本発明のエンボス加工用ポリエステルフィルムは、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを含むグリコール成分とから構成された共重合ポリエステルを基材フィルムに含む。前記分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールは、分子の自由回転などの運動性を抑制する側鎖あるいは環状の構造を有しており、このようなモノマーを共重合することにより、ガラス転移温度(Tg)を下げることなく、融点(Tm)を低下させ、かつ破断伸度を大きくすることができる。
このような共重合ポリエステルを原料として用いた、本発明のポリエステルフィルムは、エンボス加工時の高温雰囲気下ではエンボス加工性、特に低温でのエンボス加工性に優れ、成型体として使用される常温雰囲気下では、剛性、強度、形態安定性(熱収縮特性、厚み斑)にも優れるという特長を有し、エンボス加工用に好適なポリエステルフィルムである。
前記特長は、長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、25℃で10MPa以上180MPa未満及び100℃で1〜100MPaという物性で表現することができる。
該フィルムの長手方向及び幅方向における25℃雰囲気下での100%伸張時応力は、剛性、強度、形態安定性(厚み斑、150℃での熱収縮率)と低温での成型性を両立させる点から、10MPa以上180MPa未満であることが重要である。
一方、前記の25℃の雰囲気下での100%伸長時応力は、180MPaを越えるような高剛性のフィルムでは、エンボス加工性、特に低温でのエンボス加工性が悪化しやすくなる。
従来のポリエステルフィルムでは、ある程度エンボス加工性を得るためには150℃程度に加熱する必要があり、この温度では熱収縮率が仕上がり性を阻害する場合や、付随する印刷インクや保護フィルムを耐熱タイプに変更する必要があり、素材の選定に大きな制限を受ける等の問題があった。これに対して、120℃程度の低温でエンボス加工が可能であれば、熱収縮率の課題も小さくなり、併用する素材の選定も少なくなる利点がある。また、低温でのエンボス加工性を向上させることは省エネルギーにも繋がる。
本発明のエンボス加工用ポリエステルフィルムの長手方向及び幅方向における100℃雰囲気下での100%伸張時応力は、低温でのエンボス加工性の点から、1〜100MPaであることが重要である。
前記の100℃雰囲気下での100%伸長時応力の下限値は、5MPaであることが好ましく、特に好ましくは10MPaである。高変形性が要求される分野では、100℃雰囲気下での100%伸張時応力が小さいことは低温でのエンボス加工性の点からは望ましい方向である。しかしながら、100℃雰囲気での100%伸長時応力が小さくなり過ぎると、25℃における100%伸長時応力も小さくなり、常温雰囲気下での剛性及び厚み斑が悪化するために、下限値を前記の値とする重要がある。
一方、前記の100℃における100%伸長時応力は、低温でのエンボス加工性の点から、90MPa以下であることが好ましく、特に好ましくは80MPa以下である。
また、エンボス加工性の点からは、100℃での破断伸度は、150%以上であることが好ましく、さらに好ましくは170%以上、特に好ましくは200%以上である。
また、剛性、強度、形態安定性(熱収縮特性、厚み斑)の点からは、25℃での破断伸度は、130%以上であることが好ましく、さらに好ましくは150%以上、特に好ましくは170%以上である。
本発明において、加工性の経時安定性として、100℃での長手方向及び幅方向の100%伸張時応力の変化率((製膜1ヶ月経時後−製膜直後)×100/製膜直後)が、いずれも±20%以下であることが好ましい。さらに好ましくは±10%以下であり、特に好ましくは±5%以下である。
また、前記エンボス加工用ポリエステルフィルムは、厚みd(μm)に対するヘイズH(%)の比(H/d)が0.01未満であることが、透明性及び印刷鮮明性の点から望ましい。前記H/dは、0を越え0.01未満がより好ましく、特に好ましくは0を越え0.009以下である。
また、前記エンボス加工用フィルムは、厚みd(μm)に対するヘイズH(%)の比(H/d)が0.010未満であることが、透明性及び印刷鮮明性の点から重要である。前記H/dは、0を越え0.010未満がより好ましく、特に好ましくは0を越え0.009以下である。なお、本願発明においては、前記H/dの数値は小数第3位で記載しているが、小数第4位以降は四捨五入せず、切り捨てる。例えば、0.0099であっても0.009とする。
前記H/dの下限値はゼロに近いほど好ましいが、必要最小限の凹凸をフィルム表面に形成しないと、滑り性や巻き性などのハンドリング性が悪化し、フィルム表面に傷がついたり、生産性が悪化しやすくなったりする場合があるので、前記H/dの下限値は0.0001とすることが好ましく、0.0005が特に好ましい。
本発明のエンボス加工用ポリエステルフィルムにおいて、スティッフネス(腰)、加工フィルムの裏面に設ける印刷層の保護、意匠性の点から、フィルムの厚みは20〜500μmであることが好ましい。基材フィルムの厚みの下限値は、30μmが好ましく、特に好ましくは40μmである。一方、基材フィルムの厚みの上限値は300μmが好ましく、特に好ましくは200μmである。
また、本発明のエンボス加工用ポリエステルフィルムの厚み斑は、5.5%以下であることが好ましい。前記厚み斑が5.5%を越えると、印刷性、寸法安定性が悪化しやすくなる。前記厚み斑は小さい方が望ましいが、厚み斑を0.5%以下とすることは技術的難度が高く、かつ実用上の品質としては大きな差異が見られないので、厚み斑の下限値は0.5%以上で構わない。
さらに、該ポリエステルフィルムの150℃における長手方向及び幅方向の熱収縮率が6.0%以下であることが、該ポリエステルフィルムに印刷層を設けた後の印刷ずれを低減する点から好ましい。
さらに、本発明のエンボス加工用のポリエステルフィルムは、前記の基材フィルムの片面に接着性改質樹脂を含む易印刷性改良層が設けられているので高品位の印刷が可能となる。
本発明のエンボス加工用のポリエステルフィルムは、波長380nmにおける光線透過率が50%以下であるので、該フィルムの耐光性が優れている。
本発明におけるポリエステルとは、エステル結合により構成される高分子量体の総称を意味する。
本発明の積層ポリエステルフィルムでは、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを含むグリコール成分とから構成された共重合ポリエステルを基材フィルム原料の一部として、あるいは100%使用する。
前記共重合ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分が主としてテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体からなるが、全ジカルボン酸成分に対するテレフタル酸成分の量は70モル%以上、好ましくは85モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、とりわけ好ましくは100モル%である。
また、分岐状脂肪族グリコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオールなどが例示される。脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどが例示される。
これらのなかでも、ネオペンチルグリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましく、本発明で規定したフィルムの長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、25℃で10MPa以上180MPa未満及び100℃で1〜100MPaを満足させるために有効である。さらに、エンボス加工性、特に低温でのエンボス加工性や透明性に優れるだけでなく、耐熱性にも優れ、接着性改質層との密着性を向上させる点からも好ましい。
さらに、重要に応じて、前記共重合ポリエステルに下記のようなジカルボン酸成分及び/又はグリコール成分を1種又は2種以上を共重合成分として併用してもよい。
テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体とともに併用することができる他のジカルボン酸成分としては、(1)イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(2)シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(3)シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(4)p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
一方、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールとともに併用することができる他のグリコール成分としては、例えば1,3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコール及びそれらのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。
さらに、重要に応じて、前記共重合ポリエステルに、さらにトリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合させることもできる。
前記共重合ポリエステルを製造する際に用いる触媒としては、例えば、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、チタン/ケイ素複合酸化物、ゲルマニウム化合物などが使用できる。これらのなかでも、チタン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物が触媒活性の点から好ましい。
前記共重合ポリエステルを製造する際に、熱安定剤としてリン化合物を添加することが好ましい。前記リン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸などが好ましい。
前記共重合ポリエステルは、成型性、接着性、製膜安定性の点から、固有粘度が0.50〜1.0dl/g以上であることが好ましい。共重合ポリエステルの固有粘度の上限は、押出機からの吐出安定性の点から、0.95dl/gが好ましく、特に好ましくは0.90dl/gである。一方、下限は製膜安定性や機械的強度などの点から、0.55dl/gが好ましく、特に好ましくは0.60dl/gである。また、成型用ポリエステルフィルムとしては、成形性の点から、固有粘度が0.60〜0.80dl/gの範囲が好ましい。
本発明の積層ポリエステルフィルムにおける基材フィルムは、前記共重合ポリエステルをそのままフィルム原料として用いてもよいし、共重合成分が多い共重合ポリエステルをホモポリエステルとブレンドして、共重合成分量を調整しても構わない。
また、前記共重合ポリエステルを2種以上ブレンドして、本発明の積層ポリエステルフィルムにおける基材フィルムの原料として使用することは、成型性の点から好ましい。なかでも、ポリエチレンテレフタレートにポリネオペンテンテレフタレート及び/又はポリシクロへキサンジメチレンテレフタレートをブレンドした混合ポリマーが柔軟性、成型性の点から特に好ましい。
前記ポリエステル基材フィルムの融点は、耐熱性及び成型性の点から、220〜245℃であることが好ましい。ここで、融点とは、いわゆる示差走査熱量測定(DSC)の1次昇温時に検出される融解時の吸熱ピーク温度のことである。該融点は、デュポン社製、V4.OB2000型示差走査熱量測定を用いて、昇温速度20℃/分で測定し求めた。
ポリエステル基材フィルムの融点の下限値は、225℃がさらに好ましく、特に好ましくは230℃である。融点が220℃未満であると、耐熱性が悪化する傾向がある。そのため、成型時や成型体の使用時に高温にさらされた際に、問題となる場合がある。融点の上限値は耐熱性の点からは高いほうが良いが、ポリエチレンテレフタレート単位を主体とした場合、高い透明性と柔軟性を確保しようとすると、融点245℃以上のフィルムでは透明性の確保が困難であり、融点を低くする重要があり、上限値245℃となる。さらに高透明性を得ようとすると融点の上限は240℃となる。この問題を解決するためには、高融点ポリエステル(PET)と低融点の共重合ポリエステルを溶融混合することで達成される。溶融ブレンドを用いてフィルムを製膜することによって、100%共重合ポリエステルを用いた場合に対しては同等の柔軟性と高い融点を実現し、高融点ポリエステルのみを用いた場合に対しては、高い透明性と実用上問題のない融点を実現することができる。
本発明のエンボス加工用ポリエステルフィルムは、エンボス加工性の点では未延伸フィルムが好ましいが、耐熱性や寸法安定性の点からは、二軸延伸ポリエステルフィルムが好適である。かかる二軸延伸の方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれであってもよい。
前記ポリエステル基材フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えばポリエステルを重要に応じて乾燥した後、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸シートを得た後、かかる未延伸シートを二軸延伸する方法が例示される。
かかる延伸方式としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれでもよいが、要するに該未延伸シートをフィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)に延伸、熱処理し、目的とする面内配向度を有する二軸延伸フィルムを得る方法が採用される。これらの方式の中でも、フィルム品質の点で、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸するMD/TD法、又は幅方向に延伸した後、長手方向に延伸するTD/MD法などの逐次二軸延伸方式、長手方向及び幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方式が望ましい。さらに、重要に応じて、同一方向の延伸を多段階に分けて行う多段延伸法を用いても構わない。
二軸延伸する際のフィルム延伸倍率としては、長手方向と幅方向に1.6〜4.2倍とすることが好ましく、特に好ましくは1.7〜4.0倍である。この場合、長手方向と幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよいし、同一倍率としてもよい。
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、基材フィルムの原料として、(1)テレフタル酸とエチレングリコール、ネオペンチルグリコールからなる共重合ポリエステル、あるいは(2)テレフタル酸とエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる共重合ポリエステルを使用する場合、長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、25℃で10MPa以上180MPa未満及び100℃で1〜100MPaとするためには、長手方向の延伸倍率は2.8〜4.0倍、幅方向の延伸倍率は3.0〜4.5倍で行うことが好ましい。
本発明の積層ポリエステルフィルムを製造する際の延伸条件は、特に限定されるものではない。しかしながら、本発明で規定した25℃及び100℃における100%伸張時応力の範囲を満足させるためには、例えば、下記の条件を採用することが取ることが好ましい。
縦延伸においては、後の横延伸がスムースにできるよう延伸温度は50〜110℃、延伸倍率は1.5〜4.0倍とすることが好ましい。
横延伸においては、長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、10MPa以上180MPa未満及び100℃で1〜100MPaとするために特に重要である。
通常、ポリエチレンテレフタレートを延伸する際に、適切な条件に比べ延伸温度が低い場合は、横延伸の開始初期で急激に降伏応力が高くなるため、延伸ができない。また、たとえ延伸ができても厚みや延伸倍率が不均一になりやすいため好ましくない。
また、適切な条件に比べ延伸温度が高い場合は初期の応力は低くなるが、延伸倍率が高くなっても応力は高くならない。そのため、25℃における100%伸張時応力が小さいフィルムとなる。よって、最適な延伸温度をとることにより、延伸性を確保しながら配向の高いフィルムを得ることができる。
しかしながら、前記のポリエステル基材フィルムの原料である共重合ポリエステルが共重合成分を1〜40モル%含む場合、降伏応力をなくすように延伸温度を高くしていくと、延伸応力は急激に低下する。特に、延伸の後半でも応力が高くならないため、配向が高くならず、25℃における100%伸張時応力が低下する。
このような現象は、フィルムの厚さが60〜500μmで発生しやすく、特に厚みが100〜300μmのフィルムで顕著に見られる。そのため、例えばネオペンチルグリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステルを用いたフィルムの場合、横方向の延伸温度は、以下の条件とすることが好ましい。
まず、予熱温度は90〜120℃とし、横延伸の前半部では延伸温度は予熱温度に対して5〜25℃高くし、また横延伸の後半部では、延伸温度は前半部の延伸温度に対して15〜40℃低くすることが好ましい。このような条件を採用することにより、横延伸の前半では降伏応力が小さいため延伸しやすく、また後半では配向しやすくなる。なお、横方向の延伸倍率は、2.5〜5.0倍とすることが好ましい。その結果、長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、25℃で10MPa以上180MPa未満及び100℃で1〜100MPaを満足するフィルムを得ることが可能である。
さらに、二軸延伸後にフィルムの熱処理を行うが、この熱処理は、オーブン中、あるいは、加熱されたロール上など、従来公知の方法で行なうことができる。また、熱処理温度及び熱処理時間は重要とされる熱収縮率のレベルによって任意に設定することができる。熱処理温度は120〜245℃の範囲が好ましく、特に好ましくは150〜230℃である。熱処理時間は、1〜60秒間行うことが好ましい。なお、かかる熱処理はフィルムをその長手方向及び/又は幅方向に弛緩させつつ行ってもよい。150℃での長手方向及び横方向の熱収縮率を小さくするためには、熱処理温度を高くすること、熱処理時間を長くすること、弛緩処理を行うことが好ましい。ラインを長くして熱処理時間を長くすることは設備上の制約により困難である。また、フィルムの送り速度を遅くすると、生産性が低下する。
150℃における長手方向及び幅方向の熱収縮率をいずれも6.0%以下とするためには、熱処理温度は200〜220℃で、弛緩率1〜8%で弛緩させながら行うことが好ましい。さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、その後熱処理を行ってもよい。
本発明のエンボス加工用ポリエステルフィルムは、前記の基材の少なくとも片面に接着性改質樹脂を含む易印刷性改良層が積層されてなる重要がある。このことにより、UVインキや溶剤インキに対する密着性が向上し印刷の仕上がり性、耐久性等を向上させることができる。
本発明においては、前記の易印刷性改良層は、前記の基材ポリエステルフィルムと印刷インクとの密着性を向上させる機能を有すればその組成やその積層方法等は限定されなく任意であるが、印刷性改良層が、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂の群から選ばれた少なくとも一種の樹脂よりなり、かつインラインコーティング法により形成されてなることが好ましい実施態様である。上記樹脂の構造は限定されないが、非結晶性あるいは低結晶性のものが好ましい。また、必要に応じて、耐水性工場のために前記樹脂を架橋剤で架橋させてもかまわない。
本発明のエンボス加工用ポリエステルフィルムは、印刷性を高めるために、前記のポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に易印刷性改良層を設けることが重要である。
上記易印刷性改良層を構成する樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系樹脂および/またはそれらの共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる樹脂が好ましい。さらに、基材フィルム中に粒子を実質上含有しない場合には、ハンドリング性(滑り性、巻き上げ性、耐ブロッキング性など)の改善の点から、接着性改質層に1種以上の粒子を含有させることが好ましい。
易印刷性改良層を構成するポリエステル系樹脂としては、例えば、スルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸0.5〜15.0モル%と、スルホン酸金属塩基を含有しないジカルボン酸85.0〜99.5モル%との2種類のジカルボン酸をポリオール成分と反応させて得られた、水不溶性のポリエステル共重合体が挙げられる。
前記のスルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホテレフタル酸、4−ナトリウムスルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5[4−ナトリウムスルホフェノキシ]イソフタル酸等の金属塩が挙げられ、特に好ましいのは5−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホテレフタル酸である。
これらのスルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸成分は、全ジカルボン酸成分に対して0.5〜15.0モル%であることが好ましい。全ジカルボン酸成分に対するスルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸成分の組成比は、水に対する分散性の点から、下限値を2.0モル%とすることが特に好ましく、耐水性の点から上限値を10.0モル%とすることが特に好ましい。前記組成比が0.5モル%未満では、水に対する分散性が著しく低下しやすくなる。一方、前記組成比が15.0モル%を越えると、水に対する分散性は向上するが、ポリエステル共重合体の耐水性が著しく低下しやすくなる。
ポリエステル共重合体の水に対する分散性は、共重合成分の種類および配合比などによって異なるが、上記スルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸成分は、水に対する分散性を損なわない限り、少量の方が好ましい。
スルホン酸金属塩基を含まないジカルボン酸成分としては、芳香族、脂環族、脂肪族のジカルボン酸が使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が例示される。これらの芳香族ジカルボン酸成分は、全ジカルボン酸成分の40モル%以上であることが好ましい。芳香族ジカルボン酸成分が全ジカルボン酸成分に対し40モル%未満では、ポリエステル共重合体の機械的強度や耐水性が低下しやすくなる。
脂肪族または脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが例示される。これらの脂肪族または脂環族ジカルボン酸成分を含有させると、接着性が高められる場合があるが、一般的にはポリエステル共重合体の機械的強度や耐水性を低下させる傾向がある。
前記の2種類のジカルボン酸と反応させるポリオール成分としては、(1)エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどの炭素数2〜8個の脂肪族グリコール、(2)1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの炭素数6〜12個の脂環族グリコール、(3)p−キシリレングリコールなどの芳香族グリコール、(4)ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのエーテル結合を有するグリコール、(5)ポリエチレングルコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテル、などが挙げられる。また、p−オキシエトキシ安息香酸の様なオキシカルボン酸成分を共重合させたものでもかまわない。
さらに、易印刷性改良層を構成するポリエステル系樹脂として、不飽和基含有ジカルボン酸0.5〜15.0モル%と、不飽和基を含有しないジカルボン酸85.0〜99.5モル%との2種類のジカルボン酸成分をポリオール成分と反応させて得られた水不溶性のポリエステル共重合体を、不飽和結合含有単量体でグラフト変成した樹脂を用いるのが印刷インキ層の耐水密着性を向上させる点で好ましい実施態様である。
前記の不飽和基含有ジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸などが挙げられる。これらの不飽和基含有ジカルボン酸のなかで、フマル酸、マレイン酸が特に好ましい。
これらの不飽和基含有ジカルボン酸成分は、全ジカルボン酸成分に対して0.5〜15.0モル%であることが好ましい。全ジカルボン酸成分に対する不飽和基含有ジカルボン酸成分の組成比は、樹脂の水溶化あるいは水分散化の点から、下限値を2.0モル%とすることが特に好ましく、ゲル発生の抑制の点から上限値を10.0モル%とすることが特に好ましい。前記組成比が0.5モル%未満では、グラフト変性が十分になされないため,水溶性あるいは水分散性の樹脂が得られにくくなる。一方、前記組成比が15.0モル%を越えると、グラフト変性によりゲルが生じ、塗工に適した樹脂が得られにくくなる。
不飽和基を含まないジカルボン酸成分としては、芳香族、脂環族、脂肪族のジカルボン酸が使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸,4−スルホテレフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等をあげることができる。
これらの芳香族ジカルボン酸は全ジカルボン酸成分に対し40モル%以上であることが好ましく、40モル%未満ではポリエステル共重合体の機械的強度や耐水性が低下しやすくなる。
脂肪族または脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。これらの脂肪族または脂環族ジカルボン酸成分を含有させると、接着性が高められる場合があるが、一般的にはポリエステル共重合体の機械的強度や耐水性を低下させる傾向がある。
前記の2種類のジカルボン酸と反応させるポリオール成分としては、(1)エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどの炭素数2〜8個の脂肪族グリコール、(2)1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの炭素数6〜12個の脂環族グリコール、(3)p−キシリレングリコールなどの芳香族グリコール、(4)ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのエーテル結合を有するグリコール、(5)ポリエチレングルコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテル、などが挙げられる。また、p−オキシエトキシ安息香酸の様なオキシカルボン酸成分を共重合させたものでもかまわない。
前記の不飽和ポリエステルをグラフト変成するために用いる不飽和基含有単量体としては、ラジカルにより重合するものが好ましい。例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル等)、メタクリル酸、メタクリル酸エステル類 (メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等)、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ビニルアセテート、ビニルエーテル類、N−ビニルピロリドン、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、無水マレイン酸などが挙げられる。
前記の単量体は、単独あるいは2つ以上を組み合わせて使用することができる。好ましくは、アクリル酸とアクリル酸エチルを含む単量体でグラフト変成した樹脂、スチレンと無水マレイン酸を含む単量体でグラフト変成した樹脂が、水分散性、接着性改質層と基材フィルム及び印刷インク層との密着性、耐熱性、耐水性を向上させる点から好ましい。
グラフト変性に関しては、特開平6−256737号公報や特開平7−330841号公報に開示された方法を用いることができる。
易印刷性改良層を構成するウレタン系樹脂としては、末端イソシアネート基を親水性基でブロックした熱反応型の水溶性ウレタンが挙げられる。イソシアネート基のブロック剤としては、重亜硫酸塩類、およびスルホン基を含有したフェノール類、アルコール類、ラクタム類、オキシム類、および活性メチレン化合物類等、多数の化合物が適用できる。
ブロック化されたイソシアネート基は、ウレタンプレポリマーを親水化あるいは水溶化し、またブロック剤は、フィルム製造時の乾燥あるいは熱セット等によって分子鎖からはずれる。すなわち、このブロック型イソシアネート基を含有する重合体に熱エネルギーが与えられると、ブロック剤がイソシアネート基からはずれるため、重合体は自己架橋する。塗布液調整時の重合体は、親水性であるため耐水性が悪いが、塗布、乾燥、および熱セットして熱反応が完了すると、ウレタン重合体の親水基がはずれるため、耐水性が良好な塗膜が得られる。
上記ブロック剤のうち、熱処理温度および熱処理時間が適当で、工業的に広く用いられるものとしては、重亜硫酸塩類が好ましい。上記ウレタン系重合体において使用される、ウレタンプレポリマーとしては、(1)分子内に2個以上の活性水素原子を有する、分子量が200〜20,000の化合物、(2)分子内に2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネート、(3)分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する鎖伸長剤を反応せしめて得られる、末端イソシアネート基を有する化合物が例示される。
上記(1)の化合物として一般に知られているのは、末端又は分子中に2個以上のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、あるいはメルカブト基を含むものである。なかでも、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、およびポリエーテルエステルポリオール等が特に好ましい。
ポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド等のアルキレンオキシド類、あるいはスチレンオキシドおよびエピクロルヒドリン等を重合した化合物、およびそれらのランダム共重合、ブロック共重合、あるいは多価アルコールへの付加重合を行って得られた化合物等がある。
ポリエステルポリオール、およびポリエーテルエステルポリオールとしては、主として直鎖状、あるいは、分岐状の化合物が挙げられる。コハク酸、アジピン酸、フタル酸、あるいはそれらの酸無水物等と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールおよびトリメチロールプロパン等の飽和および不飽和のアルコール類、比較的低分子量のポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール類、およびそれらの混合物との間の縮合反応により得ることができる。
さらに、ポリエステルポリオールとしては、ラクトンおよびヒドロキシ酸から得られるポリエステル類、またポリエーテルエステルポリオールとしては、あらかじめ製造されたポリエステル類にエチレンオキシドまたは、プロピレンオキシド等を付加せしめたポリエーテルエステル類も使用することができる。
上記(2)の有機ポリイソシアネートとしては、(a)トルイレンジイソシアネートの異性体類、(b)4,4ージフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、(c)キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、(d)イソホロンジイソシアネートや4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類、(e)ヘキサメチレンジイソシアネートや2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、(f)これらの化合物を単ーあるいは複数でトリメチロールプロパンなどと予め付加させたポリイソシアネート類、などが挙げられる。
上記(3)の少なくとも2個の活性水素を有する鎖伸長剤としては、(a)エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、および1,6−ヘキサンジオールなどのグリコール類、(b)グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の多価アルコール類、(c)エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、およびピペラジン等のジアミン類、(d)モノエタノールアミン、およびジエタノールアミン等のアミノアルコール類、(e)チオジエチレングリコール等のチオジグリコール類、および(f)水が挙げられる。
また、接着性改質層を構成するポリアクリル系樹脂としては、アクリル酸もしくはその誘導体、および重要に応じてビニル基を有するアクリル酸(誘導体)以外の単量体を重合させたものが例示される。
前記単量体としては、アクリル酸、メタアクリル酸(以下、アクリル酸および/またはメタクリル酸を(メタ)アクリル酸とする)、(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、ヘブチル、オクチル、2−エチルヘキシルエステル)、メチルメタアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、スチレン、グリシジルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレートなどが例示される。
これらはまた、それぞれの架橋剤、もしくは硬化剤の反応促進効果を有する触媒化合物を適宜、添加することも可能であり、この目的で各種公知技術の使用が可能である。
上記自己架橋型の樹脂としては、上記架橋剤もしくは硬化剤として使用可能な樹脂の中から選択することができる。特に、水溶性もしくは水分散性メチロールメラミン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、多官能ブロックイソシアネート基を付加したポリエーテル、ポリエステル、ポリエーテルウレタン、ポリエーテルエステル等の樹脂が好適である。また、重要に応じて硬化触媒を用いることができる。
易印刷性改良層を構成する樹脂組成物のなかでも、分子中にスルホン基を含有する水不溶性かつ水分散性のポリエステル系樹脂と、分子内に少なくとも1個のブロックイソシアネートを有する水溶性ポリウレタン系樹脂とを混合した、接着性改質樹脂からなる易印刷性改良層を設けたエンボス加工用ポリエステルフィルムは、エンボス加工される際の耐熱性に優れる点、さらに、ポリエステル基材フィルムのみならず、汎用の紫外線(UV)硬化型インキ及び酸化重合インキ等の印刷インキとの密着性が大きく改善できる点から、特に好ましい。
この場合、前記水不溶性かつ水分散性のポリエステル系樹脂(A)と水溶性ポリウレタン系樹脂(B)の含有量は、質量比で(A)/(B)=90/10〜10/90であることが好ましく、質量比で(A)/(B)=80/20〜20/80が特に好ましい。
前記の易印刷性改良層を設ける方法としては、前記のように、接着性改質樹脂を主成分とする易印刷性改良層用組成物を含有する塗布液をインラインコーティング法で塗布する方法が好ましい。
この際、塗布液の液温は、10℃〜20℃に制御することが好ましく、特に好ましくは12℃〜18℃に設定される。また、塗布液のpHは、5.5〜7.5に調整することが好ましく、特に好ましくは6.0〜7.0である。
塗布液の液温またはpHが上記範囲外であると、塗布液中に粒子を含有する場合、塗布液中の不活性粒子が凝集し易くなり、塗布液循環系内のフィルターの目詰まりによる生産性の低下や接着性改質層の耐粉落ち性の低下が起こりやすくなる。さらに、塗布液の経時安定性(ポットライフ)も低下しやすくなる。
また、上記塗布液を基材フィルムに塗布する前に、金網、バッグ式フィルター、糸巻き式フィルター、カートリッジ式フィルター等のフィルターを用いて当該塗布液をろ過して、粗大粒子、凝集粒子、コンタミ物などを除去することが好ましい。
このように、塗布液の液温およびpHを上記範囲内に制御したり、前記フィルターを用いて塗布液をろ過したりすることによって、前記積層ポリエステルフィルムに印刷層を設けた際に印刷外観を良好にすることができる。
また、基材フィルムに接着性改質層用塗布液を塗布する方法としては、グラビアコート、リバースコート、キスコート、リバースキスコートなどのロールコート方式、バーコート方式、エアナイフ方式、ブレードコート方式やコンマコート(ロールナイフコート)方式、カーテンコート方式、スプレイ方式、ディップ方式など通常用いられている方法を適用することができる。
ポリエステルフィルムに塗布する段階としては、未延伸フィルム表面に予め塗布する方法、一軸方向に配向させた後フィルム表面に塗布し、次いで直角方向に配向させる方法などのいずれの方法も可能である。なかでも、一軸配向したポリエステル系フィルム表面に塗布した後直角方向に延伸配向し、結晶化を完了させる方法が、成型加工時の耐熱性、接着性、経済性、クリーン度の点で優れ、最も好ましい方法である。
また、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性の改善のために、フィルム表面に凹凸を形成させることが好ましい。フィルム表面に凹凸を形成させる方法としては、一般にフィルム中に粒子を含有させる方法が用いられる。しかしながら、フィルム中に含有させる粒子は、一般的には屈折率がポリエステルと異なるため、フィルムの透明性を低下させる要因となる。
したがって、フィルムのハンドリング性を維持しながら、フィルムの透明性を高めるためには、基材フィルム中に実質的に粒子を含有させず、易印刷性改良層にのみ粒子を含有させることが有効であり、積層フィルムの厚みd(μm)に対するヘイズH(%)の比(H/d)を0.01未満とするための好適な手段の1つである。また共押し出しによって、極薄い表面層にのみ粒子を含有させる方法によっても目的は達成させる。
上記でいう「基材フィルム中に実質的に粒子を含有させず」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に検出限界以下となる含有量を意味する。これは意識的に粒子を接着性改質層に粒子を添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分などが混入する場合があるためである。
前記易印刷性改良層に含有させる粒子としては、平均粒子径が0.01〜10μmの無機粒子及び/又は有機粒子などが挙げられる。これらの無機粒子及び/又は有機粒子を、重要に応じて二種以上併用させてもよい。
前記易印刷性改良層に平均粒子径が10μmを越える粒子を含有させると、フィルム表面に粗大突起が形成される頻度が増加し、意匠性が悪化する傾向がある。一方、平均粒子径が0.01μm未満の粒子では、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性が低下する傾向がある。
前記無機粒子としては、例えば、湿式法シリカ、乾式法シリカ、コロイダルシリカ、ガラスフィラー、酸化チタン、アルミナ、珪酸アルミニウム、マイカ、カオリン、クレー、ゼオライト、アルミナ−シリカ複合酸化物粒子、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、などが挙げられる。
また、有機粒子としては、スチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼンなどを構成成分とする粒子が挙げられる。
これらの粒子のなかでも、シリカ粒子、ガラスフィラー、シリカ−アルミナ複合酸化物粒子は屈折率がポリエステルに比較的近いため、透明性の点から特に好適である。
さらに、前記易印刷性改良層における粒子含有量は、0.01〜25質量%の範囲であることが好ましい。0.01質量%未満の場合、フィルムの滑り性が悪化したり、巻き取りが困難となったりするなどハンドリング性が低下しやすくなる。一方、25質量%を越えると、透明性や塗布性が悪化しやすくなる。
前記ポリエステル基材フィルムは、経済性の点より単層構成で実施するのが好ましいが、種類の異なるポリエステルを用い、公知の方法で多層構造とすることも何ら制限されない。かかる基材フィルムの多層構成は、特に限定されないが、例えばA/Bの2種2層、B/A/Bの2種3層、C/A/Bの3種3層などが挙げられる。
本発明のエンボス加工用ポリエステルフィルムは、波長380nmにおける光線透過率が50%以下であることが重要であり、35%以下が好ましく、20%以下が特に好ましい。波長380nmにおける光線透過率が50%を超えると、成型用ポリエステルフィルム、特に、該フィルムに印刷を施した場合の印刷層の耐光性が悪化する。
前記の波長380nmにおける光線透過率が50%以下にする方法は限定なく任意であり、前記のエンボス加工用ポリエステルフィルムにおける基材または易印刷性改良層の少なくとも一方に紫外線吸収剤を含有させる方法が推奨される。
前記の方法において用いられる紫外線吸収剤は前記の特性を付与できるものであれば限定なく適宜選択すれば良い。無機系、有機系のどちらでも構わない。有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系等、及びその組み合わせが挙げられる。耐久性の観点からはベンゾトアゾール系、環状イミノエステル系が特に好ましい。2種以上の紫外線吸収剤を併用した場合には、別々の波長の紫外線を同時に吸収させることができるので、いっそう紫外線吸収効果を改善することができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−又は2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−m−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ベンゾイルフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−o−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−シクロヘキシル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−(又はm−)フタルイミドフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、 2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−エチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−テトラメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−デカメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−又は1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,4−シクロヘキシレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼン、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、および2,4,6−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン。2,8−ジメチル−4H,6H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジメチル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,9−ジオン、2,8−ジフェニル−4H,8H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジフェニル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、6,6’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ビス(2−エチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、および6,7’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
前記の有機系紫外線吸収剤を基材フィルムに配合する場合は、押し出し工程で高温に晒されるので、紫外線吸収剤は熱分解開始温度が290℃以上の紫外線吸収剤を用いるのが製膜時の工程汚染を少なくする上で好ましい。熱分解開始温度が290℃以下の紫外線吸収剤を用いると製膜中に紫外線吸収剤の分解物が製造装置のロール群等に付着し、強いてはフィルムに再付着したり、キズを付けたりして光学的な欠点となるため好ましくない。
無機系紫外線吸収剤としては、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物の超微粒子類が挙げられる。
前記の波長380nmにおける光線透過率が50%以下にするもう一つの方法として、この波長域に吸収を有する、例えばナフタレンジカルボン酸等のポリエステルを形成する化合物をポリエステルの共重合成分として用いる方法を挙げることができる。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、各実施例で得られたフィルムの特性は以下の方法により測定、評価した。
(1)固有粘度
チップサンプル0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
(2)厚み斑
横延伸方向に3m、縦延伸方向に5cmの長さの連続したテープ状サンプルを巻き取り、フィルム厚み連続測定機(アンリツ株式会社製)にてフィルムの厚みを測定し、レコーダーに記録する。チャートより、厚みの最大値(dmax)、最小値(dmin)、平均値(d)を求め、下記式にて厚み斑(%)を算出した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。また、横延伸方向の長さが3mに満たない場合は、つなぎ合せて行う。なお、つなぎの部分はデータから削除する。
厚み斑(%)=((dmax−dmin)/d)×100
(3)ヘイズ
JIS−K7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
(4)フィルムの厚み
ミリトロンを用い、1枚当たり5点を計3枚の15点を測定し、その平均値を求めた。
(5)100%伸張時応力、破断伸度
二軸延伸フィルムの長手方向及び幅方向に対して、それぞれ長さ180mm及び幅10mmの短冊状に試料を片刃カミソリで切り出し、この試料を引っ張り試験機(東洋精機株式会社製)を用いて試料を引っ張り、得られた荷重−歪曲線から各方向の100%伸張時応力(MPa)及び破断伸度(%)を求めた。
なお、測定は25℃の雰囲気下で、初期長40mm、チャック間距離100mm、クロスヘッドスピード100mm/min、記録計のチャートスピード200mm/min、ロードセル25kgfの条件にて行った。測定は10回行い平均値を用いた。
また、100℃の雰囲気下でも、上記と同様の条件で引っ張り試験を行った。この際、試料は100℃の雰囲気下で30秒保持した後、測定を行った。測定は10回行い平均値を用いた。
(6)150℃での熱収縮率
フィルムの長手方向及び幅方向に対し、それぞれ長さ250mm及び幅20mmの短冊状試料を切り出す。各試料の長さ方向に200mm間隔で2つの印を付け、5gの一定張力(長さ方向の張力)下で2つの印の間隔Aを測定する。続いて、短冊状の各試料の片側をカゴに無荷重下でクリップにてつるし、150℃の雰囲気下のギアオーブンに入れると同時に時間を計る。30分後、ギアオーブンからカゴを取り出し、30分間室温で放置する。次いで、各試料について、5gfの一定張力(長さ方向の張力)下で、2つの印の間隔Bを金指により0.25mm単位で読み取る。読み取った間隔A及びBより、各試料の150℃での熱収縮率を下記式により算出する。
熱収縮率(%)=((A−B)/A)×100
(7)エンボス加工性
フィルムを130℃に加熱し、200μmおよび20μmの深さを有するエンボスロールと加圧冷却ロール(2kgf/cm)の間に通した。次いで、エンボスロールの凹凸深さDeに対する、エンボス処理されたフィルム表面のエンボス処理部の深さDfの比(Df/De)をエンボス賦型性の尺度とし、次の基準で判定した。
〇:70%超え100%以下
△:50%以上70%未満
×:50%未満
(8)印刷性
印刷前のフィルムを90℃で30分熱処理し、次いで4色のスクリーン印刷を行った。さらに、印刷層を設けたフィルムを80℃で30分乾燥した。印刷性の評価は、印刷ずれや印刷鮮明性を目視評価にて、以下の基準で判定した。なお、◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
◎:印刷鮮明性に優れ、各色での印刷ずれは目視では観察されない。
○:約20cmの位置で目視観察した際に印刷ずれが若干見受けられるが、20cm
以上離れた場合には概ね外観は良好であり、実用上使用可能なレベルである。
×:各色での印刷ずれが見受けられたり、印刷に斑があったりして、著しく外観が悪
い。
(9)紫外線透過率
ダブルビーム型の分光光度計(日立製作所製、U−2001)を用いて、波長380nmにおける光線透過率を測定した。
(10)耐光性
給紙安定性評価で用いた印刷サンプルを用い、暗箱中で蛍光灯ランプ(松下電器社製、U型蛍光灯FUL9EX)の直下3cmの位置で印刷面が裏側になるように設置した。次いで、連続2000時間の照射を行い、印刷面側の照射の前と後での色差(ΔE)をJIS−Z8730にしたがって測定し、ΔE値が0.5以下の場合を合格とした。
実施例1
(塗布液の調整)
共重合ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、バイロナール MD1250)を固形分で3.15質量%、末端イソシアネート基を親水性基でブロックした水溶性ウレタン樹脂(第一工業製薬(株)製、エラストロンH−3)を固形分で5.85質量%、平均粒径0.05μmのシリカ粒子12.0質量%及び平均粒径0.2μmのシリカ粒子0.5質量%を全樹脂に対しシリカ量として12.5質量%含有するように、イソプロパノール40質量%水溶液に添加し、均一混合させて塗布液を調整した。得られた塗布液を、5質量%の重曹水溶液を用いてpH6.5に調整した。次いで、バッグ式フィルター(住友スリーエム(株)製、リキッドフィルターバッグ)で濾過し、塗布液循環系ストックタンク内で、15℃で2時間撹拌した。
(積層フィルムの製造)
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位40モル%及びネオペンチルグリコール単位60モル%を構成成分とする、固有粘度0.69dl/gの共重合ポリエステル(A)と、固有粘度0.69dl/gのポリエチレンテレフタレート(B)をそれぞれ乾燥させた後、これらを25:75(質量比)でチップブレンドして用い、Tダイを有する押出し機を用いて280℃で溶融押出し、表面温度40℃のドラム上で急冷固化して無定形シートを得た。共重合ポリエステル(A)およびポリエチレンテレフタレート(B)ともにベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、チヌビン326)をポリエステル100質量部に対して0.5質量部を配合した。
得られたシートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に92℃で3.5倍に延伸した。得られた一軸延伸フィルムの片面に上記塗布液をリバースキスコート法により延伸前の樹脂固形分厚みが0.9μmとなるように塗布した。塗布層を有するフィルムを乾燥しつつテンターに導き、100℃で15秒予熱し、横延伸の前半部を115℃、後半部を95℃で3.6倍延伸し、7%の横方向の弛緩を行いながら205℃で熱処理を行い、厚さ75μmの積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
比較例1
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位85モル%及びネオペンチルグリコール単位15モル%を構成成分とし、かつ平均粒子径1.5μmの無定形シリカを400ppm含有する、固有粘度0.69dl/gの共重合ポリエステルを予備結晶化後、本乾燥し、Tダイを有する押出し機を用いて280℃で溶融押出し、表面温度40℃のドラム上で急冷固化して無定形シートを得た。
得られたシートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に92℃で3.5倍に延伸した。得られた一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃で15秒予熱し、横延伸の前半部を115℃、後半部を95℃で3.6倍延伸し、7%の横方向の弛緩を行いながら205℃で熱処理を行い、厚さ75μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
実施例2
実施例1において、塗布液中のシリカの含有量を12.5質量%から29.5質量%(平均粒径0.05μmのシリカ粒子28.0質量%及び平均粒径0.2μmのシリカ粒子1.5質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1および2に示す。
比較例2
実施例1において、フィルムの原料として、芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位85モル%及びネオペンチルグリコール単位15モル%を構成成分とし、かつ平均粒子径1.5μmの無定形シリカを400ppm含有する、固有粘度0.69dl/gの共重合ポリエステルを使用した以外は、実施例1と同様にして積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
比較例3
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位100モル%よりなる、固有粘度0.69dl/gのポリエチレンテレフタレートを予備結晶化後、本乾燥し、Tダイを有する押出し機を用いて280℃で溶融押出し、表面温度40℃のドラム上で急冷固化して無定形シートを得た。
得られたシートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に97℃で3.7倍に延伸した。得られた一軸延伸フィルムの片面に前記塗布液をリバースキスコート法により延伸前の樹脂固形分厚みが0.9μmとなるように塗布した。塗布層を有するフィルムを乾燥しつつテンターに導き、100℃で15秒予熱し、横延伸の前半部を120℃、後半部を120℃で4.0倍延伸し、10%の横方向の弛緩を行いながら230℃で熱処理を行い、厚さ75μmの積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
実施例3
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位70モル%及びシクロヘキサンジメタノール単位30モル%を構成成分とする、固有粘度0.71dl/gの共重合ポリエステル(C)とポリエチレンテレフタレート(B)を30:70(質量比)でチップブレンドした。次いで、チップ混合物を乾燥し、Tダイを有する押出し機を用いて280℃で溶融押出し、表面温度40℃のドラム上で急冷固化して無定形シートを得た。共重合ポリエステル(C)およびポリエチレンテレフタレート(B)共にベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、チヌビン326)をポリエステル100質量部に対して0.5質量部を配合した。
得られたシートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に85℃で3.0倍に延伸した。得られた一軸延伸フィルムの片面に実施例1と同じ塗布液をリバースキスコート法により延伸前の樹脂固形分厚みが0.9μmとなるように塗布した。塗布層を有するフィルムを乾燥しつつテンターに導き、105℃で15秒予熱し、横延伸の前半部を125℃、後半部を98℃で3.6倍延伸し、7%の横方向の弛緩を行いながら205℃で熱処理を行い、厚さ75μmの積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
実施例4
実施例1において、共重合ポリエステル(A)と、固有粘度0.69dl/gのポリエチレンテレフタレート(B)をそれぞれ乾燥させた後、これらを33:67(質量比)でチップブレンドして用いたこと以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
実施例5
(塗布液の調整)
ジカルボン酸成分として、テレフタル酸単位50モル%、イソフタル酸単位45モル%、フマル酸5モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位50モル%、ネオペンチルグリコール50モル%を構成成分とし、還元粘度が0.50dl/gであるポリエステル80質量部に対し、単量体としてスチレン10質量部、無水マレイン酸10質量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを前記単量体の総量に対し6質量%を用い、80℃の温度下でイソプロパノールを20質量%含有する2−ブタノン溶液中でグラフト変成を行った。
グラフト反応後、エタノールで酸無水物(無水マレイン酸)部位を開環し、アンモニアで中和した。次いで、溶媒を水で置換し、GPCによって測定した数平均分子量が17,000、中和前の樹脂酸価が900eq/ton、固形分濃度が25質量%のグラフト変成ポリエステル樹脂分散液を得た。
(積層フィルムの製造)
実施例1において、塗布液として上記で得られたグラフト変成ポリエステル樹脂分散液を使用したこと以外は実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
実施例6
塗布液として、アクリル樹脂(大日本インキ工業(株)製、ボンコートR−3380A)とメラミン樹脂(住友化学工業(株)製、スミマールM−40W)をそれぞれ樹脂固形分の質量比で70/30となるよう混合したものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。