JP2005326762A - 屈折率分布型プラスチック光ファイバの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 伝送周波数帯域に優れ、且つ長期耐久性や温湿度耐久性にも優れる屈折率分布型プラスチック光ファイバを、安定的に且つ容易に作製可能な方法を提供する。
【解決手段】 円筒管内に重合性組成物を注入した後、該円筒管を長手方向中心線を軸に回転させながら前記重合性組成物を重合させ、円筒管の中心部から周辺部まで半径方向に均一組成のコア部を形成するコア部形成工程と、該コア部を少なくとも有するプリフォームを延伸する延伸工程とを含む、前記長手方向中心線に垂直な断面方向に屈折率の分布を有する屈折率分布型プラスチック光ファイバの製造方法である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、伝送周波数が10GHz・mを超える高周波信号伝送が可能な光ファイバに関し、更に詳しくは従来型の屈折率分布型マルチモードプラスティック光ファイバに比べて、ロバストネス(頑健さ)及び製造コストを改良した屈折率分布型マルチモードプラスティック光ファイバの製造方法に関する。
マルチモード光ファイバは、大口径で接続できる技術としてガラスファイバの一種としても多用されているが、特にプラスチック光ファイバの分野では、マルチモードが基本とされている。プラスチック光ファイバ(POFと略記することがある)は、素線が全てプラスチックで構成されているため、伝送損失が石英系と比較してやや大きいという短所を有するものの、良好な可撓性を有し、軽量で、加工性がよい。さらに石英系光ファイバと比較して、口径の大きいファイバとして製造し易く、低コストに製造可能であるという長所を有する。従って、伝送損失の大きさが問題とならいない程度の短距離用の光通信伝送媒体として種々検討されている。
プラスチック光ファイバは、一般的には、重合体をマトリックスとする有機化合物からなる芯(本明細書において「コア部」と称する)と、コア部と屈折率が異なる(一般的には低屈折率の)有機化合物からなる外殻(本明細書において「クラッド部」と称する)とから構成される。コア部が均一組成の素材からなるPOFは、ステップインデックス型POFといわれ、市販されているものもあるが、いずれもその伝送周波数帯域は約10GHz・m以下である。一方、中心から外側に向かって屈折率の大きさに分布があるコア部を有する屈折率分布型POF(以下「GI−POF」という場合がある)は、伝送する光信号の帯域をより大きくすることが可能なため、高い伝送容量を有する光ファイバとして最近注目されている(例えば、特許文献1および2参照)。この様な屈折率分布型POFの製法の一つに、界面ゲル重合を利用して、光学部材母材(本明細書において、「プリフォーム」と称する)を作製し、その後、前記プリフォームを延伸する方法などが提案されている。この屈折率分布型光ファイバでは、マトリックス素材の中に屈折率の高い調整剤を含有させ、その含有率を断面の半径方向において徐々に変化させることによって所望の屈折率分布を得ている。
特開昭61−130904号公報 特許3332922号
しかし、従来の屈折率分布型POFの作製方法は、プリフォームを作製する際に精密な成形制御が必要であり、生産上の条件制御が難しい。特に、特許文献1に記載されている作製方法は、界面ゲル重合を利用して断面方向に徐々に成長させるために作製に時間がかかり、且つプリフォームのサイズ(長さ、太さ)が制限される。そのためプリフォーム作製工程およびプリフォームの延伸工程においてコストを軽減することが困難である。また、前記作製方法では、屈折率の高い低分子とマトリックス素材の組み合わせで屈折率分布を形成しているが、この屈折率分布が様々な温湿度範囲で長期に崩れないことが、品質保証上求められる。しかし、本発明者が、実際に種々検討したところ、屈折率の高い低分子とマトリックス素材との組み合わせの中で、こうした品質保証に耐え得るものには限りがあり、同様に屈折率の異なる重合体を共重合させることにより屈折率分布を付与する場合は重合体の組合せによって界面不整等が起きて高い損失を示すことがあるため、材料の選択の幅を狭めることが分かった。
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、伝送周波数帯域に優れ、且つ長期耐久性や温湿度耐久性にも優れる屈折率分布型プラスチック光ファイバを、安定的に且つ容易に製造可能な方法を提供することを課題とする。また、本発明は、屈折率分布型プラスチック光ファイバを、従来の方法と比較して、低コストおよび短時間に製造可能な方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するためには、屈折率分布構造の形成方法を従来の方法と根本的に変えてプリフォーム作製までの工程を簡素で迅速な製造形態にし、且つ低分子高屈折率化合物のマトリックス材料中における含有比率に基づく屈折率分布構造において懸念される、完成形態における複数成分の相溶性の崩れ等に起因する屈折率分布構造の乱れが生じ得ない形態を実現することが必要である。本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討し、従来のコア部の組成の分布の調整に基づく屈折率分布構造ではなく、分子配向状態の分布の調整に基づく屈折率分布構造を有するプラスチック光ファイバによれば、前記課題を解決し得ることを見出した。さらに、この様な、分子配向状態の分布の調整に基づく屈折率分布構造を有するプラスチック光ファイバは、プリフォーム作製時に、中心部と周辺部での重合状態を変化させておくこと、特に、回転重合により重合状態を変化させておくとことで、容易に作製可能であることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
本発明は、特願2003−273272号明細書に記載のプラスチック光ファイバの製造方法として有用である。
即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 円筒管内に重合性組成物を注入した後、該円筒管を長手方向中心線を軸に回転させながら前記重合性組成物を重合させ、円筒管の中心部から周辺部まで半径方向に均一組成のコア部を形成するコア部形成工程と、該コア部を少なくとも有するプリフォームを延伸する延伸工程とを含む、前記長手方向中心線に垂直な断面方向に屈折率の分布を有する屈折率分布型プラスチック光ファイバの製造方法。
[2] 前記コア部が、長手方向に垂直な面において、周辺部近傍よりも中心部の屈折率が高く、長手方向に平行で且つ長手方向中心線を含む平面において、長手方向中心線から該長手方向中心線と垂直な方向周辺部に向かって複屈折率が変化している[1]の屈折率分布型プラスチック光ファイバの製造方法。
[3] 前記コア部が、固有複屈折が負の材料からなり、光伝送方向と平行で且つ長手方向中心線を含む光伝送コア部の平面上において、光伝送方向の屈折率をnx及びそれに垂直な方向の屈折率をnyとした場合、複屈折率Δn(=nx−ny<0)が、前記長手方向中心線から前記長手方向中心線と垂直な方向周辺部に向かってその絶対値が減少している[1]又は[2]の屈折率分布型プラスチック光ファイバの製造方法。
[4] 前記延伸工程において、延伸時の配向によってコア部の複屈折率が、前記長手方向中心線から前記長手方向中心線と垂直な方向周辺部に向かってその絶対値を減少させる[1]〜[3]のいずれかの屈折率分布型プラスチック光ファイバの製造方法。
[5] [1]〜[3]のいずれかの方法によって作製された、固有複屈折が負の材料からなり複屈折が分布した屈折率分布型プラスチック光ファイバ。
本発明によれば、伝送周波数帯域に優れ、且つ長期耐久性や温湿度耐久性にも優れる屈折率分布型プラスチック光ファイバを、安定的に且つ容易に製造可能な方法を提供することができる。また、本発明によれば、屈折率分布型プラスチック光ファイバを、従来の方法と比較して、低コストおよび短時間に製造可能な方法を提供することができる。
発明の実施の形態
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法は、長手方向に垂直な面において、周辺部近傍よりも中心部の屈折率が高く、長手方向に平行で且つ長手方向中心線を含む平面において、長手方向中心線から該長手方向中心線と垂直な方向周辺部に向かって複屈折率が変化しているコア部を有するプラスチック光ファイバの製造方法として有用である。
一般に、固有複屈折を有する材料は、無配向状態では3次元的屈折率成分(nx,ny,nz)で表されるいわゆる屈折率楕円体が真球状を保持している。即ち、nx=ny=nzの関係が成立する。この時の屈折率をn0とする。これがバルクとして任意の方向に配向すると3次元的屈折率成分(nx,ny,nz)が異なる状態、つまり複屈折が発現する。
固有複屈折が正の材料は、分子がx方向のみに配向すると、配向方向に振幅を持つ光の屈折率(nx)がn0より大きくなるのに対し、それに垂直な方向に振幅を持つ光の屈折率(ny=nz)がn0より小さくなる。一方、固有複屈折が負の材料は、分子がx方向のみに配向すると、配向方向に振幅を持つ光の屈折率(nx)がn0より小さくなるのに対し、それに垂直な方向に振幅を持つ光の屈折率(ny=nz)がn0より大きくなる。
ここで、長尺状の光ファイバのコア部を、図1に示す様に、直交座標(x,y,z)に、長手方向をx軸に平行にして配置したモデルを考える。図1中、面Py-zは光ファイバの長手方向に垂直な面であり、面Px-yは長手方向中心線Lcを含み長手方向に平行な面である。図2〜図4に、種々の光ファイバの、Py-z面上の屈折率楕円分布およびPx-y面上の屈折率楕円分布を模式的に示した図をそれぞれ示す。なお、光ファイバの長手方向中心線Lcを含み長手方向に平行な他の面である面Px−z上の屈折率楕円体は、Px-y面上の屈折率楕円体と同様になるので省略する。
まず、図2は、特許3332922号公報等に記載されている様な従来のGI−POFのコア部の、Py-z面上のnzおよびny成分からなる屈折率楕円体(図2(a))、およびPx-y面(図2(b))上のnxおよびny成分からなる屈折率楕円体を模式的に示した図である。図2に示す従来の光ファイバは、例えば、マトリックス中に含有される高屈折率低分子化合物の濃度分布等に基づいて、Py-z面上に屈折率分布構造が形成されている。従って、図2(a)に示す様に、Py-z面上の屈折率楕円体は円になるが、その大きさは中心部が大きく、周辺部に向かって小さくなっている。また、図2(b)に示す様に、Px-y面上の屈折率楕円体の分布も、Py-z面と同様に、中心部と周辺部近傍の屈折率楕円体が相似し、中心部が大きく、周辺部に向かうにつれて小さくなっている。
一方、図3は、本発明の製造方法により作製可能なGI−POFのコア部の一例について、Py-z面上のnzおよびny成分からなる屈折率楕円体分布(図3(a))、およびPx-y面(図3(b))上のnxおよびny成分からなる屈折率楕円体分布を模式的に示した図である。図3に示すGI−POFは、固有複屈折が正の材料からなるとともに、コア中心部からコア周辺部に向かう(y軸に平行な方向に向かう)に従って、分子が長手方向(x方向)に強く配向している光ファイバの例である。Px-y面上において、分子の配向度は、長手方向中心線Lcから外側に向かって高くなり、その配向度の変化に応じて、nx成分が大きくなるので、図3(b)に示す様に、屈折率楕円体は、外側になるにつれてx方向に伸びたラグビーボール状になっていく。その結果、図3(a)に示す様に、Py-z面上には、相対的にコア中心部からコア周辺部に向かって屈折率が減少する状態が形成されている。つまり、光の進行方向に関して従来の屈折率等方性材料において屈折率差に分布をつけた一般的なGI−POFと同等な状態にあると言える。
また、図4は、本発明の製造方法によって作製可能なGI−POFのコア部の他の例について、Py-z面上のnzおよびny成分からなる屈折率楕円体分布(図4(a))、およびPx-y面(図4(b))上のnxおよびny成分からなる屈折率楕円体分布を模式的に示した図である。図4に示す光ファイバは、固有複屈折が負の材料からなり、コア周辺部からコア中心部に向かう(y軸と平行な方向に向かう)に従って、分子が長手方向(x方向)に強く配向している光ファイバの例である。Px-y面上において、分子の配向度は、外側から長手方向中心線Lcに向かって高くなり、その配向度の変化に応じて、nx成分が小さくなるので、図4(b)に示す様に、屈折率楕円体は、中心に近づくにつれてy方向に伸びた円盤状になっていく。その結果、図4(a)に示す様に、Py-z面上には、相対的にコア中心部からコア周辺部に向かって屈折率が減少する状態が形成されている。つまり、光の進行方向に関して従来の屈折率等方性材料において屈折率差に分布をつけた一般的なGI−POFと同等な状態にあると言える。
本発明の製造方法は、かかるGI−POFの中でも、図4に示した例の様に、コア部が、固有複屈折が負の材料からなり、光伝送方向と平行で且つ長手方向中心線を含む光伝送コア部の平面上において、光伝送方向の屈折率をnx及びそれに垂直な方向の屈折率をnyとした場合、複屈折率Δn(=nx−ny<0)が、前記長手方向中心線から前記長手方向中心線と垂直な方向周辺部に向かってその絶対値が減少している態様の製造方法として有用である。
上記屈折率分布構造は、長手方向に分子を配向させるとともに、その配向の程度を中心部と周辺部近傍とで差をつけることにより形成できる。本発明の製造方法では、プリフォームの製造時に、コア部形成用重合性組成物を含む円筒管を長手方向中心線を軸に回転させながら、前記重合性組成物を重合させ、その後、延伸することによって、コア部の中心部と周辺部近傍とで分子の配向状態に差を持たせている。本発明では、プリフォーム作製時に回転重合することによって、その後の延伸工程における分子の配向状態を調整しているので、延伸工程において分子の配向状態を調整するために厳密な温度制御は不要となる。回転重合と静止重合で高分子網目状態にどんな変化が出ているのかは解明していないが、遠心力が強くなる周辺部ほど、延伸工程での配向を受け難くなるという現象から考えて、強い遠心力を受けながら重合するほどパッキングが進み、フリーボリュームが少ない一定の秩序を保った高分子構造を有しているものと推定できる。そしてその秩序は、延伸工程でも崩れず無配向状態を保ったまま相似形に変化してゆくのであろうことが推定できる。一方、静止重合では、形成される高分子は典型的な糸マリ状態の構造となり、延伸によって延伸方向へ強く配向していくものと推定できる。
本発明では、コア部に屈折率の分布を付与するために、意図的に材料中の組成を不均一にする必要はなく、均一な組成の材料からコア部を形成することができる。ここで、「均一組成」とは、一成分からなることのみを意味するのではなく、複数成分からなり、組成が領域によって偏りのない一様な態様も含む意味でも用いるものとする。従って、本発明においては、コア部は、例えば、固有複屈折を有するマトリックス材料のみからなっていても、固有複屈折が認められないマトリックスに固有複屈折を有するドーパント(添加成分)を修飾した材料、または固有複屈折が認められないマトリックスに固有複屈折を有するドーパント(添加成分)を共重合した材料等の多数成分からなる材料からなっていてもよい。ここで、ドーパントは重合性を有しない低分子の化合物でもよいし、重合性を有するモノマー成分でもよい。
この様に、本発明では、均一組成の材料からなるコア部を回転重合により形成し、その後、延伸することによって、GI−POFを作製している。意図的にコア部を不均一な組成とする従来のGI−POFの製造方法と比較して、製造が容易であり、また材料の選択の幅もより広くなる。さらに、延伸時における厳密な温度制御も不要である。従って、本発明によれば、高周波数帯域の伝送が可能で、且つ温湿度ロバストネスが改善されたGI−POFを、安定的にしかも低コストで製造することができる。
本発明の製造方法の一実施形態は、コア部とコア部の周辺を被覆するクラッド部とを有するGI−POFの製造方法に関し、含フッ素樹脂(好ましくはポリフッ化ビニリデン樹脂)等からなる円筒管を作製する第1の工程と、前記円筒管の中空部でコア部形成用重合性組成物を、円筒管の長手方向中心線を軸として回転させながら重合(以下、「回転重合」という)させることにより均一組成のコア部となる領域を形成する第2の工程と、得られたプリフォームを延伸する第3の工程とを含む。第1の工程と第2の工程との間に、クラッド部の内壁面にアウターコア層を形成する工程を実施してもよい。
以下に、まず、クラッドパイプを作製し、その後、クラッドパイプを重合容器としてそのパイプ内でコア部の反応を行う態様を挙げて説明するが、本発明の製造方法はこれに限定されない。
本発明では、クラッド部、コア部及び所望により形成されるアウターコア部を構成するポリマー成分の分子量は、プリフォームを延伸する関係から、重量平均分子量で1万〜100万の範囲であることが好ましく、3万〜50万であることがさらに好ましい。さらに延伸性の観点で分子量分布(MWD:重量平均分子量/数平均分子量)も影響する。MWDが大きくなると、極端に分子量の高い成分がわずかでもあると延伸性が悪くなり、場合によっては延伸できなくなることもある。したがって、好ましい範囲としては、MWDが4以下が好ましく、さらには3以下が好ましい。分子量は、重合性モノマーの重合速度および重合度を、重合開始剤または連鎖移動剤等によって調整することができる。
前記第1の工程では、円筒管形状のクラッド部を作製する。クラッド部は、コア部を伝送する光がそれらの界面で全反射するために、コア部の屈折率より低い屈折率を有し、非晶性であり、コア部との密着性が良好な材料を用いるのが好ましい。コア部とクラッド部の界面が不整状態となると光学性能が低下するため、コア部素材よりも低い屈折率を有する素材を選ぶことが好ましい。
クラッド部の素材としては、後述のコア部用素材として例示したものから選択することができるが、それらの素材の中でも、タフネスに優れ、耐湿熱性にも優れているものが好ましく用いられるため、これらの観点から、クラッド部は、フッ素含有モノマーの単独重合体または共重合体からなるのが好ましい。フッ素含有モノマーとしてはフッ化ビニリデンが好ましく、フッ化ビニリデンを10質量%以上含有する1種以上の重合性モノマーを重合させて得られるフッ素樹脂を好ましく用いることができる。使用可能な重合性モノマー以外の材料、例えば、重合開始剤、連鎖移動剤、その他の添加剤についても後述するコア部の素材と同様である。
さらに、できるだけコア部へ水分が浸入することを防ぐことが好ましく、そのためには、ポリマーの吸水率が低いポリマーをクラッド部の素材(材料)として用いてもよい。具体的には、飽和吸水率(以下、吸水率と称する)が1.8%未満のポリマーを用いてクラッド部を作製するのが好ましい。1.5%未満のポリマーを用いて作製するのがより好ましく、1.0%未満のポリマーを用いて作製するのがさらに好ましい。ここで本発明における吸水率(%)は、ASTMD570試験法に従い、23℃の水中に試験片を1週間浸漬し、そのときの吸水率を測定することにより算出することができる。
重合体からなる中空管の作製方法としては、例えばモノマーを重合させつつ中空管状に成形してクラッド部を作製する特許3332922号に記載されている様な回転重合による製造方法がある。重合性組成物を回転重合させてクラッド部を製造する場合は、例えば、前記クラッド部形成用重合組成物を円筒形状の重合容器に、またはアウターコア部形成用重合性組成物をフッ素樹脂よりなるパイプ(さらに外側に円筒形状の容器に入れられたもの)に注入し、該重合容器を回転(好ましくは、円筒の軸を水平に維持した状態で回転)させつつ、前記重合性モノマーを重合させることにより、1層(一重)円筒形状の重合体からなる構造体を作製することができる。重合容器に注入する前にフィルターにより濾過して、組成物中に含まれる塵埃を除去するのが好ましい。また、性能劣化や前工程、後工程の煩雑化などを起こさない限りにおいて、特開平10−293215号公報に記載された原料の粘度調整のように取り扱いやすい様に粘度などの調整やプレ重合を行うことによる重合時間の短縮なども行うことができる。重合温度および重合時間は、用いるモノマーや重合開始剤によって異なるが、一般的には、重合温度は60〜150℃であるのが好ましく、重合時間は5〜24時間であるのが好ましい。この時に、特開平8−110419号公報に記載されている様に、原料をプレ重合して原料粘度を上昇させてから行い成形に要する重合時間を短縮しても良い。また、重合に使用する容器が回転によって変形してしまうと、得られる円筒管に歪みを生じさせることから、充分な剛性を持つ金属管・ガラス管を用いることが望ましい。
また、ペレット状や粉末状の樹脂(好ましくはフッ素樹脂)を円筒形状の容器に入れ、両端を塞ぎ、該容器を回転(好ましくは、円筒の軸を水平に維持した状態で回転)させつつ該樹脂の融点以上に加熱し、前記樹脂を溶融させることにより、重合体からなる中空管を作製することができる。この時に、溶融による樹脂の熱または酸化、および熱酸化分解を防ぐために、該重合容器内を窒素やアルゴンなどの不活性気体雰囲気下で行うことや、樹脂を事前に充分乾燥させておくことが好ましい。
一方、重合体を溶融押出ししてクラッド部を形成する場合は、一旦、重合体を作製した後、押出し成形等の成形技術を利用して、所望の形状(本実施の形態では円筒形状)の構造体を得ることもできる。これらに用いられる溶融押出装置としては、主として、インナーサイジングダイ方式とアウターダイ減圧吸引方式の2つのタイプがある。
図5に、インナーサイジングダイ方式の溶融押出装置の断面図の一例を示して、インナーサイジングダイ方式の成形の概略を説明する。
装置本体11からベント付き1軸スクリュー押出機(不図示)により、クラッド部の原料ポリマー40がダイ本体14に押出される。ダイ本体14の内部には、原料ポリマー40を流路40a,40bに導くガイド30が挿入されている。原料ポリマー40は、このガイド30を経て、ダイ本体14とインナーロッド31との間の流路40a,40bを通り、ダイの出口14aから押出され、円筒中空管の形状のクラッド19が形成される。クラッド19の押出速度については特に制限されないが、形状を均一に保つとともに、生産性の点から、押出し速度は1cm/min〜100cm/minの範囲であることが好ましい。
ダイ本体14には、原料ポリマー40を加熱するための加熱装置が設置されているのが好ましい。例えば、原料ポリマー40の進行方向に沿って、ダイ本体14を覆うように1つまたは2以上の加熱装置(例えば、蒸気、熱媒油、電気ヒータなど利用した装置)を設置してもよい。一方、ダイの出口14aでは、温度センサ41を取り付け、この温度センサ41によってダイの出口14aでのクラッド19の温度を測定して温度を調節するのが好ましい。温度は、原料ポリマー40のガラス転移温度以下であることが、クラッド19の形状を均一に保持することが可能となるために好ましい。また、クラッド19の温度が40℃以上であることが、急激な温度変化による形状の変化を抑制することが可能になり好ましい。このクラッド19の温度の制御は、例えば、冷却装置(例えば、水、不凍液、オイルなどの液体や、電子冷却などを使用した装置)をダイ本体14に取り付けてもよいし、ダイ本体14の自然空冷により冷却してもよい。ダイ本体に加熱装置が設置されている場合は、冷却装置は加熱装置の位置より下流に取り付けるのが好ましい。
次に、アウターダイ減圧吸引方式の溶融押出し装置の製造ラインの一例を図6に、および成形ダイス53の斜視図の一例を図7に示して、アウターダイ減圧吸引方式の成形の概略を説明する。
図6に示す製造ライン50は、溶融押出装置51と、押出しダイス52と、成形ダイス53と、冷却装置54と、引取装置55とを備える。ペレット投入ホッパ(以下、ホッパと称する)56から投入された原料ポリマーは、溶融押出装置51内部で溶融され、押出しダイス52によって押出され、成形ダイス53に送り込まれる。押出速度Sは、0.1≦S(m/min)≦10の範囲が好ましく、より好ましくは0.3≦S(m/min)≦5.0であり、最も好ましくは0.4≦S(m/min)≦1.0である。しかしながら、本発明において押出速度Sは、前述した範囲に限定されるものではない。
図7に示す様に、成形ダイス53は、成形管70を備えており、成形管70に溶融樹脂60を通すことにより、溶融樹脂60が成形され円筒形状のクラッド61が得られる。成形管70には、多数の吸引孔70aが設けられていて、成形管70の外側に設けられた減圧チャンバ71を真空ポンプ57(図6参照)により減圧にすることで、クラッド61の外壁面が、成形管70の成形面(内壁面)70bに密着するために、クラッド61の肉厚が一定になって成形される。なお、減圧チャンバ71内の圧力は、20kPa〜50kPaの範囲とすることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。なお、成形ダイス53の入口に、クラッド61の外径を規定するためのスロート(外径規定部材)58を取り付けるのが好ましい。
成形ダイス53により形状が調整されたクラッド61は、冷却装置54に送られる。冷却装置54には、多数のノズル80が備えられており、それらのノズル80から冷却水81をクラッド61に向けて放水することで、クラッド61を冷却して、固化させる。冷却水81は、受け器82で回収して、排出口82aから排出することもできる。クラッド61は、冷却装置54から引取装置55により引き出される。引取装置55は、駆動ローラ85と加圧ローラ86とが備えられている。駆動ローラ85には、モータ87が取り付けられており、クラッド61の引取速度の調整が可能になっている。また、クラッド61を挟んで駆動ローラ85と対向して配置されている加圧ローラ86により、クラッド61の微小な位置のずれを修正することが可能となっている。この駆動ローラ85の引取速度と溶融押出装置51の押出速度とを調整したり、加圧ローラ86によるクラッド61の移動位置を微調整したりすることにより、クラッド61の形状、特に肉厚を均一にすることが可能となる。
また、クラッド部は機械的強度向上や難燃性などの多種の機能性を付与させるために複層からなっていてもよく、内壁の算術平均粗さが特定の範囲の中空管を作製した後、その外壁面をフッ素樹脂等によって被覆することもできる。
得られるクラッドの肉厚tは、形状を保つことができる限りにおいて薄くすることが可能であるが、2≦t(mm)≦20の範囲であることが好ましい。また、コア部の中心と周辺部とにおいて、遠心力による配向状態の強弱差をより積極的に付けるという観点からは、クラッド管は大きな内径を有することが好ましい。この観点及びクラッド肉厚tとの関係から、く、クラッドの外径D1は、20≦D1(mm)≦500を満たすのが好ましく、25≦D1(mm)≦100を満たすのがより好ましい。コア部の重合において、その管内で重合組成物を回転させながら重合反応を行うことから、安定した一定の太さと高い真円度であることが好ましい。また、プリフォームの長さは安定重合・延伸までのマージンを持たせる観点から200mm以上であることが好ましく、500mm以上3000mm以下であるのがより好ましい。但し、本発明に用いられるクラッド管の態様は、前述したものに限定されるものではない。
前記円筒形状の重合体からなる構造体は、コア部の原料となる重合性組成物を注入できるように、一端を塞がれているのが好ましい。前記円筒管を構成している重合体と密着性および接着性に富む材質で一端を塞ぐのが好ましい。また、前記円筒管と同一の重合体で一端を塞ぐこともできる。例えば、クラッド部を重合により作製する前、又はいずれかの方法によって中空管を形成した後に、重合容器内に少量の重合性モノマーを注入し、重合することによって一端を塞ぐことができる。
第2の工程では、前記円筒管の中空部でコア部形成用重合性組成物を重合させることにより均一組成のコア部となる領域を形成する。前記第2の工程では、円筒管を長手方向中心線を軸として回転させながら重合を進行させる。
[重合性モノマー]
本発明に使用可能なコア部の原料の重合性モノマーとしては、光透過性が高い熱可塑性の原料を選択するのが好ましい。光透過性が高い熱可塑性の原料としては例えば、以下のような(メタ)アクリル酸エステル類(フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル(a)、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(b))、スチレン系化合物(c)、ビニルエステル類(d)、炭酸エステル類(e)等を例示することができ、コア部はこれらのホモポリマー、あるいはこれらモノマーの2種以上からなる共重合体、およびホモポリマー及び/または共重合体の混合物から形成することができる。
特に本発明を実現するためには、容易に複屈折を発現しやすいものが好ましい。固有複屈折が正のものとしては、ポリカーボネート、メタクリル酸ベンジルなどが上げられ、固有複屈折が負のものとしては、メタクリル酸メチル、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられ、これらを好ましく用いることができる。固有複屈折はその素材を重合してみて一軸延伸物を作成し、複屈折を計ることにより、知ることができる。複屈折を発現させる素材であれば本発明の手法にて使用できるので、上記素材に限定されるものではなく、モノマーの単独あるいは共重合体からなるポリマーの屈折率がクラッド部のそれに比べて同等かあるいはそれ以上になるように構成モノマーの種類、組成比を組むことが好ましい。
さらに、作製する光学部材を近赤外光用途に用いる場合は、構成するC−H結合に起因した吸収損失が起こるために、C−H結合の水素原子を重水素原子やフッ素などで置換した重合体(例えば、特許3332922号公報などに記載されているような重水素化ポリメチルメタクリレート(PMMA−d8)、ポリトリフルオロエチルメタクリレート(P3FMA)、ポリヘキサフルオロイソプロピル2−フルオロアクリレート(HFIP 2−FA)など)からコア部を形成すると、この伝送損失を生じる波長域を長波長化することができ、伝送信号光の損失を軽減することができる。なお、原料モノマーは重合後の透明性を損なわないためにも、不純物や散乱源となる異物は重合前に充分に低減させること
が望ましい。
また、側鎖に脂環式炭化水素基や分岐型炭化水素基を有するアクリレートを重合成分として多く含むポリマーは、脆性が強いので、PMMAなどに比べて延伸性があまりよくない。この様な場合は、コア部の径の変動が軽減され、延伸時の破断等が起こり難いので、側鎖に脂環式炭化水素基や分岐型炭化水素基を有するアクリレートを重合成分として含むポリマーをコアのマトリクスに用いる場合には、目的とする性能を低減させない限り柔軟性に富む素材と共重合させたり、クラッド部や、さらにその外側に所望により形成される被覆層などに、フッ素ゴムのような樹脂を用いること等によって、脆性を補強するのが特に有効である。
[重合開始剤]
重合開始剤としては、用いるモノマーや重合方法に応じて適宜選択することができ、例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。
なお、重合開始剤は勿論これらに限定されるものではなく、2種類以上を併用してもよい。
[連鎖移動剤]
コア部の作製時には、重合性モノマーを連鎖移動剤の存在下で重合するのが好ましい。前記連鎖移動剤は、主に重合体の分子量を調整するために用いられる。
連鎖移動剤を用いると、重合性モノマーからポリマーを形成する際に、重合速度および重合度を前記連鎖移動剤によってより制御することができ、重合体の分子量を所望の分子量に調整することができる。例えば、得られたプリフォームを延伸により線引きして光ファイバとする際に、分子量を調整することによって延伸時における機械的特性を所望の範囲とすることができ、生産性の向上にも寄与する。
前記連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択することができる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(例えば、チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、前記連鎖移動剤は、2種類以上を併用してもよい。勿論、これらに限定されるものではなく、これら連鎖移動剤は2種類以上を併用してもよい。
[その他の添加剤]
その他、コア部には、光伝送性能を低下させない範囲で、前述のドーパントの様なその他の添加剤を添加することができる。例えば、コア部には、クラッド部との屈折率差を大きくさせるために、屈折率調整剤を含有させてもよい。またコア部の耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として使用することができる。これらの添加剤も、前記原料モノマーに添加した後、重合することによって、コア部に含有させることができる。
前記第2の工程に用いるコア部形成用重合性組成物における、各成分の含有割合の好ましい範囲は、その種類に応じて異なり一概に定めることはできないが、一般的には、重合開始剤は、重合性モノマーに対して0.005〜0.5質量%であるのが好ましく、0.01〜0.5質量%であるのがより好ましい。前記連鎖移動剤は、重合性モノマーに対して0.10〜0.40質量%であるのが好ましく、0.15〜0.30質量%であるのがより好ましい。
以上のようにして調製したコア部形成用重合性組成物を、円筒管に注入する。コア部形成用重合性組成物を注入する前に、上記した様に、円筒管の一端を、所定の材料からなる栓によって封止するのが好ましい。栓で塞いだ後、コア部形成用重合性組成物を注ぎ、上記と同様な栓で封止していないもう一端も封止してから回転重合を行ってもよい。なお、この栓は、コア部形成用の重合性化合物に溶解しない素材からなり、可塑剤等の溶出するような化合物も含まないものとする。このような素材としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。
回転重合の条件については、用いる重合性モノマー、重合開始剤等の種類に応じて決定することができる。一般的には、モノマーの沸騰による気泡混入を避けるため沸点以下で加熱して重合するのが好ましく、具体的にコア部材料としてメタクリル酸メチルを用いた場合では、50〜120℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。重合時間についても特に制限はなく、用いる重合開始剤と重合温度によって影響を受けるが、一般的には1〜48時間が好ましく、3〜12時間がより好ましい。さらに重合反応においては、重合初期の温度を低くし、ある程度重合が進行してから(例えば、重合を開始させてから3〜6時間後に)重合温度を上記範囲まで上昇させると、気泡発生抑止の点で好ましい。また、円筒管の回転数については、重合反応を行う重合容器の大きさで遠心力の強さに差が生じるため、コア部材料としてメタクリル酸メチルを用い直径20mmの重合容器を用いた場合では、500〜5000rpmが好ましく、2000〜5000rpmがより好ましい。重合温度と同様、重合初期は回転数を低くしておき、ある程度重合が進行してから(例えば、重合を開始させてから30分後〜3時間後に)回転数を上記範囲まで上昇させると形状の安定化や配向状態の分布の均一化の点で好ましい。
重合性組成物の回転重合の工程においては、特開平9−269424号公報記載のように加圧して重合を行っても、又は特許3332922号公報に記載されているように減圧して重合を行ってもよく、更には、重合工程で状況に応じて圧力を変化させてもよい。加圧状態で重合を行う(以下、加圧状態で行う重合を「加圧重合」という)場合は、前記モノマーを注入した中空管を、治具の中空部に挿入して、治具に支持された状態で重合を行うのが好ましい。さらに、重合前のモノマーを減圧雰囲気で脱水・脱気する事でさらに気泡の発生を低減させることができる。
重合による体積変化などを考慮して円筒上の冶具内に中空管を配置して重合しても良い。前記治具は、前記中空管を挿入可能な中空を有する形状であり、該中空部は前記中空管と類似の形状を有しているのが好ましい。即ち、前記治具も円筒形状であるのが好ましい。治具は、加圧重合中に前記中空管が変形するのを抑制するとともに、加圧重合が進むに従ってコア部となる領域が収縮するのを緩和可能に支持する。従って、治具の中空部は、前記中空管の外径より大きい径を有し、前記中空管を非密着状態で支持するのが好ましい。前記治具の中空部は、前記中空管の外径に対して0.1%〜40%だけ大きい径を有しているのが好ましく、10〜20%だけ大きい径を有しているのがより好ましい。
なお、この回転重合工程の終了時において、冷却操作を圧力の制御下において一定の冷却速度で行うことによって、重合後に発生する気泡を抑制することができる。コア部重合時に窒素等の不活性ガスで重合容器内を加圧し、不活性ガス雰囲気下で加圧重合を進行させることが、コア部の圧力応答のために好ましい。しかし、基本的にプリフォーム中から気体を完全に抜くことは不可能であり、冷却工程などでポリマーが急激に収縮すると空隙に気体が凝集し気泡核が形成されて気泡の発生を招いてしまう。これを防ぐには冷却工程で冷却速度を0.001〜3℃/分程度に制御することが好ましく、0.01〜1℃/分程度に制御することがより好ましい。この冷却操作はポリマーのTg、特にコア領域のTgに近づく過程でのポリマーの体積収縮の進行に応じて、2段以上で行っても良い。この場合、重合直後は冷却速度を早くし、徐々に緩やかにしてゆくことが好ましい。
以上の操作によって、均一な組成からなるコア部と、円筒管形状(例えば、PVDFパイプ)のクラッド部とが一体化されたプリフォームが得られる。クラッド部とコア部との接着性が低い場合等は、コア部を形成する第2工程を実施する前に、アウターコア層を円筒管の内壁面に形成してもよい。得られたプリフォームは、均一な屈折率の分布および充分な光透過性を有するとともに、気泡およびマクロ空隔等の発生は抑制され、また、光を反射してファイバ内部に閉じ込めるクラッド部とコア部との界面の平滑性が良好であることが、高性能、高収率のためには好ましい。
なお、上記工程では、PVDFパイプ等の円筒管に重合性モノマーを注入して所望により蓋をして、円筒管の長手方向中心線を中心に回転しながら重合を進行させるので、中心線沿いに貫通孔が開く。従って、以下の延伸工程においては、上部から真空引きをし、中空孔を塞ぎながら延伸する必要がある。この場合、図8における108:プリフォームフォルダに吸引用のノズルを設けておいて、真空ポンプにて吸引する。PMMAプリフォームの場合、真空度は0.5〜3.0kPaあたりがよい。これは素材によって溶融粘度が違うので、素材を変えたときはその都度最適条件を探す必要がある。真空度が低すぎると中空穴は塞ぎきれず、中央に穴の開いたファイバとなってしまう。真空度が高すぎると中空の開閉が、ある周期で振動をはじめ、ファイバ形状が真円からずれて不安定になる。
次に、得られたプリフォームを溶融延伸して(第3の工程)、プラスチック光ファイバを作製する。
延伸工程に使用可能な延伸装置の断面模式図を図8に示す。図8に示す延伸装置では、プリフォーム109を、アーム101のプリフォームフォルダ108に取り付け、吊り下げた状態で支持する。次に、モータ104によってスクリュー駆動装置103を駆動させると、スクリュー102が一定の速度で回転し、アーム101が降下し、プリフォーム109はヒーター110に挿入される。プリフォーム109は、ヒーター110の各コンパートメント内で順次加熱され溶融する。溶融したプリフォーム109の先端は、ファイバ加熱炉110の下方に配置された、冷却ファン113aから冷風が送りこまれている冷却室113bの内部を通過して、冷却された後、ヒーター110の下方に設置された引取りロール115の二ップ部に挟み込まれ、下方向に引取られる。引取りロール115は引取りモータ116によって駆動され、プリフォーム109を下方向に引取る力を調節可能になっている。アーム101によってプリフォーム109を一定速度で降下させるとともに、引取りロール115により一定速度で引取ることにより、プリフォーム109は連続的に引取り延伸され、ファイバ109’が連続的に製造される。
なお、延伸軸は、調芯装置105により、ズレが調整できるようになっている。また、プリフォーム109を下方向に引取る引取り力は、例えば、プリフォーム9がヒーター110から引取りロール115に至る間で、プリフォーム109の張力を測定する張力測定器114a、プリフォームの径を測定するレーザ測定器114b、および/または線引長さを測定する距離カウンタ114cからの測定値に基づいてコンピュータ117が引取りモータ116を制御することで、最適化することができる。
図8に示す様に、ヒーター110が多段のコンパートメントから構成されている場合は、各コンパートメント内の温度調整を正確に行なうことにより、上述した、中心部と周辺部とに温度差をより安定的に付与できる。各コンパートメントの温度調整を正確に行うためには、図8に示す様に、各コンパートメントをオリフィス119で仕切り、各コンパートメントの温度雰囲気が隣接するコンパートメントに漏れ難くするのが好ましい。
加熱されたプリフォームの延伸が開始され、円筒形のプリフォームは徐々にその径が減少し、実質的に円錐形状になる。この過程において、プリフォームは張力を受けながら延伸されるため、延伸されて得られたプラスチック光ファイバではマトリクスの配向が起こる。この際に本発明で作成されるプリフォームでは、外周部と中心部の配向の配向の容易さに差が生じるため、中心部と外周部とでは配向に差が生じるため、結果として複屈折の大きさに差が生じる。
延伸加熱温度は、プリフォームの材質等に応じて適宜決定することができるが、一般的には、PMMAを素材とした場合では180〜250℃が好ましく、220℃〜230℃の範囲で行われる事がより好ましい。延伸条件(延伸温度等)は、得られたプリフォームの径、所望のプラスチック光ファイバの径および用いた材料等を考慮して、適宜決定することができる。高温で延伸を行う場合には前述の高分子構造の秩序が崩れやすくなることと、配向状態の観点では比較的高い張力下で延伸される事が好ましいため、プラスチック光ファイバの延伸としては延伸可能な温度範囲の比較的低温で延伸を行う事が好ましい。ただし、あまり低すぎると、延伸張力が過度に上昇して破断等が起こり製造適性上好ましくない。
延伸は線形とその真円度を維持させるため、中心位置を一定に保つ調芯機構を有する延伸紡糸装置を用いて行うのが好ましい。
また、線引時の張力は、特開平7−234322号公報に記載されているように、溶融したプラスチックを配向させるために10g以上とすることができ、もしくは特開平7−234324号公報に記載されているように、溶融延伸後に歪みを残さないようにするために100g以下とすることが好ましい。また、特開平8−106015号公報に記載されているように、延伸の際に予備加熱工程を実施する方法などを採用することもできる。以上の方法によって得られるファイバについては、得られる素線の破断伸びや硬度について特開平7−244220号公報に記載の様に規定することでファイバの曲げや側圧特性を改善することができる。また、特開平8−54521号公報のように低屈折率層を周辺に設けて反射層として機能させて、さらに伝送性能を向上させることもできる。
上記説明した方法以外にも、前記第2工程に記述した方法で中空管内でコア部のみからなるプリフォームを作製し、別途第1の工程で作製したクラッドパイプに嵌合してプリフォームを得、その後、第3工程によりプラスチック光ファイバを作製する方法;コア部のみからなるプリフォームを作製し、このプリフォームにクラッド部作製用重合組成物を塗布硬化させてクラッド部を作製して、プリフォームを得、その後、第3工程で延伸を実施して、一体化したプラスチック光ファイバを作製する方法;及びコア部のみからなるプリフォームを作製した後、該ポリフォームを延伸してファイバ最終径とした後に、クラッドとなる低屈折率媒体、例えば、塗布型クラッドとしては、Addison Clear Wave 社 「AC R220B」塗布UV硬化型などを塗布する等により、プラスチック光ファイバを作製する方法;のいずれかの態様も、本発明の製造方法に含まれる。
前述した方法で製造されたプラスチック光ファイバは、そのままの形態で種々の用途に供することができる。また、保護や補強を目的として、その外側に被覆層を有する形態、繊維層を有する形態、および/または複数のファイバを束ねた状態で、種々の用途に供することができる。被覆工程は、例えばファイバ素線の通る穴を有する対向したダイスにファイバ素線を通し、対向したダイス間に溶融した被覆用の樹脂を満たし、ファイバ素線をダイス間に移動することで被覆されたファイバを得ることができる。被覆層は可撓時に内部のファイバへの応力から保護するため、ファイバ素線と融着していないことが望ましい。さらにこのとき、溶融した樹脂と接することでファイバ素線に熱的ダメージが加わるので、極力ダメージを押さえるような移動速度や低温で溶融できる樹脂を選ぶことも望ましい。このとき、被覆層の厚みは被覆材の溶融温度や素線の引き抜き速度、被覆層の冷却温度による。その他にも、光部材に塗布したモノマーを重合させる方法やシートを巻き付ける方法、押し出し成形した中空管に光部材を通す方法などが知られている。
素線を被覆することにより、プラスチック光ファイバケーブル製造が可能となる。その際にその被覆の形態として、被覆材とプラスチック光ファイバ素線の界面が全周にわたって接して被覆されている密着型の被覆と、被覆材とプラスチック光ファイバ素線の界面に空隙を有するルース型被覆がある。ルース型被覆では、たとえばコネクタとの接続部などにおいて被覆層を剥離した場合、その端面の空隙から水分が浸入して長手方向に拡散されるおそれがあるため、通常は密着型が好ましい。しかし、ルース型の被覆の場合、被覆と素線が密着していないので、ケーブルにかかる応力や熱とはじめとするダメージの多くを被覆材層で緩和させることができ、素線にかかるダメージを軽減させることができるため、使用目的によっては好ましく用いることができる。水分の伝播については、空隙部に流動性を有するゲル状の半固体や粉粒体を充填することで、端面からの水分伝播を防止でき、かつ、これらの半固体や粉粒体に耐熱や機械的機能の向上などの水分伝播防止と異なる機能をあわせ持つようにすることでより高い性能の被覆を形成できる。
ルース型の被覆を製造するには、クロスヘッドダイの押出し口ニップルの位置を調整し減圧装置を加減することで空隙層を作ることができる。空隙層の厚みは前述のニップル厚みと空隙層を加圧/減圧することで調整が可能である。
さらに、必要に応じて被覆層(1次被覆層)の周辺にさらに被覆層(2次被覆層)を設けても良い。2次被覆層に難燃剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、昇光剤、滑剤などを導入してもよく、耐透湿性能を満足する限りにおいては、1次被覆層にも導入は可能である。なお、難燃剤については臭素を始めとするハロゲン含有の樹脂や添加剤や燐含有のものがあるが、毒性ガス低減などの安全性の観点で難燃剤として金属水酸化物を加える主流となりつつある。金属水酸化物はその内部に結晶水として水分を有しており、またその製法過程での付着水が完全に除去できないため、金属水酸化物による難燃性被覆は本発明の対透湿性被覆(1次被覆層)の外層被覆(2次被覆層)として設けることが望ましい。
また、複数の機能を付与させるために、様々な機能を有する被覆を積層させてもよい。
例えば、本発明のような難燃化以外に、素線の吸湿を抑制するためのバリア層や水分を除去するための吸湿材料、例えば吸湿テープや吸湿ジェルを被覆層内や被覆層間に有することができ、また可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や発泡層等の緩衝材、剛性を挙げるための強化層など、用途に応じて選択して設けることができる。樹脂以外にも構造材として、高い弾性率を有する繊維(いわゆる抗張力繊維)および/または剛性の高い金属線等の線材を熱可塑性樹脂に含有すると、得られるケーブルの力学的強度を補強することができることから好ましい。抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が挙げられる。また、金属線としてはステンレス線、亜鉛合金線、銅線などが挙げられる。いずれのものも前述したものに限定されるものではない。その他に保護のための金属管の外装、架空用の支持線や、配線時の作業性を向上させるための機構を組み込むことができる。
また、ケーブルの形状は使用形態によって、素線を同心円上にまとめた集合ケーブルや、一列に並べたテープ心線と言われる態様、さらにそれらを押え巻やラップシースなどでまとめた集合ケーブルなど用途に応じてその形態を選ぶことができる。
また、本発明によって得られる大口径の光ファイバを用いたケーブルは、軸ずれに対して従来の光ファイバに比べて許容度が高いため突き合せによる接合でも用いることができるが、端部に接続用光コネクタを用いて接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタとしては一般に知られている、PN型、SMA型、SMI型などの市販の各種コネクタを利用することも可能である。
本発明の光学部材としての光ファイバ、および光ファイバケーブルを用いて光信号を伝送するシステムには、種々の発光素子や受光素子、光スイッチ、光アイソレータ、光集積回路、光送受信モジュールなどの光部品を含む光信号処理装置等で構成される。また、必要に応じて他の光ファイバなどと組合わせてもよい。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)、日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」などを参考にすることができる。前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線、車両や船舶などの内部配線、光端末とデジタル機器、デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LAN等をはじめとする、高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。
さらに、IEICE TRANS.ELECTRON.,VOL.E84−C,No.3,MARCH 2001,p.339−344「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3,No.6,2000 476頁〜480ページ「光シートバス技術によるインタコネクション」の記載されているものや、特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号等の各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号等の各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号等の公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号等の各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号等に記載の光信号処理装置;特開2001−86537号等に記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号等に記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号等の各公報に記載のマルチファンクションシステム;や各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを使用した、より高度な光伝送システムを構築することができる。
以上の光伝送用途以外にも照明、エネルギー伝送、イルミネーション、センサ分野にも用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
[実施例1]
図5に示すのと同様の構成のインナーサイジングダイ方式の溶融押し出し装置によって、厚さ1mm、直径20mm、長さ60cmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)の中空円筒管(パイプ)を作製した。そのパイプの片端をPVDFのキャップをはめて蓋をし、中空部にコア部が負の複屈折材料であるPMMAからなるように下記MMA処方液を注入した。
《MMA処方液》
メタクリル酸メチル 500g
メチルアゾビスイソブチレート 0.25g
n−ラウリルメルカプタン 1.75g
前記MMA処方液を注入された円筒管を図9に示すような回転重合装置の回転シリンダー内部に置き、下記条件で重合し、プリフォームを作製した。
80℃ 500rpm 1時間
80℃ 2000rpm 8時間
100℃ 2000rpm 10時間
120℃ 2000rpm 24時間
回転重合中の体積収縮により、中心部に円筒状中空穴が開いたプリフォームを作製した。
《延伸》
上記プリフォームをリング状電気炉を有した図8と同様の構成の延伸機により延伸した。ヒーターゾーンは図8の様に5段式となっており、各エリアの温度雰囲気が隣に漏れにくくするため、オリフィスと称する板119が突き出している。上から第1・第2ゾーンは20℃の常温風が常に流されており、第3ゾーンの設定温度を240℃にして延伸し実施例1の試料を作製した。なお、第4ゾーン・第5ゾーンは温度制御をしなかった。またプリフォームホルダ側から2.0kPaの真空引きをし、中空穴を塞ぎながら延伸した。各試料は、外径1mmで長さ50mのファイバであった。
《伝送周波数帯域評価》
光源として波長650nmのLEDを用い、半値幅100ピコセカンドのパルス光とし、出射パルス光を開口数0.5の対物レンズを用いて集光し、上記の各ファイバ試料の端面から入射させた。30m先のもう一方の端面から出射した光をサンプリングオシロスコープで検出した。その波形の半値幅から応答周波数に換算し、伝送周波数帯域を算出した結果、2.9GHzであった。
《複屈折率分布の評価》
各ファイバ試料の長手方向中心線から垂直方向周辺部に向かっての複屈折率の分布を以下の方法で調べた。なお、ここではレターデーション{Δn(複屈折率:nx−ny)×d(試料の厚み)}の分布を評価することで、複屈折率分布を評価した。まず、実施例1〜9の各ファイバ試料を10mm長ほど用意した。これを、各試料を1mm厚のガラス板上に置き、エポキシ樹脂によりガラス板上に包埋接着した(図10)。次に、エポキシ樹脂側から(図10中、上から)研磨機で削っていき、ファイバの中心線付近(図10中、破線L1)まで削る。次に、研磨面の上にもう一枚の1mm厚ガラス板を密着させてエポキシ樹脂で固める。そして、先ほどの研磨とは反対側のガラス面側から(図10中、下から)研磨し、最初のガラス板を削りきって、更にファイバを削っていき、サンプル厚みが0.1mmとなる(図10中、破線L2)まで削る。以上の工程により、ガラス板上に、厚さ0.1mmのファイバの長手方向に切り出したサンプルを作製した。これをオリンパス偏光顕微鏡BX51に厚肉ベレックコンペンセーターU−CTBを付けて、その干渉縞からレターデーションの分布を評価した。実施例1のサンプルは中心線付近から中心線に垂直にPVDFクラッド部との界面に向かって、レターデーションが徐々に変化しており、相対的にコア中心部からコア周辺部に向かって屈折率が減少する状態が形成されていることが確認できた。延伸軸方向のそれに直交する断面方向に対する複屈折率の大きさは、中心部でΔn=0.0005に対し、周辺部でΔn=0.0015であった。
[比較例1]
図5に示すのと同様の構成のインナーサイジングダイ方式の溶融押し出し装置によって、厚さ1mm、直径20mm、長さ60cmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)の中空円筒管(パイプ)を作製した。そのパイプの片端をPVDFのキャップをはめて蓋をし、中空部にコア部が負の複屈折材料であるPMMAからなるように下記MMA処方液を注入した。
《MMA処方液》
メタクリル酸メチル 500g
メチルアゾビスイソブチレート 0.25g
n−ラウリルメルカプタン 1.75g
前記MMA処方液を注入された中空管をオートクレーブに入れて、下記条件で重合し、プリフォームを作製した。
80℃ 0.05MPa 3時間
100℃ 0.05MPa 10時間
120℃ 0.05MPa 24時間
このプリフォームは実施例1とは異なり、静止重合を行ったので、中心まで詰まった円筒形状のプリフォームであった。
《延伸》
上記プリフォームを、リング状電気炉を有した図8と同様の構成の延伸機により延伸した。上から第1・第2ゾーンは20℃の常温風が常に流されており、第3ゾーンの設定温度を240℃にして延伸し実施例1の試料を作製した。なお、第4ゾーン・第5ゾーンは温度制御をしなかった。各試料は、外径1mmで長さ50mのファイバであった。
伝送周波数帯域評価を、上記実施例1と同一の方法で行ったところ、120MHzであった。なお、複屈折率分布評価では、比較例1の試料は、レターデーションは若干存在するものの、その値が均一で実施例のような分布は一切見られなかった。
[比較例2]
特許3332922号公報の実施例4に記載に従って、GI−POFを作製し、上記と同様に評価した。なお、この方法は、従来型のGI−POF製作手法で、ドーパントを用い、ドーパントの濃度分布に基づいて屈折率の分布を構築する方法である。
伝送周波数帯域評価を、上記実施例1と同一の方法で行ったところ、2.6GHzであった。なお、複屈折率分布評価では、比較例2の試料は、レターデーションが若干存在するものの、その値が均一で実施例のような分布は一切見られなかった。
本発明によれば、ファイバの長手方向に平行な断面上に複屈折率変化を付けることにより、伝送方向と垂直な断面上に屈折率分布型とすることができ、ドーパントを用いなくても、均一素材にてGI−POFを製作することができる。そしてこの手法によって作製されたファイバは、伝送周波数帯域に優れ、かつ長期耐久性や温湿度耐久性にも極めて優れるファイバである。
本発明の光ファイバを説明するために用いた模式図である。 特許3332922号に記載のファイバの屈折率楕円体分布を示す模式図である。 固有複屈折が正の材料からなる本発明ファイバの一例についての屈折率楕円体分布を示す模式図である。 固有複屈折が負の材料からなる本発明ファイバの一例についての屈折率楕円体分布を示す模式図である。 本発明の光ファイバの作製に使用可能なインナーサイジングダイ方式の溶融押出装置の断面図の一例である。 本発明の光ファイバの作製に使用可能なアウターダイ減圧吸引方式の溶融押出し装置の製造ラインの一例である。 本発明の光ファイバの作製に使用可能な成形ダイスの斜視図の一例である。 本発明の光ファイバの作製に使用可能な延伸装置の断面模式図の一例である。 実施例の試料について、延伸温度と帯域の関係を示すグラフである。 実施例で行った複屈折率分布評価用の試料の作製方法を説明するのに用いた模式図である。
符号の説明
11 装置本体
14 ダイ本体
14a 出口
19 クラッド
30 ガイド
31 インナーロッド
40 原料ポリマー
40a,40b 流路
41 温度センサ
50 製造ライン
51 溶融押出装置
52 ダイス
53 成形ダイス
54 冷却装置
55 引取装置
57 真空ポンプ
60 溶融樹脂
61 クラッド
70a 吸引孔
70 成形管
71 減圧チャンバ
80 ノズル
81 冷却水
82 器
82a 排出口
85 駆動ローラ
86 加圧ローラ
87 モータ
101 アーム
102 スクリュー
103 スクリュー駆動装置
104 スクリュー駆動装置用モータ
105 調芯装置
107 ユニバーサルジョイント
108 プリフォームフォルダ
109 プリフォーム
109’ ファイバ
110 ヒーター
111 レーザー照射室
112a レーザ発生装置
112b コリメータ
112c 光学系
114a 張力測定器
114b レーザー計測器
114c 距離カウンタ
115 引取りロール
116 引取りロール用モータ
117 コンピュータ
118 圧着装置
119 オリフィス
F 光ファイバ
Lc 長手方向中心線
Py−z 光ファイバの長手方向に垂直な面
Px−z 光ファイバの長手方向に平行で且つ長手方向中心線を含む面

Claims (5)

  1. 円筒管内に重合性組成物を注入した後、該円筒管を長手方向中心線を軸に回転させながら前記重合性組成物を重合させ、円筒管の中心部から周辺部まで半径方向に均一組成のコア部を形成するコア部形成工程と、該コア部を少なくとも有するプリフォームを延伸する延伸工程とを含む、前記長手方向中心線に垂直な断面方向に屈折率の分布を有する屈折率分布型プラスチック光ファイバの製造方法。
  2. 前記コア部が、長手方向に垂直な面において、周辺部近傍よりも中心部の屈折率が高く、長手方向に平行で且つ長手方向中心線を含む平面において、長手方向中心線から該長手方向中心線と垂直な方向周辺部に向かって複屈折率が変化している請求項1に記載の屈折率分布型プラスチック光ファイバの製造方法。
  3. 前記コア部が、固有複屈折が負の材料からなり、光伝送方向と平行で且つ長手方向中心線を含む光伝送コア部の平面上において、光伝送方向の屈折率をnx及びそれに垂直な方向の屈折率をnyとした場合、複屈折率Δn(=nx−ny<0)が、前記長手方向中心線から前記長手方向中心線と垂直な方向周辺部に向かってその絶対値が減少している請求項1又は2に記載の屈折率分布型プラスチック光ファイバの製造方法。
  4. 前記延伸工程において、延伸時の配向によってコア部の複屈折率が、前記長手方向中心線から前記長手方向中心線と垂直な方向周辺部に向かってその絶対値を減少させる請求項1〜3のいずれか1項に記載の屈折率分布型プラスチック光ファイバの製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項の方法によって作製された、固有複屈折が負の材料からなり複屈折が分布した屈折率分布型プラスチック光ファイバ。
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