送帯域は1GHz・50m以上が認められた。
【0054】
【表2】
【0055】
[実施例2〜4および比較例2]
実施例1と同様に多層複合紡糸ダイを用いて7層構造のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバを製造した。用いたモノマー種を表3のように変更した以外は実施例1と同様な方法で作製した。用いたモノマーの構造式は、下記に示す。作製されたMSI−POFのコア部の最外層と最内層の屈折率および評価結果を実施例1、比較例1と併せて表3に記載した。
【0056】
【表3】
【0057】
【化8】
【0058】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば、良好な光伝送能を有する、特に伝送損失および湿熱による伝送損失の悪化が軽減された、さらに機械特性も改良されバランスのとれたマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ファイバを構成する各層の屈折率の分布例を示す模式図である。
【図2】実施例で用いた多層複合紡糸ダイの縦断面図と横断面図である。
【図3】実施例で作製した光ファイバの屈折率の段階的変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1〜7 樹脂受け入れ口
8 ガイドパイプ
Claims (3)
- 前記複数層の最外層のさらに外側に、前記最外層の屈折率より3%以上屈折率の低い透明樹脂層を有する請求項1または2に記載のマルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ。
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JP2003000520A JP2004212723A (ja) | 2003-01-06 | 2003-01-06 | マルチステップインデックス型プラスチック光ファイバ |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2006132395A1 (en) * | 2005-06-08 | 2006-12-14 | Fujifilm Corporation | Plastic optical medium and production method thereof |
JP5625352B2 (ja) * | 2007-05-15 | 2014-11-19 | ダイキン工業株式会社 | 溶剤溶解性の良好な撥水撥油防汚剤 |
-
2003
- 2003-01-06 JP JP2003000520A patent/JP2004212723A/ja active Pending
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