JP2004212711A - プラスチック光ファイバ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プラスチック光ファイバのプラスチックにダメージを与えることなく防湿層を形成する。
【解決手段】PMMAからなるクラッド111b内に界面ゲル重合法によりコア部111aを形成して素線111を得る。素線111を防湿するために外周面111c上にアルミニウムからなる防湿層112を形成する。防湿層112は、5Pa,323Kの装置内で真空蒸着法によってアルミニウムの厚みが300nmとなるように形成する。製品として外的環境から保護するため被覆層113を形成してプラスチック光ファイバ110を製造する。光ファイバ110のPMMAの吸水が抑制でき、光学特性の悪化を防ぐことができる。
【選択図】 図4
【解決手段】PMMAからなるクラッド111b内に界面ゲル重合法によりコア部111aを形成して素線111を得る。素線111を防湿するために外周面111c上にアルミニウムからなる防湿層112を形成する。防湿層112は、5Pa,323Kの装置内で真空蒸着法によってアルミニウムの厚みが300nmとなるように形成する。製品として外的環境から保護するため被覆層113を形成してプラスチック光ファイバ110を製造する。光ファイバ110のPMMAの吸水が抑制でき、光学特性の悪化を防ぐことができる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリメタクリル酸エステル誘導体を用いたプラスチック光ファイバ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバには、従来、石英が広く用いられている。近年、プラスチックを材料としたものが注目されている。プラスチック光ファイバは、同一の構造をを有する石英系のものと比較して、製造および加工が容易であること及び低価格であること等の利点があり、近年、光ファイバ及び光レンズなどの種々の応用が試みられている。なかでも、プラスチック光ファイバは、素線が全てプラスチックで構成されているため、伝送損失が石英系と比較してやや大きいという短所を有するものの、良好な可撓性を有し、軽量で加工性に優れるため、石英系光ファイバと比較して口径の大きなファイバを製造しやすい。さらに、低コストに製造可能である長所を有する。従って、伝送損失の大きさが問題とならない程度の短距離用の光通信伝送媒体として種々検討されている。
【0003】
プラスチック光ファイバは、ポリマーからなる芯部(以下、コア部と称する)とコア部より低屈折率のポリマーからなる外殻(以下、クラッド部と称する)とから形成された光ファイバ母材(以下、プリフォームと称する)を引き伸ばすことにより製造されている。特に、中心から外側に向かって屈折率の分布を有するコア部を備えた屈折率分布型プラスチック光ファイバ(以下、GI型ファイバと称する)は、伝送する光信号の帯域を大きくすることが可能なため、高い伝送容量を有する光ファイバとして最近注目されている(例えば、特許文献1参照。)。このようなプラスチック光ファイバの製造方法は、クラッド部を回転重合法により製造し、その中にコア部を形成する。
【0004】
前述したプラスチック光ファイバの原料プラスチックには、ポリメタクリル酸エステルの一種であるポリメタクリル酸メチル(以下、PMMAと称する)がよく用いられている。PMMAは、有機系ポリマーのなかでは優れた透明性と低屈折率とを有するなど、極めて光学特性に優れた材料であるからである。その特徴として(1)透明性に優れている,(2)複屈折率が低い,(3)耐候性に優れている,(4)成形性に優れている,(5)バランスした力学的特性を有する。などが挙げられる。しかしながら、PMMAもプラスチックであるので、(1)吸水率が高い,(2)耐熱性がやや低い、などの欠点も有している。
【0005】
そこで、プラスチック光ファイバのクラッド部を耐湿材料で覆う方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。その方法は、プラスチックに環状ポリオレフィンを用いて、そのクラッド部の外側にアルミニウムなどの被覆層を物理蒸着法や化学蒸着法により形成している。
【0006】
【特許文献1】
国際公開93/08488号パンフレット
【特許文献2】
特開2001−305398号公報 (第3−9頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献2では、被覆層(金属層,金属酸化物層の少なくともいずれかである)を形成する具体的な方法は、光ファイバの原料に環状ポリオレフィンを用いた場合のみが開示されている。また、近年、PMMA系ポリマーを用いてさらに低伝送損失化が試みられている。低伝送損失化には、PMMA中の軽水素原子(H)をより重たい原子である重水素原子(D)やフッ素原子(F)に置換するポリマー(以下、置換型PMMA系ポリマーと称する)により達成されている。しかしながら、置換型PMMA系ポリマーは吸水することで伝送損失が悪化してしまうため、その防湿化が強く求められている。そこで、本発明の課題は、光学的特性に優れた置換型PMMA系ポリマーからなる光ファイバ素線にダメージを与えることなく防湿層を形成することである。
【0008】
本発明は、耐湿性を向上させた置換型PMMA系ポリマーを用いたプラスチック光ファイバ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のプラスチック光ファイバの製造方法は、コア部がポリメタクリル酸エステルからなるプラスチック光ファイバ素線を用いたプラスチック光ファイバの製造方法において、前記プラスチック光ファイバ素線の外周部に金属膜からなる防湿層および/または吸湿層を有する。前記ポリメタクリル酸エステルは、ポリメタクリル酸メチルを用いることがより好ましい。
【0010】
前記コア部のポリメタクリル酸エステルの水素の一部が重水素および/またはフッ素に置換されたものを用いることが好ましい。なお、本発明において水素とは、軽水素(H)を意味している。また、前記金属膜を真空蒸着法を用いて形成することが好ましい。真空蒸着法により前記金属膜を形成する場合には、用いられる装置内の圧力を0.1Pa〜20Paとし、温度を293K〜373Kとすることが好ましい。さらに、前記金属膜の厚みが100nm〜10μmの範囲であることが好ましい。
【0011】
前記金属膜が、金属層の少なくとも片面に粘着剤層を有するテープ状のものであって、前記粘着剤層を介して前記プラスチック光ファイバ素線の外周にらせん状に巻き付けることが好ましい。また、前記金属層の厚みが1μm〜500μmのものを用いることが好ましい。
【0012】
前記金属にアルミニウムを用いることが好ましい。また、本発明には、前記プラスチック光ファイバの製造方法を用いて製造されたプラスチック光ファイバも含まれる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、それら実施形態はあくまでも本発明を詳細に説明するためのものであり、本発明をなんら制限するものではない。
【0014】
[光ファイバ素線の原料]
(クラッド部)
クラッド部は、一般的に透明性を有する熱可塑性樹脂のポリマーであることが好ましい。また、光ファイバ母材(プリフォーム)を溶融押出しで作製する際には、適当な溶融粘度を有していることが好ましい。ポリマーの重量平均分子量(Mw)が1万〜50万の範囲であることが好ましく、より好ましくは3万〜10万である。また、コア部を伝送する光がクラッド部との界面で全反射するために、コア部を構成するポリマーの屈折率よりも低屈折率であり、非晶性であることが好ましい。また、コア部との密着性が良く、タフネス(硬さ)に優れ、耐湿熱性に優れているものが好ましい用いられる。また、クラッド部は複数の層から形成されていても良い。
【0015】
クラッド部を構成するポリマーとしては、メチルメタクリレート(以下、MMAと称する。なお化1(a)参照)系化合物の重合体、共重合体などのポリメタクリル酸エステルが挙げられる。例えば、トリフルオロエチルメタクリレート重合体及びMMAとの共重合体(以下、3FMAと称する)が挙げられる。なお、トリフルオロエチルメタクリレートの化学式(構造式)は、化1(b)に示す。また、テトラフルオロエチルメタクリレート重合体及びMMAとの共重合体(以下、4FMAと称する)も挙げられる。テトラフルオロエチルメタクリレートの化学式は、化1(c)に示す。また、MMAの軽水素原子(H)を重水素原子(D)に置換した重水素化MMA(以下、MMA−d8 と称する場合もある)を用いることもできる。なお、重水素化MMAの構造式は、化1(d)に示す。また、MMAの軽水素原子(H)を三重水素原子(T)に置換したものも用いることもできる。なお、本発明においてPMMAの一部の軽水素原子(H)を重水素原子やフッ素原子(F)に置換したものを置換型PMMA系ポリマーと称する。また、重水素原子には、質量数2(D)及び質量数(T)のいずれをも意味している。なお、本発明のプラスチック光ファイバを構成する光ファイバ素線の原料には、PMMA系ポリマーに限定されずに、スチレン系樹脂,ポリカーボネート系樹脂,パーフルオロ系樹脂,シリコーン系樹脂,環状ポリオレフィン系樹脂などを用いることもできる。
【0016】
【化1】
【0017】
また、本発明のクラッド部のポリマーは、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート,tert−ブチルメタクリレート並びにそのフッ化物及び重水素化物,イソボルニルメタクリレート並びにそのフッ化物及び重水素化物などの重合体及びそれら化合物とMMAとの共重合体(置換型PMMA系ポリマー)も挙げることができる。さらに、ポリカーボネート,ノルボルネン系樹脂(例えば、ZEONEX(登録商標;日本ゼオン社製)など),ファンクショナルノルボルネン系樹脂(例えば、ARTON(登録商標;JSR社製)など),フッ素樹脂(例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)共重合体,テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFA)ランダム共重合体,クロロトリフルオロエチレン(CTEF)共重合体など)が挙げられる。また、それらの重水素化物も用いることができる。
【0018】
(コア部)
コア部を界面ゲル重合法により形成する場合には、重合性モノマー,開始剤,連鎖移動剤,屈折率調整剤などを含む重合性組成物を用いる。重合性組成物は、伝送される光に対して光透過性である限り特に制約がないが、下記に示すものを用いることが好ましい。
【0019】
<モノマー>
原料の重合性モノマーとしては、例えば、以下のような(メタ)アクリル酸エステル類(フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル(a)、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(b))、スチレン系化合物(c)、ビニルエステル類(d)等を例示することができ、これらのホモポリマー、あるいはこれらモノマーの2種以上からなる共重合体、およびホモポリマー及び/または共重合体の混合物が挙げられる。さらに、下記モノマー中の水素原子の一部または全部が重水素原子に置き換わったものでも良い。またさらに、上記モノマーの単独あるいは共重合体からなるポリマーの屈折率がクラッド部のそれに比べて同等かあるいはそれ以上になるように構成モノマーの種類、組成比を組むことが好ましい。
【0020】
例えば、(a)フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、トリシクロ[5・2・1・02,6 ]デカニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等が挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。また、(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、2,2,2 −トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3 −テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3 −ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1 −トリフルオロメチル−2,2,2 −トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5 −オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4 −ヘキサフルオロブチルメタクリレート等が挙げられる。さらに、(c)スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。さらには、(d)ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものではない。
【0021】
<開始剤>
開始剤としては、用いるモノマーや重合方法に応じて適宜選択することができ、例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物が挙げられる。また、2,2’ −アゾビスイソブチロニトリル、2,2’ −アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’ −アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’ −アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’ −アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’ −アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’ −アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’ −アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’ −アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’ −アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’ −アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’ −アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’ −アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’ −アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’ −アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’ −アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’ −アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’ −アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は2種類以上を併用してもよい。勿論、これらに限定されるものではない。
【0022】
<連鎖移動剤>
前記クラッド部およびコア部形成用重合性組成物はそれぞれ、連鎖移動剤を含有していることが好ましい。前記連鎖移動剤は、主に重合体の分子量を調整するために用いられる。前記クラッド部およびコア部形成用重合性組成物がそれぞれ連鎖移動剤を含有していると、重合性モノマーからポリマーを形成する際に、重合速度および重合度を前記連鎖移動剤によってより制御することができ、重合体の分子量を所望の分子量に調整することができる。例えば、得られたプリフォームを延伸により線引きして光ファイバとする際に、分子量を調整することによって延伸時における機械的特性を所望の範囲とすることができ、生産性の向上にも寄与する。
【0023】
前記連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択することができる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
【0024】
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(例えば、チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、前記連鎖移動剤は、2種類以上を併用してもよい。勿論、これらに限定されるものではない。
【0025】
<屈折率調整剤>
本発明では、前記重合性組成物を用いて光学部材を作製する際に、屈折率調整剤を用い、その濃度に傾斜を持たせることによって、さらに好ましい屈折率分布型の光学部材を作製することができる。屈折率調整剤はドーパントとも称し、併用する前記重合性モノマーの屈折率と異なる化合物である。その屈折率差は、0.005以上であるのが好ましい。ドーパントは、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して、屈折率が高くなる性質を有するものを用いることが好ましい。また、ドーパントは重合性化合物であってもよく、重合性化合物のドーパントを用いた場合は、これを共重合成分として含む共重合体がこれを含まない重合体と比較して、屈折率が上昇する性質を有するものを用いることが好ましい。上記性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、ドーパントとして用いることができる。本実施の形態では、コア部形成用重合性組成物にドーパントを含有させ、コア部を形成する工程において界面ゲル重合法により重合の進行方向を制御し、屈折率調整剤の濃度に傾斜を持たせ、コア部に屈折率調整剤の濃度分布に基づく屈折率分布構造を形成するのが好ましい(以下、屈折率の分布を有するコア部を「屈折率分布型コア部」と称する)。屈折率分布型コア部を形成することにより、得られる光学部材は広い伝送帯域を有する屈折率分布型プラスチック光学部材となる。
【0026】
前記ドーパントとしては、例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジル−n−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ビフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)などが挙げられ、中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOが好ましい。また、ドーパントは、例えばトリブロモフェニルメタクリレートのように重合性化合物でもよく、その場合、マトリックスを形成する際に、重合性モノマーと重合性ドーパントとを共重合させるので、種々の特性(特に光学特性)の制御がより困難となるが、耐熱性の面では有利となる可能性がある。勿論、これらに限定されるものではない。
【0027】
[光ファイバ素線の製造方法]
本発明の光ファイバ素線の製造方法は、
1)筒状のクラッド部の製造(第1の工程)、
2)プリフォームの製造(第2の工程)、
3)プリフォームを延伸して光ファイバ素線を得る(第3の工程)
以上の工程により光ファイバ素線を製造することが好ましく、その製造方法について説明する。しかしながら、本発明に用いられる光ファイバ素線の製造方法は、前述した方法に限定されるものではない。
【0028】
(クラッド部の作製)
本実施の形態において、前記第1の工程では、クラッド部となる中空管(特に好ましくは円筒管)を作製する。クラッド部はモノマーを重合して形成してもよいし、重合体を溶融押出しして形成してもよい。本発明において、得られるクラッドの外径D1(図1参照)は光学特性や生産性の観点から、D1≦(mm)50の範囲であることが好ましく、より好ましくは10≦D1(mm)≦30の範囲である。さらに、クラッド部の肉厚t(図1参照)は、2≦t(mm)≦20の範囲であることが好ましい。しかしながら、本発明において、それらの範囲は、前述したものに限定されるものではない。
【0029】
モノマーを重合させてクラッド部を形成する場合は、例えば特許第3332922号公報に記載されているように、円筒形状の重合容器に、前述のクラッド部の原料となるモノマーを注入、両端を塞ぎ、該重合容器を回転(好ましくは、円筒の軸を水平に維持した状態で回転)させつつ、前記モノマーを重合させることにより、重合体からなる円筒管を作製することができる。このときに、特開平8−110419号公報に記載されている様に、原料をプレ重合して原料の粘度を上昇させてから、重合を行ってもよい。
【0030】
重合容器内には、モノマーとともに、重合開始剤、連鎖移動剤および所望により添加される安定剤などを注入することができる。その添加量については、用いるモノマーの種類等に応じて好ましい範囲を適宜決定することができるが、重合開始剤は、重合性モノマーに対して、0.10質量%〜1.00質量%添加するのが好ましく、0.40質量%〜0.60質量%添加するのがより好ましい。また、前記連鎖移動剤は、重合性モノマーに対して、0.10質量%〜0.40質量%添加するのが好ましく、0.15質量%〜0.30質量%添加するのがより好ましい。重合温度および重合時間は、用いるモノマーによって異なるが、一般的には、重合温度は60℃〜90℃であるのが好ましく、重合時間は5時間〜24時間であるのが好ましい。前記回転重合後に、残存するモノマーや重合開始剤を完全に反応させて残留させないことを目的として、該回転重合の重合温度より高い温度での加熱処理を施してもよい。
【0031】
また、重合体を溶融押出ししてクラッド部を形成する場合は、一旦、重合体を作製した後、押出し成形等の成形技術を利用して、所望の形状(本実施の形態では円筒形状)の構造体を得ることもできる。これらに用いられる溶融押出装置としては、主として、インナーサイジングダイ方式とアウターダイ減圧吸引方式の2つのタイプがある。
【0032】
図1に、インナーサイジングダイ方式の溶融押出装置の断面図の一例を示して、インナーサイジングダイ方式の成形の概略を説明する。装置本体11からベント付き1軸スクリュー押出機(図示しない)により、クラッド部の原料ポリマー20がダイ本体14に押出される。ダイ本体14の内部には、原料ポリマー40の流路20a,20bに導くガイド15が挿入されている。原料ポリマー20は、このガイド15を経て、ダイ本体14とインナーロッド16との間の流路20a,20bを通り、ダイの出口14aから押出され、円筒中空管の形状のクラッド(クラッド部,クラッド管)19が形成される。クラッド19の押出速度については特に制限されないが、形状を均一に保つとともに、生産性の点から、押出し速度は1cm/min〜100cm/minの範囲であることが好ましい。
【0033】
ダイ本体14には、原料ポリマー20を加熱するための加熱装置(図示しない)が設置されているのが好ましい。例えば、原料ポリマー20の進行方向に沿って、ダイ本体14を覆うように1つまたは2以上の加熱装置(例えば、蒸気、熱媒油、電気ヒータなど利用した装置)を設置してもよい。一方、ダイの出口14aでは、温度センサ21を取り付け、この温度センサ21によってダイの出口14aでのクラッド19の温度を測定して温度を調節するのが好ましい。温度は、原料ポリマー20のガラス転移温度以下であることが、クラッド19の形状を均一に保持することが可能となるために好ましい。また、クラッド19の温度が40℃以上であることが、急激な温度変化による形状の変化を抑制することが可能になり好ましい。このクラッド19の温度の制御は、例えば、図示しない冷却装置(例えば、水、不凍液、オイルなどの液体や、電子冷却などを使用した装置)をダイ本体14に取り付けてもよいし、ダイ本体14の自然空冷により冷却してもよい。ダイ本体に加熱装置が設置されている場合は、冷却装置は加熱装置の位置より下流に取り付けるのが好ましい。
【0034】
次に、アウターダイ減圧吸引方式の溶融押出し装置の製造ラインの一例を図2に、および成形ダイス53の斜視図の一例を図3に示して、アウターダイ減圧吸引方式の成形の概略を説明する。図2に示す製造ライン50は、溶融押出装置51と、押出しダイス52と、成形ダイス53と、冷却装置54と、引取装置55とを備える。ペレット投入ホッパ56から投入された原料ポリマーは、溶融押出装置51内部で溶融され、押出しダイス52によって押出され、成形ダイス53に送り込まれる。押出速度Sは、0.1≦S(m/min)≦10の範囲が好ましく、より好ましくは0.3≦S(m/min)≦5.0であり、最も好ましくは0.4≦S(m/min)≦1.0である。しかしながら、本発明において押出速度Sは、前述した範囲に限定されるものではない。
【0035】
図3に示す様に、成形ダイス53は、成形管70を備えており、成形管70に溶融樹脂(原料ポリマー)60を通す(図2参照)ことにより、溶融樹脂60が成形され円筒形状のクラッド61(図2参照)が得られる。成形管70には、多数の吸引孔70aが設けられていて、成形管70の外側に設けられた減圧チャンバ71を真空ポンプ57(図2参照)により減圧にすることで、クラッド61の外壁面が、成形管70の成形面(内壁面)70bに密着するために、クラッド61の肉厚が一定になって成形される。なお、減圧チャンバ71内の圧力は、20kPa〜50kPaの範囲とすることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。なお、図2に示すように成形ダイス53の入口に、クラッド61の外径を規定するためのスロート(外径規定部材)58を取り付けるのが好ましい。
【0036】
成形ダイス53により形状が調整されたクラッド61は、冷却装置54に送られる。冷却装置54には、多数のノズル80が備えられており、それらのノズル80から冷却水81をクラッド61に向けて放水することで、クラッド61を冷却して、固化させる。冷却水81は、受け器82で回収して、排出口82aから排出することもできる。クラッド61は、冷却装置54から引取装置55により引き出される。引取装置55は、駆動ローラ85と加圧ローラ86とが備えられている。駆動ローラ85には、モータ87が取り付けられており、クラッド61の引取速度の調整が可能になっている。また、クラッド61を挟んで駆動ローラ85と対向して配置されている加圧ローラ86により、クラッド61の微小な位置のずれを修正することが可能となっている。この駆動ローラ85の引取速度と溶融押出装置51の押出速度とを調整したり、加圧ローラ86によるクラッド61の移動位置を微調整したりすることにより、クラッド61の形状、特に肉厚を均一にすることが可能となる。
【0037】
以上に、本発明に係る光伝送体の製造方法のうち、プラスチック光ファイバのクラッド部に用いられる中空状のプラスチック光学部材について図面を参照しながら説明した。さらに、溶融押出し成形するクラッドを二重化し、共押出しによってアウターコアを中空管形成と同時付与することもできる。また、本発明に係る光伝送体の製造方法により得られる光伝送体は、他の用途に用いることも可能である。
【0038】
前述のいずれかの方法により製造されたクラッド部を用いてプリフォームを形成する第2工程を行う。クラッド部となる円筒管の中空部に前述したコア部となるモノマー,開始剤(重合開始剤),連鎖移動剤,屈折率調整剤(ドーパント)などの原料を注入する。なお、重合開始剤などの添加剤は、形成するポリマーの種類などに応じて好ましい範囲に適宜決定することができる。
【0039】
コア部は、クラッド部となる円筒管(クラッド管)内に充填された重合性モノマーを重合することで作製する。また、コア部に屈折率分布を導入する(GI型)ため、高屈折率で分子体積が大きなドーパントを添加することが好ましい。コア部となるモノマーが重合を開始すると、クラッド管の内壁がモノマーにより膨潤し、膨潤層を形成する。この膨潤層は、ゲル状態となっているため重合速度が加速(ゲル効果)して、内壁からクラッド管の中心に向かって重合が速やかに進行する。膨潤層内には分子体積が小さいモノマーが入るため、分子体積が大きなドーパントは中心部へ押出されるため、中心部では高屈折率のドーパントの濃度が高まり、屈折率分布を有するGI型光ファイバの母材(プリフォーム)が得られる。
【0040】
前述した方法により得られたプリフォームを延伸して光ファイバ素線(以下、素線と称する)を作製する第3工程を行う。プリフォームを線引装置の加熱部により加熱しながら、線引して延伸する。なお、この際に、温度や線引速度を調整することによって所望の素線を得ることができる。
【0041】
前述した方法で得られた素線を用いて本発明の光ファイバを作製する。なお、本発明の光ファイバを製造するための素線の製造方法は、前述した製造方法に限定されるものではない。素線は、ステップインデックス(SI)型や単一モード(SM)型などである。
【0042】
[プラスチック光ファイバの製造方法]
図4に示すように本発明のプラスチック光ファイバ110は、コア部111aとクラッド部111bとから形成された素線111の外周面111cに防湿層112を形成することにより、プラスチック光ファイバの防湿性を向上させ、水含有に伴う光学特性の悪化を防ぐ。本発明において、防湿層は、アルミニウムなどの金属やポリエチレンなどのポリマーから形成する。なお、防湿層にアルミニウム層を用いた場合には、アルミニウムが大気と接触する部分、すなわちアルミニウム層の外周面には、薄い酸化被膜(Al2 O3 )が形成されるため防湿性が向上するため、後述する被覆層を形成する必要がなくなる。また、被覆層を形成したものであっても、酸化被膜により最も防湿効果を有する光ファイバを得ることが可能となる。
【0043】
始めに、アルミニウムから形成する防湿層(アルミニウム層)の形成方法を説明する。アルミニウム層は、光ファイバ素線の外周面に、蒸着方法、塗布方法、箔の貼付方法などにより形成することが可能である。蒸着方法は、光ファイバ素線の外周面に薄膜として形成する。薄膜の形成には、物理蒸着である真空蒸着法,スパッタリング(スパタリング)法があり、また化学蒸着にはプラズマプロセスが知られているが、真空蒸着法を用いた実施形態について説明する。
【0044】
本発明の第1実施形態として、素線111にアルミニウムから形成された防湿層(金属膜)112を真空蒸着法を用いて形成する方法を説明する。真空蒸着法は、装置構成が単純であるためコストの点から有利である。また、様々な物質から薄膜を形成できる、薄膜形成時に熱的及び電気的変動が少なく、膜厚が均一なものを得ることができる、などの利点もある。
【0045】
真空蒸着法による薄膜の形成は、公知の方法で行うことができる。例えば、外径が0.3mm〜1.0mmの範囲の素線(PMMA系ポリマー)111を延伸方向に対して10m〜100mに切断して真空蒸着装置にセットする。薄膜材料としてアルミニウム(純度99.5%)を用いる。なお、薄膜材料は装置内が所定の条件になるまでは、シャッタにより装置内で揮発させない。本発明において装置内を0.1Pa〜20Paの範囲に減圧して、293K〜373Kの温度に加熱することが好ましいが、これらの条件に限定されるものではない。なお、装置内には形成された膜の膜厚を測定する膜厚計を取り付けて、膜を形成しながらモニタリングを行えるために好ましい。また、薄膜材料であるアルミニウムを揮発させるため、抵抗加熱法により加熱することが好ましい。
【0046】
装置内が所定の圧力、温度となった後に、シャッタを開けて真空蒸着を行い素線111の外周面111cに防湿層(金属膜)であるアルミニウム層112(図4参照)を形成する。なお、このとき、外周面111cに均一な膜厚でアルミニウム層112を形成するために、素線111の中心線を基準として回転させながら薄膜を形成させること、膜厚が均一になるために好ましいが、回転させる方法は省略することができる。そして、所望の膜厚でアルミニウム層(金属膜)112が形成されたことを膜厚計で確認した後に、シャッタを閉じて膜の形成を中止する。なお、本発明において、アルミニウム層112の膜厚は、図4に示す断面において、任意の3ヶ所の膜厚をSEM(走査電子顕微鏡)を用いて測定してその平均値を膜厚(以下、厚みと称する場合もある)とする。本発明においては、アルミニウム層112の膜厚は、100nm〜10μmの範囲とすることが好ましい。なお、本実施形態では素線111を所定の長さに切断して薄膜を形成する枚様(枚葉)式を用いた例を説明したが、連続巻取法により連続して薄膜を形成する方法も適用可能である。
【0047】
以上に説明した実験条件で防湿層112を形成することにより、素線111へのダメージ、光学特性、特に伝送損失の悪化を防止すると共に素線111を防湿して、素線が水を含むことにより生じる伝送損失の悪化も防止できる。なお、本発明において真空蒸着法は、前述した抵抗加熱法以外の方法を用いることもできる。例えば、電子線加熱方法や偏向磁場方法などにより、局部的に膜厚の形成を制御する方法も本発明には適用可能である。
【0048】
本発明の第2実施形態である防湿層(金属膜)であるアルミニウム層112を塗布により外周面111c上に形成する方法を説明する。塗布原料であるアルミニウムを分散処理して液状(以下、アルミニウムペーストと称する)とする。素線111の温度上昇に伴う物性の悪化を防ぐために、アルミニウムペーストを20℃〜70℃の温度範囲として連続的に塗布を行い、アルミニウムペースト中のペースト成分(主にポリマーや粘着剤である)を乾燥により除去して、アルミニウム層112を形成する。なお、このアルミニウム層112の厚みは、100nm〜10μmの範囲とすることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。また、厚みは、前述した方法により測定された値を用いる。さらには、アルミニウム層を塗布して形成する方法は、前述した方法に限定されるものではない。
【0049】
本発明の第3の実施形態である防湿性を有するテープを素線の外周面111cに巻きつける方法について図5を用いて説明する。素線120に防湿テープ121を巻きつけて素線の防湿を行う。防湿テープ121は、金属層であるアルミニウム箔に吸湿剤を含むポリマー膜などから形成されるものであることが好ましい。素線120の直径D2が0.3mm〜1mmの範囲のものを用いたときには、防湿テープ121の幅W1は、2mm〜10mmの範囲のものを用いることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。また、防湿テープ121を素線120に巻きつける巻付角αは、5°〜30°の範囲とすると、巻ヅレなどの発生を抑制できる。さらに、素線120の防湿性を良好とするために防湿テープ121は、重なり部121aが生じるように巻きつけることが好ましい。重なり部121aの幅W2は、前述した防湿テープ121を用いた際には、0.2mm〜2mmの範囲とすることが、素線120の防湿性を保持すると共にコストの点からも有利である。
【0050】
前述した防湿テープ121の金属層にアルミニウムを用いた場合には、防湿テープの金属層(例えば、アルミニウム箔を用いることが好ましい)の厚みは、1μm〜500μmの範囲であることが防湿性を良好にすると共にコストの点から有利であるが、その範囲に限定されるものではない。また、アルミニウム箔121を素線120に巻付け固定する際には、圧着法などにより行なうことができる。または、外周面111c側に接着剤を塗り(接着剤層を形成する)、アルミニウム箔(金属層)を貼付することもできる。なお、貼付は、図5に示すようにらせん状に巻きつけることが最も好まいが、外周面111cが露出しないように貼付すれば貼付の形態はいずれのものであっても良い。また、本発明において、金属層の少なくとも片面に接着剤層を設けたものも前述した金属膜と見なして用いることもできる。接着剤には、公知のいずれのものを用いることができるが、接着性、コストなどの点からアクリル樹脂又はエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0051】
また、防湿テープ121は、ポリマーを主原料にしたもの(以下、防湿ポリマー膜と称する)を用いることができる。この場合には、ポリマーに吸水性がある物質(例えば、乾燥シリカゲル粉末,吸水性ポリマーなど)を添加しておくことで、水分を吸湿して、その中にあるプラスチック光ファイバを防湿することができる。このように吸水性を有する物質から作成した防湿テープ121は、吸湿層を備えていることとなる。また、ポリマーには、吸水性物質が一様に混合できるようにポリエチレン,塩化ビニル樹脂,ポリウレタンなどを用いることが好ましいが、それらに限定されるものではない。また、防湿ポリマー膜は、公知の接着剤により外周面に接着することが好ましい。接着剤は、特に限定されないがアクリル樹脂,エポキシ樹脂などを用いることが好ましい。また、防湿ポリマー膜は、被覆機を用いて素線に被覆しても良い。本発明において防湿ポリマー膜の厚みは特に限定されないが、防湿性を良好に保つために、100μm〜1mmの範囲のものを用いることが好ましい。
【0052】
さらに、防湿テープ121は、アルミニウム箔と防湿ポリマー膜とを層状にしたものを用いることもできる。この場合に、外周面側がアルミニウム箔であっても良いし、防湿ポリマー膜であっても良い。この際の防湿テープ121は、100μm〜1mmの範囲であることが好ましいが、その範囲に限定されるものではない。
【0053】
[被覆層の形成及び用途]
前述した方法により製造されたプラスチック光ファイバを外的環境から保護するために、図4に示すように防湿層112上に被覆層113を形成することが好ましい。被覆層113を形成するものは、特に限定されないが、柔軟性に富み、溶融加工温度が低く、難燃性のものであることが好ましい。具体的には、エチレン−ビニルアルコール共重合体,ポリ塩化ビニリデン樹脂,ポリ塩化ビニル樹脂,ポリアミド系樹脂(ナイロン)ポリエステル系樹脂などをもちいることが好ましいが、これらに限定されるものではない。また、被覆層113の厚みは、特に限定されないが、プラスチック光ファイバの可撓性を損なわないために、3mm以下であることが好ましい。このように被覆層が形成されたプラスチック光ファイバは、プラスチック光ファイバケーブルとして光通信伝送媒体などに用いられる。
【0054】
また、ケーブルの形状は使用形態によって、素線を同心円上にまとめた集合ケーブルや、一列に並べたテープ心線といわれる態様、さらにそれらを押え巻やラップシースなどでまとめた集合ケーブルなど用途に応じて選ぶことができる。また、本発明によって得られる光ファイバを用いたケーブルはステップインデックス型の光ファイバより、軸ずれに対する許容度が比較的高いため突き合せによる接合でも用いることができるが、端部に接続用光コネクタを用いて接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタとしては一般に知られている、PN型、SMA型、SMI型などの市販の各種コネクタを利用することも可能である。
【0055】
本発明の光学部材としての光ファイバ、および光ファイバケーブルを用いて光信号を伝送するシステムには、種々の発光素子、受光素子、他の光ファイバ、光バス、光スターカプラ、光信号処理装置、接続用光コネクター等で構成される。それらに関する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行),日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」,IEICE TRANS. ELECTRON., VOL. E84−C, No.3, MARCH 2001, p.339−344「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3, No.6, 2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」等の他、特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号等の各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号等の各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号等の公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号等の各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号等の公報に記載の光信号処理装置;特開2001−86537号等の公報に記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号等の公報に記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号等の各公報に記載のマルチファンクションシステム;等を参考にすることができる。
【0056】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作などの態様は、本発明を限定するものではない。また、説明は、実施例1で詳細に行い、実施例2ないし実施例7及び比較例1ないし比較例7については、実施例1と同じ条件については説明を省略する。なお、実験条件及び測定結果については、後に表1にまとめて示す。また、光ファイバの曲げ特性に関する実験を実施例8及び実施例9に示す。これら実施例も前述した実施例と同じ条件については、説明を省略する。
【0057】
[実施例1及び比較例1]
PMMAクラッド内部に界面ゲル重合により作製した2本のGI型PMMA光ファイバ素線を真空乾燥器にて48時間水分を除去した。その光ファイバ素線の1本を蒸着装置に入れて、一様膜厚になるようにアルミニウム蒸着を行った。アルミニウム膜の平均膜厚(以下、膜厚と称する)は200nmであった。この光ファイバの波長650nmにおける伝送損失は、181dB/kmであった。他の1本の光ファイバ素線はそのまま光ファイバとして比較例1の実験に用いた。これら光ファイバ100mを25℃の純水に24時間浸漬し、浸漬前後の重量増加分から水分の吸収量を見積もった。アルミニウム蒸着した実施例1で、0.53wt%の重量増加があり、この重量増加は、水分を吸収したものと思われる。また、650nmの波長における伝送損失は、192dB/kmであった。蒸着していない比較例1では1.54wt%の重量増加があり、伝送損失は、203dB/kmであった。以上の実験から本発明に係るアルミニウム膜を形成した光ファイバ(実施例1)は、吸水による伝送損失の悪化が抑制されたことが分かった。
【0058】
[実施例2及び比較例2]
重水素化PMMAクラッド内部に界面ゲル重合により2本のGI型重水素化PMMA系光ファイバ素線(PMMA−d8 )を作製した。重水素化PMMAの重水素置換率を質量分析装置を用いて測定したところ、99.1%であった。これら光ファイバ素線を真空乾燥器にて48時間水分を除去し、1本の光ファイバ素線にアルミニウムを蒸着して膜厚は270nmのものが得られた。この光ファイバの波長850nmにおける伝送損失は、163dB/kmであった。実施例1と同じ処理を行い、アルミニウム蒸着した実施例2では、0.23wt%の重量増加があり、850nmの波長における伝送損失は257dB/kmであった。蒸着していない比較例2では1.32wt%の重量増加があり、伝送損失は815dB/kmであった。以上の実験から本発明に係るアルミニウム膜を形成した光ファイバ(実施例2)は、吸水による伝送損失の悪化が抑制されたことが分かった。
【0059】
[実施例3及び比較例3]
3FMAポリマークラッド内部に界面ゲル重合により2本のGI型PMMA系光ファイバ素線(3FMA)を作製した。3FMAのフッ素置換率を質量分析装置を用いて測定したところ、99.5%であった。これら光ファイバ素線を真空乾燥器にて48時間水分を除去し、1本の光ファイバ素線にアルミニウムを蒸着して膜厚が410nmのものが得られた。実施例1と同じ処理を行い、アルミニウム蒸着した実施例3では、0.03wt%の重量増加があり、850nmの波長における伝送損失は517dB/kmであった。蒸着していない比較例3では0.18wt%の重量増加があり、伝送損失は686dB/kmであった。
【0060】
[実施例4及び比較例4]
4FMAポリマークラッド内部に界面ゲル重合により2本のGI型PMMA系ファイバ素線(4FMA)を作製した。4FMAのフッ素置換率は、99.3%であった。これら光ファイバ素線を真空乾燥器にて48時間水分を除去し、1本の光ファイバ素線にアルミニウムを蒸着して膜厚が330nmのものが得られた。実施例1と同じ処理を行い、アルミニウム蒸着した実施例4では、0.05wt%の重量増加があり、850nmの波長における伝送損失は407dB/kmであった。蒸着していない比較例4では0.17wt%の重量増加があり、伝送損失は565dB/kmであった。
【0061】
[実施例5及び比較例5]
PMMAクラッド内部に界面ゲル重合により2本のGI型PMMA光ファイバ素線を作製して、真空乾燥器にて48時間水分を除去した。1本の光ファイバ素線には、乾燥シリカゲル粉末を50wt%混合したポリエチレンを被覆機を使用して被覆し、防湿層を形成した。防湿層の厚みは0.6mmであった。これら2本の光ファイバ100mを70℃,95%RHで72時間放置した。防湿層を形成した実施例5では0.88wt%の重量増加があり、650nmの波長における伝送損失は196dB/kmであった。防湿層を形成しない比較例5では1.44wt%の重量増加があり、伝送損失は211dB/kmであった。
【0062】
[実施例6及び比較例6]
重水素化PMMAクラッド内部に界面ゲル重合により2本のGI型重水素化PMMA光ファイバ素線を作製した。重水素置換率は99.0%であった。これら2本の光ファイバ素線を真空乾燥器にて48時間水分を除去した。そのうちの1本の光ファイバ素線にアルミニウム膜がついている防湿テープを一定方向に巻きつけた(図2参照)。これら2本の光ファイバを実施例5と同じ処理を行った。防湿テープを巻きつけた実施例6では0.09wt%の重量増加があり、850nmの波長における伝送損失は122dB/kmであった。防湿テープを巻きつけない比較例6では1.32wt%の重量増加があり、伝送損失は784dB/kmであった。
【0063】
[実施例7及び比較例7]
重水素化PMMAクラッド内部に界面ゲル重合により2本のGI型重水素化PMMA光ファイバを作製した。重水素置換率は99.4%であった。これら2本の光ファイバ素線を真空乾燥器にて48時間水分を除去した。そのうちの1本の光ファイバ素線に0.3mmの厚みのアルミニウム箔を巻きつけた。これら2本の光ファイバを実施例5と同じ処理を行った。アルミニウム箔を巻きつけた実施例7では0.05wt%の重量増加があり、850nmの波長における伝送損失は102dB/kmであった。アルミニウム箔を巻きつけなかった比較例7では1.32wt%の重量増加があり、伝送損失は803dB/kmであった。
【0064】
【表1】
【0065】
表1から本発明に係るプラスチック光ファイバは、吸水率が低下し、また伝送損失の悪化を抑制できることが分かった。特にPMMAの軽水素原子(H)を重水素原子(D)やフッ素原子(F)に置換した置換型PMMA系ポリマーをプラスチックとして用いると、吸水率が低下し、また伝送損失の悪化を極めて抑制できることが分かった。
【0066】
[実施例8及び実施例9]
実施例8では、実施例2で作製した光ファイバ(PMMA−d8 ,アルミニウム膜270nm)10mを用いて、その中央部を直径5cmの円柱に巻き付けて実施例1と同じ条件で純水に浸漬させた。このときの波長850nmにおける伝送損失の増加は、80dB/kmであった。また、実施例9では、実施例8の光ファイバのアルミニウム膜の膜厚を30μmとした以外は、同じ条件で実験を行ったところ、波長850nmにおける伝送損失の増加は、180dB/kmであった。これらの実験から本発明にかかるプラスチック光ファイバは、外周部に金属膜からなる防湿層および/または吸湿層を有しているために、耐湿性の向上の効果がある。しかしながら、金属膜を厚くすると光ファイバの曲げ応力の増加に起因すると思われる伝送損失の増加が生じる場合がある。そこで、耐湿性を有し、曲げにも強い光ファイバとするためには、金属膜を100nm以上10μm以下の範囲とすることが好ましいことが分かった。
【0067】
【発明の効果】
本発明のプラスチック光ファイバの製造方法によれば、コア部がポリメタクリル酸エステルからなるプラスチック光ファイバ素線を用いたプラスチック光ファイバの製造方法において、前記プラスチック光ファイバ素線の外周部に金属膜からなる防湿層および/または吸湿層を有するので前記プラスチックの吸水を抑制でき、吸水に伴う光学特性、特に伝送損失の悪化を防ぐプラスチック光ファイバを得ることができる。なお、前記金属膜には、真空蒸着法や塗布法により形成されたアルミニウム膜、アルミニウム層の少なくとも片面に粘着剤層を有するテープなどを用いることで、前記効果を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプラスチック光ファイバに用いられるクラッド管を製造する装置の要部の概略断面図である。
【図2】本発明に係るプラスチック光ファイバの製造方法に用いられる製造ラインの概略図である。
【図3】図2に示した製造ラインに用いられている成形ダイスの要部分解斜視図である。
【図4】本発明に係るプラスチック光ファイバの断面図である。
【図5】本発明に係るプラスチック光ファイバの製造方法を説明するための概略図である。
【符号の説明】
110 プラスチック光ファイバ
111,120 素線
111c 外周面
112 防湿層
121 防湿テープ
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリメタクリル酸エステル誘導体を用いたプラスチック光ファイバ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバには、従来、石英が広く用いられている。近年、プラスチックを材料としたものが注目されている。プラスチック光ファイバは、同一の構造をを有する石英系のものと比較して、製造および加工が容易であること及び低価格であること等の利点があり、近年、光ファイバ及び光レンズなどの種々の応用が試みられている。なかでも、プラスチック光ファイバは、素線が全てプラスチックで構成されているため、伝送損失が石英系と比較してやや大きいという短所を有するものの、良好な可撓性を有し、軽量で加工性に優れるため、石英系光ファイバと比較して口径の大きなファイバを製造しやすい。さらに、低コストに製造可能である長所を有する。従って、伝送損失の大きさが問題とならない程度の短距離用の光通信伝送媒体として種々検討されている。
【0003】
プラスチック光ファイバは、ポリマーからなる芯部(以下、コア部と称する)とコア部より低屈折率のポリマーからなる外殻(以下、クラッド部と称する)とから形成された光ファイバ母材(以下、プリフォームと称する)を引き伸ばすことにより製造されている。特に、中心から外側に向かって屈折率の分布を有するコア部を備えた屈折率分布型プラスチック光ファイバ(以下、GI型ファイバと称する)は、伝送する光信号の帯域を大きくすることが可能なため、高い伝送容量を有する光ファイバとして最近注目されている(例えば、特許文献1参照。)。このようなプラスチック光ファイバの製造方法は、クラッド部を回転重合法により製造し、その中にコア部を形成する。
【0004】
前述したプラスチック光ファイバの原料プラスチックには、ポリメタクリル酸エステルの一種であるポリメタクリル酸メチル(以下、PMMAと称する)がよく用いられている。PMMAは、有機系ポリマーのなかでは優れた透明性と低屈折率とを有するなど、極めて光学特性に優れた材料であるからである。その特徴として(1)透明性に優れている,(2)複屈折率が低い,(3)耐候性に優れている,(4)成形性に優れている,(5)バランスした力学的特性を有する。などが挙げられる。しかしながら、PMMAもプラスチックであるので、(1)吸水率が高い,(2)耐熱性がやや低い、などの欠点も有している。
【0005】
そこで、プラスチック光ファイバのクラッド部を耐湿材料で覆う方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。その方法は、プラスチックに環状ポリオレフィンを用いて、そのクラッド部の外側にアルミニウムなどの被覆層を物理蒸着法や化学蒸着法により形成している。
【0006】
【特許文献1】
国際公開93/08488号パンフレット
【特許文献2】
特開2001−305398号公報 (第3−9頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献2では、被覆層(金属層,金属酸化物層の少なくともいずれかである)を形成する具体的な方法は、光ファイバの原料に環状ポリオレフィンを用いた場合のみが開示されている。また、近年、PMMA系ポリマーを用いてさらに低伝送損失化が試みられている。低伝送損失化には、PMMA中の軽水素原子(H)をより重たい原子である重水素原子(D)やフッ素原子(F)に置換するポリマー(以下、置換型PMMA系ポリマーと称する)により達成されている。しかしながら、置換型PMMA系ポリマーは吸水することで伝送損失が悪化してしまうため、その防湿化が強く求められている。そこで、本発明の課題は、光学的特性に優れた置換型PMMA系ポリマーからなる光ファイバ素線にダメージを与えることなく防湿層を形成することである。
【0008】
本発明は、耐湿性を向上させた置換型PMMA系ポリマーを用いたプラスチック光ファイバ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のプラスチック光ファイバの製造方法は、コア部がポリメタクリル酸エステルからなるプラスチック光ファイバ素線を用いたプラスチック光ファイバの製造方法において、前記プラスチック光ファイバ素線の外周部に金属膜からなる防湿層および/または吸湿層を有する。前記ポリメタクリル酸エステルは、ポリメタクリル酸メチルを用いることがより好ましい。
【0010】
前記コア部のポリメタクリル酸エステルの水素の一部が重水素および/またはフッ素に置換されたものを用いることが好ましい。なお、本発明において水素とは、軽水素(H)を意味している。また、前記金属膜を真空蒸着法を用いて形成することが好ましい。真空蒸着法により前記金属膜を形成する場合には、用いられる装置内の圧力を0.1Pa〜20Paとし、温度を293K〜373Kとすることが好ましい。さらに、前記金属膜の厚みが100nm〜10μmの範囲であることが好ましい。
【0011】
前記金属膜が、金属層の少なくとも片面に粘着剤層を有するテープ状のものであって、前記粘着剤層を介して前記プラスチック光ファイバ素線の外周にらせん状に巻き付けることが好ましい。また、前記金属層の厚みが1μm〜500μmのものを用いることが好ましい。
【0012】
前記金属にアルミニウムを用いることが好ましい。また、本発明には、前記プラスチック光ファイバの製造方法を用いて製造されたプラスチック光ファイバも含まれる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、それら実施形態はあくまでも本発明を詳細に説明するためのものであり、本発明をなんら制限するものではない。
【0014】
[光ファイバ素線の原料]
(クラッド部)
クラッド部は、一般的に透明性を有する熱可塑性樹脂のポリマーであることが好ましい。また、光ファイバ母材(プリフォーム)を溶融押出しで作製する際には、適当な溶融粘度を有していることが好ましい。ポリマーの重量平均分子量(Mw)が1万〜50万の範囲であることが好ましく、より好ましくは3万〜10万である。また、コア部を伝送する光がクラッド部との界面で全反射するために、コア部を構成するポリマーの屈折率よりも低屈折率であり、非晶性であることが好ましい。また、コア部との密着性が良く、タフネス(硬さ)に優れ、耐湿熱性に優れているものが好ましい用いられる。また、クラッド部は複数の層から形成されていても良い。
【0015】
クラッド部を構成するポリマーとしては、メチルメタクリレート(以下、MMAと称する。なお化1(a)参照)系化合物の重合体、共重合体などのポリメタクリル酸エステルが挙げられる。例えば、トリフルオロエチルメタクリレート重合体及びMMAとの共重合体(以下、3FMAと称する)が挙げられる。なお、トリフルオロエチルメタクリレートの化学式(構造式)は、化1(b)に示す。また、テトラフルオロエチルメタクリレート重合体及びMMAとの共重合体(以下、4FMAと称する)も挙げられる。テトラフルオロエチルメタクリレートの化学式は、化1(c)に示す。また、MMAの軽水素原子(H)を重水素原子(D)に置換した重水素化MMA(以下、MMA−d8 と称する場合もある)を用いることもできる。なお、重水素化MMAの構造式は、化1(d)に示す。また、MMAの軽水素原子(H)を三重水素原子(T)に置換したものも用いることもできる。なお、本発明においてPMMAの一部の軽水素原子(H)を重水素原子やフッ素原子(F)に置換したものを置換型PMMA系ポリマーと称する。また、重水素原子には、質量数2(D)及び質量数(T)のいずれをも意味している。なお、本発明のプラスチック光ファイバを構成する光ファイバ素線の原料には、PMMA系ポリマーに限定されずに、スチレン系樹脂,ポリカーボネート系樹脂,パーフルオロ系樹脂,シリコーン系樹脂,環状ポリオレフィン系樹脂などを用いることもできる。
【0016】
【化1】
【0017】
また、本発明のクラッド部のポリマーは、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート,tert−ブチルメタクリレート並びにそのフッ化物及び重水素化物,イソボルニルメタクリレート並びにそのフッ化物及び重水素化物などの重合体及びそれら化合物とMMAとの共重合体(置換型PMMA系ポリマー)も挙げることができる。さらに、ポリカーボネート,ノルボルネン系樹脂(例えば、ZEONEX(登録商標;日本ゼオン社製)など),ファンクショナルノルボルネン系樹脂(例えば、ARTON(登録商標;JSR社製)など),フッ素樹脂(例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)共重合体,テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFA)ランダム共重合体,クロロトリフルオロエチレン(CTEF)共重合体など)が挙げられる。また、それらの重水素化物も用いることができる。
【0018】
(コア部)
コア部を界面ゲル重合法により形成する場合には、重合性モノマー,開始剤,連鎖移動剤,屈折率調整剤などを含む重合性組成物を用いる。重合性組成物は、伝送される光に対して光透過性である限り特に制約がないが、下記に示すものを用いることが好ましい。
【0019】
<モノマー>
原料の重合性モノマーとしては、例えば、以下のような(メタ)アクリル酸エステル類(フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル(a)、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(b))、スチレン系化合物(c)、ビニルエステル類(d)等を例示することができ、これらのホモポリマー、あるいはこれらモノマーの2種以上からなる共重合体、およびホモポリマー及び/または共重合体の混合物が挙げられる。さらに、下記モノマー中の水素原子の一部または全部が重水素原子に置き換わったものでも良い。またさらに、上記モノマーの単独あるいは共重合体からなるポリマーの屈折率がクラッド部のそれに比べて同等かあるいはそれ以上になるように構成モノマーの種類、組成比を組むことが好ましい。
【0020】
例えば、(a)フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、トリシクロ[5・2・1・02,6 ]デカニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等が挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。また、(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、2,2,2 −トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3 −テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3 −ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1 −トリフルオロメチル−2,2,2 −トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5 −オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4 −ヘキサフルオロブチルメタクリレート等が挙げられる。さらに、(c)スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。さらには、(d)ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものではない。
【0021】
<開始剤>
開始剤としては、用いるモノマーや重合方法に応じて適宜選択することができ、例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物が挙げられる。また、2,2’ −アゾビスイソブチロニトリル、2,2’ −アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’ −アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’ −アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’ −アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’ −アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’ −アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’ −アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’ −アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’ −アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’ −アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’ −アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’ −アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’ −アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’ −アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’ −アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’ −アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’ −アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は2種類以上を併用してもよい。勿論、これらに限定されるものではない。
【0022】
<連鎖移動剤>
前記クラッド部およびコア部形成用重合性組成物はそれぞれ、連鎖移動剤を含有していることが好ましい。前記連鎖移動剤は、主に重合体の分子量を調整するために用いられる。前記クラッド部およびコア部形成用重合性組成物がそれぞれ連鎖移動剤を含有していると、重合性モノマーからポリマーを形成する際に、重合速度および重合度を前記連鎖移動剤によってより制御することができ、重合体の分子量を所望の分子量に調整することができる。例えば、得られたプリフォームを延伸により線引きして光ファイバとする際に、分子量を調整することによって延伸時における機械的特性を所望の範囲とすることができ、生産性の向上にも寄与する。
【0023】
前記連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択することができる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
【0024】
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(例えば、チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、前記連鎖移動剤は、2種類以上を併用してもよい。勿論、これらに限定されるものではない。
【0025】
<屈折率調整剤>
本発明では、前記重合性組成物を用いて光学部材を作製する際に、屈折率調整剤を用い、その濃度に傾斜を持たせることによって、さらに好ましい屈折率分布型の光学部材を作製することができる。屈折率調整剤はドーパントとも称し、併用する前記重合性モノマーの屈折率と異なる化合物である。その屈折率差は、0.005以上であるのが好ましい。ドーパントは、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して、屈折率が高くなる性質を有するものを用いることが好ましい。また、ドーパントは重合性化合物であってもよく、重合性化合物のドーパントを用いた場合は、これを共重合成分として含む共重合体がこれを含まない重合体と比較して、屈折率が上昇する性質を有するものを用いることが好ましい。上記性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、ドーパントとして用いることができる。本実施の形態では、コア部形成用重合性組成物にドーパントを含有させ、コア部を形成する工程において界面ゲル重合法により重合の進行方向を制御し、屈折率調整剤の濃度に傾斜を持たせ、コア部に屈折率調整剤の濃度分布に基づく屈折率分布構造を形成するのが好ましい(以下、屈折率の分布を有するコア部を「屈折率分布型コア部」と称する)。屈折率分布型コア部を形成することにより、得られる光学部材は広い伝送帯域を有する屈折率分布型プラスチック光学部材となる。
【0026】
前記ドーパントとしては、例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジル−n−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ビフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)などが挙げられ、中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOが好ましい。また、ドーパントは、例えばトリブロモフェニルメタクリレートのように重合性化合物でもよく、その場合、マトリックスを形成する際に、重合性モノマーと重合性ドーパントとを共重合させるので、種々の特性(特に光学特性)の制御がより困難となるが、耐熱性の面では有利となる可能性がある。勿論、これらに限定されるものではない。
【0027】
[光ファイバ素線の製造方法]
本発明の光ファイバ素線の製造方法は、
1)筒状のクラッド部の製造(第1の工程)、
2)プリフォームの製造(第2の工程)、
3)プリフォームを延伸して光ファイバ素線を得る(第3の工程)
以上の工程により光ファイバ素線を製造することが好ましく、その製造方法について説明する。しかしながら、本発明に用いられる光ファイバ素線の製造方法は、前述した方法に限定されるものではない。
【0028】
(クラッド部の作製)
本実施の形態において、前記第1の工程では、クラッド部となる中空管(特に好ましくは円筒管)を作製する。クラッド部はモノマーを重合して形成してもよいし、重合体を溶融押出しして形成してもよい。本発明において、得られるクラッドの外径D1(図1参照)は光学特性や生産性の観点から、D1≦(mm)50の範囲であることが好ましく、より好ましくは10≦D1(mm)≦30の範囲である。さらに、クラッド部の肉厚t(図1参照)は、2≦t(mm)≦20の範囲であることが好ましい。しかしながら、本発明において、それらの範囲は、前述したものに限定されるものではない。
【0029】
モノマーを重合させてクラッド部を形成する場合は、例えば特許第3332922号公報に記載されているように、円筒形状の重合容器に、前述のクラッド部の原料となるモノマーを注入、両端を塞ぎ、該重合容器を回転(好ましくは、円筒の軸を水平に維持した状態で回転)させつつ、前記モノマーを重合させることにより、重合体からなる円筒管を作製することができる。このときに、特開平8−110419号公報に記載されている様に、原料をプレ重合して原料の粘度を上昇させてから、重合を行ってもよい。
【0030】
重合容器内には、モノマーとともに、重合開始剤、連鎖移動剤および所望により添加される安定剤などを注入することができる。その添加量については、用いるモノマーの種類等に応じて好ましい範囲を適宜決定することができるが、重合開始剤は、重合性モノマーに対して、0.10質量%〜1.00質量%添加するのが好ましく、0.40質量%〜0.60質量%添加するのがより好ましい。また、前記連鎖移動剤は、重合性モノマーに対して、0.10質量%〜0.40質量%添加するのが好ましく、0.15質量%〜0.30質量%添加するのがより好ましい。重合温度および重合時間は、用いるモノマーによって異なるが、一般的には、重合温度は60℃〜90℃であるのが好ましく、重合時間は5時間〜24時間であるのが好ましい。前記回転重合後に、残存するモノマーや重合開始剤を完全に反応させて残留させないことを目的として、該回転重合の重合温度より高い温度での加熱処理を施してもよい。
【0031】
また、重合体を溶融押出ししてクラッド部を形成する場合は、一旦、重合体を作製した後、押出し成形等の成形技術を利用して、所望の形状(本実施の形態では円筒形状)の構造体を得ることもできる。これらに用いられる溶融押出装置としては、主として、インナーサイジングダイ方式とアウターダイ減圧吸引方式の2つのタイプがある。
【0032】
図1に、インナーサイジングダイ方式の溶融押出装置の断面図の一例を示して、インナーサイジングダイ方式の成形の概略を説明する。装置本体11からベント付き1軸スクリュー押出機(図示しない)により、クラッド部の原料ポリマー20がダイ本体14に押出される。ダイ本体14の内部には、原料ポリマー40の流路20a,20bに導くガイド15が挿入されている。原料ポリマー20は、このガイド15を経て、ダイ本体14とインナーロッド16との間の流路20a,20bを通り、ダイの出口14aから押出され、円筒中空管の形状のクラッド(クラッド部,クラッド管)19が形成される。クラッド19の押出速度については特に制限されないが、形状を均一に保つとともに、生産性の点から、押出し速度は1cm/min〜100cm/minの範囲であることが好ましい。
【0033】
ダイ本体14には、原料ポリマー20を加熱するための加熱装置(図示しない)が設置されているのが好ましい。例えば、原料ポリマー20の進行方向に沿って、ダイ本体14を覆うように1つまたは2以上の加熱装置(例えば、蒸気、熱媒油、電気ヒータなど利用した装置)を設置してもよい。一方、ダイの出口14aでは、温度センサ21を取り付け、この温度センサ21によってダイの出口14aでのクラッド19の温度を測定して温度を調節するのが好ましい。温度は、原料ポリマー20のガラス転移温度以下であることが、クラッド19の形状を均一に保持することが可能となるために好ましい。また、クラッド19の温度が40℃以上であることが、急激な温度変化による形状の変化を抑制することが可能になり好ましい。このクラッド19の温度の制御は、例えば、図示しない冷却装置(例えば、水、不凍液、オイルなどの液体や、電子冷却などを使用した装置)をダイ本体14に取り付けてもよいし、ダイ本体14の自然空冷により冷却してもよい。ダイ本体に加熱装置が設置されている場合は、冷却装置は加熱装置の位置より下流に取り付けるのが好ましい。
【0034】
次に、アウターダイ減圧吸引方式の溶融押出し装置の製造ラインの一例を図2に、および成形ダイス53の斜視図の一例を図3に示して、アウターダイ減圧吸引方式の成形の概略を説明する。図2に示す製造ライン50は、溶融押出装置51と、押出しダイス52と、成形ダイス53と、冷却装置54と、引取装置55とを備える。ペレット投入ホッパ56から投入された原料ポリマーは、溶融押出装置51内部で溶融され、押出しダイス52によって押出され、成形ダイス53に送り込まれる。押出速度Sは、0.1≦S(m/min)≦10の範囲が好ましく、より好ましくは0.3≦S(m/min)≦5.0であり、最も好ましくは0.4≦S(m/min)≦1.0である。しかしながら、本発明において押出速度Sは、前述した範囲に限定されるものではない。
【0035】
図3に示す様に、成形ダイス53は、成形管70を備えており、成形管70に溶融樹脂(原料ポリマー)60を通す(図2参照)ことにより、溶融樹脂60が成形され円筒形状のクラッド61(図2参照)が得られる。成形管70には、多数の吸引孔70aが設けられていて、成形管70の外側に設けられた減圧チャンバ71を真空ポンプ57(図2参照)により減圧にすることで、クラッド61の外壁面が、成形管70の成形面(内壁面)70bに密着するために、クラッド61の肉厚が一定になって成形される。なお、減圧チャンバ71内の圧力は、20kPa〜50kPaの範囲とすることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。なお、図2に示すように成形ダイス53の入口に、クラッド61の外径を規定するためのスロート(外径規定部材)58を取り付けるのが好ましい。
【0036】
成形ダイス53により形状が調整されたクラッド61は、冷却装置54に送られる。冷却装置54には、多数のノズル80が備えられており、それらのノズル80から冷却水81をクラッド61に向けて放水することで、クラッド61を冷却して、固化させる。冷却水81は、受け器82で回収して、排出口82aから排出することもできる。クラッド61は、冷却装置54から引取装置55により引き出される。引取装置55は、駆動ローラ85と加圧ローラ86とが備えられている。駆動ローラ85には、モータ87が取り付けられており、クラッド61の引取速度の調整が可能になっている。また、クラッド61を挟んで駆動ローラ85と対向して配置されている加圧ローラ86により、クラッド61の微小な位置のずれを修正することが可能となっている。この駆動ローラ85の引取速度と溶融押出装置51の押出速度とを調整したり、加圧ローラ86によるクラッド61の移動位置を微調整したりすることにより、クラッド61の形状、特に肉厚を均一にすることが可能となる。
【0037】
以上に、本発明に係る光伝送体の製造方法のうち、プラスチック光ファイバのクラッド部に用いられる中空状のプラスチック光学部材について図面を参照しながら説明した。さらに、溶融押出し成形するクラッドを二重化し、共押出しによってアウターコアを中空管形成と同時付与することもできる。また、本発明に係る光伝送体の製造方法により得られる光伝送体は、他の用途に用いることも可能である。
【0038】
前述のいずれかの方法により製造されたクラッド部を用いてプリフォームを形成する第2工程を行う。クラッド部となる円筒管の中空部に前述したコア部となるモノマー,開始剤(重合開始剤),連鎖移動剤,屈折率調整剤(ドーパント)などの原料を注入する。なお、重合開始剤などの添加剤は、形成するポリマーの種類などに応じて好ましい範囲に適宜決定することができる。
【0039】
コア部は、クラッド部となる円筒管(クラッド管)内に充填された重合性モノマーを重合することで作製する。また、コア部に屈折率分布を導入する(GI型)ため、高屈折率で分子体積が大きなドーパントを添加することが好ましい。コア部となるモノマーが重合を開始すると、クラッド管の内壁がモノマーにより膨潤し、膨潤層を形成する。この膨潤層は、ゲル状態となっているため重合速度が加速(ゲル効果)して、内壁からクラッド管の中心に向かって重合が速やかに進行する。膨潤層内には分子体積が小さいモノマーが入るため、分子体積が大きなドーパントは中心部へ押出されるため、中心部では高屈折率のドーパントの濃度が高まり、屈折率分布を有するGI型光ファイバの母材(プリフォーム)が得られる。
【0040】
前述した方法により得られたプリフォームを延伸して光ファイバ素線(以下、素線と称する)を作製する第3工程を行う。プリフォームを線引装置の加熱部により加熱しながら、線引して延伸する。なお、この際に、温度や線引速度を調整することによって所望の素線を得ることができる。
【0041】
前述した方法で得られた素線を用いて本発明の光ファイバを作製する。なお、本発明の光ファイバを製造するための素線の製造方法は、前述した製造方法に限定されるものではない。素線は、ステップインデックス(SI)型や単一モード(SM)型などである。
【0042】
[プラスチック光ファイバの製造方法]
図4に示すように本発明のプラスチック光ファイバ110は、コア部111aとクラッド部111bとから形成された素線111の外周面111cに防湿層112を形成することにより、プラスチック光ファイバの防湿性を向上させ、水含有に伴う光学特性の悪化を防ぐ。本発明において、防湿層は、アルミニウムなどの金属やポリエチレンなどのポリマーから形成する。なお、防湿層にアルミニウム層を用いた場合には、アルミニウムが大気と接触する部分、すなわちアルミニウム層の外周面には、薄い酸化被膜(Al2 O3 )が形成されるため防湿性が向上するため、後述する被覆層を形成する必要がなくなる。また、被覆層を形成したものであっても、酸化被膜により最も防湿効果を有する光ファイバを得ることが可能となる。
【0043】
始めに、アルミニウムから形成する防湿層(アルミニウム層)の形成方法を説明する。アルミニウム層は、光ファイバ素線の外周面に、蒸着方法、塗布方法、箔の貼付方法などにより形成することが可能である。蒸着方法は、光ファイバ素線の外周面に薄膜として形成する。薄膜の形成には、物理蒸着である真空蒸着法,スパッタリング(スパタリング)法があり、また化学蒸着にはプラズマプロセスが知られているが、真空蒸着法を用いた実施形態について説明する。
【0044】
本発明の第1実施形態として、素線111にアルミニウムから形成された防湿層(金属膜)112を真空蒸着法を用いて形成する方法を説明する。真空蒸着法は、装置構成が単純であるためコストの点から有利である。また、様々な物質から薄膜を形成できる、薄膜形成時に熱的及び電気的変動が少なく、膜厚が均一なものを得ることができる、などの利点もある。
【0045】
真空蒸着法による薄膜の形成は、公知の方法で行うことができる。例えば、外径が0.3mm〜1.0mmの範囲の素線(PMMA系ポリマー)111を延伸方向に対して10m〜100mに切断して真空蒸着装置にセットする。薄膜材料としてアルミニウム(純度99.5%)を用いる。なお、薄膜材料は装置内が所定の条件になるまでは、シャッタにより装置内で揮発させない。本発明において装置内を0.1Pa〜20Paの範囲に減圧して、293K〜373Kの温度に加熱することが好ましいが、これらの条件に限定されるものではない。なお、装置内には形成された膜の膜厚を測定する膜厚計を取り付けて、膜を形成しながらモニタリングを行えるために好ましい。また、薄膜材料であるアルミニウムを揮発させるため、抵抗加熱法により加熱することが好ましい。
【0046】
装置内が所定の圧力、温度となった後に、シャッタを開けて真空蒸着を行い素線111の外周面111cに防湿層(金属膜)であるアルミニウム層112(図4参照)を形成する。なお、このとき、外周面111cに均一な膜厚でアルミニウム層112を形成するために、素線111の中心線を基準として回転させながら薄膜を形成させること、膜厚が均一になるために好ましいが、回転させる方法は省略することができる。そして、所望の膜厚でアルミニウム層(金属膜)112が形成されたことを膜厚計で確認した後に、シャッタを閉じて膜の形成を中止する。なお、本発明において、アルミニウム層112の膜厚は、図4に示す断面において、任意の3ヶ所の膜厚をSEM(走査電子顕微鏡)を用いて測定してその平均値を膜厚(以下、厚みと称する場合もある)とする。本発明においては、アルミニウム層112の膜厚は、100nm〜10μmの範囲とすることが好ましい。なお、本実施形態では素線111を所定の長さに切断して薄膜を形成する枚様(枚葉)式を用いた例を説明したが、連続巻取法により連続して薄膜を形成する方法も適用可能である。
【0047】
以上に説明した実験条件で防湿層112を形成することにより、素線111へのダメージ、光学特性、特に伝送損失の悪化を防止すると共に素線111を防湿して、素線が水を含むことにより生じる伝送損失の悪化も防止できる。なお、本発明において真空蒸着法は、前述した抵抗加熱法以外の方法を用いることもできる。例えば、電子線加熱方法や偏向磁場方法などにより、局部的に膜厚の形成を制御する方法も本発明には適用可能である。
【0048】
本発明の第2実施形態である防湿層(金属膜)であるアルミニウム層112を塗布により外周面111c上に形成する方法を説明する。塗布原料であるアルミニウムを分散処理して液状(以下、アルミニウムペーストと称する)とする。素線111の温度上昇に伴う物性の悪化を防ぐために、アルミニウムペーストを20℃〜70℃の温度範囲として連続的に塗布を行い、アルミニウムペースト中のペースト成分(主にポリマーや粘着剤である)を乾燥により除去して、アルミニウム層112を形成する。なお、このアルミニウム層112の厚みは、100nm〜10μmの範囲とすることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。また、厚みは、前述した方法により測定された値を用いる。さらには、アルミニウム層を塗布して形成する方法は、前述した方法に限定されるものではない。
【0049】
本発明の第3の実施形態である防湿性を有するテープを素線の外周面111cに巻きつける方法について図5を用いて説明する。素線120に防湿テープ121を巻きつけて素線の防湿を行う。防湿テープ121は、金属層であるアルミニウム箔に吸湿剤を含むポリマー膜などから形成されるものであることが好ましい。素線120の直径D2が0.3mm〜1mmの範囲のものを用いたときには、防湿テープ121の幅W1は、2mm〜10mmの範囲のものを用いることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。また、防湿テープ121を素線120に巻きつける巻付角αは、5°〜30°の範囲とすると、巻ヅレなどの発生を抑制できる。さらに、素線120の防湿性を良好とするために防湿テープ121は、重なり部121aが生じるように巻きつけることが好ましい。重なり部121aの幅W2は、前述した防湿テープ121を用いた際には、0.2mm〜2mmの範囲とすることが、素線120の防湿性を保持すると共にコストの点からも有利である。
【0050】
前述した防湿テープ121の金属層にアルミニウムを用いた場合には、防湿テープの金属層(例えば、アルミニウム箔を用いることが好ましい)の厚みは、1μm〜500μmの範囲であることが防湿性を良好にすると共にコストの点から有利であるが、その範囲に限定されるものではない。また、アルミニウム箔121を素線120に巻付け固定する際には、圧着法などにより行なうことができる。または、外周面111c側に接着剤を塗り(接着剤層を形成する)、アルミニウム箔(金属層)を貼付することもできる。なお、貼付は、図5に示すようにらせん状に巻きつけることが最も好まいが、外周面111cが露出しないように貼付すれば貼付の形態はいずれのものであっても良い。また、本発明において、金属層の少なくとも片面に接着剤層を設けたものも前述した金属膜と見なして用いることもできる。接着剤には、公知のいずれのものを用いることができるが、接着性、コストなどの点からアクリル樹脂又はエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0051】
また、防湿テープ121は、ポリマーを主原料にしたもの(以下、防湿ポリマー膜と称する)を用いることができる。この場合には、ポリマーに吸水性がある物質(例えば、乾燥シリカゲル粉末,吸水性ポリマーなど)を添加しておくことで、水分を吸湿して、その中にあるプラスチック光ファイバを防湿することができる。このように吸水性を有する物質から作成した防湿テープ121は、吸湿層を備えていることとなる。また、ポリマーには、吸水性物質が一様に混合できるようにポリエチレン,塩化ビニル樹脂,ポリウレタンなどを用いることが好ましいが、それらに限定されるものではない。また、防湿ポリマー膜は、公知の接着剤により外周面に接着することが好ましい。接着剤は、特に限定されないがアクリル樹脂,エポキシ樹脂などを用いることが好ましい。また、防湿ポリマー膜は、被覆機を用いて素線に被覆しても良い。本発明において防湿ポリマー膜の厚みは特に限定されないが、防湿性を良好に保つために、100μm〜1mmの範囲のものを用いることが好ましい。
【0052】
さらに、防湿テープ121は、アルミニウム箔と防湿ポリマー膜とを層状にしたものを用いることもできる。この場合に、外周面側がアルミニウム箔であっても良いし、防湿ポリマー膜であっても良い。この際の防湿テープ121は、100μm〜1mmの範囲であることが好ましいが、その範囲に限定されるものではない。
【0053】
[被覆層の形成及び用途]
前述した方法により製造されたプラスチック光ファイバを外的環境から保護するために、図4に示すように防湿層112上に被覆層113を形成することが好ましい。被覆層113を形成するものは、特に限定されないが、柔軟性に富み、溶融加工温度が低く、難燃性のものであることが好ましい。具体的には、エチレン−ビニルアルコール共重合体,ポリ塩化ビニリデン樹脂,ポリ塩化ビニル樹脂,ポリアミド系樹脂(ナイロン)ポリエステル系樹脂などをもちいることが好ましいが、これらに限定されるものではない。また、被覆層113の厚みは、特に限定されないが、プラスチック光ファイバの可撓性を損なわないために、3mm以下であることが好ましい。このように被覆層が形成されたプラスチック光ファイバは、プラスチック光ファイバケーブルとして光通信伝送媒体などに用いられる。
【0054】
また、ケーブルの形状は使用形態によって、素線を同心円上にまとめた集合ケーブルや、一列に並べたテープ心線といわれる態様、さらにそれらを押え巻やラップシースなどでまとめた集合ケーブルなど用途に応じて選ぶことができる。また、本発明によって得られる光ファイバを用いたケーブルはステップインデックス型の光ファイバより、軸ずれに対する許容度が比較的高いため突き合せによる接合でも用いることができるが、端部に接続用光コネクタを用いて接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタとしては一般に知られている、PN型、SMA型、SMI型などの市販の各種コネクタを利用することも可能である。
【0055】
本発明の光学部材としての光ファイバ、および光ファイバケーブルを用いて光信号を伝送するシステムには、種々の発光素子、受光素子、他の光ファイバ、光バス、光スターカプラ、光信号処理装置、接続用光コネクター等で構成される。それらに関する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行),日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」,IEICE TRANS. ELECTRON., VOL. E84−C, No.3, MARCH 2001, p.339−344「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3, No.6, 2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」等の他、特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号等の各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号等の各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号等の公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号等の各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号等の公報に記載の光信号処理装置;特開2001−86537号等の公報に記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号等の公報に記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号等の各公報に記載のマルチファンクションシステム;等を参考にすることができる。
【0056】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作などの態様は、本発明を限定するものではない。また、説明は、実施例1で詳細に行い、実施例2ないし実施例7及び比較例1ないし比較例7については、実施例1と同じ条件については説明を省略する。なお、実験条件及び測定結果については、後に表1にまとめて示す。また、光ファイバの曲げ特性に関する実験を実施例8及び実施例9に示す。これら実施例も前述した実施例と同じ条件については、説明を省略する。
【0057】
[実施例1及び比較例1]
PMMAクラッド内部に界面ゲル重合により作製した2本のGI型PMMA光ファイバ素線を真空乾燥器にて48時間水分を除去した。その光ファイバ素線の1本を蒸着装置に入れて、一様膜厚になるようにアルミニウム蒸着を行った。アルミニウム膜の平均膜厚(以下、膜厚と称する)は200nmであった。この光ファイバの波長650nmにおける伝送損失は、181dB/kmであった。他の1本の光ファイバ素線はそのまま光ファイバとして比較例1の実験に用いた。これら光ファイバ100mを25℃の純水に24時間浸漬し、浸漬前後の重量増加分から水分の吸収量を見積もった。アルミニウム蒸着した実施例1で、0.53wt%の重量増加があり、この重量増加は、水分を吸収したものと思われる。また、650nmの波長における伝送損失は、192dB/kmであった。蒸着していない比較例1では1.54wt%の重量増加があり、伝送損失は、203dB/kmであった。以上の実験から本発明に係るアルミニウム膜を形成した光ファイバ(実施例1)は、吸水による伝送損失の悪化が抑制されたことが分かった。
【0058】
[実施例2及び比較例2]
重水素化PMMAクラッド内部に界面ゲル重合により2本のGI型重水素化PMMA系光ファイバ素線(PMMA−d8 )を作製した。重水素化PMMAの重水素置換率を質量分析装置を用いて測定したところ、99.1%であった。これら光ファイバ素線を真空乾燥器にて48時間水分を除去し、1本の光ファイバ素線にアルミニウムを蒸着して膜厚は270nmのものが得られた。この光ファイバの波長850nmにおける伝送損失は、163dB/kmであった。実施例1と同じ処理を行い、アルミニウム蒸着した実施例2では、0.23wt%の重量増加があり、850nmの波長における伝送損失は257dB/kmであった。蒸着していない比較例2では1.32wt%の重量増加があり、伝送損失は815dB/kmであった。以上の実験から本発明に係るアルミニウム膜を形成した光ファイバ(実施例2)は、吸水による伝送損失の悪化が抑制されたことが分かった。
【0059】
[実施例3及び比較例3]
3FMAポリマークラッド内部に界面ゲル重合により2本のGI型PMMA系光ファイバ素線(3FMA)を作製した。3FMAのフッ素置換率を質量分析装置を用いて測定したところ、99.5%であった。これら光ファイバ素線を真空乾燥器にて48時間水分を除去し、1本の光ファイバ素線にアルミニウムを蒸着して膜厚が410nmのものが得られた。実施例1と同じ処理を行い、アルミニウム蒸着した実施例3では、0.03wt%の重量増加があり、850nmの波長における伝送損失は517dB/kmであった。蒸着していない比較例3では0.18wt%の重量増加があり、伝送損失は686dB/kmであった。
【0060】
[実施例4及び比較例4]
4FMAポリマークラッド内部に界面ゲル重合により2本のGI型PMMA系ファイバ素線(4FMA)を作製した。4FMAのフッ素置換率は、99.3%であった。これら光ファイバ素線を真空乾燥器にて48時間水分を除去し、1本の光ファイバ素線にアルミニウムを蒸着して膜厚が330nmのものが得られた。実施例1と同じ処理を行い、アルミニウム蒸着した実施例4では、0.05wt%の重量増加があり、850nmの波長における伝送損失は407dB/kmであった。蒸着していない比較例4では0.17wt%の重量増加があり、伝送損失は565dB/kmであった。
【0061】
[実施例5及び比較例5]
PMMAクラッド内部に界面ゲル重合により2本のGI型PMMA光ファイバ素線を作製して、真空乾燥器にて48時間水分を除去した。1本の光ファイバ素線には、乾燥シリカゲル粉末を50wt%混合したポリエチレンを被覆機を使用して被覆し、防湿層を形成した。防湿層の厚みは0.6mmであった。これら2本の光ファイバ100mを70℃,95%RHで72時間放置した。防湿層を形成した実施例5では0.88wt%の重量増加があり、650nmの波長における伝送損失は196dB/kmであった。防湿層を形成しない比較例5では1.44wt%の重量増加があり、伝送損失は211dB/kmであった。
【0062】
[実施例6及び比較例6]
重水素化PMMAクラッド内部に界面ゲル重合により2本のGI型重水素化PMMA光ファイバ素線を作製した。重水素置換率は99.0%であった。これら2本の光ファイバ素線を真空乾燥器にて48時間水分を除去した。そのうちの1本の光ファイバ素線にアルミニウム膜がついている防湿テープを一定方向に巻きつけた(図2参照)。これら2本の光ファイバを実施例5と同じ処理を行った。防湿テープを巻きつけた実施例6では0.09wt%の重量増加があり、850nmの波長における伝送損失は122dB/kmであった。防湿テープを巻きつけない比較例6では1.32wt%の重量増加があり、伝送損失は784dB/kmであった。
【0063】
[実施例7及び比較例7]
重水素化PMMAクラッド内部に界面ゲル重合により2本のGI型重水素化PMMA光ファイバを作製した。重水素置換率は99.4%であった。これら2本の光ファイバ素線を真空乾燥器にて48時間水分を除去した。そのうちの1本の光ファイバ素線に0.3mmの厚みのアルミニウム箔を巻きつけた。これら2本の光ファイバを実施例5と同じ処理を行った。アルミニウム箔を巻きつけた実施例7では0.05wt%の重量増加があり、850nmの波長における伝送損失は102dB/kmであった。アルミニウム箔を巻きつけなかった比較例7では1.32wt%の重量増加があり、伝送損失は803dB/kmであった。
【0064】
【表1】
【0065】
表1から本発明に係るプラスチック光ファイバは、吸水率が低下し、また伝送損失の悪化を抑制できることが分かった。特にPMMAの軽水素原子(H)を重水素原子(D)やフッ素原子(F)に置換した置換型PMMA系ポリマーをプラスチックとして用いると、吸水率が低下し、また伝送損失の悪化を極めて抑制できることが分かった。
【0066】
[実施例8及び実施例9]
実施例8では、実施例2で作製した光ファイバ(PMMA−d8 ,アルミニウム膜270nm)10mを用いて、その中央部を直径5cmの円柱に巻き付けて実施例1と同じ条件で純水に浸漬させた。このときの波長850nmにおける伝送損失の増加は、80dB/kmであった。また、実施例9では、実施例8の光ファイバのアルミニウム膜の膜厚を30μmとした以外は、同じ条件で実験を行ったところ、波長850nmにおける伝送損失の増加は、180dB/kmであった。これらの実験から本発明にかかるプラスチック光ファイバは、外周部に金属膜からなる防湿層および/または吸湿層を有しているために、耐湿性の向上の効果がある。しかしながら、金属膜を厚くすると光ファイバの曲げ応力の増加に起因すると思われる伝送損失の増加が生じる場合がある。そこで、耐湿性を有し、曲げにも強い光ファイバとするためには、金属膜を100nm以上10μm以下の範囲とすることが好ましいことが分かった。
【0067】
【発明の効果】
本発明のプラスチック光ファイバの製造方法によれば、コア部がポリメタクリル酸エステルからなるプラスチック光ファイバ素線を用いたプラスチック光ファイバの製造方法において、前記プラスチック光ファイバ素線の外周部に金属膜からなる防湿層および/または吸湿層を有するので前記プラスチックの吸水を抑制でき、吸水に伴う光学特性、特に伝送損失の悪化を防ぐプラスチック光ファイバを得ることができる。なお、前記金属膜には、真空蒸着法や塗布法により形成されたアルミニウム膜、アルミニウム層の少なくとも片面に粘着剤層を有するテープなどを用いることで、前記効果を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプラスチック光ファイバに用いられるクラッド管を製造する装置の要部の概略断面図である。
【図2】本発明に係るプラスチック光ファイバの製造方法に用いられる製造ラインの概略図である。
【図3】図2に示した製造ラインに用いられている成形ダイスの要部分解斜視図である。
【図4】本発明に係るプラスチック光ファイバの断面図である。
【図5】本発明に係るプラスチック光ファイバの製造方法を説明するための概略図である。
【符号の説明】
110 プラスチック光ファイバ
111,120 素線
111c 外周面
112 防湿層
121 防湿テープ
Claims (8)
- コア部がポリメタクリル酸エステルからなるプラスチック光ファイバ素線を用いたプラスチック光ファイバの製造方法において、
前記プラスチック光ファイバ素線の外周部に金属膜からなる防湿層および/または吸湿層を有するプラスチック光ファイバの製造方法。 - 前記コア部のポリメタクリル酸エステルの水素の一部が重水素および/またはフッ素に置換されたものを用いることを特徴とする請求項1記載のプラスチック光ファイバの製造方法。
- 前記金属膜を真空蒸着法を用いて形成することを特徴とする請求項1または2記載のプラスチック光ファイバの製造方法。
- 前記金属膜の厚みが100nm〜10μmの範囲であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載のプラスチック光ファイバの製造方法。
- 前記金属膜が、金属層の少なくとも片面に粘着剤層を有するテープ状のものであって、
前記粘着剤層を介して前記プラスチック光ファイバ素線の外周にらせん状に巻き付けることを特徴とする請求項1または2記載のプラスチック光ファイバの製造方法。 - 前記金属層の厚みが1μm〜500μmのものを用いることを特徴とする請求項5記載のプラスチック光ファイバの製造方法。
- 前記金属にアルミニウムを用いることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1つ記載のプラスチック光ファイバの製造方法。
- 請求項1ないし7いずれか1つ記載のプラスチック光ファイバの製造方法を用いて製造されたことを特徴とするプラスチック光ファイバ。
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2003
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