JP2008142523A - 生分解性マグネシウム材 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の金属材料表面へのリン酸カルシウム析出技術は、マグネシウム材への適用に課題があるという実情に鑑み、所期した基材の物理的特性を維持しながら所望のリン酸カルシウムを生成できる生体適合性マグネシウム材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】リン酸カルシウムを生成できる皮膜が陽極酸化により生成されたものであって、析出させるリン酸カルシウムのCa/P比を0.5〜1.8となるように形成してある生体適合性マグネシウム材。
【選択図】図10
【解決手段】リン酸カルシウムを生成できる皮膜が陽極酸化により生成されたものであって、析出させるリン酸カルシウムのCa/P比を0.5〜1.8となるように形成してある生体適合性マグネシウム材。
【選択図】図10
Description
本発明は、純マグネシウム又はマグネシウム合金を基材とする生体適合性マグネシウム材に関する。より詳しくは、生体中のリン成分とカルシウム成分によりリン酸カルシウムを析出させる皮膜を前記基材表面に形成してある生体適合性マグネシウム材に関する。
従来の生体用金属材料表面へのリン酸カルシウムの析出は、生体外でのスパッタリングやプラズマ処理により行われている。これらのいわゆるドライプロセスでは、表面処理にコストがかかり、処理できる材料の形状に限界がある。また、母材表面の温度上昇を避けられないため、マグネシウム材のように融点の低い材料は、この温度上昇により組織変化が生じ、初期に予定していた強度などを維持することが困難となるために不向きである。 生体外で作製したリン酸カルシウムは、生体内で破骨細胞に貪食されるなどして分解され、引き続き骨芽細胞により骨形成が行われて骨組織と置き換わっていく場合が多く、骨の原料としてリン酸とカルシウムを提供するという意味合いが強い。 リン酸カルシウムが存在する表面への種々の細胞の接着特性は優れているが、生体外でリン酸カルシウムを析出させた表面ではリン酸カルシウムと母材との接合強度が弱いという問題があった。
生体内に埋入された金属材料は、部位によって様々な組織と接することになる。金属材料とそれぞれの組織の間に求められる接着特性や接合強度はデバイスの種類や患部の状態により異なる。リン酸カルシウムはそのCa/Pモル比によりさまざまな結晶構造を取ることができ、リン酸カルシウムの組成および結晶構造によって細胞との親和性が変化する。
本発明は、このような実情に鑑み、所期した基材の物理的特性を維持しながら所望のリン酸カルシウムを生成できる生体適合性マグネシウム材及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、発明1の生体適合性マグネシウム材は、リン酸カルシウムを析出させる皮膜が析出させるリン酸カルシウムのCa/P比を0.5〜1.8となるように形成してあることを特徴とする。
発明2の生体適合性マグネシウム材は、発明1の生体適合性マグネシウム材において、前記皮膜上に炭酸を含有するリン酸カルシウムを析出させることを特徴とする生体適合性マグネシウム材
発明3は、前記発明1又は2の生体適合性マグネシウム材を製造する方法であって、水酸化アルカリ溶液中に浸漬して陽極酸化して皮膜を生成することを特徴とする。
発明4の生体適合性マグネシウム材の製造方法は、前記発明3において、陽極酸化時の印加電圧を1Vから100Vに設定してあることを特徴とする。
また、発明5の生体適合性マグネシウム材の製造方法は、前記発明3又は4において、前記皮膜が陽極酸化した後オートクレーブ処理を施したものであることを特徴とする。
また、発明5の生体適合性マグネシウム材の製造方法は、前記発明3又は4において、前記皮膜が陽極酸化した後オートクレーブ処理を施したものであることを特徴とする。
発明6は、前記発明1又は2の生体適合性マグネシウム材を製造する方法であって、基材の研磨表面をオートクレーブ処理して皮膜を生成することを特徴とする。
本発明の方法は、陽極酸化処理(&オートクレーブ処理)を行い、生体内で自発的にリン酸カルシウムを析出させやすい表面を形成する点が従来の技術と異なる。陽極酸化処理では材料形状の制約が小さく、コストが比較的低い。また、生体内でリン酸カルシウムを析出させるので、母材との密着性に優れている。本発明は、陽極酸化における電圧を制御し、形成される酸化皮膜の構造や組成を変化させ、これによりリン酸カルシウムの析出速度および結晶構造を制御するものである。
通常、溶液からの結晶の析出は、核発生→核の成長→結晶成長により起こる。核発生は溶液中に浸漬された材料表面のキンクやエッジなどの構造的に不均質な箇所で起こりやすい。陽極酸化によりマグネシウム材表面にサブミクロンオーダーの凹凸や孔が形成されるため、この凹凸や孔径の制御により、リン酸カルシウムの核発生の頻度を制御できると考えられる。さらに、通常、下地の酸化物や金属の結晶構造が、その表面に析出する物質の結晶構造に影響を及ぼす(エピタキシー成長)ことが知られている。陽極酸化の条件により、形成された酸化マグネシウムの結晶構造も変化すると考えられ、これが析出するリン酸カルシウムの結晶構造に影響を及ぼすことも予想される。
マグネシウム合金の場合、陽極酸化皮膜の構造がリン酸カルシウムの核発生に影響を及ぼすことに加えて、マグネシウムの溶出に伴い合金表面近傍のpHが局所的に変化し、これがリン酸カルシウムの核発生に影響を及ぼすことが予想される。したがって、純マグネシウムおよびマグネシウム合金のいずれにおいても、陽極酸化の条件により、リン酸カルシウムの析出能を制御できることが予想される。つまり、陽極酸化の条件により異なる構造や組成の皮膜を形成させることで、リン酸カルシウムの析出速度および結晶構造を変化させることができる。
陽極酸化により、研磨まま表面もしくは研磨後にオートクレーブ処理した表面におけるよりも広い範囲でリン酸カルシウムの析出速度や結晶構造を制御できる。さらに、陽極酸化処理とオートクレーブ処理の組み合わせ処理により、リン酸カルシウムの析出速度や結晶構造の制御範囲を広げることができる。
以上より、マグネシウム材を生分解性金属材料として使用する場合、陽極酸化処理および陽極酸化処理とオートクレーブ処理の組み合わせ処理により、使用部位に適したリン酸カルシウムの析出能、つまり生体適合性を持たせることができる。例えば、生分解性ステントの表面には、血管内皮とのなじみがよく、血栓形成を起こさない性質が求められる。生分解性ミニプレートなどの骨折固定材表面には、骨との接合性が高く、骨折の治癒を促進する性質が求められる。それぞれの性質は、表面に析出するリン酸カルシウムの量や結晶構造により異なる。
本発明のリン酸カルシウムの析出速度および結晶構造を制御できる表面は、リン酸カルシウムの析出能と生体適合性の関係の解明に用いる基板としても役立つ表面である。
本発明は上記の通りの特徴を持つものであるが、以下にその実施の形態について説明する。 ミニプレートなどの骨折固定材表面の処理に本発明の処理を施すことで、骨との接合性を改善したり、骨の成長を促進したりすることで、骨折の治癒を促進する。 血管修復用ステントなどの血管内で使用される材料表面の処理に本発明の処理を施すことで、血栓形成を抑制し、血管の再狭窄を抑制する。また、血管内皮細胞との適合性を改善することで、ステント表面が内皮で覆われても、内皮細胞の異常増殖を抑制することで、血管の再狭窄を抑制する。基材としては、純マグネシウムの他、主たる成分をMgとし、第二成分を含有するマグネシウム合金を対象としている。第二成分としては、一元素をそのマグネシウムに対する固溶限界濃度の1/3以下含有されている。この場合であっても、不可避的不純物の含有が許容されることは言うまでもなく、例えば0.05原子%以下の不純物の含有が許容される。 そして、上記の第二成分は、より好ましくはその元素のマグネシウムに対する固溶限界濃度の1/4以下含有されている。 より好ましくはマグネシウムに対してほとんど固溶しない元素や生体為害性の明らかな元素を除いたAu、Ir、Pd、Mn、Zr、Bi、Co、Zn、Pu、Ga、Ag、Al、Li、Ce、Pr、La、Th、Nd、Ca、Yb、Rb、Y、Gd、Dy、Ho、Tm、Er、Lu、Sc又はInの中の何れか1元素とすることができる。 また、結晶粒径は、その最小部位の1/4以下である。この合金は、第二成分の種類と分量及び結晶粒径を制御することにより、所望の強度・加工硬化性・延性等の力学的特性をえることができるものである。
試料の作製
直径8 mm、厚5 mmのディスク状の純マグネシウム(3N)。表面はエタノール中で#600 SiC耐水研磨紙にて研磨後、アセトンで超音波洗浄し、1N NaOH(室温)中で2V, 7V, 20Vおよび100Vで陽極酸化した。図1〜図4に、各電圧で陽極酸化した表面のSEM像を示す。 表1に2V, 7V, 20Vおよび100Vで陽極酸化後の表面組成を示す。これらの値は、EDS(エネルギー分散型蛍光X線分析)により2カ所以上の0.15 mm2の面分析を行った結果の平均値である。
直径8 mm、厚5 mmのディスク状の純マグネシウム(3N)。表面はエタノール中で#600 SiC耐水研磨紙にて研磨後、アセトンで超音波洗浄し、1N NaOH(室温)中で2V, 7V, 20Vおよび100Vで陽極酸化した。図1〜図4に、各電圧で陽極酸化した表面のSEM像を示す。 表1に2V, 7V, 20Vおよび100Vで陽極酸化後の表面組成を示す。これらの値は、EDS(エネルギー分散型蛍光X線分析)により2カ所以上の0.15 mm2の面分析を行った結果の平均値である。
リン酸カルシウムの析出能の評価
陽極酸化した試料を表2の組成の疑似体液(37℃)150 mlに1時間浸漬し、疑似体液から取り出した試料を超純水で軽く洗浄、乾燥させた後に、EDSで表面組成を測定した。
陽極酸化した試料を表2の組成の疑似体液(37℃)150 mlに1時間浸漬し、疑似体液から取り出した試料を超純水で軽く洗浄、乾燥させた後に、EDSで表面組成を測定した。
EDS測定後の試料を、再び新鮮な疑似体液(37℃、150 ml)に3時間浸漬して積算の浸漬時間が4時間の試料を作製し、上記と同様にEDSで表面組成を測定した。
表3に2V, 7V, 20Vおよび100V陽極酸化試料を表2の疑似体液に1時間浸漬した後の表面組成を示す。図5は、表3の陽極酸化電圧とPおよびCa濃度との関係のグラフである。また、図7は浸漬1時間後および4時間後に析出したリン酸カルシウムのCa/Pモル比のグラフである。
溶液浸漬初期のリン酸カルシウム析出に及ぼす陽極酸化時の電圧の影響
浸漬時間が1時間と短いこと、析出物の形状がサブミクロンオーダーの粒子が凝集した形状であること、の2点より、実施例2ではリン酸カルシウムの結晶核の生成し易さを示していることがわかる。表面の平均的な組成を示す面分析の結果を比較すると、20V陽極酸化表面でのリン酸カルシウム濃度が若干ではあるが最も高く、他の電圧で陽極酸化した表面のリン酸カルシウム濃度にはほとんど差は見られなかった。20V陽極酸化表面でのリン酸カルシウムの核発生が最も早く起こっていることが示唆される。リン酸カルシウムのCa/Pモル比は結晶構造により変化する値である。ミクロンオーダーの析出物のCa/P比は、表3および図7に示すように、SEM観察レベルで平滑な2Vおよび20V陽極酸化表面において約0.7であり、多孔性で凹凸のある7Vおよび100V陽極酸化表面においてそれぞれ0.6および0.5である。これらの結果は、表面の凹凸が析出するリン酸カルシウム結晶核の構造に影響を及ぼしていることを示唆している。 析出物が認められない部分のリン酸カルシウム濃度は、析出物における濃度の1/2程度であり、EDSの検出限界を考慮すると、析出物が認められず陽極酸化ままの表面形状が見えている部分にはほとんどリン酸カルシウムは生成していないことが明らかである。
浸漬時間が1時間と短いこと、析出物の形状がサブミクロンオーダーの粒子が凝集した形状であること、の2点より、実施例2ではリン酸カルシウムの結晶核の生成し易さを示していることがわかる。表面の平均的な組成を示す面分析の結果を比較すると、20V陽極酸化表面でのリン酸カルシウム濃度が若干ではあるが最も高く、他の電圧で陽極酸化した表面のリン酸カルシウム濃度にはほとんど差は見られなかった。20V陽極酸化表面でのリン酸カルシウムの核発生が最も早く起こっていることが示唆される。リン酸カルシウムのCa/Pモル比は結晶構造により変化する値である。ミクロンオーダーの析出物のCa/P比は、表3および図7に示すように、SEM観察レベルで平滑な2Vおよび20V陽極酸化表面において約0.7であり、多孔性で凹凸のある7Vおよび100V陽極酸化表面においてそれぞれ0.6および0.5である。これらの結果は、表面の凹凸が析出するリン酸カルシウム結晶核の構造に影響を及ぼしていることを示唆している。 析出物が認められない部分のリン酸カルシウム濃度は、析出物における濃度の1/2程度であり、EDSの検出限界を考慮すると、析出物が認められず陽極酸化ままの表面形状が見えている部分にはほとんどリン酸カルシウムは生成していないことが明らかである。
これらの結果より、マグネシウム材では陽極酸化の条件を変えて表面の構造を制御することで、リン酸カルシウムの析出能(結晶核生成能)および結晶核の構造を変化させられることが示唆された。また、疑似体液浸漬1時間という非常に短い時間で、EDS測定レベルで十分に検出できる量のリン酸カルシウムが析出していることが明らかにされた。
表4に2V, 7V, 20Vおよび100V陽極酸化試料を表2の疑似体液に積算で4時間浸漬した後の表面組成を示す。図6は、表4の陽極酸化電圧とPおよびCa濃度との関係のグラフである。また、図7は浸漬1時間後および4時間後に析出したリン酸カルシウムのCa/Pモル比のグラフである。
溶液浸漬4時間後のリン酸カルシウムの析出に及ぼす陽極酸化時の電圧の影響
浸漬4時間の試料表面はいずれの陽極酸化電圧でも、SEM観察レベルにおいて浸漬前の試料表面よりも表面の凹凸が減少して滑らかになり、陽極酸化で形成されたサブミクロンオーダーの皮膜構造が観察されないことから、実施例3では、リン酸カルシウムが薄く全面を覆った場合の観察を行っていると考えられる。表面の平均的な組成を示す面分析の結果を比較すると、リン酸カルシウム濃度は、100V>7V>20V>2V陽極酸化表面の順に高かった。左記の順序で、リン酸カルシウムの核成長が早い、すなわちリン酸カルシウムの析出速度が大きいことが示唆される。結晶構造を反映した値を示すCa/Pモル比は、表面の平均を反映している面分析の結果では、表4および図7に示すように2Vおよび20V陽極酸化表面のそれぞれ0.7および0.8におけるよりも、7Vおよび100V陽極酸化表面のそれぞれ0.8および0.9方が高い。また、浸漬時間によるCa/P比の変化をみると、表面が多孔性で凹凸のある7Vおよび100V陽極酸化表面でのCa/P比は浸漬時間の増加により大きく増加した。これらの結果は、浸漬4時間後においても、陽極酸化により形成された表面の凹凸等の構造が析出したリン酸カルシウムの構造に影響を及ぼしていることを示している。これらの結果より、マグネシウム材では陽極酸化条件により表面の構造を制御することで、リン酸カルシウムの析出能および結晶の構造を変化させられることが示唆された。
浸漬4時間の試料表面はいずれの陽極酸化電圧でも、SEM観察レベルにおいて浸漬前の試料表面よりも表面の凹凸が減少して滑らかになり、陽極酸化で形成されたサブミクロンオーダーの皮膜構造が観察されないことから、実施例3では、リン酸カルシウムが薄く全面を覆った場合の観察を行っていると考えられる。表面の平均的な組成を示す面分析の結果を比較すると、リン酸カルシウム濃度は、100V>7V>20V>2V陽極酸化表面の順に高かった。左記の順序で、リン酸カルシウムの核成長が早い、すなわちリン酸カルシウムの析出速度が大きいことが示唆される。結晶構造を反映した値を示すCa/Pモル比は、表面の平均を反映している面分析の結果では、表4および図7に示すように2Vおよび20V陽極酸化表面のそれぞれ0.7および0.8におけるよりも、7Vおよび100V陽極酸化表面のそれぞれ0.8および0.9方が高い。また、浸漬時間によるCa/P比の変化をみると、表面が多孔性で凹凸のある7Vおよび100V陽極酸化表面でのCa/P比は浸漬時間の増加により大きく増加した。これらの結果は、浸漬4時間後においても、陽極酸化により形成された表面の凹凸等の構造が析出したリン酸カルシウムの構造に影響を及ぼしていることを示している。これらの結果より、マグネシウム材では陽極酸化条件により表面の構造を制御することで、リン酸カルシウムの析出能および結晶の構造を変化させられることが示唆された。
析出したリン酸カルシウム層の成長の評価
実施例4のEDS測定後の試料を表2の疑似体液に浸漬して積算の浸漬時間が8、12、16、40時間の試料を作製して、EDSで表面組成を測定した。疑似体液には、浸漬の都度新しく調製した液を用いた。対照として、陽極酸化を行わない研磨まま試料を用いて陽極酸化試料と同様の浸漬試験を行った。図8に疑似体液に浸漬する前の研磨まま試料のSEM像を示す。研磨痕のみが観察された。
実施例4のEDS測定後の試料を表2の疑似体液に浸漬して積算の浸漬時間が8、12、16、40時間の試料を作製して、EDSで表面組成を測定した。疑似体液には、浸漬の都度新しく調製した液を用いた。対照として、陽極酸化を行わない研磨まま試料を用いて陽極酸化試料と同様の浸漬試験を行った。図8に疑似体液に浸漬する前の研磨まま試料のSEM像を示す。研磨痕のみが観察された。
2V、7V、20Vおよび100V陽極酸化試料と研磨まま試料を疑似体液に積算で様々な時間浸漬した後の表面組成を、表1、表3および表4のデータと合わせて表5に示す。
表5より積算の疑似体液浸漬時間とPおよびCa濃度との関係を示したのが図9および図10であり、析出したリン酸カルシウムのCa/Pモル比との関係を示したのが図11である。
図9および図10に示すように、研磨まま表面におけるリン酸カルシウム濃度の経時変化は2V陽極酸化表面と同等であり、7V、20Vおよび100V陽極酸化表面におけるよりも低かった。このことより、陽極酸化電圧の制御によりリン酸カルシウム析出能を研磨まま表面と同等以上に制御できることが示された。
図9および図10に示すように、研磨まま表面におけるリン酸カルシウム濃度の経時変化は2V陽極酸化表面と同等であり、7V、20Vおよび100V陽極酸化表面におけるよりも低かった。このことより、陽極酸化電圧の制御によりリン酸カルシウム析出能を研磨まま表面と同等以上に制御できることが示された。
疑似体液への積算の浸漬時間が4時間以上では、7Vおよび100V陽極酸化表面でのPおよびCa濃度、すなわちリン酸カルシウム濃度は、20Vおよび2V陽極酸化表面での濃度よりも顕著に高かった(図9、図10)。これより、リン酸カルシウムの結晶成長速度は、多孔質で凹凸のある7Vおよび100V陽極酸化表面における方が、平滑な2Vおよび20V陽極酸化表面におけるよりも大きいことが示された(図9、図10)。また、積算の浸漬時間が40時間でのリン酸カルシウム濃度は、7V>100V≫20V>2Vの順に高かった。これより、多孔質表面および平滑表面のいずれにおいても、陽極酸化電圧の制御によりリン酸カルシウムの析出量を制御できること、およびそれぞれの表面において陽極酸化電圧が相対的に低い場合に析出量が大きいことが示唆された。
また、疑似体液への積算の浸漬時間が8時間以上では、リン酸カルシウムの結晶構造を反映した値を示すCa/Pモル比は、多孔質表面である7Vおよび100V陽極酸化表面の方が平滑表面である20Vおよび2V陽極酸化表面よりも高かった(図11)。
また、疑似体液への積算の浸漬時間が8時間以上では、リン酸カルシウムの結晶構造を反映した値を示すCa/Pモル比は、多孔質表面である7Vおよび100V陽極酸化表面の方が平滑表面である20Vおよび2V陽極酸化表面よりも高かった(図11)。
これらの結果は、マグネシウム材では陽極酸化の条件を変えることにより、リン酸カルシウムの結晶核の生成速度だけではなく、その後の結晶成長速度および結晶構造を制御可能であることを示している。また、陽極酸化表面の形態はリン酸カルシウムの析出挙動を長期間にわたって支配することが示唆された。
表5に示すように、表面のC濃度は、すべての表面において積算浸漬時間の増加に伴い増加している。これは、析出したリン酸カルシウム中に炭酸が取り込まれていることを示唆している。
陽極酸化に加えてオートクレーブ処理を行った試料表面でのリン酸カルシウムの析出
実施例1と同様に純マグネシウム材をエタノール中で#600 SiC耐水研磨紙にて研磨し、アセトン中で超音波洗浄を行った後に7Vおよび20Vで陽極酸化した。さらにこの試料に120℃にて30分間のオートクレーブ処理を行い、疑似体液に浸漬した表面の組成をEDSで測定した。浸漬時間はオートクレーブ処理を行わなかった試料と同様に積算で1、4、8、12、16、40時間とした。疑似体液は、浸漬の都度新しく調製した。対照として、陽極酸化を行わない研磨まま試料をオートクレーブ処理して同様の浸漬試験を行った。
実施例1と同様に純マグネシウム材をエタノール中で#600 SiC耐水研磨紙にて研磨し、アセトン中で超音波洗浄を行った後に7Vおよび20Vで陽極酸化した。さらにこの試料に120℃にて30分間のオートクレーブ処理を行い、疑似体液に浸漬した表面の組成をEDSで測定した。浸漬時間はオートクレーブ処理を行わなかった試料と同様に積算で1、4、8、12、16、40時間とした。疑似体液は、浸漬の都度新しく調製した。対照として、陽極酸化を行わない研磨まま試料をオートクレーブ処理して同様の浸漬試験を行った。
疑似体液に浸漬する前の、研磨後にオートクレーブ処理した試料表面のSEM像を図12に、7V陽極酸化後にオートクレーブ処理した試料表面のSEM像を図13に、20V陽極酸化後にオートクレーブ処理した試料表面のSEM像を図14に示す。目視ではオートクレーブ処理により20V陽極酸化試料および研磨まま試料の金属光沢が失われた。一方、SEM像ではオートクレーブ処理後にも研磨痕が明瞭に観察され、オートクレーブ処理は表面の凹凸に顕著な影響は及ぼさないことがわかった。表6に、研磨後および陽極酸化後にオートクレーブ処理して、疑似体液に積算で様々な時間浸漬した表面の組成を示す。
表1と表5とおよび表6より、研磨まま表面、7Vおよび20V陽極酸化表面のO濃度はオートクレーブ処理により、それぞれ3.8%から28.0%、46.4%から56.1%、17.4%から50.5%に大きく増加した。オートクレーブ処理により酸化皮膜が成長することが示された。
表6より、疑似体液浸漬によるP濃度の推移を図15、Ca濃度の推移を図16、リン酸カルシウムのCa/Pモル比の推移を図17に示す。参考として、オートクレーブ処理を行っていない試料のデータ(表5)も図中に合わせて示した。
図15および図16より、それぞれの表面でのP濃度およびCa濃度はともに、陽極酸化表面に比べてオートクレーブ処理により値が小さくなり、析出するリン酸カルシウム濃度が低下する傾向がみられた。陽極酸化処理とオートクレーブ処理を組合せることにより、リン酸カルシウムの析出能の制御範囲を広げることができることが示唆された。また、陽極酸化表面における場合と同様に、多孔質表面である7V陽極酸化+オートクレーブ処理表面の方が、平滑表面である20V陽極酸化+オートクレーブ処理表面よりもリン酸カルシウム析出量が大きかった。
一方、研磨後および陽極酸化後にオートクレーブ処理した表面でのCa/Pモル比は、研磨ままおよび陽極酸化表面での値と同等であった(図17)。これより、析出するリン酸カルシウムの結晶構造はオートクレーブ処理の影響を受けないことが示唆された。
以上により、オートクレーブ処理を行う、或いは陽極酸化処理とオートクレーブ処理を組合せることで、リン酸カルシウムの析出能を制御できることが確認された。
表6に示すように、表面のC濃度は、すべての表面において積算浸漬時間の増加に伴い増加している。これは、析出したリン酸カルシウム中に炭酸が取り込まれていることを示唆している。
実施例1〜実施例6の結果より、マグネシウム材表面のリン酸カルシウム析出速度や量は、材料表面の陽極酸化およびオートクレーブ処理により制御できることが示された。
以上のような本発明のマグネシウム材は、体内への埋入後に早期に骨と接合したり、血管内に埋入初期の血栓形成が抑制されたりなど、生体組織とのなじみが良い生分解性デバイスとして利用することができる。 これに限定されることはないが、例えば、具体的な例として、下記に示したようなデバイスとして用いるのが有効である。ボーンプレートやミニプレートやスクリューなどの骨折固定材、人工骨や頭蓋骨プレートや人工臓器などの再生医療デバイスのスキャホールド(足場材料)、ステントや動脈瘤閉塞用コイルや心房中隔欠損症治療デバイスなどの循環器の治療用デバイス。また、血管、胆管や食道などの消化器管、及び気管などの、管状の器官用のステント。 また、本発明による生体適合性マグネシウム材の製造方法は、陽極酸化の溶液にリン酸イオンおよびカルシウムイオンの両方とももしくはいずれかが含まれていると、より生体適合性が改善できると考えられる。
Claims (6)
- 純マグネシウム又はマグネシウム合金を基材とし、生体中のリン成分とカルシウム成分によりリン酸カルシウムを析出させる皮膜を前記基材表面に形成してある生体適合性マグネシウム材であって、前記皮膜が析出させるリン酸カルシウムのCa/P比を0.5〜1.8となるように形成してあることを特徴とする生体適合性マグネシウム材
- 請求項1に記載の生体適合性マグネシウム材において、前記皮膜上に炭酸を含有するリン酸カルシウムを析出させることを特徴とする生体適合性マグネシウム材
- 前記請求項1又は2に記載の生体適合性マグネシウム材を製造する方法であって、水酸化アルカリ溶液中に浸漬して陽極酸化して皮膜を生成することを特徴とする生体適合性マグネシウム材の製造方法
- 前記請求項3に記載の生体適合性マグネシウム材を製造する方法であって、陽極酸化時の印加電圧を1Vから100Vに設定してあることを特徴とする生体適合性マグネシウム材の製造方法
- 前記請求項3又は4のいずれかに記載の生体適合性マグネシウム材の製造方法において、前記皮膜が陽極酸化した後オートクレーブ処理を施したものであることを特徴とする生体適合性マグネシウム材の製造方法
- 前記請求項1又は2に記載の生体適合性マグネシウム材を製造する方法であって、基材の研磨表面をオートクレーブ処理して皮膜を生成することを特徴とする生体適合性マグネシウム材の製造方法
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---|---|---|---|---|
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-
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