JP2006299282A - 成型用ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】低い温度及び低い圧力下での成型性に優れ、かつ耐溶剤性、耐熱性、印刷層との密着性に優れ、さらに環境負荷の小さい、成型用PEsフィルムを提供する。
【解決手段】共重合PEsとホモPEsを構成成分とし、実質的に粒子を含有しない二軸配向PEsフィルムに、厚み0.01〜5μmの塗布層を積層してなる成型用PEsフィルムであって、塗布層は、PEs、PU、アクリル系重合体、それらの共重合体から選ばれる樹脂と粒子を含有し、(1)フィルムの長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が25℃で10〜1000MPa及び100℃で1〜100MPa、(2)フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵弾性率が100℃で10〜1000MPa及び180℃で5〜40MPa、(3)フィルムの長手方向における微小張力下での熱変形率が175℃で−3%〜+3%、である成型用PEsフィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、成型性、特に低い温度および低い圧力下での成型性に優れ、かつ耐溶剤性、耐熱性、印刷層との密着性に優れ、さらに環境負荷の小さい、家電、自動車の銘板用または建材用部材として好適に用いることのできる成型用ポリエステルフィルムに関する。
従来、成型用シートとしては、ポリ塩化ビニルフィルムが代表的であり、加工性などの点で好ましく使用されてきた。一方、該フィルムは火災などによりフィルムが燃焼した際の有毒ガス発生の問題、可塑剤のブリードアウトなどの問題があり、近年の耐環境性のニーズにより、環境負荷の小さい新しい素材が求められてきている。
上記要求を満足させるために、非塩素系素材としてポリエステル、ポリカーボネートおよびアクリル系樹脂よるなる未延伸シートが広い分野において使用されてきている。特に、ポリエステル樹脂よりなる未延伸シートは、機械的特性、透明性が良く、かつ経済性に優れており注目されている。例えば、ポリエチレンテレフタレートにおけるエチレングリコール成分の約30モル%を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換した、実質的に非結晶のポリエステル系樹脂を構成成分とする未延伸ポリエステル系シートが開示されている(例えば、特許文献1〜5を参照)。
特開平9−156267号公報 特開2001−71669号公報 特開2001−80251号公報 特開2001−129951号公報 特開2002−249652号公報
上記の未延伸ポリエステルシートは、成型性やラミネート適性に関しては市場要求を満足するものではあるが、未延伸シートであるため、耐熱性や耐溶剤性が充分ではなく市場の高度な要求を満足させるまでには至っていない。
上記の課題を解決する方法として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる方法が開示されている(例えば、特許文献6〜9を参照)。
特開平9−187903号公報 特開平10−296937号公報 特開平11−10816号公報 特開平11−268215号公報
しかしながら、上記方法は、耐熱性や耐溶剤性は改善されるものの、成型性が不十分となり、総合的な品質のバランスの点で、市場要求を満足させるものではなかった。
上記課題を解決する方法として、フィルムの100%伸張時応力を特定化する方法が開示されている(例えば、特許文献10を参照)
特開2001−347565号公報
該方法は前記の方法に比べ、成型性は改善されているものの、成型性に関する市場の高度な要求に十分に答えられるレベルには達していない。特に、成型温度の低温化に適合できる成型性や得られた成型品の仕上がり性に課題が残されていた。
本発明者等は、上記の課題解決について検討をし、すでに、特定した組成の共重合ポリエステル樹脂を原料とし、かつフィルムの100%伸張時応力を特定化することにより上記課題を改善する方法を提案している(例えば、特許文献11、12を参照)。
特願2002−233694 特願2003−309894
これらの方法により、成型時の成型圧力の高い金型成型法においては、市場要求を満たす、成型温度の低温化に適合可能な成型性や得られた成型品の仕上がり性を大幅に改善することができる。しかしながら、市場要求が近年強くなっている圧空成型法や真空成型法等の成型時の成型圧力が低い成型方法の場合、成型品の仕上がり性をさらに改善することが要望されている。
本発明の目的は、前記の従来技術における課題を解決するものであり、成型性、特に低い温度および低い圧力下での成型性に優れ、かつ耐溶剤性、耐熱性、印刷層との密着性に優れ、さらに環境負荷の小さい、成型用ポリエステルフィルムを提供することにある。
上記の課題を解決することができる本発明の成型用ポリエステルフィルムは、以下の構成からなる。
すなわち、本発明の第1の発明は、共重合ポリエステルとホモポリエステルを構成成分とし、実質的に粒子を含有しない二軸配向ポリエステル系フィルムに、厚みが0.01〜5μmの塗布層を積層してなる成型用ポリエステルフィルムであって、
塗布層は、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系重合体および/またはそれらの共重合体から選ばれた少なくとも1種の樹脂と粒子を含有する組成物からなり、
前記フィルムは、(1)フィルムの長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、いずれも25℃において10〜1000MPa及び100℃において1〜100MPaであり、(2)フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)が、いずれも100℃において10〜1000MPaで、かつ180℃において5〜40MPaであり、(3)フィルムの長手方向における微小張力下での熱変形率が、175℃において−3%〜+3%である、ことを特徴とする成型用ポリエステルフィルムである。
第2の発明は、前記共重合ポリエステルが、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを含むグリコール成分を構成成分とすることを特徴とする第1の発明に記載の成型用ポリエステルフィルムである。
第3の発明は、ホモポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、またはポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする第1または2の発明に記載の成型用ポリエステルフィルムである。
第4の発明は、成型用ポリエステルフィルムの融点が200〜245℃であることを特徴とする第1〜3のいずれかの発明に記載の成型用ポリエステルフィルムである。
第5の発明は、成型用ポリエステルフィルムの面配向度が0.095以下であることを特徴とする第1〜4のいずれかの発明に記載の成型用ポリエステルフィルムである。
第6の発明は、成型用ポリエステルフィルムの長手方向及び横方向の150℃での熱収縮率が6.0%以下であることを特徴とする第1〜5のいずれかの発明に記載の成型用ポリエステルフィルムである。
第7の発明は、成型用ポリエステルフィルムの厚みd(μm)に対するヘイズH(%)の比(H/d)が0.010未満であることを特徴とする第1〜6のいずれかの発明に記載の成型用ポリエステルフィルムである。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、加熱成型時の成型性、特に低い温度や低い圧力下での成型性に優れているので幅広い成型方法に適用ができ、かつ成型品として常温雰囲気下で使用する際に、弾性および形態安定性(熱収縮特性、厚み斑)に優れ、そのうえ耐溶剤性や耐熱性に優れ、さらに環境負荷が小さいので、家電、自動車の銘板用または建材用部材として好適に用いることができるという利点がある。さらに、印刷層との密着性にも優れている。
本発明における成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向及び幅方向における25℃での100%伸張時応力(F10025)がいずれも10〜1000MPaであり、かつフィルムの長手方向及び幅方向における100℃での100%伸張時応力(F100100)がいずれも1〜100MPaであることが重要である。F10025またはF100100が前記範囲の上限を超えると成型性が低下するので好ましくない。一方、前記範囲の下限未満では、成型品を使用する際の弾性や形態安定性が低下するので好ましくない。
フィルムの長手方向及び幅方向におけるF10025は10〜500MPaが好ましく、10〜200MPaがより好ましく、10〜150MPaが特に好ましい。
また、フィルムの長手方向及び幅方向におけるF100100の上限は、成型性の点から、90MPaが好ましく、80MPaがより好ましく、70MPaが特に好ましい。一方、F100100の下限は、成型品を使用する際の弾性や形態安定性の点から、2MPaが好ましく、3MPaがより好ましく、5MPaが特に好ましい。
本発明における成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)が、いずれも100℃において10〜1000MPaで、かつ180℃において5〜40MPaであることが重要である。貯蔵粘弾性率(E′)を前記範囲内に制御することにより、成型性、特に低い温度および低い圧力での成型性が確保でき、未延伸シートでしか適用できなかった圧空成型法や真空成型法等の10気圧以下の低い成型圧力の成型法でも仕上がり性の良好な成型品が得られ、かつ寸法安定性の良好な成型品を得ることができる。
前記の100℃と180℃における貯蔵粘弾性率(E′)は、低温低圧下での成型性と、寸法安定性などに影響するパラメータである。特に、100℃における貯蔵粘弾性率(E′)は低温低圧下での成型性と関連があり、180℃における貯蔵粘弾性率(E′)は寸法安定性と関連があることを本発明者らは新たに知見した。前記の特定の温度における貯蔵粘弾性率(E′)が前記のフィルム特性を発現させるための重要な指標になっている理由について、本発明者らは、それらのメカニズムを明確に解明できていないが、フィルムを構成するポリエステルに含まれる共重合成分の分子構造が寄与しているためであろうと推定している。
フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)は、フィルムの両方向とも100℃において20〜900MPaが好ましく、30〜800MPaがより好ましく、40〜700MPaが特に好ましい。また、180℃における貯蔵粘弾性率(E′)は7〜38MPaが好ましく、9〜35MPaがより好ましく、10〜30MPaが特に好ましい。
また、本発明における成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向における熱変形率(初期荷重49mN)が、175℃において−3%〜+3%であることが重要である。フィルムの長手方向における熱変形率(初期荷重49mN)は、180℃において−3%〜+3%であることが好ましく、185℃において−3%〜+3%であることが特に好ましい。
ここで、フィルムの熱変形率は、熱機械分析装置(TMA)を用いて、初期荷重49mN、昇温速度5℃/分の条件で測定し、温度変化にともなうフィルムの寸法変化を測定し、175℃における熱変形率を求めたものである。フィルムの長手方向における熱変形率(初期荷重49mN)を前記範囲に制御することにより、成型品の耐溶剤性を改善することができる。さらに、圧空成型法や真空成型法等の10気圧以下の低い圧力で成型する方法でも、仕上がり性の良好な成型品が得られる。なお、ポリエステル、ポリカーボネート、あるいはアクリル系樹脂より得られた未延伸シートでは、175℃におけるフィルムの長手方向における熱変形率が、本願発明の範囲外となる。
フィルムの微小張力(初期荷重49mN)下での熱変形率と耐溶剤性という一見相互に無関係と考えられる特性が相関を示す理由は明確ではない。しかしながら、前記の理由として、本発明の成型用ポリエステルフィルムは二軸配向されているため、延伸による分子配向の発現により、耐溶剤性や耐熱変形性を改善することができたのであろう、と本発明者らは推察している。
前記の(1)フィルムの長手方向及び幅方向における100%伸張時応力、(2)フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)、(3)フィルムの長手方向における微小張力下での熱変形率は、前記の範囲を同時に満足することが重要である。フィルムがこれらの特性を同時に満足することにより、前記の各種の市場要求を満足する効果を有する本発明の成型用ポリエステルフィルムを得ることができる。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、共重合ポリエステルとホモポリエステルを構成成分として含む二軸延伸ポリエステルフィルムである。以下に本発明の成型用ポリエステルフィルムに用いる原料、好ましい製造方法を記述する。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを含むグリコール成分とから構成される共重合ポリエステルを、二軸配向ポリエステルフィルムの原料の一部に用いることが好ましい。
前記共重合ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分が主としてテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体からなるが、全ジカルボン酸成分に対するテレフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸成分の量は70モル%以上、好ましくは85モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、とりわけ好ましくは100モル%である。
また、分岐状脂肪族グリコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオールなどが例示される。脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどが例示される。
これらのなかでも、ネオペンチルグリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。さらに、本発明においては、上記のグリコール成分に加えて1,3−プロパンジオールや1,4−ブタンジオールを共重合成分とすることが、より好ましい実施態様である。これらのグリコールを共重合成分として使用することは、前記の特性を付与するために好適であり、さらに、透明性や耐熱性にも優れ、密着性改質層との密着性を向上させる点からも好ましい。
さらに、必要に応じて、前記共重合ポリエステルに下記のようなジカルボン酸成分及び/又はグリコール成分を1種又は2種以上を共重合成分として併用してもよい。
テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体とともに併用することができる他のジカルボン酸成分としては、(1)イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4′−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(2)シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(3)シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(4)p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
一方、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールとともに併用することができる他のグリコール成分としては、例えばペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコール及びそれらのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ダイマージオール等が挙げられる。
さらに、必要に応じて、前記共重合ポリエステルに、さらにトリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合させることもできる。
前記共重合ポリエステルを製造する際に用いる触媒としては、例えば、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、チタン/ケイ素複合酸化物、ゲルマニウム化合物などが使用できる。これらのなかでも、チタン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物が触媒活性の点から好ましい。
前記共重合ポリエステルを製造する際に、熱安定剤としてリン化合物を添加することが好ましい。前記リン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸などが好ましい。
前記共重合ポリエステルは、成型性、密着性、製膜安定性の点から、固有粘度が0.50dl/g以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.55dl/g以上、特に好ましくは0.60dl/g以上である。固有粘度が0.50dl/g未満では、成型性が低下する傾向がある。また、メルトラインに異物除去のためのフィルターを設けた場合、溶融樹脂の押出時における吐出安定性の点から、固有粘度の上限を1.0dl/gとすることが好ましい。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、共重合成分が多い共重合ポリエステルをホモポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)とブレンドして、共重合成分量を調整する。
ブレンド法を用いてフィルムを製膜することによって、共重合ポリエステルのみを用いた場合と同等の柔軟性を維持しながら透明性と高い融点(耐熱性)を実現することができる。また、高融点のホモポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)のみを用いた場合に対し、高い透明性を維持しながら柔軟性と実用上問題のない融点(耐熱性)を実現することができる。
また、前記共重合ポリエステルと、ポリエチレンテレフタレート以外のホモポリエステル(例えば、ポリテトラメチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート)を少なくとも1種以上ブレンドして、本発明の成型用ポリエステルフィルムの原料として使用することは、成型性の点からもさらに好ましい。
前記のポリエステルフィルムの融点は、耐熱性及び成型性の点から、200〜245℃であることが好ましい。使用するポリマーの種類や組成、さらに製膜条件を前記融点の範囲内に制御することにより、成型性と仕上がり性とのバランスが取れ、高品位の成型品を経済的に生産することができる。ここで、融点とは、いわゆる示差走査熱量測定(DSC)の1次昇温時に検出される融解時の吸熱ピーク温度のことである。該融点は、示差走査熱量分析装置(デュポン社製、V4.OB2000型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定して求めた。融点の下限値は、210℃がさらに好ましく、特に好ましくは230℃である。融点が200℃未満であると、耐熱性が悪化する傾向がある。そのため、成型時や成型品の使用時に高温にさらされた際に、問題となる場合がある。
前記融点の上限値は、耐熱性の点からは高いほうが良いが、ポリエチレンテレフタレート単位を主体とした場合、融点が245℃を超えるフィルムでは、成型性が悪化する傾向がある。また、透明性も悪化する傾向がある。さらに、高度な成型性や透明性を得るためには、融点の上限を240℃に制御することが好ましい。
また、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性を改善するために、フィルム表面に凹凸を形成させることが好ましい。フィルム表面に凹凸を形成させる方法としては、一般にフィルム中に粒子を含有させる方法が用いられる。
前記粒子としては、平均粒子径が0.01〜10μmの内部析出粒子、無機粒子及び/又は有機粒子などの外部粒子が挙げられる。平均粒子径が10μmを越える粒子を使用すると、フィルムの欠陥が生じ易くなり、意匠性や透明性が悪化する傾向がある。一方、平均粒子径が0.01μm未満の粒子では、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性が低下する傾向がある。前記粒子の平均粒子径は、滑り性や巻き取り性などのハンドリング性の点から、下限は0.10μmとすることがさらに好ましく、特に好ましくは0.50μmである。一方、前記粒子の平均粒子径は、透明性や粗大突起によるフィルム欠点の低減の点から、上限は5μmとすることがさらに好ましく、特に好ましくは2μmである。
なお、粒子の平均粒子径は、少なくとも200個以上の粒子を電子顕微鏡法により複数枚写真撮影し、OHPフィルムに粒子の輪郭をトレースし、該トレース像を画像解析装置にて円相当径に換算して算出する。
前記外部粒子としては、例えば、湿式及び乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレー、ヒドロキシアパタイト等の無機粒子及びスチレン、シリコーン、アクリル酸類等を構成成分とする有機粒子等を使用することができる。なかでも、乾式、湿式及び乾式コロイド状シリカ、アルミナ等の無機粒子及びスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼン等を構成成分とする有機粒子等が、好ましく使用される。これらの内部粒子、無機粒子及び/又は有機粒子は二種以上を、本願発明で規定した特性を損ねない範囲内で併用してもよい。
さらに、前記粒子のフィルム中での含有量は0.001〜10質量%の範囲であることが好ましい。0.001質量%未満の場合、フィルムの滑り性が悪化したり、巻き取りが困難となったりするなどハンドリング性が低下しやすくなる。一方、10質量%を越えると、粗大突起の形成、製膜性や透明性の悪化などの原因となりやすい。
また、フィルム中に含有させる粒子は、一般的には屈折率がポリエステルと異なるため、フィルムの透明性を低下させる要因となる。
成型品は意匠性を高めるために、フィルムを成型する前にフィルム表面に印刷が施される場合が多い。このような印刷層は、成型用フィルムの裏側に施されることが多いため、印刷鮮明性の点から、フィルムの透明性が高いことが要望されている。
そのため、フィルムのハンドリング性を維持しながら、高度な透明性を得るために、主層の基材フィルム中に実質的に粒子を含有させず、厚みが0.01〜5μmの表面層にのみ粒子を含有させた積層構造を有する積層フィルムを用いることが有効である。
なお、上記でいう「基材フィルム中に実質的に粒子を含有させず」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に検出限界以下となる含有量を意味する。これは意識的に粒子を基材フィルムに添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分などが混入する場合があるためである。
厚みの薄い表面層は、コーティング法によって形成させる。コーティング法の場合、粒子を含有する密着性改質樹脂からなる組成物を塗布層として用いることで、印刷層との密着性も改良することができる。前記の密着性改質樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系重合体および/またはそれらの共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる樹脂を用いる。
さらに、主層のポリエステルフィルムと密着性改質層との密着性をさらに向上させるために、予め主層のポリエステルフィルム表面を表面処理し、この表面処理面に密着性改質層を設けてもよい。表面処理の方法としては、例えば、(1)コロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線(UV)照射処理、放射線(EB)照射処理などの活性エネルギー線照射による方法、(2)火炎処理、(3)PVD、CVDなどのベーパーデポジット法、などが挙げられる。
このような積層構造とすることで、フィルムのハンドリング性を維持しながら、フィルムの厚みd(μm)に対するヘイズH(%)の比(H/d)を0.010未満とすることができる。
前記成型用ポリエステルフィルムは、特に透明性が必要とされる用途に使用する場合には、フィルムの厚みd(μm)に対するヘイズH(%)の比(H/d)を0.010未満とすることが、透明性及び印刷鮮明性の点から好ましい。前記H/dは、0を越え0.010未満であることがより好ましく、特に好ましくは0を越え0.009以下である。なお、本願発明においては、前記H/dの数値は小数第3位で記載しているが、小数第4位以降は四捨五入せず、切り捨てる。例えば、0.0099であっても0.009とする。
前記H/dの下限値はゼロに近いほど透明性や印刷鮮明性の点から好ましい。しかしながら、重要最小限の凹凸をフィルム表面に形成しないと、滑り性や巻き性などのハンドリング性が悪化し、フィルム表面に傷がつく場合や生産性が悪化する場合がある。したがって、H/dの下限値を0.001とすることが好ましく、特に好ましくは0.005である。また、バックライトを用いる透光銘板の場合には、より高度な透明性が要求されるので、前記H/dはさらにゼロに近いほど好ましい。
前記表面層に含有させる粒子としては、前記で記載した粒子と同様のものを使用することができる。粒子のなかでも、シリカ粒子、ガラスフィラー、シリカ−アルミナ複合酸化物粒子は屈折率がポリエステルに比較的近いため、透明性の点から特に好適である。
また、前記表面層に平均粒子径が10μmを越える粒子を含有させると、フィルム表面に粗大突起が形成される頻度が増加し、意匠性が悪化する傾向がある。一方、平均粒子径が0.01μm未満の粒子では、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性が低下する傾向がある。前記粒子の平均粒子径の好ましい範囲は、主層の基材フィルム中に粒子を含有させる場合と同じである。
さらに、前記表面層における粒子含有量は、0.01〜25質量%の範囲であることが好ましい。0.01質量%未満の場合、フィルムの滑り性が悪化したり、巻き取りが困難となったりするなどハンドリング性が低下しやすくなる。一方、25質量%を越えると、透明性や塗布性が悪化しやすくなる。
本発明のポリエステルフィルムは、他の機能を付与するために、種類の異なるポリエステルを用い、公知の方法で積層構造とすることができる。かかる積層フィルムの形態は、特に限定されないが、例えば、A/Bの2種2層構成、B/A/B構成の2種3層構成、C/A/Bの3種3層構成の積層形態が挙げられる
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、二軸延伸フィルムであることが重要である。本発明においては、二軸延伸による分子配向により、前記のフィルムの微小張力(初期荷重49mN)下での熱変形率を本発明の範囲内に制御することができ、未延伸シートの欠点である耐溶剤性や寸法安定性が改善される。すなわち、未延伸シートの成型性の良さを維持しつつ、未延伸シートの欠点である耐溶剤性や耐熱性を改善したことが本発明の特徴の一つである。
前記二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法として、例えばポリエステル樹脂を必要に応じて乾燥した後、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸シートを得た後、かかる未延伸シートを二軸延伸する方法を用いる。
二軸延伸方法としては、未延伸シートをフィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)に延伸、熱処理し、目的とする面内配向度を有する二軸延伸フィルムを得る方法が採用される。これらの方式の中でも、フィルム品質の点で、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸するMD/TD法、又は幅方向に延伸した後、長手方向に延伸するTD/MD法などの逐次二軸延伸方式、長手方向及び幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方式が望ましい。また、同時二軸延伸法の場合、リニアモーターで駆動するテンターを用いてもよい。さらに、必要に応じて、同一方向の延伸を多段階に分けて行う多段延伸法を用いても構わない。
二軸延伸する際のフィルム延伸倍率としては、長手方向と幅方向に1.6〜4.2倍とすることが好ましく、特に好ましくは1.7〜4.0倍である。この場合、長手方向と幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよいし、同一倍率としてもよい。長手方向の延伸倍率は2.8〜4.0倍、幅方向の延伸倍率は3.0〜4.5倍で行うことがより好ましい。
本発明の成型用ポリエステルフィルムを製造する際の延伸条件は、本発明で規定した上記特性を満足させるために、例えば、下記の条件を採用することが選択することが好ましい。
縦延伸においては、後の横延伸がスムースにできるように、延伸温度は50〜110℃、延伸倍率は1.6〜4.0倍とすることがさらに好ましい。
通常、ポリエチレンテレフタレートを延伸する際に、適切な条件に比べ延伸温度が低い場合は、横延伸の開始初期で急激に降伏応力が高くなるため、延伸ができない。また、たとえ延伸ができても厚みや延伸倍率が不均一になりやすいため好ましくない。
また、適切な条件に比べ延伸温度が高い場合は初期の応力は低くなるが、延伸倍率が高くなっても応力は高くならない。そのため、25℃における100%伸張時応力が小さいフィルムとなる。よって、最適な延伸温度をとることにより、延伸性を確保しながら配向の高いフィルムを得ることができる。
しかしながら、前記共重合ポリエステルが共重合成分を1〜40モル%含む場合、降伏応力をなくすように延伸温度を高くしていくと、延伸応力は急激に低下する。特に、延伸の後半でも応力が高くならないため、配向が高くならず、25℃における100%伸張時応力が低下する。
このような現象は、フィルムの厚さが60〜500μmで発生しやすく、特に厚みが100〜300μmのフィルムで顕著に見られる。そのため、本発明の共重合したポリエステルを用いたフィルムの場合、横方向の延伸温度は、以下の条件とすることが好ましい。
まず、予熱温度は50℃〜150℃とすることが好ましい。次いで、横延伸の前半部では延伸温度は予熱温度に対して−20℃〜+25℃とすることが好ましく、特に好ましくは−15℃〜+25℃とする。また、横延伸の後半部では、延伸温度は前半部の延伸温度に対して0℃〜−40℃とすることが好ましく、特に好ましくは−10℃〜−40℃とする。このような条件を採用することにより、横延伸の前半では降伏応力が小さいため延伸しやすく、また後半では配向しやすくなる。なお、横方向の延伸倍率は、2.5〜5.0倍とすることが好ましい。その結果、本発明で規定したF10025やF100100を満足するフィルムを得ることが可能である。
さらに、二軸延伸後にフィルムの熱処理を行うが、この熱処理は、オーブン中で行う。また、熱処理温度及び熱処理時間は必要とされる熱収縮率のレベルによって、下記の範囲内で設定する。熱処理温度は120〜245℃の範囲が好ましく、特に好ましくは150〜240℃である。熱処理時間は、1〜60秒間行うことが好ましい。なお、かかる熱処理はフィルムをその長手方向及び/又は幅方向に弛緩させつつ行ってもよい。なお、本発明においては、前記熱処理温度は前記の熱処理温度の範囲内でも、使用するフィルム原料の組成によって好適な範囲が異なるので、フィルムの面配向度が0.095以下となるように熱処理温度を設定することが重要である。その理由は、後で詳述する。
フィルムの長手方向及び横方向の150℃での熱収縮率を小さくするためには、熱処理温度を高くすること、熱処理時間を長くすること、弛緩処理を行うことが好ましい。具体的には、フィルムの長手方向及び幅方向における150℃での熱収縮率を6.0%以下とするためには、熱処理温度は200〜220℃で、弛緩率1〜8%で弛緩させながら行うことが好ましい。さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、その後熱処理を行ってもよい。
フィルムの長手方向及び横方向の150℃での熱収縮率を小さくするために、製造ラインを長くして熱処理時間を長くすることは設備上の制約により困難である。また、フィルムの送り速度を遅くすると、生産性が低下してしまう。このように、延伸区間までは区間温度を100℃近傍とかなり低温にすることが重要である。一方、熱固定では200℃程度の高温に速やかに昇温することが重要である。したがって、該課題を解決する方策として熱処理ゾーンに遠赤外線ヒーターを設置し加熱を補強することが好ましい実施態様として推奨される。
さらに、延伸区間と熱固定区間の間に1m以上の断熱区間を設け、断熱区間以後の加熱効率を上げる方法が挙げられる。具体的には、区間ごとの仕切りを強化して熱流の漏れを小さくすることで加熱効率を上げることができる。また、風量のバランス及び強さを調整することにより、風量を確保しつつ、オーブン内圧力を調整し、熱流の漏れを抑制する方法を用いてもよい。また、熱風加熱では不足する加熱に関しては強加熱区間に赤外線ヒーターを付加する方法も好適である。そのほかに、熱固定区間の長さ、区画数を増やすことで、加熱量を増加させる。などの方法も有効である。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)が、いずれも100℃において10〜1000MPaで、かつ180℃において5〜40MPaである。このような貯蔵粘弾性率(E′)を達成するためには、前記の共重合ポリエステルを構成成分として含む二軸延伸フィルムを製造する際に、フィルムの面配向度を特定範囲に制御することも重要である。すなわち、フィルムの面配向度を0.095以下に低くすることが好ましく、特に好ましくは0.001〜0.090に制御する。このように面配向度を低くすることにより、前記のフィルムの貯蔵弾性率(E′)を小さくすることができる。
しかしながら、単にフィルムの面配向度を低くしただけでは、180℃におけるフィルムの貯蔵粘弾性率(E′)が小さくなりすぎる。本発明の好ましい実施態様である分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを共重合成分とする共重合ポリエステルをフィルム原料として用いる場合、該グリコール類の分子構造の嵩高さにより高温での分子運動性を抑制することができる。さらに、特定の延伸条件を用いてフィルムの面配向度を低くすることによる相乗手段により、前記の180℃におけるフィルムの貯蔵粘弾性率(E′)を前記範囲に制御することができる。また、好ましい実施態様として例示した1,3−プロパンジオール残基や1,4−ブタンジオール残基の併用効果は、該成分導入により共重合ポリエステルの分子中に微結晶が形成され前記の180℃の貯蔵粘弾性率(E′)が小さくなりすぎることを抑制する効果が発現されたためであると推察される。
上記のごとく二軸配向ポリエステルフィルムの面配向度を低いレベルに設定することが好ましい実施態様の一つである。一般に、面配向度を下げる手段としては延伸倍率を下げる方法と熱固定温度を上げる方法が知られているが、前者の方法はフィルムの厚み斑が悪化するので好ましくない。したがって、後者の方法が好ましい。後者の場合は前記の課題が生ずるが、好ましい実施態様として例示した方法等で回避できる。また、本発明においては二軸配向ポリエステルフィルムとして共重合ポリエステルを用いる必要があり、融点が均一重合体に比して低いため、熱固定温度を高くすると、横延伸工程でフィルムを保持するクリップにフィルムが融着しやすくなる。したがって、テンター出口でクリップがフィルムを開放するときにクリップ近傍が充分に冷却することが重要である。具体的には、フィルムとクリップとの融着を防止するために、(1)クリップが加熱されにくいように、クリップ部分に熱遮蔽壁を設ける方法、(2)クリップ冷却機構をテンターに付加する方法、(3)冷却能力の強化を行うために熱固定後の冷却区間を長く設定し、フィルム全体の冷却を十分行う方法、(4)冷却区間の長さ、区画数を増やすことで、冷却効率を増加させる方法、(5)クリップの戻り部分が炉の外側を走行するタイプを用いてクリップの冷却を強化する方法、などを採用することが好ましい。
また、本発明の成型用ポリエステルフィルムは、波長350nmにおける光線透過率が1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.6%以下である。該特性の付与により成型用ポリエステルフィルム、特に、該フィルムに印刷を施した場合に印刷層の耐光性が向上する。
上記の波長350nmにおける光線透過率を1%以下に制御する方法は限定なく任意であるが、成型用ポリエステルフィルムの構成層のいずれかに紫外線吸収剤を配合する方法が推奨される。該方法において用いられる紫外線吸収剤は前記の特性を付与できるものであれば限定なく適宜選択すれば良い。無機系、有機系のどちらでも構わない。有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系等、及びその組み合わせが挙げられる。耐熱性の観点からはベンゾトアゾール系、環状イミノエステル系が好ましい。2種以上の紫外線吸収剤を併用した場合には、別々の波長の紫外線を同時に吸収させることができるので、いっそう紫外線吸収効果を改善することができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチル−3′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−又は2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−m−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ベンゾイルフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−o−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−シクロヘキシル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−(又はm−)フタルイミドフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、 2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)2,2′−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−エチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−テトラメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−デカメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(4,4′−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2,6−又は1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(1,4−シクロヘキシレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼン、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、および2,4,6−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、 2,8−ジメチル−4H,6H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d′)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジメチル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d′)ビス−(1,3)−オキサジン−4,9−ジオン、2,8−ジフェニル−4H,8H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジフェニル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d′)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、6,6′−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ビス(2−エチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−エチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ブチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ブチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−オキシビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−スルホニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−カルボニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7′−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7′−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7′−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、および6,7′−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが挙げられる。
上記の有機系紫外線吸収剤をフィルムに配合する場合は、押し出し工程で高温に晒されるので、紫外線吸収剤は分解開始温度が290℃以上の紫外線吸収剤を用いるのが製膜時の工程汚染を少なくする上で好ましい。分解開始温度が290℃以下の紫外線吸収剤を用いると製膜中に紫外線吸収剤の分解物が製造装置のロール群等に付着し、強いてはフィルムに再付着したり、キズを付けたりして光学的な欠点となるため好ましくない。
無機系紫外線吸収剤としては、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物の超微粒子類が挙げられる。
上記の波長350nmにおける光線透過率を1%以下にするもう一つの方法として、この波長域に吸収を有する、例えばナフタレンジカルボン酸等のポリエステルを形成する化合物をポリエステルの共重合成分として用いる方法を挙げることができる。
以上説明したように、本発明の成型用ポリエステルフィルムを用いることで、従来の二軸配向ポリエステルフィルムでは成型することが困難であった、成型時の成型圧力が10気圧以下の低圧下での真空成型や圧空成型などの成型方法においても、仕上がり性の良好な成型品を得ることができる。また、これらの成型法は成型コストが安いので、成型品の製造における経済性において優位である。したがって、これらの成型法に適用することが本発明の成型用ポリエステルフィルムの効果を最も有効に発揮することができる。
一方、金型成型は金型や成型装置が高価であり、経済性の点では不利であるが、前記の成型法よりも複雑な形状の成型品が高精度に成型されるという特徴がある。そのため、本発明に用いられる成型用ポリエステルフィルムを用いて金型成型した場合は、従来の二軸配向ポリエステルフィルムに比べて、より低い成型温度で成型が可能で、かつ成型品の仕上がり性が改善されるという顕著な効果が発現される。
さらに、このように成型された成型品は、常温雰囲気下で使用する際に、弾性および形態安定性(熱収縮特性、厚み斑)に優れ、そのうえ耐溶剤性や耐熱性に優れ、さらに環境負荷も小さいので、家電用銘板、自動車用銘板、ダミー缶、建材、化粧板、化粧鋼鈑、転写シートなどの成型部材として好適に使用することができる。
なお、本発明の成型用ポリエステルフィルムは、前記の成型方法以外にも、プレス成型、ラミネート成型、インモールド成型、絞り成型、折り曲げ成型などの成型方法を用いて成型する成型用材素材としても好適である。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、各実施例で得られたフィルム特性は以下の方法により測定、評価した。
(1)固有粘度
チップサンプル0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
(2)厚みムラ
横延伸方向に3m、縦延伸方向に5cmの長さの連続したテープ状サンプルを巻き取り、フィルム厚み連続測定機(アンリツ株式会社製)にてフィルムの厚みを測定し、レコーダーに記録する。チャートより、厚みの最大値(Tmax)、最小値(Tmin)、平均値(Tav)を求め、下記式にて厚みムラ(%)を算出した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。また、横延伸方向の長さが3mに満たない場合は、つなぎ合せて行う。なお、つなぎの部分における測定データは削除した。
厚みムラ(%)=((Tmax−Tmin)/Tav)×100
(3)ヘイズ
JIS−K7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
(4)フィルムの厚み
ミリトロンを用い、1枚当たり5点を計3枚の15点を測定し、その平均値を求めた。
(5)100%伸張時応力、破断伸度
二軸延伸フィルムの長手方向及び幅方向に対して、それぞれ長さ180mm及び幅10mmの短冊状に試料を片刃カミソリで切り出した。次いで、引っ張り試験機(東洋精機株式会社製)を用いて短冊状試料を引っ張り、得られた荷重−歪曲線から各方向の100%伸張時応力(MPa)及び破断伸度(%)を求めた。
なお、測定は25℃の雰囲気下で、初期長40mm、チャック間距離100mm、クロスヘッドスピード100mm/min、記録計のチャートスピード200mm/min、ロードセル25kgfの条件にて行った。なお、この測定は10回行い平均値を用いた。
また、100℃の雰囲気下でも、上記と同様の条件で引っ張り試験を行った。この際、試料は100℃の雰囲気下で30秒保持した後、測定を行った。なお、測定は10回行い平均値を用いた。
(6)150℃での熱収縮率
フィルムの長手方向及び幅方向に対し、それぞれ長さ250mm及び幅20mmの短冊状試料を切り出す。各試料の長さ方向に200mm間隔で2つの印を付け、5gfの一定張力(長さ方向の張力)下で2つの印の間隔Aを測定する。続いて、短冊状の各試料の片側をカゴに無荷重下でクリップにて吊るし、150℃の雰囲気下のギアオーブンに入れると同時に時間を計る。30分後、ギアオーブンからカゴを取り出し、30分間室温で放置する。次いで、各試料について、5gfの一定張力(長さ方向の張力)下で、2つの印の間隔Bを金指により0.25mm単位で読み取る。読み取った間隔A及びBより、各試料の150℃での熱収縮率を下記式により算出する。
熱収縮率(%)=((A−B)/A)×100
(7)貯蔵粘弾性率(E′)
動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御(株)製、DVA 225)を用い、下記の条件下で、フィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)における100℃及び180℃での貯蔵弾性率(E′)を求めた。
(a)サンプル幅:5mm
(b)測定温度範囲:−50〜250℃
(c)周波数:10Hz
(d)昇温速度:5℃/分
(8)175℃におけるフィルムの熱変形率
熱機械分析装置(セイコー電子(株)製、TMA SS/100)を用い、下記の条件下で、温度変化にともなうフィルムの長手方向の寸法変化を連続的に測定し、175℃におけるフィルムの長手方向の熱変形率を求めた。
(a)サンプル幅:2mm
(b)測定温度範囲:30〜250℃、
(c)初期荷重:49mN(5gf)
(d)昇温速度:5℃/分
(9)面配向度(ΔP)
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて、フィルムの長手方向の屈折率(Nz)、幅方向の屈折率(Ny)、厚み方向の屈折率(Nz)を測定し下記式から面配向度(ΔP)を算出した。
ΔP=((Nx+Ny)/2)−Nz
(10)波長350nmにおける光線透過率
分光光度計(島津製作所(株)製、UV−1200)を用いて、波長350nmの紫外領域における光線透過率を測定した。
(11)耐光性
暗箱中で蛍光灯ランプ(松下電器(株)社製、U型蛍光灯FUL9EX)の直下3cmの位置に、オフセット印刷した印刷サンプルを、印刷サンプルの印刷面が裏側になるように置いた。次いで、連続2000時間の光照射を行い、印刷面側の光照射前後におけるカラー(a*、b*、L*)をもとに、JIS Z 8730に準拠し、色差(ΔE値)を測定した。色差(ΔE値)が小さいほど、光照射前後における色の変化が小さい、すなわち耐光性に優れていることを意味する。耐光性の合格レベルは、色差(ΔE値)で0.5以下である。なお、色差(ΔE値)は下記の式で算出される。
ΔE=√(Δa+Δb+ΔL
(12)成型性
(a)真空成型性
フィルムに5mm四方のマス目印刷を施した後、500℃に加熱した赤外線ヒーターでフィルムを10〜15秒加熱した後、金型温度30〜100℃で真空成型を行った。なお、加熱条件は各フィルムに対し、上記範囲内で最適条件を選択した。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が50mmであり、底面部は直径が40mmで、深さが50mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。
最適条件下で真空成型した成型品5個について成型性及び仕上がり性を評価し、下記基準にてランク付けを行った。なお、◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
◎:(i)成型品に破れがなく、
(ii)角の曲率半径が1mm以下で、かつ印刷ずれが0.1mm以下であり、
(iii)さらに×に該当する外観不良がないもの
○:(i)成型品に破れがなく、
(ii)角の曲率半径が1mmを超え1.5mm以下、または印刷ずれが0.1m
mを超え0.2mm以下で、
(iii)さらに×に該当する外観不良がなく、実用上問題ないレベルのもの
×:成型品に破れがあるもの、または破れがなくとも以下の項目(i)〜(iv)のいず
れかに該当するもの
(i)角の曲率半径が1.5mmを超えるもの
(ii) 大きな皺が入り外観が悪いもの
(iii)フィルムが白化し透明性が低下したもの
(iv) 印刷のずれが0.2mmを超えるもの
(b)圧空成型性
フィルムに5mm四方のマス目印刷を施した後、500℃に加熱した赤外線ヒーターでフィルムを10〜15秒加熱した後、金型温度30〜100℃で、4気圧の加圧下で圧空成型を行った。なお、加熱条件は各フィルムに対し、上記範囲内で最適条件を選択した。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が60mmであり、底面部は直径が55mmで、深さが50mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。
最適条件下で圧空成型した成型品5個について成型性及び仕上がり性を評価し、下記基準にてランク付けをした。なお、◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
◎:(i)成型品に破れがなく、
(ii)角の曲率半径が1mm以下で、かつ印刷ずれが0.1mm以下であり、
(iii)さらに×に該当する外観不良がないもの
○:(i)成型品に破れがなく、
(ii)角の曲率半径が1mmを超え1.5mm以下、または印刷ずれが0.1m
mを超え0.2mm以下で、
(iii)さらに×に該当する外観不良がなく、実用上問題ないレベルのもの
×:成型品に破れがあるもの、または破れがなくとも以下の項目(i)〜(iv)のいず
れかに該当するもの
(i)角の曲率半径が1.5mmを超えるもの
(ii) 大きな皺が入り外観が悪いもの
(iii)フィルムが白化し透明性が低下したもの
(iv) 印刷のずれが0.2mmを超えるもの
(c)金型成型性
フィルムに印刷を施した後、100〜140℃に加熱した熱板で4秒間接触加熱後、金型温度30〜70℃、保圧時間5秒にてプレス成型を行った。なお、加熱条件は各フィルムに対し、上記範囲内で最適条件を選択した。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が50mmであり、底面部は直径が40mmで、深さが30mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。
最適条件下で金型成型した成型品5個について成型性及び仕上がり性を評価し、下記基準にてランク付けをした。なお、◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
◎:(i)成型品に破れがなく、
(ii)角の曲率半径が1mm以下で、かつ印刷ずれが0.1mm以下であり、
(iii)さらに×に該当する外観不良がないもの
○:(i)成型品に破れがなく、
(ii)角の曲率半径が1mmを超え1.5mm以下、または印刷ずれが0.1m
mを超え0.2mm以下で、
(iii)さらに×に該当する外観不良がなく、実用上問題ないレベルのもの
×:成型品に破れがあるもの、または破れがなくとも以下の項目(i)〜(iv)のいず
れかに該当するもの
(i)角の曲率半径が1.5mmを超えるもの
(ii) 大きな皺が入り外観が悪いもの
(iii)フィルムが白化し透明性が低下したもの
(iv) 印刷のずれが0.2mmを超えるもの
(13)耐溶剤性
25℃に調温したトルエンに試料を30分間浸漬し、浸漬前後の外観変化について下記の基準で判定し、○を合格とした。なお、ヘイズ値は前記の方法で測定した。
○:外観変化がほとんど無く、ヘイズ値の変化が1%未満
×:外観変化が認められる、あるいはヘイズ値の変化が1%以上
(14)印刷品位
印刷前のフィルムを90℃で30分熱処理し、次いで4色のスクリーン印刷を行った。
さらに、印刷層を設けたフィルムを80℃で30分乾燥した。印刷品位の評価は、下記のクリアー感、印刷適性、印刷ずれなどの印刷外観を、印刷面からではなく、裏側からフィルムを通して目視で判定した。判定基準は、全ての観点から問題無いものを○、少なくとも1つの点で問題あるものを×とした。
a.クリアー感:印刷した図柄が、基材フィルムや塗布層に遮られ
ることなく、鮮明に見えること。
b.印刷適性 :印刷インキの転移不良による、色むらやヌケが生
じないこと
c.印刷のズレ:印刷のズレが目視で判別できないこと。
参考例1
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位40モル%及びネオペンチルグリコール単位60モル%を構成成分とする、固有粘度が0.69dl/gの共重合ポリエステルのチップ(A)と、固有粘度が0.69dl/gで、かつ平均粒子径(SEM法)が1.5μmの無定形シリカを0.04質量%含有するポリエチレンテレフタレートのチップ(B)をそれぞれ乾燥させた。さらに、チップ(A)とチップ(B)を25:75の質量比となるように混合した。次いで、これらのチップ混合物を押出し機によりTダイのスリットから270℃で溶融押出し、表面温度40℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に90℃で3.3倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、120℃で10秒間予熱し、横延伸の前半部を110℃、後半部を100℃で3.9倍延伸した。さらに、横方向に7%の弛緩処理を行いながら235℃で熱固定処理を行い、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
比較例1
参考例1において、熱固定温度を205℃に変更すること以外は、参考例1と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
比較例2
市販のA−PETの未延伸シート(東洋紡績(株)製、PETMAX(R)A560GE0R、厚み:200μm)の特性評価を行った。
比較例3
市販のポリカーボネートの未延伸シート(帝人化成(株)製、パンライトシート(R) PC2151、厚み:200μm)の特性評価を行った。
比較例4
アクリルの未延伸シート(三菱化成(株)製、アクリプレン(R) HBS006、厚み:125μm)の特性評価を行った。
参考例2
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位70モル%及びネオペンチルグリコール単位30モル%を構成成分とする、固有粘度が0.77dl/gの共重合ポリエステルのチップ(C)と、固有粘度が0.63dl/gで、かつ平均粒子径(SEM法)が1.5μmの無定形シリカを0.04質量%含有するポリエチレンテレフタレートのチップ(D)、及び固有粘度が0.75dl/gで、かつ平均粒子径(SEM法)が1.5μmの無定形シリカを0.04質量%含有するポリプロピレンテレフタレートのチップ(E)をそれぞれ乾燥させた。さらに、チップ(C)、チップ(D)、及びチップ(E)を50:10:40の質量比となるように混合した。次いで、これらのチップ混合物を押出し機によりTダイのスリットから270℃で溶融押出し、表面温度40℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に83℃で3.5倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、95℃で10秒予熱し、横延伸の前半部を80℃、後半部を75℃で3.9倍延伸した。さらに、横方向に7%の弛緩処理を行いながら200℃で熱固定処理を行い、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
参考例3
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位70モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール単位30モル%を構成成分とする、固有粘度が0.71dl/gの共重合ポリエステルのチップ(F)と、ポリエチレンテレフタレートのチップ(B)を50:50の質量比となるように混合し乾燥した。次いで、これらのチップ混合物を押出し機によりTダイのスリットから270℃で溶融押出し、表面温度40℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に90℃で3.5倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、120℃で10秒予熱し、横延伸の前半部を105℃、後半部を100℃で3.9倍延伸した。さらに、横方向に7%の弛緩処理を行いながら220℃で熱固定処理を行い、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
比較例5
参考例3において、熱固定温度を205℃に変更すること以外は参考例3と同様にして、厚さ188μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
参考例4
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位40モル%及びネオペンチルグリコール単位60モル%を構成成分とする、固有粘度0.69dl/gの共重合ポリエステルのチップ(A)と、固有粘度が0.69dl/gで、かつ平均粒子径(SEM法)が1.5μmの無定形シリカを0.04質量%含有するポリブチレンテレフタレートのチップ(G)を乾燥させた。次いで、チップ(A)、チップ(G)、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(I)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、チヌビン326)を、25.0:74.5:0.5の質量比となるように混合した。次いで、これらの混合物を押出し機によりTダイのスリットから265℃で溶融押出し、表面温度20℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に80℃で3.3倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、95℃で10秒予熱し、横延伸の前半部を85℃、後半部を80℃で3.8倍延伸した。さらに、横方向に7%の弛緩処理を行いながら200℃で熱固定処理を行い、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
比較例6
参考例4において、熱固定温度を185℃に変更すること以外は参考例4と同様にして、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
実施例1
(塗布液の調整)
イソプロパノール40質量%水溶液に共重合ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、バイロナールMD−1250)を固形分で3.15質量%,末端イソシアネート基を親水性基でブロックした水溶性ウレタン樹脂(第一工業製薬(株)製、エラストロンH−3)を固形分で5.85質量%、平均粒径1.0μmのシリカ粒子を全樹脂に対し0.8質量%及び平均粒径0.05μmのシリカ粒子を全樹脂に対し10質量%含有するように、塗布液を調整した。得られた塗布液を、5質量%の重曹水溶液を用いてpH6.5に調整した。次いで、バッグ式フィルター(住友スリーエム(株)製、リキッドフィルターバッグ)で濾過し、塗布液循環系ストックタンク内で、15℃で2時間撹拌した。
(積層フィルムの製造)
参考例1において、ポリエチレンテレフタレートのチップ(B)の代わりにポリエチレンテレフタレートのチップ(H)を用いる以外は参考例1と同様にして、無定形の未延伸シートを得た。但し、最終のフィルム厚みが188μmになるように、溶融樹脂の吐出量を調整した。
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に90℃で3.3倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムの片面に、上記塗布液をリバースキスコート法により延伸前の樹脂固形分の厚みが0.9μmとなるように塗布した。塗布層を有する積層フィルムを乾燥しつつテンターに導き、120℃で10秒間予熱し、横延伸の前半部を110℃、後半部を100℃で3.9倍延伸した。さらに、横方向に7%の弛緩処理を行いながら235℃で熱固定処理を行い、片面に塗布層を有する、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
比較例7
ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを仕込み、触媒として酢酸マグネシウム(M)及び三酸化アンチモン、添加剤としてリン酸(P)、平均粒子径(SEM法)が1.5μmの湿式法シリカ(0.08質量%)を添加して、定法によりポリエチレンテレフタレートを重合し、ポリエチレンテレフタレート(PET)のチップ(J)を得た。得られたPETのチップ(J)は、固有粘度が0.65dl/g、カルボキシル末端基濃度が25eq/ton、M/Pモル比が2.5であった。
前記のPETのチップ(J)を180℃で4時間真空乾燥後、溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加(3.0kV)により鏡面冷却ドラムに密着、冷却固化して未延伸シートを作成した。この未延伸シートをまず温度105℃に加熱したロールにて長手方向に3.0倍の延伸を行い、さらに延伸温度125℃で幅方向に3.2倍延伸した後、195℃にて、幅方向に6%の弛緩、6秒間の熱処理を行い、厚さ100μm、面配向度0.138の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
なお、本比較例7は特開2001−347565号公報の実施例1を追試し、先行技術との対比を行った実験である。
参考例1〜4、実施例1及び比較例1、5、6、7に関しては、使用したポリマーの原料組成とポリマー特性を表1に、フィルムの製造条件と特性を表2〜5に示す。また、比較例2〜4のフィルム特性を表6に示す。
Figure 2006299282
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参考例1〜4及び実施例1で得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、成型時の成型圧力の低い真空成型法や圧空成型法で成型しても仕上がり性の良好な成型品が得られた。また、得られた成型品の耐溶剤性や寸法安定性も良好であった。また、参考例4で得られたフィルムは、紫外線吸収剤を含有しているため、波長350nmにおける紫外線領域での光線透過率が0.6%であった。そのため、連続2000時間の光照射前後における印刷面側の色差が0.5以下であり、参考例1〜3で得られたフィルムより色差が小さく、耐光性に優れていた。また、実施例1で得られたフィルムは、基材フィルムにシリカ粒子を含有する参考例1で得られたフィルムと比べ透明性に優れていた。
一方、比較例1、5、6及び7で得られたフィルムは、真空成型法や圧空成型法での成型性に劣り成型品の仕上がり性が良くなかった。さらに、これらの比較例で得られたフィルムは参考例1〜4で得られたフィルムに比べて、金型成型法での仕上がり性が劣っていた。また、比較例2〜4の未延伸シートは、成型性は良好であるが耐溶剤性や寸法安定性に劣っていた。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、加熱成型時の成型性、特に低い温度および低い圧力での成型性に優れているので幅広い成型方法に適用ができ、かつ成型品として常温雰囲気下で使用する際に、弾性および形態安定性(熱収縮特性、厚み斑)に優れ、そのうえ耐溶剤性や耐熱性に優れ、さらに環境負荷が小さいという利点がある。また、前記フィルムの印刷性改良層に、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷など各種の印刷加飾法、及び捺染、転写、塗装、ペインティング、蒸着、スパッタリング、CVD、ラミネートなどの加飾方法により印刷層、図柄層などの意匠を施し、次いで金型成型、圧空成型、真空成形などの各種成型法により成型する3次元加飾方法に適し、かつインモールド成型性やエンボス成型性に優れている。そのため、家電や自動車の銘板用部材又は建材用部材として好適であり、産業界への寄与は大きい。

Claims (7)

  1. 共重合ポリエステルとホモポリエステルを構成成分とし、実質的に粒子を含有しない二軸配向ポリエステルフィルムに、厚みが0.01〜5μmの塗布層を積層してなる成型用ポリエステルフィルムであって、
    塗布層は、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系重合体および/またはそれらの共重合体から選ばれた少なくとも1種の樹脂と粒子を含有する組成物からなり、
    前記フィルムは、(1)フィルムの長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、いずれも25℃において10〜1000MPa及び100℃において1〜100MPaであり、(2)フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)が、いずれも100℃において10〜1000MPaで、かつ180℃において5〜40MPaであり、(3)フィルムの長手方向における微小張力下での熱変形率が、175℃において−3%〜+3%である、ことを特徴とする成型用ポリエステルフィルム。
  2. 共重合ポリエステルが、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを含むグリコール成分を構成成分とすることを特徴とする請求項1記載の成型用ポリエステルフィルム。
  3. ホモポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、またはポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1または2に記載の成型用ポリエステルフィルム。
  4. 成型用ポリエステルフィルムの融点が200〜245℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
  5. 成型用ポリエステルフィルムの面配向度が0.095以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
  6. 成型用ポリエステルフィルムの長手方向及び横方向の150℃での熱収縮率が6.0%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
  7. 成型用ポリエステルフィルムの厚みd(μm)に対するヘイズH(%)の比(H/d)が0.010未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
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