JPWO2008059968A1 - マグネシウム系医療用デバイスとその製造方法 - Google Patents

マグネシウム系医療用デバイスとその製造方法 Download PDF

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Abstract

広い期間範囲で耐食性の度合いを調整でき、所望の期間だけ十分な強度を保持し、その後は所望の期間で消失させることが可能なマグネシウム系医療用デバイスとその製造方法を提供する。本発明のマグネシウム系医療用デバイスは、基材がマグネシウムまたはその合金からなるマグネシウム系医療用デバイスであって、基材表面に耐食性皮膜が形成され、耐食性皮膜が形成された面の面方向における表面硬さのバラツキが、ビッカース硬さの分散値で21未満であることを特徴とする。

Description

本発明は、マグネシウム系医療用デバイスとその製造方法に関するものである。
従来より一般的に使用されている金属製医療用デバイスは、体内埋入後、手術等により抜去しなければ体内に残存することになる。このような金属製医療用デバイスは、用途によっては、周辺組織が修復している期間は機械的強度を保持し、修復後には手術を要することなく分解して消失するものであることが望まれている。
マグネシウム材は、塩化物イオンの存在する環境での腐食速度が大きいために、輸送機器や家電製品の部材などの汎用材としての用途が限られている。一方、マグネシウム材は、生体為害性の低い材料であって、体液のような塩化物イオンの存在する中性付近の水溶液中では非常に速い速度で腐食され、分解して消失することから、生体内に埋入後に徐々に分解され吸収される医療用生分解金属材料としての利用が期待されており、その開発が進められてきている(特許文献1および2参照)。
デバイスの種類や患部の状態により、デバイスに要求される強度保持期間は非常に広い範囲にわたる。たとえば、ステントなどの血管修復用デバイスは、血管の狭窄部が修復されるまでにかかる5日から6ヶ月の期間は強度を維持し、血管が修復された後はデバイス全体の分解が1週間から12週間の期間でほぼ終了することが望まれる。これは、血管壁が修復された後もステントが残存すると、ステントが血管壁へ与え続ける力学的・化学的刺激により、血管内皮細胞が過剰に増殖してしまうことによる血管の再狭窄が生じてしまうため、血管修復後のステントの消失は非常に重要であるからである。
一方、骨折固定材は、骨折が治癒するまでの3ヶ月から1年の期間はデバイスが荷重を支持し、その後デバイス全体の分解が8ヶ月から5年の期間でほぼ終了することが望まれる。
このように骨折治癒後のデバイスの分解および消失に伴い、治癒した骨に徐々に荷重がかかっていくため、骨に代わってデバイスが荷重を支持してしまう荷重遮断を抑制することが可能となる。これは、荷重遮断による骨吸収(骨が痩せてしまうこと)が原因で起こる再骨折の抑制に繋がり、また骨折治癒後にデバイスを取り出す手術を行う必要がなく、患者の負担を軽減できる。このように、デバイスに要求される強度保持期間は、広い範囲にわたり、ときには数ヶ月以上の長期間になる場合もある。
したがって、強度保持を要する期間とその後の分解期間とで、分解の進行が制御できることが望ましいと考えられる。しかしながら、たとえば、特許文献1に提案された生分解性マグネシウム材は、デバイスの大きさによって分解期間を制御するようにしており、埋入直後から分解が開始することに加え、埋入する空間が限られる生体内では、必要なサイズのデバイスを適用できない場合もあるため、特に長期の強度保持が要されるデバイスとして適切に用いることは実質的に不可能であった。
また、本発明者らが特許文献2において提案している生分解性マグネシウム材は、材料自身の組成や組織制御によって材料の強度−延性バランスおよび生体内での分解速度を所望の値に制御するものであり、たとえば、添加元素の種類およびその濃度を制御することで分解速度を制御することができるものである。
しかしながら、添加元素を用いた合金化による分解速度の制御には限界があり、分解期間の広い範囲における調整は困難であった。すなわち、合金中の添加元素の濃度は、所望の強度−延性バランスに依存して規定されてしまうため、耐食性の調整範囲は限られたものとならざるを得なかった。
特開2004−160236号公報 国際公開WO2007/58276号パンフレット
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、広い期間範囲で耐食性の度合いを調整でき、所望の期間だけ十分な強度を保持し、その後は所望の期間で消失させることが可能なマグネシウム系医療用デバイスとその製造方法を提供することを課題としている。
本発明は、上記の課題を解決するものとして、以下のことを特徴としている。
第1:基材がマグネシウムまたはその合金からなるマグネシウム系医療用デバイスであって、基材表面に耐食性皮膜が形成され、耐食性皮膜が形成された面の面方向における表面硬さのバラツキが、ビッカース硬さの分散値で21未満であることを特徴とするマグネシウム系医療用デバイス。
第2:耐食性皮膜が形成された面の面方向における表面硬さのバラツキが、ビッカース硬さの分散値で12未満であることを特徴とする上記第1のマグネシウム系医療用デバイス。
第3:耐食性皮膜が形成された面の面方向における表面硬さのバラツキが、ビッカース硬さの分散値で10未満であることを特徴とする上記第1のマグネシウム系医療用デバイス。
第4:耐食性皮膜が形成された面の面方向における表面硬さのバラツキが、ビッカース硬さの分散値で8未満であることを特徴とする上記第1のマグネシウム系医療用デバイス。
第5:耐食性皮膜が形成された面の面方向における表面硬さのバラツキが、ビッカース硬さの分散値で7未満であることを特徴とする上記第1のマグネシウム系医療用デバイス。
第6:耐食性皮膜はリン酸カルシウムを含有することを特徴とする上記第1から第5のいずれかのマグネシウム系医療用デバイス。
第7:上記第1から第6のいずれかのマグネシウム系医療用デバイスの製造方法であって、耐食性皮膜の形成成分を溶解した溶液中に基材を浸漬した状態で、基材表面に対して相対的に、流速が制御された溶液の流れを発生させながら基材表面に耐食性皮膜を析出させることを特徴とするマグネシウム系医療用デバイスの製造方法。
第8:基材表面に対する溶液の流速を制御することにより、耐食性皮膜が形成された面の面方向における表面硬さのバラツキ度合いを調整することを特徴とする上記第7のマグネシウム系医療用デバイスの製造方法。
第9:リン酸イオンおよびカルシウムイオンを含有する溶液に基材を浸漬し、リン酸カルシウムを含有する耐食性皮膜を基材表面に形成することを特徴とする上記第7または第8のマグネシウム系医療用デバイスの製造方法。
本発明者等は、生体内での耐食性は、単に耐食性皮膜を形成するだけではその耐食期間を制御するのは困難であるが、その皮膜の硬さのバラツキを小さくすればする程、耐食期間を延ばすことができることを見出し本発明を完成するに至った。
本発明のマグネシウム系医療用デバイスによれば、広い期間範囲で耐食性の度合いを調整でき、所望の期間だけ十分な強度を保持し、その後は所望の期間で消失させることができる。
また、リン酸カルシウムを含有する耐食性皮膜とすることで、骨組織周囲に埋入した場合に、リン酸カルシウム皮膜により骨の形成が促進され、材料と骨の接合性が向上する。さらに、リン酸カルシウムが析出した表面の軟組織適合性が高いことから、血管内に埋入した場合には高い軟組織適合性を示す。
また、骨の欠損部に埋め込む人工骨や頭蓋骨プレートなどのように、マグネシウム材の分解・吸収に伴い再生した骨と置き換わっていく再生医療デバイスとすることができる。
本発明のマグネシウム系医療用デバイスの製造方法によれば、基材の材質、使用するデバイスの種類、大きさ、使用目的、および生体の個体差などにより定まる耐食期間および消失時期に合わせ、皮膜の耐食性を調整することができる。
また、耐食性皮膜を形成する際に基材に対して電圧や電流を加えないため、デバイスの形状に関係なく基材表面全体に所望の皮膜を形成することができる。さらに、基材と溶液との相対速度を制御しているため、皮膜の均質性を多様に変化させることができる。
表面を研磨した未処理の純マグネシウム表面を示す写真である。 図1の5倍拡大写真である。 実施例1の0rpmで処理した純マグネシウム表面を示す写真である。 図3の5倍拡大写真である。 実施例1の30rpmで処理した純マグネシウム表面を示す写真である。 図5の5倍拡大写真である。 実施例1の60rpmで処理した純マグネシウム表面を示す写真である。 図7の5倍拡大写真である。 実施例1の120rpmで処理した純マグネシウム表面を示す写真である。 図9の5倍拡大写真である。 実施例1の1440rpmで処理した純マグネシウム表面を示す写真である。 図11の5倍拡大写真である。 実施例1の2880rpmで処理した純マグネシウム表面を示す写真である。 図13の5倍拡大写真である。 異なる回転数で回転させながら表面処理した純マグネシウムの細胞培養液中における分解速度を例示したグラフである。 異なる回転数で回転させながら表面処理した純マグネシウムの細胞培養液中におけるマグネシウム溶出量の各浸漬日数での積算量を示したグラフである。 リン酸カルシウム溶液中で基材を回転させながら表面処理した純マグネシウム基材表面の皮膜の表面硬さを示すグラフである。 溶液内に基材を浸漬しながら回転させる状態を示す縦断正面図である。 実施例1におけるビッカース硬さ試験の測定点を示す表面処理面の平面図である。 実施例4におけるビッカース硬さ試験の測定点を示す表面処理面の平面図である。 腐食面積率の変化を示すグラフである(純マグネシウム押出材)。 腐食面積率の変化を示すグラフである(AZ31押出材)。 腐食面積率の変化を示すグラフである(0.3%Al−Mg押出材)。 実施例6の研磨したままのネジ表面の写真である。 実施例6の0rpmで処理した皮膜を有するネジ表面の写真である。 実施例6の1440rpmで処理した皮膜を有するネジ表面の写真である。
本発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
本発明の医療用デバイスの基材は、純マグネシウムの他、主たる成分をMgとし、第二成分を含有するマグネシウム合金を対象としている。第二成分は、通常は、その元素のマグネシウムに対する固溶限界濃度の1/3以下の量で含有される。この場合であっても、不可避的不純物の含有が許容されることは言うまでもなく、たとえば0.05原子%以下の不純物の含有が許容される。
上記の第二成分は、好ましくはその元素のマグネシウムに対する固溶限界濃度の1/4以下の量で含有される。第二成分の元素の具体例としては、マグネシウムに対してほとんど固溶しない元素や生体為害性の明らかな元素を除いたAu、Ir、Mn、Zr、Bi、Co、Zn、Ga、Ag、Al、Li、Ce、Pr、La、Th、Nd、Ca、Yb、Rb、Y、Gd、Dy、Tm、Er、Lu、Sc、Inなどが挙げられる。
また、結晶粒径は、その最小部位の1/4以下である。この合金は、第二成分の種類と分量および結晶粒径を制御することにより、所望の強度・加工硬化性・延性等の力学的特性を得ることができるものである。
基材の形状、サイズ等の形態は、目的に応じて任意のものとすることができる。
本発明では、マグネシウムまたはマグネシウム合金よりなる基材の耐食性制御方法として、処理溶液の流れを基板表面で起こすことで、硬さのバラツキ、即ち皮膜の組成や構造のバラツキを調整した皮膜を形成させる。
本発明の方法により基材表面に形成された皮膜は、基材の耐食皮膜として機能し、環境中での基材の分解および溶出を抑制することを可能としている。そして、医療用生分解性マグネシウム材に適用する場合、生体内埋入直後から基材が分解し始めるまでの期間を長く保つことを可能とし、その期間基材本来の強度を確実に保持することを可能としている。
基材表面での溶液の流れ速度を制御する方法には、たとえば溶液中で基材を回転させる方法、溶液中で基材を上下もしくは左右に振動させる方法、溶液を撹拌する方法などがある。基材表面での溶液の流れ速度は、基材表面と溶液との相対速度に依存するものであり、基材を動かす方法には依らないため、デバイスのサイズや形状に応じて任意の方法を適用することができる。
溶液の流れ速度および処理時間は、基材の組成、所望の皮膜の耐食性、生体適合性などに応じて、適宜に変化させることができる。流れ速度を大きくするほど形成される皮膜の均質性が改善され、通常は、処理時間を長くするほど皮膜の厚みが大きくなる。
本発明の方法は、基材の組成や組織に関係なく適用することができ、基材はその組成や組織を破壊されることなく所定の強度−延性バランスなどを維持することができる。
本発明の方法では、表面皮膜が溶質の析出を伴って形成されることから、皮膜の構造・厚さ・組成などを多様に変化させることができ、皮膜の耐食性や生体適合性を調整することが可能である。
たとえば、溶液の流れ速度、処理時間、用いる処理溶液の種類および濃度等の条件によって、皮膜の組成および形態などを多様なものに制御することが可能とされる。
処理溶液や雰囲気については、溶液にマグネシウム材の耐食性改善に寄与する元素を含むことが望ましい。本発明において用いられる処理溶液の成分の具体例としては、リン酸、ケイ酸、アルミン酸の塩、カルシウムの塩または錯体などが挙げられる。より具体的には、たとえば、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化カルシウム、カルシウム錯体などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
リン酸カルシウムのように、溶液中のイオン同士が結合して析出してくる場合以外に、たとえば、Alイオンが含まれる溶液を使用する場合には、Alを酸化物やMgとの複合酸化物として皮膜に取り込ませることができる。このように、たとえば処理溶液の組成や濃度等の条件を変化させることで、皮膜に溶液中の元素を取り込ませることができる。
本発明の方法では、リン酸イオンおよびカルシウムイオンを含有する溶液を用いることにより、母材表面にリン酸カルシウムを析出し、取り込ませることができる。溶液中のリン酸イオン濃度およびカルシウムイオン濃度、処理時間、および溶液の流れ速度によって、皮膜に取り込まれるリン酸カルシウムの量を調整することができる。
このような処理溶液としては、たとえば、疑似体液をベースに、マグネシウムの溶出を促進する塩化物イオンを除いて調製したリン酸カルシウム溶液を用いることができる。具体的には、Hanks液や細胞培養液をリン酸およびカルシウムをベースに調製したものを例示することができ、これらはリン酸カルシウムを析出させやすい溶液として有用である。
基材表面に析出するリン酸カルシウムは、その構造内にマグネシウムを取り込むため、溶液の流れ速度や処理時間により皮膜の組成および構造が変化する。そしてまた、皮膜の均質性が高く緻密な構造であるほど、母材は高い耐食性を示すことができるようになり、生体内埋入初期の基材の分解抑制時間を広い期間範囲で調整することができる。
また、皮膜のリン酸カルシウムの組成および構造は生体内での生体適合性に直接影響を及ぼすため、処理時間を制御することで、生体適合性を制御することができる。
このリン酸カルシウムは骨の形成を促進して骨と材料との接合性を改善し、また血管内皮細胞とのなじみもよい。このような特性から、処理表面の生体適合性が非常に高いものとして実現されることになる。したがって、このように処理した医療用生分解性デバイスが生体内に埋入されると、デバイス表面が周辺組織と適度に接合し、周辺組織の細胞とのなじみがよく、表面の生体適合性が高いため、たとえば血栓形成が起こることなく、埋入初期から周辺組織の治癒が始まり早期に終了することが期待できる。
また近年では、生体材料の表面から薬物を供給して病変部分の治癒を促進する治療が行われているが、タンパク質などを吸着しやすいリン酸カルシウムを表面に取り込ませる際に、処理溶液に薬物やタンパク質を添加すると、これらの物質を皮膜に取り込ませることができる。これにより、治癒を早めるのに必要な各種薬物を保持した医療用デバイスを製造することも可能である。また、リン酸カルシウム内に薬剤を内包した従来の徐放化技術を併用すれば、その薬物を徐放化することも可能である。
たとえば、デバイスが骨折固定用である場合は、皮膜中に骨成長因子であるタンパク質等を取り込ませておき、デバイスの生体内埋入後に表面から徐放させることで骨形成を促進し、骨折の治癒を促進する治療を行うことが考えられる。
また、ステントの場合は、ステントによる血管壁への継続的な力学的刺激のために血管内皮細胞が異常に増殖して起こる再狭窄を防ぐための薬剤を皮膜に保持させることで、ステント表面から薬物を供給して、血管内皮細胞の異常な増殖を防ぐ治療を行うことが可能とされる。
さらに、病変部位のある血管壁は、正常な血管壁よりも強度や弾性が低下しており、ステントで押し広げただけでは正常な血管壁の強度や弾性に戻らないが、本発明ではステント表面から血管壁の修復を促進する薬物を徐放させる治療も可能とされる。
他に、たとえば、骨粗鬆症の患者の骨に薬物を担持したデバイス(薬物徐放医療用デバイス)を埋入することで、デバイスから薬物を徐放させて骨量の増加を促進する治療を行うことなどが可能とされる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
基材として、純マグネシウム(純度99.9%、粒径 1μm)の表面を研磨したものを用いた。
図18に示すように、基材(A)を回転装置に装着して、回転数を0rpm、30rpm、60rpm、120rpm、1440rpm、および2880rpmで回転させながら、37℃のカルシウムイオンを含有するリン酸緩衝溶液(5)に浸漬した後、10分間保持し、基材(A)表面にリン酸カルシウムを含有する皮膜を形成させた。
図18に示す回転装置は、接着剤にて基材(A)を固定する試料回転用治具(2)をモーター(3)の主軸下端に固定したものである。
溶液(5)は、試料回転用治具(2)が浸かる量が容器(4)内に収容されている。容器(4)は、恒温槽(6)内に収納されており、恒温槽(6)内の水(7)により、溶液(5)を所定の温度に維持するようにしてある。支柱(8)は、溶液(5)内にて、基材(A)が回転する高さにモーター(3)を保持するためのものである。
なお、以下に示す基材表面とは、図18では、基材(A)の下面のことである。基材(A)の回転数0rpm、30rpm、60rpm、120rpm、1440rpm、および2880rpmは、それぞれ線流速で0m/s、0.02m/s、0.04m/s、0.08m/s、1m/s、および2m/sに相当する。
本実施例では、基材表面での溶液の流れ速度制御のひとつの方法として基材を回転させる方法を採用した。
図1から図14に、各回転数で処理した表面の外観写真を示す。回転数0rpm(回転させない)で処理した表面(図3、4)は、全体的に灰色の地に白い斑点が飛んでいる形態を示し、リン酸カルシウムが均質に析出していないことが予想される。
30rpm(図5、6)では、不均質なムラのある表面で、数ミクロンの凹みが多くできていた。
60rpm(図7、8)では、30rpmと同様の表面形態を示したが、数ミクロンの凹みの数は30rpmよりも少なかった。
一方、120rpmで処理した表面(図9、10)は、低倍での観察では白い皮膜が全面を覆っており、その表面上に、局所的に白い斑点が見られた。高倍での観察(図10)では、白い表面に局部的に灰色や白の斑点が見られた。120rpmで処理した表面と0rpmで処理した表面とを比較すると、120rpmで処理した表面の方がリン酸カルシウムの析出がより均質に起こっていると考えられる。
1440rpmで処理した表面(図11、12)は、全面がほぼ均質に白い皮膜で覆われており、高倍での観察(図12)でも不均質な部分は観察されなかった。1440rpmではリン酸カルシウムの析出が一様に起こっていると考えられる。
これらの結果より、基材の回転数を増加させる、すなわち処理溶液の流れ速度を大きくするほど、リン酸カルシウムの析出が一様に、均質に起こることが明らかである。
さらに、形成された皮膜の形態が異なることより、処理溶液の流れ速度によりリン酸カルシウムの組成や構造が変化する。2880rpm(図13、14)では、基材全面を観察すると、ディスクの端の方に黒い部分が見られたが、高倍で観察すると、凹みや不均質な部分のない、均質な表面皮膜が形成されていた。
これらの表面状態をより科学的に判定するため、表面のビッカース硬さを図19に示す、測定間隔が4mmの3点で測定し、その平均値を基材の表面硬さとした。その結果を表1および図17に示す。ビッカース硬さ試験(JIS Z 2244)には、マイクロビッカース硬度計(AKASHI社製 MVK−E)を用い、圧子の荷重を10gf、保持時間を15秒として測定した。
下記表1に示されるように、未処理の場合の表面硬さに比べ、回転数にかかわらず溶液中で処理した場合の表面硬さは大きくなった。また、基材を回転させることで、図17に示す硬さの標準偏差値を示すエラーバーが小さくなり、表面硬さのバラツキが減少していた。
表面硬さのバラツキが小さいことから、基材を回転させながら形成された皮膜は面方向に均質であることが明らかになった。表面硬さが増加することは、皮膜構造がより緻密化していることを示している。また、後述の実施例における結果より、純マグネシウムの場合は、表面硬さが大きく、かつバラツキが小さいほど、大きく溶出量が抑えられることが解った。一般に、皮膜が緻密になることで下地から溶液側へのマグネシウムイオンの拡散が抑制されるため、皮膜の緻密さが向上するとマグネシウムの溶出が抑制されることによるものと考えられる。
<実施例2>
[浸漬試験]
実施例1で得られた、表面にリン酸カルシウムを析出させた基材を、37℃に保った5%COインキュベータ内で、27.5mlの細胞培養液(E−MEM+10%FBS)中に5日間浸漬して、培養液中に溶出したマグネシウムイオンの定量をキシリジルブルー法により行った。
なお、培養液は毎日15mlずつ交換し、採取した液を用いて定量した。マグネシウムイオンの溶出量を図15に示した。また、各浸漬日数での積算のマグネシウム溶出量を図16に示した。比較材料として処理を行わなかった研磨したままの基材(図1、2)の細胞培養液中での溶出試験も行った。以上のことを表1にまとめた。
回転させながら処理を行った基材は、回転させずに処理した基材(図3、4)よりも、細胞培養液浸漬初期におけるマグネシウム溶出量が小さい。回転させながら、すなわち溶液の流れ速度の制御下で形成された皮膜によるマグネシウム溶出の抑制効果が大きいことがわかった。また、回転させずに処理した基材の浸漬初期のマグネシウム溶出量は、処理を行っていない基材と同等であった。
これより、溶液流れを制御して形成された均質な皮膜に、浸漬初期におけるマグネシウム材分解抑制効果があることが示された。細胞培養液へのマグネシウム溶出量は、基材表面の処理条件に関わらず、浸漬日数とともに減少した。
浸漬3日目までは、回転させながら処理した基材からのマグネシウム溶出量は、回転させずに処理した基材よりも小さい。しかし、浸漬4日目以降は、処理時の回転の有無に関わらずほぼ同じマグネシウム溶出量を示した。異なる溶液の流れ速度が皮膜による分解抑制効果に及ぼす影響は、浸漬初期に顕著であることがわかった。
一方、回転させずに処理した基材と未処理の基材とを比較すると、浸漬時間が長いほど、回転させずに処理した基材の方が、分解が抑制されていることがわかる。表面処理時の回転の有無にかかわらず、リン酸カルシウム溶液で処理したマグネシウム材表面からの総マグネシウム溶出量は小さい。
<実施例3>
[溶液流れ制御下で処理したマグネシウム系材料の表面組成]
実施例1に示す方法で作製した、表面にリン酸カルシウムを析出させた純マグネシウムのうち、表面処理時の回転数を0rpm、30rpm、1440rpm、2880rpmとした試料の表面組成を、エネルギー分散型X線分析(EDS)により測定した。各回転数で形成した表面の組成を表2に示す。
回転させながら処理した試料は、回転させずに処理した試料よりもPおよびCa濃度が高かった。また、回転数の増加にともない、PおよびCa濃度が増加した。これより、基材表面での溶液の流速を増加させると、リン酸カルシウムの析出量が増加することが示された。また、試料の回転数の増加にともないO濃度の増加がみられた。基材表面での溶液の流速を増加させると、形成される皮膜の厚さが増加する可能性が示唆された。これらより、マグネシウム系材料の基材表面での処理溶液の流速を制御することで、溶液中からの皮膜形成元素の取り込み量を制御できることが明らかになった。
<実施例4>
[溶液流れ制御下で処理したマグネシウム系材料の表面硬さの分散]
実施例1に示す方法で作製した、表面にリン酸カルシウムを析出させた純マグネシウムのうち、表面処理時の回転数を0rpm、30rpm、120rpm、1440rpm、2880rpmとした試料表面において、図20に示すように測定間隔1mmの17点でビッカース硬さを測定した。比較として、研磨したままの未処理材表面においても同様の測定を行った。ビッカース硬さ試験(JIS Z 2244)には、マイクロビッカース硬度計(AKASHI社製 MVK−E)を用い、圧子の荷重を10gf、保持時間を15秒として測定した。測定値の平均±標準偏差および分散を表3に示す。本実験においては、分散の値が小さいほど、試料表面における硬さの面方向のバラツキが小さいこと、すなわち形成された皮膜が面方向に均質であることを示している。
0rpmで処理した表面の硬さの分散21.7を元にF分布の有意差検定を行うことで、回転させて処理した表面の硬さの分散との差の有意性を、ある信頼性で検定した。有意水準1%片側検定を行うと、回転させて処理した表面の硬さの分散が6.4より小さければ0rpmで処理した表面の硬さの分散に対して99%の信頼性で有意に小さいことがいえる。また、有意水準5%両側検定を行うと、分散が7.9より小さければ、97.5%の信頼性で有意に小さいことがいえる。同様に、有意水準5%片側検定を行うと、分散が9.3より小さければ0rpmで処理した表面の硬さの分散に対して95%の信頼性で有意に小さいことがいえる。
本実験において試料を回転させて処理した表面の硬さの分散はいずれも9.3より小さいことから、0rpmで処理した表面の硬さの分散よりも95%の信頼性で有意に小さかった。これは、試料を回転して表面処理を行うと、形成された皮膜の硬さの面方向のバラツキが減少することを示している。したがって、基材表面に制御された溶液の流れを発生させながら表面処理を行うと、形成された皮膜は均質になることが明らかになった。
試料を120rpm以上で回転させて処理した表面での硬さの分散は、研磨ままの未処理表面における分散よりも95%の信頼性で有意に小さかった。これは、マグネシウム材の基材表面での処理溶液の流速を制御することで、基材の大気酸化皮膜よりも均質な皮膜が形成されることがあることを示している。
<実施例5>
[処理皮膜の大気腐食試験による耐食性評価]
純マグネシウム押出材(純度99.9%)、AZ31押出材、および0.3wt%Alを含有するマグネシウム合金押出材(0.3%Al−Mg押出材)を用い、実施例1に示す方法で表面にリン酸カルシウムを含有する皮膜を形成させた。このとき、試料回転数を0rpmおよび1440rpmとした。
試料表面に1g/mのNaClを付着させた。NaClを付着させた試料を相対湿度95%以上に保った恒温器内で、室温(25℃)にて静置した。1時間、2時間、4時間後に、各試料表面の全体像を実体顕微鏡に取り付けたCCDカメラで撮影した。この画像より腐食箇所の総面積を求め、全表面積に対する腐食面積の比率である腐食面積率を求めた。純マグネシウム押出材、AZ31押出材および0.3%Al−Mg押出材の腐食面積率の経時変化を、表4および図21から図23にそれぞれ示す。
いずれのマグネシウム系材料でも、1440rpmで処理した試料における腐食面積率の方が、0rpmで処理した試料におけるよりも低い傾向がみられた。これより、表面での溶液の流速の制御下で皮膜を形成すると、マグネシウム系材料の塩化物イオンに対する耐食性が向上することが明らかになった。
マグネシウム系材料は、生体材料のみならず自動車などの輸送機器の部品や家電製品や通信機器の筐体に用いられており、これらの材料の腐食の主要因は塩化物イオンである。本発明の方法による表面処理により、表面に付着したNaClによる腐食が抑制されたことより、本発明の表面処理方法は様々な用途に用いられるマグネシウム系材料に適用できることが明らかになった。
また、表4および図21から図23より、いずれのマグネシウム系材料でも、表面処理時の回転の有無にかかわらず、リン酸カルシウム溶液で処理した試料の腐食面積率の方が、未処理の試料におけるよりも低かった。これより、リン酸カルシウムを含む表面皮膜は、塩化物イオンに対して耐食性を示すことが明らかになった。
<実施例6>
[ネジ形試料の処理皮膜の乾湿繰り返し試験による耐食性評価]
マグネシウム合金製のネジ(AZ31、呼び寸法:M3×20mm)表面を金属用研磨剤で研磨し、実施例1と同様の方法で表面にリン酸カルシウムを含有する皮膜を形成させた。このとき、ネジ試料の回転軸はネジの長手方向の中心軸とし、ネジ頭を下方に、ネジ先端を上方に向けて治具に固定した。また、回転数を0rpmおよび1440rpmとした。
研磨したままの未処理試料、および0rpmまたは1440rpmで処理した試料表面に1g/cmのNaClを付着させ、相対湿度95%以上に保った恒温器内に静置した。そして、温度を8時間おきに25℃、50℃、25℃に切り替える合計24時間の繰り返しを1サイクルとする乾湿繰り返し試験を2サイクル行った。24時間(1サイクル終了)毎に、ネジ試料を超純水で軽く洗浄し、再びNaClを付着させた。試験開始後、1時間、2時間、4時間、24時間、48時間後に、各試料の表面を実体顕微鏡に取り付けたCCDカメラで撮影した。
試験開始48時間後(2サイクル終了後)の各ネジ試料表面の実体顕微鏡像をそれぞれ図24から図26に示す。いずれのネジ試料においても、ネジ溝の谷に沿って腐食が発生していた。そこで、ネジ頭からネジ先端方向にある20本のネジ溝において、腐食が発生しているネジ溝の数を数え、表5にまとめた。
試験開始後のいずれの時間においても、1440rpmで処理したネジ試料における腐食発生ネジ溝数の方が、0rpmで処理したネジ試料におけるよりも少なかった。これより、基材表面での処理溶液の流速制御下での皮膜形成によるマグネシウム材系材料の耐食性向上は、基材の形状にかかわらず有効であることが明らかとなった。
試験開始48時間後(2サイクル終了後)のネジ試料において、下地マグネシウム材の腐食形態を観察するために、クロム酸溶液を用いて腐食生成物を除去した。上記で腐食発生ネジ溝数を数えた20本のネジ溝において、谷に沿った任意の300μmの長さ部分をレーザー顕微鏡で測定し、線粗さの一種である最大高さ(Ry、ある基準長さに含まれる凹凸の山と谷の高さの合計)を求めた。本試験においては、Ryが大きいほど腐食孔が深いと考えられる。
20本のネジ溝で得られたRyの中から、上位5番目までの測定値を表6に示す。
1440rpmで処理したネジ試料における腐食孔の深さの方が、0rpmで処理したネジ試料におけるよりも小さい傾向がみられた。これより、溶液の流れ速度の制御下での皮膜形成は、マグネシウム材の腐食の深さ方向への進行を抑制する効果があることが明らかになった。
また、表面処理時の回転の有無にかかわらず、リン酸カルシウム溶液で処理したネジ試料の腐食孔の深さの方が、研磨したままのネジ試料におけるよりも小さかった。これより、リン酸カルシウムを含有する皮膜は、下地材料の形状にかかわらず、マグネシウム材の耐食性向上に有効であることが明らかになった。
<実施例7>
[超音波振動を加えて処理したマグネシウム系材料の浸漬試験による耐食性評価]
純マグネシウム押出材(純度99.9%)およびAZ91鋳造材を用いた。試料を超音波振動発生器の先端に瞬間接着剤で固定し、周波数30kHz、振幅100μmの超音波振動を付与しながら、実施例1と同じリン酸カルシウム溶液に10分間浸漬し、表面にリン酸カルシウムを含有する皮膜を形成させた。比較材1として、実施例1に示す方法で、試料回転数1440rpmとして、純マグネシウム押出材およびAZ91鋳造材表面に皮膜を形成させた。
前記のそれぞれの方法により表面皮膜を形成させた試料において、皮膜を形成した表面の所定の面積以外をシリコーン樹脂で被覆し、室温、大気開放の3.5wt%NaCl−0.05Mホウ砂水溶液(pH9.3、NaClホウ酸緩衝液)中に1時間浸漬した。その後、NaClホウ酸緩衝液中に溶出したマグネシウムイオンの定量をキシリジルブルー法により行い、試料表面単位面積当たりのマグネシウムイオン溶出量を求めた。マグネシウムイオン溶出量を表7に示す。
純マグネシウム押出材およびAZ91鋳造材のいずれにおいても、超音波振動を与えて皮膜形成した試料からのマグネシウム溶出量は、1440rpmで回転させて皮膜形成した試料からの溶出量と同等であった。したがって、表面処理溶液と基材表面との間に所定の流れを発生させる手段として、基材の回転だけでなく、基材に超音波振動を与える手段も有効であることが示された。

Claims (9)

  1. 基材がマグネシウムまたはその合金からなるマグネシウム系医療用デバイスであって、基材表面に耐食性皮膜が形成され、耐食性皮膜が形成された面の面方向における表面硬さのバラツキが、ビッカース硬さの分散値で21未満であることを特徴とするマグネシウム系医療用デバイス。
  2. 耐食性皮膜が形成された面の面方向における表面硬さのバラツキが、ビッカース硬さの分散値で12未満であることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム系医療用デバイス。
  3. 耐食性皮膜が形成された面の面方向における表面硬さのバラツキが、ビッカース硬さの分散値で10未満であることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム系医療用デバイス。
  4. 耐食性皮膜が形成された面の面方向における表面硬さのバラツキが、ビッカース硬さの分散値で8未満であることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム系医療用デバイス。
  5. 耐食性皮膜が形成された面の面方向における表面硬さのバラツキが、ビッカース硬さの分散値で7未満であることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム系医療用デバイス。
  6. 耐食性皮膜はリン酸カルシウムを含有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマグネシウム系医療用デバイス。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載のマグネシウム系医療用デバイスの製造方法であって、耐食性皮膜の形成成分を溶解した溶液中に基材を浸漬した状態で、基材表面に対して相対的に、流速が制御された溶液の流れを発生させながら基材表面に耐食性皮膜を析出させることを特徴とするマグネシウム系医療用デバイスの製造方法。
  8. 基材表面に対する溶液の流速を制御することにより、耐食性皮膜が形成された面の面方向における表面硬さのバラツキ度合いを調整することを特徴とする請求項7に記載のマグネシウム系医療用デバイスの製造方法。
  9. リン酸イオンおよびカルシウムイオンを含有する溶液に基材を浸漬し、リン酸カルシウムを含有する耐食性皮膜を基材表面に形成することを特徴とする請求項7または8に記載のマグネシウム系医療用デバイスの製造方法。
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