JP2006259323A - マイクロカプセル及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 マイクロカプセル壁膜への着色粒子の付着や埋没を防止して、着色粒子の電気泳動性を改善し、画像表示装置などに適用して、鮮明な画像を形成する。
【解決手段】 油相(電気絶縁性を有する誘電性液体など)に着色粒子が分散した分散系と、この分散系を内包する壁膜とで構成されたマイクロカプセルにおいて、前記着色粒子として、疎水化され、かつ65以上のメタノール疎水化度を有する着色粒子を用いる。着色粒子は、疎水性基の導入により疎水化されていてもよく、例えば、疎水性基を有するシランカップリング剤で処理された酸化チタンであってもよい。前記マイクロカプセルは、油相中で着色粒子が帯電し、かつ電位差によりマイクロカプセル内で電気泳動可能であってもよい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電気泳動式画像表示装置で好適に使用できるマイクロカプセル(カプセル型インク)及びその製造方法、並びにマイクロカプセル中の着色粒子の電気泳動性を改善する方法に関する。
マイクロカプセル化技術は、染料、香料、液晶、酵素、触媒、接着剤などの種々の物質(芯物質)を封入する1つの手段として幅広く応用されており、これらの芯物質の取扱い性を改善するとともに、芯物質の機能を長期間保持できる利点がある。
一方、表示技術は、画像や文字情報などを表示する方式から、液晶(Liquid Crystal)方式、プラズマ発光方式、EL(エレクトロルミネセンス)方式などを利用して可視化する方式に至るまで多岐にわたる。近年、半導体技術の急速な進歩による各種電子装置の小型化に伴い、ディスプレイデバイスに対しても、小型化、軽量化、低駆動電圧化、低消費電力化、薄型フラットパネル化などが求められている。この要求に対応する新たな表示方法として、分散媒中に電気泳動粒子が分散した分散系(芯物質)をマイクロカプセル内に封入し、これらのマイクロカプセルを電極板間に介在させ、電界の印加により電極間でマイクロカプセル内で泳動粒子を移動させることにより、表示面への画像の書き込みが可能な電気泳動式画像表示装置が提案されている。
特開平11−119264号公報(特許文献1)には、分散媒中に帯電粒子が分散した分散系を封入した多数のマイクロカプセルと、これらのマイクロカプセルを挟んで配設された一組の対向電極とを備え、制御電圧の作用により前記帯電粒子の分布状態を変えることにより、光学的反射特性に変化を与えて所定の表示動作を行うための表示装置において、前記帯電粒子の粒子径が、前記マイクロカプセルの粒子径に対して約1/1000〜1/5であり、前記帯電粒子の粒度分布の分散度(体積平均粒子径/個数平均粒子径)が1〜2である表示装置が開示されている。特開平11−202372号公報(特許文献2)には、前記分散系がマイクロカプセルに内包された少なくとも2種類の帯電粒子と、界面活性剤を含む分散媒とで構成されており、前記帯電粒子が、酸化チタン及びカーボンブラックのうち少なくとも一方を含む表示装置が開示されている。
特許第2551783号公報(特許文献3)には、前記電極間に配設するマイクロカプセルとして、着色した分散媒中に、この分散媒と光学的特性の異なる少なくとも一種類の電気泳動粒子を分散させた分散系を封入したマイクロカプセルを用いた電気泳動表示装置が開示されている。さらに、特表2001−503873号公報(特許文献4)には、配列した複数の微細な容器(又はマイクロカプセル)と、この配列の両側に配置して配列を覆い、かつ少なくとも一方が実質的に視覚的に透明である第1及び第2の電極と、これら2つの電極間に電位差を生成する手段と、前記容器の内部に配設され、かつ誘電性液体と、この誘電性液体内で表面電荷を呈する粒子からなる懸濁物質とを備えており、前記誘電性液体と前記粒子とが視覚的に対照的なものであり、電位差により前記粒子が前記電極の一方に向かって移動する起電表示装置が開示されている。
また、特開2004−310050号公報(特許文献5)には、油相に着色粒子(酸化チタンなど)が分散した分散系と、この分散系を内包する壁膜とで構成されたマイクロカプセルであって、前記壁膜が酸基又はその塩を有する樹脂で形成されているマイクロカプセルが開示されている。
しかし、このようなマイクロカプセルでは、酸化チタンなどを分散させた媒体を内部に封入しても、酸化チタンがマイクロカプセルの内壁に付着又は埋没して、効率よく酸化チタンが泳動せず、鮮明な画像を得ることができない。
特開平11−119264号公報 特開平11−202372号公報 特許第2551783号公報 特表2001−503873号公報 特開2004−310050号公報(請求項1、実施例)
従って、本発明の目的は、着色粒子の壁膜への付着又は埋没を防止して、電位差により着色粒子を効率よく泳動させることができるマイクロカプセル及びその製造方法、並びに着色粒子の電気泳動性を改善する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、画像表示装置などに用いても、着色粒子の電気泳動性を損なうことなく、鮮明な画像を形成可能なマイクロカプセル及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定のメタノール疎水化度を有する着色粒子を用いると、分散媒体とともにマイクロカプセル内に封入しても、壁膜への付着や埋没を抑制して、着色粒子の電気泳動性を改善できること、このようなマイクロカプセルを画像表示装置などに適用すると鮮明な画像を形成できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明のマイクロカプセルは、油相に着色粒子が分散した分散系と、この分散系を内包する壁膜とで構成されたマイクロカプセルであって、前記着色粒子が、疎水化されており、かつ65以上のメタノール疎水化度を有している。前記分散系は、電気絶縁性を有する誘電性液体と、この誘電性液体中に分散した単一又は複数種の着色粒子とで構成されており、着色粒子は、疎水性基の導入により疎水化されていてもよい。疎水化された着色粒子は、疎水性基を有するカップリング剤で処理された着色粒子であってもよい。疎水化された着色粒子は、疎水性基を有するシランカップリング剤で処理された酸化チタンであってもよい。前記マイクロカプセルは、油相中で着色粒子が帯電し、かつ電位差によりマイクロカプセル内で電気泳動可能であってもよい。
マイクロカプセルの壁膜は酸基又はその塩を有する樹脂で形成してもよい。また、壁膜は樹脂で形成してもよく、この樹脂は架橋又は硬化していてもよい。前記マイクロカプセルは、一対の電極間に介在させ、着色粒子の電気泳動により画像を表示するために使用することができる。
本発明には、酸基を中和した樹脂と着色粒子と有機溶媒とを含む有機分散液を水性媒体中に分散し、前記有機分散液で構成された分散系とこの分散系を内包する壁膜とで構成されたカプセル粒子を水性媒体中に生成させるマイクロカプセルの製造方法であって、前記着色粒子が疎水化されており、かつ65以上のメタノール疎水化度を有するマイクロカプセルの製造方法も含まれる。
また、本発明には、電位差により電気泳動可能な着色粒子が油相に分散した分散系と、この分散系を内包する壁膜とで構成されたマイクロカプセルにおいて、前記着色粒子として、疎水化され、かつ65以上のメタノール疎水化度を有する着色粒子を用いて、着色粒子の電気泳動性を改善する方法も含まれる。
なお、本願明細書において、「アニオン型樹脂」「アニオン型水分散性樹脂」とは、酸性基又はその塩を有する樹脂を意味し、この樹脂は、遊離の形態では、非水溶性(又は不溶性)であってもよく、少なくとも一部の酸基を塩基で中和することにより水に対して水溶性又は水分散性(換言すれば、少なくとも水分散性)である。すなわち、「アニオン型樹脂」「アニオン型水分散性樹脂」は、少なくとも一部の酸基を塩基で中和し、かつ有機相(又は有機溶媒相)に含有させることにより、有機連続相が水性媒体の連続相(又は水連続相)と相転換が可能である。また、「酸基」を「酸性基」と同義に用いる場合がある。さらに、「着色粒子」を「着色剤」と同義に用いる場合がある。さらに、アクリル系単量体とメタクリル系単量体とを(メタ)アクリル系単量体と総称する場合がある。
本発明では、特定の疎水化度を有する着色粒子を、油相に分散させ、マイクロカプセル中に内包すると、着色粒子が壁膜に付着又は埋没するのを防止して、電位差により着色粒子を効率よく泳動させることができる。また、画像表示装置などに用いても、着色粒子の電気泳動性を損なうことなく、鮮明な画像を形成することができる。
本発明のマイクロカプセルは、油相中に疎水化された着色粒子が分散した分散系(又は油相分散系)と、この分散系を内包する壁膜とで構成されている。前記壁膜は、通常、アニオン型樹脂(酸基又はその塩を有する樹脂)などの樹脂で形成されている。
前記アニオン型樹脂(又は自己水分散性樹脂)の酸基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、燐酸基、スルホン酸基、硫酸基などが例示できる。アニオン型樹脂は、これらの酸基を単独で又は二種以上組み合わせて有していてもよい。
前記アニオン型樹脂は、中和処理により生成した樹脂を含む有機連続相が水性媒体との混合により、有機相が水性連続相に分散して不連続相を形成可能であればよい。このような樹脂としては、酸基を所定の濃度で含む縮合系樹脂[例えば、ポリエステル系樹脂(脂肪族ポリエステル系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリエステル系エラストマーなど)、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂など]又は重合系樹脂(オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂など)であってもよい。これらの樹脂のうち、通常、重合系樹脂を用いる場合が多い。
代表的な酸基を有する重合系樹脂は、少なくとも酸基を有する重合性単量体類(又は酸性重合性単量体類)の重合により得ることができ、通常、酸性重合性単量体類と、この酸性重合性単量体類に対して共重合可能な重合性単量体類(酸基を含有しない重合性単量体類)とを共重合させることにより得ることができる。さらに、必要に応じて、酸基以外の架橋性官能基を含有する単量体を共重合させてもよい。
代表的な酸基含有重合性単量体類としては、例えば、重合性カルボン酸類[(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの重合性モノカルボン酸類、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノブチルなどの重合性多価カルボン酸の部分エステル類(重合性ジカルボン酸のモノC1-10アルキルエステルなど)、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などの重合性多価カルボン酸類又はその無水物など]、燐酸基含有単量体[2−ホスホオキシエチル(メタ)アクリレートなどのホスホオキシC2-6アルキル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシアルキル(メタ)アクリレート類(ホスホオキシアシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレートなどのアシッドホスホオキシC2-6アルキル(メタ)アクリレートなど)など]、スルホン酸基含有重合性単量体[3−クロロ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸;スルホアルキル(メタ)アクリレート(2−スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホC2-6アルキル(メタ)アクリレートなど)など]などが例示できる。これらの酸基含有重合性単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの単量体のうち、カルボキシル基、酸無水物基及び/又はスルホン酸基を有する重合性単量体(特に(メタ)アクリル酸など)が好ましい。
酸基含有重合性単量体の使用量は、通常、単量体全体に対して3〜80モル%、好ましくは5〜70モル%(例えば、10〜60モル%)、さらに好ましくは15〜50モル%(例えば、20〜40モル%)程度であってもよい。
共重合可能な重合性単量体類としては、例えば、芳香族ビニル単量体[スチレン、アルキルスチレン(ビニルトルエンなどのC1-4アルキルスチレンなど)、クロロスチレンなど]、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸t−ブチルなど(メタ)アクリル酸の直鎖又は分岐状C1-18アルキルエステル類]、ビニルエステル類又は有機酸ビニルエステル類[酢酸ビニルなどの直鎖状又は分岐鎖状C2-20脂肪族カルボン酸のビニルエステル、安息香酸ビニルなどの芳香族カルボン酸ビニルエステルなど]、重合性ニトリル類又はシアン化ビニル類[(メタ)アクリロニトリルなど]、オレフィン類[エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのα−C2-10オレフィンなど]、ハロゲン含有単量体類[塩素含有単量体類(塩化ビニル、塩化ビニリデンなど)、フッ素原子を有するビニル単量体類(フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンなどのハロゲン化α−オレフィン、含フッ素アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類など)など]、紫外線吸収性や酸化防止性を有する単量体類[2−(2’−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール環を有する重合性単量体、2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン骨格を有する重合性単量体、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレートなどの2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を有する重合性単量体など]、窒素含有単量体類[N−ビニルピロリドン、ジアセトンアクリルアミドなど]、分子片末端に1つの重合性不飽和基を有するマクロモノマー類などが挙げられる。これらの共重合性単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの共重合性単量体のうち、通常、スチレン系単量体(特に、スチレン)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル[特に、アクリル酸C1-12アルキルエステル、メタクリル酸C1-4アルキルエステル(メタクリル酸メチルなど)]が使用され、共重合体は、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸系共重合体であってもよい。
好ましいアニオン型樹脂は、通常、架橋又は硬化に関与する官能基(自己架橋性基、樹脂の反応性基又は架橋剤に対する架橋性官能基)を有している。このようなアニオン型樹脂は、前記酸基を有する重合性単量体及び/又は共重合性単量体などと共に、官能基(自己架橋性基及び/又は架橋性官能基)を有する重合性単量体を共重合することにより得てもよい。また、アニオン型樹脂の酸基を架橋性官能基として利用してもよく、このようなアニオン型樹脂は、前記酸基を有する重合性単量体と必要により前記共重合性単量体とを重合することにより得ることができる。
自己架橋性基を有する重合性単量体としては、メチロール基やN−アルコキシメチル基を有する重合性単量体[N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド類など]、シリル基又はアルコキシシリル基を有する重合性単量体[ジメトキシメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシランなどのC1-2アルコキシビニルシラン類、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキルC1-2アルコキシシラン類など]などが例示できる。
また、前記架橋性官能基は、樹脂に導入された官能基及び/又は架橋剤の種類に応じて、架橋系を形成可能な官能基を有する重合性単量体を共重合することにより樹脂に導入できる。このような架橋系を構成する官能基としては、カルボキシル基又は酸無水物基に対する反応性基(例えば、エポキシ基又はグリシジル基、ヒドロキシル基、メチロール基やN−アルコキシメチル基)、ヒドロキシル基に対する反応性基(例えば、カルボキシル基又は酸無水物基イソシアネート基、メチロール基やN−アルコキシメチル基、シリル基又はアルコキシシリル基)などが例示できる。架橋性官能基は、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、グリシジル基で構成する場合が多い。
架橋系を形成可能な単量体に関し、カルボキシル基又は酸無水物基を有する重合性単量体、メチロール基、N−アルコキシメチル基、シリル基又はアルコキシシリル基を有する重合性単量体は前記の通りである。エポキシ基又はグリシジル基含有重合性単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが例示できる。ヒドロキシル基を有する重合性単量体としては、アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのC2-8アルキレングリコール(モノ)メタアクリレート)、ラクトン類を付加した(メタ)アクリル系単量体(ダイセル化学工業(株)製「プラクセル FM−2」「プラクセルFA−2」など)、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート(ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど)などのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルなどが例示できる。イソシアネート基を有する重合性単量体としては、例えば、ビニルフェニルイソシアネートなどが例示できる。
自己架橋性基や架橋性官能基を有する重合性単量体の使用量は、例えば、単量体全体に対して、1〜30モル%、好ましく3〜25モル%、さらに好ましくは5〜20モル%程度であってもよい。
重合性単量体の重合は、慣用の方法、例えば、熱重合法、溶液重合法、懸濁重合法などが利用でき、通常、反応溶媒(有機溶媒)中で重合する溶液重合法を利用する場合が多い。反応溶媒としては、不活性溶媒、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、セロソルブ、カルビトールなどのエーテルアルコール類、ブチルセロソルブアセテートなどのエーテルエステル類などが例示できる。これらの溶媒は単独で又は混合溶媒として使用できる。好ましい形態では、脱溶媒が容易な溶媒、例えば、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなどの低沸点溶媒(例えば、沸点70〜120℃程度の溶媒)が使用される。
重合性単量体の重合は、重合開始剤の存在下で行うことができる。重合開始剤としては、過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイルなどの過酸化ジアシル類、ジ−t−ブチルペルオキシドなどの過酸化ジアルキル類、クメンヒドロペルオキシドなどのアルキルヒドロペルオキシド類、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエートなど)やアゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリルなど)、過硫酸塩、過酸化水素などが例示できる。なお、重合は、通常、50〜150℃程度の温度で、不活性雰囲気中で行うことができる。
前記アニオン型樹脂の分子量は、通常、数平均分子量0.05×104〜10×104、好ましくは0.5×104〜7×104(例えば、1×104〜5×104)程度の範囲から選択できる。
乾燥過程での融着防止や高温環境下でのブロッキング防止、さらには電気泳動式表示材料としての観点から、樹脂は、マイクロカプセルが使用される環境温度、例えば、50℃以下の温度(例えば、温度10〜30℃程度の室温など)で固体であり、かつ透明性が高いのが望ましい。
前記水分散性樹脂の酸基の濃度は、酸基の少なくとも一部(一部又は全部)を塩基で中和して、転相乳化や乳化分散などによる水性媒体中への分散に伴って、安定なカプセル粒子を形成できる範囲から選択でき、樹脂の酸価は、酸基が遊離の形態で、例えば、20〜400mgKOH/g、好ましくは30〜300mgKOH/g、さらに好ましくは40〜200mgKOH/g程度であってもよい。なお、酸価とは、樹脂固形分1gを中和するのに必要なKOHのmg量である。酸価が小さすぎると、酸基の100モル%以上を塩基で中和しても、分散およびカプセル粒子の形成が困難であり、酸価が高すぎると、水性媒体中でのカプセル粒子形成が不安定となる。
壁膜を形成する樹脂は、内包する芯物質の油相(有機相又は有機溶媒相)の揮散や漏出を抑制するため、芯物質の油相に対してバリア性を有する樹脂(例えば、油相に対して不溶性又は非浸食性樹脂)であるのが好ましい。このような点から、壁膜を構成する樹脂は、架橋又は硬化しているのが好ましい。
アニオン型樹脂のガラス転移温度は、マイクロカプセルの環境温度に応じて、例えば、−25℃〜200℃、好ましくは0〜150℃(例えば、25〜120℃)、さらに好ましくは50〜120℃(例えば、70〜100℃)程度の範囲から選択できる。
本発明のマイクロカプセルに内包された分散系(芯物質)は、油相(有機溶媒相又は分散媒)と、この油相に分散した着色粒子とで構成されており、この着色粒子は、疎水化されており、特定のメタノール疎水化度を有している。そして、油相中の着色粒子は、通常、帯電しており、電位差によりマイクロカプセル内で電気泳動可能である。
油相は、マイクロカプセルが使用される環境温度(例えば、10〜30℃程度の室温など)で液体であり、通常、疎水性液体(疎水性有機溶媒)、特に電気絶縁性を有する誘電性液体(例えば、体積抵抗が1010Ωcm以上、誘電率が2.5以下の溶媒)で構成できる。
芯物質の分散媒(又は有機溶媒相)は、電気抵抗の高い電気絶縁性溶媒、例えば、炭化水素類[ベンゼン、トルエン、ナフテン系炭化水素などの芳香族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、ヘキサン、ケロセン、直鎖又は分岐鎖状パラフィン系炭化水素、商品名「アイソパー」(エクソンモービル社製)などの脂肪族炭化水素類、アルキルナフタレン類など]、ジフェニル−ジフェニルエーテル混合物、ハロゲン系溶媒[ハロゲン化炭化水素類(四塩化炭化水素など)、フッ素系溶媒(CHFC−123,HCFC−141bなどのフロン類、フルオロアルコール、フルオロエーテルなどの含フッ素エーテル、フルオロエステルなどの含フッ素エステル、フルオロケトン類など)など]、シリコーンオイル[ジメチルポリシロキサンなどのシリコーンオイルなど]が例示できる。これらの溶媒は単独で又は混合して使用できる。
芯物質の有機分散媒は、転相乳化や乳化分散に供する樹脂溶液の有機溶媒(例えば、重合性単量体の重合に用いる反応溶媒)よりも沸点が高く、脱溶媒処理後も着色剤の分散媒として残留可能な高沸点の有機溶媒から選択するのが有用である。
分散系の着色粒子(着色剤又は着色泳動粒子)としては、分散媒と光学的特性の異なる粒子、電気泳動により、視覚的にコントラストを生じさせる粒子、直接的又は間接的に可視光域で視認可能なパターンを形成可能な粒子などの種々の着色粒子(無彩色又は有彩色粒子)が利用でき、例えば、無機顔料(カーボンブラックなどの黒色顔料、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛などの白色顔料、酸化鉄などの赤色顔料、黄色酸化鉄、カドミウムイエローなどの黄色顔料、紺青、群青などの青色顔料など)、有機顔料(ピグメントイエロー、ダイアリライドイエローなどの黄色顔料、ピグメントオレンジなどの橙色系顔料、ピグメントレッド、レーキレッド、ピグメントバイオレットなどの赤色顔料、フタロシアニンブルー、ピグメントブルーなどの青色顔料、フタロシアニングリーンなどの緑色顔料など)、着色剤(染料、顔料など)で着色した樹脂粒子などが例示できる。着色粒子は単独で使用してもよく又は二種以上組み合わせて使用してもよい。すなわち、分散系において、分散媒(電気絶縁性を有する誘電性液体など)中には、単一(又は同種若しくは同系統色)の着色粒子が分散していてもよく、複数種(又は異なる色)の着色粒子が分散していてもよい。なお、着色粒子は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、イミノ基などの官能基(又は反応性基)を(例えば、粒子の表面などに)有していてもよい。着色粒子のうち、無機顔料(特に、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物系顔料など)、有機顔料が好ましい。
着色粒子(着色剤)の平均粒子径又は粒径は、0.01〜1μm程度の範囲から選択でき、ナノメータサイズの平均粒子径(例えば、10〜500nm、好ましくは20〜500nm(例えば、30〜400nm)、さらに好ましくは50〜300nm)程度であってもよい。着色粒子(着色剤)は、可視光線に対して透明なナノメータオーダーの粒子径(例えば、20〜100nm程度)を有していてもよい。着色粒子(着色剤)の粒度分布は特に制限されないが、粒度分布幅の狭い着色粒子(例えば、単分散粒子)が好ましい。
芯物質中の着色粒子の含有量は、電気泳動性を損なわない範囲であればよく、例えば、1〜70重量%(例えば、1〜60重量%)、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは1〜40重量%(例えば、1〜20重量%)程度であってもよい。
なお、分散媒は、着色粒子とコントラストを生じさせる限り、種々の染料(アントラキノン類やアゾ化合物類などの油溶性染料など)などで着色していてもよい。例えば、分散媒は、着色粒子と異なる色に着色していてもよい。
本発明では、疎水化された着色粒子を使用する。なお、着色粒子の疎水化処理は必須ではなく、着色粒子は、結果として特定のメタノール疎水化度に疎水化されていればよい。着色粒子の疎水化は、特に制限されず、例えば、着色粒子を疎水性物質(疎水性樹脂(スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂など)、高級脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ワックスなど)などにより被覆又はコーティングすることにより行ってもよく、例えば、疎水性基の導入により行ってもよい。例えば、前記官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基など)を有する着色粒子では、この官能基(親水性基)を保護基(疎水性保護基)で保護することにより疎水性基を導入し、着色粒子を疎水化してもよく、前記着色粒子を、疎水性基を有するカップリング剤(シランカップリング剤、チタンカップリング剤、Al系カップリング剤、Zr系カップリング剤など)で処理することにより行ってもよい。
カップリング剤は、通常、疎水性基とともに、加水分解縮合性基[メトキシ、エトキシ基などのアルコキシ基(C1-6アルコキシ基など)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子(特に塩素原子、臭素原子)など)など]を有している。例えば、シランカップリング剤は、下記式(1)で表すことができる。
(X)m−Si−(R)n (1)
(式中、Xは前記加水分解縮合性基を示し、Rは置換基を有していてもよい疎水性基を示す。m及びnはそれぞれ1〜3の整数であり、m+nは4である。Xはmによって異なっていてもよく、Rはnによって異なっていてもよい)
前記疎水性基(R)としては、炭化水素基[アルキル基(メチル基、エチル基、ブチル、イソブチル、t−ブチル基などの直鎖又は分岐状C1-16アルキル基など)、アルケニル基(ビニル基、アリル基などのC2-10アルケニル基など)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基などのC6-10シクロアルキル基など)、アリール基(フェニル基、ナフチル基などのC6-14アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6-14アリール−C1-4アルキル基など)などの飽和又は不飽和炭化水素基など]などが挙げられる。
疎水性基が有する置換基としては、例えば、疎水性置換基[例えば、炭化水素基(メチル基、エチル基、t−ブチル基などのアルキル基(直鎖又は分岐状C1-6アルキル基など)、アルケニル基(ビニル基、アリル基などのC2-6アルケニル基など)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基などのC6-10シクロアルキル基など)、アリール基(フェニル基などのC6-10アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基などのC6-10アリール−C1-4アルキル基など)など)、エステル基(例えば、アセトキシ基などのアシルオキシ基(C2-6アシルオキシ基など)、(メタ)アクリロイルオキシ基など)、ニトロ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子など)などの他、他の官能基、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基又はN−置換アミノ基(イミノ基、ウレイド基も含む)、メルカプト基、エポキシ基(グリシジル基、グリシドキシ基、エポキシシクロヘキル基など)など]、イソシアネート基などの反応性基を有していてもよい。前記疎水性基は、これらの置換基(疎水性置換基など)を1つ又は複数有していてもよい。なお、カップリング剤の疎水性基が、前記反応性基(特に、親水性の反応性基)を有する場合、前記反応性基は、通常、この反応性基に対して反応性の官能基を有する疎水性化合物と反応させて、疎水化する場合が多い。前記カップリング剤の反応性基は、予め疎水化してもよく、着色粒子に導入した後、疎水化してもよい。
これらの置換基を有する疎水性基(R)の具体例としては、例えば、置換アルキル基[(メタ)アクリロイルオキシプロピル基などの(メタ)アクロイルオキシアルキル基;クロロメチル基、クロロプロピル基などのハロゲン化アルキル基;グリシドキシプロピル基などのグリシドキシアルキル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基などのヒドロキシアルキル基;アミノアルキル基(3−アミノプロピル基など);N−置換アミノアルキル基(N−2−アミノエチルアミノプロピル基、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)アミノプロピル基、N−ビニルベンジル−2−アミノエチル基、N−フェニル−3−アミノプロピル基など);ウレイドプロピル基などのウレイドアルキル基;メルカプトプロピル基などのメルカプトアルキル基;イソシアネートプロピル基などのイソシアネートアルキル基など]、置換アリール基(トリル基、キシリル基などのアルキルアリール基;スチリル基などのアルケニルアリール基など)などが挙げられる。
カップリング剤の具体例としては、シランカップリング剤を例に挙げて説明すると、例えば、アルキル基含有シランカップリング剤[n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アンモニウムクロライドなどのアルキルトリアルコキシシラン(C1-6アルキルトリC1-4アルコキシシランなど);前記アルキルトリアルコキシシランに対応するトリハロシラン(C1-6アルキルトリハロシランなど);n−ブチルジメトキシクロロシランなどのアルキルジアルコキシハロシラン(C1-6アルキルC1-4アルコキシハロシランなど);エチルメトキシジクロロシランなどのアルキルアルコキシジハロシラン(C1-6アルキルC1-4アルコキシジハロシランなど);ジエチルジメトキシシランなどのジアルキルジアルコキシシラン(ジC1-6アルキルジC1-4アルコキシシランなど);前記ジアルキルジアルコキシシランに対応するジアルキルジハロシラン;トリエチルメトキシシランなどのトリアルキルアルコキシシラン(トリC1-6アルキルC1-4アルコキシシランなど);前記トリアルキルアルコキシシランに対応するトリアルキルハロシランなど]、置換アルキル基含有シランカップリング剤[(メタ)アクリロイルオキシアルキル基含有シランカップリング剤{3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシトリアルコキシシラン((メタ)アクリロイルオキシC1-6アルキルトリC1-4アルコキシシランなど);前記(メタ)アクリロイルオキシトリアルコキシシランに対応する(メタ)アクリロイルオキシトリハロシラン;3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランなどのアルキル−(メタ)アクロイルオキシアルキル−ジアルコキシシラン(C1-6アルキル−(メタ)アクリロイルオキシC1-6アルキル−ジC1-4アルコキシシランなど);(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチル−ジクロロシランなどのC1-6アルキル−(メタ)アクリロイルオキシC1-6アルキル−ジハロシラン;ジメチル−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エトキシシランなどのジC1-6アルキル−(メタ)アクリロイルオキシC1-6アルキル−C1-4アルコキシシラン;ジC1-6アルキル−(メタ)アクリロイルオキシC1-6アルキル−ハロシランなど};ハロゲン化アルキル基含有シランカップリング剤(3−クロロプロピルトリメトキシシランなど)、]、アルケニル基含有シランカップリング剤[ビニルトリクロルシランなどのアルケニルトリハロシラン(C2-6アルケニルトリハロシラン);ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルケニルトリアルコキシシラン(C2-6アルケニルトリC1-4アルコキシシランなど);メチル−ビニル−ジメトキシシランなどのC1-6アルキル−C2-6アルケニル−ジC1-4アルコキシシランなど]、疎水性置換基を有していてもよいアリール基含有シランカップリング剤[フェニルトリメトキシシランなどのアリールトリアルコキシシラン(C6-10アリールトリC1-4アルコキシシランなど)、ジフェニルジメトキシシランなどのジC6-10アリールジC1-4アルコキシシラン及びこれらのアルコキシシランに対応するハロシラン;p−スチリルトリメトキシシランなどのアルケニルアリール−トリアルコキシシラン(C2-6アルケニルC6-10アリールトリC1-4アルコキシシランなど);p−スチリルトリクロロシランなどのC2-6アルケニルC6-10アリール−トリハロシラン;メチル−p−スチリル−ジアルコキシシランなどのC1-6アルキル−(C2-6アルケニルC6-10アリール)−ジC1-4アルコキシシランなど]などの他、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィド系シランカップリング剤が挙げられる。
また、シランカップリング剤には、メルカプトアルキル基含有シランカップリング剤(3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトC1-6アルキル−トリC1-4アルコキシシラン;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのC1-6アルキル−メルカプトC1-6アルキル−ジC1-4アルコキシシラン;及びこれらのアルコキシシランに対応するハロシランなど)、エポキシ基含有シランカップリング剤[3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシドキシC1-6アルキル−トリC1-4アルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのC1-6アルキル−グリシドキシC1-6アルキル−ジC1-4アルコキシシラン;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシランなどの(エポキシC6-8シクロアルキルC1-6アルキル)−トリC1-4アルコキシシラン;これらのアルコキシシランに対応するハロシランなど]、アミノ基含有シランカップリング剤[3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノC1-6アルキルトリC1-4アルコキシシラン及びこれらのアルコキシシランに対応するハロシランなど]、N−置換アミノ基含有シランカップリング剤[3−(N−メチルアミノ)プロピル−トリメトキシシランなどのN−C1-4アルキルアミノC1-6アルキル−トリC1-4アルコキシシラン;N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのN−C6-10アリールアミノ−C1-6アルキル−トリC1-4アルコキシシラン;N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのN−(アミノC1-4アルキル)アミノC1-6アルキル−トリC1-4アルコキシシラン;3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩など]、ウレイドアルキル基含有シランカップリング剤(3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイドC1-6アルキルトリC1-4アルコキシシラン;これらのアルコキシシランに対応するハロシランなど)、イソシアネートアルキル基含有シランカップリング剤(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートC1-6アルキル−トリC1-4アルコキシシラン及び対応するハロシランなど)などが挙げられる。
前記シランカップリング剤は、塩(例えば、塩酸塩、アンモニウム塩など)の形態で使用してもよい。カップリング剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。カップリング剤のうち、炭化水素基(特に、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アリール基など)を有するシランカップリング剤が好ましい。
反応性基(親水性反応性基など)を有するカップリング剤を疎水化するための疎水性化合物は、カップリング剤の反応性基に応じて、例えば、下記の官能基を有する炭化水素化合物(例えば、アルカン、アルケンなどの脂肪族炭化水素;シクロアルカンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、ナフタレン、ビフェニルなどの芳香族炭化水素など)などが例示できる。
(1)反応性基がヒドロキシル基:カルボキシル基、イソシアネート基など
(2)反応性がカルボキシル基:ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基又はN−置換アミノ基など
(3)反応性基がアミノ基又はN−置換アミノ基:カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基など
(4)反応性基がメルカプト基:エポキシ基など
(5)反応性基がエポキシ基:カルボキシル基、アミノ基又はN−置換アミノ基など
(6)反応性基がイソシアネート基:ヒドロキシル基、アミノ基又はN−置換アミノ基など
カップリング剤と着色粒子との結合又は相互作用の形態は、特に制限されず、カップリング剤の加水分解縮合性基(又は加水分解縮合性基の加水分解により生じる基など)で着色粒子と結合又は相互作用していてもよく、反応性基を有するカップリング剤では、反応性基で着色粒子と結合又は相互作用していてもよい。なお、前記官能基を有する着色粒子では、この官能基をカップリング剤との結合又は相互作用に利用してもよい。
カップリング剤による着色粒子の疎水化処理は、例えば、溶媒中に着色粒子を分散させた分散液(スラリーも含む)に、酸を添加して、酸性にした後、シランカップリング剤を添加して反応させることにより行うことができる。通常、反応後、反応混合物を中和し、固形分を濾別し、洗浄及び乾燥し、必要により粉砕することにより疎水性の着色粒子を得ることができる。カップリング剤の割合は、メタノール疎水化度に応じて、着色粒子100重量部に対して、例えば、1〜50重量部、好ましくは5〜40重量部、さらに好ましくは10〜30重量部程度であってもよい。
本発明において、着色粒子は、疎水化処理により65以上のメタノール疎水化度を有している。メタノール疎水化度は、室温(10〜30℃程度)において、100mlのイオン交換水に、着色粒子(例えば、酸化チタン)の微粉末0.2gを投入し、スターラーによる攪拌下、ビュレットからメタノールを滴下し、微粉末が沈降を開始したときのメタノール滴下量(ml)(すなわち、イオン交換水100に対する体積比)として定義する。
着色粒子のメタノール疎水化度は、65以上(例えば、65〜120)、好ましくは65〜100、さらに好ましくは65〜90程度である。着色粒子をメタノール疎水化度65以上に疎水化することにより、芯材への分散性が向上し、マイクロカプセルの壁膜への着色粒子の付着又は埋没を有効に抑制又は防止することができ、着色粒子の電気泳動性を損なうことがない。そのため、画像表示装置などに本発明のカプセル型インクを用いても、画像のボケを防止して、画像の鮮明性を向上できる。そのため、本発明には、マイクロカプセルにおいて、特定のメタノール疎水化度を有する着色粒子を用いて、着色粒子の電気泳動性を改善する方法も含まれる。
なお、着色粒子(泳動粒子)の凝集を防止し分散安定性を改善するため、前記分散系は、粘性調整剤の他、着色粒子の極性や表面電荷量を制御するための種々の成分、例えば、着色粒子の表面を被覆又は表面に付着又は結合した表面処理剤(極性基などを有する樹脂など)、分散剤(例えば、分散安定剤、界面活性剤など)、電荷制御剤などを含んでいてもよい。
マイクロカプセルは、通常、球状(真球状を含む)であり、マイクロカプセルの平均粒子径は、1〜1000μm程度の範囲から選択でき、通常、1〜200μm、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは5〜50μm程度であってもよい。マイクロカプセルの粒度分布は特に制限されないが、通常、正規分布しており、粒度分布幅の狭いカプセル(例えば、単分散カプセル)であるのが好ましい。なお、マイクロカプセルは、通常、光透過率が高く、例えば、可視光線透過率80%以上であってもよい。
また、マイクロカプセルの平均壁膜厚みは、2μm以下(例えば、10nm〜2μm)であってもよく、通常1μm以下(例えば、30〜900nm)、好ましくは50〜800nm、さらに好ましくは80〜700nm程度であってもよい。
このようなマイクロカプセルは、表示装置を構成する一対の電極間(例えば、少なくとも表示側の電極が透明電極で構成された一対の電極間)に介在させ、電極間に電圧を印加して着色粒子を電気泳動させ、文字、パターンなどの画像を表示するために有用である。画像表示において、着色粒子の泳動方向を制御するため、一対の電極の極性を変えてもよい。
例えば、分散媒が着色し、かつ分散媒とコントラストを生じさせる着色粒子(分散媒と光学的特性の異なる粒子や分散媒の色と異なる着色粒子など)が分散した分散系(芯物質)を内包するマイクロカプセルを用いると、常態では分散媒の色を呈し、電場の作用により着色粒子を表示面側に電気泳動させることにより、着色粒子によるパターンを表示できる。例えば、分散媒を黒色染料で着色し、白色粒子をさせた分散系では、白色粒子の電気泳動に伴って白色パターンを表示でき、分散媒を黄色染料で着色し、青色粒子を分散させた分散系では、青色粒子の電気泳動に伴って青色パターンを表示できる。
また、単一の着色粒子(例えば、白色粒子、黒色粒子など)が分散した分散系(芯物質)を内包するマイクロカプセルを利用すると、着色粒子の電気泳動により表示面に画像パターンを表示できる。また、必要によりカラーフィルタと組み合わせることにより、カラーパターンを表示できる。
さらに、黄色粒子(特に、ナノメータサイズの粒子)が分散した分散系(芯物質)を内包するマイクロカプセル(黄色用マイクロカプセル)と、赤色粒子(特に、ナノメータサイズの粒子)が分散した分散系(芯物質)を内包するマイクロカプセル(赤色用マイクロカプセル)と、青色粒子(特に、ナノメータサイズの粒子)が分散した分散系(芯物質)を内包するマイクロカプセル(青色用マイクロカプセル)と、必要により黒色粒子(特に、ナノメータサイズの粒子)が分散した分散系を内包するマイクロカプセル(黒色用マイクロカプセル)とを、それぞれ各一対の電極間に介在させて層状に積層すると、各電極への電圧印加や極性の制御により、減色混合を利用して、フルカラーパターンを表示できる。なお、必要により各層間にはカラーフィルタを介在させてもよい。
さらには、1画素を、黄色用マイクロカプセルで構成された黄色画素と、赤色用マイクロカプセルで構成された赤色画素と、青色用マイクロカプセルで構成された青色画素とで構成し、これらの画素に電場を作用させることにより、フルカラー画像を表示できる。なお、必要であれば、黒色用マイクロカプセルで構成された黒色画素や白色用マイクロカプセルで構成された白色画素を電極間に形成してもよい。
また、分散媒中で互いに異なる電荷(+,−)に帯電した複数の着色粒子(又は分散系)を利用すると、分散対向電極間での印加により複数の着色粒子を互いに逆方向に泳動でき、印加電圧の極性の切り換え(又は制御)により、複数の着色粒子の泳動方向を制御できる。例えば、マイナス(−)に帯電した酸化チタンと、プラス(+)に帯電したカーボンブラックとを分散媒中に分散させたマイクロカプセルを利用すると、表示面側の電極の極性をプラスとすることにより、酸化チタンにより明色画像(消色パターン)を形成できるとともに、表示面側の電極の極性をマイナスとすることにより、カーボンブラックにより黒色画像を形成できる。
本発明のマイクロカプセルは、酸基を中和した樹脂と65以上のメタノール疎水化度を有する着色粒子と有機溶媒とを含む混合液(有機分散液)を水性媒体中に分散し、前記有機分散液で構成された分散系(芯物質)とこの分散系を内包する壁膜とで構成されたカプセル粒子を水性媒体中に生成させることにより製造できる。生成したカプセル粒子は、水性媒体中から分離してもよく、必要によりさらに乾燥させてもよい。
また、カプセル粒子を生成させた後、壁膜を構成する樹脂を架橋又は硬化させてもよい。壁膜の架橋又は硬化は、適当な段階で行うことができ、例えば、カプセル粒子を乾燥する工程で行ってもよく、カプセル粒子の生成後、水性媒体中で行ってもよい。
(有機分散液の調製)
前記分散系を構成する有機分散液の調製において、アニオン型樹脂、着色粒子及び有機溶媒の混合又は分散の順序は特に制限されず、例えば、(1)アニオン型樹脂の有機溶媒溶液と着色粒子とを混合分散してもよく、(2)アニオン型樹脂と着色粒子と有機溶媒とを混合し、分散液を調製してもよく、また、(3)有機溶媒中に着色粒子を分散した分散液(又は油相分散型着色剤)と、アニオン型樹脂又はその有機溶媒溶液とを混合してもよい。なお、このような方法において、アニオン型樹脂の酸基は、有機分散液の調製に先だって、中和処理してもよく、有機分散液の調製に伴って酸基を中和処理してもよい。
水分散性樹脂の中和は、種々の塩基、例えば、無機塩基[アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物など]、有機塩基[トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアルキルアミン類(特にトリアルキルアミン類)、アミノアルコール類[2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−(メチルアミノ)エタノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、3−メチルアミノ−1−プロパノールなどの直鎖状アミノアルコール;1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−ジメチルアミノ−2,2−ジメチル−1−プロパノールなどの分岐状アミノアルコールなど)、モルホリンなどの複素環式アミン類など]が挙げられる。これらの塩基は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
樹脂の酸基の中和度は、例えば、10〜100モル%程度の範囲から選択でき、通常、10〜60モル%、好ましくは10〜50モル%(例えば、10〜40モル%)程度である。
有機溶媒溶液の調製に伴って、着色粒子(又は着色剤)は、適当な分散剤(低分子又は高分子分散剤、界面活性剤など)で予め分散した分散液の形態で用いてもよい。また、着色粒子(着色剤)の分散処理は、慣用の分散手段、例えば、超音波処理装置、ボールミルなどを利用できる。
より具体的には、有機分散液調製工程は、例えば、次のようにして行うことができる。カルボキシル基に基づく適当な酸価と、架橋性基を有する樹脂とを含む有機溶媒溶液を調製し、塩基を用いて前記樹脂の酸基を適当な中和度に中和処理し、樹脂溶液を調製する。一方、疎水化された着色粒子を上記樹脂(中和処理されていてもよい樹脂)とともに、疎水性溶媒の存在下、分散処理し、着色粒子を含む分散液を調製する。そして、この分散液と前記樹脂溶液とを混合することにより、着色剤が分散した有機分散液を調製できる。
(カプセル粒子の生成)
カプセル粒子の生成工程では、着色粒子が油相中に分散した有機分散液(油相分散型着色剤)が水性媒体(特に水)に分散した状態の水分散液から、芯物質がアニオン型樹脂によりカプセル化(内包)されたカプセル粒子を生成させる。
水性媒体中への有機分散液の分散は、水性媒体の連続相(W相)に有機分散液の分散相(O相)が形成できる限り、特に制限されず、例えば、水性媒体に前記有機分散液を添加して乳化分散させることにより行ってもよく、前記有機分散液に水性媒体を添加して、転相乳化させることにより行ってもよい。分散は、通常、前記有機分散液と水性媒体(特に水)とを含む混合系に剪断力(撹拌などの剪断力、超音波などの振動剪断力など)を作用させながら行うことができる。
なお、転相乳化では、酸基が中和された樹脂と有機溶媒とを含む有機連続相(O相)に、水性媒体相(W相)の水性媒体を添加すると、有機連続相(O相)から水連続相又は水性媒体相(W相)への連続相の転換とともに、有機相が乳化されて不連続相化(すなわち転相乳化)し、前記樹脂が有機相の周囲に局在化して、有機相を内包するカプセル粒子が水媒体中に安定に分散した水分散液が得られる。
このような水性分散液において、有機分散液と水性媒体との割合は、例えば、有機分散液/水性媒体(重量比)=10/90〜70/30、好ましくは20/80〜60/40、さらに好ましくは30/70〜50/50程度であってもよい。
分散は適当な温度(例えば、5〜40℃、好ましくは15〜30℃程度、特に室温)で行うことができ、必要であれば冷却又は加温下で行ってもよい。また、転相乳化においては、着色剤含有油性分散液(有機分散液)と水性媒体との温度差は小さい方が好ましく、両者の温度差は、通常、0〜15℃(好ましくは0〜10℃、特に0〜5℃)程度であってもよい。
なお、乳化分散や転相乳化により生成した乳化混合物は、分散系を内包するマイクロカプセル粒子と、このマイクロカプセル粒子が分散した分散媒(溶媒相)とで構成されるが、溶媒相は、水および有機溶媒(カプセル粒子内に内包され、かつ分散系を構成する着色剤の疎水性分散媒以外の有機溶媒)を含んでいる。そのため、通常、分散(乳化分散、転相乳化)により生成した乳化混合物は、脱有機溶媒処理(例えば、蒸留(特に減圧蒸留)などの慣用の方法)に供され、マイクロカプセル粒子が水性媒体中に分散した水性分散液を得ることができる。水性分散液には、必要に応じて水媒体を追加又は補充してもよい。
(壁膜の架橋又は硬化)
カプセル粒子の架橋又は硬化は、壁膜を構成する樹脂を自己架橋又は架橋剤により架橋又は硬化することにより行うことができる。壁膜を架橋又は硬化させることにより、壁膜の厚みを大きくでき、カプセル粒子の機械的強度を高めることができるとともに、油相に対するバリア性を向上できる。
架橋剤は、通常、一分子中に複数の反応性基を有しており、樹脂の架橋性官能基の種類に応じて選択でき、例えば、次のような組み合わせが採用できる。
1)架橋性官能基がカルボキシル基である場合、架橋剤としては、例えば、アミノプラスト樹脂(メチロール基やアルコキシメチル基を有する樹脂、例えば、尿素樹脂、グアナミン樹脂、メラミン樹脂など)、グリシジル基を有する化合物(又はポリエポキシ化合物又はエポキシ樹脂)、カルボジイミド基を有する化合物(ポリカルボジイミド化合物)、オキサゾリン基を有する化合物[オキサゾリン基を有するポリマー(アクリル系ポリマー、アクリル−スチレン系コポリマーなど)などのポリオキサゾリン化合物など]、金属キレート化合物などが挙げられる。
2)架橋性官能基がヒドロキシル基である場合、架橋剤としては、例えば、アミノプラスト樹脂、ブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物、アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
3)架橋性官能基がグリシジル基である場合、架橋剤としては、例えば、カルボキシル基含有化合物(多価カルボン酸又はその酸無水物)、ポリアミン化合物、ポリアミノアミド化合物、ポリメルカプト化合物などが挙げられる。
4)架橋性官能基がアミノ基である場合、架橋剤としては、例えば、カルボキシル基含有化合物(多価カルボン酸又はその酸無水物)、ブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物、グリシジル基を有する化合物(又はポリエポキシ化合物又はエポキシ樹脂)などが挙げられる。
架橋剤のうち、前記ポリエポキシ化合物(エポキシ樹脂も含む)としては、グリシジルエーテル型エポキシ化合物[ポリヒドロキシ化合物(ビスフェノール類、多価フェノール類、脂環式多価アルコール類、脂肪族多価アルコール類など)とエピクロルヒドリンとの反応により生成するグリシジルエーテル類、ノボラック型エポキシ樹脂など]、グリシジルエステル型エポキシ化合物(多価カルボン酸ポリグリシジルエステル類、例えば、フタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸のジグリシジルエステル;テトラヒドロフタル酸、ジメチルヘキサヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸のジグリシジルエステル;ダイマー酸ジグリシジルエステル又はその変性物など)、グリシジルアミン型エポキシ化合物[アミン類とエピクロルヒドリンとの反応生成物、例えば、N−グリシジル芳香族アミン{テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、トリグリシジルアミノフェノール(TGPAP、TGMAPなど)、ジグリシジルアニリン(DGA)、ジグリシジルトルイジン(DGT)、テトラグリシジルキシリレンジアミン(TGMXAなど)など}、N−グリシジル脂環族アミン(テトラグリシジルビスアミノシクロヘキサンなど)など]の他、環状脂肪族エポキシ樹脂(例えば、アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキシドなど)、複素環式エポキシ樹脂(トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)、ヒダントイン型エポキシ樹脂など)などが挙げられる。
前記グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、ポリヒドロキシ化合物の種類に応じて、例えば、ビスフェノール類のグリシジルエーテル[ビスフェノール類(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類など)のジグリシジルエーテル、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(ビスフェノール型A型エポキシ樹脂)などのビスフェノール型エポキシ樹脂;ビスフェノール類のC2-3アルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルなど]、多価フェノール類のグリシジルエーテル(レゾルシン、ヒドロキノンなどのジグリシジルエーテルなど)、脂環式多価アルコール類のグリシジルエーテル(シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール類などのジグリシジルエーテルなど)、脂肪族多価アルコール類のグリシジルエーテル(エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどのポリC2-4アルキレングリコールジグリシジルエーテルなど)、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂など)などが挙げられる。ビスフェノールA型エポキシ化合物は、例えば、「エピコート(登録商標)828」などとしてジャパンエポキシレジン(株)から入手できる。また、二官能グリシジルエーテルとしては、商品名「エピクロン850」(大日本インキ化学(株))、三官能グリシジルエーテルとしては、商品名「TECHMORE(登録商標)」(三井化学(株))なども市販されている。
前記架橋剤のうち、カルボジイミド基を有する化合物としては、ジアルキルカルボジイミド(ジエチルカルボジイミド、ジプロピルカルボジイミドなどのジC1-10アルキルカルボジイミド);ジシクロアルキルカルボジイミド(ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのジC3-10シクロアルキルカルボジイミドなど);アリールカルボジイミド(ジ−p−トルイルカルボジイミド、トリイソプロピルベンゼンポリカルボジイミドなどのアリールポリカルボジイミドなど)などが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物(ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート(IPDI)などの脂環族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)などの芳香族ジイソシアネート類;キシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネート類など)、トリイソシアネート化合物(リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6−トリイソシアナトヘキサンなどの脂肪族トリイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサンなどの脂環族トリイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネートなどの芳香族トリイソシアネートなど)、テトライソシアネート化合物(4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなど)が例示できる。ポリイソシアネート化合物は、フェノール、アルコール、カプロラクタムなどによりブロック又はマスクされたブロックイソシアネートであってもよい。
前記多価カルボン酸としては、ジカルボン酸(アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸などの脂環式ジカルボン;フタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸など)、トリメリット酸などのトリカルボン酸、ピロメリット酸などのテトラカルボン酸などが挙げられる。多価カルボン酸の酸無水物には、前記多価カルボン酸の無水物、ドデセニル無水コハク酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水ヘット酸なども含まれる。
前記ポリアミン化合物としては、ヒドラジン類(ヒドラジン、有機酸ジヒドラジドなど)、脂肪族ポリアミン(エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC2-10アルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなど)、脂環族ポリアミン(ジアミノシクロヘキサン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ジ(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなど)、芳香族ポリアミン[フェニレンジアミン、ジアミノトルエンなどのC6-10アリーレンジアミン;キシリレンジアミン、ジ(2−アミノ−2−プロピル)ベンゼン;4,4’−ビフェニレンジアミン、ビフェニレンビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−クロロフェニル)メタンなど]などが例示できる。
前記ポリオキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を有するアクリル−スチレン系コポリマー(例えば、日本触媒(株)製、「エポクロス(登録商標)Kシリーズ」など)、オキサゾリン基を有するアクリル系ポリマー(例えば、日本触媒(株)製、「エポクロス(登録商標)WSシリーズ」など)、新中村化学工業(株)製「NK Linker NX」などが挙げられる。
架橋剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。架橋性官能基と架橋剤との組合せのうち、(a)カルボキシル基と、カルボジイミド基を有する化合物(ポリカルボジイミド化合物)との組合せ、(b)カルボキシル基と、ポリエポキシ化合物又はエポキシ樹脂との組合せ、(c)カルボキシル基と、オキサゾリン化合物との組合せ、(d)ヒドロキシル基又はアミノ基と、ポリイソシアネート化合物との組合せなどが好ましい。
架橋剤は、油相又は水相のいずれかに溶解する化合物であるのが好ましく、親水性が付与された架橋剤(親水性又は水溶性架橋剤)も好ましい。例えば、親水性が付与されたカルボジイミド化合物は、親水性カルボジライト(日清紡(株)製、「V-02」,「V-02-L2」,「V-04」)などとして入手できる。また、親油性を有するカルボジイミド化合物としては、親油性カルボジライト(日清紡(株)製、「V-05」,「V-07」)などが市販されている。
架橋性官能基を有する樹脂と架橋剤との割合は、特に制限されず、例えば、架橋性官能基(カルボキシル基など)1当量に対して、架橋剤の反応性基(カルボジイミド基、エポキシ基など)0.1〜2当量、好ましくは0.1〜1.2当量、さらに好ましくは0.2〜1当量(例えば、0.3〜0.9当量)程度の範囲から選択できる。
架橋剤は、油相(有機分散液)及び水相(水性媒体)の少なくともいずれか一方に含有させればよく、添加時期は特に制限されない。例えば、有機分散液調製工程で生成した有機分散液に添加してもよく、有機分散液の調製に先だって、有機溶媒中に添加してもよい。また、乳化分散や転相乳化により生成した乳化分散液(水性分散液)や乳化分散液の水性媒体中の有機溶媒を除去した後の水性分散液に添加してもよい。通常、疎水性又は油溶性架橋剤を用いる場合は、有機相に添加するのが有利であり、親水性又は水溶性架橋剤を用いる場合は、水相に添加するのが有利である。好ましい態様では、カプセル粒子を含む水性分散液を生成させた後、架橋剤を添加し、水性媒体中でカプセル粒子の壁膜を架橋又は硬化させることができる。なお、必要に応じて、疎水性又は油溶性架橋剤と、親水性又は水溶性架橋剤とを適当な段階で添加して、樹脂成分中の架橋官能基と架橋剤とを反応させてもよい。さらに、必要であれば、架橋剤は、触媒(酸触媒、塩基触媒など)と組み合わせて用いてもよい。
樹脂の架橋又は硬化は、適当な温度で行うことができ、通常、撹拌しながら、加熱して行うことができる。なお、架橋又は硬化は、水性溶媒又は疎水性溶媒の存在下で行う場合が多い。そのため、架橋又は硬化は、分散液を撹拌しながら、溶媒(好ましくは水性媒体、特に水)の沸点以下の温度(例えば、50〜100℃、好ましくは50〜90℃、さらに好ましくは50〜80℃程度の温度)で行う場合が多い。マイクロカプセル粒子の融着を抑制するため、壁膜(又は樹脂)のガラス転移温度未満の温度で架橋又は硬化を行ってもよい。
(未反応架橋剤の架橋又は硬化)
本発明では、壁膜を構成する樹脂を、架橋剤を用いて架橋又は硬化させた後、未反応の架橋剤をさらに多官能化合物で架橋又は硬化させて、壁膜の架橋度を高めてもよい。多官能化合物により架橋又は硬化すると、壁膜の厚みをさらに大きくすることができ、マイクロカプセルの機械的強度もさらに高めることができる。
このような多官能化合物は、架橋剤の架橋性基を架橋又は硬化可能な官能基を複数有しており、比較的低分子のものが好ましい。
多官能化合物は、架橋剤の架橋性基に応じて選択でき、例えば、下記の化合物などが例示できる。
(1)架橋性基がグリシジル基(エポキシ基):多価カルボン酸又はその無水物、ポリアミン化合物
(2)架橋性基がメチロール基やアルコキシメチル基:多価カルボン酸又はその無水物、ポリヒドロキシ化合物
(3)架橋性基がカルボジイミド基、オキサゾリン基、金属キレート:多価カルボン酸又はその無水物
(4)架橋性基がシリル基又はアルコキシシリル基:ポリヒドロキシ化合物
(5)架橋性基がイソシアネート基:ポリヒドロキシ化合物、ポリアミン化合物
(6)架橋性基がカルボキシル基:ポリヒドロキシ化合物、ポリエポキシ化合物、ポリアミン化合物
(7)架橋性基がアミノ基:多価カルボン酸又はその無水物、ポリエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物
(8)架橋性基がメルカプト基:ポリエポキシ化合物
前記多官能化合物のうち、ポリヒドロキシ化合物としては、ジオール[アルキレングリコール(エチレングリコールなど)、ポリオキシアルキレングリコール(ジエチレングリコールなど)などの脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなどの脂環族ジオール;ハイドロキノン、ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、キシリレングリコールなどの芳香族ジオール又はそのアルキレンオキサイド付加体など]、トリオール(グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなど)、テトラオール(ペンタエリスリトールなど)などが挙げられる。
ポリエポキシ化合物としては、前記例示のエポキシ化合物のうち、比較的低分子の化合物、例えば、多価フェノール類、脂環式多価アルコール類、脂肪族多価アルコールのグリシジルエーテル;多価カルボン酸ポリグリシジルエステル類;N−グリシジル芳香族アミン;N−グリシジル脂環族アミンなどが挙げられる。多価カルボン酸、ポリイソシアネート化合物及びポリアミン化合物としては、前記架橋剤の項で例示の化合物が挙げられる。
これらの多官能化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
架橋剤の未反応の架橋性基に対する多官能化合物の割合は、特に制限されず、例えば、架橋性基(グリシジル基など)1当量に対して、多官能化合物の官能基(ポリアミン化合物のアミノ基など)0.1〜2当量程度の範囲から選択でき、通常、0.1〜1.2当量、好ましくは0.2〜1当量、さらに好ましくは0.3〜0.9当量程度の範囲から選択できる。
多官能化合物の添加時期は、特に制限されず、架橋剤でカプセル粒子の壁膜を架橋又は硬化した後、添加してもよい。
(カプセル粒子の分離、乾燥)
カプセル粒子は、慣用の方法、例えば、ろ過、遠心分離などの方法により、水性媒体から分離してカプセル粒子のウェットケーキを生成させ、必要により、慣用の方法、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥などの方法により、乾燥してもよい。また、カプセル粒子を含む水性分散液を、慣用の乾燥方法、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥などの方法により、乾燥させることにより、カプセル粒子を分離してもよい。カプセル粒子を乾燥することにより、前記分散系(油相分散系又は芯物質)を内包する粉末状のマイクロカプセル(カプセル型表示素子又はインク)を得ることができる。なお、カプセル粒子は、樹脂の中和された酸基を遊離化するため、分離又は乾燥に先だって又は乾燥後、酸による逆中和処理に供してもよい。
本発明のマイクロカプセルは、例えば、電極間での電圧印加による着色粒子の電気泳動を利用して画像を形成するための画像表示素子として有用である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を示す。
実施例1〜4及び比較例1〜8
(1)アニオン型樹脂の調製及び中和
2−プロパノール(IPA)120部を反応器に入れ加熱して80℃にした。次いで、この2−プロパノールに、窒素気流下、下記の成分を下記に示す割合で含む混合物を、約2時間に亘って滴下し、反応を行った。
メタクリル酸メチル(MMA) 60 部
アクリル酸ブチル(BA) 15 部
メタクリル酸(MAA) 25 部
2,2’−アゾビス−2,4’−ジメチルバレロニトリル(ADVN) 1.5部
滴下し終えてから2時間後及び5時間後に、IPA11部とADVN0.5部との混合物を2回に亘って、反応混合物に添加し、80℃でさらに4時間保持することにより、固形分(加熱残分)が43.0%の樹脂溶液を得た。得られたアニオン性樹脂の酸価は162.9mgKOH/gであった。
上記アニオン性樹脂46.5部に、室温にて、IPA53.5部を添加し、中和剤として3−ジメチルアミノ−2,2−ジメチル−1−プロパノールを3.1部添加して、アニオン性樹脂を中和処理(中和度35モル%)した。
(2)着色顔料分散液の調製
(i)酸化チタンの疎水化
親水性酸化チタン(テイカ(株)製、JR)100gをエタノール/水の1:1(重量比)混合液中に添加し、湿式粉砕して100g/Lのスラリーとした。このスラリーに、6N塩酸を添加してpH2.0に調整し、シランカップリング剤(n−ブチルトリメトキシシラン)を酸化チタンに対し25g添加した。30分間攪拌保持した後、4N水酸化ナトリウム水溶液を加えpH6.5まで中和し、濾過した。濾別した固形物を水洗し、150℃で乾燥した後、気流粉砕機にて微粉砕し、疎水性酸化チタン(T1)(疎水化度:68)を得た(実施例1)。
なお、他の実施例及び及び比較例では、実施例1の疎水化酸化チタンT1に代えて、下記の酸化チタンを用いた。
T2:テイカ(株)製酸化チタン、JMT−150AO、疎水化度75(実施例2)
T3:テイカ(株)製酸化チタン、JMT−150AX、疎水化度:65(実施例3)
T4:富士チタン工業(株)製酸化チタン、TAF−1500S、疎水化度:78(実施例4)
T5:実施例1の酸化チタンの疎水化工程において、シランカップリング剤(n−ブチルトリメトキシシラン)の割合を5gとする以外は実施例1と同様に操作を行うことにより得られた酸化チタン(疎水化度:52)(比較例1)。
T6:テイカ(株)製酸化チタン、JMT−150IB、疎水化度:60%(比較例2)
T7:テイカ(株)製酸化チタン、JMT−150ANO、疎水化度:50%(比較例3)
T8:テイカ(株)製酸化チタン、JMT−150FI、疎水化度:35%(比較例4)
T9:富士チタン工業(株)製酸化チタン、TAF−500S、疎水化度:50%(比較例5)
T10:富士チタン工業(株)製酸化チタン、TAF−510S、疎水化度:60%(比較例6)
T11:富士チタン工業(株)製酸化チタン、TAF−520S、疎水化度:45%(比較例7)
T12:富士チタン工業(株)製酸化チタン、STT−30S、疎水化度:55%(比較例8)
(ii)分散液の調製
ジイソプロピルナフタレン、オイルブルー及び顔料分散剤を下記の割合で混合し、攪拌しながら加熱し、90℃にて完全に溶解させた。混合物を90℃で20分間保持し、室温まで冷却した。得られた混合物(着色溶液(ジイソプロピルナフタレンのオイルブルー溶解液))に対して、表1に示す酸化チタンを下記の割合で分散させ着色剤分散液を調製した。
ジイソプロピルナフタレン 50 部
(呉羽化学工業(株)製 「KMC−113」)
オイルブルー 1 部
顔料分散剤 0.5部
(日本ルーブリゾール(株)製 「ソルスパース17000」)
酸化チタン 5 部
得られた着色剤分散液55.6部に、架橋剤としてのエポキシ樹脂(三井化学(株)製,TECHMORE)を15.7部添加し、室温にて10分間攪拌し、エポキシ樹脂を含む着色剤分散液を得た。
(3)カプセル型インクの調製例
上記(1)の工程で得られた中和されたアニオン性樹脂103.1部と上記(2)の工程で得られたエポキシ樹脂を含む着色剤分散液71.3部とを室温で混合し、この混合物を攪拌しながら脱イオン水150部を滴下して転相乳化を行った。
得られた転相乳化混合物を下記の後処理工程に供し、粉末状マイクロカプセルを得た。すなわち、前記転相乳化混合物を80℃で30分間熱処理することによって、前記エポキシ樹脂のエポキシ基と転相乳化エマルションを構成する樹脂のカルボキシル基との架橋を進行させた後、得られた乳化混合物を減圧蒸留し、IPAを除去した。得られた水性分散液に脱イオン水300部を加え、さらに一晩80℃で熱処理してエポキシ樹脂のエポキシ基とカルボキシル基の架橋を完全に進行させた。得られたマイクロカプセル水性分散液に、ジエチレントリアミン6.1部を添加し、カプセル内部に残ったエポキシ樹脂のエポキシ基を油−水界面にて反応させ、残存していたエポキシ基を完全に消費させた。以上の架橋処理の後、得られた水性分散液を濾過し、濾別したケーキに脱イオン水300部を加え、攪拌しながら酢酸にてpH2〜3に調整し、スプレードライヤーで乾燥し、カプセル粉末を得た。
得られたカプセルの平均粒径は60μmであった。また、壁膜のガラス転移温度(Tg)は198℃であった。
(4)酸化チタンの壁膜への付着性の評価
実施例1〜3及び比較例1〜4のマイクロカプセルについて、壁膜への着色粒子の付着又は埋没の程度を光学顕微鏡により観察した。
すなわち、実施例及び比較例で得られたマイクロカプセルを水に分散させた分散液をピペットで一滴垂らし、上からカバーガラス(厚み:0.17mm)を掛けて、暗視野にて光学顕微鏡により観察した。実施例1〜3のマイクロカプセルの光学顕微鏡写真(倍率120又は240倍)を、それぞれ図1、図3及び図5に示す。また、比較例1〜4のマイクロカプセルの光学顕微鏡写真(倍率120又は240倍)をそれぞれ、図7、図9、図11及び図13に示す。
さらに、酸化チタンの内包状況を確認するため、カバーガラス上から指先で圧力を加えカプセルを押しつぶすことにより、酸化チタン分散液がカプセルから流れ出す様子を観察した。各実施例及び比較例について、押し潰された状態のマイクロカプセルの光学顕微鏡写真を図に示す(実施例1:図2、実施例2:図4、実施例3:図6、比較例1:図8、比較例2:図10、比較例3:図12、比較例4:図14)。
図1及び図2から明らかなように、実施例1のマイクロカプセル(着色粒子の疎水化度75%)は、押し潰しにより、内包された酸化チタン分散液がカプセル外に流れ出しており、カプセル壁への酸化チタンの付着や埋没は少ないことが明らかである。また、図3及び図4、図5及び図6から明らかなように、実施例2のマイクロカプセル(疎水化度75%)及び実施例3のマイクロカプセル(疎水化度65%)でも、実施例1と同様の結果が得られた。これらの実施例に比べて、比較例1のマイクロカプセル(疎水化度52%)では、押し潰しにより、カプセル内部から流れ出すのはほとんど透明な液体であった。同様に、比較例2〜4でも、カプセル内部から透明な液体が流れ出し、酸化チタンがカプセル壁へ付着または埋没していた。また、比較例3のマイクロカプセルは、球形を保っておらず、比較例4では、カプセル同士の凝集も確認された。
(5)電気泳動性の評価
図15は、電気泳動性の評価方法を示す概念図である。図15に示すように、片面にITO(インジウムスズ酸化物)蒸着膜2aが形成された透明ガラス電極1a上に、実施例及び比較例で得られたマイクロカプセル3を敷き詰め、片面にITO蒸着膜2bが形成された透明ガラス電極1bを、ITO蒸着膜側をマイクロカプセルに接触させた状態で重ね合わせ、ガラス電極1a及び1bを両面テープ4で固定した。前記両面テープは、ガラス電極間のスペーサを兼ねており、電極間距離は約50μm(すなわち、両面テープの厚み分)であった。(株)NF回路設計ブロック製の定電圧/定電流発生増幅装置(10kVAC/DC増幅器 HVA4321)を用い、上下の電極間に電圧をかけ、そのプラスマイナスを切り替える毎に、プレートの色が白から青、または青から白へと変化することを確認した。
(6)電気泳動性及び表示の鮮明性の評価
印加電圧を50Vに固定し、酸化チタンが観察者に対して手前に来るようにプラスマイナスを設定した(白色表示)。時刻0秒に電圧を逆方向に印加し、表示が白から青へと変化していく過程を、物体色測定装置(浜松ホトニクス(株)製、マルチチャンネル検出器 PMA−11)を用いて500nmの波長を有する光の反射率変化として追跡した。図16に白表示及び青表示における反射率と、時間との関係を示す模式図を示す。図16において、白表示における反射率をRW、青表示における反射率をRB、白表示から青表示に変わるのに要する時間をtWBと定義する。反射率が小さいほど白色度が低く(青色度が高く)、tWBが小さいほど電気泳動速度が大きいことを示す。
用いた酸化チタンの種類及びメタノール疎水化度ととも、RW,RB,tWBの値を表1に示す。
図1は、実施例1のマイクロカプセルの光学顕微鏡写真(倍率240倍)である。 図2は、実施例1のマイクロカプセルを押し潰した状態の光学顕微鏡写真(倍率240倍)である。 図3は、実施例2のマイクロカプセルの光学顕微鏡写真(倍率120倍)である。 図4は、実施例2のマイクロカプセルを押し潰した状態の光学顕微鏡写真(倍率120倍)である。 図5は、実施例3のマイクロカプセルの光学顕微鏡写真(倍率120倍)である。 図6は、実施例3のマイクロカプセルを押し潰した状態の光学顕微鏡写真(倍率120倍)である。 図7は、比較例1のマイクロカプセルの光学顕微鏡写真(倍率120倍)である。 図8は、比較例1のマイクロカプセルを押し潰した状態の光学顕微鏡写真(倍率120倍)である。 図9は、比較例2のマイクロカプセルの光学顕微鏡写真(倍率240倍)である。 図10は、比較例2のマイクロカプセルを押し潰した状態の光学顕微鏡写真(倍率240倍)である。 図11は、比較例3のマイクロカプセルの光学顕微鏡写真(倍率240倍)である。 図12は、比較例3のマイクロカプセルを押し潰した状態の光学顕微鏡写真(倍率240倍)である。 図13は、比較例4のマイクロカプセルの光学顕微鏡写真(倍率240倍)である。 図14は、比較例4のマイクロカプセルを押し潰した状態の光学顕微鏡写真(倍率240倍)である。 図15は、電気泳動性の評価方法を示す概念図である。 図16は、白表示及び青表示における反射率と、時間との関係を示す模式図である。
符号の説明
1a,1b…ガラス電極
2a,2b…ITO蒸着膜
3…マイクロカプセル

Claims (10)

  1. 油相に着色粒子が分散した分散系と、この分散系を内包する壁膜とで構成されたマイクロカプセルであって、前記着色粒子が、疎水化されており、かつ65以上のメタノール疎水化度を有するマイクロカプセル。
  2. 分散系が、電気絶縁性を有する誘電性液体と、この誘電性液体中に分散した単一又は複数種の着色粒子とで構成されており、着色粒子が、疎水性基の導入により疎水化されている請求項1記載のマイクロカプセル。
  3. 疎水化された着色粒子が、疎水性基を有するカップリング剤で処理された着色粒子である請求項1記載のマイクロカプセル。
  4. 疎水化された着色粒子が、疎水性基を有するシランカップリング剤で処理された酸化チタンである請求項1記載のマイクロカプセル。
  5. 油相中で着色粒子が帯電し、かつ電位差によりマイクロカプセル内で電気泳動可能である請求項1記載のマイクロカプセル。
  6. 壁膜が酸基又はその塩を有する樹脂で形成されているマイクロカプセル。
  7. 壁膜が樹脂で形成されており、この樹脂が架橋又は硬化している請求項1記載のマイクロカプセル。
  8. 一対の電極間に介在させ、着色粒子の電気泳動により画像を表示するための請求項1記載のマイクロカプセル。
  9. 酸基を中和した樹脂と着色粒子と有機溶媒とを含む有機分散液を水性媒体中に分散し、前記有機分散液で構成された分散系とこの分散系を内包する壁膜とで構成されたカプセル粒子を水性媒体中に生成させるマイクロカプセルの製造方法であって、前記着色粒子が疎水化されており、かつ65以上のメタノール疎水化度を有するマイクロカプセルの製造方法。
  10. 電位差により電気泳動可能な着色粒子が油相に分散した分散系と、この分散系を内包する壁膜とで構成されたマイクロカプセルにおいて、前記着色粒子として、疎水化され、かつ65以上のメタノール疎水化度を有する着色粒子を用いて、着色粒子の電気泳動性を改善する方法。
JP2005077455A 2005-03-17 2005-03-17 マイクロカプセル及びその製造方法 Pending JP2006259323A (ja)

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