以下図面を参照して、本発明に係るデジタルデータ(放送)受信機について説明する。
本発明に係るデジタルデータ受信機は、日本の地上デジタルテレビ放送に対応した受信機である。地上デジタルテレビ放送では、1チャンネル分の帯域を13個のセグメントに分割し、そのうちの12セグメントを固定サービス(家庭用の一般向け)用とし、残りの1セグメントを携帯サービス(移動体受信端末)用に割り付けている。固定サービスではデータ圧縮方式としてMPEG2方式を採用し、携帯サービスではデータ圧縮方式としてH.264方式(MPEG−4Part10としても知られる映像圧縮方式の一つ)(又はMPEG4方式)を採用している。固定サービス向けの符号化デジタルデータは、MPEG2方式で符号化されたものであって、高品質であるが、ビットレートが高いことからノイズ耐性が弱く、放送局からの距離が長くなると、良好な受信が困難となる場合がある。これに対して、携帯サービス向けの符号化デジタルデータは、H.264方式(又はMPEG4方式)で符号化されたものであって、MPEG2方式に比べるとビットレートが低いため、ノイズ耐性が強く、放送局からの距離がより長くなっても良好に受信することが可能となる。本発明に係るデジタルデータ受信装置では、固定サービスと携帯サービス、さらには、アナログTVとを、状況に応じて切り換え、常に最適な映像及び音声を提供しようとするものである。
図1は、本発明に係わるデジタルデータ受信機100の概要を示すブロック図である。
デジタルデータ受信機100は、マスター受信部10、スレーブ受信部20、アナログチューナ部30、合成部40、多重分離部41、デコード部50、ハードディスク装置(HDD)60、音声切換処理部70、D/A変換器71、映像切換処理部80、スケーリング処理部81、描画処理部82、GDC(グラフィック)描画処理部83、制御部90、RAM91、ROM92、I/O93、ICカード用スロット94、SDカード用スロット95及びシステムバス96等から構成した。
また、デジタルデータ受信機100は、第1アンテナ110、第2アンテナ120、第3アンテナ130、ナビゲーション装置150、車載スピーカ170、車載表示部180及びリモコン190等と接続した。なお、デジタルデータ受信機100に、前述したアンテナ110〜130、ナビゲーション装置150、車載スピーカ170、車載表示部180及びリモコン190の何れか1つ又は複数を含むように、また何れか1つ又は複数に含まれるように構成されても良い。
デジタルデータ受信機100は、車載表示部180及び/又はリモコン190に設けられた各種入力装置(ボタン、タッチパネル等)からの操作入力によって制御されるように構成した。
マスター受信部10は、第1チューナ部11及び第1OFDM復調部12を有し、スレーブ受信部20は、第2チューナ部21及び第2OFDM復調部22を有するように構成した。
デコーダ部50は、固定サービス用の音声データをデコードする第1音声デコーダ51、携帯サービス用の音声データをデコードする第2音声デコーダ52、固定サービス用の映像データをデコードする第1映像デコーダ53、携帯サービス用の映像データをデコードする第2映像デコーダ54、デジタル放送のデータをデコードするデータデコーダ55を有するように構成した。なお、各デコーダ51〜55は、それぞれの機能を有する個別の電子回路として構成されても良いし、それぞれの機能をソフトウエア的に達成するハードウエア的には1つのデコーダ装置であっても良い。さらに、デコード部50は、後述する制御部90からの制御信号に応じて、デコードするデータ対象を可変できるように構成した。
第1及び第2チューナ部11、21は、それぞれ車体の異なった位置に取り付けられた第1及び第2アンテナ110、120より、制御部90からの制御信号に応じた同じ放送波を受信するように同調され、受信帯域に存在するOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を抽出して、それぞれ第1及び第2OFDM復調処理部12、22へ送る。なお、第1及び第2チューナ部11、21は、それぞれが放送波を受信する際の電界強度信号S1及びS2を、システムバス96を介して制御部90に送信する。
第1及び第2OFDM復調処理部12、22では、OFDM信号の復調を行ってデジタル信号を取り出し、デジタル信号の誤り訂正処理を行ってTSパケット信号を出力し、合成部40へ送るように構成した。また、第1及び第2OFDM復調処理部12、22は、AGC(Auto Gain Control)回路を内蔵し、第1及び第2チューナ部11、21からの受信信号を所望の受信レベルになるようにフィードバック制御を行う。さらに、第1及び第2OFDM復調処理部12、22では、誤り訂正処理によって誤り訂正を行うことができなかったことを示す訂正エラー信号RS1及びRS2を、システムバス96を介して制御部90に送信する。
合成部40では、第1及び第2OFDM復調処理部12、22からのTS(トランスポート・ストリーム)パケット信号を、全てのスペクトラムに関してそれぞれ合成を行うように構成した。
したがって、マスター受信部10又はスレーブ受信部20の何れか一方からでも十分な復調信号が出力されれば、良好な映像及び音声を再生することが可能である。即ち、本実施形態では、車両に複数のアンテナを配置し、受信信号をできるだけ電力が大きく、歪(ひずみ)も少なくなるように合成する移動受信用ダイバ−シティ受信技術を採用した。なお、本実施形態では、2セットの受信部を設けたが、さらに多くの受信セットを設けても良いし、1つの受信セットのみを用いても良い。
多重分離部41は、合成部40からのTSパケット信号を分離して、固定サービス向けの音声に関するTSパケットを第1音声デコーダ51、携帯サービス向けの音声に関するTSパケットを第2音声デコーダ52へ、固定サービス向けの映像に関するTSパケットを第1映像デコーダ53へ、携帯サービス向けの映像に関するTSパケットを第2映像デコーダ54へ、データ放送用のデジタルデータに関するTSパケットをデータデコーダ55へ、それぞれ送信する。また、多重分離部41は、TSパケットがエラーを含むことを示すTSエラー信号を、システムバス96を介して制御部90へ送信する。
第1音声デコーダ51は、多重分離部41から受信したTSパケットに含まれるデータをデコードして、固定サービス向け(MPEG2方式)の音声データを生成し、第2音声デコーダは、多重分離部41から受信したTSパケットに含まれるデータをデコードして、携帯サービス向け(H.264方式又はMPEG4方式)の音声データを生成するように構成した。
第1映像デコーダ53は、多重分離部41から受信したTSパケットに含まれるデータをデコードして、固定サービス向け(MPEG2方式)の映像データを生成し、第2映像デコーダ53は、多重分離部41から受信したTSパケットに含まれるデータをデコードして、携帯サービス向け(H.264方式又はMPEG4方式)の映像データを生成するように構成した。
データデコーダ55は、多重分離部41から受信したTSパケットに含まれるデータをデコードして、EPG(番組案内情報)データ等を生成し、システムバス96を介して、制御部90へ生成データを出力するように構成した。
第1音声デコーダ51及び第2音声デコーダからの音声データは、ハード・ディスク・ドライブ(HDD)60を介して音声切換処理部70へ送信され、第1映像デコーダ53及び第2映像デコーダからの映像データは、HDD60を介して音声切換処理部70へ送信される。HDD60の利用方法については後述する。
音声切換処理部70では、制御部90からの制御信号に応じて、固定サービス向け及び携帯サービス向けの何れか一方が出力されるように切換制御がなされ、D/A変換器71を介して車載スピーカ170から出力されるように構成した。また、音声切換処理部70では、アナログチューナ部30が受信したアナログTV放送の音声信号を受信し、制御部90からの制御信号に応じて、固定サービス向け及び携帯サービス向けの音声データに代えて出力することができるように構成した。
映像切換処理部80では、制御部90からの制御信号に応じて、固定サービス向け及び携帯サービス向けの何れか一方が出力されるように切換制御がなされ、スケーリング処理部81へ出力されるように構成した。また、映像切換処理部80では、アナログチューナ部30が受信したアナログTV放送の映像信号を受信し、制御部90からの制御信号に応じて、固定サービス向け及び携帯サービス向けの音声データに代えて出力することができるように構成した。
スケーリング処理部81では、選択された固定サービス向けの画像サイズ(SD:720×480画素、HD:1920×1080画素又は720P:1280×720画素)又は携帯サービス向けの画像サイズ(QCIF:176×144画素、QVGA:320×240画素又は16:9サイズ:320×180画素)が、車載表示部180の画面サイズ(800×640画素)に合うようにサイズ変更されるように構成した。なお、前述した車載表示部50の画面サイズは一例であって、他の画像サイズのディスプレイを利用することが可能である。
GDC描画処理部83は、データデコーダ55から受信したデータ放送用のグラフィックデータや、RAM91又はROM92から受信した静止画像データ等に基づいてビットマップ展開等を行って、画像又は映像を生成するように構成した。
描画処理部82は、スケーリング処理部81から受信した映像データとGDC描画処理部83から受信した画像又は映像を合成して表示用データを生成し、車載表示部180に表示するように構成した。また、描画処理部82は、映像データを一時記憶するためのVRAM等の記憶部、映像データから静止画像データ(フリーズ画像データ)を生成するための、補間処理、置換処理等を含む演算処理を行う演算処理部等を有していることが好ましい。
制御部90は、RAM91及びROM92を利用しながら、予めインストールされているプログラムにしたがって動作し、システムバス96と接続されている各要素の制御を行う。また、制御部90は、第1及び第2チューナ部11、21からの電界強度信号S1及びS2、第1及び第2OFDM復調処理部12、22からの訂正エラー信号RS1及びRS2、多重分離部41からのTSエラー信号、第1及び第2映像デコーダ53、54からの動きベクトル量エラー率信号MV1及びMV2を受信し、各信号の全て又は一部に基づいて最適な映像データ及び音声データを出力するような切換制御を行うように構成した。また、制御部90は、固定サービス及び携帯サービス向けの映像データが良好では無いと判断した場合には、アナログチューナ部30が受信したアナログTVの映像出力への切換制御や静止画像への切換制御を行うように構成した。さらに、制御部90は、固定サービス及び携帯サービス向けの音声データが良好では無いと判断した場合には、アナログチューナ部が受信したアナログTVの音声出力への切換制御や、ミュート信号(無音)への切換制御を行うように構成した。
ICカード用スロット94は、暗号解読用のパスワードを記憶したICカードを接続するため等に利用される。また、SDカード用スロット95は、デジタルデータ受信機のソフトウエアのバージョンアップ等に利用される。
図2は、TS(Transport Stream)及びPES(Packetized Elementary Stream)の構成を示す図である。
図2(a)に示すように、TSは、複数のTSパケットから構成され、1つのTSパケットは188バイトの固定長である。また、TSパケットは、4バイトのヘッダ部(TSH)と、184バイトのデータ部から構成される。ヘッダ部は、13ビットのTSパケットを識別するためのPID(パケットID)、そのTSパケット内に誤りがあるか否かを示すTSエラービット等が含まれる。データ部には、映像、音声、データ放送用のデータ等のデータが含まれる。TSパケットには、映像データを含むパケット、音声データを含むパケット、データ放送用のデータを含むパケット、NULLコードのみを含むパケット等があり、特定のパケットがどのようなパケットであるかはPIDにより判断することができる。
図2(b)に示す映像PESは、第1又は第2映像デコーダ53、54において、複数のTSパケットに含まれる映像データから再構成された映像パケットを示している。1つのパケットは固定長ではなく、ヘッダ部(PH)と符号化されたデータから構成されるデータ部から構成される。ヘッダ部(PH)には、プログラム時刻基準値を示すPCR(Program Clock Reference)、映像データと音声データとの同期を取るための提示時刻情報(PTS:Presentation Time Stamp)、および伝送上のビット・エラーを検出するための用いることができるCRC(Cyclic Redundancy Check)コードが含まれる。なお、データ部における符号化されたデータが復号化された時には、復号時刻を示す復号時刻情報(DTS:Decoding Time Stamp)が付される。
図2(c)に示す音声PESは、第1又は第2音声デコーダ51、52において、複数のTSパケットに含まれる音声データから再構成された音声パケットを示している。1つのパケットは固定長ではなく、ヘッダ部(PH)と符号化されたデータから構成されるデータ部から構成される。ヘッダ部(PH)には、同様に、PCR、PTS及びCRCコードが含まれる。なお、データ部における符号化されたデータが復号化された時には、DTSが付される。
デコードされた固定サービス向け映像データ及び音声データと、デコードされた携帯サービス向け映像データ及び音声データが、それぞれどのようなタイミングにあるかは、前述した、PCR、PTS及びDTSの何れか一つ又は複数によって判別することができる。
図3は、映像デコーダ53、54から出力される映像のデータ構造の概略を示す図である。
図中、1枚のフレーム(ピクチャ)300は、1枚のフレームを帯状に断面化した複数のスライス301を含み、各スライスはマクロブロックを複数含んで構成されている。各マクロブロックは、例えば、16×16画素の輝度データ及び色差データを含んでいる。
第1及び第2映像デコーダ53、54は、符号化デジタルデータより、動き補償の単位であるマクロブロック毎に付加されている動きベクトル量データを検出し、マクロブロック毎に動きベクトル量が異常値であるか否かの判断を行い、1フレーム単位で、1フレームを構成するマクロブロックの内の何%が異常値を有しているのかを示す動きベクトル量エラー率信号を制御部90へ、システムバス96を介して送信するように構成した。また、制御部90は、第1及び第2映像デコーダ53、54からのデータに基づいて、1フレーム毎に、異常値を示すマイクロブロックを検出することも可能である。
図4は、本発明に係るデジタルデータ受信機における固定サービス、携帯サービス及びアナログTVとの切換処理フローの一例を示す図である。
図4に示す処理フローにおける切換は、映像及び音声を同時期に行うものとするが、個別に切換制御を行うことも可能である。また、切換条件(良好に受信されているか、復帰の条件を満たしているか等)については後述する。また、図4に示す処理フローは、主に、デジタルデータ受信機100の制御部90が、予めインストールされたプログラムに従い、デジタルデータ受信機100の各要素と連携して実行する。また、デジタルデータ受信機100は、電源がONされ、各種機能が動作可能な状況であるものとする。また、マスター受信部10及びスレーブ受信部20は同じチャンネルに同調されており、アナログTVチューナ部30は、マスター受信部10及びスレーブ受信部20が同調されているチャンネルと同じ放送プログラムを放映しているアナログTVのチャンネルに同調されているものとする。
制御部90は、現時点がサイマル放送であるか否かの判断を行う(S401)。サイマル放送とは、MPEG2方式で符号化された符号化デジタルデータによる固定サービスと、H.264方式(又はMPEG4方式)で符号化された符号化デジタルデータによる携帯向け放送による同じ内容の携帯サービスが、同一の放送チャンネルにおいて階層伝送されていることを言う。受信チャンネルがサイマル放送であるか否かは、データ放送用データ中のデータに基づいて制御部90が判断する。
S401において、サイマル放送であると判断された場合には、制御部90は、現在出力しているデータが固定サービス向けの映像及び音声なのか否かの判断を行う(S402)。
S402において、固定サービスであると判断された場合には、固定サービス向けの映像及び音声が良好に受信されているか否かの判断を行い(S403)、良好であると判断された場合には、制御部90は、固定サービス向けの映像及び音声を出力するように、音声切換処理部70及び映像切換処理部80を制御する(S413)。
S403において、固定サービスが良好に受信されていないと判断された場合には、携帯サービス向けの映像及び音声が良好に受信されているか否かの判断を行い(S404)、良好であると判断された場合には、制御部90は、携帯サービス向けの映像及び音声を出力するように、音声切換処理部70及び映像切換処理部80を制御する(S412)。
S404において、携帯サービスが良好に受信されていないと判断された場合には、アナログTVの映像及び音声が良好に受信されているか否かの判断を行い(S405)、良好であると判断された場合には、制御部90は、アナログTVの映像及び音声を出力するように、音声切換処理部70及び映像切換処理部80を制御する(S414)。アナログTVの映像及び音声が良好に受信されているか否かは、制御部90において、アナログTVチューナ部30から受信した電界強度信号S3を利用して判断することができる。
S405において、アナログTVが良好に受信されていないと判断された場合には、制御部90は、ミュート出力(無音)を車載スピーカ170から出力するように音声切換処理部70を制御し、フリーズ画像(静止画像)を車載表示部180に表示するように映像切換処理部80を制御する(S415)。なお、音声に関しては、アナログTVの音声出力が長期間途切れることはまれであるので、ミュート出力に切換えず、アナログTVの音声出力のままとしても良い。
フリーズ画像は、固定サービス向けの映像フレーム又は携帯サービス向けの映像フレームから作成しても良いし、予めROM92等に記憶させておいた静止画像データを利用しても良い。フリーズ画像を固定サービス向けの映像フレームから作成する場合には、制御部90は、固定サービス向けの映像フレームにおける正常値を有するマクロブロックを主に用い、異常値を有するマクロブロックに対応するデータは、周囲のマクロブロックのデータを用いて補完処理するような補完処理を行って、フリーズ画像(静止画像)データを作成する。例えば、補完処理では、図3におけるマクロブロックn5が有する動きベクトル量が異常値を示す場合、マクロブロックn5に隣接する8つのマクロブロックn1〜n4及びn6〜n9のデータの平均値を、新たにマクロブロックn5のデータとするような補間処理を行う。制御部90は、このような補間処理を全ての異常値を有するマクロブロックに対して行い、フリーズ画像データを作成することができる。
S402において、固定サービスでないと判断された場合には、現在出力しているデータが携帯サービス向けの映像及び音声なのか否かの判断を行う(S406)。
S406において、携帯サービスであると判断された場合には、固定サービスに復帰する程度に、固定サービス向けの映像及び音声が良好に受信されているか否かの判断を行い(S407)、良好であると判断された場合には、制御部90は、固定サービス向けの映像及び音声を出力するように、音声切換処理部70及び映像切換処理部80を制御する(S413)。
S407において、固定サービスに復帰できる程度に良好に受信されていないと判断された場合には、S404に進み、S404以下のステップを繰り返す。
S406において、携帯サービスでないと判断された場合には(アナログTV出力であると判断された場合には)、携帯サービスに復帰する程度に、携帯サービス向けの映像及び音声が良好に受信されているか否かの判断を行い(S408)、良好であると判断された場合にはS407へ進み、携帯サービスに復帰できる程度に良好に受信されていないと判断された場合には、S405に進み、S405以下のステップを繰り返す。
S401において、サイマル放送でないと判断された場合には、制御部90は、現在出力しているデータが固定サービス向けの映像及び音声なのか否かの判断を行う(S409)。
S409において、固定サービスであると判断された場合には、固定サービス向けの映像及び音声が良好に受信されているか否かの判断を行い(S410)、良好であると判断された場合には、制御部90は、固定サービス向けの映像及び音声を出力するように、音声切換処理部70及び映像切換処理部80を制御する(S413)。
S410において、固定サービスが良好に受信されていないと判断された場合には、S415へ進む。
S410において、固定サービスでないと判断された場合には(フリーズ状態であると判断された場合には)、固定サービスに復帰する程度に、固定サービス向けの映像及び音声が良好に受信されているか否かの判断を行い(S411)、良好であると判断された場合には、制御部90は、固定サービス向けの映像及び音声を出力するように、音声切換処理部70及び映像切換処理部80を制御する(S413)。
S411において、固定サービスに復帰できる程度に良好に受信されていないと判断された場合には、S415へ進む。
このように、制御部90は、例えば、図4の処理フローに従って、固定サービス、携帯サービス及びアナログTVを切り換えて、車載スピーカ170及び車載表示部180から出力させる。
図5は、本発明に係るデジタルデータ受信機における固定サービス及び携帯サービス間の切換タイミングを示す図である。
図5(a)は、第1チューナ部11からの電界強度信号S1と第2チューナ部21からの電界強度信号S2とを合成し、第1の閾値を比較して第1の閾値以下の場合にHレベル出力となるSレベルダウン信号(SレベルD)である。また、図5(b)は、第1チューナ部11からの電界強度信号S1と第2チューナ部21からの電界強度信号S2とを合成し、第2の閾値を比較して第2の閾値以下の場合にHレベル出力となるSレベルアップ信号(SレベルU)である。ここでは、第1の閾値より第2の閾値を高く設定している。したがって、受信状況が悪化することによって、両方のチューナ部11、21の電界強度信号が下がっていくと、最初にSレベルUがHレベルとなり、次にSレベルDがHレベルとなる。また、デジタルデータ受信機では、SレベルDがLレベルでは固定サービス出力を良好に出力できる状態に設定し、SレベルUがLレベルでは携帯サービスから固定サービスに復帰できる程度に固定サービス出力を良好に出力できる状態と設定した。即ち、固定サービスから携帯サービスに切換える条件よりも、携帯サービスから固定サービスに復帰するように切換える条件を厳しく設定してある。これは、頻繁に固定サービスと携帯サービスとが切換わらないようするためである。
図5(c)に示す訂正エラー信号は、第1OFDM復調部12からの訂正不能エラー信号RS1及び第2OFDM復調部22からの訂正不能エラー信号RS2のアンド出力であり、Hレベルの場合に第1及び第2OFDM復調部12、22の両方で訂正不能エラーが発生したことを示している。
図5(d)に示すTSエラー信号は、多重分離部41から出力される信号であり、固定サービス向けの映像及び音声に関するTSパケットに、エラーを含むTSパケットが所定割合以上発生した場合にHレベルとなる信号である。多重分離部41は、固定サービス向けの映像及び音声に関するTSパケットのTSエラービットが異常を示すパケットをカウントし、TSパケット20000個当たりにカウントされるTSエラービットの異常が200以上である場合に、TSエラー信号(固定)をHレベルにする。なお、上記のTSエラー信号(固定)をHレベルにするTSパケットのエラー率(1%以上)は一例であって、最適な値を選択することが可能である。同様に、図5(e)に示すTSエラー信号は、多重分離部41から出力される信号であり、携帯サービス向けの映像及び音声に関するTSパケットに、エラーを含むTSパケットが所定割合以上発生した場合にHレベルとなる信号である。ここでも、TSエラー信号(固定)をHレベルにするTSパケットのエラー率を1%以上とした。
通常、最初に受信状態の悪化によりSレベルDがHレベルとなり、受信状態が悪化してから受信した受信データを復調することによって訂正不能エラー信号がHレベルとなり、エラー耐性が低い固定サービス向けのTSパケットにはTSエラービットの異常が多く含まれる可能性が高いので、その後TSエラー信号(固定)がHとなる。
図5(f)に示すように、制御部90は、最初にSレベルD信号がHレベルとなった時点で(図中A)、固定サービスから携帯サービスへの切換を開始し、その後受信状態が改善され、TSエラー信号(携帯)がLレベル(携帯サービスの受信状況は良好)且つSレベルH信号がLレベルとなった時点で(図中D)、携帯サービスから固定サービスへの復帰のための切換を開始する。
また、SレベルD信号とSレベルH信号との設定だけでは、固定サービスと携帯サービス間での切換が頻繁に起こってしまう場合や信頼性に欠ける場合等には、携帯サービスへの切換から復帰までの期間Sを、所定期間(例えば、10秒間)以内とならないように制御することも可能である。
さらに、SレベルH信号がLレベル、訂正不能エラー信号がLレベル、TSエラー信号(固定)がLレベル且つTSエラー信号(携帯)がLレベルとなった時点で(図中F)、初めて携帯サービスから固定サービスへの復帰を開始するように制御しても良い。
さらに、TSエラー信号がHレベルになるためのTSパケットのエラー率と、Lレベルになるためのエラー率を異なるように設定することもできる。
図5に示す例では、固定サービスと携帯サービスとの切換制御のために、電界強度信号S1及びS2、誤り訂正不能エラー信号RS1及びRS2、TSエラー信号(固定)及びTSエラー信号(携帯)を状態検知信号として用いた。しかしながら、TSパケットに含まれるCRCコードを用いて、固定サービス及び携帯サービスの受信状態を検知することもできる。その場合、前述したTSエラー信号の場合と同様に、CRCコードを用いて異常状態のTSパケットを検出し、TSパケットのエラー率を演算して、予め定められたエラー率を超える場合に、受信状態が不良であると判断すれば良い。
また、固定サービスと携帯サービスとの切換制御のために、放送電波の監視等に利用するために、データ部にすべてNULLコードを有するNULLパケット(TSパケットの一種類)を利用して、固定サービス及び携帯サービスの受信状態を検知することもできる。PIDを利用してNULLパケットを検出し、データ部のデコードを行ってすべてNULLコードであれば異常なしと判断し、NULLコード以外が検出されれば異常ありと判断する。
さらに、固定サービスと携帯サービスとの切換制御のために、第1及び第2映像デコーダ53,54から出力される動きベクトル量エラー率信号を利用することができる。動きベクトル量エラー率信号は、マクロブロック(図3参照)の内の何%が異常値を有しているのかを示す信号である。動きベクトル量は、参照画面(以前の時刻に符号化され次のタイミングで使用するためにデコードされた再生画面)上でのずれ量を示す2次元データであるので、受信エラー等によって、画面が大きく乱れた場合には、大きい移動状態を示すこととなる。したがって、動きベクトル量が異常値(予め設定した値より大きい場合)を示すマクロブロックが1フレーム中に多数存在する場合には、ノイズが多く発生したり、映像が大きく乱れたりしており、視聴に耐えないものであり、受信状態が不良であると判断することができる。そこで、動きベクトル量エラー率信号に関する閾値を設定し、それ以上の場合(例えば、固定サービス向けの映像の1画面を構成するマクロブロック中、30%以上が動きベクトル量に異常値を示す場合)に固定サービスから携帯サービスへの切換を行うように制御を行うことができる。動きベクトル量エラー率信号は、映像に係る状態検知信号であるが、音声の受信状況も映像の受信状況に対応することが多いため、動きベクトル量エラー率信号を利用して、音声の切換処理を行っても大きな問題とはならない。
さらに、固定サービスと携帯サービスとの切換制御のために、評価用画像を利用することができる。評価用画像は、天候等によるサービスの監視のために放送局が定期又は不定期で送信する静止画像である。デジタルデータ受信機100では、データデコーダ55を介して、固定サービス向けの評価用画像のデータをデコードしてHDD60又はRAM91に一時記憶させ、制御部90は、予めHDD60又はROM92に記憶されている原画像と間で画像評価を行う。画像評価によって、受信した固定サービス向けの評価用画像の劣化レベル(dB)が大きい場合には、固定サービスから携帯サービスへの切換制御を行う。画像評価は、PSNR(Peak Signal to Noise Ration)推定方式等に基づいて行うことができる。
さらに、固定サービスと携帯サービスとの切換制御のために、カルーセル放送によって繰り返し受信することができる同じデータ放送用のデータを利用することができる。例えば、EPGのデータ等、同じ内容のデータを繰り返し受信できるような場合、前回受信したデータを一時記憶しておき、今回受信したデータと前回受信したデータとを比較して、今回受信したデータの劣化レベル(dB)が大きい場合には、固定サービスから携帯サービスへの切換制御を行うように制御することができる。
さらに、固定サービスと携帯サービスとの切換制御のために、音声デコーダによってデコードされた音声データを利用することができる。音声は連続波であることから、復号化されたデジタル音声データは通常連続性を有しているはずである。したがって、音声予測処理等によって、復号化されたデジタル音声データの連続性が途切れた場合には、受信状態が不良となったと判断することができる。したがって、第1音声デコーダからの固定サービス向けの音声データに対して音声予測処理を行い、音声データの連続性が途切れた場合には、第1又は第2音声デコーダ51、52は音声予測エラー信号を出力し、制御部90は音声予測エラー信号に基づいて、固定サービスから携帯サービスへの切換を行うように制御を行うことができる。音声予測エラー信号は、音声に係る状態検知信号であるが、映像の受信状況も音声の受信状況に対応することが多いため、音声データを利用して、映像の切換処理を行っても大きな問題とはならない。
図5を用いて、固定サービスから携帯サービスへの切換制御のタイミングや条件等について説明した。しかしながら、前述した状態検知信号(アナログTV出力の受信状態については、例えば電界強度信号S3)を利用して、さらに、携帯サービスからアナログTV出力への切換制御、携帯サービスから固定サービスへ復帰させるための切換制御、及びアナログTV出力から携帯サービスへ復帰させるための切換制御を行うことができる。その場合、各切換制御のための切換条件を、それぞれ設定することによって、切換が頻繁に発生してしまうことや、受信状態が回復していないサービスに切換されてしまうこと等を防止することができる。
図6は、本発明に係るデジタルデータ受信機における映像切換制御を示す図である。
図6(a)は、第1映像デコーダ53から出力される固定サービス(MPEG2方式)の映像フレームを模式化した図であり、SDサイズ(720×480画素)のフレームN、N+1、N+2〜N+16が順次出力される状況を示している。同様に、図6(b)は、第2映像デコーダ54から出力される携帯サービス(H.264又はMPEG4方式)の映像フレームを模式化した図であり、QVGAサイズ(320×240画素)のフレームM−16〜M−2、M−1、Mが順次出力される状況を示している。なお、固定サービス向け映像フレームM+16と携帯サービス向けの映像フレームM−16とがほぼ同じ映像である(相関が等しい)ものとする。なお、図5において説明したようにサービス切換はSレベルD信号によって決まり、その間にも次々と映像デコーダからは復号化された映像データが出力されることから、SレベルDとなった受信データと図6(a)における映像フレームNとは一致していないものとする。
図6(c)は、図5で説明したサービス切換のタイミングを示したものであって、図中Aの時点で固定サービスから携帯サービスへの切換が開始されることを示している。
図6(d)は、映像切換処理によって、車載表示部180(800×640画素)に表示される映像フレームを模式化して示したものである。前述したように、固定サービス向けの映像のサイズ(SD、HD及び720P)と、携帯サービス向けの映像のサイズ(QCIF、QVGA及び16:9)と、車載表示部180の表示サイズとは統一されていないので、スケーリング処理部81において車載表示部180のサイズに合うように拡大及び縮小が行われる。また、車載表示部180には、映像フレームが1秒間に16フレームの割合で表示されるものとする。
図6(d)に示すように、切換処理が開始される時刻Aまでは、固定サービス向けの映像フレーム600が表示されるが、時刻A〜G間(フェードイン期間B2)は、固定サービス向けの映像フレームと全黒の画面とをブレンドした映像フレーム601〜616を表示する。映像フレーム601〜616は、固定サービス向けの映像フレームN+1〜N+16と全黒の画面とをブレンドした映像フレームである。固定サービス向けと全黒の画面のとのブレンドの比率は、映像フレーム601が15/16:1/16であり、映像フレーム616が1/16:15/16(ほぼ全黒)であり、各フレーム間で1/16毎にブレンド比率を変化させるように制御した。
その後、時刻G〜H間(ミュート期間B3)は、所定枚数のテロップ620を(1秒当たり16フレームとして)数秒間表示する。テロップには、固定サービスから携帯サービスに切換わった旨を表示する。
その後、時刻H〜I間(フェードアウト期間B3)は、携帯サービス向けの映像フレームと全黒の画面とをブレンドした映像フレーム651〜666を表示する。映像フレーム651〜666は、携帯サービス向けの映像フレームM−16〜M−1と全黒の画面とをブレンドした映像フレームである。携帯サービス向けと全黒の画面のとのブレンドの比率は、映像フレーム651が1/16:15/16(ほぼ全黒)であり、映像フレーム666が15/16:1/16であり、各フレーム間で1/16毎にブレンド比率を変化させるように制御した。
したがって、映像切換処理では、切換処理開始から、固定サービス向けの映像をフェードアウトし(期間B2)、その後切換を行った旨の表示を行い(期間B3)、携帯サービス向けの映像をフェードインさせて(期間B4)、切換処理を完了するので、全体として切換処理期間B1が必要となる。
図6では、切換処理期間B1を固定したが、切換処理期間B4を番組のジャンルに応じて、変化させることが好ましい。例えば、スポーツ番組等の映像内容の変化が激しい番組では、切換処理期間B1を短く(1〜2秒程度)設定し、ニュースやトーク番組等の映像内容の変化が緩やかな番組では、切換処理期間B1を長く(5〜10秒程度)設定することが好ましい。即ち、制御部90は、データデコーダ55から受信するEPGデータ等から番組のジャンルの情報を判別し、切換処理期間B1を変更するように制御を行うことが可能である。
また、図6では、映像フレームを1秒間に16枚の割合で表示させる場合(1/16秒毎のフレーム切換)を例にして説明したが、映像フレームの切換タイミングは、1/16秒に限られるものではない。したがって、例えば、映像フレームを1/32秒毎に切換えることもできる。
さらに、図6では、フェードイン期間B1及びフェードアウト期間B3において、映像フレームを1/16秒毎に切換え、切換毎にブレンド比率1/16分毎に変化させて、表示させたが、切換タイミングやブレンド比率の変化の割合は、これに限られるものではない。したがって、例えばフェードイン期間B2において、固定サービス向けの映像フレームと全黒の画面のブレンド比率を10:90とした映像フレームを1/16秒間表示させ、ブレンド比率を20:80とした映像フレームを2/16秒間表示させ、ブレンド比率を30:70とした映像フレームを3/16秒間表示させという具合に、フレンド比率に応じて、表示時間を変更させるようにしても良い。
さらに、図6では、固定サービス向けの映像フレーム全体と携帯サービス向けの映像フレーム全体について全黒の画面とのブレンドを行ったが、映像フレームの一部分についてのみブレンドを行い、他の部分は即座に切換えるように制御しても良い。図7に車載表示部180の800(X1)×480(Y1)画素の画像表示領域700を示す。ここで、例えば、車載表示部180の600(X2)×300(Y2)画素の注目映像領域701についてのみ、図6で説明したように、固定サービス向けの映像フレームからのフェードアウト、テロップの表示、携帯サービスからのフェードインというように切換処理を行い、注目映像領域以外の周辺映像領域702については、切換処理の開始に応じて即座に固定サービス向け映像フレームから携帯サービス向け映像フレームの該当部分に切換えるように制御しても良い、なお、注目映像領域は、ユーザがリモコン190等を用いて、自由に設定できるようにすることが好ましい。
さらに、図7では、固定サービス向けの映像フレームから携帯サービス向けの映像フレームへの切換について説明したが、携帯サービス向けの映像フレームから固定サービス向けの映像フレームへ復帰するための切換処理についても同様な切換処理方法を採用することができる。その場合、切換処理期間B1やブレンド比率を、固定サービスから携帯サービスへの切換と、携帯サービスから固定サービスへの切換とで、個別に自由に設定できるようにすることが好ましい。また、携帯サービスとアナログTV出力との切換処理に関しても同様な切換処理方法を採用することができる。
図8は、本発明に係るデジタルデータ受信機における映像切換制御の他の例を説明するための図である。
図6では、固定サービス向けの映像から携帯サービス向けの映像へ、映像全体を切換えるように制御したが、図8に示す例では、制御部90は、固定サービス向け映像の内、エラーが発生した部分のみを、画素単位で携帯サービス向けの映像と置き換えるように制御を行う。
図8(a)は、エラーが生じた固定サービス向けの映像フレーム800を示している。図中801〜805の部分の画素に対応するマイクロブロックが異常と判断され、映像フレーム800においてグリーンに表示されている。受信状態がさらに悪化すると、映像フレーム全体にエラー箇所が多く発生し、視聴に耐えられないものとなる。そこで、図8の例では、図6(c)に示すサービスの切換開始が指示されると、固定サービス向けの映像フレーム中においてエラーが発生している画素を、携帯サービス向けの映像フレームの該当箇所を用いて置き換えるように処理を行う。
図8(b)に図8(a)に示す映像フレーム800に対応した携帯サービス向けの映像フレーム810を示す。図8(b)では、図8(a)のエラー発生箇所801〜805に対応する箇所を811〜815で示している。
図8(c)は、エラーが発生している映像フレーム800のエラー箇所801〜815を、図8(b)の映像フレーム810のうちの該当箇所811〜815で置き換えた映像フレームを示している。
このように、制御部90は、フレーム単位で、固定サービス向けの映像フレームを携帯サービス向けの映像フレームの該当箇所で置き換えて、良好な映像フレームを生成し、車載表示部180に表示するように制御を行うことができる。制御部は、固定サービス向けの映像フレームおけるエラー箇所を、異常値を示す動きベクトル量から検出することができる。即ち、制御部は、固定サービス向けの映像フレームにおいて、異常値を示す動きベクトル量に対応する画素(例えば、16×16画素)を、対応する携帯サービス向けの映像フレームの該当画素のデータで置き換えるように制御を行う。前述したように、固定サービス向けの映像フレームサイズと、携帯サービス向けの映像フレームサイズと、車載表示部の画像表示領域のサイズは異なっているので、画素の置き換えは、スケーリング処理部81においてサイズを合わせてから行うことが好ましい。
図8の例では、固定サービス向けの映像フレームのエラーが発生した部分を携帯サービスの映像フレームを利用して置き換えるように制御を行ったが、同じ固定サービス向けの映像フレームの内、エラーが発生していない過去の映像フレームを記憶しておき、記憶された映像フレームを用いてエラー発生箇所を置き換えるように制御を行っても良い。
図9は、本発明に係るデジタルデータ受信機における音声切換制御を示す図である。
図9(a)は、第1音声デコーダ51から出力される固定サービス向けの音声データと、第2音声デコーダ52から出力される携帯サービス向けの音声データと、アナログTVチューナ部30から出力されるアナログTVの音声出力と、音声切換処理部70に内蔵されているミュート出力部からのミュート出力との間の切換タイミングの一例を示している。即ち、図中の時刻Aにおいて固定サービスから携帯サービスへの切換が開始され、図中の時刻Jにおいて携帯サービスからアナログTV出力への切換が開始され、図中の時刻KにおいてアナログTV出力からミュート出力への切換が開始され、図中の時刻Lにおいてミュート出力からアナログTV出力への切換が開始され、図中の時刻MにおいてアナログTV出力から携帯サービスへの切換が開始され、図中の時刻Nにおいて携帯サービス出力から固定サービスへの切換が開始される。図9(a)に示す切換タイミングは、制御部90が、図3を用いて説明した受信状態検知信号を用いて判断する。
図9(b)は、各サービス等からの音声データの音声レベルを示した図である。図9(b)に示す音声切換処理は、制御部90が、音声切換処理部70を制御することによって行う。図9(b)に示すように、制御部90は、切換処理が開始される時刻Aまでは、固定サービス向けの音声データを車載スピーカ170から出力するように制御を行っているものとする(901)。
図9(b)に示すように、制御部90は、時刻Aからフェードアウト期間S11の間に固定サービスの音声データの音声レベルを0まで徐々に下げるように制御し(902)、次に、ミュート期間S12の間はミュート出力を行うように制御し(903)、その後フェードイン期間S13の間に携帯サービス向けの音声データの音声レベルを0から所定レベルまで上げるように制御を行う(904)。即ち、切換処理期間S1の間に、固定サービスから携帯サービスへ切換処理を完了する。その後は、携帯サービス向けの音声データを出力する(905)。
また、制御部90は、時刻Jからフェードアウト期間S21の間に携帯サービスの音声データの音声レベルを0まで徐々に下げるように制御し(906)、次に、ミュート期間S22の間はミュート出力を行うように制御し(907)、その後フェードイン期間S23の間にアナログTV出力の音声レベルを0から所定レベルまで上げるように制御を行う(908)。即ち、切換処理期間S2の間に、携帯サービスからアナログTV出力へ切換処理を完了する。その後は、アナログTV出力の音声を出力する(909)。
さらに、制御部90は、時刻Kからフェードアウト期間(=切換処理期間)S3の間にアナログTV出力の音声レベルを0まで徐々に下げるように制御し(910)、次に、ミュート出力を行うように制御する(911)。
さらに、制御部90は、時刻Lからフェードイン期間(=切換処理期間)S4の間にアナログTV出力の音声レベルを0から所定レベルまで徐々に上げるように制御し(912)、その後は、アナログTV出力の音声を出力する(913)。
さらに、制御部90は、時刻Mからフェードアウト期間S51の間に携帯サービスの音声データの音声レベルを0まで徐々に下げるように制御し(914)、次に、ミュート期間S52の間はミュート出力を行うように制御し(915)、その後フェードイン期間S53の間に固定サービスの音声レベルを0から所定レベルまで上げるように制御を行う(916)。即ち、切換処理期間S5の間に、携帯サービスから固定サービスへの切換処理を完了する。その後は、固定サービス向けの音声データを出力する(917)。
図9において、フェードアウト期間S11、S21、S3及びS51とフェードイン期間S13、S23、S4及びS53とを同じ時間間隔に設定したが、各切換処理期間は自由に予め設定すること、又はユーザの好みに応じてリモコン190等からの入力操作に応じて設定を変更できるようにすることが好ましい。同様に、図9において、ミュート期間S12、S22及びS52を、同じ時間間隔に設定したが、各切換処理期間は自由に予め設定すること、又はユーザの好みに応じてリモコン190等からの入力操作に応じて設定を変更できるようにすることが好ましい。
また、切換処理期間S1〜S5、フェードアウト期間S11、S21、S3及びS51、フェードイン期間S13、S23、S4及びS53、及びミュート期間S12、S22及びS52を番組ジャンルに応じて、それぞれ変化させることが好ましい。例えば、スポーツ番組等の番組内容の変化が激しい番組では、切換処理期間S1〜S5を短く(10ms程度)設定し、ニュースやトーク番組等の番組内容の変化が緩やかな番組では、切換処理期間S1〜S5を長く(200ms程度)設定することが好ましい。スポーツ番組等では、瞬時に切換処理を行うことが好ましいが、あまり早く切り替えるとポップ音が発生してしまうため、少なくとも10ms程度の時間間隔を空けることが必要である。即ち、制御部90は、データデコーダ55から受信するEPGデータ等から番組のジャンルの情報を判別し、切換処理期間S1〜S5を変更するように制御を行うことが可能である。勿論、図6を用いて説明した映像切換処理の示される切換時間間隔と同期させて切換処理期間S1〜S5を設定することも可能である。
また、図9の例では、図9(b)に示すように、固定サービス向けの音声データの音声レベルと、携帯サービス向けの音声データの音声レベルと、アナログTV出力の音声レベルが、定常状態では同じレベルになるように設定した。しかしながら、放送局から送信された状態で、各サービス等の間で予め音声レベルの調整はなされていない。したがって、各サービス等の音声レベルを予め測定し、デフォルト値として各サービス等の音声レベルを調整するパラメータを定めておくことが好ましい。音声レベル調整を実施しないと、切換処理後に車載スピーカから出力される音量レベルに差が生じ、ユーザに不快感を与えてしまう。そこで、例えば、予め、携帯サービス向けの音声データの音量レベルを固定サービス向けの音声データの音量レベルに対して−10%、アナログTV出力の音量レベルを固定サービス向けの音声データの音量レベルに対して−15%と設定することが好ましい。さらに、上記の調整値は、チャンネル毎に個別に有することがより好ましい。
さらに、図9のでは、固定サービスの受信状態が悪化した場合、携帯サービスへ切換えるように切換制御を行った。しかしながら、一度に携帯サービスに切換えずに、受信状態が悪化した場合、まずは固定サービス向けの音声データのサンプリングレートを変更するように制御することも可能である。固定サービス向けの音声データのサンプリングレートは48kサンプル/秒(フルサンプリングレート)であり携帯サービス向けの音声データのサンプリングレートは24kサンプル/秒である。したがって、固定サービス向けの音声データを間引き、サンプリングレートを半分の24kサンプル/秒(ハーフサンプリングレート)相当として出力することができる。即ち、受信状態の悪化に応じて、固定サービスのフルサンプリングレート出力から固定サービスのハーフサンプリングレート出力へ切換え、さらに受信状態が悪化した場合に、固定サービスのハーフサンプリングレート出力から携帯サービスに切換えるように制御を行うことが可能である。なお、サンプリングレートの変更は、制御部90からの制御指示に応じて、第1音声デコーダ51又は音声切換処理部70が実施する。
ところで、CDのサンプリングレートは44.1kサンプル/秒であるのに対して、固定サービス向けの音声データのサンプリングレートは48kサンプル/秒であり携帯サービス向けの音声データのサンプリングレートとしては24kサンプル/秒である。したがって、ユーザが、CDプレーヤから本発明に係るデジタルデータ受信機のデジタルTVへ出力を切換えた場合、音質の変化に気づく可能性がある。そこで、すべてのソースの音声データのサンプリングレートをすべて予め定められたサンプリングレートに変更してから車載スピーカ170から出力するように制御を行うことが好ましい。例えば、CD、固定サービス向けの音声データ及携帯サービス向けの音声データのサンプリングレートを32kサンプル/秒に変更することが好ましい。なお、サンプリングレートの変更は、制御部90からの制御指示に応じて、音声切換処理部70が実施する。
さらに、図9では、サービスの切換処理期間にフェードアウト、フェードイン又はミュート期間を設けて、音声データの切換がスムーズに移行されるように制御した。しかしながら、さらに、切換処理期間中の音声出力は、ローパスフィルタを介して車載スピーカ170に出力するように構成することもできる。切換時に発生する可能性のある高音ノイズを除去するためである。なお、サービスの切換処理期間にフェードアウト、フェードイン及びミュート期間を設けずに、各サービス等の間の切換を即時に行い、簡易的に切換処理期間中の音声出力を、ローパスフィルタを介して車載スピーカ170に出力するように構成することもできる。
図10は、図9におけるフェードアウト期間S11での音声レベルの調整方法を示す図である。
図9に示すフェードアウト期間S11では、図10の902のように直線的にフェードアウトするように固定サービス向けの音声データの音声レベルを減少させた。しかしながら、フェードアウト期間における音声レベルの減少率を曲線的に設定することも可能である。曲線的に設定することによって、切換処理期間においてよりスムーズにサービスが切換わる印象をユーザに与えることが可能となる。フェードアウト期間における音声レベルの減少率を曲線的に設定する一つの方法としては、フェードアウトの開始点P1、終了点P2及び中間点P3を設定し、3点を通る3次曲線に応じて、音声レベルの減少率を制御するようにすれば良い。図10に示すように、中間点P3の設定に応じて、減少率を1002又は1003にように設定することができる。また、中間点P3の設定は、ユーザがリモコン190等からの入力操作によって行えるようにすることがさらに好ましい。
図10では、固定サービスから携帯サービスへのフェードアウト期間を例にして説明したが、他のフェードアウト期間及びフェードイン期間も同様に設定することができるようにすることが好ましい。
図11は、図9におけるフェードアウト期間S11での音声レベルの他の調整方法を示す図である。
図9に示すフェードアウト期間S11は、予め固定されていた。しかしながら、フェードアウト期間S11を過去の履歴情報を基に、自動的に変更できるようにすることも可能である。
例えば、固定サービスから携帯サービスへの切換処理におけるフェードアウト期間S11が200msに設定されており、第1音声デコーダが固定サービス向けの音声データを100ms分だけ記憶することできるバッファメモリを有しているものとする。第1音声デコーダ51は、例えば、SレベルD信号(図5(a)参照)によって固定サービスから携帯サービスへの切換が開始された時点からはデコードを行わず、バッファメモリに記憶されている音声データのみを利用してフェードアウト期間における音声データの出力を行うこともできる(その場合は、フェードアウト期間S11は最大でバッファ分の100msとなる)。しかしながら、固定サービスから携帯サービスへの切換が開始された時点では、第1音声デコーダはSレベルD信号の原因となった受信不良のデータより前の時点のデータをデコードしている可能性が高い。そこで、固定サービスから携帯サービスへの切換が開始され後もTSパケットを監視しながらTSパケットのエラーを検出するまではデコードを続け、TSパケットのエラーを検出後からはバッファメモリに記憶されたデータを出力するように制御することができる。
しかしながら、そのような制御をした場合、SレベルD信号(図5(a)参照)によって固定サービスから携帯サービスへの切換が開始された時点からどのくらいまで、データの出力を続けられるかは定かではない。そこで、制御部90は、過去に固定サービスから携帯サービスへの切換が発生した場合毎に、切換開始から固定サービス向けの音声データを出力することができた期間(デコード可能期間:例えば、図5(d)の501の期間)を履歴情報としてROM92等に記憶し、記憶されたデコード可能期間の平均値に、次に発生する切換制御時のフェードアウト期間S11を自動的に合わせるように制御することが好ましい。なお、履歴情報として、デコード可能期間の平均値、最長値及び最短値を記憶することがさらに好ましい。
即ち、第1音声デコーダが100ms分のバッファメモリを有し、当初はフェードアウト期間が200msに設定されていた場合、前述した制御方法によれば、制御部90によって、100ms〜200ms間に自動的にフェードアウト期間S11(図11の1101参照)が設定される。
固定サービスと携帯サービスとの間のデータの同期について、以下に説明する。
固定サービス及び携帯サービスの映像データ及び音声データは、前述したようにばらばらなTSパケットに分割されて受信される。各デコーダ50は、これらのTSパケットからデータを組み立て直して、映像データと音声データとを作成する。固定サービス向け及び携帯サービス向けの映像データと音声データをパケット化する時には、前述したようにPTS(提示時刻情報)がPH(ヘッダ部)に付加される(図2(b)及び(c)参照)。PTSは、音声データについてはスピーカから出力される時刻、映像データについては表示部に表示される時刻を示している。したがって、PTSを利用することによって、固定サービス向けの映像データと音声データとの同期を取ること、及び携帯サービス向けの映像データと音声データとの同期を取ることができる。ところで、PTSは固定サービスと携帯サービスとの同期を保証するものではないが、ほぼ同じ時刻を示している可能性が高い。そこで、本発明に係るデジタルデータ受信機100では、各サービス間の切換処理の場合に、PTSを利用して固定サービスと携帯サービスとの同期を取るように制御した。
例えば、図6(d)において、固定サービス向けの映像フレーム616を構成したデータを含む固定サービス向けのパケットのPHに付加されるPTSと同じPTSが、PHに付加された携帯サービス向けパケットに含まれるデータから携帯サービス向けの映像フレーム651を構成すれば良い。同様に、例えは、図9(b)において、固定サービス向けの音声データ901及び902を構成したデータを含む固定サービス向けのパケットのPHに付加されるPTSと同じPTSが、PHに付加された携帯サービス向けパケットに含まれるデータから携帯サービス向けの音声データ903及び904を構成すれば良い。このように、PTSを利用することによって、固定サービスと携帯サービスとの間での切換処理を行う際に、切換によって映像や音声がずれるのを防止することができる。
前述した例では、PTSを用いて固定サービスと携帯サービスとの間の同期を取ったが、前述したPHに含まれるPCR(プログラム時刻基準値)及びデータが復号化された時に付加されるDTS(復号時刻情報)を利用することもできる。PCR及びDTSも、それらと対応しているデータのシステム上の時刻を示すからである。したがって、PTSと同様に、制御部90は、PCR又はDTSを利用して、固定サービスと携帯サービスとの間での切換処理を行う際に、切換によって映像や音声がずれるのを防止することができる。さらに、PTS、PCR及びDTSの3つの値のズレを平均化し、固定サービス向けのデータと同期されている、携帯サービス向けのデータを特定することも可能である。3つのパラメータを平均化して利用することによって、より正確に同期を取ることが可能となる。
また、前述した例では、PTSを用いて固定サービスと携帯サービスとの間の同期を取ったが、フレーム単位の動きベクトル量を用いて、固定サービス向けの映像フレームと携帯サービス向けの映像フレームとの同期を取ることが可能である。フレーム単位の動きベクトル量は、第1及び第2映像デコーダ53、54において、対象のフレームに含まれるすべてのマクロブロックが有する動きベクトル量の値に基づいて演算により求めることができる。フレーム単位の動きベクトル量が同じである映像フレームは同じ内容のフレームである可能性が高いからである。したがって、制御部90は、フレーム単位の動きベクトル量を利用して、固定サービスと携帯サービスとの間での切換処理を行う際に、切換によって映像フレームがずれるのを防止することができる。
また、動きベクトル量の演算と同様に、相関関数等の演算を利用して同期が取れているデータ同士を検索するように制御することもできる。前述した例ではPTS、PCR及びDTSが同じ値のデータを同期が取れているデータと判断したが、演算によって同期が取れているデータ同士が確定できる場合には、それらのデータ同士のPTS、PCR及びDTSの値が同じになるように、何れかのサービスに係るPTS、PCR及びDTSの値を捏造して付加し直すことも可能である。例えば、動きベクトル量の演算によって固定サービス向けの映像フレームと携帯サービス向けの映像フレームとで同期が取れている映像フレーム間のDTS値のズレが検出できた場合でも、切換処理によって同期合わせを行うためには、固定サービス向けの映像フレームと携帯サービス向けの映像フレームとをそれぞれ所定量バッファメモリに記憶させて置く必要がある。それに対して、デコーダ部50においてDTS値を捏造して同期がされている映像フレーム間では固定サービスと携帯サービスとで同じDTS値を有するように予め設定しておけば、固定サービス向けの映像フレームと携帯サービス向けの映像フレームを記憶するためのバッファメモリ量を非常に小さくすることができる。
図12に、HDD60を利用した表示制御フローを示す。
前述した、固定サービス、携帯サービス及びアナログTV出力間のデータの切換処理は、各デコーダ51〜54、音声切換処理部70、映像切換処理部80及び描画処理部82等に適切な容量のバッファメモリを設けることによって対応することができる。したがって、HDD60は必ずしも必要ではない。しかしながら、各デコーダ51〜54からのデータ出力を一旦HDDに記憶させ、記憶されたデータを表示させることによって、より快適な表示制御を行うことができる。
最初に、制御部90は、各デコーダ51〜54からのデータをHDD60に一時記憶させる(S1201)。
次に、制御部90は、図5に示したようなサービス切換情報をHDD60に記憶する(S1202)。
次に、制御部90は、S1202で記憶されたサービス切換情報に基づいて、図4に示したフロー従い、S1201で一時記憶されたデータの中から、最適なサービスを選択する。さらに、選択されたデータのみを組み合わせて映像データ及び音声データ毎に合成データを作成する(S1203)。
次に、制御部90は、S1203で作成された音声データを車載スピーカ170へ、映像データを車載表示部180へ出力するように所定の制御を行う。
車載スピーカ170及び車載表示部180へ出力されるデータは、HDD60に一時記憶され、合成処理される期間分だけ、実際の受信時間より送れることとなる。しかしながら、S1201において一時記憶された固定サービス、携帯サービス及びアナログTV出力を全て利用して、前述したような図6に示した映像切換処理や図9に示した音声切換処理を行うことができるので、最適な音声及び映像データを得ることが可能となる。
図13に、HDD60を利用した録画制御フローを示す。
HDD60を有することによって、例えば、デジタルデータ受信機100に対して、リモコン190等を利用した操作入力によって、朝の出勤時にTVの録画予約を行うと、装置が昼の間にTV録画と所定の処理を行い、夜の帰宅時には完全なTV録画データを保存されているようにすることが可能となる。
最初、制御部90は、ユーザからのリモコン等を利用した操作入力による録画予約を受け付ける(S1301)。
次に、制御部90は、録画予約にしたがって、受信部10及び20の同調を行い、録画予約された録画時間分だけ、各デコーダ51〜54からのデータをHDD60に記憶する(S1302)。
次に、制御部90は、図5に示したようなサービス切換状態をHDD60に記憶する(S1303)。
次に、制御部90は、S1303で記憶されたサービス切換情報に基づいて、図4に示したフロー従い、S1302で記憶されたデータの中から、最適なサービスを選択する。さらに、選択されたデータのみを組み合わせて映像データ及び音声データ毎に合成データを作成する(S1304)。
次に、制御部90は、S1304で作成された合成データをHDD60に保存し(S1305)、S1301で記憶したデータを消去する(S1306)。
HDD60に保存される合成データの合成には、リアルタイム性が必要なく、記憶された固定サービス、携帯サービス及びアナログTV出力を全て利用して、前述したような図6に示した映像切換処理や図9に示した音声切換処理を行うことができるので、最適な音声及び映像データを得ることが可能となる。
図13のフローでは、合成データを作成して保存することとしたが、録画予約された録画時間に対応する固定サービス、携帯サービス及びアナログTV出力を全てHDD60に保存しておき、再生時に各サービス間での切換処理を行いながら、映像データと音声データを出力するように制御しても良い。
また、図12及び図13のフローにおいて、固定サービス、携帯サービス及びアナログTV出力をHDD60に記憶する際に、固定サービスと携帯サービスとの同期を検出し、同期が取れているデータが記憶されるHDD中のアドレスの偏移量を記憶するように制御することができる。そのように制御を行うことによって、再生時や表示を行う際に、同期を合わせる処理が軽減される。
図14は、ネットワークフォロー制御を説明するための図である。
日本の地上波デジタル放送では、想定されるチャンネルの内、どのチャンネルが同じ内容の放送を行っているかを示すネットワークフォロー情報がデータ放送中のデータとして送信される。したがって、制御部90は、ネットワークフォロー情報を受信して、最適な受信環境を構築するように制御を行うことができる。
図14において、第1の放送局1400(例えば、チャンネル20)と第2の放送局1420(例えば、チャンネル40)がある時点で同じ番組を放送しているものとする。領域1401は、チャンネル20に関する固定サービスと携帯サービスとを同時に受信可能な領域であり、領域1402はチャンネル20に関する携帯サービスのみを受信可能な領域である。また、領域1421は、チャンネル40に関する固定サービスと携帯サービスとを同時に受信可能な領域であり、領域1422はチャンネル40に関する携帯サービスのみを受信可能な領域である。さらに、領域1410は、チャンネル20に関する携帯サービスとチャンネル20に関する携帯サービスを同時に受信可能な領域である。
今、本発明に係るデジタルデータ受信機100を搭載した車両が領域1401から領域1421へ移動するとした場合、領域1401においては第1及び第2の受信部10、20をチャンネル20に同調させ、チャンネル20に関する固定サービスと携帯サービスととの間で前述したように切換処理を行い、最良な映像及び音声を前述したように出力することができる。しかしながら、領域1410では、チャンネル20に同調させればチャンネル20に関する携帯サービスのみの受信となり、チャンネル40に同調させればチャンネル40に関する携帯サービスのみの受信となってしまう。
そこで、本発明に係るデジタルデータ受信機100では、領域1410に車両が存在する場合、チャンネル20に関する携帯サービスとチャンネル40に関する携帯サービスを同時に受信できるように制御を行う。
ここで、ナビゲーション装置150には、各チャンネルに対応した固定サービス及び携帯サービスの両方が受信可能な領域と、携帯サービスのみが受信可能な領域とを示すネットワークフォロー地図情報が予め作成されて記憶されているものとする。したがって、制御部90は、車両の現在位置情報、ネットワークフォロー地図情報、及びネットワークフォロー情報に基づいて、複数のチャンネルから同じ番組のデータを受信できる領域に車両が存在するか否かを判別することができる。
制御部90は、車両の現在位置情報、ネットワークフォロー地図情報、及びネットワークフォロー情報に基づいて、車両が領域1410に存在すると判断した場合、ダイバーシティー方式を解除し、マスター受信部10をチャンネル20へ同調させ、スレーブ受信部20をチャンネル40に同調させる。また、合成部40によるスペクトラム合成を停止させる。さらに、チャンネル20に関する携帯サービス向けの音声データに関するTSパケットを第1音声デコーダ51へ、チャンネル20に関する携帯サービス向けの映像データに関するTSパケットを第1映像デコーダ53へ、チャンネル40に関する携帯サービス向けの音声データに関するTSパケットを第2音声デコーダ52へ、チャンネル40に関する携帯サービス向けの映像データに関するTSパケットを第2映像デコーダ54へそれぞれ振り分けるように多重分離部41を制御する。さらに、制御部90は、前述したような状態検知信号を利用して、チャンネル20に関する携帯サービスとチャンネル40に関する携帯サービスのうち、良好に受信できるデータに切換処理を行い、車載スピーカ170及び車載表示部180から出力させることができる。
チャンネル20に関する携帯サービスとチャンネル40に関する携帯サービスとの切換処理についても、前述したような図6に示した映像切換処理や図9に示した音声切換処理をそのまま適用することができるので、最適な音声及び映像データを得ることが可能となる。
図14では、車両がチャンネル20に関する携帯サービスとチャンネル40に関する携帯サービスを両方受信することができる領域に存在する場合について記載した。しかしながら、放送局の位置等によっては、チャンネル20に関する固定サービス及び携帯サービスと、チャンネル40に関する固定サービス及び携帯サービスとを全て受信することができる領域に車両が存在する可能性がある。そのような場合には、チャンネル20に関する固定サービスと、チャンネル40に関する固定サービスとを受信して切換制御を行うように制御しても良いし、4つの受信部を有して4種類のデータを受信し、最適なデータを出力できるように切換制御を行うようにしても良い。
図15は、本発明に係わる他のデジタルデータ受信機102の概要を示すブロック図である。
図15に示すデジタルデータ受信機102と図1に示すデジタルデータ受信機100との差異は、図15に示すデジタルデータ受信機102がアナログチューナ部30及び音声切換処理部70を有しておらず、1つの音声デコーダ56のみを有する点であり、他は同様である。即ち、図15に示すデジタルデータ受信機102は、図1に示す装置を簡易化したものである。
図15に示すデジタルデータ受信機102では、音声データは常に携帯サービス向けの音声データを出力するように構成している。これは、映像データに比べて音声データでは、固定サービスと携帯サービスとで大きな差がないためである。したがって、音声データに関しては、固定サービスと携帯サービス間での切換制御を行わない。
これに対して、図15に示すデジタルデータ受信機102では、映像データに関しては、固定サービスと携帯サービス間での切換制御を行う。固定サービスと携帯サービス間での切換制御については、図1に示すデジタルデータ受信機に関して説明したものと同様である。なお、アナログチューナ部30を有していないことから、アナログTV出力の映像への切換も無いので、携帯サービス向けの映像データの受信状況が悪化した場合には、フリーズ画面を出力することとなる。
図16は、図15に示した本発明に係るデジタルデータ受信機における固定サービス及び携帯サービスとの切換処理フローの一例を示す図である。
図16に示す処理フローにおける切換は、映像及び音声を同時期に行うものとするが、個別に切換制御を行うことも可能である。また、切換条件については、図1に示すデジタルデーや受信機に関して図6及び図9を用いて説明したものと同様である。図16に示す処理フローは、主に、デジタルデータ受信機102の制御部90が、予めインストールされたプログラムに従い、デジタルデータ受信機102の各要素と連携して実行する。また、デーデジタルデータ受信機102は、電源がONされ、各種機能が動作可能な状況であるものとする。また、マスター受信部10及びスレーブ受信部20は同じチャンネルに同調されているものとする。
制御部90は、現時点がサイマル放送であるか否かの判断を行う(S1601)。
S1601において、サイマル放送であると判断された場合には、制御部90は、現在出力しているデータが固定サービス向けの映像及び音声なのか否かの判断を行う(S1602)。
S1602において、固定サービスであると判断された場合には、固定サービス向けの映像及び音声が良好に受信されているか否かの判断を行い(S1603)、良好であると判断された場合には、制御部90は、固定サービス向けの映像及び音声を出力するように、音声切換処理部70及び映像切換処理部80を制御する(S1607)。
S1603において、固定サービスが良好に受信されていないと判断された場合には、携帯サービス向けの映像及び音声が良好に受信されているか否かの判断を行い(S1604)、良好であると判断された場合には、制御部90は、携帯サービス向けの映像及び音声を出力するように、音声切換処理部70及び映像切換処理部80を制御する(S1608)。
S1604において、携帯サービスが良好に受信されていないと判断された場合には、制御部90は、ミュート出力(無音)を車載スピーカ170から出力するように音声切換処理部70を制御し、フリーズ画像(静止画像)を車載表示部180に表示するように映像切換処理部80を制御する(S1609)。
フリーズ画像は、デジタルデータ受信機100の場合と同様に、固定サービス向けの映像フレーム又は携帯サービス向けの映像フレームから作成しても良いし、予めROM92等に記憶させておいたデータを利用しても良い。
S1602において、固定サービスでないと判断された場合には、現在出力しているデータは携帯サービスであるので、固定サービスに復帰する程度に、固定サービス向けの映像及び音声が良好に受信されているか否かの判断を行い(S1605)、良好であると判断された場合には、制御部90は、固定サービス向けの映像及び音声を出力するように、音声切換処理部70及び映像切換処理部80を制御する(S1607)。
S1605において、固定サービスに復帰できる程度に良好に受信されていないと判断された場合には、S1604に進み、S1604以下のステップを繰り返す。
S1601において、サイマル放送でないと判断された場合には、制御部90は、(サイマル放送でない場合には自動的に固定サービスが選択されるので)固定サービス向けの映像及び音声が良好に受信されているか否かの判断を行い(S1606)、良好であると判断された場合には、制御部90は、固定サービス向けの映像及び音声を出力するように、音声切換処理部70及び映像切換処理部80を制御する(S1607)。
S1606において、固定サービスが良好に受信されていないと判断された場合には、制御部90は、ミュート出力(無音)を車載スピーカ170から出力するように音声切換処理部70を制御し、フリーズ画像(静止画像)を車載表示部180に表示するように映像切換処理部80を制御する(S1609)。
このように、制御部90は、例えば、図16の処理フローに従って、固定サービス及び携帯サービスを切り換えて、車載スピーカ170及び車載表示部180から出力させる。
以上、本発明を車載用のデジタルデータ受信機100及び102を例として説明したが、本発明に係るデジタルデータ受信機は携帯用のTVや車以外の移動手段に搭載されるTV等にも適用することが可能である。