JP2006290024A - 車両挙動制御装置 - Google Patents

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史紀 窪谷
Toshiyuki Handa
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【課題】 差動装置を介して左右の駆動車輪が接続される車両において、駆動力の回り込み現象が生じた場合でも車両の挙動が乱れるのを防止する。
【解決手段】 車両の旋回走行中の車両状態量から車輪T毎に車輪ブレーキの制動力を制御し制動力を付与させる横滑り抑制手段15と、この制御中において、左右の車輪Tのうち一方の車輪Tに伝達される駆動力が該制御により付与される制動力で抑制されるにつれ、他方の車輪Tに伝達される駆動力が増加する駆動力の回り込みが生じる場合、トラクション制御の開始閾値を、該制御の開始が遅れる側に補正する補正部21とを具備する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、車両挙動制御装置に関し、特に、車輪毎に制動力を制御する横滑り抑制制御やトラクション制御を行なうことを可能とした車両挙動制御装置に関する。
従来、旋回走行中の車両のヨーレートやステアリング操舵角などの車両状態量を検出して車両の横滑りやスピンを抑制し、車両の挙動を安定化させるようにした車両挙動制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
前記した車両挙動制御装置では、例えば、車両の走行状態がコーナリング時や緊急の障害物回避時や路面状況急変時等において、走行中の車両の横滑りやスピンを抑制するために前後・左右の各車輪への制動力を制御している。
特開平10−181548号公報
ところで、従来、一般的な車両挙動制御装置では、旋回走行中の車両状態量を検出して、その検出された車両状態量が目標車両状態量となるように、車輪毎に車輪ブレーキの制動力を制御して制動力を付与させるブレーキトラクション制御に係る技術が実用化されている。しかしながら、差動装置を介して左右の駆動車輪が接続される車両においては、このようなブレーキトラクション制御の実行によって、左右の車輪のうち一方の車輪に伝達される駆動力が該制御により付与される制動力で抑制されるにつれ、他方の車輪に伝達される駆動力が増加する、いわゆる駆動力の回り込み現象が生じる場合があり、このような場合に、車両の挙動が乱れるおそれがあった。
そこで、本発明では、差動装置を介して左右の駆動車輪が接続される車両において、駆動力の回り込み現象が生じた場合でも車両の挙動が乱れるのを防止することができ、車両の挙動を安定化させることができる車両挙動制御装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため本発明は、駆動輪となる左右の車輪が差動装置を介して接続された車両の挙動を安定化させる車両挙動制御装置であって、前記車両の旋回走行中の車両状態量を検出する車両状態量検出手段にて検出された前記車両状態量が目標車両状態量となるように、前記車輪毎に車輪ブレーキの制動力を制御し制動力を付与させる横滑り抑制手段と、前記車輪毎に加速時のスリップを抑制するように車輪ブレーキの制動力を制御するトラクション制御手段と、を備え、前記トラクション制御手段は、前記横滑り抑制手段による制御中において、前記左右の車輪のうち一方の車輪に伝達される駆動力が該制御により付与される制動力で抑制されるにつれ、他方の車輪に伝達される駆動力が増加する駆動力の回り込みが生じる場合、トラクション制御の開始判定に用いられる開始閾値を、トラクション制御の開始が遅れる側に補正する補正部を備えて構成されることを特徴とすることを特徴とする。
ここで、「車両状態量」とは、車両旋回中の車両の挙動を判定するために必要な指標をいい、例えば車輪速センサで検出した車輪速度や、横加速度、ヨーレート、操舵角といった値である。
このような車両挙動制御装置によれば、横滑り抑制手段による制御中において、左右の車輪のうち一方の車輪に伝達される駆動力が該制御により付与される制動力で抑制されるにつれ、他方の車輪に伝達される駆動力が増加する駆動力の回り込みが生じる場合は、補正部によって、トラクション制御の開始の判定に用いられる開始閾値が、トラクション制御の開始が遅れる側に補正される。これにより、差動装置を介して駆動力の回り込みが生じる側のトラクション制御の開始が遅れるようになり、その分、横滑り抑制手段による横滑り制御が持続されることで車両の挙動の安定化が図られる。
一方、トラクション制御の開始判定に用いられる開始閾値が、補正部により補正された後の開始閾値以上になると、トラクション制御手段により、差動装置を介して駆動力の回り込みが生じる側のトラクション制御を実行し、車輪のスリップを抑制する。
これにより、横滑り抑制制御とトラクション制御とが早期に干渉してしまうことが防止され、駆動力の回り込み現象が生じた場合でも車両の挙動が乱れるのを防止することができ、車両の挙動が安定化する。
ところで、差動装置を介して駆動力の回り込みが生じる側は、トラクション制御の開始が遅れるように制御されるので、伝達された駆動力によって車輪が加速側にスリップすることとなるが、このスリップ力は、車両の挙動の乱れを抑制する方向に働く力、例えば、車両がオーバーステア状態の挙動を生じている場合であれば、オーバーステアの抑制方向に働く力として利用することができる。したがって、車両の挙動がより安定化されるという利点が得られる。
また、前記トラクション制御手段は、前記左右の車輪の前記車輪ブレーキそれぞれに対応づけて前記開始閾値を有し、前記補正部は、前記検出された車両状態量がオーバーステアに該当し、かつ前記横滑り抑制手段によって旋回外側の前記車輪ブレーキに制動力が付与される場合を、駆動力の回り込みが生じる場合として、旋回内側の前記車輪ブレーキに対応付けられた前記開始閾値を変更し;前記検出された車両状態量がアンダーステアに該当し、かつ前記横滑り抑制手段によって旋回内側の前記車輪ブレーキに制動力が付与される場合を、駆動力の回り込みが生じる場合として、旋回外側の前記車輪ブレーキに対応付けられた開前記始閾値を変更することを特徴とする。
このような車両挙動制御装置によれば、検出された車両状態量から、車両の挙動がオーバーステアに該当すると判定される場合で、かつ横滑り抑制手段によって旋回外側の車輪ブレーキに制動力が付与される場合を駆動力の回り込みが生じる場合として、旋回内側の車輪ブレーキに対応付けられた開始閾値を変更するので、車両がオーバーステア状態の挙動を生じている場合に、旋回内側におけるトラクション制御の開始を遅らせることができ、これにより、旋回内側に回り込む駆動力によって旋回内側の車輪を加速側にスリップさせることができる。したがって、旋回内側の車輪におけるスリップ力を車両の挙動の乱れを抑制する方向に働く力として利用することができ、これによって、車両の挙動が安定化する。
また、これとは逆に、検出された車両状態量がアンダーステアに該当し、かつ横滑り抑制手段によって旋回内側の車輪ブレーキに制動力が付与される場合を駆動力の回り込みが生じる場合として、旋回外側の車輪ブレーキに対応付けられた開始閾値を変更するので、車両がアンダーステア状態の挙動を生じている場合に、旋回外側におけるトラクション制御の開始を遅らせることができ、これにより、旋回外側に回り込む駆動力によって旋回外側の車輪を加速側にスリップさせることができる。したがって、旋回外側の車輪におけるスリップ力を車両の挙動の乱れを抑制する方向に働く力として利用することができ、これによって、車両の挙動が安定化する。
さらに、前記補正部は、前記横滑り抑制手段によって前記左右車輪に付与される各制動力に差がある場合を駆動力の回り込みが生じる場合とし、前記開始閾値を補正する構成とするのがよい。
このような車両挙動制御装置によれば、補正部が、横滑り抑制手段によって左右車輪に付与される各制動力に差がある場合を駆動力の回り込みが生じる場合として開始閾値を補正するので、駆動力の回り込みが生じる場合を簡易にしかも確実に検知することができ、車両の挙動が安定化する。
また、前記トラクション制御手段は、前記左右の車輪の前記車輪ブレーキそれぞれに対応付けて前記開始閾値を有し、前記補正部は、前記左右の車輪のうち前記横滑り抑制手段によって付与される制動力が小さいほうの前記車輪の前記車輪ブレーキに対応付けられた開始閾値を補正する構成とするのがよい。
このような車両挙動制御装置によれば、補正部が左右の車輪のうち横滑り抑制手段によって付与される制動力が小さいほうの車輪の車輪ブレーキに対応付けられた開始閾値を補正するので、駆動力の回り込みが生じる側の開始閾値が簡単にしかも確実に補正され、車両の挙動が安定化する。
さらに、前記トラクション制御手段は、前記補正部によって補正された開始閾値に基づいて開始判定した場合のトラクション制御量を、補正されていない開始閾値に基づいて開始判定した場合のそれに比べて小さく設定するトラクション制御量設定機能を有する構成とするのがよい。
このような車両挙動制御装置によれば、トラクション制御手段のトラクション制御量設定機能が、補正部によって補正された開始閾値に基づいて開始判定した場合のトラクション制御量を、補正されていない開始閾値に基づいて開始判定した場合のそれに比べて小さく設定するので、車両の旋回走行中におけるトラクション制御量が、例えば、車両の直進走行中におけるトラクション制御量よりも小さく設定されるようになり、その分、差動装置を介して駆動力の回り込みが生じる側の車輪を加速側にスリップさせることができる。したがって、このスリップ力を車両の挙動の乱れを抑制する方向に働く力としてより好適に利用することができ、これによって、車両の挙動が安定化する。
本発明によれば、差動装置を介して左右の駆動車輪が接続される車両において、駆動力の回り込み現象が生じた場合でも車両の挙動が乱れるのを防止することができ、車両の挙動を安定化させることができる車両挙動制御装置が得られる。
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る車両挙動制御装置を備えた車両の駆動系を示す構成図(a)と、同じくブレーキ系を示す構成図(b)であり、図2は液圧ユニットの液圧回路図、図3は一実施の形態に係る車両挙動制御装置の構成を示すブロック図である。
図1(a)に示すように、車両CRは、エンジンENG、トランスミッションTM、センタデフ(差動装置)Ds、フロントデフ(差動装置)Df、リアデフ(差動装置)Drを主に備えた4輪駆動車であり、横滑り抑制手段およびトラクション制御手段を備えた車両挙動制御装置10を備えている。
エンジンENGは、図示せぬアクセルペダルの踏み込み量に応じて出力が変動されるように構成されている。そして、このエンジンENGからの駆動トルクは、トランスミッションTMからセンタデフDsを介してフロントデフDf(差動装置)およびリアデフDr(差動装置)に伝達されるようになっている。なお、エンジンの出力を変動させる方法については、どのような方法でもよく、例えばスロットル弁の開度を調整する方法や過給圧を調整する方法などを採用できる。
フロントデフDfおよびリアデフDrは差動装置である。例えば、周知のような遊星歯車機構となっており、エンジンENGからの駆動トルクを、車両CRの左右前輪T1,T2(以下、単に「前輪T」ともいう。)と左右後輪T3,T4(以下、単に「後輪T」ともいう。)とに旋回時の外輪内輪の回転半径に応じて回転差が生じるように伝達させるものである。
車両挙動制御装置10は、車両CRの各車輪Tに付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御するためのものであり、図1(b)に示すように、油路や各種部品が設けられた液圧ユニット11と、液圧ユニット11内の各種部品を適宜制御するための制御部12とを主に備えている。なお、液圧ユニット11から出力されるブレーキ液圧は、配管を介して各車輪Tに設けられたホイールシリンダHに供給されるようになっており、各ホイールシリンダHを介して各車輪Tに設けられた車輪ブレーキFL,FR,RL,RRにブレーキ液圧が付与されるようになっている。
また、この車両挙動制御装置10の制御部12には、車輪速センサ31、操舵角センサ32、横Gセンサ33、ヨーレートセンサ34および加速度センサ35が車両CRの状態量を検出するための車両挙動検知手段として接続されている。また、車輪Tのスリップ率を演算する図示しないスリップ率算出手段を備えている。
制御部12は、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路等を備えており、車輪速センサ31、操舵角センサ32、横Gセンサ33およびヨーレートセンサ34からの入力と、ROMに記憶されたプログラムやデータに基づいて各種演算処理を行い、後記する横滑り抑制制御およびトラクション制御を実行する。
車輪速センサ31は、各車輪T1,T2,T3,T4(以下、単に「車輪T」ともいう。)の車輪速度を検出するセンサであり、各車輪Tのそれぞれに1つずつ設けられている。各車輪速センサ31は、前記のように制御部12に接続されており、これにより制御部12が4つの車輪(4輪)Tの全ての車輪速度を取得することが可能となっている。
操舵角センサ32は、ステアリングSTの操舵角を検出するセンサであり、また、横Gセンサ33は、車両CRの横方向にかかる遠心力(加速度)を検出するセンサであり、さらに、ヨーレートセンサ34は、車両CRの旋回走行時のヨーレートを検出するセンサである。また、加速度センサ35は、車両CRの前後方向における加速度(以下、「前後加速度」という。)を検出するセンサである。
次に、図2のブレーキ液圧回路図を参照して、液圧ユニット11内に設けられる各種部品の機能について簡単に説明する。なお、図2において液圧ユニット11内の各種部品を繋ぐ実線は、液圧ユニット11に形成された油路を示している。
図2に示すように、液圧ユニット11は、運転者がブレーキペダルBPに加える踏力に応じたブレーキ液圧を発生するマスタシリンダMと、車輪ブレーキFL,FR,RL,RRとの間に配置されている。マスタシリンダMの二つの出力ポートM1,M2は、液圧ユニット11の入口ポート121に接続され、液圧ユニット11の出口ポート122が、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに接続されている。そして、通常時は液圧ユニット11内の入口ポート121から出口ポート122までが連通した油路となっていることで、ブレーキペダルBPの踏力が各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに伝達されるようになっている。
ここで、出力ポートM1から始まる油路は、前輪左側の車輪ブレーキFLと後輪右側の車輪ブレーキRRに通じており、出力ポートM2から始まる油路は、前輪右側の車輪ブレーキFRと後輪左側の車輪ブレーキRLに通じている。なお、以下では、出力ポートM1から始まる油路を「第一系統」と称し、出力ポートM2から始まる油路を「第二系統」と称する。
液圧ユニット11には、その第一系統に各車輪ブレーキFL,RRに対応して二つの制御弁手段Vが設けられており、同様に、その第二系統に各車輪ブレーキRL,FRに対応して二つの制御弁手段Vが設けられている。また、この液圧ユニット11には、第一系統および第二系統のそれぞれに、リザーバ3、ポンプ4、ダンパ5、オリフィス5a、レギュレータR、吸入弁7、貯留室7aが設けられており、さらに、第一系統のポンプ4と第二系統のポンプ4とを駆動するための共通の電動モータ9を備えている。また、本実施形態では、第二系統にのみ圧力センサ8が設けられている。
なお、以下では、マスタシリンダMの出力ポートM1,M2から各レギュレータRに至る油路を「出力液圧路A1」と称し、第一系統のレギュレータRから車輪ブレーキFL,RRに至る油路および第二系統のレギュレータRから車輪ブレーキRL,FRに至る油路をそれぞれ「車輪液圧路B」と称する。また、出力液圧路A1からポンプ4に至る油路を「吸入液圧路C」と称し、ポンプ4から車輪液圧路Bに至る油路を「吐出液圧路D」と称し、さらに、車輪液圧路Bから吸入液圧路Cに至る油路を「開放路E」と称する。
制御弁手段Vは、車輪液圧路Bを開放しつつ開放路Eを遮断する状態、車輪液圧路Bを遮断しつつ開放路Eを開放する状態および車輪液圧路Bを遮断しつつ開放路Eを遮断する状態を切り換える機能を有しており、入口弁1、出口弁2、チェック弁1aを備えて構成されている。
入口弁1は、車輪液圧路Bに設けられた常開型の電磁弁である。入口弁1は、通常時に開いていることで、マスタシリンダMから各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRへブレーキ液圧が伝達するのを許容している。また、入口弁1は、車輪がロックしそうになったときに図1に示す制御部12により閉塞されることで、ブレーキペダルBPから各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに伝達するブレーキ液圧を遮断する。
出口弁2は、車輪液圧路Bと開放路Eとの間に介設された常閉型の電磁弁である。出口弁2は、通常時に閉塞されているが、車輪がロックしそうになったときに図1に示す制御部12により開放されることで、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに作用するブレーキ液圧を各リザーバ3に逃がす。
チェック弁1aは、各入口弁1に並列に接続されている。このチェック弁1aは、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RR側からマスタシリンダM側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、ブレーキペダルBPからの入力が解除された場合に、入口弁1を閉じた状態にしたときにおいても、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RR側からマスタシリンダM側へのブレーキ液の流入を許容する。
リザーバ3は、開放路Eに設けられており、各出口弁2が開放されることによって逃がされるブレーキ液圧を吸収する機能を有している。また、リザーバ3とポンプ4との間には、リザーバ3側からポンプ4側へのブレーキ液の流入のみを許容するチェック弁3aが介設されている。
ポンプ4は、出力液圧路A1に通じる吸入液圧路Cと車輪液圧路Bに通じる吐出液圧路Dとの間に介設されており、リザーバ3で貯留されているブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する機能を有している。これにより、リザーバ3によるブレーキ液圧の吸収によって減圧された出力液圧路A1や車輪液圧路Bの圧力状態が回復される。さらに、このポンプ4は、後記するカット弁6が出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流入を遮断し、且つ、後記する吸入弁7が吸入液圧路Cを開放しているときに、マスタシリンダM、出力液圧路A1、吸入液圧路Cおよび貯留室7aに貯留されているブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する機能を有している。これにより、非ペダル操作時において各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRにブレーキ液圧を作用させることが可能となる。
なお、ダンパ5およびオリフィス5aは、その協働作用によってポンプ4から吐出されたブレーキ液の圧力の脈動および後記するレギュレータRが作動することにより発生する脈動を減衰させている。
レギュレータRは、出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流入を許容する状態および遮断する状態を切り換える機能と、出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流入が遮断されているときに車輪液圧路Bおよび吐出液圧路Dのブレーキ液圧を設定値以下に調節する機能とを有しており、カット弁6、チェック弁6aおよびリリーフ弁6bを備えて構成されている。
カット弁6は、マスタシリンダMに通じる出力液圧路A1と各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに通じる車輪液圧路Bとの間に介設された常開型の電磁弁であり、出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流入を許容する状態および遮断する状態を切り換えるものである。カット弁6は、通常時に開いていることで、マスタシリンダMから各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRへブレーキ液圧が伝達するのを許容している。また、カット弁6は、非ペダル操作時であってポンプ4を作動させるとき、言い換えれば、非ペダル操作時において各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRにブレーキ液圧を作用させるときに制御部12の制御により閉塞される。
チェック弁6aは、各カット弁6に並列に接続されている。このチェック弁6aは、出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、各カット弁6を閉じた状態にしたときにおいてブレーキペダルBPからの入力があっても、出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流入を許容する。
リリーフ弁6bは、各カット弁6に並列に接続されており、車輪液圧路Bおよび吐出液圧路Dのブレーキ液圧が設定値以上になるのに応じて開弁する。なお、カット弁6とリリーフ弁6bとは、例えばソレノイドへの通電を制御することによって開弁圧を調節可能なリニアソレノイドバルブによっても実現できる。そして、このようにカット弁6およびリリーフ分6bとしてリニアソレノイドバルブを採用すると、車輪液圧路BからレギュレータRにかかる液圧と、ソレノイドへの通電によって制御される弁を閉じようとする力とのバランスによって、車輪液圧路Bの液圧を適宜出力液圧路A1へ開放して調節することができる。
吸入弁7は、吸入液圧路Cに設けられた常閉型の電磁弁であり、吸入液圧路Cを開放する状態および遮断する状態を切り換えるものである。吸入弁7は、非ペダル操作時であってカット弁6が出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流入を遮断する状態にあるとき、言い換えれば、非ペダル操作時において各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRにブレーキ液圧を作用させるときに制御部12の制御により開放(開弁)される。
貯留室7aは、吸入液圧路Cであってポンプ4と吸入弁7との間に設けられている。この貯留室7aは、ブレーキ液を貯留するものであり、これにより、吸入液圧路Cに貯留されるブレーキ液の容量が実質的に増大する。
圧力センサ8は、出力液圧路A1のブレーキ液圧を計測するものであり、その計測結果は制御部12に随時取り込まれ、かかる制御部12によりマスタシリンダMからブレーキ液圧が出力されているか否か、すなわち、ブレーキペダルBPが踏まれているか否かが判定され、さらに、圧力センサ8で計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいて、車両CRの横滑り制御やスリップ制御などが行われる。
以上のような液圧ユニット11を制御部12で制御してなる本発明の車両挙動制御装置10の作用について説明する。図3は一実施の形態に係る車両挙動制御装置10の機能ブロック図、図4は横滑り抑制制御の制御フローを示したフローチャート、図5aはトラクション制御の制御フローを示したフローチャート、図5bは図5aの開始閾値補正処理を示したフローチャート、図5cは開始閾値の補正の一例を示した図、図5dは図5aの開始閾値補正処理の他の例を示したフローチャート、図5eは図5aのトラクション制御量設定処理を示したフローチャートである。
図3に示すように、制御部12は、横滑り抑制部15およびトラクション制御部20を備えており、各種のセンサ31〜35からの信号を入力して、入力された信号に基づき、ブレーキ装置としての車輪ブレーキFL,FR,RL,RRを作動制御することで車両CRの横滑り抑制制御およびトラクション制御を行うようになっている。
具体的に、横滑り抑制制御時における横滑り抑制部15は、図4に示すように、各センサ31〜35からの信号の読み込みを行い(ステップS1)、車輪速センサ31の検出値に基づき公知の演算式を用いて、車速V(車両速度)を演算する(ステップS2)。そして、ステップS2で演算した車速Vおよびヨーレートωの積V*ωを演算し、この積V*ωと横加速度Gaとの偏差Ga−V*ωとして横加速度の偏差、つまり車両CRの横滑り加速度Vaを演算する(ステップS3)。
その後、横滑り抑制部15は、ステップS3で演算した横滑り加速度Vaを積分して車両CRの横滑り速度Vbを演算し(ステップS4)、車両CRの前後速度Vc(=車速V)に対する車両の横滑り速度Vbの比Vb/Vcとして車両のスリップ角αを演算する(ステップS5)。
そして、横滑り抑制部15は、ステップS3で演算した横滑り加速度VaとステップS5で演算したスリップ角αからスピン量Vsを演算し、公知の横すべり抑制制御で前輪T1,T2、後輪T3,T4の制動制御を行う。このとき、横滑り抑制部15は、ヨーレートセンサ34からの検出値を入力して、ヨーレートの符号に基づき車両の旋回方向を判定し(ステップS7)、車両がアンダーステア状態であるのかオーバーステア状態であるのかを判定する(ステップS8)。ちなみに、車両の旋回方向の判定は、ヨーレートが正の値となるときにアンダーステア状態であることが特定され、反対にヨーレートが負の値となるときにオーバーステア状態であると判定する。
また、横滑り抑制部15は、車両が横滑り制御の必要な状態であるか否かを所定の条件より判定し(ステップS9)、必要な状態である(Yes)と判定した場合には、例えば、車両の状態がオーバーステア状態であるときに、これを打ち消す方向のモーメントが車両に働くように対象となる車輪ブレーキ(FL,FR,RL,RR)に対して制御量を設定し、この制御量の設定された車輪ブレーキ(FL,FR,RL,RR)に対して制動力を付与する制御を行い(ステップS11)、各種値のリセットを行った後にステップS1に戻る。また、横滑り抑制部15は、ステップS9で横滑り制御の必要がない(No)と判定した場合には、各種値のリセットを行った後にステップS1に戻る。
次に、トラクション制御について説明する。車輪T(本実施形態では4輪)の加速スリップが過大になると、その加速スリップを低減すべく制御部12のトラクション制御部20が該当する車輪TのホイールシリンダHに対して制動力を付与する。
トラクション制御部20は、各車輪速センサ31からの信号に基づいて、各車輪Tのスリップ状態が、加速スリップ(駆動スリップ)であるのか、あるいは減速スリップ(制動スリップ)であるのかを判断するようになっており、加速スリップであると判断したときに、判断した車輪Tに対して制動力を付与する制御を行う。トラクション制御部20は、図3に示すように、トラクション制御の開始の判定に用いられる開始閾値を補正するための補正部21を有している。この補正部21は、トラクション制御による制動制御の開始が遅れる側へ、前記開始閾値を補正するという機能を備えている。ここで、補正部21による開始閾値の補正は、前記横滑り抑制部15による制動力の付与に起因した駆動力の回り込みが生じる場合に行われるように設定されている。
具体的に、トラクション制御部20は、図5aに示すように、各センサ31〜35からの信号の読み込みを行い(ステップS12)、車輪速センサ31の検出値に基づき公知の演算式を用いて、トラクション制御の基準となる車速V(車両速度)が演算される(ステップS13)。
その後、ステップS13で演算された車速Vから、公知の計算式を用いて前輪T1,T2、後輪T3,T4の加速スリップがそれぞれ演算される(ステップS14)。そして、前記横滑り抑制部15による横滑り抑制制御が実行されているか否かを判定し(ステップS15)、横滑り制御実行中である(Yes)と判定した場合には、補正部21が開始閾値の補正処理を行ない(ステップS16)、一方、横滑り制御実行中ではない(No)と判定した場合には、補正部21が開始閾値を予め設定された初期閾値(所定の閾値)に戻す(ステップS17)。
ここで、補正部21による開始閾値の補正処理(ステップS16)について説明する。本実施形態では、以下の異なる2つの補正処理を採り得る。はじめに、図5bを参照して開始閾値補正処理(イ)について説明する。この開始閾値補正処理(イ)では、検出された車両状態量がアンダーステアの状態であるのか、あるいはオーバーステアの状態であるのかに応じて補正処理を行うようになっている。
はじめに、ステップS101で、アンダーステア/オーバーステアの判定(図4の横滑り抑制制御におけるステップS8)を参照し、この参照したオーバーステアの状態が基準以上であるか否か、つまり、オーバーステアの状態で駆動力の回り込みが生じているか否かを判定し(ステップS102)、基準以上である(Yes)と判定した場合に、ステップS103に移行して、車両の旋回方向(図4の横滑り抑制制御におけるステップS7)を参照し、旋回内側となる車輪ブレーキ(例えば、右旋回時における前輪側の車輪ブレーキFR,後輪側の車輪ブレーキRR)の開始閾値を、図5cに示すように、ともに、初期閾値K0からトラクション制御の開始が遅れる側となる補正後閾値Kに変更する。
ステップS102で基準以上のオーバーステアではない(No)と判定した場合には、ステップS104に移行して、参照したアンダーステアの状態が基準以上であるか否か、つまり、アンダーステアの状態で駆動力の回り込みが生じているか否かを判定する。ステップS104で基準以上である(Yes)と判定した場合に、ステップS105に移行して、車両の旋回方向(図4の横滑り抑制制御におけるステップS7)を参照し、旋回外側となる車輪ブレーキ(例えば、右旋回時における前輪側の車輪ブレーキFL,後輪側の車輪ブレーキRL)の開始閾値を、初期閾値K0からトラクション制御の開始が遅れる側となる補正後閾値Kに変更する。また、ステップS104で基準値以上ではない(No)と判定した場合には、開始閾値補正処理(イ)を終了する。
このように、検出された車両状態量がアンダーステアの状態であるのか、あるいはオーバーステアの状態であるのかによって、開始閾値の補正処理を行う側が決定され、補正部21により該当する車輪ブレーキ(FL,FR,RL,RR)におけるトラクション制御の開始が遅れる側に開始閾値が補正される。
次に、図5dを参照して開始閾値補正処理(ロ)について説明する。この開始閾値補正処理(ロ)では、横滑り抑制制御時に車輪ブレーキ(FL,FR,RL,RR)に対して設定された制御量に基づいて開始閾値の補正処理を行うようになっている。
はじめに、ステップS201で、各車輪ブレーキの制御量(図4の横滑り抑制制御におけるステップS10)を参照し、一方の同軸左右の車輪T、例えば、後輪側の車輪Tにおける制御量の差が所定値以上あるか否か、つまり駆動力が回り込むか否かを判定する(ステップS202)。ステップS202で制御量の差が所定値以上ある(Yes)と判定した場合に、ステップS203に移行して、後輪側の車輪Tにおける制御量の小さい方の車輪ブレーキ(RLまたはRR)の開始閾値を、初期閾値K0からトラクション制御の開始が遅れる側となる補正後閾値Kに変更し、ステップS204に移行する。また、ステップS202で制御量の差が所定値以上ない(No)と判定した場合にも、ステップS204に移行する。
ステップS204では、他方の同軸左右の車輪T、例えば、前輪側の車輪Tにおける制御量の差が所定値以上あるか否か、つまり駆動力が回り込むか否かを判定する。ステップS204で制御量の差が所定値以上ある(Yes)と判定した場合に、ステップS205に移行して、前輪側の車輪Tにおける制御量の小さい方の車輪ブレーキ(FLまたはFR)の開始閾値を、初期閾値K0からトラクション制御の開始が遅れる側となる補正後閾値Kに変更して開始閾値補正処理(ロ)を終了する。
このように、開始閾値補正処理(ロ)では、横滑り抑制制御時に車輪ブレーキ(FL,FR,RL,RR)に対して設定された制御量に基づいて開始閾値が補正される。
このような開始閾値の補正処理が行われた後は、図5aに示すように、ステップS18に移行してトラクション制御量の設定処理が行われる。
ここで、図5eを参照してこのトラクション制御量の設定処理について説明すると、はじめに、前記開始閾値補正処理(イ)または開始閾値補正処理(ロ)により開始閾値の補正された車輪Tがあるか否かを判定する(ステップS301)。つまり、トラクション制御の対象となる車輪Tが駆動力の回り込みの生じた側の車輪Tであるのか否かを判定する。ステップS301で開始閾値の補正された車輪Tがある(Yes)と判定した場合には、ステップS302に移行して開始閾値の補正された車輪Tのトラクション制御量を標準より小さく設定する(トラクション制御量設定機能)。すなわち、開始閾値が初期閾値K0の場合に実行されるトラクション制御量を標準とし、例えば、制御弁手段Vの弁の開閉時間などを変更して、付与される制動力を小さく設定する。制御量の変更幅は予め試験等によって適切な値を定めてもよいし、車速に応じて可変するようにしてもよい。一方、ステップS301で開始閾値の補正された車輪Tがない(No)と判定した場合には、ステップS303に移行して全輪のトラクション制御量を標準に設定する。
このようなトラクション制御量設定処理が行われた後は、再び図5aに示すように、ステップS19に移行してトラクション制御が必要な車輪Tがあるか否かをステップS14の演算結果に基づいて判定し、ある(Yes)と判定した場合には、ステップS18で設定処理されたトラクション制御量に基づいて、対象となる車輪Tに制動力を付与する(ステップS20)。一方、ステップS19でトラクション制御が必要な車輪Tがない(No)と判定した場合には、ステップS12に戻る。
このようなトラクション制御は、例えば、所定時間毎の割り込みによって行われる。
次に、図6に示すタイムチャートおよび図7(a)〜(d)に示す車両の模式作用説明図を参照して、本実施形態に係る車両挙動制御装置の動作の一例について説明する。なお、適宜、各図を参照する。
図7(a)に示すように、車両CRが右旋回で走行している状態で、同図に破線で示すように、車両CRがオーバーステア状態になると、その状態が各センサ31〜35の検出値として制御部12に入力され、図6に示すように、横滑り抑制のフラグが立ち、横滑り抑制部15が横滑り抑制制御を実行する(時刻t1)。ここで、車両CRは、右旋回走行中にオーバーステア状態になったので、横滑り抑制部15は、このオーバーステア状態を抑制するために、旋回外側の車輪T2,T4に対して制動力を付与する。このとき、図7(a)に示すように、車両CRの各車輪Tに対して、同図に示すように、「50」の駆動力がそれぞれかかっていると想定し、さらに、旋回外側の車輪T2,T4に対して、横滑り抑制部15の制御により「70」の制動力がかけられたと想定すると、図7(b)に示すように、旋回外側の車輪T2,T4は、その数値の差から駆動力がかき消された状態となり、駆動力から制動力を差し引いた「20」の制動力が、車輪T2,T4に対して作用することとなる。これとともに、旋回内側の車輪T1,T3には、旋回外側の車輪T2,T4の駆動力「50」「50」が回り込み、旋回内側の車輪T1,T3は、ともに「100」の駆動力で回転を開始する。これによって、図6に示すように、両輪T1,T3とも加速スリップ側にスリップ率が移行する状態となる(時刻t2)。また、制動力のかけられた旋回外側となる車輪T2,T4は、実際に減速されるまでに時間を要するため、スリップ率が加速スリップ側に移行した車輪T1,T3に比べて、減速スリップ側におけるスリップ率が高まることはない。
このような横滑り抑制が行われる一方で、トラクション制御部20では、前記のような駆動力の回り込みが生じたことを受けて、補正部21により、トラクション制御の開始閾値である初期閾値K0がトラクション制御による制動制御の開始の遅れる側の開始閾値である補正後閾値K(図6中矢印Y方向)へ補正される。
その後、加速スリップ側に移行した車輪T1,T3のスリップ率が開始閾値Kを超える状態(車輪T1:時刻t4から時刻t5の間、車輪T3:時刻t3から時刻t6の間)になると、トラクション制御部20により車輪T1,T3に制動力が付与される。このときの状態を図7(c)により示すと、次のようになる。すなわち、トラクション制御により仮に「50」の制動力が車輪T1,T3にそれぞれかけられたと想定すると、車輪T1,T3には、図7(d)に示すように、差し引いた分の「50」の駆動力がかかる状態になり、旋回外側となる車輪T2,T4には、内輪側からの駆動力の回り込みによって、同じく「50」の駆動力がかかることとなる。これにより、旋回外側となる車輪T2,T4には、「50」の駆動力から「20」の制動力を差し引いた残りの「30」の駆動力がかかる状態になる。
ここで、前記したように、駆動力の伝達回り込みが生じたことを受けて、補正部21によりトラクション制御の開始閾値である初期閾値K0が、トラクション制御による制動制御の開始の遅れる側の開始閾値である補正後閾値K(図6中矢印Y方向)へ補正されたので、その分、トラクション制御の開始が遅れる状態となり、旋回内側となる車輪T1,T3のスリップ率が加速スリップ側に大きくなるが、この加速スリップは、オーバーステアを助長する旋回外側において行われるのでは無く、旋回内側の車輪T1,T3において行われることとなるので、結果としてオーバーステア状態を抑制する方向に働くようになり、車両CRの挙動が安定化するようになる。
このことを、図8に示した閾値を変更しない例と比較すると、図8から明らかであるように、トラクション制御後(時刻t5,t6)は、旋回内側の車輪T1,T3のスリップ率が加速スリップ側から減速スリップ側に向けて短時間で小さくなっており、それに伴う実際のヨーモーメントは、同図に示すように、目標とするヨーモーメントに対して凹凸にばらついた状態に表れている。つまり、トラクション制御後には車両CRの挙動が乱れた状態となってしまう。
これに対して、本実施形態の車両挙動制御装置では、図6に示すように、トラクション制御の開始閾値が前記のように補正された分、車輪T1,T3のスリップ力がオーバーステア状態を抑制する方向に作用することとなり、トラクション制御後(時刻t5,t6)には、旋回内側の車輪T1,T3のスリップ率が加速スリップ側から減速スリップ側に向けて時間をかけ緩やかに収束するようになる(時刻t7)。このとき、実際のヨーモーメントは、目標とするヨーモーメントに対してほぼ重なる状態に表れる。つまり、トラクション制御後に車両CRの挙動が乱れることが防止され、車両CRの挙動が安定化するようになる。
なお、減速スリップ側となる旋回外側の車輪T2,T4は、前記トラクション制御によって生じた、旋回内側から旋回外側への駆動力の回り込みに伴い、一旦、加速スリップ側に移行する状態となるが、トラクション制御の終了(時刻t5,時刻t6)に伴って、駆動力の回り込みが戻る状態となり、スリップ率が減速スリップ側に大きくなって十分な制動が車輪T2,T4にかけられた後、収束する(時刻t7)。
以上説明した本実施の形態の車両挙動制御装置によれば、横滑り抑制装置(制御部12)による制御中において、車両CRの一側(例えば、旋回外側)の車輪T2,T4から他側(旋回内側)の車輪T1,T3へフロントデフDf,リアデフDrを介して駆動力の回り込みが生じる場合は、トラクション制御部20の補正部21によって、トラクション制御の開始の判定に用いられる開始閾値が、トラクション制御の開始が遅れる側に補正される。これにより、駆動力の回り込みが生じる側のトラクション制御の開始が遅れるようになり、その分、横滑り抑制部15による横滑り制御が持続されることで車両の挙動の安定化が図られる。
一方、トラクション制御の開始判定に用いられる開始閾値が、補正部21により補正された後の開始閾値以上になると、トラクション制御部20により、フロントデフDf,リアデフDrを介して駆動力が伝達された側のトラクション制御が開始され、車輪Tのスリップを抑制する。
これにより、横滑り抑制制御とトラクション制御とが早期に干渉してしまうことが防止され、横滑り抑制制御中の左右の車輪T1,T2、T3,T4間における駆動力の回り込みに伴って車両CRの挙動が乱れることが抑制され、車両CRの挙動が安定化する。
また、フロントデフDf,リアデフDrを介して伝達された駆動力により加速スリップ側で回転する車輪(T1,T3)のスリップ力は、車両CRの挙動の乱れを抑制する方向に働く力、例えば、車両CRがオーバーステア方向の挙動を生じている場合であれば、オーバーステアの抑制方向に働く力として利用することができるので、車両CRの挙動がより安定化されるという利点が得られる。また、加速操作感が削がれることも抑制される。
また、トラクション制御部20によるトラクション制御は、ブレーキトラクション制御であるので、エンジンENGの出力を有効に活用したトラクション制御が可能となる。つまり、エンジンENGからの駆動トルクが、フロントデフDf、リアデフDrによってブレーキトラクション制御が行われる側の車輪Tに対し、ブレーキトラクション制御が開始されるまでの間に、駆動力が大きく配分されて伝達されるので、エンジンENGの出力を有効に活用した挙動制御を行うことができる。したがって、車両CRの挙動がより一層安定化するという利点が得られる。
なお、前記した実施形態では四輪駆動の車両CRに車両挙動制御装置10を適用した例ついて説明したが、例えば、前輪側が従動輪とされ、後輪側が駆動輪とされる車両CRについても同様に適用することができる。
さらに、前記した実施形態では、トラクション制御がブレーキトラクション制御である車両挙動制御装置10について説明したが、図9に示すように、トラクション制御部20’がエンジンENGに接続され、トラクション制御としてエンジン出力を変動させるエンジントラクション制御も行えるように構成してもよい。
この場合、図10に示すように、ブレーキトラクション制御の開始閾値とは別に、エンジントラクション制御の開始閾値を設定してもよい。このように、トラクション制御をエンジントラクション制御およびブレーキトラクション制御で行うように設定することにより、トラクション制御のかかり具合をスムーズかつ滑らかに行うことができるようになり、車両CRの挙動がより一層安定化されるようになる。
なお、トラクション制御量は、前記した液圧ユニット11によりポンプ4を作動させるとともにカット弁6により車輪ブレーキFL,FR,RL,RRにかかる液圧を調整して制御量を調整することによっても可変可能である。
以上、本発明は、前記実施形態に限定されることなく、様々な形態で実施される。
前記実施形態では、トラクション制御部20で導出した条件に基づいて、車両挙動制御装置10の制御部12が主にブレーキトラクション制御を行うこととしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、制御部12のブレーキトラクション制御に関する機能を別に設けたトラクション制御装置に移すことによって、トラクション制御装置が適宜車両挙動制御装置10を作動させることで、ブレーキトラクション制御を行うようにしてもよい。
また、差動装置は、遊星歯車機構に限らずその他の公知の構成、公知の作動方式であってもよいのはもちろんである。またさらに、前記実施形態では、フロントデフDfあるいはリアデフDrを介して左右の車輪T間で駆動力の回り込みが生じる場合に、トラクション制御部20の補正部21が、トラクション制御の開始判定に用いられる開始閾値をトラクション制御の開始が遅れる側に補正する例について説明したが、本発明はこれに限られることはない。例えば、前輪側Fの一方の車輪Tに伝達される駆動力が、センタデフDsを介して後輪側Rの車輪Tに伝達される場合や、これとは逆に、後輪側Rの一方の車輪Tに伝達される駆動力が、センタデフDsを介して前輪側Fの車輪Tに伝達される場合も含まれる。
本発明の一実施の形態に係る車両挙動制御装置を備えた車両の駆動系を示す構成図(a)と、同じくブレーキ系を示す構成図(b)である。 液圧ユニットの液圧回路図である。 一実施の形態に係る車両挙動制御装置の機能ブロック図である。 横滑り抑制装置の制御フローを示すフローチャートである。 トラクション制御装置の制御フローを示すフローチャートである。 図5aの開始閾値補正処理を示したフローチャートである。 開始閾値の補正の一例を示した図である。 図5aの開始閾値補正処理の他の例を示したフローチャートである。 図5aのトラクション制御量設定処理を示したフローチャートである。 車両挙動制御装置の作動の一例を示すタイムチャートである。 (a)〜(d)は車両の模式作用説明図である。 従来の車両挙動制御装置の作動の一例を示すタイムチャートである。 変形例に係る車両挙動制御装置を備えた車両の駆動系を示す構成図である。 変形例に係る車両挙動制御装置の作動の一例を示すタイムチャートである。
符号の説明
10 車両挙動制御装置
11 液圧ユニット
12 制御装置
15 横滑り抑制部
20 トラクション制御部
21 補正部
31 車輪速センサ
32 操舵角センサ
33 横Gセンサ
34 ヨーレートセンサ
35 加速度センサ
CR 車両
Df フロントデフ
Dr リアデフ
ENG エンジン
FR 車輪ブレーキ
FL 車輪ブレーキ
RR 車輪ブレーキ
RL 車輪ブレーキ
ST ステアリング
T 車輪

Claims (5)

  1. 駆動輪となる左右の車輪が差動装置を介して接続された車両の挙動を安定化させる車両挙動制御装置であって、
    前記車両の旋回走行中の車両状態量を検出する車両状態量検出手段にて検出された前記車両状態量が目標車両状態量となるように、前記車輪毎に車輪ブレーキの制動力を制御し制動力を付与させる横滑り抑制手段と、
    前記車輪毎に加速時のスリップを抑制するように車輪ブレーキの制動力を制御するトラクション制御手段と、を備え、
    前記トラクション制御手段は、前記横滑り抑制手段による制御中において、前記左右の車輪のうち一方の車輪に伝達される駆動力が該制御により付与される制動力で抑制されるにつれ、他方の車輪に伝達される駆動力が増加する駆動力の回り込みが生じる場合、トラクション制御の開始判定に用いられる開始閾値を、トラクション制御の開始が遅れる側に補正する補正部を備えて構成されることを特徴とする車両挙動制御装置。
  2. 前記トラクション制御手段は、前記左右の車輪の前記車輪ブレーキそれぞれに対応付けて前記開始閾値を有し、
    前記補正部は、
    前記検出された車両状態量がオーバーステアに該当し、かつ前記横滑り抑制手段によって旋回外側の前記車輪ブレーキに制動力が付与される場合を、駆動力の回り込みが生じる場合として、旋回内側の前記車輪ブレーキに対応付けられた前記開始閾値を変更し;
    前記検出された車両状態量がアンダーステアに該当し、かつ前記横滑り抑制手段によって旋回内側の前記車輪ブレーキに制動力が付与される場合を、駆動力の回り込みが生じる場合として、旋回外側の前記車輪ブレーキに対応付けられた開前記始閾値を変更することを特徴とする請求項1に記載の車両挙動制御装置。
  3. 前記補正部は、前記横滑り抑制手段によって前記左右車輪に付与される各制動力に差がある場合を駆動力の回り込みが生じる場合とし、前記開始閾値を補正することを特徴とする請求項1に記載の車両挙動制御装置。
  4. 前記トラクション制御手段は、前記左右の車輪の前記車輪ブレーキそれぞれに対応付けて前記開始閾値を有し、
    前記補正部は、前記左右の車輪のうち前記横滑り抑制手段によって付与される制動力が小さいほうの前記車輪の前記車輪ブレーキに対応付けられた開始閾値を補正することを特徴とする請求項3に記載の車両挙動制御装置。
  5. 前記トラクション制御手段は、前記補正部によって補正された開始閾値に基づいて開始判定した場合のトラクション制御量を、補正されていない開始閾値に基づいて開始判定した場合のそれに比べて小さく設定するトラクション制御量設定機能を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両挙動制御装置。
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