JP2006275667A - 生体用金属に対する血清タンパク質複合体形成の評価方法 - Google Patents

生体用金属に対する血清タンパク質複合体形成の評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ステントグラフトや人工関節、義歯床等の医療用具に利用されるバイオマテリアルである生体用金属に対して、血清タンパク質複合体(血栓)が形成される傾向を、効率のよく評価することができ、高い抗血清タンパク質複合体形成能を有する生体用金属の開発に貢献することができる、生体用金属に対する血清タンパク質複合体形成の評価方法を提供する。
【解決手段】 生体用金属に対する血清タンパク質複合体形成の評価方法であって、少なくとも、<1>生体用金属を血清中でインキュベーションする工程、<2>緩衝液で洗浄する工程、<3>精製水で洗浄する工程、および、<4>生体用金属に対しての血清タンパク質複合体形成の有無を走査型電子顕微鏡で観察する工程を含むことを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本願発明は、生体用金属に対する血清タンパク質複合体形成の評価方法に関するものである。
従来、人工関節、人工血管の一種であるステントグラフト、義歯床等に利用される素材、つまり、生体用素材(バイオマテリアル)として、高分子材料、セラミクス材料、合金を含む金属材料およびこれらの複合材料等が利用されており、特に金属材料は、その材質の特性、つまり、耐食性や機械的特性から広く利用されている。この金属材料としては、たとえば、ステンレス鋼、チタニウムやチタニウム合金、コバルト(Co)-クロム(Cr)合金、コバルト(Co)-クロム(Cr)-モリブテン(Mo)合金、白金、金および金合金、銀合金等が挙げられる(以下、生体用金属とする)。
ところで、上記ステントグラフトは、ステントといわれるバネ状の金属を取付けた人工血管の一種である(たとえば、特許文献1参照)。これを圧縮して細いカテーテルの中に収納して、使用する。具体的には、たとえば、血栓のある血管部位まで収納状態にあるステントグラフトをカテーテルで運び、収納してあったステントグラフトを放出することで、ステント拡張させ、ステントの金属バネの力と患者自身の血圧によって広がって血管内壁に貼り付けられて自然に固定され、体内に留置させることができる。このため、このステントグラフトによる治療では、外科的手術による侵襲性を抑えることができ、患者の身体にかかる負担を極めて少なくすることができる、血栓(特に動脈瘤)等の治療において極めて有用な手段である。
ステントグラフトは、多くの場合、長期間に亘って体内に留置されるため、生体に対する適合性が重要になる。ステントグラフトの多くは、上記のとおり、合金を含む金属、特に、生体適合性を有する生体用金属から構成されており、その主な素材は、ステンレス鋼とニチノールであるが、アレルギーの誘発因子となるニッケル(Ni)を含んでいる点や、耐磨耗性の点で問題になっている。近年では、Co-Cr合金やCo-Cr-Mo合金は、ステンレス鋼よりも、さらに、耐食性および機械的特性に優れており、問題となっているNiをほとんど含んでいないことから、特に血管に挿入、留置するステントグラフトを構成する生体用金属として、注目されている。
ただ、ステントの拡張や留置時に、このステント自身が引き起こす血管障害、つまり、生体用金属から構成されているステント表面に血清タンパク質複合体が形成され、血栓の生成等を誘導して、再狭窄を惹起することがある。これは、上記いずれの生体用金属もが有する共通の問題である。
そこで、この生体用金属から構成されているステントグラフトに、血清タンパク質複合体(血栓)が形成されることを防止することのできる、抗血栓形成能を有するステントグラフトが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。このステントグラフトは、塩酸サルポグレラートよりなる抗血小板剤および抗トロンビン剤を含み、このような塩酸サルポグレラートを生体内で徐放しうる高分子材料からなる被覆層で被覆されていることで、抗血小板剤により血小板粘着を阻害し、抗トロンビン剤により血液凝固反応の開始と進展の抑制が可能となり、ステントグラフトに血清タンパク質複合体(血栓)の形成を防止・抑制できるとしている。
しかしながら、特許文献2記載のようなステントグラフトが提案されてはいるものの、生体用金属自身が、高い抗血清タンパク質複合体形成能を有しているのではなく、ステントグラフトに抗血小板剤や抗トロンビン剤等の抗血栓形成剤を被覆する必要があり、依然として、抗血清タンパク質複合体形成能を有する生体用金属は開発されていない。現在、このような生体用金属を開発するため、研究が進められているが、上記のようにステントグラフトはもちろん、人工関節や義歯床等に利用される生体用金属に対して、血清タンパク質複合体(血栓)が形成される傾向を、効率のよく評価する方法が存在しないのが実状であり、このことは、高い抗血清タンパク質複合体形成能を有する生体用金属の開発進展の弊害となっている。
米国特許第5891191号公報 特開2003-24452号公報
そこで、本願発明は、以上のとおりの背景から、従来の問題点を解決すべく、ステントグラフトや人工関節、義歯床等の医療用具に利用されるバイオマテリアルである生体用金属に対して、血清タンパク質複合体(血栓)が形成される傾向を、効率のよく評価することができ、高い抗血清タンパク質複合体形成能を有する生体用金属の開発に貢献し得る、新しい生体用金属に対する血清タンパク質複合体形成の評価方法を提供することを課題としている。
本願発明は、前記の課題を解決するものとして、第1には、生体用金属に対する血清タンパク質複合体形成の評価方法であって、少なくとも以下の工程:
<1>生体用金属を血清中でインキュベーションする工程;
<2>緩衝液で洗浄する工程;
<3>精製水で洗浄する工程;および
<4>生体用金属に対しての血清タンパク質複合体形成の有無を走査型電子顕微鏡で観察する工程;
を含むことを特徴とする。
また、本願発明は、第2には、血清は、自家血清であることを特徴とし、第3には、インキュベーションの条件は、温度条件が35℃から40℃の範囲であり、時間条件が15分から25分の範囲であることを特徴とし、第4には、緩衝液は、リン酸緩衝液であることを特徴とし、第5には、精製水は、水を蒸留法によって精製した蒸留水であることを特徴とする。
本願第1の発明によれば、ステントグラフトや人工関節、義歯床等の医療用具に利用されるバイオマテリアルである生体用金属に対して、血清タンパク質複合体(血栓)が形成される傾向を、効率のよく評価することができ、高い抗血清タンパク質複合体形成能を有する生体用金属の開発に貢献することができる。
第2の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、生体用金属の使用対象となる本人にとって相性のよい生体用金属を見出すことができる。
また、第3から第5の発明によれば、上記第1および第2の発明の効果に加え、さらに効率のよく、生体用金属に対する血清タンパク質複合体(血栓)の形成傾向を評価することができる。
本願発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について詳しく説明する。
本願発明は、バイオマテリアルとして、たとえば、ステントグラフトや人工関節、義歯床等に利用される生体用金属に対する血清タンパク質複合体(血栓)が形成される傾向を、効率よく評価する方法であって、高い抗血清タンパク質複合体形成能を有する生体用金属の開発に貢献することができる。
すなわち、本願発明の評価方法は、少なくとも以下の工程:
<1>生体用金属を血清中でインキュベーションする工程;
<2>インキュベーション後の生体用金属を、緩衝液で洗浄する工程;
<3>緩衝液で洗浄後の生体用金属を、さらに精製水で洗浄する工程;および
<4>前記血清中でのインキュベーションによって、生体用金属の表面に対して血清タンパク質複合体形成の有無を、走査型電子顕微鏡で観察する工程;
を含むことを特徴としている。
そして、このとき、第1工程の実施前に前処理として、たとえば、生体用金属を高温熱処理してもよい。なお、生体用金属によって、高温熱処理における温度や雰囲気は適宜に選択、設定することができ、たとえば、生体用金属がCo-Cr-Mo合金の場合は、アルゴン雰囲気下で、温度1230℃前後で高温熱処理を行う。さらに、生体用金属の表面を鏡面仕上げにするため研磨処理してもよいし、またさらに、アセトンやエタノール、蒸留水等それぞれを用いて超音波等による洗浄をしてもよい。
本願発明の評価方法の対象となり得る生体用金属は、当然に生体に適合性を有するものであることが重要であるが、その素材は特に限定されるものではなく、たとえば、ステンレス鋼、チタニウムやチタニウム合金、コバルト(Co)-クロム(Cr)合金、コバルト(Co)-クロム(Cr)-モリブテン(Mo)合金、白金、金および金合金、銀合金等、また、これらを含有する複合素材が挙げられる。
そして、これら生体用金属を用いて、上記のとおり、バイオマテリアルとして、たとえば、ステントグラフトや人工関節、義歯床等の医療用具を構成する。
本願発明の評価方法における血清は、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、サル等の各動物を由来とする血清を使用することができ、特に限定されるものではない。また、ヒト由来の血清を使用する場合、他人を由来とする血清である他家血清、あるいは、生体用金属からなる医療用具の使用対象である患者本人を由来とする血清、つまり、自家血清が使用できるが、上記のとおり、患者本人と相性のよい生体用金属を見出すという観点から、自家血清であることが好ましい。
本願発明の評価方法における工程の一つであるインキュベーションは、生体用金属と血清(血清成分)とを反応させ、血清タンパク質複合体(血栓に相当)を形成させることを図るものである。このインキュベーションの条件である温度と時間については、インキュベーションの温度条件は35℃から40℃の範囲であり、かつ、インキュベーションの時間条件は15分から25分の範囲であることが好ましい。さらに、インキュベーション温度については、生体、特にヒトの平均体温を考慮すると、37℃±1℃程度(つまり、36℃から38℃の範囲)であることがさらに好ましく、また、インキュベーション時間については、血清タンパク質の立体構造が変わるときの変曲点を考慮すると、20分±2分程度(つまり、18分から22分の範囲)であることがさらに好ましい。
なお、本願発明は、血清タンパク質複合体を形成しない「抗血清タンパク質複合体能を有する生体用金属」の開発に貢献するものであるから、上記インキュベーションを行っても、当然ながら、生体用金属によっては、この血清タンパク質複合体が形成されない場合もある。
本願発明において、洗浄に使用される緩衝液は、特に限定されるものではないが、たとえば、リン酸緩衝液(特に、ナトリウム塩を含むリン酸緩衝液であることが望ましい)、トリス緩衝液、HEPES緩衝液、酢酸緩衝液等の各種のものが使用できる。特に、本願発明においては、さらに効率よく生体用金属に対する血清タンパク質複合体形成の評価をすることができることから、リン酸緩衝液を使用することが好ましい。
本願発明における精製水は、通常の水を各種の精製法で精製したものである。水の精製法としては、たとえば、強酸性樹脂と強アルカリ性樹脂により、イオン交換物(不純物)を吸着して除去するイオン交換法、沸点の違いによって水を精製する蒸留法、半透膜に浸透圧以上の圧力を逆向きにかけて、水の分子だけを通過させることで精製する逆浸透(RO)法、孔径が数nmである微細膜を用いて水を濾過することで、精製する限外濾過(UF)法、さらには、市販の超純水製造装置(たとえば、Millipore社製:Milli-Q(登録商標))による精製法等、各種の精製法で水を精製した精製水であり、さらには、これら各種の精製法を組み合わせたり、また、繰り返したりして、精製度を上げて精製した精製水でもよい。この精製水の中でも、次の工程であるSEM観察において、生体用金属に形成された血清タンパク質複合体を明確に観察・評価するため、可能な限り水に含まれる塩を除去する必要があることから、精製度が極めて高い、たとえば、蒸留水を用いて洗浄することが好ましい。
なお、上記緩衝液による洗浄および精製水による洗浄は、両者ともに複数回繰り返してもよい。
そして、上記のとおりの、第1工程として血清中でのインキュベーション、第2工程として緩衝液による洗浄および第3工程として精製水による洗浄を行った生体用金属を、電子顕微鏡の一種である走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope; SEM)で観察することで、この生体用金属、特にその表面に対する血清タンパク質複合体形成の有無を評価することができる。血清タンパク質複合体が形成されている場合には、その形態や形状、大きさ、形成量等について評価する。なお、このとき、この形成された血清タンパク質複合体は平面的なものであるが、多くの場合、このような血清タンパク質複合体が結合しあうことで立体的な血清タンパク質複合体を形成する。一方、血清タンパク質複合体が形成されていない場合には、その生体用金属は、「高い抗血清タンパク質複合体形成能を有する生体用金属」であると評価でき、血栓形成の防止ができる安全性の高い、医療用具の素材として使用することができる。
本願発明におけるSEMは、通常に使用されるSEMである。その原理としては、まず、電子線を絞り、電子ビームにして対象物である生体用金属に照射する。生体用金属に電子ビームがあたると、二次電子や反射電子、特性X線、蛍光等が発せられ、これらを調べることによって、電子ビームを当てた座標の情報が得られる。そして、電子ビームを走査(SCAN)することで、2次元の情報を観察画像として得ることができ、これを基に、血清タンパク質複合体形成を評価することができる。
なお、本願発明において、生体用金属に形成された血清タンパク質複合体について確認するための検証試験を実施してもよい。具体的には、たとえば、血清タンパク質複合体が実際に生体用金属表面に形成(結合)していることを確認するために、使用する血清に対する各種の抗体、たとえば、ウサギ血清を使用した場合は抗ウサギIgG等を用いた抗原抗体反応で検証することが考慮できる。また、生体用金属に対する血清タンパク質複合体の結合度合いを確認するために、緩衝液および蒸留水による洗浄後、SDS等の界面活性剤の存在下でインキュベーションして検証することも考慮できる。
以下に実施例を説明し、さらに詳しく本願発明の生体用金属に対する血清タンパク質複合体形成の評価方法について説明する。もちろん、以下の例によって本願発明が限定されることはない。
1.試薬の調製
(1)Na塩含有リン酸緩衝液、pH 7.4(以下、PBSとする)
リン酸二水素ナトリウム二水和物(NaH2PO4・2H2O) 0.13 g、リン酸水素二ナトリウム十二水和物(Na2HPO4・12H2O) 1.45 gおよびNaCl 2.92 gを蒸留水で溶解し、500 mLに調製した。
(2)1% ラウリル硫酸Na溶液(C12H25OSO3Na:以下、SDS溶液とする)
SDS 1 gを蒸留水に溶かして、100 mLに調製した。
(3)硫酸メタノール
メタノール(CH3OH) 900 mLに、硫酸(H2SO4) 100 mLを加えて、硫酸メタノール液を調製した。
(4)臭酸水溶液
臭酸(H2C2O4) 1 gに、蒸留水 100 mLを加えて、臭酸水溶液を調製した。
2.使用する金属(生体用金属)と、その調製
(1)コバルト(Co)-クロム(Cr)-モリブテン(Mo)合金
本実施例においては、Co-Cr-Mo合金として、Co-29 Cr-6 Mo合金(wt%)を溶製した。溶解には、真空高周波溶解炉を使用し、アルゴン雰囲気下で溶解した。鋳型は水冷式の銅鋳型を用いた。これによって得られたをCo-29 Cr-6 Mo合金を、本実施例では「鋳造材」とした。
また、この鋳造材を、アルゴン雰囲気下で1230 ℃で10 時間、真空熱処理炉で保持した後、水焼入れした。これを、本実施例では「熱処理材」とした。
(2)ステンレス鋼
Co-Cr-Mo合金との比較のために、ステンレス鋼を用いた。このステンレス鋼は、SUS304(Fe-18Cr-8Ni)であった。
(3)試料である生体用金属の切り出し
生体用金属である、上記(1)のCo-Cr-Mo合金(鋳造材および熱処理材)、上記(2)のステンレス鋼それぞれを、ワイヤ放電加工機で直径25 mm、厚さ1 mmのディスク状にカットした。
(4)生体用金属の表面研磨
ディスク状にカットした各生体用金属を、自動研磨機(ビューラー製:ECOMET4)を用いて、砥粒0.06 μmの研磨剤で鏡面に仕上げた。
(5)超音波洗浄
生体用金属である、鋳造材、熱処理材およびステンレス鋼を、アセトン、エタノール、蒸留水で、それぞれ5分間づつ超音波洗浄を行った。
3.生体用金属に対する血清タンパク質複合体形成の評価
(1)評価方法の手順
上記2.で調製した各生体用金属に対する血清タンパク質複合体形成の評価を、以下の工程によって行った。
第1の工程:各生体用金属それぞれを、ウシ血清中にて、37℃、20分間インキュベーションした。
第2の工程:インキュベーション後、PBSで洗浄した。
第3の工程:次に、蒸留水で洗浄した。
第4の工程:そして、分解能は4.5nm、観察条件は角度0°および加速電圧15kvで、走査型電子顕微鏡(SEM:日立製作所製、S-2250N)で各生体用金属を観察した。SEMによる観察の前に、各生体用金属は、自然乾燥させ、真空蒸着装置(IB-3)を用いて、5 mA、3分間の条件で金蒸着させた。
なお、超音波洗浄した各生体用金属を、PBS洗浄しただけのものを、本願発明の評価方法に対する比較対照例とした。
(2)評価結果
結果は、図1から図5に示したとおりであった。なお、いずれの図においても、(a)は鋳造材、(b)熱処理材、(c)ステンレス鋼を示している。
(A)第1工程における各生体用金属の状態
図1は、第1工程における各生体用金属の状態である。図1に示したとおり、第1工程における各生体用金属は、いずれにおいても血清タンパク質複合体が形成されていることを観察することができた。また、ステンレス鋼においては、他のCo-Cr-Mo合金2種(つまり、鋳造材および熱処理材)と比べて、より大きな複合体を観察することができた。さらに、第1工程における各生体用金属では、その表面上に血清タンパク質複合体の膜が形成されていることを観察できた。さらにまた、血清タンパク質の膜で観察された複合体を拡大してみると、多様な形態を観察することができたが、これが生体用金属の種類によるものなのかは判断できなかった。
(B)第2工程における各生体用金属の状態と、その比較対照例
図2は、第2工程における各生体用金属の状態である。図3は、図2との比較対照例として、超音波洗浄した各生体用金属を、PBS洗浄しただけのものである。図2に示したとおり、生体用金属に未結合の血清タンパク質を緩衝液で洗浄した第2工程における各生体用金属は、上記第1工程における生体用金属に観察されたような血清タンパク質の膜は、観察されなかったが、第2工程においても、いずれの生体用金属表面上には、血清タンパク質複合体が形成されていることを観察することができた。特に、ステンレス鋼については、最も多量の複合体の形成を観察することができた。さらに、これら複合体は、図1と同様に数種類の複合体が観察された。しかし、これら複合体が、PBSの塩である可能性があるため、比較対照例である、超音波洗浄した各生体用金属をPBS洗浄しただけのものと比較した。しかし、図3に示したとおり、この比較対照例では、形成された複合体の形態は、1種類だけではなかったため、PBSの塩であるのか、金属表面に形成(結合)した血清タンパク質であるのかを判別することは困難であった。
(C)第3工程における各生体用金属の状態
図4は、第3工程における各生体用金属の状態である。また、図5は、図4の拡大図である。第3工程における各生体用金属は、いずれにおいても血清タンパク質複合体が形成されていることを観察することができ、複合体の量に差が見られた。特に、図4に示したとおり、ステンレス鋼については、最も多量の複合体が形成されていた。なお、この工程では、PBSの塩等を蒸留水で洗浄しているため、この血清タンパク質複合体は、生体用金属表面に特異的に結合することで形成されていると考えられる。
そして、図5に示したとおり、各生体用金属表面に形成された血清タンパク質複合体は、生体用金属の種類によって形態的に異なっていた。つまり、血清タンパク質複合体は、生体用金属表面の何らかの因子に特異的に反応結合して形成し、その因子は生体用金属の種類によって異なるということを示している。また、血清タンパク質複合体は、金属表面上の全てに結合しているわけではなかったので、同一の金属上でもタンパク質結合因子が異なっているということが考えられる。
4.生体用金属に形成された血清タンパク質複合体の検証試験
さらに、血清タンパク質複合体が実際に生体用金属表面に形成(結合)していることを確認するために抗原抗体反応による検証試験を、また、生体用金属に対する血清タンパク質複合体の結合度合いを確認するために、界面活性剤による検証試験をそれぞれ行った。
(1)抗原抗体反応による検証試験
超音波洗浄後の各生体用金属を、ウサギ血清で37℃、20分間インキュベーションし、次いで、PBSと蒸留水それぞれで洗浄した。
これに、ウシ抗ウサギIgG(Bovine anti-rabbit IgG)血清を反応させ、PBSと蒸留水で未反応タンパク質を洗浄・除去した。そして、これをSEMで観察した。
結果は、図6に示したとおり、生体用金属の種類に関わらず、抗原-抗体の複合体が、ほぼ均一に分布しているのが観察された。また、図7に示したとおり、倍率を上げて観察すると、全ての生体用金属表面上で形態的に異なる2種類の立体的な複合体を観察することができた。
このことから、血清タンパク質は、生体用金属表面に特異的に結合し、変性して、抗体と結合することが明らかになった。さらに、局所的に平面ではなく立体的な複合体が観察されたことからも、同一の生体用金属上でもタンパク質結合因子が異なっていることが明らかになった。
(2)界面活性剤による検証試験
本願発明の評価方法における、第1から第3工程の処理後の各生体用金属それぞれを、沸騰したSDS溶液で10分間インキュベーションし、蒸留水で洗浄し、SEMで観察した。
結果は、図8に示したとおり、全ての生体用金属表面上にタンパク質複合体が残存していた。また、鋳造材の表面では白色を呈した物質が多く残存していた。他の2種類の生体用金属(熱処理材およびステンレス鋼)では、塊のまま残っている複合体が多く観察された。また、図9に示したとおり、いずれの生体用金属にも薄膜状の複合体を観察することができた。すなわち、図8および図9に示したように、界面活性剤(SDS)による検証試験では、SDSでタンパク質の結合を切ったにもかかわらず、いずれの生体用金属表面上にも複合体が観察された。複合体は、上記の抗原抗体反応による検証試験と同じように、平面的なものと立体的なものが観察された。特に、鋳造材では平面的な複合体が多く観察され、熱処埋材とステンレス鋼では立体的な複合体が多く観察された。
このことより、これらの複合体はSDSでは切り離せないほど、特異的に生体用金属表面に結合しているということが確認できた。それぞれの生体用金属表面を拡大すると、図9に示したように、どの生体用金属上でも平面的、立体的の両方の複合体が観察された。これは、平面的な複合体が結合しあって、立体的な複合体を形成していることが考えられる。これらの観察結果から、平面的な複合体は、生体用金属表面に特異的に結合する血清タンパク質であるということが示唆されることが確認できた。
5.生体用金属の微細組織観察
生体用金属の組織についても観察した。この観察には、組織を微細に、かつ、立体的に観察できるノマルスキー微分干渉型光学顕微鏡を用いた。
観察前の前処理として、鋳造材は硫酸メタノールを用いて、6 V、0.5 Aの条件で15秒の電解研磨を、熱処理材は鋳造材と同条件で9秒の電解研磨を行った。また、ステンレス鋼は10%臭酸水溶液を用いて4 V、1 Aの条件で90秒の電解研磨を行った。
結果は、図10に示したとおりであった。鋳造材では、典型的なデンドライト状の組織が観察された(図10(a))。熱処理材では、焼入れによるマルテンサイト組織が観察された(図10(B))。ステンレス鋼では、プレート状の組織が観察された(図10(C))。
鋳造材の表面においては、樹枝状の組織が観察されたので、それぞれの生体用金属の微細組織を比較したところ、熱処理材とステンレス鋼では明確な判別ができなかったが、鋳造材の微細組織(図10(a))と、血清タンパク質の結合形態(図8(a))とが似ていることが確認できた。このことより、血清タンパク質は生体用金属の元素の濃度に影響を受けることが示唆されることが確認できた。また、生体用金属表面の酸化皮膜も関与していると考えられる。
本願発明の評価方法における、第1工程における各生体用金属の状態を示したSEM観察図であり、(a)は鋳造材、(b)熱処理材、(c)ステンレス鋼を示している。 本願発明の評価方法における、第2工程における各生体用金属の状態を示したSEM観察図であり、(a)は鋳造材、(b)熱処理材、(c)ステンレス鋼を示している。 図2との比較対照例として、超音波洗浄した各生体用金属を、PBS洗浄しただけのものを示したSEM観察図である。 本願発明の評価方法における、第3工程における各生体用金属の状態を示したSEM観察図であり、(a)は鋳造材、(b)熱処理材、(c)ステンレス鋼を示している。 図4の拡大SEM観察図であり、(a)は鋳造材、(b)熱処理材、(c)ステンレス鋼を示している。 抗原抗体反応による検証試験における、各生体用金属の状態を示したSEM観察図であり、(a)は鋳造材、(b)熱処理材、(c)ステンレス鋼を示している。 図6の拡大SEM観察図であり、(a)は鋳造材、(b)熱処理材、(c)ステンレス鋼を示している。 界面活性剤による検証試験における、各生体用金属の状態を示したSEM観察図であり、(a)は鋳造材、(b)熱処理材、(c)ステンレス鋼を示している。 図8の拡大SEM観察図であり、(a)は鋳造材、(b)熱処理材、(c)ステンレス鋼を示している。 生体用金属の微細組織の観察結果を示した光学顕微鏡観察図であり、(a)は鋳造材、(b)熱処理材、(c)ステンレス鋼を示している。

Claims (5)

  1. 生体用金属に対する血清タンパク質複合体形成の評価方法であって、少なくとも以下の工程:
    <1>生体用金属を血清中でインキュベーションする工程;
    <2>緩衝液で洗浄する工程;
    <3>精製水で洗浄する工程;および
    <4>生体用金属に対しての血清タンパク質複合体形成の有無を走査型電子顕微鏡で観察する工程;
    を含むことを特徴とする生体用金属に対する血清タンパク質複合体形成の評価方法。
  2. 血清は、自家血清である請求項1の生体用金属に対する血清タンパク質複合体形成の評価方法。
  3. インキュベーションの条件は、温度条件が35℃から40℃の範囲であり、時間条件が15分から25分の範囲である請求項1または2の生体用金属に対する血清タンパク質複合体複合体形成の評価方法。
  4. 緩衝液は、リン酸緩衝液である請求項1から3いずれかの生体用金属に対する血清タンパク質複合体形成の評価方法。
  5. 精製水は、水を蒸留法によって精製した蒸留水である請求項1から4いずれかの生体用金属に対する血清タンパク質複合体形成の評価方法。
JP2005093256A 2005-03-28 2005-03-28 生体用金属に対する血清タンパク質複合体形成の評価方法 Pending JP2006275667A (ja)

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