JP2006262835A - コーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法 - Google Patents

コーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
作業工程の煩雑化やコスト増加を招くことなく、コーヒー焙煎豆の水蒸気処理における装置内の各部位での焙煎度のばらつきを低減することにより、一定の香味品質を有する水蒸気処理コーヒー焙煎豆を安定して製造するための、水蒸気処理方法を提供する。
【解決手段】
コーヒー焙煎豆を充填した装置に、コーヒー焙煎豆の焙煎度を進行させるために必要な温度より低温の水蒸気による通気を、装置内に生じた凝縮水が当該装置外に排出されるまで行ない、しかる後、コーヒー焙煎豆の焙煎度を進行させるのに十分な温度を得るまで、装置に導入する水蒸気の温度を上昇させる。
【選択図】 なし

Description

本発明はコーヒー焙煎豆に水蒸気を連続して通気接触する焙煎豆の処理技術に関する。より詳しくは、水蒸気処理における装置内各部位での焙煎度のばらつきを低減し、処理豆を安定して製造するための技術に関する。
従来、コーヒー焙煎豆に高温高圧条件下において水蒸気を連続して通気接触させて、豆の臭み成分や酸味の低減を行う技術が知られている(特許出願PCT/JP2004/010653)。これは、水蒸気入口配管及び出口配管の付いた容器に充填されたコーヒー焙煎豆に水蒸気を連続して通気接触することで、臭み成分や酸味成分を除去するとともに、抽出率の向上を図るものである。また、水蒸気との接触には、コーヒー焙煎豆の焙煎度を進行させる狙いもある。しかしながら、充填されたコーヒー焙煎豆に水蒸気を連続して通気接触させると、コーヒー焙煎豆が充填されている装置内の水蒸気入口部分の温度と水蒸気出口部分の温度に差が生じるため、入口部分と出口部分とで焙煎度が異なってしまうという問題が生じた。
この問題を具体的に詳述すると、例えば、コーヒー焙煎豆に水蒸気を連続通気させた初期段階においては、充填されている豆と水蒸気が接触したときに水蒸気は豆の温度に影響を受け、豆の温度が低い場合には水蒸気が水に変態し凝縮水として焙煎豆に接触することになり、装置出口付近では凝縮水が焙煎豆に連続接触することとなる。これにより、出口付近の焙煎豆は入口付近の焙煎豆に比して焙煎度が低下し、入口付近の焙煎豆と出口付近の焙煎豆とでは香味品質上のばらつきが生じ、一定の香味品質を保つことが困難であった。
これらの問題を解決するためには、焙煎豆を装置に充填する前に余熱工程を行うことが考えられるが、工数が増加することに加え温度管理が複雑になり、作業工程の煩雑化を招いていた。また、充填されている装置に外部より加熱する手段も考えられるが、特別な装置が必要となり、コスト増加を招いていた。
PCT/JP2004/010653
本発明の目的は、作業工程の煩雑化やコスト増加を招くことなく、コーヒー焙煎豆の水蒸気処理における装置内の各部位の焙煎度のばらつきを低減することにより、一定の香味品質を有する水蒸気処理コーヒー焙煎豆を安定して製造するための、水蒸気処理方法を提供することである。
上記課題を解決するべく、本発明者が鋭意研究を重ねた結果、まず、水蒸気を連続通気接触させる方法においては、その目的とする豆の臭み成分の除去と酸味成分の低減ならびに抽出率の向上を図るためには、一定の温度条件である一定期間連続に保たれていることがコーヒー焙煎豆中の成分の分解反応を促すべく非常に重要な要件であるとともに、水蒸気による焙煎の度合いを調整するには約160℃以上の一定(すなわち、変動が少ない)温度条件のもとで、一定時間(1秒〜1時間)コーヒー焙煎豆を保持するという要件が重要であることがわかった。
そこで、本発明者らは、さらに研究をおし進め、これら両方の要件を満たすために、先ず、コーヒー焙煎豆の焙煎度を進行させるための必要温度(約160℃以上)より低い温度(好ましくは約150℃以下)で水蒸気の通気を開始し、装置内に発生した凝縮水のほぼ全量が排出される時点(本明細書中で、「変異点」という)まで160℃(好ましくは150℃)を超えない温度の連続水蒸気通気を行い、該変異点に到達した後に、迅速に、焙煎度を進行させるために必要な温度帯にてコーヒー焙煎豆に水蒸気を連続通気させることにより、水蒸気入口付近と出口付近における水蒸気処理によるコーヒー焙煎豆の焙煎度の進行のばらつきを低減させうることを見出した。
本発明で採用した水蒸気通気方法の第1の特徴構成は、160℃以上の温度条件にて水蒸気処理を行う点にある。水蒸気を連続通気接触させる方法においては、その目的とする豆の臭み成分の除去と酸味成分の低減ならびに抽出率の向上を図るには、一定の温度条件がある一定期間連続に保たれていることが非常に重要であるが、水蒸気による焙煎の度合いは、特に160℃以上の温度帯にて保持することにより、著しく向上するのである。
また、本発明が採用した水蒸気通気方法の第2の特徴的構成は、水蒸気通気により、(1)凝縮水を装置外に排出する工程と、(2)迅速に160℃以上の一定の温度条件まで到達させる工程との間を変異点として定め、凝縮水がほぼ全量装置措置に排出された変異点後に工程(2) において160℃以上の水蒸気によるコーヒー焙煎豆の焙煎度の進行を装置内の全ての部分でむらなく行わせることである。
凝縮水排出の変異点に到達したことは、検知あるいは予測のいずれかまたは双方にて求めることができる。変異点の検知方法および予測方法は後に詳述する。
本発明の水蒸気通気方法を用いた水蒸気処理コーヒー焙煎豆は、作業工程の煩雑化やコスト増加を招くことなく凝縮水を効率よく系外に除去することにより、豆の臭み成分の除去と酸味成分の低減ならびに抽出率の向上が為されるのみならず、焙煎度において装置内のばらつきが低減された、非常に安定した香味品質を有するものとなっている。すなわち、酸味が少なく、コクがあって香気の十分な、そして、装置部位に依存せず常にその品質が一定した、コーヒー飲料を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法は:
(1) コーヒー焙煎豆を充填した装置に、コーヒー焙煎豆の焙煎度を進行させるために必要な温度より低温の水蒸気を連続通気させ、水蒸気の通気開始の初期に生じた凝縮水の大部分が当該装置外に排出される「変異点」まで行う工程、および、
(2) 上記工程に引き続いて、コーヒー焙煎豆の焙煎度を進行させるための目標温度(例え160℃以上)を得るまで、装置に導入する水蒸気の温度を上昇させる工程、および
必要なら目標温度での水蒸気の連続通気を一定時間保持する工程、
からなることを特徴とする。
すなわち、本発明は、変異点の前後で水蒸気の供給様式を変更して、最適の条件でコーヒー焙煎豆を水蒸気処理することにより、水蒸気処理の目的とする豆の臭み成分の除去と酸味成分の低減ならびに抽出率の向上を図るのみならず、焙煎度においても、装置内のどの部位においてもばらつきの低減された、一定香味品質の水蒸気処理コーヒー焙煎豆を得ようとするものである。
(1) コーヒー焙煎豆
本発明において水蒸気処理を行う焙煎豆とは、コーヒーで一般に言われる焙煎、すなわち、コーヒー生豆に熱源をあてて煎ったコーヒー豆を言う。一般に、焙煎の変化は、生豆の細胞壁が熱を受け、徐々に水性成分が蒸発し、組織が収縮するものとされており、生豆は焙煎されることによって初めて黒褐色となり、特有の香りと苦味や酸味を生じて飲用コーヒー豆になる。コーヒー焙煎豆を得るための焙煎機、焙煎方法、焙煎度は特に限定されず、通常のものを用いることができる。例えば、焙煎機は、一般的な焙煎機{水平(横)ドラム型焙煎機}を用いることができ、また、焙煎方法は、加熱方法で分類すると、直火、熱風、遠赤外線、マイクロウェーブなどを用いることができ、また、焙煎度は、米国方式の8段階の呼称で、ライトロースト、シナモンロースト、ミディアムロースト、ハイロースト、シティロースト、フルシティロースト、フレンチロースト、イタリアンローストのいずれであっても用いることができる。なお、焙煎は、水蒸気処理のみで行うことも可能であり、その場合には本明細書でいうコーヒー焙煎豆には、生のコーヒー豆も含まれる。
本発明の方法によれば、水蒸気処理で、コーヒー焙煎豆の酸味の低減が図れることから、酸味の低減の必要な焙煎豆を好適に用いることができる。酸味の低減の必要な焙煎豆としては、例えば、焙煎度の高い豆や、高圧処理などを施して抽出率を向上させた焙煎豆などが挙げられる。抽出率を向上させた焙煎豆は多くの場合、酸味の向上が大きな課題であったことから、本発明は、例えば、抽出率を20%以上とした焙煎豆に対しても好適に用いることができる。従って、本発明の技術は、コーヒー豆の抽出率を向上させる種々の技術と組み合わせて用いることができる。
コーヒー豆の具体的品種としては、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種などを用いることができ、特にアラビカ種、ロブスタ種を好適に用いることができる。本発明は、特に酸味の強い品種に対して好適に用いることができ、酸味とともに不快臭を除けることから、不快臭のある品種、例えば、ロブスタ種に対しても好適に用いることができる。
コーヒー焙煎豆の粒度は、連続的な水蒸気処理によるコーヒー可溶性固形分の流失を抑えるため、全粒または粉砕程度の弱いものが好ましい。特に、焙煎豆の酸味成分は焙煎効果を強く受けた豆の表層近くに多く存在することから、連続的な水蒸気処理によるコーヒー可溶性固形分の流失を最も受けにくい形状である、実質的に全粒(未粉砕)の焙煎豆を好適に用いることができる。ただし、連続的な水蒸気処理によるコーヒー可溶性固形分の流失が許容される範囲で、粉砕品(極荒挽など)を用いてもよい。

(2) 変異点の検知または予測
本発明によれば、変異点到達前に装置に供給する水蒸気の温度は、160℃以下でなければならず、好ましくは150℃以下、より好ましくは約130℃である。変異点後においては、供給する水蒸気の温度を目標温度またはそれ以上に高め、昇温速度を変異点前よりも高く設定し、および/または流量を増加させるなど、迅速に装置内が目的温度条件に到達するようにする。
変異点に達したか否かの判断は、検知及び予測の2つの異なる手段のいずれかまたは双方により行うことができる。
変異点の検知
変異点を検知する手段として、本発明者らは、本装置内の凝縮水が排出し終わると、装置に付属した水蒸気入口及び出口各々の装置内部温度がほぼ同様に推移するようになることに着眼した。そこで、装置内のコーヒー焙煎豆に供給する水蒸気を焙煎度を進行させるための目標温度(例えば160℃)より低い温度(例えば150℃)で開始し、開始時と同一温度のままでまたは目標温度を超えない温度まで徐々に温度を高めながら水蒸気の通気を行うが、その際、装置の水蒸気入口付近と出口付近の温度が10℃以内、好ましくは5℃以内という温度差になるよう、水蒸気出口温度を被制御変数として供給する水蒸気に対するフィードバック制御を行う。この場合、制御される変数は特に限定されないが、水蒸気出口弁の開度や、水蒸気入口弁の開度の制御により、装置に供給する水蒸気の温度、圧力および/または速度を調節することができる。
なお、上記フィードバックを行わなくても、凝縮水はやがて蒸気の流れ方向に沿って装置外に流出されていくので、入り口および出口付近の温度が上記の温度差になるまで、目標温度を超えない温度での水蒸気の通気を保持するという制御方法も可能である。変異点が検知される前の水蒸気の通気の制御は、これらの制御方法のいずれか1つを用いて行っても良いし、複数を同時にもしくは段階的に使用して行っても良い。
そして、上記の温度差となった時点を凝縮水排出の変異点と検知し、その後は迅速に160℃以上の一定の温度条件まで到達させるのである。この検知は、自動的に行うことも、人為的に行うこともできる。

変異点の予測
一方、変異点を予測する手段は、150℃以下の温度での水蒸気の通気を一定時間保持した時点を凝縮水排出の変異点、すなわち、凝縮水がほぼ全量排出された時点と予測し、その後は迅速に160℃以上の一定の温度条件まで到達させることからなる。この場合においては、出口温度を用いてフィードバック制御系を構築する必要はないが、変異点(150℃以下に保持する時間)の設定は、試行錯誤で定める。例えば、同じ型の装置の入り口部と出口部の水蒸気温度の測定を可能としておき、同一量のコーヒー焙煎豆を充填し150℃以下の水蒸気の通気を連続して行ったとき、入り口部と出口部の蒸気温度の差が10℃以内、好ましくは5℃以内になるまでの時間を予め調べれば、変異点の予測が可能である。
なお、検知もしくは予測のいずれの手段においても、各部位の温度測定方法、水蒸気入口及び出口の詳細な測定場所、及び各々の測定点数に関しては特に限定されない。

(3) 水蒸気の通気
水蒸気を通気する基本構造としては、水蒸気供給路および水蒸気排出路を設けた豆収容部に、コーヒー焙煎豆を収容して、大気圧よりも高い出口圧力で前記水蒸気排出路から水蒸気が排出されるように、前記水蒸気供給路から前記水蒸気排出路に水蒸気を流通させる。
本発明においては、コーヒー焙煎豆を安定して処理し、高品質のコーヒー焙煎豆を得るために、通気させる水蒸気による処理流量と処理時の環境温度・圧力を、変異点の前および後で下記のように制御する。主な制御法として、供給する水蒸気の温度と圧力の相関を利用し、環境温度・圧力を制御することができる。具体的には、任意の加工槽の形状や材質に対し、通気水蒸気に関して適当な管路径、配管材質、管路数などを選択し設計し、さらにはコントロール弁等で管路を自由に制御できる装置を取り付けた加工槽を用いることで、流路加工槽内を希望の一定の圧力環境下に保持しつつ、水蒸気を必要な供給流量で通気することができる。
変異点の前
変異点の前における水蒸気の通気は、通気温度がコーヒー焙煎豆の焙煎度進行の目標温度を超えてはならない点で変異点の後における通気と異なるが、本明細書で特に言及していない一般的条件は変異点後の通気の場合と同様でよい。
変異点の後
本発明においては、連続的水蒸気処理により、効率よく酸味成分を除去できる。この効果は、主として変異点の後の水蒸気の連続的通気により達成される。目標温度での水蒸気の連続通気は一定時間(1秒〜1時間)保持することが好ましい。1秒以下の場合は十分に焙煎がなされないためで、1時間以内というのは焙煎が進みすぎてしまうことを避けるためである。また、この時間は、目標の焙煎度および水蒸気温度に応じて適宜設定する。例えば、焙煎度(L値)23の値の焙煎豆を焙煎度19の値にする場合には、190℃で約4分ほど保持する。
水蒸気を通気する装置および方法は、水蒸気を実質的に連続的に通気することができれば特に限定されない。本明細書において、水蒸気を連続的に通気するとは、場合により断続的に、あるいは、段階的に流通させても実質的に連続的な通気ができれば良いという意味で用いられる。例えば、排気弁が常に開いた状態で処理を行うか、或いは、排気弁が半連続的に開いた状態で、水蒸気がコーヒー焙煎豆を通過できる状態であれば良い。
水蒸気の種類は原則として特に限定されず、飽和水蒸気、過熱水蒸気、過飽和水蒸気などを用いることができる。なお、焙煎豆の抽出率を向上させる効果を合わせて期待する場合には、経時的に酸の生成が進むので、このように、焙煎豆中で酸の生成が並行して起こる条件の場合には、酸の除去効果の高い、飽和度の高い水蒸気、特に飽和水蒸気を好適に用いることができる。水蒸気を発生させるための装置も特に限定されず、蒸気ボイラー、和釜などを用いることができる。蒸気の水質は、純水から発生させた蒸気であるピュアスチームが好ましいが、食品の処理に使用可能な水質であれば、特に限定されず、場合によっては、水にアルコールなどを適量加えて蒸気を発生させてもよい。また、処理後の焙煎豆加工品の品質が許容される範囲であれば、水蒸気は省エネルギー化のため一部循環させて使用してもよい。
コーヒー焙煎豆を連続的に水蒸気処理する際の水蒸気の流れ方向は特に限定されず、処理するコーヒー焙煎豆に対して、上から下方向、下から上方向、外から内方向、内から外方向などが挙げられる。水蒸気の単位時間あたりの処理流量は、酸を除去できる程度の流量があればよく、特に限定されないが、例えば、コーヒー焙煎豆1kgあたり、0.1〜100kg/時が好ましい。
水蒸気の温度条件は、原則として、酸味成分や不快臭を除去するためには、水蒸気の流れがあればよい。さらに、焙煎豆の抽出率の向上を併せて図るには、コーヒー豆中の不溶性成分である多糖類や繊維質などを加水分解して可溶性成分を得る必要があることから、水蒸気の温度条件はある程度高温であることが望ましい。具体的には、160℃以上が好ましく、より好ましくは約165〜230℃である。この場合の圧力は、水蒸気の性質にもよるが、飽和水蒸気の場合には、約0.7〜3.0MPaとなる。なお、この温度条件においては、上記反応のみならず、焙煎度も進行する。
水蒸気処理を行う装置の種類は特に限定されず、連続的な水蒸気処理が制御できる装置であればよく、横型や縦型、バッチ式や連続式の装置を用いることができる。圧力容器を用いる場合に、一般的には、処理対象物を水蒸気処理する際に、所定の圧力(または温度)に到達すると、排気弁を閉じて、所定時間の保持を行うが、本発明においては、上記の様に、排気弁は連続的または半連続的に、開いた状態で処理を行う。
排出された蒸気は、操作環境を考えると直接排気するよりも、コンデンサーなどを使って凝縮し、水溶液として回収することが好ましい。また、場合によっては、通気した水蒸気は循環し再度コーヒー焙煎豆の処理に用いてもよい。凝縮液には、酸味成分や、ロブスタ種コーヒー焙煎豆の不快臭成分が回収される。
(5) この様にして、本発明の水蒸気通気処理により、酸味成分が除去され、かつ焙煎度においてもばらつきの低減された、一定の良好な香味品質を有する水蒸気処理コーヒー焙煎豆は、冷却、乾燥(真空乾燥、熱風乾燥など)を行った後、常法によって、サイロなどに保管することができ、或いは、直ちにインスタントコーヒーや液体コーヒーエキスなどに調製してもよい。
本発明における水蒸気処理コーヒー焙煎豆は、コーヒー飲料のコーヒー原料の一つとして、コーヒー焙煎豆(レギュラーコーヒー豆)、インスタントコーヒー、液体コーヒーエキスなどと共に用いることができ、常法により、コーヒー飲料製造工場で製造することができる。例えば、コーヒー飲料缶詰の製造工程を例として挙げると、「粉砕(レギュラーコーヒー豆およびコーヒー焙煎豆)」「抽出」「調合」「ろ過」「充填」「巻締」「殺菌」「冷却」「箱詰め」の工程で製造することができる。

(6) 装置
本発明は水蒸気処理におけるコーヒー焙煎豆の進行する焙煎度が、水蒸気通気装置の各部位、特に装置に付属した水蒸気入口付近と出口付近との間におけるばらつき生じることを抑制するための手段として、凝縮水を装置外にほぼ全量排出する水蒸気通気方法を提供したが、その方法を実施する具体的手段としては、変異点の検知と予測の2つの手段を講じたものである。
本発明の装置は、コーヒーを充填し、水蒸気処理するための耐圧容器、該容器に水蒸気を供給する供給路、該容器から水蒸気が排出される排出路、水蒸気の供給量および/または速度を制御するバルブもしくは弁、水蒸気の排出量および/または速度を制御するバルブもしくは弁、該容器への水蒸気の流入部近傍、および出口部近傍の2箇所に少なくとも設置された容器内の温度測定のための温度測定器を有する。
本発明の装置には、入り口部と出口部の温度差を計算し、その差が所定の値以下になったとき、装置に供給される水蒸気の温度を高め、その圧力、流量、流速のいずれかを高めるためのフィードバック機構も有する。
以下、本発明について、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

〔実施例1〕
全粒のコーヒー焙煎豆を、高温・高圧下において、水蒸気を通気し、コーヒー焙煎豆の水蒸気処理および水熱反応を同時に行った。
すなわち、水蒸気入口配管、出口配管を有する耐圧3.0MPaの圧力容器に、コーヒー焙煎豆200kg(L=24(固体及び液体の色度/明るさを表す一般的な指標。L値と呼ばれる。)、ロブスタ種)を入れ、水蒸気入口配管より1.3MPa(194℃)の高圧水蒸気(飽和水蒸気)を、コーヒー焙煎豆1kgあたり100kg/時の流量で通し、通気処理を行って、圧力1.3MPa(194℃)、4分の処理を行い、コーヒー焙煎豆である、対照豆1を得た。
水蒸気入口付近及び出口付近の温度を測定したところ、入口温度は水蒸気通気開始からおよそ4分で保持温度である194℃に到達した。すなわち昇温工程におよそ4分要したが、その時出口温度はまだ140℃であった。また、保持温度に到達する過程において、入口温度が160℃であった時、出口温度は100℃であった。このような入口及び出口の温度に差が生じているのは、凝縮水が出口付近に滞留しているためと推察される。
また、上記実験を再度実施し、対照豆2を得た。

〔実施例2〕
続いて、本発明による水蒸気通気方法を用いた水蒸気処理実験を実施した。本実験では、検知する手段の水蒸気通気方法を用いた。具体的には、昇温工程において、水蒸気出口温度を被制御変数として水蒸気出口弁の開度を制御し、水蒸気入口温度が160℃以上になる前に、水蒸気入口温度と出口温度の間隔が10℃以下になるようフィードバック制御を行い、10℃以下になった時点を変異点とし、後は迅速に1.3MPa(194℃)に到達させるという水蒸気通気方法を用い、それ以外は全て実施例1と同条件で実施し、本処理豆1を得た。
水蒸気入口付近及び出口付近の温度を測定したところ、入口温度はおよそ2分で150℃に到達し、その時点で出口温度は約95℃であった。しかし、その後フィードバック制御により、入口温度が160℃に到達した時点で出口温度は152℃まで上昇し、その後は入口及び出口の温度が共に迅速に保持温度まで到達した。

〔実施例3〕
続いて、本発明による水蒸気通気方法を用いた水蒸気処理実験を実施した。本実験では、予測する手段の水蒸気通気方法を用いた。具体的には、昇温工程において、装置内圧力を3分で0.5MPa(155℃)まで到達させ、その時点を凝縮水がほぼ全量排出されたと予測する変異点として、続いて2分で0.5MPaから1.3MPa(194℃)に到達させるという通気方法を用い、それ以外は全て実施例1と同条件で実施し、本処理豆2を得た。
本実験の実施後に、水蒸気入口付近及び出口付近の温度を測定したところ、入口温度が160℃に到達した時点で出口温度は156℃であった。さらに、その後は入口及び出口の温度間隔を5℃以内に保ちつつ、保持温度である194℃まで到達していたことがわかった。

〔実施例4〕
以上の実施例で得られた、対照豆1、対照豆2、本処理豆1、及び本処理豆2のそれぞれの水蒸気処理豆における焙煎度のばらつきを評価した。具体的には、各豆において、水蒸気入口付近、中位、及び出口付近の3部位よりサンプリングを行い、それぞれ「入」「中」「出」とラベリングした。また、焙煎度の評価方法としてL値を測定し、各部位のL値のばらつきを調べた。
結果を表1に示す。
Figure 2006262835
表1から明らかなように、本処理豆1及び本処理豆2の焙煎度のΔ(デルタ:「入」と「出」のL値の差)が、対照豆1及び対照豆2と比較して小さいという結果になった。従って、本発明の水蒸気通気方法による、水蒸気処理コーヒー焙煎豆の焙煎度のばらつき低減効果が認められたといえる。焙煎度のむらがない方が味についても一定の品質になるとの判定も出た。
本発明における水蒸気通気方法を用いた水蒸気処理コーヒー焙煎豆は、作業工程の煩雑化やコスト増加を招くことなく凝縮水を効率よく系外に除去することにより、豆の臭み成分の除去と酸味成分の低減ならびに抽出率の向上が為されたのみならず、焙煎度において装置内のばらつきが低減された、非常に安定した香味品質を有することができる。

Claims (21)

  1. コーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法において、
    (1) コーヒー焙煎豆を充填した装置に、所定の焙煎度を得るための目標温度より低温の水蒸気を連続通気させ、当該水蒸気の通気の開始によって発生した凝縮水が装置外に排出されるまで、その通気を継続する工程と、
    (2) 工程(1) に引き続いて、装置内が上記目標温度に達するまで、装置に供給する水蒸気の温度を上昇させる工程と、
    を設けたことを特徴とするコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
  2. 目標温度が160℃またはそれを超える温度である、請求項1記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
  3. さらに、(3) 装置内の温度が160℃を超えている時間を一定時間ほぼ連続して保持する工程を含んでなることを特徴とする請求項1又は2記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
  4. 160℃を超えている時間を1秒〜1時間保持する、請求項3記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
  5. コーヒー焙煎豆を充填した装置内、該装置の水蒸気入り口部付近、および該装置の水蒸気出口付近の少なくとも2箇所に温度測定部を設け、2箇所の測定部の温度差を算出し、当該温度差が所定範囲内になったときに、(1) から(2) の工程へ移行することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
  6. 温度測定部が装置の水蒸気の入口部付近と出口部付近であって、当該測定部の温度差が10℃以内となった時点で(1) から(2) の工程へ移行することを特徴とする請求項5記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
  7. 温度測定部が当該装置の水蒸気の入口部と出口部であって、当該測定部の温度差が5℃以内となった時点で(1) から(2) の工程へ移行することを特徴とする請求項5記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
  8. (1) の工程において、水蒸気出口部温度を被制御変数として、供給する水蒸気に関するフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項6または7記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
  9. (1) から(2) の工程へ移行する時点が、(1) の工程を行う個々の条件に応じて凝縮水が排出されたと推定した時点であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
  10. (1) の工程を行う条件が、150℃以下の水蒸気の通気であることを特徴する請求項9記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
  11. 凝縮水が排出されたと推定した時点は、入り口部と出口部の水蒸気温度の測定が可能な同じ装置に同一量のコーヒー焙煎豆を充填して(1) の工程を行い、入り口部と出口部の蒸気温度の差が10℃以内、好ましくは5℃以内になるまでの時間を調べることにより推定した時点である、請求項9または10記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
  12. コーヒー焙煎豆を充填した装置に水蒸気を供給して水蒸気処理を行うコーヒー焙煎豆の処理方法において、前記水蒸気の温度が160℃を超えている時間を一定時間ほぼ連続して保持することを特徴とするコーヒー焙煎豆の処理方法。
  13. 160℃を超えている時間を1秒〜1時間保持する、請求項12記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
  14. コーヒー焙煎豆を充填した装置に水蒸気を供給して水蒸気処理を行うコーヒー焙煎豆の処理方法において、水蒸気の流路内の少なくとも2箇所に温度測定部を設け、測定部の温度の差を算出し、当該温度差が所定範囲内になったときに、供給される水蒸気の温度が160℃を超えるように制御することを特徴とするコーヒー焙煎豆の処理方法。
  15. コーヒー焙煎豆を充填した装置に水蒸気を供給して水蒸気処理を行うコーヒー焙煎豆の処理方法において、水蒸気の流路内の少なくとも2箇所に温度測定部を設け、測定部の温度の差を算出し、当該温度差が所定範囲内になったときに、供給される水蒸気の温度が160℃を超えるように制御し、当該水蒸気の温度が160℃を超えている時間を一定時間ほぼ連続して保持することを特徴とするコーヒー焙煎豆の処理方法。
  16. 160℃を超えている時間を1秒〜1時間保持する、請求項15記載のコーヒー焙煎豆の水蒸気処理方法。
  17. 測定底部の温度差が10℃以内であることを特徴とする請求項14ないし16のいずれか1項に記載のコーヒー焙煎豆の処理方法。
  18. 前記所定温度差が5℃以内であることを特徴とする請求項14ないし16のいずれか1項に記載のコーヒー焙煎豆の処理方法。
  19. コーヒー焙煎豆を充填した装置に水蒸気を供給して水蒸気処理を行うコーヒー焙煎豆の処理方法において、当該装置内の水蒸気流路の少なくとも1箇所に温度測定部を設け、全ての測定部の温度が150℃を越えないよう一定時間保持したのちに、供給される水蒸気の温度が160℃を超えるように制御することを特徴とする請求項12ないし16のいずれか1項記載のコーヒー焙煎豆の処理方法。
  20. 請求項1〜19のいずれかに記載の水蒸気処理方法によって得られた、水蒸気処理コーヒー焙煎豆。
  21. 請求項20に記載の水蒸気処理コーヒー焙煎豆を用いることを特徴とする、コーヒー飲料。
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