JP2006291031A - 微小たんぱく質不活化素材 - Google Patents
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Abstract
【課題】 アレルゲン、ウイルス等の微小たんぱく質と抗菌剤との接触頻度が高く、微小たんぱく質が接触してから短時間で不活化される、十分に高い微小たんぱく質の不活化効果が得られる微小たんぱく質不活化素材及び該素材を用いた微小たんぱく質不活化製品の提供。
【解決手段】 抗菌性金属イオンが担持された無機多孔結晶を親水性高分子内部に含有した無機多孔結晶−親水性高分子複合体よりなる微小たんぱく質不活化素材。該素材は織物、編物、不織布又は紙等のシート状物の形態を採ることができ、種々の生活又は産業用の繊維製品に加工することで、微小たんぱく質不活化製品を実現できる。
【選択図】 なし
【解決手段】 抗菌性金属イオンが担持された無機多孔結晶を親水性高分子内部に含有した無機多孔結晶−親水性高分子複合体よりなる微小たんぱく質不活化素材。該素材は織物、編物、不織布又は紙等のシート状物の形態を採ることができ、種々の生活又は産業用の繊維製品に加工することで、微小たんぱく質不活化製品を実現できる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、微小たんぱく質不活化素材及び該素材を用いた微小たんぱく質不活化製品に関する。詳しくは、抗菌性金属イオンが担持された無機多孔結晶を親水性高分子内部に含有した無機多孔結晶−親水性高分子複合体よりなる微小たんぱく質不活化素材及び該素材を用いた微小たんぱく質不活化製品に関する。
10人に一人と言われるスギ花粉症は、近年スギ花粉飛散量の増加に伴い、これまで症状の出なかった人にまで影響を及ぼし、政府が対策に乗り出すほどの国民疾患である。これはスギ花粉の中に含まれるCrij1と呼ばれるたんぱく質が体内の免疫機関に異物として認識され、体外に出すようにヒスタミンと呼ばれる物質が分泌されて発症する。ほとんど多くの内服薬は、ヒスタミンを感覚器官に入らないようにするものであり、対症療法である。このため体内に入ってもヒスタミンを出さないようにアレルゲン自体を不活化する技術が望まれている。
一方、近年、地球温暖化を背景として、日本列島が亜熱帯化し、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、SARSウイルス、鯉ヘルペスウイルス、西ナイルウイルス、トリインフルエンザウイルス等の感染による被害が社会的問題となっている。これらのウイルスは変異を繰り返すことで容易に形を変え、従来の薬が全く効かなくなるいわゆる「耐性」を獲得するため、人体に感染する前にウイルスを不活化する技術が望まれている。
このような要求に応えるために、例えば、特許文献1には、抗菌性ゼオライトを付着固定させて、細菌、真菌、又は、ウイルスなどの非細菌による感染や発病、炎症などを防ぐために用いる抗菌性予防用素材(布状物)が、また、特許文献2には、銀ゼオライトと、プリン塩基類、ピリミジン塩基類またはチアベンダゾールより選ばれた1種または2種以上の成分とからなる配合物を織布又は不織布にバインダーで固定してなる衛生マスクが、また、特許文献3には、銀、銅、亜鉛の化合物をコーティング剤として使用して、細菌、真菌、藻類、原生動物およびウイルスからなる群を抑制する方法が提案されている。しかし、これらの技術では、抗菌剤を固定するためのバインダー成分や、抗菌剤をコーティング剤としての所望の化合物形態にする際に使用される他の材料(物質)等の存在により、抗菌剤とウイルスとの接触の頻度が少なくなり、ウイルスの不活化効果が弱くなること、特に、バインダーを用いて固定化する方法では、洗濯や抄紙工程による脱落や、抗菌成分の溶出により不活化能力が低下し実用的でないといった問題がある。
一方、上述の抗菌剤を有効に利用する方法として、親水性高分子基材(セルロース基材)の実体内に無機多孔結晶を生成させ、これに銀、銅、亜鉛等の金属(抗菌剤)を担持させた無機多孔結晶−親水性高分子複合体が開示されている(特許文献4)。しかし、当該無機多孔結晶−親水性高分子複合体においても、銀、銅、亜鉛等の金属(抗菌剤)を担持した無機多孔結晶が、親水性高分子基材(セルロース基材)の実体内、すなわち、セルロース基材を構成する高分子物質の内部(例えば、セルロース繊維の細胞壁表面、細胞壁内に存在する細孔および細胞内腔(ルーメン)は含まれない。)に含有されるので、必ずしも抗菌剤とウイルスとの接触頻度が十分に高められているとは言い難く、改善の余地を残している。
特開平7−96024号公報
特開2004−344351号公報
特表平8−505858号公報
特許3317660号
上記事情に鑑み、本発明の課題は、アレルゲン、ウイルス等の微小たんぱく質と抗菌剤との接触頻度が高く、微小たんぱく質が接触してから短時間で不活化される、十分に高い微小たんぱく質の不活化効果が得られる微小たんぱく質不活化素材及び該素材を用いた微小たんぱく質不活化製品を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を採る。
(1)抗菌性金属イオンが担持された無機多孔結晶を親水性高分子内部に含有する無機多孔結晶−親水性高分子複合体よりなる、微小たんぱく質不活化素材。
(2)抗菌性金属イオンが、銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンからなる群から選ばれる少なくとも一種である、上記(1)記載の微小たんぱく質不活化素材。
(3)無機多孔結晶がゼオライトである、上記(1)又は(2)記載の微小たんぱく質不活化素材。
(4)無機多孔結晶−親水性高分子複合体の形態が、織物、編物、不織布又は紙である、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の微小たんぱく質不活化素材。
(5)微小たんぱく質が、スギアレルゲン、ヒノキアレルゲン、小麦アレルゲン、ブタクサアレルゲン、トクサアレルゲン、カビアレルゲン、ダニアレルゲン、卵アレルゲン、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、SARSウイルス、鯉ヘルペスウイルス、西ナイルウイルス及びトリインフルエンザウイルスから選ばれる1種又は2種以上である、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の微小たんぱく質不活化素材。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の微小たんぱく質不活化素材を用いてなる、微小たんぱく質不活化製品。
(7)当該製品が、衛生マスク;自動車、電車、飛行機若しくは船舶用のシートカバー;ダクト、エアコン若しくは空気清浄機用の気相フィルター;農業用保護シート;医療用身装品若しくは寝具類;観賞魚若しくは養殖魚用の囲い網;農業用育苗マット、又は液相フィルターである、上記(6)記載の微小たんぱく質不活化製品。
(1)抗菌性金属イオンが担持された無機多孔結晶を親水性高分子内部に含有する無機多孔結晶−親水性高分子複合体よりなる、微小たんぱく質不活化素材。
(2)抗菌性金属イオンが、銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンからなる群から選ばれる少なくとも一種である、上記(1)記載の微小たんぱく質不活化素材。
(3)無機多孔結晶がゼオライトである、上記(1)又は(2)記載の微小たんぱく質不活化素材。
(4)無機多孔結晶−親水性高分子複合体の形態が、織物、編物、不織布又は紙である、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の微小たんぱく質不活化素材。
(5)微小たんぱく質が、スギアレルゲン、ヒノキアレルゲン、小麦アレルゲン、ブタクサアレルゲン、トクサアレルゲン、カビアレルゲン、ダニアレルゲン、卵アレルゲン、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、SARSウイルス、鯉ヘルペスウイルス、西ナイルウイルス及びトリインフルエンザウイルスから選ばれる1種又は2種以上である、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の微小たんぱく質不活化素材。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の微小たんぱく質不活化素材を用いてなる、微小たんぱく質不活化製品。
(7)当該製品が、衛生マスク;自動車、電車、飛行機若しくは船舶用のシートカバー;ダクト、エアコン若しくは空気清浄機用の気相フィルター;農業用保護シート;医療用身装品若しくは寝具類;観賞魚若しくは養殖魚用の囲い網;農業用育苗マット、又は液相フィルターである、上記(6)記載の微小たんぱく質不活化製品。
本発明によれば、アレルゲン、ウイルス等の微小タンパク質に接触すると、これらを短時間で不活化し得る、十分に高い微小たんぱく質の不活化効果が得られる微小たんぱく質不活化素材を提供できる。また、当該微小たんぱく質不活化素材はその優れた不活化効果(不活化能力)の持続性にも優れる。
本発明の微小たんぱく質不活化素材は、織物、編物、不織布又は紙等のシート状物の形態を採ることができるので、アレルゲンの不活化又は/及びウイルスの感染予防を目的とする衛生マスク等の衛材品に使用できる他、自動車、電車、飛行機若しくは船舶用のシートカバー;ダクト、エアコン若しくは空気清浄機用の気相フィルター;農業用保護シート;医師や看護士、救急隊員等のユニフォームや帽子、くつの生地、手袋、患者のシーツ等の医療用身装品若しくは寝具類;観賞魚若しくは養殖魚用の囲い網;農業用育苗マット;液相フィルター等の種々の生活又は産業用の繊維製品に使用でき、これらに微小たんぱく質の不活化機能を付与することができる。
本発明の微小たんぱく質不活化素材は、織物、編物、不織布又は紙等のシート状物の形態を採ることができるので、アレルゲンの不活化又は/及びウイルスの感染予防を目的とする衛生マスク等の衛材品に使用できる他、自動車、電車、飛行機若しくは船舶用のシートカバー;ダクト、エアコン若しくは空気清浄機用の気相フィルター;農業用保護シート;医師や看護士、救急隊員等のユニフォームや帽子、くつの生地、手袋、患者のシーツ等の医療用身装品若しくは寝具類;観賞魚若しくは養殖魚用の囲い網;農業用育苗マット;液相フィルター等の種々の生活又は産業用の繊維製品に使用でき、これらに微小たんぱく質の不活化機能を付与することができる。
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明の微小たんぱく質不活化素材は、抗菌性金属イオンが担持された無機多孔結晶を親水性高分子内部に含有する無機多孔結晶−親水性高分子複合体よりなることが特徴である。
本発明の微小たんぱく質不活化素材は、抗菌性金属イオンが担持された無機多孔結晶を親水性高分子内部に含有する無機多孔結晶−親水性高分子複合体よりなることが特徴である。
本発明の微小たんぱく質不活化素材に用いられる「親水性高分子」とは、例えば、植物パルプ、綿、絹、羊毛、ポリビニルアルコール、架橋型ポリビニルアルコール、キチン、キトサン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルホルマール等の天然若しくは人工の繊維素材、ビスコ−ス、キュプラなどのセルロ−ス系再生・半合成繊維素材、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニル、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリビニリデン、ポリスチレンなどの合成繊維素材、又はこれらの混合素材等のことであり、これらはいずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、日常広く使用され、また、後述の無機多孔結晶の担持性にも優れる等の点から、植物パルプ、綿、綿とポリエステル混合素材等が好ましく使用される。
また、本発明の微小たんぱく質不活化素材に用いられる「無機多孔結晶」としては、イオン交換能を有する無機イオン交換体結晶および多孔部分に吸着能を有する吸着体結晶が挙げられ、上記の親水性高分子を溶解、分解または崩壊させないものであれば特に制限はない。例えば、ゼオライト、ハイドロタルサイト、ハイドロキシアパタイト、粘土鉱物類等が挙げられ、中でも、最も用途が広いという点からゼオライトが好ましく、その中でも結晶成長が容易という点からNa2O−AlO3−SiO2−H2O系のA型およびX型ゼオライト(合成ゼオライト)がより好ましい。
また、本発明の微小たんぱく質不活化素材に用いられる「抗菌性金属イオン」とは、抗菌性(すなわち、アレルゲンやウイルス等の微小タンパク質を不活化し得る性質)を有する金属イオンであり、そのような金属イオンであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、銀、銅、亜鉛等の各イオンが挙げられ、これらの中でも、高い抗菌性と人体への安全性という点から銅イオンが好ましい。なお、かかる抗菌性金属イオンはいずれか1種のみでも2種以上を併用してもよい。
本発明の微小たんぱく質不活化素材は、抗菌性金属イオンが担持された無機多孔結晶を親水性高分子内部に含有した無機多孔結晶−親水性高分子複合体よりなるが、ここで、「抗菌性金属イオンが担持された」とは、上記の抗菌性金属イオンが無機多孔結晶内部のイオン交換サイトに導入された状態をいう。また「親水性高分子内部に含有」とは、上記無機多孔結晶が繊維素材である親水性高分子の表面付近で高分子鎖の網目構造に覆われて保持された構造を指し、かかる構造を有することで無機多孔結晶に担持された金属イオンは微小たんぱく質との接触が阻害されることなく、微小たんぱく質の不活化効果を発揮する。つまり、本構造をとることで、バインダーで無機多孔結晶を固着させるわけではないので、無機多孔結晶の持つ性能を阻害することなく、基材である親水性高分子と極めて高い無機多孔結晶固着性を発揮する。なお、特に断らない限り、本明細書において、「無機多孔結晶−親水性高分子複合体」とは抗菌性金属イオンが担持された無機多孔結晶を親水性高分子内部に含有した無機多孔結晶−親水性高分子複合体を意味するものとする。
本発明における「無機多孔結晶−親水性高分子複合体」の形態としては、シート状物または繊維状物が挙げられる。シート状物としては、例えば、紙、織物、編物、不織布などが挙げられる。織物の具体例としては、綿織物、麻織物、化学繊維織物(合成繊維織物、半合成繊維織物、再生繊維織物等)、綿と化学繊維混合織物が挙げられ、中でも、綿織物または綿と化学繊維混合織物が好ましく用いられる。また、編物の具体例としては、綿メリヤス、化学繊維メリヤス等のメリヤス生地が挙げられ、中でも、綿メリヤスが好ましく用いられる。また、不織布としてはエアレイド不織布、スパンレース不織布等が挙げられる。これらのうち、不織布としては、綿や再生繊維(レーヨン)を原料とする不織布が好ましく用いられる。また、繊維状物の具体例としては、パルプファイバーやステープルファイバー或いは糸等が挙げられる。これらは最終的にシート状物の原料となるものである。
本発明の微小たんぱく質不活化素材は、該素材がアレルゲン及びウイルスと接触した際に、該アレルゲン及びウイルスを不活化し、該素材を用いた製品(繊維製品)を装備するヒト・動物へのアレルゲンの体内への取り込み及びヒト・動物・植物等へのウイルス感染を防止することができる。また該素材を用いた製品(繊維製品)を装備するヒト・動物・植物等から他のヒト・動物・植物等へのウイルスの2次感染を防止することができる。更に該素材を用いた製品(繊維製品)とウイルスが接触した後に、該製品(繊維製品)からヒト・動物・植物等へのウイルスの2次感染を防止することができる。ここで、「アレルゲンの不活化」とはアレルゲン中のジスルフィド基という部位が変性し、結果的にアレルゲンでなくなることを意味する。また、「ウイルスの不活化」とは、ウイルスの外殻のエンベローブという部位が変性し、結果的に感染性がなくなることを意味する。
本発明の微小たんぱく質不活化素材において、無機多孔結晶−親水性高分子複合体における、無機多孔結晶の含有率は、無機多孔結晶、親水性高分子の種類、形態等によっても異なるが、一般的には、複合体全体当たり5〜80質量%が好ましく、20〜60重量%がより好ましい。80質量%を超えると、該複合体の強度が低下する傾向となり、また、5重量%未満では抗菌性金属イオンを担持する能力が低減する傾向となる。また、無機多孔結晶−親水性高分子複合体全体における、抗菌性金属イオンの含有量(担持量)は、0.1〜20質量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。20質量%を超えると、無機多孔結晶の構造が破壊されるおそれがあり、また、0.1重量%未満では不活化効果が低減する。
本発明の微小たんぱく質不活化素材の不活化対象となる微小たんぱく質とは、抗菌性金属イオンによってタンパク質が変性されて不活化するものであれば、特に限定されないが、具体的には、アレルゲン、ウイルス等が挙げられる。アレルゲンとしては、例えば、スギアレルゲン、ヒノキアレルゲン、小麦アレルゲン、ブタクサアレルゲン、トクサアレルゲン、カビアレルゲン、ダニアレルゲン、卵アレルゲン等が挙げられ、ウイルスとしては、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、SARSウイルス、鯉ヘルペスウイルス、西ナイルウイルス、トリインフルエンザウイルス等が挙げられる。なお、本発明において、アレルゲン、ウイルス等の微小たんぱく質は、その部分ペプチドも包含するものとする。
本発明の微小たんぱく質不活化素材においては、紙、織物、編物、不織布等のシート状物の存在下、複数の水溶性化合物及び塩基性物質を該シート状物の繊維内で反応させることで、無機多孔結晶−親水性高分子複合体を生じせしめ、さらに該無機多孔結晶−親水性高分子複合体を、抗菌性金属塩の水溶液に浸漬することにより、抗菌性金属イオンが導入された無機多孔結晶を親水性高分子内部に含有した無機多孔結晶−親水性高分子複合体とすることが可能である。ここで、「親水性高分子内部」とは、例えば、綿繊維の場合、繊維の表面(網目細胞膜により覆われた状態をも含む)及び繊維内の非晶領域内(セルロース分子の配列が乱れたり途切れたりしている部分)のことを意味する。
例えば、無機多孔結晶がゼオライトの場合では、ケイ素化合物、アルミニウム化合物および塩基性物質を用い、無機多孔結晶がハイドロキシアパタイトの場合では、リン化合物、カルシウム化合物および塩基性物質を用いることにより、シート状物の繊維に無機多孔結晶を担持させる(含有させる)ことができる。また、その他の無機多孔結晶を、繊維内で生成させる場合の複数の水溶性化合物の組み合わせは特に制限されない。
以下、シート状物がスパンレース不織布、繊維素材が綿繊維、無機多孔結晶がゼオライトの場合を例として、本発明の微小たんぱく質不活化素材の製造方法を詳細するが、本発明は以下の例に限定されるわけではない。
まず、ケイ素化合物および塩基性物質の混合水溶液を不織布に含浸させる(第1浴)。
ここでの含浸方法は特に制限はなく、例えば、不織布をケイ素化合物および塩基性物質の水溶液に浸漬する等の方法を用いることができる。また、ケイ素化合物としては、水に溶解するものであれば特に制限はないが、例えば、珪酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、アルコキシシラン、コロイダルシリカ、アルキルシリケート等が挙げられ、これらの中でも、高溶解性の点から珪酸ソーダが好ましい。一方、塩基性物質としては、水に溶解するものであれば特に制限はないが、例えば、苛性ソーダ、苛性カリなどが挙げられ、中でも、高溶解性の点から苛性ソーダが好ましい。
ここでの含浸方法は特に制限はなく、例えば、不織布をケイ素化合物および塩基性物質の水溶液に浸漬する等の方法を用いることができる。また、ケイ素化合物としては、水に溶解するものであれば特に制限はないが、例えば、珪酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、アルコキシシラン、コロイダルシリカ、アルキルシリケート等が挙げられ、これらの中でも、高溶解性の点から珪酸ソーダが好ましい。一方、塩基性物質としては、水に溶解するものであれば特に制限はないが、例えば、苛性ソーダ、苛性カリなどが挙げられ、中でも、高溶解性の点から苛性ソーダが好ましい。
ここで、水溶液中のケイ素化合物の濃度は特に制限はないが、好ましくは1.0〜100mmol/l、より好ましくは10〜50mmol/lである。また、塩基性物質の濃度は、ゼオライトを結晶化させるために、かなり高いアルカリ濃度が必要であることから、好ましくは10〜5000mmol/l、より好ましくは100〜2500mmol/lである。
第1浴の含浸時の温度は常温が好ましく、液の流動性が高く、不織布に染込み易い5〜30℃が特に好ましい。また、ケイ素化合物および塩基性物質が綿繊維の中に充分含浸し、非晶質領域に充分広がるためには、含浸時間は30分〜2時間が好ましい。ここで、「常温」とは、加熱・冷却などしない、平常の温度を意味する。
ケイ素化合物および塩基性物質の混合水溶液を含浸させた不織布は、溶液の含浸量を調節するのが好ましく、調節の方法に特に制限はないが、パディング法(処理液に含浸後絞りロールで絞る方法)を用いる方法が好ましく利用できる。また溶液の含浸量は不織布に対して、原料液(ケイ素化合物および塩基性物質の混合水溶液)が0.5〜20重量倍であることが好ましく、ゼオライトの含有率を高くすることができ、微小たんぱく質に対して充分な不活化効果を発現させる観点から5〜15重量倍であることが特に好ましい。
次に、上記溶液の含浸量を調節した不織布を、アルミニウム化合物および塩基性物質の混合水溶液に浸漬させる(第2浴)。第2浴の浴比について、特に制限はないが、1:1〜1:10であることが好ましい。なお、「浴比」とは、乾燥織物の重量:第2浴の混合溶液の重量をいう。また、浸漬後、反応温度を常温から80〜90℃まで10分〜1時間かけて昇温し、1〜4時間反応させることで効率よくゼオライトを生成することが可能である。
塩基性物質としては、水に溶解するものであれば特に制限はないが、例えば、苛性ソーダ、苛性カリなどが挙げられ、中でも、高溶解性の点から苛性ソーダが好ましい。
塩基性物質の濃度は、高分子を十分膨潤させるためおよび結晶性の高いゼオライトを得るために、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜30重量%である。
アルミニウム化合物としては、例えばアルミン酸ソーダ(NaAlO2)、水酸化アルミニウム、アルミナ、アルミナ微粒子等が挙げられるが、水に対する溶解度が高く、結晶性の高いゼオライトが得られる点からアルミン酸ソーダが好ましい。
アルミニウム化合物の濃度は、形成すべきゼオライトの成分比に応じて、第1浴の水溶液中のケイ素(Si)に対するアルミニウムの存在比(ケイ素(Si):アルミニウム(Al))が1:0.5〜3.0(mol比)となる濃度とするのが好ましい。
上記第1浴での含浸作業と第2浴での浸漬作業の順序は逆であってもよく、また、全てを混合した後、生地を浸漬してもかまわない。すなわち、アルミニウム化合物と塩基性物質の混合水溶液を先に不織布に含浸させ、次いでケイ素化合物と塩基性物質の混合水溶液に不織布を浸漬させてもよいし、ケイ素化合物、アルミニウム化合物、塩基性物質を全て混合した混合水溶液を不織布に含浸させてもよい。この場合も、含浸方法は特に制限はなく、例えば、不織布をケイ素化合物、アルミニウム化合物、塩基性物質を全て混合した混合水溶液に浸漬する等の方法を用いることができる。
第2浴処理を実施した不織布を脱液、水洗した後、抗菌性を有する金属塩の水溶液に浸漬することにより、親水性高分子内部の無機多孔結晶に抗菌性金属イオンが担持される。なお、上記脱液は例えば適当な温度で不織布を加熱乾燥することによって行われる。ここで、抗菌性を有する金属塩とは、水溶液中で前記の銀、銅、亜鉛等の各イオン等の抗菌性を有する金属イオンを生じる金属塩のことであり、塩の種類は特に限定されないが、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物塩、過塩素酸塩、酢酸塩等が好適である。抗菌性を有する金属塩(抗菌性を有する金属イオン)は1種でも2種以上を併用してもよい。当該金属塩の水溶液の濃度に特に制限はないが、0.1〜10.0重量%程度が無機多孔結晶に取り込まれる速度が速く、無機多孔結晶の結晶構造が壊れにくい点から好ましい。また、浸漬する温度や時間も特に制限はないが、通常、水溶液の温度は、上記と同様の理由から、20〜40℃が好ましく、また、時間は十分に無機多孔結晶内に抗菌性イオンが担持される点から、5〜2時間が適当である。かかる浸漬作業の後、脱水、乾燥を行うことで、抗菌性金属イオンが担持された無機多孔結晶を高分子内部に含有した無機多孔結晶−親水性高分子複合体が得られる。なお、浸漬作業後の脱水は、例えば、遠心分離機等を用いて行うのが効率的であり、また、乾燥は通常室温にて行われる。
このようにして得られる本発明の微小たんぱく質不活化素材は、抗菌性金属イオンが担持された無機多孔結晶が親水性高分子(繊維素材)の表面付近で高分子の網目構造に覆われて保持された構造を有することから、無機多孔結晶に担持されている抗菌性金属イオンが、微小たんぱく質に対して高い接触頻度で接触して、微小たんぱく質を効率良く不活化し、アレルゲン、ウイルス等を十分に不活化し得るものとなる。
本発明の微小たんぱく質不活化素材は、織物、編物、不織布又は紙等のシート状物の形態を採ることができるので、種々の繊維製品に加工することができ、それらに微小たんぱく質の不活化機能を付与することができる。かかる微小たんぱく質の不活化機能が付与された繊維製品(すなわち、本発明の「微小たんぱく質不活化製品」)としては、例えば、アレルゲンの不活化又は/及びウイルスの感染予防を目的とする衛生マスク等の衛材品が挙げられる。また、自動車、電車、飛行機若しくは船舶用のシートカバー;ダクト、エアコン若しくは空気清浄機用の気相フィルター;農業用保護シート;医師や看護士、救急隊員等のユニフォームや帽子、くつの生地、手袋、患者のシーツ等の医療用身装品若しくは寝具類;観賞魚若しくは養殖魚用の囲い網;農業用育苗マット;液相フィルター等の種々の生活又は産業用の繊維製品が挙げられる。なお、本発明の微小たんぱく質不活化製品は、本発明の微小たんぱく質不活化素材をそれら製品の通常の製法に従って加工、処理して所望の製品に仕上げればよい。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
<実施例1>
綿繊維を100%原料とするスパンレース不織布(日清紡製「商品名:オイコス(AP2060)」)130gを、20℃の水溶液(アルミン酸ソーダ、48%苛性ソーダ、珪酸ソーダおよび水道水をそれぞれ180g、252g、130gおよび750g含有)が入ったプラスチック製蓋付きバットに含浸し、20℃にて30分間放置した。その後、送風乾燥機で85℃まで60分間で昇温して、2時間放置した。放置後、1m3の水量で水洗し、送風乾燥機で十分に乾燥して、ゼオライト含有率16.4質量%のオイコス156gを得た。ゼオライト含有率は、クエン酸1質量%の水溶液に3時間浸漬攪拌し、ゼオライトを溶解除去した後と溶解する前の不織布の重量から測定した。
綿繊維を100%原料とするスパンレース不織布(日清紡製「商品名:オイコス(AP2060)」)130gを、20℃の水溶液(アルミン酸ソーダ、48%苛性ソーダ、珪酸ソーダおよび水道水をそれぞれ180g、252g、130gおよび750g含有)が入ったプラスチック製蓋付きバットに含浸し、20℃にて30分間放置した。その後、送風乾燥機で85℃まで60分間で昇温して、2時間放置した。放置後、1m3の水量で水洗し、送風乾燥機で十分に乾燥して、ゼオライト含有率16.4質量%のオイコス156gを得た。ゼオライト含有率は、クエン酸1質量%の水溶液に3時間浸漬攪拌し、ゼオライトを溶解除去した後と溶解する前の不織布の重量から測定した。
なお、上記の珪酸ソーダは、東曹産業(株)製の珪酸ソーダ1号L2であり、苛性ソーダは、信越化学工業(株)製の48%苛性ソーダであり、アルミン酸ソーダは、北陸化成(株)製の液体アルミン酸ソーダNA170である。また、送風乾燥機はタバイ:パーフェクトオーブンPH−400である。なお、これらは以下の製造例においても同様である。
得られたゼオライト含有オイコスを硫酸銅5水和物の5.0重量%水溶液に浸漬後、遠心分離機((株)関西遠心分離機製作所:KMN−14)で2000r.p.m.で10分間脱水し、室温で乾燥して、銅イオンが担持されたゼオライトを含有するオイコス(以下、銅イオンゼオライト含有オイコスともいう)を得た。該不織布における全不織布重量に対する銅量は1.6重量%であった。なお、不織布の全重量に対する銅量は以下の方法で測定した。
得られた銅イオンゼオライト含有オイコス1.0gを1%のクエン酸水溶液に溶解した後、この溶液を細孔径0.25μmのメンブレンフィルターでろ過し、原子吸光分光光度計(セイコーインスツルメンツ(株)製:SAS7500)によって測定し、銅イオン濃度を直接測定することで行った。
<実施例2>
針葉樹クラフトパルプ100gに苛性ソーダ100gを加え、よく混練した。パルプが膨潤した後、アルミン酸ソーダ130gを加えて混練した。次いで、さらに珪酸ソーダ100gを加えて混練した後、該懸濁液を90℃で1時間加熱した。懸濁液中のパルプを水道水で充分に水洗し、遠心分離機で含水率60重量%に脱水してNa-A型ゼオライト含有パルプを得た。このNa-A型ゼオライト含有パルプのゼオライト含有率は43.1重量%であった。
針葉樹クラフトパルプ100gに苛性ソーダ100gを加え、よく混練した。パルプが膨潤した後、アルミン酸ソーダ130gを加えて混練した。次いで、さらに珪酸ソーダ100gを加えて混練した後、該懸濁液を90℃で1時間加熱した。懸濁液中のパルプを水道水で充分に水洗し、遠心分離機で含水率60重量%に脱水してNa-A型ゼオライト含有パルプを得た。このNa-A型ゼオライト含有パルプのゼオライト含有率は43.1重量%であった。
得られたNa-A型ゼオライト含有パルプ100gを硫酸銅5水和物水溶液0.1mol/20Lに投入し、24時間、室温で攪拌した。次いで、パルプを水道水で充分洗浄後、遠心分離機で含水率約60重量%に脱水して、銅イオンを担持したゼオライトを含有するパルプ(銅ゼオライト含有パルプ)を得た。
前述と同様の方法で測定した銅イオンゼオライト含有パルプ中の銅量は4.3重量%であった。
この銅イオンゼオライト含有パルプを6.0g(乾燥重量)およびクラレ製熱融着繊維N720を4.0g用いて、熊谷理機工業製のJIS抄紙機を用いて、坪量160g/m2の銅イオンゼオライト含有紙を得た。
<比較例1>
実施例1で使用した綿繊維を100%原料とするスパンレース不織布(日清紡製「商品名:オイコス(AP2060)」)をそのままウイルス不活化試験の対照として用いた。
<比較例2>
実施例2で製造したNa-A型ゼオライト含有パルプを銅イオンとイオン交換せずに、実施例2と同様の方法で抄紙し、ゼオライト含有紙を得た。これをアレルゲン不活化試験の対照として用いた。
実施例1で使用した綿繊維を100%原料とするスパンレース不織布(日清紡製「商品名:オイコス(AP2060)」)をそのままウイルス不活化試験の対照として用いた。
<比較例2>
実施例2で製造したNa-A型ゼオライト含有パルプを銅イオンとイオン交換せずに、実施例2と同様の方法で抄紙し、ゼオライト含有紙を得た。これをアレルゲン不活化試験の対照として用いた。
<実験例1>
検体<実施例1で作成した銅イオンゼオライト含有オイコス、実施例2で作成した銅イオンゼオライト含有紙(3cm×3cm)>を高圧蒸気滅菌し(121℃、15分間)無菌的に乾燥させた。この検体を滅菌シャーレ内に置き、インフルエンザウイルスA型液(H1N1)0.2mlを滴下した。ウイルスを滴下した検体を25℃で、30分放置処理した。各処理時間経過後、検体中のウイルス浮遊液を細胞維持培地2.0mlで洗い出した。検体を取り出した後、細胞増殖培地を用い、MDCK細胞(NBL−2細胞(ATCC CCL−34株)大日本製薬(株))を組織培養用マイクロプレート(96穴)で単層培養した後、細胞増殖培地を除き、細胞維持培地を0.1mlずつ加えた。次に洗い出し液及びその希釈液0.1mlを4穴ずつに接種し、37℃の炭酸ガスインキュベーター(炭酸ガス濃度:5%)内で2〜5日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed-Muench法により、50%組織培養感染量(TCID50)を算出して、洗い出し液1mlあたりのウイルス感染価に換算した。比較例1のスパンレース不織布「オイコス」を対照に用いた。
検体<実施例1で作成した銅イオンゼオライト含有オイコス、実施例2で作成した銅イオンゼオライト含有紙(3cm×3cm)>を高圧蒸気滅菌し(121℃、15分間)無菌的に乾燥させた。この検体を滅菌シャーレ内に置き、インフルエンザウイルスA型液(H1N1)0.2mlを滴下した。ウイルスを滴下した検体を25℃で、30分放置処理した。各処理時間経過後、検体中のウイルス浮遊液を細胞維持培地2.0mlで洗い出した。検体を取り出した後、細胞増殖培地を用い、MDCK細胞(NBL−2細胞(ATCC CCL−34株)大日本製薬(株))を組織培養用マイクロプレート(96穴)で単層培養した後、細胞増殖培地を除き、細胞維持培地を0.1mlずつ加えた。次に洗い出し液及びその希釈液0.1mlを4穴ずつに接種し、37℃の炭酸ガスインキュベーター(炭酸ガス濃度:5%)内で2〜5日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed-Muench法により、50%組織培養感染量(TCID50)を算出して、洗い出し液1mlあたりのウイルス感染価に換算した。比較例1のスパンレース不織布「オイコス」を対照に用いた。
TCID50:median tissue culture infectious does(50%組織培養感染量)
細胞増殖培地:Eagle MEM(0.06mg/mlカナマイシン含有)に新生コウシ血清を10%加えたもの
細胞維持培地:
Eagle MEM 1000ml
10%NaHCO3 24〜44ml
L-グルタミン(30g/L) 9.8ml
100×MEM用ビタミン液 30ml
10%アルブミン 20ml
トリプシン(5mg/ml) 2ml
細胞増殖培地:Eagle MEM(0.06mg/mlカナマイシン含有)に新生コウシ血清を10%加えたもの
細胞維持培地:
Eagle MEM 1000ml
10%NaHCO3 24〜44ml
L-グルタミン(30g/L) 9.8ml
100×MEM用ビタミン液 30ml
10%アルブミン 20ml
トリプシン(5mg/ml) 2ml
<式1>
X(%)=[(10B−10A)/10B]×100
式中:Xはウイルス不活化率
Aはそれぞれの時間後の検体のウイルス感染価(10n)
Bはそれぞれの時間後の対照のウイルス感染価(10n)
X(%)=[(10B−10A)/10B]×100
式中:Xはウイルス不活化率
Aはそれぞれの時間後の検体のウイルス感染価(10n)
Bはそれぞれの時間後の対照のウイルス感染価(10n)
<実験例2>
検体<実施例1で作成した銅イオンゼオライト含有オイコス、実施例2で作成した銅イオンゼオライト含有紙(3cm×3cm)>を高圧蒸気滅菌し(121℃、15分間)無菌的に乾燥させた。この検体を滅菌シャーレ内に置き、アデノウイルス5型液0.2mlを滴下した。ウイルスを滴下した検体を25℃で、30分放置処理した。各処理時間経過後、検体中のウイルス浮遊液を細胞維持培地2.0mlで洗い出した。検体を取り出した後、細胞増殖培地を用い、HEp-2細胞((ATCC CCL-23株)大日本製薬(株))を組織培養用マイクロプレート(96穴)で単層培養した後、細胞増殖培地を除き、細胞維持培地を0.1mlずつ加えた。次に洗い出し液及びその希釈液0.1mlを4穴ずつに接種し、37℃の炭酸ガスインキュベーター(炭酸ガス濃度:5%)内で2〜5日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed-Muench法により、50%組織培養感染量(TCID50)を算出して、洗い出し液1mlあたりのウイルス感染価に換算した。比較例1のスパンレース不織布オイコスを対照に用いた。
検体<実施例1で作成した銅イオンゼオライト含有オイコス、実施例2で作成した銅イオンゼオライト含有紙(3cm×3cm)>を高圧蒸気滅菌し(121℃、15分間)無菌的に乾燥させた。この検体を滅菌シャーレ内に置き、アデノウイルス5型液0.2mlを滴下した。ウイルスを滴下した検体を25℃で、30分放置処理した。各処理時間経過後、検体中のウイルス浮遊液を細胞維持培地2.0mlで洗い出した。検体を取り出した後、細胞増殖培地を用い、HEp-2細胞((ATCC CCL-23株)大日本製薬(株))を組織培養用マイクロプレート(96穴)で単層培養した後、細胞増殖培地を除き、細胞維持培地を0.1mlずつ加えた。次に洗い出し液及びその希釈液0.1mlを4穴ずつに接種し、37℃の炭酸ガスインキュベーター(炭酸ガス濃度:5%)内で2〜5日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed-Muench法により、50%組織培養感染量(TCID50)を算出して、洗い出し液1mlあたりのウイルス感染価に換算した。比較例1のスパンレース不織布オイコスを対照に用いた。
細胞増殖培地:Eagle MEM(0.06mg/mlカナマイシン含有)に新生コウシ血清を10%加えたもの
細胞維持培地:新生コウシ血清2%添加Eagle MEM
細胞維持培地:新生コウシ血清2%添加Eagle MEM
<実験例3>
検体<実施例1で作成した銅イオンゼオライト含有オイコス、実施例2で作成した銅イオンゼオライト含有紙(3cm×3cm)>を高圧蒸気滅菌し(121℃、15分間)無菌的に乾燥させた。この検体を滅菌シャーレ内に置き、単純ヘルペスウイルス1型液0.2mlを滴下した。ウイルスを滴下した検体を25℃で、30分放置処理した。各処理時間経過後、検体中のウイルス浮遊液を細胞維持培地2.0mlで洗い出した。検体を取り出した後、細胞増殖培地を用い、HEp-2細胞((ATCC CCL-23株)大日本製薬(株))を組織培養用マイクロプレート(96穴)で単層培養した後、細胞増殖培地を除き、細胞維持培地を0.1mlずつ加えた。次に洗い出し液及びその希釈液0.1mlを4穴ずつに接種し、37℃の炭酸ガスインキュベーター(炭酸ガス濃度:5%)内で2〜5日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed-Muench法により、50%組織培養感染量(TCID50)を算出して、洗い出し液1mlあたりのウイルス感染価に換算した。比較例1のスパンレース不織布「オイコス」を対照に用いた。
検体<実施例1で作成した銅イオンゼオライト含有オイコス、実施例2で作成した銅イオンゼオライト含有紙(3cm×3cm)>を高圧蒸気滅菌し(121℃、15分間)無菌的に乾燥させた。この検体を滅菌シャーレ内に置き、単純ヘルペスウイルス1型液0.2mlを滴下した。ウイルスを滴下した検体を25℃で、30分放置処理した。各処理時間経過後、検体中のウイルス浮遊液を細胞維持培地2.0mlで洗い出した。検体を取り出した後、細胞増殖培地を用い、HEp-2細胞((ATCC CCL-23株)大日本製薬(株))を組織培養用マイクロプレート(96穴)で単層培養した後、細胞増殖培地を除き、細胞維持培地を0.1mlずつ加えた。次に洗い出し液及びその希釈液0.1mlを4穴ずつに接種し、37℃の炭酸ガスインキュベーター(炭酸ガス濃度:5%)内で2〜5日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed-Muench法により、50%組織培養感染量(TCID50)を算出して、洗い出し液1mlあたりのウイルス感染価に換算した。比較例1のスパンレース不織布「オイコス」を対照に用いた。
細胞増殖培地:Eagle MEM(0.06mg/mlカナマイシン含有)に新生コウシ血清を10%加えたもの
細胞維持培地:新生コウシ血清2%添加Eagle MEM
細胞維持培地:新生コウシ血清2%添加Eagle MEM
<実験例4>
検体<実施例1で作成した銅イオンゼオライト含有オイコス、実施例2で作成した銅イオンゼオライト含有紙(3cm×3cm)>を高圧蒸気滅菌し(121℃、15分間)、無菌的に乾燥させた。この検体を滅菌シャーレ内に置き、ポリオウイルス3型液0.2mlを滴下した。ウイルスを滴下した検体を25℃で、30分放置処理した。各処理時間経過後、検体中のウイルス浮遊液を細胞維持培地2.0mlで洗い出した。検体を取り出した後、細胞増殖培地を用い、HEp-2細胞((ATCC CCL-23株)大日本製薬(株))を組織培養用マイクロプレート(96穴)で単層培養した後、細胞増殖培地を除き、細胞維持培地を0.1mlずつ加えた。次に洗い出し液及びその希釈液0.1mlを4穴ずつに接種し、37℃の炭酸ガスインキュベーター(炭酸ガス濃度:5%)内で4〜7日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed-Muench法により、50%組織培養感染量(TCID50)を算出して、洗い出し液1mlあたりのウイルス感染価に換算した。比較例1のスパンレース不織布「オイコス」を対照に用いた。
検体<実施例1で作成した銅イオンゼオライト含有オイコス、実施例2で作成した銅イオンゼオライト含有紙(3cm×3cm)>を高圧蒸気滅菌し(121℃、15分間)、無菌的に乾燥させた。この検体を滅菌シャーレ内に置き、ポリオウイルス3型液0.2mlを滴下した。ウイルスを滴下した検体を25℃で、30分放置処理した。各処理時間経過後、検体中のウイルス浮遊液を細胞維持培地2.0mlで洗い出した。検体を取り出した後、細胞増殖培地を用い、HEp-2細胞((ATCC CCL-23株)大日本製薬(株))を組織培養用マイクロプレート(96穴)で単層培養した後、細胞増殖培地を除き、細胞維持培地を0.1mlずつ加えた。次に洗い出し液及びその希釈液0.1mlを4穴ずつに接種し、37℃の炭酸ガスインキュベーター(炭酸ガス濃度:5%)内で4〜7日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed-Muench法により、50%組織培養感染量(TCID50)を算出して、洗い出し液1mlあたりのウイルス感染価に換算した。比較例1のスパンレース不織布「オイコス」を対照に用いた。
細胞増殖培地:Eagle MEM(0.06mg/mlカナマイシン含有)に新生コウシ血清を10%加えたもの
細胞維持培地:新生コウシ血清2%添加Eagle MEM
細胞維持培地:新生コウシ血清2%添加Eagle MEM
上記実験例1〜4で行った各種ウイルスの不活化試験結果を表1にまとめた。
表1に示すように、実施例1の銅イオンゼオライト含有オイコスおよび実施例2の銅イオンゼオライト含有紙は30分という短い間の接触にも関わらず、極めて効果的に各種ウイルスを不活化することが示された。
<実験例5>
検体<実施例1で作成した銅イオンゼオライト含有オイコス、実施例2で作成した銅イオンゼオライト含有紙(1cm×1cm)>を試験管に入れ、これにスギ花粉より抽出した粗抗原(スギアレルゲン:Cryj1)を156ng/mlの濃度の水溶液に調整し、これを2ml加えた。1時関浸漬させた後、上澄み液を50μl採取し、酵素免疫定量法(ELISA法)により、アレルゲン濃度を測定した。また不活化率は、初期濃度から1時間浸漬させた後の上澄み液の濃度を引き、初期濃度で割った百分率(%)で表した。比較例2で作成したゼオライト含有紙を対照に用いた。
検体<実施例1で作成した銅イオンゼオライト含有オイコス、実施例2で作成した銅イオンゼオライト含有紙(1cm×1cm)>を試験管に入れ、これにスギ花粉より抽出した粗抗原(スギアレルゲン:Cryj1)を156ng/mlの濃度の水溶液に調整し、これを2ml加えた。1時関浸漬させた後、上澄み液を50μl採取し、酵素免疫定量法(ELISA法)により、アレルゲン濃度を測定した。また不活化率は、初期濃度から1時間浸漬させた後の上澄み液の濃度を引き、初期濃度で割った百分率(%)で表した。比較例2で作成したゼオライト含有紙を対照に用いた。
<実験例6>
検体<実施例1で作成した銅イオンゼオライト含有オイコス、実施例2で作成した銅イオンゼオライト含有紙(1cm×1cm)>を試験管に入れ、これにダニの死骸より抽出した粗抗原(ダニアレルゲン:Derp1)を625ng/mlの濃度の水溶液に調整し、これを2ml加えた。1時関浸漬させた後、上澄み液を50μl採取し、酵素免疫定量法(ELISA法)により、アレルゲン濃度を測定した。また不活化率は、初期濃度から1時間浸漬させた後の上澄み液の濃度を引き、初期濃度で割った百分率(%)で表した。比較例2で作成したゼオライト含有紙を対照に用いた。
検体<実施例1で作成した銅イオンゼオライト含有オイコス、実施例2で作成した銅イオンゼオライト含有紙(1cm×1cm)>を試験管に入れ、これにダニの死骸より抽出した粗抗原(ダニアレルゲン:Derp1)を625ng/mlの濃度の水溶液に調整し、これを2ml加えた。1時関浸漬させた後、上澄み液を50μl採取し、酵素免疫定量法(ELISA法)により、アレルゲン濃度を測定した。また不活化率は、初期濃度から1時間浸漬させた後の上澄み液の濃度を引き、初期濃度で割った百分率(%)で表した。比較例2で作成したゼオライト含有紙を対照に用いた。
実験例5、6で行った各種アレルゲンの不活化試験結果を表2にまとめた。
表2に示すように、実施例1の銅イオンゼオライト含有オイコスおよび実施例2の銅イオンゼオライト含有紙は1時間という短い間の接触にも関わらず、極めて効果的に各種アレルゲンを不活化することが示された。
Claims (7)
- 抗菌性金属イオンが担持された無機多孔結晶を親水性高分子内部に含有する無機多孔結晶−親水性高分子複合体よりなる、微小たんぱく質不活化素材。
- 抗菌性金属イオンが、銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1記載の微小たんぱく質不活化素材。
- 無機多孔結晶がゼオライトである、請求項1又は2記載の微小たんぱく質不活化素材。
- 無機多孔結晶−親水性高分子複合体の形態が、織物、編物、不織布又は紙である、請求項1〜3のいずれか一項記載の微小たんぱく質不活化素材。
- 微小たんぱく質が、スギアレルゲン、ヒノキアレルゲン、小麦アレルゲン、ブタクサアレルゲン、トクサアレルゲン、カビアレルゲン、ダニアレルゲン、卵アレルゲン、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、SARSウイルス、鯉ヘルペスウイルス、西ナイルウイルス及びトリインフルエンザウイルスから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1〜4のいずれか一項記載の微小たんぱく質不活化素材。
- 請求項1〜5のいずれか一項記載の微小たんぱく質不活化素材を用いてなる、微小たんぱく質不活化製品。
- 当該製品が、衛生マスク;自動車、電車、飛行機若しくは船舶用のシートカバー;ダクト、エアコン若しくは空気清浄機用の気相フィルター;農業用保護シート;医療用身装品若しくは寝具類;観賞魚若しくは養殖魚用の囲い網;農業用育苗マット、又は液相フィルターである、請求項6記載の微小たんぱく質不活化製品。
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