本発明における成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向及び幅方向における25℃での100%伸張時応力(F10025)がいずれも10〜1000MPaであり、かつフィルムの長手方向及び幅方向における100℃での100%伸張時応力(F100100)がいずれも1〜100MPaであることが重要である。F10025またはF100100が前記範囲の上限を超えると成型性が低下するので好ましくない。一方、前記範囲の下限未満では、成型品を使用する際の弾性や形態安定性が低下するので好ましくない。
フィルムの長手方向及び幅方向におけるF10025は10〜500MPaが好ましく、10〜200MPaがより好ましく、10〜150MPaが特に好ましい。
また、フィルムの長手方向及び幅方向におけるF100100の上限は、成型性の点から、90MPaが好ましく、80MPaがより好ましく、70MPaが特に好ましい。一方、F100100の下限は、成型品を使用する際の弾性や形態安定性の点から、2MPaが好ましく、3MPaがより好ましく、5MPaが特に好ましい。
本発明における成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)が、いずれも100℃において10〜1000MPaで、かつ180℃において5〜40MPaであることが重要である。貯蔵粘弾性率(E′)を前記範囲内に制御することにより、成型性、特に低い温度および低い圧力での成型性が確保でき、未延伸シートでしか適用できなかった圧空成型法や真空成型法等の10気圧以下の低い成型圧力の成型法でも仕上がり性の良好な成型品が得られ、かつ寸法安定性の良好な成型品を得ることができる。
前記の100℃と180℃における貯蔵粘弾性率(E′)は、低温低圧下での成型性と、寸法安定性などに影響するパラメータである。特に、100℃における貯蔵粘弾性率(E′)は低温低圧下での成型性と関連があり、180℃における貯蔵粘弾性率(E′)は寸法安定性と関連があることを本発明者らは新たに知見した。前記の特定の温度における貯蔵粘弾性率(E′)が、前記のフィルム特性を発現させるための重要な指標になっている理由は明確ではないが、フィルムを構成するポリエステルに含まれる共重合成分の分子構造が寄与しているためと推定している。
フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)は、フィルムの両方向とも100℃において20〜900MPaが好ましく、30〜800MPaがより好ましく、40〜700MPaが特に好ましい。また、180℃における貯蔵粘弾性率(E′)は7〜38MPaが好ましく、9〜35MPaがより好ましく、10〜30MPaが特に好ましい。
また、本発明における成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向における熱変形率(初期荷重49mN)が、175℃において−3%〜+3%であることが重要である。フィルムの長手方向における熱変形率(初期荷重49mN)は、180℃において−3%〜+3%であることが好ましく、185℃において−3%〜+3%であることが特に好ましい。
ここで、フィルムの熱変形率は、熱機械分析装置(TMA)を用いて、初期荷重49mN、昇温速度5℃/分の条件で測定し、温度変化にともなうフィルムの寸法変化を測定し、175℃における熱変形率を求めたものである。フィルムの長手方向における熱変形率(初期荷重49mN)を前記範囲に制御することにより、成型品の耐溶剤性を改善することができる。さらに、圧空成型法や真空成型法等の10気圧以下の低い圧力で成型する方法でも、仕上がり性の良好な成型品が得られる。なお、ポリエステル、ポリカーボネート、あるいはアクリル系樹脂より得られた未延伸シートでは、175℃におけるフィルムの長手方向における熱変形率が、本願発明の範囲外となる。
フィルムの微小張力(初期荷重49mN)下での熱変形率と耐溶剤性という一見相互に無関係と考えられる特性が相関を示す理由は明確ではない。しかしながら、前記の理由として、本発明の成型用ポリエステルフィルムは二軸配向されているため、延伸による分子配向の発現により、耐溶剤性や耐熱変形性を改善することができたと推察している。
前記の(1)フィルムの長手方向及び幅方向における100%伸張時応力、(2)フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)、(3)フィルムの長手方向における微小張力下での熱変形率は、前記の範囲を同時に満足することが重要である。フィルムがこれらの特性を同時に満足することにより、前記の各種の市場要求を満足する効果を有する本発明の成型用ポリエステルフィルムを得ることができる。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、共重合ポリエステルを構成成分として含む二軸延伸ポリエステルフィルムであり、前記の特性を満足すれば、その構造、融点、分子量および組成等は限定されず任意である。以下に本発明の成型用ポリエステルフィルムの好ましい実施態様を記述する。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを含むグリコール成分とから構成される共重合ポリエステルを、二軸配向ポリエステルフィルムの原料の一部あるいは全部に用いることが好ましい。
前記共重合ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分が主としてテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体からなるが、全ジカルボン酸成分に対するテレフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸成分の量は70モル%以上、好ましくは85モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、とりわけ好ましくは100モル%である。
また、分岐状脂肪族グリコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオールなどが例示される。脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどが例示される。
これらのなかでも、ネオペンチルグリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。さらに、本発明においては、上記のグリコール成分に加えて1,3−プロパンジオールや1,4−ブタンジオールを共重合成分とすることが、より好ましい実施態様である。これらのグリコールを共重合成分として使用することは、前記の特性を付与するために好適であり、さらに、透明性や耐熱性にも優れ、密着性改質層との密着性を向上させる点からも好ましい。
さらに、必要に応じて、前記共重合ポリエステルに下記のようなジカルボン酸成分及び/又はグリコール成分を1種又は2種以上を共重合成分として併用してもよい。
テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体とともに併用することができる他のジカルボン酸成分としては、(1)イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル4,4′−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(2)シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(3)シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(4)p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
一方、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールとともに併用することができる他のグリコール成分としては、例えばペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコール及びそれらのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ダイマージオール等が挙げられる。
さらに、必要に応じて、前記共重合ポリエステルに、さらにトリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合させることもできる。
前記共重合ポリエステルを製造する際に用いる触媒としては、例えば、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、チタン/ケイ素複合酸化物、ゲルマニウム化合物などが使用できる。これらのなかでも、チタン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物が触媒活性の点から好ましい。
前記共重合ポリエステルを製造する際に、熱安定剤としてリン化合物を添加することが好ましい。前記リン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸などが好ましい。
前記共重合ポリエステルは、成型性、密着性、製膜安定性の点から、固有粘度が0.50dl/g以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.55dl/g以上、特に好ましくは0.60dl/g以上である。固有粘度が0.50dl/g未満では、成型性が低下する傾向がある。また、メルトラインに異物除去のためのフィルターを設けた場合、溶融樹脂の押出時における吐出安定性の点から、固有粘度の上限を1.0dl/gとすることが好ましい。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、前記共重合ポリエステルをそのままフィルム原料として用いてもよいし、共重合成分が多い共重合ポリエステルをホモポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)とブレンドして、共重合成分量を調整しても構わない。
特に、後者のブレンド法を用いてフィルムを製膜することによって、共重合ポリエステルのみを用いた場合と同等の柔軟性を維持しながら透明性と高い融点(耐熱性)を実現することができる。また、高融点のホモポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)のみを用いた場合に対し、高い透明性を維持しながら柔軟性と実用上問題のない融点(耐熱性)を実現することができる。
また、前記共重合ポリエステルと、ポリエチレンテレフタレート以外のホモポリエステル(例えば、ポリテトラメチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート)を少なくとも1種以上ブレンドして、本発明の成型用ポリエステルフィルムの原料として使用することは、成型性の点からもさらに好ましい。
前記のポリエステルフィルムの融点は、耐熱性及び成型性の点から、200〜245℃であることが好ましい。使用するポリマーの種類や組成、さらに製膜条件を前記融点の範囲内に制御することにより、成型性と仕上がり性とのバランスが取れ、高品位の成型品を経済的に生産することができる。ここで、融点とは、いわゆる示差走査熱量測定(DSC)の1次昇温時に検出される融解時の吸熱ピーク温度のことである。該融点は、示差走査熱量分析装置(デュポン製、V4.OB2000型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定して求めた。融点の下限値は、210℃がさらに好ましく、特に好ましくは230℃である。融点が200℃未満であると、耐熱性が悪化する傾向がある。そのため、成型時や成型品の使用時に高温にさらされた際に、問題となる場合がある。
前記融点の上限値は、耐熱性の点からは高いほうが良いが、ポリエチレンテレフタレート単位を主体とした場合、融点が245℃を超えるフィルムでは、成型性が悪化する傾向がある。また、透明性も悪化する傾向がある。さらに、高度な成型性や透明性を得るためには、融点の上限を240℃に制御することが好ましい。
また、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性を改善するために、フィルム表面に凹凸を形成させることが好ましい。フィルム表面に凹凸を形成させる方法としては、一般にフィルム中に粒子を含有させる方法が用いられる。
前記粒子としては、平均粒子径が0.01〜10μmの内部析出粒子、無機粒子及び/又は有機粒子などの外部粒子が挙げられる。平均粒子径が10μmを越える粒子を使用すると、フィルムの欠陥が生じ易くなり、意匠性や透明性が悪化する傾向がある。一方、平均粒子径が0.01μm未満の粒子では、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性が低下する傾向がある。前記粒子の平均粒子径は、滑り性や巻き取り性などのハンドリング性の点から、下限は0.10μmとすることがさらに好ましく、特に好ましくは0.50μmである。一方、前記粒子の平均粒子径は、透明性や粗大突起によるフィルム欠点の低減の点から、上限は5μmとすることがさらに好ましく、特に好ましくは2μmである。
なお、粒子の平均粒子径は、少なくとも200個以上の粒子を電子顕微鏡法により複数枚写真撮影し、OHPフィルムに粒子の輪郭をトレースし、該トレース像を画像解析装置にて円相当径に換算して算出する。
前記外部粒子としては、例えば、湿式及び乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレー、ヒドロキシアパタイト等の無機粒子及びスチレン、シリコーン、アクリル酸類等を構成成分とする有機粒子等を使用することができる。なかでも、乾式、湿式及び乾式コロイド状シリカ、アルミナ等の無機粒子及びスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼン等を構成成分とする有機粒子等が、好ましく使用される。これらの内部粒子、無機粒子及び/又は有機粒子は二種以上を、本願発明で規定した特性を損ねない範囲内で併用してもよい。
さらに、前記粒子のフィルム中での含有量は0.001〜10質量%の範囲であることが好ましい。0.001質量%未満の場合、フィルムの滑り性が悪化したり、巻き取りが困難となったりするなどハンドリング性が低下しやすくなる。一方、10質量%を越えると、粗大突起の形成、製膜性や透明性の悪化などの原因となりやすい。
また、フィルム中に含有させる粒子は、一般的には屈折率がポリエステルと異なるため、フィルムの透明性を低下させる要因となる。
成型品は意匠性を高めるために、フィルムを成型する前にフィルム表面に印刷が施される場合が多い。このような印刷層は、成型用フィルムの裏側に施されることが多いため、印刷鮮明性の点から、フィルムの透明性が高いことが要望されている。
そのため、フィルムのハンドリング性を維持しながら、高度な透明性を得るために、主層の基材フィルム中に実質的に粒子を含有させず、厚みが0.01〜5μmの表面層にのみ粒子を含有させた積層構造を有する積層フィルムを用いることが有効である。
前記の「基材フィルム中に粒子を実質的に含有させず」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に粒子を基材フィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分などが混入する場合があるためである。
厚みの薄い表面層の形成は、コーティング法または共押出し法によって行うことができる。なかでも、コーティング法の場合、粒子を含有する密着性改質樹脂からなる組成物を塗布層として用いることで、印刷層との密着性も改良することができるので好ましい方法である。前記の密着性改質樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系重合体および/またはそれらの共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる樹脂が好ましい。
さらに、主層のポリエステルフィルムと密着性改質層との密着性をさらに向上させるために、予め主層のポリエステルフィルム表面を表面処理し、この表面処理面に密着性改質層を設けてもよい。表面処理の方法としては、例えば、(1)コロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線(UV)照射処理、放射線(EB)照射処理などの活性エネルギー線照射による方法、(2)火炎処理、(3)PVD、CVDなどのベーパーデポジット法、などが挙げられる。
このような積層構造とすることで、フィルムのハンドリング性を維持しながら、フィルムの厚みd(μm)に対するヘイズH(%)の比(H/d)を0.010未満とすることができる。
前記成型用ポリエステルフィルムは、特に透明性が必要とされる用途に使用する場合には、フィルムの厚みd(μm)に対するヘイズH(%)の比(H/d)を0.010未満とすることが、透明性及び印刷鮮明性の点から好ましい。前記H/dは、0を越え0.010未満であることがより好ましく、特に好ましくは0を越え0.009以下である。なお、本願発明においては、前記H/dの数値は小数第3位で記載しているが、小数第4位以降は四捨五入せず、切り捨てる。例えば、0.0099であっても0.009とする。
前記H/dの下限値はゼロに近いほど透明性や印刷鮮明性の点から好ましい。しかしながら、重要最小限の凹凸をフィルム表面に形成しないと、滑り性や巻き性などのハンドリング性が悪化し、フィルム表面に傷がつく場合や生産性が悪化する場合がある。したがって、H/dの下限値を0.001とすることが好ましく、特に好ましくは0.005である。また、バックライトを用いる透光銘板の場合には、より高度な透明性が要求されるので、前記H/dはさらにゼロに近いほど好ましい。
前記表面層に含有させる粒子としては、前記で記載した粒子と同様のものを使用することができる。粒子のなかでも、シリカ粒子、ガラスフィラー、シリカ−アルミナ複合酸化物粒子は屈折率がポリエステルに比較的近いため、透明性の点から特に好適である。
また、前記表面層に平均粒子径が10μmを越える粒子を含有させると、フィルム表面に粗大突起が形成される頻度が増加し、意匠性が悪化する傾向がある。一方、平均粒子径が0.01μm未満の粒子では、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性が低下する傾向がある。前記粒子の平均粒子径の好ましい範囲は、主層の基材フィルム中に粒子を含有させる場合と同じである。
さらに、前記表面層における粒子含有量は、0.01〜25質量%の範囲であることが好ましい。0.01質量%未満の場合、フィルムの滑り性が悪化したり、巻き取りが困難となったりするなどハンドリング性が低下しやすくなる。一方、25質量%を越えると、透明性や塗布性が悪化しやすくなる。
本発明のポリエステルフィルムは、他の機能を付与するために、種類の異なるポリエステルを用い、公知の方法で積層構造とすることができる。かかる積層フィルムの形態は、特に限定されないが、例えば、A/Bの2種2層構成、B/A/B構成の2種3層構成、C/A/Bの3種3層構成などの積層形態が挙げられる
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、二軸延伸フィルムであることが重要である。本発明においては、二軸延伸による分子配向により、前記のフィルムの微小張力(初期荷重49mN)下での熱変形率を本発明の範囲内に制御することができ、未延伸シートの欠点である耐溶剤性や寸法安定性が改善される。すなわち、未延伸シートの成型性の良さを維持しつつ、未延伸シートの欠点である耐溶剤性や耐熱性を改善したことが本発明の特徴の一つである。
前記二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法は特に限定されないが、例えばポリエステル樹脂を必要に応じて乾燥した後、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸シートを得た後、かかる未延伸シートを二軸延伸する方法が例示される。
二軸延伸方法としては、未延伸シートをフィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)に延伸、熱処理し、目的とする面内配向度を有する二軸延伸フィルムを得る方法が採用される。これらの方式の中でも、フィルム品質の点で、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸するMD/TD法、又は幅方向に延伸した後、長手方向に延伸するTD/MD法などの逐次二軸延伸方式、長手方向及び幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方式が望ましい。また、同時二軸延伸法の場合、リニアモーターで駆動するテンターを用いてもよい。さらに、必要に応じて、同一方向の延伸を多段階に分けて行う多段延伸法を用いても構わない。
二軸延伸する際のフィルム延伸倍率としては、長手方向と幅方向に1.6〜4.2倍とすることが好ましく、特に好ましくは1.7〜4.0倍である。この場合、長手方向と幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよいし、同一倍率としてもよい。長手方向の延伸倍率は2.8〜4.0倍、幅方向の延伸倍率は3.0〜4.5倍で行うことがより好ましい。
本発明の成型用ポリエステルフィルムを製造する際の延伸条件は、特に限定されるものではない。しかしながら、本発明で規定した上記特性を満足させるためには、例えば、下記の条件を採用することが選択することが好ましい。
縦延伸においては、後の横延伸がスムースにできるように、延伸温度は50〜110℃、延伸倍率は1.6〜4.0倍とすることがさらに好ましい。
通常、ポリエチレンテレフタレートを延伸する際に、適切な条件に比べ延伸温度が低い場合は、横延伸の開始初期で急激に降伏応力が高くなるため、延伸ができない。また、たとえ延伸ができても厚みや延伸倍率が不均一になりやすいため好ましくない。
また、適切な条件に比べ延伸温度が高い場合は初期の応力は低くなるが、延伸倍率が高くなっても応力は高くならない。そのため、25℃における100%伸張時応力が小さいフィルムとなる。よって、最適な延伸温度をとることにより、延伸性を確保しながら配向の高いフィルムを得ることができる。
しかしながら、前記共重合ポリエステルが共重合成分を1〜40モル%含む場合、降伏応力をなくすように延伸温度を高くしていくと、延伸応力は急激に低下する。特に、延伸の後半でも応力が高くならないため、配向が高くならず、25℃における100%伸張時応力が低下する。
このような現象は、フィルムの厚さが60〜500μmで発生しやすく、特に厚みが100〜300μmのフィルムで顕著に見られる。そのため、本発明の共重合したポリエステルを用いたフィルムの場合、横方向の延伸温度は、以下の条件とすることが好ましい。
まず、予熱温度は50℃〜150℃とすることが好ましい。次いで、横延伸の前半部では延伸温度は予熱温度に対して−20℃〜+25℃とすることが好ましく、特に好ましくは−15℃〜+25℃とする。また、横延伸の後半部では、延伸温度は前半部の延伸温度に対して0℃〜−40℃とすることが好ましく、特に好ましくは−10℃〜−40℃とする。このような条件を採用することにより、横延伸の前半では降伏応力が小さいため延伸しやすく、また後半では配向しやすくなる。なお、横方向の延伸倍率は、2.5〜5.0倍とすることが好ましい。その結果、本発明で規定したF10025やF100100を満足するフィルムを得ることが可能である。
さらに、二軸延伸後にフィルムの熱処理を行うが、この熱処理は、オーブン中、あるいは、加熱されたロール上など、従来公知の方法で行うことができる。また、熱処理温度及び熱処理時間は必要とされる熱収縮率のレベルによって任意に設定することができる。熱処理温度は120〜245℃の範囲が好ましく、特に好ましくは150〜240℃である。熱処理時間は、1〜60秒間行うことが好ましい。なお、かかる熱処理はフィルムをその長手方向及び/又は幅方向に弛緩させつつ行ってもよい。なお、本発明においては、前記熱処理温度は前記の熱処理温度の範囲内でも、使用するフィルム原料の組成によって好適な範囲が異なるので、フィルムの面配向度が0.095以下となるように熱処理温度を設定することが重要である。その理由は、後で詳述する。
フィルムの長手方向及び横方向の150℃での熱収縮率を小さくするためには、熱処理温度を高くすること、熱処理時間を長くすること、弛緩処理を行うことが好ましい。具体的には、フィルムの長手方向及び幅方向における150℃での熱収縮率を6.0%以下とするためには、熱処理温度は200〜220℃で、弛緩率1〜8%で弛緩させながら行うことが好ましい。さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、その後熱処理を行ってもよい。
フィルムの長手方向及び横方向の150℃での熱収縮率を小さくするために、製造ラインを長くして熱処理時間を長くすることは設備上の制約により困難である。また、フィルムの送り速度を遅くすると、生産性が低下してしまう。このように、延伸区間までは区間温度を100℃近傍とかなり低温にすることが重要である。一方、熱固定では200℃程度の高温に速やかに昇温することが重要である。したがって、該課題を解決する方策として熱処理ゾーンに遠赤外線ヒーターを設置し加熱を補強することが好ましい実施態様として推奨される。
さらに、延伸区間と熱固定区間の間に1m以上の断熱区間を設け、断熱区間以後の加熱効率を上げる方法が挙げられる。具体的には、区間ごとの仕切りを強化して熱流の漏れを小さくすることで加熱効率を上げることができる。また、風量のバランス及び強さを調整することにより、風量を確保しつつ、オーブン内圧力を調整し、熱流の漏れを抑制する方法を用いてもよい。また、熱風加熱では不足する加熱に関しては強加熱区間に赤外線ヒーターを付加する方法も好適である。そのほかに、熱固定区間の長さ、区画数を増やすことで、加熱量を増加させる。などの方法も有効である。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)が、いずれも100℃において10〜1000MPaで、かつ180℃において5〜40MPaである。このような貯蔵粘弾性率(E′)を達成するためには、前記の共重合ポリエステルを構成成分として含む二軸延伸フィルムを製造する際に、フィルムの面配向度を特定範囲に制御することも重要である。すなわち、フィルムの面配向度を0.095以下に低くすることが好ましく、特に好ましくは0.001〜0.090に制御する。このように面配向度を低くすることにより、前記のフィルムの貯蔵弾性率(E′)を小さくすることができる。
しかしながら、単にフィルムの面配向度を低くしただけでは、180℃におけるフィルムの貯蔵粘弾性率(E′)が小さくなりすぎる。本発明の好ましい実施態様である分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを共重合成分とする共重合ポリエステルをフィルム原料として用いる場合、該グリコール類の分子構造の嵩高さにより高温での分子運動性を抑制することができる。さらに、特定の延伸条件を用いてフィルムの面配向度を低くすることによる相乗手段により、前記の180℃におけるフィルムの貯蔵粘弾性率(E′)を前記範囲に制御することができる。また、好ましい実施態様として例示した1,3−プロパンジオール残基や1,4−ブタンジオール残基の併用効果は、該成分導入により共重合ポリエステルの分子中に微結晶が形成され前記の180℃の貯蔵粘弾性率(E′)が小さくなりすぎることを抑制する効果が発現されたためと推察される。
上記のごとく二軸配向ポリエステルフィルムの面配向度を低いレベルに設定することが好ましい実施態様の一つであるが、該特性を付与する手段も限定はされず任意である。一般に、面配向度を下げる手段としては延伸倍率を下げる方法と熱固定温度を上げる方法が知られているが、前者の方法はフィルムの厚み斑が悪化するので好ましくない。したがって、後者の方法が好ましい。後者の場合は前記の問題が生ずるが、好ましい実施態様として例示した方法等で回避できる。
また、本発明においては二軸配向ポリエステルフィルムとして共重合ポリエステルを用いることが重要である。共重合ポリエステルは、融点がホモポリエステルに対して低いため、熱固定温度を高くすると、横延伸工程でフィルムを保持するクリップにフィルムが融着しやすくなる。したがって、テンター出口でクリップがフィルムを開放するときにクリップ近傍が充分に冷却することが重要である。
フィルムとクリップとの融着を防止するためには、例えば、(1)クリップが加熱されにくいように、クリップ部分に熱遮蔽壁を設ける方法、(2)クリップ冷却機構をテンターに付加する方法、(3)冷却能力の強化を行うために熱固定後の冷却区間を長く設定し、フィルム全体の冷却を十分行う方法、(4)冷却区間の長さ、区画数を増やすことで、冷却効率を増加させる方法、(5)クリップの戻り部分が炉の外側を走行するタイプを用いてクリップの冷却を強化する方法、などを採用することが好ましい。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、フィルム表面の環状三量体が0.2mg/m2以下であることが好ましく、より好ましくは0.18mg/m2以下であり、特に好ましくは0.16mg/m2以下である。フィルム表面の環状三量体が0.2mg/m2を超える場合は、該フィルムに各種機能を有した機能層や機能フィルムを積層する時の接着阻害や欠陥が発生するので好ましくない。
また、本発明の成型用ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムを170℃で10分間加熱したときのフィルム表面の環状3量体が0.9mg/m2以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.6mg/m2以下であり、特に好ましくは0.3mg/m2である。
また、本発明の成型用ポリエステルフィルムは、170℃で10分間加熱したときのフィルムのヘイズの増加が0.30%以下であることが重要であり、好ましくは0.25%以下であり、特に好ましくは0.20%以下である。なお、フィルムに上記加熱処理を行っても、フィルム表面の環状3量体の量やヘイズが変化しないことが最も好ましい。しかしながら、前記特性の変化をゼロにすることは極めて高度な技術が必要となる反面、実用面からは前記範囲内に管理できていれば、問題なく使用することができる。
170℃で10分間加熱したときのフィルムのヘイズの増加が0.30%を超える場合には、印刷や蒸着など熱をともなう加工を行う場合、高温あるいは減圧下で成型する場合、成形品を高温で使用する場合に、フィルム表面への環状三量体の移行が増大して、透明性の低下や析出物による品位の低下が見られる。
170℃で10分間加熱したときのフィルムのヘイズの増加が0.30%以下とするためには、フィルム原料として用いるポリエステル樹脂中の環状三量体含有量を5000ppm以下に管理することが好ましく、さらに好ましくは4500ppm以下、特に好ましくは4000ppm以下に管理する。
前記のポリエステル樹脂中の環状三量体含有量を低減させる手段は限定されないが、例えば、固有粘度が0.40〜0.60dl/gのポリエステルのチップを固相重合する方法が挙げられる。また、所定の固有粘度のポリエステル樹脂を不活性気体雰囲気下または減圧下で、固有粘度が実質的に変化しない条件で加熱処理する方法も例示される。さらに、環状三量体を溶解する溶媒で抽出する方法を用いてもよい。
また、フィルム製造時の溶融押出工程において、溶融状態のポリエステル樹脂中の環状三量体の再生を抑制することが重要である。溶融状態のポリエステル樹脂中の環状三量体の再生を出来るだけ抑制するためには、ポリエステル樹脂中に残存する活性な重合触媒の量を出来るだけ減少させることが重要である。このような活性な重合触媒の量を減少させる代表的な手段としては、下記の方法が挙げられる。
一つの手段としては、フィルム原料として使用するポリエステルを、水と接触処理させることによって、重合触媒の不活性化を行う方法が挙げられる。
フィルム原料として使用するポリエステル中の重縮合触媒を失活処理させる方法としては、溶融重縮合後や固相重合後にポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する水処理方法が挙げられる。
水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。水処理を行う際の処理時間は、5分〜2日間が好ましく、さらに好ましくは10分〜1日間、特に好ましくは30分〜10時間である。また、水の温度は、20〜180℃が好ましく、さらに好ましくは40〜150℃、特に好ましくは50〜120℃である。
以下に、水処理を工業的に行う方法を例示するが、これに限定するものではない。また処理方法は、連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えないが、工業的に行うためには連続方式の方が好ましい。
ポリエステルのチップをバッチ方式で水処理する場合は、サイロタイプの処理槽が挙げられる。すなわち、バッチ方式でポリエステルのチップをサイロへ受け入れ水処理を行う。ポリエステルのチップを連続方式で水処理する場合は、塔型の処理槽に継続的又は間欠的にポリエステルのチップを上部より受け入れ、水処理させることができる。
また、ポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合には、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエチレンテレフタレート1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給または存在させて、粒状ポリエチレンテレフタレートと水蒸気とを接触させる方法が好適である。
この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
以下に、粒状ポリエチレンテレフタレートと水蒸気または水蒸気含有ガスとの接触処理を工業的に行う方法を例示するが、これに限定されるものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えない。
ポリエステルのチップをバッチ方式で水蒸気と接触処理をする場合は、サイロタイプの処理装置が挙げられる。すなわちポリエステルのチップをサイロへ受け入れ、バッチ方式で、水蒸気または水蒸気含有ガスを供給し接触処理を行う。
ポリエステルのチップを連続的に水蒸気と接触処理する場合は、塔型の処理装置に連続で粒状ポリエチレンテレフタレートを上部より受け入れ、並流あるいは向流で水蒸気を連続供給し水蒸気と接触処理させることができる。
水又は水蒸気で処理した場合は、粒状ポリエチレンテレフタレートを必要に応じて振動篩機、シモンカ−タ−などの水切り装置で水切りし、コンベヤ−によって次の乾燥工程へ移送する。
水又は水蒸気と接触処理したポリエステルのチップの乾燥は、通常用いられるポリエステルの乾燥処理を用いることができる。連続的に乾燥する方法としては、上部よりポリエステルのチップを供給し、下部より乾燥ガスを通気する、ホッパ−型の通気乾燥機が好適である。また、バッチ方式で乾燥する方法としては、大気圧下で乾燥ガスを通気しながら乾燥する乾燥機が好適である。
乾燥ガスとしては、大気空気でも差し支えないが、ポリエステルの加水分解や熱酸化分解による分子量低下を防止する点から、乾燥窒素、除湿空気が好ましい。
また、水処理以外の他の手段として、フィルム原料として使用するポリエステル樹脂(以下ポリエステル樹脂(1)と称する)と、主として芳香族ジカルボン酸とエチレングリコール成分とからなり、リン化合物をリン元素として100〜5000ppmを含む重縮合触媒失活用ポリエステル樹脂(以下ポリエステル樹脂(2)と称する)を混合して溶融押し出しする方法が挙げられる。
ポリエステル樹脂(1)とポリエステル樹脂(2)との混合は、フィルム製造時の溶融押出前に行ってともよいし、事前に両ポリエステル樹脂を混合して溶融押出しをした混合ポリエステル樹脂を用いて行ってもよい。
前記のポリエステル樹脂(2)に含まれるリン化合物としては、リン酸系化合物、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、亜リン酸系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物が挙げられる。
リン酸系化合物としては、例えば、リン酸、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジアミルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリアミルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、リン酸とアルキレングリコールとのエステルなどが挙げられる。
ホスホン酸系化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、トリエチルホスホノアセテート、トリブチルホスホノアセテート、トリ(ヒドロキシエチル)ホスホノアセテート、トリ(ヒドロキシプロピル)ホスホノアセテート、トリ(ヒドロキシブチル)ホスホノアセテートなどが挙げられる。
ホスフィン酸系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、2−カルボキシエチル−メチルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−エチルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−プロピルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−フェニルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−m−トルイルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−p−トルイルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−キシリルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−ベンジルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−m−エチルベンジルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−メチルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−エチルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−プロピルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−フェニルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−m−トルイルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−p−トルイルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−キシリルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−ベンジルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−m−エチルベンジルホスフィン酸、及びこれらの環状酸無水物、或いはこれらのメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、エチレングリコールエステル、プロピオングリコールエステル、ブタンジオールとのエステルなどが挙げられる。
亜リン酸系化合物としては、例えば、亜リン酸ならびにジメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、ジプロピルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジアミルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4′−ビフェニレンジホスファイト、亜リン酸とアルキレングリコールとのエステルなどが挙げられる。
亜ホスホン酸系化合物としては、例えば、メチル亜ホスホン酸、メチル亜ホスホン酸ジメチル、メチル亜ホスホン酸ジフェニル、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ジメチル、フェニル亜ホスホン酸ジフェニルなどがあげられる。
上記リン化合物は、前記のポリエステル樹脂(1)に用いたものと同種、異種のいずれでも構わないが、リン酸またはその誘導体の使用が好ましい。
前記のポリエステル樹脂(2)は、主として芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とから得られる熱可塑性ポリエステルであり、好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の70モル%以上含むポリエステルである。さらに好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の85モル%以上含むポリエステルであり、特に好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の95モル%以上含むポリエステルであって、前記のリン化合物を共重合または配合したものである。
前記のポリエステル樹脂(2)を構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル4,4′−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体等が挙げられる。
また、前記のポリエステル樹脂(2)を構成するグリコール成分としては、エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール等が挙げられる。
前記のポリエステル樹脂(2)としては、主たる構成単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルが好ましく、さらに好ましくはエチレンテレフタレート単位を70モル%以上含み、共重合成分としてイソフタル酸、ネオペンチルグリコール、1,4―シクロヘキサンジメタノールなどを含む共重合ポリエステルであり、特に好ましくはエチレンテレフタレート単位を90モル%以上含むポリエステルである。
前記のポリエステル樹脂(2)が共重合体である場合、原料仕込み時に、ジカルボン酸成分またはグリコール成分の少なくともいずれかの成分に、1種または2種以上の共重合成分を併用する。以下、テレフタル酸とエチレングリコールを出発原料とするポリエチレンテレフタレートに、エチレンテレフタレートの主鎖に共重合成分を導入する共重合ポリエステルを前記のポリエステル樹脂(2)の代表例として説明する。
ジカルボン酸を共重合成分とする場合には、ジカルボン酸として、イソフタル酸、ジフェニル4,4′−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルケトンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などを使用することができる。
また、グリコールを共重合成分とする場合、グリコールとして、ジエチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ダイマーグリコール等の脂肪族グリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチロール等の脂環族グリコール、キシリレングリコール、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4′−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコールなどを使用することができる。
さらに、他の共重合成分として多官能化合物を使用する場合には、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等を、グリコール成分として、グリセリン、ペンタエリスリトールを使用することができる。但し、これらの多官能化合物の配合量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また、単官能化合物、例えば、安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
前記のポリエステル樹脂(2)は、重縮合時に前記のリン化合物を添加して共重合する方法あるいは汎用のポリエステル樹脂と前記リン化合物から選ばれた少なくとも一種を押出機、例えば二軸押出機で混練する方法によって製造することが可能であるが、これらに限定されるものではない。
ポリエステル樹脂(2)の重縮合時に前記のリン化合物を添加して共重合する方法の場合、例えば、テレフタル酸とエチレングリコールの重縮合時にリン化合物を添加して共重合させたポリエステルを代表例として、以下にその製造方法を説明する。
テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体(例えば、テレフタル酸ジメチル)と、エチレングリコールとのエステル化反応生成物またはエステル交換反応生成物を重縮合して、ポリエステルにする際に採用される任意の方法で合成することができる。前記リン化合物はポリエステルの製造時に添加されるが、その添加時期は、エステル化工程初期から、初期縮合後期までの任意の段階で添加できるが、重縮合反応機台の腐食の問題などから、エステル化工程終了後から初期縮合後期に添加するのが好ましい。エステル交換法の場合は、エステル交換反応前、エステル交換反応過程、またはエステル交換反応終了から初期縮合後期までの任意の段階で添加することができる。
例えば、直接エステル化法の場合、以下の製造条件で行うことが好ましい。
エステル化反応は、230〜250℃で、常圧〜加圧下で0.5〜5時間行い、エステル化反応率を少なくとも95%、好ましくは98%以上にする。次いで、240〜255℃、好ましくは240〜250℃、さらに好ましくは240〜248℃で、300〜0.1Torrで0.5〜2時間、第一段の重縮合を実施する。さらに、250〜290℃、好ましくは250〜280℃、さらに好ましくは250〜275℃で、10〜0.1Torr、好ましくは5〜0.1Torrで、目的の重合度まで重縮合を行う。リン化合物はエステル化終了後から第一段の重縮合終了までの任意の段階で添加する。また、第一段目の重縮合反応を250℃以下で実施することも重要である。
前記の出発原料であるテレフタル酸またはエチレングリコールとしては、パラキシレンから誘導されるバージンのテレフタル酸あるいはエチレンから誘導されるエチレングリコールは勿論のこと、使用済みPETボトルからメタノール分解やエチレングリコール分解などのケミカルリサイクル法により回収したテレフタル酸、ビスヒドロキシエチルテレフタレートあるいはエチレングリコールなどの回収原料も、出発原料の少なくとも一部として利用することが出来る。前記回収原料の品質は、使用目的に応じた純度、品質に精製されていなければならないことは言うまでもない。
前記のポリエステル樹脂(2)を製造する際に用いる重縮合触媒としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、錫、鉛、ビスマス、スカンジウム、イットリウム、ニオブ、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、テルル、タンタル、タングステン、ガリウム、アルミニウム、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、ケイ素、銀などからなる群より選ばれる1種以上の金属化合物が用いられ、特に、前記のリン化合物によって触媒作用が失活され難い、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、タングステン化合物が最適である。なお、前記のポリエステル樹脂(1)を製造する際に用いた重縮合触媒と同じものを用いてもよい。
アンチモン化合物としては、具体的には、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレート、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。
ゲルマニウム化合物としては、具体的には、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等の化合物が挙げられる。
タングステン化合物としては、タングステン酸、タングステン酸リチウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸バリウム、タングステン酸コバルト、タングステン酸銅、タングステン酸マンガン、タングステンエトキシド、タングステン酸アンモニウム等の化合物が挙げられる。
また、前記のポリエステル樹脂(2)の製造において、ジエチレングリコールの生成を抑制するために、塩基性窒素化合物を用いることができる。塩基性窒素化合物としては、脂肪族、脂環式、芳香族および複素環式窒素化合物のいずれでもかまわない。
例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ジメチルアニリン、ピリジン、キノリン、ジメチルベンジルアミン、ピペリジン、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイド、イミダゾール、イミダゾリン等が挙げられる。これらの化合物は遊離形で用いてもよいし、低級脂肪酸やTPAの塩として用いてもよい。
また、これらの塩基性窒素化合物の反応系への添加は、初期重縮合反応が終了するまでの任意の段階で適宜選ぶことができ、単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。これらの塩基性窒素化合物の配合量は、生成ポリエステルに対し0.01〜1モル%であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.7モル%、特に好ましくは0.1〜0.5モル%である。
また、ポリエステル樹脂(2)の製造を、汎用のポリエステル樹脂にリン化合物を配合する方法により行う場合は、乾燥したポリエステル樹脂と前記リン化合物を二軸押出機で溶融混練してチップ化する方法、ポリエステル樹脂粒状体をリン化合物の水溶液や有機溶媒の溶液に浸漬させる方法、あるいはこれらの溶液を表面に付着させる方法などが好適である。
前記のポリエステル樹脂(2)の固有粘度は、0.45〜1.00dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.48〜0.90dl/g、特に好ましくは0.50〜0.85dl/g、最も好ましくは0.55〜0.80dl/gである。固有粘度が0.60dl/g以上のポリエステル樹脂(2)は、溶融重縮合したポリマーを固相状態で重合する方法によって製造することが好ましい。
固有粘度が0.45dl/g未満の場合は、フィルム製造時に破断が多発したり、得られたフィルムの透明性が低下したり、機械的強度が低下するなどの問題がある。また、固有粘度が1.00dl/gを越えるポリエステル樹脂を生産するためには、重縮合時間が非常に長くなりコストアップになり、経済性の面から実用的ではないだけでなく、ポリエステル樹脂(2)と他のポリエステル樹脂を混練りしてフィルムを製造する際に、混練が不完全となり均一な品質のフィルムが得られにくくなる。
また、前記のポリエステル樹脂(2)は、ポリマーカラー、加水分解性など物性を損なわない程度に、公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸素捕獲剤、外部より添加する粒子や重合反応中に内部で析出させた内部析出粒子、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、青み付け剤、染料、顔料などの各種の添加剤を併用することも可能である。
前記のポリエステル樹脂(1)とポリエステル樹脂(2)は、それらのポリエステル骨格が同種あるいは異種のどちらでも構わない。
さらに、ポリエステル樹脂(1)に前記のリン化合物を直接混合して、ポリエステル樹脂(1)の重縮合触媒の活性を失活させてもよい。リン化合物によるポリエステルの触媒活性の失活法を用いる場合は、フィルム製造時の溶融押出工程の前に、ポリエステル樹脂(1)にリン化合物を混合しても良いし、事前にポリエステル樹脂(1)とリン化合物を混合して溶融押出しをしたポリエステル樹脂をフィルム原料として用いてもよい。すなわち、ポリエステル樹脂(1)にリン化合物を混合して溶融押出しをする方法、あるいは溶融状態のポリエステル樹脂(1)にリン化合物を添加する方法、のいずれの方法で実施しても構わない。また、上記のポリエステル樹脂(1)とポリエステル樹脂(2)を混合する方法とポリエステル樹脂(1)に直接リン化合物を混合する方法を併用してもよい。
前記のリン化合物による重縮合触媒を失活させる方法においては、例えば、アルミニウム系重縮合触媒系で得られたポリエステルを使用して製膜して得られるポリエステルフィルムのAl原子およびP原子の残存するモル比(P/Al)およびP原子の残存量が、下記式(1)および(2)で表わされる量になるようにポリエステル樹脂(1)とポリエステル樹脂(2)やリン化合物の配合比を調整するのが好ましい。
2.5 ≦ P/Al(モル比) ≦ 20 (1)
20 ≦ P(ppm) ≦ 200 (2)
両式ともに、下限値未満では重縮合触媒の失活効果が不十分であり、製膜工程におけるポリエステル樹脂の溶融状態での環状三量体の生成抑制効果が小さくなるので好ましくない。一方、上限値を超えた場合は重縮合触媒の失活効果が飽和するうえにポリエステル樹脂の固有粘度が低下する等の好ましくない現象に繋がるので好ましくない。
また、本発明の成型用ポリエステルフィルムは、太陽光が照射される場所で成形体として使用される場合がある。このような耐光性の要求される用途で使用する場合は、成型用ポリエステルフィルムの波長350nmにおける光線透過率を1%以下に制御することが好ましく、より好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.6%以下である。波長350nmにおける光線透過率を1%以下に制御することにより、成型用ポリエステルフィルム、特に、該フィルムに印刷を施した場合に印刷層の耐光性が向上する。
上記の波長350nmにおける光線透過率を1%以下に制御する方法は限定なく任意であるが、成型用ポリエステルフィルムの構成層のいずれかに紫外線吸収剤を配合する方法が推奨される。該方法において用いられる紫外線吸収剤は前記の特性を付与できるものであれば限定なく適宜選択すれば良い。無機系、有機系のどちらでも構わない。有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系等、及びその組み合わせが挙げられる。耐熱性の観点からはベンゾトアゾール系、環状イミノエステル系が好ましい。2種以上の紫外線吸収剤を併用した場合には、別々の波長の紫外線を同時に吸収させることができるので、いっそう紫外線吸収効果を改善することができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチル−3′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−又は2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−m−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ベンゾイルフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−o−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−シクロヘキシル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−(又はm−)フタルイミドフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、 2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)2,2′−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−エチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−テトラメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−デカメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(4,4′−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2,6−又は1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(1,4−シクロヘキシレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼン、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、および2,4,6−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、 2,8−ジメチル−4H,6H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d′)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジメチル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d′)ビス−(1,3)−オキサジン−4,9−ジオン、2,8−ジフェニル4H,8H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジフェニル4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d′)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、6,6′−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ビス(2−エチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−エチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ブチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ブチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−オキシビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−スルホニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−カルボニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7′−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7′−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7′−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、および6,7′−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが挙げられる。
上記の有機系紫外線吸収剤をフィルムに配合する場合は、押し出し工程で高温に晒されるので、紫外線吸収剤は分解開始温度が290℃以上の紫外線吸収剤を用いるのが製膜時の工程汚染を少なくする上で好ましい。分解開始温度が290℃以下の紫外線吸収剤を用いると製膜中に紫外線吸収剤の分解物が製造装置のロール群等に付着し、強いてはフィルムに再付着したり、キズを付けたりして光学的な欠点となるため好ましくない。
無機系紫外線吸収剤としては、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物の超微粒子類が挙げられる。
上記の波長350nmにおける光線透過率を1%以下にするもう一つの方法として、この波長域に吸収を有する、例えばナフタレンジカルボン酸等のポリエステルを形成する化合物をポリエステルの共重合成分として用いる方法を挙げることができる。
以上説明したように、本発明の成型用ポリエステルフィルムを用いることで、従来の二軸配向ポリエステルフィルムでは成型することが困難であった、成型時の成型圧力が10気圧以下の低圧下での真空成型や圧空成型などの成型方法においても、仕上がり性の良好な成型品を得ることができる。また、これらの成型法は成型コストが安いので、成型品の製造における経済性において優位である。したがって、これらの成型法に適用することが本発明の成型用ポリエステルフィルムの効果を最も有効に発揮することができる。
一方、金型成型は金型や成型装置が高価であり、経済性の点では不利であるが、前記の成型法よりも複雑な形状の成型品が高精度に成型されるという特徴がある。そのため、本発明に用いられる成型用ポリエステルフィルムを用いて金型成型した場合は、従来の二軸配向ポリエステルフィルムに比べて、より低い成型温度で成型が可能で、かつ成型品の仕上がり性が改善されるという顕著な効果が発現される。
さらに、このように成型された成型品は、常温雰囲気下で使用する際に、弾性および形態安定性(熱収縮特性、厚み斑)に優れ、そのうえ耐溶剤性や耐熱性に優れ、さらに環境負荷も小さいので、家電用銘板、自動車用銘板、ダミー缶、建材、化粧板、化粧鋼鈑、転写シートなどの成型部材として好適に使用することができる。
なお、本発明の成型用ポリエステルフィルムは、前記の成型方法以外にも、プレス成型、ラミネート成型、インモールド成型、絞り成型、折り曲げ成型などの成型方法を用いて成型する成型用材素材としても好適である。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、各実施例で得られたフィルム特性は以下の方法により測定、評価した。
(1)固有粘度
チップサンプル0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
(2)ポリエステル樹脂中の環状三量体の含有量
試料300mgをヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロホルム混合液(容量比=2/3)3mlに溶解し、さらにクロロホルム30mlを加えて希釈する。これにメタノ−ル15mlを加えてポリマーを沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルホルムアミド10mlで定容とし、高速液体クロマトグラフ法により環状三量体を定量した。
(3)フィルムの厚み
ミリトロンを用い、1枚当たり5点を計3枚の15点を測定し、その平均値を求めた。
(4)ヘイズ
JIS−K7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業株式会製、300A)を用いて測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
(5)フィルムを170℃で10分間熱処理した後のヘイズの増加(ΔH)
フィルムを無荷重下で、170℃のギアオーブンで10分間熱処理する前後のフィルムのヘイズを測定し、熱処理後のヘイズと熱処理前のヘイズの差をΔHとした。なお、ヘイズの測定は、JIS−K7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業株式会製、300A)を用いて測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
(6)フィルム表面の環状三量体の量
A4サイズのフィルムをクロロホルムに5分間接触させることで表面に析出したオリゴマーを溶解させる。得られたクロロホルム溶液について、高速液体クロマトグラフ法により環状三量体を定量した。前記の環状三量体の量をフィルムの表面積で除すことにより、フィルム表面の環状三量体の量(mg/m2)を求めた。
(7)100%伸張時応力、破断伸度
二軸延伸フィルムの長手方向及び幅方向に対して、それぞれ長さ180mm及び幅10mmの短冊状に試料を片刃カミソリで切り出した。次いで、引っ張り試験機(東洋精機株式会製)を用いて短冊状試料を引っ張り、得られた荷重−歪曲線から各方向の100%伸張時応力(MPa)及び破断伸度(%)を求めた。
なお、測定は25℃の雰囲気下で、初期長40mm、チャック間距離100mm、クロスヘッドスピード100mm/min、記録計のチャートスピード200mm/min、ロードセル25kgfの条件にて行った。なお、この測定は10回行い平均値を用いた。
また、100℃の雰囲気下でも、上記と同様の条件で引っ張り試験を行った。この際、試料は100℃の雰囲気下で30秒保持した後、測定を行った。なお、測定は10回行い平均値を用いた。
(8)貯蔵粘弾性率(E′)
動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御(株)製、DVA 225)を用い、下記の条件下で、フィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)における100℃及び180℃での貯蔵弾性率(E′)を求めた。
(a)サンプル幅:5mm
(b)測定温度範囲:−50〜250℃
(c)周波数:10Hz
(d)昇温速度:5℃/分
(9)面配向度(ΔP)
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて、フィルムの長手方向の屈折率(Nz)、幅方向の屈折率(Ny)、厚み方向の屈折率(Nz)を測定し下記式から面配向度(ΔP)を算出した。
ΔP=((Nx+Ny)/2)−Nz
(10)175℃におけるフィルムの熱変形率
熱機械分析装置(セイコー電子(株)製、TMA SS/100)を用い、下記の条件下で、温度変化にともなうフィルムの長手方向の寸法変化を連続的に測定し、175℃におけるフィルムの長手方向の熱変形率を求めた。
(a)サンプル幅:2mm
(b)測定温度範囲:30〜250℃、
(c)初期荷重:49mN(5gf)
(d)昇温速度:5℃/分
(11)150℃での熱収縮率
フィルムの長手方向及び幅方向に対し、それぞれ長さ250mm及び幅20mmの短冊状試料を切り出す。各試料の長さ方向に200mm間隔で2つの印を付け、5gfの一定張力(長さ方向の張力)下で2つの印の間隔Aを測定する。続いて、短冊状の各試料の片側をカゴに無荷重下でクリップにて吊るし、150℃の雰囲気下のギアオーブンに入れると同時に時間を計る。30分後、ギアオーブンからカゴを取り出し、30分間室温で放置する。次いで、各試料について、5gfの一定張力(長さ方向の張力)下で、2つの印の間隔Bを金指により0.25mm単位で読み取る。読み取った間隔A及びBより、各試料の150℃での熱収縮率を下記式により算出する。
熱収縮率(%)=((A−B)/A)×100
(12)厚みムラ
横延伸方向に3m、縦延伸方向に5cmの長さの連続したテープ状サンプルを巻き取り、フィルム厚み連続測定機(アンリツ株式会製)にてフィルムの厚みを測定し、レコーダーに記録する。チャートより、厚みの最大値(Tmax)、最小値(Tmin)、平均値(Tav)を求め、下記式にて厚みムラ(%)を算出した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。また、横延伸方向の長さが3mに満たない場合は、つなぎ合せて行う。なお、つなぎの部分における測定データは削除した。
厚みムラ(%)=((Tmax−Tmin)/Tav)×100
(13)波長350nmにおける光線透過率
分光光度計(島津製作所(株)製、UV−1200)を用いて、波長350nmの紫外領域における光線透過率を測定した。
(14)成型性
(a)真空成型性
フィルムに5mm四方のマス目印刷を施した後、500℃に加熱した赤外線ヒーターでフィルムを10〜15秒加熱した後、金型温度30〜100℃で真空成型を行った。なお、加熱条件は各フィルムに対し、上記範囲内で最適条件を選択した。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が50mmであり、底面部は直径が40mmで、深さが50mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。
最適条件下で真空成型した成型品5個について成型性及び仕上がり性を評価し、下記基準にてランク付けを行った。なお、◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
◎:(i) 成型品に破れがなく、
(ii) 角の曲率半径が1mm以下で、かつ印刷ずれが0.1mm以下であり、
(iii)さらに、×に該当する外観不良がないもの
○:(i) 成型品に破れがなく、
(ii) 角の曲率半径が1mmを超え1.5mm以下、または印刷ずれが0.1
mmを超え0.2mm以下で、
(iii)さらに、×に該当する外観不良がなく、実用上問題ないレベルのもの
×:成型品に破れがあるもの、または破れがなくとも以下の項目(i)〜(iv)のい
ずれかに該当するもの
(i) 角の曲率半径が1.5mmを超えるもの
(ii) 大きな皺が入り外観が悪いもの
(iii)フィルムが白化し透明性が低下したもの
(iv) 印刷のずれが0.2mmを超えるもの
(b)圧空成型性
フィルムに5mm四方のマス目印刷を施した後、500℃に加熱した赤外線ヒーターでフィルムを10〜15秒加熱した後、金型温度30〜100℃で、4気圧の加圧下で圧空成型を行った。なお、加熱条件は各フィルムに対し、上記範囲内で最適条件を選択した。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が60mmであり、底面部は直径が55mmで、深さが50mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。
最適条件下で圧空成型した成型品5個について成型性及び仕上がり性を評価し、下記基準にてランク付けをした。なお、◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
◎:(i) 成型品に破れがなく、
(ii) 角の曲率半径が1mm以下で、かつ印刷ずれが0.1mm以下であり、
(iii)さらに、×に該当する外観不良がないもの
○:(i) 成型品に破れがなく、
(ii) 角の曲率半径が1mmを超え1.5mm以下、または印刷ずれが0.1
mmを超え0.2mm以下で、
(iii)さらに、×に該当する外観不良がなく、実用上問題ないレベルのもの
×:成型品に破れがあるもの、または破れがなくとも以下の項目(i)〜(iv)のい
ずれかに該当するもの
(i) 角の曲率半径が1.5mmを超えるもの
(ii) 大きな皺が入り外観が悪いもの
(iii)フィルムが白化し透明性が低下したもの
(iv) 印刷のずれが0.2mmを超えるもの
(c)金型成型性
フィルムに印刷を施した後、100〜140℃に加熱した熱板で4秒間接触加熱後、金型温度30〜70℃、保圧時間5秒にてプレス成型を行った。なお、加熱条件は各フィルムに対し、上記範囲内で最適条件を選択した。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が50mmであり、底面部は直径が40mmで、深さが30mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。
最適条件下で金型成型した成型品5個について成型性及び仕上がり性を評価し、下記基準にてランク付けをした。なお、◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
◎:(i) 成型品に破れがなく、
(ii) 角の曲率半径が1mm以下で、かつ印刷ずれが0.1mm以下であり、
(iii)さらに、×に該当する外観不良がないもの
○:(i) 成型品に破れがなく、
(ii) 角の曲率半径が1mmを超え1.5mm以下、または印刷ずれが0.1
mmを超え0.2mm以下で、
(iii)さらに、×に該当する外観不良がなく、実用上問題ないレベルのもの
×:成型品に破れがあるもの、または破れがなくとも以下の項目(i)〜(iv)のい
ずれかに該当するもの
(i) 角の曲率半径が1.5mmを超えるもの
(ii) 大きな皺が入り外観が悪いもの
(iii)フィルムが白化し透明性が低下したもの
(iv) 印刷のずれが0.2mmを超えるもの
(15)耐溶剤性
25℃に調温したトルエンに試料を30分間浸漬し、浸漬前後の外観変化について下記の基準で判定し、○を合格とした。なお、ヘイズ値は前記の方法で測定した。
○:外観変化がほとんど無く、ヘイズ値の変化が1%未満
×:外観変化が認められる、あるいはヘイズ値の変化が1%以上
(16)印刷品位
印刷前のフィルムを90℃で30分熱処理し、次いで4色のスクリーン印刷を行った。
さらに、印刷層を設けたフィルムを80℃で30分乾燥した。印刷品位の評価は、下記のクリアー感、印刷適性、印刷ずれなどの印刷外観を、印刷面からではなく、裏側からフィルムを通して目視で判定した。判定基準は、全ての観点から問題無いものを○、少なくとも1つの点で問題あるものを×とした。
a.クリアー感:印刷した図柄が、基材フィルムや塗布層に遮られ
ることなく、鮮明に見えること。
b.印刷適性 :印刷インキの転移不良による、色むらやヌケが生
じないこと
c.印刷のズレ:印刷のズレが目視で判別できないこと。
(17)耐光性
暗箱中で蛍光灯ランプ(松下電器(株)製、U型蛍光灯FUL9EX)の直下3cmの位置に、オフセット印刷した印刷サンプルを、印刷サンプルの印刷面が裏側になるように置いた。次いで、連続2000時間の光照射を行い、印刷面側の光照射前後におけるカラー(a*、b*、L*)をもとに、JIS Z 8730に準拠し、色差(ΔE値)を測定した。色差(ΔE値)が小さいほど、光照射前後における色の変化が小さい、すなわち耐光性に優れていることを意味する。耐光性の合格レベルは、色差(ΔE値)で0.5以下である。なお、色差(ΔE値)は下記の式で算出される。
ΔE=√(Δa2+Δb2+ΔL2)
実施例1
フィルム原料として、下記の3種類のポリエステル樹脂A1、B1、B5を準備した。
第1のポリエステル樹脂(A1)は、芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位40モル%及びネオペンチルグリコール単位60モル%を構成成分とする、固有粘度が0.69dl/gの共重合ポリエステルである。
第2のポリエステル樹脂(B1)は、固有粘度が0.69dl/gで、かつ平均粒子径(SEM法)が1.5μmの無定形シリカを0.04質量%含有するポリエチレンテレフタレートである。
前記のチップ(A1)およびチップ(B1)は、アルミニウム系触媒を用いて製造し、かつポリエステル樹脂を減圧下160℃にて乾燥し、次いで、400ppmのエチレングリコールを含有する窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時40リットルで流通し、この反応系を1.2kg/cm2の微加圧に調整し、215℃で20時間加熱処理をして低オリゴマー(低OLG)化処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は処理前と殆ど同じであり、環状三量体の含有量は3900ppmであった。
第3のポリエステル樹脂(B5)は、固有粘度が0.61dl/gで、リン化合物をリン原子換算で2000ppmを含む触媒失活用ポリエチレンテレフタレートである。なお、触媒失活用ポリエステル(B5)は、下記の方法により得た。
(触媒失活用ポリエステル樹脂(B5)の製造)
回分式重合缶に高純度テレフタル酸とその2倍モル量のエチレングリコールを仕込み、トリエチルアミンを酸成分に対して0.3モル%加え、0.25MPaの加圧下245℃にて水を系外に留去しながらエステル化反応を120分行いエステル化率が95%のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびオリゴマーの混合物(以下BHET混合物という)を得た。このBHET混合物に重縮合触媒として二酸化ゲルマニウム/エチレングリコールスラリーおよびエチレングリコールとリン酸とのエステル(モノ−、ジ−、トリ−、エステル混合物)/エチレングリコール溶液を得られたポリエステルに対しそれぞれ、Ge原子換算で50ppmおよびP原子換算で2000ppmになるように添加し、常法に従い重縮合を行いIVが0.61dl/gの触媒失活用ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂を減圧下160℃にて乾燥し、次いで、400ppmのエチレングリコールを含有する窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時40リットルで流通し、この反応系を1.2kg/cm2の微加圧に調整し、215℃で20時間加熱処理をして低オリゴマー(低OLG)化処理を行い、環状三量体含有量は3200ppmに低減させた。
前記の共重合ポリエステル(A1)のチップ、粒子含有ポリエヒレンテレフタレート(B1)のチップ、およびP原子換算で2000ppmを含む触媒失活用ポリエステル樹脂(B5)のチップをそれぞれ乾燥させた後、A1/B1/B5=25/70/5の質量比となるように混合した。次いで、これらのチップ混合物を押出し機によりTダイのスリットから270℃で溶融押出し、表面温度40℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に90℃で3.3倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、120℃で10秒間予熱し、横延伸の前半部を110℃、後半部を100℃で3.9倍延伸した。さらに、横方向に7%の弛緩処理を行いながら235℃で熱固定処理を行い、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
比較例1
実施例1において、熱固定温度を205℃に変更すること以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
比較例2
実施例1の共重合ポリエステル(A1)および粒子含有PET(B1)の製造において、低オリゴマー(OLG)化処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、共重合ポリエステル(A2)および粒子含有PET(B2)を得た。実施例1において、共重合ポリエステル(A2)のチップおよび粒子含有PET(B2)のチップを、A2/B2=25/75の質量比となるように混合すること以外実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。なお、本比較例で得られた共重合ポリエステル(A2)および粒子含有PET(B2)には7000ppmの環状三量体が含まれていた。
比較例3
市販のA−PETの未延伸シート(東洋紡績(株)製、PETMAX(R)A560GE0R、厚み:200μm)の特性評価を行った。
比較例4
市販のポリカーボネートの未延伸シート(帝人化成(株)製、パンライトシート(R) PC2151、厚み:200μm)の特性評価を行った。
比較例5
アクリルの未延伸シート(三菱化成(株)製、アクリプレン(R) HBS006、厚み:125μm)の特性評価を行った。
実施例2
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位70モル%及びネオペンチルグリコール単位30モル%を構成成分とする、固有粘度が0.77dl/gの共重合ポリエステル(A3)のチップと、固有粘度が0.63dl/gで、かつ平均粒子径(SEM法)が1.5μmの無定形シリカを0.04質量%含有するポリエチレンテレフタレート(B3)のチップ、及び固有粘度が0.75dl/gで、かつ平均粒子径(SEM法)が1.5μmの無定形シリカを0.04質量%含有するポリプロピレンテレフタレート(C)のチップをそれぞれ乾燥させた。前記の共重合PEs(A3)、粒子含有PET(B3)、PTT(C)は、実施例1と同様の方法で低オリゴマー(低OLG)化処理したものを用いた。いずれのポリエステルも環状三量体の含有量は3900ppmであった。共重合PEs(A3)のチップ、粒子含有PET(B3)のチップ、PTT(C)のチップ、触媒失活用PEs樹脂(B5)のチップを、A3/B3/C/B5=50/5/40/5の質量比となるように混合した。次いで、これらのチップ混合物を押出し機によりTダイのスリットから270℃で溶融押出し、表面温度40℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に83℃で3.5倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、95℃で10秒予熱し、横延伸の前半部を80℃、後半部を75℃で3.9倍延伸した。さらに、横方向に7%の弛緩処理を行いながら200℃で熱固定処理を行い、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
実施例3
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位70モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール単位30モル%を構成成分とする、固有粘度が0.71dl/gの共重合ポリエステルのチップ(A4)、粒子含有ポリエチレンテレフタレートのチップ(B1)、および触媒失活用ポリエステル樹脂(B5)のチップを、A4/B1/B5=50/45/5の質量比となるように混合し乾燥した。なお、共重合ポリエステル(A4)は、実施例1と同様の方法で低オリゴマー化処理したものを用いた。低オリゴマー(低OLG)処理後の共重合ポリエステル(A4)も、環状三量体の含有量が3900ppmであった。次いで、これらのチップ混合物を押出し機によりTダイのスリットから270℃で溶融押出し、表面温度40℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に90℃で3.5倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、120℃で10秒予熱し、横延伸の前半部を105℃、後半部を100℃で3.9倍延伸した。さらに、横方向に7%の弛緩処理を行いながら220℃で熱固定処理を行い、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
比較例6
実施例3において、熱固定温度を205℃に変更すること以外は実施例3と同様にして、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
実施例4
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位40モル%及びネオペンチルグリコール単位60モル%を構成成分とする、固有粘度0.69dl/gの共重合ポリエステル(A1)のチップと、固有粘度が0.69dl/gで、かつ平均粒子径(SEM法)が1.5μmの無定形シリカを0.04質量%含有するポリブチレンテレフタレート(D)のチップを乾燥させた。これらのポリエステルチップは実施例1と同様の方法で低オリゴマー(低OLG)処理したものを用いた。次いで、共重合PEs(A1)のチップ、PBT(D)のチップ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(E)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会製、チヌビン326)を、A1/D/E=25.0/74.5/0.5の質量比となるように混合した。次いで、これらの混合物を押出し機によりTダイのスリットから265℃で溶融押出し、表面温度20℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に80℃で3.3倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、95℃で10秒予熱し、横延伸の前半部を85℃、後半部を80℃で3.8倍延伸した。さらに、横方向に7%の弛緩処理を行いながら200℃で熱固定処理を行い、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
比較例7
実施例4において、熱固定温度を185℃に変更すること以外は実施例4と同様にして、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
実施例5
(塗布液の調整)
イソプロパノール40質量%水溶液に共重合ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、バイロナールMD−1250)を固形分で3.15質量%,末端イソシアネート基を親水性基でブロックした水溶性ウレタン樹脂(第一工業製薬(株)製、エラストロンH−3)を固形分で5.85質量%、平均粒径1.0μmのシリカ粒子を全樹脂に対し0.8質量%及び平均粒径0.05μmのシリカ粒子を全樹脂に対し10質量%含有するように、塗布液を調整した。得られた塗布液を、5質量%の重曹水溶液を用いてpH6.5に調整した。次いで、バッグ式フィルター(住友スリーエム(株)製、リキッドフィルターバッグ)で濾過し、塗布液循環系ストックタンク内で、15℃で2時間撹拌した。
(積層フィルムの製造)
実施例1において、ポリエチレンテレフタレートのチップ(B1)の代わりに、環状三量体量が3500ppmで、実質的に粒子を含有していない、固有粘度が0.69dl/gのポリエチレンテレフタレートのチップ(B4)を用いる以外は実施例1と同様にして、無定形の未延伸シートを得た。なお、最終のフィルム厚みが188μmになるように、溶融樹脂の吐出量を調整した。
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に90℃で3.3倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムの片面に、上記塗布液をリバースキスコート法により延伸前の樹脂固形分の厚みが0.9μmとなるように塗布した。塗布層を有する積層フィルムを乾燥しつつテンターに導き、120℃で10秒間予熱し、横延伸の前半部を110℃、後半部を100℃で3.9倍延伸した。さらに、横方向に7%の弛緩処理を行いながら235℃で熱固定処理を行い、片面に塗布層を有する、厚さ188μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
比較例8
本比較例8は、特開2001−347565号公報の実施例1を追試し、先行技術との対比を行った実験である。
ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを仕込み、触媒として酢酸マグネシウム(M)及び三酸化アンチモン、添加剤としてリン酸(P)、平均粒子径(SEM法)が1.5μmの湿式法シリカ(0.08質量%)を添加して、定法によりポリエチレンテレフタレートを重合し、ポリエチレンテレフタレート(PET)のチップ(B6)を得た。得られたPETのチップ(B6)は、固有粘度が0.65dl/g、カルボキシル末端基濃度が25eq/ton、M/Pモル比が2.5であった。
前記のPETのチップ(B6)を180℃で4時間真空乾燥後、溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加(3.0kV)により鏡面冷却ドラムに密着、冷却固化して未延伸シートを作成した。この未延伸シートをまず温度105℃に加熱したロールにて長手方向に3.0倍の延伸を行い、さらに延伸温度125℃で幅方向に3.2倍延伸した後、195℃にて、幅方向に6%の弛緩、6秒間の熱処理を行い、厚さ100μm、面配向度0.138の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
比較例9
本比較例9は、特開平2−204020号公報の実施例2を追試し、先行技術との対比を行った実験である。
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸94mol%及びアジピン酸単位6mol%よりなり、ジオール成分としてエチレングリコール単位70mol%および1,4−シクロヘキサンジメタノール単位30mol%よりなる共重合ポリエステル(A5)と、平均粒子径1.1μmのカオリン2000ppmを含むポリエチレンテレフタレート(B7)をA5/B7=70/30の質量比で混合した後、予備結晶化、乾燥結晶化を行い、285℃でTダイを有する押出機より押出し、急冷固化して、極限粘度が0.70dl/gの無定形シートを得た。
得られたシートを縦方向に85℃で3.3倍延伸した後、続いて横方向に100℃で3.5倍延伸し、10%の幅方向の弛緩と0.5%の縦方向の弛緩を行いながら185℃で熱処理を行い、平均厚さが38μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
実施例1〜5及び比較例1、5〜12に関しては、使用したポリマーの原料組成とポリマー特性を表1に、フィルムの製造条件と特性を表2〜5に示す。また、比較例2〜4のフィルム特性を表6に示す。
実施例1〜5及び比較例1、2、6〜9に関しては、使用したポリマーの原料組成とポリマー特性を表1に、フィルムの製造条件と特性を表2〜5に示す。また、比較例3〜5のフィルム特性を表6に示す。
実施例1〜5で得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、成型時の成型圧力の低い真空成型法や圧空成型法で成型しても、仕上がり性の良好な成型品が得られた。また、得られた成型品の耐溶剤性や寸法安定性も良好であった。また、フィルム表面の環状三量体量が少なく、加熱処理した時のフィルム表面の環状三量体量の増大が小さかった。従って、成型時の金型汚れが少なかった。また、実施例4で得られたフィルムは、紫外線吸収剤を含有しているため、波長350nmにおける紫外線領域での光線透過率が0.6%であった。そのため、連続2000時間の光照射前後における印刷面側の色差が0.5以下であり、耐光性に優れていた。また、実施例5で得られたフィルムは、基材フィルムにシリカ粒子を含有する実施例1で得られたフィルムと比べ透明性に優れているため、印刷品位に優れていた。
一方、比較例1、6、7及び8で得られたフィルムは、真空成型法や圧空成型法での成型性に劣り、成型品の仕上がり性が良くなかった。さらに、これらの比較例で得られたフィルムは実施例1〜4で得られたフィルムに比べて、金型成型法での仕上がり性が劣っていた。また、比較例2で得られたフィルムは、フィルム表面の環状三量体量が多く、かつ加熱処理した時のフィルム表面の環状三量体量の増大が大きいため、加熱によりフィルムの透明性が低下した。また、金型汚れも多かった。また、比較例3〜5の未延伸シートおよび比較例9は、成型性は良好であるが、耐溶剤性や寸法安定性に劣っていた。