JP2004184500A - 光学部材用重合性組成物およびそれを用いた光学部材 - Google Patents

光学部材用重合性組成物およびそれを用いた光学部材 Download PDF

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広樹 佐々木
Takayasu Yasuda
貴康 保田
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Abstract

【課題】光源波長650nmでの光伝送損失が小さく、かつ、高温高湿下での損失上昇を抑制する光学部材を製造可能な光学部材用重合性組成物を提供する。
【解決手段】重合性モノマー、重合開始剤、および前記重合性モノマーと異なる屈折率を有する化合物(A)とを含む光学部材用重合性組成物であって、前記重合性モノマーを単独に重合して得られるポリマーの吸水率が1.8〜3%で、前記化合物(A)のlogP値が1以上4以下で、且つ前記化合物(A)のsp値が7以上11以下である光学部材用重合性組成物である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学部材の作製に用いられる重合性組成物、ならびにそれを用いて作製された屈折率分布型光学部材の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック光学部材は、同一の構造を有する石英系の光学部材と比較して、製造および加工が容易であること、および低価格であること等の利点があり、近年、光ファイバおよび光レンズ、光導波路など種々の応用が試みられている。特にこれら光学部材の中でも、プラスチック光ファイバは、素線が全てプラスチックで構成されているため、伝送損失が石英系と比較してやや大きいという短所を有するものの、良好な可撓性を有し、軽量で、加工性がよく、石英系光ファイバと比較して口径の大きいファイバとして製造し易く、さらに低コストに製造可能であるという長所を有する。従って、伝送損失の大きさが問題とならいない程度の短距離用の光通信伝送媒体として種々検討されている。
【0003】
プラスチック光ファイバは、一般的には、重合体をマトリックスとする有機化合物からなる芯(本明細書において「コア部」と称する)と、コア部と屈折率が異なる(一般的には低屈折率の)有機化合物からなる外殻(本明細書において「クラッド部」と称する)とから構成される。特に、中心から外側に向かって屈折率の大きさに分布を有するコア部を備えた屈折率分布型プラスチック光ファイバは、伝送する光信号の帯域を大きくすることが可能なため、高い伝送容量を有する光ファイバとして最近注目されている。この様な屈折率分布型光学部材の製法の一つに、界面ゲル重合を利用して、光学部材母材(本明細書において、「プリフォーム」と称する)を作製し、その後、前記プリフォームを延伸する方法がある。この製造方法では、まず、メチルメタクリレート(MMA)等の重合性モノマーを、充分な剛性のある重合容器に入れて、該容器を回転させつつ、モノマーを重合させて、ポリメタクリレート(PMMA)等の重合体からなる円筒管を作製する。該円筒管はクラッド部となる。次に、該円筒管の中空部にコア部の原料となるMMA等のモノマー、開始剤、連鎖移動剤および屈折率調整剤などを注入して、円筒管内部で界面ゲル重合を行い、コア部を形成する。界面ゲル重合により形成されたコア部には、含有される屈折率調整剤等の濃度分布があり、そのことによって、コア部には屈折率の分布が生じる。このようにして得られたプリフォームを、180℃〜250℃程度の雰囲気中で加熱延伸することにより、屈折率分布型プラスチック光ファイバが得られる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、ポリメタクリル酸メチルを主体とする屈折率分布型プラスチック光ファイバを湿熱下条件で使用した場合、可視域において、該ファイバが白濁化し、散乱のために伝送損失が悪化することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。その白濁したファイバを減圧乾燥すると透明性が回復することから、ファイバ内に入り込んだ水の影響と考えられる。また、近赤外領域(例えば850nm)の場合には、水のO−H振動の倍音吸収が820〜830nmに存在し、直接伝送損失が悪化する。屈折率分布の付与のために添加されるドーパントの種類により、その悪影響が大小することも知られているが、初期の伝送損失との両立する系は未だ見出されていない。
【0005】
【特許文献1】
国際公開WO93/08488号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、高温高湿下で使用しても伝送損失の悪化が抑制され、しかも初期の伝送損失も良好な光学部材、および該光学部材を安定的に作製可能な重合性組成物を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ポリメタクリル酸メチルのような吸水率の比較的高いポリマーをマトリックスとしたとき、sp値、logP値がある範囲にあるドーパントを用いることによって、初期の散乱が小さく、且つ高温高湿下でも散乱が抑制された光学部材を作製できることを見出した。以上の知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 重合性モノマー、重合開始剤、および前記重合性モノマーと異なる屈折率を有する化合物(A)を含む光学部材用重合性組成物であって、前記重合性モノマーを重合して得られるポリマーの吸水率が1.8〜3%で、前記化合物(A)のlogP値が1以上4以下で、且つ前記化合物(A)のsp値が7以上11以下である光学部材用重合性組成物。
<2> 前記重合性モノマーが主としてメタクリル酸メチルである<1>に記載の光学部材用重合性組成物。
<3> <1>または<2>に記載の光学部材用重合性組成物を重合して、屈折率の大きさに分布を有する屈折率分布領域を形成してなる光学部材。
<4> 前記屈折率分布領域が、屈折率の大きさが断面の中央から外側に向かって変化する領域である<3>に記載の光学部材。
<5> 光ファイバ、光導波路および光学レンズのいずれかである<3>または<4>に記載の光学部材。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の光学部材用重合性組成物を用いることによって得られる光学部材とは、例えば光ファイバ、光導波路等の光導性素子類、スチールカメラ用、ビデオカメラ用、望遠鏡用、眼鏡用、プラスチックコンタクトレンズ用、太陽光集光用等のレンズ類、凹面鏡、ポリゴン等の鏡類、ペンタプリズム類等のプリズム類が挙げられる。中でも、光導性素子類、レンズ類、鏡類に用いられるのが好ましく、光ファイバ、光導波路、レンズ類に用いられるのがより好ましい。
【0010】
まず、本発明の光学部材用重合性組成物について説明する。
[光学部材用重合性組成物]
本発明の重合性組成物は、重合性モノマーと、該重合性モノマーの重合を開始させる重合開始剤と、連鎖移動剤と、前記モノマーの屈折率と異なる屈折率を有する化合物(以下、「屈折率上昇剤」または「ドーパント」という場合がある)とを含有する。本発明では、PMMAのような比較的高吸水率ポリマーを用いた場合、sp値、logP値がそれぞれ所定の範囲にあるドーパントを使用することによって、重合により作製される光学部材の初期散乱を小さくし、高温高湿下での散乱増大を抑制している。本発明の重合性組成物は、屈折率の大きさに分布を有する屈折率分布型光学部材の製造に用いることができる。
以下、各々の材料について詳細に説明する。
【0011】
(重合性モノマー)
本発明において、重合性モノマーを重合してなるポリマー(ドーパントなどの添加剤が入っていない系)の吸水率が1.8〜3%、好ましくは、1.8〜2.8%、さらに好ましくは1.8〜2.4%になるように、1種類または複数種類の重合性モノマーを選択する。その選択にあたり、吸水率は、以下の方法で算出する。すなわち、ASTM D570の試験法に準拠し、サンプルを23℃、水中に1週間置いた後、その水分量を測定して、吸水率を算出する。例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の吸水率は2%であることが報告されている。本発明において、重合性モノマーとしては、プロペン酸およびその誘導体のエステルを主成分とするのが好ましい。前記プロペン酸およびその誘導体には、アクリル酸エステルおよびメタアクリル酸エステル(以下、双方を含めて(メタ)アクリル酸エステル類という)が含まれる。ここで、主成分とするとは、光学的性能を損なわない限りにおいて、他のモノマーを含んでいてもよいことを意味し、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類系モノマーとスチレン、マレイミド化合物等の共重合体などの組成をとってもよいことを意味する。以下に、本発明に使用可能な、(メタ)アクリル酸エステル類の具体例を列挙するが、以下の具体例に限定されるものではない。
【0012】
(a) フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルメタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル(EMA)、メタクリル酸イソプロピル(IPMA)、メタクリル酸t−ブチル(TBMA)、メタクリル酸ベンジル(BzMA)、メタクリル酸フェニル(PhMA)、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)、メタクリル酸ジフェニルメチル、トリシクロ[5・2・1・02,6]デカニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート(ADMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸フェニル等;
(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステル
2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート等;が例示される。
【0013】
前記(メタ)アクリル酸系エステル以外の重合性モノマーを用いてもよい。以下に、本発明に使用可能な他の重合性モノマーの具体例を列挙するが、以下の具体例に限定されるものではない。
(c) スチレン系化合物
スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等;
(d) ビニルエステル類
ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート;
(e)マレイミド類
N―n−ブチルマレイミド、N―t−ブチルマレイミド、N―イソプロピルマレイミド、N―シクロヘキシルマレイミド;
等が例示される。
【0014】
本発明の重合性組成物では、繰り返しになるが、重合性モノマーを重合してなるポリマー(ドーパントなどの添加剤が入っていない系)の吸水率が1.8〜3%になるように、1種類または複数種類の重合性モノマーを選択することが前提にあり、(メタ)アクリ酸エステル類の一種または二種以上を重合性モノマーの主成分として用いることが望ましい。(メタ)アクリル酸エステル類は、単量体の全質量中50質量%以上であるのが好ましく、60質量%以上であるのがより好ましく、70質量%以上であるのがさらに好ましい。吸水率、光学性能などの観点からメタクリル酸メチルを主成分として用いることが特に望ましい。ここで、主成分とするとは、前記吸水率の範囲を逸脱しない、あるいは光学的性能を損なわない限りにおいて、先述した他のモノマーを含んでいてもよいことを意味する。吸水率が上記範囲にあるような組み合わせの目安としては、メタクリル酸メチル(MMA)を90質量%、上記各種モノマーが10質量%からなる組み合わせが挙げられる。しかし、モノマーの種類によっては、前記範囲を逸脱する可能性もあるので、前記方法で吸水率を測定して確認する必要がある。
【0015】
本発明の重合性組成物では、後述する特定のドーパントを用いるので、好ましい重合性モノマーは、ドーパントを含有する組成物が無添加の組成物と比較して、またはこれを共重合成分として含む共重合体がこれを含まない重合体と比較して、屈折率差が大きくなるものである。また、重合性モノマー中のC−H結合は、光学部材の光伝送損失を増大させる要因となるので、C−H結合の水素原子がフッ素原子で置換された、C−F結合を含む重合性モノマーを用いるのが好ましい。ただし、吸水率が本発明の範囲を逸脱しない範囲で用いられる。具体的には、前述のフッ素不含メタクリル酸エステル、フッ素不含アクリル酸エステル、もしくは含フッ素(メタ)アクリル酸エステルとフッ素不含(メタ)アクリル酸エステルとの混合物が好ましい。さらには、C−H伸縮振動の低倍音吸収による損失を低減させるために、上記モノマーの重水素置換体がより好ましい。また、7〜20の脂環式炭化水素基、および/または7〜20の分岐状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーも好ましい。
【0016】
(重合開始剤)
本発明の重合性組成物は、前記重合性モノマーの重合を開始させる重合開始剤を含有する。重合開始剤としては、用いるモノマーや重合方法に応じて適宜選択することができるが、過酸化ベンゾイル(BPO)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−t−ブチルパーオキシド(PBD)、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル4,4,ビス(t−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物、または2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’―アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−t−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は2種類以上を併用してもよい。
【0017】
(連鎖移動剤)
本発明の重合性組成物は、連鎖移動剤を含有しているのが好ましい。前記連鎖移動剤は、主に重合体の分子量を調整するために用いられる。前記連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択することができる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
【0018】
例えば、重合性モノマーとしてメチルメタクリレートを用いた場合は、連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いるのが好ましく、中でも、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。
なお、前記連鎖移動剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
(ドーパント:屈折率上昇剤)
本発明の重合性組成物は、前記重合性モノマーと異なる屈折率を有する化合物(以下、「ドーパント」という場合がある)を含有する。ドーパントは非重合性の化合物であっても、重合性の化合物であってもよい。前記ドーパントは屈折率上昇剤とも称され、これを含有する組成物が無添加の組成物と比較して、またはこれを共重合成分として含む共重合体がこれを含まない重合体と比較して、屈折率が上昇する性質を有するものをいう。その屈折率差は、0.001以上であるのが好ましい。
【0020】
本発明では、重合性組成物を重合して作製される光学用部材が、高温高湿下で白濁散乱(失透)を抑制する為には、前記重合性モノマーのみを重合してなるポリマーの吸水率が1.5〜3%の範囲にあり、かつ、前記ドーパントのsp値が11以下、logP値が4以下である必要がある。まず、sp値について説明する。sp値は、その化合物の溶解度パラメータを表し、物の溶解性の尺度になるもので、各種算出する方法が提案されており、本発明においては、Fedorsの方法を採用した(参照:Polymer Engineering and Science 14巻、147〜154頁)。sp値の好ましい範囲は7以上11以下、更に好ましくは8以上11以下。この方法によるポリマーマトリックスであるPMMAのsp値は9.9である。ポリマーマトリックスとドーパントの相溶性の観点から、sp値の差が小さければ小さいほど好ましく、初期の伝送損失の性能向上に寄与する。
【0021】
つぎに、logP値について説明する。LogP値は、化合物の親疎水性の尺度になるもので、MaclogP(ver4.0)(ClogPのMacintosh版;BioByte社製)を用いて算出した。LogP値の好ましい範囲は1以上4以下、更に好ましくは2以上3.6以下である。この方法によるPMMA2量体モデルのlogP値は2.63であり、ポリマーマトリックスとドーパントとのlogP値の差が小さけば小さいほど好ましく、高温高湿下の損失上昇を抑制する。
上記条件を満たすドーパントの例としては、例えば、アルキル基、アルコキシル基等をはじめとする電子供与性の置換基を有するジフェニルスルホキシド(DPSO)などが挙げられる。以下に具体例を示すが、本発明はこれによってなんら制限されるものではない。
【0022】
【化1】
Figure 2004184500
【0023】
本発明の重合性組成物において、上記の範囲を満たせば、ドーパントは2種類以上併用してもよい。
ドーパントの前記屈折率調整剤の添加量は、屈折率上昇の程度やポリマーマトリクスとの関係によって変化するが、一般的に好ましい範囲としては重合性組成物の1〜30質量%、より好ましくは3〜25質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。
【0024】
<その他の添加剤>
その他、コア部および後述のクラッド部には、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができる。例えば、クラッド部およびコア部の耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として使用することができる。これらの添加剤も、前記原料モノマーに添加した後、重合することによって、コア部およびクラッド部に含有させることができる。
【0025】
(クラッド部)
クラッド部は後述のようにコア部と同様にモノマーを重合して形成してもよいし、重合体を溶融押出しして形成してもよい。クラッド部の形成する重合体は、一般的には透明性を有する熱可塑性樹脂であることが必要である。また、コア部を伝送する光がそれらの界面で全反射するために、コア部の屈折率より低い屈折率を有し、非晶性であり、コア部との密着性が良く、タフネスに優れ、耐湿熱性にも優れているものが好ましく用いられる。また、クラッド部は機械的強度向上や難燃性などの多種の機能性を付与させるために複層からなっていてもよい。
モノマーを重合させてクラッド部を形成する場合は、コア部のように重合性モノマーと重合開始剤の組成物を重合させることで得られるため、好ましく用いることのできるモノマーは、コア部の重合性モノマーと同一である。但し、コア部を塊状重合で作製し、その際のコア部とクラッド部の界面状態に鑑みれば、クラッド部の重合体はコア部と同じもの、または、相溶性に富んでいるものが好ましい。
また、溶融押出しする場合には溶融粘度が適当であることが必要であり、この溶融粘度については、相関する物性として分子量が用いられ、重量平均分子量が1万〜100万の範囲に入ることが適当であり、より好ましくは、5万〜50万の範囲である。後述の延伸工程などによって得られた光学部材を加工する場合はクラッド部の形成がモノマーの重合によっても溶融押出しによっても、その溶融粘度がコア部のそれに近いものが好ましい。
【0026】
(アウターコア)
クラッド部とコア部の界面状態を矯正したり、コア部を塊状重合で形成する際に重合が進むようにすることなどを目的として、クラッド部内壁にアウターコアを設けることができる。アウターコアは、その性格上コア部との塊状重合の際に界面不整が起きないようにコア部重合体との相溶性が高いことが求められる。また、クラッド部との界面についても同様なことが言えるため、クラッド部の重合体とも高い相溶性を有することが好ましい。アウターコアは、主にコア部製造のために設けられるものであり、その厚みはコア部の塊状重合に必要な程度の厚みであればよく、塊状重合の進行によって屈折率を有するインナーコア部と合一となり単独の層として存在しない、単なるコア部となっていてもよい。そのため、コア部形成前に設けるアウターコアの厚みとしては、塊状重合を行うためにコア部重合前に1mm以上あればよく、その上限は充分な屈折率分布が形成できる空間が残る程度まで厚くしても構わないので、プリフォームのサイズに応じて選択することができる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の光学部材はプリフォームをまず作製し、そのプリフォームを用途に応じて加工することで様々な部材を得ることができる。例えば、プリフォームを延伸すれば光ファイバが得られ、プリフォームを断面方向にスライスすることで導光材を、さらに屈折率分布を持ったプリフォームである場合はレンズを得ることができる。
本発明の一実施形態は、クラッド部となる円筒管を作製する第1の工程と、前記円筒管の中空部で加熱重合を行うことによりコア部となる領域を形成し、コア部およびクラッド部に各々対応する領域からなるプリフォームを作製する第2の工程(加熱重合工程)と、得られたプリフォームを種々の形態に加工する第3の工程とを有する。
【0028】
(クラッド部の作製)
本実施の形態において、前記第1の工程では、クラッド部となる中空管(特に好ましくは円筒管)を作製する。クラッド部はモノマーを重合して形成してもよいし、重合体を溶融押出しして形成してもよい。
本発明において、得られるクラッドの外径D1は光学特性や生産性の観点から、D1≦(mm)50の範囲であることが好ましく、より好ましくは10≦D1(mm)≦30の範囲である。さらに、クラッド部の肉厚tは、2≦t(mm)≦20の範囲であることが好ましい。しかしながら、本発明において、それらの範囲は、前述したものに限定されるものではない。
【0029】
モノマーを重合させてクラッド部を形成する場合は、例えば特許第3332922号公報に記載されているように、円筒形状の重合容器に、前述のクラッド部の原料となるモノマーを注入、両端を塞ぎ、該重合容器を回転(好ましくは、円筒の軸を水平に維持した状態で回転)させつつ、前記モノマーを重合させることにより、重合体からなる円筒管を作製することができる。この時に、特開平8−110419号公報に記載されている様に、原料をプレ重合して原料の粘度を上昇させてから、重合を行ってもよい。
【0030】
重合容器内には、モノマーとともに、重合開始剤、連鎖移動剤および所望により添加される安定剤などを注入することができる。その添加量については、用いるモノマーの種類等に応じて好ましい範囲を適宜決定することができるが、重合開始剤は、重合性モノマーに対して、0.10〜1.00質量%添加するのが好ましく、0.40〜0.60質量%添加するのがより好ましい。また、前記連鎖移動剤は、重合性モノマーに対して、0.10〜0.40質量%添加するのが好ましく、0.15〜0.30質量%添加するのがより好ましい。重合温度および重合時間は、用いるモノマーによって異なるが、一般的には、重合温度は60〜90℃であるのが好ましく、重合時間は5〜24時間であるのが好ましい。
前記回転重合後に、残存するモノマーや重合開始剤を完全に反応させて残留させないことを目的として、該回転重合の重合温度より高い温度での加熱処理を施してもよい。
【0031】
また、重合体を溶融押出ししてクラッド部を形成する場合は、一旦、重合体を作製した後、押出し成形等の成形技術を利用して、所望の形状(本実施の形態では円筒形状)の構造体を得ることもできる。これらに用いられる溶融押出装置としては、主として、インナーサイジングダイ方式とアウターダイ減圧吸引方式の2つのタイプがある。
【0032】
図1に、インナーサイジングダイ方式の溶融押出装置の断面図の一例を示して、インナーサイジングダイ方式の成形の概略を説明する。
装置本体11からベント付き1軸スクリュー押出機(不図示)により、クラッド部の原料ポリマー40がダイ本体14に押出される。ダイ本体14の内部には、原料ポリマー40を流路40a,40bに導くガイド30が挿入されている。原料ポリマー40は、このガイド30を経て、ダイ本体14とインナーロッド31との間の流路40a,40bを通り、ダイの出口14aから押出され、円筒中空管の形状のクラッド19が形成される。クラッド19の押出速度については特に制限されないが、形状を均一に保つとともに、生産性の点から、押出し速度は1cm/min〜100cm/minの範囲であることが好ましい。
【0033】
ダイ本体14には、原料ポリマー40を加熱するための加熱装置が設置されているのが好ましい。例えば、原料ポリマー40の進行方向に沿って、ダイ本体14を覆うように1つまたは2以上の加熱装置(例えば、蒸気、熱媒油、電気ヒータなど利用した装置)を設置してもよい。一方、ダイの出口14aでは、温度センサ41を取り付け、この温度センサ41によってダイの出口14aでのクラッド19の温度を測定して温度を調節するのが好ましい。温度は、原料ポリマー40のガラス転移温度以下であることが、クラッド19の形状を均一に保持することが可能となるために好ましい。また、クラッド19の温度が40℃以上であることが、急激な温度変化による形状の変化を抑制することが可能になり好ましい。このクラッド19の温度の制御は、例えば、冷却装置(例えば、水、不凍液、オイルなどの液体や、電子冷却などを使用した装置)をダイ本体14に取り付けてもよいし、ダイ本体14の自然空冷により冷却してもよい。ダイ本体に加熱装置が設置されている場合は、冷却装置は加熱装置の位置より下流に取り付けるのが好ましい。
【0034】
次に、アウターダイ減圧吸引方式の溶融押出し装置の製造ラインの一例を図2に、および成形ダイス53の斜視図の一例を図3に示して、アウターダイ減圧吸引方式の成形の概略を説明する。
図2に示す製造ライン50は、溶融押出装置51と、押出しダイス52と、成形ダイス53と、冷却装置54と、引取装置55とを備える。ペレット投入ホッパ(以下、ホッパと称する)56から投入された原料ポリマーは、溶融押出装置51内部で溶融され、押出しダイス52によって押出され、成形ダイス53に送り込まれる。押出速度Sは、0.1≦S(m/min)≦10の範囲が好ましく、より好ましくは0.3≦S(m/min)≦5.0であり、最も好ましくは0.4≦S(m/min)≦1.0である。しかしながら、本発明において押出速度Sは、前述した範囲に限定されるものではない。
【0035】
図3に示す様に、成形ダイス53は、成形管70を備えており、成形管70に溶融樹脂60を通すことにより、溶融樹脂60が成形され円筒形状のクラッド61が得られる。成形管70には、多数の吸引孔70aが設けられていて、成形管70の外側に設けられた減圧チャンバ71を真空ポンプ57(図2参照)により減圧にすることで、クラッド61の外壁面が、成形管70の成形面(内壁面)70bに密着するために、クラッド61の肉厚が一定になって成形される。なお、減圧チャンバ71内の圧力は、20kPa〜50kPaの範囲とすることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。なお、成形ダイス53の入口に、クラッド61の外径を規定するためのスロート(外径規定部材)58を取り付けるのが好ましい。
【0036】
成形ダイス53により形状が調整されたクラッド61は、冷却装置54に送られる。冷却装置54には、多数のノズル80が備えられており、それらのノズル80から冷却水81をクラッド61に向けて放水することで、クラッド61を冷却して、固化させる。冷却水81は、受け器82で回収して、排出口82aから排出することもできる。クラッド61は、冷却装置54から引取装置55により引き出される。引取装置55は、駆動ローラ85と加圧ローラ86とが備えられている。駆動ローラ85には、モータ87が取り付けられており、クラッド61の引取速度の調整が可能になっている。また、クラッド61を挟んで駆動ローラ85と対向して配置されている加圧ローラ86により、クラッド61の微小な位置のずれを修正することが可能となっている。この駆動ローラ85の引取速度と溶融押出装置51の押出速度とを調整したり、加圧ローラ86によるクラッド61の移動位置を微調整したりすることにより、クラッド61の形状、特に肉厚を均一にすることが可能となる。
【0037】
以上に、本発明に係る光伝送体の製造方法のうち、プラスチック光ファイバのクラッド部に用いられる中空状のプラスチック光学部材について図面を参照しながら説明した。さらに、溶融押出し成形するクラッドを二重化し、共押出しによってアウターコアを中空管形成と同時付与することもできる。また、本発明に係る光伝送体の製造方法により得られる光伝送体は、他の用途に用いることも可能である。
【0038】
以上の方法で作製されたクラッド部となる中空管は、次工程でコアの原料であるモノマーを注入できるように、底部を有していることが好ましい。底部は、前記円筒中空管(クラッド)を構成しているポリマーと密着性および接着性に富む材質を用いることが好ましい。また、底部を、前記円筒管と同一の重合体で構成することもできる、例えば、PMMAからなる中空管に同一素材のPMMAやPVDFなどからなる密着性に富む底部が付与できる。なお、重合体からなる底部は、例えばクラッドパイプの成形後に、パイプの一端を容器に差し込んだ後、少量の重合性モノマーを注入し、重合することによっても形成することができる。
【0039】
前記第2の工程では、前記第1の工程で作製したクラッド部となる円筒管の中空部に前述の原料であるモノマーを注入し、該モノマーを加熱重合する。前記モノマーとともに、重合開始剤、連鎖移動剤および所望により添加される屈折率調整剤などを注入することができる。その添加量については、用いるモノマーの種類等に応じて好ましい範囲を適宜決定することができるが、重合開始剤は、一般的にはモノマーに対して、0.005〜0.050質量%添加するのが好ましく、0.010〜0.020質量%添加するのがより好ましい。前記連鎖移動剤は、一般的にはモノマーに対して、0.10〜0.40質量%添加するのが好ましく、0.15〜0.30質量%添加するのがより好ましい。
【0040】
前記第2の工程では、前記クラッド部となる円筒管内に充填された重合性モノマーが、いわゆる界面ゲル重合法により重合する。界面ゲル重合法では、前記重合性モノマーの重合は、前記クラッド部となる円筒管の内壁面から断面の半径方向、中心に向かって進行する。2種以上の重合性モノマーを用いた場合は、前記円筒管を構成している重合体に対して親和性の高いモノマーが前記円筒管の内壁面に偏在して主に重合し、該モノマーの比率の高い重合体が形成される。中心に向かうに従って、形成された重合体中の前記親和性の高いモノマーの比率は低下し、他のモノマーの比率が増加する。このようにして、コア部となる領域内にモノマー組成の分布が生じ、その結果、屈折率の分布が導入される。また、重合性モノマーに屈折率調整剤を添加して重合すると、特許3332922号公報に記載されているように、コア液がクラッド内壁を溶解しクラッドを構成している重合体が膨潤してゲルを構成しながら、重合が進む。この時、前記円筒管を構成している重合体に対して親和性の高いモノマーが前記円筒管表面に偏在して重合し、外側には屈折率調整剤濃度が低い重合体が形成される。中心に向かうに従って、形成された重合体中の該屈折率調整剤の比率は増加する。このようにして、コア部となる領域内に屈折率調整剤の濃度分布が生じ、その結果、屈折率の分布が導入される。
【0041】
上記説明したように、第2の工程において、形成されるコア部となる領域に屈折率の分布が導入されるが、屈折率が互いに異なる部分間は熱挙動も互いに異なるので、重合を一定温度で行うと、その熱挙動の違いからコア部となる領域には、重合反応に対して発生する体積収縮の応答性が変化し、プリフォーム内部に気泡が混入する、もしくはミクロな空隙が発生し、得られたプリフォームを加熱延伸した際に多数の気泡が発生する現象が生じる可能性がある。重合温度が低過ぎると、重合効率が低下し、生産性を著しく損ない、重合が不完全となって光透過性が低下し、作製される光学部材の光伝送能を損なう。一方、初期の重合温度が高過ぎると、初期の重合速度が著しく上昇し、コア部となる領域の収縮に対して応答緩和できず、気泡発生の傾向が著しい。
【0042】
本実施の形態では、初期の重合温度を下記関係式を満たす温度T℃に維持し、重合速度を減少させて初期重合における体積収縮性の緩和応答性を改善している。
なお、下記関係式中、Tbは前記重合性モノマーの沸点(℃)を示し、Tgは前記重合性モノマーの重合体のガラス転移点(℃)を示す。以下、同様である。
Tb−10 ≦ T ≦ Tg
【0043】
さらに、本実施の形態では、所定の時間T℃に維持して重合した後、下記関係式を満たす温度T℃まで昇温して、さらに重合する。
Tg ≦ T ≦(Tg+40)
<T
温度をT℃まで昇温して重合を完結すると、光透過性が低下するのを防止でき、光伝送能の良好な光学部材が得られる。また、プリフォーム熱劣化や解重合の影響を抑制しつつ、内部に存在するポリマー密度の揺らぎを解消し、プリフォームの透明性を向上させることができる。ここで、T℃は、Tg℃以上(Tg+30)℃以下であるのが好ましく、(Tg+10)℃程度で行うことが特に好ましい。TがTg未満であると、この効果を得ることはできず、(Tg+40)を越えてしまうと、熱劣化や解重合により、プリフォームの透明性が低下する傾向がある。さらに屈折率分布型のコア部を形成する場合は、屈折率分布が崩れてしまい、光学部材としての性能が顕著に低下する。
【0044】
温度T℃での重合は、重合開始剤が残留しないように、重合が完結するまで行うことが好ましい。プリフォーム内に未反応の重合開始剤が残っていると、プリフォーム加工時、特に溶融延伸において、加熱された未反応の重合開始剤が分解して気泡などを発生するおそれがあるため、重合開始剤の反応を終了させておくのが好ましい。温度T℃の保持時間は、用いる重合開始剤の種類によって好ましい範囲が異なり、温度T℃での重合開始剤の半減期時間以上とするのが好ましい。
【0045】
また、本実施形態においては、重合性モノマーの沸点をTb℃とした場合に、重合開始剤として、十時間半減期温度が(Tb−20)℃以上である化合物を用い、前記関係式を満たすT℃で該重合開始剤の半減期の10%以上の時間(好ましくは25%の時間)重合することも、同様な観点から好ましい。十時間半減期温度が(Tb−20)℃以上である化合物を重合開始剤として用い、前記初期重合温度T℃で重合すると、初期の重合速度を減少させることができる。また、前記初期温度で、前記重合開始剤の半減期時間の10%以上の時間まで重合することにより、初期重合における体積収縮応答に対し圧力により速やかに追随させることができる。即ち、前記条件とすることで、初期重合速度を減少させ、初期重合における体積収縮応答性を向上させることができ、その結果、プリフォーム中の体積収縮による気泡混入を軽減することができ、生産性を向上することができる。なお、重合開始剤の十時間半減期温度とは、重合開始剤が分解して、十時間でその数が1/2になる温度をいう。
【0046】
前記条件を満たす重合開始剤を用いて、初期重合温度T℃で前記開始剤の半減期時間の10%以上の時間重合する場合、重合を完結するまで温度T℃に維持してもよいが、光透過性の高い光学部材を得るには、T℃より高い温度に昇温して、重合を完結するのが好ましい。昇温時の温度は前記関係式を満たすT℃であるのが好ましく、より好ましい温度範囲も前述の通りであり、温度T℃の保持時間の好ましい範囲も前述の通りである。
【0047】
本実施の形態において、重合性モノマーとして、沸点Tb℃のメチルメタクリレート(MMA)を用いた場合、十時間半減期温度が(Tb−20)℃以上の重合開始剤としては、前述の例示した重合開始剤のうち、PBDおよびPHVが該当する。例えば、重合性モノマーとしてMMAを用い、重合開始剤としてPBDを用いた場合は、初期重合温度を100〜110℃に48〜72時間維持し、その後、120〜140℃まで昇温して24〜48時間重合するのが好ましく、重合開始剤としてPHVを用いた場合は、初期重合温度を100〜110℃に4〜24時間維持し、120〜140℃まで昇温して24〜48時間重合するのが好ましい。なお、昇温は段階的に行っても、連続的に行ってもよいが、昇温にかける時間は短いほうがよい。
【0048】
前記第2の工程においては、前記第2の工程においては、特開平9−269424号公報記載のように加圧するもしくは特許3332922号公報に記載されているように減圧して重合を行ってもよく、更には、重合工程で状況に応じて圧力を変化させてもよい。これら操作により、重合性モノマーの沸点近傍の温度である前記関係式を満たすTおよびT℃での重合の重合効率を向上させることができる。加圧状態で重合を行う(以下、加圧状態で行う重合を「加圧重合」という)場合は、前記モノマーを注入したクラッド部となる円筒管を、治具の中空部に挿入して、治具に支持された状態で重合を行うのが好ましい。前記治具は、前記円筒管を挿入可能な中空を有する形状であり、該中空部は前記円筒管と類似の形状を有しているのが好ましい。本実施の形態では、クラッド部は円筒管であるので、前記治具も円筒形状であるのが好ましい。治具は、加圧重合中に前記円筒管が変形するのを抑制するとともに、加圧重合が進むに従ってコア部となる領域が収縮するのを緩和可能に支持する。従って、治具の中空部は、前記クラッド部となる円筒管の外径より大きい径を有し、前記クラッド部となる円筒管を非密着状態で支持するのが好ましい。前記治具の中空部は、前記クラッド部となる円筒管の外径に対して0.1%〜40%だけ大きい径を有しているのが好ましく、10〜20%だけ大きい径を有しているのがより好ましい。
【0049】
前記クラッド部となる円筒管を治具の中空部に挿入した状態で、重合容器内に配置することができる。重合容器内において、前記クラッド部となる円筒管は、円筒の高さ方向を垂直にして配置されるのが好ましい。前記治具に支持された状態で前記クラッド部となる円筒管を、重合容器内に配置した後、前記重合容器内を加圧することができる。加圧させる場合は窒素等の不活性ガスで重合容器内を加圧し、不活性ガス雰囲気下で加圧重合を進行させるのが好ましい。重合時の加圧の好ましい範囲については、用いるモノマーによって異なるが、重合時の圧は、一般的には0.05〜1.0MPa程度が好ましい。
【0050】
なお、この第2工程終了時において、冷却操作を圧力の制御下において一定の冷却速度で行うことによって、重合後に発生する気泡を抑制することができる。コア部重合時に窒素等の不活性ガスで重合容器内を加圧し、不活性ガス雰囲気下で加圧重合を進行させることが、コア部の圧力応答のために好ましい。しかし、基本的にプリフォーム中から気体を完全に抜くことは不可能であり、冷却工程などでポリマーが急激に収縮すると空隙に気体が凝集し気泡核が形成されて気泡の発生を招いてしまう。
これを防ぐには冷却工程で冷却速度を0.001〜3℃/分程度に制御することが好ましく、0.01〜1℃/分程度に制御することがより好ましい。この冷却操作はポリマーのTg、特にコア領域のTgに近づく過程でのポリマーの体積収縮の進行に応じて、2段以上で行っても良い。この場合、重合直後は冷却速度を早くし、徐々に緩やかにしてゆくことが好ましい。
【0051】
以上の操作によって得られたプリフォームは、均一な屈折率の分布および充分な光透過性を有するとともに、気泡およびマクロ空隔等の発生は抑制されている。従って、高い利用効率で前記プリフォームからプラスチック光伝送体が安定的に得られる。
【0052】
第3の工程では、第2の工程で作製されたプリフォームを加工することで所望の光伝送体を得ることができる。例えば、プリフォームをスライスすることで平板上のレンズを得たり、溶融延伸してプラスチック光ファイバを得ることができる。特に、プリフォームのコア部となる領域が屈折率分布を有する場合は、均一な光伝送能を有するプラスチック光ファイバを生産性高くしかも安定的に製造することができる。
【0053】
延伸は、例えば、プリフォームを加熱炉(例えば円筒状の加熱炉)等の内部を通過させることによって加熱し、溶融させた後、引き続き連続して延伸紡糸するのが好ましい。加熱温度は、プリフォームの材質等に応じて適宜決定することができるが、一般的には、180〜250℃が好ましい。延伸条件(延伸温度等)は、得られたプリフォームの径、所望のプラスチック光ファイバの径および用いた材料等を考慮して、適宜決定することができる。特に、屈折率分布型光ファイバにおいては、その断面の中心方向から円周に向け屈折率が変化する構造を有するため、この分布を破壊しないように、均一に加熱且つ延伸紡糸する必要がある。従って、プリフォームの加熱には、プリフォームを断面方向において均一に加熱可能である円筒形状の加熱炉等を用いことが好ましい。
また、加熱炉は延伸軸方向に温度分布を持つことが好ましい。溶融部分が狭いほど屈折率分布の形状が歪みにくく収率があがるため好ましい。具体的には溶融部分の領域が狭くなるように溶融領域の前後では、予熱と除冷を行うことが好ましい。さらに、溶融領域に用いる熱源としてはレーザーのようなせまい領域に対しても高出力のエネルギーを供給できるものがより好ましい。
延伸は線形とその真円度を維持させるため、中心位置を一定に保つ調芯機構を有する延伸紡糸装置を用いて行うのが好ましい。延伸条件を選択することによりファイバの重合体の配向を制御することができ、線引きで得られるファイバの曲げ性能等の機械特性や熱収縮などを制御することもできる。
また、線引時の張力は、特開平7−234322号公報に記載されているように、溶融したプラスチックを配向させるために10g以上とすることができ、もしくは特開平7−234324号公報に記載されているように、溶融延伸後に歪みを残さないようにするために100g以下とすることが好ましい。また、特開平8−106015号公報に記載されているように、延伸の際に予備加熱工程を実施する方法などを採用することもできる。
以上の方法によって得られたファイバについては、得られる素線の破断伸びや硬度を、特開平7−244220号公報に記載されている様に規定することで、ファイバの曲げや側圧特性を改善することができる。
【0054】
第3の工程を経て製造されたプラスチック光ファイバは、そのままの形態で種々の用途に供することができる。また、保護や補強を目的として、その外側に被覆層を有する形態、繊維層を有する形態、および/または複数のファイバを束ねた形態で、種々の用途に供することができる。
被覆工程つまりファイバに被覆層を形成する方法としては、ファイバ素線の周囲に被覆用樹脂を押出し成型する方法や、光学部材に塗布したモノマーを重合させる方法、シートを巻き付ける方法、押し出し成形した中空管に光学部材を通す方法などが知られている。
【0055】
例えば、ファイバ素線の周囲に押出し成形法で被覆を設ける場合では、ファイバ素線の通る穴を有する対向したダイスにファイバ素線を通し、対向したダイス間に溶融した被覆用の樹脂を満たし、ファイバ素線をダイス間を移動させることで実施することができる。被覆層は、可撓時に内部のファイバへの応力から保護するため、ファイバ素線と融着していないことが望ましい。さらに、被覆工程において、ファイバ素線は、溶融した樹脂と接すること等により、熱的ダメージを受ける。この熱的ダメージが最小限となるように、ファイバ素線の移動速度に設定し、且つ被覆層として低温で溶融できる樹脂を選ぶことが好ましい。なお、被覆層の厚みは、被覆層用樹脂の溶融温度や、ファイバ素線の引き抜き速度、被覆層の冷却温度によって調整することができる。
【0056】
本発明の光学部材としての光ファイバ、および光ファイバケーブルを用いて光信号を伝送するシステムには、種々の発光素子、受光素子、他の光ファイバ、光バス、光スターカプラ、光信号処理装置、接続用光コネクター等で構成される。それらに関する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)等の他、特開平10−123350号公報、特開2002−90571号公報、特開2001−290055号公報等の光バス、特開2001−74971号公報、特開2000−32996号公報、特開2001−74966号公報、特開2001−74968号公報、特開2001−318263号公報、特開2001−311840号公報等の光分岐結合装置、特開2000−241655号公報等の光スターカプラ、特開2002−62457号公報、特開2002−101044号公報、特開2001−305395号公報等の光信号伝達装置や光データバスシステム、特開2002−23011号公報等の光信号処理装置、特開2001−86537等の光信号クロスコネクトシステム、特開2002−26815号公報等の光伝送システム、特開2001−339554号公報、特開2001−339555号公報等のマルチファンクションシステムなどを参考にすることができる。
【0057】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
[実施例1]
予定するプリフォームの外径に対応する内径を有する充分な剛性を持った内径22mmおよび長さ600mmの円筒状の重合容器に、モノマー(メタクリル酸メチル(MMA)(水分を1000ppm以下に除去したもの))を所定量注入した。重合開始剤としてジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)をモノマー混合溶液に対して0.5質量%、連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタンをモノマー混合溶液に対して0.62質量%配合した。上記モノマー混合溶液の注入された重合容器を60℃湯浴中に入れ、震盪を加えながら2時間予備重合を行った。その後、該重合容器を65℃下にて水平状態(円筒の高さ方向が水平となる状態)に保持し、3000rpmにて回転させながら3時間加熱重合した。その後、90℃で24時間の熱処理し、上記PMMAからなる円筒管を得た。
【0058】
次に、該円筒管の中空部に、コア部の原料であるモノマー(メタクリル酸メチル(MMA)(水分を1000ppm以下に除去したもの))と、屈折率調整成分として化合物(d−1)をモノマー溶液に対して12.5質量%混合した溶液とを、精度0.2μmの四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過しつつ、濾液を直接注入した。重合開始剤としてジ−t−ブチルパーオキシドをモノマー混合溶液に対し0.016質量%、連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタンをモノマー混合溶液に対し0.27質量%配合した。この混合溶液等を注入した該円筒管を、該円筒管外径に対し9%だけ広い内径を持つガラス管内に挿入した状態で、加圧重合容器に垂直に静置した。その後、加圧重合容器内を窒素雰囲気に置換した後、0.1Mpaまで加圧し、90℃で、48時間加熱重合した。その後、0.4Mpaまで加圧し、120℃で、24時間加熱重合および熱処理を行い、プリフォームを得た。該プリフォームの重量平均分子量は10万6000であった。
【0059】
得られたプリフォームには、重合完了時に体積収縮による気泡の混入はなかった。このプリフォームを230℃の熱延伸により線引きを行い、直径約700〜800μmのプラスチック光ファイバを製造した。延伸工程において、プリフォームには気泡の発生は観察されず、安定して300mのファイバを得ることができた。得られたファイバの伝送損失値を測定したところ、波長650nmで160dB/km、であった。このファイバを70℃、95%RHの条件で20時間後と100時間後のそれぞれの伝送損失値を測定し、その間の80時間での損失増は650nmで2dB/10mであった。
【0060】
[実施例2〜5、比較例1〜2]
重合性組成物中の屈折率調整剤の種類を表1のように変更し、それ以外は実施例1と同様な操作を行い、ファイバを得、実施例1と同様な評価を行った。その結果を表1に合わせて示す。比較例に用いた化合物の構造と物性を下記に示す。
【0061】
【化2】
Figure 2004184500
【0062】
【表1】
Figure 2004184500
【0063】
表1に示すように、sp値とlogP値を所望の範囲のドーパントに用いることにより、650nmでの初期の良好な伝送損失値と高温高湿下での損失上昇抑制を両立することができることがわかる。
【0064】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば、光源波長650nmにおける光伝送損失が小さく、かつ高温高湿下での損失上昇を抑制することができる光学部材、および該光学部材を安定的に作製可能な光学部材用重合性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学部材の作製に使用可能なインナーサイジングダイ方式の溶融押出装置の断面図の一例である。
【図2】本発明の光学部材の作製に使用可能なアウターダイ減圧吸引方式の溶融押出し装置の製造ラインの一例である。
【図3】本発明の光学部材の作製に使用可能な成形ダイスの斜視図の一例である。
【符号の説明】
11 装置本体
14 ダイ本体
14a 出口
19 クラッド
30 ガイド
31 インナーロッド
40 原料ポリマー
40a,40b 流路
41 温度センサ
50 製造ライン
51 溶融押出装置
52 ダイス
53 成形ダイス
54 冷却装置
55 引取装置
57 真空ポンプ
60 溶融樹脂
61 クラッド
70a 吸引孔
70 成形管
71 減圧チャンバ
80 ノズル
81 冷却水
82 器
82a 排出口
85 駆動ローラ
86 加圧ローラ
87 モータ

Claims (4)

  1. 重合性モノマー、重合開始剤、および前記重合性モノマーと異なる屈折率を有する化合物(A)を含む光学部材用重合性組成物であって、前記重合性モノマーを重合して得られるポリマーの吸水率が1.8〜3%で、前記化合物(A)のlogP値が1以上4以下で、且つ前記化合物(A)のsp値が7以上11以下である光学部材用重合性組成物。
  2. 前記重合性モノマーが主としてメタクリル酸メチルである請求項1に記載の光学部材用重合性組成物。
  3. 請求項1または2に記載の光学部材用重合性組成物を重合して、屈折率の大きさに分布を有する屈折率分布領域を形成してなる光学部材。
  4. 前記屈折率分布領域が、屈折率の大きさが断面の中央から外側に向かって変化する領域である請求項3に記載の光学部材。
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