JP2006273727A - ジカルボン酸ジエステルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ジカルボン酸又はその無水物と過剰のアルコールとを、副生する水を反応系から留出させつつ、反応させてジカルボン酸エステルを生成させるに際し、反応系内における水の生成速度(kg/hr)に対する反応系からの蒸気の留出速度(kg/hr)の比Rを8.0以上となるようにして反応を行わせることを特徴とする方法。
【選択図】 なし
Description
エステル化反応において生成する水を除去する方法としては、水を原料のアルコールと共沸させて反応系外へ除去する方法が行われている(例えば、特許文献1)。従来より、アルコールを大量に還流することはエネルギーロスであるとの考えから、副生水を系外に排出することができる必要最低限の還流量となるような条件でエステル化反応を行っていた。
従って、本発明の目的は、エステル生成速度の低下が抑えられ、エステル化反応を効率よく行えるジカルボン酸ジエステルの製造方法を提供することにある。
触媒の使用量は、ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物及びアルコールの合計に対し、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%である。
反応圧力は、100mmHg〜常圧の範囲から、反応混合物が沸騰状態となる圧力に調整される。反応温度は、通常60〜250℃、好ましくは100〜250℃の範囲から選ばれる。反応温度が低すぎると、反応の進行が遅く反応終了までに時間がかかる。一方、反応温度が高すぎると、原料のアルコールが脱水したオレフィンや脱水縮合したエーテル化合物等の反応副生成物が増加する恐れがある。
エステル化反応は、回分法、連続法のいずれでもよい。
反応槽としては、特に限定されるものではなく通常のエステル化反応に用いられる反応槽が使用できる。例えば、ジカルボン酸がテレフタル酸のようにアルコールへの溶解性の低いものの場合には、通常の固液反応に用いられる反応槽が用いられ、具体的には、扁平底面円筒形撹拌槽、さら形底面円筒形撹拌槽、半球形底面円筒形撹拌槽等が挙げられる。
特に、ジカルボン酸又はその無水物のエステル化率が30%に達するまで、なかでも25%に達するまでは、比Rが上記範囲になるように蒸気を留去しながら反応を行うことが好ましい。反応初期は反応後期に比べて水の副生が多く、系内に水が溜まりやすいので、反応初期に系内の水を積極的に留去することで、効率的に反応速度の低下を抑え、また、エネルギー消費量を低減することができる。
撹拌は反応混合物中の水分を気相に追い出す効果がある。蒸発量が十分であっても、撹拌動力が小さすぎるとその効果は現れない場合があるので、撹拌動力は、0.01kW/m3以上が好ましく、その上限は通常10kW/m3以下である。攪拌方法は、攪拌翼を用いた攪拌でも、ポンプを用いた強制液循環による攪拌でもよい。
また、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを気相部に導入することにより、気相の水とアルコールが常に系外に除去することができ、蒸発量を増大させることができ、不活性ガスの流量により蒸発量を調節することができる。
反応混合物から触媒を分離する方法としては、公知の方法が使用できる。具体的には、鉱酸やスルホン酸を触媒として用いた場合には、アルカリ洗浄や固体塩基で処理する方法が挙げられる。有機金属化合物を触媒として用いた場合には、有機金属触媒を加水分解した後、アルカリ洗浄やろ過により分離する方法が挙げられる。また、蒸留により触媒を分離してもよい。
<撹拌動力の検定>
エステル化反応器に密度、粘度の異なる様々な有機溶剤を入れ、撹拌トルクを測定することによりレイノルズ数と撹拌動力数との相関を示す線図を作成した。さらに、エステル化反応器にテレフタル酸と2−エチルヘキサノールとの混合物を入れ同様に撹拌動力数を求め、線図が固液の撹拌においても使用できることを確認した。以下の実施例及び比較例における撹拌動力はこの線図をもとに算出した。
撹拌機、単蒸留装置を備えた反応器(6mm幅の邪魔板4枚を槽内壁に等間隔に取り付けた槽径60mmの扁平底面円筒槽)を使用した。攪拌機としては、6枚羽根の垂直パドル翼(翼径30mm、翼幅6mm)を用い、翼の下端から反応容器の底までの距離が5mmの高さに設置した。
単蒸留装置の受器で留出液の流出量を測定し、これを蒸気の重量とした。留出液は静置して水とアルコールとに分離してアルコールを反応器に還流した。また、水の生成量は経時的に反応液の一部をとり、ジカルボン酸ジエステルを高速液体クロマトグラフィーで分析した結果から求めた。
反応器にテレフタル酸47.45g(0.286モル)および2−エチルヘキサノール93.00g(0.714モル)を仕込み、撹拌動力0.42kW/m3(撹拌速度600rpm)で撹拌しながら、220℃の油浴に浸し加熱した。2−エチルヘキサノールの還流が始まった後、テトラ−イソ−プロピルチタネート0.064ml(0.0617g)を添加し、2時間反応を行ったところエステル化率は33%であった。
反応開始からエステル化率33%までの蒸気の流出速度は0.142kg/hrであった。また、反応中、経時的に反応混合物の一部を抜きとり高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、エステル化率33%までのジオクチルテレフタレートの生成速度は、0.773モル/g−触媒/hrであった。反応開始からエステル化率33%までの比Rは82.82であった。
実施例1において、撹拌動力を0.83kW/m3(撹拌速度750rpm)、油浴の温度を210℃に変えた以外は実施例1と同様にして反応を行ったところ、エステル化率は31%であった。
反応開始からエステル化率31%までのジオクチルテレフタレートの生成速度は0.723モル/g−触媒/hr、比Rは22.96であった。
実施例1において、撹拌動力を0.83kW/m3(撹拌速度750rpm)に、油浴の温度を205℃に変えた以外は実施例1と同様にして反応を行ったところ、エステル化率は32%であった。
反応開始からエステル化率32%までのジオクチルテレフタレートの生成速度は0.733モル/g−触媒/hr、比Rは11.12であった。
実施例1において、撹拌動力を0.24kW/m3(撹拌速度500rpm)に、油浴の温度を200℃に変え、エステル化反応器の気相部に窒素ガスを吹き込んだ以外は実施例1と同様にして反応を行ったところ、エステル化率は32%であった。
反応開始からエステル化率32%までのジオクチルテレフタレートの生成速度は0.744モル/g−触媒/hr、比Rは22.38であった。
実施例1において、撹拌動力を0.24kW/m3(撹拌速度500rpm)に、油浴の温度を205℃に変えた以外は実施例1と同様にして反応を行ったところ、エステル化率は30%であった。
反応開始からエステル化率30%までのジオクチルテレフタレートの生成速度は0.703モル/g−触媒/hr、比Rは7.73であった。
実施例1において、撹拌動力を0.24kW/m3(撹拌速度500rpm)に、油浴の温度を200℃に変えた以外は実施例1と同様にして反応を行ったところ、エステル化率は26.0%であった。
反応開始からエステル化率26%までのジオクチルテレフタレートの生成速度は0.620モル/g−触媒/hr、比Rは4.76であった。
実施例1〜4、比較例1〜2の結果をまとめて表−1に示す。
反応器にテレフタル酸47.45g(0.286モル)および2−エチルヘキサノール93.00g(0.714モル)を仕込み、撹拌動力0.42kW/m3(撹拌速度600rpm)で撹拌しながら、220℃の油浴に浸し加熱した。2−エチルヘキサノールの還流が始まった後、テトラ−イソ−プロピルチタネート0.128ml(0.123g)を添加し、1時間反応を行ったところ、エステル化率は29%であった。
反応中、経時的に反応混合物の一部を抜きとり高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、反応開始からエステル化率29%までのジオクチルテレフタレートの生成速度は0.689モル/g−触媒/hr、比Rは32.16であった。
実施例5において、撹拌動力を0.025kW/m3(撹拌速度235rpm)に変えた以外は実施例5と同様にして反応を行ったところ、エステル化率は31%であった。
反応開始からエステル化率31%までのジオクチルテレフタレートの生成速度速度は0.725モル/g−触媒/hr、比Rは26.91であった。
実施例5において、撹拌動力を0.24kW/m3(撹拌速度500rpm)に、油浴の温度を205℃に変え、エステル化反応器をより深く油浴に浸した以外は実施例5と同様にして反応を行ったところ、エステル化率は31%であった。
反応開始からエステル化率31%までのジオクチルテレフタレートの生成速度は0.718モル/g−触媒/hr、比Rは15.92であった。
実施例5において、撹拌動力を0.83kW/m3(撹拌速度750rpm)に、油浴の温度を205℃に変えた以外は実施例5と同様にして反応を行ったところ、エステル化率は28%であった。
反応開始からエステル化率28%までのジオクチルテレフタレートの生成速度は0.652モル/g−触媒/hr、比Rは7.92であった。
実施例5において、撹拌動力を0.24kW/m3(撹拌速度500rpm)に、油浴の温度を205℃に変えた以外は実施例5と同様にして反応を行ったところ、エステル化率は27%であった。
反応開始からエステル化率27%までのジオクチルテレフタレートの生成速度は0.630モル/g−触媒/hr、比Rは5.85であった。
実施例5において、撹拌動力を0.24kW/m3(撹拌速度500rpm)に、油浴の温度を200℃に変えた以外は実施例5と同様にして反応を行ったところ、エステル化率は26%であった。
反応開始からエステル化率26%までのジオクチルテレフタレートの生成速度は0.601モル/g−触媒/hr、比Rは3.50であった。
実施例5において、撹拌動力を0.18kW/m3(撹拌速度450rpm)に、油浴の温度を200℃に変えた以外は実施例5と同様にして反応を行ったところ、エステル化率は25%であった。
反応開始からエステル化率25%までのジオクチルテレフタレートの生成速度は0.586モル/g−触媒/hr、比Rは3.45であった。
実施例5〜7、比較例3〜4の結果をまとめて表−2に示す。
Claims (9)
- ジカルボン酸又はその無水物と過剰のアルコールとを、副生する水を反応系から留出させつつ、反応させてジカルボン酸エステルを生成させるに際し、反応系内における水の生成速度(kg/hr)に対する反応系からの蒸気の留出速度(kg/hr)の比Rを8.0以上となるようにして反応を行わせることを特徴とする方法。
- エステル化率が30%に達するまでは比Rを8.0以上となるように反応を行わせることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- エステル化率が25%に達するまでは比Rを8.0以上となるように反応を行わせることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 比Rを10以上となるように反応を行わせることを特徴とする求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
- 比Rを30以下となるように反応を行わせることを特徴とする求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
- 比Rを20以下となるように反応を行わせることを特徴とする求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
- 触媒として有機金属化合物を用いて反応を行わせることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
- ジカルボン酸又はその無水物が、芳香族ジカルボン酸又はその無水物であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
- テレフタル酸と炭素数8以上の脂肪族アルコールとを有機金属化合物を触媒として反応を行わせることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
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