JP2006262835A - コーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法 - Google Patents
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Abstract
作業工程の煩雑化やコスト増加を招くことなく、コーヒー焙煎豆の水蒸気処理における装置内の各部位での焙煎度のばらつきを低減することにより、一定の香味品質を有する水蒸気処理コーヒー焙煎豆を安定して製造するための、水蒸気処理方法を提供する。
【解決手段】
コーヒー焙煎豆を充填した装置に、コーヒー焙煎豆の焙煎度を進行させるために必要な温度より低温の水蒸気による通気を、装置内に生じた凝縮水が当該装置外に排出されるまで行ない、しかる後、コーヒー焙煎豆の焙煎度を進行させるのに十分な温度を得るまで、装置に導入する水蒸気の温度を上昇させる。
【選択図】 なし
Description
本発明のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法は:
(1) コーヒー焙煎豆を充填した装置に、コーヒー焙煎豆の焙煎度を進行させるために必要な温度より低温の水蒸気を連続通気させ、水蒸気の通気開始の初期に生じた凝縮水の大部分が当該装置外に排出される「変異点」まで行う工程、および、
(2) 上記工程に引き続いて、コーヒー焙煎豆の焙煎度を進行させるための目標温度(例え160℃以上)を得るまで、装置に導入する水蒸気の温度を上昇させる工程、および
必要なら目標温度での水蒸気の連続通気を一定時間保持する工程、
からなることを特徴とする。
(1) コーヒー焙煎豆
本発明において水蒸気処理を行う焙煎豆とは、コーヒーで一般に言われる焙煎、すなわち、コーヒー生豆に熱源をあてて煎ったコーヒー豆を言う。一般に、焙煎の変化は、生豆の細胞壁が熱を受け、徐々に水性成分が蒸発し、組織が収縮するものとされており、生豆は焙煎されることによって初めて黒褐色となり、特有の香りと苦味や酸味を生じて飲用コーヒー豆になる。コーヒー焙煎豆を得るための焙煎機、焙煎方法、焙煎度は特に限定されず、通常のものを用いることができる。例えば、焙煎機は、一般的な焙煎機{水平(横)ドラム型焙煎機}を用いることができ、また、焙煎方法は、加熱方法で分類すると、直火、熱風、遠赤外線、マイクロウェーブなどを用いることができ、また、焙煎度は、米国方式の8段階の呼称で、ライトロースト、シナモンロースト、ミディアムロースト、ハイロースト、シティロースト、フルシティロースト、フレンチロースト、イタリアンローストのいずれであっても用いることができる。なお、焙煎は、水蒸気処理のみで行うことも可能であり、その場合には本明細書でいうコーヒー焙煎豆には、生のコーヒー豆も含まれる。
(2) 変異点の検知または予測
本発明によれば、変異点到達前に装置に供給する水蒸気の温度は、160℃以下でなければならず、好ましくは150℃以下、より好ましくは約130℃である。変異点後においては、供給する水蒸気の温度を目標温度またはそれ以上に高め、昇温速度を変異点前よりも高く設定し、および/または流量を増加させるなど、迅速に装置内が目的温度条件に到達するようにする。
変異点の検知
変異点を検知する手段として、本発明者らは、本装置内の凝縮水が排出し終わると、装置に付属した水蒸気入口及び出口各々の装置内部温度がほぼ同様に推移するようになることに着眼した。そこで、装置内のコーヒー焙煎豆に供給する水蒸気を焙煎度を進行させるための目標温度(例えば160℃)より低い温度(例えば150℃)で開始し、開始時と同一温度のままでまたは目標温度を超えない温度まで徐々に温度を高めながら水蒸気の通気を行うが、その際、装置の水蒸気入口付近と出口付近の温度が10℃以内、好ましくは5℃以内という温度差になるよう、水蒸気出口温度を被制御変数として供給する水蒸気に対するフィードバック制御を行う。この場合、制御される変数は特に限定されないが、水蒸気出口弁の開度や、水蒸気入口弁の開度の制御により、装置に供給する水蒸気の温度、圧力および/または速度を調節することができる。
変異点の予測
一方、変異点を予測する手段は、150℃以下の温度での水蒸気の通気を一定時間保持した時点を凝縮水排出の変異点、すなわち、凝縮水がほぼ全量排出された時点と予測し、その後は迅速に160℃以上の一定の温度条件まで到達させることからなる。この場合においては、出口温度を用いてフィードバック制御系を構築する必要はないが、変異点(150℃以下に保持する時間)の設定は、試行錯誤で定める。例えば、同じ型の装置の入り口部と出口部の水蒸気温度の測定を可能としておき、同一量のコーヒー焙煎豆を充填し150℃以下の水蒸気の通気を連続して行ったとき、入り口部と出口部の蒸気温度の差が10℃以内、好ましくは5℃以内になるまでの時間を予め調べれば、変異点の予測が可能である。
(3) 水蒸気の通気
水蒸気を通気する基本構造としては、水蒸気供給路および水蒸気排出路を設けた豆収容部に、コーヒー焙煎豆を収容して、大気圧よりも高い出口圧力で前記水蒸気排出路から水蒸気が排出されるように、前記水蒸気供給路から前記水蒸気排出路に水蒸気を流通させる。
変異点の前
変異点の前における水蒸気の通気は、通気温度がコーヒー焙煎豆の焙煎度進行の目標温度を超えてはならない点で変異点の後における通気と異なるが、本明細書で特に言及していない一般的条件は変異点後の通気の場合と同様でよい。
変異点の後
本発明においては、連続的水蒸気処理により、効率よく酸味成分を除去できる。この効果は、主として変異点の後の水蒸気の連続的通気により達成される。目標温度での水蒸気の連続通気は一定時間(1秒〜1時間)保持することが好ましい。1秒以下の場合は十分に焙煎がなされないためで、1時間以内というのは焙煎が進みすぎてしまうことを避けるためである。また、この時間は、目標の焙煎度および水蒸気温度に応じて適宜設定する。例えば、焙煎度(L値)23の値の焙煎豆を焙煎度19の値にする場合には、190℃で約4分ほど保持する。
(5) この様にして、本発明の水蒸気通気処理により、酸味成分が除去され、かつ焙煎度においてもばらつきの低減された、一定の良好な香味品質を有する水蒸気処理コーヒー焙煎豆は、冷却、乾燥(真空乾燥、熱風乾燥など)を行った後、常法によって、サイロなどに保管することができ、或いは、直ちにインスタントコーヒーや液体コーヒーエキスなどに調製してもよい。
(6) 装置
本発明は水蒸気処理におけるコーヒー焙煎豆の進行する焙煎度が、水蒸気通気装置の各部位、特に装置に付属した水蒸気入口付近と出口付近との間におけるばらつき生じることを抑制するための手段として、凝縮水を装置外にほぼ全量排出する水蒸気通気方法を提供したが、その方法を実施する具体的手段としては、変異点の検知と予測の2つの手段を講じたものである。
〔実施例1〕
全粒のコーヒー焙煎豆を、高温・高圧下において、水蒸気を通気し、コーヒー焙煎豆の水蒸気処理および水熱反応を同時に行った。
〔実施例2〕
続いて、本発明による水蒸気通気方法を用いた水蒸気処理実験を実施した。本実験では、検知する手段の水蒸気通気方法を用いた。具体的には、昇温工程において、水蒸気出口温度を被制御変数として水蒸気出口弁の開度を制御し、水蒸気入口温度が160℃以上になる前に、水蒸気入口温度と出口温度の間隔が10℃以下になるようフィードバック制御を行い、10℃以下になった時点を変異点とし、後は迅速に1.3MPa(194℃)に到達させるという水蒸気通気方法を用い、それ以外は全て実施例1と同条件で実施し、本処理豆1を得た。
〔実施例3〕
続いて、本発明による水蒸気通気方法を用いた水蒸気処理実験を実施した。本実験では、予測する手段の水蒸気通気方法を用いた。具体的には、昇温工程において、装置内圧力を3分で0.5MPa(155℃)まで到達させ、その時点を凝縮水がほぼ全量排出されたと予測する変異点として、続いて2分で0.5MPaから1.3MPa(194℃)に到達させるという通気方法を用い、それ以外は全て実施例1と同条件で実施し、本処理豆2を得た。
〔実施例4〕
以上の実施例で得られた、対照豆1、対照豆2、本処理豆1、及び本処理豆2のそれぞれの水蒸気処理豆における焙煎度のばらつきを評価した。具体的には、各豆において、水蒸気入口付近、中位、及び出口付近の3部位よりサンプリングを行い、それぞれ「入」「中」「出」とラベリングした。また、焙煎度の評価方法としてL値を測定し、各部位のL値のばらつきを調べた。
Claims (21)
- コーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法において、
(1) コーヒー焙煎豆を充填した装置に、所定の焙煎度を得るための目標温度より低温の水蒸気を連続通気させ、当該水蒸気の通気の開始によって発生した凝縮水が装置外に排出されるまで、その通気を継続する工程と、
(2) 工程(1) に引き続いて、装置内が上記目標温度に達するまで、装置に供給する水蒸気の温度を上昇させる工程と、
を設けたことを特徴とするコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。 - 目標温度が160℃またはそれを超える温度である、請求項1記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
- さらに、(3) 装置内の温度が160℃を超えている時間を一定時間ほぼ連続して保持する工程を含んでなることを特徴とする請求項1又は2記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
- 160℃を超えている時間を1秒〜1時間保持する、請求項3記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
- コーヒー焙煎豆を充填した装置内、該装置の水蒸気入り口部付近、および該装置の水蒸気出口付近の少なくとも2箇所に温度測定部を設け、2箇所の測定部の温度差を算出し、当該温度差が所定範囲内になったときに、(1) から(2) の工程へ移行することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
- 温度測定部が装置の水蒸気の入口部付近と出口部付近であって、当該測定部の温度差が10℃以内となった時点で(1) から(2) の工程へ移行することを特徴とする請求項5記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
- 温度測定部が当該装置の水蒸気の入口部と出口部であって、当該測定部の温度差が5℃以内となった時点で(1) から(2) の工程へ移行することを特徴とする請求項5記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
- (1) の工程において、水蒸気出口部温度を被制御変数として、供給する水蒸気に関するフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項6または7記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
- (1) から(2) の工程へ移行する時点が、(1) の工程を行う個々の条件に応じて凝縮水が排出されたと推定した時点であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
- (1) の工程を行う条件が、150℃以下の水蒸気の通気であることを特徴する請求項9記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
- 凝縮水が排出されたと推定した時点は、入り口部と出口部の水蒸気温度の測定が可能な同じ装置に同一量のコーヒー焙煎豆を充填して(1) の工程を行い、入り口部と出口部の蒸気温度の差が10℃以内、好ましくは5℃以内になるまでの時間を調べることにより推定した時点である、請求項9または10記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
- コーヒー焙煎豆を充填した装置に水蒸気を供給して水蒸気処理を行うコーヒー焙煎豆の処理方法において、前記水蒸気の温度が160℃を超えている時間を一定時間ほぼ連続して保持することを特徴とするコーヒー焙煎豆の処理方法。
- 160℃を超えている時間を1秒〜1時間保持する、請求項12記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
- コーヒー焙煎豆を充填した装置に水蒸気を供給して水蒸気処理を行うコーヒー焙煎豆の処理方法において、水蒸気の流路内の少なくとも2箇所に温度測定部を設け、測定部の温度の差を算出し、当該温度差が所定範囲内になったときに、供給される水蒸気の温度が160℃を超えるように制御することを特徴とするコーヒー焙煎豆の処理方法。
- コーヒー焙煎豆を充填した装置に水蒸気を供給して水蒸気処理を行うコーヒー焙煎豆の処理方法において、水蒸気の流路内の少なくとも2箇所に温度測定部を設け、測定部の温度の差を算出し、当該温度差が所定範囲内になったときに、供給される水蒸気の温度が160℃を超えるように制御し、当該水蒸気の温度が160℃を超えている時間を一定時間ほぼ連続して保持することを特徴とするコーヒー焙煎豆の処理方法。
- 160℃を超えている時間を1秒〜1時間保持する、請求項15記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
- 測定底部の温度差が10℃以内であることを特徴とする請求項14ないし16のいずれか1項に記載のコーヒー焙煎豆の処理方法。
- 前記所定温度差が5℃以内であることを特徴とする請求項14ないし16のいずれか1項に記載のコーヒー焙煎豆の処理方法。
- コーヒー焙煎豆を充填した装置に水蒸気を供給して水蒸気処理を行うコーヒー焙煎豆の処理方法において、当該装置内の水蒸気流路の少なくとも1箇所に温度測定部を設け、全ての測定部の温度が150℃を越えないよう一定時間保持したのちに、供給される水蒸気の温度が160℃を超えるように制御することを特徴とする請求項12ないし16のいずれか1項記載のコーヒー焙煎豆の処理方法。
- 請求項1〜19のいずれかに記載の水蒸気処理方法によって得られた、水蒸気処理コーヒー焙煎豆。
- 請求項20に記載の水蒸気処理コーヒー焙煎豆を用いることを特徴とする、コーヒー飲料。
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