JP6338666B2 - 医療用生体吸収性部材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、医療用生体吸収性部材及びその製造方法に関する。特に、生体用マグネシウム合金を用いた医療用生体吸収性部材に関する。
骨折固定材、ステント及び人工骨等の作製に用いる医療用部材は、医療に役立つ重要な部材として注目を浴びている。骨折固定材、ステント及び人工骨等は使用環境が生体内であるので、医療用部材には生体安全性とともに、周囲組織との良好な接着、骨形成促進などの使用部位に適した生体適合性が求められる。また、使用初期には患部である組織や骨等の支えになる程度の強度が必要とされ、患部の治癒までの一定時間強度を保持した後に溶解が始まるか患部の治癒に伴い必要な強度は保持しながら適当な溶解速度で溶解し、生体組織や骨等と同化して、消失するような特別な特性が求められる場合もある。このような特性を示す部材は医療用生体吸収性部材とよばれている。
医療用生体吸収性部材には、一般に、強度を必要とすることから、主材料として金属又は合金が用いられる。特に、マグネシウムおよびその合金が主材料として研究開発されている。また、上記特性の要望に対しては、様々な合金組成および加工プロセスが研究開発されている。
例えば、AZ91マグネシウム合金のキトサン−リン酸カルシウムの複合被膜が開示されている(非特許文献1)。この論文では、水酸アパタイト(HAp)ナノ粉末とキトサンを電気泳動堆積により同時に析出させている。また、製造方法に関しては、陽極酸化、電気泳動堆積およびアルカリ処理を組み合わせた方法で、複合被膜を作製する方法が開示されている。キトサンはイオン性ポリマーである。なお、キトサン分子とHAp粒子との特段の結合は指摘されていない。
特許文献1は、リン酸塩被覆材料、アパタイト被覆材料、およびこれらの製造方法に関するものであり、耐腐食性の高い基材(ステンレス鋼、チタン合金、コバルトクロム合金)の被覆が開示されている。ここで、生体内で半永久的に存在することが期待される高耐食性生体用金属材料に、骨伝導性のような生体適合性を付与することを目的に、リン酸カルシウムとポリマーの複合被膜を含む種々の被膜を作製している。ポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンなどの不溶性ポリマーが用いられている。
特許文献2は、骨インプラントおよび骨インプラントを製造するためのセットに関するものであり、多孔質金属材料(チタン合金などの既存の生体用金属材料、マグネシウム合金、亜鉛合金など)製の孔内に、コラーゲン、ゼラチンなどのポリマーとリン酸塩などの複合材料を入れた骨インプラントが開示されている。複合材料は、多孔質金属材料の孔内に骨伝導性、骨誘導性、骨形成性を付与するために用いられる。ポリマーとして、親水性でイオン性の生体由来のコラーゲンや多糖類が挙げられている。
非特許文献2には、生体吸収性Mg合金の耐食被膜として、疎水性の生分解性ポリマー(ポリ乳酸、ポリカプロラクトン)が報告されている。しかし、疎水性のため親水性である水酸化物および/もしくは酸化物で覆われた金属又は合金表面との密着性が低い。これらの生分解性ポリマーの分解に伴い放出されるモノマー(ヒドロキシ酸)による周囲のpH低下が周囲の生体組織に及ぼす影響が懸念される。
特許文献3は、医療用生体吸収性部材とその製造方法に関するものであり、生体内での溶解時期を調整する耐食性皮膜にてマグネシウム又はマグネシウム合金からなる基材の表面が覆われてなる医療用生体吸収性部材であって、前記耐食性皮膜がアパタイト結晶を主成分とする生体吸収性の皮膜であり、前記耐食性皮膜と基材とが水酸化マグネシウム層を介して一体化されてなる医療用生体吸収性部材の製造方法であって、所定の形状に成型したマグネシウム又はマグネシウム合金基材を、リン酸イオンおよび非塩化系カルシウムイオンが過飽和状態で溶解している水溶液中に浸漬して、前記基材の表面にアパタイト結晶を主成分とする生体吸収性皮膜を析出させる方法であって、前記水溶液のカルシウムイオンがカルシウムキレート化合物の溶解により得られたものであり、その濃度が10mM以上である方法が記載されている。
特許文献4は、医療用生分解性マグネシウム材に関するものであり、マグネシウム又はマグネシウム合金の表面にマグネシウム水酸化物を含む皮膜を形成させること、並びにマグネシウム材をリン酸イオン及びカルシウムイオンを含む擬似体液に浸漬して、リン酸カルシウムを皮膜表面に析出させることが記載されている。
特許文献5は、移植材とその製造方法に関するものであり、純マグネシウムまたはマグネシウム合金からなる移植材基材の表面に、水酸化マグネシウムからなる中間層を介して、アパタイト層がコーティングされている移植材が記載されている。
特開2012−95735号公報 特表2010−510817号公報 特許第5339347号公報 国際公開第2007/108450号 特開2010−63534号公報
Fabrication of calcium phosphate/chitosan coatings on AZ91D magnesium alloy with a novel method,Wu et al.,Surface & Coatings Technology,204(20),3336−3347(2010). L.Xu,A.Yamamoto:"In vitro degradation of biodegradable polymer−coated Magnesium under cell culture condition"Appl.Surf.Sci.258[17](2012)6353−6358
本発明は、基材の腐食溶解を抑制して任意の腐食溶解速度に抑制するために様々な耐食性を示す、生体安全性及び生体適合性の高い表面層を有する医療用生体吸収性部材及びその製造方法を提供することを課題とする。
生体吸収性部材で作製した医療用デバイスに要求される腐食溶解の抑制が必要な期間、つまりは患部を支持するのに必要な強度より高い強度を保持する期間は、デバイスの種類や患部の状態、そして基材である合金の初期強度に応じて、長短の非常に広い範囲にわたる。例えば骨折固定材の場合、骨折が治癒するまでの3ヶ月から1年の期間はデバイスが荷重を支持し、その後デバイス全体の分解が8ヶ月から5年の期間でほぼ終了することが望まれる。しかし、生体内で3ヶ月以上腐食溶解が抑制されうるマグネシウム合金は開発されていない。また、所望の腐食溶解抑制期間と強度を兼ね備えたマグネシウム合金の開発を、合金組成や合金組織制御により達成するのは非常に困難である。そこで、必要な強度を有するマグネシウム合金表面に耐食性被膜を形成することで、生体内で腐食溶解が抑制されている期間を長くすることが求められている。また、長期間にわたって埋入する場合、耐食性被膜には高い生体適合性も求められる。骨折固定材などでは、耐食性被膜は骨形成能を有することが望ましい。
従来、マグネシウムおよびその合金基材の耐食性を向上させるためには、基材表面を疎水化して、水溶液と基材表面との接触を抑制することが重要であり、基材を水溶液に浸漬させることは、基材表面を腐食させ、好ましくないという既成概念があった。実際、基材に対して陽極酸化や不溶性のフッ化マグネシウムを薄くコーティングするなどの特段の前処理を行わずに、ポリマー水溶液に浸漬するのみの湿式成膜法で金属又は合金基材のコーティングを行うことに関する文献報告はなかった。
しかし、本発明者は、様々な実験を行い、文献を検討するうちに、親水性かつ非イオン性ポリマーの水溶液であれば、金属又は合金基材の表面を腐食させることなく、金属又は合金基材をポリマー・コーティングできるのではないかと考えるようになった。
そこで、マグネシウム合金ディスクの表面を研磨したのみで、ディッピング法により親水性かつ非イオン性ポリマーを塗布したところ、金属又は合金基材の表面を腐食させることなく、金属光沢を保った状態で、親水性かつ非イオン性ポリマー薄膜を形成することができた。また、浸漬腐食試験により、基材からの金属イオンの溶出を効果的に防止できることが分かった。
表面分析評価により、金属又は合金基材表面には薄い水酸化物および/もしくは酸化物層が形成されており、前記水酸化物および/もしくは酸化物層を覆うように親水性かつ非イオン性ポリマー層が形成されていた。
詳細な検討により、(1)親水性かつ非イオン性ポリマーのOH基のO原子が、水酸化物および/もしくは酸化物層中の金属原子、例えば、Mg原子に配位結合するので、ポリマー層を水酸化物層および/もしくは酸化物層に強固に接着させ、(2)少なくともこの2層を有することにより、膜厚が薄くても、基材の金属イオンの溶出を高く防止でき、(3)親水性かつ非イオン性ポリマーで表面を覆うことにより、生体適合性を高められ、(4)親水性かつ非イオン性ポリマーが基材の曲げ・歪による水酸化物および/もしくは酸化物層のき裂を防止し、(5)親水性かつ非イオン性ポリマーが生体内で分解され消失するのに伴い、基材の腐食溶解が始まり、その後、金属又は合金基材が生体組織や骨等と置換して、消失する可能性があることを見出した。
また、上記の作用メカニズムを基にさらに検討を進め、水酸化物および/もしくは酸化物層の金属イオンに配位結合することによりポリマー層を形成することが可能なOH基を有するポリマー、およびポリマー分子中に解離基(荷電基)を有する高分子電解質の溶液を用いて、これらの親水性ポリマーの電子供与基(OH基又はNH基)が、水酸化物および/もしくは酸化物層の金属イオンに配位結合するとともに、OH基同士で水素結合し、ポリマー層と水酸化物層および/もしくは酸化物層とが強固に接着された医療用生体吸収性部材が得られることを確認して、本発明を完成した。本発明は、医療用生体吸収性部材の構成材料としての親水性かつ非イオン性ポリマーの有用性を初めて示したものであるとともに、その作用メカニズムに鑑みて広範なポリマーに適用可能であることを示したものである。本発明は、以下の構成を有する。
(1) Mg又はZnの少なくとも一方を含む金属又は合金基材と、
Mg(OH)又はZn(OH)の少なくとも一方からなる水酸化物および/もしくはMgO又はZnOの少なくとも一方からなる酸化物層であって、前記基材を覆う前記水酸化物および/もしくは酸化物層と、
電子供与性基を有するポリマーを有する親水性かつ非イオン性のポリマー層であって、ポリエチレングリコール(PEG)からなると共に、前記水酸化物および/もしくは酸化物層を覆う前記ポリマー層を有することを特徴とする医療用生体吸収性部材。
(2) Mg又はZnの少なくとも一方を含む金属又は合金基材と、
Mg(OH)又はZn(OH)の少なくとも一方からなる水酸化物および/もしくはMgOからなる酸化物層であって、前記基材を覆う前記水酸化物および/もしくは酸化物層と、
自己修復性を有するポリマー層であって、テトラポリエチレングリコール(PTE)、ポリアクリル酸ナトリウム(SAP)、ポリ4−スチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)の群から選択されるいずれか一又は二以上の高分子電解質ポリマーからなると共に、前記水酸化物および/もしくは酸化物層を覆う前記ポリマー層を有することを特徴とする医療用生体吸収性部材。
(3) さらに、前記ポリマー層を覆うように形成されたセラミックス層を有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の医療用生体吸収性部材。
(4) さらに、前記水酸化物および/もしくは酸化物層と前記ポリマー層との間に形成されたセラミックス層を有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の医療用生体吸収性部材。
(5) 前記水酸化物および/もしくは酸化物層の厚さが5000nm以下であることを特徴とする(1)乃至(4)の何れか1項に記載の医療用生体吸収性部材。
(6) 前記ポリマー層の厚さが0.2nm以上10000nm以下であることを特徴とする(1)乃至(5)の何れか1項に記載の医療用生体吸収性部材。
(7) 前記セラミックス層がリン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、生体活性ガラス、生体用セラミックスの群から選択されるいずれか一又は二以上のセラミックスを含むことを特徴とする(3)又は(4)に記載の医療用生体吸収性部材。
(8) 前記セラミックス層の厚さが500nm以上10000nm以下であることを特徴とする()に記載の医療用生体吸収性部材。
(9) ポリエチレングリコール(PEG)の水溶液を30℃以上100℃以下の温度範囲に加熱してから、ポリマー層形成用基材を0.1時間以上浸漬して、前記ポリマー層形成用基材の表面にPEGポリマー層を形成することを特徴とする医療用生体吸収性部材の製造方法であって、前記ポリマー層形成用基材は、Mg又はZnの少なくとも一方を含む金属又は合金基材と、Mg(OH) 又はZn(OH) の少なくとも一方からなる水酸化物および/もしくはMgO又はZnOの少なくとも一方からなる酸化物層であって、前記金属又は合金基材を覆う前記水酸化物および/もしくは酸化物層からなることを特徴とする医療用生体吸収性部材の製造方法。
(10) セラミックス層形成用溶液を40℃以上100℃以下の温度範囲に加熱してから、セラミックス層形成用基材を0.1時間以上浸漬して、前記セラミックス層形成用基材の表面にセラミックス層を形成し、ポリエチレングリコール(PEG)の水溶液を30℃以上100℃以下の温度範囲に加熱してから、前記セラミックス層の形成されたポリマー層形成用基材を0.1時間以上浸漬して、前記ポリマー層形成用基材の表面にPEGポリマー層を形成する医療用生体吸収性部材の製造方法であって、前記ポリマー層形成用基材は、Mg又はZnの少なくとも一方を含む金属又は合金基材と、Mg(OH) 又はZn(OH) の少なくとも一方からなる水酸化物および/もしくはMgO又はZnOの少なくとも一方からなる酸化物層であって、前記金属又は合金基材を覆う前記水酸化物および/もしくは酸化物層からなることを特徴とする医療用生体吸収性部材の製造方法。
本発明の医療用生体吸収性部材は、金属又は合金基材と、水酸化物および/もしくは酸化物層と、ポリマー層とを有する構成なので、水酸化物および/もしくは酸化物層が境界での組成の傾斜により強固に金属又は合金基材に密着し、例えば、親水性かつ非イオン性ポリマーの末端や側鎖のOH基が、水酸化物および/もしくは酸化物層の最表面の金属原子に配位結合するとともに、OH基同士で水素結合し、水酸化物および/もしくは酸化物層と親水性かつ非イオン性ポリマー層とを強固に接着できる。また、例えば、金属基材Mgの腐食はMg(OH)皮膜の欠陥などの局所から起こるが、例えば、親水性が高いPEGのような親水性かつ非イオン性ポリマーが存在することにより、水分子がポリマー層で束縛され、Mg(OH)皮膜への水分子の接触が抑制されることで、マグネシウム合金が生体環境中で急激に腐食溶解するのを抑制できる。また、最外層を生体に対する安全性の高いポリマー(例えば、親水性かつ非イオン性ポリマー)とすることにより、生体安全性及び生体適合性を高めることができる。
本発明の医療用生体吸収性部材は、前記ポリマー層を覆うようにセラミックス層が形成されている構成なので、例えば、親水性かつ非イオン性ポリマーであるPEGやPVAと、セラミックス層の材料としてHApなどのリン酸カルシウム(calcium phosphate,以下「Ca−P」と表記することもある。)との間を分子・原子レベルで結合でき、強固に接着できる。
また、本発明の医療用生体吸収性部材は、前記水酸化物および/もしくは酸化物層と前記ポリマー層との間にセラミックス層が形成されている構成なので、例えば、親水性かつ非イオン性ポリマーであるPEGやPVAと、セラミックス層の材料としてHApなどのCa−Pとの間を分子・原子レベルで結合でき、強固に接着できる。
本発明の医療用生体吸収性部材の製造方法は、親水性かつ非イオン性ポリマーの水溶液を30℃以上100℃以下の温度範囲に加熱してから、ポリマー層形成用基材を0.1時間以上浸漬して、前記ポリマー層形成用基材の表面に親水性かつ非イオン性ポリマーを結合させる構成なので、容易に、かつ、短時間で、工程数が少なく、低コストで、基材の表面に所望の厚さの親水性かつ非イオン性ポリマー層を形成することができる。これにより、基材の腐食溶解を抑制して任意の腐食溶解速度に抑制するために様々な耐食性を示す、生体安全性及び生体適合性の高い医療用生体吸収性部材を製造できる。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材の一例を説明する図であって、平面図(a)、A−A’線断面図(b)、B部図(c)である。 B部化学構造概略図である。 本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材の製造方法の一例を説明する工程図である。 本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材の別の一例を示す図である。 本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材の製造方法の一例を説明する工程図である。 本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材の別の一例を示す図である。 本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材の製造方法の一例を説明する工程図である。 実施例1−1のディスクの製造工程図である。 実施例1−1のディスク(5PEG600−coat)の表面の光学顕微鏡像である。 実施例1−1〜1−4のディスク(各PEG−coat)及び比較例1のディスク(研磨まま)のフーリエ変換赤外分光(FT−IR)スペクトルである。 実施例1−1のディスクの原子間力顕微鏡(AFM)像である。 実施例1−3のディスクの原子間力顕微鏡(AFM)像である。 比較例1のディスクの原子間力顕微鏡(AFM)像である。 断面プロファイルである。 実施例1−1〜1−4のディスク(各PEG−coat)及び比較例1のディスク(研磨まま)の細胞培養液中へのMgイオン溶出量の経時変化を示すグラフである。 実施例1−1〜1−4のディスク(各PEG−coat)及び比較例1のディスク(研磨まま)の細胞培養液中への浸漬1日目以降のMgイオン溶出速度を示すグラフである。 実施例1−1、1−2、1−5、1−6のディスク(各PEG−coat)及び比較例1(研磨まま)のHanks液中での腐食抵抗を示すグラフである。 実施例1−1、1−6のディスク(各PEG−coat)及び比較例1(研磨まま)のHanks液浸漬後のエネルギー分散型X線分析(EDS)で得られた表面のCa及びP濃度(at%)を示すグラフである。各ディスクのグラフについて、左側がCa濃度であり、右側がP濃度である。 実施例2−1〜2−4のディスク及び比較例2のディスクの表面のXRDパターンである。 実施例2−1〜2−4のディスク、比較例2のディスク及び比較例1のディスクのFT−IRスペクトルである。 実施例2−1のディスク(PEG600→Ca−P)表面の光学顕微鏡像である。 実施例2−1のディスク(PEG600→Ca−P)表面のSEM像である。 実施例2−5のディスク(PVA→Ca−P)表面のSEM像である。 実施例2−1〜2−4のディスク及び比較例1のディスクの細胞培養液中へのMgイオン溶出量の経時変化を示すグラフである。 実施例2−1、2−5、2−7のディスク及び比較例1、2のディスクの生理食塩水中への浸漬7日目および10日目のMgイオン溶出量を示すグラフである。各ディスクのグラフについて、左側が浸漬7日目であり、右側が10日目である。 実施例3−3のディスク(Ca−P→25PEG600)の光学顕微鏡像である。 実施例3−3のディスク(Ca−P→25PEG600)のSEM像である。 実施例3−1〜3−3のディスク及び比較例2のディスクのFT−IRスペクトルである。 実施例3−1〜3−3のディスク及び比較例2のディスクの生理食塩水中への浸漬7日目および10日目のMgイオン溶出量を示すグラフである。各ディスクのグラフについて、左側が浸漬7日目であり、右側が10日目である。 実施例2−1、2−6、3−1、3−5のディスクの表面に圧痕を付けたもの及び比較例1、2のディスクの生理食塩水中への浸漬7日目および10日目のMgイオン溶出量を示すグラフである。各ディスクのグラフについて、左側が浸漬7日目であり、右側が10日目である。 (a)実施例3−1のディスク(Ca−P→5PEG600)を生理食塩水に10日間浸漬後の圧痕有りの面の実体顕微鏡像である。(b)(a)における圧痕部分の拡大像である。 実施例3−1のディスク(Ca−P→5PEG600)を生理食塩水に10日間浸漬後の圧痕なしの面の実体顕微鏡像である。 実施例4−1〜4−9のディスク及び比較例1のディスクの細胞培養液中への浸漬1日目および4日目のMgイオン溶出量を示すグラフである。各ディスクのグラフについて、左側が浸漬1日目であり、右側が4日目である。 実施例5−1〜5−9のディスク及び比較例3のディスクの細胞培養液中への浸漬4日目のMgイオン溶出量を示すグラフである。各ディスクのグラフの左側には、実施例4−1〜4−9及び比較例1に関して図33に示した細胞培養液中への浸漬4日目のMgイオン溶出量を示す。 (a)実施例6−1及び比較例1のディスクのHanks液中へのMgイオン溶出量を示すグラフである。(b)実施例6−1、6−2及び比較例3のディスクのHanks液中へのMgイオン溶出量を示すグラフである。 (a)実施例6−1及び比較例1のディスクの細胞培養液中へのMgイオン溶出量を示すグラフである。(b)実施例6−1、6−2及び比較例3のディスクの細胞培養液中へのMgイオン溶出量を示すグラフである。 実施例7−5、7−6のディスク及び比較例2のディスクの表面にカッターナイフで傷を付けたもののHanks液中への浸漬3日後の表面の傷部分のSEM像である。 実施例7−5、7−6のディスクのHanks液浸漬後のエネルギー分散型X線分析(EDS)で得られた表面の傷部分の析出物の組成分析結果を示すグラフである。各原子のグラフについて、左側が実施例7−6であり、右側が実施例7−5である。 実施例8−1〜8−4及び比較例1のディスクのHanks液中へのMgイオン溶出量を示すグラフである。 実施例8−1〜8−8及び比較例3のディスクのHanks液中へのMgイオン溶出量を示すグラフである。ポリマーの種類が同じであるグラフについて、左側が傷を有さない実施例8−1〜8−4であり、右側が傷を有する実施例8−5〜8−8である。 実施例8−1〜8−4及び比較例1のディスクの細胞培養液中へのMgイオン溶出量を示すグラフである。
(本発明の第1の実施形態)
(医療用生体吸収性部材)
まず、本発明の第1の実施形態である医療用生体吸収性部材の一例について説明する。
図1は、本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材の一例を説明する図であって、平面図(a)、A−A’線断面図(b)、B部図(c)である。また、図2は、B部化学構造概略図である。
図1(a)、(b)に示すように、本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材11は、略円板状である。しかし、これに限られるものではなく、立方体状、球状、円錐状など様々な形状としてよい。骨折固定材、ステント及び人工骨等の作製に用いるために適した形状とすればよい。
図1(b)に示すように、本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材11は、金属又は合金基材12と、水酸化物および/もしくは酸化物層13と、ポリマー層14と、を有する。
金属又は合金基材12は水酸化物および/もしくは酸化物層13で覆われており、水酸化物および/もしくは酸化物層13はポリマー層14で覆われている。
なお、図2では、ポリマー層14が後述する親水性かつ非イオン性ポリマー層である場合について示している。
金属又は合金基材12は、Mg、Ca、Mn、Fe、Zn、Cu、La又はAlの群から選択されるいずれか一の金属を含むことが好ましい。特に、Mgが好ましい。Mgは、地表に豊富な元素であり、エンジニアリング応用でき、軽く、単位質量あたりの靭性が高く、振動吸収性が高く、無毒性であり、鋳造性が良い金属であるためである。生体材料の観点からも、Mgは生体必須元素の一つで為害性が低く、ヤング率(弾性率)が骨の値に近く骨の代わりに荷重をうける部材に用いても骨への荷重を遮蔽しないためである。
金属又は合金基材12は水酸化物および/もしくは酸化物層13で覆われていることが好ましい。これにより、金属又は合金基材12の金属イオンが生体環境中に溶出することを抑制できる
水酸化物および/もしくは酸化物層13が、Mg(OH)、Ca(OH)、Mn(OH)、Fe(OH)[水酸化鉄(II)]又はFe(OH)[水酸化鉄(III)]、Zn(OH)、Cu(OH)、La(OH)又はAl(OH)、MgO、CaO、MnO、FeO[酸化鉄(II)]又はFe)[酸化鉄(III)]、ZnO、CuO、La又はAlの群から選択されるいずれか一又は二以上の水酸化物および/もしくはMgO、CaO、MnO、FeO又はFe、ZnO、CuO、La又はAlの群から選択されるいずれか一又は二以上の酸化物からなることが好ましい。これにより、基材に強固に接着させることができるとともに、ポリマー層14を強固に接着できる。
水酸化物および/もしくは酸化物層13は、金属又は合金素材を室温大気中に暴露し自然に形成される合金元素の水酸化物および/もしくは酸化物であっても良い。室温大気中で自然に形成される水酸化物および/もしくは酸化物層は基材に強固に付着しているため、ポリマー層14を強固に接着できる。
水酸化物および/もしくは酸化物層13の厚さは、5,000nm以下であることが好ましく、2,000nm以下であることがより好ましく、1,000nm以下であることが更に好ましい。これにより、金属又は合金基材12とポリマー層14を強固に接着できる。5,000nm超では、水酸化物および/もしくは酸化物層の剥離により、亀裂が生じるおそれが発生する。
ポリマー層14は、親水性かつ非イオン性ポリマー層であることが好ましい。親水性かつ非イオン性ポリマー層は、OH基又はNH基などの電子供与性基を有するポリマーを有することが好ましい。これにより、金属又は合金基材12の金属イオンが生体環境中に溶出することをより抑制できる。また、曲げによる亀裂等の影響を抑制できる。
OH基を有するポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、又はポリ2−ヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)を挙げることができる。これらの材料を用いることにより、親水性かつ非イオン性ポリマーの親水性であり電子供与性基(OH基)が、水酸化物および/もしくは酸化物層の金属イオンに配位結合するとともに、OH基同士で水素結合し、水酸化物および/もしくは酸化物層と親水性かつ非イオン性ポリマー層とを強固に接着できる。また、PEGやPVAは、そのポリマー膜は透明であるので、表面の金属光沢を保つことができ、異なる金属又は合金を用いて異なる医療用デバイスを作製すれば、取り違えることなく、目視で判別容易に利用できる。
NH基を有するポリマーとしては、末端をNHで修飾したPEG又はポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド(PDMAA)を挙げることができる。
なお、これらのポリマーの片末端は、任意の置換基(例えば、任意のアルキル基)で修飾されていてもよい。これによって、金属原子との配位結合を形成していないフリーのOH基またはNH基との反応によるポリマー同士の絡み合いが抑制され、ポリマー層14の密度がより向上すると考えられる。
また、ポリマー層14としては、水酸化物および/もしくは酸化物層の金属イオンに配位結合することによりポリマー層を形成することが可能なOH基を有するポリマーを用いることができる。そのようなポリマーとしては、例えば、以下に示すDL−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)アラニン(DL−DOPA)、およびDL−DOPAと他のポリマーとの重合体を挙げることができる。
また、ポリマー層14としては、ポリマー分子中に解離基(荷電基)を有する高分子電解質を有する層を用いることができる。高分子電解質としては、例えば、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーを挙げることができる。
アニオン性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアスパラギン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアネトールスルホン酸、ポリビニル硫酸、ポリビニルリン酸、およびこれらの塩が挙げられる。
カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリアミン(例えば、アリルアミン重合体、ジアリルアミン重合体)、ポリジアリルジメチルアンモニウム、ポリエチレンイミン、ポリ−L−リジン、およびこれらの塩が挙げられる。
このような高分子電解質には、高吸収性ポリマー、刺激応答性ポリマー等の機能性高分子として知られているものが含まれる。
以下に、ポリマー層14の材料として用いることができる高分子電解質の例を示す。
ポリアクリル酸およびその塩としては、例えば、以下の構造式(A−1)に示す化合物が挙げられる。なお、構造式(A−1)において、Mは、水素原子またはアルカリ金属原子を表す。
ポリスチレンスルホン酸およびその塩としては、例えば、以下の構造式(A−2)に示す化合物が挙げられる。なお、構造式(A−2)において、Mは、水素原子またはアルカリ金属原子を表す。
ポリビニル硫酸およびその塩としては、例えば、以下の構造式(A−3)に示す化合物が挙げられる。なお、構造式(A−3)において、Mは、水素原子またはアルカリ金属原子を表す。
ポリビニルリン酸およびその塩としては、例えば、以下の構造式(A−4)に示す化合物が挙げられる。なお、構造式(A−4)において、Mは、水素原子またはアルカリ金属原子を表す。
ポリアネトールスルホン酸およびその塩としては、例えば、以下の構造式(A−5)に示す化合物が挙げられる。なお、構造式(A−5)において、Mは、水素原子またはアルカリ金属原子を表す。
ポリジアリルジメチルアンモニウムおよびその塩としては、例えば、以下の構造式(B−1)に示す化合物が挙げられる。なお、構造式(B−1)において、Xはハロゲンを表す。
アリルアミン重合体としては、例えば、以下の構造式(B−2)に示す化合物が挙げられる。
ポリエチレンイミンとしては、例えば、以下の構造式(B−3)に示す化合物が挙げられる。
ポリ−L−リジンとしては、例えば、以下の構造式(B−4)に示す化合物が挙げられる。
ジアリルアミン重合体としては、例えば、以下の構造式(B−5)に示す化合物が挙げられる。
ポリマー層14の厚さは0.2nm以上10,000nm以下であることが好ましく0.2nm以上5,000nm以下であることがより好ましく、0.2nm以上500nm以下であることが更に好ましい。これにより、金属又は合金基材12からの金属イオンの溶出を一定時間抑制でき、一定時間後、生体内の環境により消失させることができる。
0.2nm未満では、これらの効果が十分でない場合が発生する。10,000nm超では、ポリマー層14の安定性を保てず、層がずれたり、はがれたりする場合が発生する。
また、ポリマー層14を有することにより、医療用生体吸収性部材を曲げ・歪を加えたときでも、水酸化物および/もしくは酸化物層13の亀裂を防止でき、き裂部分からのMgイオンの溶出を抑制することができる。
さらにまた、生体適合性を高めることができる。
水酸化物および/もしくは酸化物層13とポリマー層14との2層構造とすることにより、効果が高められる。
(医療用生体吸収性部材の製造方法)
次に、本発明の第1の実施形態である医療用生体吸収性部材の製造方法の一例について説明する。なお、以下では、ポリマー層14が親水性かつ非イオン性ポリマー層である場合を例にして説明する。
図3は、本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材の製造方法の一例を説明する工程図である。
まず、金属又は合金基材を用意し、金属又は合金基材を研磨処理する。研磨中に瞬時に(ミリ秒単位で)酸化皮膜ができる。
研磨しただけの金属の保管の仕方として、0℃以上40℃以下、相対湿度5%以上100%以下の大気雰囲気中、真空中又は水中に保管する方法がある。これにより、前記金属又は合金基材の表面に形成された水酸化物および/もしくは酸化物層を保持できる。
次に、親水性かつ非イオン性ポリマーの水溶液を調製し、この水溶液を30℃以上100℃以下の温度範囲に加熱してから、この水溶液に水酸化物および/もしくは酸化物層で被覆された金属又は合金基材からなるポリマー層形成用基材19を0.1時間以上浸漬する。これにより、ポリマー層形成用基材19の表面にポリマー層14(親水性かつ非イオン性ポリマー層)が形成される。
なお、ポリマー水溶液の濃度、温度およびポリマー水溶液への浸漬時間等の条件は、ポリマーの分子量や水への溶解性等を考慮して、適宜調節することができる。例えば、ポリマー層14として上記の高分子電解質を用いる場合には、ポリマー水溶液の温度を室温(25℃)とすることができる。
(本発明の第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図4は、本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材の別の一例を示す図であって、平面図(a)、C−C’線断面図(b),D部図(c)である。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材31は、ポリマー層14を覆うようにセラミックス層32が形成されている他は、本発明の第1の実施形態と同様の構成とされている。
セラミックス層32の厚さは、500nm以上10,000nm以下であることが好ましく、500nm以上5,000nm以下であることがより好ましく、1,000nm以上5,000nm以下であることが更に好ましい。これにより、耐食性をより向上させることができるだけでなく、骨に対する生体適合性をより向上させることができる。
500nm未満では、耐食性を十分向上させることができない。10,000nm超では、セラミックス層32が剥離しやすい。
セラミックス層32が、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、生体活性ガラス、生体用セラミックスの群から選択されるいずれか一又は二以上のセラミックスを含むことが好ましい。これにより、骨に対する生体適合性を向上させることができ、骨折固定材や人工骨の材料として、生体適合性をより高くして利用できる。
(医療用生体吸収性部材の製造方法)
次に、本発明の第2の実施形態である医療用生体吸収性部材の製造方法の一例について説明する。
図5は、本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材の製造方法の一例を説明する工程図である。
まず、本発明の第1の実施形態に示した製造方法と同様にして、金属又は合金基材12と、水酸化物および/もしくは酸化物層13と、ポリマー層14と、を有する医療用生体吸収性部材11からなるセラミックス層形成用基材21を用意する。
次に、セラミックス形成用溶液を調製する。セラミックス形成用溶液としては、Ca−EDTAとKHPOとNaOHの混合溶液を用いることができる。
次に、セラミックス形成用溶液を40℃以上100℃以下の温度範囲に加熱してから、セラミックス層形成用基材21を0.1時間以上浸漬する。これにより、表面にセラミックス層32が形成される。
(本発明の第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図6は、本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材の別の一例を示す図であって、平面図(a)、E−E’線断面図(b),F部図(c)である。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材41は、水酸化物および/もしくは酸化物層13とポリマー層14との間にセラミックス層32が形成されている他は、本発明の第1の実施形態と同様の構成とされている。
このように、セラミックス層をポリマー層14の内側に形成することにより、生体内環境でポリマー層14の耐食性を補完することができる。また、ポリマー層14のサブミクロン径のすき間から骨に対する生体適合性が高い層を露出し、骨に対して生体適合しながら、基材の腐食溶解・消失が行われるようにして利用することができる。特殊な部位に適合させる骨折固定材や人工骨の材料として利用できる。
(医療用生体吸収性部材の製造方法)
次に、本発明の第3の実施形態である医療用生体吸収性部材の製造方法の一例について説明する。
図7は、本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材の製造方法の一例を説明する工程図である。
まず、本発明の第1の実施形態と同様にして、水酸化物および/もしくは酸化物層を形成した金属又は合金基材からなるセラミックス層形成用基材22を用意する。
次に、本発明の第2の実施形態と同様にして、セラミックス形成用溶液を調製し、このセラミックス形成用溶液を40℃以上100℃以下の温度範囲に加熱してから、このセラミックス層形成用基材22を0.1時間以上浸漬する。これにより、表面にセラミックス層32を形成する。これを、ポリマー層形成用基材20とする。
次に、本発明の第1の実施形態と同様にして、ポリマーの水溶液を調製し、前記水溶液を30℃以上100℃以下の温度範囲に加熱してから、ポリマー層形成用基材20を0.1時間以上浸漬する。これにより、表面にポリマー層14が形成される。これにより、医療用生体吸収性部材41が製造される。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材11、31、41は、金属又は合金基材12と、水酸化物および/もしくは酸化物層13と、ポリマー層14とを有する構成なので、水酸化物および/もしくは酸化物層が境界での組成の傾斜により強固に金属又は合金基材に結合し、例えば、親水性かつ非イオン性ポリマーの末端や側鎖のOH基やNH基などの電子供与性基が水酸化物および/もしくは酸化物層の最表面の金属原子に配位結合するとともに、OH基同士で水素結合し、水酸化物および/もしくは酸化物層とポリマー層とを強固に接着できる。
また、例えば、金属基材Mgの腐食はMg(OH)皮膜の欠陥などから局所的に起こり、Mg(OH)皮膜を壊しながら進展するが、例えば、Mg(OH)よりも親水性が高いPEGのような親水性かつ非イオン性ポリマーが存在することにより、ポリマー層が腐食の原因である水分子を束縛してMg(OH)皮膜への接触を抑制するため、マグネシウム合金が生体環境中で急激に腐食溶解するのを抑制できる。また、最外層を生体に対する安全性の高いポリマー(例えば、親水性かつ非イオン性ポリマー)とすることにより、生体安全性及び生体適合性を高めることができる。
特に、親水性かつ非イオン性ポリマー層を有することにより、医療用生体吸収性部材の表面層のヤング率を低くでき、手術時に患部の形状に合わせた塑性変形が加えられた場合や、生体内での繰り返し荷重による基材の変形が起った場合でも、これらの変形に親水性かつ非イオン性ポリマー層の変形が追随して、親水性かつ非イオン性ポリマー層に亀裂を生じさせないようにできる。
また、親水性ポリマー層を有することにより、ポリマー層が腐食の原因である水分子を束縛してMg(OH)皮膜への接触を抑制するため、金属又は合金基材の変形に伴いセラミックス層に亀裂や剥離が発生した場合でも、金属又は合金基材の腐食を抑制できる。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材11は、金属又は合金基材12と、前記基材を覆う水酸化物および/もしくは酸化物層13と、前記水酸化物および/もしくは酸化物層を覆うポリマー層14と、を有する構成なので、最外層に生体に対する安全性の高いポリマー(例えば、親水性かつ非イオン性ポリマー)を有し、生体安全性及び生体適合性を高めることができる。
更に、金属又は合金基材と、水酸化物および/もしくは酸化物層と、ポリマー層だけからなるので、生体内で周囲組織の石灰化を促進しないようにできる。これにより、血管内や食道などに用いるステントなどの循環器、消化器、呼吸器疾患治療用デバイスに応用することができる。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材31は、ポリマー層14を覆うようにセラミックス層32が形成されている構成なので、例えば、親水性かつ非イオン性ポリマーと親水性セラミックス(リン酸カルシウム)を積層することにより、金属又は合金基材との密着性を高めることができる。例えば、PEGやPVAの表面にHApなどのCa−Pからなるセラミックス層を形成する場合には、PEGやPVAのポリマー鎖のOH基が、HApなどのCa−Pの核形成サイトになり、OH基がリン酸塩セラミックスの析出を促進する。また、PEGやPVAと、HApなどのCa−Pの間を分子・原子レベルで結合させることができ、親水性かつ非イオン性ポリマー層の表面にセラミックス層を強固に接着させることができる。また、金属又は合金基材の変形亀裂に対する耐性を高めることができる。これにより、骨内や骨周囲に用いる整形外科用デバイスなどに用いることができる。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材41は、水酸化物および/もしくは酸化物層13とポリマー層14との間にセラミックス層32が形成されている構成なので、例えば、セラミックス層中の金属原子にポリマーのOH基を配位結合させて強固に接合させた多層膜を形成することができ、セラミック層単層膜に比べてヤング率を低下させることができる。これにより、金属又は合金基材が変形しても、ポリマー層により表面層の亀裂発生や剥離を抑制できる。
また、生体内環境でポリマー層のサブミクロンのすき間から骨に対する生体適合性が高い層が露出し、骨に対して生体適合しながら、基材の腐食溶解・消失が行われるようにして利用することができる。特殊な部位に適合させる骨折固定材や人工骨の材料として利用できる。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材11、31、41は、金属又は合金基材12がMg、Ca、Mn、Fe、Zn、Cu、La又はAlの群から選択されるいずれか一の金属を含む構成なので、室温大気中や水中で金属又は合金表面に強固に結合された水酸化物および/もしくは酸化物層が形成される。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材11、31、41は、水酸化物および/もしくは酸化物層13がMg(OH)、Ca(OH)、Mn(OH)、Fe(OH)[水酸化鉄(II)]又はFe(OH)[水酸化鉄(III)]、Zn(OH)、Cu(OH)、La(OH)又はAl(OH)の群から選択されるいずれか一又は二以上の水酸化物および/もしくはMgO、CaO、MnO、FeO又はFe、ZnO、CuO、La又はAlの群から選択されるいずれか一又は二以上の酸化物からなる構成なので、金属又は合金表面に強固に結合された水酸化物および/もしくは酸化物層を形成することにより、医療用生体吸収性部材の溶解・消失速度を抑制可能な構造体とすることができる。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材11、31、41は、水酸化物および/もしくは酸化物層13の厚さ5000nm以下である構成なので、医療用生体吸収性部材の溶解・消失速度を抑制できる。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材11、31、41は、ポリマー層14が電子供与性基を有するポリマーを有する親水性かつ非イオン性ポリマー層である構成なので、親水性かつ非イオン性ポリマーの親水性であり電子供与性基(OH基又はNH基)が、水酸化物および/もしくは酸化物層の金属イオンに配位結合するとともに、OH基同士で水素結合し、水酸化物および/もしくは酸化物層と親水性かつ非イオン性ポリマー層とを強固に接着できる。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材11、31、41は、前記電子供与性基を有するポリマーがポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ2−ヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、末端をNHで修飾したPEG又はポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド(PDMAA)の群から選択されるいずれか一又は二以上のポリマーである構成なので、親水性かつ非イオン性ポリマーの親水性であり電子供与性基(OH基又はNH基)が、水酸化物および/もしくは酸化物層の金属イオンに配位結合するとともに、OH基同士で水素結合し、水酸化物および/もしくは酸化物層と親水性かつ非イオン性ポリマー層とを強固に接着できる。
また、PEGやPVAは、そのポリマー膜は透明であるので、表面の金属光沢を保つことができ、異なる金属又は合金を用いて異なる医療用デバイスを作製すれば、取り違えることなく、目視で判別容易に利用できる。
また、本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材11、31、41は、ポリマー層14が、水酸化物および/もしくは酸化物層の金属イオンに配位結合することによりポリマー層を形成することが可能なOH基を有するポリマー、またはポリマー分子中に解離基(荷電基)を有する高分子電解質を用いて形成されたポリマー層とすることもできる。
このように、本発明の別の実施形態では、ポリマー層14が高分子電解質を有する構成であるので、親水性ポリマーの親水性であり電子供与性基(OH基又はNH基)が、水酸化物および/もしくは酸化物層の金属イオンに配位結合するとともに、OH基同士で水素結合し、水酸化物および/もしくは酸化物層とポリマー層とを強固に接着できる。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材11、31、41は、ポリマー層14の厚さが0.2nm以上2500nm以下である構成なので、例えば、親水性かつ非イオン性ポリマー層に含まれるポリマーのOH基又はNH基が、水酸化物および/もしくは酸化物層の最表面の金属原子に配位結合でき、水酸化物および/もしくは酸化物層とポリマー層とを強固に接着できる。また、生体内環境に応じてポリマー層を分解させることにより、医療用生体吸収性部材の溶解・消失速度を制御することができる。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材31、41は、セラミックス層32がリン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、生体活性ガラス、生体用セラミックスの群から選択されるいずれか一又は二以上のセラミックスを含む構成なので、骨に対して生体適合しながら、基材の腐食溶解・消失が行われるようにして利用することができる。特に、前記セラミックス層がリン酸カルシウムを含む場合、周囲骨との良好な結合や骨形成の促進があり、周囲骨の治癒を促進できる。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材31、41は、セラミックス層32の厚さが500nm以上10,000nm以下である構成なので、生体内環境に応じてセラミックス層を溶解させることにより、医療用生体吸収性部材の溶解・消失速度を制御することができる。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材11、31、41の製造方法は、ポリマー層14が親水性かつ非イオン性ポリマー層である場合において、親水性かつ非イオン性ポリマー水溶液を30℃以上100℃以下の温度範囲に加熱してから、ポリマー層形成用基材19、20を0.1時間以上浸漬して、前記ポリマー層形成用基材の表面に親水性かつ非イオン性ポリマー層を形成する構成なので、容易に、かつ、短時間で、工程数が少なく、低コストで、基材の表面に所望の厚さの親水性かつ非イオン性ポリマー層を形成することができる。また、水溶液浸漬処理であるため、基材の形状を問わず、また、組成も問わず、Mg合金だけでなく、Fe合金、Ca合金、Zn合金に対しても有効に被覆できる。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材31、41の製造方法は、セラミックス層形成用溶液を40℃以上100℃以下の温度範囲に加熱してから、セラミックス層形成用基材21、22を0.1時間以上浸漬して、前記セラミックス層形成用基材の表面にセラミックス層を形成する構成なので、容易に、かつ、短時間で、工程数が少なく、低コストで、基材の表面に所望の厚さのセラミックス層を形成することができる。親水性のリン酸カルシウムからなるセラミックス層を形成してから、ポリマー層を形成すれば、親水性同士の高い親和性により、密着性を高くできる。
本発明の実施形態である医療用生体吸収性部材及びその製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1−1)
図8は、実施例1−1のディスクの製造工程図である。
まず、Mg−3mass%Al−1mass%Zn(以下、AZ31と略記する。)ディスクを用意し、この表面を#1200耐水研磨紙で仕上げた。
次に、室温(25℃以下)、相対湿度50%〜70%の大気雰囲気中および真空パック中に保管した。
次に、分子量600のポリエチレングリコール(以下、PEG600と略記する。)を用意し、超純水に5wt%溶解して、ポリマー水溶液を調製した。
次に、ポリマー水溶液を40℃に加温してから、研磨したディスクを1時間浸漬して、表面にポリマーを浸漬塗布し、実施例1−1のディスク(5PEG600−coat)を作製した。
次に、腐食試験のために、ディスクの縁をエポキシ樹脂またはテフロン(登録商標)テープで被覆した。
(実施例1−2)
分子量6,000のポリエチレングリコール(以下、PEG6kと略記する。)を用いた他は実施例1−1と同様にして、実施例1−2のディスク(5PEG6k−coat)を作製した。
(実施例1−3)
分子量20,000のポリエチレングリコール(以下、PEG20kと略記する。)を用いた他は実施例1−1と同様にして、実施例1−3のディスク(5PEG20k−coat)を作製した。
(実施例1−4)
分子量500,000のポリエチレングリコール(以下、PEG500kと略記する。)を用い、濃度を1wt%とした他は実施例1−1と同様にして、実施例1−4のディスク(1PEG500k−coat)を作製した。
(実施例1−5)
分子量200のポリエチレングリコール(以下、PEG200と略記する。)を用いた他は実施例1−1と同様にして、実施例1−5のディスク(5PEG200−coat)を作製した。
(実施例1−6)
片末端にメチル基(CH基)を有する分子量400のポリエチレングリコール(以下、CPEG400と略記する。)を用いた他は実施例1−1と同様にして、実施例1−6のディスク(5CPEG400−coat)を作製した。
(実施例1−7)
平均重合度1,500のポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する。)を用いた他は実施例1−1と同様にして、実施例1−7のディスク(5PVA−coat)を作製した。
(比較例1)
比較のために、AZ31ディスクを#1200耐水研磨紙で研磨したまま(以下、「研磨まま」と略記する。)の比較例1のディスクを作製した。
表1は、各作製条件をまとめた表である。
(顕微鏡観察)
実施例1の各ディスクの光学顕微鏡観察を行った。
図9は、縁をエポキシ樹脂で被覆した実施例1−1のディスク(5PEG600−coat)の表面を示す光学顕微鏡像である。ポリマー浸漬塗布表面は金属光沢を保っていた。
実施例1−2〜1−7のディスクでも同様の外観であった。すなわち、ポリマーの種類およびポリマーの分子量に関わらず、金属光沢を有する表面が得られた。
(FT−IR測定)
実施例1−1〜1−4のディスク(各PEG−coat)及び比較例1のディスク(研磨まま)のフーリエ変換赤外分光(FT−IR)測定を行った。
図10は、実施例1−1〜1−4のディスク(各PEG−coat)及び比較例1のディスク(研磨まま)のフーリエ変換赤外分光(FT−IR)スペクトルである。
実施例1−1〜1−4のディスク(各PEG−coat)では、いずれのポリマー分子量のものでも、1450cm−1付近および1050cm−1付近にPEGに由来するスペクトルが観察された。これにより、表面がPEGにより被覆されたことを確認した。
図11〜13は、それぞれ実施例1−1、実施例1−3及び比較例1のディスクの原子間力顕微鏡(AFM)像である。図14は、図11〜13より得られた断面プロファイルである。
比較例1の研磨ままのディスクでは、#1200研磨紙の研磨痕および洗浄仕切れなかった研磨屑や研磨粒子により、図14の断面プロファイルでは高低差約100nmの畝にnmオーダーの角がある凹凸が観察された。
実施例1−1のPEG600−coatでは、研磨によりできた高低差約100nmの畝の山や谷に5nm程度の丸みを帯びた凹凸がみられた。これより、分子量600のPEGが一分子の厚さで塗布されたことが確認された。PEG分子の太さは約0.2nmで長さは約2.5nmあることから、PEG層の薄い部分の厚さは約0.2nmと示唆された。
PEGは単分子吸着層を形成していた。このため、ナノレベルでは分子間にすき間がある。
実施例1−3のPEG20k−coatでは、研磨によりできた高低差約100nmの畝の山や谷に10〜20nmの丸みを帯びた凹凸がみられた。分子量20,000のPEG分子の太さは約0.2nmで長さは約90nmで、通常このような長鎖のポリマーは糸まり状に丸まっていることから、10〜20nmの丸みを帯びた凹凸はPEG20kに相当すると考えられる。分子量600の場合よりもPEG分子による凹凸が大きいことから、PEGの分子量の増加によりPEG層の厚さを増加することができることが示された。
水溶液中では、PEG分子の周囲に水分子が配位してPEG層の厚さが増加する。このため、実施例1−1の分子量600のPEG層の厚さは、PEG分子の長さである約2.5nmになると予想される。同様に、実施例1−4の分子量500,000のPEG層の厚さは、PEG分子の長さである約2,500nmになると予想される。
なお、ポリマー層の厚さは、PEGやPVA分子のサイズから推定した。0.2nmはPEG鎖の直径より推定した1分子層の厚さであり、2500nmは分子量500,000のPEG鎖の長さから計算した。AFMで表面形態の変化から膜厚を推定したが、PEG一分子が小さいため、AFMでもまだPEGの一分子を観察できなかった。
(Mgイオン溶出量の測定)
次に、縁をエポキシ樹脂で被覆した実施例1−1〜1−4のディスク(各PEG−coat)及び比較例1のディスク(研磨まま)をそれぞれ細胞培養液中に浸漬して、溶出されるMgイオン量の経時変化を測定した。細胞培養液にはさまざまな無機イオンや有機物が含まれている。
図15は、実施例1−1〜1−4のディスク(各PEG−coat)及び比較例1のディスク(研磨まま)の細胞培養液中へのMgイオン溶出量の経時変化を示すグラフである。
もともと細胞培養液中には3mg/150mLのMgイオンが含まれている。
比較例1のディスク(研磨まま)では、28日時点で約5mg/150mLと非常に多量のMgイオンが溶出した。
一方、実施例1−1〜1−4ディスク(各PEG−coat)では、実施例1−4ディスク(1PEG500k−coat)のMgイオン溶出量が約3mg/150mLであり、実施例1−1〜1−3ディスク(5PEG600−coat、5PEG6k−coat、5PEG20k−coat)のMgイオン溶出量がほとんど同じで約1.5mg/150mLであった。
図16は、実施例1−1〜1−4のディスク(各PEG−coat)及び比較例1のディスク(研磨まま)の細胞培養液中への浸漬1日目以降のMgイオン溶出速度を示すグラフである。
実施例1−1〜1−3のディスク(5PEG600−coat、5PEG6k−coat、5PEG20k−coat)の浸漬1日目以降のMgイオン溶出速度は、比較例1のディスク(研磨まま)の浸漬1日目以降のMgイオン溶出速度のほぼ50%以下であった。
これより、PEG−coatの構成にすることにより、Mg合金の耐食性を向上できることが明らかになった。
(腐食抵抗の測定)
実施例1−1、1−2、1−5、1−6のディスク(各PEG−coat)及び比較例1のディスク(研磨まま)の腐食抵抗測定を行った。
各ディスクを回転電極ホルダーに設置し、120rpmで回転させながらHanks液に2時間浸漬し、インピーダンス測定により腐食抵抗を測定した。Hanks液は、血清と等張な無機イオン溶液であり、Cl、Ca2+、HxPO4n−、Na2+、K、Mg2+、SO42−及びCO3−を含む。なお、腐食速度は腐食抵抗に反比例する。
図17は、実施例1−1、1−2、1−5、1−6のディスク(各PEG−coat)及び比較例1(研磨まま)のHanks液中での腐食抵抗を示すグラフである。
比較例1のディスク(研磨まま)の腐食抵抗は1200Ω・cmであったのに対し、ポリマーを塗布した実施例のディスクはいずれも3000Ω・cmよりも高い腐食抵抗を示した。これは、ポリマー塗布により腐食速度が1/2以下になったことを示している。
これより、PEGの分子量が200の場合であってもPEG−coatの構成にすることにより、Mg合金の耐食性を向上できることが明らかになった。また、PEGの片末端が置換基で修飾されている場合であっても、CPEG−coatの構成にすることにより、Mg合金の耐食性を向上できることが明らかになった。
(リン酸カルシウム析出の測定)
実施例1−1、1−6のディスク(各PEG−coat)及び比較例1のディスク(研磨まま)のリン酸カルシウム析出量の測定を行った。
各ディスクをそれぞれ150mLのHanks液中に60分間浸漬して、浸漬後の表面組成をエネルギー分散型X線分析(EDS)にて分析した。いずれのディスクにおいてもHanks液浸漬によって表面にリン酸カルシウムの析出がみられた。
図18は、実施例1−1、1−6のディスク(各PEG−coat)及び比較例1(研磨まま)のHanks液浸漬後のエネルギー分散型X線分析(EDS)で得られた表面のCa及びP濃度(at%)を示すグラフである。各ディスクのグラフについて、左側がCa濃度であり、右側がP濃度である。
実施例1−1、1−6のディスク(各PEG−coat)でのCa及びP濃度は、比較例1(研磨まま)の表面における濃度よりも高かった。これより、ポリマー被覆により溶液中からのリン酸カルシウム析出が促進されることが確認された。
(実施例2−1)
まず、分子量600のPEGを超純水に5wt%溶解して、ポリマー水溶液を調製した。
次に、ポリマー水溶液を40℃に加温してから、その中に、表面を#1200耐水研磨紙で仕上げたAZ31ディスクを1時間浸漬してPEG600を塗布した。
引き続き、PEG600を塗布したAZ31ディスクを、濃度250mMのエチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム(Ca−EDTA)とリン酸二水素カリウム(KHPO)および水酸化ナトリウム(NaOH)溶液中に60℃、1時間浸漬して、PEG600塗布面の上にリン酸カルシウム(Ca−P)を被覆した実施例2−1のディスク(5PEG600→Ca−P)を作製した。
次に、腐食試験のために、ディスクの縁をエポキシ樹脂またはテフロン(登録商標)テープで被覆した。
(実施例2−2)
PEG6kを用いた他は実施例2−1と同様にして、実施例2−2のディスク(5PEG6k→Ca−P)を作製した。
(実施例2−3)
PEG20kを用いた他は実施例2−1と同様にして、実施例2−3のディスク(5PEG20k→Ca−P)を作製した。
(実施例2−4)
PEG500kを用い、濃度を1wt%とした他は実施例2−1と同様にして、実施例2−4のディスク(1PEG500k→Ca−P)を作製した。
(実施例2−5)
PEG200を用い、濃度を25wt%とした他は実施例2−1と同様にして、実施例2−5のディスク(25PEG200→Ca−P)を作製した。
(実施例2−6)
PVAを用いた他は実施例2−1と同様にして、実施例2−6のディスク(5PVA→Ca−P)を作製した。
(実施例2−7)
PVAを用い、濃度を10wt%とした他は実施例2−1と同様にして、実施例2−7のディスク(10PVA→Ca−P)を作製した。
(比較例2)
比較のために、AZ31ディスクを#1200耐水研磨紙で研磨したままのディスクの表面を実施例2−1と同様にしてCa−P膜で被覆した比較例2のディスク(研磨まま→Ca−P)を作製した。
表2は、各作製条件をまとめた表である。
(XRD測定)
次に、実施例2−1〜2−4のディスク(PEG600、6k、20k、500k→Ca−P)及び比較例2のディスク(研磨まま→Ca−P)の表面のXRD測定を行った。
図19は、実施例2−1〜2−4のディスク及び比較例2のディスクの表面のXRDパターンである。
いずれのXRDパターンでも、HApおよび/もしくはOCP(リン酸八カルシウム:Octa calcium phosphate)に由来する回折ピークがみられた。
(FT−IR測定)
次に、実施例2−1〜2−4のディスク、比較例2のディスク及び比較例1のディスクの表面のFT−IR測定を行った。
図20は、各ディスクのFT−IRスペクトルである。
比較例1のディスクでは、HApおよび/もしくはOCPに由来するPOピークがみられなかったのに対し、実施例2−1〜2−4のディスクおよび比較例2のディスクにおいては、いずれのFT−IRスペクトルでも、HApおよび/もしくはOCPに由来するPOピークがみられた。これにより、実施例2−1〜2−4のディスク、比較例2のディスクでは、表面がCa−P被覆されたことを確認した。
また、比較例2のディスクではほとんどみられなかった1050cm−1付近の肩ピークが、実施例2−1〜2−4ディスクではより明瞭にみられたことから、1050cm−1付近ではPOピークにPEGに由来するピークが重なっていたことがわかる。これより、実施例2−1〜2−4のディスクにはPEGが残っていることを確認した。
(顕微鏡観察)
次に、実施例2の各ディスクの光学顕微鏡観察を行った。
図21は、縁をエポキシ樹脂で被覆した実施例2−1のディスク(5PEG600→Ca−P)表面の光学顕微鏡像である。
Ca−P被膜表面は一様であった。実施例2−2〜2−7のディスクでも同様の外観であった。すなわち、ポリマーの種類およびポリマーの分子量に関わらず、一様表面が得られた。
次に、SEM観察を行った。
図22は、実施例2−1のディスク(5PEG600→Ca−P)表面のSEM像である。
HApおよび/もしくはOCPのドーム状結晶が緻密に表面を覆っていた。実施例2−2〜2−5のディスクでも同様の外観であった。すなわち、ポリマーの分子量に関わらず、ドーム状結晶が緻密に表面を覆っていた。
図23は、実施例2−6のディスク(5PVA→Ca−P)表面のSEM像である。
PVA浸漬塗布後でも、HApおよび/もしくはOCPのドーム状結晶が緻密に表面を覆っていた。実施例2−7のディスクでも同様の外観であった。すなわち、ポリマーの種類に関わらず、ドーム状結晶が緻密に表面を覆っていた。
(Mgイオン溶出量の測定(1))
次に、縁をエポキシ樹脂で被覆した実施例2−1〜2−4のディスク(各PEG→Ca−P)及び比較例1のディスクを、それぞれ細胞培養液中に浸漬して、溶出されるMgイオン量の経時変化を測定した。
図24は、実施例2−1〜2−4のディスク及び比較例1のディスクの細胞培養液中へのMgイオン溶出量の経時変化を示すグラフである。もともと細胞培養液中には3mg/150mLのMgイオンが含まれている。
比較例1のディスク(研磨まま)では、28日時点で約5mg/150mLと非常に多量のMgイオンが溶出した。
また、実施例2−1〜2−4ディスク(各PEG→Ca−P)では、PEG500k→Ca−PのディスクのMgイオン溶出量が約3・5mg/150mLであり、分子量6kが約3・3mg/150mLであり、分子量20k、600のディスクのMgイオン溶出量がほとんど同じで、約2.1mg/150mLであった。
PEG→Ca−Pの構成にすることにより、Mg合金の耐食性を向上できることが明らかになった。
(Mgイオン溶出量の測定(2))
次に、縁をテフロン(登録商標)テープで被覆した実施例2−1、2−5、2−7のディスク及び比較例1、2のディスクを、それぞれ150mLの生理食塩水(0.9%NaCl)中に浸漬して、浸漬7日目及び10日目のMgイオン溶出量を測定した。
図25は、実施例2−1、2−5、2−7のディスク及び比較例1、2のディスクの生理食塩水中への浸漬7日目および10日目のMgイオン溶出量を示すグラフである。各ディスクのグラフについて、左側が浸漬7日目であり、右側が10日目である。
比較例1のディスク(研磨まま)では、浸漬7日目に約1.8mg/150mLのMgイオン溶出がみられ、浸漬10日目には約2.6mg/150mLに増加した。比較例2(研磨まま→Ca−P)では、浸漬7日目に約1.1mg/150mLで、浸漬10日目には約1.7mg/150mLに増加した。
一方、実施例2−1、2−5、2−7のディスク(各PEG→Ca−P及びPVA→Ca−P)では、浸漬7日目には約0.1〜0.6mg/150mLで、浸漬10日目でも約0.1〜1.3mg/150mLと、比較例1、2よりも低い溶出量を示した。
PEG→Ca−P及びPVA→Ca−Pの構成にすることにより、PEGの分子量が200の場合であっても、また、ポリマー塗布時の濃度が25wt%の場合であっても、Mg合金の耐食性を向上できることが明らかになった。
(実施例3−1)
まず、AZ31ディスクを用意し、この表面を#1200耐水研磨紙で仕上げた。
次に、濃度250mMのエチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム(Ca−EDTA)とリン酸二水素カリウム(KHPO)および水酸化ナトリウム(NaOH)を混合して混合溶液を調製した。
次に、前記混合溶液を60℃に加温してから、研磨したディスクを、1時間浸漬して、表面をリン酸カルシウム(Ca−P)膜で被覆した。
次に、PEG600を用意し、超純水に5wt%溶解して、ポリマー水溶液を調製した。
次に、ポリマー水溶液を40℃に加温してから、表面をCa−Pで被覆したディスクを1時間浸漬して、表面にポリマーを浸漬塗布し、実施例3−1のディスク(Ca−P→5PEG600)を作製した。
次に、腐食試験のために、ディスクの縁をエポキシ樹脂またはテフロン(登録商標)テープで被覆した。
(実施例3−2)
ポリマーの溶解濃度を10wt%とした他は実施例3−1と同様にして、実施例3−2のディスク(Ca−P→10PEG600)を作製した。
(実施例3−3)
ポリマーの溶解濃度を25wt%とした他は実施例3−1と同様にして、実施例3−3のディスク(Ca−P→25PEG600)を作製した。
(実施例3−4)
ポリマーの溶解濃度を50wt%とした他は実施例3−1と同様にして、実施例3−4のディスク(Ca−P→50PEG600)を作製した。
(実施例3−5)
PVAを用いた他は実施例3−1と同様にして、実施例3−5のディスク(Ca−P→5PVA)を作製した。
表3は、各作製条件をまとめた表である。
(顕微鏡観察)
次に、実施例3の各ディスクの顕微鏡観察を行った。
図26は、実施例3−3のディスク(Ca−P→25PEG600)の光学顕微鏡像である。PEG被覆によるCa−P被覆表面の外観に変化はみられず、一様表面であった。
次に、SEM観察を行った。
図27は、実施例3−3のディスク(Ca−P→25PEG600)のSEM像である。PEG被覆によるCa−P被覆表面のSEM像の表面形態に変化はみられず、ドーム状結晶が緻密に表面を覆っていた。
(FT−IR測定)
次に、実施例3−1〜3−3のディスク及び比較例2のディスクの表面のFT−IR測定を行った。
図28は、各ディスクのFT−IRスペクトルである。
実施例3−1〜3−3のディスクおよび比較例2のディスクにおいては、いずれのFT−IRスペクトルでも、HApおよび/もしくはOCPに由来するPOピークがみられた。
比較例2のディスクではほとんどみられなかった1050cm−1付近の肩ピークが、実施例3−1〜3−3のディスクではより明瞭にみられたことから、1050cm−1付近ではPOピークにPEGに由来するピークが重なっていたことがわかる。また、実施例3−1〜3−3のディスクでは1450cm−1付近にPEGに由来する微小なピークが現れたが、比較例2のディスクではこのピークは現れなかった。これより、実施例3−1〜3−3のディスクにはPEGが塗布されていることを確認した。
(Mgイオン溶出量の測定(1))
縁をエポキシ樹脂で被覆した実施例3−1〜3−3のディスク(各Ca−P→PEG)及び比較例2のディスクを、それぞれ300mLの生理食塩水(0.9%NaCl)中に浸漬して、浸漬7日目及び10日目のMgイオン溶出量を測定した。
図29は、実施例3−1〜3−3のディスク及び比較例2のディスクの生理食塩水中への浸漬7日目および10日目のMgイオン溶出量を示すグラフである。各ディスクのグラフについて、左側が浸漬7日目であり、右側が10日目である。
比較例2のディスク(研磨まま→Ca−P)では、浸漬7日目に約0.2mg/300mLのMgイオン溶出がみられ、浸漬10日目には約1mg/300mLに急激に増加した。
一方、実施例3−1〜3−3のディスク(各Ca−P→PEG)では、浸漬7日目にはMgイオン溶出量は検出限界以下で、浸漬10日目でも約0.1〜0.2mg/300mLと比較例2のディスク(研磨まま→Ca−P)よりも非常に低い溶出量を示した。
Ca−P→PEGの構成にすることにより、Mg合金の腐食の開始を遅らせることができること、およびMg合金の耐食性を向上できることが明らかになった。
(Mgイオン溶出量の測定(2))
次に、実施例2−1、2−6、3−1、3−5のディスク及び比較例1、2のディスクを用いて、被膜の自己修復機能の評価を行った。
各ディスクの被膜に変形を加えるために、ビッカース硬度計を用いて、各ディスクの片面の中央付近に9.807Nの押しつけ力で圧痕を1箇所入れた。
次に、各ディスクをそれぞれ150mLの生理食塩水(0.9%NaCl)中に浸漬して、浸漬7日目及び10日目のMgイオン溶出量を測定した。
図30は、圧痕を付した実施例2−1、2−6、3−1、3−5のディスク及び比較例1、2のディスクの生理食塩水中への浸漬7日目及び10日目のMgイオン溶出量を示すグラフである。各ディスクのグラフについて、左側が浸漬7日目であり、右側が10日目である。
図31(a)は、実施例3−1のディスク(Ca−P→5PEG600)を生理食塩水に10日間浸漬後の圧痕有りの面の実体顕微鏡像であり、図31(b)は、図31(a)における圧痕部分の拡大像である。
図32は、実施例3−1のディスク(Ca−P→5PEG600)を生理食塩水に10日間浸漬後の圧痕なしの面の実体顕微鏡像である。
浸漬7日目及び10日目のいずれでも、実施例3−1のディスク(Ca−P→5PEG600)は比較例1(研磨まま)及び比較例2(研磨まま→Ca−P)のディスクよりも小さいMgイオン溶出量を示した。
一方、実施例C−1、C−3及びC−4のディスクでは、浸漬7日目のMgイオン溶出量は、比較例1(研磨まま)及び比較例2(研磨→Ca−P)のディスクと同等であったが、浸漬10日目には比較例1(研磨まま)及び比較例2(研磨→Ca−P)のディスクよりも小さいMgイオン溶出量を示した。
また、図31〜図32に示すように、圧痕部分からの腐食は進行せずに、圧痕以外の箇所から発生した腐食の進行がみられた。
Ca−PとPEGやPVAなどのポリマーを複合化した被膜は、変形による欠陥があっても必ずしも腐食の発生源にならないことが明らかになった。このため、変形が加わる場合でもCa−PとPEGの複合化によりMg合金の耐食性を向上できることが明らかになった。
(実施例4−1〜実施例4−9)
まず、分子量600のPEG、片末端にメチル基(CH基)を有する分子量400のPEG及び分子量400のPEGを、それぞれ、超純水に5wt%、50wt%もしくは75wt%溶解して、ポリマー水溶液を調製した。
次に、ポリマー水溶液を40℃に加温してから、表面を#1200耐水研磨紙で仕上げたAZ31ディスクを1時間浸漬して、表面にポリマーを浸漬塗布し、実施例4−1〜4−9のディスクを作製した。
次に、腐食試験のために、ディスクの縁をテフロン(登録商標)テープで被覆した。
表4は、各作製条件をまとめた表である。なお、実施例4−1および実施例4−4のディスクは、それぞれ、上記の実施例1−1および実施例1−6と同様の構成である。
(顕微鏡観察)
実施例4の各ディスクの光学顕微鏡観察を行った。
実施例4−1のディスク(5PEG600−coat)は、実施例1−1に関する図9ついて上述したように、ポリマー浸漬塗布表面は金属光沢を保っていた。
また、実施例4−2〜4−9のディスクでも同様の外観であった。すなわち、ポリマーの種類、分子量および濃度に関わらず、金属光沢を有する表面が得られた。
(Mgイオン溶出量の測定)
次に、縁をテフロン(登録商標)テープで被覆した実施例4−1〜4−9のディスク及び比較例1のディスクを、それぞれ150mLの細胞培養液中に浸漬して、浸漬1日目及び4日目のMgイオン溶出量を測定した。
図33は、実施例4−1〜4−9のディスク及び比較例1のディスクの細胞培養液中への浸漬1日目および4日目のMgイオン溶出量を示すグラフである。各ディスクのグラフについて、左側が浸漬1日目であり、右側が4日目である。もともと細胞培養液中には3mg/150mLのMgイオンが含まれている。
実施例4−1〜4−9のディスク(異なる濃度のポリマー溶液で塗布した各PEG−coat)からの、浸漬1日目及び4日目のMgイオン溶出量は、比較例1(研磨まま)の同等以下であった。一方、いずれのポリマーにおいても、ポリマー濃度が高い方がMgイオン溶出量が多い傾向が見られた。
これより、PEG400、PEG600及びCPEG400では、耐食性を示す被膜が、ポリマー溶液の広い濃度範囲で得られることがわかった。
(実施例5−1〜実施例5−9)
まず、分子量600のPEG、片末端にメチル基(CH基)を有する分子量400のCPEG及び分子量400のPEGを、それぞれ、超純水に5wt%、50wt%もしくは75wt%溶解して、ポリマー水溶液を調製した。
次に、ポリマー水溶液を40℃に加温してから、表面を#1200耐水研磨紙で仕上げたAZ31ディスクを1時間浸漬して、表面にポリマーを浸漬塗布し、実施例5−1〜5−9のディスクを作製した。
次に、腐食試験のために、ディスクの縁をテフロン(登録商標)テープで被覆し、片面にカッターナイフで×印の傷をつけた。
(比較例3)
比較のために、AZ31ディスクを#1200耐水研磨紙で研磨したままの比較例1のディスクの縁をテフロン(登録商標)テープで被覆し、片面にカッターナイフで×印の傷をつけて、比較例3のディスクを作製した。
表5は、各作製条件をまとめた表である。なお、実施例5−1〜5−9のディスクは、片面に×印の傷があること以外は、それぞれ、上記の実施例4−1〜4−9と同様の構成である。
(Mgイオン溶出量の測定)
次に、縁をテフロン(登録商標)テープで被覆した実施例5−1〜5−9のディスク及び比較例3のディスクを、それぞれ150mLの細胞培養液中に浸漬して、浸漬4日目のMgイオン溶出量を測定した。
図34は、実施例5−1〜5−9のディスク及び比較例3のディスクの細胞培養液中への浸漬4日目のMgイオン溶出量を示すグラフである。もともと細胞培養液中には3mg/150mLのMgイオンが含まれている。
図34においては、ディスク表面の傷の有無による比較のために、各ディスクのグラフの左側に、傷を有しない実施例4−1〜4−9及び比較例1に関して図33に示した細胞培養液中への浸漬4日目のMgイオン溶出量を示した。
比較例1(研磨まま)と比較例3ディスク(研磨_X)では、傷がある比較例3の方がMgイオン溶出量が多く、傷からの腐食が発生したことが分かる。一方、実施例5−1〜5−9(各PEG−coat_X)と実施例4−1〜4−9(各PEG−coat)では、実施例5−4及び5−9を例外として、傷の有無にかかわらず同程度のMgイオン溶出量を示した。また、傷が有る場合の方がMgイオン溶出量が小さい傾向がみられた。
これより、PEG600、CPEG400及びPEG400を塗布した表面は、被膜の傷に対して自己修復能を示すことがわかった。
(実施例6−1)
まず、以下の構造式で表される、末端がアミノ基で修飾された分子量200のテトラポリエチレングリコール(以下、PTE200と略記する。)を、超純水に10wt%溶解して、ポリマー水溶液を調製した。
次に、表面を#1200耐水研磨紙で仕上げたAZ31ディスクの表面に、ポリマー水溶液を100μL滴下し、1時間静置してポリマーを塗布し、実施例6−1のディスク(10PTE200−coat)を作製した。
次に、腐食試験のために、ディスクの縁をテフロン(登録商標)テープで被覆した。
(実施例6−2)
ディスクの縁および裏面をテフロン(登録商標)テープで被覆した後、表面にカッターナイフで×印の傷をつけた他は実施例6−1と同様の構成を有する、実施例6−2のディスク(10PTE200−coat_X)を作製した。
表6は、各作製条件をまとめた表である。
(Mgイオン溶出量の測定(1))
次に、縁および裏面をテフロン(登録商標)テープで被覆した実施例6−1(10PTE200−coat)、比較例1(研磨まま)、実施例6−2(10PTE200−coat_X)及び比較例3(研磨_X)のディスクを、それぞれ75mLのHanks液中に浸漬して、浸漬1日目のMgイオン溶出量を測定した。
図35(a)は、実施例6−1及び比較例1のディスクのHanks液中へのMgイオン溶出量を示すグラフである。Hanks液75mLには、もともと1.5mgのMgイオンが含まれている。実施例6−1のディスクからのMgイオン溶出量は、比較例1のディスクの同等以下であった。これより、PTE200被膜が、耐食性を示すことが示唆された。
図35(b)は、実施例6−1、6−2及び比較例3のディスクのHanks液中へのMgイオン溶出量を示すグラフである。実施例6−2のディスクからのMgイオン溶出量は、実施例6−1のディスクからよりも小さく、比較例3のディスクからよりも小さかった。これより、PTE200被膜は、被膜の傷に対して自己修復能を示すため、傷の無い場合よりもMgイオン溶出量が小さくなったと考えられる。
(Mgイオン溶出量の測定(2))
次に、縁および裏面をテフロン(登録商標)テープで被覆した実施例6−1(10PTE200−coat)、比較例1(研磨まま)、実施例6−2(10PTE200−coat_X)及び比較例3(研磨_X)のディスクを、それぞれ75mLの細胞培養液中に浸漬して、浸漬4日目のMgイオン溶出量を測定した。
図36(a)は、実施例6−1及び比較例1のディスクの細胞培養液中へのMgイオン溶出量を示すグラフである。細胞培養液75mLには、もともと1.5mgのMgイオンが含まれている。実施例6−1のディスクからのMgイオン溶出量は、比較例1のディスクの同等以下であった。これより、実施例6−1のディスクは、細胞培養液中でも耐食性を示すことがわかった。
図36(b)は、実施例6−1、6−2及び比較例3のディスクの細胞培養液中へのMgイオン溶出量を示すグラフである。実施例6−2のディスクからのMgイオン溶出量は、実施例6−1のディスクと同等であった。これより、PTE200被膜は、細胞培養液中でも被膜の傷に対して自己修復能を示すため、傷の無い場合と同等の溶出量を示したと考えられる。
(実施例7−1)
まず、AZ31ディスクを用意し、この表面を#1200耐水研磨紙で仕上げた。
次に、濃度250mMのエチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム(Ca−EDTA)とリン酸二水素カリウム(KHPO)および水酸化ナトリウム(NaOH)を混合して混合溶液を調製した。
次に、前記混合溶液を60℃に加温してから、研磨したディスクを1時間浸漬して、表面をリン酸カルシウム(Ca−P)膜で被覆した。
次に、ポリアクリル酸ナトリウム(sodium polyacrylate、以下、SAPと略記する。)を用意し、15%のSAP−リン酸緩衝液(ポリマー水溶液)を調製した。
次に、ポリマー水溶液に室温で、表面をCa−Pで被覆したディスクを10秒間以上浸漬した後風乾して、表面にポリマーを塗布し、実施例7−1のディスク(Ca−P→15SAP)を作製した。
(実施例7−2)
まず、ポリアクリル酸ナトリウム(SAP)を用意し、15%のSAP−リン酸緩衝液(ポリマー水溶液)を調製した。
次に、ポリマー水溶液に室温で、表面を#1200耐水研磨紙で仕上げたAZ31ディスクを10秒間以上浸漬した後風乾して、SAPを塗布して実施例7−2のディスク(15SAP−coat)を作製した。
(実施例7−3)
SAPの代わりにポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(poly diallyldimethylammonium chloride、以下、PDDAと略記する。)を用いた他は実施例7−1と同様にして、実施例7−3のディスク(Ca−P→15PDDA)を作製した。
(実施例7−4)
SAPの代わりにポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)を用いた他は実施例7−2と同様にして、実施例7−4のディスク(15PDDA−coat)を作製した。
(実施例7−5)
SAP−リン酸緩衝液(ポリマー水溶液)の濃度を10%とした他は実施例7−1と同様にして、実施例7−5のディスク(Ca−P→10SAP)を作製した。
(実施例7−6)
SAP−リン酸緩衝液(ポリマー水溶液)の濃度を10%とした他は実施例7−2と同様にして、実施例7−6のディスク(10SAP−coat)を作製した。
表7は、各作製条件をまとめた表である。
(Mgイオン溶出量の測定)
次に、実施例7−1〜7−4のディスク及び比較例1のディスクをそれぞれHanks液中に浸漬して、浸漬3日目のMgイオン溶出量を測定した。結果を表8に示す。なお、もともとHanks液中には2.0mg/dLのMgイオンが含まれている。
いずれのディスクでも、浸漬3日目のMgイオン濃度はもともとHanks液に含まれるMgイオン濃度(2.0mg/dL)とほとんど変化がなかった。これより、SAP及びPDDAのような溶液のpHやカチオン濃度に対してミクロ構造を大きく変化させる刺激応答性ポリマーがMg合金の耐食性被膜に使用できることが明らかになった。
(顕微鏡観察)
次に、実施例7−5、7−6のディスク及び比較例2のディスクを用いて、被膜の自己修復機能の評価を行った。
カッターナイフを用いて、各ディスクの被膜の中央付近に傷をつけた後、ディスクの縁をテフロン(登録商標)テープで被覆した。
次に、各ディスクをHanks液中に3日間浸漬して、浸漬3日後の被膜表面の傷の部分をSEM観察した。
図37は、実施例7−5、7−6のディスク及び比較例2のディスクのHanks液中への浸漬3日後の表面の傷部分のSEM像である。
図37に見られるように、SAPを塗布した実施例7−5、7−6のディスクの表面の傷内部には、多くの析出物が観察された。比較例2のディスクの表面の傷内部の析出物は、実施例7−5、7−6のディスクにおけるよりも明らかに少なかった。
次に、実施例7−5、7−6のディスクの表面の傷内部の析出物について、エネルギー分散型X線分析(EDS)を行った。結果を図38に示す。
図38に示すように、実施例7−5、7−6のディスクの表面の傷内部の析出物は、主に炭素、酸素、カルシウムおよびリンで構成されていた。これより、析出物はSAPおよびHanks液から析出したリン酸カルシウムの複合物であることがわかった。SAP被膜は、傷部分に析出物を作り、傷内部に露出した金属表面と溶液を物理的に隔離する自己修復機能を示すことが明らかになった。
(実施例8−1)
まず、ポリアクリル酸ナトリウム(SAP)を用意し、超純水に10wt%溶解し、ポリマー水溶液を調製した。
次に、表面を#1200耐水研磨紙で仕上げたAZ31ディスクの表面に、ポリマー水溶液を100μL滴下し、1時間静置してポリマーを塗布し、実施例8−1のディスク(10SAP−coat)を作製した。
次に、腐食試験のために、ディスクの縁及び裏面をテフロン(登録商標)テープで被覆した。
(実施例8−2)
SAPの代わりにポリ4−スチレンスルホン酸ナトリウム(poly sodium 4-styrenesulfonate、以下、PSSと略記する。)を用いた他は実施例8−1と同様にして、実施例8−2のディスク(10PSS−coat)を作製した。
(実施例8−3)
SAPの代わりにポリビニル硫酸カリウム(potassium polyvinyl sulfate、以下、PVSと略記する。)を用い、濃度を5wt%とした他は実施例8−1と同様にして、実施例8−3のディスク(5PVS−coat)を作製した。
(実施例8−4)
SAPの代わりにポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)を用いた他は実施例8−1と同様にして、実施例8−4のディスク(10PDDA−coat)を作製した。
(実施例8−5)
ディスクの縁及び裏面をテフロン(登録商標)テープで被覆した後、テフロン(登録商標)テープで被覆していない表面にカッターナイフで×印の傷をつけた他は実施例8−1と同様の構成を有する、実施例8−5のディスク(10SAP−coat_X)を作製した。
(実施例8−6)
ディスクの縁及び裏面をテフロン(登録商標)テープで被覆した後、テフロン(登録商標)テープで被覆していない表面にカッターナイフで×印の傷をつけた他は実施例8−2と同様の構成を有する、実施例8−6のディスク(10PSS−coat_X)を作製した。
(実施例8−7)
ディスクの縁及び裏面をテフロン(登録商標)テープで被覆した後、テフロン(登録商標)テープで被覆していない表面にカッターナイフで×印の傷をつけた他は実施例8−3と同様の構成を有する、実施例8−7のディスク(5PVS−coat_X)を作製した。
(実施例8−8)
ディスクの縁及び裏面をテフロン(登録商標)テープで被覆した後、テフロン(登録商標)テープで被覆していない表面にカッターナイフで×印の傷をつけた他は実施例8−4と同様の構成を有する、実施例8−8のディスク(10PDDA−coat_X)を作製した。
表9は、各作製条件をまとめた表である。
(Mgイオン溶出量の測定(1))
次に、縁及び裏面をテフロン(登録商標)テープで被覆した実施例8−1〜8−4(アニオン性・カチオン性ポリマー−coat)のディスク及び比較例1(研磨まま)のディスクを、それぞれ75mLのHanks液中に浸漬して、浸漬1日目のMgイオン溶出量を測定した。
図39は、実施例8−1〜8−4及び比較例1のディスクのHanks液中へのMgイオン溶出量を示すグラフである。Hanks液75mLには、もともと1.5mgのMgイオンが含まれている。実施例8−1〜8−4のディスクからのMgイオン溶出量は、比較例1のディスクの同等以下であった。これより、アニオン性およびカチオン性ポリマー被覆が、耐食性を示すことが示唆された。
(Mgイオン溶出量の測定(2))
次に、縁及び裏面をテフロン(登録商標)テープで被覆した実施例8−5〜8−8(アニオン性・カチオン性ポリマー−coat_X)及び比較例3(研磨_X)のディスクを、それぞれ75mLのHanks液中に浸漬して、浸漬1日目のMgイオン溶出量を測定した。
図40は、実施例8−1〜8−8及び比較例3のディスクのHanks液中へのMgイオン溶出量を示すグラフである。ポリマーの種類が同じであるグラフについて、左側が傷を有さない実施例8−1〜8−4であり、右側が傷を有する実施例8−5〜8−8である。
傷を有する実施例8−5〜8−8のディスクの表面は、傷を有さない実施例8−1〜8−4のディスクの表面と同等以下のMgイオン溶出量を示した。これより、アニオン性およびカチオン性ポリマーを塗布した表面は、被膜の傷に対して自己修復能を示すため、傷の無い場合と同等以下のMgイオン溶出量になったと考えられる。
(Mgイオン溶出量の測定(3))
次に、縁及び裏面をテフロン(登録商標)テープで被覆した実施例8−1〜8−4(アニオン性・カチオン性ポリマー−coat)及び比較例1(研磨まま)のディスクを、それぞれ75mLの細胞培養液中に浸漬して、浸漬4日目のMgイオン溶出量を測定した。
図41は、実施例8−1〜8−4及び比較例1のディスクの細胞培養液中へのMgイオン溶出量を示すグラフである。細胞培養液75mLには、もともと1.5mgのMgイオンが含まれている。実施例8−1〜8−4のディスクからのMgイオン溶出量は、比較例1のディスクの同等以下であった。これより、アニオン性およびカチオン性ポリマー被覆は、細胞培養液中でも耐食性を示すことが示唆された。
本発明の医療用生体吸収性部材及びその製造方法は、膜厚が薄くても、基材からの金属イオンの溶出が抑制された医療用生体吸収性部材及びその製造方法に関するものであり、吸収性生体用金属又は合金の腐食速度制御および生体適合性向上の目的を達成することができ、生体材料に限らず腐食環境下で応力が加わる場所で耐食性を発揮でき、また、生体内のデバイスと周囲組織との強固な接着が求められる部位やデバイス表面への周囲組織の接着が求められない部位等の違いに応じて、周囲組織との親和性を変えて用いることができる。これにより、骨折固定材、ステント及び人工骨等の医療用部材製造産業だけでなく生体材料に限らない工業用部材製造産業において利用可能性がある。
11…医療用生体吸収性部材、12…金属又は合金基材、13…水酸化物および/もしくは酸化物層、14…ポリマー層、19、20…ポリマー層形成用基材、21、22…セラミックス層形成用基材、31…医療用生体吸収性部材、32…セラミックス層、41…医療用生体吸収性部材。

Claims (10)

  1. Mg又はZnの少なくとも一方を含む金属又は合金基材と、
    Mg(OH)又はZn(OH)の少なくとも一方からなる水酸化物および/もしくはMgO又はZnOの少なくとも一方からなる酸化物層であって、前記基材を覆う前記水酸化物および/もしくは酸化物層と、
    電子供与性基を有するポリマーを有する親水性かつ非イオン性のポリマー層であって、ポリエチレングリコール(PEG)からなると共に、前記水酸化物および/もしくは酸化物層を覆う前記ポリマー層を有することを特徴とする医療用生体吸収性部材。
  2. Mg又はZnの少なくとも一方を含む金属又は合金基材と、
    Mg(OH)又はZn(OH)の少なくとも一方からなる水酸化物および/もしくはMgOからなる酸化物層であって、前記基材を覆う前記水酸化物および/もしくは酸化物層と、
    自己修復性を有するポリマー層であって、テトラポリエチレングリコール(PTE)、ポリアクリル酸ナトリウム(SAP)、ポリ4−スチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)の群から選択されるいずれか一又は二以上の高分子電解質ポリマーからなると共に、前記水酸化物および/もしくは酸化物層を覆う前記ポリマー層を有することを特徴とする医療用生体吸収性部材。
  3. さらに、前記ポリマー層を覆うように形成されたセラミックス層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の医療用生体吸収性部材。
  4. さらに、前記水酸化物および/もしくは酸化物層と前記ポリマー層との間に形成されたセラミックス層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の医療用生体吸収性部材。
  5. 前記水酸化物および/もしくは酸化物層の厚さが5000nm以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の医療用生体吸収性部材。
  6. 前記ポリマー層の厚さが0.2nm以上10000nm以下であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の医療用生体吸収性部材。
  7. 前記セラミックス層がリン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、生体活性ガラス、生体用セラミックスの群から選択されるいずれか一又は二以上のセラミックスを含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の医療用生体吸収性部材。
  8. 前記セラミックス層の厚さが500nm以上10000nm以下であることを特徴とする請求項7に記載の医療用生体吸収性部材。
  9. ポリエチレングリコール(PEG)の水溶液を30℃以上100℃以下の温度範囲に加熱してから、ポリマー層形成用基材を0.1時間以上浸漬して、
    前記ポリマー層形成用基材の表面にPEGポリマー層を形成する医療用生体吸収性部材の製造方法であって、
    前記ポリマー層形成用基材は、Mg又はZnの少なくとも一方を含む金属又は合金基材と、Mg(OH) 又はZn(OH) の少なくとも一方からなる水酸化物および/もしくはMgO又はZnOの少なくとも一方からなる酸化物層であって、前記金属又は合金基材を覆う前記水酸化物および/もしくは酸化物層からなることを特徴とする医療用生体吸収性部材の製造方法。
  10. セラミックス層形成用溶液を40℃以上100℃以下の温度範囲に加熱してから、セラミックス層形成用基材を0.1時間以上24時間以下浸漬して、
    前記セラミックス層形成用基材の表面にセラミックス層を形成し、
    ポリエチレングリコール(PEG)の水溶液を30℃以上100℃以下の温度範囲に加熱してから、前記セラミックス層の形成されたポリマー層形成用基材を0.1時間以上浸漬して、
    前記ポリマー層形成用基材の表面にPEGポリマー層を形成することを特徴とする医療用生体吸収性部材の製造方法であって、
    前記ポリマー層形成用基材は、Mg又はZnの少なくとも一方を含む金属又は合金基材と、Mg(OH) 又はZn(OH) の少なくとも一方からなる水酸化物および/もしくはMgO又はZnOの少なくとも一方からなる酸化物層であって、前記金属又は合金基材を覆う前記水酸化物および/もしくは酸化物層からなることを特徴とする医療用生体吸収性部材の製造方法。
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