JP2012066586A - 成型同時転写用ポリエステルフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】十分な成型性、耐熱性および転写適性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】主たる構成成分以外の共重合成分を1種以上含有し、かつ主たる構成成分の含有量が90モル%以下であるポリエステルからなるB層の少なくとも片側に、主たる構成成分の含有量が80モル%以上であるポリエステルからなるA層を積層した構造を有するフィルムであって、A層の融点(TmA)が190〜260℃、B層の融点(TmB)が180〜230℃の範囲であり、それぞれの融点の差(TmA−TmB)が5℃以上であり、かつフィルムの貯蔵弾性率E’が80℃で810〜1100MPa、160℃で10〜80MPaの範囲であることを特徴とする成型同時転写用ポリエステルフィルム。
【選択図】なし
【解決手段】主たる構成成分以外の共重合成分を1種以上含有し、かつ主たる構成成分の含有量が90モル%以下であるポリエステルからなるB層の少なくとも片側に、主たる構成成分の含有量が80モル%以上であるポリエステルからなるA層を積層した構造を有するフィルムであって、A層の融点(TmA)が190〜260℃、B層の融点(TmB)が180〜230℃の範囲であり、それぞれの融点の差(TmA−TmB)が5℃以上であり、かつフィルムの貯蔵弾性率E’が80℃で810〜1100MPa、160℃で10〜80MPaの範囲であることを特徴とする成型同時転写用ポリエステルフィルム。
【選択図】なし
Description
本発明は成型性に優れた成型同時転写用ポリエステルフィルムに関する。詳しくは、本発明は、優れた成型性、耐熱性および転写適正を有し、しぼり率の高い深絞り成型に好適な成型転写用ポリエステルフィルムに関するものである。
近年、成型品への印刷手法として、成型と同時に転写印刷も行う、いわゆる成型同時転写法が普及しつつある。この方法に使用するフィルムとして、強度、耐熱性等の特性の点から、二軸延伸ポリエステルフィルムが用いられている。
最近では、成型時のしぼり率がますます高くなるとともに、高品質な成型転写が要求されるようになり、特に成型品として、冷蔵庫や自動車用途のように、大型でかつしぼり率が高いものが求められるようになるにつれ、従来のフィルムに対し深絞り成型性と寸法安定性に関する高度な特性が求められるようになり、フィルムの改良が強く望まれるようになった。
さらに、しぼり率が高くなるため、変形させる際に加熱しフィルムの変形性を向上させる必要があることから、高温でのフィルムの耐久性も必要となる。耐久性とは、加工温度でフィルムが融解しないこと、高温にて軟化しても金型とフィルム間の空気の膨張によりフィルムが変形して裂ける等の問題が起こらないことを言う。
また、フィルムを金型に沿わせた(以下、予備成型と表記する)後、樹脂を射出する際、樹脂の温度は通常200℃以上であるため、フィルムの結晶化度が低すぎると、樹脂の熱と射出による樹脂とのずり応力により、フィルムにシワが入り、精密な転写ができないという問題が発生する。かかる観点からも優れた転写適性を有したフィルムが望まれている。
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであり、その解決課題は、十分な成型性、耐熱性および転写適性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることをみいだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、主たる構成成分以外の共重合成分を1種以上含有し、かつ主たる構成成分の含有量が90モル%以下であるポリエステルからなるB層の少なくとも片側に、主たる構成成分の含有量が80モル%以上であるポリエステルからなるA層を積層した構造を有するフィルムであって、A層の融点(TmA)が190〜260℃、B層の融点(TmB)が180〜230℃の範囲であり、それぞれの融点の差(TmA−TmB)が5℃以上であり、かつフィルムの貯蔵弾性率E’が80℃で810〜1100MPa、160℃で10〜80MPaの範囲であることを特徴とする成型同時転写用ポリエステルフィルムに存する。
本発明によれば、十分な成型加工性を有しながら精彩な印刷が可能である、転写箔の基材樹脂として好適な成型転写用二軸延伸フィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
まず、本発明における主たる構成成分とは、ジカルボン酸とジオールの脱水縮合により得られる、いわゆる繰り返し単位と呼ばれる、ヒドロキシカルボン酸のことを指す。
本発明のフィルムを構成するポリエステルは、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸が好ましく、これらのほかに、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの公知のジカルボン酸の一種以上を、共重合成分として含んでいてもよい。また、ジオール成分としては、エチレングリコールが好ましく、これらのほかに、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの公知のジオールの一種以上を、共重合成分として含んでいてもよい。
本発明において、ポリエステルの構成成分としては、上記のジカルボン酸成分およびジオール成分のほか、種々の酸成分およびアルコール成分を含むことができる。例えば、p−オキシ安息香酸のようなオキシカルボン酸、安息香酸、ベンゾイル安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの一官能性化合物は修飾成分として、トリメシン酸、トリメリト酸、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多官能性化合物は共重合成分として、生成物ポリエステルが実質的に線状の高分子を保持し得る範囲内で、使用することができる。
次に本発明におけるA層を構成するポリエステル樹脂としては、上述の主たる構成成分が好ましく用いられるが、耐熱性、寸法安定性の観点から、主たる構成成分の含有量が80モル%以上であることが必要であり、好ましくは85モル%以上である。
一方、B層を構成するポリエステル樹脂は、上述の主たる構成成分以外の共重合成分を1種類以上含有する必要がある。B層が主たる構成成分以外の共重合成分を含有しない場合、十分な耐熱性は得られるが成形性を失ってしまうため、好ましくない。また、耐熱性、成形性の両立の観点から、主たる構成成分の含有量が90モル%以下であることが必要であり、好ましくは80モル%以下である。
本発明において、耐熱性、成型加工性、転写適性の観点から、A層の融点(TmA)は190〜260℃、好ましくは200〜255℃、さらに好ましくは205〜250℃の範囲であり、B層の融点(TmB)は180〜230℃、好ましくは185〜225℃、さらに好ましくは190〜220℃の範囲であり、それぞれの融点の差(TmA−TmB)が5℃以上であり、好ましくは10℃以上ある。A層の融点が190℃未満である場合は、耐熱性、転写適性に劣り、B層の融点が230℃を超える場合は、成型性、生産性に劣るため好ましくない。また、それぞれの融点の差(TmA−TmB)が5℃未満である場合は、成形性に劣るため好ましくない。
また、本発明のフィルムは、動的粘弾性測定装置による周波数10Hzで測定した貯蔵弾性率E’が80℃で810〜1100MPaの範囲であり、160℃で10〜80MPa、好ましくは20〜70MPa、さらに好ましくは30〜60MPaの範囲である。貯蔵弾性率が80℃で810MPa未満あるいは、160℃で10MPa未満である場合は、耐熱性、転写適性に劣り、80℃で1100MPaを超えるあるいは、160℃で80MPaを越える場合は、成型性、生産性に劣るため好ましくない。
本発明において、フィルムの面配向係数ΔPは、通常0.020〜0.150の範囲であることが好ましく、さらには0.030〜0.140の範囲であることが好ましい。面配向係数ΔPが0.150を超える場合は、成型性に劣る傾向があり、0.020未満である場合は、耐熱性に劣る傾向がある。
また、本発明において、フィルムの複屈折率Δnは、通常0.020以下であることが好ましく、さらには0.015以下であることが好ましい。Δnが0.020を超える場合は、成型時の伸び率にばらつきが生じ、印刷歪みの原因となることがある。
本発明のフィルムの収縮特性に関し、その測定法については後に詳記するが、150℃で3分間処理後の加熱収縮率が、縦、横両方ともに4.0%以下であることが好ましい。縦または横の加熱収縮率が4.0%を上回るフィルムは、加工工程中の加熱区間においてフィルムの縮みが大きく、操作上好ましくない。
本発明において、フィルムの易滑性向上等を付与するために、粒子を添加することも好ましい。例えば、フィルムの易滑性を向上させるためには、ポリエステル組成物は、有機、無機の微粒子を配合したものが好ましく、必要に応じて安定剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、帯電防止剤などの添加剤をさらに配合してもよい。滑り性を付与する微粒子は、配合の方法に従い、外部粒子と内部粒子とに大別される。前者の例としては、カオリン、クレー、各種炭酸カルシウム、酸化ケイ素、テレフタル酸カルシウム、α−、γ−、δ−、θ−等の酸化アルミニウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、フッ化リチウム、カーボンブラックなどの公知の不活性外部粒子が挙げられる。また、後者の例としては、ポリエステルの溶融製膜に際して不溶な高融点有機化合物、単分散球状有機粒子、粉砕型の有機粒子、架橋ポリマーおよびポリエステル合成時に使用する金属化合物触媒、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などによってポリエステル製造時にポリマー内部に形成される内部粒子などが挙げられる。これらの微粒子は、フィルム中の表面を構成する層に対する含有量が通常0.002〜2.0重量%の範囲内であり、平均粒径が0.001〜3.5μmの範囲内にあるのが好ましい。
また、本発明のフィルムの2次元表面粗さRaは40nm以下であることが好ましく、さらには35nm以下であることが好ましい。Raが40nmを超える場合は、表面粗さが印刷層に転写されて成型品の表面光沢が失われることがある。
次に、本発明のフィルムの製造法を具体的に説明するが、本発明の構成要件を満足する限り、以下の例示のみに限定されるものではない。
滑り剤として、有機、無機の微粒子を適量配合してチップ化したポリエステル組成物を、ホッパードライヤー、パドルドライヤー、オーブンなどの、通常用いられる乾燥機または真空乾燥機を用いて乾燥する。前段で、チップを結晶化させて相互の融着が起こらないように(予備結晶化ともいう)、また後段で、水分量を十分に減少させるように(本乾燥ともいう)、乾燥を行う。このように乾燥した後、200〜320℃でシートに押出す。押出しに際しては、ポリエステルの溶融押出機を2台または3台以上用いて、いわゆる共押出法により2層または3層以上の積層フィルムとすることができる。層の構成としては、A原料とB原料とを用いたA/B構成、またはA/B/A構成、さらにC原料を用いてA/B/C構成またはそれ以外の構成のフィルムとすることができる。例えばA原料として特定の粒子を用いてA層の表面形状を設計し、B原料としては粒子を含有しない原料を用い、A/BまたはA/B/A構成のフィルムとすることができる。この場合B層の原料を自由に選択できることからコスト的な利点などが大きい。また当該フィルムの再生原料をB層に配合しても表層であるA層により表面粗度の設計ができるので、さらにコスト的な利点が大きくなる。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
得られた未配向シートを、縦および横方向に少なくとも面積倍率で6倍以上、好ましくは8倍以上、さらに好ましくは8倍以上16倍以下となるよう延伸して、二軸配向フィルムを得る。必要に応じて、該フィルムを縦および/または横方向に再延伸を行なった後、好ましくは120℃〜210℃の範囲内の温度で熱処理を行ない、所望のフィルムを得る。
熱処理工程の好ましい態様は、熱処理の最高温度のゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、横方向および/または縦方向に0.1〜15%の弛緩を行うことである。特に、横方向には、1〜15%の弛緩を行うことが好ましい。また、熱処理工程は、二段にわけて行うこともできる。
前記延伸工程においてまたはその後に、フィルムに接着性、帯電防止性、滑り性、離型性等を付与するために、フィルムの片面または両面に塗布層を形成したり、コロナ処理等の放電処理を施したりすることなどもできる。
本発明のフィルムの厚さは、通常10〜200μmであり、好ましくは20〜150μm、さらに好ましくは30〜100μmである。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、この実施例に限定されるものではない。なお、フィルムの諸物性の測定および評価方法を以下に示す。
(1)融解ピーク温度(Tm)
TA Instruments社製の示差走査熱量計「DSC−2920型」を使用し、試料5mgを0℃から300℃まで20℃/min.の速度で昇温させた際に得られる融解に伴う吸熱ピークの温度をTmとした。上述の方法により得た融解ピーク温度の内、B層融点は、製膜したフィルムの表層(A層)を除去したフィルムから得られた融解ピーク温度とし、A層融点は、B層融点と異なる融解ピーク温度とした。
TA Instruments社製の示差走査熱量計「DSC−2920型」を使用し、試料5mgを0℃から300℃まで20℃/min.の速度で昇温させた際に得られる融解に伴う吸熱ピークの温度をTmとした。上述の方法により得た融解ピーク温度の内、B層融点は、製膜したフィルムの表層(A層)を除去したフィルムから得られた融解ピーク温度とし、A層融点は、B層融点と異なる融解ピーク温度とした。
(2)貯蔵弾性率E’
アイティー計測制御(株)製動的粘弾性測定装置(DVA−200型)を使用した。幅5mmのフィルムをチャック間20mmとなるように測定装置にセットし、0℃から300℃まで10℃/min.の速度で昇温させながら、周波数10Hzで粘弾性の推移を測定した。
アイティー計測制御(株)製動的粘弾性測定装置(DVA−200型)を使用した。幅5mmのフィルムをチャック間20mmとなるように測定装置にセットし、0℃から300℃まで10℃/min.の速度で昇温させながら、周波数10Hzで粘弾性の推移を測定した。
(3)面配向度(ΔP)、複屈折率(Δn)
アタゴ製アッベ式屈折計を使用した。ヨウ化メチレンをマウントして、試料フィルムを測定面が下になるようにプリズムに密着させ、単色光ナトリウムD線(589nm)を光源として、主配向方向の屈折率nγ、それに対し面内垂直方向の屈折率nβ、および厚み方向の屈折率nαを測定した。得られた値から下記式により各層の面配向係数ΔPおよび複屈折率Δnを求めた。なお、測定試料は製品マスターロールの中央部より採取した。
ΔP=(nγ+nβ)/2−nα
Δn=nγ−nβ
アタゴ製アッベ式屈折計を使用した。ヨウ化メチレンをマウントして、試料フィルムを測定面が下になるようにプリズムに密着させ、単色光ナトリウムD線(589nm)を光源として、主配向方向の屈折率nγ、それに対し面内垂直方向の屈折率nβ、および厚み方向の屈折率nαを測定した。得られた値から下記式により各層の面配向係数ΔPおよび複屈折率Δnを求めた。なお、測定試料は製品マスターロールの中央部より採取した。
ΔP=(nγ+nβ)/2−nα
Δn=nγ−nβ
(4)中心線平均粗さ(Ra)
中心線平均粗さRa(μm)をもって表面粗さとする。(株)小坂研究所社製表面粗さ測定機(SE−3F)を用いて次のようにして求めた。即ち、フィルム断面曲線からその中心線の方向に基準長さL(2.5mm)の部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をx軸、縦倍率の方向をy軸として粗さ曲線 y=f(x)で表わしたとき、次の式で与えられた値を〔μm〕で表わす。中心線平均粗さは、試料フィルム表面から10本の断面曲線を求め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の中心線平均粗さの平均値で表わした。なお、触針の先端半径は2μm、荷重は30mgとし、カットオフ値は0.08mmとした。
Ra=1/L∫0 L|f(x)|dx
中心線平均粗さRa(μm)をもって表面粗さとする。(株)小坂研究所社製表面粗さ測定機(SE−3F)を用いて次のようにして求めた。即ち、フィルム断面曲線からその中心線の方向に基準長さL(2.5mm)の部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をx軸、縦倍率の方向をy軸として粗さ曲線 y=f(x)で表わしたとき、次の式で与えられた値を〔μm〕で表わす。中心線平均粗さは、試料フィルム表面から10本の断面曲線を求め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の中心線平均粗さの平均値で表わした。なお、触針の先端半径は2μm、荷重は30mgとし、カットオフ値は0.08mmとした。
Ra=1/L∫0 L|f(x)|dx
(5)極限粘度
測定試料をフェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量部)の溶媒に溶解させて濃度c=0.01g/cm3の溶液を調製し、30℃にて溶媒との相対粘度ηrを測定し、極限粘度[η]を求めた。
測定試料をフェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量部)の溶媒に溶解させて濃度c=0.01g/cm3の溶液を調製し、30℃にて溶媒との相対粘度ηrを測定し、極限粘度[η]を求めた。
(6)加熱収縮率
150±2℃の温度のオーブン中において、縦10cm、横10cmのフィルムを無負荷の状態で3分間収縮させ、縦および横方向についての加熱収縮率を次式により算出した。
加熱収縮率(%)=100×(L0−L)/L0
ただし、L0はフィルムの原長(cm)であり、Lは収縮後の長さ(cm)である。
150±2℃の温度のオーブン中において、縦10cm、横10cmのフィルムを無負荷の状態で3分間収縮させ、縦および横方向についての加熱収縮率を次式により算出した。
加熱収縮率(%)=100×(L0−L)/L0
ただし、L0はフィルムの原長(cm)であり、Lは収縮後の長さ(cm)である。
(7)成型同時転写用フィルムとしての耐熱性
図1に示すように、ポリエステルフィルムに離型層、印刷層および接着層を形成し、縦35cm、横25cm、最大深さ3.0cmの金型を用い、IRヒーターで予備加熱後、金型内部に真空または圧空成型法により予備成型を実施した。予備加熱によるフィルムの融解状況より、下記基準で耐熱性の評価を行った。
○:加工温度に耐久でき、予備成型に対応できる
△:予備成型に対応できるが、稀にフィルム軟化による膨張が発生する
×:フィルム融解による穴開きあるいは、フィルム軟化による膨張が頻繁に発生
図1に示すように、ポリエステルフィルムに離型層、印刷層および接着層を形成し、縦35cm、横25cm、最大深さ3.0cmの金型を用い、IRヒーターで予備加熱後、金型内部に真空または圧空成型法により予備成型を実施した。予備加熱によるフィルムの融解状況より、下記基準で耐熱性の評価を行った。
○:加工温度に耐久でき、予備成型に対応できる
△:予備成型に対応できるが、稀にフィルム軟化による膨張が発生する
×:フィルム融解による穴開きあるいは、フィルム軟化による膨張が頻繁に発生
(8)成型同時転写用フィルムとしての成型性
上記(7)の方法にて予備成型を実施した際、成型によるフィルムの破断の頻度により、下記基準で成型性の評価を行った。
○:フィルム破断、クラック発生等がなく、均一な厚さで成型される
△:フィルム破断はしないが、局所的にフィルムが極めて薄い部分が存在する
×:フィルムが頻発に破断する
上記(7)の方法にて予備成型を実施した際、成型によるフィルムの破断の頻度により、下記基準で成型性の評価を行った。
○:フィルム破断、クラック発生等がなく、均一な厚さで成型される
△:フィルム破断はしないが、局所的にフィルムが極めて薄い部分が存在する
×:フィルムが頻発に破断する
(9)成型同時転写用フィルムとしての適性
上記(7)の方法にて予備成型を実施した後、樹脂を射出し、成型転写を行った。得られた成型品への印刷の図柄の抜けや歪みの状態により、下記基準で適性の評価を行った。
○:印刷抜け、歪みが全くない
△:印刷抜け、歪みがほとんどない
×:印刷抜け、歪みがある
上記(7)の方法にて予備成型を実施した後、樹脂を射出し、成型転写を行った。得られた成型品への印刷の図柄の抜けや歪みの状態により、下記基準で適性の評価を行った。
○:印刷抜け、歪みが全くない
△:印刷抜け、歪みがほとんどない
×:印刷抜け、歪みがある
次に実施例に使用するポリエステル原料について説明する。
<ポリエステル(1)の製造法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.03部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.680に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(1)の極限粘度は0.680であった。
<ポリエステル(1)の製造法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.03部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.680に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(1)の極限粘度は0.680であった。
<ポリエステル(2)の製造法>
出発原料をテレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール54重量部と1,4−シクロヘキサンジメタノール25重量部とし、触媒としてテトラブトキシチタネート0.011重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とし、さらに1時間反応を継続した。その後、温度を230℃から徐々に昇温すると共に圧力を常圧より徐々に減じ、最終的に温度を280℃、圧力を0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.70に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(2)の極限粘度は0.700、1,4−シクロヘキサンジメタノールの含有量は33モル%であった。
出発原料をテレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール54重量部と1,4−シクロヘキサンジメタノール25重量部とし、触媒としてテトラブトキシチタネート0.011重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とし、さらに1時間反応を継続した。その後、温度を230℃から徐々に昇温すると共に圧力を常圧より徐々に減じ、最終的に温度を280℃、圧力を0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.70に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(2)の極限粘度は0.700、1,4−シクロヘキサンジメタノールの含有量は33モル%であった。
<ポリエステル(3)の製造法>
ポリエステル(1)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径2.2μmのシリカ粒子を0.3部、三酸化アンチモン0.03部を加えて、極限粘度0.610に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(1)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(3)を得た。得られたポリエステル(3)は、極限粘度0.610であった。
ポリエステル(1)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径2.2μmのシリカ粒子を0.3部、三酸化アンチモン0.03部を加えて、極限粘度0.610に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(1)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(3)を得た。得られたポリエステル(3)は、極限粘度0.610であった。
<ポリエステル(4)の製造法>
ジカルボン酸成分としてイソフタル酸およびテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールをそれぞれ使用し、定法の溶融重縮合法で製造したものを使用した。この原料のジカルボン酸成分中イソフタル酸の含有量は22モル%であった。
ジカルボン酸成分としてイソフタル酸およびテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールをそれぞれ使用し、定法の溶融重縮合法で製造したものを使用した。この原料のジカルボン酸成分中イソフタル酸の含有量は22モル%であった。
実施例1:
ポリエステル(3):ポリエステル(4)=35:65の配合比で、室温で十分に攪拌・混合したものをA層、ポリエステル(1):ポリエステル(2):ポリエステル(4)=10:50:40の配合比で同様に攪拌・混合したものをB層に相当するように、280℃でTダイを有する押出機より押出し、静電印加法を適用して急冷固化し、無定形シートを得た。得られたシートを縦方向に80℃で3.4倍延伸した後、続いて100℃で横方向に3.4倍延伸し、5%の幅方向の弛緩を行ないながら182℃で熱処理を行なった。得られたフィルムの平均厚さは75μmであった。得られたフィルムの特性は下記表1のとおりであり、優れた特性を示した。
ポリエステル(3):ポリエステル(4)=35:65の配合比で、室温で十分に攪拌・混合したものをA層、ポリエステル(1):ポリエステル(2):ポリエステル(4)=10:50:40の配合比で同様に攪拌・混合したものをB層に相当するように、280℃でTダイを有する押出機より押出し、静電印加法を適用して急冷固化し、無定形シートを得た。得られたシートを縦方向に80℃で3.4倍延伸した後、続いて100℃で横方向に3.4倍延伸し、5%の幅方向の弛緩を行ないながら182℃で熱処理を行なった。得られたフィルムの平均厚さは75μmであった。得られたフィルムの特性は下記表1のとおりであり、優れた特性を示した。
実施例2:
A層に使用する樹脂の混合比をポリエステル(3):ポリエステル(4)=70:30とし、1,4−シクロヘキサンジメタノールの含有量が16モル%、イソフタル酸の含有量が7モル%となるように重合したポリエチレンテレフタレートをB層に用いる以外は実施例1と同様の方法で厚み75μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1のとおりであり、優れた特性を示した。
A層に使用する樹脂の混合比をポリエステル(3):ポリエステル(4)=70:30とし、1,4−シクロヘキサンジメタノールの含有量が16モル%、イソフタル酸の含有量が7モル%となるように重合したポリエチレンテレフタレートをB層に用いる以外は実施例1と同様の方法で厚み75μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1のとおりであり、優れた特性を示した。
比較例1:
A層に使用する樹脂の混合比をポリエステル(3):ポリエステル(4)=25:75、B層に使用する樹脂の混合比をポリエステル(2):ポリエステル(4)=50:50に変更した以外は実施例1と同様の方法で厚み75μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1のとおりであり、貯蔵弾性率が低いため耐熱性に劣り、成型同時転写用フィルムとしての適性にも劣っていた。
A層に使用する樹脂の混合比をポリエステル(3):ポリエステル(4)=25:75、B層に使用する樹脂の混合比をポリエステル(2):ポリエステル(4)=50:50に変更した以外は実施例1と同様の方法で厚み75μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1のとおりであり、貯蔵弾性率が低いため耐熱性に劣り、成型同時転写用フィルムとしての適性にも劣っていた。
比較例2:
A層に使用する樹脂の混合比をポリエステル(1):ポリエステル(3)=70:30、B層に使用する樹脂の混合比をポリエステル(1):ポリエステル(4)=60:40に変更した以外は実施例1と同様の方法で厚み75μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1のとおりであり、貯蔵弾性率が大きいため、耐熱性に優れているものの成型性に劣っていた。
A層に使用する樹脂の混合比をポリエステル(1):ポリエステル(3)=70:30、B層に使用する樹脂の混合比をポリエステル(1):ポリエステル(4)=60:40に変更した以外は実施例1と同様の方法で厚み75μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1のとおりであり、貯蔵弾性率が大きいため、耐熱性に優れているものの成型性に劣っていた。
比較例3:
ポリエステル(2)とポリエステル(3)とポリエステル(4)とを配合比55:5:40でブレンドしたものを280℃でTダイを有する押出機より単層で押出し、実施例1と同様の方法で厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1のとおりであり、単層かつ160℃での貯蔵弾性率が低いため耐熱性に劣り、予備成型にも耐えられなかったため成型性の評価はできなかった。
ポリエステル(2)とポリエステル(3)とポリエステル(4)とを配合比55:5:40でブレンドしたものを280℃でTダイを有する押出機より単層で押出し、実施例1と同様の方法で厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1のとおりであり、単層かつ160℃での貯蔵弾性率が低いため耐熱性に劣り、予備成型にも耐えられなかったため成型性の評価はできなかった。
上記表中、IPAはイソフタル酸、CHDMは1,4−シクロヘキサンジメタノール、ETはエチレンテレフタレートをそれぞれ意味する。
本発明のフィルムは、例えば、成形同時転写用のベースフィルムとして好適に利用することができる。
1 金型
2 射出成型機
3 フィルム
4 離型層、印刷層および接着層からなる層
2 射出成型機
3 フィルム
4 離型層、印刷層および接着層からなる層
Claims (1)
- 主たる構成成分以外の共重合成分を1種以上含有し、かつ主たる構成成分の含有量が90モル%以下であるポリエステルからなるB層の少なくとも片側に、主たる構成成分の含有量が80モル%以上であるポリエステルからなるA層を積層した構造を有するフィルムであって、A層の融点(TmA)が190〜260℃、B層の融点(TmB)が180〜230℃の範囲であり、それぞれの融点の差(TmA−TmB)が5℃以上であり、かつフィルムの貯蔵弾性率E’が80℃で810〜1100MPa、160℃で10〜80MPaの範囲であることを特徴とする成型同時転写用ポリエステルフィルム。
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JP2011232345A JP2012066586A (ja) | 2011-10-24 | 2011-10-24 | 成型同時転写用ポリエステルフィルム |
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-
2011
- 2011-10-24 JP JP2011232345A patent/JP2012066586A/ja active Pending
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